• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09J
管理番号 1376680
異議申立番号 異議2019-700775  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-30 
確定日 2021-05-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6494796号発明「粘着テープ及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6494796号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6494796号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6494796号の請求項1?12に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)2月23日(優先権主張 2016年(平成28年)2月23日、韓国)を国際出願日とするものであって、平成31年3月15日にその特許権の設定登録がされ、同年4月3日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?7に係る特許に対し、令和元年9月30日(受理日)に特許異議申立人古山陽子(以下、「申立人」という。)は特許異議の申立てを行い、当審は、令和元年12月2日付けで取消理由を通知した。この取消理由通知に対して、特許権者は、令和2年3月4日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。その訂正の請求に対して、申立人は同年4月6日(受理日)に意見書を提出した。当審は、同年5月20日付けで訂正拒絶理由を通知し、同年7月10日に特許権者は意見書を提出した。そして、当審は、令和2年7月28日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。この取消理由通知(決定の予告)に対して、特許権者は、令和2年10月30日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。その訂正の請求に対して、申立人は同年12月2日(受理日)に意見書を提出した。そして、当審は、令和3年1月13日付けで取消理由(決定の予告)を通知した。この取消理由通知(決定の予告)に対して、特許権者は、同年4月14日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。
なお、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられており、令和3年4月14日付けの訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断した。そのため、合議体は、申立人に対して意見書を提出する機会を与える必要のない特別の事情に当たると判断し、申立人に意見書を提出する機会を与えなかった。
また、令和2年3月4日付け及び同年10月30日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の可否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次の訂正事項1のとおりである。なお、訂正前の請求項1?7は、請求項2?7が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は一群の請求項1?7について請求されている。
[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項1に「前記添加剤は、熱発泡剤及び硬化剤を含む、粘着テープ」とあるのを、「前記添加剤は、熱発泡剤及び硬化剤を含み、前記熱発泡剤は150℃以上180℃以下で分解されるものである、粘着テープ」と訂正する。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7についても同様に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
本件明細書には、「前記熱発泡剤は、約150℃?180℃程度の高温で約10分以下で熱処理をすることで分解され」(【0052】)と記載されている。
そして、訂正事項1は、熱発泡剤の分解温度を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、上述したように本件明細書に記載された範囲のものであるから新規事項の追加に該当せず、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。請求項2?7についての訂正も同様である。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?7に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明7」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基材、及び
前記基材の一面上に備えられ、水性アクリル系粘着剤組成物の硬化物を含む粘着シートを含み、
前記粘着シートは気孔を含む多孔性構造であり、
透湿度が温度40℃及び相対湿度20%の条件で3,000g/m^(2)・day以上5,000g/m^(2)・day以下である粘着テープあって、
前記水性アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系樹脂及び添加剤を含み、
前記添加剤は、熱発泡剤及び硬化剤を含み、
前記発泡剤は150℃以上180℃以下で分解されるものである、粘着テープ。
【請求項2】
前記気孔の大きさは0.5μm以上200μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着シートの厚さは10μm以上100μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着シートの気孔の面積比率は10cm×10cmの単位面積に対して10%以上60%以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記添加剤は、界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び極性官能基含有単量体の重合体である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記極性官能基含有単量体の含量は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して0.7重量部以上2重量部以下である、請求項6に記載の粘着テープ。」

第4 取消理由通知(決定の予告)の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して、特許権者に令和3年1月13日付けで通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。
「本件明細書には、『発泡剤』」について、『150℃以上180℃以下で発泡されるもの』は具体的に記載されているとしても、『40℃以上80℃以下で発泡されるもの』については、具体的にどのような発泡剤であるかは記載されていない。
そして、『40℃以上80℃以下で発泡される』発泡剤は、当業者にとって明らかではないことから、本件発明1の実施の形態において、どのような発泡剤を用いることができるのか、当業者の技術常識に照らしても理解することができず、本件は、本件発明1について、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないといわざるを得ない。
また、本件の請求項2?7に係る発明についても、同様である。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしていない。」

第5 取消理由通知(決定の予告)に対する当審の判断
本件訂正により、「発泡剤」について、「発泡剤は150℃以上180℃以下で分解されるものである」ことが特定され、150℃以上180℃以下で分解し、発泡されるものであることが明確に特定された。
したがって、上記取消理由は解消した。

