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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L |
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管理番号 | 1376601 |
審判番号 | 不服2020-13153 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-09-18 |
確定日 | 2021-08-25 |
事件の表示 | 特願2017- 64977「光通信装置及び波長切替方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 1日出願公開、特開2018-170572、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は,平成29年3月29日を出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年12月23日付け 拒絶理由通知 令和2年 3月 9日 意見書,手続補正 令和2年 6月25日付け 拒絶査定 令和2年 9月18日 審判請求 第2 原査定の概要 原査定(令和2年6月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-8に係る発明は,引用文献1に記載された発明および引用文献2ないし4に記載の周知技術に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2017-41856号公報 2.吉野 學 他,NG-PON2における高信頼化に関する検討, 電子情報通信学会2017年総合大会講演論文集, 日本,一般社団法人電子情報通信学会,2017年3月7日, Vol.通信2,No.B-8-53,P.226 3.NTTアクセスサービスシステム研究所,新アクセスシステム アーキテクチャ(FASA)ホワイトペーパーver2.0, 日本,NTT Corp.,2017年2月28日, PP.1-39 4.特開2007-36926号公報 第3 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は,令和2年3月9日の手続補正書により補正された以下のとおりの特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定されるとおりの発明である。 「【請求項1】 複数の光信号送受信装置と,集線装置とを有する光通信装置であって, 前記光信号送受信装置は, 他の前記光信号送受信装置と異なる波長により,通信先の装置である通信先装置と光信号の送受信を行う光信号送受信部と, 前記光信号送受信部が受信した前記光信号から取得したパケットを前記集線装置に出力し,前記集線装置から受信したパケットを光信号に設定して前記光信号送受信部から出力する変換部と, 前記通信先装置とネットワークとの間の通信制御に関する機能を前記集線装置において実行するために用いられる制御用情報を保持する情報保持部とを備え, 前記集線装置は, 複数の前記光信号送受信装置から受信した前記パケットを集線して前記ネットワークに送信し,前記ネットワークから受信したパケットを複数の前記光信号送受信装置へ分離して出力する集線部と, 前記通信先装置と前記ネットワークとの間の通信制御に関する機能を実行する制御部と, 切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部とを備え, 前記波長切替機能部は,前記制御用情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記制御用情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む, ことを特徴とする光通信装置。 【請求項2】 前記波長切替機能部は,切替先の前記光信号送受信装置が使用する波長への切替を指示する波長切替指示を前記通信先装置に送信する, ことを特徴とする請求項1に記載の光通信装置。 【請求項3】 前記波長切替機能部は,切替元の前記光信号送受信装置へ出力する前記パケットをバッファに書き込む処理と,前記通信先装置に波長切替指示を送信し,当該波長切替指示に対する応答を前記通信先装置から受信した場合に,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力する処理とを行う, ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光通信装置。 【請求項4】 複数の光信号送受信装置と,集線装置とを有する光通信装置であって, 前記光信号送受信装置は, 他の前記光信号送受信装置と異なる波長により,通信先の装置である通信先装置と光信号の送受信を行う光信号送受信部と, 前記光信号送受信部が受信した前記光信号から取得したパケットを前記集線装置に出力し,前記集線装置から受信したパケットを光信号に設定して前記光信号送受信部から出力する変換部とを備え, 前記集線装置は, 複数の前記光信号送受信装置から受信した前記パケットを集線してネットワークに送信し,前記ネットワークから受信したパケットを複数の前記光信号送受信装置へ分離して出力する集線部と, 前記通信先装置と前記ネットワークとの間の通信制御に関する機能を実行する制御部と, 切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部とを備え, 前記波長切替機能部は,切替元の前記光信号送受信装置へ出力する前記パケットをバッファに書き込む処理と,前記通信先装置に波長切替指示を送信し,前記波長切替指示に対する応答を前記通信先装置から受信した場合に,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力する処理と,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力した後に,切替が終了したことを通知する処理とを行う, ことを特徴とする光通信装置。 【請求項5】 前記波長切替機能部は,前記制御部が実行する前記機能に用いられる情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む, ことを特徴とする請求項4に記載の光通信装置。 【請求項6】 前記波長切替機能部は,切替先の前記光信号送受信装置が使用する波長への切替を指示する波長切替指示を前記通信先装置に送信する, ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の光通信装置。 【請求項7】 前記制御部が実行する前記機能は,前記通信先装置の認証機能と,前記通信先装置と前記ネットワークとの間の通信のブリッジ機能と,前記パケットの優先制御機能と,保守機能とのうち一以上を含む, ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光通信装置。 【請求項8】 複数の光信号送受信装置と,集線装置とを有する光通信装置に用いられる波長切替方法であって, 前記光信号送受信装置が, 他の前記光信号送受信装置と異なる波長により,通信先の装置である通信先装置からの光信号を受信し,受信した前記光信号から取得したパケットを前記集線装置に出力する上り信号処理ステップと, 前記集線装置から受信したパケットを光信号に設定して他の前記光信号送受信装置と異なる波長により前記通信先装置に送信する下り信号処理ステップと, 前記通信先装置とネットワークとの間の通信制御に関する機能を前記集線装置において実行するために用いられる制御用情報を保持する情報保持ステップとを有し, 前記集線装置が, 複数の前記光信号送受信装置から受信した前記パケットを集線して前記ネットワークに送信する集線ステップと, 前記ネットワークから受信したパケットを複数の前記光信号送受信装置へ分離して出力する分離ステップと, 前記通信先装置と前記ネットワークとの間の通信制御に関する機能を実行する制御ステップと, 切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能実行ステップと, を有し, 前記波長切替機能実行ステップにおいては,前記制御用情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記制御用情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む, ことを特徴とする波長切替方法。」 第4 引用文献および引用発明 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 この発明は,局側終端装置,加入者側終端装置,光通信システム,経路切替方法,経路切替プログラム,及び波長切替方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年,一般個人宅へ高速・広帯域なブロードバンドサービスを提供する目的で,伝送路に光ファイバを用いたFTTH(Fiber To The Home)と呼ばれるサービスが普及してきている。