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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  C08L
管理番号 1376678
異議申立番号 異議2019-700927  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-20 
確定日 2021-05-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6518052号発明「熱可塑性樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6518052号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第6518052号の請求項1、2、4、5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6518052号は平成26年9月24日に出願され、平成31年4月26日に特許権の設定登録がなされ、令和元年5月22日にその特許公報が発行され、その後、請求項1,2,4,5に係る特許に対して、同年11月20日に特許異議申立人 谷口真魚(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされ、同時に証拠説明書が提出されたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。

令和2年 2月 4日付け:取消理由の通知
同年 4月 6日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年 7月22日 :意見書及び証拠説明書の提出(申立人)
同年10月30日付け:取消理由の通知<決定の予告>
令和3年 1月 8日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年 4月 5日 :意見書及び証拠説明書の提出(申立人)

なお、令和3年1月8日に提出された訂正の請求により、令和2年4月6日に提出された訂正の請求は取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の可否
1 訂正の内容
令和3年1月8日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1?5は一群の請求項である。

訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1の
「全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体」を、
「全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含む、ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?75であるところのオレフィン系ブロック共重合体」と訂正する。

訂正事項2:特許請求の範囲の請求項1の
「示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体」を、
「示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであり、融点が130℃以上であるところのプロピレン系ブロック共重合体」と訂正する。

訂正事項3:特許請求の範囲の請求項3のうち、請求項2を引用するものについて独立形式に改め、
「(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 30?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体 70?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であり;
上記成分(a)と上記成分(b)との合計を100質量部として、
(c)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが60J/g超であるところのポリプロピレン系樹脂 2?200質量部;
を更に含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)。」と訂正する。

訂正事項4:特許請求の範囲の請求項3のうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、
「(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 25?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体 75?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であり;
上記成分(a)と上記成分(b)との合計を100質量部として、
(c)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが60J/g超であるところのポリプロピレン系樹脂 2?200質量部;
を更に含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)。」と訂正し、新たに請求項6とする。

訂正事項5:特許請求の範囲の請求項4のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に改め、
「(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 25?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体 75?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であり;
上記成分(a)と上記成分(b)との合計を100質量部として、
(c)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが60J/g超であるところのポリプロピレン系樹脂 2?200質量部;
を更に含み、
ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?95であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)。」と訂正し、新たに請求項7とする。

訂正事項6:特許請求の範囲の請求項5のうち、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に改め、
「(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 25?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体 75?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であり;
上記成分(a)と上記成分(b)との合計を100質量部として、
(c)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが60J/g超であるところのポリプロピレン系樹脂 2?200質量部;
を更に含むことを特徴とする
熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)を含む物品。」と訂正し、新たに請求項8とする。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る熱可塑性樹脂組成物の成分(a)である「オレフィン系ブロック共重合体」に関し、本件明細書【0019】の記載「成分(a)は、ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が、好ましくは50?95、…更に好ましくは60?75である。」に基づき限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る熱可塑性樹脂組成物の成分(b)である「プロピレン系ブロック共重合体」に関し、本件明細書【0035】の記載「成分(b)は…融点が好ましくは130℃以上…である。」に基づき限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

訂正事項3及び4は、訂正前の請求項1や2を引用する訂正前の請求項3を独立形式に書き改めたものである。
訂正事項5及び6は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3を引用する請求項4及び5を、それぞれ独立形式に書き改めたものである。
これらは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

なお、訂正事項5及び6は、訂正前の請求項1を引用するものに関するところ、訂正前の請求項3は訂正前の請求項1又は2を引用するものであることに鑑みると、訂正前の請求項2を引用する訂正前の請求項3を引用する請求項4及び5を、それぞれ独立形式に書き改めたものが含まれておらず、形式的には特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解される余地がある。
そして、訂正前の請求項3に係る発明の特許については特許異議の申立てがなされていないので、上記の点に関し、特許法第120条の5第9項で読み替えるものと規定される同法第126条第7項(いわゆる独立特許要件)について検討すると、下記に示すとおり、本件訂正後の本件特許出願に係る発明の特許を取り消すべき理由を見いだすことができないため、この訂正事項は同法第126条第7項の規定を満たすものと認められる。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号あるいは第4項に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第7項の各規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1,2,4,5に係る発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1,2,4,5に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1,2,4,5に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含む、ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?75であるところのオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 25?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであり、融点が130℃以上であるところのプロピレン系ブロック共重合体 75?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)。
【請求項2】
上記成分(a)30?95質量部;及び、上記成分(b)70?5質量部;を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部である請求項1に記載の熱可塑樹脂組成物。
【請求項4】
ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?95であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1?4の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む物品。」

