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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B41J 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B41J |
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管理番号 | 1376735 |
異議申立番号 | 異議2019-701034 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-12-17 |
確定日 | 2021-06-29 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6531551号発明「液体供給ユニットおよび液体供給システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6531551号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 特許第6531551号の請求項2及び3に係る特許を維持する。 特許第6531551号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6531551号の請求項1ないし3に係る特許は,平成27年8月7日(国内優先権主張 平成26年12月2日)に特許出願され,令和1年5月31日にその特許権の設定登録がされた。 その後,その請求項1ないし3に係る特許について,令和1年12月17日に特許異議申立人上杉則亮より特許異議の申立てがされ,当審において令和2年1月27日付けで取消理由を通知し,その指定期間内である令和2年3月27日付けで特許権者から意見書の提出,及び訂正の請求がなされ,これに対して令和2年5月21日付けで特許異議申立人上杉則亮より意見書が提出された。 さらに,当審において令和2年7月28日付けで取消理由を通知し,その指定期間内である令和2年9月28日付けで特許権者から意見書の提出,及び訂正の請求(以下,この訂正請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がなされ,これに対して令和2年11月18日付けで特許異議申立人上杉則亮より意見書が提出された。 また,さらに,当審において令和3年2月2日付けで取消理由(決定の予告)を通知し,その指定期間内である令和3年4月5日付けで特許権者から意見書の提出がなされた。 なお,令和2年3月27日付けでされた訂正の請求は,本件訂正請求がされたことにより,取り下げられたものとみなされる。 第2 本件訂正請求による訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 (1)訂正事項1 訂正事項1は,「本件特許の願書に添付された特許請求の範囲(特許査定時のもの,以下,これを「本件特許請求の範囲」という。)の請求項1を削除する」というものである。 (2)訂正事項2 訂正事項2は,本件特許請求の範囲の請求項2の「請求項1に記載の液体供給ユニットであって,前記係合部を前記+Y方向に付勢する付勢部を備える,ことを特徴とする液体供給ユニット。」とあるうち,請求項1を引用するものについて,独立形式に改める訂正を行い, 「可動部を有する液体噴射装置に装着可能な液体供給ユニットであって, Z方向において対向する第1壁及び第2壁と, 前記Z方向と直交するY方向において対向する第3壁及び第4壁と, 前記第1壁に設けられた液体供給部と, 前記第3壁に設けられた開口から突出するように設けられ,前記液体供給ユニットが前記液体噴射装置に装着された状態において前記可動部と係合する係合部と, を備え, 前記第3壁から前記可動部に向かって離れる方向を+Y方向とし,前記可動部から前記第3壁に近づく方向を-Y方向としたとき, 前記係合部は,前記第3壁に設けられた開口からの突出寸法が変化するよう,前記+Y方向及び前記-Y方向に移動可能に設けられ, 前記係合部が前記開口から+Y方向に突出することにより前記可動部と係合し, 前記係合部を前記+Y方向に付勢する付勢部を備える, ことを特徴とする液体供給ユニット。」とする。(以下,「訂正事項2による訂正後の請求項2」という。) (3)訂正事項3 訂正事項3は,訂正事項2による訂正後の請求項2の「Z方向において対向する」を, 「鉛直方向に沿った方向をZ方向,鉛直下方向を-Z方向,鉛直上方向を+Z方向としたときに,前記Z方向において対向し,」とする訂正を行う(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4は,訂正事項2による訂正後の請求項2の「第1壁及び第2壁と,」を, 「前記-Z方向に位置する第1壁及び前記+Z方向に位置する第2壁と,」とする訂正を行う(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5は,訂正事項2による訂正後の請求項2の「前記第3壁に設けられた開口」を, 「前記第2壁と前記第3壁との角部における前記第3壁に設けられた開口」とする訂正を行う(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。 (6)訂正事項6は,訂正事項2による訂正後の請求項2の「前記係合部を前記+Y方向に付勢する付勢部を備える,」を, 「前記係合部を前記+Y方向に付勢する付勢部を備え,前記係合部は,前記付勢部の前記+Y方向側に配置され,前記係合部は,前記Z方向において前記第2壁から前記付勢部の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されている,」とする訂正を行う(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。 (7)訂正事項7は,本件特許請求の範囲の請求項3の「請求項1または2に記載の液体供給ユニットであって,」を, 「請求項2に記載の液体供給ユニットであって,」とする訂正を行う。 