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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1376406
審判番号 不服2019-13986  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-21 
確定日 2021-08-17 
事件の表示 特願2015-145194「偏光解消素子及びその製造方法、並びにそれを用いた光学機器及び液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 2日出願公開、特開2017- 26824、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-145194号(以下「本件出願」という。)は、平成27年7月22日を出願日とする特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成31年 4月11日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 6月18日付け:意見書
令和 元年 6月18日付け:手続補正書
令和 元年 7月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 元年10月21日付け:審判請求書
令和 元年10月21日付け:手続補正書
令和 2年 9月 4日付け:拒絶理由通知書
令和 2年11月 4日付け:意見書
令和 2年11月 4日付け:手続補正書
令和 3年 1月28日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 3月29日付け:意見書
令和 3年 3月29日付け:手続補正書

2 本願発明
本件出願の請求項1?請求項12に係る発明は、令和3年3月29日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項12に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
透光基板と、
該透光基板上に設けられる、入射光の波長以下のピッチ幅で配置され、1次元のグリッド構造からなる複屈折層と、を有し、
前記グリッド構造のデューティー比が前記グリッド構造の軸方向に沿って連続的に変化することを特徴とする偏光解消素子(ただし、二酸化ケイ素凸条パターン、二酸化ケイ素凹条パターン、及び隣り合う前記二酸化ケイ素凸条パターン同士を結合する二酸化ケイ素支柱パターンの3つのパターンがすべて形成されている光学素子を除く。)。

【請求項2】
前記デューティー比が、0.2以上0.6以下の範囲内で変化する、請求項1に記載の偏光解消素子。

【請求項3】
前記ピッチ幅が200nm未満である、請求項1又は2に記載の偏光解消素子。

【請求項4】
前記グリッド構造の高さが一定である、請求項1?3のいずれかに記載の偏光解消素子。

【請求項5】
前記透光基板の面内において前記複屈折層のリタデーションが連続的に変化する、請求項1?4のいずれかに記載の偏光解消素子。

【請求項6】
前記複屈折層が無機材料のみからなる、請求項1?5のいずれかに記載の偏光解消素子。

【請求項7】
前記複屈折層が保護膜によって覆われる、請求項1?6のいずれかに記載の偏光解消素子。

【請求項8】
前記ピッチ幅が一定である、請求項1?7のいずれかに記載の偏光解消素子。

【請求項9】
前記グリッド構造の前記デューティー比が、前記軸方向に対して略周期的に変化する、請求項1?8のいずれかに記載の偏光解消素子。

【請求項10】
請求項1?9のいずれかに記載の偏光解消素子を製造する方法であって、
前記グリッド構造を二光束干渉露光法を用いて形成することを特徴とする偏光解消素子の製造方法。

【請求項11】
請求項1?9のいずれかに記載の偏光解消素子を搭載することを特徴とする光学機器。

【請求項12】
請求項1?9のいずれかに記載の偏光解消素子を含むことを特徴とする液晶表示装置。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、[A]本件出願の請求項1、4?6、9及び11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない、[B]本件出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2015-114387号公報
引用文献2:特開2008-257133号公報
引用文献3:特開2004-219626号公報
引用文献4:特開2001-318217号公報
なお、主引用例は引用文献1であり、引用文献2及び引用文献4は副引用例、引用文献3は周知技術を例示する文献である。

4 当合議体の拒絶の理由
令和2年9月4日付け拒絶理由通知書において当合議体が通知した拒絶の理由は、[a](明確性要件)本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるということができないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、[b](実施可能要件)本件出願の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない、というものである。また、令和3年1月28日付け拒絶理由通知書において当合議体が通知した拒絶の理由は、[c](明確性要件)本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるということができないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないというものである。

