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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1376640 |
審判番号 | 不服2020-14752 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-10-22 |
確定日 | 2021-08-05 |
事件の表示 | 特願2017-211880号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月 6日出願公開、特開2019- 83840号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成29年11月1日の出願であって、令和1年6月14日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年8月26日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月29日付けで最後の拒絶の理由が通知され、令和2年4月3日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和2年7月20日付け(謄本送達日:同年8月4日)で令和2年4月3日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、令和2年10月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、令和2年12月21日付けで前置報告がなされ、令和3年3月2日に上申書が提出されたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年10月22日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、本件補正前の令和1年8月26日提出の手続補正書の請求項1である 「【請求項1】 遊技盤の正面に形成された遊技領域に向かって遊技球を発射する発射手段と、前記遊技領域を流下する遊技球を入球させ、遊技球の入球に際して内部抽選を実行する始動入球手段と、前記始動入球手段への遊技球の入球に際して実行された内部抽選の結果に基づいて、複数の絵柄を変動表示する変動表示手段とを備える遊技機であって、 前記始動入球手段への遊技球の入球に際して実行された内部抽選の結果に関連付けられたサブ側内部抽選情報を記憶する情報記憶手段と、 前記始動入球手段への遊技球の入球順に前記情報記憶手段に複数の前記サブ側内部抽選情報を記憶させる情報格納手段と、 前記情報記憶手段に記憶された前記サブ側内部抽選情報に基づいて、当該サブ側内部抽選情報に関連付けられた保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる情報報知手段とを備え、 前記遊技機は、 前記始動入球手段への遊技球の入球に際して実行された内部抽選の非当選を遊技者が期待する非当選期待遊技状況と、 前記始動入球手段への遊技球の入球に際して実行された内部抽選の当選を遊技者が期待する当選期待遊技状況とを有し、 前記複数のサブ側内部抽選情報は、 前記非当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される非当選期待内部抽選情報と、 前記当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される当選期待内部抽選情報とを備え、 前記情報報知手段は、 前記サブ側内部抽選情報の期待度を予告する複数種の予告保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる保留絵柄制御手段を備えることを特徴とする遊技機。」 を 「【請求項1】 遊技盤の正面に形成された遊技領域に向かって遊技球を発射する発射手段と、前記遊技領域を流下する遊技球が入球可能であって、遊技球の入球に基づいて内部抽選を実行する始動入球手段と、前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に基づいて、複数の絵柄を変動表示する変動表示手段と、前記始動入球手段への遊技球の入球を契機として実行された内部抽選の結果に基づいて、遊技者にとって有利な特定制御状態に通常制御状態から遊技状態を移行する遊技状態移行手段とを備える遊技機であって、 前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に関連付けられたサブ側内部抽選情報を記憶する情報記憶手段と、 前記始動入球手段への遊技球の入球順に前記情報記憶手段に複数の前記サブ側内部抽選情報を記憶させる情報格納手段と、 前記情報記憶手段に記憶された前記サブ側内部抽選情報に基づいて、当該サブ側内部抽選情報に関連付けられた保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる情報報知手段とを備え、 前記遊技機は、 所定回数の遊技回を経過するまで継続し、前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて所定の遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の非当選を遊技者が期待する非当選期待遊技状況と、 前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて前記所定の遊技状態よりも有利な遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の当選を遊技者が期待する当選期待遊技状況とを有し、 前記複数のサブ側内部抽選情報は、 前記非当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される非当選期待内部抽選情報と、 前記当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される当選期待内部抽選情報とを備え、 前記情報報知手段は、 前記サブ側内部抽選情報の期待度を予告する複数種の予告保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる保留絵柄制御手段を備えることを特徴とする遊技機。」 とする補正を含むものである(下線は請求人が付与したものである。)。 2 補正の適否 (1)補正の目的 本件補正は、以下ア乃至ウの限定を付加するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ア 補正前の請求項1の「遊技機」が、「前記始動入球手段への遊技球の入球を契機として実行された内部抽選の結果に基づいて、遊技者にとって有利な特定制御状態に通常制御状態から遊技状態を移行する遊技状態移行手段」を備えること。 イ 補正前の請求項1の「非当選期待遊技状況」について、「所定回数の遊技回を経過するまで継続」し、「内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて所定の遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の非当選を遊技者が期待する」ものであること ウ 補正前の請求項1の「当選期待遊技状況」について、「内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて前記所定の遊技状態よりも有利な遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の当選を遊技者が期待する」ものであること (2)新規事項 本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0115】、【0135】、【0344】?【0359】、【0602】?【0650】等の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)を、以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(記号AないしHは、分説するため合議体が付した。)。 