第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、次のとおりである。
(1)特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)
本件発明1?7は、次のア及びイの点で、サポート要件(同法第36条第6項第1号)に違反する。
ア 熱発泡剤について
熱発泡剤として、有機発泡剤以外のものを用いた場合においても、本件発明の課題を達成することができ、所望の効果が得られることは何ら実証されていない。
イ 硬化剤について
硬化剤として、酸化亜鉛以外のものを用いた場合においても、本件発明の課題を達成することができ、所望の効果が得られることは何ら実証されていない。
(2)甲1を主たる引用例とする特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
本件発明1?4、6、7は、甲2(特開平6-256734号公報)を考慮した甲1(特開2005-29907号公報)の記載に基づき、当業者が容易想到し得たものであり、本件発明5は、甲2及び甲5(特開平7-48554号)を考慮した甲1の記載に基づき、当業者が容易想到し得たものであり、同法第29条第2項違反の取消理由(同法第113条第2号)を有する。
(3)甲3を主たる引用例とする特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
本件発明1?4、6、7は、甲4(特開2007-314584号公報)を考慮した甲3(特開平9-12989号公報)の記載に基づき、当業者が容易想到し得たものであり、本件発明5は、甲4及び甲5(特開平7-48554号)を考慮した甲3の記載に基づき、当業者が容易想到し得たものであり、同法第29条第2項違反の取消理由(同法第113条第2号)を有する。

2 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)について
申立人は、熱発泡剤及び硬化剤について、請求項の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないことについて、なんら、具体的な根拠を示していない。
ア そして、熱発泡剤として、有機発泡剤以外のものを用いた場合においても、熱によって発泡するものであれば、本件発明の課題を達成することができ、所望の効果が得られることは明らかである。
イ また、硬化剤として、酸化亜鉛以外のものを用いた場合においても、硬化剤として機能するものであれば、本件発明の課題を達成することができ、所望の効果が得られることは明らかである。
したがって、申立人の上記特許法第36条第6項第1号に関する主張は採用できない。

(2)甲1を主たる引用例とする特許法第29条第2項(同法第113条第2号)について
ア 甲1の記載
甲1には、「伸縮性不織布、並びにその製造方法、及びそれを用いた感圧接着シート」(発明の名称)について、次の記載がある。
(ア)「【0037】
創傷面保護材用感圧接着シート用粘着剤には、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などが使用されるが、それらの中で特に肌に対して刺激性が少ない粘着剤が使用するのが望ましい。
【0038】
本発明に使用される粘着剤は、上記した肌に対して刺激性の少ない性能以外に透湿性に優れた粘着剤である事が望ましい。即ち、粘着剤層の透湿性が不十分であれば、そのポリウレタンフィラメントからなる基材が有するところの通気性、透湿性が損なわれてしまう。
【0039】粘着剤層に通気性を付与する方法には多くの方法が有り、▲1▼接着剤自体に通気性のある材料を使用する。▲2▼気泡を多量に含む粘着剤を使用する。▲3▼気泡を発生する化合物を含む粘着剤を使用する。▲4▼機械的に粘着剤層に小さな穴を空ける方法などがあるが、本発明では何れの方法でも採用できる。
【0040】本発明では、粘着剤層を塗布した後の感圧接着テープの透湿度が1,500g/m^(2)/24H以上、更に望ましくは2,500g/m^(2)/24H以上有ることが望ましい。特に好ましくは3,300g/m^(2)/24H以上である。尚、その透湿度の上限は、8,000g/m^(2)/24H程度であり、これより大きい透湿度を有する感圧接着テープでは十分な耐水圧が得られなくなる。」
(イ)「【0044】
【実施例】
<物性測定方法>
1)撥水度測定JIS L 1092 スプレー試験法で測定。
【0045】
2)耐水圧測定JIS L 1092 A法で測定。
【0046】
3)透湿度測定JIS L 1099 A法で測定。」
(ウ)「【0050】
<実施例-1、2、3>
ソフトセグメントがポリヘキサンブチレンアジペート、ハードセグメントが4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと1,4-ブタンジオールからなるショアーA硬度が90の熱可塑性ポリウレタンペレット(ベースペレット)を重合した。又、このウレタンペレットに2軸混練機を使用して高級脂肪酸ビスアミド化合物の1種類であるエチレンビスオレイン酸アミド(以後EBOAと記載する、融点約116℃)を、ポリマー重量に対して13wt%練り込んマスターペレットを試作した。
【0051】
次いで、上記ベースペレットとマスターペレットを重量比で100対3.1の割合でチップブレンドし、次いでメルトブロー紡糸機を使用して、EBOAの含有量が0.4wt%になるポリウレタンフィラメントからなる伸縮性不織布を試作した。
【0052】
尚、この不織布の目付けは75g/m^(2)、平均繊維径が10μmで、ポリウレタンフィラメントはその接触部で自己接着していた。この伸縮性不織布を実施例-1とした。
【0053】
次いで、この実施例-1の伸縮性不織布を、柄は格子状、圧着部が25%で120℃に加熱したエンボスローラーとペーパーローラーの組み合わせからなる熱圧着加工機でエンボス加工した。このエンボス加工品を実施例-2とした。このエ ンボス加工品は、表面、裏面ともにエンボス柄の凹凸を有し、エンボスローラー側の熱圧着部分を拡大写真で評価すると、繊維の一部が偏平化し、又、一部がフィルム化していた。
【0054】
次いで、実施例-1の不織布を118℃の鏡面熱ローラーとゴムローラーの組み合わせからなるカレンダー加工機を使用して、熱圧着加工した。このカレンダー加工品を実施例-3とした。」
(エ)「【0078】
<実施例-5、比較例?6>
創傷面保護材用に使用されるところの透湿性を有するアクリル系粘着剤液を高速攪拌して多量の気泡を含ませた後、ポリエチレンシート引き離型紙の上に塗布して感圧接着剤層を形成させた。次いで実施例-2、比較例-2の伸縮性不織布の裏側(エンボス面の裏)に感圧接着剤層を加圧下で転写し、厚さ30μmの感圧接着剤層を有する感圧接着剤シート2種類を試作し、それぞれ実施例-5、及び比較例-6とした。
【0079】
この感圧接着剤塗布シートの粘着剤層を電子顕微鏡で観察したところ多数の小孔が観察された。また、この感圧接着シートの不織布側の撥水度、透湿度、並びに耐水圧を測定した結果は下表の通りであった。
【0080】
【表3】



