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関連判例 | 平成30年(行ケ)10159号 審決取消請求事件平成30年(行ケ)10153号 審決取消請求事件平成30年(行ケ)10159号 審決取消請求事件平成30年(行ケ)10153号 審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 全部無効 判示事項別分類コード:857 C07F 審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 C07F 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C07F 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C07F 審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 C07F 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 C07F 審判 全部無効 2項進歩性 C07F |
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管理番号 | 1376664 |
審判番号 | 無効2016-800130 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2016-11-11 |
確定日 | 2021-04-07 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4162491号発明「ボロン酸化合物製剤」の特許無効審判事件について平成30年 6月25日にした審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項17、19、20、44、46に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成30年(行ケ)第10159号及び平成30年(行ケ)第10153号、令和2年7月2日判決言渡)があり、その後確定したので、当該判決及び特許法第181条第2項の規定により審決が取消された部分の請求項1?20、44、46に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4162491号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?20]、44、46について訂正することを認める。 特許第4162491号の請求項17、19、20、44、46に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 特許第4162491号の請求項1?16、18に係る発明についての審判請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1 本件特許出願 特許第4162491号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし47に係る発明についての出願は、2002年1月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年1月25日(US)米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成20年8月1日に特許権の設定登録がされたものである。 2 本件無効審判の請求 審判請求人(ホスピーラ インコーポレイテッド、以下「請求人」という。)は、平成28年11月11日に、「特許第4162491号の請求項1?47に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、本件無効審判を請求した。 3 一次審決までの主な手続 平成28年12月21日:手続補正書(方式)提出(請求人) 平成29年 4月 4日:審判事件答弁書及び訂正請求書提出(被請求人) 同年 6月 9日:上申書提出(請求人) 同年 6月13日:弁駁書提出(請求人) 同年 7月19日:審理事項通知 同年 9月 7日:上申書提出(請求人)(被請求人) 同年 9月21日:口頭審理陳述要領書提出(請求人)(被請求人) 同年 10月 5日:第1回口頭審理 同年 10月19日:上申書提出(被請求人) 同年 11月 2日:上申書提出(請求人) 平成30年 1月22日:審決の予告 同年 6月25日:審決(以下、「一次審決」という。) 4 一次審決の結論及びこれに対する審決取消訴訟 (1)一次審決の結論 一次審決の結論は次のとおりであった。 「特許第4162491号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?20]、[21?43、45、47]、44、46について訂正することを認める。 特許第4162491号の請求項17、19、20、44、46に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4162491号の請求項21、38?42に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 特許第4162491号の請求項1?16、18、22?37、43、45、47に係る発明についての審判請求を却下する。 審判費用は、その47分の6を請求人の負担とし、47分の41を被請求人の負担とする。」 (2)一次審決取消訴訟の経緯及び判決主文 被請求人は、一次審決のうち「特許第4162491号の請求項17,19,20,44,46に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消すことを求めて、平成30年11月2日に審決取消訴訟を知的財産高等裁判所に提起した(平成30年(行ケ)第10159号、以下、「A事件」という。)。 請求人は、一次審決のうち「特許第4162491号の請求項21,38?42に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との部分を取り消すことを求めて、平成30年10月30日に審決取消訴訟を知的財産高等裁判所に提起した(平成30年(行ケ)第10153号、以下、「B事件」という。)。 知的財産高等裁判所において、これら二つの審決取消訴訟は審理され、令和2年7月2日に両審決取消訴訟の判決(以下、「判決」という。)が言渡された。 その主文は、次のとおりであった。 「1 特許庁が無効2016-800130号事件について平成30年6月25日にした審決のうち,「特許第4162491号の請求項17,19,20,44,46に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消す。 2 B事件原告ホスピーラ インコーポレイテッドの請求を棄却する。 3 訴訟費用は,A事件・B事件を通じてA事件被告・B事件原告ホスピーラ インコーポレイテッドの負担とする。 4 A事件被告・B事件原告ホスピーラ インコーポレイテッドのために,この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。」 上記判決はその後確定したため、特許法第181条第2項の規定により、一次審決のうち、特許第4152491号の請求項17、19及び20とともに一群の請求項を構成する請求項1?16、18についての部分も取り消して、更に審理を行うことを、令和2年10月30日付けの審理再開通知書により請求人及び被請求人に通知した。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 訂正請求書において、被請求人が求めた訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。 1-1 請求項1?20、44、46に係る訂正 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1?16、18を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項17に 「化合物D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」 とあるのを、 「凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」 に訂正する。 (3)訂正事項3 上記訂正事項1の訂正に伴い、請求項19及び20の引用請求項番号を、それぞれ「18」から「17」へと訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項44に 「(i)請求項1?20のいずれか一項に記載の化合物、および (ii)医薬的に許容される担体 を含む、組成物。」 とあるのを、 「(i)D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート、および(ii)医薬的に許容される担体を含む、凍結乾燥粉末の形態の組成物。」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項46に 「請求項1?20のいずれか一項に記載の化合物を含む、凍結乾燥されたケーキ。」 とあるのを、 「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含む、凍結乾燥されたケーキ。」 に訂正する。 1-2 請求項21?43、45、47に係る訂正 (1)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項21に 「式(1): 【化2】 (式中、 Pは水素又はアミノ基保護部分であり; Rは水素又はアルキルであり; Aは0、1又は2であり; R^(1)、R^(2)、R^(3)は各々独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、又は-CH_(2)-R^(5)であり; R^(5)は各々の場合に、アリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、又は-W-R^(6)であり、ここで、Wはカルコゲンであり、R^(6)はアルキルであり; ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、又はR^(5)のいかなるアリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールの環部分も置換されていてもよく;そして Z^(1)とZ^(2)は、糖部分由来である) の凍結乾燥された化合物の調製方法であって、 (a)(i)水、 (ii)式(3) 【化3】 (式中、P、R、A、R^(1)、R^(2)、R^(3)は上記のとおりであり;そして Z’とZ”はOHである) の化合物、及び (iii)糖由来の部分 を含む混合物を調製すること;及び (b)混合物を凍結乾燥すること; を含む方法。」 とあるのを、 「(a)(i)水、 (ii)N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸、及び (iii)D-マンニトール を含む混合物を調製すること;及び (b)混合物を凍結乾燥すること; を含む、凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートの調製方法。」 に訂正する。 それに伴い、請求項38及び39に記載の「糖由来の部分」及び「式(3)の化合物」も、それぞれ「D-マンニトール」及び「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸」 に訂正する。 (2)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項22?37、43、45及び47を削除する。 (3)訂正事項8 上記訂正事項6及び7の訂正に伴い、請求項38及び39の引用請求項番号を、それぞれ「21」へと訂正すると共に、請求項40の引用請求項番号を、「21?39」から「21、38及び39」へと訂正する。 2 訂正の適否 上記第1 4(2)の判決及び特許法第181条第2項の規定により一次審決が取消された部分の請求項1?20、44、46に係る訂正事項1?5について、その適否を検討する。 (1)訂正事項1 訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正前の請求項を削除するものであるから、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項17に記載の化合物を、請求項18の「凍結乾燥された化合物」の記載、本件特許明細書の段落【0010】、【0058】及び【0064】における「凍結乾燥粉末の、式(2)の化合物を含む組成物」及び「本発明のこの局面に従う組成物は、凍結乾燥粉末の形態である。」との記載に基づき、「凍結乾燥粉末の形態」であると特定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 本件特許明細書の実施例で、高速原子衝撃(FAB)質量分析によって、凍結乾燥品の中にD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートが存在していることを確認している。凍結乾燥品は粉末の形態にあるところ、D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートも他の構成成分と同様に凍結乾燥品中で粉末の形態にあることは明らかであるから、訂正事項2による訂正は、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 なお、請求人は、平成29年9月8日付け上申書 「9 訂正要件違反について」で、「(本件特許明細書には、)化合物については「凍結乾燥されたボルテゾミブ(N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸)のマンニトールエステル」という記載しかなく、「凍結乾燥粉末」において化合物分子がとる何らかの状態を特定するような記載ではありません。すると、本件発明17(凍結乾燥粉末形態のボルテゾミブのマンニトールエステル)は、本件特許明細書に記載がなかったものであり、本件訂正により新たに導入された技術的事項であると言えます」と主張する(第28頁)。 しかしながら、前記のとおり、本件特許明細書の実施例の記載から、凍結乾燥品中でD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートは粉末の形態にあったことを読みとれるから、凍結乾燥粉末形態のボルテゾミブのマンニトールエステルが本件特許明細書に記載がなかったとまではいえない。そうすると、請求人の斯かる主張を採用することはできない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正事項1により請求項1?16、18が削除されたことに伴い、請求項19及び20での引用関係の整理を行ったものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、引用関係を整理したものであるから、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、請求項44における「請求項1?20のいずれか一項に記載の化合物」を、請求項17に記載の「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」に限定し、かつ、これを独立形式請求項へ改めると共に、本件特許明細書の段落【0010】、【0058】及び【0064】における「凍結乾燥粉末の、式(2)の化合物を含む組成物」及び「本発明のこの局面に従う組成物は、凍結乾燥粉末の形態である。」との記載に基づき、「凍結乾燥粉末の形態」のものに限定するための訂正であって、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 本件特許明細書の実施例の記載によれば、凍結乾燥品中にD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートが存在していることが確認されていて、凍結乾燥には医薬的に許容される担体も使用されているから、訂正事項4による訂正は、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、請求項46における「請求項1?20のいずれか一項に記載の化合物」を、訂正前の請求項17に記載の「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」に限定することにより、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改める訂正であって、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号及び第4号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 本件特許明細書の実施例の記載によれば、凍結乾燥品中にD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートが存在していることが確認されていて、凍結乾燥品がケーキ状になっていることは凍結乾燥品として当然のことであるから、訂正事項5による訂正は、願書に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (6)一群の請求項 訂正事項1?5の訂正は、訂正後の請求項1ないし20、44、46についての訂正であるが、訂正前の請求項2?20、44、46は訂正前の請求項1を直接的に又は間接的に引用していることから、訂正前の請求項1?20、44、46は一群の請求項である。 