FTTHによるブロードバンドサービスの提供には,受動型光加入者ネットワーク(PON:Passive Optical Network)と呼ばれる光アクセスネットワークが多く利用されている。 【0003】 PONは,1つの局側終端装置(OLT:Optical Line Terminal)と,複数の加入者側終端装置(ONU:Optical Network Unit)とを,光スプリッタ(光カプラ)と呼ばれる光受動素子を用いて1本の光ケーブルを分岐させることにより,1対多に接続して構成される。PONでは,光ファイバやOLTなどを複数の加入者で共有することにより,経済的にFTTHサービスを提供することができる。 【0004】 PONには,10G-EPON(10 Gigabit Ethernet(登録商標)PON)と呼ばれるものがある(例えば,非特許文献1参照)。この非特許文献1に記載されているPONでは,ONUからOLTへ向かう通信(上り通信)には,TDMA(Time Division Multiple Access)技術が用いられ,各ONUからの信号の衝突を回避している。このTDMA技術を用いるPONは,TDM-PONとも呼ばれる。 【0005】 さらに,将来の光アクセスネットワークにおける通信需要の増大に応えるため,伝送レートが10Gbpsを超える次世代のPONとして,複数のTDM-PONをWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術で1つのPONインフラストラクチャー(PONインフラ)上に構築する,WDM/TDM-PON(TWDM-PON)に関する研究開発が進展している(例えば,特許文献1参照)。TWDM-PONを用いることにより,PONインフラにおける伝送容量を増大させることができる。 (中略) 【0018】 一方,一般個人宅へ提供されるブロードバンドサービスには放送型のブロードキャストサービスも含まれ,ブロードキャストサービスの提供中において,パケットロスなどのサービス品質の劣化を発生させずに波長切替動作を実施できることが必要となる。 【0019】 そのようなブロードキャストサービスの一例として,近年,VOD(Video On Demand)による超高精細4k映像配信サービスが開始されており,今後は,TWDM-PONシステムの広帯域性を利用した4k映像ブロードキャスト配信サービスなどの提供も想定されている。例えば,多チャンネルの4k映像を配信する際,波長λ1で1ch?100ch,波長λ2で101ch?200chを配信し,ONU側で受信したい波長及びチャンネルを選択して映像を受信するといった映像配信サービスも考えられる。 【0020】 しかしながら,このような4k映像配信サービスを提供するTWDM-PONシステムにおいて,例えば,波長λ1のONU配下の加入者から101chの視聴要求が発生した場合,非特許文献2に記載される波長切替シーケンスでは,OLTの裁量の下,OLTからの制御による波長切替制御であるため,ONUの波長切替を実施できず,希望のチャンネルが視聴できない。また,ONUが勝手に波長切替を実施すると,映像配信サービス以外の,それまで受けられていたインターネットデータ通信などのサービスが切断してしまうという課題がある。 【0021】 この発明は,上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は,収容されるONUの台数が多い場合であっても,パケットロスを発生させることなくONUとの接続を動的に変更可能なOLTと,ONUとOLTとの接続を変更する経路切替方法とを,回路規模を増大させることなく提供することにある。また,この発明の目的は,ブロードキャストサービスの提供中においても,パケットロスを発生させることなくONUとの接続を動的に変更可能なOLTと,ONUとOLTとの接続を変更する経路切替方法とを提供することにある。さらに,本発明の目的は,従来のOLTの裁量の下,OLTからの制御による波長切替に加え,ONUの裁量の下,ONUからの要求により波長切替を実施可能なONU,TWDM-PONシステム,及び波長切替方法を実現することにある。」 イ 「【0088】 次に,図4及び図5を参照して,本実施の形態に係る波長切替方法について説明する。 以下で説明する波長切替方法は,ONUの裁量の下,ONUからの要求により波長切替を実行する形態である。」 ウ 図4 エ 「【0090】 図4は,本実施の形態に係る波長切替方法を説明するための,TWDM-PON10の要部構成図である。なお,一般にPONシステムでは,OLTとONU間の通信路を確立するための制御情報や,通信路確立後の上りデータ送信制御用情報を,OLTとONU間で送受信する機能が必要であるが,ここでは波長切替制御に必要となる機能についてのみ説明する。 【0091】 OLT100は,OSU振分多重部124,複数の光送受信器132(132-1?132-n),複数のOSU200(200-1?200-n),及びOLT制御部140を含んで構成されている。各光送受信器132と各OSU200とは1対1に接続され,OSU200-1から出力された信号は,光送受信器132-1に入力され,光送受信器132-1に割り付けられた送信波長で出力される。また光送受信器132-1に入力された光信号は,光送受信器132-1に割り付けられた受信波長のみが受信され,電気信号に変換された後,OSU200-1へ出力される。 【0092】 OSU振分多重部124は,SNIから入力されるデータの宛先がどのONU宛か,また,そのONUがどのOSUに接続されているかを識別し,該当するOSUへ振り分けて出力する。すなわち,OSU振分多重部124は,図2におけるLLID識別部110の機能とOSU振分部120の機能とを併せもっている。例えば,入力データが映像配信データの場合は,そのデータをどのOSUへ配信するかを識別し,該当するOSUへ振り分けて出力する。また各OSUから出力される上りデータを多重してSNIへ出力する。 【0093】 OSU200は,下り制御信号送信部202,上り制御信号受信部204を含んで構成されている。 【0094】 下り制御信号送信部202は,OLT制御部140からの切替指示通知により,波長切替制御メッセージを生成し,OSU振分多重部124から出力されるデータと多重して光送受信器132へ出力する。上り制御信号受信部204は,光送受信器132から出力される信号を受信し,その受信データから,波長切替要求メッセージを抽出して,OLT制御部140へ切替要求を通知する。また,その受信データから,波長切替応答メッセージを抽出して,OLT制御部140へ切替完了を通知する。それ以外のデータはOSU振分多重部124へ出力する。 【0095】 OLT制御部140は,各ONU300の波長割当を管理し,下り制御信号送信部202及び上り制御信号受信部204を介して,波長切替制御メッセージ,波長切替応答メッセージ,波長切替要求メッセージをONU300と送受信することで,波長切替制御を実行する。 【0096】 ONU300は,上り制御信号受信部304,上り制御信号送信部306,下り制御信号受信部308,下り制御信号送信部310,ONU制御部302,波長切替制御部312,及び波長可変光送受信器314を含んで構成されている。 【0097】 上り制御信号受信部304は,UNI(User Network Interface)から入力されるSTB(Set Top Box)500からのチャンネル切替要求メッセージを抽出し,ONU制御部302へ通知する。それ以外のデータは上り制御信号送信部306へ出力する。 【0098】 上り制御信号送信部306は,ONU制御部302の指示により,波長切替応答メッセージおよび波長切替要求メッセージを生成し,上り制御信号受信部304から出力されるデータと多重して波長可変光送受信器314へ出力する。 【0099】 下り制御信号受信部308は,波長可変光送受信器314から出力される信号を受信し,その受信データから,波長切替制御メッセージを抽出して,ONU制御部302へ通知する。それ以外のデータは下り制御信号送信部310へ出力する。 【0100】 下り制御信号送信部310は,ONU制御部302の指示により,チャンネル切替完了メッセージを生成し,下り制御信号受信部308から出力されるデータと多重して,UNIから出力する。 【0101】 ONU制御部302は,OLT100から切替要求を示す波長切替制御メッセージを受信した場合,指定される波長を波長切替制御部312へ通知する。また,波長切替制御部312での波長切替完了後,波長切替応答メッセージを,上り制御信号送信部306を介してOLT100に通知する。一方,STB500からチャンネル切替要求メッセージを受信した場合は,要求チャンネル番号から切替するべき波長を解析し,切替要求する波長情報を含んだ波長切替要求メッセージを,上り制御信号送信部306を介してOLT100に通知する。また,OLT100から切替完了を示す波長切替制御メッセージを受信した場合は,チャンネル切替完了メッセージを,下り制御信号送信部310を介してSTB500に通知する。 