第2 当合議体の判断
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2015-114387号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸条パターンと凹条パターンが繰り返されたサブ波長構造をもつ光学素子の形成方法であって、
エッチング技術によってシリコン層に溝を形成して、シリコン凸条パターン、シリコン凹条パターン、及び隣り合う前記シリコン凸条パターン同士を結合するシリコン支柱パターンを形成するエッチング工程と、
前記シリコン層に対して熱酸化処理を施して、前記シリコン凸条パターン、前記シリコン凹条パターン及び前記シリコン支柱パターンから二酸化ケイ素凸条パターン、二酸化ケイ素凹条パターン及び二酸化ケイ素支柱パターンを形成する熱酸化工程と、を含み、
前記シリコン凸条パターンの形状に対して歪んだ前記二酸化ケイ素凸条パターンを含む光学素子を形成することを特徴とする光学素子の形成方法。
…省略…
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子の形成方法によって形成された光学素子であって、
長さ方向で幅寸法が変化している前記二酸化ケイ素凹条パターンを含んでいることを特徴とする光学素子。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の形成方法及び光学素子に関し、特に凸条パターンと凹条パターンが繰り返されたサブ波長構造をもつ光学素子の製造方法及び光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学素子として微細なラインアンドスペースパターンからなるサブ波長構造(Sub-Wavelength Structures:SWS)を有するものがある。このような光学素子として例えば偏光解消素子が知られている(例えば特許文献1を参照。)。
…省略…
【0008】
サブ波長構造は、使用する光の波長よりも短い凹凸周期で繰り返して配列された凸条パターンと凹条パターンをもつ周期構造である。使用する光の波長よりも微小な周期の周期構造を有する格子構造は構造性複屈折作用をもつ。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
…省略…
【0012】
本発明は、様々な位相差を有するサブ波長構造をもつ光学素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる光学素子の形成方法は、凸条パターンと凹条パターンが繰り返されたサブ波長構造をもつ光学素子の形成方法であって、エッチング技術によってシリコン層に溝を形成して、シリコン凸条パターン、シリコン凹条パターン、及び隣り合う上記シリコン凸条パターン同士を結合するシリコン支柱パターンを形成するエッチング工程と、上記シリコン層に対して熱酸化処理を施して、上記シリコン凸条パターン、上記シリコン凹条パターン及び上記シリコン支柱パターンから二酸化ケイ素凸条パターン、二酸化ケイ素凹条パターン及び二酸化ケイ素支柱パターンを形成する熱酸化工程と、を含み、上記熱酸化工程での上記熱酸化処理によって上記シリコン凸条パターンの形状に対して歪んだ上記二酸化ケイ素凸条パターンを含む光学素子を形成することを特徴とする。
…省略…
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学素子の形成方法及び本発明の光学素子は、様々な位相差を有するサブ波長構造をもつ光学素子を提供することができる。」