第4 令和2年10月30日付け取消理由の通知<決定の予告>で示した取消理由について
当審は、上記<決定の予告>において、概要、下記のとおりの取消理由を通知した。
「A (拡大先願)この出願の請求項1,2,4,5に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)ものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

先願1:特願2016-507480号(国際公開第2015/137221号(甲第1号証))
参考3:株式会社DJK横浜ラボラトリーズ先端材料研究所 深沢由梨が令和2年7月16日に作成した「ウエルネックスSTR0651の融解エンタルピー、ピークトップ融点の測定結果」と題する書面(甲第4号証)」

本件訂正発明1,2,4,5において、依然としてこの取消理由が存するか、検討する。

1 本件訂正発明1について
(1)先願1明細書の記載事項
先願1明細書には、以下の事項が記載されている。
なお、先願1における優先権主張の基礎となる出願(特願2014-48342号)には以下の事項と同様の記載があることに鑑みると、下記の事項に係る先願1は、該基礎出願の出願日である平成26年3月12日に出願されたものとみなされる。
そして、本件出願の発明者が先願1の発明者と同一でなく、また本件出願時において、本件出願人が先願1の出願人と同一でない。

ア 「[0007]
本発明の熱可塑性重合体組成物は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとリアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂とを含有することを特徴とする。
[0008]
<オレフィン系熱可塑性エラストマー>
本発明の熱可塑性重合体組成物を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマーは、エチレンと炭素数3?20のα?オレフィンからなるマルチブロック共重合体が主体としてなる。
[0009]
マルチブロック共重合体は、第1のオレフィン重合触媒(a)と、同等の重合条件下で触媒(a)によって調製されるポリマーとは化学的性質又は物理的性質が異なるポリマーを調製可能な第2のオレフィン重合触媒(b)と、重合条件下で、組成物中に含まれる触媒の少なくとも2つの活性触媒部位を行き来することが可能な鎖シャトリング剤(c)を組み合わせて、エチレンと炭素数3?20のα?オレフィンとが重合されることで得られる。
[0010]
前記炭素数3?20のα?オレフィンとしてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンなどの直鎖状α?オレフィン、4-メチル1-ペンテン、4-メチル1-ヘキセン、4,4-ジメチル1-ペンテンなどの分岐状α?オレフィンなどが挙げられるが、これらの中でプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンなどの直鎖状α?オレフィンが好ましく、中でも1-オクテンがより好ましい。これらのα?オレフィンは1種でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
[0011]
マルチブロック共重合体は、エチレンブロックをA、α?オレフィンブロックをBとした場合、A-Bのジブロックであってもよく、A-B-Aのトリブロックであってもよく、(A-B)n(n≧2)もしくは(A-B?A)n(n≧2)のマルチブロックであってもよいが、マルチブロックであることが、耐熱性の観点より好ましい。

[0018]
本発明におけるオレフィン系熱可塑性エラストマーは上記の構成を満足している限りでは、市販品を使用しても良い。具体例としては、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー社製の商品名「INFUSE(インフューズ)」(登録商標)シリーズ等が挙げられる。」

