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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 一部申し立て 特29条の2  A61K
管理番号 1376704
異議申立番号 異議2020-700554  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-08-04 
確定日 2021-06-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6639034号発明「矯味剤含有顆粒を内在する、服用性が改善された口腔内崩壊錠」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6639034号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕、4、5について訂正することを認める。 特許第6639034号の請求項1ないし2、4ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6639034号(以下「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願(特願2019-105522号)は、令和1年6月5日(優先権主張 平成30年6月13日)を出願日として、令和2年1月7日にその特許権の設定登録がされ、同年2月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許のうち、請求項1、2、4及び5に係る特許について、同年8月4日に特許異議申立人 中尾真一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審より、同年11月17日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内である令和3年1月21日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。
なお、同年2月9日付けで当審から申立人に対し、訂正の請求があった旨の通知をするとともに、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが(特許法第120条の5第5項)、申立人から意見書は提出されなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)?(4)のとおりである。
ここで、訂正前の請求項2?5は、訂正前の請求項1を、直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1?5は、一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項1?5について訂正する訂正事項1ないし4は、一群の請求項に対してされたものである。
また、特許権者は、訂正後の請求項2、4及び5に係る訂正について、本件訂正が認められるときには、別の訂正単位とすることを求めている。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、薬物がメマンチン塩酸塩であり、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」と記載されているのを、「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、薬物がメマンチン塩酸塩であり、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠(ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く)。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「顆粒αに薬物及び結合剤が含有され、結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレングリコール、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液から選ばれる、請求項1に記載の口腔内崩壊錠。」と記載されているのを、「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、薬物がメマンチン塩酸塩であり、顆粒αに薬物、スクラロース及び結合剤が含有され、結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレングリコール、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液から選ばれる、口腔内崩壊錠。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「素錠の全重量に対してスクラロースが0.5重量%以上含有され、賦形剤としてマンニトール、及び崩壊剤としてクロスポビドンが含有される、請求項1?3のいずれかに記載の口腔内崩壊錠。」と記載されているのを、「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、薬物がメマンチン塩酸塩であり、顆粒αにスクラロースが含まれ、素錠の全重量に対してスクラロースが0.5重量%以上含有され、賦形剤としてマンニトール、及び崩壊剤としてクロスポビドンが含有される、口腔内崩壊錠。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「スクラロースを含むコーティング液を添加して顆粒αを製造する工程を含む、請求項1?4のいずれかに記載の口腔内崩壊錠を製造する方法。」と記載されているのを、「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有し、薬物がメマンチン塩酸塩であり、顆粒αにスクラロースが含まれる口腔内崩壊錠を製造する方法であって、スクラロースを含むコーティング液を添加して顆粒αを製造する工程を含む、製造方法。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「・・・口腔内崩壊錠(ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く)。」と訂正し、訂正後の請求項1としたものであり、令和2年11月17日付けで通知した取消理由(特許法第29条の2)に対応して、所謂「除くクレーム」とする訂正である。
そうしてみると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。また、訂正事項3は、訂正前の請求項4において引用されていた訂正前の請求項2、3の記載の引用をしないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして、このような訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。また、訂正事項4は、訂正前の請求項5において引用されていた訂正前の請求項2から4の記載の引用をしないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。
そして、このような訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(5)独立特許要件について
特許異議申立てのなされた請求項1、2、4及び5については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
また、特許異議申立てのなされていない請求項3は、請求項2を引用するものであるが、上記訂正事項2による訂正の前後で、請求項2に係る発明の実質はなんら変更されていないから、請求項3に係る発明も、本件訂正による内容の変更はなされていない。よって、請求項3についても、独立特許要件は課されない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2、3〕、4、5について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1?5に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。以下、請求項順に、本件発明1、本件発明2等といい、これらをまとめて、本件発明ということがある。

「【請求項1】
薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠(ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く)。
【請求項2】
薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αに薬物、スクラロース及び結合剤が含有され、結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレングリコール、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液から選ばれる、口腔内崩壊錠。
【請求項3】
顆粒αが、メマンチン塩酸塩である薬物の周囲にコーティング層が形成されてなる顆粒(以下、顆粒βと呼ぶ。)を含む、請求項2に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αにスクラロースが含まれ、
素錠の全重量に対してスクラロースが0.5重量%以上含有され、賦形剤としてマンニトール、及び崩壊剤としてクロスポビドンが含有される、口腔内崩壊錠。
【請求項5】
薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有し、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αにスクラロースが含まれる口腔内崩壊錠を製造する方法であって、
スクラロースを含むコーティング液を添加して顆粒αを製造する工程を含む、製造方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和2年11月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。以下、申立人が提出した甲第1号証、甲第2号証・・・をそれぞれ甲1、甲2・・・のように省略して記載する。

(拡大先願)請求項1に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開がされた特許出願(特願2018-6039号。以下「甲21出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

2 甲21出願発明
甲21出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、同明細書の段落【0085】及び【0086】の記載を踏まえると、以下の発明が記載されていると認める。

「メマンチン塩酸塩500gと、D-マンニトール1,105gと、ι-カラギーナン200gと、スクラロース20gと、二酸化ケイ素75gとを混合し、これに、グリチルリチン酸ジカリウム100gを溶解した精製水を加えて、練合、造粒、乾燥して薬物含有顆粒とし、この薬物含有顆粒600gと、D-マンニトール888gとを混合し、これに、ポリビニルアルコール12gを溶解した60%(w/w)エタノール水溶液207gを添加して混合し、湿潤粉体を得、この湿潤粉体を湿製錠用打錠機により打錠し得られた湿潤錠剤。」(以下「甲21出願発明」という。)

3 当審の判断
本件発明1と甲21出願発明とを対比すると、甲21出願発明は、本件訂正により、訂正前の請求項1に係る発明から除かれることとなった「D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤」に相当することから、本件発明1は、甲21出願発明と同一ではない。
よって、上記1の取消理由は、解消した。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1、2、4及び5に係る発明は、以下の文献に基づき進歩性を有しておらず、特許法第29条2項により、特許を受けることができないものである旨主張する。

(1)本件発明1について
ア 甲1?10のいずれかと甲11?14に基づく進歩性欠如
本件発明1と甲1?10のいずれかに記載の発明との相違点は、活性成分がメマンチン塩酸塩であるかどうかの点のみである。口腔内崩壊錠の崩壊性を向上させる製剤設計は、一般に、どのような活性成分にも適用でき、或いは少なくとも崩壊性を向上させる汎用技術が存在するのであるから(甲11?14)、甲1?10のいずれに記載の口腔内崩壊錠の活性成分を、公知の薬物であるメマンチン塩酸塩(甲14)に置き換えることは、当業者であれば容易に想到しうることである。

イ 甲15、16、1、11、17に基づく進歩性欠如
本件発明1と甲15記載の発明とは、スクラロースが顆粒内に配合されているかどうかの点で異なる。
この点に関し、甲16には、顆粒にスクラロースを配合することで顆粒サイズを大きくすることができること、それによる技術的利点も記載されており、また、この顆粒は口腔内崩壊錠の製造に用いることが予定されているものであるから、甲15の口腔内崩壊錠において、スクラロースを顆粒内に配合することは、当業者であれば容易に想到しうることである。

ウ 甲18、19、11、20、1、17に基づく進歩性欠如
本件発明1と甲18記載の発明とは、本件発明1ではスクラロースを含むのに対し、甲18ではアスパルテームを含む点(相違点1)及び本件発明1は口腔内崩壊錠であるのに対し、甲18は顆粒剤である点(相違点2)で相違する。
相違点1に関して、甲18には甘味剤としてアスパルテームとスクラロースが並列に例示されており、甲18の実施例1?3の顆粒のアスパルテームをスクラロースに置換することは容易である。
相違点2に関して、顆粒の圧縮により口腔内崩壊錠を製造する際に、溶出性が良好な顆粒を用いることが望ましいことは自明であり、甲18の実施例1?3の顆粒を口腔内崩壊錠の製造に用いることは容易に想到できる。

(2)本件発明2について
ア 甲4、11?14、22に基づく進歩性欠如
本件発明2のうち、結合剤がヒプロメロースの場合は、本件発明1と同様、甲4と甲11?14から進歩性がない。
本件発明2のうち、結合剤がヒプロメロース以外の場合、甲4記載発明のヒプロメロースを置換することは、甲4の記載あるいは周知技術(甲22)から容易であるから、甲4と甲11?14、甲22から進歩性がない。

イ 甲18、19、11、20、1、17、22に基づく進歩性欠如
本件発明2のうち、結合剤がヒドロキシプロピルセルロースの場合は、本件発明1と同様、甲18、19、11、20、1、17から進歩性がない。
本件発明2のうち、結合剤がヒドロキシプロピルセルロース以外の場合、甲18記載発明のヒドロキシプロピルセルロースを置換することは、甲18の記載あるいは周知技術(甲22)から容易であるから、甲18、19、11、20、1、17と甲22から進歩性がない。

(3)本件発明4について
ア 甲8、11?14に基づく進歩性欠如
本件発明4のうち、請求項1を引用する部分について、甲8の実施例1?3の口腔内崩壊錠において、スクラロース含有量を素錠全量の0.5重量%以上とすることは容易であり、甲8、甲11?14から進歩性がない。

(4)本件発明5について
ア 請求項1、2、4についての各甲号証と甲23、24に基づく進歩性欠如
請求項1、2、4の口腔内崩壊錠の製造に当たり、味を良くするために、それに含まれる顆粒を、スクラロースを含むコーティング液を添加して製造することは、上記(1)?(3)で採用した各甲号証と、甲23,24から容易に想到できる。
(合議体注:特許異議申立書では、請求項5のうち、請求項1?4を引用する場合について進歩性欠如を主張しているが、請求項3に対しては特許異議申立てがなされていないため、上記のとおり、請求項3を引用する部分を除いたものについて主張がなされているものと認める。)