2 本件訂正請求についての当審の判断 (1)一群の請求項1?3に係る訂正 ア 訂正事項1 (ア)訂正の目的について 訂正事項1は,請求項の削除であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと 訂正事項1は,請求項の削除であるため,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は,請求項の削除であるため,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項1に係る本件特許の請求項1に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項1に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される同法126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 イ 訂正事項2 (ア)訂正の目的について 訂正事項2は,訂正前の請求項1を引用する請求項2を独立形式とするための訂正であるから,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと 訂正事項2は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるため,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるため,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであることは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項2に係る本件特許の請求項2に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される同法126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 ウ 訂正事項3 (ア)訂正の目的について 訂正事項3は,訂正事項2による訂正後の請求項2の記載中の訂正前の請求項1を引用する部分を書き下した部分(以下,単に「訂正事項2による書き下した部分」という。)において,その方向が具体的に特定されず明瞭でない「Z方向」を「鉛直方向に沿った方向をZ方向,鉛直下方向を-Z方向,鉛直上方向を+Z方向」と具体的に特定して明瞭とする訂正をしたものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと 訂正事項3は,明瞭でない記載の釈明であって,カテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 本願の願書に添付した明細書の段落【0018】には,「本明細書では,相互に直交する3方向をX方向,Y方向,Z方向とする。図1に示すXYZの3方向は,矢印の向きが+方向(正方向),矢印の向きとは逆向きが-方向(負方向)を示す。・・・(略)・・・また,鉛直方向(プリンター500の上下方向)はZ方向であり,-Z方向が鉛直下方向となる。」との記載がなされており,【図2】などにも,Z方向に関して,訂正事項3の訂正内容のとおりの座標が図示されているから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項3に係る本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであり,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから,本件訂正後の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される同法126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 エ 訂正事項4 (ア)訂正の目的について 訂正事項4は,訂正事項2による書き下した部分において,その方向が具体的に特定されず明瞭でない「Z方向」を,訂正事項3によって訂正した「Z方向」と同じ方向であることを示す「前記Z方向」と訂正し,さらに,どのように対向するのかが具体的に特定されていなかった「第1壁及び第2壁」に関して,「前記-Z方向側に位置する第1壁」,「前記+Z方向側に位置する第2壁」と,「第1壁及び第2壁」が,Z方向のどちら側に位置して対向しているかを具体的に特定して明瞭とする訂正をしたものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと 訂正事項4は,明瞭でない記載の釈明であって,カテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 本願の願書に添付した明細書の段落【0025】には,「・・・(略)・・・-Z方向側の壁面である第1壁201と,+Z方向側の壁面である第2壁202と,・・・(略)・・・」との記載がなされており,【図2】などにも,Z方向に関して,訂正事項4の訂正内容のとおりの座標が図示されているから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項4に係る本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであり,特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される同法126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 オ 訂正事項5 (ア)訂正の目的について 訂正事項5は,訂正事項2による書き下した部分において,開口が設けられた第3壁の位置を「第2壁と第3壁との角部」における第3壁であることを特定したものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと 訂正事項5は,開口の第3壁における位置を限定する,特許請求の範囲の減縮であって,カテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 本願の願書に添付した明細書の段落【0028】には,「・・・(略)・・・筐体22において,第2壁202と第3壁203が繋がる角部には,Y方向に移動可能な移動部910が配置されている。移動部910は,操作部912と,第1係合部914を備える。第1係合部914は,移動部910の+Y方向の端部に設けられ,第3壁203に設けられた開口から+Y方向に突出する。・・・(略)・・・」との記載がなされており,【図4】などにも,訂正事項5の訂正内容のとおりの第2壁と第3壁との角部における第3壁に開口を設けたものが図示されているから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項5に係る本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される同法126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 カ 訂正事項6 (ア)訂正の目的について 訂正事項6は,訂正前の請求項2において,係合部が「付勢部の+Y方向側に配置」されることを特定したものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと 訂正事項6は,係合部の配置方向を限定する,特許請求の範囲の減縮であって,カテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 本願の願書に添付した明細書の段落【0028】には,「・・・(略)・・・移動部910は,操作部912と,第1係合部914を備える。