現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
管理番号 1376698
異議申立番号 異議2020-700337  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-13 
確定日 2021-06-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6604928号発明「着色組成物、膜および膜の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6604928号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6604928号の請求項1?4、7、9及び10に係る特許を維持する。 特許第6604928号の請求項5、6及び8に係る特許に対する特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6604928号(以下「本件特許」という。)の請求項1?10に係る特許についての出願(特願2016-191377号)は、平成28年9月29日の出願であって、令和元年10月25日にその特許権の設定登録がされ、令和元年11月13日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報発行の日から6月以内である令和2年5月13日に特許異議申立人 浜俊彦(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年 7月29日付け:取消理由通知書
令和2年10月 1日付け:意見書(特許権者)
令和2年10月 1日付け:訂正請求書
令和2年12月 7日付け:意見書(特許異議申立人)
令和3年 2月 3日付け:取消理由通知書
令和3年 3月29日付け:意見書(特許権者)
令和3年 3月29日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請求 を、以下「本件訂正請求」という。)

なお、本件訂正請求は、令和2年10月1日付けでなされた訂正請求に係る訂正と比較して軽微な訂正を加えただけのものである。また、令和2年10月1日付け訂正請求に係る訂正に対して、特許異議申立人は令和2年12月7日付け意見書を提出している。したがって、本件訂正請求については、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があると判断する。


第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6604928号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10について訂正することを求める、というものである。

(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記着色組成物の全固形分中における前記着色剤Aの含有量が40質量%以下であり、」と記載されているのを、「前記着色組成物の全固形分中における前記着色剤Aの含有量が40質量%以下であり、
前記界面活性剤Dは、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4、7、9及び10も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記溶剤Eは、25℃における表面張力が26.0mN/m以上28.0mN/m以下の溶剤E1と、25℃における表面張力が26.0mN/m未満である溶剤E2とを含み、」と記載されているのを、「前記溶剤Eは、25℃における表面張力が26.0mN/m以上28.0mN/m以下の溶剤E1と、25℃における表面張力が26.0mN/m未満である溶剤E2とを含み、
前記溶剤E1はエステル系溶剤であり、
前記溶剤E2は酢酸ブチルであり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1の含有量が15質量%以上であり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E2の含有量が10質量%以上であり、
前記溶剤E中における前記溶剤E1と前記溶剤E2の質量比が、溶剤E1の質量:溶剤E2の質量=60:40?40:60であり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1と前記溶剤E2との合計の含有量が50質量%以上であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?4、7、9及び10も同様に訂正する。)。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「前記溶剤E1がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1?6のいずれか1項に記載の着色組成物。」と記載されているのを、「前記溶剤E1がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項1?4のいずれか1項に記載の着色組成物。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項9及び10も同様に訂正する。)。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8のいずれか1項に記載の着色組成物を支持体に塗布する工程を含む、膜の製造方法。」と記載されているのを、「請求項1、2、3、4または7に記載の着色組成物を支持体に塗布する工程を含む、膜の製造方法。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。)。

(3)本件訂正請求は、一群の請求項〔1?10〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「界面活性剤D」について、「前記界面活性剤Dは、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含み、前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%であり」という限定を付加する訂正である。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0017】、【0121】及び【0132】の記載に基づくものであるから、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
請求項2?4、7、9及び10についてみても、同じである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「溶剤E」について、「前記溶剤E1はエステル系溶剤であり」、「前記溶剤E2は酢酸ブチルであり」、「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1の含有量が15質量%以上であり」、「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E2の含有量が10質量%以上であり」、「前記溶剤E中における前記溶剤E1と前記溶剤E2の質量比が、溶剤E1の質量:溶剤E2の質量=60:40?40:60であり」、「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1と前記溶剤E2との合計の含有量が50質量%以上であり」という限定を付加する訂正である。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項2による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0094】、【0098】、【0099】、【0105】、【0106】、【0107】及び【0108】の記載に基づくものであるから、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
請求項2?4、7、9及び10についてみても、同じである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、特許請求の範囲の請求項5を削除する訂正である。
そうしてみると、訂正事項3による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項3による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、特許請求の範囲の請求項6を削除する訂正である。
そうしてみると、訂正事項4による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項4による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。

(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、[A]特許請求の範囲の請求項7に記載された「溶剤E1」の選択肢を「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」に減じ、かつ、[B]訂正事項3及び4による訂正により請求項5及び6が削除されたことに伴い、訂正後の請求項7が、削除された請求項5及び6を引用する記載となることを回避する訂正である。また、この点は、請求項7の記載を引用して記載された請求項9及び10についてみても、同じである。
そうしてみると、訂正事項5による訂正のうち上記[A]の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、上記[B]の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。そして、訂正事項5による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。

(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、特許請求の範囲の請求項8を削除する訂正である。
そうしてみると、訂正事項6による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項6による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。

(7)訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、訂正事項3、4及び6による訂正により請求項5、6及び8が削除されたことに伴い、訂正後の請求項9が、削除された請求項5、6及び8を引用する記載となることを回避する訂正である。また、この点は、請求項9の記載を引用して記載された請求項10についてみても、同じである。
そうしてみると、訂正事項7による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項7による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しないことは、明らかである。

(8)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(訂正事項1ないし7による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条4項から6項までの規定に適合する。
よって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?10〕について訂正することを認める。


第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4、7、9及び10に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1?4、7、9及び10に記載された事項により特定される、次のものである。