「A 遊技盤の正面に形成された遊技領域に向かって遊技球を発射する発射手段と、前記遊技領域を流下する遊技球が入球可能であって、遊技球の入球に基づいて内部抽選を実行する始動入球手段と、前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に基づいて、複数の絵柄を変動表示する変動表示手段と、前記始動入球手段への遊技球の入球を契機として実行された内部抽選の結果に基づいて、遊技者にとって有利な特定制御状態に通常制御状態から遊技状態を移行する遊技状態移行手段とを備える遊技機であって、 B 前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に関連付けられたサブ側内部抽選情報を記憶する情報記憶手段と、 C 前記始動入球手段への遊技球の入球順に前記情報記憶手段に複数の前記サブ側内部抽選情報を記憶させる情報格納手段と、 D 前記情報記憶手段に記憶された前記サブ側内部抽選情報に基づいて、当該サブ側内部抽選情報に関連付けられた保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる情報報知手段とを備え、 E 前記遊技機は、 E1 所定回数の遊技回を経過するまで継続し、前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて所定の遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の非当選を遊技者が期待する非当選期待遊技状況と、 E2 前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて前記所定の遊技状態よりも有利な遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の当選を遊技者が期待する当選期待遊技状況とを有し、 F 前記複数のサブ側内部抽選情報は、 前記非当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される非当選期待内部抽選情報と、 前記当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される当選期待内部抽選情報とを備え、 G 前記情報報知手段は、 前記サブ側内部抽選情報の期待度を予告する複数種の予告保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる保留絵柄制御手段を備える H ことを特徴とする遊技機。」 (2)引用文献に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2015-150107号公報(以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている(以下セの「引用発明」に関連する記載に下線を付した。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、始動領域への遊技球の進入を条件として、遊技者に所定の遊技利益を付与するか否かの抽選が行われる遊技機に関する。」 イ 「【0021】 中枠104は、外枠102と同様に、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成されており、この囲繞空間に遊技盤108が保持されている。また、前枠106には、ガラス製または樹脂製の透過板110が保持されている。そして、これら中枠104および前枠106を外枠102に対して閉じると、遊技盤108と透過板110とが所定の間隔を維持して略平行に対面するとともに、遊技機100の正面側から、透過板110を介して遊技盤108が視認可能となる。 【0022】 図2は、遊技機100の正面図である。この図に示すように、前枠106の下部には、遊技機100の正面側に突出する操作ハンドル112が設けられている。この操作ハンドル112は、遊技者が回転操作可能に設けられており、遊技者が操作ハンドル112を回転させて発射操作を行うと、当該操作ハンドル112の回転角度に応じた強度で、不図示の発射機構によって遊技球が発射される。このようにして発射された遊技球は、遊技盤108に設けられたレール114a、114b間を上昇して遊技領域116に導かれることとなる。 【0023】 遊技領域116は、遊技盤108と透過板110との間隔に形成される空間であって、遊技球が流下または転動可能な領域である。遊技盤108には、多数の釘や風車が設けられており、遊技領域116に導かれた遊技球が釘や風車に衝突して、不規則な方向に流下、転動するようにしている。 【0024】 遊技領域116は、発射機構の発射強度に応じて遊技球の進入度合いを互いに異にする第1遊技領域116aおよび第2遊技領域116bを備えている。第1遊技領域116aは、遊技機100に正対した遊技者から見て遊技領域116の左側に位置し、第2遊技領域116bは、遊技機100に正対した遊技者から見て遊技領域116の右側に位置している。レール114a、114bが遊技領域116の左側にあることから、発射機構によって所定の強度未満の発射強度で発射された遊技球は第1遊技領域116aに進入し、所定の強度以上の発射強度で発射された遊技球は第2遊技領域116bに進入することとなる。 【0025】 また、遊技領域116には、遊技球が入球可能な一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122が設けられており、これら一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122に遊技球が入球すると、それぞれ所定の賞球が遊技者に払い出される。 【0026】 なお、詳しくは後述するが、第1始動口120内には第1始動領域が設けられ、また、第2始動口122内には第2始動領域が設けられている。そして、第1始動口120または第2始動口122に遊技球が入球して第1始動領域または第2始動領域に遊技球が進入すると、予め設けられた複数の特別図柄の中からいずれか1の特別図柄を決定するための抽選が行われる。各特別図柄には、遊技者にとって有利な大役遊技の実行可否や、以後の遊技状態をどのような遊技状態にするかといった種々の遊技利益が対応付けられている。したがって、遊技者は、第1始動口120または第2始動口122に遊技球が入球すると、所定の賞球を獲得するのと同時に、種々の遊技利益を受ける権利獲得の機会を獲得することとなる。」 ウ 「【0031】 演出表示装置200は、画像を表示する画像表示部からなる演出表示部200aを備えており、この演出表示部200aを、遊技盤108の略中央部分において、遊技機100の正面側から視認可能に配置している。この演出表示部200aには、図示のように演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、これら各演出図柄210a、210b、210cの停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行されることとなる。」 エ 「【0058】 遊技者が操作ハンドル112を操作して遊技領域116に遊技球を発射させるとともに、遊技領域116を流下する遊技球が第1始動口120または第2始動口122に入球すると、遊技者に遊技利益を付与するか否かの抽選(以下、「大役抽選」という)が行われる。この大役抽選において、大当たりに当選すると、大入賞口128が開放されるとともに当該大入賞口128への遊技球の入球が可能となる大役遊技が実行され、また、当該大役遊技の終了後の遊技状態が、上記のいずれかの遊技状態に設定される。以下では、大役抽選方法について説明する。 【0059】 なお、詳しくは後述するが、第1始動口120または第2始動口122に遊技球が入球すると、大役抽選に係る種々の乱数値(大当たり決定乱数、当たり図柄乱数、リーチグループ決定乱数、リーチモード決定乱数、変動パターン乱数)が取得されるとともに、これら各乱数値がメインRAM300cの特図保留記憶領域に記憶される。以下では、第1始動口120に遊技球が入球して特図保留記憶領域に記憶された種々の乱数を総称して特1保留とよび、第2始動口122に遊技球が入球して特図保留記憶領域に記憶された種々の乱数を総称して特2保留とよぶ。」 オ 「【0091】 大当たり図柄である特別図柄A?F、または、小当たり図柄である特別図柄a1、a2、b1?b4が決定されると、図11に示すように、特別電動役物作動ラムセットテーブルを参照して大役遊技または小当たり遊技が実行される。大役遊技は、大入賞口128が所定回数開閉される複数回のラウンド遊技で構成され、小当たり遊技は、ラウンド遊技が1回のみ実行される。この特別電動役物作動ラムセットテーブルによれば、オープニング時間(最初のラウンド遊技が開始されるまでの待機時間)、特別電動役物最大作動回数(1回の大役遊技または小当たり遊技中に実行されるラウンド遊技の回数)、特別電動役物開閉切替回数(1ラウンド中の大入賞口128の開放回数)、ソレノイド通電時間(大入賞口128の開放回数ごとの大入賞口ソレノイド128cの通電時間、すなわち、1回の大入賞口128の開放時間)、規定数(1回のラウンド遊技における大入賞口128への最大入賞可能数)、大入賞口閉鎖有効時間(ラウンド遊技間の大入賞口128の閉鎖時間、すなわち、インターバル時間)、エンディング時間(最後のラウンド遊技が終了してから、通常の特別遊技(後述する特別図柄の変動表示)が再開されるまでの待機時間)が、制御データとして、特別図柄の種別ごとに、図示のように予め記憶されている。」 