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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1376684
異議申立番号 異議2020-700282  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-21 
確定日 2021-05-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6598868号発明「組成物、硬化膜、パターン、パターンの製造方法、光学センサー、及び撮像素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6598868号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕について訂正することを認める。 特許第6598868号の請求項4、10?12に係る特許に対する申立てを却下する。 特許第6598868号の請求項1?3、5?9、13?18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6598868号(請求項の数18。以下、「本件特許」という。)は、平成28年9月8日(優先権主張:平成27年9月29日、平成27年12月2日、日本国)を国際出願日とする特許出願(特願2017-543067号)に係るものであって、令和元年10月11日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和元年10月30日である。)。
その後、令和2年4月21日に、本件特許の請求項1?18に係る特許に対して、特許異議申立人である特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

(1)特許異議申立以降の経緯
令和2年 4月21日 特許異議申立書
同年 9月28日付け 取消理由通知書
同年11月30日 意見書・訂正請求書(特許権者)
令和3年 1月 7日 通知書(申立人あて)

なお、申立人に対して訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。

(2)証拠方法
ア 特許異議申立書に添付して提出された証拠
申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。

・甲第1号証:国際公開第2015/12228号
・甲第2号証:国際公開第2014/126013号
・甲第3号証:特開2015-34961号公報
・甲第4号証:特開2014-177613号公報
・甲第5号証:特開2014-177614号公報

イ 令和2年9月28日付け取消理由通知書で引用された証拠
甲第1号証?甲第5号証のほか、令和2年9月28日付け取消理由通知書で引用された証拠は、以下のとおりである。

・引用文献A:国際公開第2014/024884号
・引用文献B:特開2013-76821号公報
・引用文献C:特開2015-121643号公報
・引用文献D:国際公開第2014/126033号
・引用文献E:特開2014-102391号公報
・引用文献F:特開2015-124348号公報
・引用文献G:特開2013-200450号公報


第2 訂正の適否についての判断
令和2年11月30日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。
(以下、訂正事項をまとめて「本件訂正」という。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。)

1 訂正の内容
(1)各訂正事項について
ア 訂正事項1
訂正前の請求項1に、
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、及び色材を含有する組成物であって、
前記色材が有彩色着色剤および有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上である、組成物。」
と記載されているのを
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下であり、
光電変換素子基板上の塗布に供される、組成物。」
に訂正する。

イ 訂正事項2
訂正前の請求項2に、
「シランカップリング剤を含み、
前記シランカップリング剤の添加量が、前記組成物の全固形分中、0.01質量%?15.0質量%である請求項1に記載の組成物。」
と記載されているのを
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下であり、
膜厚2μm以下の硬化膜を形成するための、組成物。」
に訂正する。

ウ 訂正事項3
訂正前の請求項4を削除する。

エ 訂正事項4
訂正前の請求項5に、
「(D)の粒子が二酸化チタンである請求項1?4のいずれか1項に記載の組成物。」
と記載されているのを
「(D)の粒子が二酸化チタンである請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物。」
に訂正する。

オ 訂正事項5
訂正前の請求項6に、
「(D)の粒子の平均粒径が150nm以上である、請求項1?5のいずれか1項に記載の組成物。」
と記載されているのを
「(D)の粒子の平均粒径が150nm以上である、請求項1、2、3、及び5のいずれか1項に記載の組成物。」
に訂正する。

カ 訂正事項6
訂正前の請求項7に、
「さらに(F)着色防止剤を含む請求項1?6のいずれか1項に記載の組成物。」
と記載されているのを
「さらに(F)着色防止剤を含む請求項1、2、3、5、及び6のいずれか1項に記載の組成物。」
に訂正する。

キ 訂正事項7
訂正前の請求項10を削除する。

ク 訂正事項8
訂正前の請求項11を削除する。

ケ 訂正事項9
訂正前の請求項12を削除する。

コ 訂正事項10
訂正前の請求項13に、
「前記(C)重合開始剤が、オキシム化合物である、請求項1?12のいずれか1項に記載の組成物。」
と記載されているのを
「前記(C)重合開始剤が、オキシム化合物である、請求項1、2、3、5、6、7、8、及び9のいずれか1項に記載の組成物。」
に訂正する。

サ 訂正事項11
訂正前の請求項14に、
「請求項1?13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜。」
と記載されているのを
「請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜。」
に訂正する。

シ 訂正事項12
訂正前の請求項15に、
「基板上に、請求項1?13のいずれか1項に記載の組成物を塗布する工程と、
マスクを介して露光する工程と、露光後の膜を現像してパターンを形成する工程と、を有するパターンの製造方法。」
と記載されているのを
「基板上に、請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を塗布する工程と、
マスクを介して露光する工程と、露光後の膜を現像してパターンを形成する工程と、を有するパターンの製造方法。」
に訂正する。

ス 訂正事項13
訂正間の請求項17に、
「請求項1?13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜を用いた光学センサー。」
と記載されているのを
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である組成物、を用いて形成された硬化膜を用いた光学センサー。」
に訂正する。

セ 訂正事項14
訂正前の請求項18に、
「請求項1?13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜を用いた撮像素子。」と記載されているのを
「請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜を用いた撮像素子。」
に訂正する。

(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項2?18はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件訂正前の請求項1?18は一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における「組成物」について、訂正前の「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(D)平均粒径50nm以上の粒子」、「(E)溶剤」、「色材」に加えて、「分散剤」及び「シランカップリング剤」を含有するものと特定し、「色材」及び「(E)溶剤」についてその内容を特定し、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「分散剤」のそれぞれについてその内容及び含有量を特定するとともに、「シランカップリング剤」の含有量及び「組成物」の「固形分の濃度」を特定し、さらに、「光電変換素子基板上の塗布に供される」と用途を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正前の請求項1における「組成物」について、訂正前の「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(D)平均粒径50nm以上の粒子」、「(E)溶剤」、「色材」に加えて、「分散剤」、「シランカップリング剤」を含有するものと特定する訂正は、訂正前の請求項2、4に「シランカップリング剤を含み」と記載され、請求項10に「さらに分散剤を含み」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
「色材」について、訂正前の「有彩色着色剤」について、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり」とし、「組成物」について「青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない」と特定する訂正は、本件特許明細書等の段落【0226】の「本発明において、有彩色着色剤は、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤及びオレンジ色着色剤から選ばれる着色剤であることが好ましい」と記載されており、このうち「青色着色剤及び紫色着色剤」については「いずれも含まない」と所謂「除くクレーム」とするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
「(A)バインダー」について「水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり」と特定する訂正は、本件特許明細書等の段落【0011】の「バインダーとしては・・・、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される」との記載、段落【0038】の「バインダーの含有量は、組成物の全固形分に対して、1質量%以上90質量%以下であることが好ましく」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
「(B)モノマー」について「末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり」と特定する訂正は、本件特許明細書等の段落【0039】の「(B)モノマーとして、・・・、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を使用することがより好ましい」との記載、段落【0074】の「組成物の全固形分に対して、(B)モノマーの含有量は、1質量%?50質量%の範囲であることが好ましく」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
「(C)重合開始剤」について「光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり」と特定する訂正は、本件特許明細書等の段落【0075】の「重合開始剤としては、光重合開始剤であることが好ましい」との記載、段落【0094】の「光重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対し0.1?50質量%が好ましく」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
「(E)溶剤」について「有機溶剤であり」と特定する訂正は、本件特許明細書等の段落【0223】の「本発明の組成物は溶剤を含有する。溶剤は種々の有機溶剤を用いて構成することができる」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
「分散剤」について、「分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり」と特定する訂正は、本件特許明細書等の段落【0101】の「本発明の組成物は、組成物中での粒子(D)の分散性を向上させる観点から分散剤を含有することが好ましく、吸着部位を有する高分子分散剤を含有することがより好ましい。・・・本発明における吸着部位としては、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基等が挙げられる」との記載、段落【0222】の「本発明の組成物の全固形分に対する分散剤の含有量は、分散性の観点から、1?40質量%の範囲が好ましく」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
「シランカップリング剤」の含有量について「組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり」とする訂正は、本件特許明細書等の段落【0247】の「シランカップリング剤を用いる場合の添加量としては、組成物の全固形分中、0.01質量%?15.0質量%の範囲であることが好ましく」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
「組成物」の「固形分の濃度」について「60質量%以下であり」とする訂正は、本件特許明細書等の段落【0223】の「本発明の組成物における固形分の濃度は、60質量%以下であることが好ましく」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
また、「組成物」について「光電変換素子基板上の塗布に供される」と用途を特定する訂正は、本件明細書の段落【0287】の「膜形成工程では、基板上に、本発明の組成物を塗布して膜を形成する。基板としては、例えば、・・・、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる」との記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
以上のとおり、訂正事項1による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえ、新規事項の追加には該当しない。
さらに、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項2において、本件訂正前の請求項1を引用していたものを、これを書き下して独立形式に改めるとともに、訂正事項1と同様に、「組成物」について、訂正前の「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(D)平均粒径50nm以上の粒子」、「(E)溶剤」、「色材」に加えて、「分散剤」、「シランカップリング剤」を含有するものと特定し、「色材」及び「(E)溶剤」についてその内容を特定し、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「分散剤」のそれぞれについてその内容及び含有量を特定し、「シランカップリング剤」の含有量及び「組成物」の「固形分の濃度」を特定し、さらに、「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するための」と「組成物」の用途を特定するものであるから、他の請求項である請求項1を引用していた記載を請求項1を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2の、「組成物」について訂正前の「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(D)平均粒径50nm以上の粒子」、「(E)溶剤」、「色材」に加えて「分散剤」、「シランカップリング剤」を含有するものと特定し、「色材」及び「(E)溶剤」についてその内容を特定し、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「分散剤」のそれぞれについてその内容及び含有量を特定し、「シランカップリング剤」の含有量及び「組成物」の「固形分の濃度」を特定する訂正は、上記(1)イでの検討のとおり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
また、「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するための」と「組成物」の用途を特定する訂正は、本件明細書等の段落【0285】に「硬化膜の膜厚としては特に限定はなく、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、乾燥後の膜厚で、0.2μm以上50μm以下が好ましく、・・・、0.7μm以上20μm以下が特に好ましい」と記載され、段落【0308】?【0330】(特に【0330】の【表3】を参照)の「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤」を含有する実施例24、25、27、29、30?32の「膜厚」が「2μm」であることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
以上のとおり、訂正事項2による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえ、新規事項の追加には該当しない。
さらに、訂正事項2による訂正は、他の請求項である請求項1を引用していた記載を請求項1を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(3)訂正事項13について
ア 訂正の目的
訂正事項13による訂正は、本件訂正前の請求項17において、本件訂正前の請求項1を引用していたものを、これを書き下して独立形式に改めるとともに、訂正事項1と同様に、「組成物」について訂正前の「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(D)平均粒径50nm以上の粒子」、「(E)溶剤」、「色材」に加えて、「分散剤」、「シランカップリング剤」を含有するものと特定し、「色材」及び「(E)溶剤」についてその内容を特定し、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「分散剤」のそれぞれについてその内容及び含有量を特定し、「シランカップリング剤」の含有量及び「組成物」の「固形分の濃度」を特定するものであるから、他の請求項である請求項1を引用していた記載を請求項1を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項13の、「組成物」について訂正前の「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(D)平均粒径50nm以上の粒子」、「(E)溶剤」、「色材」に加えて、「分散剤」、「シランカップリング剤」を含有するものと特定し、「色材」及び「(E)溶剤」についてその内容を特定し、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「分散剤」のそれぞれについてその内容及び含有量を特定し、「シランカップリング剤」の含有量及び「組成物」の「固形分の濃度」を特定する訂正は、上記(1)イでの検討のとおり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
また、訂正事項13による訂正は、他の請求項である請求項1を引用していた記載を請求項1を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(2)訂正事項3、7?9について
ア 訂正の目的
訂正事項3、7?9は、それぞれ請求項4、10?12を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項3、7?9は、請求項の削除を目的とするものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(3)訂正事項4?6、10?12、14について
ア 訂正の目的
訂正事項4?6、10?12、14は、上記の訂正事項3、7?9による請求項の削除に合わせて,引用請求項の一部を削除するものであるから、 他の請求項を引用していた記載を当該請求項を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項4?6、10?12、14は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1?14による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。


第3 特許請求の範囲の記載
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6598868号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?18のとおりのものである(以下、請求項1?18に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明18」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件訂正後の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件訂正後の特許明細書等」という。本件の願書に添付した明細書については、訂正の対象ではなく、本件訂正により訂正されていないので、本件訂正の前後にかかわらず「本件明細書」という。)。

「【請求項1】
(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下であり、
光電変換素子基板上の塗布に供される、組成物。
【請求項2】
(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下であり、
膜厚2μm以下の硬化膜を形成するための、組成物。
【請求項3】
固形分の濃度が30質量%以下である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(D)の粒子が二酸化チタンである請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(D)の粒子の平均粒径が150nm以上である、請求項1、2、3、及び5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに(F)着色防止剤を含む請求項1、2、3、5、及び6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記(F)着色防止剤がフェノール化合物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記(F)着色防止剤がフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するフェノール化合物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
前記(C)重合開始剤が、オキシム化合物である、請求項1、2、3、5、6、7、8、及び9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜。
【請求項15】
基板上に、請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を塗布する工程と、
マスクを介して露光する工程と、露光後の膜を現像してパターンを形成する工程と、を有するパターンの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法により製造されたパターン。
【請求項17】
(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である組成物、を用いて形成された硬化膜を用いた光学センサー。
【請求項18】
請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜を用いた撮像素子。」


第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)取消理由A(新規性)
本件訂正前の請求項1?2、5?9、14?16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?2、5?9、14?16に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2)取消理由B(進歩性)
本件訂正前の請求項1?16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び本件特許に係る出願の優先日当時に知られた技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「取消理由B-1」という。)。
また、本件訂正前の請求項1?18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第3号証に記載された発明及び本件特許に係る出願の優先日当時に知られた技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「取消理由B-2」という。)。
よって、本件訂正前の請求項1?18に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(3)取消理由C(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?18の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の「第6 当審の判断」「1 取消理由について」「(3)取消理由Cについて」「(ア)取消理由C」に記載した点で、本件訂正前の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1?18に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。



2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1?2、5?16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1?2、5?16に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1?18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第3?5号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由2-1」という。)。
また、本件訂正前の請求項1?18に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明及び甲第3?5号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下「申立理由2-2」という。)。
よって、本件訂正前の請求項1?18に係る発明の特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。


第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(本a)「【0001】
本発明は、組成物、これを用いた硬化膜、パターン、パターンの製造方法、光学センサー、及び撮像素子に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、面内の均一性が高く、可視域の透過率が平坦であり、耐性、リソ性、保存安定性、密着性、再分散性、塗布均一性に優れた硬化膜を形成し得る組成物、硬化膜、パターン、パターンの製造方法、光学センサー、及び撮像素子を提供する。
・・・
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、面内の均一性が高く、可視域の透過率が平坦であり、耐性、リソ性、保存安定性、密着性、再分散性、塗布均一性に優れた硬化膜を形成し得る組成物、硬化膜、パターン、パターンの製造方法、光学センサー、及び撮像素子を提供することができる。
・・・
【0009】
<組成物(感光性樹脂組成物)>
本発明の組成物は(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、及び(E)溶剤を含有する。これにより粒子の散乱に由来する白色の外観を有する。
【0010】
本発明の組成物は各種光学センサーの外観調整用に用いることもできる。この場合、光学センサーの機能を果たす為に400nm?700nmの範囲の最低透過率は1%以上が好ましく、5%以上がさらに好ましく、10%以上が特に好ましい。
また、外観調整用という観点から白色の色味を保つ為に、400nm?700nmの範囲の平均透過率は70%以下が好ましく、60%以下がさらに好ましく、50%以下が特に好ましい。」

(本b)「【0011】
[(A)バインダー]
本発明の組成物は、皮膜特性向上などの観点から、バインダーを含有する。
バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような線状有機ポリマーとしては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。・・・このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、・・・すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを単独あるいは共重合させた樹脂、酸無水物を有するモノマーを単独あるいは共重合させ酸無水物ユニットを加水分解若しくはハーフエステル化若しくはハーフアミド化させた樹脂、エポキシ樹脂を不飽和モノカルボン酸及び酸無水物で変性させたエポキシアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4-カルボキシルスチレン等があげられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。・・・本発明の組成物が有するバインダーは、アルカリ現像液に可溶であることが好ましい。
・・・
【0038】
本発明の組成物において、バインダーは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダーの含有量は、組成物の全固形分に対して、1質量%以上90質量%以下であることが好ましく、5質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上70質量%以下であることが特に好ましい。」

(本c)「【0039】
[(B)モノマー]
(B)モノマーとして、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物を使用することが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を使用することがより好ましい。このような化合物は当該技術分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。
【0040】
また、(B)モノマーとしては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、・・・;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、・・・及びこれらの混合物を挙げることができ、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
・・・
【0044】
中でも、モノマーとしては、・・・、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬株式会社製)が好ましく、ペンタエリスリトールテトラアクリレートがより好ましい。
・・・
【0074】
組成物の全固形分に対して、(B)モノマーの含有量は、1質量%?50質量%の範囲であることが好ましく、3質量%?40質量%の範囲であることがより好ましく、5質量%?30質量%の範囲であることが更に好ましい。
この範囲内であると、着色を防ぎ、かつ硬化性が良好で好ましい。」

(本d)「【0075】
[(C)重合開始剤]
本発明の組成物は、(C)重合開始剤を含有する。
重合開始剤としては、モノマーの重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができる。重合開始剤としては、光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
・・・
【0094】
光重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対し0.1?50質量%が好ましく、より好ましくは0.5?30質量%であり、さらに好ましくは1?20質量%である。この範囲で、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本発明の組成物は、光重合開始剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。」

(本e)「【0095】
[(D)平均粒径50nm以上の粒子]
本発明における粒子は高い屈折率を有し、光を散乱するものが好ましい。光を散乱する粒子であれば特に制限はないが、金属粒子が好ましく、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムがさらに好ましく、二酸化チタン粒子が特に好ましい。
・・・
本発明における二酸化チタン粒子は、平均粒径50nm以上であれば特に制限はなく、例えば、市販の二酸化チタン粒子から適宜選択して用いることができる。
二酸化チタン粒子の平均粒径(数平均粒子径)は光を散乱して白色に見せるという点で、平均粒径が50nm以上のものが好ましく、100nm以上のものがさらに好ましく、150nm以上のものが特に好ましい。二酸化チタン粒子の平均粒径が50nm未満の場合には、反射率が低下する場合がある。
二酸化チタン粒子の平均粒径の上限としては特に制限はなく、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。
・・・
【0100】
本発明の組成物における二酸化チタン粒子の含有量としては、組成物全固形分に対して1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。
含有量の上限としては特に制限はなく、組成物全固形分に対して70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが最も好ましい。さらに、光学センサーや、光学部材用の材料として用いる場合には40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。」

(本f)「【0101】
[分散剤]
本発明の組成物は、組成物中での粒子(D)の分散性を向上させる観点から分散剤を含有することが好ましく、吸着部位を有する高分子分散剤を含有することがより好ましい。
本発明において、粒子(D)に対する吸着能を有する部位を、適宜、「吸着部位」と総称する。
本発明における吸着部位としては、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基等が挙げられる。
・・・
【0222】
本発明の組成物の全固形分に対する分散剤の含有量は、分散性の観点から、1?40質量%の範囲が好ましく、1.3?30質量%の範囲がより好ましく、1.5?20質量%の範囲が更に好ましく、2?10質量%の範囲が特に好ましく、2?6質量%の範囲が最も好ましい。
また、本発明の組成物が分散剤を含有する場合、分散剤が多すぎると剥がれの原因になることもあり得るため、組成物中、分散剤の質量は、粒子(D)の質量よりも少ないことが好ましく、分散剤と粒子(D)の組成物中の質量比は、分散剤/粒子(D)=0.01?0.8であることがより好ましく、分散剤/粒子(D)=0.03?0.5であることが更に好ましく、分散剤/粒子(D)=0.05?0.3であることが特に好ましい。
さらに、バインダー(A)と分散剤との総含有量(ポリマー含有量と称することもある)が解像性へ大きく寄与しており、ポリマー含有量が組成物の全固形分中10?80質量%の範囲が好ましく、20?80質量%の範囲がより好ましく、30?75質量%の範囲が特に好ましい。この場合、バインダーとしては酸基を有するバインダーが好ましく、分散剤としては酸性基及び/又は塩基性基を有する分散剤が好ましい。」

(本g)「【0223】
[(E)溶剤]
本発明の組成物は溶剤を含有する。溶剤は種々の有機溶剤を用いて構成することができる。
ここで使用できる有機溶剤としては、・・・、シクロヘキサノン、・・・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、・・・などがある。
これらの有機溶剤は、単独あるいは混合して使用することができる。本発明の組成物における固形分の濃度は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。さらに、塗布均一性の観点から、30質量%以下が最も好ましい。」

(本h)「【0225】
本発明の組成物は、更に、必要に応じて、以下に詳述する任意成分を更に含有してもよい。
本発明の組成物は、色材を含有することができ、色材としては有彩色着色剤または有機系黒色着色剤などが挙げられる。
【0226】
(有彩色着色剤)
本発明において、有彩色着色剤は、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤及びオレンジ色着色剤から選ばれる着色剤であることが好ましい。
【0227】
本発明において、有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。好ましくは顔料である。
・・・
【0236】
[青色顔料ないしは紫色顔料]
本発明の組成物により形成される硬化膜の耐着色性を向上させる観点から、本発明の組成物に青色顔料ないしは紫色顔料を含有させることができる。
・・・
【0239】
なお、組成物は、色材として、黒色顔料を含有してもよい。
黒色顔料としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイト等が挙げられ、カーボンブラック、チタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を含有する黒色粒子であり、低次酸化チタンや酸窒化チタンが好ましい。
・・・
【0243】
色材の添加量としては、平均粒径50nm以上の粒子と色材との合計を100質量部とした場合に、上限としては50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましく、5質量部以下が特に好ましい。上記の範囲内であれば組成物の分散安定性に影響を及ぼさずに、色調整としての機能を適切に果たすことができる。下限としては0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。
上記の範囲内であれば添加量が少なくなりすぎることがないため性能が安定する。」

(本i)「【0244】
[シランカップリング剤]
本発明の組成物には、更なる基板との密着性向上の観点から、シランカップリング剤を使用することができる。
・・・
【0247】
シランカップリング剤を用いる場合の添加量としては、組成物の全固形分中、0.01質量%?15.0質量%の範囲であることが好ましく、0.05質量%?10.0質量%がより好ましい。本発明の組成物において、シランカップリング剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。」

(本j)「【0248】
[(F)着色防止剤]
本発明の組成物は着色防止剤を含有することが好ましい。
本発明における着色防止剤として、本願記載の重合禁止剤、フェノール化合物、及び酸化防止剤として知られる亜リン酸エステル化合物又はチオエーテル化合物であることが好ましく、分子量500以上であるフェノール化合物、及び分子量500以上である亜リン酸エステル化合物又はチオエーテル化合物であることがより好ましい。これらは2種以上を混合して使用してもよい。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。・・・
・・・
【0250】
・・・
組成物中における着色防止剤の含有量は、固形分換算で、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
また着色防止剤は2種以上を混合して使用しても良い。
【0251】
[増感剤]
本発明の組成物は、(C)重合開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。
・・・
【0253】
[共増感剤]
本発明の組成物は、更に共増感剤を含有することも好ましい。
本発明において共増感剤は、(C)重合開始剤や増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、あるいは、酸素による(B)モノマーの重合阻害を抑制する等の作用を有する。
・・・
【0254】
[重合禁止剤]
本発明においては、組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な重合を阻止するために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
・・・
【0271】
[界面活性剤]
本発明の組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
・・・
【0278】
[その他の添加剤]
更に、組成物に対しては、硬化皮膜の物性を改良するために可塑剤や感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
・・・
【0279】
[紫外線吸収剤]
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤としては、共役ジエン系化合物である下記一般式(I)で表される化合物が特に好ましい。」