<証拠方法>
上記(1)?(4)の申立理由に関連して、申立人が提出した証拠方法は、以下の甲1?甲20、甲22?甲24である。

甲1:中国公開101152190号
甲2:中国公開1795857号
甲3:中国公開101269222号
甲4:中国公開103494784号
甲5:中国公開1686122号
甲6:中国公開103271888号
甲7:中国公開103751138号
甲8:中国公開104013589号
甲9:特表2015-504878号
甲10:特開2006-55074号
甲11:国際公開2007/018192号
甲12:国際公開2017/217491号
甲13:国際公開2017/217494号
甲14:特開2017-8112号
甲15:国際公開2017/109547号
甲16:米国公開2010/0034894号
甲17:特開2017-114793号
甲18:国際公開2018/079734号
甲19:メマリー錠・メマリーOD錠 医薬品インタビューフォーム、2017年6月、表紙
甲20:DRUG DEVELOPMENT AND INDUSTRIAL PHARMACY、2016、Vol.42、No.8、1225-1233
甲22:医薬品添加物事典2016、株式会社薬事日報社、2016年2月18日、715-716ページ
甲23:特表2013-512250号
甲24:再公表2012/029913号

2 各甲号証に記載された事項
申立人が提出した主な証拠には、以下の事項が記載されている。なお、外国語の文献については、当審の翻訳で示す。
(1)甲1
(甲1a)「アデホビル口腔内崩壊錠およびその調製方法は、CN1709268Aに開示されており、アデホビル口腔内崩壊錠における甘味料として、サッカリンナトリウム、スクロース、プロテース(アスパルテーム)、およびステビオシドを使用することが開示されている。
CN1709268Aを用いて開示されているサッカリンナトリウムは、摂取した人の25%が金属味を感じることがわかっている。メレンゲ(アスパルテーム)は、ショ糖の180?200倍の甘さがあり、ステアリン酸マグネシウムとの併用は禁忌で、過剰摂取により、頭痛、大発作、記憶喪失、胃腸反応、皮膚症状など、より多くの副作用を引き起こすことが報告されている。スクラロースは甘味が少ないため、糖尿病患者など糖分の代謝が悪い方には不向きである。ステビオシドはショ糖の200倍の甘さを持ち、その安全性が十分に証明されていないとして、米国FDAは3度にわたり食品添加物としての申請を承認しないなど、世界的に議論を呼んでいる。
したがって、CN1709268Aで提供された技術的解決策の欠点を克服した、アデホビルを含む新しい経口崩壊性医薬組成物を提供する必要がある。
発明の開示
本発明の目的は、速やかに崩壊して吸収が促進され、作用の発現が早いだけでなく、味が良く、より安全に服用できるアデホビル口腔内崩壊錠を提供することである。
本発明は、アデホビル、スクラロースを含有する口腔内崩壊錠であって、凍結乾燥法、粉末圧搾法、造粒圧搾法を用いて調製することができる口腔内崩壊錠を提供するものである。」(4ページ14行?5ページ2行)

(甲1b)「実施例1
アデホビルジピボキシル 10%
マンニトール 45%
乳糖 34%
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 8%
レモンエッセンス 0.7%
メントール 1.2%
スクラロース 0.1%
ステアリン酸マグネシウム 1%
100%

製造方法:
アデホビルジピボキシルとスクラロース、マンニトール、乳糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、レモンエッセンスを均一に混合し、乾式造粒法により造粒した後、メントールとステアリン酸マグネシウムを添加し、均一に混合して、直径6mmのパンチ金型を用いて打錠成形した。錠剤の重さは100mg、崩壊時間は20?30秒である。」(6ページ20行?7ページ4行)

(甲1c)「1 アデホビルジピボキシルを含む口腔内崩壊錠であって、活性成分であるアデホビルジピボキシル、スクラロースおよび他の薬学的に許容可能な補助材料を含む口腔内崩壊錠。」(特許請求の範囲 請求項1)

(2)甲2
(甲2a)「本発明の目的は、簡単な工程で製造でき、比較的高い硬度を持つ塩酸ドネペジルテイストマスク組成物を提供することである。この組成物は、口腔内崩壊錠の崩壊時間に影響を与えない口腔内崩壊錠の製造に用いることができる。」(4ページ13?14行)

(甲2b)「実施例1
1)塩酸ドネペジルテイストマスク組成物として、以下を調製する:
塩酸ドネペジル 3g
マンニトール 6g
スクラロース 0.012g
ゼラチン 0.12g
キサンタンガム 0.012g
水 80mL

製造方法:上記の処方に従い、塩酸ドネペジル、マンニトール、スクラロース、ゼラチン及びキサンタンガムを秤取して均一に混合し、水に溶解した後、50℃?70℃条件下、ロータリーフィルムエバポレーターにより乾燥する。乾燥物を80メッシュの篩を通して使用する。

2)塩酸ドネペジル口腔内崩壊錠は以下を調製する:
塩酸ドネペジルテイストマスク組成物 9.144g
マンニトール 117.86g
微結晶セルロース 60.0g
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0g
メントール 0.80g
ステアリン酸マグネシウム 2.00g
水 適量

製造方法:処方に従い、塩酸ドネペジルテイストマスク組成物と補助材料を混合し、水で造粒し、乾燥後、ステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠する。」(5ページ7?最終行。合議体注:上記1)及び2)は、甲2ではそれぞれ○の中に1及び2と表記されている。)

(甲2c)「1 塩酸ドネペジルのテイストマスク組成物であって、マンニトール、スクラロース、ゼラチン及びキサンタンガムを含み、特定のプロセス処理により、塩酸ドネペジルと均一に分散され、この組成物は塩酸ドネペジルの刺激性の味をマスクするものである組成物。」(特許請求の範囲 請求項1)

(3)甲3
(甲3a)「本発明の目的は、簡単なプロセスによって、比較的高い製品硬度を有し、塩酸セレギリンの刺激性の味をマスキングすることができる、塩酸セレギリンテイストマスク組成物を提供することである。この組成物は、口腔内崩壊錠の製造に用いることができ、且つ口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間に影響を与えない。」(4ページ24?26行)

(甲3b)「実施例1
1)塩酸セレギリンテイストマスク組成物として、以下を調製する。:
塩酸セレギリン 3g
マンニトール 6g
スクラロース 0.012g
ゼラチン 0.12g
キサンタンガム 0.012g
水 80mL

製造方法:上記の処方に従い、塩酸セレギリン、マンニトール、スクラロース、ゼラチン及びキサンタンガムを秤取し、均一に混合し、水に溶解した後、50℃?70℃条件下、ロータリーフィルムエバポレーターで乾燥する。得られた乾燥物を80メッシュの篩を通して使用する。

2)塩酸セレギリン口腔内崩壊錠として、以下を調製する:
塩酸セレギリンテイストマスク組成物 9.144g
マンニトール 117.86g
微結晶セルロース 60.0g
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 10.0g
メントール 0.80g
ステアリン酸マグネシウム 2.00g
水 適量

製造方法:処方に従い、塩酸セレギリンテイストマスク組成物と補助材料を混合し、水で造粒し、乾燥させた後、ステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠する。」(6ページ3?23行。合議体注:上記1)及び2)は、甲3ではそれぞれ○の中に1及び2と表記されている。)

(甲3c)「1 塩酸セレギリンテイストマスク組成物であって、糖アルコール、矯味剤、ゼラチン及びキサンタンガムを含み、塩酸セレギリンの刺激性の味をマスクすることができる組成物。
4 前記矯味剤が、スクラロース、ステビオシド、アセスルファムカリウム及びアスパルテームの一つまたは複数の混合物を含む請求項1に記載のテイストマスク組成物。」(特許請求の範囲 請求項1及び4)

(4)甲4
(甲4a)「[0006] 本発明の目的の1つは、味が良く、簡単で便利な調製プロセスを有する塩酸メクロフェノキサート口腔内崩壊錠を提供し、高齢者、子供および嚥下障害の問題を有する患者に適した塩酸メクロフェノキサート調製物の現在の不足を解決することである。」(段落[0006])

(甲4b)
「[0007] 本発明の塩酸メクロフェノキサート口腔内崩壊錠は、以下の成分を含む:塩酸メクロフェノキサート、崩壊剤、希釈剤、甘味剤、安定剤、潤滑剤、および結合剤。」(段落[0007])

(甲4c)
「[0013] 結合剤は、セルロースエーテル、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースの1つまたは混合物、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(E-15)から選択される。」(段落[0013])

(甲4d)「[0024] 実施例2
[0025] 各錠剤には、100mgの塩酸メクロフェノキサートが含まれ、その処方は次のとおりである。
[0026]
成分名 重量(g)
塩酸メクロフェノキサート 10
マンニトール 5
スクラロース 0.5
微結晶セルロース 7.5
低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2
ヒドロキシプロピルメチルセルロースE-15 0.5
ステアリン酸マグネシウム 0.1
製造 100錠
[0027] 調製プロセスは次のとおりである。マンニトール、スクラロース、微結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースE-15をそれぞれ80メッシュの篩に通し、均一に混合し、バインダーとして水を加えて造粒し、60℃で乾燥させる。次に塩酸メクロフェノキサートとステアリン酸マグネシウムを加え、よく混合し、打錠する。
[0028] 評価:得られた塩酸メクロフェノキサート口腔内崩壊錠は、なめらかな丸みを帯びており、崩壊性は30-40秒以内に改善されているが、苦味がある。 崩壊時間を測定する方法は次のとおりである。10mlの小さなビーカーを6個取り、それぞれ37°Cに保たれた水2mlを加え、この製品をそれぞれ1錠入れ、静置し、崩壊時間を記録する。」(段落[0024]?[0028])