カ 「【0100】 本実施形態では、変動状態として、通常変動状態、第1潜伏変動状態、第2潜伏変動状態、第1確変変動状態、第2確変変動状態の5つの変動状態が設けられている。」 キ 「【0103】 また、図13(c)、(f)に示すように、特別図柄Cが決定された場合、および、特別図柄Eが決定された場合には、大役遊技の終了後の遊技状態は、高確率遊技状態および時短遊技状態に設定される。また、変動状態は、大役遊技の終了後の変動回数が1?10000回である間、第2確変変動状態に設定される。 【0104】 また、特別図柄Dが決定されたときの変動状態が第2確変変動状態であった場合には、図13(d)に示すように、大役遊技の終了後の変動回数が1?10000回である間、第2確変変動状態に設定される。一方、特別図柄Dが決定されたときの変動状態が第2確変変動状態以外の変動状態であった場合には、図13(e)に示すように、大役遊技の終了後の変動回数が1?10000回である間、第1確変変動状態に設定される。」 ク 「【0108】 また、図14(e)?(g)に示すように、小当たり図柄である特別図柄b4が決定された場合には、特別図柄b4が決定されたときの変動状態に応じて、異なる変動状態に設定される。具体的には、特別図柄b4が決定されたときの変動状態が第1確変変動状態である場合には、図14(e)に示すように、小当たり遊技の終了後の変動回数が1?30回である間、第2確変変動状態に設定され、変動回数が31回以上になると、小当たり遊技開始前の変動状態、すなわち、第1確変変動状態に復帰する。また、特別図柄b4が決定されたときの変動状態が第2確変変動状態である場合には、図14(f)に示すように、小当たり遊技の終了後の変動回数が1?30回である間、第2確変変動状態に設定され、変動回数が31回以上になると、小当たり遊技開始前の変動状態、すなわち、第2確変変動状態に復帰する。つまり、この場合には、第2確変変動状態が変更されることなく継続することとなる。また、特別図柄b4が決定されたときの変動状態が通常変動状態、第1潜伏変動状態、第2潜伏変動状態である場合には、図14(g)に示すように、小当たり遊技の終了後にも、小当たり遊技開始前の変動状態が継続される。」 ケ 「【0118】 これに対して、本実施形態の第1確変変動状態および第2確変変動状態は、遊技状態が高確率遊技状態および時短遊技状態に設定されていることを明確に識別できる状態となっている。第1確変変動状態では、特別図柄A、Bが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1潜伏変動状態に設定され、特別図柄C、Eが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第2確変変動状態に設定され、特別図柄D、Fが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1確変変動状態に維持される。また、第1確変変動状態において、小当たり図柄である特別図柄b1?b3が決定された場合には、小当たり遊技の終了後も第1確変変動状態が維持される。これに対して、第1確変変動状態において、小当たり図柄である特別図柄b4が決定された場合には、小当たり遊技の終了後に第2確変変動状態に設定される。 【0119】 また、第2確変変動状態では、特別図柄A、Bが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1潜伏変動状態に設定され、特別図柄C、D、Eが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第2確変変動状態に維持され、特別図柄Fが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1確変変動状態に設定される。また、第2確変変動状態において、小当たり図柄である特別図柄b1?b4が決定された場合には、小当たり遊技の終了後も第2確変変動状態が維持される。なお、第1確変変動状態において特別図柄b4が決定されたことにより、変動状態が第2確変変動状態に設定された場合には、図柄の変動表示が30回終了したところで、第1確変変動状態に移行する。」 コ 「【0129】 本実施形態では、図16(c)に示すように、第1確変変動状態において、単位時間当たりの発射球数を100とした場合の合計賞球数が80となるように設計されており、遊技球が徐々に減少する。これに対して、第2確変変動状態においては、単位時間当たりの発射球数を100とした場合の合計賞球数が120となるように設計されており、大役抽選の機会を獲得しつつ、遊技球を増加させることができる。このように、第2確変変動状態において遊技球が増加するのは、第1確変変動状態よりも1回当たりの図柄の変動表示の時間が短く、単位時間当たりの大役抽選の回数が増加した結果、単位時間当たりの小当たり遊技の実行回数が多く(ここでは4倍)なるためである。 【0130】 以上のように、遊技者にもっとも有利な遊技状態である高確率遊技状態および時短遊技状態において、変動時間決定条件を異にする第1確変変動状態および第2確変変動状態の2つの変動状態を設ける。そして、第2確変変動状態および第1確変変動状態のそれぞれにおいて、遊技領域116への遊技球の発射強度、発射球数等の発射態様が同一である場合には、第2確変変動状態の方が、第1確変変動状態中よりも、単位時間当たりの小当たり遊技の実行回数が多くなり、払い出される賞球数が多くなる。」 サ 「【0321】 (ステップS630-29) メインCPU300aは、上記ステップS630-3で確認した大役抽選の結果が大当たりである場合には、特別遊技管理フェーズを「03H」に更新し、小当たりである場合には、特別遊技管理フェーズを「07H」に更新して、当該特別図柄停止図柄表示処理を終了する。これにより、大役遊技または小当たり遊技が開始されることとなる。」 シ 「【0427】 また、変動状態が第1確変変動状態に設定されている場合には、演出モードが第1確変モードに設定され、変動状態が第2確変変動状態に設定されている場合には、演出モードが第2確変モードに設定される。変動状態が第1確変変動状態および第2確変変動状態に設定される場合、遊技状態は、高確率遊技状態および時短遊技状態に設定されている。したがって、第1確変モード用および第2確変モード用の背景画像が演出表示部200aに表示されることで、遊技者は、現在の遊技状態が高確率遊技状態および時短遊技状態に設定されていることを把握することができる。 【0428】 ただし、図16(a)を用いて説明したように、第1確変変動状態と第2確変変動状態とでは、ハズレ図柄が決定された場合の変動時間もしくは変動時間の平均である平均時間が異なり、第2確変変動状態では、第1確変変動状態よりも、変動時間もしくは平均時間が短く、単位時間当たりの大役抽選の回数(図柄の変動表示の回数)が多くなる。その結果、第1確変変動状態および第2確変変動状態のそれぞれにおいて、同1条件下で遊技領域116(第2遊技領域116b)に遊技球を発射した場合には、図16(c)に示すように、第2確変変動状態の方が、第1確変変動状態中よりも、単位時間当たりの小当たり遊技の実行回数が多くなり、払い出される単位時間当たりの賞球数が多くなる。 【0429】 これにより、遊技球が継続して発射された場合に、第2確変変動状態では、遊技球の発射球数よりも払い出される賞球数が多くなり、第1確変変動状態では、遊技球の発射球数よりも払い出される賞球数が少なくなる。つまり、第2確変変動状態は、第1確変変動状態よりも遊技者に有利な状態となっている。また、第1確変変動状態では、遊技球が徐々に減少することから、早期に大当たりに当選することで遊技球の費消が抑制される。したがって、第1確変変動状態では、早期に次なる大当たりに当選したいという遊技者心理が働く。 【0430】 一方、第2確変変動状態は、大当たりに当選した際に、主に特別図柄A、B、Fが決定されると終了する(図15参照)。この第2確変変動状態では、小当たり図柄である特別図柄b1?b4が決定されて小当たり遊技が実行されることで遊技球が徐々に増加することから、第2確変変動状態が終了するおそれのある大当たりに当選するよりも、小当たりに当選することが遊技者に望まれる。つまり、第2確変変動状態では、極力、大当たりに当選したくないという遊技者心理が働くこととなる。 【0431】 このように、高確率遊技状態および時短遊技状態という同一の遊技状態に設定されていても、第1確変変動状態および第2確変変動状態のいずれに設定されているかにより、遊技者心理が大きく異なる。そこで、本実施形態では、第1確変変動状態に設定されている場合には第1確変モード用の演出を実行し、第2確変変動状態に設定されている場合には第2確変モード用の演出を実行し、これら第1確変モードと第2確変モードとでそれぞれ遊技者心理に沿った演出を実行することとしている。