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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E06B
管理番号 1376689
異議申立番号 異議2020-700818  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-22 
確定日 2021-06-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6691100号発明「建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6691100号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。 特許第6691100号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6691100号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成26年5月22日に出願された特願2014-106322号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成29年12月22日に新たな特許出願としたものであり、令和2年4月13日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月28日に特許掲載公報が発行された。その後、令和2年10月22日に特許異議申立人 石井 克彦(以下「申立人」という。)より、請求項1に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。

その後の経緯は、以下のとおりである。
・令和3年1月 8日付け:取消理由通知
・令和3年3月16日: 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
(以下、「本件訂正請求」という。)

本件訂正請求について、申立人に期間を指定して意見を求めたところ、申立人による意見書の提出はなかった。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。以下、同様。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記下框は、前記パネル材を保持する保持用開口部と、前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片を備え、」
と記載されているのを、
「前記下框は、室内側面部、室外側面部および底面部と、前記底面部よりも上方において前記パネル材を保持する保持用開口部および前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部を仕切る仕切り片とを備え、」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、」
と記載されているのを、
「 前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、
前記保持材は、室内側の側片、室外側の側片および下片を有していると共に、前記室外側の側片が上下方向におけるその上縁から下縁にわたって前記下框の室外側面部に接触する位置に配置され、」
に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記ビスによる固定位置は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記パネル材の室内面との間における見込み範囲内に納まっており、
前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、」
と記載されているのを、
「 前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、
前記ビスの中心は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記室内側のガラス板の室外面との間における見込み範囲内に納まっており、」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に、
「請求項1に記載の建具において、
前記框補強材は、前記保持用開口部の下面と面接触する
ことを特徴とする建具。」
と記載されているのを、
「 窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、
前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、
前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、
前記下框は、前記パネル材を保持する保持用開口部と、前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片を備え、
前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、
前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、
前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、
前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、
前記ビスによる固定位置は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記パネル材の室内面との間における見込み範囲内に納まっており、
前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、
前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、
前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結され、
前記框補強材は、前記保持用開口部の下面と面接触する
ことを特徴とする建具。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0008】に、
「 本発明の建具は、窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、前記下框は、前記パネル材を保持する保持用開口部と、前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片を備え、前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、前記ビスによる固定位置は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記パネル材の室内面との間における見込み範囲内に納まっており、前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結されることを特徴とする。
この本発明の建具によれば、下框に設けられてパネル材の荷重を受ける框補強材は不燃性とされる。従って、火災時の輻射熱によって外障子の下框が室外側から溶融しても、框補強材によってパネル材を継続して支持でき、框組みに嵌め込まれたパネル材が下框の呑込部分から外れることがなく、パネル材の脱落を防止できる。
また、建具として、窓枠と、この窓枠内に固定される外障子と、窓枠内に上下スライド開閉する内障子とを備えた上げ下げ窓とすることができ、防火戸として利用可能な上げ下げ窓を提供できる。」
と記載されているのを、
「 本発明の建具は、窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、前記下框は、室内側面部、室外側面部および底面部と、前記底面部よりも上方において前記パネル材を保持する保持用開口部および前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片とを備え、前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、前記保持材は、室内側の側片、室外側の側片および下片を有していると共に、前記室外側の側片が上下方向におけるその上縁から下縁にわたって前記下框の室外側面部に接触する位置に配置され、前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、前記ビスの中心は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記室内側のガラス板の室外面との間における見込み範囲内に納まっており、前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結されることを特徴とする。
この本発明の建具によれば、下框に設けられてパネル材の荷重を受ける框補強材は不燃性とされる。従って、火災時の輻射熱によって外障子の下框が室外側から溶融しても、框補強材によってパネル材を継続して支持でき、框組みに嵌め込まれたパネル材が下框の呑込部分から外れることがなく、パネル材の脱落を防止できる。
また、建具として、窓枠と、この窓枠内に固定される外障子と、窓枠内に上下スライド開閉する内障子とを備えた上げ下げ窓とすることができ、防火戸として利用可能な上げ下げ窓を提供できる。」
に訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0009】に、
「 本発明の建具では、前記框補強材は、前記保持用開口部の下面と面接触することが好ましい。
このような構成によれば、框補強材が保持用開口部の下面と面接触することで、パネル材を安定して支持でき、パネル材の脱落をより確実に防止できる。」
と記載されているのを、
「 本発明の建具は、窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、前記下框は、前記パネル材を保持する保持用開口部と、前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片を備え、前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、前記ビスによる固定位置は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記パネル材の室内面との間における見込み範囲内に納まっており、前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結され、前記框補強材は、前記保持用開口部の下面と面接触することが好ましい。
このような構成によれば、前述した作用効果を発揮するうえ、框補強材が保持用開口部の下面と面接触することで、パネル材を安定して支持でき、パネル材の脱落をより確実に防止できる。」
に訂正する。

(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0026】に、
「下框22の端部と固定装置50とを固定するビス524による固定位置は、図6に示すように、ガラスパネル24の見込み方向における中央とガラスパネル24の室内面との間の見込み範囲内に納まっている。」
と記載されているのを、
「下框22の端部と固定装置50とを固定するビス524による固定位置は、図6に示すように、ガラスパネル24の見込み方向における中央と室内側のガラス板の室外面との間の見込み範囲内に納まっている。」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について

(1)訂正事項1について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「下框」について、「室内側面部、室外側面部および底面部」を備えること、並びに、「下框」が備える「仕切り片」について、「前記底面部よりも上方において」「保持用開口部」および「中空部」を仕切ることを、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。

イ 新規事項の有無
願書に添付した明細書の段落【0023】には、「上部障子20の下框22を形成する底面部223(図5、図6)」と記載され、段落【0025】には、「ここで、下框22は、鉛直な室内側面部221および室外側面部222と、これらを連結する仕切り片28とを有している。」と記載されている。また、願書に添付した図面の図6には、下框22が有する仕切り片28が、底面部223よりも上方において、保持用開口部26および中空部27を仕切る様子が、示されている。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項1における「不燃性の保持材」について、「室内側の側片、室外側の側片および下片を有していると共に、前記室外側の側片が上下方向におけるその上縁から下縁にわたって前記下框の室外側面部に接触する位置に配置され」ることを、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。

イ 新規事項の有無
願書に添付した図面の図6には、保持材242が、室内側の片、下片、室外側の片の3片からなることが示されており、室外側の片については上下方向の上端から下端までが、下框22の室外側面部222に接触している様子が、示されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、訂正前の請求項1における「固定装置」を「下框の端部」に固定する「ビス」の位置について、訂正前には「ビスによる固定位置」が「前記パネル材の見込み方向における中央と前記パネル材の室内面との間における見込み範囲内に納まって」いると特定していたところ、訂正後には「ビスの中心」が「前記パネル材の見込み方向における中央と前記室内側のガラス板の室外面との間における見込み範囲内に納まって」いると特定するものであるから、ビスのどの部位を位置特定の対象とするか、及び、見込み方向におけるビスの位置の範囲を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。

イ 新規事項の有無
願書に添付した図面の図6には、固定装置50を下框22に固定するビス524について、その中心位置が、見込み方向でみて、複層ガラスパネル24の中央より室内側、かつ、複層ガラスパネル24の室内側のガラス板の室外面よりも室外側にある様子が、示されている。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、訂正前の請求項2について、訂正前の請求項1を引用するものであったところ、訂正前の請求項1における特定事項を請求項2に記載することにより、訂正前の請求項1を引用しない独立請求項とするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものである。
また、訂正事項4は、訂正前の請求項2に係る発明を、他の請求項を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項4は、上記アのとおり、訂正前の請求項2に係る発明を、他の請求項を引用しない記載形式とするものであるから、訂正後の請求項2に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に記載されていた、訂正前の請求項2に係る発明と同一である。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5及び7について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5及び7は、明細書の段落【0008】及び【0026】の記載のうち、訂正前の請求項1の記載に対応していた箇所を、訂正事項1ないし3により訂正された訂正後の請求項1の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、訂正事項5及び7は、明細書の段落【0008】及び【0026】の記載を、訂正事項1ないし3により訂正された訂正後の請求項1の記載と整合させるものであるから、訂正事項1ないし3について上記(1)アないし(3)アで述べたのと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5及び7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項5及び7は、明細書の段落【0008】及び【0026】の記載を、訂正事項1ないし3により訂正された訂正後の請求項1の記載と整合させるものであるから、訂正事項1ないし3について上記(1)イないし(3)イで述べたのと同様に、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項5及び7は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項6について
ア 訂正目的、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、明細書の段落【0009】の記載について、訂正前の請求項2の記載に対応していたところ、訂正事項4により訂正された訂正後の請求項2の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
また、訂正事項6は、明細書の段落【0009】の記載を、訂正事項4により訂正された訂正後の請求項2の記載と整合させるものであるから、訂正事項4について上記(4)アで述べたのと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、同法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定にも適合するものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項6は、明細書の段落【0009】の記載を、訂正事項4により訂正された訂正後の請求項2の記載と整合させるものであるから、訂正事項4について上記(4)イで述べたのと同様に、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(7)訂正の対象とする請求項、一群の請求項、及び独立特許要件について
ア 訂正の対象とする請求項、及び一群の請求項について
訂正事項1ないし3、並びに訂正事項5及び7は、訂正前の請求項1について、特許請求の範囲を減縮するとともに、明細書の記載を訂正後の請求項1の記載と整合させるものであるから、請求項1について請求するものである。
訂正事項4及び6は、訂正前の請求項2について、訂正前の請求項1の記載を引用しないものとするとともに、明細書の記載を訂正後の請求項2の記載と整合させるものであるから、請求項2について請求するものである。
そして、訂正前の請求項1及び2について、請求項2は請求項1を引用しているから、訂正事項1ないし7により請求項1及び2についてする本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項[1-2]に対して請求されたものである。

