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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
管理番号 1376729
異議申立番号 異議2020-700443  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-24 
確定日 2021-06-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6626674号発明「硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6626674号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6626674号の請求項1-4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6626674号(請求項の数4。以下、「本件特許」という。)は、平成27年9月18日を出願日(優先権主張 平成26年10月8日)とする特許出願(特願2015-184850号)に係るものであって、令和1年12月6日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、同年12月25日である。)。その後、令和2年6月24日に、本件特許の全請求項(請求項1?4)に係る特許に対して、特許異議申立人である佐藤彰芳(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
特許異議の申立て後の経緯は以下のとおりである。
令和2年 6月24日 特許異議申立書
同年11月 5日付け 取消理由通知書
令和3年 1月 8日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 1月27日付け 通知書(申立人あて)
なお、令和3年1月27日付けの通知書に対して、申立人から、意見書の提出はなかった。

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和3年1月8日になされた訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記ポリオール化合物が、アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1を含有し」とあるのを、「前記ポリオール化合物が、アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1を含有し」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「前記ポリオール化合物が、アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有し」とあるのを、「前記ポリオール化合物が、アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有し」に訂正する。

(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?4も同様に訂正する。)

(3)一群の請求項について
訂正前の請求項1?4について、請求項2?4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、上記の訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?4は、一群の請求項である。そして、本件訂正は、その一群の請求項ごとに請求がされたものである。

2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1及び2について
ア 訂正の目的
訂正事項1及び2は、請求項1に記載の「ポリエーテルポリオールP1」の「アルキレンオキサイド付加体」及び「アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール」の「アルキレンオキサイド付加体」を、その下位概念である「エチレンオキサイド付加体」にするものであるから、訂正事項1及び2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1及び2による訂正は、上記「アルキレンオキサイド付加体」を、【0016】に記載の「エチレンオキサイド付加体」、並びに、実施例1?7の「ポリオールD」、「ポリオールE」及び「ポリオールF」の「エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール・・・(EO付加物あり)」に基づいて訂正するものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正の請求に関するまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1及び2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6626674号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?4に記載される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくともポリオール化合物及び発泡剤を含有し、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と混合して発泡硬化させて硬質ポリウレタンフォームを形成する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、
前記発泡剤が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含有し、
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HFO-1233zd又は1233zd(E))と、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234ze)からなる群から選択される第2の成分とから実質的に構成される共沸混合物、または共沸混合物様の組成物の形態で含有されてはなく、
前記ポリオール化合物が、アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1を含有し、
前記ポリオール化合物が、前記ポリエーテルポリオールP1に加えて、マンニッヒ系化合物を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP2を含有し、
前記ポリオール化合物が、芳香族ジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有してなく、
前記ポリオール化合物が、アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有し、
前記ポリエーテルポリオールP1の含有量が、前記ポリオール化合物中15重量%以上50重量%以下である、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールP1の含有量と前記ポリエーテルポリオールP2の含有量の合計が、前記ポリオール化合物中15重量%超100重量%以下である、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
前記アルキレンオキサイド付加体が、エチレンオキサイド付加体である、請求項1又は2に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項4】
イソシアネート成分とポリオール組成物とを混合して発泡、硬化させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリオール組成物が、請求項1?3のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物である、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。」
(以下、請求項1?4に係る発明を、順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

第4 取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件発明1?4は,下記(1)?(3)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1?14に係る特許は,特許法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(4)の甲第1号証?甲第3号証(以下,単に「甲1」等という。)を提出する。

(1)申立理由1a(甲1の「本発明B」を主とする進歩性)及び申立理由1b(甲1の「本発明C」を主とする進歩性)
請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(委任省令要件)
本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)証拠方法
甲第1号証:国際公開第2012/105657号
甲第2号証:特開2006-16562号公報
甲第3号証:「EXCENOL 500ED」 旭硝子株式会社、AGC 安全データシート(SDS)、2013年10月7日作成
(以下、甲第1号証?甲第3号証を、順に「甲1」等という。)

2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(新規性)
請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(進歩性 申立理由1bと同旨)
請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

比較例5のポリオール組成物は、本件訂正前の本件発明1の具体例であるが、調製後に40℃で28日保管したものを用いて製造した硬質ポリウレタンフォームは、硬化不良が起こり、フォームが収縮しており、本件発明1の課題を解決するものであるとは解せない。
(4)取消理由4(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

本件発明1の「アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1」、及び「アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール」は、これらが互いに異なる成分であるとも、上記「ポリエーテルポリオールP1」の一部又は全部が上記「アルキレンジアミン」を開始剤とするポリエーテルポリオールであるとも解することができるから、明確でない。

第5 当審の判断
当審は、以下に述べるとおり、当審が通知した取消理由1?4及び申立人がした申立理由1?3のいずれによっても、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできないと判断する。申立理由1b(甲1の本発明Cを主とする理由)と取消理由2は同旨であるから、これらを併せて検討する。

1 取消理由通知書に記載した取消理由について
(1)取消理由1(新規性)及び2(進歩性)、並びに申立理由1b(進歩性)
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「[請求項10] 連続ボード成形法により、ポリオール組成物(Pb)とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応、発泡させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法であって、
前記ポリオール組成物(Pb)が下記ポリオール(Ab)を5?99.998質量%、ポリマー粒子を0.002?30質量%含み、該ポリオール組成物(Pb)の平均水酸基数が2?8、平均水酸基価が100?800mgKOH/gであり、前記発泡剤が下式(I)で表されるハイドロフルオロオレフィン類(I)
R^(1)CH=CHR^(2) …(I)
(式中、R^(1)は炭素数1?6のペルフルオロアルキル基であり、R^(2)は炭素数1?6のペルフルオロアルキル基またはハロゲン原子である。)を含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(Ab):フェノール類および/または芳香族アミン類と、アルデヒド類と、アルカノールアミン類とを反応させて得られるマンニッヒ縮合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール。
・・・
[請求項12] 前記ポリオール組成物(Pb)が、下記ポリオール(Bb)を20?70質量%含む、請求項10または11に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(Bb):脂肪族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール。
[請求項13] 前記ポリオール組成物(Pb)が、下記ポリオール(Cb)を20?60質量%含む、請求項10?12のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(Cb):芳香族アミン(マンニッヒ縮合物を除く)を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール。
・・・
[請求項14] 前記ポリマー粒子が、ポリマー分散ポリオール(Wb)由来のポリマー粒子であり、
前記ポリオール組成物(Pb)がポリマー分散ポリオール(Wb)を0.01?50質量%含む、請求項10?13のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
・・・
[請求項16] 前記ハイドロフルオロオレフィン類(I)が、E-CF_(3)CH=CHClを含む、請求項10?14のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。」

(イ)「[請求項17] ポリオール組成物(Pc)とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法であって、
前記ポリオール組成物(Pc)が下記ポリオール(Ac)を20?99.998質量%、ポリマー粒子を0.002?30質量%含み、該ポリオール組成物(Pc)の平均水酸基数が2?8、平均水酸基価が100?800mgKOH/gであり、前記発泡剤が下式(I)で表されるハイドロフルオロオレフィン類(I)
R^(1)CH=CHR^(2) …(I)
(式中、R^(1)は炭素数1?6のペルフルオロアルキル基であり、R^(2)は炭素数1?6のペルフルオロアルキル基またはハロゲン原子である。)を含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(Ac):フェノール類、アルデヒド類、およびアルカノールアミン類を反応させて得られるマンニッヒ縮合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール。
・・・
[請求項19] 前記ポリオール組成物(Pc)が、下記ポリオール(Bc)を0質量%超、70質量%以下含む、請求項17または18に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(Bc):アミン化合物(マンニッヒ縮合物を除く)を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール。
・・・
[請求項22] 前記ポリマー粒子が、ポリマー分散ポリオール(Wc)由来のポリマー粒子であり、前記ポリオール組成物(Pc)がポリマー分散ポリオール(Wc)を含む、請求項17?21のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
・・・
[請求項24] 前記ハイドロフルオロオレフィン類(I)が、E-CF_(3)CH=CHClを含む、請求項17?23のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。」

(ウ)「[0075] <本発明Bについての説明>
本発明Bにおける「ポリオール組成物(Pb)」とは、ポリイソシアネート化合物との反応に用いるポリオール(ポリマー分散ポリオールを含む)の全部の混合物である。
本発明Bにおける「ポリオールシステム液」とは、ポリイソシアネート化合物と反応させる相手の液であり、ポリオール組成物(Pb)のほかに発泡剤、整泡剤、触媒等、必要に応じた配合剤を含む液である。
本発明Bにおける「発泡原液組成物」とは、ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物と、任意に残りの成分とを混合した液である。
本発明Bにおける「マンニッヒ縮合物」とは、一般に芳香族アミン類、フェノール類等の芳香族化合物と、アルデヒド類と、アミン類とを縮合反応(以下、マンニッヒ縮合反応ということもある。)させて得られる化合物を意味する。
本発明Bにおける「ポリマー分散ポリオール」とは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール等のベースポリオール(Wb’)中で、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させてポリマー粒子を形成することによって得られるもので、該ベースポリオール(Wb’)中に該ポリマー粒子を分散させたポリオール(Wb)である。」