したがって、訂正事項1?5の訂正は、一群の請求項ごとにされており、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。 3 小括 上記訂正事項1ないし5は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第3項並びに同条第9項で準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。 訂正後の請求項44に係る訂正事項4及び訂正後の請求項46に係る訂正事項5は、引用関係の解消を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項44及び46について訂正が認められる場合には、請求項44及び46は、請求項1?20とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項44及び46について請求項ごとに訂正することを認める。 したがって、訂正後の請求項[1?20]、44、46について、訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2 3で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし20、44、46に係る発明(以下、順次「本件発明1」のようにもいう。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし20、44、46に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 (削除) 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 (削除) 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート。 【請求項18】 (削除) 【請求項19】 少なくとも1ヶ月間0℃で安定である、請求項17に記載の化合物。 【請求項20】 少なくとも1ヶ月間40℃で安定である、請求項17に記載の化合物。 ・・・ 【請求項44】 (i)D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート、及び(ii)医薬的に許容される担体を含む、凍結乾燥粉末の形態の組成物。 ・・・ 【請求項46】 D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含む、凍結乾燥されたケーキ。 ・・・」 第4 請求人の主張の概要及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求人は、 ・審判請求書及び手続補正書とともに下記甲第1号証から9号証を、 ・弁駁書とともに下記甲第10号証から13号証を、 ・平成29年9月7日付け上申書とともに下記甲第14号証から19号証を、 ・口頭審理陳述要領書とともに下記甲第20号証を、 ・平成29年11月2日付け上申書とともに下記甲第21号証を、 それぞれ証拠方法として提出した。 そして、請求人は、「特許第4162491号の請求項1?47に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、次の無効理由を主張している(審判請求書、手続補正書、弁駁書、請求人提出の上申書及び口頭審理陳述要領書を参照) (1)無効理由1(特許法第29条第2項違反(その1)) :平成29年9月7日付け上申書第4頁?第5頁、6-3(1) 本件特許の訂正後の請求項17、21、40?42、44、46に係る発明は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許の訂正後の請求項19、20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明および甲第4号証または甲第13号証に記載された発明に基いて、または甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許の訂正後の請求項38、39に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明および甲第5号証に記載された発明に基いて、または甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。 (2)無効理由2(特許法第29条第2項違反(その2)) :平成29年9月7日付け上申書第5頁?第6頁、6-3(2) 本件特許の訂正後の請求項17、21、44に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ならびに甲第2号証および甲第7号証に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許の訂正後の請求項19、20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証または甲第13号証に記載された発明および上記周知技術に基いて、または甲第1号証に記載された発明および上記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許の訂正後の請求項38、39に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第5号証に記載された発明および上記周知技術に基いて、または甲第1号証に記載された発明および上記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許の訂正後の請求項40?42、46に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明および上記周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。 (3)無効理由3 無効理由3は、請求人によって取り下げられた(第1回口頭審理調書)。 (4)無効理由4(特許法第29条第2項違反(その3)) :平成29年9月7日付け上申書第6頁?第7頁、6-3(3)の無効理由4-1 本件特許の訂正後の請求項17、21、38、39、44に係る発明は、甲第6号証に記載された発明と甲第5号証または甲第15号証に記載された発明と甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証および甲第9号証に例示される周知技術とに基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許の訂正後の請求項19、20に係る発明は、甲第6号証に記載された発明と甲第5号証または甲第15号証に記載された発明と甲第4号証または甲第13号証に記載された発明と上記周知技術とに基いて、または甲第6号証に記載された発明と甲第5号証または甲第15号証に記載された発明と上記周知技術とに基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許の訂正後の請求項40?42、46に係る発明は、甲第6号証に記載された発明と甲第5号証または甲第15号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明と上記周知技術とに基いて、当業者が容易に想到し得たものである。したがって、これらの請求項に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。 なお、平成29年9月7日付けの上申書及び口頭審理陳述要領書で、無効理由4-2としている部分については、これを認めていない(第1回口頭審理調書)。 (5)無効理由5(サポート要件(特許法第36条第6項第1号)違反) :審理事項通知書 第1 3(4) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、以下の点で、その特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明17、19?21、38?42、44、46の特許が同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 発明の詳細な説明では、「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸」(以下「ボルテミゾブ」ということがある。)とボルテミゾブのマンニトールエステルとが単離されてその効果が比較されているわけではないから、ボルテミゾブの安定性の向上や溶解の容易さの向上がエステル化によるものか、過剰のマンニトールの存在によるものかは不明であり、ボルテゾミブのマンニトールエステルが本件発明の課題を解決できることを把握することができない。 したがって、本件特許請求の範囲の請求項17、19?21、38?42、44、46に記載された特許を受けようとする発明は発明の詳細な説明に記載されたものでない。 なお、請求人の主張する無効理由1?5が上記のとおりであることは、口頭審理で確認されている。(第1回口頭審理調書) 2 証拠方法 甲第1号証 Wu,Waugh and Stella,“Degradation Pathways of a Peptide Boronic Acid Derivative,2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)”,Journal of Pharmaceutical Sciences,vol.89,no.6,758 - 765(June 2000) 甲第2号証 Jonkman-de Vries,J.D.,et al.,“Pharmaceutical Development of(Investigational)Anticancer Agents for Parenteral Use - A Review”,Drug Development & Industrial Pharmacy 22:475-494(1996) 甲第3号証 Ferrier,R.J.,“Carbohydrate Boronates”,Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry,Volume 35,1978 甲第4号証 Food and Drug Administration(‘FDA’),“International Conference on Harmonization;Stability Testing of New Drug Substances and Products;Guideline;Availability;Notice”,Docket No.93D-0139,September 22,1994 (甲第4-1号証 マイクロフィルムにより保管され公開されたもの。 甲第4-2号証 United States Government Publishing Officeのウエブページで公開されているもの。) 甲第5号証 国際公開第00/57887号 甲第6号証 特表平10-510245号公報 甲第7号証 Pikal,M.,“Freeze Drying”,Encyclopedia of pharmaceutical technology,1994,Vol 6,pages 275 - 303 甲第8号証 化学大辞典6(縮刷版第7刷)、共立出版株式会社、第309頁、昭和44年3月15日発行 甲第9号証 Pharmazeutische Technologie:fur Studium und Beruf,p23-24 2000 甲第10号証 国際公開第02/059130号 甲第11号証 インタープレス版 バイオ&メディカル大辞典 英和編、株式会社アイピーシー、第353頁、1990年4月15日発行 甲第12号証 科学技術35万語大辞典 英和編、株式会社アイピーシー、第662頁、1994年12月20日発行 甲第13号証 医薬品の製造(輸入)承認申請に際して添付すべき安定性試験成績の取扱いについて、各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省薬務局審査・新医薬品課長連名通知、薬審第四三号、平成3年2月15日 甲第14号証 岩波 理化学辞典 第3版、岩波書店、第222頁、1973年8月20日発行 甲第15号証 Mori,et al.,“Complex Formation of p-Boronophenylalanine With Some Monosaccharides” ,Pigment Cell Research 2:273-277(1989) 甲第16号証 実験報告書(2015年1月26日、作成者:サンド社、本件特許の欧州における対応特許(EP1355910)に対する異議申立ての特許取消審決(Decision of Technical Board of Appeal 3.3.01 of 29 September 2016)において引用された証拠番号(55)の資料である) 甲第17号証 知的財産高等裁判所 平成23年2月1日判決(平成22年(行ケ)第10133号) 甲第18号証 特開平2-83324号公報 甲第19号証 特開平6-128162号公報 甲第20号証 ファイザー社の専門家による証言 甲第21号証 Mohamed Iqbal,et al.,“POTENT α-KETOCARBONYL AND BORONIC ESTER DERIVED INHIBITORS OF PROTEASOME”,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Vol.6,No.3,pp.287-290(1996) 第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、 ・審判事件答弁書とともに下記乙第1号証から2号証を、 ・平成29年9月7日付け上申書とともに下記乙第3号証から6号証を、 ・口頭審理陳述要領書とともに下記乙第7号証から10号証を、 ・平成29年10月19日付け上申書とともに下記乙第11号証から17号証を、 それぞれ証拠方法として提出した。 そして、被請求人は、「訂正を認める。本件の審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人が主張する無効理由のいずれにも理由がない旨の反論をしている(審判事件答弁書、被請求人提出の上申書及び口頭審理陳述要領書を参照)。 2 証拠方法 乙第1号証 南山堂,医学大辞典 第17版,第1706頁,1990年2月1日発行 乙第2号証 S.Shinkai et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1996,35,1911-1922及びその抄訳文 乙第3号証 J.D.Jonkman-de Vries et al.,Drug Development and Industrial Pharmacy,22(6),475-494(1996)及びその抄訳文(合議体注:甲2と同一の文献である。) 乙第4号証 実験成績証明書(比較実験1)及びその全訳文 乙第5号証 実験成績証明書(比較実験2)及びその全訳文 乙第6号証 実験成績証明書(比較実験3)及びその全訳文 乙第7号証 岩波 理化学大辞典 第5版,1998年2月20日発行,950頁,1164頁,1484頁 乙第8号証 ADVANCES IN CARBOHYDRATE CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY,Vol.35,ACADEMIC PRESS,pages 31,53-58(1978)及びその抄訳文 乙第9号証 医薬品添加物事典,薬事日報社,1994年1月14日発行,116頁 乙第10号証 甲第15号証及びその抄訳文 乙第11号証 Kenneth L.Rock et al.,Cell,vol.78,761-771,September 9,1994及びその抄訳文 乙第12号証 Charles A.Kettner et al.,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,Vol.259,No.24,December 25,15106-15114,1984及びその抄訳文 乙第13号証 Teresa Mc Cormack et al.,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,Vol.272,No.42,October 17,26103-20109,1997及びその抄訳文 乙第14号証 Julian Adams et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 8(1998)333-338及びその抄訳文 乙第15号証 Beverly A.Teicher et al.,Clinical Cancer Research,Vol.5,2638-2645,September 1999及びその抄訳文 乙第16号証 David A.Matthews et al.,THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,Vol.250,No.18,September 25,7120-7126,1975及びその抄訳文 乙第17号証 Michael Groll et al.,Structure 14,451-456,March 2006及びその抄訳文 なお、請求人は、乙第4?6号証は、当事者である請求人に対して乙第4?6号証中の黒塗り部分の開示がなく、証拠の信用性を検証することができないという理由で、その成立を争っている(第1回口頭審理調書を参照)。 