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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  B65D
管理番号 1376709
異議申立番号 異議2019-700862  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-01 
確定日 2021-06-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6539011号発明「合成樹脂製キャップ及び容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6539011号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第6539011号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6539011号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成30年1月29日(優先権主張 2017年(平成29年)10月16日 (JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、令和元年6月14日にその特許権の設定登録がされ、令和元年7月3日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 元年11月 1日 :特許異議申立人青山裕樹(以下「申立人」という。)による請求項1?4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 2年 3月26日付け:取消理由通知
令和 2年 6月23日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和 2年 7月28日付け:訂正拒絶理由通知
令和 2年 9月25日 :特許権者による意見書の提出
令和 2年11月24日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 3年 2月22日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出

なお、令和3年2月22に特許権者による訂正請求がされたので、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人からは何ら応答がなかった。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
上記令和3年2月22日提出の訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。

訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、
「構成されていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。」
と記載されているのを、
「構成され、前記雌ねじは前記スカート壁内を螺旋状に二周するように延び、各ねじ無し部分の上又は下には他のねじ無し部分が必ず存在するように構成し、上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、前記フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さく、また、前記タンパーエビデンスバンドの外径を上下にわたって均一にしてあることを特徴とする合成樹脂製キャップ。」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?4も同様に訂正する)。

以下、本件訂正に関し、「前記雌ねじは前記スカート壁内を螺旋状に二周するように延び、各ねじ無し部分の上又は下には他のねじ無し部分が必ず存在するように構成し、上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、前記フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さく、」に係る訂正事項を訂正事項1といい、「また、前記タンパーエビデンスバンドの外径を上下にわたって均一にしてある」に係る訂正事項を訂正事項2という。

2.一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?4について、請求項2?4は、訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、上記訂正事項1及び2によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?4〕について請求されたものである。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「雌ねじ」について、「前記スカート壁内を螺旋状に二周するように延び、各ねじ無し部分の上又は下には他のねじ無し部分が必ず存在するように構成し、上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、前記フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さく」することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項1のうち、「前記スカート壁内を螺旋状に二周するように延び、各ねじ無し部分の上又は下には他のねじ無し部分が必ず存在するように構成」することは、本件特許明細書等の【0027】、【0032】の記載に基づくものである。

(イ)訂正事項1のうち、「上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、前記フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さく」することについて検討する。
本件特許明細書等の図3は、合成樹脂製キャップの構成を概略的に示す底面図である図2のA-A線切断断面図である。図3の左右方向中央の上下に並ぶ二つの「ねじ山(16)」と、その左側の上下に並ぶ二つの「ねじ無し部分(17)」に着目すると、上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さいことが看取できる。また、当該事項は、合成樹脂製キャップにおけるねじ山及びねじ無し部分とフックとの位置関係を概略的に示す展開図である図6からも看取できる。

(ウ)したがって、訂正事項1は本件特許明細書等に記載した事項の範囲内である。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「タンパーエビデンスバンド」について、「外径を上下にわたって均一にしてある」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、本件特許明細書等の【0023】の記載に基づくものであるから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

4.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1?4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
容器口部の外周に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁と、該スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結されたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、
前記タンパーエビデンスバンドの内周側に、前記容器口部の外周に設けられた環状突起に下方から係止可能なフックが周方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記雌ねじは、ねじ山と、ねじ無し部分とが交互に並ぶ断続ねじであり、
各前記ねじ無し部分を前記スカート壁の軸方向に延長した先に、周方向に隣り合う前記フック間に設けられる隙間が位置しないように構成され、
前記雌ねじは前記スカート壁内を螺旋状に二周するように延び、各ねじ無し部分の上又は下には他のねじ無し部分が必ず存在するように構成し、上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、前記フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さく、
また、前記タンパーエビデンスバンドの外径を上下にわたって均一にしてあることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
各前記隙間を前記タンパーエビデンスバンドの軸方向に延長した先に、何れかの前記ねじ山の中央が位置するように構成されている請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記フックは5個設けられ、前記ねじ山は一周当たり10個設けられている請求項1または2に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項4】
請求項1?3の何れか一項に記載の合成樹脂製キャップが口部に装着された容器。」