(エ)「[0076] [ポリオール(Ab)]
本発明Bにおけるポリオール組成物(Pb)は、ポリオール(Ab)を含む。
ポリオール(Ab)は、フェノール類および/または芳香族アミン類と、アルデヒド類と、アルカノールアミン類とを、反応させて得られるマンニッヒ縮合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール(マンニッヒポリオール)である。該マンニッヒポリオールは難燃性向上にも寄与する。
・・・
[0082] 開始剤として用いるマンニッヒ縮合物は、上記フェノール類および/または芳香族アミン類と、アルデヒド類と、アルカノールアミン類とをマンニッヒ縮合反応させて得られる反応生成物である。該反応生成物には反応後に残存する未反応物も含まれるものとする。マンニッヒ縮合反応は公知の方法で実施できる。
マンニッヒ縮合反応に用いる原料において、フェノール類と芳香族アミン類の合計の1モルに対する、アルデヒド類の割合は0.3モル以上3モル以下が好ましい。該アルデヒド類の割合が上記範囲の下限値以上であると、硬質フォームの良好な寸法安定性が得られやすい。上限値以下であると低粘度のマンニッヒポリオールを得やすくなる。また、マンニッヒポリオールの粘度がより低くなりやすい点では、0.3モル以上0.9モル未満が好ましく、得られる硬質フォームの強度の点からは0.9モル以上1.5モル以下がより好ましい。
[0083] マンニッヒ縮合反応に用いる原料において、アルデヒド類の1モルに対する、アルカノールアミン類の割合は0.7モル以上12モル以下が好ましい。該アルカノールアミン類の割合が上記範囲の下限値以上であると、良好な強度の硬質フォームが得られやすい。上限値以下であると良好な難燃性の硬質フォームが得られやすい。また、得られる硬質フォームの難燃性の点からは、0.7モル以上5モル以下が好ましい。低粘度のマンニッヒポリオールを得る点からは、0.7モル以上5モル以下が好ましく、0.7モル以上3.5モル以下が特に好ましい。
[0084] マンニッヒポリオールの製造に用いるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド(以下、EOともいう。)、プロピレンオキシド(以下、POともいう。)、およびブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
EOおよび/またはPOを使用する場合、以下のいずれの方法を用いてもよい。
(1)EOを単独で開環付加重合する方法。
(2)POを単独で開環付加重合する方法。
(3)POとEOの混合物を開環付加重合する方法。
(4)上記(1)?(3)の方法を任意に組み合わせて開環付加重合する方法。
[0086] 開始剤の活性水素原子にアルキレンオキシドを反応させることにより、アルキレンオキシドが開環付加してオキシアルキレン基を有するポリオールが生成する。活性水素原子に1分子のアルキレンオキシドが開環付加することによりヒドロキシアルキル基が生成し、また、その水酸基に引き続きアルキレンオキシドが開環付加し、この反応が繰り返されてオキシアルキレン基の連鎖が生成する。アルキレンオキシドがEOの場合は、オキシエチレン基が連鎖し、アルキレンオキシドがPOの場合は、オキシプロピレン基が連鎖する。
開始剤に付加するアルキレンオキシドの付加量は、マンニッヒ縮合反応に使用するフェノール類と芳香族アミン類の合計の1モルに対して2?30モルが好ましく、4?20モルが特に好ましい。アルキレンオキシドの付加量が上記範囲の下限値以上であると、生成するマンニッヒポリオールの水酸基価および粘度が低くなりやすい。上記範囲の上限値以下であると、硬質フォームの収縮を抑えやすい。
[0086] ポリオール(Ab)の水酸基価は100?800mgKOH/gが好ましく、200?700mgKOH/gがより好ましく、250?650mgKOH/gが特に好ましい。
ポリオール(Ab)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、得られる硬質フォームの強度が確保し易く、良好な寸法安定性が得られやすいため好ましい。一方、上記範囲の上限値以下であると、マンニッヒポリオール中に存在するアルキレンオキシド由来のオキシアルキレン鎖の量が増え、マンニッヒポリオールの粘度が下がりやすく好ましい。また、製造される硬質フォームの脆さが抑制され、基材との接着性が出やすく、圧縮強度も向上する。
[0087] ポリオール組成物(Pb)におけるポリオール(Ab)の含有量は、5?100質量%であり、5?80質量%が好ましく、5?60質量%がより好ましく、5?50質量%が特に好ましい。ポリオール(Ab)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると、接着性および難燃性が良好な硬質フォームが得られる。上記範囲の上限値以下であると、ポリオールシステム液の粘度が高くなりすぎず、取り扱いが容易である。」

(オ)「[0088] [ポリオール(Bb)]
ポリオール(Bb)は、脂肪族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。
ポリオール組成物(Pb)は、ポリオール(Ab)のほかにポリオール(Bb)を含むことが好ましい。ポリオール(Bb)はポリオールシステム液の低粘度化と反応性の向上に寄与する。ポリオール(Bb)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0089] 開始剤である脂肪族アミンは、活性水素原子数が2?4の脂肪族アミンが好ましい。具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン等のアルキルアミン類が挙げられる。これらのうち、エチレンジアミンが好ましい。
ポリオール(Bb)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が例示できる。少なくとも、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドを含むことが好ましく、少なくともプロピレンオキシドを含むことが特に好ましい。
[0090] 具体的には、プロピレンオキシド単独の使用、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの併用が好ましい。併用する場合、エチレンオキシドとプロピレンオキシドは、混合してから反応させても、順次反応させてもよい。
エチレンオキシドを用いる場合、ポリオール(Bb)の製造に用いるアルキレンオキシドの全量中における、エチレンオキシドの含有量(以下、全エチレンオキシド含有量、または全EO含有量ともいう。)は5?55質量%が好ましく、10?50質量%がより好ましく、15?45質量%が特に好ましい。該全EO含有量が上記範囲の下限値以上であると、ポリオールの粘度が高くなりすぎず、取り扱いが容易である。上記範囲の上限値以下であると、反応が速くなりすぎず、発泡反応の制御がしやすい。
なお、本明細書では、プロピレンオキシドを開環付加重合させた後に、エチレンオキシドを開環付加重合させる場合など異なるアルキレンオキシドを順番に開環付加重合していく場合に、アルキレンオキシドの全量中のうち、最後に開環付加重合させたエチレンオキシドの割合を、末端のEO含有量(単位:質量%)ともいう。
・・・
[0092] ポリオール組成物(Pb)におけるポリオール(Bb)の含有量は、20?70質量%が好ましく、25?65質量%がより好ましく、30?60質量%が特に好ましい。ポリオール(Bb)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると、ポリオール組成物(Pb)と、ハイドロフルオロオレフィン類(I)との相溶性が向上し、ポリオールシステム液の分離が抑制される。また、成形時のキュアー性も良好となる。上記範囲の上限値以下であると、ポリオールシステム液の分離が抑制される。」

(カ)「[0093] [ポリオール(Cb)]
ポリオール(Cb)は、芳香族アミン(マンニッヒ縮合物を除く)を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。ポリオール(Cb)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0094] 開始剤である芳香族アミンとしては、活性水素原子数が4?12の、芳香環を有するアミン類を用いることが好ましい。その具体例としては、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
これらの開始剤のうち低い熱伝導率が得られる点から、トリレンジアミンが特に好ましい。トリレンジアミンはo-トリレンジアミンでもよく、m-トリレンジアミンでもよい。
[0095] ポリオール(Cb)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が例示できる。少なくともエチレンオキシドを含むことが好ましく、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの併用が好ましい。エチレンオキシドとプロピレンオキシドは、混合してから反応させても、順次反応させてもよい。
ポリオール(Cb)の製造に用いるアルキレンオキシドの全量中における、エチレンオキシドの含有量(全EO含有量)は0?60質量%が好ましく、0?45質量%がより好ましく、0?30質量%が特に好ましい。該全EO含有量が上記範囲の上限値以下であると、適度な反応性を有するため成形性が良好となる。
・・・
[0097] ポリオール組成物(Pb)におけるポリオール(Cb)の含有量は、20?60質量%が好ましく、30?55質量%がより好ましく、30?50質量%が特に好ましい。ポリオール(Cb)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると、熱伝導率が良好となる。上記範囲の上限値以下であると、ポリオールシステム液の粘度上昇が抑制され取り扱いが容易で、かつ硬質フォームの発泡・成形時の流動性が良好となる。」

(キ)「[0111] <本発明Cについての説明>
本発明Cにおける「ポリオール組成物(Pc)」とは、ポリイソシアネート化合物との反応に用いるポリオール(ポリマー分散ポリオールを含む)の全部の混合物である。
本発明Cにおける「ポリオールシステム液」とは、ポリイソシアネート化合物と反応させる相手の液であり、ポリオール組成物(Pc)のほかに発泡剤、整泡剤、触媒等、必要に応じた配合剤を含む液である。
本発明Cにおける「マンニッヒ縮合物」とは、一般にアニリン、フェノール類等の芳香族化合物と、アルデヒド類と、アミン類とを縮合反応(以下、マンニッヒ縮合反応ということもある。)させて得られる化合物を意味する。
本発明Cにおける「ポリマー分散ポリオール」とは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール等のベースポリオール(Wc’)中で、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させてポリマー粒子を形成することによって得られるもので、該ベースポリオール(Wc’)中に該ポリマー粒子を分散させたポリオール(Wc)である。」