(5)甲5
(甲5a)「高血圧は老人性疾患である。統計によると、高齢者の35%が嚥下困難である可能性がある。 臨床投薬の過程で、錠剤やカプセルの嚥下困難の発生率は比較的高く、現在、臨床使用におけるL-マレイン酸アムロジピンの剤形は通常の錠剤であり、嚥下困難又は不便な水分摂取の患者にとって一定の困難がある。したがって、通常のL-マレイン酸アムロジピン錠は、すべての患者の投薬ニーズを完全に満たすことができていない。
発明の内容
本発明の目的は、通常の錠剤の不足を克服することができるL-マレイン酸アムロジピンの新しい剤形およびその調製方法を提供することである。
L-マレイン酸アムロジピン口腔内崩壊錠は、主に主薬L-マレイン酸アムロジピン、水溶性充填剤、崩壊剤、潤滑剤で構成され、発泡剤、湿潤剤(バインダー)、矯味剤などの他の非必須成分も含まれている。」(4ページ17行?5ページ6行)

(甲5b)「実施例3
調合 1000錠の重量(g) 各成分の重量比(%)
L-マレイン酸アムロジピン 3.2 2.1
(L-アムロジピン2.5に相当。)
エリトロース 100 67.3
スクラロース 0.375 0.25
50%エタノール 60 0
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 7.5 5
微結晶セルロース 30 20
クエン酸 3 2
重炭酸ナトリウム 3 2
メントール 0.75 0.5
粉末エッセンス 1.5 1
ステアリン酸マグネシウム 1.5 1
総重量 150

具体的製造方法は下記のとおりである:
原料と補助材料をそれぞれ粉砕し、100メッシュの篩を通す。L-マレイン酸アムロジピンとスクラロースを秤取して均一に混合し、さらに等量のエリトロースと混合し、適量の50%エタノールに添加して柔らかい材料を作り、30メッシュの篩を通して造粒し、50?55℃で乾燥し、整粒する。補助材料の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、クエン酸、重炭酸ナトリウム、メントール、粉末エッセンス及びステアリン酸マグネシウムを秤取し、乾燥粒子と均一に混合し、3?5kgに圧力を制御して打錠する。」(11ページ3?25行)

(6)甲6
(甲6a)「技術分野
[0001] 本発明は、医学の技術分野に属し、特に、プレガバリン口腔内崩壊錠及び分散性錠剤並びにそれらの調製方法に関する。
背景技術
[0002] プレガバリンは、pKa4.2及び10.6の白色結晶性粉末で、水に溶けやすい薬剤である。プレガバリンカプセルは2004年に米国で発売され、主に糖尿病性末梢神経痛、帯状疱疹後神経痛、及び部分てんかんの補助治療に使用されている。プレガバリン溶液(20mg / ml)は、2010年に米国で発売され、主に嚥下困難のある患者に適している。しかし、プレガバリン溶液は患者が持ち運ぶのに便利ではなく、長期保存には役立たない。
[0003] 患者の服用を容易にし、薬物の安定性を改善するために、本発明は、プレガバリン溶液を置き換えるためのプレガバリンの分散性錠剤を開発した。嚥下困難のある患者をさらに助け、投与の正確さを改善するために、本発明は、プレガバリンの口腔内崩壊錠を開発した。プレガバリン粉末の圧縮性は低い。本発明によって開発されたプレガバリン分散性錠剤および口腔内崩壊錠は、プレガバリンの圧縮性が低いという問題を克服し、それらの崩壊時間を薬局方の要件を満たすようにする。
発明の内容
[0004]本発明の目的は、良好な薬物安定性を有し、患者が持ち運びおよび服用するのに便利なプレガバリン分散性錠剤および口腔内崩壊錠およびその調製方法を提供することである。」(3ページ2?15行)

(甲6b)「[0018] 実施例1.プレガバリン口腔内崩壊錠
プレガバリン口腔内崩壊錠の処方を表1に示す。
表1 プレガバリン口腔内崩壊錠の処方:(合議体注:下記は表1のうち、成分及び量の部分の抜粋である。)
成分 量(ミリグラム)
プレガバリン 150
スクラロース 5.0
イチゴフレーバー 7.5
マンニトール 45
クエン酸 10
微結晶セルロース 227.5
クロスポビドン 50
二酸化ケイ素 2.5
フマル酸ステアリルナトリウム 2.5
総量 500

[0019] 製造方法:
1.プレガバリン、スクラロース、マンニトール、クエン酸、微結晶セルロース及びクロスポビドンを湿式造粒機内で混合する。
2.適量の水を添加して造粒する。
3.得られた粒子を乾燥させ、篩にかける。
4.篩にかけた粒子とその他の外相(イチゴフレーバー、マンニトール、微結晶セルロース、クロスポビドン、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム)を混合する。
5.最終混合物を12mmの金型で打錠し、必要な硬度の錠剤を得る。」(段落[0018]?[0019])

(7)甲7
(甲7a)
「酒石酸ラソフォキシフェンを口腔内崩壊錠に調製すると、患者の投薬コンプライアンスを改善し、薬物を迅速に放出し、薬物の生物学的利用能を改善することができる。
[0007] 文献検索では、酒石酸ラソフォキシフェンの口腔内崩壊錠に関する関連文献や特許報告はない。
発明の内容
[0008] 本発明の目的は、酒石酸ラソフォキシフェンの生物学的利用能を効果的に改善し、同時に患者の服薬コンプライアンスを改善することができる口腔内崩壊錠を提供することである。
[0009] 本発明の別の目的は、上記の酒石酸ラソフォキシフェン口腔内崩壊錠を調製するための方法を提供することである。」(4ページ2?9行)

(甲7b)「[0020] 発明を実施するための最良の形態
実施例1
酒石酸ラソフォキシフェン口腔内崩壊錠を調製する:
処方:
酒石酸ラソフォキシフェン 2.5g
乳糖 45g
微結晶セルロース 30g
ポリビニルピロリドン 8
スクラロース 1g
低置換ヒドロキシプロピルセルロース 12
シリカ 0.5
ステアリン酸マグネシウム 1
製造:1000錠

製造方法:
通常の錠剤装置を用いた湿式造粒プロセスで調製する:酒石酸ラソフォキシフェンと乳糖を80メッシュの篩に通す(3回)ことで十分に混合し、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、スクラロースを添加し、80メッシュの篩に通す(3回)ことで均一にし、精製水で造粒し、60℃で乾燥し、30メッシュの篩で整粒し、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、シリカ及びステアリン酸マグネシウムを添加して、均一に混合して打錠し、口腔内崩壊錠を得る。

[0021] 静態的崩壊時間の検出:酒石酸ラソフォキシフェン口腔内崩壊錠の静態的崩壊時間は38秒である。」(段落[0020]?[0021])

(8)甲8
(甲8a)「[0003] ・・・アキシチニブは現在、フィルムコーティング錠として販売されており、2012年1月、6月、9月に米国、日本、欧州連合で発売されたが、口腔内崩壊錠の報告はない。」(段落[0003])

(甲8b)「[0005] 本発明の目的は、製造方法が簡単であり、服用しやすく、効き目が速く、ピークに達するのが早く、治療効果が明らかであるアキシチニブ口腔内崩壊錠を提供することである。現在上場した製品と比較して、この口腔内崩壊錠は特に老齢、子供および嚥下障害の患者が用いることに適する。
[0006] 本発明が設計するアキシチニブ口腔内崩壊錠は、以下の成分を含む:アキシチニブ、親水性充填剤、崩壊剤、接着剤、矯味剤、潤滑剤、流動助剤。・・・」(段落[0005]?[0006])

(甲8c)「[0011] 前記の矯味剤はスクラロース、メントール、アスパルテーム、グリシルレチン中の1種類あるいはその混合物から選択される;好ましくは、スクラロースおよびメントールの割合は0.1%-3%である。」(段落[0011])

(甲8d)「[0015] 実施例1
それぞれアキシチニブ1mgを含み、その処方は以下である:(合議体注:甲8の実施例1に記載される処方のうち、成分名称及び量を抜粋した。)
成分名称 量(g)
アキシチニブ 1
マンニトール 32.5
乳糖 32.5
カルメロースナトリウム 6
クロスポリビニルピロリドン 7.2
スクラロース 0.04
メントール 0.04
シリカ 0.36
ステアリン酸マグネシウム 0.36

アキシチニブとマンニトールを1:8の比率で混合し、共微粉化によって、1?50マイクロメートルに粒径を制御する。残りのマンニトール、乳糖、クロスポリビニルピロリドン、スクラロース及びマンニトールは、それぞれ80メッシュの篩に通す。この共微粉物を残りのマンニトール、乳糖、クロスポリビニルピロリドンと均一に混合し、カルメロースナトリウム水溶液を用いて湿式造粒し、乾燥し整粒する。整粒後の粒子に、スクラロース、メントール、シリカ、ステアリン酸マグネシウムを添加して均一に混合し、打錠し、1000錠を作製する。各錠剤の重量は80mgであり、その中にアキシチニブ1mg、補助材料79mgを含む。」(段落[0015])

(甲9)
(甲9a)「【0001】
本発明は、バルサルタン又はその薬学的に許容される塩を含有する錠剤に関する。また、本発明は、バルサルタン又はその薬学的に許容される塩を含有する有核剤(dry-coated agent)に関する。」(段落【0001】)