イ 独立特許要件について
訂正事項1ないし3、並びに訂正事項5及び7により、請求項1についてされる訂正は、訂正事項1ないし3により、訂正前の請求項1に係る発明について、特許請求の範囲を減縮するものを含んでいるが、本件においては、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
訂正事項4及び6により、請求項2についてされる訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正後の請求項2に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 本件訂正に対する申立人の主張について
本件訂正請求について、申立人に期間を指定して意見を求めたところ、申立人は本件訂正請求に対する意見書を提出しなかった。
また、本件訂正請求による訂正の適否について、上記2と異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。

4 まとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1及び2について訂正を認める。


第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、
前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、
前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、
前記下框は、室内側面部、室外側面部および底面部と、前記底面部よりも上方において前記パネル材を保持する保持用開口部および前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部を仕切る仕切り片とを備え、
前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、
前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、
前記保持材は、室内側の側片、室外側の側片および下片を有していると共に、前記室外側の側片が上下方向におけるその上縁から下縁にわたって前記下框の室外側面部に接触する位置に配置され、
前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、
前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、
前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、
前記ビスの中心は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記室内側のガラス板の室外面との間における見込み範囲内に納まっており、
前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、
前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結される
ことを特徴とする建具。」


第4 証拠一覧、異議申立理由の概要、取消理由の概要、及び証拠の記載
1 証拠一覧
(1)申立人により、申立書とともに提出された証拠は、以下のとおりである。
・甲第1号証:
三共立山株式会社 三共アルミ社、「三共アルミ 防火サッシF型 片上げ下げ窓 シングルハング アルミ樹脂複合タイプ 面格子付片上げ下げ窓 Low-Eガラス仕様 施工要領書」、第2版 2013年6月修正(第1版 2013年5月発行)

・甲第2号証:
特開2013-79563号公報(平成25年5月2日公開)

・甲第3号証:
特開2013-76261号公報(平成25年4月25日公開)

・甲第4号証:
特開2013-144877号公報(平成25年7月25日公開)

・甲第5号証:
特開2004-251104号公報(平成16年9月9日公開)

・甲第6号証:
実願昭52-173665号(実開昭54-99340号)のマイクロフィルム(昭和54年7月13日公開)

・甲第7号証:
実願昭54-91167号(実開昭56-8790号)のマイクロフィルム(昭和56年1月26日公開)

・甲第8号証:
特開2011-214283号公報(平成23年10月27日公開)

・甲第9号証:
特開2010-275790号公報(平成22年12月9日公開)

・甲第10号証:
特開2004-285749号公報(平成16年10月14日公開)

・甲第11号証:
特開2010-150910号公報(平成22年7月8日公開)

・甲第12号証:
特開2014-218832号公報(参考文献として提出、特願2013-98882号(平成25年5月8日出願)の公開公報、平成26年11月20日公開)

2 異議申立理由、及び取消理由の要旨
(1)申立人による異議申立理由
申立人による異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の原出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第11号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)令和3年1月8日付けの取消理由
当審が令和3年1月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の原出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 証拠に記載された事項
(1)甲第1号証
ア 記載事項
本願の原出願前に発行された甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。

(ア)第1頁 冒頭
「三共アルミ 防火サッシF型 片上げ下げ窓 シングルハング アルミ樹脂複合タイプ 面格子付片上げ下げ窓 Low-Eガラス仕様 施工要領書」

(イ)第2頁
第2頁冒頭には、「施工用同梱ねじ一覧表」と題する表の中に、「タッピンねじ2種」「丸φ4×30×8G5」「障子組み立て用」と記載されている。
第2頁中程には、「各部の名称」と題して、次の説明及び図が示されている。




(ウ)第2頁 下方 「ガラス寸法」の欄
第2頁下方には、「ガラス寸法」と題して、次の表が示されている。




(エ)第3頁 「枠の組み立て」
第3頁には、「枠の組み立て」と題して、「●図-1のように枠を組み立ててください。」の文の後に、次の図-1が示されている。




(オ)第5頁 「障子の組み立て」
a 第5頁には、「障子の組み立て」と題して、次の説明、図、及び「グレイジングチャンネル一覧表」が示されている。




b 上記aの図のうち、外障子の部分の拡大図は、次のとおりである(切り出しは、当審で行った。)。




(カ)第6頁下半分?第7頁 「<外障子の建て込み>」
a 「○1」及び「○2」(当審注;それぞれ丸数字の1及び2を示す。以下、同様。)
第6頁の下半分には、<外障子の建て込み>について、次の「○1」及び「○2」の説明及び図示がある。




b 「○3」及び「○4」
第7頁上方には、<外障子の建て込み>について、上記aの説明に後続する、次の「○3」及び「○4」の説明並びに図示がある(当審注;「○4」の説明の下線は、申立人による。)。




c 「○5」
第7頁中程から下方の右半分には、<外障子の建て込み>について、上記a及びbの説明に後続する、次の「○5」の説明、及び図示がある。
「○5 ロッド棒受け金具をたて枠に押し当てながらねじ止めし、障子を固定します。」




d ロッド棒受け金具の取り付け説明図
第7頁の下方の左半分には、<外障子の建て込み>について、ロッド棒受け金具の取り付けに関して、次の説明及び図示がある。




(キ)第10頁「枠本体の取り付け」
第10頁には、「枠本体の取り付け」と題して、「○2」として、次の説明がある。
「○2 取り付け後、障子の開閉確認を行い、上げと下げの力がほぼ同じになっていることを確認してください。」

(ク)最終頁 「納まり参考図」
a 最終頁には、「納まり参考図」と題して、左側に次の図示がある。




b 上記aの図のうち、外障子の下框周辺部分の拡大図は、次のとおりである。




(ケ)認定事項
上記(ア)より、甲第1号証には、防火サッシの片上げ下げ窓が記載されている。
上記(イ)及び(エ)より、甲第1号証には、片上げ下げ窓が、上枠、下枠、及び左右のたて枠からなる、枠を有することが、記載されている。
上記(イ)及び(ウ)より、甲第1号証には、片上げ下げ窓が、枠内に配置された、FIX部である外障子を有することが、記載されている。
上記(イ)及び(ウ)より、甲第1号証には、片上げ下げ窓が、枠内に、かつ外障子の室内側に配置された、上げ下げ部である内障子を有することが、記載されている。また、上記(キ)における「上げと下げ」とによる「障子」の「開閉」は、上げ下げ部である内障子に関する記載であることが明らかであるから、甲第1号証には、内障子が上げと下げにより障子の開閉を行うものであることも、記載されている。
上記(オ)aにおける「外障子」の図、及び「グレイジングチャンネル一覧表」における「複層ガラス」の語より、甲第1号証には、外障子は、下框を有して框組みした内部に複層ガラスを嵌め込んで構成されることが、記載されている。
上記(オ)aにおける「グレイジングチャンネル一覧表」の記載から、甲第1号証には、外障子及び内障子の複層ガラスは、外側に網入り透明ガラスを用いる場合、及び外側に網入り型ガラスを用いる場合のいずれであっても、外側が網入りで6.8mmのガラス、内側が3mmのガラス、外側のガラスと内側のガラスとの間の空気層が12mmの、計21.8mmの厚さであることが、記載されている。
上記(オ)bにおける外障子の図及び「○2 下框にロッド棒を奥まで差し込んで下さい。」の記載、上記(カ)bにおける「○4 ロッド棒を外障子ストッパーへ十分に押しあててください。」の記載、上記(カ)cにおける「○5 ロッド棒受け金具をたて枠に押し当てながらねじ止めし、障子を固定します。」の記載、並びに、同(カ)cの図示において、ロッド棒受け金具のねじ止めが、外障子の下框に挿入されたロッド棒、及び、ロッド棒が挿入された外障子の下框に対して行われていることから、甲第1号証には、外障子は、外障子の下框の左右端部に差し込んだロッド棒を、たて枠側の外障子ストッパーに十分に押し当てた状態で、ロッド棒受け金具をたて枠に押し当てながら、下框の左右端部に差し込んだロッド棒、及び下框の左右端部に、ロッド棒受け金具をねじ止めすることで固定されることが、記載されている。
上記(イ)の図示における外障子と内障子との位置関係、内障子の上框に設けられた「クレセント」及び外障子の下框に設けられた「クレセント受け」の位置関係、並びに、上記(ク)aの図示に示される内障子が閉じた状態における外障子の下框と内障子の上框との位置関係より、甲第1号証には、外障子の下框は、内障子が閉じた状態で内障子の上框の室外側に位置し、内障子の上框の上部に設けられたクレセントに対応するクレセント受けが外障子の下框の上部に設けられていることが、記載されている。
上記(オ)bにおける外障子の下框の図、及び上記(カ)dにおける外障子の下框の断面図から、上記(イ)に記載される「タッピンねじ」がねじ止めされる箇所を含む下框の構造に着目すると、甲第1号証には、外障子の下框は、複層ガラスを受ける上方に開口した部分と、上方に開口した部分に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片とを備え、仕切り片には、下框にたて框をタッピンねじでねじ止めする、下方に突出したタッピンねじホールが形成されていることが、記載されている。
上記(カ)dにおける外障子の下框の断面図をふまえて、上記(ク)a及びbにおける納まり断面図における外障子の下框周辺を注視すると、外障子の下框の仕切り片の上側、かつ複層ガラスの下に、複層ガラスの室内側面に向かう斜めの線、及び当該斜めの線と連続する線で示される、断面視で薄板状の部材が配置されていることが、看て取れる。また、外障子の下框の仕切り片下の中空部には、断面視で折り曲げ片状の部材が配置されることが、看て取れる。
上記(カ)cの図示において、ロッド棒受け金具のロッド棒へのねじ止めは、ロッド棒受け金具が有する3つのねじ穴のうち、上下方向で見て下方、室内外方向で見て室外側の一つ穴で行われていることをふまえると、上記(カ)dの平面図の図示における、ロッド棒受け金具の一つ穴のねじ穴の位置より、ロッド棒受け金具の、ロッド棒へのねじ止めは、小ねじトラスにより、外障子の複層ガラスの空気層の下方の位置で行われることが、看て取れる。
また、上記(カ)cの図示において、ロッド棒受け金具の下框の左右端部へのねじ止めは、ロッド棒金具が有する3つのねじ穴のうち、上下方向で見て上方、室内外方向で見て室内側の二つ穴で行われていることをふまえると、上記(カ)dの断面図の図示における上方のねじの位置、及び上記(カ)dの平面図の図示におけるロッド棒受け金具の二つ穴のねじ穴の室内外方向の位置より、ロッド棒受け金具の、下框の左右端部へのねじ止めは、外障子の複層ガラスの内側ガラスの略下方の位置で行われ、当該ねじ止めを行うねじ穴は、室外側の端部が外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面と略一致し、当該ねじ穴の中心は、外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面より室内側に位置することが、看て取れる。
上記(カ)dにおける外障子の下框の断面図をふまえて、上記(ク)a及びbにおける納まり断面図における外障子の下框周辺を注視すると、外障子の下框の仕切り片下の中空部に配置される断面視で折り曲げ片状の部材は、見込み方向の室内側及び室外側に、互いに仕切り片からの距離が異なる略水平な部分を有する、柄杓状であり、見込み方向の室外側の略水平な部分は、見込み方向の室内側の略水平な部分よりも仕切り片からの距離が近く、外障子の複層ガラスの外側のガラスの下方の位置で仕切り片のタッピンねじホールと当接していることが、看て取れる。