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
本件発明1?4に対して、当審が令和2年11月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件発明1?4は、その優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた特願2016-97041号に係る特許出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

なお、上記取消理由は、異議申立の理由を全て含んでいる。

2.当審の判断
(1)先願明細書等の記載事項、先願発明
ア 先願明細書等には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に延びる破断ラインが形成されていて、該スカート壁は該破断ラインよりも上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該スカート壁の該主部の内周面には雌螺条が形成されており、該タンパーエビデント裾部の内周面には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の係止突起が配設されており、該係止突起の各々は半径方向内方に延出する係止上面を有する合成樹脂製容器蓋において、
該雌螺条は周方向に間隔をおいて配設された複数個の中断領域によって中断された複数個の雌螺条部によって構成されており、
該係止突起の少なくとも周方向中間部の軸線方向上方には該雌螺条部が存在する、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項2】
該係止突起の該周方向中間部における該係止上面の半径方向延出長さは、該係止突起の周方向両側部における該係止上面の半径方向延出長さよりも大きい、請求項1記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項3】
該係止突起の該周方向中間部における該係止上面の半径方向延出長さは周方向中心から周方向両側に向かって漸次低減されており、該係止突起の該周方向両側部における該係止上面の半径方向延出長さは周方向両側に向かって漸次低減されていて、周方向両端においては零であり、該周方向中間部の周方向両端における該係止上面の半径方向延出長さと該周方向両側部の周方向内側端における該係止上面の半径方向延出長さは同一である、請求項2記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項4】
該係止突起は周方向に等間隔をおいて奇数であるN個配設されており、該係止突起の各々の周方向長さは同一であり、該雌螺条の該中断領域は周方向に等間隔をおいてNの整数倍個配設されており、該係止突起の周方向中心は該雌螺条部の周方向中心と軸線方向において整合している、請求項1から3までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項5】
Nは5である、請求項4記載の合成樹脂製容器蓋。」
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、本発明者等の経験によれば、上述したとおりの従来の容器蓋においては、タンパーエビデント裾部の内周面に配設されている複数個の係止突起のうちの幾つかにおいて成形不良が発生する、即ち所要とおりの形態に充分正確に成形されず変形が発生する、ことが少なくないことが判明している。係止突起は容器の口頸部を開封する際に口頸部の係止あご部に確実に係止することが重要であり、それ故に係止突起が変形されてしまうと口頸部の開封の際に不都合が発生する虞がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、成形に必要な合成樹脂材料の量を増大させることなくタンパーエビデント裾部の内周面に配設される複数個の係止突起における成形不良を充分確実に回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討の結果、上述した係止突起の成形不良は、軸線方向において雌螺条の中断領域に対応して位置する係止突条に発生する(その理由は後述する)ことを知見した。