イ 甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1の【0078】(上記ア(エ))に記載された「実施例-5」の「創傷面保護材用感圧接着シート」は、「実施例-2の伸縮性不織布」を備えるものであり、【0080】(同エ)の【表3】に、その撥水度は5級、透湿度は3500g/m^(2)/24H、耐水圧は340mm水圧であることが記載されている。
そこで、「実施例-2の伸縮性不織布」を、単に「特定の伸縮性不織布」と記載すると、上記【0078】の記載及び【表3】から、甲1には、上記「実施例-5」の「創傷面保護材用感圧接着シート」として、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「創傷面保護材用に使用されるところの透湿性を有するアクリル系粘着剤液を高速攪拌して多量の気泡を含ませた後、ポリエチレンシート引き離型紙の上に塗布して感圧接着剤層を形成させ、次いで、特定の伸縮性不織布の裏側(エンボス面の裏)に感圧接着剤層を加圧下で転写して作製された、厚さ30μmの感圧接着剤層を有する感圧接着剤シートであり、
JIS L 1092 スプレー試験法で測定された撥水度は5級、JIS L 1099 A法で測定された透湿度は3500g/m^(2)/24H、
JIS L 1092 A法で測定された耐水圧は340mm水圧である、感圧接着剤シート。」

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「特定の伸縮性不織布」、「感圧接着剤層」及び「感圧接着剤シート」は、本件発明1の「基材」、「粘着シート」及び「粘着テープ」にそれぞれ相当する。
そして、本件発明1の「水性アクリル系粘着剤組成物」と甲1発明の「アクリル系粘着剤液」とは、「アクリル系粘着剤組成物」である点で共通し、甲1発明の「アクリル系粘着剤液」には、「アクリル系樹脂」が含まれることは明らかである。
また、甲1発明は、「アクリル系粘着剤液」を「離型紙の上に塗布して感圧接着剤層を形成させ」て、「伸縮性不織布の裏側(エンボス面の裏)に感圧接着剤層を加圧下で転写し」たものであるから、「感圧接着剤層」は、液状の「アクリル系粘着剤液」ではなく、「アクリル系粘着剤液」が転写できる程度に硬化したものであり、本件発明1の「基材の一面上に備えられ」た「硬化物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「基材、及び前記基材の一面上に備えられ、アクリル系粘着剤組成物の硬化物を含む粘着シートを含み、前記アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系樹脂を含む 、粘着テープ。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1)
アクリル系粘着剤組成物について、本件発明1は、「水性」であることが規定されているのに対し、甲1発明のアクリル系粘着剤液は、そのような規定はされていない点。
(相違点2)
粘着シートの構造について、本件発明1は、「気孔を含む多孔性構造であ」ることが規定されているのに対し、甲1発明の感圧接着剤シートは、そのような規定はされていない点。
(相違点3)
粘着シートの透湿度について、本件発明1は、「温度40℃及び相対湿度20%の条件で3,000g/m^(2)・day以上5,000g/m^(2)・day以下である」ことが規定されているのに対し、甲1発明の感圧接着剤シートは、「JIS L 1099A法で測定された透湿度は3500g/m^(2)/24H」である点。
(相違点4)