(本k)「【0284】
<硬化膜>
本発明は上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、面内の均一性が高く、可視域の透過率が平坦であり、耐性、リソ性、保存安定性、密着性、再分散性、塗布均一性に優れた硬化膜を形成し得ることから、各種光学センサーや、光学部材等の外観調整材として好適に使用することができる。
すなわち、本発明の組成物は、硬化膜形成用であることが好ましい。
また、本発明は、本発明の組成物を用いて形成された硬化膜にも関する。
[硬化膜の製造方法]
本発明の硬化膜の製造方法としては、前述の組成物を基板上にスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、バー塗布法等で塗布する工程、続く第一の加熱工程、及び更に続いてより高い温度での第二の加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を有する。
・・・
【0285】
硬化膜の膜厚としては特に限定はなく、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、乾燥後の膜厚で、0.2μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上30μm以下がより好ましく、0.7μm以上20μm以下が特に好ましい。
【0286】
<パターン及びその製造方法>
以下、本発明のパターンについて、その製造方法を通じて詳述する。
本発明のパターンの製造方法は、基板上に、本発明の組成物を塗布して膜を形成する工程と、膜をマスクを介して露光する工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の膜を現像してパターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)とを有する。」

(本l)「【実施例】
【0291】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
・・・
【0292】
<実施例1>
[二酸化チタン分散液1の調製]
下記組成の混合液に対し、循環型分散装置(ビーズミル)として、寿工業株式会社製ウルトラアペックスミルを用いて、以下のようにして分散処理を行い、二酸化チタン分散液を得た。
?組成?
・二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)(純度90%以上): 272.57部
・分散剤(SOLSPERSE36000(リン酸基を有する分散樹脂))(30質量%PGMEA溶液): 136.29部
・プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA): 241.14部
【0293】
また分散装置は以下の条件で運転した。
・・・
【0294】
分散開始後、30分間隔で平均粒子径の測定を行った。
平均粒子径は分散時間とともに減少したが、次第にその変化量が少なくなった。粒度分布におけるd50が250nm未満、d90が350nm未満となった時点で分散を終了した。なお、この分散液中の二酸化チタン粒子の平均粒径は253nmであった。この測定は、日機装株式会社製マイクロトラックUPA-EX150を用いて得られた数平均粒子径のこととする。
【0295】
[二酸化チタン分散液2の調製]
組成及び分散処理する混合液量を下記のように変更する以外は、二酸化チタン分散液1の調製と同様にして、分散液を調製した。なお、二酸化チタン分散液2中の二酸化チタン粒子の平均粒径は253nmであった。
?組成?
・二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)(純度90%以上): 195.91部
・分散剤(SOLSPERSE36000(リン酸基を有する分散樹脂))(30質量%PGMEA溶液): 391.82部
・プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA): 62.27部
・分散処理する混合液量:0.65kg
【0296】
上記で得られた二酸化チタン分散液1を用いて、以下の組成となるように各成分を混合して実施例1の組成物を得た。
【0297】
?組成物の組成?
・上記で調製した二酸化チタン分散液1: 8.56部
・下記バインダー(B-1)40質量%PGMEA溶液 : 40.24部
重量平均分子量(Mw)は11000であり、共重合比(モル比)は下記の通りである。
・モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート): 10.73部
(新中村化学工業株式会社製 A-TMMT;下記表においてM-1)
・重合開始剤(K-1): 3.05部
・着色防止剤((株)アデカ製 アデカスタブAO-80): 0.17部
・シランカップリング剤-1:(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)1質量%シクロヘキサノン溶液: 3.4部
・重合禁止剤(p-メトキシフェノール): 0.0054部
・界面活性剤 下記混合物(Mw=14000、0.2質量%PGMEA溶液)・・・: 4.17部
・PGMEA:29.68部
・・・
【0301】
<実施例2?22>
実施例1と同様に以下の表に従って各成分を混合して実施例2?22の組成物を得た。
表中の化合物は下記のものを用いた。
重合開始剤K-2:アデカアークルズNCI831(ADEKA社製)
シランカップリング剤?2:
・・・
【0303】
[調液表]
【0304】
【表1】




【0305】
また、下記表3中のM/Bは固形分中のモノマーとバインダーの質量比を示す。
【0306】
<実施例23>
以下の組成となるように各成分を混合して実施例23の組成物を得た。
・上記で調製した二酸化チタン分散液2:12.16部
・下記バインダー(B-2)40質量%PGMEA溶液:36.01部
重量平均分子量(Mw)は14000であり、共重合比(モル比)は下記の通りである。
・モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート):9.90部
(新中村化学工業株式会社製 A-TMMT)
・重合開始剤(K-1):2.82部
・着色防止剤((株)アデカ製 アデカスタブAO-80):0.18部
・シランカップリング剤-1:(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチル
ジメトキシシラン)1質量%シクロヘキサノン溶液:1.75部
・重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.0050部
・下記UV吸収剤1:0.35部
・下記界面活性剤1 0.2質量%PGMEA溶液:4.17部
・PGMEA:32.66部
・・・
【0308】
<顔料分散液2-1?2-7の調製>
0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、下記組成の混合液を3時間混合、分散して、顔料分散液を調製した。表2には、該当する成分の使用量(単位:質量部)を示す。
【0309】
【表2】


【0310】
[着色剤]
・・・
【0311】
[分散樹脂]
・分散樹脂A:下記構造(Mw:24000)
・・・
【0313】
[有機溶剤]
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0314】
<実施例24の組成>
以下の組成となるように各成分を混合して実施例24の組成物を得た。
・上記で調製した二酸化チタン分散液2:12.10部
・上記で調製した顔料分散液2-1:0.44部
・上記バインダー(B-2)40質量%PGMEA溶液:35.90部
・モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート):9.90部
(新中村化学工業株式会社製 A-TMMT)
・重合開始剤(K-1):2.82部
・着色防止剤((株)アデカ製 アデカスタブAO-80):0.18部
・シランカップリング剤-1:(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)1質量%シクロヘキサノン溶液:1.75部
・重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.0050部
・上記UV吸収剤1:0.35部
・上記界面活性剤1:4.17部
・PGMEA:32.40部
【0315】
<実施例25>
顔料分散液2-1を顔料分散液2-2に変えた以外は、実施例24と同様の手順に従って、組成物を得た。
【0316】
<実施例26の組成>
顔料分散液2-1を顔料分散液2-3に変えた以外は、実施例24と同様の手順に従って、組成物を得た。
【0317】
<実施例27の組成>
顔料分散液2-1を顔料分散液2-4に変えた以外は、実施例24と同様の手順に従って、組成物を得た。
【0318】
<実施例28の組成>
顔料分散液2-1を顔料分散液2-5に変えた以外は、実施例24と同様の手順に従って、組成物を得た。
【0319】
<実施例29の組成>
顔料分散液2-1を顔料分散液2-6に変えた以外は、実施例24と同様の手順に従って、組成物を得た。
【0320】
<実施例30の組成>
顔料分散液2-1を顔料分散液2-7に変えた以外は、実施例24と同様の手順に従って、組成物を得た。
【0321】
<実施例31の組成>
以下の組成となるように各成分を混合して実施例31の組成物を得た。
・上記で調製した二酸化チタン分散液2:12.10部
・上記で調製した顔料分散液2-4:0.22部
・上記で調製した顔料分散液2-5:0.22部
・上記バインダー(B-2)40質量%PGMEA溶液:35.90部
・モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート):9.90部
(新中村化学工業株式会社製 A-TMMT)
・重合開始剤(K-1):2.82部
・着色防止剤((株)アデカ製 アデカスタブAO-80):0.18部
・シランカップリング剤-1:(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)1質量%シクロヘキサノン溶液:1.75部
・重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.0050部
・上記UV吸収剤1:0.35部
・上記界面活性剤1:4.17部
・PGMEA:32.40部
【0322】
<実施例32の組成>
顔料分散液2-4を顔料分散液2-1に、顔料分散液2-5を顔料分散液2-3に変えた以外は、実施例31と同様の手順に従って、組成物を得た。
【0323】
<比較例1>
二酸化チタン顔料として、TTO-55N(商品名、石原産業社製、ルチル型、Ti原子の含有量:99atm%)を用いた以外は二酸化チタン分散液1の調製と同様にして分散液を得た。分散液中の二酸化チタン粒子の平均粒径は30nmであった。この分散液を用いて実施例1と同様にして比較例1の組成物を得た。
【0324】
調製した組成物を用いて、硬化膜を形成し、[透過率]、[面内均一性]、[分光平坦性]を評価した。
【0325】
[硬化膜の形成]
実施例1?32及び比較例1の組成物をそれぞれ、8インチガラスウェハ(イーグルXGコーニング社製、厚さ1.1mm)上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレート上で100℃で2分間加熱して塗布膜を得た。この塗布膜を、ウシオ電機(株)製超高圧水銀ランプ「USH-500BY」により500mJ/cm^(2)で露光した。さらに、200℃で5分、ホットプレート上で加熱して、硬化膜を得た。
【0326】
[分光測定(透過率)]
上記の硬化膜の分光(透過率)を、大塚電子(株)製「MCPD-3700」を用いて測定した。下記表3に400nmでの透過率を示す。
【0327】
[面内均一性]
上記ガラスウェハの中心から端に向かい1cmおきに膜面に傷をつけ、触針式膜厚計DEKTAK XT(BRUKER製)を用いてウェハ面内の膜厚を10点測定した。そして、下記式に基づいて膜厚のばらつきを算出した。
膜厚のばらつき=(膜厚の最大値-膜厚の最小値)÷(10点測定した膜厚の平均値)×100
算出した膜厚のばらつきを下記基準に基づいて評価した。膜厚のばらつきが2%以下のものを4、2%より大きく3%以下のものを3、3%より大きく5%以下のものを2、5%より大きいものを1とした。
【0328】
[分光平坦性]
上記の硬化膜の分光(透過率)を、大塚電子(株)製「MCPD-3700」で測定し、400nm?700nmの間の最低透過率と最高透過率の透過率差を以下に従って評価した。透過率の差が20%以下のものを3、20%より大きく、30%以下のものを2、30%より大きいものを1とした。
【0329】
評価表
【0330】
【表3】


【0331】
なお、上記実施例において、モノマー、バインダー、重合開始剤、粒子を前述の好ましい範囲内で変更しても、同様の性能を示す。またモノマーを2種以上、バインダーを2種以上、重合開始剤を2種以上含んでも同様の性能を示す。
なお、上記実施例にて使用された無機粒子(二酸化チタン)の代わりに、特開2015-47520号公報の段落0012?0042に記載のポリマー粒子からなるコア粒子と無機ナノ微粒子からなるシェル層とからなるコア・シェル複合粒子を用いた場合も、上記と同様の結果が得られた。」

2 各甲号証に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「[請求項1](A)白色顔料、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)多官能モノマー及び(D)光重合開始剤を含有する、タッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項2]前記(B)アルカリ可溶性樹脂として、(b-1)シロキサン樹脂を含有する、請求項1記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項3]前記(B)アルカリ可溶性樹脂として、(b-2)アクリル樹脂を含有する、請求項1又は2記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項4]さらに(E)チオール化合物を含有する、請求項1?3のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項5]前記(A)白色顔料として、酸化チタンを含有する、請求項1?4のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項6]前記(C)多官能モノマーとして、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物、及び/又は、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含有する、請求項1?5のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
・・・
[請求項7]前記(D)光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する、請求項1?6のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項8]さらに(F)酸化防止剤を含有する、請求項1?7のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項9]さらに下記一般式(3)で表される(G)シランカップリング剤を含有する、請求項1?8のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
・・・
[請求項10]さらに(H)紫外線吸収剤を含有する、請求項1?9のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項11]さらに(I)着色剤を含有する、請求項1?10のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物。
[請求項12]請求項1?11のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物を硬化させてなる白色遮光性硬化膜パターンを具備する、タッチパネル。
[請求項13]請求項1?11のいずれか一項記載のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物を用いて白色遮光性硬化膜パターンを形成する工程を備える、タッチパネルの製造方法。
・・・」(請求の範囲)

(甲1b)「技術分野
[0001] 本発明は、タッチパネル用ネガ型感光性白色組成物、タッチパネル及びタッチパネルの製造方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、スマートフォンやタブレットPC等、投影型静電容量式タッチパネルを用いたモバイル機器が急速に普及しつつある。投影型静電容量式タッチパネルは、画面領域にITO(Indium Tin Oxide)膜のパターンが形成され、その周辺部にさらにモリブデン等の金属配線部が形成されていることが一般的である。そしてこのような金属配線部を隠すため、投影型静電容量式タッチパネルのカバーガラスの内側には、黒又は白色等の遮光パターンが形成されていることが多い。
[0003] タッチパネルの方式は、カバーガラスと液晶パネルとの間にタッチパネル層を形成するOut-cellタイプ、液晶パネル上にタッチパネル層を形成するOn-cellタイプ、液晶パネルの内部にタッチパネル層を形成するIn-cellタイプ、及び、カバーガラスにタッチパネル層を直接形成するOGS(One Glass Solution)タイプに大別されるが、従来型のOut-cellタイプよりも薄型化及び軽量化を図れることから、OGSタイプのタッチパネルの開発が盛んになってきている。
[0004] タッチパネル搭載端末の多様化とともに、これまで以上に高精細な遮光パターンが要求されている。従来の印刷法式に替えて、より高解像度の加工が可能なリソグラフィー法が主流となりつつある。
[0005] OGSタイプのタッチパネルについても、リソグラフィー法による遮光パターン形成が求められている(特許文献1)。例えば感光性黒色遮光材(特許文献2)を用いた黒色の遮光パターンが実用化されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
[0007]しかしながら、黒色ではなく、白色の遮光パターンについての需要が存在するにも関わらず、タッチパネル用の感光性白色組成物は開発されていない。これは、感光性白色組成物が含有する白色顔料が黒色顔料に比べて遮光性が低いため、厚膜加工が必要となり、通常のタッチパネルプロセスには不向きであると考えられていたためである。このような事情から、リソグラフィー法により厚膜かつ高解像度で、高い反射性及び遮光性を備える白色の遮光パターンの形成が実現可能であり、さらに熱処理、薬液処理及び配線加工等のタッチパネル製造プロセスにおいて、黄変、剥がれ又は断線等の不具合が生じづらい、タッチパネル用の感光性白色組成物が求められている。
[0008] 本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、(A)白色顔料、(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)多官能モノマー及び(D)光重合開始剤を含有するタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物が、タッチパネル用の白色の遮光パターンの形成に極めて有用であることを見出した。
発明の効果
[0009] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物によれば、10μm以上の厚膜形成時においても、従来の印刷方式よりも高解像度の遮光パターンをガラス上に形成することができる。また、反射光の強度が高く、変色が少ないタッチパネルの白色遮光パターンを形成することができる。さらには、接着力に優れ、後工程での薬品処理後の剥がれがなく、加熱処理による着色の少ない、白色遮光性硬化膜パターンを得ることができる。」

(甲1c)「[0012] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(A)白色顔料を含有する。ここで(A)白色顔料とは、可視領域に特定の吸収を持たず、かつ、屈折率が大きい不透明な顔料をいう。(A)白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛又は鉛白が挙げられる。遮蔽性に優れ工業的利用が容易な二酸化チタンが好ましい。分散性の向上及び光触媒活性の抑制を目的とした、表面処理された二酸化チタンがより好ましい。
・・・
[0015] (A)白色顔料である二酸化チタンの平均粒子径は、遮蔽性を向上させるためには100?500nmが好ましい。反射率を高めるためには170?310nmがより好ましい。遮光性を高めるためには350?500nmがさらに好ましい。ここで平均粒子径とは、レーザー回折法により測定された粒度分布のメディアン径をいう。
[0016] (A)白色顔料の添加量は、固形分中10?80質量%が好ましい。20?70質量%がより好ましい。30?60質量%がさらに好ましい。(A)白色顔料の量が10質量%未満であると、膜厚によっては十分な遮蔽性が得られなくなる可能性がある。一方で、80質量%を超えると、得られる硬化膜の耐薬品性の低下又はパターン加工性の悪化等の問題が生じる可能性がある。
[0017] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物の硬化膜の膜厚は、遮光性を得るために10μm以上が好ましい。15μm以上がより好ましい。20μm以上がさらに好ましい。この場合、得られる硬化膜のクラック耐性が非常に重要となる。硬化膜の膜厚は、サーフコム1400D(東京精密(株)製)等の触針型段差計で測定することができる。」

(甲1d)「[0018] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(A)白色顔料の分散性を向上させるため、顔料分散剤を含有しても構わない。顔料分散剤は用いる白色顔料の種類、表面状態によって適宜選択することができる。酸性基及び/又は塩基性基を含有することが好ましい。市販の顔料分散剤としては、例えば、「Disperbyk-106」、「Disperbyk-108」、「Disperbyk-110」、「Disperbyk-180」、「Disperbyk-190」、「Disperbyk-2001」、「Disperbyk-2155」、「Disperbyk-140」若しくは「Disperbyk-145」(以上、いずれもビックケミー製)又は「SNディスパーサント9228」若しくは「SNスパース2190」(以上、いずれも三洋化成製)が挙げられる。」

(甲1e)「[0019] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(B)アルカリ可溶性樹脂を含有する。(B)アルカリ可溶性樹脂としては、(b-1)シロキサン樹脂及び/又は(b-2)アクリル樹脂が好ましい。(b-1)シロキサン樹脂及び/又は(b-2)アクリル樹脂であることにより、パターン加工性に優れ、反射強度が高く、変色の少ない白色遮光性硬化膜を得ることができる。耐熱性の観点からは(b-1)シロキサン樹脂が好ましい。加工性及び耐クラック性の観点からは(b-2)アクリル樹脂が好ましい。
・・・
[0033] (b-2)アクリル樹脂としては、耐熱性及び耐薬品性の観点からは芳香環を含有するアクリル樹脂が好ましく、パターン加工性及び耐クラック性の観点からは側鎖にラジカル重合性基を有するアクリル樹脂又は主鎖に分岐構造を有するアクリル樹脂が好ましい。ここでアクリル樹脂とは、メタクリル酸若しくはその誘導体又はアクリル酸若しくはその誘導体を重合して得られたポリマーをいう。
[0034] 側鎖にラジカル重合性基を含有するアクリル樹脂としては、パターン加工性を良好なものとするため、重合触媒の存在下、一塩基酸を有する(メタ)アクリルモノマーを共重合させて得られたポリマー(以下、「基ポリマー」)に、付加触媒の存在下、ラジカル重合性基とエポキシ基とを分子内に有する化合物を付加反応させて得られるアクリル樹脂が好ましい。ここで、(メタ)アクリルモノマーとは、メタクリル酸若しくはその誘導体又はアクリル酸若しくはその誘導体をいう。
[0035] 基ポリマーの合成に用いる一塩基酸含有(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する(メタ)アクリル化合物が挙げられる。重合触媒としては、例えば、ラジカル重合開始剤があげられる。ラジカル重合の条件は、例えば、溶媒中、一塩基酸を有する(メタ)アクリルモノマー、その他の重合性モノマー及びラジカル重合触媒を添加し、バブリング又は減圧脱気等によって反応容器内を十分に窒素置換してから、60?110℃で30?300分反応させることが好ましい。また、必要に応じてチオール化合物等の連鎖移動剤を用いても構わない。
[0036] 基ポリマーの合成に用いる、一塩基酸を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、イタコン酸、イタコン酸無水物、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)又はテトラヒドロフタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)が挙げられるが、現像性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
[0037] その他の重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、・・・、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、・・・、(メタ)アクリル酸グリシジル、・・・、スチレン、・・・が挙げられる。
[0038] 耐熱性の観点から(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル又は(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、スチレンが好ましい。耐薬品性の観点からスチレンが好ましい。重合制御性の観点からメタクリル酸誘導体又はスチレン誘導体が好ましい。
[0039] ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物又は過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物が一般的に用いられる。
基ポリマーに、ラジカル重合性基とエポキシ基とを分子内に有する化合物との付加反応させることによって、側鎖にラジカル重合性基を有するアクリル樹脂が得られる。その反応条件は、例えば、溶媒中、基ポリマー、ラジカル重合性基とエポキシ基とを分子内に有する化合物、ラジカル重合触媒及び重合禁止剤を添加し、80?130℃で30?300分反応させることが好ましい。
[0040] 付加反応に用いる付加触媒としては、例えば、・・・、アセチルアセトネートクロム若しくは塩化クロム等のクロム系触媒等が挙げられる。硬化膜の黄変を抑制するため、リチウム系触媒、ジルコニウム系触媒、クロム系触媒又はリン系触媒が好ましい。
[0041] ラジカル重合性基とエポキシ基とを分子内に有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、・・・等が挙げられる。カルボキシル基との反応性の観点及び得られるポリマーの現像性の観点から(メタ)アクリル酸グリシジル、・・・が好ましい。
・・・
[0044] (b-2)アクリル樹脂のMwは、GPCで測定されるポリスチレン換算で、塗布特性及びパターン形成する際の現像液への溶解性を良好なものとするため、2000?200000であることが好ましい。ネガ型感光性白色組成物の粘度を低下させて塗布均一性を良好なものとするため、4000?20000であることがより好ましい。6000?10000であることがさらに好ましい。」

(甲1f)「[0049] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(C)多官能モノマーを含有する。(C)多官能モノマーが露光時に硬化することにより、露光部のアルカリ溶解性が低下し、パターン加工が可能となる。(C)多官能モノマーを適宜選択することにより様々な機能を付与することができる。中でも、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表されるユニットを有する(C)多官能モノマーを含有することが好ましい。係る構造を有することにより、10μm以上の厚膜加工時においても幅広い濃度のアルカリ現像液で現像が可能であり、かつ、優れた耐クラック性を発現させることが可能となる。・・・
・・・
[0056] 一般式(1)で表される構造を有する(C)多官能モノマー、及び/又は、一般式(2)で表される構造を有する(C)多官能モノマーとしては、例えば、・・・ポリエチレングリコール300-ジ(メタ)アクリレート・・・が挙げられる。
[0057] 現像性と光硬化性の両立の観点から、・・・、ポリエチレングリコール300-ジ(メタ)アクリレート、・・・が好ましい。
・・・
[0059] その他の(C)多官能モノマーとしては、例えば、・・・、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、・・・が挙げられる。
[0060] (C)多官能モノマーの含有量に特に制限は無いが、現像性、光硬化性及び耐熱性の観点から固形分中20?70質量%であることが好ましい。20質量%未満であると露光時の架橋反応が十分に進行しない可能性があり、70質量%を超えると塗膜後(露光前)の膜強度が低下し、プロセス上の不具合を起こす可能性がある。」

(甲1g)「[0061] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(D)光重合開始剤を含有する。ここで(D)光重合開始剤とは、光(紫外線、電子線を含む)により分解及び/又は反応し、ラジカルを発生させるものをいう。
[0062] (D)光重合開始剤としては、例えば、・・・、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、・・・、1,2オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)],エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、・・・が挙げられる。
[0063] 感光剤による着色を抑制するため、・・・、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド又は・・・等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。」

(甲1h)「[0064] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(E)チオール化合物を含有することが好ましい。(E)チオール化合物を含有することで,パターンエッジのテーパー形状が緩やかとなる。また、ガラスとの密着性が向上し、現像剥がれを抑制することができる。さらに、後工程での薬品処理に対する耐性も向上させることができる。・・・
[0065] (E)チオール化合物としては、現像剥がれ抑制の観点から多官能チオールが好ましい。・・・
・・・
[0068] これらの多官能チオールとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、・・・が挙げられる。
[0069] 臭気、保存安定性及び反応性のバランスに優れていることから、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、・・・が好ましい。」

(甲1i)「[0071] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(F)酸化防止剤を含有しても構わない。(F)酸化防止剤を含有することで、後工程の加熱処理後の黄変が抑えられる。酸化防止剤としては、硬化膜の変色抑制効果に優れるため、Mwが300以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤またはヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましい。Mwが300未満であると、熱硬化時に昇華してしまい、十分な酸化防止効果を得られない場合がある。・・・
[0072] ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、・・・、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、・・・が挙げられる。・・・
・・・
[0074] (F)酸化防止剤の添加量としては、好ましくは(B)アルカリ可溶性樹脂及び(C)多官能モノマーの合計100質量部に対し、0.2?4.0質量部が好ましく、0.3?2.0質量部がより好ましい。添加量が0.3質量部未満であると変色抑制効果を得にくく、4.0質量部を超えると露光部の硬化を阻害してパターン加工ができなくなる虞がある。」

(甲1j)「[0075] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、一般式(3)で表される(G)シランカップリング剤を含有しても構わない。
・・・
[0077]
・・・
(G)一般式(3)で表されるシランカップリング剤を含有することで、硬化膜の基板への接着性及び後工程で晒されるアルカリ又は酸への耐薬品性がさらに向上する。・・・
[0078] 一般式(3)で表される(G)シランカップリング剤としては、例えば、3-(tert-ブチルカルバモイル)-6-(トリメトキシシリル)へキサン酸、2-(2-(tert-ブチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリメトキシシリル)ペンタン酸、・・・酸が挙げられる。
[0079] ガラス接着性及び耐薬品性が向上することから、3-(tert-ブチルカルバモイル)-6-(トリメトキシシリル)へキサン酸、2-(2-(tert-ブチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリメトキシシリル)ペンタン酸、・・・が好ましい。」