第6 本件特許の請求項1?20、44、46に係る発明についての当審の判断 1 甲各号証及び乙各号証の記載 1-1 甲号証の記載 (1)甲第1号証(以下、「甲1」という。また、甲第2号証?甲第21号証、乙第1号証から乙第17号証も、同様に、甲2?甲21、乙1?乙17という。) 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・ペプチドボロン酸誘導体、2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)、の分解経路(標題) ・ペプチドボロン酸誘導体2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)は、20Sプロテアソームの1つの強力な阻害剤であり、提案されている抗がん剤である。この化合物は、製剤化の前段階の研究中に、安定性に関して奇妙な挙動を示した。分解生成物を単離して同定しようとする努力が行われ、それが可能な分解メカニズムを同定するのに役立った。2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)を過酸化水素と反応させると、水性緩衝液中での加水分解で見られる初期分解生成物を単離する便利な方法が得られただけでなく、主要な初期分解経路がおそらく本質的に酸化性であることも分かった。(要約の第1行?第8行) ・製剤の観点から見たペプチドボロン酸誘導体の化学的安定性は、我々が知る限り、これまで文献に詳細には報告されていない。非経口投与のために2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)を製剤化する試みにおいて、当該化合物は不規則な安定性の挙動を示し、そして特定の溶媒に極めて不安定であった。(第758頁、右欄、第12行?第19行) ・まとめると、ペプチドボロン酸誘導体2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)は、多数の実験条件下で酸化による分解を受けやすいように見えた。(第765頁、左欄、第6?9行) また、・2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)の構造が であることも記載されている。(第759頁、式1) (2)甲2 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・非経口使用のための(研究中の)抗がん剤の製薬学的発展-総説(標題) ・概して、抗悪性腫瘍剤は一般に水への溶解性が低いという特徴および不安定であるという特徴を有する。(第476頁、右欄、第20行?第21行) ・その方法には高い初期設備投資費用および高い維持費の両方がかかるにもかかわらず、凍結乾燥は、希薄溶液中で限られた貯蔵寿命を有する不安定な医薬製品を安定にするための最も重要な方法になった(145)。(第489頁、左欄、第18行?第22行) ・凍結乾燥の重要な利点のうちのいくつかは以下の通り:(a)一般に、含水量が少ないほど製品はより安定となる;(b)製品は大抵真空中または希ガス中でシールされるので、酸化変性や酸化分解が大きく低減される;および(c)凍結乾燥製品は一般に無菌乾燥充填粉末よりも速く完全に再構成され、また製剤処理中の膜濾過の結果としてより少ない微粒子を含むであろう。(第489頁、左欄、第31行?第40行) ・適切に凍結乾燥された製品はケーキの形態を有する乾燥粉末であり、基本的に凍結した液体と同じ形を有する。薬だけでは良好な凍結乾燥特性を示さない場合および/またはバイアルごとの薬の総量が非常に少ない場合、充填剤を使用してケーキの外観をより良くする(14)。充填剤は結晶質の母材(例えば、マンニトールまたはリン酸ナトリウム緩衝液)またはアモルファス母材(例えば、デキストラン、スクロース、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)のいずれかを提供することができ、そのような母材の中で薬が凍結乾燥される(148)。(第489頁、右欄、第4行?第13行) ・製剤溶液を準備するために、薬はいくらかの水溶性を有する必要がある。t-ブタノールおよびt-ブタノール/水混合物は、不十分な水溶性を示す薬剤の凍結乾燥のための受け入れ可能な溶媒として提案されている(149)。(第489頁、右欄、第16行?第20行) ・凍結乾燥されたEO9は、暗環境中4℃で保存された場合、少なくとも12ヶ月の間安定であった。(第489頁、右欄、第43行?第45行) ・AG-331は水溶性であり、マンニトールの存在下で凍結乾燥することで最終製品の安定性を高めることができる(156)。(第490頁、左欄、第10行?第12行) ・不十分な水溶性のため、リゾキシンおよびマンニトールを40%t-ブタノール溶媒に溶かし、次いで凍結乾燥した。(第490頁、左欄、第29行?第31行) ・乾燥粉末は次に無菌PET希釈液1mlで再構成され、さらに生理食塩水で希釈された(51)。(第490頁、左欄、第37行?第39行) (3)甲3 「ボロン酸炭水化物」という標題の文献であって、アルジトール(糖アルコール)が表に例示されているところ、その中の例示の一つがD-マンニトールである。(第78頁) (4)甲4 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・調和についての国際会議;新薬化合物及び製品の安定性試験;ガイドライン;利用可能性(標題) ・下記ガイドラインは、EC、日本、及びアメリカ合衆国の3領域における登録申請の際の安定性試験に関する情報を提供する。本ガイドラインは、必ずしも、世界の上記以外の領域における登録、又はそこへの輸出のために必要とされ得る試験をカバーすることを求めるものではない。 本ガイドラインは、新規医薬品物質及び製品に対して妥当なコア安定性データパッケージを例示することを目指す。別のアプローチを使用する科学的に正当と認められるような理由がある場合、本ガイドラインに従う必要はない。 本ガイドラインは、製品の安定性に関して生成されるべき情報の一般的な指示を提供する一方、具体的な科学的な状況や評価される材料の性質に必要とされる、様々な異なる実際的な状況を包含するように、十分な柔軟性を有する。(第3頁、「前書き」の項) ・基本の安定性試験は、奨励保存条件下で保存された場合に医薬品物質が再試験期間に亘って仕様内に維持されることを示すことを目指す試験である。(第4頁、「形式的な試験」の項) ・加速試験及び長期間試験からの安定性情報を少なくとも3つのバッチについて提供する。長期間試験は、提出の時点で、少なくとも3つのバッチについて、最低限12か月の期間にわたるべきである。(第4頁、「バッチの選択」の項) ・試験期間及び保存条件は、保存、輸送、及び後続の使用をカバーするのに十分な期間・条件であるべきである。医薬製品に適用する保存条件と同じ条件を適用すると、比較検討及び評価は促進される。正当である場合、他の保存条件も許容可能である。特に、温度感受性の医薬品物質は、代替のより低い温度条件下で保存すべきであり、該低い温度条件は、長期間試験の保存温度となる。そして、6か月の加速試験は、上記指定された長期間保存温度の少なくとも15℃以上の温度で実行すべきである(その温度に適切な相対湿度と共に)。該指定された長期間試験の条件は、ラベル及び再試験日にも反映される。(第5頁、「保存条件」の項) (5)甲5 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・従って、NaCl塩を含まないp-BPA錯体を製造する方法を見出すことが望まれる。さらに、p-BPAとフルクトースとの錯体の化学的性質を理解することにより、他の新たな錯体が発見できる可能性もある。また、長期間保存でき、かつ、濃い酸および塩基を取り扱う必要のない新たなp-BPA錯体を見いだすことが望まれる。(第4頁、第13行?第17行) ・ボロン酸(p-ボロノフェニルアラニン)とポリオールとのモル比は約1:1.1である。代替的な実施の形態では、p-ボロノフェニルアラニンとポリオールとのモル比は1当量およびポリオールの8当量超である。(第7頁、第3行?第6行) ・p-ボロノフェニルアラニンと化合されるポリオールは、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、アドニトール、トレイトールを含むが、それらに限定されない。(第7頁、第11行?第12行) ・p-ボロノフェニルアラニンおよび炭水化物またはポリオールがそこに実質的に可溶化するように、p-ボロノフェニルアラニン、水、炭水化物またはポリオールと塩基とを一緒に混合して塩基性溶液を生産する(例えば、pH 8から10の間)。p-ボロノフェニルアラニン、水、塩基および炭水化物またはポリオールを特定の順に混合する必要はない。次いでイオン交換媒体を塩基性溶液に加え、それによりpHを生理学的pH(例えば、pH 7.3から7.5の間)に調整する。溶液のpHを生理学的pHに調整した後、イオン交換媒体を濾過またはデカンテーションにより除去して塩を含まないまたは本質的に塩を含まないp-BPA-炭水化物またはp-BPA-ポリオール錯体の溶液を生産する。この溶液を凍結乾燥して白色固体として本質的に塩を含まないまたは塩を含まないp-BPA錯体を得る(凍結乾燥の方法は周知である。・・・参照。)(第10頁、第1行?第15行) ・フルクトースおよびソルボースに見られるように錯体形成が強い場合、または極めて過剰な量の別の炭水化物またはポリオールを使用する場合は、すべてのp-BPAはpH 7.4で溶液中に維持し、約90%のp-BPAがそのカルボン酸ナトリウムとして、残りはその遊離酸として存在する。遊離p-BPAとp-BPA-炭水化物錯体の比率は、溶媒として生理学的pHに緩衝させたD_(2)Oを用いた^(1)H NMRスペクトルにおける芳香族プロトンの共鳴(p-BPA、7.73および7.33ppm;p-BPA-炭水化物錯体、7.5および7.2ppm)の積分により求めることができる。種々の濃度の各炭水化物とp-BPA-炭水化物の比率については5回の測定の最小値をとり、平衡定数を算出した(表1および表2)。同様に、p-BPAといくつかのポリオールとの錯体形成定数を算出した(表3)。(第12頁、第10行?第20行) ・ (第14頁、Table 3) ・実施例7 ^(10)BリッチなL-p-ボロノフェニルアラニンD-マンニトール錯体の製造 ^(10)BリッチなL-p-ボロノフェニルアラニン(0.104g)およびマンニトール(0.096g)を蒸留水(1mL)に懸濁し、穏やかに加熱しながら0.5M NaOH(1mL)を添加することでL-p-ボロノフェニルアラニンを溶かした。激しく攪拌しながらDowex 50WX4-50イオン交換(H+)樹脂を加えることで、この溶液のpHを7.3から7.5の間まで低下させた。溶液を樹脂から取り出し、懸濁しているL-p-ボロノフェニルアラニンは溶液を穏やかに温めると再溶解できる。次に室温の溶液を0.2μフィルターで濾過した後に凍結乾燥して、白色固体としてナトリウムL-p-ボロノフェニルアラニンD-マンニトール錯体(0.186g)を得た。(第26頁、第15行?第25行) (6)甲6 次の記載がある。 ・23.N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(2-キノリン)スルホニル-L-ホモフェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(3-ピリジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-β-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(8-キノリン)スルホニル-β-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-(O-ベンジル)-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-[O-(2-ピリジルメチル)]-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、または その等配電子体、薬学的に許容され得る塩もしくはボロネートエステルの1つである 請求項1記載の化合物。(請求項23) ・24.N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、またはその等配電子体、薬学的に許容され得る塩もしくはボロネートエステルである請求項23記載の化合物。(請求項24) ・51.式: (・・・)を有する化合物または薬学的に許容され得るその塩。(請求項51) ・57.N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(2-キノリン)スルホニル-L-ホモフェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(3-ピリジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-β-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(8-キノリン)スルホニル-β-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-(O-ベンジル)-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、または N-(4-モルホリン)カルボニル-[O-(2-ピリジルメチル)]-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、または その等配電子体、薬学的に許容され得る塩もしくはボロネートエステルの1つである請求項51記載の化合物。(請求項57) ・65.請求項23、32、42、50、56または57記載の化合物または薬学的に許容され得るその塩、および薬学的に許容され得る担体もしくは希釈剤を包含する薬学組成物。(請求項65) ・78.該プロテアソーム阻害剤が、 N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(2-キノリン)スルホニル-L-ホモフェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(3-ピリジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-β-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(8-キノリン)スルホニル-β-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-(O-ベンジル)-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-[O-(2-ピリジルメチル)]-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、または その等配電子体、薬学的に許容され得る塩もしくはボロネートエステルの1つである 請求項67、68、69、70、71、72、73、74、75、76または77記載の方法。(請求項78) ・本発明は、以前には知られていなかったペプチジルボロン酸エステルおよび同酸化合物を提供する。本発明は、また、アミノ酸またはペプチジルボロン酸エステルおよび同酸化合物一般をプロテアソーム機能の阻害剤として使用する方法を提供する。(第45頁、第13行?第16行) ・第11の態様において、本発明は、哺乳動物におけるプロテアソーム機能を阻害するに有効量の式(1a)、(1b)、(2a)または(2b)の化合物と、薬学的に許容され得る担体もしくは希釈剤を包含する薬学的組成物を提供する。(第47頁、第4行?第6行) ・Z^(1)およびZ^(2)は、独立に、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシもしくはアリールオキシの1つであり、またはZ^(1)とZ^(2)とは、炭素原子および、場合に応じて、N、SまたはOであり得る1または複数のヘテロ原子を包含する鎖もしく環中の少なくとも2個の連結原子により隔てられた少なくとも2個のヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物から誘導された基を形成し(第48頁、第24行?第28行) ・本明細書中では、「安定な化合物」又は「安定な式」とは、十分に頑丈で、反応混合物から十分な純度までの単離、及び有効な治療剤への製剤化に耐える化合物をいう。(第55頁、第21行?第23行) ・本発明のボロン酸化合物のボロネートエステルも好ましい。これらのエステルは、ボロン酸の酸基をヒドロキシ化合物と反応することによって得られる。