「【請求項1】
着色剤Aと、樹脂Bと、硬化性化合物Cと、界面活性剤Dと、溶剤Eとを含む着色組成物であって、
前記着色組成物の全固形分中における前記着色剤Aの含有量が40質量%以下であり、
前記界面活性剤Dは、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%であり、
前記溶剤Eは、25℃における表面張力が26.0mN/m以上28.0mN/m以下の溶剤E1と、25℃における表面張力が26.0mN/m未満である溶剤E2とを含み、
前記溶剤E1はエステル系溶剤であり、
前記溶剤E2は酢酸ブチルであり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1の含有量が15質量%以上であり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E2の含有量が10質量%以上であり、
前記溶剤E中における前記溶剤E1と前記溶剤E2の質量比が、溶剤E1の質量:溶剤E2の質量=60:40?40:60であり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1と前記溶剤E2との合計の含有量が50質量%以上であり、
下記工程1および工程2からなる方法で測定した着色組成物の接触角が0度を超え5.5度以下である、着色組成物;
工程1:ガラス基材上に、25℃の水を2μL滴下して5秒後に測定した水の有機物層に対する接触角が60?80度である有機物層を形成する;
工程2:有機物層の温度を25℃に調整した後、有機物層の表面に25℃の着色組成物を2μL滴下して5秒後の着色組成物の有機物層に対する接触角を測定する。
【請求項2】
前記界面活性剤Dがフッ素系界面活性剤であり、前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%である、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
スピンコート用である、請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項4】
着色剤Aは青色顔料を含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の着色組成物。」

「【請求項7】
前記溶剤E1がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項1?4のいずれか1項に記載の着色組成物。」

「【請求項9】
請求項1、2、3、4または7のいずれか1項に記載の着色組成物を支持体に塗布する工程を含む、膜の製造方法。
【請求項10】
更に、パターンを形成する工程を含む、請求項9に記載の膜の製造方法。」


第4 取消しの理由の概要
1 令和2年7月29日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
理由1:(新規性)本件特許の請求項1?10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2:(進歩性)本件特許の請求項1?10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

甲第1号証:特開2012-14052号公報
甲第2号証:特開2010-44285号公報
甲第3号証:特開2014-137466号公報
甲第4号証:「DIPERBYK-161 Data Sheet」、ビックケミ-・ジャパン株式会社、2012年9月
甲第5号証:「安全データシート(SDS) PMA」、三協化学株式会社、2017年3月1日
甲第6号証:B.P.Whim & P.G.Jhonson,"Directory of Solvents",(英)Blackie academic & Professional,1996,p.253、及び抄訳文
甲第7号証:「CELTOL」、株式会社ダイセル 有機合成カンパニー、2012年4月6日
甲第8号証:「1-Ethoxy-2-propanol 1569-02-4 東京化成工業株式会社」、東京化成工業株式会社、2020年4月23日検索、インターネット<URL:https://www.tchihemicals.com/eshop/ja/jp/commodity/E0445/>
(当合議体注:甲第1号証?甲第3号証は、主引用例であり、甲第4号証?甲第8号証は、技術常識を示す文献である。)

理由3:(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1?10の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由4:(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1?10の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

2 令和3年2月3日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由は、概略、以下のとおりである。
(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の請求項7、9及び10の記載が、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。


第5 当合議体の判断
1 令和2年7月29日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由1、2(新規性進歩性)について

(1)甲1の記載、引用発明
ア 甲1の記載
取消しの理由に引用された甲1(特開2012-14052号公報)には、次の記載がある。

(ア)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光レーザー露光用の着色感光性樹脂組成物、これを用いたカラーフィルタ、その製造方法、及び、該カラーフィルタを用いた液晶表示装置に関する。
・・・省略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、パターン形成における残渣の発生が抑制され、パターン形状が良好で、且つ硬化して得られた着色画素は表面荒れがなく平滑で、現像ムラがなく、さらに剥離液と接触しても剥離が生じない紫外光レーザー露光用の着色感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> (A)着色剤、(B)溶剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)エチレン性不飽和化合物、(E)光重合開始剤、および(F)脂肪族多官能チオール化合物を含み、前記(E)光重合開始剤として、(E-1)下記一般式(1)で表されるオキシム系光重合開始剤と、(E-2)ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤および(E-3)アセトフェノン系光重合開始剤からなる群より選ばれる1種以上の光重合開始剤と、を含む紫外光レーザー露光用の着色感光性樹脂組成物。
【0011】
【化1】


【0012】
〔一般式(1)において、R^(1)は炭素数1?20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数3?8のシクロアルキル基、または炭素数6?20のアリール基を表し、R^(2)およびR^(3)はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1?20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数6?20のアリール基、または炭素数3?20のシクロアルキル基を表し、R^(4)は炭素数1?6の直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数6?20のアリール基を表す。〕
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、パターン形成における残渣の発生が抑制され、パターン形状が良好で、且つ硬化して得られた着色画素は表面荒れがなく平滑で、現像ムラがなく、さらに剥離液と接触しても剥離が生じない紫外光レーザー露光用の着色感光性樹脂組成物を提供することができる。」