(ク)「[0112][ポリオール(Ac)]
本発明Cにおけるポリオール組成物(Pc)は、ポリオール(Ac)を含む。
ポリオール(Ac)は、フェノール類とアルデヒド類とアルカノールアミン類とを反応させて得られるマンニッヒ縮合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール(マンニッヒポリオール)である。該マンニッヒポリオールは難燃性向上にも寄与する。」
・・・
[0118] マンニッヒポリオールの製造に用いるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド(以下、EOともいう。)、プロピレンオキシド(以下、POともいう。)、およびブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。該アルキレンオキシドがエチレンオキシドを含むことが好ましく、エチレンオキシドのみ、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組み合わせがより好ましい。
EOおよび/またはPOを使用する場合、以下のいずれの方法を用いてもよい。
(1)EOを単独で開環付加重合する方法。
(2)POを単独で開環付加重合する方法。
(3)POとEOの混合物を開環付加重合する方法。
(4)上記(1)?(3)の方法を任意に組み合わせて開環付加重合する方法。
[0119] 開始剤に付加するアルキレンオキシドの付加量は、マンニッヒ縮合反応に使用するフェノール類の1モルに対して2?30モルが好ましく、4?20モルが特に好ましい。アルキレンオキシドの付加量が上記範囲の下限値以上であると、生成するマンニッヒポリオールの水酸基価および粘度が低くなりやすい。上記範囲の上限値以下であると、硬質フォームの収縮を抑えやすい。
開環付加重合反応に使用するアルキレンオキシドの全量中における、エチレンオキシドの含有量(以下、全エチレンオキシド含有量、または全EO含有量ともいう。)が10?100質量%が好ましく、20?100質量%が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であるとマンニッヒポリオールの粘度が低くなりやすく、ポリオール組成物(Pc)の粘度およびポリオールシステム液の粘度を低くする上で好ましい。
なお、ポリオール(Ac)して、複数種のマンニッヒポリオールを組み合わせて用いる場合、上記全EO含有量は、ポリオール(Ac)全体としての値である。
[0120] 開始剤の活性水素原子にアルキレンオキシドを反応させることにより、アルキレンオキシドが開環付加してオキシアルキレン基を有するポリオールが生成する。活性水素原子に1分子のアルキレンオキシドが開環付加することによりヒドロキシアルキル基が生成し、また、その水酸基に引き続きアルキレンオキシドが開環付加し、この反応が繰り返されてオキシアルキレン基の連鎖が生成する。
・・・
[0122] ポリオール組成物(Pc)におけるポリオール(Ac)の含有量は、20?100質量%であり、20?70質量%が好ましく、25?60質量%がより好ましく、30?60質量%がさらに好ましく、30?50質量%が特に好ましい。ポリオール(Ac)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると、接着性および難燃性が良好な硬質フォームが得られる。上記範囲の上限値以下であるとポリオールシステム液の粘度が高くなりすぎず取り扱いが容易である。」

(ケ)「[0123][ポリオール(Bc)]
ポリオール(Bc)は、アミン化合物(マンニッヒ縮合物を除く)を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。ポリオール(Bc)はウレタン化反応の初期の活性を高める効果に寄与する。ポリオール(Bc)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
開始剤であるアミン化合物の活性水素原子数は2?6が好ましく、3?6がより好ましく、3?4が特に好ましい。
[0124] 開始剤であるアミン化合物としては、アルカノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、アルキルアミン類(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)等の脂肪族アミン化合物;N-アミノメチルピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジンなどの飽和環状アミン化合物;アニリン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族アミン化合物(マンニッヒ縮合物を含まない)が挙げられる。ウレタン化反応の初期の活性を高める効果の点から、脂肪族アミン化合物または飽和環状アミン化合物が好ましい。
[0125] ポリオール(Bc)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が例示できる。プロピレンオキシド単独の使用、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの併用が好ましい。併用する場合、エチレンオキシドとプロピレンオキシドは、混合してから反応させても、順次反応させてもよい。
[0126] ポリオール(Bc)の水酸基数は2?6が好ましく、3?6がより好ましく、3?4が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると硬質フォームの収縮を抑制し、上限値以下であると粘度が適度な範囲となり、取り扱いが容易である。
ポリオール(Bc)の水酸基価は100?800mgKOH/gが好ましく、200?600mgKOH/gがより好ましく、300?500mgKOH/gが特に好ましい。ポリオール(Bc)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、硬質フォームの強度が向上し、収縮が抑制されて寸法安定性が向上する。上記範囲の上限値以下であると、粘度が高くなりすぎず取り扱いが容易である。
[0127] 本発明Cにおいて、ポリオール(Bc)は必須ではないが、ポリオール(Bc)を用いる場合、ポリオール組成物(Pc)におけるポリオール(Bc)の含有量は、0質量%超、70質量%以下が好ましく、1?40質量%がより好ましく、3?35質量%がさらに好ましく、3?30質量%が特に好ましい。ポリオール(Bc)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると、硬質フォームの収縮が抑制されて、良好な寸法安定性が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると硬質フォームの成形時において良好な硬化特性(キュアー性)を確保しやすい。」

(コ)「[0136][ポリマー分散ポリオール(Wc)]
ポリオール組成物(Pc)はポリマー粒子を含有する。具体的には、ベースポリオール(Wc’)中にポリマー粒子が分散しているポリマー分散ポリオール(Wc)を調製し、該ポリマー分散ポリオール(Wc)をポリオール組成物(Pc)に含有させることが好ましい。
ポリオール組成物(Pc)中にポリマー粒子を存在させることにより、硬質フォームの収縮を抑制して、寸法安定性を向上させることができる。この効果は、より低密度の硬質フォームを製造する際に、特に有用である。ポリマー分散ポリオール(Wc)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
[0137] ポリオール組成物(Pc)全体におけるポリマー粒子の含有量は0.002?30質量%が好ましく、0.02?20質量%がより好ましく、0.02?10質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、断熱性能を維持しながら、得られる硬質フォームの収縮を効果的に抑制できる。また、常温の貯蔵安定性および高温の貯蔵安定性が良好となる。
本発明Cにおけるポリマー分散ポリオール(Wc)については好ましい態様を含め、発明Aにおけるポリマー分散ポリオール(Wa)と同様である。
本発明Cにおけるポリマー分散ポリオール(Wc)の製造におけるベースポリオール(Wc’)については好ましい態様を含め、発明Aにおけるベースポリオール(Wa’)と同様である。またベースポリオール(Wc’)は、前記ポリオール(Ac)?(Cc)のいずれかと同じであってもよい。」

(サ)「[0139]<ポリオール組成物(Pc)>
ポリオール組成物(Pc)は、ポリオール(Ac)と、ポリマー粒子を含み、さらにポリオール(Bc)、ポリオール(Cc)、ポリオール(Dc)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。任意にその他ポリオール(Ec)を含んでもよい。ポリマー粒子はポリマー分散ポリオール(Wc)由来であることが好ましい。 ポリオール組成物(Pc)全体としての平均水酸基数は2?8であり、2.5?7.5が好ましい。該平均水酸基数が上記範囲の下限値以上であると、硬質フォームの収縮が抑制され、寸法安定性が良好になる。上限値以下であると、ポリオールシステム液の粘度が適度となり成形性が良好となる。 ポリオール組成物(Pc)全体としての平均水酸基価は100?800mgKOH/gであり、150?700が好ましく、200?600がより好ましい。 該平均水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、硬質フォームの収縮が抑制され、寸法安定性が良好になる。上限値以下であると、硬質フォームの脆性が抑制される。
[0140] 本発明Cにおいて、ポリオール組成物(Pc)の全部がポリオール(Ac)とポリマー粒子であってもよい。
ポリオール組成物(Pc)のより好ましい組成は以下の通りである。
後述のイソシアヌレート処方で硬質ポリイソシアヌレートフォームを製造する場合の好ましい組み合わせを以下に示す。
(組み合わせ1)ポリオール組成物(Pc)が、ポリオール(A)の30?50質量%と、ポリオール(Bc)の1?30質量%と、ポリオール(Dc)の30?70質量%と、ポリオール(Wc)とからなり、ポリマー粒子の含有量が0.02?7質量%である。
(組み合わせ2)ポリオール組成物(Pc)が、ポリオール(Ac)の30?50質量%と、ポリオール(Bc)の1?30質量%と、ポリオール(Cc)の1?30質量%と、ポリオール(Dc)の10?60質量%と、ポリオール(Wc)とからなり、ポリマー粒子の含有量が0.02?7質量%である。
[0141] 後述のウレタン処方で硬質ポリウレタンフォームを製造する場合の好ましい組み合わせを以下に示す。
(組み合わせ5)ポリオール組成物(Pc)が、ポリオール(Ac)の30?70質量%と、ポリオール(Bc)の10?50質量%と、ポリオール(Cc)の5?30質量%と、ポリオール(Wc)とからなり、ポリマー粒子の含有量が0.02?7質量%である。
(組み合わせ7)ポリオール組成物(Pc)が、ポリオール(Ac)の30?60質量%と、ポリオール(Bc)の10?60質量%と、ポリオール(Cc)の5?20質量%と、ポリオール(Wc)とからなり、ポリマー粒子の含有量が0.02?7質量%である。」