アクリル系粘着剤組成物に含まれる添加剤について、本件発明1では、「熱発泡剤」を含み、「前記熱発泡剤は150℃以上180℃以下で分解されるものである」ことが規定されているのに、甲1発明は、熱発泡剤は含まない点。
(相違点5)
アクリル系粘着剤組成物に含まれる添加剤について、本件発明1では、「硬化剤を含む」ことが規定されているのに、甲1発明は、硬化剤は含まない点。

事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。
(相違点4について)
甲1の【0039】(上記ア(ア))には、粘着剤層に通気性を付与する方法の一つとして、気泡を発生する化合物を含む粘着剤を使用することが記載されている。
しかしながら、甲1の上記【0039】の「気泡を発生する化合物」によって気泡が生じる温度については甲1には記載がなく、「気泡を発生する化合物」についての具体的な例示もないのであるから、気泡が生じる温度については不明としかいうほかない。
これに対し、本件発明1では、粘着剤組成物に含まれる熱発泡剤が150℃以上180℃以下で分解されるものを用いることで、たとえば、塗布された粘着剤組成物に対して順次第1温度(0℃以上30℃以下)、第2温度(150℃以上200℃以下)、第3温度(90℃以上120℃以下)及び第4温度(40℃以上80℃以下)で発泡及び熱硬化を行い、熱発泡剤の分解を十分に引き起こして、アクリル系樹脂の損傷を最小化して多孔性構造を有する粘着シートを形成することができる(本件明細書【0065】?【0069】)という格別顕著な作用効果を奏するものであって、このような作用効果は、気泡が生じる温度が不明な甲1発明からは、当業者が予測し得るものではない。

なお、特開平6-256734号公報(甲2)の【0022】に、「本発明の架橋反応と同時に発泡を起こさせるという目的を達成するためには、加熱乾燥を行う必要があり、加熱温度としては50?150℃、好ましくは80?100℃である」ことが記載されているものの、同【0007】に、「架橋剤に過酸化アシル化合物を利用することで、特に発泡剤の配合を必要とせずに、該アシル化合物が分解してラジカルを発生することにより、通常の架橋性アクリル系粘着化合物もしくはゴム系粘着剤の架橋反応を引き起こすと同時に、該アシル化合物が分解した時点で発生する二酸化炭素が発泡剤の役割を果たす」と記載されるように、上記加熱温度は、架橋剤である過酸化アシル化合物の分解温度に関するものであって、発泡剤の発泡温度を規定するものでなく、しかも、上記加熱温度の範囲は、150℃以下の範囲であることから、熱発泡剤が150℃以上180℃以下で分解されるものであることを示唆するものであるとはいえない。
また、特開平9-12989号公報(甲3)の【0015】に、「上記加熱処理温度は、低くなると十分に通気化されず、また、高くなるとシート全体の厚さが不均一なものになりやすいため、好ましくは50?250℃、より好ましくは60?120℃である」ことが記載されているものの、同【0012】?【0013】に「上記粘着剤層は、上記粘着剤溶液を剥離シート上に塗布し乾燥することで得られるが・・・上記乾燥は、通常の排風オーブン中で行われるが、その際に粘着剤層中に1ppm以上の残留溶剤が存在することが好ましい。これは、積層後の加熱処理により残留溶剤が気化し、気泡を形成することにより、より効果的に粘着剤層が通気化されるからである。」と記載されるように、上記加熱処理温度は、残留溶剤を気化させるためのものであって、熱発泡剤の発泡感度を規定するものではなく、しかも、上記加熱温度の範囲は、60?120℃を最も好ましい温度範囲とするものであることから、熱発泡剤が150℃以上180℃以下で分解されるものであることを示唆するものであるとはいえない。