以下に、演出モードごとに実行される演出のうち、本実施形態において特徴的な、第1確変モードおよび第2確変モード用の演出について詳述する。」 ス 上記アないしシからみて、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。なお、aないしhについては本願補正発明のAないしHに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。 「a 遊技盤108と透過板110との間隔に形成される空間である遊技領域116に遊技球を発射する発射機構(【0022】、【0023】)と、遊技領域116を流下する遊技球が入球すると、遊技者に遊技利益を付与するか否かの抽選である大役抽選が行われる第1始動口120及び第2始動口122と(【0058】)、画像を表示する画像表示部からなり、演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、これら各演出図柄210a、210b、210cの停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行される演出表示部200aを備える演出表示装置200と(【0031】)、大役抽選の結果が大当たりである場合には、特別遊技管理フェーズを「03H」に更新し、小当たりである場合には、特別遊技管理フェーズを「07H」に更新して、当該特別図柄停止図柄表示処理を終了し、これにより、大役遊技または小当たり遊技を開始するメインCPU300a(【0321】)とを備えた遊技機(【0001】)であって、 e 遊技機は、 e1 大当たり図柄である特別図柄A?F、または、小当たり図柄である特別図柄a1、a2、b1?b4が決定されると、大役遊技または小当たり遊技が実行され(【0091】)、変動状態として、通常変動状態、第1潜伏変動状態、第2潜伏変動状態、第1確変変動状態、第2確変変動状態の5つの変動状態が設けられ(【0100】)、特別図柄Cが決定された場合、および、特別図柄Eが決定された場合には、大役遊技の終了後の遊技状態は、高確率遊技状態および時短遊技状態に設定され、変動状態は、大役遊技の終了後の変動回数が1?10000回である間、第2確変変動状態に設定され(【0103】)、特別図柄Dが決定されたときの変動状態が第2確変変動状態であった場合には、大役遊技の終了後の変動回数が1?10000回である間、第2確変変動状態に設定され(【0104】)、特別図柄b4が決定されたときの変動状態が第1確変変動状態である場合には、小当たり遊技の終了後の変動回数が1?30回である間、第2確変変動状態に設定され、変動回数が31回以上になると、小当たり遊技開始前の変動状態、すなわち、第1確変変動状態に復帰し、特別図柄b4が決定されたときの変動状態が第2確変変動状態である場合には、第2確変変動状態が変更されることなく継続し(【0108】)、第2確変変動状態では、特別図柄A、Bが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1潜伏変動状態に設定され、特別図柄C、D、Eが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第2確変変動状態に維持され、特別図柄Fが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1確変変動状態に設定され、第2確変変動状態において、小当たり図柄である特別図柄b1?b4が決定された場合には、小当たり遊技の終了後も第2確変変動状態が維持され(【0119】)、第2確変変動状態は、大当たりに当選した際に、主に特別図柄A、B、Fが決定されると終了し、この第2確変変動状態では、小当たり図柄である特別図柄b1?b4が決定されて小当たり遊技が実行されることで遊技球が徐々に増加することから、第2確変変動状態が終了するおそれのある大当たりに当選するよりも、小当たりに当選することが遊技者に望まれ、第2確変変動状態では、極力、大当たりに当選したくないという遊技者心理が働き(【0430】)、 e2 第1確変変動状態では、特別図柄A、Bが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1潜伏変動状態に設定され、特別図柄C、Eが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第2確変変動状態に設定され、特別図柄D、Fが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1確変変動状態に維持され、第1確変変動状態において、小当たり図柄である特別図柄b1?b3が決定された場合には、小当たり遊技の終了後も第1確変変動状態が維持され、第1確変変動状態において、小当たり図柄である特別図柄b4が決定された場合には、小当たり遊技の終了後に第2確変変動状態に設定され(【0118】)、遊技者にもっとも有利な遊技状態である高確率遊技状態および時短遊技状態において、変動時間決定条件を異にする第1確変変動状態および第2確変変動状態の2つの変動状態を設け(【0130】)、遊技球が継続して発射された場合に、第2確変変動状態では、遊技球の発射球数よりも払い出される賞球数が多くなり、第1確変変動状態では、遊技球の発射球数よりも払い出される賞球数が少なく、第2確変変動状態は、第1確変変動状態よりも遊技者に有利な状態であり、第1確変変動状態では、遊技球が徐々に減少することから、早期に大当たりに当選することで遊技球の費消が抑制されるため、第1確変変動状態では、早期に次なる大当たりに当選したいという遊技者心理が働く(【0429】) h 遊技機。(【0001】)」 (3)対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 ア 構成Aについて (ア)引用発明の ・「遊技盤108」 ・「遊技盤108と透過板110との間隔に形成される空間である遊技領域116」 ・「遊技球」 ・「遊技領域116に遊技球を発射する発射機構」 は、それぞれ、本願補正発明の ・「遊技盤」 ・「遊技盤の正面に形成された遊技領域」 ・「遊技球」 ・「遊技盤の正面に形成された遊技領域に向かって遊技球を発射する発射手段」 に相当する。 (イ)引用発明の ・「大役抽選」 ・「遊技領域116を流下する遊技球が入球すると、遊技者に遊技利益を付与するか否かの抽選である大役抽選が行われる第1始動口120及び第2始動口122」 は、それぞれ、本願補正発明の ・「内部抽選」 ・「遊技球の入球に基づいて内部抽選を実行する始動入球手段」 に相当する。 (ウ)引用発明の 「画像を表示する画像表示部からなり、演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、これら各演出図柄210a、210b、210cの停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行される演出表示部200aを備える演出表示装置200」 は、本願補正発明の 「前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に基づいて、複数の絵柄を変動表示する変動表示手段」 に相当する。 (エ)引用発明において、「大役遊技」を「開始」した状態は、本願補正発明の「遊技者にとって有利な特定制御状態」に相当し、引用発明において、「大役遊技」を「開始」する前の状態は、本願補正発明の「通常制御状態」に相当する。 そうすると、引用発明の「大役抽選の結果が大当たりである場合には、特別遊技管理フェーズを「03H」に更新し」、「大役遊技」を「開始」する「メインCPU300a」 は、本願補正発明の 「前記始動入球手段への遊技球の入球を契機として実行された内部抽選の結果に基づいて、遊技者にとって有利な特定制御状態に通常制御状態から遊技状態を移行する遊技状態移行手段」 に相当する。 (オ)引用発明の「遊技機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。 (カ)上記(ア)?(オ)から、引用発明の構成aは、本願補正発明の構成Aに相当する。 イ 構成E、E1について (ア)引用発明において、「大当たり図柄である特別図柄A?F」「が決定されると、大役遊技」「が実行され」ることから、「大当たり図柄である特別図柄A?F」「が決定される」場合は、本願補正発明の「前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合」に相当する。 そうすると、引用発明の「第2確変変動状態では、特別図柄A、Bが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1潜伏変動状態に設定され」ること、及び(「第2確変変動状態では、」)「特別図柄Fが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第1確変変動状態に設定され」ることは、本願補正発明の 「前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて所定の遊技状態に移行し得ること」 に相当する。 (イ)引用発明の「第2確変変動状態」では、「小当たり図柄である特別図柄b1?b4が決定された場合には、小当たり遊技の終了後も第2確変変動状態が維持され」、「小当たり遊技が実行されることで遊技球が徐々に増加する」のに対して、「大当たりに当選した際に、」「特別図柄C、D、Eが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第2確変変動状態に維持され」るものの、「主に特別図柄A、B、Fが決定されると終了」することから、「第2確変変動状態」では、「終了するおそれのある大当たりに当選するよりも、小当たりに当選することが遊技者に望まれ」、「極力、大当たりに当選したくないという遊技者心理が働」くものである。 すると、引用発明の「第2確変変動状態」は、本願補正発明の 「前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて所定の遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の非当選を遊技者が期待する非当選期待遊技状況」 に相当する。 (ウ)引用発明において、 「特別図柄Cが決定された場合、および、特別図柄Eが決定された場合には、大役遊技の終了後の遊技状態は、高確率遊技状態および時短遊技状態に設定され、変動状態は、大役遊技の終了後の変動回数が1?10000回である間、第2確変変動状態に設定され、特別図柄Dが決定されたときの変動状態が第2確変変動状態であった場合には、大役遊技の終了後の変動回数が1?10000回である間、第2確変変動状態に設定され、特別図柄b4が決定されたときの変動状態が第1確変変動状態である場合には、小当たり遊技の終了後の変動回数が1?30回である間、第2確変変動状態に設定され、変動回数が31回以上になると、小当たり遊技開始前の変動状態、すなわち、第1確変変動状態に復帰し」、「第2確変変動状態において、小当たり図柄である特別図柄b1?b4が決定された場合には、小当たり遊技の終了後も第2確変変動状態が維持され」ることから、引用発明の「第2確変変動状態」は、所定の変動回数である間、継続するものであり、本願補正発明の「非当選期待遊技状況」と、「所定回数の遊技回を経過するまで継続」するものである点で一致する。 したがって、引用発明の構成e及びe1は、本願補正発明の構成E及びE1に相当する。 ウ 構成E2について (ア)引用発明の「第1確変変動状態および第2確変変動状態」は、「遊技者にもっとも有利な遊技状態である高確率遊技状態および時短遊技状態において」「設けられた」「変動時間決定条件を異にする」「2つの変動状態」であること、さらに「第2確変変動状態は、第1確変変動状態よりも遊技者に有利な状態であ」ることから、「第2確変変動状態」は、上記イ(ア)で検討した「第2確変変動状態では、特別図柄A、Bが決定されると、大役遊技の終了後」「設定される」「第1潜伏変動状態」及び(「第2確変変動状態では、」)「特別図柄Fが決定されると、大役遊技の終了後」「設定される」「第1確変変動状態」よりも有利な遊技状態であると認められる。 (イ)そうすると、引用発明において、 「特別図柄C、Eが決定されると、大役遊技の終了後の変動状態が第2確変変動状態に設定され」、「小当たり図柄である特別図柄b4が決定された場合には、小当たり遊技の終了後に第2確変変動状態に設定され」、「早期に大当たりに当選することで遊技球の費消が抑制されるため、」「早期に次なる大当たりに当選したいという遊技者心理が働く」「第1確変変動状態」 は、本願補正発明の 「前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて前記所定の遊技状態よりも有利な遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の当選を遊技者が期待する当選期待遊技状況」 に相当する。 したがって、引用発明の構成e及びe2は、本願補正発明の構成E及びE2に相当する。 エ 一致点及び相違点 上記ア乃至ウから、本願補正発明と引用発明とは、 「A 遊技盤の正面に形成された遊技領域に向かって遊技球を発射する発射手段と、前記遊技領域を流下する遊技球が入球可能であって、遊技球の入球に基づいて内部抽選を実行する始動入球手段と、前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に基づいて、複数の絵柄を変動表示する変動表示手段と、前記始動入球手段への遊技球の入球を契機として実行された内部抽選の結果に基づいて、遊技者にとって有利な特定制御状態に通常制御状態から遊技状態を移行する遊技状態移行手段とを備える遊技機であって、 E 前記遊技機は、 E1 所定回数の遊技回を経過するまで継続し、前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて所定の遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の非当選を遊技者が期待する非当選期待遊技状況と、 E2 前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて前記所定の遊技状態よりも有利な遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の当選を遊技者が期待する当選期待遊技状況とを有する、 H 遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)(構成B) 本願補正発明が、 「前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に関連付けられたサブ側内部抽選情報を記憶する情報記憶手段」 を備えるのに対して、引用発明が、そのような構成を備えない点。 (相違点2)(構成C) 本願補正発明が、 「前記始動入球手段への遊技球の入球順に前記情報記憶手段に複数の前記サブ側内部抽選情報を記憶させる情報格納手段」 を備えるのに対して、引用発明が、そのような構成を備えない点。 (相違点3)(構成D) 本願補正発明が、 「前記情報記憶手段に記憶された前記サブ側内部抽選情報に基づいて、当該サブ側内部抽選情報に関連付けられた保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる情報報知手段」 を備えるのに対して、引用発明が、そのような構成を備えない点。 (相違点4)(構成F) 本願補正発明において、 「前記複数のサブ側内部抽選情報は、 前記非当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される非当選期待内部抽選情報と、 前記当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される当選期待内部抽選情報とを備え」る のに対して、引用発明が、そのような構成を備えない点。 (相違点5)(構成G) 本願補正発明において、 「前記情報報知手段は、 前記サブ側内部抽選情報の期待度を予告する複数種の予告保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる保留絵柄制御手段を備える」 のに対して、引用発明が、そのような構成を備えない点。 (4)判断 ア 周知技術 本願出願前において、 「始動入賞口に遊技球が入賞することを契機に大当たりの抽選が行われ、 メインCPUは、大当たりの抽選の結果が少なくとも含まれたコマンドである先読み指定コマンドを生成して副制御基板に送信し、 副制御基板は、サブCPU、サブRAMを備え、 サブRAMには、保留記憶領域が設けられ、 サブCPUは、先読み指定コマンドの解析結果に基づいて、演出表示装置において表示される当該保留の表示態様を定める保留表示データを決定し、保留記憶領域にある記憶領域から、順に空いている記憶領域を検索していき、空いている所定の記憶領域に、決定した保留表示データをセットし、記憶領域に記憶されている保留表示データを示す情報を画像制御基板に送信し、 これにより、かかるデータを受信した画像制御基板によって演出表示装置の保留表示領域に保留表示を表示し、 保留表示は、格付けがされた複数種類の表示態様を含み、 格付けの段階が高い保留表示は、大当たりに当選している期待度(大当たり当選期待度)の高い保留表示であり、格付けの段階が低い保留表示は、大当たりに当選している期待度の低い保留表示であるパチンコ機」(以下「周知技術」という。) は、例えば、令和2年1月29日付け拒絶理由通知書に引用文献3として引用され、本願の出願前に頒布された文献である特開2015-211736号公報に以下のように記載されているように、遊技機の分野において、周知の技術である。 