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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1376588
審判番号 不服2020-16557  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-01 
確定日 2021-08-26 
事件の表示 特願2015-203184「被介護者の救護支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 76238、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月14日の出願であって、令和元年12月4日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年2月4日に手続補正がされ、同年8月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和3年1月27日に前置報告がされたものである。

第2 原査定および前置報告の概要
1.原査定(令和2年8月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1,2に係る発明は、以下の引用文献1,2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2011-54009号公報
引用文献2:登録実用新案第3199862号公報

2.前置報告(令和3年1月27日)の概要は次のとおりである。

(1)本願請求項1,2に係る発明は、以下の引用文献1,2並びに周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2011-54009号公報
引用文献2:登録実用新案第3199862号公報
引用文献3:特開2010-033306号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:米国特許出願公開第2015/0064671号明細書(周知技術を示す文献)
引用文献5:特許第4412016号公報(周知技術を示す文献)

(2)本願請求項1,2に係る発明は、以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「被介護者の現況に応じてシステム上のステータスを、伝言板サイトの画面を信号機を模した3色で状況に対応して表示されるように構成」する点が記載されているが、「現況」と「状況」との対応関係が不明であり、また、被介護者の「現況」をどのようにしてシステムが特定できるのか不明である。

第3 本件補正について
本件補正は、補正前の請求項1に、「被介護者の現況に応じてシステム上のステータスを、伝言板サイトの画面を信号機を模した3色で状況に対応して表示されるように構成し、」を追加する補正であって、当該事項は、当初明細書の段落【0022】に記載されているから、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項及び同第4項に規定する要件に違反するものではない。
そして、本件補正は、「伝言板サイトの画面」を特定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「第4 本願発明」から「第7 前置報告の特許法第36条第6項第2号の理由について」までに示すように、補正後の請求項1,2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1,2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、令和2年12月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
インターネット上の伝言板サイトを利用する被介護者の救護支援システムにおいて、
本システムのシステム管理者と、被介護者を介護する立場の家族・介護者(保護者)である本システムのシステム利用者と、対象となる被介護者を発見した発見者間で情報交換を共有して行う三者間での被介護者の救護支援システムであって、
被介護者の現況に応じてシステム上のステータスを、伝言板サイトの画面を信号機を模した3色で状況に対応して表示されるように構成し、
システム管理者が使用する管理コンピュータは、
被介護者の人物特定に必要な最低限の基本情報を入力するための基本情報入力手段と、この基本情報を個別QRコード(登録商標)とリンクさせて識別番号付きのQRコードを印刷したシールを発行する識別番号付きQRコードのシール発行手段と、発見者により被介護者の個別QRコードが撮影された際に、発見者コンピュータに伝言板サイトのトップ画面を自動通信するトップ画面開示手段と、
発見者により被介護者の個別識別番号と現在状況の入力がなされた際に、システム利用者に発見者からの入力情報をメールで自動発信する発見メール自動発信手段と
発見メール自動発信手段でシステム利用者にメールが送信された際に、発見者に対処方法を連絡するための対処方法連絡手段とを、
含み構成されることを特徴とする被介護者の救護支援システム。
【請求項2】
被介護者がシステム利用者以外の関係者に引き取られた際に、当該引取り機関の連絡先を入力する引取り確認入力手段と、
引取り確認入力手段で引取り機関が判明した際に、引取り確認入力手段で得られた情報をシステム利用者にメールで自動発信する引取り確認メール自動発信手段とを、
さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の被介護者の救護支援システム。」

第5 引用文献、引用発明
1.引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。引用文献2-5についても同様。)