してみると、甲1発明において、「熱発泡剤」を含み、「前記熱発泡剤は150℃以上180℃以下で分解されるもの」とすることは当業者が容易に想到し得るものではなく、相違点1?3及び5について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2?7は甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではでない。

エ まとめ
以上のことから、申立人の甲1を主たる引用例とする特許法第29条第2項(同法第113条第2号)についての主張は採用することができない。

(3)甲3を主たる引用例とする特許法第29条第2項(同法第113条第2号)について
ア 甲3、甲4の記載(下線は、当審が付与した。)
(ア)甲3の記載
甲3には、「通気性粘着テープもしくはシートの製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として医療用等に好適に用いられる通気性粘着テープもしくはシートの製造方法に関する。」
b 「【0019】上記炭酸水素ナトリウムは、水溶性であるためアクリルエマルジョン溶液中に均一に溶解し、沈殿等の不均一化という問題がないので溶液時の貯蔵安定性が良好であり、更に加熱乾燥時に分解して二酸化炭素を発生するため、二酸化炭素の脱泡により貫通孔が形成される。」
c 「【0025】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施例について説明する。
(実施例1)固形分45重量%のアクリル系粘着剤(綜研化学社製、商品名「SK-1259」)100重量部に、固形分45重量%のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL45」)1重量部を均一に混合した粘着剤溶液を、剥離シートの離型処理面に塗工し、100℃の排風オーブン中で5分間乾燥することによって、厚さ30μmの粘着剤層を得た。
【0026】上記剥離シート上に形成された粘着剤層の粘着面と、坪量30gの不織布(国光製紙社製、商品名「ニューソフロン」)を貼り合わせて積層し、更に90℃のオーブン中で24時間加熱処理することによって粘着テープを得た。JIS P-8117に準拠して、得られた粘着テープの透気度を測定した結果、1.5sec/300mlであった。
【0027】(実施例2)固形分30重量%のアクリルエマルジョン型粘着剤(綜研化学社製、商品名「E-03H」)100重量部に、炭酸水素ナトリウム粉末を5重量部溶解したエマルジョン溶液を剥離シートの離型処理面に塗工し、100℃の排風オーブン中で5分間乾燥することによって、厚さ30μmの粘着剤層を得、次いで実施例1と同様の操作によって粘着テープを得た。また、得られた粘着テープの透気度を測定した結果、5.6sec/300mlであった。」