イ 「[0019]
<リアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂>
本発明の熱可塑性重合体組成物は、リアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂を含有することが重要である。
ここでリアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン系モノマーを重合してポリプロピレン系重合体を得た後、ポリプロピレン系重合体にさらにゴム部を多段階重合することで、重合後もポリプロピレン系重合体の部分とゴム部との両方を有する軟質ポリプロピレン系樹脂である。
[0020]
本発明におけるリアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂のポリプロピレン系重合体の部分については、ポリプロピレンを主体とした重合体であれば、プロピレンのみからなる重合体であってもよく、プロピレンと他のポリオレフィンとのランダム共重合体であってもよい。その中でもプロピレンのみからなる重合体、またはプロピレンとエチレンとからなるランダム共重合体であることが、接着性、溶剤溶出性の点から好ましい。
[0021]
本発明におけるリアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂のゴム部分については、得られる熱可塑性重合体組成物が本願の所望の目的を満足する限りにおいては限定されるものではないが、耐熱性と柔軟性とを両立する観点から、エチレン重合体またはエチレン-プロピレン共重合体からなることが好ましい。
[0022]
軟質ポリプロピレン系樹脂を製造する方法としては、…(3)プロピレンを主成分とする重合を第一段階で行い、プロピレンとプロピレン以外のエチレン及び/又はα?オレフィンを共重合させる、リアクタータイプの方法などが一般的に知られている。…(3)のリアクタータイプの重合方法で得られたリアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂は耐熱性や溶剤溶出性に優れることから、本発明の熱可塑性重合体組成物がリアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂を一成分として含有することは重要である。
[0023]
リアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂の重合方法としては、第一および第二の工程を用いて重合が行われることが好ましい。すなわち、触媒を用いて第一工程で結晶性ポリプロピレンを重合した後、同じく触媒を用いて第二工程で結晶性ポリプロピレンにゴム部を重合することが柔軟性、溶剤溶出性の点で好ましい。」

ウ 「[0035]
<熱可塑性重合体組成物の調製>
…前記のようにして調製された本組成物は、柔軟性、流動性(成形加工性)、溶剤溶出性、耐熱性のいずれにも優れており、シート、フィルム、チューブ、中空成形体、型成形体、その他各種成形体に成形し、種々の用途に用いることができる。成形方法としては、従来公知の方法、例えば押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、プレス成形、カレンダー成形等の方法を採用することができる。」

エ 「実施例
[0037]

(1)硬度
実施例及び比較例で得られた熱可塑性重合体組成物を230℃で射出成形することによって厚さ2mmのシートを得た。このシートを用いて、JISK6253に準拠してJIS-A硬度を測定し、柔軟性の指標とした。

[0038]
<実施例1?7及び比較例1?6>
上記に示す各成分を下記の表1?3に示す配合にしたがって、ヘンシェルミキサーを使用して予め一括して混合し、二軸押出機(フリージアマクロス社製NR-246)に供給して230℃で混練した後、ストランド状に押出し、切断して、ペレット状の熱可塑性重合体組成物を調製した。得られた熱可塑性重合体組成物のMFRを測定し、測定結果を表1?3に示した。次に得られた上記ペレット状の熱可塑性重合体組成物から、射出成形機(日精樹脂工業社製FE120)を使用して、シリンダー温度230℃、金型温度40℃の条件下で所定の熱可塑性重合体組成物シートを作製し、硬度、比重、引張破断強度、破断伸度、圧縮永久歪み、溶剤溶出性、耐熱性を上記した方法で測定した。
一方、プロピレン系樹脂(プライムポリマー社製プライムポリプロJ106G)を用い、シリンダー温度230℃、金型温度60℃に設定した上述の射出成型機により、樹脂層(厚さ4mm×幅25mm×長さ150mm)を成形した。次に、上述の射出成型機に厚さ7mm×幅25mm×長さ200mmの成形品を与える金型を取り付け、上述の得られた樹脂層(厚さ4mm×幅25mm×長さ150mm)を金型にインサートし、シリンダー温度230℃、金型温度40℃に設定し、上記により得られた熱可塑性重合体組成物を射出成形して、上記熱可塑性重合体組成物からなる弾性層と上記樹脂層とから形成される複合成形体を調製した。さらに得られた複合成形体の接着強度を上記した方法で測定した。結果を表1?3に示す。

[0040][表2]


[0042]
実施例および比較例で用いた各成分は次のとおりである。

<オレフィン系ブロック共重合体2>
オレフィン系熱可塑性エラストマー(エチレンと1-オクテンからなるマルチブロック共重合体): INFUSE9507(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー社製、MI=5.0g/10min(190℃、21N)、DSC融点119℃、硬度(TypeA)59)
[0043]
<リアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂1>
メタロセン系リアクター型TPO(エチレンとプロピレンからなる共重合体):ウエルネックスSTR0651(日本ポリプロ社製、MI=20g/10min(230℃、21.18N)、曲げ弾性率=270MPa)