(甲9b)
「【0004】
しかし、本発明者らが検討したところ、バルサルタンを活性成分とした場合、特開平5-271054号公報及び国際公開第95/20380号パンフレットを含む公知の方法では、OD錠を製造したとしても使用に適するものにならないことが明らかとなった。
【0005】
具体的には、バルサルタンが疎水性で溶解性(solubility)が低いこと、かさ高く付着性が強いこと等の影響により、十分な崩壊性を有するOD錠を製造しようとすると、十分量のバルサルタンを得るために錠剤のサイズを大きくする必要が生じ、服用や取扱いが困難となる。
【0006】
OD錠の製造には、口腔内で錠剤が容易に崩壊するだけの十分な崩壊性及び錠剤としての十分な硬度とを両立する必要もある。従来の方法では、これらの特性を両立したバルサルタンを活性成分とするOD錠の製造が困難であった。
【0007】
また、近年、錠剤の自己投与が容易となり、生活の質(QOL)が向上することから、口腔内崩壊錠(「OD錠」ともいう。)の利用が広がっている。
【0008】
しかしながら、バルサルタンは苦味を呈する薬物である。そのため、従来の固体経口剤をそのまま口腔内崩壊錠としても、十分にQOLが向上しないという問題がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、治療上有効量のバルサルタン又はその薬学的に許容される塩を活性成分として含有する錠剤を提供し、当該錠剤は十分な崩壊性と口腔内崩壊錠(「OD錠」)としての使用に適する硬度とを有する。換言すると、当該錠剤は、経口投与することができ、患者の唾液又は相当量の水に暴露することで--咀嚼(chew)すること無しに、口腔内において崩壊することが可能である。」(段落【0004】?【0009】)

(甲9c)「【0217】
(比較例II-1)
バルサルタン55.1重量部、軽質無水ケイ酸4.6重量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース23.3重量部及びステアリン酸マグネシウム3.0重量部を混合し、混合した材料を篩にかけ、さらに一定時間混合した。この混合した材料をローラーコンパクターにより圧密化した。次いで、圧密化した材料を目的の粒度になるように粉砕し、スクラロース4.0重量部及びクロスポビドン10.0重量部を添加した後、混合した。この混合した材料を再度ローラーコンパクターにより圧密化した。圧密化した材料を目的の粒度となるように整粒し、顆粒を得た。圧密化と整粒とを繰り返し、得られた顆粒を混合して内核用粉体10-Aとした。
【0218】
次いで、乳糖1水和物46.9重量部、結晶セルロース40.0重量部、クロスポビドン10.0重量部、アスパルテーム1.4重量部、サッカリンナトリウム1.0重量部及び香料0.5重量部を混合し、ステアリン酸マグネシウム0.2重量部を添加した後、さらに混合し、外層用粉体20-Aとした。
【0219】
外杵9.5mmΦ、中心杵7.5mmΦの2重構造の杵を用いたOSDrC(登録商標)ロータリー打錠機により、内核用粉体10-A及び外層用粉体20-Aを打錠し、内核用粉体10-Aを圧縮してなる医薬組成物(145.2mg)を内核、外層用粉体20-Aを圧縮してなる被覆組成物(174.8mg)を外層とする有核錠(320.0mg)を製造した。
【0220】
(実施例II-1)
比較例II-1と同様にして内核用粉体10-Aを得た。また、ステアリン酸マグネシウムを添加する際に併せて無水クエン酸0.7重量部を添加したこと以外は、比較例II-1と同様にして、外層用粉体20-Bを得た。
【0221】
外杵9.5mmΦ、中心杵7.5mmΦの2重構造の杵を用いたOSDrC(登録商標)ロータリー打錠機により、内核用粉体10-A及び外層用粉体20-Bを打錠し、内核用粉体10-Aを圧縮してなる医薬組成物(145.2mg)を内核、外層用粉体20-Bを圧縮してなる被覆組成物(176.1mg)を外層とする有核錠(321.3mg)を製造した。」(段落【0217】?【0221】)

(10)甲10
(甲10a)「【請求項1】
ホップ抽出物およびアセスルファムカリウムを含有することを特徴とする苦味が低減されたホップ抽出物含有組成物。
【請求項2】
さらにスクラロースを含有することを特徴とする請求項1記載の組成物。」(特許請求の範囲 請求項1,2)

(甲10b)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はホップに由来する苦みを低減することによって、食べやすく多くの人の嗜好にあったホップ抽出物含有組成物を提供することを目的とするものである。さらに本発明は、ホップに由来する苦みを低減する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねていたところ、ホップ抽出物にアセスルファムカリウムを配合することにより、ホップに由来する苦みが軽減することを見出した。そしてこれによって種々の機能的効果が判明してきたホップ抽出物を含有する食品を無理なく美味しく飲食できるようになることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。」(段落【0004】?【0005】)

(甲10c)「【0014】
本発明のホップ抽出物含有組成物は、口中で崩壊または溶解等し、口中にホップ抽出物の苦味が蔓延する製剤であればその剤形に特に限定されることなく用いることができる。好ましい剤形としては、例えば口腔内速崩壊錠、口腔内速溶解錠発泡錠、チュアブル錠、トローチ剤、ドロップ剤、口中で速やかに崩壊または溶解する顆粒剤若しくは散剤、口中清涼剤、うがい剤、シロップ剤および内服液剤等が挙げられる。口腔内速崩壊錠または口腔内速溶解錠とは、口腔内で速やかに崩壊または溶解する性質を有する錠剤をいい、チュアブル錠は、錠剤を噛みながら唾液とともに服用できるようにしたものをいう。これらは、例えば、ホップ抽出物、アセスルファムカリウムおよびスクラロース等をマンニトールのような糖アルコール、結晶セルロース、クロスポビドンのような崩壊剤等と共に混合し、流動層造粒して得られた顆粒を口中で容易に崩壊、溶解または咀嚼するに適した硬度となるように圧縮成型することにより製造することができる。・・・」(段落【0014】)

(11)甲15
(甲15a)「1.経口投与用のメマンチンの医薬組成物のプレミックスであり、以下を含むことを特徴とする:
i) プレミックスの総量の74?85%w/wのペレットの顆粒であって、プレミックスの総量の10?15%w/wのメマンチンを含み、以下によってコーティングされている。
i.1) ポリビニルピロリドンからなる第1のコーティング、および
i.2) メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ブチル、およびメタクリル酸メチルのカチオン性コポリマーの合計80?95%、好ましくは87%(w/w)と、ステアリン酸マグネシウムの合計5?20%、好ましくは13%(w/w)のコーティングを含む第2のコーティング。
ii) プレミックスの総量の4?7w/w%のスクラロース、
iii) プレミックスの総量の11?19%w/w%のエッセンス。
ここで、全ての構成要素は、710ミクロンよりも小さい粒子サイズを有する。
7.請求項1から6のいずれかに記載のプレミックスを含むことを特徴とする、経口投与用のメマンチンの医薬組成物。
13.5、10又は20ミリグラムのメマンチンを含む割線口腔内崩壊錠であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
14.水に懸濁された前記錠剤が粒子の50%が平均直径60ミクロン未満であり、それらの90%が170ミクロン未満の平均直径を有する懸濁液を形成することを特徴とする、請求項13に記載の組成物。(特許請求の範囲 請求項1、7、13、14)

(甲15b)「本発明は、アルツハイマー型認知症の治療のためのメマンチンを含む医薬組成物に関する。この組成物には、メマンチンの特徴的な苦みがなく、組成物が口腔に入れられたときに懸濁液中の粒子サイズが小さく、不快な凝集物がないため、飲み込みやすい。」(1ページ11?15行)
「本発明による様々な組成物に典型的に使用される特定のプレミックスの調製に続いて、医薬組成物が調製される。それは、好ましくは、永久懸濁液、経口懸濁液を調製するための粉末、及び投与前に、又は必要に応じて口腔内に唾液が存在する状態で、少量の水に懸濁液を形成するための迅速崩壊錠を提示することができる。
特定のプレミックスは、本発明による組成物の特定を決定し、メマンチンを含み、口腔内に入る懸濁液中の粒子の90%が170ミクロン(・・・)未満の平均直径を有すること,及びこれらの粒子の50%は、平均直径が60ミクロン未満であることを保証する。これらは口腔内に不快感を与えず、患者の嚥下を助ける。」(1ページ21行?2ページ3行)

(甲15c)「本発明の目的は、請求項1に示されるように特徴付けられる経口投与用のメマンチン医薬組成物のプレミックスである。」(8ページ4?6行)
「組成物は、言及されたメマンチンの苦みがなく、患者の通常の嚥下を容易にする非常に小さいサイズのメマンチン含有粒子(90%が平均直径170ミクロン未満)を有する経口懸濁液の形態で患者に投与される。
医薬組成物は、以下を特徴とする革新的なプレミックスから調製される。
a)メマンチン含有粒子のサイズが小さい
b)プレミックスの水への懸濁液は心地よい味がする
c)そしてそれは口腔内に不快な凝集体を形成しない」(8ページ23行?9ページ3行)