「【0001】
本発明は、ペット、老人、子どもなどが迷子になる場合に備えて迷子札を管理する迷子札システムに関するものである。」

「【0018】
図1は、本発明の迷子札システムのハードウェア構成を示すブロック図である。コンピュータネットワーク100に接続されたサーバ10、端末101,102,103,104、携帯電話機201,202、パソコン301,302及び迷子札20が主な構成要素である。
【0019】
コンピュータネットワーク100は、いわゆるインターネットとすることができる。インターネット以外に、地域的なコンピュータネットワークとすることもできる。また、多くの人がペットを連れて集まるような大きなイベント会場に一時的に設けられたコンピュータネットワークでもかまわない。
【0020】
サーバ10は、必要なソフトウェアをインストールしたサーバコンピュータであり、迷子札発行装置21、デイリーレポート記録装置22、迷子発見報告装置23、迷子預かり認証装置24、迷子返還認証装置25を備えている。ここで、装置としたのは、サーバコンピュータ10のCPU(中央処理装置)が必要に応じて記憶装置からコンピュータプログラムを読み込んで実行する状態を捉えて装置と表現したものである。
【0021】
サーバ10には、各クリニックごとにセキュリティ管理されたDB(データベース)を設ける。飼い主DB41、デイリーレポートDB42、迷子情報DB43、発見者DB44、診療記録DB45、提携クリニックDB46がそれである。他のクリニックのDBを参照するには、当該クリニックのセキュリティ担当者の承認を必要とし、迷子の引渡しの認証に必要な場合など当該目的に関連する最小限のデータだけが参照を許可される。
【0022】
端末101,102,103,104は、この迷子札システムを利用する複数のクリニック(動物病院)のそれぞれに設置されたコンピュータを示している。この迷子札システムを一つのクリニックで運営することも可能である。しかし、そのクリニックを利用する飼い主の行動範囲がある程度の範囲に広がりをもつと考えられるし、迷子となるペットの行動範囲もある程度の広さを持つと考えられる。とすると、その広がりの中には、他の動物病院や、ペットショップ、ペット用品ショップ、ブリーダー業者、ペットホテル経営者、牧場、農場などペットに関連する業者や、警察、消防署、保健所などの行政機関も存在すると考えられる。迷子になったペットが早く安全に飼い主のもとに返還されるためには、地域の諸機関が協力することが望ましい。そこで、図1では、クリニックA、クリニックB、クリニックC、クリニックDの四つのクリニックが協力して、この迷子札システムを利用する場合について描いてある。ペットショップ、ペット用品ショップ、ブリーダー業者、ペットホテル経営者、牧場、農場、警察、消防署、保健所などの他の主体に参加を促す場合には、この迷子札システムへのアクセス権限をクリニックのそれに比べて狭く制限するなどの差をつけることが望ましい。例えば、迷子情報DB43は、広くクリニック以外の協力者に対しても公開する。それに対し、他のDBの情報は、担当するクリニック(かかりつけのクリニック)のみがアクセス権限を有するのが原則であり、必要に応じて他の提携クリニックに個別に必要な範囲のみ開示する。
【0023】
迷子札20は、ここでは、いわゆるQRコード(マトリクス型の二次元図形コードで白と黒の格子状の図形で情報を表現するもの)を記載した標識であり、犬や猫などのペットの首輪にぶら下げるためのひもがついたものである。迷子札20は、望ましくは、一個一個がユニークなもの(世の中に一つしかない唯一の情報を記載したもの)として製造され、使用前の迷子札20は、クリニックA,B,C,Dのそれぞれの担当者により、保管される。もっとも、地域的な範囲も狭く、迷子が頻繁には発生しない状況においては、迷子札を一個一個ユニークなものとせずに、発行したクリニック(担当クリニック、かかりつけクリニック)の携帯サイトを表示するためだけのものとして、迷子発見者から連絡があったときに、迷子のペットの特徴をきいて、対象を特定する運用も可能である。しかし、大都会における震災時の混乱に対処しようとするなら、迷子札20を一個一個ユニークなものとしておき、最初の迷子札発行時に、飼い主の情報やペットの特徴などを登録することで、迷子札と飼い主(及びペット)との対応付けをするのが望ましい。
【0024】
迷子札20の発行手続は、クリニックA(B,C又はD)が端末101(102,103又は104)を用いて、サーバ10にアクセスして必要な認証手続を経て、迷子札発行装置21を起動し、新規契約をしようとする飼い主とそのペットとをその迷子札20に関連付ける登録手続をすることによりなされる。端末101(102,103,104)は、スキャナ又はカメラにより迷子札20上のQRコードを読み取って、その情報をサーバ10の迷子札発行装置21に送る。そして、飼い主及びペットの情報を送って関連付けを行い、飼い主DBに登録する。そのペットの過去における診療記録がそのクリニックにあることがわかっているときは、その診療記録との関連付けを行う。また、診療記録が当該クリニック以外の他の提携クリニックにあることがわかっているときは、そのクリニックに通知して関連付け処理を促す。また、迷子札20の裏面にカルテ番号を記載することで、クリニック内のペット特定に役立つ。
【0025】
迷子札20を購入して、迷子札システムの新規ユーザとなった飼い主は、ペットの首輪にその迷子札20を吊るす。迷子札は、ペットが迷子になるという非日常的な事象(緊急事態)が生じたときに役立つものであるが、飼い主としては、いざというときに機能するものであることを、日頃から確認しておきたいという気持ちに駆られる。また、QRコードの印刷が、長年の使用により薄れてきた、汚れてきたなどの場合に、実際に読み取り可能であるか否かを飼い主自身が試してみたいという場合にも対応すべきである。そこで、飼い主自身がサーバ10にアクセスして日頃のペットの状況(体温、排便、排尿回数、運動の量、食欲、睡眠など)について報告し、記録する装置を備えておく。それが、デイリーレポート記録装置22であり、その記録結果がデイリーレポート42である。
【0026】
飼い主がサーバ10にアクセスするには、自らの所有する携帯電話機201又はパソコン301を用いる。携帯電話機201がサーバ10にアクセスするには、携帯基地局、携帯電話網などを介して、携帯電話会社のサービスを利用して、インターネットに接続することになる。図1では、携帯電話会社の設備を描くのを省略して、直接コンピュータネットワーク100を介してサーバ10にアクセスするように描いてある。また、パソコン301がサーバ10にアクセスするには、プロバイダ会社の設備を介してインターネットに接続することになるが、図1では、それを省略してある。携帯電話機202、パソコン302についても同様である。なお、本願の出願時点においては、市販されている携帯電話機のほとんどがQRコードの読取に対応している。
【0027】
迷子を保護した方が、迷子札20のQRコードを頼りに、携帯サイト又はコンピュータサイトにアクセスすると、最初の画面にその迷子札を発行したクリニックの電話番号などが記載されていて、それによって電話でレポートすることが可能である。ところが、電話が通じにくかったり、夜間のため電話に出ない、災害時のため問い合わせが込んでいるなど、ボイスコンタクトがとれない場合が考えられる。そのために用意したのが、迷子発見報告装置23であり、その記録をしたのが迷子情報DB43及び発見者DB44である。発見者がレポートをする際に、発見者の連絡先(氏名、電話番号、住所、メールアドレスなど)、発見日時、発見場所、引渡し方法(引渡し日時、引渡し場所)の希望、発見者の個人情報を飼い主に教えてよいかどうか、などを記録し、のちほどクリニックの担当者から折り返し連絡ができるようにする。
【0028】
迷子預かり認証装置24は、迷子を発見し保護した方が、担当クリニックにペットを引き渡す際の認証をするための装置である。飼い主DB41、迷子情報DB43、発見者DB44、診療記録DB45などのデータベースを参照しつつ、担当者が発見者の本人確認(運転免許証や保険証の確認)、連れてきたペットの特定を目で見て確認して、預かったペットの取り違え事故が起こらないように注意して認証手続をする。そして、その結果を迷子情報DBなどに、記録する。迷子札を発行したクリニックではなく、発見者の都合などで提携クリニックにおいてペットを預かることとなった場合などには、預かる際に担当クリニックの担当者にコンピュータネットワーク100を介してサーバ10に同時にアクセスしてもらい、認証手続に参加してもらうことが望ましい。このときに、提携クリニックDB45が役立つ。認証手続が完了した際には、前もって取り決めた薄謝を発見者に進呈し、その費用は、飼い主に請求する。また、発見者がペットを預かっていた間のペットの食事代などの費用に関しては、クリニックが発見者から迷子を預かる際に事情を聞き、飼い主と相談した上であとで精算する。
【0029】
迷子返還認証装置25は、迷子のペットを発見者から預かったクリニックが飼い主に返還する際の認証をするための装置である。いくつかのデータベースを参照しつつ、クリニックの担当者が飼い主本人を、診察券、保険証券、クレジットカードなどで確認して、取り違えのないように飼い主に引き渡す。このとき、発見の際の事情、発生した費用などについて、相談し、精算する。
【0030】
図2は、本発明の迷子札に記載されたQRコードを携帯電話機202にて読み取って、携帯サイトへアクセスした際に最初に到達する画面(初期画面)のハードコピーである。迷子の発見者がアクセスすることを想定して、「アクセスありがとうございます。迷子札システムです。あなたは、迷子を発見してくださった方ですか?03-****-****にお電話いただけると幸いです。」と、迷子の報告を受けるべき担当クリニックの電話番号が最初に記載されている。この電話番号の記述部分は、携帯電話機のボタンによりクリック可能となっていて、迷子発見者がクリックすると、その携帯電話機の通話機能が働いて、電話をかけて担当クリニックの担当者が電話に出ると、通話ができ、発見者の氏名、連絡先、迷子の発見場所、発見日時、ペットの状況、引渡しについての発見者の希望などの情報を伝えることができる。
【0031】
夜間や災害時などのために、電話が通じにくい場合には、「電話が通じにくい場合には、恐れ入りますが、こちらに入力をお願いします。」と記載されており、「こちら」の部分をクリックできるように色を変えるなどして表示する。そして、クリックすると、後述する迷子発見報告処理にしたがって画面が遷移する。
【0032】
図2に示した初期画面を下にスクロールすると、この迷子札システムの運営事務局(運営責任主体)についての記載がなされており、この初期画面にアクセスしたものを安心させる。また、迷子の発見者ではなく、飼い主が携帯電話機201(又はPC301)を用いてこのQRコードを読み取ってアクセスした際には、飼い主は、この迷子札が確実に機能するものであることをこの初期画面を見て、安心することができる。さらにその下には、「飼い主様の入り口」と記載されたクリック可能なバーが設けられている。ペットに異常がない時に、飼い主自身がQRコードによりこの初期画面にアクセスした場合には、この初期画面又は「飼い主様の入り口」から遷移する「飼い主ログイン画面」(図3)をその携帯電話機の機能を用いてお気に入り登録(ブックマーク)して、次からはQRコードを読まなくてもログインできるようにすることが望ましい。ペットが行方不明になったときには、迷子札が手許になくなるため、QRコードを読めないからである。迷子札の新規登録の際に、QRコードのコピーを飼い主が手許に保存することで緊急事態に対応することも可能である。」