【0102】 波長切替制御部312は,波長可変光送受信器314の動作波長が,ONU制御部302より通知された波長になるよう,波長可変光送受信器314の波長設定制御を行う。波長可変光送受信器314は,上り制御信号送信部306から出力された信号を,波長切替制御部312により制御された上り波長にて出力する。また,波長可変光送受信器314に入力された光信号から,波長切替制御部312において制御された下り波長のみを受信し,電気信号に変換した後,下り制御信号受信部308へ出力する。 【0103】 OLT100の各光送受信器132は,光スプリッタ400を介して,各ONU300の波長可変光送受信器314に接続されている。」 オ 図5 カ 「【0104】 次に図5を参照して,本実施の形態に係る波長切替方法の波長切替シーケンスについて説明する。ここでは,OSU200-1が波長λ1,OSU200-2が波長λ2に設定されており,波長λ1で1ch?100ch,波長λ2で101ch?200chの映像が配信されているものとする。また,以下では,ONU300-1がOSU200-1に接続されている状態において,ONU300-1配下の加入者がSTB500に対して101chの視聴リクエストをした場合の動作例を説明する。なお,以下の説明において,[1]等の記載は,図5中に示された符号[1]等に対応している。また,以下の説明では,ONU300-1をONU1と,OSU200-1をOSU1と,OSU-2をOSU2と,各々表記する。 【0105】 ONU1配下の加入者が,STB500に対して101chの視聴リクエストを行うと,STB500はONU1に対して,[1]チャンネル切替要求メッセージ(101ch)を送信する。 【0106】 上り制御信号受信部304を介して,[1]チャンネル切替要求メッセージ(101ch)を受信したONU1のONU制御部302は,切替要求されたチャンネルがどの波長に属しているかを解析する。この場合,結果はλ2でありONU1の現在の波長λ1と一致しないため,上り制御信号送信部306を介して,[2]波長切替要求メッセージ(λ2)をOSU1に送信する。なお,解析結果がONU1の現在の波長と一致する場合は,波長切替要求メッセージは送信せず,チャンネル切替完了メッセージ(101ch)をSTB500に通知する。 【0107】 [2]波長切替要求メッセージ(λ2)を受信したOSU1の上り制御信号受信部204は,OLT制御部140に[3]切替要求(ONU1,λ2)を通知する。 【0108】 [3]切替要求(ONU1,λ2)を受信したOLT制御部140は,OSU1およびOSU2に対して,[4]切替指示(ONU1,λ2)を通知する。 【0109】 [4]切替指示(ONU1,λ2)を受信したOSU1は,下り制御信号送信部202からONU1宛に,[5]波長切替制御メッセージ(要求,λ2)を送信すると共に,図2には示していないが,波長切替応答メッセージ用グラントを周期的にONU1に送信する。なお,「グラント」とは,送信許可を示す信号である。 【0110】 [4]切替指示(ONU1,λ2)を受信したOSU2は,図2には示していないが,波長切替応答メッセージ用グラントをONU1に周期的に送信する。 【0111】 [5]波長切替制御メッセージ(要求,λ2)を受信したONU1のONU制御部302は,上り制御信号送信部306を介して,OSU1に,[6]波長切替応答メッセージ(応答)を送信すると共に,波長切替制御メッセージ(要求,λ2)の指示に従い,波長切替制御部312に対して,波長λ2への波長切替を指示する。波長切替制御部312は,波長可変光送受信器314の波長をλ2に変更する。 【0112】 波長可変光送受信器314の波長切替が完了し,波長がλ2に変更されたONU1は,OSU2からの波長切替応答メッセージ用グラントを受信すると,上り制御信号送信部306を介して,[7]波長切替応答メッセージ(完了)をOSU2へ送信する。 【0113】 [7]波長切替応答メッセージ(完了)を受信したOSU2は,OLT制御部140に,[8]切替完了(ONU1)を通知する。 【0114】 [8]切替完了(ONU1)を受信したOLT制御部140は,OSU1及びOSU2に対して,[9]切替完了(ONU1)を通知する。 【0115】 [9]切替完了(ONU1)を受信したOSU2は,下り制御信号送信部202から[10]波長切替制御メッセージ(完了)をONU1へ送信し,ONU1への波長切替応答メッセージ用グラントの送信を停止する。同様に,[9]切替完了(ONU1)を受信したOSU1は,ONU1への波長切替応答メッセージ用グラントの送信を停止する。 【0116】 [10]波長切替制御メッセージ(完了)を受信したONU1は,[11]チャンネル切替完了(101ch)をSTB500に通知する。 【0117】 [11]チャンネル切替完了(101ch)を受信したSTB500は,チャンネルを101に変更し映像を受信する。 【0118】 以上に示す波長切替手順を実行することにより,波長ごとに多チャンネルの4k映像配信サービスを提供するTWDM-PONシステムにおいて,ONU配下の加入者からの視聴リクエストをトリガ(契機)として,それまで受けていたデータ通信等のサービスを中断することなく,異なる波長で配信される映像チャンネルを受信することが可能となる。」 2 引用発明 上記1の引用文献1の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「多チャンネルの4k映像を配信する際,波長λ1で1ch?100ch,波長λ2で101ch?200chを配信し,ONU側で受信したい波長及びチャンネルを選択して映像を受信するといった映像配信サービスのようなブロードキャストサービスの提供中においても,パケットロスを発生させることなくONUとの接続を動的に変更可能なOLTであって, OLT100は,OSU振分多重部124,複数の光送受信器132(132-1?132-n),複数のOSU200(200-1?200-n),及びOLT制御部140を含んでおり, 各光送受信器132と各OSU200とは1対1に接続され,OSU200-1から出力された信号は,光送受信器132-1に入力され,光送受信器132-1に割り付けられた送信波長で出力され,また光送受信器132-1に入力された光信号は,光送受信器132-1に割り付けられた受信波長のみが受信され,電気信号に変換された後,OSU200-1へ出力されており, OSU振分多重部124は,SNIから入力されるデータの宛先がどのONU宛か,また,そのONUがどのOSUに接続されているかを識別し,該当するOSUへ振り分けて出力しており,すなわち,OSU振分多重部124は,LLID識別部110の機能とOSU振分部120の機能とを併せもっており,また各OSUから出力される上りデータを多重してSNIへ出力しており, OSU200は,下り制御信号送信部202,上り制御信号受信部204を含んで構成され, 下り制御信号送信部202は,OLT制御部140からの切替指示通知により,波長切替制御メッセージを生成し,OSU振分多重部124から出力されるデータと多重して光送受信器132へ出力しており, 上り制御信号受信部204は,光送受信器132から出力される信号を受信し,その受信データから,波長切替要求メッセージを抽出して,OLT制御部140へ切替要求を通知し,また,その受信データから,波長切替応答メッセージを抽出して,OLT制御部140へ切替完了を通知しており, OLT制御部140は,各ONU300の波長割当を管理し,下り制御信号送信部202及び上り制御信号受信部204を介して,波長切替制御メッセージ,波長切替応答メッセージ,波長切替要求メッセージをONU300と送受信することで,波長切替制御を実行しており, ONU300は,上り制御信号受信部304,上り制御信号送信部306,下り制御信号受信部308,下り制御信号送信部310,ONU制御部302,波長切替制御部312,及び波長可変光送受信器314を含んで構成されており, 上り制御信号受信部304は,UNI(User Network Interface)から入力されるSTB(Set Top Box)500からのチャンネル切替要求メッセージを抽出し,ONU制御部302へ通知し,それ以外のデータは上り制御信号送信部306へ出力しており, 上り制御信号送信部306は,ONU制御部302の指示により,波長切替応答メッセージおよび波長切替要求メッセージを生成し,上り制御信号受信部304から出力されるデータと多重して波長可変光送受信器314へ出力しており, 下り制御信号受信部308は,波長可変光送受信器314から出力される信号を受信し,その受信データから,波長切替制御メッセージを抽出して,ONU制御部302へ通知する。