(シ)「[0184] <本発明Bの実施例について>
ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557(1970年版)に準拠して測定した値である。以下の例で用いる各原料は以下の通りである。
[ポリオール(Ab)]
ポリオールAb1:ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、POを開環付加重合させた後、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させて得られた水酸基価が300mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し15.4モルである。付加させたPOとEOとの合計量に対するEOの割合(全EO含有量)は58質量%である。
ポリオールAb2:ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの2.2モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、POを開環付加重合させた後、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させて得られた水酸基価が430mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し6.3モルである。付加させたPOとEOとの合計量に対するEOの割合(全EO含有量)は23質量%である。
[0185] ポリオールAb3:ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、POのみを開環付加重合させて得られた水酸基価が470mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し5.5モルである。
ポリオールAb4:アニリン1モルに対して、フェノール1モル、ホルムアルデヒド0.6モルおよびジエタノールアミン2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、POのみを開環付加重合させて得られた水酸基価が540mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量はアニリンの1モルに対し6.9モルである。
ポリオールAb5:ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、EOのみを開環付加重合させて得られた水酸基価が580mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し2.6モルである。
[0186] [ポリオール(Bb)]
ポリオールBb1:エチレンジアミンにPOを開環付加重合させた後、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は41質量%である。
ポリオールBb2:エチレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールBb3:モノエタノールアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が500mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[0187] [ポリオール(Cb)]
ポリオールCb1:m-トリレンジアミンにEOを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でPO、EOの順にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は25質量%である。また、末端のEO含有量は3質量%である。
ポリオールCb2:m-トリレンジアミンにEOを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でPO、EOの順にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた、水酸基価が350mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は25質量%である。また、末端のEO含有量は11質量%である。
ポリオールCb3:m-トリレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が350mgKOH/のポリエーテルポリオールである。
・・・
[0189] [ポリマー分散ポリオール(Wb)]
ポリオールWb1:下記の製造例1で得られた、平均水酸基価320mgKOH/gのポリマー分散ポリオール。
ポリマー分散ポリオール(Wb)として、下記表1に示す配合で、下記製造例の方法により製造したポリマー分散ポリオールWb1?W6を用いた。表1における配合比の単位は「質量部」である。
・・・
[0191][ベースポリオール(Wb’)]
ベースポリオール(Wb’)としては、下記のポリオールX1、Z1、Z2を用いた。
(ポリオールX1)
グリセリンを開始剤として、EOとPOとをランダムに開環付加重合させて得られた、水酸基価50mgKOH/gのポリエーテルポリオール。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は70質量%である。ポリオールX1の全体におけるEO基の含有量は68質量%である。
(ポリオールY1)
グリセリンを開始剤として、POを開環付加重合して得られた、水酸基価650mgKOH/gのポリエーテルポリオール。(ポリオールY2) エチレンジアミンを開始剤として、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[0192] [製造例1:ポリマー分散ポリオール(Wb1)の製造]
5L加圧反応槽に、表1に示した配合でベースポリオール(Wb’)、モノマー、および重合開始剤としてのAMBNを全て仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させた。モノマーの反応率は80%以上を示した。反応終了後、110℃、20Paで2時間加熱減圧脱気して未反応モノマーを除去し、ポリマー分散ポリオールWb1を得た。
得られたポリマー分散ポリオールWb1の水酸基価、25℃における粘度、およびWb1中のポリマー粒子の含有量を表1に示す(以下、同様。)。
・・・
[0195][表10]

[0196] [ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物1:ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)(日本ポリウレタン工業社製、製品名:ミリオネートMR-200)。
[発泡剤]
発泡剤1:E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペン。
発泡剤2:Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン。
発泡剤3:水。
[難燃剤]
難燃剤1:トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(スプレスタジャパン社製、製品名:ファイロールPCF)。
[触媒]
触媒1:ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー社製、製品名:TOYOCAT DT)。
触媒2:N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン(東ソー社製、製品名:TOYOCAT MR)。
触媒3:オクチル酸カリウム塩(日本化学産業社製、製品名:プキャット15G)。
ウレタン化触媒1:触媒1/触媒2の1/3(質量比)の混合物。
[整泡剤]
整泡剤1:シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング社製、製品名:SH-193)。
[0197] <例1?16、21?34>
表2、3、6および7に示す配合で自由発泡フォームおよびパネルフォームのサンプルを製造した。表2および3はポリウレタンフォームの配合(ウレタン処方)、表6および7はポリイソシアヌレートフォームの配合(イソシアヌレート処方)である。例3?4、11?24、33?34、37?38、41?57は実施例、例1?2、5?10、25?32、35?36、39?40、58?59は比較例である。
表に示した配合の数値の単位は質量部である。ただしポリイソシアネート化合物の配合量はイソシアネート指数(INDEX)で表す。表にポリオール組成物(Pb)の全体における平均水酸基数および平均水酸基価を示す。以下において、発泡方向を厚さ方向とする。
[0198] [発泡原液組成物の調製]
各例の配合のうち、ポリイソシアネート化合物を除く各成分の所定量をプラスチック製容器に量り取り、撹拌羽根付のミキサーを用い、毎分3,000回転で30秒間撹拌・混合し、ポリオールシステム液を調製した。該ポリオールシステム液の液温を25℃に保温する。
これとは別に、ポリイソシアネート化合物の所定量をプラスチック容器に量り取り、液温を20℃に保温する。
該ポリイソシアネート化合物を上記ポリオールシステム液に投入し、ミキサーを用いて、毎分3,000回転で5秒間撹拌・混合して発泡原液組成物を調製する。
・・・
[0201] パネルフォームの製造においては、予め金型1を60℃に温度調整しておき、上記手順で発泡原液組成物を調製した後、直ちに、下型2内の投入位置6に投入する。投入量は、発泡後に金型容積(800mm×400mm×40mm)が丁度満たされた状態となる量(ジャストパック)とする。投入位置6は、縦方向(X)に垂直な側面2bの近傍における、底面2aの横方向(Y)の中央部である。投入位置6に投入された発泡原液組成物は、底面2a上を側部開口部5に向かって、縦方向(X)に沿って流れる。全量を投入した直後に、上蓋3を閉じて発泡させ、パネルフォームを製造する。なお、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合開始時刻を0秒とし、10分後に、上蓋3を開放して製品(パネルフォーム)を取り出す。」

(ス)「[0207]
[表11]

・・・
[0210]
[表14]



(セ)「[0219] <本発明Cの実施例について>
(実施例3)
以下に、実施例を用いて本発明Cをさらに詳しく説明するが、本発明Cはこれら実施例に限定されるものではない。ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557(1970年版)に準拠して測定した値である。
以下の例で用いた各原料は以下の通りである。
[ポリオール(Ac)]
ポリオールAc1:ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、POを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でEOを開環付加重合させて得られた水酸基価が300mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し15.4モルである。付加させたPOとEOとの合計量に対するEOの割合は58質量%である。
・・・
[0221]
[ポリオール(Bc)]
ポリオールBc1:エチレンジアミンにPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
・・・
[0222]
[ポリオール(Dc)]
ポリオールDc1:ジエチレングリコールとテレフタル酸とを重縮合して得られた、平均水酸基数が2、水酸基価が250mgKOH/gのポリエステルポリオール(製品名:Terol 563、オキシド社製)。」

(ソ)「[0226]
[ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物1:ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、(製品名:コロネート1130、日本ポリウレタン工業社製、イソシアネート基含有率:31質量%)。
ポリイソシアネート化合物2:ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、(製品名:ミリオネート MR-200、日本ポリウレタン工業社製、イソシアネート基含有率:31質量%)
[発泡剤]
発泡剤1:E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペン。
発泡剤2:Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン。
発泡剤3:水。
[0227]
[触媒]
触媒1:ウレタン化触媒(1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、製品名:ポリキャット41、エアプロダクツ社製)。
触媒2:第4級アンモニウム塩とエチレングリコールの混合物(製品名:TOYOCAT TRX、東ソー社製)。
触媒3:ウレタン化触媒(N,N,N’,N’,-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、製品名:TOYOCAT MR、東ソー社製)。
触媒4:ウレタン化触媒(トリエチレンジアミン、製品名:TEDA-L33、東ソー社製)。
触媒5:三量化反応促進触媒(オクチル酸カリウム塩、製品名:プキャット15G、日本化学産業社製)。
[整泡剤]
整泡剤1:シリコーン系整泡剤(製品名:SH-193、東レ・ダウコーニング社製)。
[難燃剤]
難燃剤1:トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(製品名:ファイロールPCF、スプレスタジャパン社製)。」

(タ)「[0228] <製造例1:ポリマー分散ポリオール(Wc1)の製造>
5L加圧反応容器に、下記ポリエーテルポリオール(X1)の300質量部、下記ポリエーテルポリオール(Y1)の150質量部、下記ポリエーテルポリオール(Y2)の300質量部、アクリロニトリルの50質量部、酢酸ビニルの200質量部、および重合開始剤として2,2-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(AMBN)の10質量部を仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させた。モノマーの反応率は80%以上を示した。反応終了後、110℃、マイナス0.10MPa(ゲージ圧力)で2時間加熱減圧脱気して未反応モノマーを除去し、ポリマー分散ポリオール(ポリオールWc1)を得た。
得られたポリマー分散ポリオールWc1の水酸基価、25℃における粘度、およびWc1中のポリマー粒子の含有量を表1に示す(以下、同様。)。
[0232] ポリエーテルポリオール(X1):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下、POとEOとをランダムに付加して得られる、水酸基価が50mgKOH/g、オキシエチレン基含有量70質量%のポリエーテルポリオール。
ポリエーテルポリオール(Y1):エチレンジアミンを開始剤として、POのみを付加して得られる、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリエーテルポリオール(Y2):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下、POのみを付加して得られる、水酸基価が650mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリマー分散ポリオールの平均水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に従って測定した。
[0233]<例1?52:硬質フォームの製造および評価>
例1?2、例5?6、9?24、27?28、31?46、49?50は実施例、例3?4、7?8、21?22、25?26、47?48、51?52は比較例である。例1?24はポリイソシアヌレートフォームの配合(イソシアヌレート処方)、例25?52はポリウレタンフォームの配合(ウレタン処方)である。
表2?6に示す配合で硬質フォームを製造した。表に示した配合の数値の単位は質量部である。ポリイソシアネート化合物の配合量はポリオールシステム液と同じ体積を用いる。ポリイソシアネート化合物は、例1?24においてはポリイソシアネート化合物1を用い、例25?52においてはポリイソシアネート化合物2を用いる。表にポリオール組成物(Pc)の全体における平均水酸基数および平均水酸基価を示す。
まず、各ポリオール、触媒、整泡剤、混合発泡剤および発泡剤4(水)の所定量を混合してポリオールシステム液を調製した。ポリオールシステム液およびポリイソシアネート化合物の液温を、それぞれ10℃に調整する。」