(イ)「【発明を実施するための形態】
・・・省略・・・
【0033】
<着色感光性樹脂組成物>
本発明の紫外光レーザー露光用の着色感光性樹脂組成物は、(A)着色剤、(B)溶剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)エチレン性不飽和化合物、(E)光重合開始剤、および(F)脂肪族多官能チオール化合物を含み、前記(E)光重合開始剤として、(E-1)一般式(1)で表されるオキシム系光重合開始剤と、(E-2)ヘキサアリールビイミダゾール系光重合開始剤および(E-3)アセトフェノン系光重合開始剤からなる群より選ばれる1種以上の光重合開始剤と、を含む。この着色感光性樹脂組成物は、カラーフィルタの着色パターンの形成に用いられる。
以下に本発明の紫外光レーザー露光用の着色感光性樹脂組成物の各構成成分について詳述する。
【0034】
<(A)着色剤>
まず、本発明の特徴的な成分である(A)着色剤について説明する。
(A)着色剤としては、染料、及び顔料を適宜選択して用いることができる。耐熱性などの観点からは、顔料がより好ましい。
(A)着色剤として使用される顔料は、無機顔料であっても、有機顔料であってもよいが、高透過率とする観点から、なるべく粒子サイズの小さいものの使用が好ましい。一次粒子径の平均は、0.01μm?0.1μmであることが好ましく、さらに好ましくは、0.01μm?0.05μmの範囲である。
・・・省略・・・
【0067】
本発明の着色感光性樹脂組成物における(A)着色剤の含有量としては、着色感光性樹脂組成物の固形分100部に対し、質量換算で10部?50部が好ましく、15部?40部であることがより好ましい。この範囲にあることで、得られた着色層は十分な色相が得られ、また良好な現像性を示すことができる。
・・・省略・・・
【0068】
<(B)有機溶剤>
本発明の着色感光性樹脂組成物は、一般の溶剤を用いて調製することができる。また、上述した顔料分散組成物も、溶剤を用いて調製することができる。本発明に用いる(B)有機溶剤は、沸点が110℃以上200℃以下のものが、塗布性、塗布時のノズル詰まり抑制、硬化膜作製時の溶剤除去性の観点から好ましい。
本発明に用いうる有機溶剤としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、並びに3-オキシプロピオン酸メチル、3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチルなど)、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピルなどの2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなど)、並びに、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、1,3-ブタンジオールジアセテート等;
【0069】
エーテル類、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等;
【0070】
ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等;
アルコール類、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、
芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0071】
これらのうち、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等が好適である。
溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の着色感光性樹脂組成物における(B)有機溶剤の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、塗布性等の取り扱い性の観点から、固形分濃度が10質量%?30質量%となる範囲であることが好ましい。
【0072】
<(C)アルカリ可溶性樹脂>
本発明の着色感光性樹脂組成物は(C)アルカリ可溶性樹脂を1種以上含む。
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシル基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
・・・省略・・・
【0085】
<(D)エチレン性不飽和化合物>
本発明における着色感光性樹脂組成物は、(D)エチレン性不飽和化合物を含有する。
本発明に用いることができるエチレン性不飽和化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
・・・省略・・・
【0100】
<(E)光重合開始剤>
本発明における着色感光性樹脂組成物は、(E)光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤は、光により分解し、前記(D)エチレン性不飽和化合物の重合を開始、促進する化合物であり、紫外光レーザーの波長に感度を有するものが好ましい。
光重合開始剤としては、レーザーの露光波長に吸収を有するものであることが好ましく、紫外光レーザーの波長に吸収のない場合でも、後述する増感色素と併用することによって紫外光レーザーの波長に感度を有するようにすることが可能である。また、光重合開始剤は、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
・・・省略・・・
【0162】
<(F)脂肪族多官能チオール化合物>
本発明の着色感光性樹脂組成物は、(F)脂肪族多官能チオール化合物を含有する。
本発明の着色感光性樹脂組成物は、脂肪族多官能チオール化合物を含むことで、感度を高め、且つ、微細なコンタクトホールを形成することができる。本発明において「脂肪族多官能チオール化合物」とは、チオール基を分子内に2個以上有する脂肪族化合物を意味する。
・・・省略・・・
【0180】
(界面活性剤)
顔料濃度を大きくすると塗布液のチキソ性が一般的に大きくなるため、基板上に着色感光性樹脂組成物を塗布又は転写して着色感光性樹脂組成物層(着色層塗膜)形成後の膜厚ムラを生じやすい。また特に、スリットコート法による着色感光性樹脂組成物層(着色層塗膜)形成では、乾燥までに着色感光性樹脂組成物層形成用の塗布液がレベリングして均一な厚みの塗膜を形成することが重要である。このため、前記着色感光性樹脂組成物中に適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。上記界面活性剤としては、特開2003-337424号公報、特開平11-133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。
塗布性を向上するための界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が添加される。
・・・省略・・・
【0184】
フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖及び側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル又はフルオロアルキレン基を有する化合物を好適に用いることができる。
具体的市販品としては、例えばメガファックF142D、同F172、同F173、同F176、同F177、同F183、同780、同781、同R30、同R08、(以上、DIC(株)製)、フロラードFC-135、同FC-170C、同FC-430、同FC-431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-112、同S-113、同S-131、同S-141、同S-145、同S-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(以上、旭硝子(株)製)、エフトップEF351、同352、同801、同802(以上、JEMCO(株)製)などである。」

(ウ)「【実施例】
【0216】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0217】
-側鎖に複素環を有する高分子化合物の合成-
(重合体1の合成)
単量体1(下記構造)27.0部、メチルメタクリレート 126.0部、メタクリル酸 27.0部、および1-メトキシ-2-プロパノール 420.0部を、窒素置換した三つ口フラスコに導入し、撹拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて撹拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して90℃まで昇温した。これに2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製 V-65)を1.69部加え、90℃にて2時間加熱撹拌を行った。2時間後、さらにV-65を1.69部加え、3時間加熱撹拌の後、重合体1の30質量%溶液を得た。得られた重合体1の重量平均分子量をポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、2.0万であった。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、98mgKOH/gであった。
・・・省略・・・
【0219】
【化8】