「【0034】
図4は、飼い主ログイン後のメニュー選択画面のハードコピーである。図3の飼い主ログイン画面でID及びパスワードが入力されて、ログインボタンが押されて、認証に成功した際に、図4の飼い主メニュー選択画面に遷移する。ここでは、四つのメニュー、デイリーレポート、折れ線グラフ表示、休日夜間診療情報、行方不明レポートが選択可能となっている。
【0035】
デイリーレポートは、ペットのその日の体温、食事量、運動量(散歩距離)、睡眠時間、身長、体重、排便回数、排尿回数など、飼い主がそのペットを観察して得た情報を日々入力するものである。折れ線グラフ表示は、これまでに入力してデイリーレポートに蓄積された情報を折れ線グラフとして表示するものである。休日夜間診療情報は、急病などでかかりつけのクリニック以外の動物病院に緊急で見てもらう必要のあるときに、その時間に診療可能なクリニックを検索して、その住所や電話番号を表示するものである。行方不明レポートは、ペットがいなくなってしまったことに飼い主が気付いたとき、迷子札を発行したクリニック(かかりつけのクリニック)にそのことを報告するものである。飼い主が行方不明の報告をすると、その旨が迷子情報DB43に書き込まれて、担当クリニックのみならず、提携するクリニックにもその情報が参照可能な状態になる。迷子の発見をより広範囲のクリニックの協力により、いち早く実現するためである。」

「【0039】
図7は、図4の飼い主メニュー選択画面から、行方不明レポートを選択した際に表示される行方不明レポート画面のハードコピーである。飼い主がペットの行方不明レポートを報告するのは、一刻を争う場合があるから、なるべく簡略化した入力で済ませられるようにする。図7の行方不明レポート画面で最低限見失った場所と、見失った日時を飼い主が入力して、登録ボタンを押せば、サーバ10は、その行方不明レポートを受けて、レポートを受けた日時を記録し、見失った場所と日時を記録するとともに、診療記録DB45にアクセスして、そのペットの捜索に役立つ外見特徴をカルテから抽出して、迷子情報DB43に記録する。図7の特記事項には、ペットを見失ったとき、そのペットがどんな状態だったかを飼い主が記入するのが望ましいが、たとえその記入がない場合でも、診療記録DB45により、補充可能である。迷子情報DB43への新規の書込があると、担当クリニックの迷子担当者の携帯電話機への通知メール発信がすぐになされる。また、担当クリニックの受付のデスクに設置した迷子シグナルが作動して、関係者の注意を喚起するようにすることもできる。クリニックの担当者は、すぐに飼い主に連絡して、迷子札システムが動作していることを知らせる。
【0040】
図8は、図2の初期画面にアクセスした迷子発見者が、通話によらずに、サイトを通じて携帯電話機202又はパソコン302を用いて迷子札システム(サーバ10)に対して迷子発見報告をしようとして、図2の「こちら」をクリックした際の迷子発見報告案内画面(迷子報告ページ)である。迷子発見のシステムであることを理解して、このシステムを信頼した迷子発見者は、この画面にて氏名、住所、電話番号、メールアドレスの全て又はその一部を入力して送信ボタンを押してサーバ10へ送る。サーバ10では、迷子発見報告装置23が作動して迷子発見者の入力した情報及び迷子発見者がサイトにアクセスする際に用いたQRコードの情報に基づいて迷子情報DB43、発見者DB44への登録がなされる。迷子情報DB43への新規書込がなされるので、担当クリニックの迷子担当者は、携帯電話機への通知メール受信又は担当クリニックの受付のデスクに設置した迷子シグナルの作動により、発見報告があったことを知り、発見者と連絡を取り、引渡しの日時場所についての相談をする。発見者が担当クリニックに足を運べない場合に、発見者の自宅へクリニックの担当者が訪問して受け取る可能性、他の提携クリニックでの引渡しを受ける可能性などがある。発見者との連絡をするのみならず、飼い主へもクリニックから発見された旨の連絡をし、さらに引渡しの予定についての連絡をする。なお、図8に示した入力画面では、入力する事項の数を最小限のものにしたが、発見者の事情を伝えるための自由に書きこめる欄を設けることもできる。
【0041】
図2の初期画面から、発見者が電話して迷子発見報告をする場合は、クリニックの担当者が発見者の情報、氏名、連絡先、発見した場所、日時、ペットの状況、などを聞き取って迷子情報DB43に入力し、入力した担当者の氏名をも登録する。この場合、発見者の連絡先に間違いがないことを確認するため、最初に電話番号を聞いて、クリニック側からかけなおすことが望ましい。再度の連絡が確実にとれることを確認するためである。」

「【0045】
図10は、本発明の迷子札システムにおいて、迷子発見者が迷子札に記載されているQRコードを自身が所有する携帯電話機にて読み取って、迷子札システムのサーバ10にアクセスして迷子発見の旨を報告するときの迷子発見報告装置23の迷子発見報告処理を示すフローチャートである。迷子札20に記載されたQRコードがユニークなもの(一意であって、そのQRコードのみで対象となるペットの個体が特定できるもの)である場合、サーバ側10側には図2に示す初期画面を契約済みの迷子札の数だけ予め作っておく。発見者から見れば、初期画面を区別できないが、サーバ10側から見ると、そのページにアクセスしたということは、どの迷子の発見報告であるのかをすでに特定するものとなる。すなわちそのページ情報が、迷子を特定する情報を含んでいる。QRコードをユニークなものとしない場合には、クリニック側の担当者が、発見者に連絡してそのペットの外見特徴などを把握して対象となる迷子を特定することになる。
【0046】
サーバ10が作動しているときには、常に迷子発見報告装置23は、起動している状態にある。すなわち迷子発見報告処理のプログラムは、サーバ10が動いているときには常に動いている。発見者からのアクセスがあって、発見者が必要な情報を入力して送信がなされると、ステップ1010にてYESと判断されて、サーバ10は、その発見者がアクセスしたページ情報と、発見者が送信した発見者情報とを取得する(ステップ1020)。そして、それに基づいて迷子情報DB43及び発見者DB44を更新する(ステップ1030)。その後、クリニック担当者へ通知する(ステップ1040)。この担当者への通知は、その担当者の所持する携帯電話機へのメール送信及び担当クリニックの受付デスクに設置したシグナル(ランプが点滅し周囲の人々に注意を喚起するもの)とでなされることが望ましい。メール着信だけでは、すぐに気付かないことがある。また、クリニックの受付デスク付近に目立つシグナルが置かれていることで、そのクリニックに通う飼い主に対し、当該クリニックの迷子に対する姿勢を示すことができる。
【0047】
クリニック担当者がその通知を受けて、発見者と連絡を取り、保護したペットの外見特徴などが、診療記録などと一致することを確認し、さらに、発見者の連絡先へ折り返しの連絡ができることなどを確認した上で、その担当者は、サーバ10へアクセスし、迷子発見報告装置23にて認証できた旨を登録する(ステップ1050にてYESと判断されてステップ1060)。これにて一通りの迷子情報DB、発見者DBへの報告処理が完成する。」

「【0060】
ペットの迷子のみならず、痴呆老人や子どもに対して迷子札適用することとする実施例も可能である。」

「【図10】



(2)上記(1)によると、引用文献1には以下のことが記載されているといえる。
ア 段落【0018】には、迷子札システムのハードウェア構成として、サーバ10、端末101,102,103,104、携帯電話機201,202、パソコン301,302が、コンピュータネットワーク100に接続されているほか、迷子札20が構成要素に含まれることが記載されており、段落【0019】には、コンピュータネットワーク100は、インターネットとすることができることが記載されている。