イ 甲第1号証に記載された発明
上記アより、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「上枠、下枠、及び左右のたて枠からなる、枠と、
枠内に配置された、FIX部である外障子と、
枠内に、かつ外障子の室内側に配置された、上げ下げ部であり、上げと下げにより障子の開閉を行う、内障子と、
を備える、防火サッシの片上げ下げ窓であり、
外障子は、下框を有して框組みした内部に複層ガラスを嵌め込んで構成され、
外障子は、外障子の下框の左右端部に差し込んだロッド棒を、たて枠側の外障子ストッパーに十分に押し当てた状態で、ロッド棒受け金具をたて枠に押し当てながら、下框の左右端部に差し込んだロッド棒、及び下框の左右端部に、ロッド棒受け金具をねじ止めすることで固定され、
外障子の下框は、内障子が閉じた状態で内障子の上框の室外側に位置し、内障子の上框の上部に設けられたクレセントに対応するクレセント受けが外障子の下框の上部に設けられており、
外障子の下框は、複層ガラスを受ける上方に開口した部分と、上方に開口した部分に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片とを備え、
仕切り片には、下框にたて框をタッピンねじでねじ止めする、下方に突出したタッピンねじホールが形成され、
外障子の下框は、仕切り片の上側、かつ複層ガラスの下に配置される断面視薄板状の部材と、仕切り片下の中空部に配置される、断面視で折り曲げ片状の部材を有し、
ロッド棒受け金具の、ロッド棒へのねじ止めは、小ねじトラスにより、外障子の複層ガラスの空気層の下方の位置で行われ、
ロッド棒受け金具の、下框の左右端部へのねじ止めは、外障子の複層ガラスの内側ガラスの略下方の位置で行われ、当該ねじ止めを行うねじ穴は、室外側の端部が外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面と略一致し、当該ねじ穴の中心は、外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面より室内側に位置し、
外障子の複層ガラスは、外側が網入りで6.8mmのガラス、内側が3mmのガラス、外側のガラスと内側のガラスとの間の空気層が12mmの、計21.8mmの厚さであり、
外障子の下框の仕切り片下の中空部に配置される断面視で折り曲げ片状の部材は、見込み方向の室内側及び室外側に、互いに仕切り片からの距離が異なる略水平な部分を有する、柄杓状であり、見込み方向の室外側の略水平な部分は、見込み方向の室内側の略水平な部分よりも仕切り片からの距離が近く、外障子の複層ガラスの外側のガラスの下方の位置で仕切り片のタッピンねじホールと当接している、
防火サッシの片上げ下げ窓。」

(2)甲第2号証
本願の原出願前に公開された甲第2号証には、次の事項が記載されている。

ア 段落【0016】
「【0016】
各框のガラス溝20内には、図1,2,4に示すように、グレチャン22の外側を囲むように金属の薄板を溝型に折り曲げて形成したガラス間口補強材31がガラス溝20の全長に亘って配置され、金属框26a,26b,26c,26dにビス32で固定してある。さらに、下框17a,17bのガラス溝20の底部には、図4に示すように、ガラス23a,23bのずり下がりを防ぐための下がり防止部材33が配置してある。下がり防止部材33は、金属の板をコ字型に折り曲げて形成したピース状の部材で、ガラス溝20の底部に間隔をおいて配置してある。
このように、ガラス溝20内に金属製のガラス間口補強材31が設けてあることで、金属框26a,26b,26c,26dのガラス保持片(ガラス溝20の室外側の壁)が火災の熱で溶融したり、上述のように樹脂カバー27a,27b,27c,27dが剥離したりしたとしても、ガラス23a,23bの脱落を防止できる。また、下框17a,17bのガラス溝20の底部に金属製の下がり防止部材33を配置してあるため、火災時でもガラス23a,23bのずり下がりを防止できる。
ガラス間口補強材31と下がり防止部材33の材質は、火災時に容易に溶融したり変形したりしない材質、ステンレスや鉄などの金属が好ましい。」

イ 段落【0020】
「【0020】
戸先框18a,18bと召し合せ框19a,19bは、図2に示すように中空部35を有しており、中空部35内にはコ字形断面の補強材36が長手方向のほぼ全長にわたって配置され、長手方向に所定のピッチでネジにより固定してある。補強材36は、高耐食溶融メッキ鋼板を折り曲げて形成している。このように補強材36を設けることで、火災時における戸先框18a,18bと召し合せ框19a,19bの熱伸びとたわみを防止できる。
さらに、戸先框18a,18bと召し合せ框19a,19bの長手方向中間部には、中空部35内に補強材36に係合して金属製の塞ぎ板38が設けてある。戸先框18a,18bと召合せ框19a,19bの上端部には樹脂部品が取付けてあり、火災時にはそれらの樹脂部品が溶融して中空部35内に落ちるが、塞ぎ板38がその溶融した樹脂を受け止めて保持することで、溶融した樹脂が框の下端部や下枠上面等に溜まり引火するのを防止できる。
図1に示すように、外障子2の下框17aの中空部内にも補強材36を設けてある。」

ウ 【図4】




(3)甲第3号証
ア 記載事項
本願の原出願前に公開された甲第3号証には、次の事項が記載されている。

(ア)段落【0009】-【0010】
「【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態に係るサッシ1は、すべり出しサッシであり、図1?図3に示すように、障子3の框12はアルミニウム製形材の上框5、下框7及び左右の竪框9、9をガラス4の四周に框組して形成してあり、各框の室内側には樹脂製形材6が取付けてある。枠11はアルミニウム製の上枠13、下枠15及び左右の竪枠17、17を枠組してあり、室内側には樹脂製形材18が取付けてある。
図1に示すように、上框5と上枠13との間と、下框7と下枠15との間に、各々障子3を室外側に吊り出すステー(障子支持具)19が設けてある。
【0010】
障子3の下框7の上部には、ガラス4の下端部を保持するガラス保持溝21が設けてあり、ガラス保持溝21の下方には中空部23が形成されている。
ガラス保持溝21にはガラス端部を保持するグレイジングガスケット24と、ガラス保持溝21の溝壁とグレイジングガスケット24との間に設けたスチール製のガラス保持溝補強材25が設けてある。ガラス保持溝補強材25は断面略コ字形状を成しており、コ字の開口内にグレイジングガスケット24と共にガラス端部を覆っている。
下框7の上面には、左右側端部及び中央部に排水孔7dが形成されており、ガラス保持溝補強材25には、排水孔7dが形成してある位置に対応して切除部が形成されている。
図10に示すように、下框補強材51が配置されている下框7の下面7aには、その長手方向一端部に排水穴7bが形成されており、図1及び図11に示すように、補強材51には、排水穴7bの位置に対応して穴51dが形成されていると共に穴51dの横にある側壁51cに第11熱膨張耐火材32kが設けてある。
下框7のガラス保持溝21の溝底に設けた第2熱膨張耐火材32bは、竪框9との組付けコーナにおいて竪框9と下框7との間に挟んであり、火災時に膨張して竪框9と下框7とのメタルタッチ部分を塞ぐようになっている。
下框7の下面には、スチール製の下補助板29がねじ30で固定してある。下補助板29は下框7に取付けてある樹脂製形材6の長手方向に亘って樹脂製形材6の下面を覆っている。
また、図1に示すように、下框7には、中空内にスチール製の断面コ字状の下框補強材51が設けてあり、下框補強材51の上端部51aは下框7のガラス保持溝補強材25にねじ50で固定してあり、下端部51bは下補助板29及び下ステー19にねじ30で固定されている。」