そして、かかる知見に基づき、係止突起の少なくとも周方向中間部の軸線方向の上方には、雌螺条の中断領域ではなくて雌螺条部が存在するように構成することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成することができる合成樹脂製容器蓋として、 円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に延びる破断ラインが形成されていて、
該スカート壁は該破断ラインよりも上方の主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該スカート壁の該主部の内周面には雌螺条が形成されており、該タンパーエビデント裾部の内周面には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個の係止突起が配設されており、該係止突起の各々は半径方向内方に延出する係止上面を有する合成樹脂製容器蓋において、
該雌螺条は周方向に間隔をおいて配設された複数個の中断領域によって中断された複数個の雌螺条部によって構成されており、
該係止突起の少なくとも周方向中間部の軸線方向上方には該雌螺条の該中断領域ではなくて該雌螺条部が存在する、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
【0008】
好適実施形態においては、該係止突起の該周方向中間部における該係止上面の半径方向延出長さは、該係止突起の周方向両側部における該係止上面の半径方向延出長さよりも大きい。該係止突起の該周方向中間部における該係止上面の半径方向延出長さは周方向中心から周方向両側に向かって漸次低減されており、該係止突起の該周方向両側部における該係止上面の半径方向延出長さは周方向両側に向かって漸次低減されていて、周方向両端においては零であり、該周方向中間部の周方向両端における該係止上面の半径方向延出長さと該周方向両側部の周方向内側端における該係止上面の半径方向延出長さは同一である、のが好都合である。好ましくは、該係止突起は周方向に等間隔をおいて奇数であるN個配設されており、該係止突起の各々の周方向長さは同一であり、該雌螺条の該中断領域は周方向に等間隔をおいて2N個配設されており、該係止突起の周方向中心は該雌螺条部の周方向中心と軸線方向において整合している。Nは5であるのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成樹脂容器蓋によれば、雌螺条は周方向に間隔をおいて配設された複数個の中断領域によって中断された複数個の雌螺条部によって構成されているが、係止突起の少なくとも周方向中間部の軸線方向上方には雌螺条の中断領域ではなくて雌螺条部が存在する故に、成形に必要な合成樹脂材料の量を増大させることなくタンパーエビデント裾部の内周面に配設される複数個の係止突起における成形不良を充分確実に回避することができる。」
「【0012】
図1を参照して説明すると、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形することができる容器蓋2は、円形天面壁4とこの天面壁4の周縁から垂下する円筒形スカート壁6とを具備する。天面壁4の内面外周縁部には、下方に垂下する比較的長い円筒形状の内側シール片8と共に下方に垂下する比較的短い円筒形状の外側シール片10が形成されている。内側シール片8と外側シール片10との中間には環状突出部12が形成されている。
【0013】