(甲15d)
「プレミックス
本発明の第1の目的は、メマンチンの苦みを完全に含まないプレミックスを有することを含み、これは、口腔内に直接位置する場合、唾液と迅速に懸濁液を形成し、これは通常の嚥下を変えない小さなサイズの粒子を含んでいる。言い換えれば、乾燥したプレミックスが自然に形成する凝集体は、数秒で唾液と崩壊するという特徴を有し、したがって、口腔内で不快ではなく、嚥下を容易にする。このプレミックスは、本発明による組成物を調製することを可能にする。
革新的で一般的に使用されるプレミックスは、以下の操作を含む2つの段階を通して得られる。

a)部分的にマスクされた味のメマンチンを含むペレットの調製
微結晶性セルロース(Avicel PH 200)、アルファ化デンプン及び二酸化ケイ素(Aerosil 200)からなる粉末の混合物に、流動層中で、コーンスターチ及びポリエチレングリコールと一緒に溶媒の混合物に前もって溶解されたメマンチンを含む水-エタノールが50℃未満の温度でトップスプレーすることにより加えられる。
続いて、懸濁液に水中の20%ポリビニルピロリドンを適用し、最後に、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレート(好ましくはEudragit EPO)のカチオン性共重合体及びステアリン酸マグネシウムを含む、イソプロピルアルコール-水中の懸濁液で、接線方向のスプレー及び25?30℃の品温でコーティングする。
得られたペレットは、メマンチンの苦みを部分的に保持している。
・・・
しかしながら、・・・適用されたパーセンテージでのジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレート(好ましくはEudragit EPO)のカチオン性共重合体による味のマスキングは部分的であった。得られたペレットは、部分的にメマンチンの苦みを保っていた。
・・・
b)一般的に使用され、心地よい味わいの苦みのないプレミックスを調製する
わずかに苦みのある前段階a)で得られたペレットと、スクラロース、ペパーミントエッセンス及びレモンエッセンスからなる粉末の均一な混合物を用いて、全体を30分以上、好ましくは60分混合して均一な塊を形成した。
混合物中の固体状態のスクラロースの存在は、驚くべきことに、Eudragit EPOによって部分的にマスクされたメマンチン由来の苦みが全くないことを確認した。これまで想定されていなかった方法で、固形で添加されたスクラロースでさえ、唾液への優れた溶解速度を示し、同時にその高い甘味力を口腔に加え、ペレットに含まれるメマンチンの残る苦みを中和した。・・・
また、驚くべきことに、ペパーミントとレモンのエッセンスを同時に加えると、プレミックスに心地よい味が与えられ、それが含まれる組成物を容易に飲み込むのに役立つことが観察された。」(12ページ23行?15ページ15行)

(甲15e)「実施例I:選択された医薬組成物に対して一般的に使用されるプレミックス。
プレミックスは、以下の一連の段階および操作に従って調製された:

ステージI:部分的にマスクされた苦味のあるメマンチンを含むペレットの調製
下記の手順:
a)キュービックミキサーで混合する。
-Aerosil 200 (二酸化ケイ素)8グラム(1.0 w/w%)
-アルファ化デンプン68グラム(8.5 w/w %)
-Avicel PH 200 (微結晶性セルロース) 724グラム(90.5 w/w %)、
25 rpmで10分以上。
ここで:
1) AVICEL PH 200粒子の50%が150ミクロンより大きい
2) Aerosil 200の粒子サイズは7?16ミクロンだったが、10?200ミクロンの凝集体を形成しうる
3)アルファ化デンプンの粒子サイズ分布は30?150ミクロンだった

b)以下を含む懸濁液を並行して調製する:
-水1450グラム(57.2 w/w %)
-エタノール621.5グラム(24.5 w/w %) `
-メマンチン229.1グラム(9.0 w/w %)
-アルファ化コーンスターチ152.13グラム(6.0w/w %)
-ポリエチレングリコール6000 83.7グラム(3.3 w/w %)
水-エタノールで形成された溶媒全体にメマンチンを溶解し、1時間以上攪拌しながら、均一な懸濁液が得られるまでポリエチレングリコールとアルファ化デンプンを連続して添加する。

c)重慶DLP 3/5流動層で、a)懸濁液をトップスプレーすることにより、粉末混合物を造粒する。b)プロセス全体を通して懸濁液を攪拌し続け、粉末混合物の温度を50℃未満にする。

d)流動層中で上記の混合物c)を水中に20%のポリビニルピロリドン(PVP K 30)を含む懸濁液を上から噴霧してコーティングし、メマンチンを含む最初の顆粒を得る。

e) 以下で構成されるコーティング用の2番目の懸濁液の準備:
-イソプロピルアルコール2227グラム (83. 73 w/w %)
-水116. 23グラム(4.37 w/w %)
-Eudragit EPO 275. 28 グラム (10.35 w/w %)
-ステアリン酸マグネシウム41. 22グラム(1.55 w/w %)
25?30℃ の製品温度でのボトムスプレー(Wursterシステムとも呼ばれる)またはタンジェンシャルスプレーにより、流動層で上記のペレット1266グラムをコーティングする。

1550グラムのペレットが得られた。

得られたペレットは、以下の特徴を有していた。
a)メマンチン味は部分的にマスクされているが、わずかな苦味が感じられる。
b)メマンチン含有量は13.3 %だった

記載されたのと同じ手順での3回の連続操作を通して、部分的にマスクされた味を有するペレット中のメマンチン含有量は、12.0から14.6 %の間であることが示された。

ステージII:上記のペレットを使用して、メマンチンの苦味がなく、心地よい味であり、選択した医薬組成物を調製するために一般的に使用されるプレミックスを形成する。

具体的には:
a)メッシュサイズが710ミクロンのふるいを通過した後、以下を添加し、キュービックミキサーで10分間混合した。
-スクラロース66. 85グラム(5.21 w/w %)
-ペパーミントエッセンス74. 88グラム(5.84 w/w %)
-レモンエッセンス140. 39グラム(11 w/w %)

b)得られた混合物を、上記のステージIに従って調製された部分的にマスクされた味を有する1000グラムの顆粒と共にミキサーに加えた。それらを30分間混合した。1282.1グラムが得られた。

c)メッシュサイズ710でふるいにかけ、凝集物を廃棄する。」(21ページ18行?24ページ10行)

(甲15f)「実施例III: 水中で急速に崩壊して、経口またはK-180タイプの経腸栄養チューブで投与しやすい懸濁液を形成する割線付き錠剤

錠剤は、それらの迅速な崩壊およびそれらが口腔内の唾液と共に形成する懸濁液のおかげで、任意選択で直接投与することもできる。

それらは、以下の順序に従って調製された:
上記の実施例Iに従って得られた95. 89グラム(38.36 w/w %)のプレミックスに、710ミクロンのメッシュサイズのふるいを通過させた後、以下を立方ミキサーに加えた。
- 133.7グラムのPharmabursth R500 (53. 48 w/w %)
- 15.0グラムの架橋ポビドン(Kollidon CD)(6.0 w/w %)
- ペパーミントエッセンス0.4グラム(1.76 w/w %)
そしてそれらは15分間混合された。

ここで、Pharmabursth 500と呼ばれる賦形剤が、市販のSPI Pharmaの混合物に対応し、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、クロスポビドン、コポビドン、二酸化ケイ素で構成され、選択された架橋ポビドンはKollidon CDだった。

続いて、上記混合物に、メッシュサイズ250ミクロンのふるいでふるいにかけた後、5.0グラム(2 w/w %)のフマル酸ステアリルナトリウム(Pruv)を加え、さらに5分間混合した。

得られた最終混合物を、丸型割線付きの直径9mmのパンチを使用して、ピッコラ圧縮機で、平均重量250 mgで圧縮した。

合計990錠が得られた。」(29ページ1行?最終行)

(12)甲16
(甲16a)「[0009]本発明は、(a)スクラロース、極性溶媒、湿潤性材料及び活性成分を組み合わせて混合物を調製し、(b)この混合物を乾燥させて顆粒を形成する工程を含む顆粒の製造方法に向けられている。
[0010]本発明は、また、スクラロース、極性溶媒、湿潤性材料及び活性成分を組み合わせて混合物を調製し、この混合物を乾燥させて顆粒を形成する工程を含む、活性成分の平均粒子径を増大させる方法を包含する。この方法においては、顆粒の平均粒子径は、活性成分の平均粒子径よりも少なくとも約1.0%大きい。」(段落[0009]?[0010])

(甲16b)「[0013]本明細書で使用される、「凝集(agglomeration)」は粒子のより大きい単位への集合を意味する。粉末の大きさを増加させることの利点は、(i)バルク材料の取扱い性、(ii)ブレンドの均一性の制御、(iii)圧縮、(iv)コーティングされた顆粒のためのコーティング、及び(v)乾燥材料の流れを改善することにある。・・・」(段落[0013])

(甲16c)「[0020]造粒プロセス中にスクラロースを使用すると、スクラロースを使用しない場合に比べて、顆粒の粒子径が大きくなることがわかった。スクラロースが粒子径の成長に及ぼす影響は、本発明に従ってスクラロースを使用した顆粒を作り、スクラロースを使用せずに作った同じ顆粒と比較することで実証できる。・・・」(段落[0020])

(12)甲18
(甲18a)「[請求項1] メマンチンまたはその薬学上許容される塩および腸溶性ポリマーを含み、剤形が顆粒剤、散剤またはシロップ用剤である医薬組成物。
[請求項9] さらに、アスパルテーム、サッカリンナトリウム水和物、グリセリン、バニリン、デキストリンおよびスクラロースからなる群から選ばれる1種または2種以上の矯味剤が配合されている請求項1?8のいずれか1項に記載の医薬組成物。」(請求の範囲 請求項1及び9)

(甲18b)「[0001] 本発明は、服用性、溶出性、及び安定性に優れたメマンチンまたはその薬学上許容される塩を含有する顆粒剤、散剤またはシロップ用剤である医薬組成物に関する。」(段落[0001])

(甲18c)「[0002] メマンチン塩酸塩は、グルタミン酸受容体サブタイプの1つであるN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗を作用機序とするアルツハイマー型認知症の治療剤である。本剤は、2002年に欧州医薬品庁(EMA)、2003年に米国食品医薬品局(FDA)よりアルツハイマー型認知症を適応として承認され、日本においても、「中等度及び高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」の効能・効果で2011年に承認され、「メマリー(登録商標)錠」として販売されている。
アルツハイマー型認知症の患者は高齢者や嚥下困難な人が多いことから、服薬アドヒアランスの向上、服薬を管理する介護者の負担軽減のために、服用しやすい製剤であることが望ましい。また、メマンチンは特有の苦味を有するため、口中で苦味が残ると服薬コンプライアンスが低下するおそれがある。そこで、メマンチン塩酸塩を含有する製剤を開発するうえでは、服用しやすいことに加えて、服薬時の苦味が低減されていることが求められる。
[0003] これまでに、メマンチン塩酸塩の製剤として、口腔内崩壊の技術の適用が試みられた。・・・」(段落[0002]?[0003])

