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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1376449
審判番号 不服2020-13585  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-29 
確定日 2021-08-17 
事件の表示 特願2019-546967「鏡像顕微結像装置、顕微操作針の姿勢校正システム及び姿勢校正方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日国際公開、WO2019/042198、令和 1年12月12日国内公表、特表2019-536113、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)8月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年9月2日、中国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年2月18日付け:拒絶理由通知書
令和2年5月 8日 :意見書の提出
令和2年6月10日付け:拒絶査定
令和2年9月29日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月10日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1、3?5、7?9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1?9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1、2に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2007-155448号公報
2.独国特許発明第4008072号明細書

第3 本願発明
本願請求項1?11に係る発明(以下「本願発明1」などという。)は、令和2年9月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?11は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
鏡像顕微結像装置であって、
顕微鏡載置台に固定して取り付けられる動作実行機構と、
一端が前記動作実行機構に接続される鏡像生成器ホルダーと、
鏡面が前記顕微鏡載置台の水平面と45°の夾角をなすとともに、コロナル面と45°の夾角をなす平面鏡を有し、前記鏡像生成器ホルダーの他端に取り付けられる鏡像生成器と、を備え、
前記動作実行機構が、スライダーと前記顕微鏡載置台の矢状面に平行で前記鏡像生成器ホルダーに対して垂直なリニアガイドとを備えた変位構造を有して、手動方式でまたは駆動器による自動方式で前記鏡像生成器ホルダーを初期位置から鏡像を形成するプリセット位置まで移動するように設けられていることを特徴とする鏡像顕微結像装置。
【請求項2】
前記鏡像生成器の平面鏡領域が、矩形であることを特徴とする請求項1に記載の鏡像顕微結像装置。
【請求項3】
前記鏡像生成器ホルダーが、前記鏡像生成器と動作実行機構とを接続する剛性の物理構成であることを特徴とする請求項1に記載の鏡像顕微結像装置。
【請求項4】
鏡像顕微結像装置であって、
顕微鏡載置台に固定して取り付けられる動作実行機構と、
一端が前記動作実行機構に接続される鏡像生成器ホルダーと、
鏡面が前記顕微鏡載置台の水平面と45°の夾角をなすとともに、コロナル面と45°の夾角をなす平面鏡を有し、前記鏡像生成器ホルダーの他端に取り付けられる鏡像生成器と、を備え、
前記動作実行機構が、前記鏡像生成器の一本のアームに接続されて前記鏡像生成器ホルダーとして構成される軸関節を備えた変位構造を有して、手動方式でまたは駆動器による自動方式で前記鏡像生成器ホルダーを初期位置の初期角度から鏡像を形成するプリセット位置のプリセット角度まで旋回して移動するように設けられていることを特徴とする鏡像顕微結像装置。
【請求項5】
前記動作実行機構が、前記鏡像生成器ホルダーを制御して前記プリセット位置から前記初期位置に戻すように設けられた復帰機構を有していることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の鏡像顕微結像装置。
【請求項6】
前記平面鏡の鏡面側に配置され、水平視の光線強度を高めるために用いられる光源を有していることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の鏡像顕微結像装置。
【請求項7】
前記動作実行機構が、Y軸方向に沿って前記顕微鏡載置台に固定して取り付けられ、
前記鏡像生成器ホルダーが、X軸方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1または請求項4に記載の鏡像顕微結像装置。
【請求項8】
顕微操作針の姿勢校正システムであって、
前記姿勢校正システムは、
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の鏡像顕微結像装置と、
映像画像収集器と手動または自動合焦ユニットとを有する倒立顕微鏡システムと、
持針器、前記持針器のアンカ器、および前記持針器を駆動して前後/左右/上下に移動させる駆動器を有する顕微操作システムと、
前記持針器に機械結合される持針器の回転駆動器と、
前記持針器のアンカ器に機械結合されるコロナル面の角度駆動器と、
前記持針器のアンカ器に機械結合される矢状面の角度駆動器と、
処理ソフトウェアが集積される中央処理ユニットと、を備え、
前記処理ソフトウェアが、前記中央処理ユニットに前記鏡像生成器ホルダーの位置決めを自動で監視および制御することにより、前記自動合焦ユニットを制御して自動合焦させるとともに前記映像画像収集器を制御して画像収集および分析を行わせて、前記持針器の回転駆動器、前記コロナル面の角度駆動器、前記矢状面の角度駆動器、および前記持針器を駆動して前後/左右/上下に移動させる駆動器の稼働を制御させることを特徴とする顕微操作針の姿勢校正システム。
【請求項9】
請求項8に記載の姿勢校正システムによる姿勢校正方法であって、
前記姿勢校正方法は、
手動で、左、右両本の顕微操作針をそれぞれ持針器に取り付けるS1と、
手動で、前記持針器を持針器のアンカ器にそれぞれ固定するS2と、
各顕微操作針に対して、手動で、前記顕微操作針の機能部を接眼レンズの視野中央領域に調整するS3と
自動校正モードを起動させるS4と、
自動合焦ユニットと、前記持針器を駆動して前後/左右/上下に移動させる駆動器とを利用して、水平面における前記顕微操作針の機能部映像画像を生成するS5と、
映像画像収集器により、前記水平面における映像画像を収集するS6と、
処理ソフトウェアを実行することにより、前記水平面の映像画像における前記顕微操作針の機能部の前記水平面への投影とコロナル面との角度αを分析するとともに、前記持針器の回転駆動器と矢状面の角度駆動器を起動させ、αがα=0になるように校正することで、前記水平面における前記顕微操作針の機能部を校正するS7と、
前記鏡像生成器ホルダーをプリセット位置に位置決めして鏡像を形成するS8と、
前記自動合焦ユニットと、前記持針器を駆動して前後/左右/上下に移動させる駆動器とを利用して、前記コロナル面における前記顕微操作針の機能部の映像画像を生成するS9と、
前記映像画像収集器により、前記コロナル面における前記映像画像を収集するS10と、
処理ソフトウェアを実行することにより、前記コロナル面の前記映像画像における前記顕微操作針の機能部の前記コロナル面への投影と水平面との角度α’を分析するとともに、コロナル面の角度駆動器を起動させ、α’がα’=0になるように校正することで、前記コロナル面における前記顕微操作針の機能部を校正するS11と、
前記鏡像生成器を初期位置に復帰させ、前記顕微操作システムを制御して、ICSI(顕微授精)操作の準備が整った状態にするS12と、を含むことを特徴とする姿勢校正方法。
【請求項10】
ステップS4の前記自動校正モードにおいて、左の前記顕微操作針の姿勢が、右の前記顕微操作針の姿勢が自動で校正される前または後に、自動で校正され、または、左の前記顕微操作針の姿勢が、右の前記顕微操作針の姿勢と一緒に、自動で校正されることを特徴とする請求項9に記載の姿勢校正方法。
【請求項11】
ステップS8において、前記プリセット位置と前記顕微操作針の機能部との距離は、0.5mmであることを特徴とする請求項9に記載の姿勢校正方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の記載があり、以下の発明が記載されていると認められる(下線は、当審が付与した。以下同じ。)。