スカート壁6には周方向に延びる破断ライン14が形成されており、スカート壁6は破断ライン14より上方の主部16と破断ライン14より下方のタンパーエビデント裾部18とに区画されている。図示の実施形態においては、破断ライン14は周方向に延びる複数個のスリット(切り溝)20とスリット20間に残留せしめられている複数個の橋絡部22とから構成されており、タンパーエビデント裾部18は複数個の橋絡部22を介して主部16に接続されている。
【0014】
スカート壁6の主部20の外周面には、周方向に見て交互に存在する凹凸形状から構成された滑り止めローレット24が形成されている。図1と共に図2及び図4を参照して説明を続けると、スカート壁6の主部16の内周面には雌螺条26が形成されている。図示の実施形態においては、約720度(2巻)に渡って延びる1条の雌螺条26が形成されており、周方向のいずれの部位においても軸線方向下側に位置する下段雌螺条26aと軸線方向上側に位置する上段雌螺条26bが存在する。下段雌螺条26a及び上段雌螺条26bの各々は、成形に必要な合成樹脂材料量の低減の見地から、周方向に間隔をおいて配設された複数個の中断領域28a及び28b(後に言及する係止突起の数をNとすると、中断領域28a及び28bの数はNの整数倍、特に2N、であるのが好適である)によって中断された複数個の雌螺条部30a及び30bから形成されていることが重要である。図示の実施形態においては、下段雌螺条26a及び上段雌螺条26bの各々において、等間隔をおいて10個の中断領域28a及び28並びに10個の雌螺条部30a及び30bが配設されており、中断領域28a及び28bの各々の周方向長さは同一であり、雌螺条部30a及び30bの各々の周方向長さも同一である。下段雌螺条26aにおける中断領域28aの各々と上段雌螺条26bにおける中断領域28bの各々とは軸線方向に整合している、従って下段雌螺条26aにおける雌螺条部30aの各々と上段雌螺条26bにおける雌螺条部30bの各々とも軸線方向に整合している。1条の雌螺条を形成することに代えて複数状の雌螺条を形成することもできる。この場合も、各雌螺条における中断領域の各々の周方向長さは同一であり、雌螺条部の周方向長さも同一であり、各雌螺条における中断領域の各々及び雌螺条部の各々は軸線方向に整合しているのが好適である。
【0015】
図1乃至図4を参照して説明を続けると、タンパーエビデント裾部18の内周面には周方向に間隔をおいて奇数であるのが好適である複数個の係止突起32が配設されている。図示の実施形態においては、周方向に等間隔をおいて5個の係止突起32が配設されており、係止突起32の各々は実質上同一であり、周方向中間部32aと共に周方向両側部32bを有する。図2を参照することによって理解される如く、係止突起32の各々の周方向中間部32aの直径方向反対側には係止突起32が存在しない係止突起非存在部34(かかる係止突起非存在部34の各々には突出量が微小である弧状突条が配設されている)が位置する。図4を参照することによって明確に理解される如く、係止突起32の少なくとも周方向中間部32aの軸線方向上方には雌螺条部30a及び30bが存在することが重要である(その理由は後述する)。図示の実施形態においては、係止突起32の周方向中間部32aと共に周方向両側部32bの周方向内側端及び外側端も、雌螺条部30a及び30bの軸線方向下方に位置する。
【0016】
係止突起32の各々は、半径方向内方に延出する係止上面36、縦断面図において略半円弧形状である先端面38及び下方に向かって半径方向外方に傾斜して延在する案内下面40を有する。そして、周方向中間部32aにおける係止上面36の半径方向突出長さは周方向両側部32bにおける係止上面36の半径方向突出長さよりも大きく設定されている。更に詳述すると、図2を参照することによって明確に理解されるとおり、図示の実施形態においては、周方向中間部32aにおいては係止上面36の半径方向延出長さが周方向両側に向かって漸次低減されており、周方向両側部32bにおいても係止上面36の半径方向延出長さは周方向両側に向かって漸次低減されており、周方向両端においては実質上零である。そして、周方向両側部32bの周方向内側端における係止上面36の半径方向延出長さは周方向中央部32aの周方向両端における係止上面36の半径方向延出長さと実質上同一である。図示の実施形態においては、係止突起32の各々の案内下面40の下縁は周方向中間部32aから周方向両側部32bの一部(即ち周方向内側部)に渡って実質上水平に延在し、周方向両側部32bの周方向外側部においては案内下面40の下縁は周方向外側端に向かって軸線方向上方に傾斜せしめられている。」