(イ)段落【0017】
「【0017】
次に、本実施の形態にかかるサッシ1の作用効果について、説明する。
火災の熱によりアルミニウム製の框や枠11が溶けた場合であっても、図1に示すように、アルミニウムよりも融点が高い材質でできたガラス保持溝補強材25、下框補強材51、下ステー19及び下枠補強材52が、一連にねじ50、30、68で固定してあるから、ガラス4の脱落を防止できる。
更に、火災時に、アルミ樹脂複合障子3の樹脂形材6が焼け落ちた場合でも、火災の熱により下枠15に設けた第4熱膨張耐火材32dが膨張して下框7の下補助板29及びコーナ部7cに当接して、下框7と下枠15との間の空間を塞ぐ。これにより、火災時にアルミ樹脂複合障子3の下框7と下枠15との間から外気が室内に入り込んだり、室内の炎を外に噴出するのを防止できる。」

(ウ)【図1】には、次の図示がある。




(エ)【図1】の下框部分を拡大すると、次のa及びbのとおりである。
a ガラス保持溝21、ガラス保持溝補強材25、下框補強材51を含む拡大図




b aのさらなる拡大図




上記a及びbより、下框7には、ガラス保持溝21と、下框補強材51が設けられる中空部23を仕切る仕切り片があり、仕切り片には、ねじ50の位置で下方向に突出する突出部があり、当該突出部は下框補強材51に当接していることが、看て取れる。また、ねじ50による固定位置は、下框補強材51に当接する突出部の位置と重なっていることが、看て取れる。
ねじ50の位置で下方向に突出する突出部は、上記bに図示される形状から、技術常識を勘案すると、甲1発明の下框が有するタッピンねじホールと同様の、ねじホールであると、理解することができる。

イ 甲第3号証に記載された発明
上記アより、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
「障子3の框12は、アルミニウム製形材の上框5、下框7及び左右の竪框9、9をガラス4の四周に框組して形成してあり、
障子3の下框7の上部には、ガラス4の下端部を保持するガラス保持溝21が設けてあり、ガラス保持溝21の下方には中空部23が形成されており、
ガラス保持溝21には、ガラス保持溝21の溝壁とグレイジングガスケット24との間に設けたスチール製のガラス保持溝補強材25が設けてあり、
下框7には、中空部23内にスチール製の断面コ字状の下框補強材51が設けてあり、
下框7には、ガラス保持溝21と中空部23を仕切る仕切り片があり、仕切り片には、下方向に突出する、ねじホールである突出部があり、ねじホールである突出部は、下框補強材51に当接しており、
下框補強材51の上端部51aは、下框7のガラス保持溝補強材25にねじ50で固定してあり、ねじ50による固定位置は、下框補強材51に当接するねじホールである突出部の位置と重なっており、
アルミニウムよりも融点が高い材質でできたガラス保持溝補強材25、下框補強材51が、一連にねじ50で固定してあるから、火災の熱によりアルミニウム製の框や枠11が溶けた場合であっても、ガラス4の脱落を防止できる、
サッシ1。」

(4)甲第4号証
本願の原出願前に公開された甲第4号証には、次の事項が記載されている。

ア 段落【0039】
「【0039】
図6?図8に示すように、金属上框6a、金属下框7b、金属縦框8a,9aの本体部60の中空部内には、金属の上框補強材65、下框補強材75、縦框補強材85,95が長手方向に連続して設けてある。
上框6、下框7、戸先框8、吊元框9のパネル取付溝6d,7d,8d,9d内には上溝補強材66、下溝補強材76、縦溝補強材86,96が長手方向に連続して設けてある。
そして、上框補強材65と上溝補強材66をビス67で連結し、下框補強材75と下溝補強材76をビス77で連結し、縦框補強材85,95と縦溝補強材86,96をそれぞれビス87,97で連結してある。」

イ 【図7】




(5)甲第5号証
本願の原出願前に公開された甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 段落【0045】
「【0045】
下に位置する横框59には図5に示すようにタッピングホール部62と、下方に開口する下開口部66が設けてある。下開口部66には断面コ字状をした下地枠67が嵌め込まれてねじ具68により固定してあり、この下地枠67の両内壁面の上下方向の略中間部分には全長にわたって引掛け用突部69が突設してある。下地枠67は下開口部66の長手方向の端部を少し残した状態(つまり端部ブロック部48を嵌め込む部分を残して)で嵌め込んである。」

イ 【図13】




(6)甲第6号証
本願の原出願前に公開された甲第6号証には、次の事項が記載されている。





上記第4図から、タツピングホール15が、セルタツピングねじ等の連結部品49を介した取付けにも用いられる様子が、看て取れる。

(7)甲第7号証
本願の原出願前に公開された甲第7号証には、次の事項が記載されている。

ア 明細書第5頁第3行-第18行
「また第2図に示すように、固定桟1の壁体5の内面5aに設けたタツピングホール17を形成する一対の弧状片を突条6,6’として構成してもよい。このタツピングホール17は固定桟の枠組みの際、図示しない縦桟との連結固定のためにも用いられる。即ち、縦桟を介して側方よりタツピングネジがこのタツピングホール17に螺挿されるが、このタツピングネジ螺挿部は端部付近のみで、それ以外の部分はネジ挿通に使用されず、遊びの状態にあるから、タツピングネジ螺挿部以外の部分をパネル固定のための突条6,6’として用いるものである。即ち、突条6,6’はパネル固定のためのネジ16挿通部としての機能と、固定桟の枠組みのためのタツピングネジ挿通部としての機能との2つの機能を兼備している。」

イ 第1図




ウ 第2図




(8)甲第8号証
本願の原出願前に公開された甲第8号証には、次の事項が記載されている。

ア 段落【0042】-【0046】
「【0042】
本実施形態では、サッシにつき防火性を持たせるようにしてもよい。サッシの防火性は、火事の際に樹脂部材が溶けて落ちた場合にも、障子やガラス体が脱落しないようにすることを言う。図6には、防火性を持たせた障子の縦断面図を示している。障子におけるガラス体6の固定構造を改めて詳細に説明すると、上框40と下框41には、それぞれ内周面にガラス体6を保持するための保持溝40c、41cが形成されている。上框40の保持溝40cは、室外側が金属上框40aにより、室内側が樹脂上框40bにより、構成されている。また、下框41の保持溝41cも、室外側が金属下框41aにより、室内側が樹脂下框41bにより、構成されている。
【0043】
ガラス体6は、室内ガラス6aと室外ガラス6bとが、スペーサー部材6cを介して対向配置され複層ガラスとして構成されている。その外周縁にはグレチャン7が設けられ、このグレチャン7と共に框体5の保持溝40c、41cに対して挿入され、ガラス体6が固定される。
【0044】
この場合において、火事で樹脂部材が金属部材から落ちた場合、ガラス体6を保持する保持溝40c、41cの室内壁が失われるので、そのままではガラス体6が脱落する。このため、金属上框40aには上落下防止材43が、金属下框41aには下落下防止材44が、それぞれ取付けられる。
【0045】
上落下防止材43は、薄板が屈曲状に形成されてなり、金属上框40aに対してネジ止め固定される固定面部43aと、固定面部43aの室内端部において見付方向内側に向かう段差43bと、段差43bから室内側に向かって断面略L字状に伸びる室内保持部43cとを有している。室内保持部43cは、グレチャン7の底壁及び室内面に沿うように形成されており、樹脂上框40bが失われた場合に、ガラス体6の室内面側を保持する。
【0046】
下落下防止材44も、薄板が屈曲状に形成されてなり、金属下框41aに対してネジ止め固定される固定面部44aと、固定面部44aの室内端部において見付方向内側に向かう段差44bと、段差44bから室内側に向かって断面略L字状に伸びる室内保持部44cとを有している点では、上落下防止材43と同様である。室内保持部44cは、グレチャン7の底壁及び室内面に沿うように形成されており、樹脂下框41bが失われた場合に、ガラス体6の室内面側を保持する。」

イ 【図6】




(9)甲第9号証
本願の原出願前に公開された甲第9号証には、次の事項が記載されている。

ア 段落【0028】
「【0028】
前記第2可動障子4の下框40は、図7に示すように、下向き凹部40aを有し、その下向き凹部40aに下向きコ字形状の枠材40bを挿入してビス40cで固着して取り付け、この枠材40bで下向きに開口したガイド凹溝4aを形成している。このガイド凹溝4aは下框40の面外方向中央に位置している。
前記横片64に取り付けた障子ガイドローラ61が前記ガイド凹溝4a内に面内方向に移動可能に嵌まり込んでいる。」