(甲18d)「[0005] 口腔内崩壊錠や口腔内崩壊フィルムは、口腔内で速やかに崩壊し、水なしでも服用が可能な剤形であるため、アルツハイマー型認知症治療薬の製剤として好ましく、日本では2013年にメマンチン塩酸塩の口腔内崩壊錠が承認され、販売されている。しかしなお、錠剤の服用を好まない、あるいは嚥下困難により錠剤の服用が困難であることなどにより、メマンチン塩酸塩の服薬をあきらめざるをえない場合もあるのが実情である。
一方、錠剤以外の医薬品の剤形として、顆粒剤、散剤やドライシロップ剤が知られている。特にドライシロップ剤は、用時に水へ溶解または懸濁させることによって、高齢者、小児や嚥下困難な患者にも服用しやすいというメリットがある。しかしながら、これまで苦味のあるメマンチン塩酸塩の顆粒剤、散剤やドライシロップ剤は開発されていなかった。」(段落[0005])

(甲18e)「[0007] 本発明の課題は、高齢者や嚥下困難な患者にも服用しやすく、かつ服薬時の苦味が低減されたメマンチンまたはその薬学上許容される塩の新たな医薬組成物、特に顆粒剤、散剤やドライシロップ剤を提供することにある。
本発明の他の課題は、苦味が低減された顆粒剤、散剤またはドライシロップ剤を簡便に製造する方法を提供することにある。」(段落[0007])

(甲18f)「[0011] 本発明のメマンチンまたはその薬学上許容される塩および腸溶性ポリマーを含有する医薬組成物(顆粒剤、散剤またはドライシロップ剤)は、従来の錠剤と同様の溶出特性を持ち、生物学的に同等であることに加え、水とともに服用する場合も、水に懸濁して服用する場合もともに、メマンチン特有の苦味が低減されており、服用性に優れている。また、製剤としての保存安定性および水に懸濁した場合の分散性や一定時間経過後の液中の主薬含量の均一性にも優れており、医療従事者および介護者の服薬管理上の負担も軽減することができる。・・・」(段落[0011])

(甲18g)「[0018] 本発明で用いられる矯味剤は、アスパルテーム、サッカリンナトリウム水和物、グリセリン、バニリン、デキストリンおよびスクラロースからなる群から選ばれる1種または2種以上である。好ましくは、アスパルテームである。」(段落[0018])

(甲18h)「[0028] 本発明で用いられる結合剤の例としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、デキストリン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、プルラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びマクロゴールから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが挙げられ、特に好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースである。
[0029] 結合剤の配合量は、目的とする医薬組成物の剤形、例えば顆粒剤またはシロップ用剤(顆粒状)に応じて、適宜、決定することができるが、通常、医薬組成物全量に対して、1?10重量%、好ましくは、2?7重量%である。」(段落[0028]?[0029])

(甲18i)「[0037] 甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン酸二カリウム、スクラロース、ステビア及びソーマチンから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせなどを挙げることができる。」(段落[0037])

(甲18j)「[0053][実施例1]
メマンチン塩酸塩40g、D-マンニトール(ロケット製)1556g、カルメロースカルシウム(五徳薬品製)136g、アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ製)20g、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(エボニック製、オイドラギットL100-55)100gを混合し、サンプルミル(KIIWG-1)にて篩過後、さらに混合することで、混合物を得た。得られた混合物926gを流動層造粒機(パウレック製、GPCG-1)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製)40gを精製水666.7gに分散した液を噴霧後、乾燥することで造粒顆粒を得た。得られた造粒顆粒193.2gを整粒機(パウレック製、QC U-5)に投入し、その後、軽質無水ケイ酸(ワイ・ケイ・エフ製)0.8g、アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ製)6gと混合することで顆粒状の医薬組成物を得た。
[0054][実施例2]
メマンチン塩酸塩30g、D-マンニトール(ロケット製)1092g、カルメロースカルシウム(五徳薬品製)102g、アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ製)15g、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(エボニック製、オイドラギットL100-55)150gを混合し、サンプルミル(KIIWG-1)にて篩過後、さらに混合することで、混合物を得た。得られた混合物926gを流動層造粒機(パウレック製、GPCG-1)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製)40gを精製水666.7gに分散した液を噴霧後、乾燥することで造粒顆粒を得た。得られた造粒顆粒193.2gを整粒機(パウレック製、QC U-5)に投入し、その後、軽質無水ケイ酸(ワイ・ケイ・エフ製)0.8g、アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ製)6gと混合することで顆粒状の医薬組成物を得た。
[0055][実施例3]
メマンチン塩酸塩30g、D-マンニトール(ロケット製)942g、カルメロースカルシウム(五徳薬品製)102g、アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ製)15g、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(エボニック製、オイドラギットL100-55)300gを混合し、サンプルミル(KIIWG-1)にて篩過後、さらに混合することで、混合物を得た。得られた混合物926gを流動層造粒機(パウレック製、GPCG-1)に投入し、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製)40gを精製水666.7gに分散した液を噴霧後、乾燥することで造粒顆粒を得た。得られた造粒顆粒193.2gを整粒機(パウレック製、QC U-5)に投入し、その後、軽質無水ケイ酸(ワイ・ケイ・エフ製)0.8g、アスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ製)6gと混合することで顆粒状の医薬組成物を得た。・・・」(段落[0053]?[0055])

3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 甲1?10のいずれかと甲11?14に基づく進歩性欠如
(ア)申立人の主張の概要
本件発明1と甲1?10のいずれかに記載の発明との相違点は、活性成分がメマンチン塩酸塩であるかどうかの点のみである。口腔内崩壊錠の崩壊性を向上させる製剤設計は、一般に、どのような活性成分にも適用でき、或いは少なくとも崩壊性を向上させる汎用技術が存在するのであるから(甲11?14)、甲1?10のいずれかに記載の口腔内崩壊錠の活性成分を、公知の薬物であるメマンチン塩酸塩(甲14)に置き換えることは、当業者であれば容易に想到しうることである。

(イ)甲1を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲1に記載された発明
摘記(甲1b)によれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「アデホビルジピボキシルとスクラロース、マンニトール、乳糖、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、レモンエッセンスを均一に混合し、乾式造粒法により造粒した後、メントールとステアリン酸マグネシウムを添加し、均一に混合して、打錠成形して得られた口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲1発明における「アデホビルジピボキシル」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲1発明において「乾式造粒法により造粒」されたものは、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲1発明においては、スクラロースは「乾式造粒法により造粒」されたものの中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲1発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲1の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲1発明ではアデホビルジピボキシルである点。」
<相違点-甲1の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲1発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
まず、相違点-甲1の1について検討する。
摘記(甲1a)によれば、甲1発明は、アデホビルを有効成分として含有する口腔内崩壊錠において認識されていた課題、すなわち従前のアデホビル口腔内崩壊錠に含有された甘味料の有する課題を解決するために、スクラロースを用いることとしたものである。
こうした甲1発明において、有効成分である「アデホビル」を他の公知の医薬成分に置き換えることについては、そもそも動機付けがない。また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そして、本件発明1については、メマンチン塩酸塩を有効成分とする口腔内崩壊錠において、口腔内崩壊速度が改善されるという顕著な効果を奏するものである。

d 申立人の主張
申立人は、口腔内崩壊錠の崩壊性を向上させる製剤設計は、一般に、どのような活性成分にも適用でき、或いは少なくとも崩壊性を向上させる汎用技術が存在するのであるから(甲11?14)、甲1?10のいずれか記載の口腔内崩壊錠の活性成分を、公知の薬物であるメマンチン塩酸塩(甲14)に置き換えることは、当業者であれば容易に想到しうることである旨主張する。
しかしながら、上記cで説示したとおり、アデホビルを有効成分とする口腔内崩壊錠の課題を解決することを目的とした甲1発明において、アデホビルを他の公知の医薬成分に置き換えることに、動機付けがないのであるから、上記主張は採用できない。