(チ)「[0241]
[表22]

[0242]
[表23]
表3

・・・
[0246][表27]
・・・

[0247]
[表28]
・・・



イ 甲1に記載された発明
甲1には、「本発明C」である、請求項17、請求項19及び請求項22を引用する請求項24に記載された硬質発泡合成樹脂を製造する方法が記載されており、当該方法は次のとおりのものである。
「ポリオール組成物(Pc)とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法であって、
前記ポリオール組成物(Pc)が、
ポリオール(Ac):フェノール類、アルデヒド類、およびアルカノールアミン類を反応させて得られるマンニッヒ縮合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール(Ac) 20?99.998質量%、
ポリオール(Bc):アミン化合物(マンニッヒ縮合物を除く)を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール 0質量%超70質量%以下、
ポリマー粒子:ポリマー分散ポリオール(Wc)由来のポリマー粒子 0.002?30質量%、を含み、
該ポリオール組成物(Pc)の平均水酸基数が2?8、平均水酸基価が100?800mgKOH/gであり、前記発泡剤がE-CF_(3)CH=CHClを含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法」

そして、甲1には、[0111]?[0150]、[0219]?[0222]、[0226]?[0228]及び表22?31に、「本発明C」である上記製造方法の詳細が記載され、上記製造方法の具体例である例1(表22)として、質量部で、ポリオール(Ac1)を31.5部、ポリオール(Bc1)を5部、ポリオール(Dc1)を60部、ポリオール(Wc1)を3.5部からなるポリオール組成物(Pc)と、E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペン(発泡剤1)を37.5部、水(発泡剤3)を1.5部、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(難燃剤1)を20部、ウレタン化触媒である1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン(触媒1)を2部、第4級アンモニウム塩とエチレングリコールの混合物(触媒2)を2部、三量化反応促進触媒であるオクチル酸カリウム塩(触媒5)を4部、シリコーン系整泡剤(整泡剤1)を1.5部の量で混合した硬質フォーム用ポリオールシステム液を調製したことが記載されている。
ここで、上記ポリオール(Ac1)は、[0219]によると、ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、POを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でEOを開環付加重合させて得られた水酸基価が300mgKOH/gのポリエーテルポリオール(アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し15.4モルであり、付加させたPOとEOとの合計量に対するEOの割合は58質量%である)であり、上記反応生成物は、[0112]によると、マンニッヒ縮合物であると解される。
また、上記ポリオール(Bc1)は、[0221]によると、エチレンジアミンにPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオールであり、上記ポリオール(Dc1)は、[0222]によると、ジエチレングリコールとテレフタル酸とを重縮合して得られた、平均水酸基数が2、水酸基価が250mgKOH/gのポリエステルポリオールである。
そして、上記ポリマー分散ポリオール(Wc1)は、[0228]及び[0232]によると、ポリエーテルポリオールX1(グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下、POとEOとをランダムに付加して得られる、水酸基価が50mgKOH/g、オキシエチレン基含有量70質量%のポリエーテルポリオール)の300質量部、ポリエーテルポリオールY1(エチレンジアミンを開始剤として、POのみを付加して得られる、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール)の150質量部、ポリエーテルポリオールY2(グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下、POのみを付加して得られる、水酸基価が650mgKOH/gのポリエーテルポリオール)の300質量部、アクリロニトリルの50質量部、酢酸ビニルの200質量部、および重合開始剤として2,2-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(AMBN)の10質量部を仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させて得られたものである。
そして、甲1の[0233]及び[0235]には、上記硬質フォーム用ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とをスプレー発泡機を用いて基材に吹き付け、発泡、反応させて、硬質フォームを製造する方法が記載されている。

そうすると、甲1には、上記例1に着目して、次の発明が記載されているといえる。
「質量部で、
ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物であるマンニッヒ縮合物を開始剤として、POを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でEOを開環付加重合させて得られた水酸基価が300mgKOH/gのポリエーテルポリオール(Ac1)(アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し15.4モルであり、付加させたPOとEOとの合計量に対するEOの割合は58質量%である)を31.5部、
エチレンジアミンにPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール(Bc1)を5部、
ジエチレングリコールとテレフタル酸とを重縮合して得られた、平均水酸基数が2、水酸基価が250mgKOH/gのポリエステルポリオール(Dc1)を60部、
ポリエーテルポリオールX1(グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下、POとEOとをランダムに付加して得られる、水酸基価が50mgKOH/g、オキシエチレン基含有量70質量%のポリエーテルポリオール)の300質量部、ポリエーテルポリオールY1(エチレンジアミンを開始剤として、POのみを付加して得られる、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール)の150質量部、ポリエーテルポリオールY2(グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下、POのみを付加して得られる、水酸基価が650mgKOH/gのポリエーテルポリオール)300質量部、アクリロニトリル50質量部、酢酸ビニル200質量部、および重合開始剤として2,2-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(AMBN)10質量部を仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させて得られたものであるポリマー分散ポリオール(Wc1)を3.5部、からなるポリオール組成物(Pc)と、
発泡剤であるE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペンを37.5部及び水を1.5部と、
難燃剤であるトリス(β-クロロプロピル)ホスフェートを20部と、
触媒である、ウレタン化触媒としての1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジンを2部、第4級アンモニウム塩とエチレングリコールの混合物を2部、及び、三量化反応促進触媒としてのオクチル酸カリウム塩を4部と、シリコーン系整泡剤1.5部とを混合した、ポリイソシアネート化合物と反応させて硬質フォームを製造するための硬質フォーム用ポリオールシステム液」(以下、「甲1発明1」という。)

「甲1発明1のポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とをスプレー発泡機を用いて基材に吹き付け、発泡、反応させて硬質フォームを製造する方法」(以下、「甲1発明2」という。)

ウ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1を対比する。
a 甲1の[0090]によると、プロピレンオキシドを開環付加重合させた後に、エチレンオキシドを開環付加重合させる場合に、アルキレンオキシドの全量中のうち、最後に開環付加重合させたエチレンオキシドの割合が末端のEO含有量であるから、甲1発明1の「ポリエーテルポリオール(Ac1)」における「EOを開環付加重合させて」は、本件発明1の「末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有する」に相当し、甲1発明1の「マンニッヒ縮合物」は、本件発明1の「マンニッヒ系化合物」に相当するから、甲1発明1の「ポリエーテルポリオール(Ac1)」は本件発明1の「ポリエーテルポリオールP2」に相当する。
b 甲1発明1は、芳香族ジアミンを開始剤とするポリエーテルポリオールを含まないものである。
c 甲1発明1の「発泡剤であるE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペン」は、本件発明1の「前記発泡剤が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペンを含有し」に相当し、本件発明1の「共沸混合物、または共沸混合物様の組成物の形態で含有されてはな」いものである。
d 甲1発明1の「ポリエーテルポリオール(Bc1)」は、「エチレンジアミン」を開始剤とすることは明らかであり、「エチレンジアミンにPOのみを開環付加重合させて」は、上記aで述べたように、末端に少なくとも1つのPO(プロピレンオキサイド)付加体を有するものである。また、本件発明1の「エチレンオキサイド」は、甲1発明1の「アルキレンオキサイド」の下位概念である。これらのことから、甲1発明1と本件発明1とは、「アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール」及び「アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール」を含有する点で共通するものである。
e 甲1発明1の「ポリイソシアネート化合物」及び「硬質フォーム」は、それぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分」及び「硬質ポリウレタンフォーム」に相当する。

f そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、
「少なくともポリオール化合物及び発泡剤を含有し、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と混合して発泡硬化させて硬質ポリウレタンフォームを形成する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、
前記発泡剤が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含有し、
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HFO-1233zd又は1233zd(E))と、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234ze)からなる群から選択される第2の成分とから実質的に構成される共沸混合物、または共沸混合物様の組成物の形態で含有されてはなく、
前記ポリオール化合物が、アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1を含有し、
前記ポリオール化合物が、前記ポリエーテルポリオールP1に加えて、マンニッヒ系化合物を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP2を含有し、
前記ポリオール化合物が、芳香族ジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有してなく、
前記ポリオール化合物が、アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有する、
硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本件発明1では、「アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1」及び「アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有し」、「前記ポリエーテルポリオールP1の含有量が、前記ポリオール化合物中15重量%以上50重量%以下である」のに対して、甲1発明1では、「エチレンジアミンにPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール(Bc1)」の含有量が「ポリオール組成物(Pc)」中5質量%である点