イ 段落【0021】には、サーバ10には、各クリニックごとにセキュリティ管理されたDB(データベース)を設けることが記載されており、段落【0022】には、端末101,102,103,104は、この迷子札システムを利用する複数のクリニック(動物病院)のそれぞれに設置されたコンピュータであることが、段落【0026】には、飼い主がサーバ10にアクセスするには、自らの所有する携帯電話機201又はパソコン301を用いることが、段落【0040】には、迷子発見者が、サイトを通じて迷子札システム(サーバ10)に対して迷子発見報告を行う際に、携帯電話機202又はパソコン302を用いることが、それぞれ記載されている。

ウ 段落【0024】には、迷子札20の発行手続を行う際に、クリニックA(B,C又はD)が端末101(102,103又は104)を用いて、サーバ10にアクセスして迷子札発行装置21を起動し、新規契約をしようとする飼い主とそのペットとをその迷子札20に関連付ける登録手続を行うことや、端末101(102,103,104)は、スキャナ又はカメラにより迷子札20上のQRコードを読み取って、その情報をサーバ10の迷子札発行装置21に送り、飼い主及びペットの情報を送って関連付けを行うことで、飼い主DBに登録すること、迷子札20の裏面にクリニック内のペット特定に役立つカルテ番号を記載することが記載されており、段落【0023】には、最初の迷子札発行時に、飼い主の情報やペットの特徴などを登録することで、迷子札と飼い主(及びペット)との対応付けをするのが望ましいことが記載されている。

エ 段落【0027】、【0030】には、迷子の発見者が、迷子札20のQRコードを携帯電話機202にて読み取って、携帯サイトにアクセスすると、その迷子札を発行したクリニックの電話番号などが記載された画面(初期画面)に最初に到達することが記載されている。

オ 段落【0030】、【0041】には、迷子発見者が初期画面において担当クリニックの電話番号の記述部分を携帯電話機のボタンによりクリックすると、その携帯電話機の通話機能が働いて通話ができ、担当クリニックの担当者に発見者の氏名、連絡先、迷子の発見場所、発見日時、ペットの状況、引渡しについての発見者の希望などの情報を伝えることができることが記載されており、段落【0040】には、迷子発見者が通話によらずにサイトを通じて携帯電話機202又はパソコン302を用いて迷子札システム(サーバ10)に対して迷子発見報告を行う場合に、迷子発見報告案内画面(迷子報告ページ)に遷移して、この画面にて氏名、住所、電話番号、メールアドレスの全て又はその一部を入力して送信ボタンを押してサーバ10へ送信し、サーバ10では、迷子発見報告装置23が作動して迷子発見者の入力した情報及び迷子発見者がサイトにアクセスする際に用いたQRコードの情報に基づいて迷子情報DB43、発見者DB44への登録がなされることが、それぞれ記載されている。

カ 段落【0032】?【0034】、【0039】には、初期画面に「飼い主様の入り口」を設け、ここから飼い主がログインすることにより表示されるメニュー選択画面において行方不明レポートを選択し、ペットを見失ったときに見失った場所と日時を入力して迷子情報DBに登録することにより、担当クリニックの迷子担当者に通知されることが記載されている。

キ 段落【0040】には、担当クリニックの迷子担当者は、発見報告があった場合に発見者と連絡を取り、引渡しの日時場所についての相談をすることや、飼い主へもクリニックから発見された旨の連絡をし、さらに引渡しの予定についての連絡をすることが記載されている。

ク 段落【0001】、【0060】には、この迷子札システムを痴呆老人や子どもに対して適用することも可能であることが記載されている。

(3)上記(2)のア?クより、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「ペットが迷子になる場合に備えて迷子札を管理する迷子札システムにおいて、
複数のクリニック(動物病院)ごとにセキュリティ管理されたDB(データベース)が設けられたサーバと、各クリニックに設置された端末と、飼い主がサーバにアクセスする際に使用する携帯電話機と、迷子発見者がサイトを通じてサーバに対して迷子発見報告を行う際に使用する携帯電話機が、インターネットに接続されており、各クリニックの担当者と飼い主と迷子発見者の間で情報交換を共有して行う迷子札システムであって、
各クリニックの担当者が使用するサーバは、
飼い主の情報やペットの特徴などのペットの情報を登録する飼い主DBと、
迷子札上のQRコードと飼い主及びペットの情報を関連付けて、QRコードとカルテ番号が記載された迷子札の発行手続を行う迷子札発行装置とを含み、
飼い主または迷子発見者の携帯電話機において、迷子札のQRコードを読み取って迷子札システムのサーバにアクセスすると、携帯サイトの初期画面が最初に表示され、
飼い主は、携帯サイトの初期画面から飼い主メニュー選択画面にアクセスして行方不明レポートを選択することにより、ペットを見失った場所と日時を入力して迷子情報DBに登録して担当クリニックの迷子担当者に通知することが可能であり、
迷子発見者は、初期画面における担当クリニックの電話番号の記述部分を携帯電話機のボタンによりクリックすると、担当クリニックの担当者にペットの状況などの情報を伝えるための通話機能が働き、迷子発見者がサイトを通じてサーバに対して迷子発見報告を行う場合には、迷子発見報告案内画面(迷子報告ページ)に遷移して、この画面にて氏名、住所、電話番号、メールアドレスの全て又はその一部を入力し、
担当クリニックの迷子担当者は、発見報告があった場合に発見者と連絡を取り、引渡しの日時場所についての相談を行うほか、飼い主へもクリニックから発見された旨の連絡をし、さらに引渡しの予定についての連絡をすることを特徴とする、
痴呆老人や子どもに対して適用することも可能な迷子札システム。」

2.引用文献2
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
この考案は人やペットの身元確認シール及び身元確認シールを利用した身元確認システムに関する。より詳しくは徘徊老人や迷子、ペット等の体に貼着した二次元コードシールから情報を読み取り、身元を迅速かつ安全につきとめることができるシステム及び身元確認シール(二次元コードシール)に関する考案である。」

「【0017】
図1は本考案の実施形態を実現する身元確認システム全体を表す構成図である。図中において2はユーザー端末(パソコン又は携帯電話)、3は照会者(発見者・保護者)端末(パソコン又は携帯電話)、1はユーザー・照会者との間に介在して、被捜索者情報等の登録や照会者への情報提示を行う、ポータルサイトを運営する身元確認サーバ1である。
【0018】
また、これらはネットワークであるインターネット4を介して接続され、相互に通信可能となっている。」

「【0027】
認知症を発症している、或いは可能性のある本人又は家族等が本願の身元確認システムにおけるユーザー5である。身元確認サーバ1はあらかじめ個人識別番号に対応させたQRコードを作成し、当該QRコードを印刷した身元確認シールの販売を行う。販売先は個人ユーザーに直接販売する場合と照会者からの連絡を受けて実際の身柄引き取りを行う、老人介護施設や地方公共団体等(仲介者)の大口ユーザーである。」