(甲1k)「[0080] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(H)紫外線吸収剤を含有しても構わない。(H)紫外線吸収剤を含有することで、解像度が向上し、得られる硬化膜の耐光性が向上する。(H)紫外線吸収剤としては、透明性及び非着色性の観点からベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物又はトリアジン系化合物が好ましい。
[0081] ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、・・・又は2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールが挙げられる。・・・」

(甲1l)「[0082] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、白色性を損なわない程度に(I)着色剤を含有しても構わない。(I)着色剤を含有することにより、黄色味、赤味又は青味等様々な色みを呈した白色硬化膜を得ることができる。逆に、色味を帯びた白色硬化膜を、White Pointへとシフトさせることも可能となる。(I)着色剤としては、例えば、染料、有機顔料又は無機顔料が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から無機顔料が好ましい。
[0083] 有機顔料としては、例えば、ピグメントイエロー・・・等の黄色有機顔料、・・・等のオレンジ色有機顔料、・・・等の赤色有機顔料、・・・等の紫色有機顔料、、ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、22、60若しくは64等の青色有機顔料、・・・等の緑色有機顔料、又は、・・・等の黒色有機顔料が挙げられる(数値はいずれもカラーインデックス(CI)ナンバー)。
[0084] 汎用性と耐熱性の観点から、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36又はカーボンブラックが好ましい。これらの有機顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理又は塩基性処理等の表面処理をされていても構わない。有機顔料の添加量としては、白色性の観点から50?5000ppmが好ましい。
[0085] 無機顔料としては、例えば、酸化鉄、・・・が挙げられる。これらの無機顔料は、他の無機成分又は有機成分で表面処理されていても構わない。耐熱性の観点から、他の無機成分で表面処理されていることが好ましい。無機顔料の添加量としては、白色性の観点から、固形分に対して50?5000ppm(質量比)が好ましい。
[0086] 染料としては、例えば、・・・が挙げられる。染料の添加量としては、白色性の観点から、固形分に対して5?500ppm(質量比)が好ましい。」

(甲1m)「[0087]本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、有機溶媒を含有しても構わない。・・・
[0088] 有機溶媒としては、例えば、・・・、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、・・・が挙げられる。」

(甲1n)「[0093]
本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物を硬化させてなる硬化膜の形成方法について、例を挙げて説明する。
[0094] まず、本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物を、スピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、インクジェット又はバーコーター等によって下地基板上に塗布し、ホットプレート又はオーブン等の加熱装置を用いて、60?150℃で30秒?3分間プリベークする。プリベーク後の膜厚は、10?30μmが好ましい。
[0095] プリベーク後、・・・等の露光機を用いて、・・・の光を、所望のマスクを介して又は介さずに照射して露光する。・・・
[0096] 露光後、現像により露光部を溶解させることで、ネガ型のパターンを得ることができる。・・・
[0097] 現像後の膜をホットプレート又はオーブン等の加熱装置を用いて、120?250℃で15分?2時間加熱することで、白色遮光性硬化膜が得られる。
[0098] 本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物を硬化させてなる硬化膜は、OGSタイプのタッチパネルにおける遮光パターンとして好適である。・・・膜厚に特に制限はないが、上記の特性を満たすためには10μm以上が好ましい。」

(甲1o)「実施例
[0116] 以下、合成例、調製例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。
(合成例1 シロキサン樹脂溶液(B1)の合成)
[0117] ・・・のプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)を仕込み、・・・。・・・
・・・
[0120]・・・
(合成例8 アクリル樹脂溶液(B8)の合成)
500mLのフラスコに2gの2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(以下、「AIBN」)及び50gのPGMEAを仕込んだ。その後、26.5g(0.31mol)のメタクリル酸(表中、「MA」)、21.3g(0.21mol)のスチレン(表中、「St」)及び37.7g(0.15mol)のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルメタクリレート(以下、「TCDMA」)を仕込み、室温でしばらく撹拌してから、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液に14.6g(0.09mol)のメタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」)、1gのクロムアセチルアセトナート(以下、「Cr(AcAc)3」)、0.2gのp-メトキシフェノール及び100gのPGMEAを添加し、90℃で4時間加熱撹拌した。反応終了後、固形分濃度が40質量%になるようにPGMEAを加え、アクリル樹脂溶液(B8)を得た(Mw=15000(ポリスチレン換算))。
[0121] ポリマーの側鎖にGMA由来のメタクリル基を残すため、まずMAユニットを含むポリマーを重合した後、GMAのエポキシ基とMAユニット由来のカルボン酸とを反応させている。MAユニットとGMAの反応したユニットを表中、「MA-GMA」と表す。」

(甲1p)「[0133](合成例18 シランカップリング剤(G1)の合成)
PGMEA200gに3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物41.97g(160mmol)とt-ブチルアミン11.70g(160mmol)を加えてしばらく室温にて撹拌した後、40℃にて2時間撹拌した。その後80℃まで昇温し、6時間反応させた。得られた溶液を固形分濃度が20質量%になるようにPGMEAで希釈し、3-(tert-ブチルカルバモイル)-6-(トリメトキシシリル)へキサン酸、2-(2-(tert-ブチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリメトキシシリル)ペンタン酸の混合溶液(G1)を得た。」

(甲1q)「[0134](調製例1 ネガ型感光性白色組成物(W-1)の調製)
21.00gの白色顔料すなわち二酸化チタン顔料(CR-97;石原産業(株)製)、13.13gのシロキサン樹脂溶液(B1)及び0.87gのPGMEAを混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液(MW-1)を得た。得られたミルベースについてレーザー回折法によりメディアン径を測定したところ、260nmであった。
[0135] 次に、12.25gの顔料分散液(MW-1)、4.60gのアクリル樹脂溶液(B1)、3.23gのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(表中、「DPHA」)、0.29gのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819;BASF社製(表中、「IC-819」)、並びに9.18gのPGMEAを撹拌混合し、ネガ型感光性白色組成物(W-1)を得た。この組成物を用いて、パターン加工性、パターン形状、色特性、接着性、耐薬品性を評価した。
[0136] (調製例2?102 ネガ型感光性白色組成物(W-2)?(W-102)の調製)
表3、表4、表5及び表6に示す比率で、調製例1と同様にしてネガ型感光性白色組成物を調製した。」

(甲1r)「[0140]
[表6]




(甲1s)「[0141] 各成分は以下のとおりである。
・ CR-97:二酸化チタン顔料(アルミナ/ジルコニア被覆、石原産業(株)製)
・・・
・ MT-PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工(株)製)
・・・
・ PE-300:ポリエチレングリコール300-ジアクリレート(第一工業製薬(株)製)
・ IRG-1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン(株)製)
・・・
・ RUVA-93:2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製)
・・・
・ NX-541:PR101(酸化鉄)分散液(大日精化製)(固形分濃度80質量%、着色材/樹脂(質量比)=2/1)」

(甲1t)「[0144](調製例106 着色剤分散液(DBk-1)の調製)
黒色顔料(BASF社製“Irgaphor Black S0100CF”)を120g、アクリルポリマー溶液(B12)を98g、高分子分散剤としてディスパービックLPN-21116(DP-1;ビックケミー社製;PMA40質量%溶液)を100g及びPMA682gをタンクに仕込み、ホモミキサー(プライミクス製)で20分撹拌し、予備分散液を得た。その後、0.05mmφジルコニアビーズ(YTZボール;ネツレン製)を75%充填した遠心分離セパレーターを具備したウルトラアペックスミル(寿工業製)に予備分散液を供給し、回転速度8m/sで3時間分散を行い、固形分濃度20質量%、着色材/樹脂(質量比)=60/40の黒色材分散液DBk-1を得た。
・・・
[0146] (調製例108 顔料分散液(DB-1)の調製)
着色材として黒色顔料Irgaphor Black S0100CFの代わりに青色有機顔料PB15:6(東洋インキ(株)製)を用いた以外は、黒色材分散液DBk-1と同様にして、青色材分散液DB-1を得た。
[0147](調製例109 顔料分散液(DB-2)の調製)
着色材として黒色顔料Irgaphor Black S0100CFの代わりに青色無機顔料PB28(大日精化工業(株)製)を用いた以外は、黒色材分散液DBk-1と同様にして、青色材分散液DB-2を得た。」

(甲1u)「[0153](実施例1)
上記の調製例1で得られたネガ型感光性白色組成物(W-1)について、下記(i)?(vi)の方法で物性の評価を実施し、下記(vii)の方法でタッチパネルの製造に関する評価を実施した。
[0154] (i)パターン加工性の評価
10cm角のアルカリガラス基板(日本板硝子製、厚さ=0.5mm)上に、ネガ型感光性白色組成物(W-1)を任意の回転数でスピンコートし、基板をホットプレート(SCW-636;大日本スクリーン製造(株)製)を用いて100℃で3分間プリベークし、膜厚15μmの硬化膜を形成した。次に、PLA(PLA-501F;キヤノン(株)製)を用いて超高圧水銀灯を光源とし、150μm幅のライン&スペースパターンを有したマスクを介して、露光量200mJ(i線)、マスクギャップ150μmで露光した。その後、自動現像装置(滝沢産業(株)製;AD-2000)を用いて、2.38質量%TMAH水溶液(ELM-D;三菱ガス化学(株)製)又は0.045質量%KOH水溶液で60秒間シャワー現像し、次いで水で30秒間リンスした。現像後のパターンを、抜け性及び現像接着性の二項目について、以下の判断基準に基づいて評価を行った。」

(甲1v)「[0165](実施例2?102)
調製例2?102で得られたネガ型感光性白色組成物を用いて、実施例1と同様にして(i)?(ix)の評価を実施した。評価結果を、表7、表8、表9、表10、表11及び表12に示す。
・・・
[0175]
[表10]




(2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「請求の範囲
[請求項1] (A)白色顔料、
(B)下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(2)で示される化合物及び下記一般式(3)で示される化合物を含むアルコキシシラン化合物を共加水分解物縮合して得られるポリシロキサン、
(C)多官能アクリルモノマ、
(D)光ラジカル重合開始剤、並びに、
(E)有機溶媒、を含有する、ネガ型感光性着色組成物。
[化1]


(R^(1)はそれぞれ独立して、メチル基又はフェニル基を表し、R^(2)はそれぞれ独立して、水素又は炭素数1?4のアルキル基を表す。)
[化2]


(R^(3)はメチル基又は水素を表し、R^(4)は炭素数1?4のアルキレン基を表し、R^(5)はそれぞれ独立して、水素又は炭素数1?4のアルキル基を表す。R^(6)はそれぞれ独立して、炭素数1?6のアルキル基を表し、nは1?3の整数を表す。)
[化3]


(lは0?2の整数を表し、mは1?3の整数を表し、R^(7)は炭素数1?4のアルキレン基を表し、R^(8)はそれぞれ独立して、水素又は炭素数1?4のアルキル基を表し、R^(9)はそれぞれ独立して、炭素数1?6のアルキル基を表す。)
[請求項2] 前記アルコキシシラン化合物に占める、一般式(1)で示される化合物の割合が25?75モル%であり、一般式(2)で示される化合物の割合が10?45モル%であり、かつ、一般式(3)で示される化合物の割合が1?20モル%である、請求項1記載のネガ型感光性着色組成物。
[請求項3] 前記(A)白色顔料は、二酸化チタンである、請求項1又は2記載のネガ型感光性着色組成物。
[請求項4] 前記一般式(1)で示される化合物は、ジアルコキシジフェニルシラン又はジヒドロキシジフェニルシランである、請求項1?3のいずれか一項のネガ型感光性着色組成物。
[請求項5] 前記(D)光ラジカル重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤である、請求項1?4のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物。
[請求項6] 前記(C)多官能アクリルモノマは、下記一般式(4)で示される化合物である、請求項1?5のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物。
[化4]


(R^(10)は炭素数1?4のアルキレン基を表し、oはそれぞれ独立して、0?5の整数を表し、R^(11)はそれぞれ独立して、アクリロイル基、メタクリロイル基又は水素を表す。ただし、全てのR^(11)が水素になることはない。)
[請求項7] 前記アルコキシシラン化合物は、下記一般式(5)で示される化合物を含む、請求項1?6のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物。
[化5]


(R^(12)は炭素数エポキシ基を有する1価の有機基を表し、R^(13)はそれぞれ独立して、炭素数1?4のアルキル基を表す。)
[請求項8] (F)多官能チオール化合物を含有する、請求項1?7のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物。
[請求項9] (G)脂環式エポキシ化合物を含有する、請求項1?8のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物。
[請求項10] (H)下記一般式(6)で示されるシランカップリング剤を含有する、請求項1?9のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物。
[化6]


(各R^(14)はそれぞれ独立して、炭素数1?6のアルキル基又はそれらの置換体を表す。pは0又は1を表す。R^(15)は炭素数3?30の3価の有機基を表す。R^(16)はそれぞれ独立して、炭素数1?6のアルキル基、炭素数1?6のアルコキシ基、フェニル基若しくはフェノキシ基又はそれらの置換体を表す。)
[請求項11] (I)紫外線吸収剤を含有する、請求項1?10のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物。
[請求項12] (J)ラジカル捕捉剤を含有する、請求項1?11のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物。
[請求項13] 請求項1?12のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物を硬化させてなる、硬化膜。
[請求項14] 請求項13記載の硬化膜を備える、タッチパネル用遮光パターン。
[請求項15] 少なくとも、請求項1?12のいずれか一項記載のネガ型感光性着色組成物を、(i)基板上に塗布する工程、(ii)塗布後の基板を減圧及び/又は加熱により乾燥する工程、(iii)乾燥後の基板にマスクを介して露光する工程、(iv)露光後の基板を現像液を用いて現像し、パターンを形成する工程、(v)現像後の基板を加熱により硬化させる工程を備える、タッチパネルの製造方法。」

(甲2b)「技術分野
[0001] 本発明は、ネガ型感光性着色組成物、硬化膜、タッチパネル用遮光パターン及びタッチパネルの製造方法に関する。
背景技術
・・・
発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明者らは、酸化ケイ素化合物を含有するネガ型感光性組成物は、一般的に耐熱性に優れていることから、タッチパネルの製造において白色系の遮光パターンの形成に適しているのではないかと考えた。しかしながら、従来のネガ型感光性組成物に白色顔料を含ませた具体的な例はなく、それらが白色顔料を含有する場合、高温処理によって、得られる硬化膜に黄変やクラック等が生じかねないため、ITO製膜等の高温処理を必要とするOGSタイプのタッチパネルの製造に用いることは難しいものであった。
[0007] そこで本発明は、耐薬品性に優れるばかりでなく、耐熱性に極めて優れ、高温処理を経ても黄変やクラックを生じることのない、白色系の遮光パターン形成に好適なネガ型感光性着色組成物を提供することを目的とする。」

(甲2c)「[0036] 本発明のネガ型感光性着色組成物は、(A)白色顔料を含有する。ここで(A)白色顔料とは、可視領域に特定の吸収を持たず、かつ、屈折率が大きい不透明な顔料をいう。(A)白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛又は鉛白が挙げられるが、遮蔽性に優れ工業的利用が容易な二酸化チタンが好ましく、二酸化チタンの結晶構造にはアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型があるが、中でも、ルチル型酸化チタンが、光触媒活性が無く、好ましい。また、ネガ型感光性着色組成物中での分散性と、硬化膜の耐光性、耐熱性を向上させるため、粒子の表面が処理された二酸化チタンがより好ましい。
・・・
[0039] (A)白色顔料の添加量は、(B)ポリシロキサン及び(C)多官能アクリルモノマの合計100質量部に対し、20?300質量部が好ましく、50?150質量部がより好ましい。(A)白色顔料の量が20質量部未満であると、十分な遮蔽性が得られなくなる。一方で、300質量部を超えると、得られる硬化膜の耐薬品性が低下する。」

(甲2d)「[0040] 本発明のネガ型感光性着色組成物は、(A)白色顔料以外の着色剤を含有しても構わない。(A)白色顔料以外の着色剤としては、例えば、染料、有機顔料又は無機顔料が挙げられるが、耐熱性の観点から、フタロシアニン系の有機顔料、カーボンブラック又は無機顔料が好ましい。
[0041] 有機顔料としては、例えば、ピグメントイエロー12、13、17、20、24、83、86、93、95、109、110、117、125、129、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168若しくは185等の黄色有機顔料、ピグメントオレンジ13、36、38、43、51、55、59、61、64、65若しくは71等のオレンジ色有機顔料、ピグメントレッド9、48、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240若しくは254等の赤色有機顔料、ピグメントバイオレット19、23、29、30、32、37、40若しくは50等の紫色有機顔料、ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、22、60若しくは64等の青色有機顔料、ピグメントグリ-ン7、10若しくは36等の緑色有機顔料、又は、カーボンブラック、ペリレンブラック若しくはアニリンブラック等の黒色有機顔料が挙げられるが(数値はいずれもカラーインデックス(CI)ナンバー)、汎用性と耐熱性の観点から、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36又はカーボンブラックが好ましい。
・・・
[0044] 一方で、本発明のネガ型感光性透明材料が(A)白色顔料以外の着色剤を含有しない場合には、(A)白色顔料が他色の着色剤と比較して遮蔽性が低いことから、得られる硬化膜の膜厚を10μm以上にする必要があるが、15μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましい。この場合、得られる硬化膜のクラック耐性が非常に重要となる。
[0045] 本発明のネガ型感光性着色組成物は、分散性を向上させるため、顔料分散剤を含有しても構わない。」

(甲2e)「[0046] 本発明のネガ型感光性組成物は、(C)多官能アクリルモノマを含有する。ここで(C)多官能アクリルモノマとは、複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。
[0047] (C)多官能アクリルモノマとしては、例えば、・・・エトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート又はε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられるが、得られる硬化膜のクラック耐性を向上させるため、下記一般式(4)で示される化合物が好ましい。一般式(4)で示される化合物としては、例えば、エトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート又はε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。」

(甲2f)「[0049]・・・
本発明のネガ型感光性着色組成物は、(D)光ラジカル重合開始剤を含有する。ここで(D)光ラジカル重合開始剤とは、光(紫外線、電子線を含む)により分解及び/又は反応し、ラジカルを発生させるものをいう。
[0050] (D)光ラジカル重合開始剤としては、例えば、・・・、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、・・・等が挙げられる。
[0051] 本発明のネガ型感光性透明材料が(A)白色顔料以外の着色剤を含有しない場合には、感光剤による着色を抑制するため、・・・、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド又は・・・等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。」

(甲2g)「[0052] 本発明のネガ型感光性着色組成物は、(E)有機溶媒を含有する。
・・・
[0053] (E)有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、・・・が挙げられる。」

(甲2h)「[0054] 本発明の熱硬化性着色組成物は、塗布性を向上させるため、界面活性剤を含有しても構わない。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤又はポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤が挙げられる。」

(甲2i)「[0055] 本発明のネガ型感光性着色組成物は、(F)多官能チオール化合物を含有しても構わない。(F)多官能チオール化合物を含有することでパターンエッジのテーパー形状が緩やかとなる。また、ガラスとの密着性が向上し、現像剥がれを抑制することができる。さらに、後工程での薬品処理に対する耐性も向上させることができる。
[0056] (F)多官能チオール化合物の添加量は、(B)ポリシロキサン及び(C)多官能アクリルモノマの合計100質量部に対し、0.1?5質量部が好ましい。(F)多官能チオール化合物の添加量が0.1質量部を未満であると、耐薬品性の向上効果が十分に得られない可能性があり、5質量部を超えると、露光時にチオール化合物特有の臭気が強くなる。
・・・
[0060] これらのチオール化合物としては、例えば、・・・、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、・・・が挙げられるが、臭気、保存安定性及び反応性のバランスに優れていることから、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、・・・が好ましい。」

(甲2j)「[0062] 本発明のネガ型感光性着色組成物は、耐薬品性をさらに向上させるため、(G)脂環式エポキシ化合物を含有しても構わない。(G)脂環式エポキシ化合物は耐熱性が高いため、耐薬品性を向上しながらも追加加熱処理後の黄変を抑えることができる。
[0063] (G)脂環式エポキシ化合物の添加量は、(B)ポリシロキサン及び(C)多官能アクリルモノマの合計100質量部に対し、0.1?15質量部以下が好ましい。(G)脂環式エポキシ化合物の添加量が0.1質量部未満である、と密着性の向上効果が十分に得られない場合があり、15質量部を超えると、組成物の保存安定性が下がり、組成物の取り扱いが難しくなる場合がある。」

(甲2k)「[0070] (H)上記一般式(6)で示されるシランカップリング剤を本発明のネガ型感光性着色組成物に添加する際は、単独で使用してもよいし、混合してもよい。
[0071] 特に限定するわけではないが、トリメトキシシリルプロピル基を含有する酸無水物とアルキルアミンの反応により、容易に合成することができる。そのため合成時に生じるペア、例えば、3-(tert-ブチルカルバモイル)-6-(トリメトキシシリル)へキサン酸、2-(2-(tert-ブチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリメトキシシリル)ペンタン酸、等の組み合わせで用いることが好ましい。
[0072] より好ましい組合せとしては、原料入手の容易性の観点から、3-(tert-ブチルカルバモイル)-6-(トリメトキシシリル)へキサン酸、2-(2-(tert-ブチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリメトキシシリル)ペンタン酸、又は、3-(tert-ペンチルカルバモイル)-6-(トリメトキシシリル)へキサン酸、2-(2-(tert-ペンチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリメトキシシリル)ペンタン酸の組み合わせが好ましい。」

(甲2l)「[0073] 本発明のネガ型感光性着色組成物は、(I)紫外線吸収剤を含有しても構わない。(I)紫外線吸収剤を含有することにより、パターンエッジ部のテーパー形状を維持したまま、解像度を良くすることができる。(I)紫外線吸収剤の添加量は、(B)ポリシロキサン及び(C)多官能アクリルモノマの合計100質量部に対し、0.01?10質量部が好ましく、0.1?5質量部がより好ましい。(I)紫外線吸収剤の添加量が0.01質量部未満であるとパターン形状制御の向上効果が十分に得られない場合があり、10質量部を超えると、硬化膜が黄変する場合がある。
・・・
[0077] ・・・本発明のネガ型感光性着色組成物は、(J)ラジカル捕捉剤を含有しても構わない。(J)ラジカル捕捉剤の酸化防止効果により、後工程の加熱処理後の黄変が抑えられ、耐光性が向上する。
[0078] (J)ラジカル捕捉剤の添加量は、(B)ポリシロキサン及び(C)多官能アクリルモノマの合計100質量部に対し、0.01?10質量部が好ましく、0.15質量部以下がより好ましい。(J)ラジカル捕捉剤の添加量が0.01質量部未満であるとパターン形状制御の向上効果が十分に得られない場合があり、10質量部を超えると、硬化膜が黄変する場合がある。」

(甲2m)「[0082] 本発明のネガ型感光性着色組成物の代表的な製造方法について、以下に説明する。まず、(A)白色顔料、(B)ポリシロキサン及び(E)有機溶媒の混合液を、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散させ、顔料分散液を得る。一方で、(B)ポリシロキサン、(C)多官能アクリルモノマ、(D)光ラジカル重合開始剤、(E)有機溶媒及び他の添加物を、撹拌して溶解させ、希釈液を得る。そして、分散液と希釈液とを混合、撹拌、ろ過することで、ネガ型感光性着色組成物が得られる。
[0083] 本発明のネガ型感光性着色組成物を硬化させてなる硬化膜の形成方法は、以下(i)?(v)の5つの工程を経ることが、ディスプレイ及び半導体の製造装置をそのまま使用可能であるため、好ましい。
[0084] (i)ネガ型感光性着色組成物を基板上に塗布する工程。
塗布方式としては、例えば、スピンコーター、スリットコーター、スクリーン印刷、インクジェット又はバーコーターが挙げられる
(ii)塗布後の基板を減圧及び/又は加熱により乾燥(プリベーク)する工程。
加熱方法としては、例えば、ホットプレート又はオーブン等の加熱装置が挙げられる。加熱条件としては、60?15℃で30秒?3分間が一般的である。また、乾燥後のプリベーク後の膜厚は、5?30μmが好ましい。
・・・
[0088] 本発明のネガ型感光性樹脂組成物から、上記(i)?(v)の5つの工程を経て硬化膜を形成する方法は、パターン寸法及びパターン直線性に優れることから、OGSタッチパネルの製造方法として好適であり、得られる硬化膜は、遮光性及び反射色特性に優れることからOGSタイプのタッチパネルにおける遮光パターンとして好適である。遮光パターンのOD値としては、遮光パターンの上部に形成される配線を遮蔽できるため0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。」