(1)「【請求項1】
対物レンズ及び移動回転可能なステージを有する任意の光学観察装置に搭載され、
複数の反射ミラーが、前記ステージに載置される薄板状基板の端面及び該端面に掛かる表裏面まで回り込む前記光学観察装置の観察視野範囲を有し、且つ前記端面から各反射ミラーの反射面を経て前記対物レンズに至るまでの各光軸の距離が等しくなるように、前記対物レンズと前記基板の端面の近傍に設けられるミラー保持部を具備し、
前記基板の端面及び該端面に掛かる表裏面を観察することを特徴とする端面検査装置。
・・・
【請求項5】
前記端面検査装置において、
前記反射ミラーは、反射面が平面若しくは曲面で形成されることを特徴とする請求項1に記載の端面検査装置。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板やガラス基板等の処理基板の外周端面及びこの外周端面に繋がる基板の表裏面エッジ領域を検査する端面検査装置に関する。」

(3)「【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの処理基板としては、シリコンウエハやガラスウエハ等が用いられている。通常、これらの基板は、製造工程において顕微鏡等を用いて、基板表面を観察して、欠けやクラックの有無及び、異物の付着等に対して検査が行われている。」

(4)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
・・・基板端面の検査のためのみに専用の装置を備えると、設備購入だけでなく、その設置場所を必要とし、その結果、高製造コスト化を助長することとなる。特に、汎用性メモリのように市場価格が低く抑えられている製品は、製造コストの低減が不可欠な課題となる。しかし、製品の歩留まりの改善や不良率の低減を図るには、基板製造工程における基板検査は不可欠な工程である。特に製造業者の共通した課題は、基板端面の欠陥を回路素子形成前に発見すること、工場フロア内で検査装置が占有するスペースを最小化させること、短時間で検査が終了することである。
【0007】
そこで本発明は、低価格で簡易な構成であり、光学観察装置に搭載して光学観察装置の機能を用いて基板端面の検査を実施する利便性も備える端面検査装置を提供することを目的とする。」