イ 【図7】




(10)甲第10号証
本願の原出願前に公開された甲第10号証には、次の事項が記載されている。





(11)甲第11号証
本願の原出願前に公開された甲第11号証には、次の事項が記載されている。





(12)甲第12号証
本願の原出願後に公開された、申立人が参考文献として提出する甲第12号証には、次の事項が記載されている。






第5 当審の判断
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は全て認められたので、以下では、本件訂正発明について、判断する。

1 先の取消理由通知に記載した取消理由について
(1)対比
本件訂正発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「防火サッシの片上げ下げ窓」は、本件訂正発明における「建具」に相当する。
甲1発明における「上枠、下枠、及び左右のたて枠からなる、枠」は、「防火サッシの片上げ下げ窓」の「枠」であることをふまえると、本件訂正発明における「窓枠」に相当する。
甲1発明における、「枠内に配置された、FIX部である外障子」は、本件訂正発明における、「窓枠内に固定された外障子」に相当する。甲1発明における、「枠内に、かつ外障子の室内側に配置された、上げ下げ部であり、上げと下げにより障子の開閉を行う、内障子」は、本件訂正発明における、「外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子」に相当する。
甲1発明における「複層ガラス」は、本件訂正発明における「パネル材」に相当し、甲1発明において、「外障子は、下框を有して框組みした内部に複層ガラスを嵌め込んで構成され」ることは、本件訂正発明において、「外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成される」ことに相当する。
甲1発明において、「FIX部」である「外障子」の「固定」が、「外障子の下框の左右端部に差し込んだロッド棒」を「たて枠側の外障子ストッパーに十分に押し当てた状態」で、「下框の左右端部に差し込んだロッド棒、及び下框の左右端部に、ロッド棒受け金具をねじ止めする」ことで行われることから、「たて枠側の外障子ストッパー」が「たて枠」に固定的に取り付けられたうえで、「ロッド棒受け金具」の「ロッド棒」及び「下框の左右端部」への「ねじ止め」により、「ロッド棒」の位置が「たて枠側の外障子ストッパーに十分に押し当てた状態」で固定されることが明らかであることをふまえると、甲1発明における「ロッド棒」、「ロッド棒受け金具」及び「外障子ストッパー」は、「外障子」を「枠」に「固定」するために協働する部材であり、本件訂正発明において「外障子」を「窓枠に固定」する「固定装置」に相当する。また、甲1発明において、「ロッド棒」、「ロッド棒受け金具」及び「外障子ストッパー」のうち、「ロッド棒受け金具」が「下框の左右端部」に「ねじ止め」され、「外障子ストッパー」が「たて枠」に固定的に取り付けられていることは、本件訂正発明において、「固定装置」が「窓枠の左右の縦枠」と「下框」とに「取り付けられる」構成に、相当する。
甲1発明において、「上げと下げにより障子の開閉」を行う「内障子が閉じた状態」で、「外障子の下框」が「内障子の上框の室外側に位置」すること、及び、「内障子の上框の上部に設けられたクレセントに対応するクレセント受けが外障子の下框の上部に設けられて」いることから、「外障子の下框」は、「内障子の上框」に対して、内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框となっていることが明らかであり、甲1発明における「外障子の下框」と「下障子の上框」との関係は、本件訂正発明において、「前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框」である関係に相当する。
甲1発明において、「外障子の下框は、複層ガラスを受ける上方に開口した部分と、上方に開口した部分に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片とを備え」る構成と、本件訂正発明において、「前記下框は、室内側面部、室外側面部および底面部と、前記底面部よりも上方において前記パネル材を保持する保持用開口部および前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部を仕切る仕切り片とを備え」る構成とは、「前記下框は、前記パネル材を保持する保持用開口部および前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部を仕切る仕切り片とを備え」る点で、共通する。
甲1発明における「タッピンねじホール」は、本件訂正発明における「ビスホール部」に相当する。甲1発明において、「仕切り片には、下框にたて框をタッピンねじでねじ止めする、下方に突出したタッピンねじホールが形成され」る構成は、本件訂正発明において、「前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され」る構成に相当する。
甲1発明において、「外障子の下框」の「仕切り片の上側」が、「複層ガラスを受ける上方に開口した部分」であることをふまえると、甲1発明の「外障子の下框」が「仕切り片の上側、かつ複層ガラスの下に配置される断面視薄板状の部材」を有する構成と、本件訂正発明において「前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され」る構成とは、「前記保持用開口部には、パネル材の下に配置される部材」を有する点で、共通する。
甲1発明において、「外障子の下框」が、「仕切り片下の中空部に配置される、断面視で折り曲げ片状の部材を有」する構成と、本件訂正発明において、「前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ」る構成とは、「前記中空部に配置される部材」を有する点で、共通する。
甲1発明において、「ロッド棒受け金具の、下框の左右端部へのねじ止めは、外障子の複層ガラスの内側ガラスの略下方の位置で行われ」る構成は、本件訂正発明において、「前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され」る構成に、相当する。
甲1発明において、「外障子の複層ガラスは、外側が網入りで6.8mmのガラス、内側が3mmのガラス、外側のガラスと内側のガラスとの間の空気層が12mmの、計21.8mmの厚さ」である構成は、「外側のガラス」の厚さが「内側のガラス」の厚さの倍以上であることから、「外側のガラス」の重量が「内側のガラス」の重量より大きいことが明らかであり、また「複層ガラス」の重心も、見込み方向で複層ガラスの中央より室外側に位置することが明らかであることをふまえると、本件訂正発明において、「前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され」る構成、及び「前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置」する構成に相当する。
甲1発明において、「外障子の下框の仕切り片下の中空部に配置される断面視で折り曲げ片状の部材は、見込み方向の室内側及び室外側に、互いに仕切り片からの距離が異なる略水平な部分を有する、柄杓状であり、見込み方向の室外側の略水平な部分は、見込み方向の室内側の略水平な部分よりも仕切り片からの距離が近く、外障子の複層ガラスの外側のガラスの下方の位置で仕切り片のタッピンねじホールと当接している」構成と、本件訂正発明において、「前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結される」構成とは、「外障子の下框の仕切り片下の中空部に配置される部材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なる部分を有する」という点で、共通する。

以上を整理すると、甲1発明と本件訂正発明とは、
「窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、
前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる固定装置を介して前記窓枠に固定され、
前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、
前記下框は、前記パネル材を保持する保持用開口部および前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部を仕切る仕切り片とを備え、
前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、
前記保持用開口部には、パネル材の下に配置される部材を有し、
前記中空部に配置される部材を有し、
前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、
前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、
前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、
前記中空部に配置される部材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なる部分を有する、
建具。」
の点で一致し、両者は次の点で相違、あるいは形式的に相違する。

<相違点1>
「固定装置」に関し、
本件訂正発明では、「固定装置」は「不燃性」と特定されているのに対し、
甲1発明では、「ロッド棒」、「ロッド棒受け金具」及び「外障子ストッパー」のうち、「ロッド棒受け金具」は「金具」であるから不燃性と解されるものの、「ロッド棒」及び「外障子ストッパー」は、「不燃性」であるとは特定されていない点。

<相違点2>
「下框」に関し、
本件訂正発明では、「室内側面部、室外側面部および底面部」を有すること、並びに、「仕切り片」が「前記底面部よりも上方において」保持用開口部と中空部を仕切ることが特定されているのに対し、
甲1発明では、室内側面部、室外側面部および底面部を有し、仕切り片が底面部よりも上方において、複層ガラスを受ける上方に開口した部分と中空部とを仕切ることが特定されていない点。

<相違点3>
「保持用開口部」に配置される部材に関し、
本件訂正発明では、「パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材」であり、「前記保持材は、室内側の側片、室外側の側片および下片を有していると共に、前記室外側の側片が上下方向におけるその上縁から下縁にわたって前記下框の室外側面部に接触する位置に配置され」ると特定されているのに対し、
甲1発明では、「外障子の下框」の「仕切り片の上側、かつ複層ガラスの下に配置される断面視薄板状の部材」が、複層ガラスの「下端縁を保持する不燃性の保持材」であること、及び、「室内側の側片、室外側の側片および下片を有していると共に、前記室外側の側片が上下方向におけるその上縁から下縁にわたって前記下框の室外側面部に接触する位置に配置され」ることは、特定されていない点。

<相違点4>
「中空部」に設けられる部材に関し、
本件訂正発明では「不燃性の框補強材」と特定されるとともに、「前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結される」と特定されているのに対し、
甲1発明では、「仕切り片下の中空部に配置される、断面視で折り曲げ片状の部材」が、「不燃性の框補強材」であるとは特定されていないとともに、「外障子の下框」の「仕切り片の上側、かつ複層ガラスの下に配置される断面視薄板状の部材」に対して、「前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって」「連結されて」はいない点。