[0044]
上記の結果からオレフィン系ブロック共重合体100質量部に対して、リアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂1質量部から120質量部からなる熱可塑性重合体組成物および複合成形体は、良好な柔軟性、接着性、溶剤溶出性、圧縮永久歪み性を示す。従って、本発明の熱可塑性重合体組成物および複合成形体は良好な柔軟性、接着性、溶剤溶出性、圧縮永久歪み性を示す成形品が与えられる。
…」

オ 「[0045]
本発明の熱可塑性重合体組成物および複合成形体は、柔軟性、接着性、溶剤溶出性、圧縮永久歪み性に優れているため、インストルメントパネル、ラック&オピニオンブーツ、サスペンションブーツ、等速ジョイントブーツ、バンパー、サイドモール、ウェザーストリップ、レザーシート、アームレスト、エアバッグカバー等の自動車内外装材部品;自動車、車両材料、建築材料、電気・電子製品、食品容器、日用品、その他のあらゆる分野において、水密性、気密性が必要な部位に使用されるライナー材;耐圧ホース、消防ホース、塗装用ホース、洗濯機ホース、燃料チューブ、油・空圧チューブ、透析用チューブ等のホース、チューブ;各種製品(例えば、電動ドリル、はさみ、ドライバー、歯ブラシ、ペン、カメラ、歯固め等の幼児用品など)用のグリップ材;冷蔵庫ガスケット、掃除機バンパー、防水ボディー等の家電部品;コピー機送りローラー、巻き取りローラー等の事務機部品;ソファー、チェア-シート等の家具;スイッチカバー、キャスター、ストッパー、足ゴム等の部品;コンベアーベルト、電動ベルト、ペレタイザーロール等の工業資材;紙おむつ、ハップ剤、包帯等の衛生材料の伸縮部材;ヘアーバンド、リストバンド、時計バンド、眼鏡バンドなどのバンド用途;床材、スノーチェーン、電線被覆材、トレイ、フィルム、シート、文房具、玩具、日用雑貨などの幅広い用途に有効に使用することができる。」

(2)先願1明細書に記載された発明との対比及び判断
ア 先願1明細書に記載された発明
先願1明細書の実施例9及び10(上記(1)エ)から、先願1明細書には、以下の先願発明が記載されていると認められる。

「オレフィン系熱可塑性エラストマー(エチレンと1-オクテンからなるマルチブロック共重合体):INFUSE9507 100質量部;及び
メタロセン系リアクター型TPO(エチレンとプロピレンからなる共重合体):
ウエルネックスSTR0651 40質量部;
を含み、ゴム用軟化剤、可塑剤を共に含まない、
JIS K6253準拠JIS-A硬度70の熱可塑性重合体組成物。」(先願発明a)
「オレフィン系熱可塑性エラストマー(エチレンと1-オクテンからなるマルチブロック共重合体):INFUSE9507 100質量部;及び
メタロセン系リアクター型TPO(エチレンとプロピレンからなる共重合体):
ウエルネックスSTR0651 70質量部;
を含み、ゴム用軟化剤、可塑剤を共に含まない、
JIS K6253準拠JIS-A硬度80の熱可塑性重合体組成物。」(先願発明b)

イ 対比及び判断
(ア)本件訂正発明1
a 先願発明a及びbの「INFUSE9507」は「エチレンと1-オクテンからなるマルチブロック共重合体」である「オレフィン系熱可塑性エラストマー」(上記(1)エ)である。
また、本件明細書には、【0023】に「成分(a)の市販例としては、ダウ・ケミカル社の『INFUSE(商品名)』などをあげることができる。」と記載され、本件実施例では「エチレンを主体とするハードセグメントと、エチレンと1-オクテンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体『INFUSE D9507(商品名)』」を成分(a)として用いることが記載されている。
そして、先願発明a及びbの「INFUSE9507」は、その「硬度(TypeA)」は「59」であることに鑑みると、「ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値」が「50?75」の範囲内にあるものと認められる。
これらを勘案すると、先願発明a及びbの「INFUSE9507」は本件訂正発明1の成分(a)、すなわち「全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含む、ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?75であるところのオレフィン系ブロック共重合体」に相当するものと認められる。