「【0031】
身元確認シールを購入又は配布されたユーザー5は、身元確認システムを運営するポータルサイトの身元確認サーバ1にユーザー登録を行う。身元確認シールにはQRコードと共に、QRコードの使用方法が記載されている。身元確認シールを貼着された人、動物、或いは物が行方不明となり発見者(照会者)に保護、拾得されたときに、身元確認シールに表示されたQRコードを読み取り、表示されたURL(身元確認サーバ1)にアクセスする。
【0032】
身元確認サーバ1は照会者が6入力したQRコードから識別番号を自動認識し、ユーザー5があらかじめ登録した連絡先を照会者端末3へ表示する。照会者6との直接連絡を選択したユーザー5は照会者6と連絡を取り合って所定の場所まで出向き、被捜索人の身柄を引き取る。」

「【0038】
まず、個人ユーザー51の登録処理について図2のシーケンス図を参照しながら説明する。
【0039】
身元確認シールを購入又は配布された個人ユーザー51は、身元確認シールに表示されたQRコードを読み取り、身元確認システムを運営するポータルサイトへ接続する(S11)。
【0040】
QRコードに対応した識別番号(ID)を自動的認識した身元確認サーバ1からはデータ登録画面が送信され(S12)、ユーザー51が所定のデータとパスワードを入力すると(S13)、データ確認画面が送信され(S14)、入力内容を確認したユーザー51がデータ決定を選択、送信すると(S15)身元確認サーバ1から設定完了通知が送られてくる(S16)。ユーザーが入力したデータは身元確認サーバの記憶部13へと格納され、個人ユーザー登録処理が完了する。」

「【0048】
ここで被捜索者の情報として登録されるのは、被捜索者の氏名、年齢、写真、身長等の身体的な特徴、病歴、服用薬、掛かり付け病院、担当医師等の情報、ユーザーへの連絡方法(メールアドレス、電話番号、携帯電話番号等)等がある。その他の登録事項については身元確認業務を運営するサイトが独自に設定することができるものとする。」

「【0063】
続いて、徘徊者等が発見、保護され、身元確認が行われてから身元引き取りまでの手順について説明する。本願のシステムではQRコードを読み取っても身元確認サーバのURLが表示されるだけで、個人識別番号やユーザーが開示を希望しない情報は表示されないためプライバシーを保護すると同時に、確実且つ迅速に被捜索人の家族、保護者が被捜索人の身元を確認できるように考案されている。
【0064】
ここでは発見者がQRコードを読み取り、それがどのようなステップを経てユーザーへ連絡され、被捜索人の身柄引き取りに至るかを説明する。
【0065】
処理は身元確認サーバ1の身元確認部14で行われる。
【0066】
まず、徘徊者用身元確認から説明する。徘徊者用身元確認は発見者とユーザーが直接連絡を取り合う、直接身元確認処理と発見者とユーザーとの間に老人施設や医療施設等の仲介者が存在する間接身元確認処理がある。
【0067】
被捜索者の家族等が直接照会者に連絡を取り、身柄引き取りに関する手続を行う直接身元確認処理は、迅速な対応が可能となる一方で、ユーザー自身が高齢者である場合や被捜索者の保護場所が遠方等の場合は迅速な対応ができない恐れがある。そこで、引き取りに際し、あらかじめ仲介者である老人介護施設、または地方公共団体等に照会者との連絡、引き取りに関する業務を委託する間接身元確認方法が有効である。各地方公共団体の担当部署が相互連携することで迅速な対応が期待できると考えられる。
【0068】
一方、被捜索人保護通知後、ユーザーが迅速に発見者の連絡先に連絡を取ることが望まれるが、これに気付かず放置した場合は、QRコード認証結果記憶部へのアクセス履歴が記憶されない、または所定時間アクセス履歴がない時は身元確認サーバ側から自動的或いは人為的にユーザーへ緊急連絡が通知されるシステムを構築しておくと安心である。
【0069】
仲介者が存在する間接身元確認処理は図8のシーケンス図に詳細に記載されている。ここでいう仲介者とは図3及び図4における大口の個別登録を行うユーザー52である場合がほとんどである。徘徊等行方不明になる恐れのある人は福祉施設、ディサービスセンター・病院等の医療関係施設の利用者であることが多く、身元確認シールの配布やQRコードの登録事務も当該仲介者が徘徊のおそれのある者、あるいはその家族に代わって行なう。
【0070】
ここで照会者6とは身元不明者を保護した発見者又は発見者が身元不明者の保護を依頼した警察、自治体等の担当部署が該当する。
【0071】
照会者6は徘徊している身元不明者を保護すると、身元不明者の体、持ち物等に貼着された身元確認シールに記載されている、身元不明者を発見時に行ってもらう処理と手順に関する説明に従いQRコードを読み取る。すると身元確認サーバの専用URLが表示される(S64)。照会者が身元確認サーバへ接続すると同時にQRコードに対応した個人識別番号を身元確認サーバ1が自動認識し、認識された個人識別番号に関連付けて登録され、且つ、ユーザーの意思により公開可とされた情報だけが照会者端末に表示される。この時仲介者が連絡可能な、照会者の連絡先を表示してくれるように依頼する文面も表示される。
【0072】
例えば、身元不明者を発見、保護してくれたお礼、以後の手順が表示、身柄引き取りには照会者の連絡先が必要となる旨の御断り文等が表示される。
【0073】
照会者が自分の連絡先を安易に通知することをためらう場合も想定できるが、身元不明人を発見、保護した場合は最寄りの交番や役所に連絡することが通常であるため、身元確認サーバへ通知される連絡先は地元警察、市役所や役場等の地方公共団体となることがほとんどであり、QRコードの読み取りと、身元確認運営サーバへのアクセス、連絡先(警察等)だけを入力すれば良いため、ユーザーや身元確認サーバとのやり取りを回避することができ、過度の負担や責任を負うことはないものと考えられる。但し、入力連絡先となる公共機関へは事前に連絡を取り、被捜索人の受け渡しと共に事情を説明しておく必要がある。又あらかじめ被捜索人と共に上記公的機関へ出向き、公的機関の端末を使用して身元確認サーバへのアクセス処理を行うことも考えられる。
【0074】
身元不明者が発見されると、個人レベルでの対応が困難であるため上記、公共団体への身元不明者発見の連絡、公共団体の指示に従い、身柄引き渡しが完了している場合がほとんどであると考えられ、QRコードを読み取って照会手続を行うのは当該公共団体等である。
【0075】
照会者6(個人、団体)は身元確認サーバ1の指示に従い、QRコードを読み取り、専用URLへ接続する。身元確認サーバ1の身元確認部14は個人識別番号を自動認識し、身元確認時に表示可として登録されたユーザーの公開情報だけを照会者端末へと表示する(S65)。身元不明者の家族等ユーザーが直接照会者と接触しない、この間接身元確認処理では前記仲介者52の電話番号やURL等が表示される。照会者の端末に表示された身元確認サーバ1の身元確認メニューへ、照会者6が開示された仲介者名を入力・送信すると、身元確認サーバ1は身元不明者の保護を仲介者へ通知するのである(S66)。
【0076】
身元確認サーバ1は照会者6が身元不明者の体に貼着された身元確認シールのQRコードを読み取った時点で身元不明者に関する情報が把握できているため、その情報と併せて照会者6への連絡方法等が仲介者へ通知されるのである。
【0077】
保護された身元不明者の氏名等と照会者の連絡方法を通知された仲介者は、直ちに照会者6へ連絡を取り、身柄を引き取りに行く場合もあるが(S73)、身元不明者家族が直接身柄引き取りを要望する場合も考えられるのでユーザー登録された情報を確認する必要が生じる。
【0078】
そこで、身元確認サーバ1から身元不明者保護通知を受領した仲介者52は、身元確認サーバ1へアクセスし(S67)、ID・パスワード入力或いは管理者専用QRコードを使用してログインを行い、表示されたメニュー(S68)からユーザー検索を選択(S69)し、表示されたユーザー検索画面(S70)でユーザー検索を実行し(S71)身元確認サーバ1が表示したユーザー情報画面(S72)からユーザー情報を取得するのである。
【0079】
仲介者は照会者と連絡を取り合いながら身元不明者の身柄引き取りを行う(S73)と同時に身元不明者に関する情報をユーザーへ連絡するのである(S74)。身柄引き取り作業が仲介者へ依頼されている場合は、仲介者が身柄引き取りを行い、ユーザー自身が身柄引き取りを希望している場合はユーザーが直接照会者の下へ身元不明者を引き取りに出向くのである(S75)。上記手順を踏んで、身元確認結果が身元確認サーバの記憶部14へと格納されて身元確認処理が終了する。」