(ウ)甲2を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲2に記載された発明
摘記(甲2b)によれば、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認める。
「塩酸ドネペジル、マンニトール、スクラロース、ゼラチン及びキサンタンガムを均一に混合し、水に溶解後、これを乾燥した乾燥物を80メッシュの篩を通した後、補助材料を混合し、水で造粒、乾燥後、ステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠して得た口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲2発明における「塩酸ドネペジル」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲2発明において「80メッシュの篩を通した」「乾燥物」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲2発明においては、スクラロースは「80メッシュの篩を通した」「乾燥物」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲2発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲2の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲2発明では塩酸ドネペジルである点。」
<相違点-甲2の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲2発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲2の1について、甲2発明において、有効成分である「塩酸ドネペジル」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)甲3を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲3に記載された発明
摘記(甲3b)によれば、甲3には、以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認める。
「塩酸セレギリン、マンニトール、スクラロース、ゼラチン及びキサンタンガムを均一に混合し、水に溶解後、これを乾燥した乾燥物を80メッシュの篩を通した後、補助材料を混合し、水で造粒、乾燥後、ステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠して得た口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲3発明における「塩酸セレギリン」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲3発明において「80メッシュの篩を通した」「乾燥物」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲3発明においては、スクラロースは「80メッシュの篩を通した」「乾燥物」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲3発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲3の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲3発明では塩酸セレギリンである点。」
<相違点-甲3の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲3発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲3の1について、甲3発明において、有効成分である「塩酸セレギリン」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(オ)甲4を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲4に記載された発明
摘記(甲4d)によれば、甲4には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認める。
「マンニトール、スクラロース、微結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースE-15をそれぞれ80メッシュの篩に通し、均一に混合し、水を加えて造粒し、乾燥させた造粒物を得、これに塩酸メクロフェノキサートとステアリン酸マグネシウムを加え、混合し、打錠して得た口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲4発明における「塩酸メクロフェノキサート」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲4発明における「乾燥させた造粒物」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲4発明においては、スクラロースは「乾燥させた造粒物」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲4発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲4の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲4発明では塩酸メクロフェノキサートである点。」
<相違点-甲4の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲4発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲4の1について、甲4発明において、有効成分である「塩酸メクロフェノキサート」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(カ)甲5を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲5に記載された発明
摘記(甲5b)によれば、甲5には、以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認める。
「L-マレイン酸アムロジピンとスクラロースを均一に混合し、さらに等量のエリトロースと混合し、適量の50%エタノールに添加して柔らかい材料を作り、30メッシュの篩を通した後、造粒・乾燥して、造粒物を得、この造粒物と、補助材料の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、クエン酸、重炭酸ナトリウム、メントール、粉末エッセンス及びステアリン酸マグネシウムを均一に混合し、打錠して得た口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲5発明における「L-マレイン酸アムロジピン」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲5発明における「造粒物」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲5発明においては、スクラロースは「造粒物」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲5発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲5の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲5発明ではL-マレイン酸アムロジピンである点。」
<相違点-甲5の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲5発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲5の1について、甲5発明において、有効成分である「L-マレイン酸アムロジピン」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(キ)甲6を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲6に記載された発明
摘記(甲6b)によれば、甲6には、以下の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認める。
「プレガバリン、スクラロース、マンニトール、クエン酸、微結晶セルロース及びクロスポビドンに水を添加して湿式造粒後、篩にかけた粒子と、その他の外相(イチゴフレーバー、マンニトール、微結晶セルロース、クロスポビドン、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム)を混合し、打錠して得た口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲6発明における「プレガバリン」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲6発明における「粒子」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲6発明においては、スクラロースは「粒子」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲6発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲6の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲6発明ではプレガバリンである点。」
<相違点-甲6の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲6発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲6の1について、甲6発明において、有効成分である「プレガバリン」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ク)甲7を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲7に記載された発明
摘記(甲7b)によれば、甲7には、以下の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているものと認める。
「酒石酸ラソフォキシフェン、乳糖、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、スクラロースを均一に混合し、造粒・乾燥後、この造粒物に、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、シリカ及びステアリン酸マグネシウムを混合し、打錠して得た口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲7発明における「酒石酸ラソフォキシフェン」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲7発明における「造粒物」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲7発明においては、スクラロースは「造粒物」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲7発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲7の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲7発明では酒石酸ラソフォキシフェンである点。」
<相違点-甲7の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲7発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲7の1について、甲7発明において、有効成分である「酒石酸ラソフォキシフェン」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲7発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ケ)甲8を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲8に記載された発明
摘記(甲8d)によれば、甲8には、以下の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されているものと認める。
「アキシチニブ、マンニトール、乳糖、クロスポリビニルピロリド及びスクラロースを均一に混合し、カルメロースナトリウム水溶液を用いて湿式造粒し、乾燥し整粒した後、整粒後の粒子に、スクラロース、メントール、シリカ、ステアリン酸マグネシウムを添加して均一に混合し、打錠して得た口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲8発明における「アキシチニブ」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲8発明における「整粒後の粒子」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲8発明においては、スクラロースは「整粒後の粒子」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲8発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲8の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲8発明ではアキシチニブである点。」
<相違点-甲8の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲8発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲8の1について、甲8発明において、有効成分である「アキシチニブ」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲8発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(コ)甲9を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲9に記載された発明
摘記(甲9c)によれば、甲9には、以下の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されているものと認める。
「バルサルタン、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、スクラロース及びクロスポビドンから得られた顆粒(内核用粉体)と、乳糖1水和物、結晶セルロース、クロスポビドン、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、香料、ステアリン酸マグネシウム及び無水クエン酸を混合した外層用粉体とを打錠して得た口腔内崩壊錠。」

b 対比
甲9発明における「バルサルタン」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
甲9発明における「顆粒(内核用粉体)」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲9発明においては、スクラロースは「顆粒(内核用粉体)」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲9発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲9の1>
「口腔内崩壊錠中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲9発明ではバルサルタンである点。」
<相違点-甲9の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲9発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲9の1について、甲9発明において、有効成分である「バルサルタン」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲9発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(サ)甲10を主引例とした場合の進歩性欠如
a 甲10に記載された発明
摘記(甲10a)によれば、甲10には、以下の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されているものと認める。
「ホップ抽出物、アセスルファムカリウム及びスクラロースを含有する苦味が低減されたホップ抽出物含有組成物。」

b 対比
甲10発明における「ホップ抽出物」は、本件発明1における「薬物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲10発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及びスクラロースが含まれる組成物。」

<相違点-甲10の1>
「組成物中の薬物が、本件発明1ではメマンチン塩酸塩であるのに対し、甲10発明ではホップ抽出物である点。」
<相違点-甲10の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲10発明では、かかる特定がなされていない点。」
<相違点-甲10の3>
「本件発明1では、薬物及び顆粒を含む口腔内崩壊錠であって、顆粒中にスクラロースが含まれることが特定されているのに対し、甲10発明では、かかる特定がなされていない点。」

c 判断
相違点-甲10の1について、甲10発明において、有効成分である「ホップ抽出物」を他の公知の医薬成分に置き換える動機付けがないこと、また、無数に存在する他の公知の医薬成分の中から特にメマンチン塩酸塩を選択する動機付けもないことは、上記(イ)cで説示したのと同様である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲10発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(シ)小括
以上によれば、本件発明1は、甲1?10のいずれかに記載された発明と甲11?14に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、上記(ア)の申立人の主張は採用できない。

イ 甲15、16、1、11、17に基づく進歩性欠如
(ア)申立人の主張の概要
本件発明1と甲15記載の発明とは、スクラロースが顆粒内に配合されているかどうかの点で異なる。
この点に関し、甲16には、顆粒にスクラロースを配合することで顆粒サイズを大きくすることができること、それによる技術的利点も記載されており、また、この顆粒は口腔内崩壊錠の製造に予定されているものであるから、甲15の口腔内崩壊錠において、スクラロースを顆粒内に配合することは、当業者であれば容易に想到しうることである。

(イ)甲15に記載された発明
甲15には、経口投与用メマンチン含有医薬組成物のプレミックスとして、メマンチン含有顆粒(この顆粒は、ポリビニルピロリドンからなる第1のコーティング、及びカチオン性コポリマーとステアリン酸マグネシウムからなる第2のコーティングで被覆されている)、スクラロース及びエッセンス(ペパーミントエッセンス、レモンエッセンス)を含有し、これらすべての粒子サイズが710ミクロン未満としたものを提供すること、このプレミックスを用いて口腔内崩壊錠を製造すること、そして、このプレミックスを用いることで、メマンチンの特徴的な苦みがなく、口腔に入れられたときに懸濁液中の粒子サイズが小さく、不快な凝集物がないため、飲み込みやすいものを提供できることが記載されている(摘記(甲15a)?(甲15c))。
また、甲15には、上記プレミックスにおけるメマンチン含有顆粒は、第1及び第2のコーティングによりメマンチンの苦みは軽減されているが、この顆粒にスクラロースを添加することで、メマンチンの苦みがなくなることも記載されている(摘記(甲15d))。
そして、摘記(甲15a)?(甲15d)に加えて、摘記(甲15e)及び(甲15f)も踏まえると、甲15には、以下の発明(以下「甲15発明」という。)が記載されているものと認める。

「メマンチン含有顆粒に対して、ポリビニルピロリドンを含む水性懸濁液を噴霧し第1のコーティングを形成し、次いでEudragit EPO及びステアリン酸マグネシウムを含む水?イソプロピルアルコールの懸濁液により第2のコーティングを形成してペレットを得、このペレットに、スクラロース、ペパーミントエッセンス及びレモンエッセンスからなる混合物を添加し、篩にかけて粒子径710ミクロン未満のプレミックスを得たのち、このプレミックスに対して所定の賦形剤を添加、打錠して得られた口腔内崩壊錠。」

(ウ)対比
甲15発明における「メマンチン」は、本件発明1における「薬物」である「メマンチン塩酸塩」に相当する。
甲15発明における「ペレット」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲15発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
スクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠。」

<相違点-甲15の1>
「スクラロースが、本件発明1では「顆粒α」中に含まれているのに対し、甲15発明では「ペレット」中には含まれていない点。」
<相違点-甲15の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲15発明では、かかる特定がなされていない点。」

(エ)判断
まず、相違点-甲15の1について検討する。
甲16には、活性成分を含む顆粒を製造する際に、スクラロース、極性溶媒、湿潤性材料及び活性成分を組み合わせた混合物を用いることが記載され、スクラロースを使用すると、スクラロースを使用しない場合に比べて、顆粒の粒子径が大きくなること、粉末の大きさを増加させることの利点は、(i)バルク材料の取扱い性、(ii)ブレンドの均一性の制御、(iii)圧縮、(iv)コーティングされた顆粒のためのコーティング、及び(v)乾燥材料の流れを改善することにあることが記載されている。
他方、上記(イ)で説示したとおり、甲15発明は、メマンチンの特徴的な苦みがなく、飲み込みやすい医薬組成物を提供するために、その製造に先立つプレミックスとして、それを構成するすべての粒子サイズを小さくする(具体的には710ミクロン未満とする)ものであって、顆粒中にスクラロースを添加することで顆粒の粒子径を増大させるという甲16の開示とは、技術的思想が正反対である。
そして、このような相反する技術的思想を組み合わせること自体、阻害要因があると言わざるを得ない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲15発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(オ)小括
以上によれば、本件発明1は、甲15に記載された発明と甲16、1、11、17号証に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、上記(ア)の申立人の主張は採用できない。