(イ)検討
まず、取消理由1(新規性)に関して、相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。
次に、取消理由2(進歩性)及び申立理由1に関して、相違点1を検討する。
甲1には、「ポリオール組成物(Pc)」中の「ポリオール(Bc)」の含有量は、0質量%超、70質量%以下が好ましく、3?30質量%が特に好ましく、この下限値以上では、硬質フォームの収縮が抑制されて良好な寸法安定性が得られやすく、上限値以下では、硬質フォームの成形時において良好な硬化特性(キュアー性)を確保しやすいことが記載されている([0127])。また、甲1には、各ポリオールの含有量は、「ポリオール(Ac)」の含有量は30?50質量%が好ましく([0122])、「ポリオール(Dc)」の含有量は30?60質量%が好ましく([0135])、「ポリオールWc」由来のポリマー粒子の含有量は0.02?10質量%が好ましいこと([0137])が、それぞれ記載されている。
また、甲1には、「ポリオール組成物(Pc)」の好ましい組成として、「ポリオール(A)の30?50質量%と、ポリオール(Bc)の1?30質量%と、ポリオール(Dc)の30?70質量%と、ポリオール(Wc)とからなり、ポリマー粒子の含有量が0.02?7質量%である」と記載されている([0140])。 ここで、上記「ポリオール(Ac)」、「ポリオール(Bc)」、「ポリオール(Dc)」及び「ポリオール(Wc)」は、それぞれ、甲1発明1における「ポリオール(Ac1)」、「ポリオール(Bc1)」、「ポリオール(Dc1)」及び「ポリオール(Wc1)」のことである。
これらの記載から、甲1発明1における「ポリエーテル(Bc1)」の含有量を上記範囲とし、それに伴って、「ポリエーテル(Ac1)」、「ポリエーテル(Dc1)」、及び「ポリオール(Wc1)」の各含有量を調整することが示唆されているとはいえる。
また、甲1には、甲1発明1の「ポリエーテルポリオール(Bc1)」に該当するポリオール(Bc)の製造に用いるアルキレンオキシドとして、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが例示されている([0125])。
しかしながら、上記アルキレンオキシドとして例示されたエチレンオキシド及びプロピレンオキシドは、それを用いることによる作用機能の面で同列に取り扱われていると解される。そして、甲1発明1は、上記アルキレンオキシドの例示の中からプロピレンオキシドのみを用いたものにすぎず、甲1には、甲1発明1における「ポリエーテルポリオール(Bc1)」のアルキレンオキシドとしてエチレンオキシドを用いることにより、プロピレンオキシドを用いる場合よりも、後記(ウ)で示す本件発明1の効果である、硬化不良の抑制及びポリウレタンフォームの物性低下の抑制の観点から好ましいことは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1の記載に基づいて、甲1発明1における「ポリエーテルポリオール(Bc1)」のプロピレンオキシドに代えて、エチレンオキシドを用いることが動機付けられるとはいえない。
したがって、本件発明1において、「アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1」及び「アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール」を含有することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえないし、本件発明1の「前記ポリエーテルポリオールP1の含有量が、前記ポリオール化合物中15重量%以上50重量%以下である」ことも、当業者が容易に想到し得たことではない。

(ウ)本件発明1の効果について
本件発明1は、「発泡剤としてHFO-1233zdを用いた場合でも原液保存安定性が良く、さらに硬化不良を抑制してポリウレタンフォームの収縮を抑制できる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することができる」(【0010】)という格別顕著な効果を奏するものであり、「前記アルキレンオキサイド付加体としては、プロピレンオキサイド(PO)付加体、エチレンオキサイド(EO)付加体・・・が例示でき、硬化不良抑制の観点、ポリウレタンフォームの物性の低下の抑制の観点から、エチレンオキサイド付加体が好ましい」(【0016】)ものである。
そして、上記効果は、実施例及び比較例により具体的に確認することができ、特に、実施例1は、EO付加体を有するポリオールDを含有するポリオール組成物であり、本件発明1の具体例であり、比較例5は、ポリオールC(製品名「エクセノ-ル500ED」)を含有するポリオール組成物であって、上記「エクセノ-ル500ED」は、EDA(エチレンジアミン)にPO(プロピレンオキサイド)が開環付加重合したものであるから(甲3を参照)、本件発明1の具体例ではない。そして、実施例1は、「初期」及び「40℃下28日保管後」におけるフォームの密度及び収縮の面で比較例5よりも優れており、上記効果は、甲1の記載から予測し得ないものであるといえる。

(エ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 本件発明2?4について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1を更に特定した硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であり、上記ウで本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2及び3は甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明4は、本件発明1を直接又は間接的に引用して特定された硬質ポリウレタンフォームの製造方法であるから、本件発明4と甲1発明2とは、少なくとも相違点1と同内容の相違点があり、本件発明4は甲1に記載された発明ではない。そして、上記ウで本件発明1について述べたのと同じ理由により、甲1発明2において上記相違点に係る構成を採用することは当業者が容易に想到し得たものでなく、本件発明4は当業者が容易に発明をすることができたものでない。

オ まとめ
本件発明1?4に係る特許は、当審が通知した取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)及び特許異議申立書に記載された申立理由1(進歩性)によっては、取り消すことはできない。

(2)取消理由3(サポート要件)について
取消理由3は、比較例5のポリオール組成物は、本件訂正前の本件発明1の具体例であるが、調製後に40℃で28日保管したものを用いて製造した硬質ポリウレタンフォームは、硬化不良が起こり、フォームが収縮しており、本件発明1の課題を解決するものであるとは解せないから、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものではない、というものである。

ア 特許法第36条第6項第1号の判断方法について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そこで、この点について、以下に検討する。

イ 本件発明の課題
本件発明の課題は、「発泡剤としてHFO-1233zdを用いた場合でも原液保存安定性が良く、さらに硬化不良を抑制してポリウレタンフォームの収縮を抑制できる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供すること」(【0007】)であると解される。

ウ 本件発明1について
第2で述べたとおり、本件訂正により、本件発明1は、「前記ポリオール化合物が、アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1を含有し」、「アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有」するものとなった(下線は当審が付与した。)。これにより、比較例5は、上記(1)ウ(ウ)で述べたとおり、本件発明1の具体例ではなく、取消理由3(サポート要件)の根拠がなくなった。
そして、発明の詳細な説明には、本件発明1の具体例である実施例1?7が記載され、調整後40℃下28日保管した実施例1?7のポリオール組成物を用いて製造した硬質ポリウレタンフォームは、フォームの収縮が抑制され、原液保存安定性が良いことを確認することができる。
そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明1が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されており、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

エ 本件発明2?4について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1を更に特定した硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であり、本件発明4は、本件発明1を直接又は間接的に引用して特定された硬質ポリウレタンフォームの製造方法であるから、上記ウで本件発明1について述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明には、本件発明2?4が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されており、本件発明2?4は、発明の詳細な説明に記載したものである。

オ まとめ
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由3によっては取り消すことはできない。

(3)取消理由4(明確性)について
ア 本件発明1について
取消理由4は、本件発明1が「アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1」、及び「アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール」を含有するものであり、これらを異なる成分としてそれぞれ含有するものであるとも、上記「ポリエーテルポリオールP1」の一部又は全部として上記「アルキレンジアミン」を開始剤とするポリエーテルポリオールを含有するものとも解することができるから、明確であるとはいえない、というものである。
そして、特許権者は、意見書において、「P3(当審注:アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール)はP1の下位概念であることから、本願発明の組成物はP3を必ず含有し、そして、P3以外のP1も含有する場合があることを意味しています」と述べ、上記P3以外のP1を含有する場合も、上記P3以外にP1を含有しない場合もあることを説明している。
そこで、当該理由を検討する。
本件明細書の【0015】には、「前記アミノ基含有化合物は、ポリエーテルポリオールの開始剤として用いられる公知のアミノ基含有化合物が用いられる。当該アミノ基含有化合物としては・・・エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン、ジエチレントリアミン等の炭素数が2?8のアルキレンジアミンが例示できる。これらの中でも、硬化不良抑制の観点、ポリウレタンフォームの物性の低下の抑制の観点から、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミンが好ましく、エチレンジアミンがより好ましい。」と記載されており、本件発明1の上記P3における「エチレンジアミン」以外のアミノ基含有化合物も例示されている。このことは、上記特許権者の説明と整合するものであるといえる。
そうすると、本件発明1は明確である。

イ 本件発明2?4について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、更に明確に特定された硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であり、本件発明4は、本件発明1を直接又は間接的に引用して明確に特定された硬質ポリウレタンフォームの製造方法であるから、上記アで本件発明1について述べたのと同じ理由により、本件発明2?4は明確である。

ウ まとめ
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由3によっては取り消すことはできない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由
(1)申立理由1a(甲1の「本発明B」を主とする進歩性)について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、「本発明B」である、請求項10、請求項12及び請求項13を引用する請求項16に記載された硬質発泡合成樹脂を製造する方法が記載されており、当該方法は次のとおりのものである。
「連続ボード成形法により、ポリオール組成物(Pb)とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応、発泡させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法であって、
前記ポリオール組成物(Pb)が
ポリオール(Ab):フェノール類および/または芳香族アミン類と、アルデヒド類と、アルカノールアミン類とを反応させて得られるマンニッヒ縮合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール 5?99.998質量%、
ポリオール(Bb):脂肪族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール 20?70質量%、
ポリオール(Cb):芳香族アミン(マンニッヒ縮合物を除く)を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオール 20?60質量%、
ポリマー粒子:ポリマー分散ポリオール(Wb)由来のポリマー粒子 0.002?30質量%を含み、
該ポリオール組成物(Pb)の平均水酸基数が2?8、平均水酸基価が100?800mgKOH/gであり、前記発泡剤がE-CF_(3)CH=CHClを含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法」