(イ)甲4の記載
甲4には、「粘着テープ」(発明の名称)について、次の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関し、詳しくは、皮膚に適用される医療用貼付製品、たとえば、救急絆創膏として好適に用いられる粘着テープに関する。」
b 「【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
不活性ガス雰囲気下で(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(A)としてのアクリル酸2エチルヘキシル100重量部と、官能基含有不飽和単量体(B)としての2-ヒドロキシエチルアクリレート(ホモポリマーのTg=-15℃)2.0重量部とを酢酸エチル中で共重合させて、Tg=-18℃、重量平均分子量(以下、「Mw」と記す)=50万のアクリル系共重合体を得たのち、さらに酢酸エチルを用いて粘度調整を行って固形分55%のアクリル系共重合体(アクリル酸エステル共重合体)溶液を得た。
得られた上記アクリル系共重合体溶液100重量部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートL-55E」)1.6重量部、とを混合して上質紙の表面にポリウレタンがラミネートされ、更にその面がシリコーン加工処理された離型紙上に、40?45μmの厚みになるように塗工し、ギアオーブンにて100℃10分間乾燥して粘着剤層を得た後、この粘着剤層上から基材としてのポリエステル樹脂系不織布(デュポン社製、商品名「ソンタラ#8010」、通気度0.1秒/300cm^(3) (空気))、を貼り合わせ、ロール状に巻取り、巻重体を得た。そして、この巻重体を加熱養生室に供給し、40℃、48時間養生し粘着テープを得た。
【0040】
(実施例2)官能基含有不飽和単量体(B)を2-ヒドロキシエチルアクリレート2.0重量部に代えて、アクリル酸プロピレングリコールモノエステル(ホモポリマーのTg=-24℃)1.0重量部とした以外は実施例1と同様の方法にてTg=-22℃、Mw=50万のアクリル系共重合体を得たのち、さらに酢酸エチルを用いて粘度調整を行って固形分40%のアクリル系共重合体溶液を得た。
そして、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例1と同様の方法で粘着テープを得た。
【0041】
(実施例3)
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(A)として、アクリル酸2エチルヘキシル100重量部に代えて、アクリル酸2エチルヘキシル80重量部、アクリル酸ブチル20重量部の混合物に変更した以外は実施例1と同様の方法にてTg=-12℃、Mw=40万のアクリル系共重合体を得たのち、さらに酢酸エチルを用いて粘度調整を行って固形分40%のアクリル系共重合体溶液を得た。
そして、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例1と同様の方法で粘着テープを得た。
【0042】
(実施例4)
上記実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液を得たのち、得られたアクリル系共重合体溶液を、高さが0.1mm、断面積が0.785mm^(2)の突起が100mm^(2)あたり、38個設けられたエンボスロールにより凹凸加工を施した離型紙に塗工した。その後実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0043】
(実施例5)
官能基含有不飽和単量体(B)を2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ホモポリマーのTg=55℃)とした以外は実施例1と同様の方法にてTg=12℃、Mw=50万のアクリル系共重合体を得たのち、さらに酢酸エチルを用いて粘度調整を行って固形分40%のアクリル系共重合体溶液を得た。
そして、このアクリル系共重合体溶液を用いて実施例1と同様の方法で粘着テープを得た。
(中略)
【0051】
上記実施例1?5および比較例1?7で得られた粘着テープについて、対BP(ベークライト板)接着力、対皮膚接着力、通気度、透湿度を調べ、その結果を表1に示した。
なお、対BP(ベークライト板)接着力、対皮膚接着力、通気度、透湿度は、以下のようにして調べた。
【0052】
(評価方法)
(1)対BP(ベークライト板)接着力
(中略)
(2)対皮膚接着力
(中略)
(3)通気度
通気性能については、JIS P 8117に準拠し、デンソメータ通気時間(300mL の空気が45mm^(2) の通気性粘着テープを通過する時間)を測定した。
(4)透湿度実施例1?3、比較例1?3で得られた粘着テープについて、JIS Z0208(カップ法)に準じて透湿度を測定した。
なお、接着力の測定に用いた測定機及び試験条件は下記のとおりである。
試験装置 荷重計付き引張試験機(ストログラフ)
・引張速度 300mm/min
・引張角度 180°、試料数 各3
・測定は23℃、65%RH(恒温恒湿)環境下で行った。
【0053】
【表1】



イ 甲3に記載された発明(甲3発明)
甲3の【0027】からみて、甲3には、実施例2として、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「固形分30重量%のアクリルエマルジョン型粘着剤(綜研化学社製、商品名「E-03H」)100重量部に、炭酸水素ナトリウム粉末を5重量部溶解したエマルジョン溶液を剥離シートの離型処理面に塗工し、100℃の排風オーブン中で5分間乾燥することによって、厚さ30μmの粘着剤層を得、次いで、剥離シート上に形成された粘着剤層の粘着面と、坪量30gの不織布(国光製紙社製、商品名「ニューソフロン」)を貼り合わせて積層し、更に90℃のオーブン中で24時間加熱処理することによって得られた粘着テープであって、
JIS P-8117に準拠して、粘着テープの透気度を測定した結果は、5.6sec/300mlである、粘着テープ」