(5)「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の端面検査装置に係る第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態の端面検査装置を搭載する光学観察装置の一例となる実像顕微鏡の概念的な構成例を示す図である。図2(a)は、第1の実施形態となる光学観察装置に搭載された状態の端面検査装置の概略的な構成を示し、図2(b)は、その光学観察装置の対物レンズの光軸方向から見た端面検査装置の上面外観構成を示す図である。
【0012】
本実施形態の端面検査装置1は、例えば図1に示すような顕微鏡11に搭載される。この顕微鏡11は、少なくとも、対物レンズ12を含む観察光学系、検査対象物となる薄板形状の例えば、シリコンウエハ等の検査用基板7を載置するステージ13と、ステージ13を3次元に移動及び回転可能なステージ駆動部14と、基板7を照明するケーラー照明系等の任意の光源15a,15bと、基板7を光像として観察する接眼部16と、その光像を撮像する撮像部17と、撮像された画像を表示するモニタ18と、端面検査装置1及び顕微鏡全体を制御する制御部19と、ユーザによる指示やデータ入力を行うためのタッチパネルやキーボード等からなる入力部20とを備えている。また、制御部19は、少なくともステージ駆動部14を制御する位置制御部21と、撮像部17を制御する撮像制御部22と、撮像部17で撮像された画像データに対して種々の画像処理を行う画像処理部(例えば、画像キャプチャ装置)23と、駆動用プログラムやアプリケーションソフトウエアや画像データ等を記憶する記憶部24と、制御に伴う演算処理等を行うCPU等からなる処理部25とを備えている。
【0013】
本実施形態の端面検査装置は、図2(a)に示すように、基板端面7aの光像を対物レンズに導く少なくとも1つ以上、例えば3つの反射ミラー2,3及び4からなる反射ミラー群を所定の角度で保持するミラー保持部5と、ミラー保持部5を対物レンズ12の光軸方向と垂直な方向(ステージ13の載置面と水平な方向)に退避させるミラー退避機構10とで構成される。ミラー退避機構10は、手動による駆動する構成でも良いが、エアーシリンダ、電磁石又はモータ等を用いた電気的又は機械的に駆動制御可能な構成としてもよい。また、別途、図示しないミラー昇降機構を設けた構成であれば、ミラー保持部5を光軸方向に移動させて、他の構成部位が干渉しない位置に退避させてもよい。
・・・
【0015】
このミラー保持部5は、各反射ミラー2,3及び4が基板端面7aからそれぞれの反射面を経て対物レンズ12に至るまでの光軸の距離が等しく、且つ基板端面7aの中心から対物レンズまで利高さが等しくなるように配置して保持している。このように保持することにより、基板端面7aを観察する角度を変更する際に、対物レンズ12と基板端面7a間の駆動距離をミラー毎に調整する必要が無く、対物レンズ12に対してミラー保持部5及びステージ13を一体的に基板面と水平な方向へ相対的に移動させるだけでフォーカス調整が必要なく観察角度を変更することができる。またミラー保持部5は、固定ネジ10a,10bを用いて移動用レール32上のベース部に固定されている。
【0016】
本実施形態の端面検査装置の反射ミラー群により反射されて対物レンズ12に入射されるので観察者は、基板水平面に対して90度垂直な基板端面7a(エッジ面)や面取り部等が各反射ミラー2,3及び4の角度に応じた3つの方向から観察することができる。反射ミラー群において、反射ミラー4は基板端面7aの上エッジ近傍から基板表面(水平面)に掛かる領域を観察し、反射ミラー3は基板端面7aを正面から見た領域を観察し、反射ミラー2は基板端面7aの下エッジ近傍から基板裏面(水平面)に掛かる領域を観察する。
【0017】
・・・