第1係合部914は,移動部910の+Y方向の端部に設けられ,第3壁203に設けられた開口から+Y方向に突出する。・・・(略)・・・移動部910の-Y方向側には,付勢部916が配置されている。・・・(略)・・・」との記載がなされており,【図4】などにも,訂正事項5の訂正内容のとおりの第2壁と第3壁との角部における第3壁に開口を設けたものが図示されているから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項5に係る本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される同法126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 キ 訂正事項7 (ア)訂正の目的について 訂正事項7は,訂正前の請求項2において,係合部が「Z方向において第2壁から付勢部の-Z方向における端部までの範囲に配置」されることを特定したものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと 訂正事項7は,係合部の配置範囲を限定する,特許請求の範囲の減縮であって,カテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 本願の願書に添付した明細書の段落【0028】には,「・・・(略)・・・移動部910は,操作部912と,第1係合部914を備える。第1係合部914は,移動部910の+Y方向の端部に設けられ,第3壁203に設けられた開口から+Y方向に突出する。・・・(略)・・・移動部910の-Y方向側には,付勢部916が配置されている。・・・(略)・・・」,同段落【0053】には,「・・・(略)・・・インクカートリッジ20Bの上端面(筐体22の第2壁202)のすぐ下側から,第1係合部914Bが突出している。・・・(略)・・・」との記載がなされており,【図4】などにも,訂正事項7の訂正内容のとおりのZ方向において第2壁から付勢部の-Z方向における端部までの範囲に開口を配置したものが図示されているから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項7に係る本件特許の請求項2及び請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される同法126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 ク 訂正事項8 (ア)訂正の目的について 訂正事項8は,訂正前の請求項3において,「請求項2に記載の液体供給ユニットであって」と,引用する請求項を請求項2のみにしたものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないこと 訂正事項8は,引用する請求項を減ずるという,特許請求の範囲の減縮であって,カテゴリーや対象,目的を変更するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかであるから,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。 (ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項8は,訂正事項1によって請求項1が削除されたことに伴い,引用する請求項を減じたものであるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであり,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。 (エ)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 訂正事項8に係る本件特許の請求項3に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから,本件訂正後の請求項2に係る発明については,特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される同法126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。 3 小括 以上検討したとおり,本件訂正請求による訂正事項1ないし8による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号,第3号及び第4号に掲げる事項のいずれかを目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?3〕について訂正することを認める。 第3 当審の判断 1 訂正後の請求項に係る発明 上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件訂正特許発明2」,「本件訂正特許発明3」などという。)は,以下のとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 可動部を有する液体噴射装置に装着可能な液体供給ユニットであって, 鉛直方向に沿った方向をZ方向,鉛直下方向を-Z方向,鉛直上方向を+Z方向としたときに, 前記Z方向において対向し,前記-Z方向側に位置する第1壁及び前記+Z方向側に位置する第2壁と, 前記Z方向と直交するY方向において対向する第3壁及び第4壁と, 前記第1壁に設けられた液体供給部と, 前記第2壁と前記第3壁との角部における前記第3壁に設けられた開口から突出するように設けられ,前記液体供給ユニットが前記液体噴射装置に装着された状態において前記可動部と係合する係合部と, を備え, 前記第3壁から前記可動部に向かって離れる方向を+Y方向とし,前記可動部から前記第3壁に近づく方向を-Y方向としたとき, 前記係合部は,前記第3壁に設けられた開口からの突出寸法が変化するよう,前記+Y方向及び前記-Y方向に移動可能に設けられ, 前記係合部が前記開口から+Y方向に突出することにより前記可動部と係合し, 前記係合部を前記+Y方向に付勢する付勢部を備え, 前記係合部は,前記付勢部の前記+Y方向側に配置され, 前記係合部は,前記Z方向において前記第2壁から前記付勢部の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されている, ことを特徴とする液体供給ユニット。 【請求項3】 請求項2に記載の液体供給ユニットであって, 前記係合部を前記-Y方向に移動させるための操作部を有する, ことを特徴とする液体供給ユニット。」 