b 先願発明a及びbの「ウエルネックスSTR0651」は「エチレンとプロピレンからなる共重合体」であり、「プロピレンを主成分とする重合を第一段階で行い、プロピレンとプロピレン以外のエチレン及び/又はα?オレフィンを共重合させる、リアクタータイプの方法」(上記(1)イ)で合成されたものと認められ、すなわちこれは「プロピレン系ブロック共重合体」といえる。
本件訂正発明1の成分(b)と「ウエルネックスSTR0651」のそれぞれの融解エンタルピーについて検討する。
本件明細書【0030】には「上記成分(b)の示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーは、成分(b)中の結晶性プロピレン系重合体成分の含量の指標であり、柔軟性の観点から、60J/g以下、好ましくは50J/g以下である。また機械的強度、及び上記成分(c)を用いる場合の混和性の観点から20J/g以上、好ましくは30J/g以上である。」と記載されている。
すなわち、本件訂正発明1の成分(b)の融解エンタルピーは、成分(b)中の結晶性プロピレン系重合体成分の含量に関係するものが「60J/g以下、好ましくは50J/g以下…20J/g以上、好ましくは30J/g以上」であるものと解される。
そして、「ウエルネックスSTR0651」の融解エンタルピーについてみると、参考3(甲第4号証)で示される測定結果によると、示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが「30.1J/g」であるように見受けられる。
参考3第3頁及び第4頁に示されたデータについて精査すると、参考3第3頁に示されるDSCセカンド融解曲線には3本の融解ピークが存在する。そのうち最も低い温度側のピークの融点は97.02℃であり、参考3第4頁に示される結晶化曲線においてショルダーとして表れているピークの温度(結晶化温度)は約83℃である。したがって、過冷却度は約14℃となる。この過冷却度に鑑みると、融点97.02℃の融解ピークはエチレン系重合体に由来するものと解される。
そして、参考3第3頁の上記3本の融解ピークのうち中間にあるピークの融点は130.18℃であり、参考3第4頁に示される結晶化曲線の主ピークの温度(結晶化温度)は約89℃である。したがって、過冷却度は約41℃となる。この過冷却度に鑑みると、融点130.18℃の融解ピークはプロピレン系重合体に由来するものと解される。過冷却度約41℃の融解ピークはプロピレン系重合体に由来するものと解されるのは、後掲甲第2号証や甲第3号証からも裏付けられる。
そうすると、参考3の融解ピーク温度97.02℃の融解エンタルピーは、結晶性プロピレン系重合体成分に関係するものとはいえず、参考3第4頁の「ΔH=14.4094J/g」を、本件訂正発明1の成分(b)の融解エンタルピーに相当するものとして算入することはできない。したがって、「ウエルネックスSTR0651」の融解エンタルピーとして、本件訂正発明1の成分(b)の融解エンタルピーに相当するものは、
15.5300+0.1267=15.6567(J/g)
となり、この値は「20?60J/g」の範囲外である。

c 以上のことから、本件訂正発明1と先願発明a及びbとは、
熱可塑性樹脂組成物の成分「プロピレン系ブロック共重合体」の
「示差走査熱量計により測定される融解エンタルピー」の値が、
本件訂正発明1は「20?60J/g」であるのに対し、
先願発明a及びbは「15.6567J/g」
である点で相違し、本件訂正発明1と先願発明a及びbとは同一ではない。

d よって、本件訂正発明1は、先願1に記載された発明と同一とはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

2 本件訂正発明2,4,5
本件訂正発明2,4,5は、本件訂正発明1を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1が先願1に記載された発明と同一とはいえないことに鑑みると、本件訂正発明2,4,5も先願1に記載された発明と同一とはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

3 まとめ
よって、上記取消理由の通知<決定の予告>で示した取消理由には、理由がない。

第5 令和2年2月4日付け取消理由の通知で示した取消理由について
当審は、上記取消理由の通知において、概要、下記のとおりの取消理由を通知した。

「A (拡大先願)この出願の請求項1、2、4、5に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)ものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