それ以外のデータは下り制御信号送信部310へ出力しており, 下り制御信号送信部310は,ONU制御部302の指示により,チャンネル切替完了メッセージを生成し,下り制御信号受信部308から出力されるデータと多重して,UNIから出力しており, ONU制御部302は,OLT100から切替要求を示す波長切替制御メッセージを受信した場合,指定される波長を波長切替制御部312へ通知し,また,波長切替制御部312での波長切替完了後,波長切替応答メッセージを,上り制御信号送信部306を介してOLT100に通知し,一方,STB500からチャンネル切替要求メッセージを受信した場合は,要求チャンネル番号から切替するべき波長を解析し,切替要求する波長情報を含んだ波長切替要求メッセージを,上り制御信号送信部306を介してOLT100に通知し,また,OLT100から切替完了を示す波長切替制御メッセージを受信した場合は,チャンネル切替完了メッセージを,下り制御信号送信部310を介してSTB500に通知しており, 波長切替制御部312は,波長可変光送受信器314の動作波長が,ONU制御部302より通知された波長になるよう,波長可変光送受信器314の波長設定制御を行っており, 波長可変光送受信器314は,上り制御信号送信部306から出力された信号を,波長切替制御部312により制御された上り波長にて出力し,また,波長可変光送受信器314に入力された光信号から,波長切替制御部312において制御された下り波長のみを受信し,電気信号に変換した後,下り制御信号受信部308へ出力しており, OLT100の各光送受信器132は,光スプリッタ400を介して,各ONU300の波長可変光送受信器314に接続されており, 波長切替シーケンスにおいて, ONU1配下の加入者が,STB500に対して101chの視聴リクエストを行うと,STB500はONU1に対して,[1]チャンネル切替要求メッセージ(101ch)を送信し, 上り制御信号受信部304を介して,[1]チャンネル切替要求メッセージ(101ch)を受信したONU1のONU制御部302は,切替要求されたチャンネルがどの波長に属しているかを解析し,この場合,結果はλ2でありONU1の現在の波長λ1と一致しないため,上り制御信号送信部306を介して,[2]波長切替要求メッセージ(λ2)をOSU1に送信し, [2]波長切替要求メッセージ(λ2)を受信したOSU1の上り制御信号受信部204は,OLT制御部140に[3]切替要求(ONU1,λ2)を通知し, 切替要求(ONU1,λ2)を受信したOLT制御部140は,OSU1およびOSU2に対して,[4]切替指示(ONU1,λ2)を通知し, [4]切替指示(ONU1,λ2)を受信したOSU1は,下り制御信号送信部202からONU1宛に,[5]波長切替制御メッセージ(要求,λ2)を送信し, [5]波長切替制御メッセージ(要求,λ2)を受信したONU1のONU制御部302は,上り制御信号送信部306を介して,OSU1に,[6]波長切替応答メッセージ(応答)を送信すると共に,波長切替制御メッセージ(要求,λ2)の指示に従い,波長切替制御部312に対して,波長λ2への波長切替を指示し, 波長切替制御部312は,波長可変光送受信器314の波長をλ2に変更する 波長切替手順を実行することにより,波長ごとに多チャンネルの4k映像配信サービスを提供するTWDM-PONシステムにおいて,ONU配下の加入者からの視聴リクエストをトリガ(契機)として,それまで受けていたデータ通信等のサービスを中断することなく,異なる波長で配信される映像チャンネルを受信することが可能となる OLT。」 3 引用文献2の記載事項および記載技術 ア 原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 (ア) 「1.はじめに アクセスネットワーク装置の部品化[1]の一形態として,Pizza-Box型OSU(Optical Subscriber Unit)とWhite Box Switch等の装置を組み合わせてOLT(Optical Line Terminal)とし,それらを遠隔のコントローラで制御する構成がある。この構成を前提とし,NG-PON2[2]における波長切替を用いた高信頼化を検討するにあたって,高信頼化で取り得るNG-PON2の装置構成について提案し,それらの評価を行うと共に,評価結果の良かった構成について波長切替に関する検討を行ったので報告する。」(226頁左欄1?9行) (イ) 図1(226頁右欄上) (ウ) 「2.提案構成 高信頼化で取り得るNG-PON2の構成例を図1に示す。左上の構成を例に,信号の流れと,故障時の動作を説明する。信号は,右端のSW(Switch)で,一点鎖線で示すOSUに振り分けられ,OSU内SWでCT(Channel Termination)に振分けられ,光分岐網を介し,ONU(Optical Network Unit)で送受信される。この構成では,CT故障時に,故障CT配下のONUを,同一OSU内の別波長CT配下となるよう,ONUの波長切替を行うことで高信頼化を図れる。しかし,OSU故障には対応していない。」(226頁左欄10?18行) (エ) 図2(226頁右欄下) (オ) 「3.波長切替 CT-SW間で連携した波長切替における切替指示の経路を図2に示す。ここで,OSUとSWは別コントローラ配下で,それぞれ共通信号線を介して接続するものとした。図には,OSU故障をOSUコントローラが検出し,(A)SWコントローラ経由,(B)直接,(C)OSU経由の3経路のいずれかで,OSUコントローラからSWに切替指示を行う例を示した。」 イ 引用文献2に記載の技術 上記アの特に下線部に着目すると,引用文献2には以下の様な技術(以下,「引用文献2記載技術」という。)が開示されているといえる。 「Pizza-Box型OSU(Optical Subscriber Unit)とWhite Box Switch等の装置を組み合わせてOLT(Optical Line Terminal)とし,それらを遠隔のコントローラで制御する構成において, 波長切替を用いた高信頼化で取り得るNG-PON2の装置構成であって, 信号は,SW(Switch)で,OSUに振り分けられ,OSU内SWでCT(Channel Termination)に振分けられ,光分岐網を介し,ONU(Optical Network Unit)で送受信されており, CT故障時に,故障CT配下のONUを,同一OSU内の別波長CT配下となるよう,ONUの波長切替を行うことで高信頼化を図っており, OSUとSWは別コントローラ配下で,それぞれ共通信号線を介して接続しており, OSU故障をOSUコントローラが検出し,SWコントローラ経由で,OSUコントローラからSWに切替指示を行う NG-PON2の装置構成。」 4 引用文献3の記載事項および記載技術 ア 原査定の拒絶理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 (ア) 図2.1.-1(13頁上) (イ) 「NG-PON2 OLTを例にとり,FASAに基づくアクセスネットワーク装置の構成例を図2 2.-1に示す。図は,FASA基盤を複数のハードウェア(NG-PON2ボックス,ホワイトボックススイッチ)で構成した例を示している。NG-PON2ボックスとホワイトボックススイッチとは,Ethernet等の標準的なプロトコルで接続した。機能の追加や入替は,FASA基盤のFASAアプリケーションAPI上へのFASAアプリケーションの追加や入替により行う。FASAアプリケーションAPI用ミドルウェアは,ベンダや方式の差異によるハードウェア及びソフトウェアの違いを吸収し,FASAアプリケーションAPIを提供するためのソフトウェアである。」(13頁1?8行) (ウ) 図2.2.?1(14頁上) イ 引用文献3に記載の技術 上記アの特に下線部に着目すると,引用文献3には以下の様な技術(以下,「引用文献3記載技術」という。)が開示されているといえる。 「FASAに基づくアクセスネットワーク装置の構成であって, FASA基盤を複数のハードウェア(NG-PON2ボックス,ホワイトボックススイッチ)で構成し,NG-PON2ボックスとホワイトボックススイッチとは,Ethernet等の標準的なプロトコルで接続しており, 機能の追加や入替は,FASA基盤のFASAアプリケーションAPI上へのFASAアプリケーションの追加や入替により行っており, FASAアプリケーションAPI用ミドルウェアは,ベンダや方式の差異によるハードウェア及びソフトウェアの違いを吸収し,FASAアプリケーションAPIを提供するためのソフトウェアである アクセスネットワーク装置。」 5 引用文献4の記載事項および記載技術 ア 原査定の拒絶理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。 (ア) 「【技術分野】 【0001】 本発明は,光伝送システムの冗長構成を有する光終端システムに関する。 【背景技術】 【0002】 PON(Passive Optical Network)システムは,センター局に配置される光終端装置OLT(Optical Line Terminal)と複数のユーザ宅の光終端装置ONU(Optical Network Unit)とを,光ファイバ及び光スプリッタからなる受動光素子を介して接続する光伝送システムである(例えば,特許文献1)。 【0003】 PONシステムは,インターネットのアクセス回線として普及するに留まらず,放送,データ通信及びデータを複合的に提供するシステムとして利用されつつある。 