「【0014】 以下、本発明の実施形態では、遊技機の一例であるパチンコ機Pについて図面を参照しながら具体的に説明する。」 「【0030】 第1特別図柄表示装置30は、第1始動入賞口24に遊技球が入賞することを契機に行われる第1特別図柄(第1特図)に係る電子抽選(大当たりの抽選)の結果を表示するためのものである。また、第2特別図柄表示装置31は、第2始動入賞口26に遊技球が入賞することを契機に行われる第2特別図柄(第2特図)に係る電子抽選の結果を表示するためのものである。」 「【0058】 副制御基板200は、主に遊技中や待機中等の各演出を制御する。この副制御基板200は、サブCPU200a、サブROM200b、サブRAM200cを備えており、主制御基板100に対して、当該主制御基板100から副制御基板200への一方向に通信可能に接続されている。サブCPU200aは、主制御基板100から送信されたコマンド、または、タッチボタン検出スイッチ61a、回転操作検出スイッチ62a、タイマカウンタ200dからの入力信号に基づいて、サブROM200bに格納されたプログラムを読み出して演算処理を行うとともに、当該処理に基づいて、対応するデータを画像制御基板400またはランプ制御基板500に送信する。サブRAM200cは、サブCPU200aの演算処理時におけるデータのワークエリアとして機能する。また、タイマカウンタ200d(ボタン演出時間タイマカウンタを含む)は、各種演出等に係る時間を計測する機能を有している。」 「【0060】 副制御基板200のサブRAM200cは、複数の記憶領域を有している。 サブRAM200cには、コマンド受信バッファ、遊技状態記憶領域、演出モード記憶領域、演出パターン記憶領域、演出図柄記憶領域、判定記憶領域(第0記憶領域)、第1保留記憶領域、第2保留記憶領域、ボタン演出実行中フラグ記憶領域、ポイント合計値記憶領域、累積情報ポイント記憶領域、ログイン中フラグ記憶領域等が設けられている。なお、上述した記憶領域も一例に過ぎず、この他にも多数の記憶領域が設けられている。」 「【0229】 (ステップS310) 次に、メインCPU100aは、先読みA指定コマンド(事前判定コマンド)を生成し、事前判定処理を終了する。この先読みA指定コマンドとは、大当たりの抽選の結果がハズレであって、かつ、リーチが行われない変動演出パターンであることが情報として少なくとも含まれたコマンドである。このように、本実施形態では、AグループおよびBグループに係る変動演出パターンは、リーチが行われない変動演出パターンから構成されている。これに対して、CグループおよびDグループに係る変動演出パターンは、リーチが必ず行われる変動演出パターンから構成されている。」 「【0234】 (ステップS315) 次に、メインCPU100aは、上記ステップS312で判定された変動モード番号、および、上記ステップS314で判定された変動パターン番号に対応する先読みB指定コマンド(事前判定コマンド)を生成し、事前判定処理を終了する。この先読みB指定コマンドには、大当たりの抽選の結果が大当たり、小当たりまたはハズレのいずれかであって、かつ、リーチが行われる変動演出パターンであることが情報として少なくとも含まれたコマンドである。 【0235】 以上の処理により、新たに記憶された第1保留について、この第1保留に係る特別図柄の変動開始時に決定される変動モード番号および変動パターン番号に係る情報が、当該第1保留が記憶された時点で、この情報についてのコマンドが事前に副制御基板200に送信される。」 「【0410】 (ステップS2503) 次に、サブCPU200aは、上記ステップS2501において取得した変動演出用乱数値と、上記ステップS2502における先読み指定コマンドの解析結果と、図42(a)?図42(d)に示す保留表示データ決定テーブルと、に基づいて、演出表示装置40において表示される当該保留の表示態様を決定する(保留表示データ決定処理)。 【0411】 保留表示データには、図42の保留表示データ決定テーブルに示すように、通常保留表示と、特定保留表示1と、特定保留表示2と、特定保留表示3と、が設けられている。また、図46には、各保留表示の表示態様(保留表示態様)の一例を示している。 【0412】 通常保留表示の表示態様は、図46(a)において表示領域42a,42bに表示されている保留表示態様に示すように、灰色の円形状をなしている。 【0413】 特定保留表示2の表示態様は、図46(c)において表示領域42aに表示されている保留表示に示すように、人の顔を模した形状をなす表示47a(顔型表示47a)と、その上に配置された箱形状をなす表示47b(第1箱表示47b)とから構成されている。 特定保留表示3の表示態様は、図46(b)において表示領域42bに表示されている保留表示に示すように、顔型表示47aと、第1箱表示47bと、さらにその上に配置された箱形状をなす表示47c(第2箱表示47c)とから構成されている。 そして、図示はしていないが、特定保留表示1の表示態様は、顔型表示47aのみで構成されている。 【0414】 さらに、特定保留表示には、格付け(ランク付け)がされており、 [ 顔型表示47aのみ < 顔型表示47a+第1箱表示47b < 顔表示47a+第1箱表示47b+第2箱表示47c ] というように、表示される種類が増えるほど、格付けの段階が高い(ランクが高い)特定保留表示となっている。 また、通常保留表示は、全ての特定保留表示(特定保留表示1?3)よりも格付けの段階が低い保留表示となっている。すなわち、最も格付けの段階の低い保留表示が通常保留表示となっている。」 「【0418】 以上のことから、格付けの段階が高い保留表示は、大当たりに当選している期待度(大当たり当選期待度)の高い保留表示であり、格付けの段階が低い保留表示は、大当たりに当選している期待度の低い保留表示であるともいえる。」 「【0421】 (ステップS2504) 次に、サブCPU200aは、上記ステップS2503において決定された保留表示データを第1保留記憶領域にある第1記憶領域?第4記憶領域または第2保留記憶領域にある第5記憶領域?第8記憶領域のうち、第1記憶領域または第5記憶領域から順に空いている記憶領域を検索していき、空いている所定の記憶領域(以下、「第N記憶領域」という)にある表示記憶領域に、決定した保留表示データをセットする。具体的には、第1始動入賞口24に対応する先読み指定コマンドである場合には、第1保留記憶領域にある第1記憶領域から順に空いている記憶領域を検索していき、空いている第N記憶領域にある表示記憶領域に決定した保留表示データをセットし、第2始動入賞口26に対応する先読み指定コマンドである場合には、第2保留記憶領域にある第5記憶領域から順に空いている記憶領域を検索していき、空いている第N記憶領域にある表示記憶領域に決定した保留表示データをセットする。 【0422】 (ステップS2505) 上記ステップS2504において保留表示データがセットされると、サブCPU200aは、第1保留記憶領域にある第1記憶領域?第4記憶領域の表示記憶領域、および第2保留記憶領域にある第5記憶領域?第8記憶領域の表示記憶領域に記憶されている保留表示データを示す情報を画像制御基板400とランプ制御基板500に送信するため、当該表示記憶領域に記憶されている保留表示データを示す情報と、第1保留記憶領域にある第1記憶領域?第4記憶領域を示す情報または第2保留記憶領域にある第5記憶領域?第8記憶領域を示す情報と、を関連付けてサブRAM200cの送信バッファにセットし、保留表示態様決定処理を終了する。これにより、かかるデータを受信した画像制御基板400によって演出表示装置40の第1保留表示領域42(表示領域42a?42d)に第1保留表示が表示される、または第2保留表示領域44(表示領域44a?44d)に第2保留表示が表示されることとなる。」 イ 相違点1?3、5について (ア)相違点1(構成B)について 上記周知技術の「始動入賞口に遊技球が入賞することを契機に」行われる「大当たりの抽選の結果が少なくとも含まれたコマンドである先読み指定コマンド」の「解析結果に基づいて」「決定」された「演出表示装置において表示される当該保留の表示態様を定め」、「サブRAM」に設けられた「保留記憶領域」にある「記憶領域」に「記憶」される「保留表示データ」は、本願補正発明の「前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に関連付けられたサブ側内部抽選情報」に相当する。 したがって、周知技術の「保留表示データ」が「セット」される「記憶領域」のある「保留記憶領域」が設けられた「サブRAM」は、本願補正発明の「前記始動入球手段への遊技球の入球に基づいて実行された内部抽選の結果に関連付けられたサブ側内部抽選情報を記憶する情報記憶手段」(構成B)に相当する。 (イ)相違点2(構成C)について 上記周知技術の「保留記憶領域にある記憶領域から、順に空いている記憶領域を検索していき、空いている記憶領域に、決定した保留表示データをセット」することは、本願補正発明の「前記始動入球手段への遊技球の入球順に前記情報記憶手段に複数の前記サブ側内部抽選情報を記憶させる」ことに相当する。 