ウ 本件発明1と甲3発明との対比・判断
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「坪量30gの不織布(国光製紙社製、商品名「ニューソフロン」)」、「粘着剤層」及び「粘着テープ」は、本件発明1の「基材」、「粘着シート」及び「粘着テープ」にそれぞれ相当する。
そして、本件発明1の「水性アクリル系粘着剤組成物」と甲3発明の「固形分30重量%のアクリルエマルジョン型粘着剤(綜研化学社製、商品名「E-03H」)100重量部に、炭酸水素ナトリウム粉末を5重量部溶解したエマルジョン溶液」とは、「水性アクリル系粘着剤組成物」である点で共通し、甲3発明の「固形分30重量%のアクリルエマルジョン型粘着剤」には、「アクリル系樹脂」が含まれることは明らかである。
また、甲3発明は、「固形分30重量%のアクリルエマルジョン型粘着剤(綜研化学社製、商品名「E-03H」)100重量部に、炭酸水素ナトリウム粉末を5重量部溶解したエマルジョン溶液」を「剥離シートの離型処理面に塗工し、100℃の排風オーブン中で5分間乾燥することによって、厚さ30μmの粘着剤層を得」たものであるから、「粘着剤層」は、液状の「エマルジョン溶液」ではなく、「エマルジョン溶液」が硬化したものであり、本件発明1の「基材の一面上に備えられ」た「硬化物」に相当する。
そして、甲3発明の「炭酸水素ナトリウム粉末」によって、「加熱乾燥時に分解して二酸化炭素を発生するため、二酸化炭素の脱泡により貫通孔が形成される」(【0019】)ものであるから、加熱によって発泡する熱発泡剤であるといえ、本件発明1の「添加剤」としての「熱発泡剤」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「基材、及び前記基材の一面上に備えられ、アクリル系粘着剤組成物の硬化物を含む粘着シートを含み、前記水性アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系樹脂及び添加剤を含み、
前記添加剤は、熱発泡剤を含む粘着テープ。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点6)
粘着シートの構造について、本件発明1は、「気孔を含む多孔性構造であ」ることが規定されているのに対し、甲3発明の粘着テープは、そのような規定はされていない点。
(相違点7)
粘着シートの透湿度について、本件発明1は、「温度40℃及び相対湿度20%の条件で3,000g/m^(2)・day以上5,000g/m^(2)・day以下である」ことが規定されているのに対し、甲3発明の粘着テープの透湿度は不明である点。
(相違点8)
アクリル系粘着剤組成物に含まれる添加剤である「熱発泡剤」について、本件発明1では、「前記熱発泡剤は150℃以上180℃以下で分解されるものである」ことが規定されているのに、甲3発明のエマルジョン溶液に溶解された「炭酸水素ナトリウム」は、どのような温度で発泡されるものであるかは、不明な点。
(相違点9)
アクリル系粘着剤組成物に含まれる添加剤について、本件発明1では、「硬化剤を含む」ことが規定されているのに、甲3発明のエマルジョン溶液は硬化剤を含まない点。

ここで、事案に鑑み、まず、相違点7について検討する。
甲3発明では、「JIS P-8117に準拠して、粘着テープの透気度を測定した結果は、5.6sec/300ml」である点が規定されているものの、この透気度の値は、一定の体積の空気が試験片を透過するのに必要な時間に基づくものであって、本件発明1で規定される透湿度とは異なるものである。そして、甲3発明において、相対湿度は不明であるから、透気度に基づいて透湿度を算出することはできず、甲3発明の粘着シートの透湿度は、本件発明で規定される透湿度の範囲のものであるかどうかは不明としかいうほかない。
また、甲4には、特定の粘着テープについて、透湿性(g/m^(2)・24hr)と通気性(秒・300mL)が測定されたものが【0053】【表1】(上記ア(イ)b)に記載されているので念のために参照すると、そもそも、甲3発明の粘着テープの粘着剤層と甲4に記載された粘着テープの粘着層の材質は異なり、甲4の記載から甲3の粘着テープの透湿性を直ちに推定することは困難であるところ、仮に、甲3発明の透気度と甲4の通気性が等価であり、本件発明1の透湿度と甲4の透湿性とが等価なものを指すとしても、甲3発明の透気度「5.6sec/300ml」に相当する粘着テープは当該表1には示されておらず、その数値が甲3発明に最も近い実施例3(3.6秒・300mL)は、その透湿性は2610(g/m^(2)・24hr)であって、本件発明1の透湿度の範囲内のものではない。さらに、実施例1、2、4及び5をみても、粘着テープの透湿性と通気性との相関は見出すことができない。
そうすると、甲4の記載を参照したとしても、甲3発明の粘着シートの透湿度が本件発明1で規定される透湿度の範囲のものであるとはいえない。