先願1:特願2016-507480号(国際公開第2015/137221号(甲第1号証))
参考2:株式会社DJK横浜ラボラトリーズ先端材料研究所 深沢由梨が令和元年11月14日に作成した「ウエルネックスRFG4VAの融解エンタルピーの測定結果」と題する書面(甲第2号証)」

本件訂正発明1,2,4,5において、依然としてこの取消理由が存するか、検討する。

1 本件訂正発明1について
(1)先願1明細書の記載事項
先願1明細書には、上記第4 1(1)ア?オに加えて、
エ’「[0043]

<リアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂2>
メタロセン系リアクター型TPO(エチレンとプロピレンからなる共重合体):ウエルネックスRFG4VA(日本ポリプロ社製、MI=6g/10min(230℃、21.18N)、曲げ弾性率=280MPa)」
と記載されている。

(2)先願1明細書に記載された発明との対比及び判断
ア 先願1明細書に記載された発明
先願1明細書の実施例7及び8(上記(1)エ’及び第4 1(1)エ)から、先願1明細書には、以下の先願発明が記載されていると認められる。

「オレフィン系熱可塑性エラストマー(エチレンと1-オクテンからなるマルチブロック共重合体):INFUSE9507 100質量部;及び
メタロセン系リアクター型TPO(エチレンとプロピレンからなる共重合体):ウエルネックスRFG4VA 40質量部;
を含み、ゴム用軟化剤、可塑剤を共に含まない、
JIS K6253準拠JIS-A硬度70の熱可塑性重合体組成物。」(先願発明c)
「オレフィン系熱可塑性エラストマー(エチレンと1-オクテンからなるマルチブロック共重合体):INFUSE9507 100質量部;及び
メタロセン系リアクター型TPO(エチレンとプロピレンからなる共重合体):ウエルネックスRFG4VA 70質量部;
を含み、ゴム用軟化剤、可塑剤を共に含まない、
JIS K6253準拠JIS-A硬度80の熱可塑性重合体組成物。」(先願発明d)

イ 対比及び判断
(ア)本件訂正発明1
a 上記第4 1(2)イ(ア)aで検討したとおり、先願発明c及びdの「INFUSE9507」は本件訂正発明1の成分(a)、すなわち「全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含む、ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?75であるところのオレフィン系ブロック共重合体」に相当するものと認められる。

b 上記第4 1(2)イ(ア)bで検討したとおり、先願発明c及びdの「ウエルネックスRFG4VA」は「エチレンとプロピレンからなる共重合体」であり、「プロピレンを主成分とする重合を第一段階で行い、プロピレンとプロピレン以外のエチレン及び/又はα?オレフィンを共重合させる、リアクタータイプの方法」(上記(1)イ)で合成されたものと認められ、すなわちこれは「プロピレン系ブロック共重合体」といえる。
そして、「ウエルネックスRFG4VA」は、参考2(甲第2号証)で示される測定結果によると、融点は128.26℃と解され、この値は「130℃以上」の範囲外である。

c 以上のことから、本件訂正発明1と先願発明c及びdとは、
熱可塑性樹脂組成物の成分「プロピレン系ブロック共重合体」の融点が、
本件訂正発明1は「130℃以上」であるのに対し、
先願発明c及びdは「128.26℃」
である点で相違し、本件訂正発明1と先願発明c及びdとは同一ではない。

d よって、本件訂正発明1は、先願1に記載された発明と同一とはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

2 本件訂正発明2,4,5
本件訂正発明2,4,5は、本件訂正発明1を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1が先願1に記載された発明と同一とはいえないことに鑑みると、本件訂正発明2,4,5も先願1に記載された発明と同一とはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。