また、搭載される観察装置が表面観察(ミクロ検査)を行うレボルバ等の対物レンズ交換式の顕微鏡であった場合には、ミラー退避機構10によりミラー保持部5(反射ミラー群)を対物レンズ12に干渉しない位置に退避させるか、又は図示しないミラー昇降機構を駆動してミラー保持部5を基板端面7 aより下方に移動させる。この退避・移動により、対物レンズ12と反射ミラー群の干渉を防ぐことができるため、種々の作動距離(WD)の対物レンズを使用することができる。そのため、対物レンズ12の作動距離(WD)によらない自由な表面観察領域を実現することができる。
【0018】
このように構成された本実施形態の端面検査装置による検査について説明する。
まず、光学観察装置となる顕微鏡のステージ13に検査対象物となる基板7を載置する。光源の電源をオンして対物レンズ12を通じて、照明光を観察領域、即ち基板端面7aに照射する。この照明光は、顕微鏡に設けられた光源から投光管(図示せず)を通じて対物レンズに入射して、基板端面7aに照射される。その光源の種類は、LED、ハロゲンランプ、水銀ランプ又は、メタルハライドランプ等、特に制限は無い。対物レンズ12においても、作動距離(WD)が元々広ければ倍率の制限は無い。
【0019】
例えば、対物レンズ12の光軸に対して基板水平面方向に対して、例えば45度傾けて配置されている反射ミラー3に入射する。反射ミラー3はミラー面の反射率が十分高ければ、その種類に制限は無く、45度プリズムであっても使用することができる。勿論、この角度45度は限定されたものではなく、設計により適宜変更することが可能である。
【0020】
反射ミラー3で反射した照明光は基板水平面方向に照射され、その一部は基板端面7aに照射する。この基板端面7aで反射した光は、再度、反射ミラー3に戻り、光軸に沿って対物レンズ12に入射する。反射した光は、対物レンズ12を通じて顕微鏡内部の観察光学系を経て接眼レンズに入射する。又は、撮像部17(CCDカメラ)にて撮像され、モニタ18上に表示される。いずれの経路であってもそれぞれ実像として観察することができる。
・・・
【0023】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、複数の反射ミラーと退避又は昇降移動可能な保持部から成る簡易な構成であり、光学観察装置となる顕微鏡に搭載することにより、基板端面の表面から裏面に至る全範囲に亘って欠陥を実像化された画像に対して、目視検査により簡単に検査判断を行うことができる。また、複数の反射ミラーを基板端面の表面から裏面に至る全範囲に亘ってカバーするように保持固定して観察するため、反射ミラーの角度を可変する機構が不要であり、低廉化することが可能である。
【0024】
さらに、本実施形態の端面検査装置は、任意の顕微鏡に搭載しているため、その顕微鏡が有する機能を利用することができるため、専用の検査装置と同等に基板端面を観察し、且つ欠陥等を容易に見出すことができる。特に、搭載した顕微鏡の観察機能が全て利用することが可能であり、明視野、暗視野、微分観察等、又は絞りの可変によるコントラストの調整、照明光源の種類の変更など、広い適用範囲を有している。また、本実施形態による基板端面からの反射光は、その端面角度に応じて、拡散しているため、各反射ミラーを観察したい角度に相応する位置と角度に変更可能とすることによりあらゆる端面位置の画像を得ることができる。」

(6)図1及び図2は以下のとおりである。




(7)図1及び図2から、ミラー保持部5は鉛直方向(Z方向)に沿って延在し、水平方向(X方向)に沿って移動可能であり、ミラー保持部5の下端にはミラー退避機構10が接続され、ミラー保持部5の上端にはミラー2、3及び4が取り付けられていることが見て取れる。

(8)上記(1)?(7)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明の各構成の根拠箇所を参考として当審で付した。