<相違点5>
「固定装置」を「下框の端部」に固定する「ビス」の位置に関し、
本件訂正発明では、「ビスの中心は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記室内側のガラス板の室外面との間における見込み範囲内に納まって」いるのに対し、
甲1発明では、ロッド棒受け金具を下框に対してねじ止めするねじ穴の位置が、「室外側の端部が外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面と略一致し、当該ねじ穴の中心は、外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面より室内側に位置」するから、当該ねじ穴に入るねじの中心も、「外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面より室内側」に位置し、本件訂正発明における「パネル材の見込み方向における中央と前記室内側のガラス板の室外面との間における見込み範囲内」より室内側に位置する点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点5から、判断する。
甲1発明においては、「ロッド棒」、「ロッド棒受け金具」及び「外障子ストッパー」を組み合わせて、「外障子の下框」を「たて枠」に固定しているところ、「ロッド棒受け金具の、下框の左右端部へのねじ止め」を行う「ねじ穴」について、「室外側の端部が外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面と略一致し、当該ねじ穴の中心は、外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面より室内側に位置」する構成は、「ロッド棒受け金具の、ロッド棒へのねじ止め」について、「外障子の複層ガラスの空気層の下方の位置で行われ」る構成と、室内外方向にねじ穴及びねじ止めの位置をずらせた点で、相互に関連している。そして、甲1発明において、「ロッド棒受け金具の、下框の左右端部へのねじ止め」を行う「ねじ穴」の位置を、室外側に変更しようとすると、「ロッド棒受け金具の、ロッド棒へのねじ止め」の位置も変更する必要が生じ、「ロッド棒受け金具」全体の形状、及び「ロッド棒」を差し込んだ状態で「ロッド棒受け金具をねじ止め」する「下框」の形状も変更する必要が生じるから、甲1発明において、他の構成を維持したまま、「ロッド棒受け金具の、下框の左右端部へのねじ止め」を行う「ねじ穴」の位置を、室外側に変更することには、阻害要因がある。
また、甲1発明において、「ロッド棒受け金具の、下框の左右端部へのねじ止め」を行う「ねじ穴」の位置を変更するとともに、「ロッド棒受け金具の、ロッド棒へのねじ止め」の位置を調整し、「ロッド棒受け金具」全体の形状及び「下框」の形状についても調整することについては、動機付けがない。
そして、本件訂正発明は、上記相違点5に係る構成を採用することにより、甲1発明における固定構造である、「ロッド棒」、「ロッド棒受け金具」及び「外障子ストッパー」を用い、「ロッド棒受け金具の、ロッド棒へのねじ止めは、小ねじトラスにより、外障子の複層ガラスの空気層の下方の位置で行われ、ロッド棒受け金具の、下框の左右端部へのねじ止めは、外障子の複層ガラスの内側ガラスの略下方の位置で行われ、当該ねじ止めを行うねじ穴は、室外側の端部が外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面と略一致し、当該ねじ穴の中心は、外障子の複層ガラスの内側ガラスの室外側面より室内側に位置」するという固定構造とは、異なる構成を採用しつつ、「固定装置」により「下框」を固定する「ビスの中心」を室内側のガラス板の室外面よりも室外側とすることで、特許権者による令和3年3月16日付け意見書第3頁第18行ないし21行において主張するように、火災時に框などが溶融した際における外障子の室外側への倒れ方を小さくするという所定の効果も奏するものと認められるから、甲1発明において上記相違点5に係る本件訂正発明の構成を採用することを、単なる設計事項と断じることはできない。
甲第3号証には、上記第4の3(3)アに摘記した事項が記載されており、甲3発明は同イに認定した構成を有するが、甲1発明における「ロッド棒」、「ロッド棒受け金具」及び「外障子ストッパー」を用いた「下框」の固定構造について、「ロッド棒受け金具」を「下框」に固定するねじ又はねじ穴の位置を、室外側に移動させることを、示唆するものではない。
したがって、甲1発明において、上記相違点5に係る本件訂正発明の構成に至ることは、甲第3号証に記載される事項を考慮しても、当業者にとって容易であったということはできない。

そして、上記相違点5に係る本件訂正発明の構成は想到容易でないから、その余の相違点1ないし4について検討するまでもなく、本件訂正発明は、甲1発明、及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 申立人による異議申立理由について
申立人による異議申立理由においては、本件訂正前の請求項1に係る発明について、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第11号証に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨が主張されている。
また、申立人は申立書に添えて、参考文献として、本願の原出願より後に公開された甲第12号証も提出している。

(1)甲第2号証、及び甲第4号証ないし甲第11号証について
甲第1号証に記載された発明、及び甲第3号証に記載された事項に基づく判断は、上記1に示したとおりである。
甲第2号証、及び甲第4号証ないし甲第11号証には、上記第4の3(2)ならびに同(4)ないし(11)に摘記した事項が記載されているが、いずれも甲1発明における「ロッド棒」、「ロッド棒受け金具」及び「外障子ストッパー」を用いた「下框」の固定構造について、「ロッド棒受け金具」を「下框」に固定するねじ又はねじ穴の位置を、室外側に移動させることを、示唆するものではない。
したがって、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第11号証に記載された事項を併せ考慮しても、甲1発明において、上記相違点5に係る本件訂正発明の構成に至ることは、甲第2号証ないし甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者にとって容易であったとはいえない。

(2)甲第12号証について
甲第12号証は、甲第1号証の作成者による特許出願の公開公報であり、本願の原出願より後に公開されたものであるところ、同甲号証には、上記第4の3(12)に摘記した【図4】が示されている。
甲第12号証の【図4】は、上記(1)ア(カ)dに摘記した甲第1号証における「ロッド棒受け金具」の取付説明図における断面図に、外障子の複層ガラス、及び内障子を書き加えた状態と似ている。
しかしながら、甲第12号証の【図4】を参照しても、上記第4の3(1)イにおける甲1発明の認定を、変更すべき事情は見いだせない。
そして、甲第12号証を併せ考慮しても、本件訂正発明の進歩性について、上記1及び上記2(1)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。

(3)小括
よって、本件訂正発明は、甲1発明、及び甲第2号証ないし甲第11号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 申立人の主張について
本件訂正請求について、申立人に期間を指定して意見を求めたところ、申立人は本件訂正請求に対する意見書を提出しなかった。
また、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由について検討しても、本件訂正発明の進歩性について、上記1及び2と異なる判断をすべき事情を見いだすことはできない。


第6 むすび
以上のとおり、本件訂正発明に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件訂正発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。