エ 「【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光学素子の形成方法は、熱酸化によってシリコンが二酸化ケイ素になる際の体積膨張を利用して、シリコン凸条パターンの形状に対して二酸化ケイ素凸条パターンの形状を歪ませる。これに伴い、二酸化ケイ素凹条パターンの形状はシリコン凹条パターンの形状に対して歪む。また、シリコン支柱パターンが二酸化ケイ素支柱パターンになる際の体積膨張は二酸化ケイ素凸条パターン及び二酸化ケイ素凹条パターンの上記歪みに寄与する。
…省略…
【0024】
図1は、光学素子の形成方法の一実施例の工程を説明するための概略的なである。図2は、この実施例の工程を説明するための概略的な断面図である。図2は図1のA-A’位置に対応する図である。図1(3)及び図2(3)は本発明の光学素子の一実施例を示している。図1及び図2におけるカッコ数字(1)?(3)は以下に説明される工程(1)?(3)に対応している。なお、本発明の光学素子の形成方法はこの実施例に限定されるものではない。
【0025】
(1)下地基板1上にシリコン層3を成膜する。下地基板1は、光透過率の高い光学材料であることが好ましく、例えば石英基板である。
…省略…
【0026】
(2)シリコン層3にエッチング技術によって溝を形成して、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9を形成する。シリコン支柱パターン9は隣り合うシリコン凸条パターン5,5同士を結合している。シリコン凹条パターン7の底部は下地基板1で構成されている。
…省略…
【0027】
まず、シリコン層3の上にエッチングマスクパターンを形成する。
…省略…
【0028】
エッチングマスクパターンをマスクにしてシリコン層3をドライエッチング技術によってパターニングして、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9を形成する。ここでは下地基板1が露出するまでエッチングした。
…省略…
【0031】
シリコン凸条パターン5とシリコン凹条パターン7は交互に繰り返して配置されている。シリコン凸条パターン5とシリコン凹条パターン7のピッチ(周期)は例えば300nm(ナノメートル)である。シリコン凸条パターン5の幅寸法は例えば80nmである。シリコン凹条パターン7の幅寸法は例えば220nmである。シリコン凹条パターン7の深さ寸法(シリコン凸条パターン5及びシリコン支柱パターン9の高さ寸法)は例えば4μmである。
【0032】
シリコン支柱パターン9は、例えば、隣り合うシリコン凹条パターン7でシリコン支柱パターン9の間隔が1/2だけ周期的にずれた千鳥状に配置されている。シリコン支柱パターン9の長さ寸法は、シリコン凹条パターン7の幅寸法と同じであり、例えば220nmである。シリコン支柱パターン9の幅寸法は例えば80nmである。
【0033】
(3)シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9に対して、例えばウェット法による熱酸化処理を施す。熱酸化処理条件は、シリコン凸条パターン5及びシリコン支柱パターン9が完全に酸化される条件であればよい。例えば、この実施例では、酸化温度1100℃で18時間熱酸化した。
【0034】
この熱酸化処理によって、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9から、二酸化ケイ素凸条パターン11、二酸化ケイ素凹条パターン13及び二酸化ケイ素支柱パターン15が形成される。二酸化ケイ素凸条パターン11の底部は下地基板1で構成されている。本発明の光学素子の形成方法及び本発明の光学素子において、二酸化ケイ素凹条パターンは、内側壁及び底部が二酸化ケイ素で形成されているものの他、内側壁が二酸化ケイ素で形成され、底部が二酸化ケイ素とは異なる材料で形成されているものを含む。
【0035】
二酸化ケイ素凸条パターン11の幅寸法は約160nmである。二酸化ケイ素凸条パターン11は、幅方向において、シリコン凸条パターン5に対して約2倍だけ膨張した。二酸化ケイ素凹条パターン13の幅寸法は約140nmである。二酸化ケイ素凹条パターン13の深さ寸法は約4μmである。二酸化ケイ素支柱パターン15の幅寸法は例えば160nmである。
【0036】
二酸化ケイ素凸条パターン11及び二酸化ケイ素支柱パターン15は、長さ方向において、シリコン凸条パターン5及びシリコン支柱パターン9に対して1%程度だけ膨張した。その膨張によって、二酸化ケイ素凸条パターン11の形状はシリコン凸条パターン5の形状に対して歪む。これに伴い、二酸化ケイ素凹条パターン13の形状はシリコン凹条パターン7の形状に対して歪む。
【0037】
シリコン支柱パターン9が二酸化ケイ素支柱パターン15になる際の体積膨張は二酸化ケイ素凸条パターン11及び二酸化ケイ素凹条パターン13の上記歪みに寄与する。二酸化ケイ素凸条パターン11において、二酸化ケイ素支柱パターン15が形成されている位置と形成されていない位置とで歪み方が異なる。
【0038】