3 まとめ
よって、上記取消理由の通知で示した取消理由には、理由がない。

第6 申立人が示した特許異議申立ての理由について
申立人が以下の証拠方法と共に示した特許異議申立ての理由は、令和2年2月4日付け取消理由の通知で示した取消理由と同旨である。
<証拠方法>
甲第1号証:国際公開第2015/137221号
甲第2号証:株式会社DJK横浜ラボラトリーズ先端材料研究所 深沢由梨が令和元年11月14日に作成した「ウエルネックスRFG4VAの融解エンタルピーの測定結果」と題する書面
(以上、特許異議申立書と共に提出)
甲第3号証:株式会社DJK横浜ラボラトリーズ先端材料研究所 深沢由梨が令和2年7月16日に作成した「AdflexC200Fの融解エンタルピー、ピークトップ融点の測定結果」と題する書面
甲第4号証:株式会社DJK横浜ラボラトリーズ先端材料研究所 深沢由梨が令和2年7月16日に作成した「ウエルネックスSTR0651の融解エンタルピー、ピークトップ融点の測定結果」と題する書面
(以上、令和2年7月22日提出の意見書と共に提出)
甲第5号証:Dow Chemical Company、2015年6月発行のカタログ「INFUSE^(TM) Olefin Block Copolymers Product Selection Guide」
甲第6号証:特開2017-95529号公報
(以上、令和3年4月5日提出の意見書と共に提出)
このため、上記第5で示したことと同様、本件訂正発明1,2,4,5は先願1に記載された発明と同一とはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、上記特許異議申立ての理由には、理由がない。

第7 令和3年4月5日提出の意見書における先願1実施例3に基づく申立人の主張について
申立人は、先願1実施例3を基に、上記意見書3頁1?7行及び7頁末行?11頁4行において、本件訂正発明1,2,4,5は、先願1実施例9及び10に基づく「甲1発明a」及び「甲1発明b」、並びに、同実施例3に基づく「甲1発明c」と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができず、その特許は取り消されるべきである旨主張するので、この点について検討する。

1 「甲1発明a」及び「甲1発明b」について
「甲1発明a」及び「甲1発明b」は、上記第4 1(2)アで示した先願発明a及び先願発明bのうち、「JIS K6253準拠JIS-A硬度」に係る規定を除いたものである。
そして、上記第4で検討したことと同旨により、本件訂正発明1,2,4,5と「甲1発明a」、及び、本件訂正発明1,2,4,5と「甲1発明b」とは同一ではない。

2 「甲1発明c」について
2-1 本件訂正発明1について
(1)先願1明細書の記載事項
先願1明細書には、上記第4 1(1)ア?オ、第5 1(1)エ’に加えて、
エ''「[0039]
[表1]


[0042]
実施例および比較例で用いた各成分は次のとおりである。
<オレフィン系ブロック共重合体1>
オレフィン系熱可塑性エラストマー(エチレンと1-オクテンからなるマルチブロック共重合体):INFUSE9500(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー社製、MI=5.0g/10min(190℃、21N)、DSC融点122℃、硬度(TypeA)76)

[0043]

<リアクター型軟質ポリプロピレン系樹脂4>
リアクター型TPO(プロピレン系共重合体及びエチレンとプロピレンからなる共重合体):Adflex C200F(サンアロマー社製、MI=6g/10min(230℃、21.18N)、曲げ弾性率=220MPa)」
と記載されている。

(2)先願1実施例3に記載された発明との対比及び判断
ア 先願1実施例3に記載された発明
先願1実施例3(上記1(1)エ''、第5 1(1)エ’、及び第4 1(1)エ)から、先願1実施例3には、以下の先願発明が記載されていると認められる。

「オレフィン系熱可塑性エラストマー(エチレンと1-オクテンからなるマルチブロック共重合体):INFUSE9500 100質量部;及び
リアクター型TPO(プロピレン系共重合体及びエチレンとプロピレンからなる共重合体):Adflex C200F 20質量部;
を含み、ゴム用軟化剤、可塑剤を共に含まない、
JIS K6253準拠JIS-A硬度72の熱可塑性重合体組成物。」(先願発明e)
(決定注:先願発明eと上記意見書第3頁1?7行に記載の「甲1発明c」とは同一の文言である。)