(甲2n)「実施例
[0089] 以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。各実施例及び比較例における評価方法は以下のとおりである。
・・・
[0107]
(合成例1) シロキサン樹脂溶液(b-1)の合成
6.01gのジメトキシジメチルシラン(0.05モル)、122.18gのジメトキシジフェニルシラン(0.50モル)、46.86gの3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.20モル)、13.12gの3-トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸(0.05モル)、12.32gの3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン(0.05モル)、29.75gのフェニルトリメトキシシラン(0.15モル)及び156.52gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、500mLの三ツ口フラスコに仕込んだ。溶液を室温で撹拌しながら、54.0gの水に2.0gのリン酸を溶かしたリン酸水溶液を30分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分撹拌した後、オイルバスを70℃に設定して30分間加熱し、さらにオイルバスを110℃にまで昇温した。昇温開始3時間後に、反応を終了した。このとき、溶液の内温はオイルバスの設定より5℃程度低い温度まで上昇した。反応中に生成するメタノールや消費されなかった水は、蒸留により取り除いた。得られたポリシロキサンのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液が、ポリマー濃度が50質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、シロキサン樹脂溶液(b-1)を得た。
・・・
[0117](合成例11) シロキサン樹脂溶液(b-11)の合成
最初に三ツ口フラスコに仕込むものを、36.07gのジメトキシジメチルシラン(0.30モル)、73.31gのジメトキシジフェニルシラン(0.30モル)、46.86gの3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.20モル)、13.12gの3-トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸(0.05モル)、13.92gの3-グリシジロキシシプロピルトリメトキシシラン(0.05モル)、19.83gのフェニルトリメトキシシラン(0.10モル)及び131.48gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとした以外は、合成例1と同様にしてシロキサン樹脂溶液(b-11)を得た。
・・・
[0133](合成例30) シランカップリング剤混合溶液(g-1)の合成
PGMEA200gに3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物41.97g(0.160モル)とt-ブチルアミン11.70g(0.160モル)を加えてしばらく室温にて撹拌した後、40℃にて2時間撹拌した。その後80℃まで昇温し、6時間反応させた。得られた溶液を固形分濃度が20質量%になるようにPGMEAで希釈し、3-(tert-ブチルカルバモイル)-6-(トリメトキシシリル)へキサン酸、2-(2-(tert-ブチルアミノ)-2-オキソエチル)-5-(トリメトキシシリル)ペンタン酸の混合溶液(g-1)を得た。」

(甲2o)「[0134](実施例1)
13.00gの白色顔料すなわち二酸化チタン顔料(CR-97;石原産業(株)製)、26.00gのシロキサン樹脂溶液(b-1)及び1.00gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液(MW-1)を得た。
[0135] 次に、28.21gの顔料分散液(MW-1)、5.24gのシロキサン樹脂溶液(b-1)、5.24gのエトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートの混合物(アロニックスM-315;東亜合成(株)製)、0.79gのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819;BASF社製)、0.52gのペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(カレンズMT-PE1;昭和電工(株)製)並びに10.01gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを撹拌混合し、ネガ型感光性着色組成物(W-1)を得た。この組成物を用いて、パターン加工性、クラック耐性、各種膜特性を評価した。
・・・
[0144](実施例10)
シロキサン樹脂溶液(b-1)の代わりに、シロキサン樹脂溶液(b-11)を使用する以外は、実施例1と同様にして、顔料分散液(MW-10)及びネガ型感光性着色組成物(W-10)を得た。この組成物を用いて、パターン加工性、クラック耐性、各種膜特性を評価した。
・・・
[0168](実施例35)
シロキサン樹脂溶液(b-1)の代わりに、シロキサン樹脂溶液(b-11)を使用する以外は、実施例1と同様にして、顔料分散液(MW-10)を得た。次に、32.23gの顔料分散液(MW-10)、5.24gのエトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートの混合物(アロニックスM-315;東亜合成(株)製)、0.79gのビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュア819;BASF社製)、0.52gのペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(カレンズMT-PE1;昭和電工(株)製)及び11.22gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを撹拌混合し、ネガ型感光性着色組成物(W-35)を得た。この組成物を用いて、パターン加工性、クラック耐性、各種膜特性を評価した。
・・・
[0171](実施例37)
シロキサン樹脂溶液(b-1)の代わりに、シロキサン樹脂溶液(b-11)を使用する以外は、実施例1と同様にして、顔料分散液(MW-10)を得た。
[0172] 次に、27.94gの顔料分散液(MW-10)、5.19gのシロキサン樹脂溶液(b-11)、5.19gのアロニックスM-315、0.52gのイルガキュア819、0.77gのカレンズMT-PE1、1.29gのシランカップリング剤混合溶液(g-1)並びに9.09gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを撹拌混合し、ネガ型感光性着色組成物(W-37)を得た。この組成物を用いて、パターン加工性、クラック耐性、各種膜特性を評価した。
・・・
[0191] 実施例及び比較例で用いたシロキサン樹脂溶液(b-1)?(b-29)を合成する際のアルコキシシラン化合物の組成を、表1に示す。また、実施例及び比較例の成分比を表2、表3に、評価結果を、表4に示す。
・・・
[0194]
[表3]




(3)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダーポリマー、(B)重合性モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径100nm以上の二酸化チタン粒子、及び(E)着色防止剤を含有する白色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
二酸化チタン(D)の平均粒径が180nm以上である、請求項1に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
二酸化チタン(D)の含有量が、白色感光性樹脂組成物固形分中35質量%以上である請求項1又は2に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記着色防止剤(E)がフェノール化合物である、請求項1?3のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記着色防止剤(E)がフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するフェノール化合物である、請求項1?4のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
分散剤を更に含有し、バインダーポリマー(A)と前記分散剤との総含有量が、白色感光性樹脂組成物固形分中24質量%以上46質量%以下である請求項1?5のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
バインダーポリマー(A)と前記分散剤との総含有量が、白色感光性樹脂組成物固形分中30質量%以上46質量%以下である請求項6に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記分散剤が、吸着部位を有する高分子分散剤である、請求項6又は7に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記吸着部位が酸系吸着部位である、請求項8に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記酸系吸着部位がリン原子含有基またはカルボン酸基の少なくとも一方である、請求項9に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記高分子分散剤が酸系吸着部位としてリン原子含有基を有する高分子分散剤であり、前記高分子分散剤がソルスパース26000、36000、又は41000である、請求項10に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記高分子分散剤が下記一般式(1)で表される、請求項8に記載の白色感光性樹脂組成物。
【化1】・・・
【請求項13】
重合開始剤(C)が、下記一般式(A)で表されるオキシムエステル系化合物である、請求項1?12のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物。
【化2】・・・
【請求項14】
(A)バインダーポリマー、(B)重合性モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径100nm以上の二酸化チタン粒子、及び分散剤を含有し、バインダーポリマー(A)と前記分散剤との総含有量が、白色感光性樹脂組成物固形分中24?46質量%である、白色感光性樹脂組成物。
【請求項15】
バインダーポリマー(A)と前記分散剤との総含有量が、白色感光性樹脂組成物固形分中30?46質量%である、請求項14に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項16】
265℃15分の加熱前後の色差ΔE*abが3以下の白色硬化膜を形成し得る、請求項1?15のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項17】
265℃15分の加熱前後の色差ΔE*abが2以下の白色硬化膜を形成し得る、請求項1?16のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項18】
ホール径50μm以下のホールパターンを有する白色硬化膜を形成し得る、請求項1?17のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1?18のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物を用いて形成された白色硬化膜。
【請求項20】
基板上に、請求項1?18のいずれか1項に記載の白色感光性樹脂組成物を塗布して白色膜を形成する工程と、前記白色膜をマスクを介して露光する工程と、露光後の前記白色膜を現像して白色パターンを形成する工程とを有する白色パターンの製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の製造方法により製造された白色パターン。」

(甲3b)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、加熱(例えば、265℃15分)しても黄変等の着色し難く、ホール径50μm以下のホールパターン等の微細なパターンを有する白色硬化膜を形成し得る白色感光性樹脂組成物、白色硬化膜、白色パターン、及びその製造方法を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱(例えば、265℃15分)しても黄変等の着色し難く、ホール径50μm以下のホールパターン等の微細なパターンを有する白色硬化膜を形成し得る白色感光性樹脂組成物、白色硬化膜、白色パターン、及びその製造方法を提供することができる。」

(甲3c)「【0015】
[(A)バインダーポリマー]
本発明の白色感光性樹脂組成物は、皮膜特性向上などの観点から、バインダーポリマーを含有する。
バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような線状有機ポリマーとしては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59-44615号公報、特公昭54-34327号公報、特公昭58-12577号公報、特公昭54-25957号公報、特開昭54-92723号公報公報、特開昭59-53836号公報、特開昭59-71048号公報に記載されているもの、すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを単独あるいは共重合させた樹脂、酸無水物を有するモノマーを単独あるいは共重合させ酸無水物ユニットを加水分解若しくはハーフエステル化若しくはハーフアミド化させた樹脂、エポキシ樹脂を不飽和モノカルボン酸及び酸無水物で変性させたエポキシアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4-カルボキシルスチレン等があげられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
・・・
【0022】
前記バインダーポリマーには、下記一般式(ED)で表される化合物(以下「エーテルダイマー」と称することもある。)の単量体成分を重合してなる繰り返し単位を含むことが好ましい。
・・・
【0036】
以下、一般式(ED)で表される化合物を含む単量体成分を重合してなる重合体の例示化合物を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記に示す例示化合物の組成比はモル%である。
【0037】
【化5】


・・・
【0042】
本発明の白色感光性樹脂組成物において、バインダーポリマーは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダーポリマーの含有量は、白色感光性樹脂組成物の全固形分に対して、1質量%以上60質量%以下であることが好ましく、3質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上46質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以上46質量%以下であることがより更に好ましく、24質量%以上46質量%以下であることが特に好ましい。」

(甲3d)「【0043】
[(B)重合性モノマー]
(B)重合性モノマーとして、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物を使用することが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を使用することがより好ましい。このような化合物は当該技術分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。
【0044】
また、(B)重合性モノマーとしては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、・・・、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、・・・及びこれらの混合物を挙げることができ、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートであることが好ましい。
・・・
【0049】
白色感光性樹脂組成物の全固形分に対して、(B)重合性モノマーの含有量は、1質量%?40質量%の範囲であることが好ましく、3質量%?35質量%の範囲であることがより好ましく、5質量%?30質量%の範囲であることが更に好ましい。
この範囲内であると、着色を防ぎ、かつ硬化性が良好で好ましい。」

(甲3e)「【0050】
[(C)重合開始剤]
本発明の白色感光性樹脂組成物は、重合開始剤(C)を含有する。これにより硬化性が向上される。
前記重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができる。
・・・
【0051】
重合開始剤としては、オキシム系化合物であることが好ましく、オキシムエステル系化合物であることがより好ましい。
・・・
【0062】
好適に用いられるオキシム化合物の具体例(PIox-1)?(PIox-13)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化10】


・・・
【0066】
本発明の白色感光性樹脂組成物に含有される(C)重合開始剤の含有量(2種以上の場合は総含有量)は、白色感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、更に好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以上9質量%以下である。この範囲とすることで、着色の問題を生じることなく、感度よく、良好な硬化性と、パターン形成性とが得られる。なお、本発明の白色感光性樹脂組成物は光が透過し難いため、通常の感光性樹脂組成物よりも多く重合開始剤を添加することが好ましい。」

(甲3f)「【0067】
[(D)平均粒径100nm以上の二酸化チタン粒子]
本発明における二酸化チタン粒子としては、化学式TiO_(2)で表すことができ、純度が70%以上であることが好ましく、純度80%以上であることがより好ましく、純度85%以上であることが更に好ましい。一般式Ti_(n)O_(2n-1)(nは2?4の数を表す。)で表される低次酸化チタン、酸窒化チタン等は30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましい。
本発明における二酸化チタン粒子は、平均粒径100nm以上であれば特に制限はなく、例えば、市販の二酸化チタン粒子から適宜選択して用いることができる。
前記二酸化チタン粒子の平均粒径(数平均粒子径)は100nm以上であるが、180nm以上であることが好ましい。二酸化チタン粒子の平均粒径が100nm未満の場合には、反射率が低下する場合がある。
前記二酸化チタン粒子の平均粒径の上限としては特に制限はないが、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。
・・・
【0071】
本発明の白色感光性樹脂組成物における二酸化チタン粒子の含有量としては、白色感光性樹脂組成物全固形分に対して30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。
含有量の上限としては特に制限はないが、白色感光性樹脂組成物全固形分に対して95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが最も好ましい。」

(甲3g)「【0072】
[分散剤]
本発明の白色感光性樹脂組成物は、組成物中での二酸化チタン粒子(D)の分散性を向上させる観点から分散剤を含有することが好ましく、吸着部位を有する高分子分散剤を含有することがより好ましい。
本発明において、二酸化チタン粒子(D)に対する吸着能を有する部位を、適宜、「吸着部位」と総称する。
本発明における吸着部位としては、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基等が挙げられる。
・・・
【0193】
本発明の白色感光性樹脂組成物の全固形分に対する分散剤の含有量は、分散性の観点から、1?40質量%の範囲が好ましく、1.3?30質量%の範囲がより好ましく、1.5?20質量%の範囲が更に好ましく、2?10質量%の範囲が特に好ましく、2?6質量%の範囲が最も好ましい。」

(甲3h)「【0194】
[溶媒]
本発明の白色感光性樹脂組成物は溶媒を含有することが好ましい。該溶媒は種々の有機溶剤を用いて構成することができる。
ここで使用できる有機溶剤としては、・・・シクロヘキサン、・・・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート・・・などがある。
これらの有機溶剤は、単独あるいは混合して使用することができる。本発明の白色感光性樹脂組成物における固形分の濃度は、2?60質量%であることが好ましい。」

(甲3i)「【0195】
本発明の白色感光性樹脂組成物は、更に、必要に応じて、以下に詳述する任意成分を更に含有してもよい。
[青色顔料ないしは紫色顔料]
本発明の白色感光性樹脂組成物により形成される白色硬化膜の耐着色性を向上させる観点から、本発明の白色感光性樹脂組成物に青色顔料ないしは紫色顔料を含有させることができる。
前記青色顔料ないしは紫色顔料としては、C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42、及び、C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80から選択される1種以上であることが好ましい。
・・・
青色顔料と紫色顔料との質量比は、100:0?100:100が好ましく、より好ましくは100:70以下である。
【0197】
青色顔料ないしは紫色顔料の分散を行う際に分散剤を含有させることが好ましい。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、好ましくは高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤としては、・・・が挙げられる。」

(甲3j)「【0198】
[シランカップリング剤]
本発明の白色感光性樹脂組成物には、更なる基板との密着性向上の観点から、シランカップリング剤を使用することができる。
・・・
【0201】
シランカップリング剤を用いる場合の添加量としては、白色感光性樹脂組成物の全固形分中、0.01質量%?5.0質量%の範囲であることが好ましく、0.05質量%?3.0質量%がより好ましい。」

(甲3k)「【0202】
[着色防止剤(E)]
本発明の白色感光性樹脂組成物は着色防止剤(E)を含有する。
本発明における着色防止剤として、フェノール化合物、及び酸化防止剤として知られる亜リン酸エステル化合物又はチオエーテル化合物であることが好ましく、分子量500以上であるフェノール化合物、及び分子量500以上である亜リン酸エステル化合物又はチオエーテル化合物であることがより好ましい。これらは2種以上を混合して使用してもよい。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。特に、フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有することが好ましく、その場合の置換基としては炭素数1?22の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルへキシル基がより好ましい。また、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する安定剤も好ましい素材として挙げられる。
【0203】
これらは、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-70、アデカスタブ AO-80として入手できる。
白色感光性樹脂組成物中における着色防止剤の含有量は、固形分換算で、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましい。」

(甲3l)「【0208】
[重合禁止剤]
本発明においては、白色感光性樹脂組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な重合を阻止するために、重合禁止剤を添加することが好ましい。
本発明に用いうる重合禁止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、N-オキシド化合物類、ピペリジン1-オキシルフリーラジカル化合物類、ピロリジン1-オキシルフリーラジカル化合物類、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、ジアゾニウム化合物類、及びカチオン染料類、スルフィド基含有化合物類、ニトロ基含有化合物類、FeCl3、CuCl2等の遷移金属化合物類が挙げられる。
【0209】
さらに好ましい態様としては、以下の通りである。
フェノール系水酸基含有化合物が、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、フェノール樹脂類、及びクレゾール樹脂類からなる群より選択される化合物であるのが好ましい。
・・・
【0224】
重合禁止剤の好ましい添加量としては、(C)重合開始剤100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、更に0.01質量部以上8質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上5質量部以下の範囲にあることが最も好ましい。
上記範囲とすることで、非画像部における硬化反応抑制及び画像部における硬化反応促進が充分おこなわれ、画像形成性及び感度が良好となる。」

(甲3m)「【0225】
[界面活性剤]
本発明の白色感光性樹脂組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
・・・
【0227】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%?40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%?30質量%であり、特に好ましくは7質量%?25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、白色感光性樹脂組成物中における溶解性も良好である。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、・・・、同F781(以上、DIC(株)製)、・・・等が挙げられる。
・・・
【0229】
白色感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもしなくても良いが、含有する場合、界面活性剤の添加量は、白色感光性樹脂組成物の全質量に対して、0.001質量%?2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%?1.0質量%である。」

(甲3n)「【0230】
[その他の添加剤]
更に、白色感光性樹脂組成物に対しては、硬化皮膜の物性を改良するために可塑剤や感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。・・・」

(甲3o)「【0236】
<白色硬化膜>
本発明の白色感光性樹脂組成物は、例えば、265℃15分で加熱しても着色し難く、また、ホール径50μm以下の微細なパターン形成し得ることから、白色硬化膜の形成に好適に使用することができる。
すなわち、本発明の白色感光性樹脂組成物は、白色硬化膜形成用であることが好ましい。
また、本発明は、本発明の白色感光性樹脂組成物を用いて形成された白色硬化膜にも関する。
[白色硬化膜の製造方法]
本発明の白色硬化膜の製造方法としては、前述の白色感光性樹脂組成物を基板上にスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、バー塗布法等で塗布する工程、
続く第一の加熱工程、及び
更に続いてより高い温度での第二の加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を有する。
第一の加熱工程における条件としては、70℃以上110℃以下で2分以上4分以下程度の条件下で乾燥されることが好ましい。」

(甲3p)「【0238】
<白色パターン及びその製造方法>
以下、本発明の白色パターンについて、その製造方法を通じて詳述する。
本発明の白色パターンの製造方法は、基板上に、本発明の白色感光性樹脂組成物を塗布して白色膜を形成する工程と、前記白色膜をマスクを介して露光する工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の前記白色膜を現像して白色パターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)とを有する。
本発明の白色パターンの製造方法においては、上述した、白色膜を形成する工程、露光工程、及び現像工程を行った後に、形成された白色パターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を有することが好ましい。
具体的には、本発明の白色感光性樹脂組成物を、直接又は他の層を介して基板上に塗布して、白色膜を形成し(白色膜形成工程)、所定のマスクパターンを介して露光し、光照射された塗布膜部分だけを硬化させ(露光工程)、現像液で現像することによって(現像工程)、白色パターンを形成することができる。」

(甲3q)「【0239】
[白色膜形成工程]
白色膜形成工程では、基板上に、本発明の白色感光性樹脂組成物を塗布して白色膜を形成する。
前記基板としては、例えば、液晶表示装置等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス、及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。
また、これらの基板上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止あるいは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
基板上への本発明の白色感光性樹脂組成物の塗布方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スプレー塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
白色膜の塗布膜厚としては特に限定はないが、解像度と現像性の観点から、0.2μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上30μm以下がより好ましく、0.7μm以上20μm以下が更に好ましい。
基板上に塗布された白色感光性樹脂組成物は、通常、70℃以上110℃以下で2分以上4分以下程度の条件下で乾燥され、白色膜が形成される。」

(甲3r)「【実施例】
【0242】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
・・・・
【0243】
<実施例1>
[二酸化チタン分散液の調製1]
下記組成の混合液に対し、循環型分散装置(ビーズミル)として、寿工業株式会社製ウルトラアペックスミルを用いて、以下のようにして分散処理を行い、二酸化チタン分散液を得た。
?組成?
・二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)(純度90%以上)
:540.00部
・分散剤(A-1)(30質量%PGMEA溶液):129.00部
・プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA):531.00部
【0244】
【化54】

【0245】
上記式中、nは14であり、分散剤(A-1)のポリスチレン換算の重量平均分子量6400であり、酸価は80mgKOH/gである。
・・・」

(甲3s)「【0247】
[白色感光性樹脂組成物の調製1]
上記で得られた二酸化チタン分散液を用いて、以下の組成となるように各成分を混合して実施例1の白色感光性樹脂組成物を得た。
?白色感光性樹脂組成物の組成?
・・・
【0248】
【化55】


・・・
【0250】
<実施例2?4及び7>
分散剤、重合開始剤、バインダーポリマーの種類を変更(下記分散剤(A-2)、下記重合開始剤(K-2)、(K-3)、下記バインダーポリマー(B-2))する以外は、実施例1と同様にして、実施例2?4及び7の白色感光性樹脂組成物を調製した。
・・・
【0253】
【化58】




(甲3t)「【0255】
・・・
<実施例5>
[青顔料分散液の調製]
下記組成の混合液に対し、上記の二酸化チタン分散処理に準ずる操作により、青顔料分散液(C-1)を得た。
?組成?
・C.I.Pigment Blue 15:6:88.80部
・C.I.Pigment Violet 23:23.20部
・分散剤(ソルスパース36000;ルーブリゾール社製)30質量%PGMEA溶液:152.00部
・PGMEA:536.00部」

(甲3u)「【0256】
[白色感光性樹脂組成物の調製2]
上記の方法で調製した青顔料分散液(C-1)を用いて、以下の組成となるように各成分を混合して実施例5の白色感光性樹脂組成物を得た。
?白色感光性樹脂組成物の組成?
・上記の方法で調製した青顔料分散液(C-1):0.03部
・実施例1と同様に調製した二酸化チタン分散液:36.66部
・前記バインダー(B-1)40質量%PGMEA溶液 :31.57部
・重合性モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート):8.92部
(新中村化学工業株式会社製A-TMMT;下記表においてM-1)
・前記重合開始剤(K-2):2.54部
・着色防止剤((株)アデカ製アデカスタブAO-80):0.21部
・シランカップリング剤(N-2-(アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン):0.04部
・重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.01部
・界面活性剤(DIC社製メガファックF-781F)0.2質量%PGMEA溶液:4.17部
・PGMEA :3.10部
・シクロヘキサノン :12.75部」

(甲3v)「【0259】
このように調製した白色感光性樹脂組成物を用いて、白色硬化膜を形成し、[耐熱性(色差ΔE^(*)ab)]、[分光測定(透過率)]、[パターン形成性]を評価した。
[白色硬化膜の形成(膜厚:4.0μm)]
実施例1?11の白色感光性樹脂組成物をそれぞれ、ソーダガラス(75mm×75mm正方、厚さ1.1mm)上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレート上で100℃で2分間加熱して膜厚4.0μmの塗布膜を得た。この塗布膜を、ウシオ電機(株)製超高圧水銀ランプ「USH-500BY」により700mJ/cm^(2)で露光した。さらに、200℃で5分、ホットプレート上で加熱して、白色硬化膜(膜厚:4.0μm)を得た。
[耐熱性評価]
(分光測定(反射))
上記形成した白色硬化膜の分光L^(*),a^(*),b^(*)をSpectro EyeLT(サカタインクス社製)で測定した。なお、測定の際には、白色硬化膜を形成したガラスを、黒色レジストで被覆した台(黒色台)に置いて測定した。黒色台の黒色レジスト層のODは400nmで3.5(透過率0.03%)、550nmで3.2(透過率0.06)、700nmで2.5(透過率0.32%)であり、反射率は400nm?700nmで7%であった。該黒色台のODは大塚電子(株)製「MCPD-3000」で測定し、反射率はコニカミノルタ(株)製「SPECTROPHOTOMETER CM-2600」で測定した。
上記の白色硬化膜を、265℃で15分、ホットプレート上で加熱し、加熱後の白色硬化膜の色濃度を前記の方法に準じて測定し、色差ΔE^(*)abを算出した。
[分光測定(透過率)]
上記の白色硬化膜の分光(透過率)を、大塚電子(株)製「MCPD-3000」で測定した。
[パターン形成(膜厚4.0μm)]
前記の白色感光性樹脂組成物をソーダガラス(100mm×100mm正方、厚さ0.7mm)上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレート上で100℃で2分間加熱して膜厚4.00μmの塗布膜を得た。この塗布膜を、直径50μm及び20μmの円形パターンを多数有するマスクを介してウシオ電機(株)製超高圧水銀ランプ「USH-500BY」により700mJ/cm^(2)で露光した。
これをアルカリ現像液(CD-2060)(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて、室温にて60秒間、パドル現像した後、さらに20秒間スピンシャワーにて純水でリンスを行った。その後更に、純水にて水洗を行い、その後、高速回転にて基板を乾燥させ、ホールパターンを形成した。
下記評価基準に基づいて、ホール径50μm及び20μmのホールパターンそれぞれについてパターン形成性について評価した。
パターン形成性:
1.パターン形成せず。
2.多くの残渣あり、パターン形状が悪い。
3.残渣が少しあるが、パターン形状は悪くない。
4.残渣が少しあるが、はっきりとパターン形成している。
5.残渣なくはっきりとパターン形成している。
結果を下記表1に示す。
【0260】
【表1】