二酸化ケイ素支柱パターン15が形成されていない位置では、二酸化ケイ素凸条パターン11に長さ方向の応力が加わる。二酸化ケイ素支柱パターン15が形成されている位置では、長さ方向の応力に加えて、二酸化ケイ素支柱パターン15の体積膨張によって二酸化ケイ素凸条パターン11に二酸化ケイ素支柱パターン15とは反対側へ応力が加わる。これにより、二酸化ケイ素凹条パターン13において、長さ方向で幅寸法が変化する。
【0039】
この実施例では、二酸化ケイ素支柱パターン15が千鳥状に配置されているので、二酸化ケイ素凹条パターン13の長さ方向の端部(二酸化ケイ素支柱パターン15の近傍部分)の幅寸法は、中央部分の幅寸法に比べて大きくなっている。このように、二酸化ケイ素支柱パターン15の配置を工夫することによって、二酸化ケイ素凹条パターン13における長さ方向での幅寸法の変化を制御できる。
【0040】
二酸化ケイ素凹条パターン13において長さ方向での幅寸法が変化していることにより、二酸化ケイ素凹条パターン13及び二酸化ケイ素凹条パターン13の長さ方向でフィリングファクター(位相差)が変化しているサブ波長構造が得られる。ひいては様々な位相差を有するサブ波長構造が得られる。
【0041】
二酸化ケイ素凸条パターン11と二酸化ケイ素凹条パターン13の凹凸繰返し構造はサブ波長構造を構成する。一般に、サブ波長構造とは使用する光の波長よりも短い凹凸周期で繰り返して配列された凸条パターンと凹条パターンをもつ周期構造のことである。使用する光の波長よりも微小な周期の周期構造を有する格子構造は構造性複屈折作用をもつ。
…省略…
【0059】
図5は、サブ波長構造の凹凸パターンの長さ方向においてフィリングファクターが変化している構造(実施例(A))と変化していない構造(参考例(B))での位相の状態を説明するための(上段)と位相変化のイメージ図(下段)である。
【0060】
参考例(B)のサブ波長構造において、任意の大きさの領域(例えば円領域)内の平均的な位相差は、その領域を凹凸パターンの長さ方向(ライン長さ方向)で移動させても同じである。
これに対し、実施例(A)のサブ波長構造では、任意の大きさの領域を凹凸パターンの長さ方向で移動させると、任意の領域内の平均的な位相差が変化する。
【0061】
このように、サブ波長構造の凹凸パターンの長さ方向においてフィリングファクターが変化していると、任意の大きさの領域内で凹凸パターンの長さ方向での複屈折位相差が連続的に変化することになる。これにより、任意の大きさの領域の中においても位相の多様性がより増すことになる。したがって、本発明の光学素子は、光学素子を透過した光の偏光状態をよりランダムにすることができ、スペックルを低減することができる。
…省略…
【0090】
なお、本発明の光学素子の形成方法によって形成され得る光学素子は、上記実施例に示されたものに限定されない。
【0091】
本発明の光学素子の形成方法によって形成され得る光学素子は、使用する光の波長よりも短い間隔で繰り返して配列された二酸化ケイ素凸条パターンと二酸化ケイ素凹条パターンをもち構造性複屈折を呈するサブ波長構造からなるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0092】
以上、本発明の実施例が説明されたが本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、光学素子の形成方法の上記実施例において、シリコン層3として下地基板1上に成膜されたものが用いられているが、本発明においてシリコン層はこれに限定されない。本発明において、シリコン層は、例えばシリコンウェハであってもよい。この場合、光学素子の形成方法はシリコンウェハに対して所望の深さまでエッチングを行ってシリコン凸条パターン、シリコン凹条パターン及びシリコン支柱パターンを形成する。
【0094】
シリコンウェハとして、例えば、汎用的な面方位(100)のノンドープのシリコンウェハが挙げられる。ただし、シリコンウェハの結晶方位に制限はない。また、シリコンウェハはノンドープのものに限定されるものではなく、後工程において熱酸化した時に損失が発生するレベルでなければ、N型やP型のシリコンウェハを用いても構わない。
【0095】
また、上記実施例では、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9を形成するために下地基板1が露出するまでシリコン層3をエッチングしているが、本発明はこれに限定されない。シリコン層3の厚み方向でシリコン層3の途中までエッチングされて、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9が形成されてもよい。
【0096】
また、光学素子の形成方法の上記実施例において、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9の熱酸化法としてウェット酸化を用いたが、この熱酸化処理はドライ酸化で行なわれてもよい。例えば、下地基板上にシリコン凸条パターンを形成した場合はパターン部分のみの熱酸化で構わないので、熱酸化処理をドライ酸化で行ってもよい。
【符号の説明】
【0097】
3 シリコン層
5 シリコン凸条パターン
7 シリコン凹条パターン
9 シリコン支柱パターン
11 二酸化ケイ素凸条パターン
13 二酸化ケイ素凹条パターン
15 二酸化ケイ素支柱パターン」