ウ 甲18、19、11、20、1、17に基づく進歩性欠如
(ア)申立人の主張の概要
本件発明1と甲18記載の発明とは、本件発明1ではスクラロースを含むのに対し、甲18ではアスパルテームを含む点(相違点1)及び本件発明1は口腔内崩壊錠であるのに対し、甲18は顆粒剤である点(相違点2)で相違する。
相違点1に関して、甲18には甘味剤としてアスパルテームとスクラロースが並列に例示されており、甲18の実施例1?3の顆粒のアスパルテームをスクラロースに置換することは容易である。
相違点2に関して、顆粒の圧縮により口腔内崩壊錠を製造する際に、溶出性が良好な顆粒を用いることが望ましいことは自明であり、甲18の実施例1?3の顆粒を口腔内崩壊錠の製造に用いることは容易に想到できる。

(イ)甲18に記載された発明
甲18には、従来のメマンチン塩酸塩を含有する口腔内崩壊錠の技術的課題を解決するために、メマンチン塩酸塩の新たな医薬組成物、特に顆粒剤、散剤やドライシロップ剤を提供することが記載されている(摘記(甲18b)?(甲18e))。
そして、摘記(甲18j)によれば、甲18には、以下の発明(以下「甲18発明」という。)が記載されているものと認める。
「メマンチン塩酸塩、D-マンニトール、カルメロースカルシウム、アスパルテーム、乾燥メタクリル酸コポリマーLDを混合し、これを流動層造粒機に投入し、ヒドロキシプロピルセルロースを精製水に分散した液を噴霧後、乾燥することで造粒顆粒を得、次いでこの造粒顆粒に、軽質無水ケイ酸、アスパルテームを混合することで得られる顆粒状の医薬組成物。」

(ウ)対比
甲18発明における「メマンチン塩酸塩」は、本件発明1における「薬物」である「メマンチン塩酸塩」に相当する。
本件発明1における「スクラロース」及び甲18発明における「アスパルテーム」は、いずれも矯味剤として添加されているものである(本件明細書【0010】等及び摘記(甲18a)、(甲18g))。
甲18発明における「顆粒状の医薬組成物」は、本件発明1における「顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)」に相当し、また、甲18発明においては、矯味剤としてのスクラロースは「顆粒状の医薬組成物」中に含まれる。
そうすると、本件発明1と甲18発明とを対比した一致点・相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する医薬組成物であって、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αに矯味剤が含まれる、医薬組成物。」

<相違点-甲18の1>
「医薬組成物の剤形が、本件発明1では口腔内崩壊錠であるのに対し、甲18発明では顆粒である点。」
<相違点-甲18の2>
「本件発明1では、「ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く」との特定がなされているのに対し、甲18発明では、かかる特定がなされていない点。」
<相違点-甲18の3>
「矯味剤が、本件発明1ではスクラロースであるのに対し、甲18発明ではアスパルテームである点。」

(エ)判断
まず、相違点-甲18の1について検討する。
上記(イ)で説示したとおり、甲18発明は、従来のメマンチン塩酸塩を含有する口腔内崩壊錠の技術的課題を解決するために、新たな剤形(顆粒剤、散剤やドライシロップ剤)を提供しようとするものである。
そうしみると、申立人の主張するように、顆粒の圧縮により口腔内崩壊錠を製造することが一般的であるとしても、口腔内崩壊錠に代えて顆粒剤としている甲18発明において、その剤形を口腔内崩壊錠に変更することは、阻害要因があるといえる。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲18発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(オ)小括
以上によれば、本件発明1は、甲18に記載された発明と甲19、11、20、1、17に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、上記(ア)の申立人の主張は採用できない。

(2)本件発明2について
ア 甲4、11?14、22に基づく進歩性欠如
(ア)申立人の主張の概要
本件発明2のうち、結合剤がヒプロメロースの場合は、本件発明1と同様、甲4と甲11?14から進歩性がない。
本件発明2のうち、結合剤がヒプロメロース以外の場合、甲4記載発明のヒプロメロースを置換することは、甲4の記載あるいは周知技術(甲22)から容易であるから、甲4と甲11?14、甲22から進歩性がない。

(イ)判断
本件発明2は、本件発明1をさらに限定したものである。
そして、本件発明1が、甲4に記載された発明に基づいて進歩性を否定できないことは、上記(1)ア(オ)cにおいて説示したとおりである。
そうしてみると、本件発明2も、これと同様、甲4に記載された発明に基づいて、進歩性を否定することはできない。

(ウ)小括
以上によれば、本件発明2は、甲4に記載された発明と甲4、11?14、22に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、上記(ア)の申立人の主張は採用できない。

イ 甲18、19、11、20、1、17、22に基づく進歩性欠如
(ア)申立人の主張の概要
本件発明2のうち、結合剤がヒドロキシプロピルセルロースの場合は、本件発明1と同様、甲18、19、11、20、1、17から進歩性がない。
本件発明2のうち、結合剤がヒドロキシプロピルセルロース以外の場合、甲18記載発明のヒドロキシプロピルセルロースを置換することは、甲18の記載あるいは周知技術(甲22)から容易であるから、甲18、19、11、20、1、17と甲22から進歩性がない。

(イ)判断
本件発明2は、本件発明1をさらに限定したものである。
そして、本件発明1が、甲18に記載された発明に基づいて進歩性を否定できないことは、上記(1)ウにおいて説示したとおりである。
そうしてみると、本件発明2も、これと同様、甲18に記載された発明に基づいて、進歩性を否定することはできない

(ウ)小括
以上によれば、本件発明2は、甲18に記載された発明と甲19、11、20、1、17、22に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、上記(ア)の申立人の主張は採用できない。

(3)本件発明4について
ア 甲8、11?14に基づく進歩性欠如
(ア)申立人の主張の概要
本件発明4のうち、請求項1を引用する部分について、甲8の実施例1?3の口腔内崩壊錠において、スクラロース含有量を素錠全量の0.5重量%以上とすることは容易であり、甲8、甲11?14から進歩性がない。

(イ)判断
本件発明4は、本件発明1をさらに限定したものである。
そして、本件発明1が、甲8に記載された発明に基づいて進歩性を否定できないことは、上記(1)ア(ケ)cにおいて説示したとおりである。
そうしてみると、本件発明4も、これと同様、甲8に記載された発明に基づいて、進歩性を否定することはできない。

(ウ)小括
以上によれば、本件発明4は、甲8に記載された発明と甲11?14に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、上記(ア)の申立人の主張は採用できない。

(4)本件発明5について
ア 請求項1、2、4についての各甲号証と甲23、24に基づく進歩性欠如
(ア)申立人の主張の概要
請求項1、2、4の口腔内崩壊錠の製造に当たり、味を良くするために、それに含まれる顆粒を、スクラロースを含むコーティング液を添加して製造することは、上記(1)?(3)で採用した各甲号証と、甲23,24から容易に想到できる。
(合議体注:特許異議申立書では、請求項5のうち、請求項1?4を引用する場合について進歩性欠如を主張しているが、請求項3に対しては特許異議申立てがなされていないため、上記のとおり、請求項3を引用する部分を除いたものについて主張がなされているものと認める。)

(イ)判断
本件発明5は、本件発明1、2、4の口腔内崩壊錠を製造する方法の発明であって、スクラロースを含むコーティング液を添加して顆粒αを製造する工程を含むというものである。
ここで、本件発明1、2、4の口腔内崩壊錠の発明自体が、申立人の申立理由によっては進歩性を否定されないことは、上記(1)?(3)において説示したとおりである。
そうしてみると、本件発明1、2、4の口腔内崩壊錠を製造する方法の発明である本件発明5についても、申立人の申立理由によっては進歩性を否定されることはない。

(ウ)小括
以上によれば、上記(ア)の申立人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、4及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αにスクラロースが含まれる、口腔内崩壊錠(ただし、D-マンニトール、ι-カラギーナン、二酸化ケイ素、およびポリビニルアルコールを含有する湿製錠剤を除く)。
【請求項2】
薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αに薬物、スクラロース及び結合剤が含有され、結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリエチレングリコール、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液から選ばれる、口腔内崩壊錠。
【請求項3】
顆粒αが、メマンチン塩酸塩である薬物の周囲にコーティング層が形成されてなる顆粒(以下、顆粒βと呼ぶ。)を含む、請求項2に記載の口腔内崩壊錠。
【請求項4】
薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有する口腔内崩壊錠であって、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αにスクラロースが含まれ、
素錠の全重量に対してスクラロースが0.5重量%以上含有され、賦形剤としてマンニトール、及び崩壊剤としてクロスポビドンが含有される、口腔内崩壊錠。
【請求項5】
薬物及び顆粒(以下、顆粒αと呼ぶ。)を含有し、
薬物がメマンチン塩酸塩であり、
顆粒αにスクラロースが含まれる口腔内崩壊錠を製造する方法であって、
スクラロースを含むコーティング液を添加して顆粒αを製造する工程を含む、製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-05-26 
出願番号 特願2019-105522(P2019-105522)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (A61K)
P 1 652・ 16- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 名和 大輔  
特許庁審判長 前田 佳与子
特許庁審判官 鳥居 福代
滝口 尚良
登録日 2020-01-07 
登録番号 特許第6639034号(P6639034)
権利者 大原薬品工業株式会社
発明の名称 矯味剤含有顆粒を内在する、服用性が改善された口腔内崩壊錠  
代理人 特許業務法人朝日奈特許事務所  
代理人 特許業務法人朝日奈特許事務所  

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