(4)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「【請求項1】
一次粒子径が1nm?100nmの金属酸化物粒子(A)と、酸価120mgKOH/g未満の下記一般式(1)で表される高分子化合物(B)と、溶媒(C)とを含有する分散組成物。
【化1】


上記一般式(1)中、
R^(1)は、(m+n)価の連結基を表し、R^(2)は単結合又は2価の連結基を表す。A^(1)は酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、フェノール基、アルキル基、アリール基、アルキレンオキシ鎖を有する基、イミド基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、複素環基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基を表す。n個のA^(1)及びR^(2)は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。
mは8以下の正の数、nは1?9を表し、m+nは3?10を満たす。
P^(1)はポリマー鎖を表す。m個のP^(1)は、同一であっても、異なっていてもよい。
【請求項2】
前記高分子化合物(B)の重量平均分子量が5000?8000である、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物(B)の酸価が70?90mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の分散組成物。
【請求項4】
前記分散組成物の全固形分に対する前記金属酸化物粒子(A)の含有量が65質量%以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の分散組成物。
【請求項5】
前記高分子化合物(B)が下記一般式(2)で表される高分子化合物である、請求項1?4のいずれか1項に記載の分散組成物。
【化2】


上記一般式(2)中、
R^(3)は、(m+n)価の連結基を表し、R^(4)、R^(5)は各々独立に単結合又は2価の連結基を表す。A^(2)は酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、フェノール基、アルキル基、アリール基、アルキレンオキシ鎖を有する基、イミド基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、複素環基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基を表す。n個のA^(2)及びR^(4)は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。mは8以下の正の数、nは1?9を表し、m+nは3?10を満たす。
P^(2)はポリマー鎖を表す。m個のP^(2)及びR^(5)は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。
【請求項6】
前記一般式(1)におけるA^(1)又は前記一般式(2)におけるA^(2)が、酸基、フェノール基、アルキル基、アリール基、アルキレンオキシ鎖を有する基、水酸基、ウレア基、ウレタン基、スルホンアミド基、イミド基及び配位性酸素原子を有する基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である請求項1?5のいずれか1項に記載の分散組成物。
・・・
【請求項13】
請求項1?12のいずれか1項に記載の分散組成物と、重合性化合物(D)とを含む硬化性組成物。
【請求項14】
前記重合性化合物(D)が分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、及び、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項13に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
重合開始剤(E)、及び、バインダーポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つを更に含有する、請求項13又は14に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記重合開始剤(E)がオキシム系重合開始剤である、請求項15に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
マイクロレンズ形成用又はカラーフィルターの下塗り膜形成用である請求項13?16のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項18】
請求項13?17のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いて形成された透明膜。
【請求項19】
請求項17に記載の硬化性組成物により得られる透明膜を用いて形成されたマイクロレンズ。
【請求項20】
請求項19に記載のマイクロレンズを有する固体撮像素子。
【請求項21】
請求項1?12のいずれか1項に記載の分散組成物の製造方法。」

(甲4b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、分散組成物、これを用いた硬化性組成物、透明膜、マイクロレンズ、及び固体撮像素子に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような高屈折率材料形成用の組成物は、基板上などに組成物の塗布後の膜面に不均一部分が発生するという塗布面状の悪化の問題があった。
本発明者らが鋭意検討した結果、このような塗布面状の悪化は、上述のような分散樹脂の酸価が高い(例えば、酸価120mgKOH/g以上)と、上記分散樹脂の酸基同士で凝集してしまい、無機微粒子と、上記分散樹脂との間で相分離が生じることが原因であることを見出した。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、屈折率が高く、塗布後の膜面の面状に優れる分散組成物、これを用いた硬化性組成物、透明膜、マイクロレンズ、及び固体撮像素子を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、屈折率が高く、塗布後の膜面の面状に優れる分散組成物、これを用いた硬化性組成物、透明膜、マイクロレンズ、及び固体撮像素子を提供することができる。」

(甲4c)「【0019】
<分散組成物>
本発明の分散組成物は、一次粒子径が1nm?100nmの金属酸化物粒子(A)と、酸価120mgKOH/g未満の下記一般式(1)で表される高分子化合物(B)と、溶媒(C)とを含有する。・・・」

(甲4d)「【0023】
<(A)一次粒子径が1nm?100nmの金属酸化物粒子>
本発明における金属酸化物粒子(A)としては、屈折率が高く、無色、白色又は透明な無機粒子であることが好ましく、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)又はマグネシウム(Mg)の酸化物粒子が挙げられ、二酸化チタン(TiO_(2))粒子、二酸化ジルコニウム(ZrO_(2))粒子又は二酸化珪素(SiO_(2))粒子であることが好ましく、中でも二酸化チタン粒子(以下、単に「二酸化チタン」ということもある)であることがより好ましい。
・・・
本発明における金属酸化物粒子は、一次粒子径が1nm?100nmであれば特に制限はなく、例えば、市販の金属酸化物粒子から適宜選択して用いることができる。
前記金属酸化物粒子の一次粒子径は1nm?100nmであるが、1nm?80nmであることが好ましく、1nm?50nmであることが特に好ましい。金属酸化物粒子の一次粒子径が100nmを超えると屈折率及び透過率が低下することがある。また1nm未満の場合には、凝集により分散性が低下する場合がある。
・・・
【0027】
本発明の分散組成物(又は後述する硬化性組成物)における金属酸化物粒子の含有量としては、高屈折率を得る観点から、分散組成物全固形分に対して65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
含有量の上限としては特に制限はないが、分散組成物全固形分に対して90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。」

(甲4e)「【0028】
<(B)酸価120mgKOH/g未満の前記一般式(1)で表される高分子化合物>
本発明において、前記一般式(1)で表される高分子化合物(B)の酸価は120mgKOH/g未満であり、100mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g未満であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、高分子化合物(B)の酸基同士による凝集を防ぐことができ、金属酸化物粒子(A)と、高分子化合物(B)との間の相分離を防ぐことができ、その結果、塗布面状を良好にすることができる。
なお、酸価の下限値としては特に制限はないが、金属酸化物粒子の分散安定性の観点から、5mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上であることがより好ましい。
また、後述するように、硬化膜を形成した際に、硬化膜の可視光透過率が特に優れることから、高分子化合物(B)の酸価が70?90mgKOH/gであることが特に好ましい。
・・・
【0029】
以下、前記一般式(1)における各基について詳細に説明する。
前記A^(1)は、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、フェノール基、アルキル基、アリール基、アルキレンオキシ鎖を有する基、イミド基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基のような金属酸化物粒子(A)に対する吸着能を有する官能基、複素環構造のような金属酸化物粒子(A)に対する吸着能を有し得る構造を少なくとも1種有する1価の置換基を表す。
なお、以下、この金属酸化物粒子(A)に対する吸着能を有する部位(上記官能基及び構造)を、適宜、「吸着部位」と総称して、説明する。
・・・
【0110】
本発明の分散組成物(又は後述する硬化性組成物)の全固形分に対する高分子化合物(B)の含有量は、分散性、高屈折率及び塗布面状の観点から、5?40質量%の範囲が好ましく、10?35質量%の範囲がより好ましく、12?30質量%の範囲が更に好ましい。
・・・
【0114】
本発明の分散組成物(又は後述する硬化性組成物)はその他の分散樹脂を含有してもしなくても良いが、含有する場合、本発明の分散組成物(又は後述する硬化性組成物)の全固形分に対するその他の分散樹脂の含有量は、1?20質量%の範囲が好ましく、1?10質量%の範囲がより好ましい。」

(甲4f)「【0115】
<(C)溶媒>
本発明の分散組成物は溶媒を含むが、該溶媒は種々の有機溶剤を用いて構成することができる。
ここで使用できる有機溶剤としては、・・・、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、・・・などがある。
これらの有機溶剤は、単独あるいは混合して使用することができる。本発明の分散組成物における固形分の濃度は、2?60質量%であることが好ましい。」

(甲4g)「【0117】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、前記本発明の分散組成物と、重合性化合物(D)とを含み、必要に応じてその他の成分を含むことによって構成される硬化性組成物であることが好ましい。
前記分散組成物が、硬化性組成物とされることにより屈折率が高い硬化膜(透明膜)を形成できる。
また、本発明は、本発明の硬化性組成物を用いて形成された透明膜にも関する。
・・・
【0121】
以上を鑑み、本発明の硬化性組成物は、実質的には、着色剤を含有しない(着色剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0質量%であることが好ましい)。」

(甲4h)「【0122】
(D)重合性化合物
本発明において、マイクロレンズ製造時、固体撮像素子製造時の硬化膜(透明膜)の耐溶剤性の観点から重合性化合物(D)として「分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物」を使用することが好ましい。
-分子内に2個以上のエポキシ基(オキシラニル基)又はオキセタニル基を有する化合物-
重合性化合物(D)としての分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
・・・
【0125】
また、(D)重合性化合物として、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物を使用することもでき、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を使用することが好ましい。
・・・
このような化合物を(D)重合性化合物として使用する場合、本発明の硬化性組成物は、後述の重合開始剤(E)を更に含有することが好ましい。
・・・
【0139】
硬化性組成物の全固形分に対して、(D)重合性化合物の含有量は、1質量%?40質量%の範囲であることが好ましく、3質量%?35質量%の範囲であることがより好ましく、5質量%?30質量%の範囲であることが更に好ましい。
この範囲内であると、屈折率を低下させることなく、硬化性が良好で好ましい。」

(甲4i)「【0140】
本発明の硬化性組成物は、以下説明する重合開始剤(E)、及び、バインダーポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つを更に含有することが好ましい。
(E)重合開始剤
本発明の硬化性組成物は、更に重合開始剤を含有することが、さらなる硬化性向上の観点から好ましい。
本発明における重合開始剤としては、以下に述べる重合開始剤として知られているものを用いることができる。
前記重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができる。
また、後述するマイクロレンズの形成方法における、工程(ロ)、(b)などの放射線照射による露光工程における硬化を良好にする観点などから、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感放射線性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
・・・
【0145】
重合開始剤としては、オキシム系化合物も好適に用いることができる。オキシム系開始剤の具体例としては、特開2001-233842号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報記載の化合物、特開2006-342166号公報記載の化合物を用いることができる。
・・・
【0158】
本発明の硬化性組成物に含有される(E)重合開始剤の含有量(2種以上の場合は総含有量)は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、更に好ましくは1質量%以上15質量%以下である。この範囲で、良好な硬化性と、良好な感度とパターン形成性とが得られる。」

(甲4j)「【0163】
[バインダーポリマー]
本発明の硬化性組成物は、皮膜特性向上などの観点から、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
前記バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような線状有機ポリマーとしては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。
・・・
【0176】
本発明の硬化性組成物において、バインダーポリマーは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0177】
本発明の硬化性組成物は、バインダーポリマーを含有してもしなくても良いが、含有する場合、硬化性組成物の全固形分に対して、バインダーポリマーの含有量は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。」

(甲4k)「【0193】
<硬化膜>
本発明の硬化膜は、前述の硬化性組成物を硬化して得られた硬化膜である。
本発明の硬化膜は、層間絶縁膜として好適に用いることができる。また、本発明の硬化膜は、後述の本発明の硬化膜の製造方法により得られた硬化膜であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物により、絶縁性に優れ、高温でベークされた場合においても高い透明性を有する層間絶縁膜が得られる。本発明の硬化性組成物を用いてなる層間絶縁膜は、高い透明性を有し、硬化膜物性に優れるため、有機EL表示装置や液晶表示装置の用途に有用である。
本発明の硬化膜は、マイクロレンズ、光導波路、反射防止膜、LED用封止材及びLED用チップコート材等の光学部材、又は、タッチパネルに使用される配線電極の視認性低減用硬化物として好適に用いることができる。
また、本発明の硬化膜は、例えば、後述するような、液晶表示装置又は有機EL装置等における平坦化膜や層間絶縁膜、カラーフィルターの保護膜、液晶表示装置における液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの構造部材等に好適に用いることができる。
【0194】
[透明膜(硬化膜)の製造方法]
本発明の透明膜の製造方法としては、前述の硬化性組成物をウエハ上にスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、バー塗布法等で塗布する工程、
続く第一の加熱工程、及び
更に続いてより高い温度での第二の加熱工程を有する。
第一の加熱工程における条件としては、マイクロレンズの製造方法における(イ)工程におけるプリベーク条件として後述する条件と同様である。
第二の加熱工程における条件としては、マイクロレンズの製造方法における(ニ)工程におけるポストベーク条件として後述する条件と同様である。
<マイクロレンズ>
本発明の硬化性組成物は、高屈折率で高透過率な透明膜を形成可能であるため、例えば、マイクロレンズ及びマイクロレンズアレイの形成に極めて好適に使用することができる。
すなわち、本発明の硬化性組成物は、マイクロレンズ形成用であることが好ましい。
また、本発明は、本発明の硬化性組成物を用いて形成された透明膜を用いて形成されたマイクロレンズにも関する。
・・・
【0196】
・・・形成される塗膜の膜厚は、プリベーク後の値として、0.5?20μm程度が好ましい。
・・・
【0202】
・・・プリベークの条件としては、各成分の種類や使用量等によっても異なるが、通常、60?120℃で30秒?15分間程度である。形成される塗膜の膜厚は、プリベーク後の値として、0.5?20μm程度が好ましい。このプリベークの工程は省略されることもある。」

(甲4l)「【0207】
・・・
本発明におけるマイクロレンズ及びカラーフィルターの下塗り膜は、本発明の硬化性組成物から形成されたものであり、優れた特性バランスを有しており、各種のOA機器、液晶テレビ、携帯電話、プロジェクター等の液晶表示素子、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等のオンチップカラーフィルターの結像光学系、光ファイバコネクタ等に極めて好適に使用することができる。
【0208】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、既述の本発明の硬化性組成物を用いて形成されたマイクロレンズを備えることを特徴とする。
本発明の固体撮像素子は、高屈折率で高透過性のマイクロレンズを備えているため、ノイズを低減でき、優れた色再現性を示す。
・・・
【0214】
<タッチパネル表示装置>
本発明のタッチパネル表示装置は、本発明の硬化膜を有する静電容量型入力装置を具備する。また、本発明の静電容量型入力装置は、本発明の硬化膜を有することを特徴とする。」

(5)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子径が1nm?100nmの金属酸化物粒子(A)と、重量平均分子量10000以下の下記一般式(1)で表される高分子化合物(B)と、溶媒(C)とを含有する分散組成物。
【化1】

上記一般式(1)中、
R^(1)は、(m+n)価の連結基を表し、R^(2)は単結合又は2価の連結基を表す。A^(1)は酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、フェノール基、アルキル基、アリール基、アルキレンオキシ鎖を有する基、イミド基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、複素環基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基を表す。n個のA^(1)及びR^(2)は、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。
mは8以下の正の数、nは1?9を表し、m+nは3?10を満たす。
P^(1)はポリマー鎖を表す。m個のP^(1)は、同一であっても、異なっていてもよい。
【請求項2】
前記高分子化合物(B)の重量平均分子量が5000?8000である、請求項1に記載の分散組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物(B)の酸価が70?90mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の分散組成物。
【請求項4】
前記分散組成物の全固形分に対する前記金属酸化物粒子(A)の含有量が65質量%以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載の分散組成物。
・・・
【請求項13】
請求項1?12のいずれか1項に記載の分散組成物と、重合性化合物(D)とを含む硬化性組成物。
【請求項14】
前記重合性化合物(D)が分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、及び、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項13に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
重合開始剤(E)、及び、バインダーポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つを更に含有する、請求項13又は14に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記重合開始剤(E)がオキシム系重合開始剤である、請求項15に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
マイクロレンズ形成用又はカラーフィルターの下塗り膜形成用である請求項13?16のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項18】
請求項13?17のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いて形成された透明膜。
【請求項19】
請求項17に記載の硬化性組成物により得られる透明膜を用いて形成されたマイクロレンズ。
【請求項20】
請求項19に記載のマイクロレンズを有する固体撮像素子。
【請求項21】
請求項1?12のいずれか1項に記載の分散組成物の製造方法。」

(甲5b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、分散組成物、これを用いた硬化性組成物、透明膜、マイクロレンズ、及び固体撮像素子に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような高屈折率材料形成用の組成物は、高屈折率を達成する観点から、高い含有量で無機微粒子を含有させることが要求されている。高い含有量で無機微粒子を含有する組成物では、無機微粒子の凝集等により分散性が悪く、粘度が増大し、塗布膜形成に支障をきたし得る。高い含有量においても無機微粒子の分散性がよく、組成物の粘度を低減し得る分散剤の開発が課題となっている。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、屈折率が高く、粘度が低い分散組成物、これを用いた硬化性組成物、透明膜、マイクロレンズ、及び固体撮像素子を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、屈折率が高く、粘度が低い分散組成物、これを用いた硬化性組成物、透明膜、マイクロレンズ、及び固体撮像素子を提供することができる。」

(甲5c)「【0022】
<分散組成物>
本発明の分散組成物は、一次粒子径が1nm?100nmの金属酸化物粒子(A)と、重量平均分子量10000以下の下記一般式(1)で表される高分子化合物(B)と、溶媒(C)とを含有する。
・・・
【0026】
<(A)一次粒子径が1nm?100nmの金属酸化物粒子>
本発明における金属酸化物粒子(A)としては、屈折率が高く、無色、白色又は透明な無機粒子であることが好ましく、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)又はマグネシウム(Mg)の酸化物粒子が挙げられ、二酸化チタン(TiO_(2))粒子、二酸化ジルコニウム(ZrO_(2))粒子又は二酸化珪素(SiO_(2))粒子であることが好ましく、中でも二酸化チタン粒子(以下、単に「二酸化チタン」ということもある)であることがより好ましい。
・・・
本発明における金属酸化物粒子は、一次粒子径が1nm?100nmであれば特に制限はなく、例えば、市販の金属酸化物粒子から適宜選択して用いることができる。
前記金属酸化物粒子の一次粒子径は1nm?100nmであるが、1nm?80nmであることが好ましく、1nm?50nmであることが特に好ましい。金属酸化物粒子の一次粒子径が100nmを超えると屈折率及び透過率が低下することがある。また1nm未満の場合には、凝集により分散性が低下する場合がある。
・・・
【0030】
本発明の分散組成物(又は後述する硬化性組成物)における金属酸化物粒子の含有量としては、高屈折率を得る観点から、分散組成物全固形分に対して65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
含有量の上限としては特に制限はないが、分散組成物全固形分に対して90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。」

(甲5d)「【0031】
<(B)重量平均分子量10000以下の前記一般式(1)で表される高分子化合物>
本発明において、前記一般式(1)で表される高分子化合物(B)の重量平均分子量は10000以下であり、8000以下であることが好ましい。
・・・
【0032】
以下、前記一般式(1)における各基について詳細に説明する。
前記A^(1)は、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、フェノール基、アルキル基、アリール基、アルキレンオキシ鎖を有する基、イミド基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩
基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基のような金属酸化物粒子(A)に対する吸着能を有する官能基、複素環構造のような金属酸化物粒子(A)に対する吸着能を有し得る構造を少なくとも1種有する1価の置換基を表す。
なお、以下、この金属酸化物粒子(A)に対する吸着能を有する部位(上記官能基及び構造)を、適宜、「吸着部位」と総称して、説明する。
・・・
【0110】
本発明の分散組成物において、高分子化合物(B)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
本発明の分散組成物(又は後述する硬化性組成物)の全固形分に対する高分子化合物(B)の含有量は、分散性、高屈折率及び塗布面状の観点から、5?40質量%の範囲が好ましく、10?35質量%の範囲がより好ましく、12?30質量%の範囲が更に好ましい。
・・・
【0115】
本発明の分散組成物(又は後述する硬化性組成物)はその他の分散樹脂を含有してもしなくても良いが、含有する場合、本発明の分散組成物(又は後述する硬化性組成物)の全固形分に対するその他の分散樹脂の含有量は、1?20質量%の範囲が好ましく、1?10質量%の範囲がより好ましい。」

(甲5e)「【0116】
<(C)溶媒>
本発明の分散組成物は溶媒を含むが、該溶媒は種々の有機溶剤を用いて構成することができる。
ここで使用できる有機溶剤としては、・・・エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、・・・などがある。
これらの有機溶剤は、単独あるいは混合して使用することができる。本発明の分散組成物における固形分の濃度は、2?60質量%であることが好ましい。」

(甲5f)「【0118】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、前記本発明の分散組成物と、重合性化合物(D)とを含み、必要に応じてその他の成分を含むことによって構成される硬化性組成物であることが好ましい。
前記分散組成物が、硬化性組成物とされることにより屈折率が高い硬化膜(透明膜)を形成できる。
また、本発明は、本発明の硬化性組成物を用いて形成された透明膜にも関する。
・・・
【0120】
また、本発明の組成物は、透明な組成物であることが好ましく、より具体的には、組成物により膜厚1.0μmの硬化膜を形成した時、該硬化膜の厚み方向に対する光透過率が、400?700nmの波長領域全域に渡って90%以上となるような組成物である。
・・・
【0122】
以上を鑑み、本発明の硬化性組成物は、実質的には、着色剤を含有しない(着色剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0質量%であることが好ましい)。」

(甲5g)「【0123】
(D)重合性化合物
本発明において、マイクロレンズ製造時、固体撮像素子製造時の硬化膜(透明膜)の耐溶剤性の観点から重合性化合物(D)として「分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物」を使用することが好ましい。
・・・
【0126】
また、(D)重合性化合物として、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物を使用することもでき、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を使用することが好ましい。
・・・
【0140】
硬化性組成物の全固形分に対して、(D)重合性化合物の含有量は、1質量%?40質量%の範囲であることが好ましく、3質量%?35質量%の範囲であることがより好ましく、5質量%?30質量%の範囲であることが更に好ましい。
この範囲内であると、屈折率を低下させることなく、硬化性が良好で好ましい。」

(甲5h)「【0141】
本発明の硬化性組成物は、以下説明する重合開始剤(E)、及び、バインダーポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つを更に含有することが好ましい。
(E)重合開始剤
本発明の硬化性組成物は、更に重合開始剤を含有することが、さらなる硬化性向上の観点から好ましい。
本発明における重合開始剤としては、以下に述べる重合開始剤として知られているものを用いることができる。
前記重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができる。
また、後述するマイクロレンズの形成方法における、工程(ロ)、(b)などの放射線照射による露光工程における硬化を良好にする観点などから、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感放射線性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
・・・
【0146】
重合開始剤としては、オキシム系化合物も好適に用いることができる。オキシム系開始剤の具体例としては、特開2001-233842号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報記載の化合物、特開2006-342166号公報記載の化合物を用いることができる。
・・・
【0176】
本発明の硬化性組成物に含有される(E)重合開始剤の含有量(2種以上の場合は総含有量)は、硬化性組成物の全固形分に対し0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、更に好ましくは1質量%以上15質量%以下である。この範囲で、良好な硬化性と、良好な感度とパターン形成性とが得られる。」

(甲5i)「【0177】
本発明の硬化性組成物は、更に、必要に応じて、以下に詳述する任意成分を更に含有してもよい。
・・・
【0186】
[バインダーポリマー]
本発明の硬化性組成物は、皮膜特性向上などの観点から、更にバインダーポリマーを含むことが好ましい。
前記バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような線状有機ポリマーとしては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。・・・カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4-カルボキシルスチレン等があげられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
・・・
【0200】
・・・
本発明の硬化性組成物において、バインダーポリマーは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の硬化性組成物は、バインダーポリマーを含有してもしなくても良いが、含有する場合、硬化性組成物の全固形分に対して、バインダーポリマーの含有量は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。」