イ 対比及び判断
(ア)本件訂正発明1
a 本件訂正発明1の成分(a)であるオレフィン系ブロック共重合体について検討する。
先願発明eの「INFUSE9500」に関し、申立人が令和3年4月5日提出の意見書に添付した甲第5号証(2?3頁)には、「Hardness, Shore A」(決定注:Shore A硬度と解する。)の項に、試験法「ASTM D2240」共に、「69」との数値が示されている。
しかし、甲第5号証は甲第1号証の出願後に発行されたものであり、また、甲第5号証に記載の「INFUSE9500」が甲第1号証に記載された「INFUSE9500」と同一のものであることは確認できない。
このため、「硬度(TypeA)」が「76」である先願発明eの「INFUSE9500」が、甲第5号証に記載のように「ASTM D2240」が「69」のもの、そして、本件訂正発明1の成分(a)の「ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?75」のものであるということができない。

b 以上のことから、本件訂正発明1と先願発明eとは、少なくとも
熱可塑性樹脂組成物の成分「オレフィン系ブロック共重合体」の「ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値」が、
本件訂正発明1は「50?75」であるのに対し、
先願発明eはその点明らかでない、あるいは、「76」であることで相違し、本件訂正発明1と、先願発明eすなわち「甲1発明c」とは同一ではない。

2-2 本件訂正発明2,4,5
本件訂正発明2,4,5は、本件訂正発明1を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1が先願発明eすなわち「甲1発明c」と同一とはいえないことに鑑みると、本件訂正発明2,4,5も先願発明eすなわち「甲1発明c」と同一とはいえない。

3 まとめ
よって、上記意見書で申立人が主張する取消理由には、理由がない。

第8 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1,2,4,5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 25?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであり、融点が130℃以上であるところのプロピレン系ブロック共重合体 75?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)。
【請求項2】
上記成分(a)30?95質量部;及び、上記成分(b)70?5質量部;を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 30?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体 70?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であり;
上記成分(a)と上記成分(b)との合計を100質量部として、
(c)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが60J/g超であるところのポリプロピレン系樹脂 2?200質量部;
を更に含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)。
【請求項4】
ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?95であることを特徴とする請求項1?3の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1?4の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む物品。
【請求項6】
(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 25?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体 75?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であり;
上記成分(a)と上記成分(b)との合計を100質量部として、
(c)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが60J/g超であるところのポリプロピレン系樹脂 2?200質量部;
を更に含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)。
【請求項7】
(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 25?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体 75?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であり;
上記成分(a)と上記成分(b)との合計を100質量部として、
(c)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが60J/g超であるところのポリプロピレン系樹脂 2?200質量部;
を更に含み、
ASTM D2240に従い測定したAタイプデュロメータ硬さの15秒値が50?95であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)。
【請求項8】
(a)全構成モノマーの90モル%以上がエチレンであるハードセグメントと、エチレンとα-オレフィンとからなるソフトセグメントとを含むオレフィン系ブロック共重合体(但し、共役ジエンからなるブロック共重合体を80モル%以上水素添加して得られるブロック共重合体を除く。) 25?95質量部;及び
(b)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが20?60J/gであるところのプロピレン系ブロック共重合体 75?5質量部;
を含み、ここで上記成分(a)と上記成分(b)との和は100質量部であり;
上記成分(a)と上記成分(b)との合計を100質量部として、
(c)示差走査熱量計により測定される融解エンタルピーが60J/g超であるところのポリプロピレン系樹脂 2?200質量部;
を更に含むことを特徴とする
熱可塑性樹脂組成物(但し、ゴム用軟化剤の配合されたものを除く。可塑剤の配合されたものを除く。)を含む物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-05-13 
出願番号 特願2014-193488(P2014-193488)
審決分類 P 1 652・ 161- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 水野 明梨  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 橋本 栄和
大熊 幸治
登録日 2019-04-26 
登録番号 特許第6518052号(P6518052)
権利者 リケンテクノス株式会社
発明の名称 熱可塑性樹脂組成物  
代理人 砂山 麗  
代理人 小島 一真  
代理人 中村 行孝  
代理人 宮嶋 学  
代理人 宮嶋 学  
代理人 小島 一真  
代理人 柏 延之  
代理人 中村 行孝  
代理人 瀬田 寧  
代理人 柏 延之  
代理人 瀬田 寧  
代理人 砂山 麗  
代理人 浅野 真理  
代理人 浅野 真理  
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