【0220】
実施例及び比較例に用いた顔料分散液1?6を調製するために用いる、被覆顔料1?5について詳細を示す。
【0221】
(被覆顔料1の調製)
顔料(C.I.Pigment Red254 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 CROMOPHTAL RED BP) 50部、塩化ナトリウム 500部、上記の重合体1の溶液 20部、およびジエチレングリコール 100部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、9時間混練した。次に、この混合物を約3リットルの水中に投入し、ハイスピードミキサーで約1時間撹拌した後に、ろ過、水洗して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、乾燥して被覆顔料1を調製した。
【0222】
(被覆顔料2の調製)
被覆顔料1の調製において、Pigment Red254の代わりに、C.I.Pigment Red 177(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 CROMOPHTAL RED A2B)を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、被覆顔料2を調製した。
【0223】
(被覆顔料3の調製)
被覆顔料1の調製において、Pigment Red254の代わりに、C.I.Pigment Blue 15:6を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、被覆顔料3を調製した。
・・省略・・・
【0227】
(顔料分散液1の調製)
被覆顔料1の顔料相当分35部に対し、分散剤としてDisperBYK161(BYK-CHEMIE社製)14部、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 200部の組成にて、ホモジナイザーを用いて回転数3,000r.p.m.で3時間撹拌して混合し、混合溶液を調製し、さらに0.1mmφジルコニアビーズを用いたビーズ分散機ウルトラアペックスミル(寿工業社製)にて6時間分散処理を行なった。
【0228】
(顔料分散液2の調製)
顔料分散液1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料2を用いて、他は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液2を調製した。
【0229】
(顔料分散液3の調製)
顔料分散液1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料4を用いて、他は顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液3を調製した。
・・・省略・・・
【0236】
(アルカリ可溶性樹脂1:アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=80/20)の合成)
撹拌羽を供えた撹拌棒、還流冷却管、温度計を備えた、200mL三つ口フラスコに1-メトキシ-2-プロパノール 54gを入れ、窒素気流下、70℃に加熱した。アリルメタクリレート 10.07g、メタクリレート 1.93g、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 0.185gを1-メトキシ-2-プロパノール 54gに溶解した溶液をプランジャーポンプを用いて、2.5時間かけて、三つ口フラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに70℃で2時間撹拌した。加熱終了後、水1Lへ投入し、再沈した。析出物を濾過後、真空乾燥させ、9g(収率75%)のポリマー化合物を得た。
重量平均分子量の測定試料0.01gを10mLメスフラスコに秤取り、THF約8mLを加えて室温で溶解した後に全量を10mLにした。この溶液について、GPCを用いて下記条件にて測定したところ、上記ポリマー化合物の重量平均分子量は35000であった。
【0237】
<実施例1>
〔着色感光性樹脂組成物の調製〕
上記で得られた顔料分散液1?3を用いて、以下の組成の成分を添加し、撹拌混合して実施例1の着色感光性樹脂組成物を調製した。
・顔料分散液1 9.21部
・顔料分散液2 16.63部
・顔料分散液3 2.70部
・アルカリ可溶性樹脂1:上記に記載 5.72部
・エチレン性不飽和化合物1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、カヤラッドDPHA) 6.09部
・エポキシ樹脂:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル化学工業製、EHPE 3150) 0.60部
・界面活性剤1:メガファックF-781(DIC社製) 0.02部
・光重合開始剤1:下記構造 0.40部
・光重合開始剤3:下記構造 1.20部
・光重合開始剤5:下記構造 0.20部
・脂肪族多官能チオール1:下記構造 0.14部
・溶剤:ジプロピレングリコールジメチルエーテル(以下、DPDMと称する。) 16.00部
・溶剤:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと称する。) 41.09部
・・・省略・・・
【0239】
(光硬化性着色層形成)
ポストベーク後の着色感光性樹脂組成物層の層厚が3.2μmとなるようにスリットとガラス基板との間隔、及び吐出量を調節して、塗布速度120mm/秒で塗布した。
【0240】
-プリベーク工程、露光工程-
次いで、ホットプレートを用いて、100℃で120秒間加熱(プリベーク処理)を行なった後、Nd:YAGレーザー(Pulseo、第三高調波355nm、Spectra-Physics社製)を用いた露光装置にて、光硬化性着色層表面に対し照射エネルギーが約1.0mJ/cm^(2)となるように光学系を調整し、フォトマスクを通して露光を行った。光硬化性着色層表面に対し、20回の多重露光を行うことでパターン露光を行った。
【0241】
-現像工程、ポストベーク工程-
その後、現像装置(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、水酸化カリウム系現像液CDK-1(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1.0%現像液(CDK-1を1部、純水を99部の希釈した液)25℃でシャワー圧を0.2MPaに設定して、45秒現像し、純水で洗浄した。
次いで、220℃のクリーンオーブンで30分間ポストベーク処理し、熱処理済みの画素を有する基板を形成した。
・・・省略・・・
【0248】
【表1】


・・・省略・・・
【0251】
実施例および比較例で用いた光重合開始剤1?6、エチレン性不飽和化合物2、およびチオール化合物1?3は下記のとおりである。なお、チオール化合物1、2は脂肪族多官能チオール化合物であり、チオール化合物3は芳香族チオール化合物である。
【0252】
【化9】


【0253】
【化10】




イ 引用発明
上記アの記載によると、甲1には、「顔料分散液1?3を用いて」なる「実施例1の着色感光性樹脂組成物」(【0237】)が記載されている。
ここで、上記「顔料分散液1」には「分散剤としてDisperBYK161」(【0227】)が含まれるところ、この分散剤は、不揮発成分30%であって、溶剤はメトキシプロピルアセテート/酢酸ブチルが6/1のものである(当合議体注:このことは、甲4(「DIPERBYK-161 Data Sheet」、ビックケミ-・ジャパン株式会社、2012年9月)の記載から確認できる。)。
そうしてみると、甲1には、実施例1の着色感光性樹脂組成物として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、「メトキシプロピルアセテート」は、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」に用語を統一した。

「 顔料分散液1:9.21部、顔料分散液2:16.63部、顔料分散液3:2.70部、アルカリ可溶性樹脂1:5.72部、エチレン性不飽和化合物1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:6.09部、エポキシ樹脂:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物:0.60部、界面活性剤1:メガファックF-781:0.02部、光重合開始剤1:0.40部、光重合開始剤3:1.20部、光重合開始剤5:0.20部、脂肪族多官能チオール1:0.14部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル:16.00部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート:41.09部を攪拌混合して調整した、着色感光性組成物であって、
被覆顔料1は、顔料(C.I.Pigment Red254):50部、塩化ナトリウム:500部、重合体1の溶液:20部、およびジエチレングリコール:100部を混練し、次に、この混合物を約3リットルの水中に投入し、撹拌した後に、ろ過、水洗して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、乾燥して調整したものであり、
被覆顔料2は、被覆顔料1の調製において、Pigment Red254の代わりに、C.I.Pigment Red 177を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、調製したものであり、
被覆顔料3は、被覆顔料1の調製において、Pigment Red254の代わりに、C.I.Pigment Blue 15:6を用いて、他は被覆顔料1の調製と同様にして、調整したものであり、
顔料分散液1は、被覆顔料1の顔料相当分35部に対し、分散剤としてDisperBYK161:14部、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:200部の組成にて、撹拌して混合し調整したものであり、
顔料分散液2は、顔料分散液1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料2を用いて、他は顔料分散液1の調製と同様にして、調製したものであり、
顔料分散液3は、顔料分散液1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料4を用いて、他は顔料分散液1の調製と同様にして、調製したものであり、
DisperBYK161は、不揮発成分30%であって、溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/酢酸ブチルが6/1である、
着色感光性樹脂組成物。」