(甲5j)「【0217】
<硬化膜>
本発明の硬化膜は、前述の硬化性組成物を硬化して得られた硬化膜である。
本発明の硬化膜は、層間絶縁膜として好適に用いることができる。また、本発明の硬化膜は、後述の本発明の硬化膜の製造方法により得られた硬化膜であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物により、絶縁性に優れ、高温でベークされた場合においても高い透明性を有する層間絶縁膜が得られる。本発明の硬化性組成物を用いてなる層間絶縁膜は、高い透明性を有し、硬化膜物性に優れるため、有機EL表示装置や液晶表示装置の用途に有用である。
本発明の硬化膜は、マイクロレンズ、光導波路、反射防止膜、LED用封止材及びLED用チップコート材等の光学部材、又は、タッチパネルに使用される配線電極の視認性低減用硬化物として好適に用いることができる。
また、本発明の硬化膜は、例えば、後述するような、液晶表示装置又は有機EL装置等における平坦化膜や層間絶縁膜、カラーフィルターの保護膜、液晶表示装置における液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの構造部材等に好適に用いることができる。
【0218】
[透明膜(硬化膜)の製造方法]
本発明の透明膜の製造方法としては、前述の硬化性組成物をウエハ上にスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、バー塗布法等で塗布する工程、
続く第一の加熱工程、及び
更に続いてより高い温度での第二の加熱工程を有する。
第一の加熱工程における条件としては、マイクロレンズの製造方法における(イ)工程におけるプリベーク条件として後述する条件と同様である。
第二の加熱工程における条件としては、マイクロレンズの製造方法における(ニ)工程におけるポストベーク条件として後述する条件と同様である。
<マイクロレンズ>
本発明の硬化性組成物は、高屈折率で高透過率な透明膜を形成可能であるため、例えば、マイクロレンズ及びマイクロレンズアレイの形成に極めて好適に使用することができる。
すなわち、本発明の硬化性組成物は、マイクロレンズ形成用であることが好ましい。
また、本発明は、本発明の硬化性組成物を用いて形成された透明膜を用いて形成されたマイクロレンズにも関する。
・・・
【0220】
・・・プリベークの条件としては、各成分の種類や使用量等によっても異なるが、通常、60?120℃で30秒?15分間程度である。形成される塗膜の膜厚は、プリベーク後の値として、0.5?20μm程度が好ましい。
・・・
【0226】
・・・プリベークの条件としては、各成分の種類や使用量等によっても異なるが、通常、60?120℃で30秒?15分間程度である。形成される塗膜の膜厚は、プリベーク後の値として、0.5?20μm程度が好ましい。このプリベークの工程は省略されることもある。」

(甲5k)「【0233】
本発明におけるマイクロレンズ及びカラーフィルターの下塗り膜は、本発明の硬化性組成物から形成されたものであり、優れた特性バランスを有しており、各種のOA機器、液晶テレビ、携帯電話、プロジェクター等の液晶表示素子、ファクシミリ、電子複写機、固体撮像素子等のオンチップカラーフィルターの結像光学系、光ファイバコネクタ等に極めて好適に使用することができる。
【0234】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、既述の本発明の硬化性組成物を用いて形成されたマイクロレンズを備えることを特徴とする。
本発明の固体撮像素子は、高屈折率で高透過性のマイクロレンズを備えているため、ノイズを低減でき、優れた色再現性を示す。
・・・
【0240】
<タッチパネル表示装置>
本発明のタッチパネル表示装置は、本発明の硬化膜を有する静電容量型入力装置を具備する。また、本発明の静電容量型入力装置は、本発明の硬化膜を有することを特徴とする。
・・・
【0249】
<静電容量型入力装置、及び、静電容量型入力装置を具備したタッチパネル表示装置>
本発明の製造方法によって得られる静電容量型入力装置、及び当該静電容量型入力装置を構成要素として備えたタッチパネル表示装置は、『最新タッチパネル技術』(2009年7月6日発行(株)テクノタイムズ)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”、シーエムシー出版(2004,12)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用することができる。」

(6)引用文献Aに記載された事項
引用文献Aには、以下の事項が記載されている。

(引A1)「【0066】
・・・
白色ベース塗料1
熱硬化性ポリエステル樹脂(日本ペイント社製、固形分酸価8mgKOH/g、水酸基価80mgKOH/g、数平均分子量1,800、固形分70質量%)51.0質量部とタイペークCR-97(石原産業社製二酸化チタン、一次平均粒子径200nm)49質量部を加えて均一分散し、更に、ユーバン128(三井サイテック社製メラミン樹脂、固形分60質量%)25.5質量部を加えて均一分散することにより白色ベース塗料1を得た。白色ベース塗料1に含まれる二酸化チタン顔料の体積平均粒子径D90と体積平均粒子径D50とを、UPA-150(マイクロトラック社製粒度部分布測定装置)にて測定したところ、それぞれ650nmと1000nmであった。CM512m-3(コニカミノルタ社製分光測色計)で測定したところ、L値は90であった。」

(7)引用文献Bに記載された事項
引用文献Bには、以下の事項が記載されている。

(引B1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)カルボキシル基含有アクリル樹脂、(B)光重合開始剤、(C)多官能モノマー、(D)芳香環を4つ以上有しかつ芳香環との結合を3つ以上有する4級炭素を有する多官能エポキシ化合物を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】さらに、(E)イソシアネート化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】(E)イソシアネート化合物が、(e-1)イソシアネート基含有シラン化合物であることを特徴とする請求項1?2いずれか記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】(A)カルボキシル基含有アクリル樹脂が、スチレンを共重合して得られアクリル樹脂である請求項1?3いずれか記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】請求項1?4のいずれか記載のネガ型感光性樹脂組成物を硬化させてなる金属配線保護膜。
【請求項6】金属配線がモリブデン含有金属配線である、請求項5記載の金属配線保護膜。
【請求項7】請求項1?3のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜を具備するタッチパネル部材。」

(引B2)「【0061】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の固形分濃度に特に制限はなく、塗布方法などに応じて任意の量の溶媒や溶質を用いることができる。例えば、後述のようにスピンコーティングにより膜形成を行う場合には、固形分濃度を5wt%以上、50wt%以下とすることが一般的である。」

(8)引用文献Cに記載された事項
引用文献Cには、以下の事項が記載されている。

(引C1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】(成分A)下記(1)および(2)の少なくとも一方を満たす重合体を含む重合体成分、
(1)(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位、および(a2)架橋性基を有する構成単位、を有する重合体、
(2)(a1)酸基が酸分解性基で保護された基を有する構成単位を有する重合体、および(a2)架橋性基を有する構成単位を有する重合体、
(成分B)光酸発生剤、
(成分C)溶剤、ならびに
(成分S)イミダゾール構造とアルコキシシラン構造とを有する化合物
を含有する感光性樹脂組成物であって、前記(成分S)の含有量が感光性樹脂組成物の全固形分中の0.05質量%?3.0質量%である感光性樹脂組成物。
・・・
【請求項8】少なくとも工程(a)?(c)を前記順に含む、硬化膜の製造方法;
(a)請求項1?7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する工程;
(b)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去する工程;
(c)溶剤が除去された感光性樹脂組成物を熱処理する熱処理工程、および/または、溶剤が除去された感光性樹脂組成物に活性光線を照射する露光工程。
【請求項9】少なくとも工程(1)?(4)を前記順に含む、パターン製造方法;
(1)請求項1?7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する工程;
(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去する工程;
(3)溶剤が除去された感光性樹脂組成物を活性光線によりパターン状に露光する露光工程;
(4)露光された感光性樹脂組成物または未露光の感光性樹脂組成物を水性現像液により現像する現像工程。
【請求項10】請求項1?7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜、または、請求項8に記載の硬化膜の製造方法により得られた硬化膜。
【請求項11】層間絶縁膜である、請求項10に記載の硬化膜。
【請求項12】請求項9に記載のパターン製造方法により得られたパターン。
【請求項13】請求項10または11に記載の硬化膜、および、請求項12に記載のパターンの少なくとも1つを有する、液晶表示装置。
【請求項14】請求項10または11に記載の硬化膜、および、請求項12に記載のパターンの少なくとも1つを有する、有機EL表示装置。
【請求項15】請求項10または11に記載の硬化膜、および、請求項12に記載のパターンの少なくとも1つを有する、タッチパネル表示装置。」

(引C2)「【0159】
<感光性樹脂組成物の調整>
下記表に記載の固形分比(質量比)となるように、重合体成分、光酸発生剤、増感剤、(成分S)、(成分S-2)、塩基性化合物、界面活性剤およびその他の成分から、下記表に示す各実施例・各比較例に示す成分をそれぞれ用い、溶剤(PGMEA)に固形分濃度25質量%になるまで溶解混合し、口径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過して、各種実施例および比較例の感光性樹脂組成物を得た。」

(9)引用文献Dに記載された事項
引用文献Dには、以下の事項が記載されている。

(引D1)「【0116】
本発明において、分散剤は酸基を有する分散剤であることが好ましい。酸基を有すると、成分Aの分散性に優れるので好ましい。
酸基を有する分散剤としては、BYK Chemie社製「DISPERBYK101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110、111、180(酸基を含む共重合物)、・・・等が挙げられる。」

(10)引用文献Eに記載された事項
引用文献Eには、以下の事項が記載されている。

(引E1)「【0026】
成分Bとしては、多くの種類のリン元素を有する有機分散剤が使用可能であり、具体的には、例えば、リン酸エステル構造を1以上有する高分子分散剤として、DISPERBYK-111、2001、BYK-W9010(いずれもビックケミー社製)、ソルスパース41000(Lubrizol社製等)が挙げられる。」

(11)引用文献Fに記載された事項
引用文献Fには、以下の事項が記載されている。

(引F1)「【0063】
本発明で使用した酸化チタンは以下に示す通りである。
・・・
・CR-90-2:石原産業社製「タイペークCR-90-2」
(アルミナ/シリカ/多価アルコール処理、一次粒子の平均粒子径:250nm)」

(12)引用文献Gに記載された事項
引用文献Gには、以下の事項が記載されている。

(引G1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】中央の表示用領域と、この表示用領域の外周部に設けられ可視光を遮蔽する不透明領域とを有する表示装置用前面保護板であって、
透光性基板と、この透光性基板の第1面とこの第1面とは反対側の第2面とのうちの、いずれか一方の面上において前記不透明領域に設けられた遮光層とを有し、
前記遮光層は、白色系樹脂層を有することで白色系の色を呈し、
前記白色系樹脂層は、少なくとも白色顔料と、黄変による色変化を補正して元の色に近づけるように補正する黄変補正化合物とを、硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂バインダ中に含む、
表示装置用前面保護板。
【請求項2】前記黄変補正化合物が蛍光増白剤である、請求項1に記載の表示装置用前面保護板。
【請求項3】前記黄変補正化合物が着色顔料である、請求項1に記載の表示装置用前面保護板。
【請求項4】前記透光性基板の前記遮光層が形成されている一方の面上に、さらに、タッチパネルの位置検知用の透明電極が形成されていると共に、前記表示用領域から前記遮光層を有する前記不透明領域の部分に延びた前記透明電極に対して、前記遮光層の部分で電気的に接続された不
透明な配線が、前記遮光層の部分に形成され、
前記白色系樹脂層が含む樹脂バインダが黄変している、
請求項1?3のいずれかに記載の表示装置用前面保護板。
【請求項5】請求項4に記載のタッチパネル用の透明電極及び不透明な配線も有する表示装置用前面保護板と、表示パネルとを備えた、表示装置。
【請求項6】前記表示パネルが、液晶パネルまたは電界発光パネルである、請求項5に記載の表示装置。」

(引G2)「【0007】
そこで、本発明の課題は、表示装置用前面保護板において、白色系の色を表現する遮光層が黄変しても目立ち難くさせることである。また、こうした表示装置用前面保護板を備えた表示装置を提供することである。」

(引G3)「【0027】
(白色系の色とは)
本発明において、白色系の色を呈するとは、純粋な白色(純白)以外に、アイボリー色、ベージュ色、赤みの白である赤白色(薄いピンク色)、黄みの白である黄白色、青みの白である青白色、緑みの白である緑白色、紫みの白である紫白色、茶色みの白である茶白色、黒みの白である灰色(ライトグレー)、銀色みの白である銀白色、金色みの白である金白色などの、有彩色で白っぽい色、及び無彩色で白っぽい色、も含む。
・・・
【0029】
黄変が目立ち難くなると言う本発明の効果がより活かされる白色系の色は、より白っぽい色ということになる。これを、マンセル表色系によって表現すれば、明度においては9.0以上の色の場合、彩度においては1.0以下の色の場合により効果的であり、さらに、明度が9.0以上で且つ彩度が1.0以下の色の場合が、より効果的である。」

(引G4)「【0032】
(着色顔料)
白色系樹脂層3に用いる着色顔料としては、通常は、白色顔料が主要な顔料として用いられる。更に、純色以外の、アイボリー、ライトグレーなどの白色系の色を表現する為に、黒色顔料も含めて、任意の色を呈する着色顔料を併用することができる。
【0033】
前記白色顔料としては、酸化チタン、シリカ、タルク、カオリン、クレイ、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、などを用いることができる。
なかでも、酸化チタンは代表的である。酸化チタンには結晶型が、ルチル型とアナターゼ型があるが、ルチル型の方が好ましい。本実施形態でもルチル型の酸化チタンを用いてある。ルチル型はアナターゼ型に比べて触媒活性が低く、加熱時にバインダー樹脂を変質し難いからである。
【0034】
白色以外の着色顔料は、例えば、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料、黒色顔料などを用いることができる。
・・・
【0039】
着色顔料は、表現する白色系の色に応じて適宜選択し、白色顔料のみを用いても良い。従って、着色顔料は、1種単独で用いても良いし、同種類の色、或いは異なる色の着色顔料を複数種類用いることもできる。
前記着色顔料とは、黄変補正化合物として含有させる場合の着色顔料は除外した着色顔料の意味である。
【0040】
白色系樹脂層3は、膜厚、及び着色顔料の含有量によって白色系樹脂層3自体の不透明性或いは透明性を調整することができる。白色系樹脂層3の膜厚は、例えば1?30μmである。
【0041】
前記着色顔料の含有量は、白色系樹脂層3で表現する白色系の色の透明感、白色系の色に期待する緻密感等にもよるが、着色顔料及び樹脂バインダを含む白色系樹脂層3の全固形分量に対する着色顔料の量の百分率で表した、顔料濃度で、例えば、通常10?60%程度である。言い換えると、白色系樹脂層3の全固形分100質量部に対して、着色顔料は、通常、10?60質量部の範囲である。
前記着色顔料の含有量は、これから詳述する黄変補正化合物としての着色顔料は含めない含有量である。」

(引G5)「【0047】
((着色顔料))
黄変補正化合物として用い得る着色顔料としては、黄変で吸収がとりわけ増加する波長400?450nmの光は、おおよそ青紫色であるから、黄色に対して補色関係となる青紫色を出せる着色顔料を用いるのが好ましい。この場合、1種単独の着色顔料で青紫色を発色するものでも良いし、互いに異なる色を呈する2種以上の着色顔料を併用して青紫色を出してもよい。互いに異なる色を呈する2種以上の着色顔料を併用する例としては、例えば、青色顔料と紫色顔料との2種類を併用する例である。
互いに異なる色を呈する2種以上の着色顔料を併用する態様では、例えば、2種類の着色顔料を用意しておくことで、この2種類の着色顔料の合計含有量にくわえて、含有割合を調整することで、種々の黄変の度合い及び色相に対応することができるという利点がある。
【0048】
なお、前記青色顔料としては、前記着色顔料として説明した青色顔料を用いることができる。例えば、青色顔料としは、銅フタロシアニン系、アントラキノン系などを用いることができる。さらに具体例を示せば、ビグメントブルーPB15:6(PB15:6)などの銅フタロシアニン系の青色顔料、などを用いることができる。
前記紫色顔料としては、キナクリドン系、ジオキサジン系の紫色顔料を用いることができる。さらに具体例を示せば、キナクリドン系のキナクリドン(PV19)、ジオキサジン系のジオキサジンバイオレット(PV23)などの紫色顔料を用いることができる。
【0049】
黄変補正用の着色顔料の含有量は、黄変の度合いと、これを補正する度合いに応じた量とすれば良く基本的には特に制限はない。例えば、樹脂バインダの樹脂成分100質量部に対して、0.01?0.3質量部が好ましい。この範囲未満であると、黄変を補正する効果が充分に得られないことがあり、この範囲を超えると、黄変を補正し過ぎて青紫色の色が強くなり過ぎることがある。
また、黄変によって、さらに波長500?600nm域の緑色の光吸収が増大しており、これを補正する必要があるときは、緑色顔料など、反射率が相対的に大きくなっている波長600?800nm域の光を相対的に多く吸収するような着色顔料を併用するようにしても良い。」

(引G6)「【0050】
(硬化性樹脂)
着色顔料を分散保持する樹脂バインダの樹脂成分となる前記硬化性樹脂としては、感光性樹脂、及び、熱硬化性樹脂から選ばれる樹脂を1種以上用いることができる。
硬化性樹脂としては、少なくとも硬化前は、透明無着色なものが好ましい。本実施形態でも、硬化前において、また硬化後においても、透明無着色のものを用いる。
【0051】
前記感光性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ桂皮酸ビニル系樹脂、環化ゴム、等の反応性ビニル基などの光反応性基を有する感光性樹脂を1種以上用いることができる。前記アクリル系樹脂では、例えば、アルカリ可溶性樹脂、多官能アクリレート系モノマー、光重合開始剤、その他添加剤などからなる感光性樹脂を樹脂バインダの樹脂成分として用いることができる。
【0052】
前記アルカリ可溶性樹脂には、ベンジルメタクリレート-メタクリル酸共重合体などのメタクリル酸エステル共重合体、ビスフェノールフルオレン構造を有するエポキシアクリレートなどのカルド樹脂、などを1種以上用いることができる。
前記多官能アクリレート系モノマーには、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、などを1種以上用いることができる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレート、又は、アクリレートのいずれかであることを意味する。」

(引G7)「【0061】
[黄変の改善例]
表1、及び図3のxy色度図は、白色系樹脂層3からなる遮光層2において、白色系樹脂層3に黄変補正化合物として、着色顔料を用いたときの、黄変の改善状況を示す。ここでは、着色顔料として、青色顔料と紫色顔料を質量比1:1で併用することで、青紫色の着色顔料を用いた場合と同様の黄変補正効果を得た場合である。
【表1】
・・・
【0063】
表1は、黄変補正化合物を含有させなかった場合での樹脂組成物を硬化させて白色系樹脂層3を形成し、その後、透明電極などの形成を想定してベークによる加熱処理前の初期状態(図3中、座標Cs)と、ベーク後の黄変状態(図3中、座標Cy)と、黄変補正化合物を含有させて補正されたベーク後の状態(図3中、座標Cc)について、測定した反射色を、Yxy表色系のx値、y値、及び、明るさ情報であるY値〔%〕を示してある。図3中、座標Cwは、光源に、CIE標準光源Cを用いたときの白色が示す白色点である。」


第6 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由A?C及び申立人がした申立理由1?2によっては、いずれも、本件発明1?3、5?9、13?18に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 申立ての却下
上記「第2 訂正の適否についての判断」及び「第3 特許請求の範囲の記載」で示したとおり、請求項4、10?12は、本件訂正により削除されているので、請求項4、10?12についての申立てを却下する。

2 取消理由について
(1)取消理由A(新規性)、取消理由B-1(進歩性)について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の上記摘記(甲1q)及び(甲1r)には、調製例101の「ネガ型感光性白色組成物」として、
「CR-97 50質量部
B8 25質量部
IC-819 3質量部
DPHA 7質量部
PE-300 15質量部
MT-PE1 3質量部
IRG-1010 1質量部
G1 0.5質量部
RUVA-93 2質量部
DB-2 2500ppm(着色剤換算)
NX-541 100ppm(着色剤換算)
を含む、ネガ型感光性白色組成物」
の発明が記載されており、この「ネガ型感光性白色組成物」には、(甲1q)の段落[0136]及び[0135]の記載からみて、さらに、「PGMEA」が含まれるといえる。

この「ネガ型感光性白色組成物」の各成分について、(甲1s)の記載から、
「CR-97」は「二酸化チタン顔料」、
「PE-300」は「ポリエチレングリコール300-ジアクリレート」、
「MT-PE1」は「ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)」、
「IRG-1010」は「ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]」、
「RUVA-93」は、「2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール」、
「NX-541」は「PR101(酸化鉄)分散液」であるといえる。

このうち、「PE-300」である「ポリエチレングリコール300-ジアクリレート」は、(甲1f)の記載からみて、「多官能モノマー」であり、
「MT-PE1」は「ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)」は、(甲1h)の記載からみて、「チオール化合物」であり、
「IRG-1010」は「ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]」は、(甲1i)からみて、「ヒンダードフェノール系酸化防止剤」であり、
「RUVA-93」である「2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール」は、(甲1k)の記載からみて、「紫外線吸収剤」であるといえる。

また、上記「ネガ型感光性白色組成物」の各成分について、
(甲1o)の記載からみて、「PGMEA」は、「プロピレングリコールメチルエーテルアセテート」であり、
「B8」は「アクリル樹脂溶液(固形分濃度40質量%)」である。
(甲1q)の記載からみて、「DPHA」は「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」であり、
「IC-819」は「ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド」である。
(甲1p)の記載からみて、「G1」は「シランカップリング剤溶液(固形分濃度20質量%)」である。
(甲1t)の「調製例109」の記載からみて、「DB-2」は「青色無機顔料」であるといえる。
このうち、「PGMEA」である「プロピレングリコールメチルエーテルアセテート」は、(甲1m)の記載からみて、「有機溶剤」であり、
「DPHA」である「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」は、(甲1f)の記載からみて、「多官能モノマー」であり、
「IC-819」である「ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド」は、(甲1g)からみて、「光重合開始剤」であるといえる。

そうすると、甲第1号証には、
「CR-97である二酸化チタン顔料 50質量部
B8のアクリル樹脂溶液(固形分濃度40質量%) 25質量部
光重合開始剤 3質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである多官能モノマー 7質量部
ポリエチレングリコール300-ジアクリレートである多官能モノマー 15質量部
チオール化合物 3質量部
ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]であるヒンダードフェノール系酸化防止剤 3質量部
シランカップリング剤溶液(固形分濃度20質量%) 0.5質量部
紫外線吸収剤 2質量部
青色無機顔料 2500ppm
酸化鉄 100ppm
プロピレングリコールメチルエーテルアセテートである有機溶剤
を含む、ネガ型感光性白色組成物」(以下「甲1発明A1」という。)の発明が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明A1とを対比する。

甲1発明A1の「組成物」は、「全固形分」として、90.36(質量部) (= 50(質量部) + 25×0.4(40質量%)(質量部) + 3(質量部) + 7(質量部) + 15(質量部) + 3(質量部) + 0.5×0.2(20質量%)(質量部) + 2(質量部) + 0.25(質量部)(2500ppm) + 0.01(質量部)(100ppm))含むものであるといえる。

甲1発明A1の「B8のアクリル樹脂溶液」の「アクリル樹脂」は、上記摘記(甲1e)の段落[0019]の「本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、(B)アルカリ可溶性樹脂を含有する。(B)アルカリ可溶性樹脂としては、(b-1)シロキサン樹脂及び/又は(b-2)アクリル樹脂が好ましい」との記載及び本件明細書の(本b)の段落【0011】の記載からみて、弱アルカリに可溶性であるといえる。また、甲1発明A1の「B8のアクリル樹脂溶液」の「アクリル樹脂」は、(甲1o)の「(合成例8 アクリル樹脂溶液(B8)の合成)」の製造方法からみて、不飽和基を1つ有する「メタクリル酸」、「スチレン」、「トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルメタクリレート(以下、「TCDMA」)」を重合させて、その後に、不飽和基を1つ有する「メタクリル酸グリシジル」を重合させたものであるから、本件発明1と同様に、「線状有機ポリマー」になっていると認められる。
そうすると、甲1発明A1の「B8のアクリル樹脂溶液」の「アクリル樹脂」は、本件発明1の「水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマー」である「(A)バインダー」に相当するといえる。
また、甲1発明A1の「組成物」において、「B8のアクリル樹脂溶液」の「アクリル樹脂」の含量は、全固形分90.36質量部に対して10質量部(=25質量部×0.4(40質量%))であり、全固形分中11質量%(=10(質量部)÷90.36(質量部))であるから、本件発明1の「(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%」の範囲内といえる。