 
発明の名称 (54)【発明の名称】
建具
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓枠内に固定装置を介して固定される外障子と該外障子の室内側を摺動する内障子とを備えた上げ下げ窓などの建具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の外壁開口部に設けられる建具として、上下一対の障子のうち、外障子である上部障子が窓枠内の上部に固定されるとともに、下部障子が窓枠内で上下にスライドすることで開閉自在に設けられた上げ下げ窓が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような上げ下げ窓では、上部障子が固定装置を介して窓枠内の上部に固定されている。固定装置は上部障子の下辺部両端側にそれぞれ設けられており、窓枠の縦枠に固定される垂直支持片部と、上部障子の下框に固定される水平支持片部とを有した略L字形状に形成されている。この固定装置により上部障子の下辺部が支持され、当該上部障子が窓枠内で下方に落下することなく固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-113217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような従来の上げ下げ窓では、火災時の輻射熱により室外側から加熱された場合、見込み方向の室外側にある上部障子が熱影響を受け易い。このため、上部障子が加熱され、アルミ製の下框が室外側から溶融すると、上部障子に嵌め込まれているガラスパネルを下框で保持することが困難となり、ガラスパネルが脱落する可能性がある。このような状況では、ガラスパネルの脱落によって、上部障子に室内外を連通させる開口部分が生じてしまうことから、そのような上げ下げ窓を防火戸として使用できない。
【0006】
本発明の目的は、外障子の下框が溶融しても、外障子からパネル材が脱落するのを防止できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】(削除)
【0008】
本発明の建具は、窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、前記下框は、室内側面部、室外側面部および底面部と、前記底面部よりも上方において前記パネル材を保持する保持用開口部および前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片とを備え、前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、前記保持材は、室内側の側片、室外側の側片および下片を有していると共に、前記室外側の側片が上下方向におけるその上縁から下縁にわたって前記下框の室外側面部に接触する位置に配置され、前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、前記ビスの中心は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記室内側のガラス板の室外面との間における見込み範囲内に納まっており、前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結されることを特徴とする。
この本発明の建具によれば、下框に設けられてパネル材の荷重を受ける框補強材は不燃性とされる。従って、火災時の輻射熱によって外障子の下框が室外側から溶融しても、框補強材によってパネル材を継続して支持でき、框組みに嵌め込まれたパネル材が下框の呑込部分から外れることがなく、パネル材の脱落を防止できる。
また、建具として、窓枠と、この窓枠内に固定される外障子と、窓枠内に上下スライド開閉する内障子とを備えた上げ下げ窓とすることができ、防火戸として利用可能な上げ下げ窓を提供できる。
【0009】
本発明の建具は、窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、前記下框は、前記パネル材を保持する保持用開口部と、前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片を備え、前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、前記ビスによる固定位置は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記パネル材の室内面との間における見込み範囲内に納まっており、前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結され、前記框補強材は、前記保持用開口部の下面と面接触することが好ましい。
このような構成によれば、前述した作用効果を発揮するうえ、框補強材が保持用開口部の下面と面接触することで、パネル材を安定して支持でき、パネル材の脱落をより確実に防止できる。
【0010】(削除)
【0011】(削除)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外障子の下框が溶融しても、外障子からパネル材が脱落するのを防止可能な建具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建具を示す縦断面図。
【図2】図1のII-II線に沿った横断面図。
【図3】前記建具を室外側から見た外観斜視図。
【図4】前記建具を室内側から見た内観姿図。
【図5】前記建具の外障子の下辺部を支持する固定装置を室外側から示す断面図。
【図6】前記外障子の下框を示す縦断面図。
【図7】前記下框の室外側が溶融して落下した状態を示す縦断面図。
【図8】本発明の第2実施形態の要部を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1?図4において、上げ下げ窓1は、戸建て住宅等の建物の外壁開口部に設けられて建物の室内空間と室外空間とを仕切る本実施形態に係る建具であって、上枠11、下枠12、および左右の縦枠13を四周枠組みした窓枠10と、この窓枠10の内側に支持された上部障子20(外障子)および下部障子30(内障子)とを備えて構成されている。
【0015】
窓枠10の上枠11、下枠12、および左右の縦枠13は、室外側に位置するアルミ製の押出し形材と室内側に位置する樹脂製材料とが組み合わされた複合体によって形成されている。
上部障子20は、上框21、下框22(外召合せ框)、および左右の縦框23を四周框組みした内部に、複層のガラスパネル24(パネル材)を嵌め込んで構成されている。上框21および左右の縦框23は、室外側に位置するアルミ製の押出し形材と室内側に位置する樹脂製材料とが組み合わされた複合体によって形成されており、下框22は、アルミ製の押出し形材によって形成されている。
下部障子30は、上框31(内召合せ框)、下框32、および左右の縦框33を四周框組みした内部に、複層のガラスパネル34を嵌め込んで構成されている。上框31、下框32および左右の縦框33は、室外側に位置するアルミ製の押出し形材と室内側に位置する樹脂製材料とが組み合わされた複合体によって形成されている。
【0016】
窓枠10、上部障子20および下部障子30に使用される樹脂製材料は、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)によって構成されている。なお、PVCは、火炎から離されていれば消火する自己消火性に優れるため、これ自体が火炎に直接さらされない限り、発火可能性は低い。
【0017】
上部障子20は、窓枠10の上枠11および縦枠13に位置決めされて固定された固定障子であり、下部障子30よりも室外側に設けられている。
下部障子30は、窓枠10の縦枠13に案内され、上部障子20の室内側に沿って上下スライド開閉可能に支持された可動障子である。
これらの上部障子20の下框22(外召合せ框)と下部障子30の上框31(内召合せ框)とが見込み方向に重なると、上げ下げ窓1が閉じられるようになっている。
下部障子30の上框31の略中央部にはクレセント錠35が設けられ、上部障子20の下框22には錠受け25が設けられており、上部障子20および下部障子30を閉じた状態でクレセント錠35を錠受け25に係合させることで、上げ下げ窓1が施錠されるようになっている。
【0018】
窓枠10の縦枠13は、見込み方向に延びる見込み片部131と、見込み片部131の室内側、中間部、および室外側からそれぞれ見付け方向内側に延びる室内側見付け片132、中間部見付け片133、および室外側見付け片134とを有して形成されている。
なお、本実施形態での室内側見付け片132は、樹脂製材料によって形成され、見込み片部131および室外側見付け片134がアルミ製の押出形材の一部、中間部見付け片133がアルミ製の押出形材と樹脂製材料の組み合せとして形成されている。
【0019】
下部障子30は、上框31の両端に設けられた樹脂製の上部摺動片36と、下部障子30の下端部に連結された下部摺動片37とが、縦枠13の室内側見付け片132および中間部見付け片133間に案内されることで上下スライド可能に構成されている。
上部障子20は、縦枠13の中間部見付け片133および室外側見付け片134間に設けられる固定装置50によって、下辺両端部である下框22の端部および縦框23の下端部が支持されるとともに、上辺両端部である上框21の端部および縦框23の上端部に取り付けた位置決め部材60が上枠11によって位置決めされることで窓枠10に固定されている。下框22には、室内側から上方に延出した延出片22A(図1,6)が設けられている。
【0020】
次に、上部障子20の固定構造について図5、図6も参照して説明する。
図5は、上部障子20の下辺部を支持する固定装置50を室外側から示す断面図である。図6は、上部障子20の下框22を示す縦断面図である。
図1?図3、図5、図6に示すように、固定装置50は、縦枠13の見込み片部131に固定される受け材51と、この受け材51に対して着脱自在かつ固着可能に設けられるとともに上部障子20の下辺部を支持可能な固定材52と、固定材52を覆う樹脂製(ASA)の固定材カバー53(図1,2)とを備えて構成され、固定材カバー53を除いて不燃性を有している。
【0021】
受け材51は、金属板材の折り曲げ加工により成形され、縦枠13の見込み片部131に固定される上下の固定片部511と、これらの固定片部511から縦枠13の見付け方向内側にコ字形に突出する固着部512とを有して形成されている。そして、受け材51は、縦枠13の見付け方向外側から螺合されるビス513によって縦枠13の見込み片部131に固定されるようになっている。また、固着部512には、固定材52を螺合するための2つのビス孔が設けられている。
【0022】
固定材52は、樹脂製(ASA)の固定材本体521と、この固定材本体521に取り付けられた金属製(ステンレス)の固定補強板522とを有して形成されている。固定補強板522は、金属板材から断面略L字形に形成されており、受け材51に固着した状態で略水平に延びる水平支持片部522Aと、略鉛直に延びる鉛直支持片部522Bとを有して形成されている。一方、固定材本体521は、受け材51に固着した状態で受け材51を覆うケース部521Aと、このケース部521Aから延出し固定補強板522の水平支持片部522A下側に沿って延びる水平延出部521Bと、固定補強板522の鉛直支持片部522Bを係止する係止片部521Cとを有して形成されている。これらの固定材本体521および固定補強板522は、係止片部521Cで鉛直支持片部522Bを係止することで一体に組み立てられるようになっている。
【0023】
以上のような固定材52は、ビス523を用いて受け材51に取り付けられ、ビス523を取り外すことで受け材51から取り外せる、つまり受け材51に対して着脱自在に構成されている。詳しく説明すると、固定材本体521のケース部521Aと固定補強板522の鉛直支持片部522Bとに2本のビス523を貫通させ、これらのビス523を固着部512のビス孔に螺合することで、固定材52が受け材51に固着されるようになっており、逆の手順でビス523を取り外すことで受け材51から固定材52が取り外されるようになっている。さらに、固定材本体521の水平延出部521Bと固定補強板522の水平支持片部522Aにビス524を貫通させ、このビス524を上部障子20の下框22を形成する底面部223(図5、図6)に螺合することで、上部障子20が固定装置50に対して移動不能に支持されるようになっている。
【0024】
位置決め部材60は、図1に示すように、上枠11の突片111に当接して上部障子20の上辺部を、上枠11に対する左右方向と見込み方向との両方向に位置決めし、上辺部が水平方向に移動しないように規制する部材である。このような位置決め部材60は、上部障子20の上辺部に取り付けられ、位置決め部材60が取り付けられた上部障子20を窓枠10に室外側から建て込むことで、位置決め部材60が縦枠13の室外側見付け片134に係止されて上部障子20が室外側に倒れないようになっている。さらに、位置決め部材60が取り付けられた上部障子20を上方に持ち上げて上辺部を上枠11に近接させると、位置決め部材60が突片111の傾斜面に当接して室内側に案内され、上部障子20の上辺部が見込方向に位置決めされる。また、位置決め部材60の一部が突片111に設けられた図示略の切欠きに挿入されることで、上部障子20の上辺部が上枠11に対して左右方向に位置決めされるようになっている。
【0025】
図1、図3、図5、図6において、本実施形態の上部障子20の下框22内には、ガラスパネル24の荷重を間接的に支持する框補強材70が設けられている。框補強材70は、スチール等の金属製で不燃性を有し、下框22の長手方向に沿って連続したバー状に形成されている。框補強材70の長さ寸法は、例えばガラスパネル24の下端の一辺の長さ寸法と同程度であるが、ガラスパネル24の両端近傍に分けて設けてもよい。