「【0018】
而して、上述した如く、従来の容器蓋においては、タンパーエビデント裾部の内周面に形成されている複数個の係止突起の内の幾つかに成形不良が発生することが少なくなかった。本発明者等の検討によれば、係止突起の成形不良は、周方向に見て雌螺条部が存在しない領域において発生しており、特に係止突起32の係止上面36の半径方向突出長さが大きい箇所(内径の小さい箇所)である周方向中間32aと雌螺条部が存在しない領域とが合致した場合に顕著に発生していた。然るに、本発明従って構成された容器蓋2おいては、係止突起32の少なくとも周方向中間部32aの軸線方向上方には雌螺条部30a及び30bが存在し、それ故に係止突起32に成形不良が発生することが可及的に回避される。その理由について、本発明者等は、成形された容器蓋を成形型から取り出す際に雌螺条部30a及び30b並びに係止突起32において所謂無理抜きが必要であるが、係止突起32の少なくとも周方向中間部32aの軸線方向上方には雌螺条部30a及び30bが存在する場合は、雌螺条部30a及び30bにおける無理抜きに起因してスカート壁6が下方に向かって半径方向外方に強制され、これによって係止突起32のおける無理抜きが緩和される故であると考えている。因みに、雌螺条部30a及び30bは、その形状に起因して無理抜きによる変形乃至損傷に対して比較的強い耐性を有するが、係止突起32は、その形状に起因して無理抜きによる変形乃至損傷に対する耐性が比較的小さい。
【0019】
図1には容器蓋2と共に容器の口頸部44も図示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂、ガラス或いは金属薄板から形成することができる容器の口頸部44は全体として円筒形状であり、口頸部44の外周面には約720度(2巻)に渡って延びる1条の雄螺条46、即ち軸線方向下側に位置する下段雄螺条46aと軸線方向上側に位置する上段雄螺条46bが存在する。また、下段雄螺条46aの下方に位置する係止あご部48が形成されている。口頸部44の外周面には、更に、係止あご部48の下方に位置するサポートリング50(かかるサポートリング50は当業者には周知の如く容器の搬送に利用される)も配設されている。」
「【0022】
内容物を消費するために口頸部44を開封する際には、容器蓋2を開方向、即ち図1において上方から見て反時計方向、に回転せしめる。かくすると、雄螺条46と雄螺条雌26の螺合が漸次解除され、スカート壁6の主部16は回転と共に軸線方向上方に移動せしめられる。一方、タンパーエビデント裾部18は係止突起32が係止あご部48に係止せしめられる故に軸線方向上方への移動が阻止され、かくして破断ライン14の橋絡部22に応力が生成されて橋絡部22が破断され、タンパーエビデント裾部18がスカート壁6の主部16から切り離される。破断ライン14が破断された後においては、タンパーエビデント裾部18を口頸部44に残留せしめて、容器蓋2の天面壁4及びスカート壁6の主部16は回転と共に軸線方向上方に自由に移動せしめられて口頸部44から離脱され、かくして口頸部44が開封される。所望ならば、タンパーエビデント裾部18に軸線方向破断ラインを形成し、容器の口頸部44を開封する際には上記軸線方向破断ラインが破断され、一方周方向に延在する破断ライン14はその一端が破断されることなく維持され、タンパーエビデント裾部18が無端環状から有端環状に展開され、タンパーエビデント裾部18と共に容器蓋2の全体が口頸部44から離脱されるようになすこともできる。」
「【図1】