そして、甲1には、[0075]?[0110]、[0184]?[0206]、及び表10?20に、「本発明B」である上記製造方法の詳細が記載され、上記製造方法の具体例である例3(表11)として、質量部で、ポリオール(Ab2)を30部、ポリオール(Bb1)を7.5部、ポリオール(Bb2)を30部、ポリオール(Cb1)を25部、ポリオール(Cb3)を2.5部、ポリオール(Wb1)を5部からなるポリオール組成物(Pb)と、E-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペン(発泡剤1)を30部、水(発泡剤3)を4部、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(難燃剤1)を20部、ウレタン化触媒であるペンタメチルジエチレントリアミン(ウレタン化触媒1)を0.5部、シリコーン系整泡剤(整泡剤1)を1.5部の量で混合した硬質フォーム用ポリオールシステム液を調製したことが記載されている。
ここで、上記ポリオール(Ab2)は、[0184]によると、ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの2.2モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、POを開環付加重合させた後、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させて得られた水酸基価が430mgKOH/gのポリエーテルポリオール(アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し6.3モルである。付加させたPOとEOとの合計量に対するEOの割合(全EO含有量)は23質量%である。)である。
また、[0186]によると、上記ポリオール(Bb1)は、エチレンジアミンにPOを開環付加重合させた後、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール(EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は41質量%である。)であり、上記ポリオール(Bb2)は、エチレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオールである。
[0187]によると、上記ポリオール(Cb1)は、m-トリレンジアミンにEOを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でPO、EOの順にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール(EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は25質量%である。また、末端のEO含有量は3質量%である。)であり、上記ポリオール(Cb3)は、m-トリレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が350mgKOH/のポリエーテルポリオールである。
そして、上記ポリオール(Wb1)は、[0191][0192]によると、ポリオールX1(グリセリンを開始剤として、EOとPOとをランダムに開環付加重合させて得られた、水酸基価が50mgKOH/g、付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は70質量%のポリエーテルポリオール)を900質量部、ポリオールY1(グリセリンを開始剤として、POを開環付加重合して得られた、水酸基価650mgKOH/gのポリエーテルポリオール)を900質量部、ポリオールY2(エチレンジアミンを開始剤として、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール)を450質量部、アクリロニトリル(AN)を150質量部、酢酸ビニル(Vac)の600質量部、および重合開始剤として2,2-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(AMBN)の30質量部を全て仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させて得られたものである。
また、甲1の[0198]及び[0201]には、上記硬質フォーム用ポリオールシステム液にポリイソシアネート化合物を投入して発泡原液組成物を調製した後、金型に投入して発泡させて、硬質フォームを製造する方法も記載されている。

そうすると、甲1には、上記例3に着目して、次の発明が記載されているといえる。
「質量部で、
ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの2.2モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、POを開環付加重合させた後、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させて得られた、水酸基価が430mgKOH/gのポリエーテルポリオール(Ab2)(アルキレンオキシドの付加量はノニルフェノールの1モルに対し6.3モルである。付加させたPOとEOとの合計量に対するEOの割合(全EO含有量)は23質量%である。)を30部、
エチレンジアミンにPOを開環付加重合させた後、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール(Bb1)(EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は41質量%である。)を7.5部、
エチレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール(Bb2)を30部、
m-トリレンジアミンにEOを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でPO、EOの順にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール(Cb1)(EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は25質量%である。また、末端のEO含有量は3質量%である。)を25部、
m-トリレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が350mgKOH/のポリエーテルポリオール(Cb3)を2.5部、
ポリオールX1(グリセリンを開始剤として、EOとPOとをランダムに開環付加重合させて得られた、水酸基価が50mgKOH/g、付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は70質量%のポリエーテルポリオール)を900質量部、ポリオールY1(グリセリンを開始剤として、POを開環付加重合して得られた、水酸基価650mgKOH/gのポリエーテルポリオール)を900質量部、ポリオールY2(エチレンジアミンを開始剤として、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール)を450質量部、アクリロニトリル(AN)を150質量部、酢酸ビニル(Vac)の600質量部、および重合開始剤として2,2-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(AMBN)の30質量部を全て仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させて得られたものであるポリマー分散ポリオール(Wb1)を5部、
からなるポリオール組成物(Pb)と、
発泡体であるE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペンを30部、及び水を4部と、
難燃剤であるトリス(β-クロロプロピル)ホスフェートを20部と、
ウレタン化触媒であるペンタメチルジエチレントリアミンを0.5部と、
シリコーン系整泡剤(整泡剤1)を1.5部とを混合した、ポリイソシアネート化合物と反応させて硬質フォームを製造するための硬質フォーム用ポリオールシステム液」(以下、「甲1発明3」という。)

「甲1発明3のポリオールシステム液にポリイソシアネート化合物を投入して発泡原液組成物を調製し、金型に投入して発泡させて、硬質フォームを製造する方法」(以下、「甲1発明4」という。)

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明3を対比する。
a 甲1の[0090]によると、プロピレンオキシドを開環付加重合させた後に、エチレンオキシドを開環付加重合させる場合に、アルキレンオキシドの全量中のうち、最後に開環付加重合させたエチレンオキシドの割合が末端のEO含有量であるから、甲1発明3の「ポリエーテルポリオール(Ab2)」における「EOを開環付加重合させて」は、本件発明1の「末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有する」に相当し、甲1発明3の「ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの2.2モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物」は、本件発明1の「マンニッヒ系化合物」に相当するから、甲1発明3の「ポリエーテルポリオール(Ab2)」は本件発明1の「ポリエーテルポリオールP2」に相当する。
b 甲1発明3の「ポリエーテルポリオール(Cb1)」及び「ポリエーテルポリオール(Cb3)」は、「m-トリレンジアミン」を開始剤とし、上記aで述べたように、末端に少なくとも1つのアルキレンオキシドを有するものであるから、本件発明1の「芳香族ジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール」に相当する。
c 甲1発明3の「発泡剤であるE-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペン」は、本件発明1の「前記発泡剤が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-プロペンを含有し」に相当し、本件発明1の「共沸混合物、または共沸混合物様の組成物の形態で含有されてはな」いものである。
d 甲1発明3の「ポリエーテルポリオール(Bb1)」は、「エチレンジアミン」を開始剤とすることは明らかであり、「エチレンジアミンに」「EOを開環付加重合させて」は、上記aで述べたように、末端に少なくとも1つのEO(エチレンオキサイド)付加体を有するものであるから、甲1発明3と本件発明1とは、「アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1」及び「アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオール」に相当し、甲1発明3の「ポリオール組成物(Pc)」中の「ポリエーテルポリオール(Bb1)」の比率は7.5質量%である。
e 甲1発明3の「ポリイソシアネート化合物」及び「硬質フォーム」は、それぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分」及び「硬質ポリウレタンフォーム」に相当する。

f そうすると、本件発明1と甲1発明3とは、
「少なくともポリオール化合物及び発泡剤を含有し、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と混合して発泡硬化させて硬質ポリウレタンフォームを形成する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、
前記発泡剤が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含有し、
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HFO-1233zd又は1233zd(E))と、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234ze)からなる群から選択される第2の成分とから実質的に構成される共沸混合物、または共沸混合物様の組成物の形態で含有されてはなく、
前記ポリオール化合物が、アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1を含有し、
前記ポリオール化合物が、前記ポリエーテルポリオールP1に加えて、マンニッヒ系化合物を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP2を含有し、
前記ポリオール化合物が、アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有する、
硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点2:本件発明1では、「ポリオール化合物が、芳香族ジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有してな」いのに対して、甲1発明3は、「m-トリレンジアミンにEOを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でPO、EOの順にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール(EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は25質量%である。また、末端のEO含有量は3質量%である。)であるポリオール(Cb1)を25部」及び「m-トリレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が350mgKOH/のポリエーテルポリオールであるポリオール(Cb3)を2.5部」含有する点

相違点3:本件発明1では、「ポリエーテルポリオールP1の含有量が、前記ポリオール化合物中15重量%以上50重量%以下である」のに対して、甲1発明3では、「エチレンジアミンにPOを開環付加重合させた後、水酸化カリウム触媒存在下で、EOを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール(EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は41質量%である。)であるポリオール(Bb1)」の含有量が、ポリオール組成物(Pb)中7.5質量%である点