引用発明
「端面検査装置1は、顕微鏡11に搭載され、顕微鏡11は、少なくとも、対物レンズ12を含む観察光学系、検査対象物となる薄板形状の例えば、シリコンウエハ等の検査用基板7を載置するステージ13とを備え(【0012】)、
端面検査装置1は、基板端面7aの光像を対物レンズに導く3つの反射ミラー2、3及び4からなる反射ミラー群を所定の角度で保持するミラー保持部5と、ミラー保持部5を対物レンズ12の光軸方向と垂直な方向(ステージ13の載置面と水平な方向)に退避させるミラー退避機構10とで構成され、ミラー退避機構10は、手動による駆動する構成でも良いが、エアーシリンダ、電磁石又はモータ等を用いた電気的又は機械的に駆動制御可能な構成としてもよく(【0013】)、
反射ミラーは、反射面が平面若しくは曲面で形成され(【請求項5】)、
ミラー保持部5は、固定ネジ10a,10bを用いて移動用レール32上のベース部に固定されており(【0015】)、
ミラー保持部5は鉛直方向(Z方向)に沿って延在し、水平方向(X方向)に沿って移動可能であり、ミラー保持部5の下端にはミラー退避機構10が接続され、ミラー保持部5の上端にはミラー2、3及び4が取り付けられており(上記(7))、
観察装置が表面観察(ミクロ検査)を行うレボルバ等の対物レンズ交換式の顕微鏡であった場合には、ミラー退避機構10によりミラー保持部5(反射ミラー群)を対物レンズ12に干渉しない位置に退避させ、この退避により、対物レンズ12と反射ミラー群の干渉を防ぐことができ(【0017】)、
ステージ13に検査対象物となる基板7を載置し、光源の電源をオンして対物レンズ12を通じて、照明光を観察領域、即ち基板端面7aに照射するとき、対物レンズ12の光軸に対して基板水平面方向に対して、例えば45度傾けて配置されている反射ミラー3に入射し、反射ミラー3で反射した照明光は基板水平面方向に照射され、その一部は基板端面7aに照射され、この基板端面7aで反射した光は、再度、反射ミラー3に戻り、光軸に沿って対物レンズ12に入射し、対物レンズ12を通じて顕微鏡内部の観察光学系を経て接眼レンズに入射する(【0018】?【0020】)、
端面検査装置1。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「Die Erfindung betrifft eine Vorrichtung zur Betrachtung eines fest angeordneten Objekts, wahlweise aus verschiedenen Richtungen mit einem Mikroskop, insbesondere einem Stereomikroskop, mit einem Tisch und mit zwei in Lichtrichtung vor dem Mikroskopobjektiv angeordneten Spiegeln, wobei der erste Spiegel unterhalb des Objektivs schwenkbar und der zweite Spiegel fest angeordnet ist.」(第1欄第6行?第13行)
(当審訳:本発明は、ステージを備えた顕微鏡、特に実体顕微鏡を用いて、固定された対象物を任意に異なる方向から見るための装置であって、顕微鏡の対物レンズの前に光の方向に配置された2つのミラーを備え、第1のミラーは対物レンズの下で揺動可能であり、第2のミラーは固定されている装置に関するものである。)

(2)「Die mit 16 bezeichnete und auf der Plattform 4 angeordnete Probe wird durch die insgesamt mit 17 bezeichnete Objekthalterung in ihrer Lage fixiert. Die Probe 16 ist hierbei durch die Objekthalterung durch Federkraft gehalten. oertlich gesehen hinter der Probe befindet sich in einer Halterung 18 der Spiegel 3. Der Spiegel 3 ist hierbei in der Halterung 18 um die horizontale Achse 19 verdrehbar gelagert; die mit 18 bezeichnete Halterung selbst ist um eine vertikale Achse relativ zum Tisch 1 verschwenkbar ausgebildet.」(第2欄第52行?第61行)
(当審訳:プラットフォーム4上のサンプル16は、オブジェクトホルダー17によって位置が固定されている。サンプル16は、ばねの力でオブジェクトホルダに保持されている。サンプルの背後には、ホルダ18の中にミラー3が設けられている。ミラー3は、水平軸19を中心に回転可能なようにホルダ18に取り付けられているが、ホルダ18は、テーブル1に対して垂直軸を中心に回転可能なように設計されている。)