【特許文献1】特開2005-175599公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 放送や電話にも利用する場合,ネットワーク機器の故障による接続断は可能な限り避けなければならない。OLTの交換は,配下の全ユーザへのサービスの一時停止に繋がる。 【0005】 本発明は,冗長構成により耐障害性能を高めた光終端システムを提示することを目的とする。 (中略) 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば,現用機から予備機への切り替えを迅速に行える。予備機が,現用機の保有する管理情報を利用できるので,移行に伴う空白期間を短縮できる。」 (イ) 図1 (ウ) 「【0011】 図1は,本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。本実施例では,現用の3つのOLT10a,10b,10cと,予備の1つのOLT10dと,OLT10a,10b又は10cの故障時にOLT10dに切り替える制御装置12が,同一の架の異なるスロットに収容されている。OLT10a,10b,10c,10dは,特許請求の範囲にいう光終端ユニットに対応する。制御装置12は,障害の発生した何れかのOLT10a,10b,10cから予備のOLT10dに管理情報を転送するために一時的に,管理情報を記憶する記憶装置13を具備する。 【0012】 OLT10aの光入出力ポートは,光ファイバ14a及び光カップラ16aからなる第1のPON伝送路を介して複数のONU18a-1?18a-nに接続する。同様に,OLT10bの光入出力ポートは,光ファイバ14b及び光カップラ16bからなる第2のPON伝送路を介して複数のONU18b-1?18b-nに接続する。OLT10cの光入出力ポートは,光ファイバ14c及び光カップラ16cからなる第3のPON伝送路を介して複数のONU18c-1?18c-nに接続する。本実施例では,3つのPONシステムが1つのセンター局に収容されている。3つのPONシステムのそれぞれに収容されるユーザ数(ONU数)を等しくnとしたが,これが,PONシステム上の収容可能ユーザ値が等しいことを示すものであり,一般的には,現実のユーザ数は互いに異なる。 【0013】 予備OLT10dの光入出力ポートは,光ファイバ14dを介して光スイッチ20の光セレクタ22の共通接点に接続する。光スイッチ20の光セレクタ22は,選択可能な接点22a?22dを具備する。接点22aは,光ファイバ14a上の光カップラ24aに接続し,接点22bは,光ファイバ14b上の光カップラ24bに接続し,接点22cは,光ファイバ14c上の光カップラ24cに接続する。光カップラ24aは,OLT10aの光入出力ポートから出力された信号光,及び,光セレクタ22の接点22aからの信号光を光カップラ16aに供給し,且つ,光カップラ16aからの信号光を2分割し,一方をOLT10aの光入出力ポートに供給し,他方を光セレクタ22の接点22aに供給する光素子である。光カップラ24b,24cも,光カップラ24aと同様の光素子からなる。 【0014】 接点22dは,無反射終端されている。光セレクタ22は,OLT10dを待機させているときに接点22dに接続する。これにより,予備状態のOLT10dを信号光出力状態にしておいても,その信号光が,何れかのPON伝送路に流れ込まないようにできる。即ち,OLT10dを電源投入状態で待機させることができる。 【0015】 光パワーモニタ26は,OLT10a?10dの光入出力ポートから出力される下り信号光の光パワーをモニタし,その結果を制御装置12に通知する。OLT10a?10dの光入出力ポートから出力される信号光をモニタするために,光ファイバ14a?14d上に,それぞれ光分波器28a?28dを配置してあり,光分波器28a?28dで分波された下り信号光が,光パワーモニタ26に入力する。 【0016】 OLT10a?10dの上流側には,OLT10a?10cの何れか1つの障害時に,障害のあるOLTから予備のOLT10dに切り替える電気スイッチ30が配置される。電気スイッチ30は,具体的には,上位ネットワークをOLT10a又はOLT10dの電気入出力ポートに選択的に接続するスイッチ30aと,上位ネットワークをOLT10b又はOLT10dの電気入出力ポートに選択的に接続するスイッチ30bと,上位ネットワークをOLT10c又はOLT10dの電気入出力ポートに選択的に接続するスイッチ30cとからなる。 【0017】 スイッチ30aは,通常時には,上位ネットワークとOLT10aの電気入出力ポートとを接続し,OLT10aの障害時には,上位ネットワークとOLT10dの電気入出力ポートとを接続する。同様に,スイッチ30bは,通常時には,上位ネットワークとOLT10bの電気入出力ポートとを接続し,OLT10bの障害時には,上位ネットワークとOLT10dの電気入出力ポートとを接続する。スイッチ30cは,通常時には,上位ネットワークとOLT10cの電気入出力ポートとを接続し,OLT10cの障害時には,上位ネットワークとOLT10dの電気入出力ポートとを接続する。」 (エ) 「【0021】 CPU46は,起動時に,配下のONU18a-1?18a-nと情報をやり取り行い,種々の管理情報(具体的には,ONUの種別(メーカ及びファームウエア等)といった情報)と設定情報(例えば,各ONU18a-1?18a-nの各サービスに割り当てるロジカルリンクの情報等)をRAM54に格納する。本明細書では,管理情報と設定情報をまとめて,管理情報と称する。CPU46はまた,新たに電源がオンになったONUに対して,RAM54の管理情報を更新する。CPU46はまた,OLT10aの動作状況をモニタしており,異常発生時にその旨を制御装置12に通知する機能を具備する。 【0022】 OLT10b,10c,10dもまた,OLT10aと同じ構成及び機能を具備する。 【0023】 制御装置12は,OLT10a,10b,10cからの警告,又は光パワーモニタ26からの通知に従い,障害の発生した何れかのOLT10a?10cを予備のOLT10dに切り替える。オペレータからの切り替え指示により,何れかのOLT10a,10b,10cを予備のOLT10dに切り替えることもある。光パワーモニタ26は,各OLT10a?10dから出力される下り信号光のパワーをモニタしているので,光パワーの一定以上の低下や,既定値以上の光パワーといった障害の発生を検知でき,障害の発生したOLTを制御装置12に通知する。 【0024】 図2は,制御装置12のOLT切り替えのフローチャートを示す。例えば,OLT10aで障害が発生したとする。制御装置12は,OLT10aからの警告,又は,光パワーモニタ26からの通知に従い,OLT10aの障害発生を検出すると(S1),OLT10aにRAM54に保存されている管理情報の転送を要求する(S2)。制御装置12は,OLT10aからの管理情報を記憶装置13に格納する。 【0025】 OLT10aからの全管理情報の受信に成功すると(S3),制御装置12は,光スイッチ20及び電気スイッチ30を,OLT10aから予備のOLT10dに切り替える(S4)。制御装置12は,記憶装置13に格納したOLT10aからの管理情報を予備のOLT10dに転送し(S5),引き継ぎをOLT10dに指示する(S6)。予備のOLT10dのCPU46は,制御装置12からの管理情報をRAM54に格納し,この管理情報を使って,ONU18a-1?18a-nの管理と,ONU18a-1?18a-nと上位ネットワーク間の通信の仲介を引き継ぐ。」 イ 引用文献4に記載の技術 上記アの特に下線部に着目すると,引用文献4には以下の様な技術(以下,「引用文献4記載技術」という。)が開示されているといえる。 