オ 図1




カ 図2




キ 図5




(2) 引用発明
ア 請求項4発明
引用文献1の請求項1の記載を引用して記載された請求項4には、次の「光学素子」の発明が記載されている(以下「請求項4発明」という。)。
「 凸条パターンと凹条パターンが繰り返されたサブ波長構造をもつ光学素子であって、
エッチング技術によってシリコン層に溝を形成して、シリコン凸条パターン、シリコン凹条パターン、及び隣り合う前記シリコン凸条パターン同士を結合するシリコン支柱パターンを形成するエッチング工程と、
前記シリコン層に対して熱酸化処理を施して、前記シリコン凸条パターン、前記シリコン凹条パターン及び前記シリコン支柱パターンから二酸化ケイ素凸条パターン、二酸化ケイ素凹条パターン及び二酸化ケイ素支柱パターンを形成する熱酸化工程と、を含む光学素子の形成方法によって形成され、
前記シリコン凸条パターンの形状に対して歪んだ前記二酸化ケイ素凸条パターンを含み、長さ方向で幅寸法が変化している前記二酸化ケイ素凹条パターンを含んでいる、
光学素子。」

イ 引用発明
請求項4発明の「光学素子」の形成方法については、引用文献1の【0024】?【0041】に具体的な記載があり、また、「請求項4発明」の「サブ波長構造」の機能については、引用文献1の【0061】に記載がある。
以上勘案すると、引用文献1には、次の「光学素子」の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 下地基板1上にシリコン層3を成膜し、ここで、下地基板1は、光透過率の高い光学材料であり、
シリコン層3にエッチング技術によって溝を形成して、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9を形成し、ここで、シリコン支柱パターン9は隣り合うシリコン凸条パターン5,5同士を結合し、シリコン凹条パターン7の底部は下地基板1で構成され、
シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9に対して、ウェット法による熱酸化処理を施し、熱酸化処理条件は、シリコン凸条パターン5及びシリコン支柱パターン9が完全に酸化される条件であり、
この熱酸化処理によって、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9から、二酸化ケイ素凸条パターン11、二酸化ケイ素凹条パターン13及び二酸化ケイ素支柱パターン15が形成され、
二酸化ケイ素凸条パターン11の幅寸法は約160nmであり、二酸化ケイ素凹条パターン13の幅寸法は約140nmであり、二酸化ケイ素凹条パターン13の深さ寸法は約4μmであり、
二酸化ケイ素支柱パターン15が千鳥状に配置されているので、二酸化ケイ素凹条パターン13の長さ方向の端部、すなわち二酸化ケイ素支柱パターン15の近傍部分の幅寸法は、中央部分の幅寸法に比べて大きくなっており、
二酸化ケイ素凹条パターン13において長さ方向での幅寸法が変化していることにより、二酸化ケイ素凹条パターン13及び二酸化ケイ素凹条パターン13の長さ方向でフィリングファクターが変化しているサブ波長構造が得られ、
サブ波長構造の凹凸パターンの長さ方向においてフィリングファクターが変化していると、任意の大きさの領域内で凹凸パターンの長さ方向での複屈折位相差が連続的に変化することにより、光学素子を透過した光の偏光状態をよりランダムにすることができる、
光学素子。」