「【図8】



(2)上記(1)によると、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「徘徊老人や迷子、ペット等の体に貼着した二次元コードシールから情報を読み取り、身元を迅速かつ安全につきとめることができる身元確認システムであって、
ユーザー端末(パソコン又は携帯電話)、照会者(発見者・保護者)端末(パソコン又は携帯電話)、ユーザー・照会者との間に介在して、被捜索者情報等の登録や照会者への情報提示を行う、ポータルサイトを運営する身元確認サーバが、ネットワークであるインターネットを介して接続され、相互に通信可能となっている身元確認システムにおいて、
認知症を発症している、或いは可能性のある本人又は家族であって、身元確認シールを購入又は配布されたユーザーが、身元確認シールに表示されたQRコードを読み取り、身元確認システムを運営するポータルサイトへ接続すると、QRコードに対応した識別番号(ID)を自動的認識した身元確認サーバからはデータ登録画面が送信され、ユーザーが被捜索者の氏名、年齢、写真、身長等の身体的な特徴、病歴、服用薬、掛かり付け病院、担当医師等の情報、ユーザーへの連絡方法(メールアドレス、電話番号、携帯電話番号等)等を入力すると、ユーザーが入力したデータは身元確認サーバの記憶部へと格納されることで、個人ユーザーの登録処理が行われ、
身元確認サーバはあらかじめ個人識別番号に対応させたQRコードを作成し、当該QRコードを印刷した身元確認シールを個人ユーザーに販売し、
照会者が徘徊している身元不明者を保護し、身元不明者の体、持ち物等に貼着された身元確認シールのQRコードを読み取ると身元確認サーバの専用URLが表示され、照会者が身元確認サーバへ接続すると同時にQRコードに対応した個人識別番号を身元確認サーバが自動認識し、認識された個人識別番号に関連付けて登録され、且つ、ユーザーの意思により公開可とされた仲介者の電話番号やURL等の情報が照会者端末に表示され、照会者の端末に表示された身元確認サーバの身元確認メニューへ、照会者が開示された仲介者名を入力・送信すると、身元確認サーバは身元不明者の保護を仲介者へ通知し、
身元確認サーバから身元不明者保護通知を受領した仲介者は、身元確認サーバへアクセスして、ユーザー検索を実行することで、身元確認サーバが表示したユーザー情報画面からユーザー情報を取得し、仲介者は照会者と連絡を取り合いながら身元不明者の身柄引き取りを行うと同時に身元不明者に関する情報をユーザーへ連絡するものであり、
被捜索人保護通知後、QRコード認証結果記憶部へのアクセス履歴が記憶されない、または所定時間アクセス履歴がない時は身元確認サーバ側から自動的にユーザーへ緊急連絡が通知される身元確認システム。」

3.引用文献3
前置報告で周知技術を示す文献として新たに引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係わるデータ管理システムは、同一のデータ項目について複数の取得経路が存在し、複数の取得経路からそれぞれ取得したデータを選択して表示出力するデータ管理システムであって、データに、取得経路を示すステータスを関連付けて保存する手段と、同一のデータ項目について複数のデータが存在する場合は、一のデータを抽出するデータ抽出手段と、該データ抽出手段によって抽出されたデータを表示するとともに、該データに関連付けられているステータスを識別表示する表示データ演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、ステータスの識別表示は、データのステータスが認識できれば足りる趣旨であり、たとえば、ステータスに基づいてデータを色替え表示することのほか、ステータスに基づいてデータの背景色を替えたり、データ項目に関連付けてステータスを別に表示にするなどがある。」

4.引用文献4
前置報告で周知技術を示す文献として新たに引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0141] FIG. 25 depicts an exemplary interface 2500 for viewing message in a conversational view with one specific user. Messages may be displayed in a staggering fashion to visually indicate which messages have been received and which have been sent along with the accompanying photo and name that is present in each message. Message background color may also indicate the status of a message as being read or unread. The contents of the Message and the functions available on a per message basis may be similar to those defined in interface 2400.」
(当審訳:図25は、1つの特定のユーザとの対話型画面においてメッセージを見るための例示的なインターフェース2500を示す。メッセージは、各メッセージに存在する添付の写真及び名前と共に送受信されたメッセージを視覚的に示すための膨大な様式で表示されうる。メッセージの背景色も、メッセージの既読あるいは未読のステータスとして示すことができる。メッセージの内容とメッセージ毎に利用可能な機能は、インターフェース2400で定義されたものと同様であってもよい。)

5.引用文献5
前置報告で周知技術を示す文献として新たに引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0042】
図7に、掲示板表示画面100の変形例を示す。この図において、図4の例に示した要素と同様の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
この変形例の特徴は、メッセージリスト121のメッセージごとに、当該掲示板の参加者全員の当該メッセージに対する処理状態から、当該メッセージ自体の状態を求め、これを表示するようにした点である。特にこの例では、メッセージ自体の状態に応じ、そのメッセージの処理状態欄122の表示形態(例えば背景色や文字の色など)を切り替えている。
【0044】
この例では、メッセージの状態として、(1)参加者の誰からも処理されていない状態、(2)処理済みの状態、(3)その掲示板を閲覧しているユーザがそのメッセージを処理している途中(或いは処理する予定)であるという状態、という3つの状態を規定している。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明1の「迷子」は、「ペット」だけでなく「痴呆老人や子ども」に対しても適用することが可能であり、本願発明1の「被介護者」も「なお、本発明において被介護者とは、必ずしも高齢者に限定されるものでは無く、年齢を問うことなくすべての知的障害者(知的障害児)さらには幼児など、保護者による介護を必要とするすべての人を含むものであるが、例示として認知症高齢者を挙げて以下に説明する。」(段落【0001】)とされることから、引用発明1の「迷子」は、本願発明1の「被介護者」に相当する。
また、引用発明1の「サイト」は、本願発明1の「伝言板サイト」といずれも「サイト」である点で共通する。
また、引用発明1の「迷子発見者の携帯電話機」で「携帯サイトにアクセス」して「迷子発見報告」を行うことは、本願発明1と同様の「被介護者の救護支援」であるといえる。
よって、引用発明1の「複数のクリニック(動物病院)ごとにセキュリティ管理されたDB(データベース)が設けられたサーバと、各クリニックに設置された端末と、飼い主がサーバにアクセスする際に使用する携帯電話機と、迷子発見者がサイトを通じてサーバに対して迷子発見報告を行う際に使用する携帯電話機が、インターネットに接続されており、各クリニックの担当者と飼い主と迷子発見者の間で情報交換を共有して行う迷子札システム」と本願発明1の「インターネット上の伝言板サイトを利用する被介護者の救護支援システム」とは「インターネット上のサイトを利用する被介護者の救護支援システム」である点で共通する。