なお、煩雑になるので省略したが、甲1において、重合体1は、【0217】及び【0219】に、アルカリ可溶性樹脂1は、【0236】に、光重合開始剤1、3、5は、【0252】に、脂肪族多官能チオール1は、【0253】に、それぞれ記載されているとおりである。

(2)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と引用発明とを対比する。

(ア)着色剤A
引用発明の「顔料分散液1」における「被覆顔料1」、「顔料分散液2」における「被覆顔料2」及び「顔料分散液3」における「被覆顔料3」には、それぞれ、「顔料(C.I.Pigment Red254)」、「C.I.Pigment Red 177」及び「C.I.Pigment Blue 15:6」が含まれている。
ここで、「C.I.Pigment Red254」、「C.I.Pigment Red 177」及び「C.I.Pigment Blue 15:6」は、その名のとおり、いずれも着色剤である。
そうしてみると、引用発明の「顔料(C.I.Pigment Red254)」、「C.I.Pigment Red 177」及び「C.I.Pigment Blue 15:6」は、本件特許発明1の「着色剤A」に相当する。

(イ)樹脂B
引用発明の「アルカリ可溶性樹脂1」は、その文言が意味するとおりのものであるから、本件特許発明1の「樹脂B」に相当する。

(ウ)硬化性化合物C
引用発明の「着色感光性樹脂組成物」には、「エチレン性不飽和化合物1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」及び「エポキシ樹脂:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物」が含まれている。
ここで、これら化合物が、露光により硬化することは、技術常識である。
そうしてみると、引用発明のこれら化合物は、本件特許発明1の「硬化性化合物C」に相当する(当合議体注:このことは、本件特許明細書の【0062】、【0069】の記載からも確認できる。)。

(エ)界面活性剤D
引用発明の「界面活性剤1:メガファックF-781」は、その文言どおり、本件特許発明1の「界面活性剤」に相当する。
また、引用発明の「界面活性剤1:メガファックF-781」は、フッ素系界面活性剤である(当合議体注:このことは、甲1の【0184】の記載からも確認できる。)。そうしてみると、引用発明の「界面活性剤1:メガファックF-781」は、本件特許発明1の「界面活性剤D」の「フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含み」との要件を満たす。

(オ)溶剤E、溶剤E1、溶剤E2
引用発明の「着色感光性樹脂組成物」には、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」、「酢酸ブチル」及び「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」が含まれている。
ここで、これら化合物は、技術的にみて、いずれも溶剤である。また、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」がエステル系溶剤である。加えて、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」の25℃における表面張力は26.7mN/mであり、「酢酸ブチル」の25℃における表面張力は24.3mN/mである(当合議体注:このことは、本件特許明細書の【0174】の【表1】の記載からも確認できる。)。
そうしてみると、引用発明の「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」、「酢酸ブチル」及び「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」は、本件特許発明1の「溶剤E」に相当する。また、引用発明の「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」は、本件特許発明1の「溶剤E1」に相当するとともに、本件特許発明1の「溶剤E1」の「エステル系溶剤であり」及び「25℃における表面張力が26.0mN/m以上28.0mN/m以下」との要件を満たす。加えて、引用発明の「酢酸ブチル」は、本件特許発明1の「溶剤E2」に相当するとともに、本件特許発明1の「溶剤E2」の「酢酸ブチルであり」及び「25℃における表面張力が26.0mN/m未満」との要件を満たす。さらに、引用発明の「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」、「酢酸ブチル」及び「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」は、本件特許発明1の「溶剤E」における、「溶剤E1と」、「溶剤E2とを含み」との要件を満たす。
(当合議体注:「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」は、「溶剤E」ではあるが、「溶剤E1」及び「溶剤E2」のいずれにも該当しない。)

(カ)着色組成物
上記(ア)?(オ)を総合すると、引用発明の「着色感光性組成物」は、本件特許発明1の「着色組成物」に相当する。また、引用発明の「着色感光性組成物」は、本件特許発明1の「着色組成物」の「着色剤Aと、樹脂Bと、硬化性化合物Cと、界面活性剤D、溶剤Eとを含む」との要件を満たす。

(キ)着色剤A、界面活性剤D並びに溶剤E、E1及びE2の含有量
a 引用発明の「被覆顔料1」は、「顔料(C.I.Pigment Red254):50部、塩化ナトリウム:500部、重合体1の溶液:20部、およびジエチレングリコール:100部を混練し、次に、この混合物を約3リットルの水中に投入し、撹拌した後に、ろ過、水洗して塩化ナトリウムおよび溶剤を除き、乾燥して調整したものであり」、「顔料分散液1」は、「被覆顔料1の顔料相当分35部に対し、分散剤としてDisperBYK161:14部、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:200部の組成にて、撹拌して混合し調整したものであり」、「DisperBYK161は、不揮発成分30%であって、溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/酢酸ブチルが6/1であ」る。
上記組成より 引用発明の「顔料分散液1」の「DisperBYK161」における組成物の含有量は、以下のとおりである。
不揮発分:4.2質量部(14×30/100)、プロピレングリコールモノメチルアセテート:8.4質量部(14×70/100×6/7)、酢酸ブチル:1.4質量部(14×70/100×1/7)
引用発明の「顔料分散液1」の質量部は、249質量部(35+4.2+8.4+1.4+200)であるから、引用発明の「顔料分散液1」の組成物の質量%は、以下のとおりである。
被覆顔料1の顔料相当分:14.06質量%(35/249)、DispereBYK161の不揮発分:1.69質量%(4.2/249)、DispereBYK161のプロピレングリコールモノメチルアセテート:3.37質量%(8.4/249)、DispereBYK161の酢酸ブチル:0.56質量%(1.4/249)、プロピレングリコールモノメチルアセテート:80.32質量%(200/249)