好ましいヒドロキシ化合物は、ジヒドロキシ化合物、特にピナコール、パーフルオロピナコール、ピナンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、グリセロール又はジエタノールアミンである。(第58頁第14行?第19行) ・より好ましいこれらの化合物は、Pが8-キノリンカルボニル、8-キノリンスルホニル、2-キノオキサリンカルボニル、2-キノオキサリンスルホニル、2-ピラジンカルボニル、2-ピラジンスルホニル、3-ピリジンカルボニル、3-ピリジンスルホニル、3-フランカルボニル、3-フランスルホニル又はN-モルホリンカルボニルであり、Rが水素であり、R^(3)がイソブチルであり、R^(2)がイソブチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、3-ピリジルメチル、2-ピリジルメチル、6-キノリニルメチル、3-インドリルメチル、ベンジル、4-フルオロベンジル、4-ヒドロキシベンジル、4-(2’-ピリジルメトキシ)ベンジル、4-(ベンジルオキシ)ベンジル、ベンジルナフチルメチル又はフェネチルであり、Z^(1)及びZ^(2)が共にヒドロキシであるか、又はZ^(1)及びZ^(2)は、一緒になってピナコール、パーフルオロピナコール、ピナンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、グリセロール又はジエタノールアミンよりなる群から選択されるジヒドロキシ化合物から誘導される部分を形成する化合物である。(第63頁、第20行?第64頁、第6行) ・適切なプロテアソーム阻害剤の例は、以下の化合物並びにこれらの薬学的に許容しうる塩及びボロネートエステルであるがこれらに限定されない。 N-(4-モルホリン)カルボニル-β-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(8-キノリン)スルホニル-β-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 L-プロリン-L-ロイシンボロン酸、 N-(2-キノリン)カルボニル-L-ホモフェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(3-ピリジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(3-フェニルプロピオニル)-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-(O-ベンジル)-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、 N-(4-モルホリン)カルボニル-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸、及び N-(4-モルホリン)カルボニル-[O-(2-ピリジルメチル)]-L-チロシン-L-ロイシンボロン酸。(第68頁、第18行?第69頁、第12行) ・B. (1S,2S,3R,5S)-ピナンジオール N-Boc-(O-ベンジル)-L-チロシン-L-ロイシンボロネート 攪拌した冷たい(0℃)(1S,2S,3R,5S)-ピナンジオールβ-(1-ナフチル)-L-アラニン-L-ロイシンボロネートトリフルオロアセテート塩(例1Bに記載した通りに調製、3.03g、7.98ミリモル)、N-Boc-(O-ベンジル)-L-チロシン(2.97g、7.99ミリモル)およびTBTU(3.35g、8.84ミリモル)の無水DMF(30mL)中の溶液に、DIEA(4.2mL、24.1ミリモル)をシリンジポンプにより1.9mL/時の割合で加えた。添加完了後、混合物を30分かけて室温まで加温した後、これを急速に攪拌されている水30mLに滴下した。追加の水を加え、この混合物をろ過した。集めた固体をMeOHに溶かし、ほぼ乾燥するまで濃縮し、再び、急速に攪拌されている水(300mL)に添加した。得られた白色固体を吸引ろ過により集め、水で洗浄し、凍結し、凍結乾燥して、掲記化合物(4.49g)を得た。(第96頁、第26行?第97頁、第11行) ・K. (1S,2S,3R,5S)-ピナンジオール N-[3-(4-モルホリン)カルボニル-2(R)-(1-ナフチル)メチル]プロピオニル-L-ロイシンボロネート 0℃の例12Jの生成物(230mg、0.7ミリモル)のDMF(8mL)中の溶液に、(1S,2S,3R,5S)-ピナンジオールロイシンボロネートトリフルオロアセテート塩(293mg、0.77ミリモル)およびTBTU(293mg、0.77ミリモル)を加えた。得られた混合物に、ジイソプロピルエチルアミン(365mL、2.1ミリモル)を1.5時間かけてゆっくりと添加した。添加終了後、その反応混合物を30分間撹拌した。水(100mL)を加え、沈殿した固体を集め、水(50mL)で洗浄し、凍結乾燥して、掲記化合物(300mg)を得た。(第110頁、第11行?第21行) また、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートに相当するMG-341化合物の20S Ki値が0.6nMであることも記載されている。(第124頁、表) (7)甲7 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・凍結乾燥(標題) ・マンニトールやグリシンなどの充填剤は、外観を良くするため、また製品の“飛散”を防ぐために添加される。(第296頁、第2行?第4行) ・残念ながら、凍結乾燥中又は凍結乾燥後にタンパク質を安定化させることが示された多くの物質の中で、ごく少数の物質(マンニトール、グリシン、アルギニン、ラクトース)が、非経口療法のための製品の製剤化における使用において「一般的に許容されてきた」という歴史を有する。(第296頁、第30行?第33行) (8)甲8 糖アルコールとして、グリセリン、D-マンニット、D-ソルビットが記載されている。 (9)甲9 次の記載がある。(原文は独語。訳文で示す。) ・数多くのヒドロキシル基を分子中に有する補助剤(マンニトール、ソルビトール)は水素架橋を形成することができ、これにより凍結乾燥物の溶解を容易にする。さらに、このような糖アルコールによって、すぐに使用可能な溶液の等張化が行われる。(第24頁、右欄、下から6行目?最終行) (10)甲10 対応する公表公報(特表2004-517931号公報)では、「しばしば、ボロン酸化合物の製剤は、医薬として許容できる賦形剤、希釈剤、又は担体の添加を含む。」(【0017】)と訳されている部分に、「Often,formulation of the boronic acid compound comprises addition of pharmaceutically acceptable excipients,diluents,or carriers.」の記載がある。([0035]) (11)甲11 excipientの訳語が賦形剤であることが記載されている。 (12)甲12 excipientの訳語が賦形剤であることが記載されている。 (13)甲13 薬剤の品質の安定性を短期間で推定するための加速試験が、40℃、6ヶ月間以上で行われるとの記載がある。(別紙2、「6 加速試験」の項) (14)甲14 「化学平衡」の項目に、「可逆反応において、原系から生成系に向かって反応が進行し(正反応),生成系が生ずるにしたがい生成系から原系へ向かう逆反応が速くなり,ついに正反応速度と逆反応速度がつりあって外見上反応停止しているようになる.この状態を化学平衡という.平衡においては原系と生成系の化学ポテンシャルは相等しい.酸とアルコールとからエステルを生成する反応は,実験的に化学平衡の存在を明示するより例である.」の記載がある。 (15)甲15 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・p-ボロノフェニルアラニンのいくつかの単糖類との錯体形成(標題) ・中性pH溶液におけるp-ボロノフェニルアラニン(p-bpa)の溶解性を高めるために、^(11)B-NMRおよびUV分光によって、p-bpaといくつかの単糖類との錯体形成を調べた。(要約の第1行?第3行) ・ホウ酸がマンニトールと反応することでアニオン性の錯体が形成されることがよく知られている。p-bpaはボロン酸基を有するので、著者は、p-bpaのボロン酸部分がマンニトールおよびその類似物と反応することで可溶なアニオン性錯体が形成されると予想する。本稿では、単糖類を伴うp-bpaの観察が提供される。(第273頁、右欄、第1パラグラフ) また、第275頁の表2には、p-bpaと各種単糖類との錯体形成定数(フルクトース 2.43、マンニトール 2.19、ガラクトース 1.28、マンノース 1.10、グルコース 0.85)が記載されている。 (16)甲16 「再構成性と加速試験による安定性の研究についての報告」という標題の文献であり、ボルテゾミブとD-マンニトールとを含む溶液/懸濁液を凍結乾燥したサンプル、ボルテゾミブとD-マンニトールとを物理的に混合したサンプルを用いて行われた再構成試験、加速試験による安定性試験の結果が記載されている。 (17)甲17 平成22年(行ケ)第10133号審決取消請求事件(「2室容器入り経静脈用総合栄養輸液製剤」事件)での知的財産高等裁判所による平成23年2月1日言渡の判決である。 (18)甲18 次の記載がある。 ・その結果、マンニトールの金属錯塩、特にホウ素及びカルシウム又はマグネシウムの錯体が、それ自体は生体外では癌細胞に対して何ら細胞傷害性をもたないけれども、担癌宿主に経口又は非経口的に投与したときには生体内で高い抗腫瘍性を効果を示すことを発見し、マンニトールの上記金属錯塩が免疫賦活活性又は免疫調整活性を有することを発見し、またこれらの活性を介して抗腫瘍活性を示すことを知見した。(第2頁、右上欄、第11行?第19行) ・実施例2 マンニトール-ホウ素錯化合物の製造 マンニトール2.0gと、これに対して当量のホウ酸(H_(3)BO_(3))0.6864gをそれぞれ10mlの蒸留水に溶かした後、両者の水溶液を混合し、反応させ反応溶液を凍結乾燥した結果2.6904gの表題の錯化合物が白色粉末として得られた。(第2頁、右下欄、第19行?第3頁、左上欄、第5行) (19)甲19 段落【0021】?【0023】、表1には、抗腫瘍剤(2‘-デオキシ-2’-メチリデンシチジン2水和物)とD-マンニトールとを凍結乾燥して得られる凍結乾燥品の溶解時間は、該抗腫瘍剤とD-マンニトールとを篩過混合した物理的混合物の溶解時間よりも「速くなった」(合議体注:記載のママ)ことが記載されている。 (20)甲20 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・宣誓 私こと、Dr. アンドリュー マルコム ニル、ファイザー オーストラリア、(1 レクシア プレイス、マルグレイブ、3170、ビクトリア、オーストラリア)、は、以下の事項を、厳粛に誠実に宣誓する。 1.・・・ 2.この宣誓において、 N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸を「ボルテゾミブ」と称す。 3.私の専門性に照らし、国際特許出願第WO02/059130号に記載される実施例1にしたがって凍結乾燥品を調製する過程において、私はボルテゾミブとD-マンニトールとのエステルの化学構造が、混合物の凍結乾燥の前後で異なるとは思わない。これは、もしボルテゾミブとD-マンニトールとがエステルを形成するならば、そのエステルは凍結乾燥前のボルテゾミブとD-マンニトールとの溶液の中に形成されなければならないからである。エステル化は代表的な可逆反応である。したがって、凍結乾燥前のボルテゾミブとD-マンニトールとの溶液の中にエステルが存在しないと信じる理由はない。 署名: (名前)アンドリュー ニル 日付:2017年9月19日 (21)甲21 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・プロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害する、有力で選択的なα-ケトカルボニル(8a-b)およびボロン酸エステル(11)誘導阻害剤が説明される。これは、スレオニンプロテアーゼの新たに特定されたクラスの最初のメンバーである。(第287頁、要約) 1-2 乙号証の記載 (1)乙1 「賦形剤」とは、「製剤の調製時に,増量、希釈のために用いられる添加剤で,それ自体は薬理作用を示さず,治療効果を妨害しない物質で,カプセル剤中のデンプンなどが相当する.」ことが記載されている。 (2)乙2 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・ボロン酸を基にした分子レセプターによる糖類の検出(標題) ・ジボロン酸種である6は、二糖と環状複合体を塩基性水性媒体中で選択的に形成し、それはセンサー分子の蛍光特性を変更する。励起されたスチルベンは、エチレン二重結合の回転の結果としての無放射崩壊によって消光される。この回転の妨害によって、蛍光が増大する。したがって、二糖の結合時における6の硬化は、スチルベンの蛍光を増大させる。特に6は、他の一般的な二糖及びいくつかの三糖よりも、メリビオースとより高い選択性を示す(図7)。 (第1919頁、左欄、第2行?第11行) また、ボロン酸16、18、20と称される化合物と各種単糖及びエチレングリコールとの錯体の安定度定数が (第1917頁、右欄、表3)にとりまとめられている。 (3)乙3 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。)(なお、乙3は、甲2と同一の文献である。) ・この総説の目的は、1986年以降からの抗腫瘍薬の製剤の現状を評価することにある。抗腫瘍薬の医薬開発の諸相の中で論じられているのは、以下のもの、すなわち、製剤開発の過程、可溶化技術、いくつかのコロイド系の適用、プロドラッグの使用、及び凍結乾燥製剤である。製剤の過程、その異なる戦略の利点や欠点、及び毒性の危険性について記載され、文献からの例を以て示されている。(第475頁、ABSTRACTの第4行?第11行) ・抗悪性腫瘍剤の可溶化における界面活性剤の使用は、製剤アプローチにおいて慣用のものである。ミセル状の界面活性剤溶液への薬物の取り込みによりしばしば溶解性及び安定性が増加する。(第480頁、右欄、第13行?第17行) ・錯形成は、第一には、薬物の水溶性や安定性を増大させるために、第二には、腫瘍細胞により特異的に細胞毒性化合物を標的化するために、今日より広く用いられている。(第481頁、右欄、第27行?第30行) ・リポソーム、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子及び高分子錯体等のコロイド系は、薬物の分子環境の変化により薬物の溶解性や安定性を高める可能性がある。(第482頁、右欄、下から第4行?第483頁、左欄、第1行) ・コンジュゲートドラッグの溶解性や安定性は、親薬物であるNSCと比較してもインビボでの有意な抗腫瘍効果を誘発するのに十分高かった。(第489頁、左欄、第1行?第4行) ・その方法には高い初期設備投資費用及び高い維持費の両方がかかるにも拘わらず、凍結乾燥は、希薄溶液中で限られた貯蔵寿命を有する不安定な医薬製品を安定にするための最も重要な方法になった。(第489頁、左欄、第18行?第22行) (4)乙4 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・実験成績証明書 日付:2017年9月6日 SIMPSON,Tobias Rutger ヨーロッパ特許弁理士 Mathys & Squire LLPを代表して ヨーロッパ特許第1355910号の異議申立手続におけるヨーロッパ特許庁に対する特許権者の代理人である、我々、Mathys & Squire LLPは、下記第2節に示した実験結果が、この手続において特許権者が提出したものであることを、ここに証明する。 ・・・ 2.実験の内容及び結果 ・・・ (1)強制分解試験 ・・・ この試験の結果を以下の表2に示す。 この試験結果が実証するように、ボルテゾミブ薬物を過剰量のD-マンニトールと混合しても、該薬物の安定性を改善しない。 ・・・ (2)再構成試験 ・・・ この試験の結果を以下の表4に示す。 この試験の結果が実証するように、ボルテゾミブ薬物を過剰量のD-マンニトールと混合しても、該薬物の再構成特性を改善しない。 3.実験結果の情報源(部外秘) (合議体注:黒塗りがなされていて、内容は不明。) (5)乙5 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・実験成績証明書 日付:2017年9月6日 SIMPSON,Tobias Rutger ヨーロッパ特許弁理士 Mathys & Squire LLPを代表して ヨーロッパ特許第1355910号の異議申立手続におけるヨーロッパ特許庁に対する特許権者の代理人である、我々、Mathys & Squire LLPは、下記第2節に示した実験結果が、この手続において特許権者が提出したものであることを、ここに証明する。 ・・・ 2.実験の内容及び結果 ・・・ 強制分解試験 この試験においては、ボルテゾミブ薬物及び凍結乾燥されたボルテゾミブのマンニトールエステルを窒素雰囲気下に置き、加速安定性アッセイにおいて高温(85℃)に暴露した。 この試験の結果を以下の表1に示す。 上述のデータから、凍結乾燥されたボルテゾミブのマンニトールエステルは、ボルテゾミブ薬物よりも、強制分解条件下において、より高い安定性を有することが分かる。 3.