2 対比及び判断
(1) 対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明を対比すると、次のとおりである。
すなわち、引用発明の「光学素子」は、「下地基板1上にシリコン層3を成膜し」、「シリコン層3にエッチング技術によって溝を形成して、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9を形成し」、「シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9に対して、ウェット法による熱酸化処理を施し」て得られたものである。また、「下地基板1は、光透過率の高い光学材料であり」、「二酸化ケイ素凸条パターン11の幅寸法は約160nmであり、二酸化ケイ素凹条パターン13の幅寸法は約140nmであり、二酸化ケイ素凹条パターン13の深さ寸法は約4μmであり」、「二酸化ケイ素凹条パターン13において長さ方向での幅寸法が変化している」。そして、「サブ波長構造の凹凸パターンの長さ方向においてフィリングファクターが変化していると、任意の大きさの領域内で凹凸パターンの長さ方向での複屈折位相差が連続的に変化することにより、光学素子を透過した光の偏光状態をよりランダムにすることができる」。
上記の形成工程からみて、引用発明の「光学素子」は、「下地基板1」と、「下地基板1」の上に設けられた「サブ波長構造」を具備するものである。また、引用発明の「下地基板1」は、「光透過率の高い光学材料」であるから、透光性の基板ということができる。そして、引用発明の「サブ波長構造」の「二酸化ケイ素凹条パターン13の深さ寸法は約4μmであり」、「凹凸パターンの長さ方向での複屈折位相差が連続的に変化する」から、引用発明の「サブ波長構造」は、引用発明において使用する光に対して複屈折作用を有する層状のものといえる。さらに、引用発明の「サブ波長構造」は、「二酸化ケイ素凸条パターン11の幅寸法は約160nm」、「二酸化ケイ素凹条パターン13の幅寸法は約140nm」、「二酸化ケイ素凹条パターン13において長さ方向での幅寸法が変化している」とともに「凹凸パターンの長さ方向での複屈折位相差が連続的に変化する」から、引用発明において使用する光の波長以下(「サブ波長」)のピッチ幅で二酸化ケイ素凸条パターン11と二酸化ケイ素凹条パターン13が交互に繰り返して配置され(当合議体注:引用文献1の【0041】の「サブ波長構造」の定義からも確認できることである。)、一次元のグリッド構造からなり、そのデューティー比が凸条方向に沿って連続的に変化するものである。加えて、引用発明の「光学素子」は、「透過した光の偏光状態をよりランダムにすることができる」ものであるから、偏光解消素子である。
以上勘案すると、引用発明の「下地基板1」、「サブ波長構造」及び「光学素子」は、それぞれ本願発明1の「透光基板」、「複屈折層」及び「偏光解消素子」に相当する。また、引用発明の「サブ波長構造」は、本願発明1の「複屈折層」における、「該透光基板上に設けられる、入射光の波長以下のピッチ幅で配置され、1次元のグリッド構造からなる」及び「前記グリッド構造のデューティー比が前記グリッド構造の軸方向に沿って連続的に変化する」という要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
「 透光基板と、
該透光基板上に設けられる、入射光の波長以下のピッチ幅で配置され、1次元のグリッド構造からなる複屈折層と、を有し、
前記グリッド構造のデューティー比が前記グリッド構造の軸方向に沿って連続的に変化することを特徴とする偏光解消素子。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明1の範囲からは、「二酸化ケイ素凸条パターン、二酸化ケイ素凹条パターン、及び隣り合う前記二酸化ケイ素凸条パターン同士を結合する二酸化ケイ素支柱パターンの3つのパターンがすべて形成されている光学素子」が除かれているのに対して、引用発明は、除かれた光学素子である点。