b 引用発明の「顔料分散液2」は、「顔料分散液1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料2を用いて、他は顔料分散液1の調製と同様にして、調製したものであり」、引用発明の「顔料分散液3」は、「顔料分散液1の調製において、被覆顔料1の代わりに、被覆顔料4を用いて、他は顔料分散液1の調製と同様にして、調製したものであ」る。
そうしてみると、引用発明の「顔料分散液2」及び「顔料分散液3」は、いずれも「顔料分散液1」とは被覆顔料が異なるのみで、質量部、質量%はいずれも「顔料分散液1」と同様である。

c 引用発明は、「顔料分散液1:9.21部、顔料分散液2:16.63部、顔料分散液3:2.70部、アルカリ可溶性樹脂1:5.72部、エチレン性不飽和化合物1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:6.09部、エポキシ樹脂:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物:0.60部、界面活性剤1:メガファックF-781:0.02部、光重合開始剤1:0.40部、光重合開始剤3:1.20部、光重合開始剤5:0.20部、脂肪族多官能チオール1:0.14部、ジプロピレングリコールジメチルエーテル:16.00部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート:41.09部を攪拌混合して調整した」ものである。
上記組成より、引用発明の「着色感光性組成物」の質量部は、100質量部(9.21+16.63+2.70+5.72+6.09+0.60+0.02+0.40+1.20+0.20+0.14+16.00+41.09)であるから、上記組成と上記(ア)及び(イ)の顔料分散液1?3の質量部及び質量%より、引用発明の着色感光性組成物の組成物の質量部は、以下の表のとおりとなる。なお、下記表において、「プロピレングリコールモノメチルアセテート」を「PGMEA」と表した。

成分 含有量(質量部)
顔料分散液1 被覆顔料1の顔料相当分 1.29(9.21×14.06/100)
DisperBYK161 不揮発分 0.16(9.21×1.69/100)
PGMEA 0.31(9.21×3.37/100)
酢酸ブチル 0.05(9.21×0.56/100)
PGMEA 7.40(9.21×80.32/100)
顔料分散液2 被覆顔料2の顔料相当分 2.34(16.63×14.06/100)
DisperBYK161 不揮発分 0.28(16.63×1.69/100)
PGMEA 0.56(16.63×3.37/100)
酢酸ブチル 0.09(16.63×0.56/100)
PGMEA 13.36(16.63×80.32/100)
顔料分散液3 被覆顔料3の顔料相当分 0.38(2.70×14.06/100)
DisperBYK161 不揮発分 0.05(2.70×1.69/100)
PGMEA 0.09(2.70×3.37/100)
酢酸ブチル 0.02(2.70×0.56/100)
PGMEA 2.17(2.70×80.32/100)
アルカリ可溶性樹脂1 5.72
エチレン性不飽和化合物1 6.09
エポキシ樹脂 0.60
界面活性剤1 0.02
光重合開始剤1 0.40
光重合開始剤3 1.20
光重合開始剤5 0.20
脂肪族多官能チオール1 0.14
ジプロピレングリコールジメチルエーテル 16.00
PGMEA 41.09
合計 100.00

d 上記cより、引用発明の「着色感光性組成物」の全固形分の質量部は、18.87質量部(1.29+0.16+2.34+0.28+0.38+0.05+5.72+6.09+0.60+0.02+0.40+1.20+0.20+0.14)であり、引用発明の「被覆顔料1の顔料相当分」、「被覆顔料2の顔料相当分」及び「被覆顔料3の顔料相当分」の質量部は、4.01質量部(1.29+2.34+0.38)である。上記質量部の比から、引用発明において、「着色感光性組成物」の全固形分中における「被覆顔料1の顔料相当分」、「被覆顔料2の顔料相当分」及び「被覆顔料3の顔料相当分」の含有量は、21.3質量%(4.01/18.87)である。
そうしてみると、引用発明は、本件特許発明1の「前記着色組成物の全固形分中における前記着色剤Aの含有量が40質量%以下であり」との要件を満たす。

e 引用発明の「着色感光性組成物」の全固形分の質量部は、上記dで示したとおりである。そして、引用発明において、「着色感光性組成物」の全固形分中における「界面活性剤1」の含有量は、0.11質量%(0.02/18.87)である。
そうしてみると、引用発明は、本件特許発明1の「前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%であり」との要件を満たす。

f 上記cより、引用発明において、「プロピレングリコールモノメチルアセテート」、「酢酸ブチル」及び「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」の全質量部は、81.14質量部(0.31+0.05+7.40+0.56+0.09+13.36+0.09+0.02+2.17+16.00+41.09)であり、「プロピレングリコールモノメチルアセテート」の質量部は、64.98質量部(0.31+7.40+0.56+13.36+0.09+2.17+41.09)であり、「酢酸ブチル」の質量部は、0.16質量部(0.05+0.09+0.02)である。上記質量部の比から、引用発明において、「プロピレングリコールモノメチルアセテート」、「酢酸ブチル」及び「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」の全質量中に対して、それぞれ、「プロピレングリコールモノメチルアセテート」の含有量は、80.08質量%(64.98/81.14)であり、「酢酸ブチル」の含有量は、0.20質量%(0.16/81.14)であり、「プロピレングリコールモノメチルアセテート」及び「酢酸ブチル」の含有量は、80.28質量%((64.98+0.16)/81.14)である。
そうしてみると、引用発明の「プロピレングリコールモノメチルアセテート」、「酢酸ブチル」及び「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」は、本件特許発明1の「溶剤E」における、「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1の含有量が15質量%以上であり」との要件及び「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1と前記溶剤E2との合計の含有量が50質量%以上であり」との要件を満たす。