実験結果の情報源(部外秘) (合議体注:黒塗りがなされていて、内容は不明。) (6)乙6 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・実験成績証明書 日付:2017年9月6日 SIMPSON,Tobias Rutger ヨーロッパ特許弁理士 Mathys & Squire LLPを代表して ヨーロッパ特許第1355910号の異議申立手続におけるヨーロッパ特許庁に対する特許権者の代理人である、我々、Mathys & Squire LLPは、下記第2節に示した実験結果が、この手続において特許権者が提出したものであることを、ここに証明する。 ・・・ 2.実験の内容及び結果 ・・・ 異なる賦形剤を用いた再構成試験 第1の試験において、1mgのボルテゾミブ及び10mgのD-マンニトール又はトレハロースを含む凍結乾燥製剤を調製した。次に、該製剤について、水中おける再構成の速度を試験した。・・・この試験結果を以下の表1に示す。再構成時間は、最も近い「分」として示す。 これらのデータから、D-マンニトールを用いて調製された製剤は、水中で急速な再構成を生じた(1分)のに対して、トレハロース含有製剤は、非常に長い時間を要した(15分)ことに気付くであろう。・・・ 第2の試験において、3.5mgのボルテゾミブと、35mgのD-マンニトール、グリシン又はデキストランを含有する凍結乾燥製剤を調製した。・・・この試験の結果を以下の表2に示す。再構成時間は、最も近い「分」として示した。 これらのデータが実証するように、マンニトールを用いて調製したボルテゾミブの凍結乾燥製剤は、デキストリン又はグリシンを用いて調製された製剤と比較して優れた再構成性を示す。 3.実験結果の情報源(部外秘) (合議体注:黒塗りがなされていて、内容は不明。) (7)乙7 「凍結乾燥」は、「熱に対し不安定で水溶液として放置しておくと変化しやすい物質,または常法では泡立ちなどのために減圧濃縮しにくい物質や動物組織の乾燥に用いられる.」ことが記載されている。 (8)乙8 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・「ボロン酸炭水化物」(標題) ・2’,3’-フェニルボロネート保護基を用いることにより、Yurkevich及び彼の共同研究者は、アデノシン、ウリジン、シチジン、及びグアノシンの5’-ホスフェートを調製した。(第54頁、第14行?第16行) ・フェニルボロネート基は、Koenigs-Knorrグリコシル化条件下で安定であることが示されてきた。そして、溶媒としてニトロメタンを使用することにより、ベンジルβ-D-キシロピラノシド 2,4-フェニルボロネートから、3-O-β-D-グルコピラノシル-D-キシロース及び3-O-α-及びβ-D-キシロピラノシル-D-キシロースが合成されてきた。(第55頁、第24行?第28行) ・最も直接的には、D-グルコース 1,2:3,5-ビス(フェニルボロネート)は、ボロモホルム中及び四塩化炭素中で別々にトリフェニルホスフィンにより処理され、そして、初期生成物は、脱ボロネート化され、6-ブロモ-及び6-クロロ-6-デオキシ-D-グルコースをそれぞれ、81%及び79%の収率で与えた。(第56頁、第1行?第5行) ・d.酸化反応.?フェニルボロネート基は、ヒドロキシ基の無水酢酸-ジメチルスルホキシド酸化の過程において、安定であることが分かった(第57頁、第4行?第6行) (9)乙9 ホウ酸は、「参考規格」で「溶状 1.0g,水25ml又は熱エタノール10ml」であること、その用途は、安定(化)剤、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤、防腐剤、保存剤、溶解補助剤であることが記載されている。 (10)乙10 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。)(なお、乙10は、甲15と同一の文献である。) ・このことは、p-bpaと単糖類とのアニオン性錯体の形成を示唆するものである。(第275頁、左欄、第1行?第3行) ・我々は、p-bpa-単糖(1:1)錯体の生体内への注射後の錯体と解離したp-bpaの量を計算することが可能である。静脈内に注射した5gのp-bpaを有する混合溶液は、当該溶液が全身の3Lの血液に均一に拡散されると仮定すれば、0.008Mまで希釈されるであろう。この値を使用をして、我々は、各単糖類とのケースについて錯体と解離したp-bpaの濃度を見積もることができる。例えば、フルクトースの場合、錯体の濃度は、0.0041Mと見積もられ、また、解離したp-bpaの濃度は、0.0039Mと見積もることができる。実際のところ、0.0041Mの錯体は可溶であり、溶解しにくいp-bpaも、その濃度が溶解度を下回るので、可溶である。我々は、血中では全てのp-bpa(錯体及び解離したbpa)は可溶であると結論付けることができる。(第276頁、左欄、第3行?第277頁、左欄、第6行) (11)乙11 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・酵素アッセイ ウサギ腰筋ホノジネートから分画遠心法によりプロテアソーム画分を調製し、硫酸アンモニウムによる沈殿(それぞれ、0%?38%及び40?80%)とそれに引き続き連続してMonoQ及びSuperose6(ファルマシア)カラムのクロマトグラフィーを行うことにより26S及び20S粒子に分離した(ドリスコルおよびゴールドバーグ、1990)。タンパク質又はユビキチン化されたタンパク質分解のアッセイのための26Sプロテアソームの調製においては、硫酸アンモニウム沈殿を省略した。ウシ脾臓からのカテプシンB及びウサギ筋肉からのカルパインの80KDa触媒サブユニットをシグマから購入した。 ペプチドAMC基質及びDMSO中の阻害剤(1-10μl)を、20Sプロテアソームについては、20mM Tris-HCl、0.5mM EDTA、及び0.035% SDS(pH 8.0)を含有する2mlのアッセイバッファー;26S プロテアソームについては、20mM Tris-HCl、1mM ATP、及び2mM MgCl_(2)(pH 8.0)を含有する2mlのアッセイバッファー;カテプシンBについては、100mM NaOAc、5mM EDTA、及び2mM DTTを含有する2mlのアッセイバッファー;そしてカルパインについては、20mM Tris-HCl、1mM CaCl_(2)、及び2mM DTT(pH 8.0)を含有する2mlのアッセイバッファーに加えた。37℃(プロテアソーム類及びカテプシンB)又は20℃(カルパイン)で平衡化した後、酵素(1?5μl)を加え、反応の進行を、440nmにおける蛍光発光(1_(ex)、380nm)の増加によりモニターした。速度を反応進行曲線の線形、定常状態領域から計算した。見かけ上の阻害定数(K_(i,app))を、以下の方程式に従って、阻害濃度([1])への定常状態速度(V_(as))の依存の非線形最小二乗法により決定した: V_(as)=V_(limit)/(1+([1]/K_(i,app))) これらの反応は、K_(i,app)=K_(i)、酵素-阻害剤複合体についての解離定数、となるように[S]<K_(m)/5、及びV_(limit)=(K_(o)/K_(m))[E][S]で行った。 タンパク質分解は既述(ドリスコル及びゴールドバーグ、1990)の通りにアッセイした。26Sプロテアソーム(12-27nM)を50mM Tris(pH 7.25)、5mM MgCl_(2)、1mM DTT、2mM ATP、及び1% DMSO中で、阻害剤と共に、又は阻害剤なしで、氷上で、30分間プレインキュベートし、放射活性タンパク質基質(50,000cpmの[^(14)C]メチルカゼイン[2.5μg]又は5,000cpmのユビキチン-^(125)I-リゾチーム[約50nM])を20μlの最終体積中に加えた。ユビキチンコンジュゲート分解の測定のために、2μgの非放射活性リゾチームを加え、初めから存在する又はインキュベーションの間にイソペプチダーゼにより生成されたあらゆる遊離の^(125)I-リゾチームの分解を拮抗的に阻害した。37℃での10分間(ユビキチン-^(125)I-リゾチームアッセイ)又は60分間(カゼイン)のインキュベーションの後、20μgのBSA及び500μlの10%のトリクロロ酢酸(TCA)を加えた。TCA可溶放射活性ペプチドの産生を測定した。(第769頁、左欄、第20行?第61行、「酵素アッセイ」の項) (12)乙12 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・ペプチドボロン酸によるセリンプロテアーゼ白血球エラスターゼ、膵臓エラスターゼ、カセプシンG及びキモトリプシンの阻害(標題) ・白血球プロテアーゼ類、膵臓エラスターゼ、及びキモトリプシンのより選択的で効果的な阻害剤の探索において我々が取ったアプローチはペプチドボロン酸を調製することだった。この化合物群は、P_(1)-P_(5)部位(Schechter及びBerger,1967のノメンクラチャーを用いる)における結合及び「遷移状態アナログ」として潜在的に作用することができるボロン酸の結合をうまく利用している。ペプチドボロン酸のP_(1)-P_(5)部位における残基の選択は、Zimmerman及びAshe(1977)、Nakajimaら(1979)、及びMcRaeら(1980)の広範囲な選択性研究からのこれらの酵素のよりよい基質のアミノ酸配列に基づいた。ペプチドボロン酸の結合の提案されたメカニズムを図1に示す。(第15106頁、右欄、第5行?第17行) ・ (第15106頁、右欄、図1) ・MeO-Suc-Ala-Ala-Pro-DL-boro-Val-OH及びそのピナコールエステルの安定性をかなり広範囲にわたって調べた。ピナコールエステルは、白血球エラスターゼの初期阻害活性が、遊離酸よりも、約100倍活性が低い。しかしながら、0.10Mのリン酸バッファー中pH7.5で1時間未満インキュベーションした後では、その阻害活性は遊離ボロン酸と同じである。遊離ボロン酸は、これらの条件下において室温で24時間まで安定である。MeO-Suc-Ala-Ala-Pro-boro-Phe-OHとMeO-Suc-Ala-Ala-Pro-boro-Ala-OHのジエタノールアミンエステルとこれらに対応する遊離ボロン酸の抑制活性は、あらかじめインキュベートしない場合でさえ同じであった。 ピナンジオールエステルを用いて得られた結果は、このエステルも加水分解されて遊離ボロン酸を生成することを示している。白血球エラスターゼの阻害に関し、リン酸塩緩衝液中でのインキュベーション後のMeO-Suc-Ala-Ala-Pro-L-boro-Val-ピナンジオールの有効性と、MeO-Suc-Ala-Ala-Pro-DL-boro-Val-OHの有効性との比較は、エステルの遊離ボロン酸への加水分解と整合していた。我々が研究した他の酵素でも同様の結果が得られたため、MeO-Suc-Ala-Ala-Pro-boro-Val-ピナンジオールの遊離ボロン酸の特徴づけは実施しなかったが、その後の研究でのアッセイのため、代わりにピナンジオールエステルを0.10Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)の中で1時間あらかじめインキュベートした。他のペプチドボロン酸は、特に断らない限り、遊離ボロン酸として化学的に特徴づけられた。(第15108頁、左欄、第5行?第30行) ・より効果的なプロテアーゼ阻害剤であるペプチドボロン酸がプロテアーゼの活性部位セリンと遷移状態様複合体を形成することについては疑問の余地がほとんどない。キモトリプシンについてのペプチドボロン酸阻害剤の親和性は、対応する基質の親和性を少なくとも4オーダーの大きさで凌駕し、他のペプチドアナログの親和性を少なくとも7オーダーの大きさで凌駕する。例えば、フェニルアラニンのアルデヒドアナログにおいて終止させるバクテリアペプチドであるキモスタチンは、キモトリプシンについて2.5×10^(-7)MのIC_(50)を有する(Umezawa及びAoyagi、1977)のに対して、MeO-Suc-Ala-Ala-Pro-boro-Phe-OHについての最終K_(i)は1.6×10^(-10)Mである。活性部位のセリンとボロン酸部位との間の四配位複合体の寄与がなければ、ペプチドボロン酸の高い親和性を説明することは困難である。更に、四配位複合体は、バクテリアセリンプロテアーゼであるサブチリシンとフェニルエタンボロン酸の結晶学的研究においても観察された(Matthewら、1975)。フェニルエタンボロン酸のサブチリシンに対する親和性は、本研究において試験されたあまり効果的ではないペプチドボロン酸よりさえも、かなり低かった。(第15111頁、左欄、第24行?第43行) (13)乙13 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・Rhodococcus 20Sプロテアーゼの活性部位指向の阻害剤(標題) ・β-ラクトンによるプロテアソームの完全な阻害は、ボロン酸由来阻害剤の結合により完全に抑止された。ボロン酸由来阻害剤は、トロンビンの活性部位セリンのOγ残基と共有結合的に反応して、基質加水分解における四配位中間体を模倣した四配位ホウ素付加物を生じることが示されている(18)。アナロジーとして、我々は、ボロン酸に基づく阻害剤が、同様の様式で、プロテアソームのβ-サブユニットのN末端Thr上のOγと相互作用することを提唱する。トリペプチドアルデヒド及びペプチジルボロン酸阻害剤と比較すると、β-ラクトンは比較的小さい分子である。従って、プロテアソームの活性部位へのペプチジル阻害剤の結合の抑止は、S1、S2、及びS3特異的ポケットにおける阻害剤のペプチド部位の相互作用を破壊することによるというよりは、活性部位の近くで起こっていそうである。(第26108頁、右欄、第17行?第31行) (14)乙14 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・プロテアソームの強力で選択的な阻害剤:ジペプチドボロン酸(標題) ・セリンプロテアーゼ阻害剤としてのペプチジルボロン酸の活性は、十分に裏付けられており、活性部位のセリン残基の酸素のローンペアを受け入れるのに適したホウ素上の空のp-軌道の有用性に起因する。類推により、ボロン酸化合物はまた、触媒的に活性なプロテアソームのβ-サブユニットのN-末端のスレオニン残基と安定な4配位中間体を形成する。(第334頁、下から第4行?第335頁、第1行) ・ (第336頁、表3) ・ (第337頁、スキーム1) (15)乙15 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・癌治療におけるプロテアソーム阻害剤PS-341(標題) ・PS-341は、ボロン酸ジペプチド誘導体である(図1)。ボロン酸ペプチド類は、セリンプロテアーゼ(例、トロンビン、エラスターゼ、ジペプチジルプロテアーゼIV)を阻害することが示されている。ジペプチドボロネート誘導体は、おそらく、プロテアーゼの活性部位において形成される、ホウ素-Thr’Og供与結合の安定性を通した、強力なプロテアソーム阻害剤である。PS-341のKi値は0.6nMである。(第2638頁、右欄、第28行?第34行) ・ (第2639頁左欄、図1) (16)乙16 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・サブチリシン BPN’(Novo)とのボロン酸付加物のX線結晶学的研究(標題) ・最近、Lienhard及びその共同研究者らが、酵素の触媒部位に隣接する特異的ポケット内に恐らくは挿入される、芳香族側鎖を有するボロン酸誘導体によるα-キモトリプシンの強力な阻害を研究した(5、6)。この阻害は、異常に大きな結合定数とPH依存性により特徴付けられ、これらは共に単純な非共有結合的会合を除外するようにみえる。これらの著者らは、多様なボロン酸-酵素複合体の可能性のある構造を提示し、最も確からしいのは、セリン195のOγ又はヒスチジン57のNε2の何れか、又は両方に共有結合的に結合した四配位ホウ素を含むものであると提案している。もし、最も確からしい構造である(I)が正しかったなら、 それは、四配位中間体に近似したアナログを提供し、触媒的セリンのアシル化及び脱アシル化の遷移状態に近い配置を有するであろう。四配位中間体におけるオキシアニオンのボロン酸中の水酸基による置換は、オキシアニオンホール周囲の骨格及び側鎖からの水素結合を受け入れる結合基の能力に深刻な影響を与えないはずである。(第7120頁、右欄、第20行?第39行) ・ホウ素原子は、共有結合的に結合した、活性部位Ser-221のOγとの四配位付加物を形成した。ボロン酸の1つの水酸基(表IのO1’)は、触媒的ヒスチジン側鎖に隣接し、Nε2から2.8Aである。これは、2者の間の水素結合の予想距離であるが、そのような水素結合のいずれの角度が幾分ゆがんでいるかもしれない。我々は、この変わった点について、続きのコミュニケーションで議論する予定である。第2の阻害剤水酸基(表IのO2’)は、オキシアニオンホール(3)に位置し、Asn-155の側鎖アミドとSer-221の骨格アミド基の両方と、水素結合できる。これらの水素結合の長さは、2.5及び3.0Aである。(第7121頁、右欄、第37行?第47行) (17)乙17 次の記載がある。(原文は英語。訳文で示す。) ・イースト20Sプロテアソームとの複合体におけるボロン酸ベースのプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブの結晶構造(標題) ・作用メカニズム:ボロン酸部分 より早期における、システインプロテアーゼと交差反応性及び低い代謝安定性を示すペプチドアルデヒドのような合成阻害剤の作成とは反対に、薬物のボロン酸部分はプロテアソームヘの上昇した特異性を確かにする(Vinitskyら、1992)。