「光伝送システムの冗長構成を有する光終端システムであって, 現用機から予備機への切り替えを迅速に行え,予備機が,現用機の保有する管理情報を利用できるので,移行に伴う空白期間を短縮できる光終端システムであり, 現用の3つのOLT10a,10b,10cと,予備の1つのOLT10dと,OLT10a,10b又は10cの故障時にOLT10dに切り替える制御装置12が,同一の架の異なるスロットに収容されており, 制御装置12は,障害の発生した何れかのOLT10a,10b,10cから予備のOLT10dに管理情報を転送するために一時的に,管理情報を記憶する記憶装置13を具備しており, OLT10aの光入出力ポートは,光ファイバ14a及び光カップラ16aからなる第1のPON伝送路を介して複数のONU18a-1?18a-nに接続しており, OLT10bの光入出力ポートは,光ファイバ14b及び光カップラ16bからなる第2のPON伝送路を介して複数のONU18b-1?18b-nに接続しており, OLT10cの光入出力ポートは,光ファイバ14c及び光カップラ16cからなる第3のPON伝送路を介して複数のONU18c-1?18c-nに接続しており, 予備OLT10dの光入出力ポートは,光ファイバ14dを介して光スイッチ20の光セレクタ22の共通接点に接続しており, OLT10dを電源投入状態で待機させており, OLT10a?10dの上流側には,OLT10a?10cの何れか1つの障害時に,障害のあるOLTから予備のOLT10dに切り替える電気スイッチ30が配置されており,電気スイッチ30は,具体的には,上位ネットワークをOLT10a又はOLT10dの電気入出力ポートに選択的に接続するスイッチ30aと,上位ネットワークをOLT10b又はOLT10dの電気入出力ポートに選択的に接続するスイッチ30bと,上位ネットワークをOLT10c又はOLT10dの電気入出力ポートに選択的に接続するスイッチ30cとからなっており, スイッチ30aは,通常時には,上位ネットワークとOLT10aの電気入出力ポートとを接続し,OLT10aの障害時には,上位ネットワークとOLT10dの電気入出力ポートとを接続しており, スイッチ30bは,通常時には,上位ネットワークとOLT10bの電気入出力ポートとを接続し,OLT10bの障害時には,上位ネットワークとOLT10dの電気入出力ポートとを接続しており, スイッチ30cは,通常時には,上位ネットワークとOLT10cの電気入出力ポートとを接続し,OLT10cの障害時には,上位ネットワークとOLT10dの電気入出力ポートとを接続しており, CPU46は,起動時に,配下のONU18a-1?18a-nと情報をやり取り行い,種々の管理情報(具体的には,ONUの種別(メーカ及びファームウエア等)といった情報)と設定情報(例えば,各ONU18a-1?18a-nの各サービスに割り当てるロジカルリンクの情報等)をRAM54に格納しており,管理情報と設定情報をまとめて,管理情報と称し, CPU46はまた,新たに電源がオンになったONUに対して,RAM54の管理情報を更新しており, CPU46はまた,OLT10aの動作状況をモニタしており,異常発生時にその旨を制御装置12に通知する機能を具備しており, 制御装置12は,OLT10a,10b,10cからの警告,又は光パワーモニタ26からの通知に従い,障害の発生した何れかのOLT10a?10cを予備のOLT10dに切り替えており, 制御装置12は,OLT10aからの警告,又は,光パワーモニタ26からの通知に従い,OLT10aの障害発生を検出すると(S1),OLT10aにRAM54に保存されている管理情報の転送を要求し,OLT10aからの管理情報を記憶装置13に格納しており, 制御装置12のOLT切り替えのフローにおいて, OLT10aで障害が発生した際,制御装置12は,OLT10aからの警告,又は,光パワーモニタ26からの通知に従い,OLT10aの障害発生を検出すると(S1),OLT10aにRAM54に保存されている管理情報の転送を要求し,OLT10aからの管理情報を記憶装置13に格納し, 制御装置12は,光スイッチ20及び電気スイッチ30を,OLT10aから予備のOLT10dに切り替え,記憶装置13に格納したOLT10aからの管理情報を予備のOLT10dに転送し(S5),引き継ぎをOLT10dに指示し, 予備のOLT10dのCPU46は,制御装置12からの管理情報をRAM54に格納し,この管理情報を使って,ONU18a-1?18a-nの管理と,ONU18a-1?18a-nと上位ネットワーク間の通信の仲介を引き継ぐ 光終端システム。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことが認められる。 ア 引用発明において,「OLT100は,OSU振分多重部124,複数の光送受信器132(132-1?132-n),複数のOSU200(200-1?200-n),及びOLT制御部140を含んでおり,各光送受信器132と各OSU200とは1対1に接続され,OSU200-1から出力された信号は,光送受信器132-1に入力され,光送受信器132-1に割り付けられた送信波長で出力され,また光送受信器132-1に入力された光信号は,光送受信器132-1に割り付けられた受信波長のみが受信され,電気信号に変換された後,OSU200-1へ出力されており,OSU振分多重部124は,SNIから入力されるデータの宛先がどのONU宛か,また,そのONUがどのOSUに接続されているかを識別し,該当するOSUへ振り分けて出力しており,」「波長ごとに多チャンネルの4k映像配信サービスを提供するTWDM-PONシステムにおいて,ONU配下の加入者からの視聴リクエストをトリガ(契機)として,それまで受けていたデータ通信等のサービスを中断することなく,異なる波長で配信される映像チャンネルを受信することが可能となる」とされている。 ここで,引用発明の「複数の光送受信器132(132-1?132-n)」,「OSU振分多重部124」,「OLT100」が,それぞれ,本願発明1の「複数の光信号送受信装置」,「集線装置」,「光通信装置」に対応する。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「複数の光信号送受信装置と,集線装置とを有する光通信装置であ」る点で共通しているといえる。 イ 引用発明では,「多チャンネルの4k映像を配信する際,波長λ1で1ch?100ch,波長λ2で101ch?200chを配信し,ONU側で受信したい波長及びチャンネルを選択して映像を受信するといった映像配信サービスのようなブロードキャストサービスの提供中においても,パケットロスを発生させることなくONUとの接続を動的に変更可能なOLTであって,」「OSU200-1から出力された信号は,光送受信器132-1に入力され,光送受信器132-1に割り付けられた送信波長で出力され,また光送受信器132-1に入力された光信号は,光送受信器132-1に割り付けられた受信波長のみが受信され,電気信号に変換された後,OSU200-1へ出力され」「ONU300は,上り制御信号受信部304,上り制御信号送信部306,下り制御信号受信部308,下り制御信号送信部310,ONU制御部302,波長切替制御部312,及び波長可変光送受信器314を含んで構成されており,」「上り制御信号送信部306は,ONU制御部302の指示により,波長切替応答メッセージおよび波長切替要求メッセージを生成し,上り制御信号受信部304から出力されるデータと多重して波長可変光送受信器314へ出力し」「下り制御信号受信部308は,波長可変光送受信器314から出力される信号を受信し,」ているとされている。 ここで,引用発明の「ONU300」,「光送受信器」は,本願発明1の「通信先の装置である通信先装置」,「光信号送受信部」に対応する。 また,引用発明において,各「光送受信器」「に割り付けられた送信波長」は,例えば,「波長λ1」や「波長λ2」のように互いに「異なる波長」を用いているといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「光信号送受信装置」が「他の前記光信号送受信装置と異なる波長により,通信先の装置である通信先装置と光信号の送受信を行う光信号送受信部」「を備え」ている点で共通しているといえる。 ウ 引用発明において,「OLT100は,OSU振分多重部124,複数の光送受信器132(132-1?132-n),複数のOSU200(200-1?200-n),及びOLT制御部140を含んでおり,」「各光送受信器132と各OSU200とは1対1に接続され,OSU200-1から出力された信号は,光送受信器132-1に入力され,光送受信器132-1に割り付けられた送信波長で出力され,また光送受信器132-1に入力された光信号は,光送受信器132-1に割り付けられた受信波長のみが受信され,電気信号に変換された後,OSU200-1へ出力されており,OSU振分多重部124は,SNIから入力されるデータの宛先がどのONU宛か,また,そのONUがどのOSUに接続されているかを識別し,該当するOSUへ振り分けて出力しており,すなわち,OSU振分多重部124は,LLID識別部110の機能とOSU振分部120の機能とを併せもっており,また各OSUから出力される上りデータを多重してSNIへ出力して」いるとされている。 ここで,引用発明において,「光送受信器132-1に入力された光信号は,光送受信器132-1に割り付けられた受信波長のみが受信され,電気信号に変換され」た「電気信号」は,本願発明1の「光信号送受信部が受信した前記光信号から取得したパケット」に対応するといえる。 また,引用発明において,「OSU振分多重部」が「該当するOSUへ振り分けて出力し」た「データ」である「OSU200-1から出力された信号」が「光送受信器132-1に入力され,光送受信器132-1に割り付けられた送信波長で出力され」ることは,本願発明1の「集線装置から受信したパケットを光信号に設定して前記光信号送受信部から出力する」ことに対応するといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「光信号送受信装置」が「前記光信号送受信部が受信した前記光信号から取得したパケットを前記集線装置に出力し,前記集線装置から受信したパケットを光信号に設定して前記光信号送受信部から出力する変換部」「を備え」ている点で共通しているといえる。 