ここで、下框22は、鉛直な室内側面部221および室外側面部222と、これらを連結する仕切り片28とを有している。仕切り片28は図6に示すように突出して形成されたビスホール部を有している。下框22における仕切り片28の上方の空間は、各側面部221,222の上側部分と当該仕切り片28とで区画され、上方に開口してガラスパネル24の下端縁を保持する保持用開口部26になっている。下框22における仕切り片28の下方の空間は、各側面部221,222の下側部分と当該仕切り片28とで区画された中空部27になっている。上方の保持用開口部26内には、ガラスパネル24の下端縁の他、この下端縁をガスケット241を介して保持する断面コ字形の保持材242が配置されている。保持材242もスチール等の金属製であり、不燃性を有している。下方の中空部27内には、框補強材70が挿入されている。
【0026】
框補強材70は、見込み方向に沿った見込み片、本実施形態では固定装置50に連結される水平な連結片71と、連結片71の室外側端に連続して設けられて上方に突出するとともに下方に向けてコ字形に開口した支持片72とを有し、断面柄杓形に形成されている。このような框補強材70では、長手方向の両側にて、連結片71部分がビス524によって固定装置50に固定されている。すなわちビス524は、固定装置50に下框22を固定するのみならず、框補強材70を固定装置50に固定するためにも用いられる。下框22の端部と固定装置50とを固定するビス524による固定位置は、図6に示すように、ガラスパネル24の見込み方向における中央と室内側のガラス板の室外面との間の見込み範囲内に納まっている。また、ガラスパネル24の下端縁を保持する保持材242は、ビス243によって仕切り片28に固定されるが、このビス243は框補強材70の支持片72を仕切り片28を介して保持材242と連結するためにも用いられる。この際、支持片72の上面72Aは、保持用開口部26を区画している仕切り片28の下面28Aと面接触し、仕切り片28を所定の接触面積にて確実に支持することが可能であり、ひいては仕切り片28および保持材242を介してガラスパネル24を良好に支持することとなる。
なお、図8では、框補強材70の上下の高さ寸法を中空部27の中空部27と略同じにすることで、框補強材70の上端を仕切り片28の下面28Aと線接触させている。
【0027】
[本実施形態の作用]
以下、本実施形態に係る上げ下げ窓1の作用について説明する。例えば、室外側において火災が発生した場合は次の通りである。
室外側での火災時、上げ下げ窓1は、室外から輻射熱を受けて次第に温度上昇する。特に室外側に配置された上部障子20への熱影響が大きく、上部障子20の下框22を形成している室外側面部222の温度がアルミの溶融温度(615℃?655℃)に達すると、この鉛直な室外側面部222が溶融し、図7に示すように、落下してしまうことがある。
この際、下框22の内部には不燃性を有する框補強材70が設けられ、その長手方向の両側が固定装置50に連結され、固定装置50を介して縦枠13に固定されている。すなわち、框補強材70は、下框22の室外側面部222が溶融落下しても、下框22の仕切り片28および保持材242を介してガラスパネル24の下端縁を支持することとなり、ガラスパネル24が上部障子20から脱落するのを防止する。
【0028】
[本実施形態の効果]
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)上げ下げ窓1の上部障子20においては、下框22に設けられてガラスパネル24の加重を受ける框補強材70は不燃性とされ、同様に不燃性を有する固定装置50を介して窓枠10の左右の縦枠13に固定されている。従って、火災時の輻射熱によって上部障子20の下框22を形成している室外側面部222が溶融落下しても、窓枠10に固定された框補強材70によってガラスパネル24を継続して支持でき、框組みに嵌め込まれたガラスパネル24が下框22の呑込部分から外れることがなく、ガラスパネル24の脱落を防止できる。これにより、上げ下げ窓1を耐火戸として用いることができる。
【0029】
(2)框補強材70は支持片72を備え、支持片72の上面72Aがガラスパネル24保持用の保持用開口部26を区画している仕切り片28の下面28Aと面接触しているので、仕切り片28を介して框補強材70によりガラスパネル24を安定して支持でき、ガラスパネル24の脱落をより確実に防止できる。
【0030】
(3)ガラスパネル24を保持する保持材242と框補強材70とがビス243にて連結されているので、下框22の室外側面部222が溶融した際には、ガラスパネル24を保持材242ごと框補強材70にて確実に支持でき、保持状態をより良好に維持できる。従って、ガラスパネル24をほぼ通常の位置で支持でき、ガラスパネル24の位置ずれによる開口部分を一層生じにくくできる。
【0031】
(4)框補強材70の支持片72は、框補強材70の中でも室外側に設けられているので、室外側に脱落しようとするガラスパネル24を良好に支持できる。特に、複層のガラスパネル24は、板厚が厚く重量の大きいガラス板が室外側に配置され、ガラスパネル24の重心は見込み方向の室外側にあるため、下框22の室外側面部222が溶融した場合にガラスパネル24が室外側に落下し易くなっている。従って、框補強材70の中でも、支持片72が室外側に設けられていることや、この支持片72と保持材242との連結部分が室外側に位置することで、当該支持片72によってガラスパネル24を一層確実に支持できる。
【0032】
[第2実施形態]
図8には、本発明の第2実施形態として、断面L字形の框補強材70を用いた例が示されている。
本実施形態の框補強材70は、固定装置50に連結される水平な連結片73と、連結片の室外側端に連続して設けられるとともに上方に向けて鉛直に立設された支持片74とを有し、断面L字形に形成されている。支持片74の上端は、室外側面部222の内面に当接するように室外側に位置している。ただし、支持片74は、ビス243によって仕切り片28および保持材242とは連結されていない。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0033】
本実施形態においては、火災時に室外側面部222が溶融落下した場合、框補強材70を形成する支持片74の上部先端が、仕切り片28の下面28Aの室外側の部分と略線接触して当接し支持する。このため、框補強材70の形状は異なるが、その仕切り片28および保持材242を介して支持片74にてガラスパネル24を良好に支持でき、第1実施形態の(1)の効果を同様に得ることができる。
また、支持片74が室外側に設けられていることで、第1実施形態の(4)の効果も同様に得ることができる。さらに、框補強材70の形状を単純化して材料コストを抑えることができる。
【0034】
[変形例]
なお、本発明は以上の各実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記各実施形態では、断面柄杓形あるいは断面L字形の長尺の一本の框補強材70が框内に連続して用いられていたが、框補強材は框の両端部にそれぞれ短尺のものが設けられてもよく、また、その断面形状は任意であり、各実施形態の形状に限定されない。
また、金属板材の曲げ加工等で一体成形される框補強材に限らず、溶接等により一体に接合される複数部材で框補強材を構成してもよい。
【0035】
前記各実施形態では、框補強材70が下框22の中空部27内に配置されていたが、本発明に係る框補強材は、固定装置50に連結され、かつパネル材を支持できればよいから、そのような中空部27内に配置されていなくともよい。例えば、下框の断面形状や框補強材の断面形状を工夫することで、框補強材を下框の下面に沿って設けるなど、室内側および室外側から視認できない位置に設けつつ、框補強材の両側を固定装置に連結し、かつその框補強材によってパネル材を支持させてもよい。
【0036】
前記各実施形態では、本発明に係るパネル材として複層のガラスパネル24を例に挙げて説明したが、単層のガラスパネル、セラミック製のパネル材、スチール等の金属製のパネル材、自然石等のパネル材などであってもよい。
【0037】
前記各実施形態では、アルミ製材料と樹脂製材料との複合体によって窓枠10や障子20,30の框組みが構成されている例を説明したが、これに限定されず、窓枠の窓枠材や障子の框材をアルミ製や樹脂製の押出し形材のみによって構成してもよい。
【0038】
前記各実施形態では、上部障子20および下部障子30を備えた上げ下げ窓1について説明したが、本発明の建具としては、上部障子、中間障子、および下部障子を備えた段窓タイプの上げ下げ窓であってもよい。このような場合では、中間障子が固定障子とされ、固定装置により窓枠に固定される。
【0039】
前記第2実施形態では、框補強材70の支持片74が鉛直片として形成され、保持材242には連結されていなかったが、例えば、このような支持片74の高さ方向の中間位置に室内側に延出する水平片を設け、この水平片にビス243を螺合させる等して框補強材70を保持材242に連結してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…上げ下げ窓(建具)、10…窓枠、13…縦枠、20…上部障子(外障子)、22…下框(外召合せ框)、24…ガラスパネル(パネル材)、26…保持用開口部、28A…下面、30…下部障子(内障子)、31…上框(内召合せ框)、50…固定装置、70…框補強材、72…支持片、242…保持材。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、
前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、
前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、
前記下框は、室内側面部、室外側面部および底面部と、前記底面部よりも上方において前記パネル材を保持する保持用開口部および前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部を仕切る仕切り片とを備え、
前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、
前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、
前記保持材は、室内側の側片、室外側の側片および下片を有していると共に、前記室外側の側片が上下方向におけるその上縁から下縁にわたって前記下框の室外側面部に接触する位置に配置され、
前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、
前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、
前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、
前記ビスの中心は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記室内側のガラス板の室外面との間における見込み範囲内に納まっており、
前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、
前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結される
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
窓枠内に固定された外障子と、前記外障子の室内側に沿って上下にスライドすることにより開閉可能な内障子とを備える建具であって、
前記外障子は、下框を有して框組みされた内部にパネル材を嵌め込んで構成されるとともに、前記窓枠の左右の縦枠と前記下框とに取り付けられる不燃性の固定装置を介して前記窓枠に固定され、
前記外障子の前記下框は、前記内障子の内召合せ框の室外側に位置する外召合せ框であり、
前記下框は、前記パネル材を保持する保持用開口部と、前記保持用開口部に対して下方に位置する中空部とを仕切る仕切り片を備え、
前記仕切り片には、上下方向において突出したビスホール部が形成され、
前記保持用開口部には、前記パネル材の下端縁を保持する不燃性の保持材が配置され、
前記中空部には、不燃性の框補強材が設けられ、
前記固定装置は、前記下框の端部にビスによって固定され、
前記ビスによる固定位置は、前記パネル材の見込み方向における中央と前記パネル材の室内面との間における見込み範囲内に納まっており、
前記パネル材は、室内側のガラス板と、前記室内側のガラス板よりも板厚が厚く重量の大きい室外側のガラス板とを有した複層のガラスパネルによって構成され、
前記パネル材の重心は、当該パネル材のうち見込み方向における中央よりも室外側に位置し、
前記框補強材は、前記パネル材の見込み方向における中央よりも室外側であって前記室外側のガラス板の下方位置で、前記下框の見込み方向において前記仕切り片の前記ビスホール部と重なって前記保持材と連結され、
前記框補強材は、前記保持用開口部の下面と面接触する
ことを特徴とする建具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-05-27 
出願番号 特願2017-246385(P2017-246385)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (E06B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 西田 秀彦
有家 秀郎
登録日 2020-04-13 
登録番号 特許第6691100号(P6691100)
権利者 YKK AP株式会社
発明の名称 建具  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  

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