ルイスの硬い及び軟らかい酸塩基(HSAB)の法則に準じ、ボロン酸コアは、軟らかいシステイン求核剤とは対照的に硬い酸素求核剤に対する高い親和性を確かにする。予想されたように、ホウ素原子は、Thr1O^(γ)の求核的酸素孤立電子対と共有結合的に相互作用し(図1B)、オキシアニオンホールを安定化するGly47Nは、酸性ボロネート水酸基の一方と水素架橋される。四配位ボロネート付加物は、N末端スレオニンアミン原子と水素架橋され、触媒的プロトンアクセプターとして機能する、第2の酸性ボロネート水酸基部分により更に安定化される(図2)。 ボロン酸誘導体、及び特にペプチドボロネートは、周知のセリンプロテアーゼ阻害剤である(Walker及びLynas、2001)。トリプシン:ボロン酸の結晶構造解明及びNMRキャクタリゼーションは、ボロン酸部分が求核的Ser195O^(γ)へ共有結合的結合し、その結果セリン-ボロネート四配位遷移状態複合体となることを明らかにした(London及びGabel、2001;London及びGabel、2002;Transue ら、2004;Weber ら、1995)。セリンプロテアーゼと比較すると、プロテオソーム活性部位であるThr1Nは、ボロネート水酸基のー方と強固な水素架橋を更に形成し、タンパク質-リガンド複合体を更に安定化しており、これはボロン酸リガンドのNtn-ヒドロラーゼへの高い親和性を説明する。(第452頁、右欄、第1行?第453頁、左欄、20行) ・ 図2 キモトリプシン及びカスパーゼ様活性に責を負う活性部位残基へのボルテゾミブの重要な相互作用 (A)キモトリプシン様活性部位、及び(B)カスパーゼ様活性部位へ結合したボルテゾミブの模式的全体像。水素結合を、関連する距離(Å)とともに、茶色点線で示す。特徴的な酸素及び窒素原子は赤色又は青色の大文字で表す。阻害剤のP3-ピラジン-2-カルボキシ側鎖への特性及び結合様式に責を負うアミノ酸は、β型サブユニットに隣接して位置し、灰色で示す。タンパク質への強固な水素結合を形成する、明確化した水分子をマゼンタで表し、阻害剤を緑色で示す。(第453頁、左欄、図2) 2 無効理由1(特許法第29条第2項違反(その1)) (1)甲1発明 甲1には「2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)」の式で示される化合物が記載されているから、甲1には、「ペプチドボロン酸誘導体2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 (2)本件発明17について ア 対比 本件発明17と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)」で、2-Pyzは2位で結合したピラジンを、COはカルボニルを、Pheはフェニルアラニンを、Leuはロイシンを、B(OH)_(2)はボロン酸を意味することは明らかであって、 「2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)」は「N-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸」を意味している。なお、フェニルアラニン、ロイシンはいずれも広く知られたアミノ酸化合物であるところ、甲1発明中のこれらのアミノ酸に関し、甲1ではD体、L体の区別はなされていない。しかしながら、甲1発明の化合物は、抗がん剤として使用されることが前提になっているから、これらのアミノ酸はL体であるとすべきものである。 本件発明17と甲1発明とは、 「ペプチドボロン酸誘導体化合物」 である点で一致していて、以下の点で相違するものである。 相違点1 ペプチドボロン酸誘導体化合物が、本件発明17においては、「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸」のD-マンニトールとのエステル体である「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」であるのに対し、 甲1発明では、「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸」である点 相違点2 本件発明17においては、化合物が「凍結乾燥粉末の形態」と特定されているのに対し、 甲1発明では、そのような特定がない点 なお、甲1発明、並びに本件発明17と甲1発明との一致点及び相違点1、2について、請求人も異存はないとしている(平成29年9月7日付上申書)。 イ 相違点について検討すると、まず相違点1に関し、 甲1は、“Degradation Pathways of a Peptide Boronic Acid Derivative,2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)”、すなわち「ペプチドボロン酸誘導体、2-Pyz-(CO)-Phe-Leu-B(OH)_(2)、の分解経路」というタイトルのN-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸の分解経路に関する文献であって、N-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸を原料として別の化合物を合成して製造することについての記載は一切ない。 また、甲2は、“Pharmaceutical Development of(Investigational)Anticancer Agents for Parenteral Use - A Review”、すなわち「非経口使用のための(研究中の)抗がん剤の製薬学的発展-総説」というタイトルの抗がん剤の製薬に関する文献であって、化合物を化学的に改変することについての記載はない。そうしてみると、甲1発明に接した当業者が、甲1及び甲2の記載から、N-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸をD-マンニトールと反応させてD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを得ることを想到するものとすることができない。 次に、相違点2に関し、 甲1、甲2には、N-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸を凍結乾燥処理して凍結乾燥粉末として得ることについての具体的な記載はない。 ウ 相違点1及び2に関し、請求人は、 (ア)甲1には、抗がん剤としてのN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸が不安定であることが開示され、甲2には、抗がん剤の安定性を高めるために抗がん剤とマンニトールとを混ぜて凍結乾燥する手法が開示されているから、甲1に記載のN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸の不安定性を解消するために、甲2に記載の手法を採用し本件発明に想到することは、凍結乾燥によってエステル体が形成されることが予測できるか否かを議論するまでもなく、当業者にとって容易である、 (イ)甲1発明に係る化合物とマンニトールとを混ぜて凍結乾燥することによって得られる凍結乾燥混合物は、当然に凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含むものであり、本件明細書中で、D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを単離、抽出した実施例も記載されていないから、本件発明17の容易性を言うためには、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸にマンニトールを賦形剤として混ぜて凍結乾燥することによって凍結乾燥品を得るという製剤の調製方法が容易に想到し得たことを言えれば十分である、 旨を主張する(平成29年9月7日付け上申書、口頭審理陳述要領書)。 エ しかしながら、 (ア)上記ウ(ア)に関し、凍結乾燥が安定性及び溶解性の点で有利な製剤方法であることは技術常識と認められ、凍結乾燥の際に用いる賦形剤としてマンニトールを選択することも周知技術と認められるものの、被請求人が主張するように、凍結乾燥は化合物の性質を変えないために行われるものであることもまた技術常識であるから、仮に、甲1発明に係る化合物を、マンニトールを賦形剤として凍結乾燥したものが当業者にとって容易に想到されるとしても、その凍結乾燥は、当該化合物の、すなわち、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸の凍結乾燥物を得るために行われるものである。したがって、凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを得るためにN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸をマンニトールとともに凍結乾燥することは、当業者にとって容易に想到することであるとすることはできない。 (イ)上記ウ(イ)に関し、請求人は、甲1発明に係る化合物とマンニトールとを混ぜて凍結乾燥することによって得られる凍結乾燥混合物は、当然に凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロンネートを含むことの根拠として、本件特許明細書の【0082】の記載及び甲6等に記載されているようにボロン酸とジヒドロキシ化合物とを含む水溶液中にはボロン酸エステルが存在していることが技術常識であることを挙げるものである(平成29年9月7日付け上申書)ので、以下、検討する。 まず、甲6に記載されているボロン酸とジヒドロキシ化合物とからのボロン酸エステルは、特定のジオール化合物(好ましいヒドロキシ化合物として例示されているものは、ピナコール、パーフルオロピナコール、ピナンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、グリセロール又はジエタノールアミンのみである。)を使用したものに限られている。逆に、乙2に示されているように、ボロン酸とジヒドロキシ化合物とからのボロン酸エステルの形成のしやすさは、ジヒドロキシ化合物の種類によって一様ではないとすべき(請求人の平成29年9月7日付け上申書第19頁によれば、請求人も否定はしていない)であり、被請求人が「同じ種類のボロン酸(アリールボロン酸)であっても、糖(ジヒドロキシ化合物)の種類が変われば、エステルの形成し易さやエステルの安定性に大きな差異が生じるものであるから、全く別異なボロン酸(アルキルボロン酸)であるボルテゾミブと、特定の糖(D-マンニトール)との水中でエステル形成反応の進行するのかどうかについてや、生成するエステルの安定性については、当業者といえども、周知技術からは到底予測不可能である」と主張する(口頭審理陳述要領書第19頁)ように、甲6の記載から、全てのジオール化合物とボロン酸とが水溶液中で甲6に示されているものと同様のエステルを形成するものと直ちに認めることができない。 さらに、甲5及び甲15は、p-ボロノフェニルアラニンとD-マンニトールとが水中で錯体を形成したことを示すものである。しかしながら、これらに記載のp-ボロノフェニルアラニンの構造は甲1発明のボロン酸と構造が異なるものであって、斯かる構造の違いがD-マンニトールとの反応にどのように影響を及ぼすのか(及ぼさないのか)明らかではないし、これらで得られている「錯体」(アニオン性の錯体)とエステルとは、構造的に異なる化合物とすべきものである。 そうしてみると、ボロン酸とジヒドロキシ化合物とを含む水溶液中にはボロン酸エステルが存在していることが技術常識とすることはできない。 (ウ)また、請求人は甲20を提出するものであるが、甲20もD-マンニトールとN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸とからのエステル形成の可能性を述べるに留まっている。 (エ)そして、請求人が指摘する本件特許明細書【0082】の「水性媒体で再構成するとき、組成物中に存在する任意のボロン酸エステルと、対応するボロン酸との間に平衡が確立される。」の記載は、ボロン酸からボロン酸エステル体が形成された後には、ボロン酸とボロン酸エステルとの間に平衡が確立されると解釈できても、請求人が「(本件特許明細書【0082】は、)ボロン酸とマンニトールを水性媒体に混合した際にボロン酸エステルとの間で平衡が生じることを記載したものではない。」と主張する(口頭審理陳述要領書第8頁)ように、水性媒体中にボロン酸とマンニトールとを添加した際に直ちにボロン酸エステル体が生成することを意味すると解釈するのは無理があるといわざるをえない。 (オ)そうしてみると、ジヒドロキシ化合物とボロン酸とは水溶液中でボロン酸エステルを形成することが技術常識である、すなわち、D-マンニトールとN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸とは水溶液中でエステルを形成していることが明らかであるとまですることはできない。 (カ)なお、請求人は、本件発明17の容易性をいうためには、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸にマンニトールを賦形剤として混ぜて凍結乾燥することによって凍結乾燥品を得るという製剤の調製方法が容易に想到し得たことを言えれば十分であるとするが、その根拠は不明であるし、D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートの単離の有無によって、進歩性の判断手法を変える必要があるものとは認めることができない。 オ そうしてみると、請求人の主張を踏まえても、相違点1及び相違点2は、いずれも当業者が容易に想到するものとすることができないから、本件発明17の効果を検討するまでもなく、本件発明17は、甲1記載の発明及び甲2記載の発明に基づき当業者が容易に成し得たものであるとすることができない。 (3)本件発明19、20について 請求項19、20は、請求項17を直接又は間接に引用するものである。 上記(2)のとおり、本件発明17は甲1に記載された発明および甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。そして、甲4、甲13は薬剤の安定性を示す文献であって、甲1発明と本件発明17との相違点に関係する文献ではないから、本件発明19、20も同様に、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明および甲4または甲13に記載された発明に基いて、または甲1に記載された発明および甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 (4)本件発明44、46について ア 対比 (ア)本件発明44 本件発明44と甲1発明とを対比する。(甲1発明については、上記(1)参照) 本件発明44と甲1発明とは、一致点はなく、以下の点で相違する。 相違点1 化合物が、本件発明44は、「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」であるのに対し、 甲1発明は、「(N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸」である点 相違点2 本件発明44は、化合物に「医薬的に許容される担体」を含む「凍結乾燥粉末の形態」の「組成物」に係るものであるのに対し、 甲1発明は、形態が特定されていない化合物に係るものである点 (イ)本件発明46 本件発明46と甲1発明とを対比する。(甲1発明については、上記(1)参照) 本件発明46と甲1発明とは、一致点はなく、以下の点で相違する。 相違点1 化合物が、本件発明46は、「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」であるのに対し、 甲1発明は、「(N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸」である点 相違点2 本件発明46は、化合物を含む「凍結乾燥されたケーキ」に係るものであるのに対し、 甲1発明は、形態が特定されていない化合物に係るものである点 イ 判断 (ア)本件発明44 相違点について検討すると、まず、相違点1に関し、甲1発明に接した当業者が、甲1及び甲2の記載から、N-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸をD-マンニトールと反応させてD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを得ることを想到するものとすることができないことは、上記(2)イに記載したとおりである。 次に、相違点2に関し、甲1、甲2には、N-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸を凍結乾燥処理して凍結乾燥粉末として得ることについての具体的な記載はないことは上記(2)イに記載したとおりである。 甲1には、薬剤を凍結乾燥することの記載はあるが、甲1に、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸とD-マンニトールとのエステルについて、何ら記載も示唆もない以上、そのようなエステルを凍結乾燥粉末の形態で得ることを容易に成し得るとすることができない。 