しかし,本願発明1の「光信号送受信装置」が「前記通信先装置とネットワークとの間の通信制御に関する機能を前記集線装置において実行するために用いられる制御用情報を保持する情報保持部とを備え」るのに対して,引用発明の「光信号送受信装置」がこのような「情報保持部」を備えているのか明らかでない点で相違している。 エ 引用発明において,「OSU振分多重部124は,SNIから入力されるデータの宛先がどのONU宛か,また,そのONUがどのOSUに接続されているかを識別し,該当するOSUへ振り分けて出力しており,すなわち,OSU振分多重部124は,LLID識別部110の機能とOSU振分部120の機能とを併せもっており,また各OSUから出力される上りデータを多重してSNIへ出力して」いるとされている。 ここで,引用発明の「OSU振分多重部124」の「SNIから入力されるデータ」を「OSUへ振り分けて出力し」たり,「各OSUから出力される上りデータを多重してSNIへ出力し」たりする「OSU振分部120の機能」は,本願発明1の「複数の前記光信号送受信装置から受信した前記パケットを集線して前記ネットワークに送信し,前記ネットワークから受信したパケットを複数の前記光信号送受信装置へ分離して出力する集線部」に対応するといえる。 また,引用発明の「OSU振分多重部124」の「SNIから入力されるデータの宛先がどのONU宛か,また,そのONUがどのOSUに接続されているかを識別」する「LLID識別部110の機能」は,データの宛先を識別して,宛先にデータが届くよう制御する機能であるといえるから,本願発明1の「前記通信先装置と前記ネットワークとの間の通信制御に関する機能を実行する制御部」に対応するといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記集線装置は, 複数の前記光信号送受信装置から受信した前記パケットを集線して前記ネットワークに送信し,前記ネットワークから受信したパケットを複数の前記光信号送受信装置へ分離して出力する集線部と, 前記通信先装置と前記ネットワークとの間の通信制御に関する機能を実行する制御部と」「を備え」ている点で共通しているといえる。 しかし,本願発明1では,「集線装置」が「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部」を備えており,「前記波長切替機能部は,前記制御用情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記制御用情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む」のに対して,引用発明では,「集線装置」がそのような「波長切替機能部」を備えていない点で相違している。 なお,引用発明においても「波長切替」を行っているが,「通信先の装置である通信先装置」に対応する「OSU200」の「波長切替制御部312」が「波長可変光送受信器314の動作波長が,ONU制御部302より通知された波長になるよう,波長可変光送受信器314の波長設定制御を行」うことである。つまり,引用発明は,「多チャンネルの4k映像を配信する」「映像配信サービスのようなブロードキャストサービス」における「視聴」「チャンネル切替要求」に起因して,視聴を希望する「チャンネル」に対応するように,「OSU200」側で受信する「波長」を切り替えるものであり,視聴チャンネル切り替えを指示した視聴者以外の視聴者が「映像配信サービスのようなブロードキャストサービス」における当該切り替え元のチャンネルの視聴を継続できるためにも,「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止」することはないといえる。 したがって,引用発明の「波長切替」は,「通信先の装置である通信先装置」に対応する「OSU200」の「波長切替制御部312」が「波長可変光送受信器314の動作波長が,ONU制御部302より通知された波長になるよう,(OSU200の)波長可変光送受信器314の波長設定制御を行」うことであって,本願発明1のように,「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替」ではない。 (2)一致点・相違点 本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。 ア 一致点 「複数の光信号送受信装置と,集線装置とを有する光通信装置であって, 前記光信号送受信装置は, 他の前記光信号送受信装置と異なる波長により,通信先の装置である通信先装置と光信号の送受信を行う光信号送受信部と, 前記光信号送受信部が受信した前記光信号から取得したパケットを前記集線装置に出力し,前記集線装置から受信したパケットを光信号に設定して前記光信号送受信部から出力する変換部と,を備え, 前記集線装置は, 複数の前記光信号送受信装置から受信した前記パケットを集線して前記ネットワークに送信し,前記ネットワークから受信したパケットを複数の前記光信号送受信装置へ分離して出力する集線部と, 前記通信先装置と前記ネットワークとの間の通信制御に関する機能を実行する制御部と,を備えた 光通信装置。」 イ 相違点 (ア) 相違点1 本願発明1の「光信号送受信装置」が「前記通信先装置とネットワークとの間の通信制御に関する機能を前記集線装置において実行するために用いられる制御用情報を保持する情報保持部とを備え」るのに対して,引用発明の「光信号送受信装置」がこのような「情報保持部」を備えているのか明らかでない点。 (イ) 相違点2 本願発明1では,「集線装置」が「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部」を備えており,「前記波長切替機能部は,前記制御用情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記制御用情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む」のに対して,引用発明では,「集線装置」がそのような「波長切替機能部」を備えていない点。 (3)相違点についての判断 事案に鑑みて,まず,相違点2について検討する。 ア 上記(1)エで述べたように,引用発明の「波長切替」は,「通信先の装置である通信先装置」に対応する「OSU200」の「波長切替制御部312」が「波長可変光送受信器314の動作波長が,ONU制御部302より通知された波長になるよう,(OSU200の)波長可変光送受信器314の波長設定制御を行」うことであり,つまり,引用発明は,「多チャンネルの4k映像を配信する」「映像配信サービスのようなブロードキャストサービス」における「視聴」「チャンネル切替要求」に起因して,視聴を希望する「チャンネル」に対応するように,「OSU200」側で受信する「波長」を切り替えるものであり,視聴チャンネル切り替えを指示した視聴者以外の視聴者が「映像配信サービスのようなブロードキャストサービス」における当該切り替え元のチャンネルの視聴を継続できるためにも,「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止」することはないといえるから,本願発明1のように,「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する」動機付けはないといえる。 イ また,引用文献2記載技術では,上記第4の3で述べたように,波長切替を用いた高信頼化技術が開示されているものの,CT故障時に,故障CT配下のONUを,同一OSU内の別波長CT配下となるよう,ONUの波長切替を行うことで高信頼化を図っていることが開示されているにとどまり,本願発明1のように「波長切替機能部は,前記制御用情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記制御用情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む」ことについては,記載も示唆も無い。 ウ そして,引用文献3記載技術では,上記第4の4で述べたように,波長切替について,記載も示唆も無い。 エ また,引用文献4記載技術では,上記第4の5で述べたように,「制御装置12のOLT切り替えのフローにおいて,OLT10aで障害が発生した際,制御装置12は,OLT10aからの警告,又は,光パワーモニタ26からの通知に従い,OLT10aの障害発生を検出すると(S1),OLT10aにRAM54に保存されている管理情報の転送を要求し,OLT10aからの管理情報を記憶装置13に格納し,」「光スイッチ20及び電気スイッチ30を,OLT10aから予備のOLT10dに切り替え,記憶装置13に格納したOLT10aからの管理情報を予備のOLT10dに転送し(S5),引き継ぎをOLT10dに指示し,予備のOLT10dのCPU46は,制御装置12からの管理情報をRAM54に格納し,この管理情報を使って,ONU18a-1?18a-nの管理と,ONU18a-1?18a-nと上位ネットワーク間の通信の仲介を引き継ぐ光終端システム」が開示され,障害が発生したOLTから予備のOLTへ引き継ぐ際に,管理情報をRAMに格納して利用することが開示されているに過ぎない。 