イ 引用発明1の「複数のクリニック(動物病院)ごとにセキュリティ管理されたDB(データベース)が設けられたサーバ」は、「クリニックの(迷子)担当者」が使用し管理するものであることから、本願発明1の「システム管理者が使用する管理コンピュータ」に相当し、また、上記アで示したように、引用発明1の「迷子」は本願発明1の「被介護者」に相当するから、引用発明1の「飼い主」、「迷子発見者」は、本願発明1の「被介護者を介護する立場の家族・介護者(保護者)である本システムのシステム利用者」、「対象となる被介護者を発見した発見者」にそれぞれ相当する。
また、引用発明1の「飼い主」は、「行方不明レポート」でペットを見失った場所と日時を入力することにより「クリニックの迷子担当者」に迷子の通知を行うから、引用発明1は、本システムのシステム管理者と対象となる被介護者を発見した発見者間で情報交換を行うものといえる。
また、引用発明1の「クリニックの迷子担当者」は、「発見報告があった場合」に「飼い主」へ「発見された旨の連絡」を行うから、引用発明1は、本システムのシステム管理者と、被介護者を介護する立場の家族・介護者(保護者)である本システムのシステム利用者との間で情報交換を行うものといえる。
また、引用発明1の「迷子発見者」が「初期画面における担当クリニックの電話番号の記述部分を携帯電話機のボタンによりクリックする」か、「迷子発見報告案内画面(迷子報告ページ)」の画面で「氏名、住所、電話番号、メールアドレスの全て又はその一部を入力」することにより、「クリニックの迷子担当者」と「迷子発見報告」の連絡や「引渡しの日時場所についての相談」を行うことは、本システムのシステム管理者と、対象となる被介護者を発見した発見者間で情報交換を行うものといえる。
したがって、引用発明1の「クリニックの迷子担当者」は、「発見報告があった場合」に「飼い主」へ「発見された旨の連絡」を行い、「迷子発見者」が「初期画面における担当クリニックの電話番号の記述部分を携帯電話機のボタンによりクリックする」か、「迷子発見報告案内画面(迷子報告ページ)」の画面で「氏名、住所、電話番号、メールアドレスの全て又はその一部を入力」することにより、「クリニックの迷子担当者」と「迷子発見報告」の連絡や「引渡しの日時場所についての相談」を行い、「迷子発見者」が「初期画面における担当クリニックの電話番号の記述部分を携帯電話機のボタンによりクリックする」か、「迷子発見報告案内画面(迷子報告ページ)」の画面で「氏名、住所、電話番号、メールアドレスの全て又はその一部を入力」することにより、「クリニックの迷子担当者」と「迷子発見報告」の連絡や「引渡しの日時場所についての相談」を行う迷子札システムと、本願発明1の「本システムのシステム管理者と、被介護者を介護する立場の家族・介護者(保護者)である本システムのシステム利用者と、対象となる被介護者を発見した発見者間で情報交換を共有して行う三者間での被介護者の救護支援システム」とは、いずれも「本システムのシステム管理者と、被介護者を介護する立場の家族・介護者(保護者)である本システムのシステム利用者と、対象となる被介護者を発見した発見者間で情報交換を行う」点で共通する。

ウ 引用発明1の「サーバ」における「飼い主DB」には、「飼い主の情報やペットの特徴などのペットの情報を登録」されるから、引用発明1が、当該情報を登録するための入力手段を有することは自明の事項であり、「ペットの特徴」は、ペットを特定するのに必要な情報であるから、引用発明1の当該「入力手段」と本願発明1の「被介護者の人物特定に必要な最低限の基本情報を入力するための基本情報入力手段」とは、いずれも、「被介護者の人物特定に必要な基本情報を入力するための基本情報入力手段」である点で共通する。

エ 引用発明1の「サーバ」における「迷子札上のQRコードと飼い主及びペットの情報を関連付けて、QRコードとカルテ番号が記載された迷子札の発行手続を行う迷子札発行装置」と、本願発明1の「この基本情報を個別QRコード(登録商標)とリンクさせて識別番号付きのQRコードを印刷したシールを発行する識別番号付きQRコードのシール発行手段」とは、いずれも、「この基本情報を個別QRコード(登録商標)とリンクさせて識別番号付きQRコードを発行する発行手段」である点で共通する。

オ 引用発明1は、「迷子発見者の携帯電話機」で「迷子札のQRコードを読み取って迷子札システムのサーバの携帯サイトにアクセスすると、初期画面が最初に表示され」、引用発明1の当該構成と、本願発明1の「発見者により被介護者の個別QRコードが撮影された際に、発見者コンピュータに伝言板サイトのトップ画面を自動通信するトップ画面開示手段」とは、いずれも、「発見者により被介護者の個別QRコードが撮影された際に、発見者コンピュータにサイトのトップ画面を自動通信するトップ画面開示手段」である点で共通する。

カ 以上、ア?オによれば、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「インターネット上のサイトを利用する被介護者の救護支援システムにおいて、
本システムのシステム管理者と、被介護者を介護する立場の家族・介護者(保護者)である本システムのシステム利用者と、対象となる被介護者を発見した発見者間で情報交換を行う被介護者の救護支援システムであって、
システム管理者が使用する管理コンピュータは、
被介護者の人物特定に必要な基本情報を入力するための基本情報入力手段と、この基本情報を個別QRコード(登録商標)とリンクさせて識別番号付きのQRコードを発行する識別番号付きQRコードの発行手段と、発見者により被介護者の個別QRコードが撮影された際に、発見者コンピュータにサイトのトップ画面を自動通信するトップ画面開示手段とを、
含み構成されることを特徴とする被介護者の救護支援システム。」

[相違点]
(相違点1)
インターネット上のサイトが、本願発明1では「伝言板サイト」であるのに対し、引用発明1は「携帯サイト」であるものの、「伝言板サイト」であるかは明らかではない点。

(相違点2)
本システムのシステム管理者と、被介護者を介護する立場の家族・介護者(保護者)である本システムのシステム利用者と、対象となる被介護者を発見した発見者間で情報交換を行う被介護者の救護支援システムが、本願発明1では、「三者間」で「情報交換を共有して行う」ものであるのに対し、引用発明1では、そうではない点。

(相違点3)
本願発明1は、「被介護者の現況に応じてシステム上のステータスを、伝言板サイトの画面を信号機を模した3色で状況に対応して表示されるように構成し」ているのに対し、引用発明1は、そのような構成となっていない点。

(相違点4)
「基本情報入力手段」により入力される「被介護者の人物特定に必要な基本情報」が、本願発明1では、「最低限」のものであるのに対し、引用発明1では、そのような特定のない点。

(相違点5)
本願発明1の「管理コンピュータ」は、「発見者により被介護者の個別識別番号と現在状況の入力がなされた際に、システム利用者に発見者からの入力情報をメールで自動発信する発見メール自動発信手段」を含むのに対し、引用発明1ではそのような構成を有しない点。