イ 一致点・相違点
(ア)一致点
上記アの対比からみて、本件特許発明1と引用発明は、次の点で一致する。
「 着色剤Aと、樹脂Bと、硬化性化合物Cと、界面活性剤Dと、溶剤Eとを含む着色組成物であって、
前記着色組成物の全固形分中における前記着色剤Aの含有量が40質量%以下であり、
前記界面活性剤Dは、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%であり、
前記溶剤Eは、25℃における表面張力が26.0mN/m以上28.0mN/m以下の溶剤E1と、25℃における表面張力が26.0mN/m未満である溶剤E2とを含み、
前記溶剤E1はエステル系溶剤であり、
前記溶剤E2は酢酸ブチルであり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1の含有量が15質量%以上であり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1と前記溶剤E2との合計の含有量が50質量%以上である、
着色組成物。」

(イ)相違点
上記アの対比からみて、本件特許発明1と引用発明は、次の点で相違する。

(相違点1)
「溶剤E」が、本件特許発明1は、「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E2の含有量が10質量%以上であり」、「前記溶剤E中における前記溶剤E1と前記溶剤E2の質量比が、溶剤E1の質量:溶剤E2の質量=60:40?40:60であ」るのに対して、引用発明の「プロピレングリコールモノメチルアセテート」、「酢酸ブチル」及び「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」の全質量中における「酢酸ブチル」の含有量は、0.20質量%にとどまる点。

(相違点2)
本件特許発明1は、「下記工程1および工程2からなる方法で測定した着色組成物の接触角が0度を超え5.5度以下であ」って、「工程1:ガラス基材上に、25℃の水を2μL滴下して5秒後に測定した水の有機物層に対する接触角が60?80度である有機物層を形成する」、「工程2:有機物層の温度を25℃に調整した後、有機物層の表面に25℃の着色組成物を2μL滴下して5秒後の着色組成物の有機物層に対する接触角を測定する」のに対して、引用発明の「着色感光性組成物」は、このように特定されていない点。

ウ 判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
組成物の接触角が溶剤の組成に依存することは技術常識であるところ、引用発明の「プロピレングリコールモノメチルアセテート」、「酢酸ブチル」及び「ジプロピレングリコールジメチルエーテル」の全質量中における「酢酸ブチル」の含有量は、0.20質量%であり、本件特許発明1の溶剤Eの全質量中における含有量である10質量%よりもかなり少ないものである。そうしてみると、引用発明の「着色感光性組成物」が上記相違点2に係る接触角の範囲内にある蓋然性が高いとはいえない。
そして、甲1には、「着色感光性組成物」の接触角について記載も示唆もない。また、甲1の【0068】?【0071】には、有機溶剤について例示されているものの、甲1の【0071】に「溶剤は、単独で用いる以外に2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の着色感光性樹脂組成物における(B)有機溶剤の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、塗布性等の取り扱い性の観点から、固形分濃度が10質量%?30質量%となる範囲であることが好ましい。」と記載されていることにとどまる。上記記載には、複数の溶剤をどのような含有量とするかについて具体的な記載はない。
そうしてみると、引用発明において、「着色性感光性組成物」を上記相違点2に係る接触角の範囲内とするために、「酢酸ブチル」の含有量を増やして上記相違点1に係る溶剤E2(酢酸ブチル)の含有量の範囲内とすることは、たとえ当業者といえども、容易に想到し得たということができない。加えて、引用発明の「酢酸ブチル」は、「分散剤」として加えられた「DisperBYK161」中に含まれていたものであり、「着色感光性樹脂組成物」の「溶剤」として意図して加えられたものではない。したがって、当業者は、そもそも「溶剤」としての「酢酸ブチル」を認識すらしないと考えるのが自然である。
また、引用発明において、上記相違点1及び相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、取消しの理由に引用された甲2(特開2010-44285号公報)及び甲3(特開2014-137466号公報)にも記載されておらず、周知技術であるともいえない。
したがって、たとえ当業者といえども、上記相違点1及び相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることが容易に想到し得たということができない。

なお、甲1の他の実施例を主引例としても同様である。

エ 本件特許発明1についてのまとめ
以上のことから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということができず、また、当業者であっても、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

(3)本件特許発明2?4、7、9及び10
本件特許発明2?4、7、9及び10は、本件特許発明1の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明2?4、7、9及び10も、本件特許発明1と同じ理由により、甲1に記載された発明であるということができず、また、当業者であっても、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

(4)甲2、甲3を主引例とした場合
甲2又は甲3を主引例とした場合であっても、甲1を主引例とした場合と同様に、本件特許発明1と甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明は、少なくとも上記(2)の(イ)の相違点1及び相違点2において相違する。そうしてみると、上記(2)で示したのと同様の理由により、本件特許発明1?4、7、9及び10は、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明であるということができず、また、当業者であっても、甲2に記載された発明又は甲3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

(5)まとめ
本件特許発明1?4、7、9及び10は、甲1?甲3に記載された発明ということができず、また、当業者であっても、甲1?3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