したがって、上記周知技術の「決定した保留表示データをセット」する「サブCPU」は、本願補正発明の「前記始動入球手段への遊技球の入球順に前記情報記憶手段に複数の前記サブ側内部抽選情報を記憶させる情報格納手段」(構成C)に相当する。 (ウ)相違点3(構成D)について 上記周知技術の「サブRAM」に設けられた「保留記憶領域」にある「記憶領域に記憶されている保留表示データを示す情報を画像制御基板に送信し」、「これにより、かかるデータを受信した画像制御基板によって演出表示装置の保留表示領域に保留表示を表示すること」は、本願補正発明の「前記情報記憶手段に記憶された前記サブ側内部抽選情報に基づいて、当該サブ側内部抽選情報に関連付けられた保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる」ことに相当する。 したがって、上記周知技術の「保留表示データを示す情報を画像制御基板に送信」する「サブCPU」は、本願補正発明の「前記情報記憶手段に記憶された前記サブ側内部抽選情報に基づいて、当該サブ側内部抽選情報に関連付けられた保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる情報報知手段」(構成D)に相当する。 (エ)相違点5(構成G)について 上記周知技術の 「演出表示装置の保留表示領域に保留表示を表示し、 保留表示は、格付けがされた複数種類の表示態様を含み、 格付けの段階が高い保留表示は、大当たりに当選している期待度(大当たり当選期待度)の高い保留表示であり、格付けの段階が低い保留表示は、大当たりに当選している期待度の低い保留表示であること」 は、本願補正発明の 「前記サブ側内部抽選情報の期待度を予告する複数種の予告保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる」こと に相当する。 したがって、上記周知技術の「保留表示データを示す情報を画像制御基板に送信」することによって、「画像制御基板によって演出表示装置の保留表示領域に保留表示を表示」させる「サブCPU」は、本願補正発明の「前記サブ側内部抽選情報の期待度を予告する複数種の予告保留絵柄を前記変動表示手段に表示させる保留絵柄制御手段」を備えるといえるから、上記周知技術は、本願補正発明の構成Gを備える。 (オ)相違点1?3、5についてのまとめ 上記(ア)-(エ)より、相違点1-3、5に係る構成は、引用発明に、周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到することができたものである。 ウ 相違点4(構成F)について (ア)本願補正発明の構成Fについて 「前記複数のサブ側内部抽選情報は、 前記非当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される非当選期待内部抽選情報と、 前記当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される当選期待内部抽選情報とを備え」 が、どのような事項を特定するものであるのかを検討する。 当該事項は、令和1年8月26日に提出された手続補正書により、「非当選期待内部抽選情報」が「前記非当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される」こと、「当選期待内部抽選情報」が「前記当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示」されることが限定され、同じく令和1年8月26日提出に提出された意見書には、「上記補正は、本願明細書の段落0613の記載に基づくものであ」ることが述べられている。 また、本件補正について、審判請求書には、「別途手続補正書における補正事項は、明細書の段落0344?0359,0602?0650の記載に基づくものであ」ると述べられている。 そして、本願明細書の【0009】から【0404】には、第1実施形態について記載され、【0521】から【0656】には、第5実施形態について記載されていることから、本願補正発明は、本願明細書に記載の第1実施形態又は第5実施形態に関するものであると認められる。 そこで、本願明細書の第1実施形態及び第5実施形態が記載されている箇所において、「非当選期待内部抽選情報」及び「当選期待内部抽選情報」に関する記載を参酌すると、以下の事項が記載されている。 「【0613】 ここで、図34(E)では、第2保留ランプ部49bの点灯数は、最大の4個となっているので、短期高頻度サポートモードの滞在中に「最有利結果」となった場合には、前述したように、特別遊技状態における第2変動表示の回転数は1回転となる。換言すれば、遊技者は、特別遊技状態となる前の3回転では非当選を期待し(非当選期待遊技状況)、特別遊技状態となった後の1回転では当選を期待することになる(当選期待遊技状況)。 また、図34(E)では、第2保留ランプ部49bの点灯数は、最大の4個となっているので、短期高頻度サポートモードの滞在中に「最有利結果」とならなかった場合には、前述したように、特別遊技状態における第2変動表示の回転数は2回転となる。換言すれば、遊技者は、特別遊技状態となる前の2回転では非当選を期待し(非当選期待遊技状況)、特別遊技状態となった後の2回転では当選を期待することになる(当選期待遊技状況)。 以下の説明では、短期高頻度サポートモードの滞在中に下作動口37に入賞して発生した保留(通常保留または予告保留)は特殊保留と称する。以降の実施形態においても同様である。 【0614】 したがって、遊技者は、台座B21,B22の上に載置された保留絵柄に係る特殊保留(非当選期待特殊保留SH1)に基づく回転では、短期高頻度サポートモードの滞在中に「最有利結果」となった場合、および「最有利結果」とならなかった場合のいずれの場合であっても非当選を期待することになる。換言すれば、非当選期待特殊保留SH1を発生させたサブ側保留情報は、遊技者にて非当選を期待される非当選期待内部抽選情報として機能する。 また、遊技者は、台座B23の上に載置された保留絵柄に係る特殊保留(混在当選期待特殊保留SH2)に基づく回転では、短期高頻度サポートモードの滞在中に「最有利結果」となった場合(非当選期待遊技状況)には、非当選を期待することになり、「最有利結果」とならなかった場合(当選期待遊技状況)には、当選を期待することになる。換言すれば、混在当選期待特殊保留SH2を発生させたサブ側保留情報は、遊技者にて非当選を期待される非当選期待遊技状況と、遊技者にて当選を期待される当選期待遊技状況とを混在させて有する混在当選期待内部抽選情報として機能する。」 (特に「非当選期待内部抽選情報」又は「当選期待内部抽選情報」に関する記載に下線を付した。以下同じ。) 「【0617】 さらに、遊技者は、台座B24の上に載置された保留絵柄に係る特殊保留(当選期待特殊保留SH3)に基づく回転では、短期高頻度サポートモードの滞在中に「最有利結果」となった場合、および「最有利結果」とならなかった場合のいずれの場合であっても当選を期待することになる。換言すれば、当選期待特殊保留SH3を発生させたサブ側保留情報は、遊技者にて当選を期待される当選期待内部抽選情報として機能する。 以下、図33および図35を参照して当否抽選モードおよびサポートモードの移行時の流れについて更に説明する。」 本願明細書の上記記載によれば、本願補正発明の「非当選期待内部抽選情報」及び「当選期待内部抽選情報」は、それぞれ「遊技者にて非当選を期待される」もの「として機能する」「サブ側保留情報」及び「遊技者にて当選を期待される」もの「として機能する」「サブ側保留情報」であり、「サブ側内部抽選情報」として「情報記憶手段」に記憶されるデータに、「非当選期待内部抽選情報」及び「当選期待内部抽選情報」が区別できるようなデータが付加されて記憶されているようなものではないと認められる。 (イ)引用発明に上記周知技術を適用したものについて検討する。 上記周知技術における「サブRAM」に設けられた「保留記憶領域」にある「記憶領域」に記憶され、「受信した画像制御基板によって演出表示装置の保留表示領域に保留表示を表示する」ように「画像制御基板に送信」される「情報」が示す「保留表示データ」は、「極力、大当たりに当選したくないという遊技者心理が働」く「第2確変変動状態」(引用発明の構成e1)においては、遊技者にて非当選を期待されるものとして機能すると認められ、さらに、演出表示装置200の演出表示部200aにおいて、「演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、これら各演出図柄210a、210b、210cの停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行される」(引用発明の構成a)から、本願補正発明の「前記非当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される非当選期待内部抽選情報」に相当する。 