(相違点6)
本願発明1の「管理コンピュータ」は、「発見メール自動発信手段でシステム利用者にメールが送信された際に、発見者に対処方法を連絡するための対処方法連絡手段」を含むのに対し、引用発明1は、担当クリニックの迷子担当者が発見者に何らかの対処方法について連絡するものの、「管理コンピュータ」で行うものではない点。

(2)相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点3および相違点5について判断する。

ア 相違点3に関する判断
引用文献3?5は、いずれも画面に表示されたデータやメッセージごとのステータスに応じて背景色を変えるものであり、これらはデータやメッセージごとに対応する表示領域の背景色を変えて表示する周知技術に関するものである。
しかしながら、本願発明1は「伝言板サイトの画面」に対して、「信号機を模した3色で状況に対応して表示される」ものであるのに対し、引用文献3?5は、いずれも画面に表示されたデータやメッセージに対応する表示領域のみ背景色を変えて表示するものであるから、本願発明1のように「伝言板サイトの画面」の表示色を「状況に対応して表示されるように構成」することは、引用文献3?5には記載されていない。
そして、引用発明1及び引用発明2のいずれの「サイト」に関しても、当該サイトの表示画面上でシステム上のステータスを識別可能に表示する技術思想については記載も示唆もされていないため、相違点3に係る「被介護者の現況に応じてシステム上のステータスを、伝言板サイトの画面を信号機を模した3色で状況に対応して表示されるように構成」することが、引用発明1、引用発明2、及び引用文献3?5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。

イ 相違点5に関する判断
引用発明1のサーバは、発見者からのアクセスがあって、発見者が必要な情報を入力して送信がなされると、その発見者がアクセスしたページ情報と、発見者が送信した発見者情報とを取得して、それに基づいて迷子情報DBを更新し、その後、クリニック担当者へ通知するものの、サーバからシステム利用者に対して発見メールを自動発信することは引用文献1(特に図10及び段落【0045】?【0047】)には記載されておらず、飼い主への連絡はクリニックから行われる(段落【0040】)。
一方、引用文献2には、徘徊者用身元確認として、発見者とユーザーが直接連絡を取り合う直接身元確認処理と、発見者とユーザーとの間に老人施設や医療施設等の仲介者が存在する間接身元確認処理がある旨が示された(段落【0066】)上で、直接身元確認処理は、迅速な対応が可能となる一方で、ユーザー自身が高齢者である場合や被捜索者の保護場所が遠方等の場合は迅速な対応ができない恐れがあることから、引き取りに際し、あらかじめ仲介者である老人介護施設、または地方公共団体等に照会者との連絡、引き取りに関する業務を委託する間接身元確認方法が有効であるとしており(段落【0067】)、被捜索人保護通知後、QRコード認証結果記憶部へのアクセス履歴が記憶されない、または所定時間アクセス履歴がない場合に身元確認サーバ側から自動的にユーザーへ緊急連絡が通知される(段落【0068】)ことが記載されている。
しかしながら、引用発明2において、「身元確認サーバ側から自動的にユーザーへ緊急連絡が通知される」されるのは「被捜索人保護通知後、QRコード認証結果記憶部へのアクセス履歴が記憶されない、または所定時間アクセス履歴がない時」であって、本願発明1のように「発見者により被介護者の個別識別番号と現在状況の入力がなされた際」になされるものではない。
したがって、相違点5に係る「管理コンピュータ」が「発見者により被介護者の個別識別番号と現在状況の入力がなされた際に、システム利用者に発見者からの入力情報をメールで自動発信する発見メール自動発信手段」を含む構成は、引用発明1、引用発明2、及び引用文献3?5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。

ウ 作用効果について
そして、本願発明1は、相違点3及び相違点5に係る構成により、「速やかに発見者と保護者(システム利用者)との連絡を取り合うことが可能と」し(段落【0009】)、画面の色の変化から直感的に素早く現況を訴求することができる(段落【0002】)という、明細書記載の作用効果を奏するものである。

エ むすび
したがって、本願発明1は、その他の相違点である相違点1、相違点2、相違点4、相違点6について判断するまでもなく、引用発明1、引用発明2、及び引用文献3?5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の上記相違点1?6に係る事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1、引用発明2及び引用文献3?5に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 前置報告の特許法第36条第6項第2号の理由について
請求項1の「被介護者の現況に応じてシステム上のステータスを、伝言板サイトの画面を信号機を模した3色で状況に対応して表示されるように構成し、」について、本願明細書の段落【0022】には、「被介護者1の現況に応じてシステム上のステータスは、伝言板サイトの画面を青、赤、黄の信号機を模した3色で状況に対応して表示される」との記載があり、また、伝言板サイトの画面が青、赤、黄の信号機を模した3色でそれぞれ表示される状況に関しては、
「【0019】
具体的には、発見者4がカメラ付携帯電話でQRコードシール8に表示されたQRコードを読み取ることで、携帯電話の画面上に伝言板サイトのアクセスに必要な情報(伝言板サイトのURL)が表示され、発見者4がそれをクリックすることで伝言板サイトにアクセスできる。また同時に、第1段階としてQRコードを読み取られた事実をシステム利用者3のメールアドレスに通知され、システム利用者コンピュータ6の画面で閲覧する。(第1の発見メール自動発信手段14)
【0020】
この通知の際に、システム利用者コンピュータ6(通常は、カメラ付携帯電話やスマートフォン)の伝言板サイトの画面は黄色に着色され(平時は白色)、その後に伝言板サイトにアクセスしたシステム利用者3(保護者)は、被介護者1がどこかで保護されていることを画面の色から直感的に認知できることとなる。」
「【0021】
その他、被介護者1が徘徊などにより所在不明になったことを保護者(システム利用者)が認知した場合には、保護者は伝言板サイトにアクセスし、システム上で被介護者に「行方不明」のステータスを付けることができる。この場合、伝言板サイトの画面は赤色に変色され、その後に発見者が本システムの伝言板サイトにアクセスした場合には、その発見者に注意を喚起することとなる。」
「【0027】
当該システムの利用によりシステム利用者3(保護者)が被介護者1を無事に引取り完了した場合には、システム利用者3(保護者)のみが伝言板サイト上に「解決済」のチェックつけて事象の完了のステータスをつけることが出来、これにより伝言板サイトの画面は青色に変色する。」
と記載されている(下線は、当審が付与した。)。
してみると、赤色、青色の表示色に関しては、システム利用者(保護者)が伝言板サイト上で付けるステータスに応じて表示されるものであり、黄色の表示色に関しては、発見者がカメラ付携帯電話でQRコードを読み取り、伝言板サイトにアクセスしたことを契機として表示されるものであるから、「システム上のステータス」をシステムが特定できることは明確である。
また、請求項1の「被介護者の現況に応じてシステム上のステータスを、伝言板サイトの画面を信号機を模した3色で状況に対応して表示されるように構成」という記載は、「システム上のステータス」が「保護」、「行方不明」、「解決済」という「被介護者の現況に応じ」たものであることを示しており、「現況」の意味することは明確であり、「状況」との対応関係は明確である。
したがって、請求項1,2に係る発明は明確であって、特許法第36項第2号の規定する要件を満たしている。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び前置報告で示された理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-08-12 
出願番号 特願2015-203184(P2015-203184)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 537- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 古川 哲也
中野 浩昌
発明の名称 被介護者の救護支援システム  
代理人 松浦 恵治  

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