また、凍結乾燥が安定性及び溶解性の点で有利な製剤方法であることは技術常識と認められ、凍結乾燥の際に用いる賦形剤としてマンニトールを選択することも周知技術と認められるものの、上記(2)エ(ア)に記載したとおり、凍結乾燥は化合物の性質を変えないために行われるものであることもまた技術常識であるから、仮に、甲1発明に係る化合物を、マンニトールを賦形剤として凍結乾燥したものが当業者にとって容易に想到されるとしても、その凍結乾燥は、当該化合物の、すなわち、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸を含む凍結乾燥物を得るために行われるものである。したがって、D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含む凍結乾燥粉末の形態の組成物を得るために、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸をマンニトール及び医薬的に許容される担体とともに凍結乾燥を行うことは、当業者にとって容易に想到することであるとすることはできない。 また、甲1発明とマンニトールとを混ぜて凍結乾燥することによって得られる凍結乾燥混合物は、当然に凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含むものと認められないことも、上記(2)エに記載したとおりである。 そうすると、本件発明44は、甲1記載の発明及び甲2記載の発明に基づき当業者が容易に成し得たものであるとすることができない。 (イ)本件発明46 相違点について検討すると、まず、相違点1に関し、甲1発明に接した当業者が、甲1及び甲2の記載から、N-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸をD-マンニトールと反応させてD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを得ることを想到するものとすることができないことは、上記(2)イに記載したとおりである。 次に、相違点2に関し、甲1、甲2には、N-(2-ピラジン)カルボニル-フェニルアラニン-ロイシン ボロン酸を凍結乾燥処理して凍結乾燥粉末として得ることについての具体的な記載はないことは上記(2)イに記載したとおりである。 甲1には、薬剤を凍結乾燥することの記載はあるが、甲1に、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸とD-マンニトールとのエステルについて、何ら記載も示唆もない以上、そのようなエステルを凍結されたケーキの形態で得ることを容易に成し得るとすることができない。 また、凍結乾燥が安定性及び溶解性の点で有利な製剤方法であることは技術常識と認められ、凍結乾燥の際に用いる賦形剤としてマンニトールを選択することも周知技術と認められるものの、上記(2)エ(ア)に記載したとおり、凍結乾燥は化合物の性質を変えないために行われるものであることもまた技術常識であるから、仮に、甲1発明に係る化合物を、マンニトールを賦形剤として凍結乾燥したものが当業者にとって容易に想到されるとしても、その凍結乾燥は、当該化合物の、すなわち、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸の凍結乾燥物を得るために行われるものである。したがって、D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含む凍結乾燥されたケーキを得るためにN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸をマンニトールとともに凍結乾燥を行うことは、当業者にとって容易に想到することであるとすることはできない。 また、甲1発明とマンニトールとを混ぜて凍結乾燥することによって得られる凍結乾燥混合物は、当然に凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含むものと認められないことも、上記2(2)エに記載したとおりである。 そうすると、本件発明46は、甲1記載の発明及び甲2記載の発明に基づき当業者が容易に成し得たものであるとすることができない。 ウ したがって、たとえ甲2に、凍結乾燥されたケーキを形成することの効用が記載されていたとしても、本件発明44、46の効果を検討するまでもなく、本件発明44、46は、甲1記載の発明及び甲2記載の発明に基づき当業者が容易に成し得たものであるとすることができない。 3 無効理由2(特許法第29条第2項違反(その2)) (1)無効理由1と無効理由2との違いについて、請求人は、甲1発明の不安定さを解消するために甲1発明とマンニトールとを混ぜて凍結乾燥することに想到する理由として、無効理由1では、甲2の記載からとするのに対して、無効理由2では、甲2や甲7に示されるとおりの周知技術からとしている(平成29年9月7日付け上申書第9頁?第10頁)。 したがって、薬剤の不安定さを解消するためにマンニトールを混ぜて凍結乾燥することは、甲2や甲7から周知技術と認められるのか、周知技術と認められる場合に、甲1発明及び周知技術に基いて容易に想到し得たといえるのかを検討する。 (2)甲2には、薬物をミセル状の界面活性剤溶液へ取り込むことによって薬剤の安定性が増大すること、薬剤の錯体を形成することによって安定性が増大すること、薬剤をリポソーム、マイクロカプセル、マイクロスフェア、ナノ粒子及び高分子錯体等のコロイド系に置くことは、薬剤の安定性が高まる可能性があること、薬剤のプロドラッグを使用することで安定性が高まったこと、薬剤を凍結乾燥することが記載されている。「凍結乾燥は、希薄溶液中で限られた貯蔵寿命を有する不安定な医薬製品を安定にするための最も重要な方法になった。」との記載がある。 更に甲2には、薬剤だけで良好な凍結乾燥特性を示さない場合および/またはバイアルごとの薬の総量が非常に少ない場合、充填剤を使用することが記載されており、充填剤として、「結晶質の母材(例えば、マンニトールまたはリン酸ナトリウム緩衝液)またはアモルファス母材(例えば、デキストラン、スクロース、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)」の例示がある。 また、甲7は凍結乾燥に関する文献であるところ、凍結乾燥において薬剤とともに使用する充填剤としてマンニトール、グリシン、アルギニン、ラクトースが並列して例示されている。 そうしてみると、凍結乾燥が安定性及び溶解性の点で有利な製造方法であることは技術常識と認められ、凍結乾燥の際に用いる充填剤(賦形剤)としてマンニトールを選択することも周知技術と認められる。 しかしながら、上記2(2)エに記載したとおり、凍結乾燥は、化合物の性質を変えないために行われるものであることもまた技術常識であるから、仮に、甲1発明に係る化合物を、マンニトールを賦形剤として凍結乾燥したものが当業者にとって容易に想到されるとしても、その凍結乾燥はN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸を含む凍結乾燥物を得るために行うものであって、D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含む凍結乾燥されたケーキを得るために凍結乾燥を行うことは、当業者にとって容易に想到することであるとすることはできない。 また、甲1発明とマンニトールとを混ぜて凍結乾燥することによって得られる凍結乾燥混合物は、当然に凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含むものと認められないことも、上記2(2)エのとおりである。 (3)そうしてみると、無効理由1で、本件発明17、19、20、44、46が、甲2に記載の発明に基いて当業者が容易に想到し得たものであるとすることができないとしたのと同様に、 本件発明17、44は、甲1に記載された発明ならびに甲2および甲7に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものとすることができないし、 本件発明19、20は、甲1に記載された発明、甲4または甲13に記載された発明および甲2および甲7に例示される周知技術に基いて、または甲1に記載された発明および甲2および甲7に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものとすることができないし、 本件発明46は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明および甲2および甲7に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものとすることができない。 4 無効理由4(特許法第29条第2項違反(その3)) (1)甲6発明 甲6には、その請求項57の記載からみて、 「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸のボロネートエステル」の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。 (2)本件発明17について ア 対比 本件発明17と甲6発明とは、 「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸のボロネートエステル」である点で一致し、以下の点で相違するものである。 相違点1 本件発明17では、ボロネートエステルが「D-マンニトール」のエステルであるのに対し、 甲6発明では、ボロネートエステルがD-マンニトールのエステルに特定されていない点 相違点2 本件発明17では、「凍結乾燥粉末の形態」であるのに対し、 甲6発明では、形態が特定されていない点 なお、甲6発明、並びに本件発明17と甲6発明との一致点及び相違点1、2について、請求人も異存はないとしている。 イ 判断 相違点1に関し、甲6で、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸のエステルとして具体的に開示されているといえるのは、ピナンジオールのエステルのみである(第92頁のMG-341)。また、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸以外のボロン酸のエステルについても、具体的に開示されているといえるのは、ピナンジオール以外ではジエタノールアミンのエステルのみに過ぎない(第106頁)。さらに、甲6で、ボロン酸とエステルを形成し得るヒドロキシ化合物について具体的な例示があるのは、「ピナコール、パーフルオロピナコール、ピナンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、2,3-ブタンジオール、グリセロール又はジエタノールアミン」(第58頁)のみである。甲6には、D-マンニトールについての具体的な記載はない。 そうしてみると、甲6には、ボロン酸と反応しうるヒドロキシ化合物を選択する際にD-マンニトールを選択する動機付けになる記載はないし、それを示唆するものがあるとも認めることができない。そして、ボロン酸と反応しうるヒドロキシ化合物として、D-マンニトールを選択するような技術常識があるものとも認めることができない。よって、甲6の記載から、「D-マンニトール」のエステルを想到するには、格別の創意を要するものである。 そして、甲5及び甲15は、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸と部分的に構造が類似するボロン酸化合物のD-マンニトールとのアニオン錯体に関する文献である(上記2(2)エ(エ))が、甲5及び甲15には、エステル体についての具体的な記載は無い。さらに、ボロン酸の構造の違いもあり、甲6発明に接した当業者が、これらの記載から、甲6発明をD-マンニトールエステルにしようと想到するものとすることができない。 相違点2に関し、甲2、甲5、甲6、甲7、甲9には、薬剤を凍結乾燥することの記載はあるが、甲6に、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸とD-マンニトールとのエステルについて、何ら記載も示唆もない以上、そのようなエステルを凍結乾燥粉末の形態で得ることを容易に想到するものとすることができない。 そうしてみると、本件発明17の効果を検討するまでもなく、本件発明17は、甲6に記載された発明と甲5または甲15に記載された発明と甲2、甲5、甲6、甲7および甲9に例示される周知技術とに基づき当業者が容易に成し得たものであるとすることができない。 ウ この点に関し、請求人は、 (ア)甲6には、ボロン酸とエステルを形成する基として、「炭素原子および、場合に応じて、N、SまたはOであり得る1または複数のヘテロ原子を包含する鎖もしく環中の少なくとも2個の連結原子により隔てられた少なくとも2個のヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物から誘導された基」を開示していて、D-マンニトールは「炭素原子および、場合に応じて、N、SまたはOであり得る1または複数のヘテロ原子を包含する鎖もしく環中の少なくとも2個の連結原子により隔てられた少なくとも2個のヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物」であること、 (イ)甲5および甲15には、ボロン酸抗腫瘍剤の溶解度を高めるという課題、および該課題を解決するためにボロン酸抗腫瘍剤に係る化合物とD-マンニトールとの錯体を形成することが記載されており、甲6には、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸は好ましい抗腫瘍剤として記載されている。抗腫瘍剤の溶解度を高めるという課題は本件特許の優先日前において一般的な課題であり、甲6に記載のN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸と甲5および甲15に記載のボロン酸抗腫瘍剤とは共にボロン酸抗腫瘍剤である点で共通するから、当業者であれば、甲6に記載のN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸の溶解度を高めるために、甲5または甲15を参照し、甲6においてN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸とのエステルを形成する「炭素原子および、場合に応じて、N、SまたはOであり得る1または複数のヘテロ原子を包含する鎖もしく環中の少なくとも2個の連結原子により隔てられた少なくとも2個のヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物」としてD-マンニトールを容易に選択しうること を主張する(平成29年9月7日付け上申書第24頁?第28頁、口頭審理陳述要領書第24頁?第29頁)。 エ しかしながら、 (ア)D-マンニトールは「炭素原子および、場合に応じて、N、SまたはOであり得る1または複数のヘテロ原子を包含する鎖もしく環中の少なくとも2個の連結原子により隔てられた少なくとも2個のヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物」であったとしても、「炭素原子および、場合に応じて、N、SまたはOであり得る1または複数のヘテロ原子を包含する鎖もしく環中の少なくとも2個の連結原子により隔てられた少なくとも2個のヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物」の記載は、非常に多くの化合物を包含するものであるから、甲6の斯かる記載に接した当業者が、「炭素原子および、場合に応じて、N、SまたはOであり得る1または複数のヘテロ原子を包含する鎖もしく環中の少なくとも2個の連結原子により隔てられた少なくとも2個のヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物」の記載からD-マンニトールを容易に想到するものとは認めることができない。 (イ)たとえ、抗腫瘍剤の溶解度を高めるという課題は本件特許の優先日前において一般的な課題であり、また、甲6と甲5及び甲15とは、抗腫瘍剤という点で共通する文献であったとしても、上記イに記載したように、甲5および甲15に記載されているのは、D-マンニトールのアニオン錯体に留まるものであるから、ボロネートエステルに係る甲6発明において、甲5および甲15の示唆によって、ボロン酸と反応させてエステルを形成するヒドロキシ化合物として、「炭素原子および、場合に応じて、N、SまたはOであり得る1または複数のヘテロ原子を包含する鎖もしく環中の少なくとも2個の連結原子により隔てられた少なくとも2個のヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物」の中からD-マンニトールを選択するものとは認めることができない。 オ したがって、請求人の主張を踏まえても、本件発明17は、甲6に記載された発明と甲5または甲15に記載された発明と甲2、甲5、甲6、甲7および甲9に例示される周知技術とに基づき当業者が容易に成し得たものであるとすることができない。 (3)本件発明19、20について 請求項19、20は、請求項17を直接又は間接に引用するものである。 