そして、甲3発明の粘着シートの透湿度を調整するための手段は当業者にとって明らかではなく、当該透湿度を調整する動機付けもないことから、甲3発明の粘着テープを、「温度40℃及び相対湿度20%の条件で3,000g/m^(2)・day以上5,000g/m^(2)・day以下」とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない
また、甲4の実施例4には、「温度40℃及び相対湿度20%の条件で3,000g/m^(2)・day以上5,000g/m^(2)・day以下」の粘着シートが示されているとしても、甲4には、実施例として、本件発明1には含まれない透湿度のものが実施例1?3、5として示されており、甲4に記載されたものの中から、とりわけ本件発明1の範囲のものである実施例4のものを選択する動機付けは見当たらない。
したがって、上記相違点7に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

これに対し、本件発明1は、上記相違点7に係る発明特定事項を備えることで、優れた透湿性を有し(本件明細書【0013】)、医療用として用いられる場合、汗の排出が容易で皮膚の爛れを予防できる(本件明細書【0014】)という、甲3発明からは予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。

よって、本件発明1は、上記相違点6、8及び9について検討するまでもなく、甲4を考慮した甲3の記載に基づき、当業者が容易想到し得たものであるとすることはできず、申立人の主張は採用できない。

(イ)本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2?7は、甲4を考慮した甲3の記載に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

エ まとめ
以上のことから、申立人の甲3を主たる引用例とする特許法第29条第2項(同法第113条第2号)についての主張は採用することができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。



 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、及び
前記基材の一面上に備えられ、水性アクリル系粘着剤組成物の硬化物を含む粘着シートを含み、
前記粘着シートは気孔を含む多孔性構造であり、
透湿度が温度40℃及び相対湿度20%の条件で3,000g/m^(2)・day以上5,000g/m^(2)・day以下である粘着テープあって、
前記水性アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系樹脂及び添加剤を含み、
前記添加剤は、熱発泡剤及び硬化剤を含み、
前記熱発泡剤は150℃以上180℃以下で分解されるものである、粘着テープ。
【請求項2】
前記気孔の大きさは0.5μm以上200μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着シートの厚さは10μm以上100μm以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着シートの気孔の面積比率は10cm×10cmの単位面積に対して10%以上60%以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記添加剤は、界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体及び極性官能基含有単量体の重合体である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記極性官能基含有単量体の含量は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体100重量部に対して0.7重量部以上2重量部以下である、請求項6に記載の粘着テープ。
【請求項8】
(a)離型フィルム上に水性アクリル系粘着剤組成物を塗布するステップ、
(b)前記塗布された粘着剤組成物に対して順次第1温度(T1)、第2温度(T2)、第3温度(T3)及び第4温度(T4)で発泡及び熱硬化を行って前記離型フィルム上に粘着シートを形成するステップ、
(c)前記粘着シート上に基材を貼り付けるステップ、
(d)前記(c)ステップの結果物を熟成するステップ、及び
(e)前記熟成するステップ後に前記離型フィルムを除去し、前記粘着シートが備えられた基材を巻取りするステップを含む粘着テープの製造方法であって、
前記水性アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系樹脂及び添加剤を含み、
前記添加剤は、熱発泡剤及び硬化剤を含み、
前記熱発泡剤は有機発泡剤であり、前記硬化剤は酸化亜鉛であり、
前記第1温度は0℃以上30℃以下であり、前記第2温度は150℃以上200℃以下であり、前記第3温度は90℃以上120℃以下であり、前記第4温度は40℃以上80℃以下である、粘着テープの製造方法。
【請求項9】
前記粘着テープの製造方法は、前記(e)ステップの結果物を巻き出すステップをさらに含む、請求項8に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項10】
前記熟成するステップは40℃以上60℃以下の温度で行われる、請求項8に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項11】
前記熟成するステップは20時間以上30時間以下の時間の間行われる、請求項8に記載の粘着テープの製造方法。
【請求項12】
前記熱発泡剤は、アゾジカーボンアミド、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、及びナトリウムビカーボネートからなる群より選択された少なくとも一つである、請求項8に記載の粘着テープの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-05-12 
出願番号 特願2017-555517(P2017-555517)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C09J)
P 1 652・ 536- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 澤村 茂実  
特許庁審判長 天野 斉
特許庁審判官 川端 修
蔵野 雅昭
登録日 2019-03-15 
登録番号 特許第6494796号(P6494796)
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 粘着テープ及びその製造方法  
代理人 渡部 崇  
代理人 渡部 崇  
代理人 実広 信哉  
代理人 実広 信哉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