よって,引用発明に,引用文献4記載技術を適用しても,障害が発生したOLTから予備のOLTへ引き継ぐ際に,管理情報をRAMに格納して利用する構成となるにとどまり,本願発明1の相違点2に係る「集線装置」が「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部」を備えており,「前記波長切替機能部は,前記制御用情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記制御用情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む」構成には,至らない。 オ 以上ア?エより,引用発明において,本願発明1の相違点2に係る「集線装置」が「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部」を備える構成とする動機付けはなく,仮に,引用発明に,引用文献2ないし4に記載の技術を適用したとしても,本願発明1の相違点2に係る「集線装置」が「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部」を備えており,「前記波長切替機能部は,前記制御用情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記制御用情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む」構成には,至らないから,当業者は本願発明1の相違点2に係る構成を容易に想到することができない。 (4)小括 したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2ないし4記載技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2および本願発明3について 本願発明2および本願発明3は,いずれも,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし4記載技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明4について (1)一致点・相違点 ア 一致点 本願発明4は,以下の点(ア)および(イ)を除いて,本願発明1と同一の構成を備えており,本願発明4と引用発明との一致点は,本願発明1と引用発明との一致点と同一である。 (ア) 本願発明1では,「光信号送受信装置」が「前記通信先装置とネットワークとの間の通信制御に関する機能を前記集線装置において実行するために用いられる制御用情報を保持する情報保持部」を備えている(上記1(2)イ(ア)相違点1に係る構成)のに対して,本願発明4では,このような「情報保持部」を備えていない点。 (イ)本願発明1では,「前記波長切替機能部は,前記制御用情報を前記光信号送受信装置から読み出して記憶しておき,前記外部制御装置から波長切替の開始の指示を受信した場合に,切替元の前記光信号送受信装置から読み出して記憶していた前記制御用情報を,切替先の前記光信号送受信装置に書き込む」構成要件(この点は,上記1(2)イ(イ)相違点2に係る構成要件の後半部分)であるのに対して,本願発明4では,「前記波長切替機能部は,切替元の前記光信号送受信装置へ出力する前記パケットをバッファに書き込む処理と,前記通信先装置に波長切替指示を送信し,前記波長切替指示に対する応答を前記通信先装置から受信した場合に,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力する処理と,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力した後に,切替が終了したことを通知する処理とを行う」構成要件となっている点。 イ 相違点 本願発明4では,「集線装置」が「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部とを備え,前記波長切替機能部は,切替元の前記光信号送受信装置へ出力する前記パケットをバッファに書き込む処理と,前記通信先装置に波長切替指示を送信し,前記波長切替指示に対する応答を前記通信先装置から受信した場合に,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力する処理と,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力した後に,切替が終了したことを通知する処理とを行う」のに対して,引用発明では,「集線装置」がそのような「波長切替機能部」を備えていない点。 (2)相違点についての判断 ア 上記1(3)アで述べたように,本願発明1と同様に,本願発明4についても,引用発明において,「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する」動機付けはないといえる。 イ また,引用文献2ないし4には,いずれも,本願発明4の「前記波長切替機能部は,切替元の前記光信号送受信装置へ出力する前記パケットをバッファに書き込む処理と,前記通信先装置に波長切替指示を送信し,前記波長切替指示に対する応答を前記通信先装置から受信した場合に,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力する処理と,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力した後に,切替が終了したことを通知する処理とを行う」構成は,開示も示唆もない。 ウ 以上から,引用発明において,本願発明4の相違点に係る「集線装置」が「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部」を備える構成とする動機付けはなく,仮に,引用発明に,引用文献2ないし4に記載の技術を適用したとしても,本願発明4の相違点に係る「集線装置」が「切替元の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を停止して切替先の前記光信号送受信装置が用いる波長によるパケットの送受信を行うよう制御する波長切替機能を有する外部制御装置から波長切替に関する指示を受信し,前記波長切替機能の一部を前記外部制御装置からのさらなる指示を受信せずに実行する波長切替機能部」を備えており,「前記波長切替機能部は,切替元の前記光信号送受信装置へ出力する前記パケットをバッファに書き込む処理と,前記通信先装置に波長切替指示を送信し,前記波長切替指示に対する応答を前記通信先装置から受信した場合に,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力する処理と,前記バッファに記憶された前記パケットを切替先の前記光信号送受信装置に出力した後に,切替が終了したことを通知する処理とを行う」構成には,至らないから,当業者は本願発明4の相違点に係る構成を容易に想到することができない。 (3)小括 したがって,本願発明4は,引用発明および引用文献2ないし4記載技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 4 本願発明5および本願発明6について 本願発明5および本願発明6は,いずれも,本願発明4と同一の構成を備えるものであるから,本願発明4と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし4記載技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 5 本願発明7について 本願発明7は,本願発明1または本願発明4と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1または本願発明4と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし4記載技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 5 本願発明8について 本願発明8は,本願発明1の「光通信装置」から,本願発明8の「光通信装置に用いられる波長切替方法」へと,発明のカテゴリを単に変更したものに過ぎず,本願発明8は,本願発明1と同様の構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし4記載技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-08-10 |
出願番号 | 特願2017-64977(P2017-64977) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大石 博見 |
特許庁審判長 |
角田 慎治 |
特許庁審判官 |
北川 純次 野崎 大進 |
発明の名称 | 光通信装置及び波長切替方法 |
代理人 | 沖川 仁 |
代理人 | 永田 健悟 |