(3) 判断
引用発明の「光学素子」は、「下地基板1上にシリコン層3を成膜し」、「シリコン層3にエッチング技術によって溝を形成して、シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9を形成し」、「シリコン凸条パターン5、シリコン凹条パターン7及びシリコン支柱パターン9に対して、ウェット法による熱酸化処理を施し」て得られたものである。
上記の形成工程からみて、引用発明の「光学素子」は、「二酸化ケイ素凸条パターン、二酸化ケイ素凹条パターン、及び隣り合う前記二酸化ケイ素凸条パターン同士を結合する二酸化ケイ素支柱パターン」を必須の構成として具備するものである。また、引用文献1の特許請求の範囲の【請求項1】の記載、課題を解決するための手段である【0013】の記載からも明らかなとおり、上記の形成工程は、引用文献1に記載された技術の特徴的部分をなすものである。そうしてみると、引用文献1には、引用発明の「光学素子」を、「二酸化ケイ素凸条パターン、二酸化ケイ素凹条パターン、及び隣り合う前記二酸化ケイ素凸条パターン同士を結合する二酸化ケイ素支柱パターン」を具備しないものとする動機付けが示されていないといえる。
なお、引用文献1の【0091】には、「本発明の光学素子の形成方法によって形成され得る光学素子は、使用する光の波長よりも短い間隔で繰り返して配列された二酸化ケイ素凸条パターンと二酸化ケイ素凹条パターンをもち構造性複屈折を呈するサブ波長構造からなるものであれば、どのような構成であってもよい。」と記載されている。そしてこの記載のみによると、一見、引用発明の「二酸化ケイ素支柱パターン」は必須の構成ではない(機能的にみても、必須ではない。)ような記載となっている。しかしながら、引用発明の「光学素子」を製造する上で「二酸化ケイ素支柱パターン」が必須であることは、上記のとおりである。すなわち、上記【0091】に続く【0092】?【0096】に記載された製造方法の変形例においても、「シリコン支柱パターン9」が必須のものとして記載されており、「二酸化ケイ素支柱パターン」は、必然的にもたらさせるものである。引用文献1には、「二酸化ケイ素支柱パターン」が必然的にもたらされないような製造方法は開示されていない。
さらにすすんで検討すると、本件出願の明細書の【0053】及び【0058】の記載に接した、本件出願時の当業者ならば、これら記載に基づいて、本願発明1の「偏光解消素子」を作ることができるといえる(当合議体注:これらの記載から理解される製造方法では、「二酸化ケイ素支柱パターン」は形成されない。)。しかしながら、引用文献1には、このような「光学素子」の製造方法は記載されておらず、また、このような製造方法が、本件出願前の当業者における技術常識であったということもできない(原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2?引用文献4にも開示されていない。)。かえって、上記のとおり、引用文献1には、これとは異なる工程を特徴とする「光学素子」の製造方法が記載されているから、引用発明を容易推考の出発点として、本願発明1の「偏光解消素子」に到らないことは明らかである。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

(4) 請求項2?請求項12について
請求項2?請求項9に係る発明は、本願発明1の「偏光解消素子」に対して、さらに他の発明特定事項を付加してなる「偏光解消素子」の発明である。また、請求項10?請求項12に係る発明は、それぞれ、これら「偏光解消素子」の製造方法の発明、これら「偏光解消素子」を搭載した「光学機器」の発明、これら「偏光解消素子」を含む「液晶表示装置」の発明である。
そうしてみると、請求項2?請求項12に係る発明も、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

第3 拒絶の理由について
1 原査定の拒絶の理由
前記「第2」で述べたとおりであるから、本件出願の請求項1?請求項12に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。そして、この点は、原査定の拒絶の理由で引用された他の引用文献を考慮しても代わらない。
したがって、原査定を維持することはできない。

2 当合議体の拒絶の理由
当合議体が通知した拒絶の理由は、令和3年3月29日にした手続補正及び同日付の意見書による釈明により解消した。

第4 むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1?請求項12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるということができない。
したがって、原査定の拒絶の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-30 
出願番号 特願2015-145194(P2015-145194)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 536- WY (G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 早川 貴之
河原 正
発明の名称 偏光解消素子及びその製造方法、並びにそれを用いた光学機器及び液晶表示装置  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 杉村 憲司  
代理人 柿沼 公二  
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