本件発明1の「(B)モノマー」について、本件明細書の(本c)の段落【0040】には、「ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート」が、段落【0044】には、「ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート」が例示されている。また、甲1発明A1の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである多官能モノマー」及び「ポリエチレングリコール300-ジアクリレートである多官能モノマー」には、「末端エチレン性不飽和結合」である「アクリレート基」をそれぞれ6個及び2個有するものである。
そうすると、甲1発明A1の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである多官能モノマー」及び「ポリエチレングリコール300-ジアクリレートである多官能モノマー」は、本件発明1の「末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物」である「(B)モノマー」に相当するといえる。
また、甲1発明A1の「組成物」において、「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである多官能モノマー」及び「ポリエチレングリコール300-ジアクリレートである多官能モノマー」の含量は合計で22質量部(=7質量部 + 15質量部)であり、全固形分中24質量%(=22(質量部)÷90.36(質量部))であるから、本件発明1の「(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%」の範囲内であるといえる。

甲1発明A1の「光重合開始剤」は、本件発明1の「光重合開始剤」である「(C)重合開始剤」に相当する。
また、甲1発明A1の「組成物」において、「光重合開始剤」の含量は3質量部であり、全固形分中3.3質量%(=3(質量部)÷90.36(質量部))含んでいるから、本件発明1の「(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%」の範囲内であるといえる。

甲1発明A1の「CR-97である二酸化チタン顔料」は、引用文献Aの上記摘記(引A1)の「タイペークCR-97(石原産業社製二酸化チタン、一次平均粒子径200nm)」との記載からみて、「平均粒子径」は「200nm」であるから、本件発明1の「(D)平均粒径50nm以上の粒子」であって、「(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上」のものに相当する。

本件発明1の「(E)溶剤」について、本件明細書の段落【0223】には、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」が例示されている。
そうすると、甲1発明A1の「プロピレングリコールメチルエーテルアセテートである有機溶剤」は、本件発明1の「(E)溶剤」に相当する。

甲1発明A1の「シランカップリング剤溶液(固形分濃度20質量%)」は、「シランカップリング剤」を含むものであり、甲1発明A1の「組成物」において、全固形分90.36質量部に対して0.1質量部(=0.5質量部 × 0.2(20%))含み、全固形分中に0.11質量%(=0.1(質量部)÷90.36(質量部))含んでいるから、本件発明1の「組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%」の範囲内であるといえる。

甲1発明A1の「青色無機顔料」は、(甲1t)の「調製例109」の「着色材として黒色顔料・・・の代わりに青色無機顔料PB28・・・を用いた」の記載からみて「着色材」であるといえるから、本件発明1の「青色着色剤」に相当する。
また、甲1発明A1では、「CR-97である二酸化チタン顔料」の「50質量部」に対して、「青色無機顔料」は「2500ppm」(0.25質量部)配合されていることから、「CR-97である二酸化チタン顔料」と「青色無機顔料」との合計を100質量部とした場合に、「青色無機顔料」の添加量は、0.497(質量部)(=0.25(質量部)×100(質量部)/(50+0.25)(質量部))となる。

そうすると、本件発明1と甲1発明A1とは、
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する、組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%である、組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:「組成物」中に、本件発明1では、「酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤」である「分散剤」を「組成物の全固形分中、1?40質量%」含むのに対し、甲1発明A1には、「分散剤」を含んでいない点。

相違点2:「色材」について、本件発明1では、「青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない」ものであり、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を「(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上」含むものであるのに対し、甲1発明A1では、「青色色材」を「CR-97である二酸化チタン顔料」の合計を100質量部とした場合に0.497質量部含む点。

相違点3: 「組成物」中の「固形分濃度」について、本件発明1では、「60質量%以下」であるのに対し、甲1発明A1では明らかでない点。

相違点4:「組成物」について、本件発明1では、「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものであるのに対し、甲1発明A1では、用途についての特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点4について検討する。

甲1発明A1の「組成物」について、(甲1a)の各請求項の記載や(甲1b)からみて、専ら「タッチパネル用」に用いることを意図しているといえる。また、甲第1号証の他の記載をみても、「タッチパネル用」以外の用途で用いることは記載されておらず、「光電変換素子」の用途で用いることは記載されていないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、相違点4は実質的な相違点である。
また、甲第1号証には、甲1発明A1の「組成物」を「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものとすることを動機づける記載もない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証の記載から容易に発明をすることができたとはいえない。

甲第2号証の上記摘記(甲2a)には「ネガ型感光性着色組成物」について記載されているが、(甲2a)の請求項14?15、(甲2b)の段落[0001]、[0006]、(甲2m)の[0088]の記載からみて、「タッチパネル」用途を意図しているものであるから、甲1発明A1の「組成物」を、「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものとすることを動機づける記載はない。

甲第3号証の(甲3a)?(甲3q)には、本件発明1と類似の成分組成を有する組成物について、「液晶表示装置」や「固体撮像素子」等に適用すること(特に(甲3q)を参照)が記載されているが、上述したとおり、甲1発明A1の組成物は、専ら「タッチパネル用」に用いることを意図しているといえるから、甲1発明A1の「組成物」を「光電変換素子基板上の塗布に供される」ことを動機づけることはできない。
また、甲第4号証の上記摘記(甲4a)?(甲4l)及び甲第5号証の(甲5a)?(甲5j)には、本件発明1と類似の成分組成を有する組成物について、「固体撮像素子」や「タッチパネル」等に適用すること(特に(甲4l)及び(甲5j)を参照)が記載されているが、上述したとおり、甲1発明A1の組成物は、専ら「タッチパネル用」に用いることを意図しているといえるから、甲1発明A1の「組成物」を「光電変換素子基板上の塗布に供される」ことを動機づけることはできない。

したがって、本件発明1は、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

令和2年9月28日付け取消理由通知書では、請求項11に着目した甲1発明B1を認定したが、本件発明1と甲1発明B1とを対比すると、上記相違点4と同じ点でも相違し、相違点4は、上述のとおり、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1?5号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明A1とを、上記イ(ア)での検討を踏まえて対比すると、

「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する、組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%である、組成物。」
である点で一致し、
上記イ(ア)に記載の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。

相違点5:「組成物」について、本件発明2では、「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるのに対し、甲1発明A1では、そのような用途の特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点5について検討する。

甲1発明A1の「組成物」について、(甲1a)の各請求項の記載や(甲1b)の記載からみて、専ら「タッチパネル用」に用いることを意図しているといえる。そして、「硬化膜」の「膜厚」について、(甲1n)の段落[0094]の「本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物を、・・・プリベークする。プリベーク後の膜厚は、10?30μmが好ましい」との記載、[0098]の「本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物を硬化させてなる硬化膜は、OGSタイプのタッチパネルにおける遮光パターンとして好適である。・・・膜厚に特に制限はないが、上記の特性を満たすためには10μm以上が好ましい。」との記載からみて「10μm」以上とすることを意図しているといえるから、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、相違点5は実質的な相違点である。
また、甲第1号証には、甲1発明A1の「組成物」を「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるものとすることを動機づける記載もない。
したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証の記載から容易に発明をすることができたとはいえない。

甲第2号証の上記摘記(甲2a)には、「ネガ型感光性着色組成物」について記載されており、(甲2a)の請求項14?15、(甲2b)の段落[0001]、[0006]、(甲2m)の[0088]の記載からみて、「タッチパネル」用途を意図しているといえ、「硬化膜」の「膜厚」について、(甲2m)の段落[0084]には「乾燥後のプリベーク後の膜厚は、5?30μmが好ましい」と記載されているから、甲1発明A1の「組成物」を、「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるものとすることを動機づける記載があるとはいえない。

甲第3号証の(甲3a)?(甲3q)には、本件発明1と類似の成分組成を有する組成物について、「液晶表示装置」や「固体撮像素子」等に適用することが記載され、さらに、「白色膜の塗布膜厚としては特に限定はないが、解像度と現像性の観点から、0.2μm以上50μm以下が好ましく、・・・更に好ましい」こと(特に(甲3q)を参照)も記載されているが、上述したとおり、甲1発明A1の組成物は、専ら「タッチパネル用」に用いることを意図しているといえるし、「硬化膜」の「膜厚」はその用途に応じて設定されるものであるから、いくら甲第3号証に膜厚について上記記載があったとしても、甲1発明A1の「組成物」を「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるものとすることを動機づけることはできない。
また、甲第4号証の上記摘記(甲4a)?(甲4l)及び甲第5号証の(甲5a)?(甲5k)には、本件発明1と類似の成分組成を有する組成物について、「固体撮像素子」や「タッチパネル」等に適用すること(特に(甲4l)及び(甲5k)を参照)が記載され、さらに、「形成される塗膜の膜厚は、プリベーク後の値として、0.5?20μm程度が好ましい」ことも記載されているが((甲4k)及び(甲5j)を参照)、上述したとおり、甲1発明A1の組成物は、専ら「タッチパネル用」に用いることを意図しているといえるし、「硬化膜」の「膜厚」はその用途に応じて設定されるものであるから、いくら甲第4?5号証に膜厚について上記記載があったとしても、甲1発明A1の「組成物」を「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるものとすることを動機づけることはできない。

したがって、本件発明2は、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

令和2年9月28日付け取消理由通知書では、請求項11に着目した甲1発明B1を認定したが、本件発明2と甲1発明B1とを対比すると、上記相違点5と同じ点でも相違し、相違点5は、上述のとおり、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1?5号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明17について
(ア)対比
本件発明17と甲1発明A1とを、上記イ(ア)での検討を踏まえて対比すると、

「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する、組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%である、組成物。」
である点で一致し、
上記イ(ア)に記載の相違点1?3に加えて、以下の点で相違する。

相違点6:「組成物」について、本件発明17では、これを「用いて形成された硬化膜を用いた光学センサー」とするのに対し、甲1発明A1では、「光学センサー」とすることの特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点6について検討する。

上記イ(イ)で検討したとおり、甲1発明A1の「組成物」について、甲第1号証の(甲1a)の各請求項の記載や(甲1b)からみて、専ら「タッチパネル用」に用いることを意図しているといえる。甲第1号証の他の記載をみても、「タッチパネル用」以外の用途で用いることは記載されておらず、「光学センサー」の用途で用いることは記載されていないから、本件発明17は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、相違点6は実質的な相違点である。
また、甲第1号証には、甲1発明A1の「組成物」を「光学センサー」とすることを動機づける記載もない。
したがって、本件発明17も、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証の記載から容易に発明をすることができたとはいえない。

さらに、上記イ(イ)で検討したとおり、甲第2?5号証をみても、甲1発明A1の「組成物」を、「光学センサー」とすることを動機づける記載もない。

したがって、本件発明17も、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

令和2年9月28日付け取消理由通知書では、請求項11に着目した甲1発明B1を認定したが、本件発明17と甲1発明B1とを対比すると、上記相違点6と同じ点で相違し、相違点6は、上述のとおり、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明17は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第1?5号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明3、5?9、13?16、18について
本件発明3、5?9、13?16、18は、本件発明1?2を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3、5?9、13?16、18は、上記イ(イ)及びウ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ まとめ
以上のとおり、取消理由A及び取消理由B-1は、理由がない。

(2)取消理由B-2について
ア 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証の上記摘記(甲3u)には、実施例5の「白色感光性樹脂組成物」として、

「上記の方法で調製した青顔料分散液(C-1):0.03部
・実施例1と同様に調製した二酸化チタン分散液:36.66部
・前記バインダー(B-1)40質量%PGMEA溶液:31.57部
・重合性モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート):8.92部
・前記重合開始剤(K-2):2.54部
・着色防止剤((株)アデカ製アデカスタブAO-80):0.21部
・シランカップリング剤(N-2-(アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン):0.04部
・重合禁止剤(p-メトキシフェノール):0.01部
・界面活性剤(DIC社製メガファックF-781F)0.2質量%PGMEA溶液:4.17部
・PGMEA :3.10部
・シクロヘキサノン:12.75部
を含む白色感光性樹脂組成物」
が記載されているといえる。

この実施例5の「白色感光性樹脂組成物」の「上記の方法で調製した青顔料分散液(C-1):0.03部」について、(甲3t)をみると、その組成は、
「・C.I.Pigment Blue 15:6:88.80部
・C.I.Pigment Violet 23:23.20部
・分散剤(ソルスパース36000;ルーブリゾール社製)30質量%PGMEA溶液:152.00部
・PGMEA:536.00部」
であり、「C.I.Pigment Blue 15:6」及び「C.I.Pigment Violet 23」、「分散剤(ソルスパース36000)」を含有するものであるといえる。
(甲3i)の記載からみて「C.I.Pigment Blue 15:6」は「青色顔料」であり、「C.I.Pigment Violet 23」は「紫色顔料」であり、「青顔料分散液(C-1)」の全体の800部のうち、「青色顔料」と「紫色顔料」の合計で112部配合されているといえる。そして、実施例5の「白色感光性樹脂組成物」に、この「青顔料分散液(C-1)」は0.03部配合されるから、実施例5の「白色感光性樹脂組成物」中に、「青色顔料」と「紫色顔料」は、0.0042部(=112部/800部 × 0.03部)含まれていることになる。

また、実施例5の「白色感光性樹脂組成物」に「分散剤(ソルスパース36000;ルーブリゾール社製)30質量%PGMEA溶液」は、0.0057部(=152.00部/800部 × 0.03部)含まれていることになる。

次に、実施例5の「白色感光性樹脂組成物」の「実施例1と同様に調製した二酸化チタン分散液:36.66部」について、(甲3r)をみると、その組成は、
「・二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)(純度90%以上):540.00部
・分散剤(A-1)(30質量%PGMEA溶液):129.00部
・プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート(PGMEA):531.00部」
であり、「二酸化チタン分散液」全体の1200部のうち、「二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)」は540部配合されているといえる。そして、実施例5の「白色感光性樹脂組成物」に、この「二酸化チタン分散液」は36.66部配合されるから、実施例5の「白色感光性樹脂組成物」中に、「二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)」は、16.497部 (=540部/1200部 × 36.66部) 含まれていることになる。

また、「分散剤(A-1)(30質量%PGMEA溶液)」は、実施例5の「白色感光性樹脂組成物」中に、3.935部(=129.00部/1200部 × 36.66部)含まれていることになる。

そうすると、甲第3号証には、
「青色顔料と紫色顔料 0.0042部
分散剤(ソルスパース36000;ルーブリゾール社製)(30質量%PGMEA溶液) 0.0057部
二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2) 16.497部
分散剤(A-1)(30質量%PGMEA溶液) 3.935部
バインダー(B-1)40質量%PGMEA溶液 31.57部
重合性モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート) 8.92部
前記重合開始剤(K-2) 2.54部
着色防止剤((株)アデカ製アデカスタブAO-80) 0.21部
シランカップリング剤(N-2-(アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン) 0.04部
重合禁止剤(p-メトキシフェノール) 0.01部
界面活性剤(DIC社製メガファックF-781F)0.2質量%PGMEA溶液 4.17部
PGMEA
シクロヘキサノン 12.75部
を含む白色感光性樹脂組成物」(以下「甲3発明A1」という。)の発明が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明A1とを対比する。

甲3発明A1の「白色感光性樹脂組成物」は、合計で100部であり、そのうち、固形分は、42.04部
(= 0.0042部 + 0.0057部×0.3(30%) + 16.497部 + 3.935部×0.3(30%) + 31.57部×0.4(40%) + 8.92部 + 2.54部 + 0.21部 + 0.04部 + 0.01部 + 4.17部×0.002(0.2質量%))
であり、固形分濃度は、42.04%であるから、本件発明1の「固形分の濃度が60質量%以下」の範囲内であるといえる。

甲3発明A1の「バインダー(B-1)」は、(甲3c)、(甲3s)及び本件明細書の(本b)の【0011】、【0033】の記載からみて、本件発明1の「水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマー」である「(A)バインダー」であるといえる。
また、甲3発明A1の「バインダー(B-1)」の含量は、「白色感光性樹脂組成物」中12.628部(=31.57部×0.4(40%))であり、全固形分中30.0%(=12.628部 ÷ 42.04部)であるから、本件発明1の「(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%」の範囲内であるといえる。

甲3発明A1の「重合性モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)」は、(甲3d)及び本件明細書の(本c)の段落【0039】、【0040】の記載からみて、本件発明1の「末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物」である「(B)モノマー」であるといえる。
また、甲3発明A1の「重合性モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)」の含量は、「白色感光性樹脂組成物」中に、8.92部であり、全固形分中に21.2%(=8.92部 ÷ 42.04部)であるから、本件発明1の「(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%」の範囲内といえる。

甲3発明A1の「重合開始剤」は、(甲3e)、(甲3s)及び本件明細書の(本d)の段落【0075】、【0094】の記載からみて、本件発明1の「光重合開始剤」である「(C)重合開始剤」に相当する。
また、甲3発明A1の「重合開始剤」の含量は、「白色感光性樹脂組成物」中2.54部であり、全固形分中6.04%(=2.54部 ÷ 42.04部)であるから、本件発明1の「(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%」の範囲内といえる。

甲3発明A1の「二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)」は、引用文献Fの上記摘記(引F1)の記載からみて、「平均粒子径」は「250nm」であるから、本件発明1の「平均粒径50nm以上の粒子」であって、「(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上」のものに相当する。

甲3発明A1の「PGMEA」は、(甲3r)の記載からみて、「プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート」の略である。
甲3発明A1の「PGMEA」及び「シクロヘキサノン」は、(甲3h)及び本件明細書の(本g)の段落【0223】の記載からみて、本件発明1の「(E)溶剤」に相当する。

甲3発明A1の「青色顔料と紫色顔料」は、(甲3i)及び本件明細書の(本h)の段落【0226】の記載からみて、本件発明1の「青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない」ものであって、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」の「色材」と、「色材」である限りにおいて一致する。

また、甲3発明A1において、「青色顔料と紫色顔料」は0.0042部、「二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)」は16.497部配合されているから、「二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)」と「青色顔料と紫色顔料」との合計を100質量部とした場合に、「青色顔料と紫色顔料」は 0.025(質量部)(= 0.0042(部)×100(質量部)/(16.497+0.0042)(部)) 配合されていることになる。

甲3発明A1の「分散剤(ソルスパース36000;ルーブリゾール社製)」は、(甲3a)の請求項8?11の記載からみて、本件発明1の「酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤」であるといえる。
また、甲3発明A1の「分散剤(A-1)」は、(甲3r)の記載からみて「二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)」を分散するためのものであって、段落【0244】の化学構造式からみて「カルボン酸基」を有するものであるから、本件明細書の(本f)の【0101】の「本発明の組成物は、組成物中での粒子(D)の分散性を向上させる観点から分散剤を含有することが好ましく、吸着部位を有する高分子分散剤を含有することがより好ましい。・・・本発明における吸着部位としては、・・・、カルボン酸塩基、・・・よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基等が挙げられる」との記載からみて、本件発明1の「酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤」であるといえる。
甲3発明A1の「分散剤(ソルスパース36000;ルーブリゾール社製)」及び「分散剤(A-1)」の含量は、「白色感光性樹脂組成物」中にそれぞれ、
0.00171部(=0.0057部×0.3(30%))、1.1805部(=3.935部×0.3(30%))、合計で、1.182部であり、全固形分中2.81%(=1.182部 ÷ 42.04部)となるから、本件発明1の「分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%」の範囲内といえる。

甲3発明A1の「シランカップリング剤(N-2-(アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)」は、本件発明1の「シランカップリング剤」に相当する。
甲3発明A1の「シランカップリング剤(N-2-(アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)」の含量は、「白色感光性樹脂組成物」中0.04部であり、全固形分中0.09%(=0.04部 ÷ 42.4部)であるから、本件発明1の「シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%」の範囲内といえる。

そうすると、本件発明1と甲3発明A1とは、

「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である、組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点7: 「色材」について、本件発明1では、「青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない」ものであり、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を「(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上」含むものであるのに対し、甲3発明A1では、「青色色材」を「二酸化チタン(石原産業(株)製 CR-90-2)」との合計を100質量部とした場合に0.025部含む点。

相違点8:「組成物」について、本件発明1では、「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものであるのに対し、甲3発明A1では、用途についての特定がない点。

(イ)判断
相違点7について検討する。

甲3発明A1は、「白色感光性樹脂組成物」に係る発明であり、(甲3i)には「本発明の白色感光性樹脂組成物により形成される白色硬化膜の耐着色性を向上させる観点から、本発明の白色感光性樹脂組成物に青色顔料ないしは紫色顔料を含有させることができる」と、着色を目的とするものではなく「白色硬化膜の耐着色性を向上」させる目的で「青色顔料」ないしは「紫色顔料」を含有させることが記載されている。そして、甲第3号証には、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を含有させることは記載されていない。
したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明であるとはいえず、相違点7は実質的な相違点である。
また、甲第3号証の記載から容易に発明をすることができたとはいえない。

引用文献Gの(引G1)には「・・・遮光層は、白色系樹脂層を有することで白色系の色を呈し、前記白色系樹脂層は、少なくとも白色顔料と、黄変による色変化を補正して元の色に近づけるように補正する黄変補正化合物とを、硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂バインダ中に含む、表示装置用前面保護板」、「黄変補正化合物」である「着色顔料」を用いた「表示装置用前面保護板」、「タッチパネル用の透明電極及び不透明な配線も有する表示装置用前面保護板」が記載され、(引G3)には、「本発明において、白色系の色を呈するとは、純粋な白色(純白)以外に、アイボリー色、ベージュ色、赤みの白である赤白色(薄いピンク色)、黄みの白である黄白色、青みの白である青白色、緑みの白である緑白色、紫みの白である紫白色、茶色みの白である茶白色、黒みの白である灰色(ライトグレー)、銀色みの白である銀白色、金色みの白である金白色などの、有彩色で白っぽい色、及び無彩色で白っぽい色、も含む」と、(引G4)には、「白色系樹脂層3に用いる着色顔料としては、通常は、白色顔料が主要な顔料として用いられる。更に、純色以外の、アイボリー、ライトグレーなどの白色系の色を表現する為に、黒色顔料も含めて、任意の色を呈する着色顔料を併用することができる。・・・白色以外の着色顔料は、例えば、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料、黒色顔料などを用いることができる。」と、「白色系の色」として、「白色顔料」のほか、「赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料、黒色顔料などを用いることができる」ことが記載されている。
一方、(引G4)には、「前記着色顔料の含有量は、白色系樹脂層3で表現する白色系の色の透明感、白色系の色に期待する緻密感等にもよるが、着色顔料及び樹脂バインダを含む白色系樹脂層3の全固形分量に対する着色顔料の量の百分率で表した、顔料濃度で、例えば、通常10?60%程度である。言い換えると、白色系樹脂層3の全固形分100質量部に対して、着色顔料は、通常、10?60質量部の範囲である。」ことが記載されているが、本件発明1の「(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上」含むものであること、すなわち、「赤色顔料、黄色顔料、・・・、緑色顔料、・・・、黒色顔料」の含有量が、「白色顔料」と「赤色顔料、黄色顔料、・・・、緑色顔料、・・・、黒色顔料」との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上」となることまで記載されていない。さらに、(引G4)の「顔料濃度」は「白色顔料」も含む濃度であると解され、「赤色顔料、黄色顔料、・・・、緑色顔料、・・・、黒色顔料など」を用いる場合は、「黄変補正化合物」である「青色顔料」及び「紫色顔料」を除き、「白色系の色」を維持するために、ごく少量であると解される。
さらに、引用文献Gは、「表示装置用前面保護板」に係るものであり、「光電変換素子」とは異なるものである。
そうすると、引用文献Gからは、「着色」を目的とした「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤」の添加について記載されていない甲3発明A1において、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を含むものとし、さらに、「白色顔料」と「赤色顔料、黄色顔料、・・・、緑色顔料、・・・、黒色顔料」との合計を100質量部とした場合に、「0.1質量部以上」含むことまでも動機づけることはできない。

甲第1号証の(甲1l)には「本発明のタッチパネル用ネガ型感光性白色組成物は、白色性を損なわない程度に(I)着色剤を含有しても構わない。・・・(I)着色剤を含有することにより、黄色味、赤味又は青味等様々な色みを呈した白色硬化膜を得ることができる。・・・有機顔料としては、例えば、ピグメントイエロー・・・等の黄色有機顔料、・・・等のオレンジ色有機顔料、・・・等の赤色有機顔料、・・・等の紫色有機顔料、、ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、22、60若しくは64等の青色有機顔料、・・・等の緑色有機顔料、又は、・・・等の黒色有機顔料が挙げられる・・・有機顔料の添加量としては、白色性の観点から50?5000ppmが好ましい」ことも記載されている。
しかしながら、甲第1号証は「タッチパネル」の用途を意図したものであり、「光電変換素子」とは異なるものである。
そうすると、甲第1号証からは、「着色」を目的とした「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤」の添加について記載されていない甲3発明A1において、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を含むものとし、さらに、「白色顔料」と「着色材」との合計を100質量部とした場合に、「0.1質量部以上」含むことまでも動機づけることはできない。