「【図4】



イ したがって、先願明細書等には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているといえる。
「容器の口頸部44の外周に形成された雄螺条46に螺合する雌螺条26が設けられたスカート壁の主部16と、該スカート壁6の主部16の下部に破断ライン14を介して連結されたタンパーエビデント裾部18とを具備した容器蓋2であって、
タンパーエビデント裾部18の内周側に、容器の口頸部44の外周に設けられた係止あご部48に下方から係止可能な係止突起32が周方向に間隔をおいて5個設けられ、
雌螺条26は、各々の周方向長さが同一の雌螺条部30a及び30bと、各々の周方向長さが同一の中断領域28a及び中断領域28bとが交互に並ぶ断続ねじであり、
各中断領域28a及び中断領域28bをスカート壁の主部16の軸方向に延長した先に、周方向に隣り合う係止突起32間に設けられる係止突起非存在部34が位置しないように構成され、
雌螺条26はスカート壁6の主部16の内周面に約720度(2巻)に渡って延び、下段雌螺条26aにおける中断領域28aの各々と上段雌螺条26bにおける中断領域28bの各々とは軸線方向に整合しているポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形することができる容器蓋2。」

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と先願発明とを対比する。
先願発明における「容器の口頸部44」、「雄螺条46」は、それぞれ本件発明1における「容器口部」、「雄ねじ」に相当する。
先願発明における「雌螺条26」、「スカート壁6の主部16」、「破断ライン14」、「タンパーエビデント裾部18」は、それぞれ本件発明1における「雌ねじ」、「スカート壁」、「環状弱化部」、「タンパーエビデンスバンド」に相当する。
先願発明における「係止あご部48」、「係止突起32」は、それぞれ本件発明1における「環状突起」、「フック」に相当する。
先願発明における「雌螺条部30a及び30b」、「中断領域28a及び中断領域28b」、「係止突起非存在部34」は、それぞれ本件発明1における「ねじ山」、「ねじ無し部分」、「隙間」に相当する。
先願発明における「雌条26はスカート壁6の主部16の内周面に約720度(2巻)に渡って延び、下段雌螺条26aにおける中断領域28aの各々と上段雌螺条26bにおける中断領域28bの各々とは軸線方向に整合している」ことは、「前記雌ねじは前記スカート壁内を螺旋状に二周するように延び、各ねじ無し部分の上又は下には他のねじ無し部分が必ず存在するように構成し」てあることに相当する。
先願発明における「ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形することができる容器蓋2」は、本件発明1における「合成樹脂製キャップ」に相当する。
そうすると、本件発明1と先願発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「容器口部の外周に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁と、該スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結されたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、
前記タンパーエビデンスバンドの内周側に、前記容器口部の外周に設けられた環状突起に下方から係止可能なフックが周方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記雌ねじは、ねじ山と、ねじ無し部分とが交互に並ぶ断続ねじであり、
各前記ねじ無し部分を前記スカート壁の軸方向に延長した先に、周方向に隣り合う前記フック間に設けられる隙間が位置しないように構成され、
前記雌ねじは前記スカート壁内を螺旋状に二周するように延び、各ねじ無し部分の上又は下には他のねじ無し部分が必ず存在するように構成してある合成樹脂製キャップ。」
[相違点1]
本件発明1は、「上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、前記フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さく」してあるのに対して、先願発明は、各々の周方向長さが同一の中断領域28a及び中断領域28bである点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記タンパーエビデンスバンドの外径を上下にわたって均一にしてある」のに対して、先願発明はそのようになっていない点。

イ 判断
相違点1について検討する。
先願明細書等には、上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さくすることについて記載も示唆もされておらず、また、当該事項は、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
そうすると、相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえず、実質的な相違点であり、本件発明1と先願発明とは同一ではない。
したがって、本件発明1は、先願明細書等に記載された発明であるとはいえない。

(3)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の技術的事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、先願明細書等に記載された発明であるとはいえない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?4に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部の外周に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁と、該スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結されたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、
前記タンパーエビデンスバンドの内周側に、前記容器口部の外周に設けられた環状突起に下方から係止可能なフックが周方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記雌ねじは、ねじ山と、ねじ無し部分とが交互に並ぶ断続ねじであり、
各前記ねじ無し部分を前記スカート壁の軸方向に延長した先に、周方向に隣り合う前記フック間に設けられる隙間が位置しないように構成され、
前記雌ねじは前記スカート壁内を螺旋状に二周するように延び、各ねじ無し部分の上又は下には他のねじ無し部分が必ず存在するように構成し、上下に並ぶ二つのねじ無し部分において、前記フックに近い下側のねじ無し部分の周方向の幅が上側のねじ無し部分の周方向の幅よりも小さく、
また、前記タンパーエビデンスバンドの外径を上下にわたって均一にしてあることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
各前記隙間を前記タンパーエビデンスバンドの軸方向に延長した先に、何れかの前記ねじ山の中央が位置するように構成されている請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記フックは5個設けられ、前記ねじ山は一周当たり10個設けられている請求項1または2に記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項4】
請求項1?3の何れか一項に記載の合成樹脂製キャップが口部に装着された容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-08 
出願番号 特願2019-519024(P2019-519024)
審決分類 P 1 651・ 16- YAA (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 正宗  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 藤井 眞吾
村山 達也
登録日 2019-06-14 
登録番号 特許第6539011号(P6539011)
権利者 日本山村硝子株式会社
発明の名称 合成樹脂製キャップ及び容器  
復代理人 西村 幸城  
代理人 藤本 英夫  
復代理人 西村 幸城  
代理人 藤本 英夫  
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