(3)図1及び図2は以下のとおりである。





第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「ステージ13」、「ミラー保持部5」、「反射ミラー3」は、それぞれ本願発明1の「顕微鏡載置台」、「鏡像生成器ホルダー」、「鏡像生成器」に相当する。

イ 引用発明の「ミラー退避機構10」は、「手動による駆動する構成でも良いが、エアーシリンダ、電磁石又はモータ等を用いた電気的又は機械的に駆動制御可能な構成としてもよく」、「ミラー保持部5を対物レンズ12の光軸方向と垂直な方向(ステージ13の載置面と水平な方向)に退避させる」ものであり、「ミラー退避機構10によりミラー保持部5(反射ミラー群)を対物レンズ12に干渉しない位置に退避させ、この退避により、対物レンズ12と反射ミラー群の干渉を防ぐことができ」る。
また、引用発明において「ステージ13に検査対象物となる基板7を載置し、光源の電源をオンして対物レンズ12を通じて、照明光を観察領域、即ち基板端面7aに照射するとき」には、「反射ミラー3で反射した照明光は基板水平面方向に照射され、その一部は基板端面7aに照射し、この基板端面7aで反射した光は、再度、反射ミラー3に戻り、光軸に沿って対物レンズ12に入射」するのであるから、「ミラー保持部5」は、「反射ミラー3」による鏡像が形成される位置にある。
そうすると、引用発明における「ミラー退避機構10」は、「ミラー保持部5」を「対物レンズ12に干渉しない位置」から「反射ミラー3」による鏡像が形成される位置まで移動するように設けられているといえるから、本願発明1の「動作実行機構」に相当し、引用発明は、本願発明1の「手動方式でまたは駆動器による自動方式で前記鏡像生成器ホルダーを初期位置から鏡像を形成するプリセット位置まで移動するように設けられている」との構成を有する。

ウ 引用発明において「ミラー保持部5の下端にはミラー退避機構10が接続され」るから、本願発明1の「鏡像生成器ホルダー」と引用発明の「ミラー保持部5」は、「一端が前記動作実行機構に接続される」点で共通する。

エ 引用発明において「ミラー保持部5の上端にはミラー2、3及び4が取り付けられ」るから、本願発明1の「鏡像生成器」と引用発明の「反射ミラー3」は、「前記鏡像生成器ホルダーの他端に取り付けられる」点で共通する。

オ 引用発明の「反射ミラー3」は、「反射面が平面」であり、「対物レンズ12の光軸に対して基板水平面方向に対して」、「45度傾けて配置され」、「反射ミラー3で反射した照明光は基板水平面方向に照射され、その一部は基板端面7aに照射し、この基板端面7aで反射した光は、再度、反射ミラー3に戻り、光軸に沿って対物レンズ12に入射」するものであり、「反射ミラー3」の鏡面は、上記「反射ミラー3で反射した照明光」の進む方向に垂直な面(=コロナル面)との間で45°の角度をなすといえるから、本願発明1の「鏡像生成器」と引用発明の「反射ミラー3」は、「鏡面が前記顕微鏡載置台の水平面と45°の夾角をなすとともに、コロナル面と45°の夾角をなす平面鏡を有」する点で共通する。

カ 引用発明の「ミラー退避機構10」は、「ミラー保持部5を対物レンズ12の光軸方向と垂直な方向(ステージ13の載置面と水平な方向)に退避させる」ものであり、「ミラー保持部5の下端にはミラー退避機構10が接続され」、「ミラー保持部5は、固定ネジ10a,10bを用いて移動用レール32上のベース部に固定され」ることを踏まえると、引用発明の「ベース部」は、「ミラー退避機構10」をなす部分であって、その上部において「ミラー保持部5」を固定(接続)するとともに、その下部において「移動用レール32」をガイドとしてスライドするものと解されるから、引用発明の「ミラー退避機構10」は、「ベース部」が「移動用レール32」に沿ってスライドする変位構造を有しているといえる。
また、引用発明の「ミラー保持部5は鉛直方向(Z方向)に沿って延在し、水平方向(X方向)に沿って移動可能」であるから、上記「移動用レール32」は、「ミラー保持部5」の移動方向と一致するように水平方向(X方向)に設けられたものであって、「ステージ13」の矢状面(XZ平面)に平行であるとともに、「ミラー保持部5」(鉛直方向(Z方向)に沿って延在する。)に対して垂直になるように設けられたものといえる。
そうすると、引用発明の「ベース部」、「移動用レール32」は、それぞれ本願発明1の「スライダー」、「リニアガイド」に相当し、引用発明の「ミラー退避機構10」は、本願発明1の「スライダーと前記顕微鏡載置台の矢状面に平行で前記鏡像生成器ホルダーに対して垂直なリニアガイドとを備えた変位構造を有し」との構成を有する。