(イ)検討
a 相違点2について
甲1発明3は、トリレンジアミンを開始剤とするポリオール(Cb1)及びポリオール(Cb3)を含有するものであり、(1)アで述べたとおり、甲1発明3は、請求項10、請求項12及び請求項13を引用する請求項16に記載された硬質発泡合成樹脂を製造する方法の具体例であって、甲1の請求項13には、ポリオール組成物(Pb)は、芳香族アミン(マンニッヒ縮合物を除く。)を開始剤としてアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオール(Cb)を含有することが記載され、同じく[0094]には、芳香族アミンとして、トリレンジアミンなどの芳香族ジアミンが好ましいことが記載されている。
そうすると、甲1発明3において、芳香族ジアミンを開始剤としてアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオールを含有しないようにすることが動機付けられるとはいえない。

b 相違点3について
本件発明1は芳香族ジアミンを開始剤とするポリエーテルポリオールを含有しないものであるから、「ポリエーテルポリオールP1」の「アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)」は、芳香族ジアミン以外の種々のアミノ基含有化合物を包含するものである。
甲1には、ポリオール組成物(Pb)は、マンニッヒ縮合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオール(Ab)、脂肪族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオール(Bb)、芳香族アミン(マンニッヒ縮合物を除く)を開始剤としてアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオール(Cb)等を含有することが記載されており([0076]、[0088]及び[0094])、甲1発明3も、上記3種のポリオールを含有するものである。
甲1には、上記「脂肪族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオール(Bb)」のアルキレンオキシドとして、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが例示されており、少なくともプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドを含むことが好ましく、少なくともプロピレンオキシドを含むことが特に好ましいことも記載されている([0089])。
甲1発明3は、上記ポリオール(Bb)として、エチレンジアミンを開始剤にPO(プロピレンオキシド)及びEO(エチレンオキシド)を開環付加重合させて得られたポリオール(Bb1)を7.5部と、エチレンジアミンにPOのみを開環付加重合させて得られたポリオール(Bb2)を30部含有するものであり、甲1の上記の記載に基づくと、ポリオール(Bb)のアルキレンオキシドとして、エチレンオキシドはプロピレンオキシドやブチレンオキシドよりも好ましいとはされていないから、エチレンオキシドに着目して、エチレンオキシドを付加重合させて得られたポリオールの含有量を、ポリオール中15?50重量%にまで増やすことが動機付けられるとはいえない。
また、芳香族アミンを開始剤とするポリオールCbに関して、上記芳香族アミンは芳香族ジアミン以外のものを包含するものであるが、甲1には、芳香族アミンとして、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど、活性水素原子数が4?12の芳香環を有するアミン類を用いることが好ましいこと、低い熱伝導率を得られる点からフェニレンジアミンが特に好ましいことが記載されており([0094]、甲1に例示されている芳香族アミンはいずれも芳香族ジアミンである。そして、甲1発明3におけるポリオール(Cb1)及びポリオール(Cb3)も、トリレンジアミンを開始剤とするものであるから、甲1の記載に基づいて、トリレンジアミンに代えて、芳香族ジアミン以外の芳香族アミンを開始剤に用いることが動機付けられるとはいえない。
したがって、本件発明1において、「アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1」の含有量を、前記ポリオール化合物中15重量%以上50重量%以下」とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(ウ)本件発明1の効果について
上記1(1)ウ(ウ)で述べたように、本件発明1は、「発泡剤としてHFO-1233zdを用いた場合でも原液保存安定性が良く、さらに硬化不良を抑制してポリウレタンフォームの収縮を抑制できる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することができる」(【0010】)という格別顕著な効果を奏するものであり、エチレンオキサイドを用いることによる上記効果は、甲1の記載から、当業者が予測し得ないものである。

(エ)小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明2?4について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1を更に特定した硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であり、上記イで本件発明1について述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件発明4は、本件発明1を直接又は間接的に引用して特定された硬質ポリウレタンフォームの製造方法であるから、本件発明4と甲1発明2とは、少なくとも相違点2及び3と同内容の相違点があり、本件発明4は甲1に記載された発明ではない。そして、上記イで本件発明1について述べたのと同じ理由により、甲1発明2において上記相違点に係る構成を採用することは当業者が容易に想到し得たものでなく、本件発明4は当業者が容易に発明をすることができたものでない。

エ まとめ
したがって、本件発明1?4に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由1b(進歩性)によっては、取り消すことはできない。

(2)申立理由2(委任省令要件)について
申立理由2は、「本件特許明細書【0047】【表2】において、「比較例5」と示されている組成に係るポリオール組成物は・・・本件特許発明1の実施例であり、その一方、同表の「実施例8」、「実施例9」に係る各ポリオール組成物は・・・実施例に該当しないものであることは、明白である。・・・従って、本件特許明細書の「発明の詳細な説明」の記載は、本件特許発明の課題に対する真の解決手段を理解することができないものであり、本件特許発明の技術上の意義が不明である」(申立書第36頁11行?37頁17行)というものである。

ア 委任省令要件の判断基準について
特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また、審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、明細書の発明の詳細な説明に記載することが規定されている。
そこで、このような判断基準に沿って、本件明細書が委任省令要件を満たすかを検討する。

イ 委任省令要件の検討
発明の詳細な説明には、【0006】に、従来の技術では、HFO-1233zdを含有するポリオール組成物は、原液の保存後にポリウレタンフォームを作製すると硬化不良を引き起こし、生成したポリウレタンフォームが収縮することがあり、また、ポリオールプレミックスを40℃の条件下で保存した後にイソシアネート成分と混合、発泡した場合、硬化不良を起こし、ポリウレタンフォームが収縮する場合があったこと(【0006】)、本件発明の課題は、発泡剤としてHFO-1233zdを用いた場合でも原液保存安定性が良く、さらに硬化不良を抑制してポリウレタンフォームの収縮を抑制できる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することであること(【0008】)が記載されている。
そして、発明の詳細な説明には、上記課題を解決するための手段として、ポリオール組成物がアミノ基含有化合物を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有すること(【0008】)、及び、本件発明を実施するための形態(【0011】?【0038】)及び実施例(【0039】?【0048】)が記載されている。
また、上記1(2)ウで述べたように、本件訂正により、比較例5は、本件発明1の具体例でなくなった。また、実施例8及び9が、本件発明1の具体例でないことは、マンニッヒ系ポリエーテルポリオールであるポリオールBを含有しないことから明らかである。
そうすると、発明の詳細な説明には、本件発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また、審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が記載されているといえる。

ウ まとめ
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(委任省令要件)を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。

(3)申立理由3(サポート要件)について
申立理由3は、「本件特許発明1の構成Hでは、「前記ポリエーテルポリオールP1の含有量が、前記ポリエーテル化合物中15重量%以上50重量%以下である」・・・旨が規定されているところ、本件特許明細書において、ポリエーテル化合物中のポリエーテルポリオールの含有量に関する記載は、同明細書【0047】【表2】の「実施例1」?「実施例7」、本件特許発明の実施例に該当する「比較例5」の各組成のみであり、それら組成における、ポリエーテルポリオールに相当するポリエーテルポリオールの含有量の最大値は、「実施例7」における30重量%である。ポリオール化合物中のポリエーテルボリオールの含有量の上限値を50重量%とすることまで、本件特許明細書の「発明の詳細な説明」に開示された内容を拡張ないし一般化することができないことは、同明細書の記載より明白である」(申立書37頁21行?38頁5行)というものである。

ア 本件発明1について
特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断方法と本件発明の課題は、上記1(2)アで述べたとおりである。
発明の詳細な説明には、ポリエーテルポリオールP1の含有量は、硬化不良抑制の観点、ポリウレタンフォームの物性の低下の抑制の観点から、ポリオール化合物中、15重量%以上が好ましく、100重量%が最も好ましいことが記載されている(【0023】)。
また、発明の詳細な説明には、ポリオールP1であるポリオールD?Fを、ポリオール化合物中15重量%又は30重量%含有したポリオール組成物(実施例1?7)、及び、本件発明1の具体例ではないが、ポリオールP1であるポリオールFをポリオール化合物中50重量%含有したポリオール組成物(実施例8)が記載されており、実施例1?8のポリオール組成物は、いずれも、「初期」及び「40℃下28日保管後」においてフォームトップが陥没しなかったこと(表2においてフォームの収縮の評価を「○」と表示)が記載されており、本件発明1において、ポリオールP1が15重量%?50重量%の範囲において上記課題を解決することが示されているといえる。
そうすると、発明の詳細な説明には、本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。

イ 本件発明2?4について
本件発明2及び3は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1を更に特定した硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であり、本件発明4は、本件発明1を直接又は間接的に引用して特定された硬質ポリウレタンフォームの製造方法であるから、上記アで本件発明1について述べたのと同じ理由により、発明の詳細な説明には、本件発明2?4が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されており、本件発明2?4は、発明の詳細な説明に記載したものである。

ウ まとめ
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由3によっては取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許第6626674号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを認める。
当審が通知した取消理由及び特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリオール化合物及び発泡剤を含有し、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート成分と混合して発泡硬化させて硬質ポリウレタンフォームを形成する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、
前記発泡剤が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含有し、
前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HFO-1233zd又は1233zd(E))と、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234ze)からなる群から選択される第2の成分とから実質的に構成される共沸混合物、または共沸混合物様の組成物の形態で含有されてはなく、
前記ポリオール化合物が、アミノ基含有化合物(但し、マンニッヒ系化合物を除く。)を開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP1を含有し、
前記ポリオール化合物が、前記ポリエーテルポリオールP1に加えて、マンニッヒ系化合物を開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールP2を含有し、
前記ポリオール化合物が、芳香族ジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのアルキレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有してなく、
前記ポリオール化合物が、アルキレンジアミンを開始剤とし、末端に少なくとも1つのエチレンオキサイド付加体を有するポリエーテルポリオールを含有し、
前記ポリエーテルポリオールP1の含有量が、前記ポリオール化合物中15重量%以上50重量%以下である、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールP1の含有量と前記ポリエーテルポリオールP2の含有量の合計が、前記ポリオール化合物中15重量%超100重量%以下である、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
前記アルキレンオキサイド付加体が、エチレンオキサイド付加体である、請求項1又は2に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項4】
イソシアネート成分とポリオール組成物とを混合して発泡、硬化させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリオール組成物が、請求項1?3のいずれか1項に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物である、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-17 
出願番号 特願2015-184850(P2015-184850)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 536- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西山 義之松浦 裕介  
特許庁審判長 杉江 渉
特許庁審判官 橋本 栄和
近野 光知
登録日 2019-12-06 
登録番号 特許第6626674号(P6626674)
権利者 積水ソフランウイズ株式会社
発明の名称 硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 田口 昌浩  
代理人 田口 昌浩  
代理人 虎山 滋郎  

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