同様に上記周知技術における「サブRAM」に設けられた「保留記憶領域」にある「記憶領域」に記憶され、「受信した画像制御基板によって演出表示装置の保留表示領域に保留表示を表示する」ように「画像制御基板に送信」される「情報」が示す「保留表示データ」は、「早期に次なる大当たりに当選したいという遊技者心理が働く」「第1確変変動状態」(引用発明の構成e2)においては、遊技者にて当選を期待されるものとして機能すると認められ、さらに、演出表示装置200の演出表示部200aにおいて、「演出図柄210a、210b、210cが変動表示され、これら各演出図柄210a、210b、210cの停止表示態様によって大役抽選結果が遊技者に報知される変動演出が実行される」(引用発明の構成a)から、本願補正発明の「前記当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される当選期待内部抽選情報」に相当する。 (ウ)したがって、引用発明に上記周知技術を適用したものにおいて、「サブRAM」に設けられた「保留記憶領域」にある「記憶領域」に記憶され、「受信した画像制御基板によって演出表示装置の保留表示領域に保留表示を表示する」ように「画像制御基板に送信」される「情報」が示す「保留表示データ」は、本願補正発明の 「前記非当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される非当選期待内部抽選情報」と 「前記当選期待遊技状況で前記変動表示手段にて変動表示される当選期待内部抽選情報」 に相当するものを備えるといえるから、引用発明に上記周知技術を適用したものは、本願補正発明の構成Fを備えると認められる。 (5)本願補正発明の作用効果について 本願補正発明の作用効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。 (6)請求人の主張について 請求人は、審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」「(d)本願発明と引用発明との対比」において、以下の旨主張する。 「引用文献1に記載された発明では、第2確変変動状態は、所定回数の遊技回を経過した後、第1確変変動状態に移行しています。この第1確変変動状態は、明細書の段落0130に記載されているように、第2確変変動状態よりも賞球数の少ない不利な遊技状態(遊技中に遊技球が減少する)となっています。したがって、遊技者は、第1確変変動状態では、早期に大当りに当選したいと考え、第2確変変動状態では、大当りに当選したくないと考えることになります。換言すれば、遊技機は、遊技回を消化することへの遊技者の注目度を向上させることができるものの、大当りに当選した場合の遊技状態の移行先への遊技者の注目度を低下させてしまうことになります。 これに対して、本願発明は、大当りに当選した場合の遊技状態の移行先が相違することに基づいて、遊技者は、非当選期待遊技状況では、大当りに当選したくないと考え、当選期待遊技状況では、大当りに当選したいと考えることになるものです。 具体的には、本願発明は、構成(E),(F)を備え、「非当選期待遊技状況は、前記始動入球手段への遊技球の入球に際して実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて所定の遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の非当選を遊技者が期待する」状況であり、「当選期待遊技状況は、前記始動入球手段への遊技球の入球に際して実行された内部抽選に当選した場合に、前記遊技状態移行手段にて前記所定の遊技状態よりも有利な遊技状態に移行し得ることによって、当該内部抽選の当選を遊技者が期待する」状況であるので、遊技者は、内部抽選に当選することなく所定回数の遊技回を消化し、その後の当選期待遊技状況にて内部抽選に当選することを期待することになります。したがって、遊技機は、大当りに当選した場合の遊技状態の移行先への遊技者の注目度を向上させることができ、引用文献1とは異なる遊技性を創出することができるという格別の作用効果を奏することができます。」 上記主張について検討する。引用発明は、「この第2確変変動状態では、小当たり図柄である特別図柄b1?b4が決定されて小当たり遊技が実行されることで遊技球が徐々に増加することから、第2確変変動状態が終了するおそれのある大当たりに当選するよりも、小当たりに当選することが遊技者に望まれ、第2確変変動状態では、極力、大当たりに当選したくないという遊技者心理が働」くものであるから、大当りに当選した場合の遊技状態の移行先について、遊技者に注目させるものであるといえる。したがって、引用発明についての「「大当りに当選した場合の遊技状態の移行先への遊技者の注目度を低下させてしまうことになります」との請求人の主張には根拠がない。 また、同じ理由で、「遊技機は、大当りに当選した場合の遊技状態の移行先への遊技者の注目度を向上させることができ」るとの効果については、引用発明においても、同様の効果が得られるものと認められる。 したがって、本願補正発明は引用文献1とは異なる遊技性を創出することができるという格別の作用効果を奏するとはいえず、上記主張を採用することができない。 (7)まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 4 むすび 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年8月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの、上記「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、理由3は、次のとおりのものである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1 ・引用文献等 2?4 3 引用文献に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4の記載事項及び引用発明の認定については、上記「第2[理由]3(2)引用文献に記載された事項」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、 (1)「前記始動入球手段への遊技球の入球を契機として実行された内部抽選の結果に基づいて、遊技者にとって有利な特定制御状態に通常制御状態から遊技状態を移行する遊技状態移行手段」 との構成を削除し、 (2)「非当選期待遊技状況」について、「所定回数の遊技回を経過するまで継続」し、「当該内部抽選の非当選を遊技者が期待する」のが「前記遊技状態移行手段にて所定の遊技状態に移行し得ることによって」であることの限定を削除し、 (3)「当選期待遊技状況」について、「当該内部抽選の当選を遊技者が期待する」のが「前記遊技状態移行手段にて前記所定の遊技状態よりも有利な遊技状態に移行し得ることによって」であることの限定を削除し、 (4)「始動入球手段」について、「遊技球が入球可能であって」とあるところを「遊技球を入球させ」とし、 (5)「始動入球手段」、「変動表示手段」、「情報記憶手段」、「非当選期待遊技状況」及び「当選期待遊技状況」について、「遊技球の入球に基づいて」とあるところを「遊技球の入球に際して」とするものである。 上記(4)及び(5)は、発明特定事項を実質的に変えるものではないと認められることから、本願発明は、上記(1)、(2)及び(3)により、本願補正発明の限定の一部を削除したものである。 そうすると、本願補正発明が、上記「第2[理由]3(3)対比、(4)判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の限定の一部を削除したものである本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-05-25 |
結審通知日 | 2021-06-01 |
審決日 | 2021-06-15 |
出願番号 | 特願2017-211880(P2017-211880) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 537- Z (A63F) P 1 8・ 4- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 夕希奈、東松 修太郎、▲高▼木 尚哉、尾崎 俊彦 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
北川 創 太田 恒明 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 福井 仁 |