上記(2)のとおり、本件発明17は甲6に記載された発明と甲5または甲15に記載された発明と甲2、甲5、甲6、甲7および甲9に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。そして、甲4、甲13は薬剤の安定性を示す文献であって、甲6発明と本件発明17との相違点に関係する文献ではない。 したがって、本件発明19、20も同様に、甲6に記載された発明と甲5または甲15に記載された発明と甲4または甲13に記載された発明と甲2、甲5、甲6、甲7および甲9に例示される周知技術に基いて、または、甲6に記載された発明と甲5または甲15に記載された発明と甲2、甲5、甲6、甲7および甲9に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 (4)本件発明44について ア 対比 本件発明44と甲6発明とを対比する。(甲6発明については、上記(1)参照) 本件発明44と甲6発明とは、一致点はなく、以下の点で相違する。 相違点1 化合物が、本件発明44では、「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」であるのに対し、 甲6発明では、「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸のボロネートエステル」であるが、ボロネートエステルがD-マンニトールのエステルに特定されていない点 相違点2 本件発明44では、化合物に「医薬的に許容される担体」を含む「凍結乾燥粉末の形態」の「組成物」に係るものであるのに対し、 甲6発明では、形態が特定されていない化合物に係るものである点 イ 判断 相違点1に関し、上記(2)イ?エに記載したように、甲6発明の「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸のボロネートエステル」のエステル部分をD-マンニトールのエステルにすることを想起するような事項が甲6、甲5及び甲15に記載されているとすることはできない。 相違点2に関し、甲2、甲5、甲6、甲7、甲9には、薬剤を凍結乾燥することの記載はあるが、甲6に、N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸とD-マンニトールとのエステルについて、何ら記載も示唆もない以上、そのようなエステルを凍結乾燥粉末の形態で得ることを容易に成し得るとすることができない。 そうすると、本件発明44は、甲6に記載された発明と甲5または甲15に記載された発明と甲2、甲5、甲6、甲7および甲9に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 (5)本件発明46について ア 対比 本件発明46と甲6発明とを対比する。(甲6発明については、上記(1)参照) 本件発明46と甲6発明とは、一致点はなく、以下の点で相違する。 相違点1 化合物が、本件発明46では、「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート」であるのに対し、 甲6発明では、「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸のボロネートエステル」であるが、ボロネートエステルがD-マンニトールのエステルに特定されていない点 相違点2 本件発明46では、化合物を含む「凍結乾燥されたケーキ」に係るものであるのに対し、 甲6発明では、形態が特定されていない化合物に係るものである点 イ 判断 相違点1に関し、上記(2)イ?エに記載したように、甲6発明の「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシンボロン酸のボロネートエステル」のエステル部分をD-マンニトールのエステルにすることを想起するような事項が甲6、甲5及び甲15に記載されているとすることはできない。 そうすると、相違点2について検討するまでもなく、本件発明46は、甲6に記載された発明と甲5または甲15に記載された発明と甲2に記載された発明と甲2、甲5、甲6、甲7および甲9に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 5 無効理由5(サポート要件(特許法第36条第6項第1号)違反) (1)判決の拘束力について 審決を取り消す旨の判決の拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる(最三小平成4年4月28日判決、民集46巻4号245頁)。 したがって、当審の審理は、上記第1 4(2)の判決(平成30年(行ケ)第10159号及び平成30年(行ケ)第10153号、令和2年7月2日判決言渡)の主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断に拘束されるものである。 そして、上記判決では、 「2 特許請求の範囲の記載 ・・・ (2) ・・・。 訂正後の請求項17の記載は,次のとおりである(以下「本件化合物発明」という。)。 ・・・ (4) 「N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸」を,以下「ボルテゾミブ」又は「Bz」という。」(判決書第3頁第21行?第4頁第23行)として、請求項17に係る発明を「本件化合物発明」と言い換えた上で、 「第5 裁判所の判断 1 特許権者取消事由について ・・・ (2) 本件化合物発明の課題について 本件明細書の記載によれば,本件化合物発明が解決しようとする課題は,製剤化したときに安定な医薬となり得て,また,水性媒体への溶解でボロン酸化合物を容易に遊離する組成物となり得る本件化合物(凍結乾燥粉末の形態のBME)を提供することである。そして,この課題が解決されたといえるためには,凍結乾燥粉末の状態のBMEが相当量生成したこと,並びに当該BMEが保存安定性,溶解容易性及び加水分解容易性を有することが必要であると解されるから,これらの点が,上記(1)で説示したような意味において本件明細書に記載又は示唆されているといえるかについて検討することとする。なお,ここでいう「相当量」とは,医薬として上記課題の解決手段になり得る程度の量,という意味である。 (3) 凍結乾燥粉末の状態のBMEが相当量生成したことについて ア ・・・,本件明細書には,凍結乾燥粉末の状態のBMEが相当量生成したことが記載されていると認められる。 イ 請求人ホスピーラの主張について ・・・,請求人ホスピーラの上記主張は,上記アの判断を左右しない。 (4) 保存安定性について ア ・・・,本件明細書には,本件化合物が,ボルテゾミブに比較して優れた保存安定性を有していることを当業者が認識し得る程度に記載されているといえる。 イ 請求人ホスピーラの主張について ・・・,請求人ホスピーラの上記主張は,上記アの判断を左右しない。 (5) 溶解容易性及び加水分解容易性について ア ・・・本件明細書には,本件化合物がボルテゾミブに比較して優れた溶解容易性を有していることが,当業者が認識し得る程度に記載されているといえる。 ・・・,すなわち本件化合物が加水分解容易性を有することを,当業者は認識し得るといえる。 ・・・。 イ 請求人ホスピーラの主張について ・・・,請求人ホスピーラの上記主張は,上記アの判断を左右しない。 (6) 技術的事項に関する各論的主張について 本件化合物発明のサポート要件充足性に関し,両当事者は別紙のとおり種々の主張をするところ,これらの主張に対する裁判所の検討結果は,別紙の右欄に記載したとおりであり,・・・,請求人ホスピーラの主張は,以上の認定を覆すに足りるものではない。」(判決書第20頁第11行?第25頁第17行)と判示した上で、 「(7) まとめ 上記(3)?(6)に検討したところによれば,本件化合物発明の特許請求の範囲の記載は,サポート要件を満たすものというべきであり,これを否定した審決の判断は誤りである。」(判決書第25頁18行?第21行)と判断している。 (2)本件発明17について 本件発明17は、上記判決にいう「本件化合物発明」であるので、上記判決の拘束力により、サポート要件を満たすものというべきである。 (3)本件発明19、20について 本件発明19は、本件発明17に「少なくとも1ヶ月間0℃で安定である」との発明特定事項を加えたものであり、本件発明20は、本件発明17に「少なくとも1ヶ月間40℃で安定である」との発明特定事項を加えたものである。 ここで、本件発明17が解決しようとする課題は、判決の拘束力により、上記判決の「第5 1(2)本件化合物発明の課題について」において判示されたとおりに認定されるべきであるところ、本件発明19が解決しようとする課題は、本件発明17が解決しようとする課題のうち、保存安定性の部分を「少なくとも1ヶ月間0℃で安定である」としたものであり、本件発明20が解決しようとする課題は、本件発明17が解決しようとする課題のうち、保存安定性の部分を「少なくとも1ヶ月間40℃で安定である」としたものであるといえる。 そして、本件特許明細書の【0094】?【0096】には、固体や液体のボルテゾミブは、2?8℃の低温で保存しても、3?6ヶ月超、6ヶ月超は安定ではなかったのに対して、実施例1により得られた凍結乾燥製剤(上記判決の第5 1(3)のとおり相当量のBMEを含む。)は、5℃、周辺温度、37℃、50℃で、いずれの温度でも、約18ヶ月間にわたって、薬物の喪失は無く、分解産物も産生しなかったとの試験結果が開示されている。 5℃、周辺温度、37℃、50℃のいずれの温度でも約18ヶ月間にわたって、薬物の喪失は無く、分解産物も産生しなければ、当業者は、少なくとも1ヶ月間0℃で安定であり、また、少なくとも1ヶ月間40℃で安定であると認識すると認められるから、本件発明17に「少なくとも1ヶ月間0℃で安定である」との発明特定事項を加えたものである本件発明19、本件発明17に「少なくとも1ヶ月間40℃で安定である」との発明特定事項を加えたものである本件発明20のいずれも、発明の詳細な説明の記載により当業者がその発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (4)本件発明44について 本件発明44は、上記「第3 本件発明」において示したとおり、「(i)D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート、及び(ii)医薬的に許容される担体を含む、凍結乾燥粉末の形態の組成物。」の発明であり、本件発明17に「医薬的に許容される担体を含む」との発明特定事項を加えた上で凍結乾燥粉末の形態の組成物としたものである。 本件特許明細書の記載によれば、本件発明44が解決しようとする課題は、製剤化したときに安定な医薬となり得て、また、水性媒体への溶解でボロン酸化合物を容易に遊離し得る凍結乾燥粉末の形態の組成物を提供することである。 そして、本件発明17が、上記(2)に示したとおり、上記判決の拘束力により、サポート要件を満たすものというべきであるとされる以上、上記判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断を基礎として、本件発明17に「医薬的に許容される担体を含む」との発明特定事項を加えた上で凍結乾燥粉末の形態の組成物とした本件発明44もまた、サポート要件を満たすものというべきである。 (5)本件発明46について 本件発明46は、上記「第3 本件発明」において示したとおり、「D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含む、凍結乾燥されたケーキ。」の発明であり、本件発明17を「凍結乾燥されたケーキ」としたものである。 本件特許明細書の記載によれば、本件発明46が解決しようとする課題は、製剤化したときに安定な医薬となり得て、また、水性媒体への溶解でボロン酸化合物を容易に遊離する組成物となり得る凍結乾燥されたケーキを提供することである。 そして、本件発明17が、上記(2)に示したとおり、上記判決の拘束力により、サポート要件を満たすものというべきであるとされる以上、上記判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断を基礎として、本件発明17に対して「ケーキ」とした本件発明46もまた、サポート要件を満たすものというべきである。 第6 結語 以上のとおり、本件発明17、19、20、44及び46に関して、いずれの無効理由についても理由がないので、本件発明17、19、20、44及び46についての特許を無効とすることはできない。 請求項1?16、18は訂正により存在しないこととなったので、請求項1?16、18に係る発明についての特許に対する無効審判請求は不適法な請求であり、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により却下する。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】(削除) 【請求項9】(削除) 【請求項10】(削除) 【請求項11】(削除) 【請求項12】(削除) 【請求項13】(削除) 【請求項14】(削除) 【請求項15】(削除) 【請求項16】(削除) 【請求項17】 凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート。 【請求項18】(削除) 【請求項19】 少なくとも1ヶ月間0℃で安定である、請求項17に記載の化合物。 【請求項20】 少なくとも1ヶ月間40℃で安定である、請求項17に記載の化合物。 【請求項21】 (a)(i)水、 (ii)N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸、及び (iii)D-マンニトール を含む混合物を調製すること;及び (b)混合物を凍結乾燥すること; を含む、凍結乾燥粉末の形態のD-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートの調製方法。 【請求項22】(削除) 【請求項23】(削除) 【請求項24】(削除) 【請求項25】(削除) 【請求項26】(削除) 【請求項27】(削除) 【請求項28】(削除) 【請求項29】(削除) 【請求項30】(削除) 【請求項31】(削除) 【請求項32】(削除) 【請求項33】(削除) 【請求項34】(削除) 【請求項35】(削除) 【請求項36】(削除) 【請求項37】(削除) 【請求項38】 D-マンニトールとN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸が少なくとも1:1比で存在する、請求項21に記載の方法。 【請求項39】 D-マンニトールとN-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロン酸が少なくとも5:1比で存在する、請求項21に記載の方法。 【請求項40】 混合物が水混和性溶媒を更に含む、請求項21、38及び39のいずれか一項に記載の方法。 【請求項41】 水混和性溶媒がアルコールである、請求項40に記載の方法。 【請求項42】 アルコールがtert-ブタノールである、請求項41に記載の方法。 【請求項43】(削除) 【請求項44】 (i)D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネート、及び(ii)医薬的に許容される担体を含む、凍結乾燥粉末の形態の組成物。 【請求項45】(削除) 【請求項46】 D-マンニトール N-(2-ピラジン)カルボニル-L-フェニルアラニン-L-ロイシン ボロネートを含む、凍結乾燥されたケーキ。 【請求項47】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2020-11-27 |
出願番号 | 特願2002-559432(P2002-559432) |
審決分類 |
P
1
113・
537-
YAA
(C07F)
P 1 113・ 853- YAA (C07F) P 1 113・ 857- YAA (C07F) P 1 113・ 121- YAA (C07F) P 1 113・ 536- YAA (C07F) P 1 113・ 854- YAA (C07F) P 1 113・ 851- YAA (C07F) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
関 美祝 村上 騎見高 |
登録日 | 2008-08-01 |
登録番号 | 特許第4162491号(P4162491) |
発明の名称 | ボロン酸化合物製剤 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 伊藤 洋介 |
代理人 | 土井 京子 |
代理人 | 西守 有人 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 當麻 博文 |
代理人 | 竹井 増美 |
代理人 | 伊藤 洋介 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 鎌田 光宜 |
代理人 | 竹井 増美 |
代理人 | 高島 一 |
代理人 | 木下 智文 |
代理人 | 北脇 大 |
代理人 | 岡田 淳 |
代理人 | 西川 恵雄 |
代理人 | 當麻 博文 |
代理人 | 中 正道 |
代理人 | 土井 京子 |
代理人 | 中 正道 |
代理人 | 北脇 大 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 飯塚 卓也 |