甲第2号証の(甲2d)にも、「本発明のネガ型感光性着色組成物は、(A)白色顔料以外の着色剤を含有しても構わない。・・・有機顔料としては、例えば、・・・等の黄色有機顔料、・・・等のオレンジ色有機顔料、・・・等の赤色有機顔料、・・・等の紫色有機顔料、・・・等の青色有機顔料、・・・等の緑色有機顔料、又は、・・・等の黒色有機顔料が挙げられる」ことが記載されているが、甲第2号証も「タッチパネル」の用途を意図したものであり、「光電変換素子」とは異なるものである。
そうすると、甲第2号証からも、「着色」を目的とした「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤」の添加について記載されていない甲3発明A1において、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を含むものとし、さらに、「白色顔料」と「有機顔料」との合計を100質量部とした場合に「0.1質量部以上」含むことまでも動機づけることはできない。

甲第4号証の(甲4a)の請求項17、及び 甲第5号証の(甲5a)の請求項17には、「カラーフィルター」の用途で用いることが記載されているものの、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を含むものとすること及びその配合量については記載されていないから、甲第4?5号証からも、甲3発明A1において、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を含むものとし、さらに、「白色顔料」と「着色剤」との合計を100質量部とした場合に、「0.1質量部以上」含むことまでも動機づけることはできない。

したがって、本件発明1は、甲第1?5号証及び引用文献Gから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

令和2年9月28日付け取消理由通知書では、請求項10に着目した甲3発明B1を認定したが、本件発明1と甲3発明B1とを対比すると、上記相違点7と同じ点でも相違し、相違点7は、上述のとおり、甲第1?5号証及び引用文献Gから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び甲第1?5号証及び引用文献Gに記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲3発明A1とを、上記イ(ア)での検討を踏まえて対比すると、
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である、組成物。」
である点で一致し、
上記相違点7に加えて、以下の点で相違する。

相違点9:「組成物」について、本件発明2では、「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるのに対し、甲3発明A1では、そのような用途の特定がない点。

(イ)判断
相違点7について、上記イ(イ)で述べたとおりであるから、本件発明2も、甲第1?5号証及び引用文献Gから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

令和2年9月28日付け取消理由通知書では、請求項10に着目した甲3発明B1を認定したが、本件発明2と甲3発明B1とを対比すると、上記相違点7と同じ点でも相違し、相違点7は、上述のとおり、甲第1?5号証及び引用文献Gから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明2も、甲第3号証に記載された発明及び甲第1?5号証及び引用文献Gに記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明17について
(ア)対比
本件発明17と甲3発明A1とを、上記イ(ア)での検討を踏まえて対比すると、
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である、組成物。」
である点で一致し、
上記相違点7に加えて、以下の点で相違する。

相違点10: 「組成物」について、本件発明17では、これを「用いて形成された硬化膜を用いた光学センサー」とするのに対し、甲3発明A1では、「光学センサー」とすることは記載されていない点。

(イ) 判断
相違点7について、上記イ(イ)で述べたとおりであるから、本件発明17も、甲第1?5号証及び引用文献Gから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

令和2年9月28日付け取消理由通知書では、請求項10に着目した甲3発明B1を認定したが、本件発明17と甲3発明B1とを対比すると、上記相違点7と同じ点でも相違し、相違点7は、上述のとおり、甲第1?5号証及び引用文献Gから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明17も、甲第3号証に記載された発明及び甲第1?5号証及び引用文献Gに記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明3、5?9、13?16、18について
本件発明3、5?9、13?16、18は、本件発明1?2を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3、5?9、13?16、18は、上記イ(イ)及びウ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ まとめ
以上のとおり、取消理由B-2は、理由がない。

(3)取消理由Cについて
取消理由Cの概要は、以下の(ア)のとおりである。

(ア)取消理由C
本件発明の課題は、本件明細書の段落【0005】に記載の「面内の均一性が高く、可視域の透過率が平坦であり、耐性、リソ性、保存安定性、密着性、再分散性、塗布均一性に優れた硬化膜を形成し得る組成物、硬化膜、パターン、パターンの製造方法、光学センサー、及び撮像素子を提供する」ことであるところ、訂正前の請求項1は、「色材」と「(D)の粒子」との添加量の関係は特定されているものの、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(E)溶剤」、「色材」については特定されておらず、幅広い態様のものを包含するものとなっている。
本件明細書の実施例及び比較例をみると、実施例1?32は、特定の「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(E)溶剤」、「色材」、さらに、「着色防止剤」、「シランカップリング剤」、「重合禁止剤」、「界面活性剤」を含有し、各特定の成分の配合量を代えた例のみしか開示されていない。そして、比較例は、実施例1の「二酸化チタン」について、平均粒径を変えたものである比較例1のみであって、評価した物性も、段落【0326】?【0330】の「分光測定(透過率)」、「面内均一性」、「分光平坦性」のみであり、実施例1と比較例1の結果の比較で読み取れることは、実施例1は比較例1に比べて、「面内均一性」、「分光平坦性」が改善されたことである。
そうすると、本件発明の上記課題のうち、「耐性、リソ性、保存安定性、密着性、再分散性、塗布均一性に優れた硬化膜を形成し得る」ことについて、本件明細書の段落【0002】には「・・・これらの白色のレジストはセンサーの組み立て等のプロセスに耐えるために、高い耐性や密着性が必要とされる。また、白色のレジストは必要な場所のみにパターンを形成する為にリソ性が必要とされる。また、白色のレジストは光の散乱を利用する為、粒径が50nm以上の比較的大きい粒子を用いており、安定性が懸念される。このため、保存安定性、再分散性も重要な点となる」との記載があるが、「粒径が50nm以上の比較的大きい粒子を用い」た場合であっても、これらの課題が解決できたかどうかは、依然として不明である。
また、発明の詳細な説明には、各成分の作用や添加量を特定することの意義について一応の記載はされているものの、上述したとおり、実施例においては、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(E)溶剤」の各成分について特定の化学構造を有するものしか実施されていない。そして、「組成物」については、各成分の化学構造、物性・性質、配合量、さらには、各成分の相互作用等により、「組成物」の物性・性質が変化することは技術常識であるところ、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(E)溶剤」、その他の成分について何ら特定せずに、どのようなものであっても、上記本件発明の課題を解決することができると、当業者が認識できるとは認められない。
したがって、本件訂正前の請求項1に係る発明は、本件発明の課題に照らして、本件明細書に記載されているとは認められない。
また、同様に、本件訂正前の請求項2?18に係る発明も、本件発明の課題に照らして、本件明細書に記載されているとは認められない。

(イ)判断
a 特許法第36条第6項第1号(サポート用件)の判断について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(平成17年(行ケ)第10042号、「偏光フィルムの製造法」事件)。そこで、この点について、以下に検討する。

b 本件発明の課題について
本件発明の課題は、本件明細書の段落【0005】に記載の「面内の均一性が高く、可視域の透過率が平坦であり、耐性、リソ性、保存安定性、密着性、再分散性、塗布均一性に優れた硬化膜を形成し得る組成物、硬化膜、パターン、パターンの製造方法、光学センサー、及び撮像素子を提供する」ことであると認められる。

c 判断
本件訂正により、訂正前の請求項1?3、5?9、13?18における「組成物」について、訂正前の「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「(D)平均粒径50nm以上の粒子」、「(E)溶剤」、「色材」に加えて、「分散剤」及び「シランカップリング剤」を含有するものと特定し、「色材」及び「(E)溶剤」についてその内容を特定し、「(A)バインダー」、「(B)モノマー」、「(C)重合開始剤」、「分散剤」のそれぞれについてその内容及び含有量を特定するとともに、「シランカップリング剤」の含有量及び「組成物」の「固形分の濃度」が特定された。

「(A)バインダー」について「水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマー」であることが特定され、また、「(C)重合開始剤」について「光重合開始剤」であることが特定されたことにより、露光現像に適したものになること、すなわち、リソ性の点から適切なものになることは当業者であれば理解できるといえる。
「(B)モノマー」について「末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物」であることが特定されたことにより、硬化により耐性が良好になることは当業者であれば理解できるといえる。
「組成物」中に、「分散剤」を含むことを特定し、さらに、「分散剤」について「酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤」であることが特定されたことにより、保存安定性や再分散性が優れたものになることは当業者であれば理解できるといえる。
「組成物」中に、「シランカップリング剤」を含むことを特定したことにより、基剤との密着性が良好なものになることは当業者であれば理解できるといえる。
また、「固形分濃度」を「60質量%以下」と特定したことにより、塗布均一性が良好なものになることは当業者であれば理解できるといえる。

そして、本件明細書の実施例及び比較例をみると、実施例1?32と比較例1との結果から、「(D)の粒子」を特定したことにより、「面内均一性」、「分光平坦性」が改善されたことは当業者であれば理解できる。

したがって、本件発明1?3、5?9、13?18は、発明の詳細な説明の記載又は技術常識により、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものになったといえる。

(ウ)小括
以上のとおり、取消理由C(サポート要件)は、本件訂正により解消されたといえるから、理由がない。

3 特許異議申立書に記載された申立理由について
(1)申立理由1(新規性)、申立理由2-1(進歩性)について
申立理由1及び申立理由2-1(進歩性)は、取消理由A(新規性)及び取消理由B-1(進歩性)と同旨であり、上記2(1)で検討したとおり、理由はない。

(2)申立理由2-2(進歩性)について
ア 甲第2号証に記載された発明について
甲第2号証の(甲2o)の段落[0171]及び[0172]には、実施例37に着目すると、
「27.94gの顔料分散液(MW-10)、
5.19gのシロキサン樹脂溶液(b-11)、
5.19gのアロニックスM-315、
0.52gのイルガキュア819、
0.77gのカレンズMT-PE1、
1.29gのシランカップリング剤混合溶液(g-1)並びに
9.09gのプロピレングリコールモノメチルエーテル
を撹拌混合して得た、ネガ型感光性着色組成物(W-37)」
が記載されている。

このうち、(甲o)の段落[0168]をみると、
「アロニックスM-315」は、「エトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートの混合物」であり、
「イルガキュア819」は、「ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド」であり、
「カレンズMT-PE1」は「ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)」であるといえる。

また、「シロキサン樹脂溶液(b-11)」について、(甲2n)の段落[0117]の「(合成例11)シロキサン樹脂溶液(b-11)の合成」には、
「36.07gのジメトキシジメチルシラン(0.30モル)、73.31gのジメトキシジフェニルシラン(0.30モル)、46.86gの3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.20モル)、13.12gの3-トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸(0.05モル)、13.92gの3-グリシジロキシシプロピルトリメトキシシラン(0.05モル)、19.83gのフェニルトリメトキシシラン(0.10モル)及び131.48gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとした以外は、合成例1と同様にしてシロキサン樹脂溶液(b-11)を得た。」と記載され、
段落[0107]の「(合成例1)シロキサン樹脂溶液(b-1)の合成」には、「6.01gのジメトキシジメチルシラン(0.05モル)、122.18gのジメトキシジフェニルシラン(0.50モル)、46.86gの3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.20モル)、13.12gの3-トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸(0.05モル)、12.32gの3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン(0.05モル)、29.75gのフェニルトリメトキシシラン(0.15モル)及び156.52gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、500mLの三ツ口フラスコに仕込んだ。溶液を室温で撹拌しながら、54.0gの水に2.0gのリン酸を溶かしたリン酸水溶液を30分かけて添加した。その後、フラスコを40℃のオイルバスに浸けて30分撹拌した後、オイルバスを70℃に設定して30分間加熱し、さらにオイルバスを110℃にまで昇温した。昇温開始3時間後に、反応を終了した。このとき、溶液の内温はオイルバスの設定より5℃程度低い温度まで上昇した。反応中に生成するメタノールや消費されなかった水は、蒸留により取り除いた。得られたポリシロキサンのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液が、ポリマー濃度が50質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて、シロキサン樹脂溶液(b-1)を得た」と記載されており、
段落[0117]の「(合成例11)シロキサン樹脂溶液(b-11)の合成」の「36.07gのジメトキシジメチルシラン(0.30モル)、73.31gのジメトキシジフェニルシラン(0.30モル)、46.86gの3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(0.20モル)、13.12gの3-トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸(0.05モル)、13.92gの3-グリシジロキシシプロピルトリメトキシシラン(0.05モル)、19.83gのフェニルトリメトキシシラン(0.10モル)」は反応により「シロキサン樹脂」になると解され、「シロキサン樹脂溶液(b-11)」は、「ポリマー濃度が50質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」の溶液になるといえる。

「顔料分散液(MW-10)」について、(甲2o)の段落[0171]には「シロキサン樹脂溶液(b-1)の代わりに、シロキサン樹脂溶液(b-11)を使用する以外は、実施例1と同様にして、顔料分散液(MW-10)を得た」と記載され、
段落[0134]には、「13.00gの白色顔料すなわち二酸化チタン顔料(CR-97;石原産業(株)製)、26.00gのシロキサン樹脂溶液(b-1)及び1.00gのプロピレングリコールモノメチルエーテルを混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液(MW-1)を得た」と記載されていることから、「顔料分散液(MW-10)」は、
「13.00gの白色顔料すなわち二酸化チタン顔料(CR-97;石原産業(株)製)
26.00gのシロキサン樹脂溶液(b-11)
1.00gのプロピレングリコールモノメチルエーテル
を混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散」したものといえる。
そして、実施例37の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」には、「顔料分散液(MW-10)」が「27.94g」が配合されているから、実施例37の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」中に、
「二酸化チタン顔料(CR-97;石原産業(株)製)」が、9.08g(=13.00g × 27.94g ÷ 40g)、
「シロキサン樹脂溶液(b-11)(50質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)」は、18.16g(= 26.00g × 27.94g ÷ 40g)
「プロピレングリコールモノメチルエーテル」は、0.70g(= 1.0g × 27.94g ÷ 40g)
含まれていることになる。

また、「シランカップリング剤混合溶液(g-1)」は、(甲2n)の段落[0133]の記載からみて、固形分濃度が「20質量%」の「PGMEA」の溶液であり、「PGMEA」は「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」の略称である。

そうすると、甲第2号証には、
「二酸化チタン顔料(CR-97;石原産業(株)製) 9.08g
シロキサン樹脂溶液(b-11)(50質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液) 23.35g
エトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートの混合物 5.19g
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド 0.52g
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート) 0.77g
シランカップリング剤混合溶液(g-1)(20質量% プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液) 1.29g
プロピレングリコールモノメチルエーテル 9.79g
を撹拌混合して得た、ネガ型感光性着色組成物(W-37)」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。

甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」は、合計で「49.99g」であり、うち、「プロピレングリコールモノメチルエーテル」及び「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」は(甲2g)の記載からみて「有機溶媒」であるといえる。甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」の「全固形分」は、18.49g(= 23.5g×0.5(50質量%) + 5.19g + 0.52g + 0.77g + 1.29×0.2(20質量%))であるから、「固形分濃度」は、37.0%であるといえる。

甲2発明の「シロキサン樹脂」は、本件発明1の「(A)バインダー」に相当する。
また、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」において、「シロキサン樹脂」の含量は、11.75g(=23.35g × 0.5(50質量%))であるから、全固形分中63.5%(= 11.75g÷18.49g)であるから、本件発明1の「(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%」の範囲内であるといえる。

甲2発明の「エトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート」は、(甲2e)の記載からみて、「多官能アクリルモノマ」であり、本件発明1の「末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物」である「(B)モノマー」に相当する。
また、甲2発明の「エトキシ化イソシアヌル酸ジアクリレート及びエトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート」の含量は、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」中に5.19gであり、全固形分中28.0%(=5.19÷18.49)であるから、本件発明1の「(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%」の範囲内であるといえる。

甲2発明の「ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド」は、(甲2f)の記載からみて「光ラジカル重合開始剤」であり、本件発明1の「光重合開始剤」である「(C)重合開始剤」に相当する。
また、甲2発明の「ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド」の含量は、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」中に0.52gであり、全固形分中2.81%(=0.52g÷18.49g)であるから、本件発明1の「(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%」の範囲内であるといえる。

甲2発明の「二酸化チタン顔料(CR-97;石原産業(株)製)」は、引用文献Aの(引1A)の記載からみて「平均粒子径」が「200nm」であるから、本件発明1の「(D)平均粒径50nm以上の粒子」であって「二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上」のものに相当する。

甲2発明の「シランカップリング剤混合溶液(g-1)(20質量% プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)」の「シランカップリング剤」は、本件発明1の「シランカップリング剤」に相当する。
また、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」において、甲2発明の「シランカップリング剤」の含量は、0.258g(=1.29g×0.2(20質量%))であり、全固形分中1.40%(=0.258g×18.49g)であるから、本件発明1の「シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%」の範囲内である。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である、組成物。」
で一致し、以下の点で相違する。

相違点11:「(A)バインダー」について、本件発明1では、「水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマー」であるのに対し、甲2発明では、そのような物性及び化学構造が明らかでない点。

相違点12:「組成物」中に、本件発明1では、「酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤」である「分散剤」を「組成物の全固形分中、1?40質量%」含むのに対し、甲2発明には、「分散剤」を含んでいない点。

相違点13:「色材」について、本件発明1では、「青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない」ものであり、「赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上」を「(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上」含むものであるのに対し、甲2発明では、そのような色材を含んでない点。

相違点14:「組成物」について、本件発明1では、「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものであるのに対し、甲2発明では、用途についての特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点14について検討する。

甲第2号証の上記摘記(甲2a)の請求項14?15、(甲2b)の段落[0001]、[0006]、(甲2m)の[0088]の記載からみて、専ら「タッチパネル」用途を意図しているものであるといえる。また、甲第2号証の他の記載をみても、「タッチパネル用」以外の用途で用いることは記載されておらず、「光電変換素子」の用途で用いることは記載されていないから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、相違点14は実質的な相違点である。
また、甲第2号証には、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」を「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものとすることを動機づける記載もない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明とはいえず、また、甲第2号証の記載から容易に発明をすることができたともいえない。

甲第1号証も、上記2(1)イ(イ)で検討したとおり、専ら「タッチパネル」用途を意図しているものであるから、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」を、「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものとすることを動機づける記載はない。
また、甲第3?5号証には、上記2(1)イ(イ)で述べたとおりの記載があるが、「タッチパネル」を用途として意図している甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」を「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものとすることを動機づけることはできない。

したがって、本件発明1は、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1?5号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲2発明とを、上記イ(ア)での検討を踏まえて対比すると、
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である、組成物。」
で一致し、上記イ(ア)に記載の相違点11?13に加えて、以下の点で相違する。

相違点15:「組成物」について、本件発明2では、「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるのに対し、甲2発明では、そのような用途の特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点15について検討する。

甲第2号証には、「硬化膜」の「膜厚」について、(甲2m)の段落[0084]に「乾燥後のプリベーク後の膜厚は、5?30μmが好ましい」と記載されているが、この記載からは、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」を、「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるものとすることを動機づけられるとはいえない。
したがって、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明とはいえず、実質的な相違点である。
また、甲第2号証から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

甲第1号証には、上記2(1)ウ(イ)で述べたとおり、(甲1n)の段落[0094][0098]に「10μm」以上とすることを意図している記載があるから、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」を、「膜厚2μm以下の硬化膜を形成するため」に用いるものとすることを動機づける記載があるとはいえない。
また、甲第3?5号証には、上記2(1)ウ(イ)で述べたとおりの記載があるが、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」は、専ら「タッチパネル用」に用いることを意図しているといえるし、「硬化膜」の「膜厚」はその用途に応じて設定されるものであるから、甲第3?5号証にも、甲2発明A1の「組成物」を「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものとすることを動機づける記載があるとはいえない。

したがって、本件発明2は、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1?5号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明17について
(ア)対比
本件発明17と甲2発明とを、上記イ(ア)での検討を踏まえて対比すると、
「(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、シランカップリング剤、及び色材を含有する組成物であって、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である、組成物。」
で一致し、上記イ(ア)に記載の相違点11?13に加えて、以下の点で相違する。

相違点16:「組成物」について、本件発明17では、これを「用いて形成された硬化膜を用いた光学センサー」とするのに対し、甲2発明では、「光学センサー」とすることは記載されていない点。

(イ)判断
事案に鑑みて、相違点16について検討する。

上記イ(イ)で検討したとおり、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物」は、専ら「タッチパネル」用途を意図しているものであり、甲第2号証には「光電変換素子」の用途で用いることは記載されていないから、甲第2号証には、甲2発明の「ネガ型感光性着色組成物(W-37)」を「光電変換素子基板上の塗布に供される」ものとすることを動機づける記載もない。

さらに、上記イ(イ)で検討したとおり、甲第1、3?5号証をみても、甲2発明の「組成物」を、「光学センサー」とすることを動機づける記載もない。

したがって、本件発明17も、甲第1?5号証から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明17は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1?5号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 本件発明3、5?9、13?16、18について
本件発明3、5?9、13?16、18は、本件発明1?2を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3、5?9、13?16、18は、上記イ(イ)及びウ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証?甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ まとめ
以上のとおり、申立理由2-2(進歩性)は、理由がない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、申立書に記載した申立理由1?2によっては、本件発明1?3、5?9、13?18を取り消すことはできない。

第7 むすび
特許第6598868号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-18]について訂正することを認める。
本件発明4、10?12に係る特許に対する申立ては、本件訂正により請求項4、10?12が削除され、申立ての対象が存在しないため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
当審が通知した取消理由および申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1?3、5?9、13?18に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1?3、5?9、13?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下であり、
光電変換素子基板上の塗布に供される、組成物。
【請求項2】
(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の添加量が、前記組成物の全固形分中、0.01質量%?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下であり、
膜厚2μm以下の硬化膜を形成するための、組成物。
【請求項3】
固形分の濃度が30質量%以下である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(D)の粒子が二酸化チタンである請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(D)の粒子の平均粒径が150nm以上である、請求項1、2、3、及び5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに(F)着色防止剤を含む請求項1、2、3、5、及び6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記(F)着色防止剤がフェノール化合物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記(F)着色防止剤がフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するフェノール化合物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
前記(C)重合開始剤が、オキシム化合物である、請求項1、2、3、5、6、7、8、及び9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜。
【請求項15】
基板上に、請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を塗布する工程と、
マスクを介して露光する工程と、露光後の膜を現像してパターンを形成する工程と、を有するパターンの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法により製造されたパターン。
【請求項17】
(A)バインダー、(B)モノマー、(C)重合開始剤、(D)平均粒径50nm以上の粒子、(E)溶剤、分散剤、シランカップリング剤、及び色材を含有し、青色着色剤及び紫色着色剤のいずれも含まない組成物であって、
前記色材が赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、オレンジ色着色剤、及び、有機系黒色着色剤からなる群から選択される一種以上であり、
(D)の粒子が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上であり、
前記色材の添加量が(D)の粒子と前記色材との合計を100質量部とした場合に、0.1質量部以上であり、
前記(A)バインダーが、水あるいは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーであり、前記(A)バインダーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?90質量%であり、
前記(B)モノマーが、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、前記(B)モノマーの含有量が、前記組成物の全固形分中、1?50質量%であり、
前記(C)重合開始剤が、光重合開始剤であり、前記(C)重合開始剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.1?50質量%であり、
前記(E)溶剤が、有機溶剤であり、
前記分散剤が、酸基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、塩基性窒素原子を有する基、複素環基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、カルボン酸塩基、スルホンアミド基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基及び水酸基よりなる群から選択される基を少なくとも1種有する1価の置換基である吸着部位を有する高分子分散剤であり、前記分散剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、1?40質量%であり、
前記シランカップリング剤の含有量が、前記組成物の全固形分中、0.01?15.0質量%であり、
固形分の濃度が60質量%以下である組成物、を用いて形成された硬化膜を用いた光学センサー。
【請求項18】
請求項1、2、3、5、6、7、8、9、及び13のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された硬化膜を用いた撮像素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-05-13 
出願番号 特願2017-543067(P2017-543067)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤本 保  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 杉江 渉
佐藤 玲奈
登録日 2019-10-11 
登録番号 特許第6598868号(P6598868)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 組成物、硬化膜、パターン、パターンの製造方法、光学センサー、及び撮像素子  
代理人 三和 晴子  
代理人 伊東 秀明  
代理人 三橋 史生  
代理人 三橋 史生  
代理人 三和 晴子  
代理人 伊東 秀明  

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