キ 引用発明の「端面検査装置1」は、「顕微鏡11に搭載され」るものであって、「基板端面7aで反射した光」は「反射ミラー3」で反射し、「光軸に沿って対物レンズ12に入射し、対物レンズ12を通じて顕微鏡内部の観察光学系を経て接眼レンズに入射」するものであるから、本願発明1の「鏡像顕微結像装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明の一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「鏡像顕微結像装置であって、
動作実行機構と、
一端が前記動作実行機構に接続される鏡像生成器ホルダーと、
鏡面が前記顕微鏡載置台の水平面と45°の夾角をなすとともに、コロナル面と45°の夾角をなす平面鏡を有し、前記鏡像生成器ホルダーの他端に取り付けられる鏡像生成器と、を備え、
前記動作実行機構が、スライダーと前記顕微鏡載置台の矢状面に平行で前記鏡像生成器ホルダーに対して垂直なリニアガイドとを備えた変位構造を有して、手動方式でまたは駆動器による自動方式で前記鏡像生成器ホルダーを初期位置から鏡像を形成するプリセット位置まで移動するように設けられていることを特徴とする鏡像顕微結像装置。」

<相違点>
「動作実行機構」につき、本願発明1では、「顕微鏡載置台に固定して取り付けられる」のに対し、引用発明では、「顕微鏡11に搭載され」るものの、「ステージ13」に固定して取り付けられてはいない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用文献1、2のいずれにも記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
また、引用発明の「ステージ13」上には「基板7」が載置され、「反射ミラー3で反射した照明光は基板水平面方向に照射され、その一部は基板端面7aに照射」されるのであるから、「反射ミラー3」及びそれを支持する「ミラー保持部5」は、「基板端面7a」及びそれを支持する「ステージ13」に対して、水平方向に離れた位置関係を有する。したがって、「ミラー保持部5」を支持する「ミラー退避機構10」も、「ステージ13」に対して水平方向に離れた位置にあることが前提となっており、「ミラー退避機構10」を「ステージ13」に固定して取り付ける構成を想定することはできないし、そのような構成に変更する動機があるともいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明ではないし、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

ここで、引用文献1に記載された「ミラー退避機構10」を載置する面が、本願発明1の「顕微鏡載置台」に相当するといえれば、上記相違点は相違点とはいえないこととなる。そこで、このように解することができるかどうかにつき検討すると、「顕微鏡載置台」との用語は通常、顕微鏡における観察対象を載置するための台を意味し、本願の明細書の段落【0004】?【0010】の記載及び図1等を参酌しても、顕微鏡における顕微操作対象を載置するための台を指す用語として記載されていると解するほかない。そうすると、上記(1)に示したように、引用発明の「ステージ13」が本願発明1の「顕微鏡載置台」に相当するところ、引用文献1に記載された「ミラー退避機構10」を載置する面は「ステージ13」を構成する面ではないから、本願発明1の「顕微鏡載置台」に当たるとはいえない。
よって、上記相違点に係る「顕微鏡載置台に固定して取り付けられる」との「動作実行機構」の構成が、引用文献1に記載されているとは認められない。

2 本願発明2?11について
本願発明2?11は、上記1の相違点に係る本願発明1の「顕微鏡載置台に固定して取り付けられる動作実行機構」との発明特定事項を含むものであるから、本願発明1と同じ理由(上記1参照)により、引用発明ではないし、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?11は、引用発明ではないし、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-26 
出願番号 特願2019-546967(P2019-546967)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 113- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡田 弘  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 瀬川 勝久
清水 督史
発明の名称 鏡像顕微結像装置、顕微操作針の姿勢校正システム及び姿勢校正方法  
代理人 特許業務法人 東和国際特許事務所  

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