2 令和2年7月29日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由3(サポート要件)について
(1)本件特許発明1の課題について、本件特許明細書の【0009】に「本発明の目的は、塗布ムラおよびストリエーションの発生を抑制できる着色剤組成物、膜、および、膜の製造方法を提供することにある」と記載されているところ、接触角をはじめとした本件特許発明1の要件を満たす実施例1?4は、表3に示すようにストリエーションの評価がいずれもAであることが示されている。
そして、本件特許明細書の【0017】には、「着色組成物の上記接触角は、着色組成物に含まれる各成分の種類や含有量を適宜変更することで調整できる。例えば、溶剤および/または界面活性剤の種類や含有量を適宜変更することで上記接触角を上述した範囲に調整しやすい。」と記載されていて、本件特許発明1で規定された接触角を調整するための指針が記載されている。また、溶剤E1に関して、本件特許明細書において、【0094】及び【0108】には溶剤E1の質量と溶剤E2の質量との比、【0095】には溶剤E1の表面張力、【0098】には溶剤E1の材料の例示、【0099】には溶剤全質量中における溶剤E1の含有量、【0107】には溶剤の全質量中における溶剤E1と溶剤2との合計の含有量が、それぞれ記載されている。さらに、界面活性剤Dに関して、本件特許明細書において、【0121】には各種界面活性剤を使用できること、【0127】?【0131】には界面活性剤Dの材料の例示、【0132】には着色組成物の全固形分に対する界面活性剤の含有量が、それぞれ記載されている。
そして、本件特許明細書の上記記載に接した当業者であれば、本件特許発明1の工程1および工程2からなる方法で測定した着色組成物の接触角を得るために、【0017】に記載された指針にしたがって、【0094】、【0095】、【0098】、【0099】、【0107】及び【0108】に記載された条件を参考にして、溶剤E1を【0098】に例示された材料の中から選択するとともに、界面活性剤Dを【0127】?【0131】の例示された材料の中から選択することにより、本件特許発明1の課題を解決することができる。
本件特許発明2?4、7、9及び10についても、同様である。
したがって、本件特許発明1?4、7、9及び10は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(2) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は,令和2年12月7日付け意見書において、「S-1以外の界面活性剤、ましてやフッ素系界面活性剤でさえもないノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を用いた場合であっても、塗布ムラ及びストリエーションの発生を抑制できるとは認められない。」、「溶剤とE1としてPGMEA以外のエステル系溶剤を用いた場合であっても、同様に、塗布ムラ及びストリエーションの発生を抑制できることは示されていない。」、「したがって、本件特許の請求項1?4,7,9,10に係る発明は、依然として発明の詳細な説明に記載したものではなく、取り消されるべきものである。」と主張している。
しかしながら、上記(1)で述べたとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は、認められない。

3 令和2年7月29日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由4(明確性要件)について
本件特許発明1において、界面活性剤Dは、「フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含」むものであり、「前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%であり」、種類及び含有量が特定されている。また、溶剤Eは、「25℃における表面張力が26.0mN/m以上28.0mN/m以下の溶剤E1と、25℃における表面張力が26.0mN/m未満である溶剤E2とを含み」、「前記溶剤E1はエステル系溶剤であり」、「前記溶剤E2は酢酸ブチルであり」、「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1の含有量が15質量%以上であり」、「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E2の含有量が10質量%以上であり」、「前記溶剤E中における前記溶剤E1と前記溶剤E2の質量比が、溶剤E1の質量:溶剤E2の質量=60:40?40:60であり」、「前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1と前記溶剤E2との合計の含有量が50質量%以上であり」、種類及び含有量が特定されている。
そうしてみると、本件特許発明1の界面活性剤D及び溶剤Eの組成は特定されているので、本件特許発明1は、明確である。
本件特許発明2?4、7、9及び10についても、同様である。
したがって、本件発明1?4、7、9及び10に係る発明は、明確である。

4 令和3年2月3日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消しの理由について
本件訂正により取消しの理由が解消された。


第6 むすび
本件特許1?4、7、9及び10は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許1?4、7、9及び10を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求により、請求項5、6及び8は削除されたから、本件特許5、6及び8についての特許異議の申立ての対象は存在しないこととなった。
したがって、本件特許5、6及び8についての特許異議の申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤Aと、樹脂Bと、硬化性化合物Cと、界面活性剤Dと、溶剤Eとを含む着色組成物であって、
前記着色組成物の全固形分中における前記着色剤Aの含有量が40質量%以下であり、
前記界面活性剤Dは、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%であり、
前記溶剤Eは、25℃における表面張力が26.0mN/m以上28.0mN/m以下の溶剤E1と、25℃における表面張力が26.0mN/m未満である溶剤E2とを含み、
前記溶剤E1はエステル系溶剤であり、
前記溶剤E2は酢酸ブチルであり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1の含有量が15質量%以上であり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E2の含有量が10質量%以上であり、
前記溶剤E中における前記溶剤E1と前記溶剤E2の質量比が、溶剤E1の質量:溶剤E2の質量=60:40?40:60であり、
前記溶剤Eの全質量中における前記溶剤E1と前記溶剤E2との合計の含有量が50質量%以上であり、
下記工程1および工程2からなる方法で測定した着色組成物の接触角が0度を超え5.5度以下である、着色組成物;
工程1:ガラス基材上に、25℃の水を2μL滴下して5秒後に測定した水の有機物層に対する接触角が60?80度である有機物層を形成する;
工程2:有機物層の温度を25℃に調整した後、有機物層の表面に25℃の着色組成物を2μL滴下して5秒後の着色組成物の有機物層に対する接触角を測定する。
【請求項2】
前記界面活性剤Dがフッ素系界面活性剤であり、前記着色組成物の全固形分中における前記界面活性剤Dの含有量が0.001?0.20質量%である、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
スピンコート用である、請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項4】
着色剤Aは青色顔料を含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記溶剤E1がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項1?4のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
請求項1、2、3、4または7に記載の着色組成物を支持体に塗布する工程を含む、膜の製造方法。
【請求項10】
更に、パターンを形成する工程を含む、請求項9に記載の膜の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-05-20 
出願番号 特願2016-191377(P2016-191377)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B)
P 1 651・ 113- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中山 佳美  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井口 猶二
下村 一石
登録日 2019-10-25 
登録番号 特許第6604928号(P6604928)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 着色組成物、膜および膜の製造方法  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