2 取消理由(決定の予告)の概要 請求項2及び3に係る特許に対して,当審が令和3年2月2日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は,次のとおりである。 (理由1)本件訂正特許発明2及び3は,甲第1号証及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本件訂正特許発明2及び3に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。 3 特許法第29条第2項に関する取消理由ついて (1)本件訂正特許発明2について 引用文献1:中国実用新案公告第202805941号(甲第6号証として異議申立人が令和2年5月21日付け意見書とともに提出したもの) ア 引用文献1に記載された事項及び発明(なお,引用文献1に記載された事項及び発明を認定するにあたり,異議申立人が提出した日本語訳文を用いた。) (ア)引用文献1の図4において,略矩形状のインクカートリッジ本体1の外殻を構成する壁のうち,下方向にある壁を「下壁」,上方向にある壁を「上壁」,左方向にある壁を「左壁」,右方向にある壁を「右壁」とする。 (イ)引用文献1の図4において,「下壁」と「上壁」が対向する(鉛直)方向を「Z方向」として,鉛直下向き方向を「-Z方向」,鉛直上向き方向を「+Z方向」とする。 (ウ)引用文献1の図4において,「下壁」と「上壁」が対向する(鉛直)方向である「Z方向」に直交する方向を「Y方向」とし,「右壁から左壁への方向」を「+Y方向」,「左壁から右壁への方向」を「-Y方向」とする。 (エ)引用文献1の「ラッチロック本体2」は,図1,図4等からみて,穴12を有する部分から左右斜め上方に2つのアーム部がV字状に延伸する二股の部材であり,そのうち「ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部」は,インクカートリッジ本体1がプリンタ設備に装着された際に,インク・トロリー内の部品10と係合していることが,段落[0018]の「プリンタへ取り付けるに,前記のラッチロック本体2を直接にプリンタのロック位置に合わせて前記ラッチロック本体2を押す;前記スプリング5が圧縮された後,前記ラッチロック本体2は,回転して変位し,この後,前記スプリング5がリセットされ,インク・トロリー内の部品10に係合する。図4で示すように,インクカートリッジが固定される。」との記載から明らかである。 (オ)「ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部」と係合する「インク・トロリー内の部品10」は,プリンタ設備に設けられた部品であること明らかである。 (カ)引用文献1の「ラッチロック本体2」は,「上壁」と「左壁」との角部における「左壁」に設けられたものであることは図1,図4から看て取れる。 (キ)引用文献1の「ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部」は,「+Y方向及び-Y方向に移動可能に設」けられていること,及び,左壁を基準として突出寸法が変化するように移動可能に設けられていることが第2図及び第3図から看て取れる。 (ク)引用文献1の「ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部」は,第3図及び第4図から「+Y方向に移動したときにインク・トロリー内の部品10に係合」することが看て取れる。 (サ)引用文献1の「ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部」は,「スプリング5によって+Y方向に付勢」されること,及び「スプリング5の+Y方向側に配置」されていることが,段落[0017の「弾性装置5の弾性力がずっと外向きになっている」との記載,]第3図及び第4図から看て取れる。 (シ)引用文献1の「ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部」は,(インクカートリッジ本体1の)鉛直方向に沿った方向であるZ方向において,インクカートリッジ本体1の「上壁」から「スプリング5」の-Z方向における端部までの範囲に配置されていることが,第4図から看て取れる。 (ス)引用文献1の「ラッチロック本体2の右側のアーム部の先端部」は,「回しスロット6」であり,段落[0017]の「ラッチロック本体2に回しスロット6が設置されているため,前記ラッチロック本体2の圧着と滑りが便利になる」との記載,図3及び図4からみて,「ラッチロック本体2の右側のアーム部の先端部」は,ラッチロック本体2を回動させるための操作部であるといえ,ラッチロック本体2が,スプリング5によって+Y方向に付勢されていることを踏まえると,「ラッチロック本体2の右側のアーム部の先端部」は,ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部を含むラッチロック本体2を-Y方向に移動させるための操作部であることは明らかである。 上記(ア)ないし(ス)より,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「プリンタ設備に装着可能なインクカートリッジ本体1であって, 鉛直方向に沿った方向をZ方向,鉛直下方向を-Z方向,鉛直上方向を+Z方向としたときに, 前記Z方向において対向し,前記-Z方向側に位置する下壁及び前記+Z方向側に位置する上壁と, 前記Z方向と直交するY方向において対向する左壁及び右壁と, 前記上壁と前記左壁との角部における前記左壁から突出するように設けられ,前記インクカートリッジ本体1が前記プリンタ設備に装着された状態においてプリンタ設備本体に設けられたインク・トロリー内の部品10と係合するラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部と, を備え, 前記左壁から前記プリンタ設備本体に設けられたインク・トロリー内の部品10に向かって離れる方向を+Y方向とし,前記プリンタ設備本体に設けられたインク・トロリー内の部品10から前記左壁に近づく方向を-Y方向としたとき, 前記ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部は,前記左壁からの突出寸法が変化するよう,前記+Y方向及び前記-Y方向に移動可能に設けられ, 前記係合部が前記左壁から+Y方向に突出することにより前記インク・トロリー内の部品10と係合し, 前記ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部を前記+Y方向に付勢するスプリング5を備え, 前記ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部は,前記スプリング5の前記+Y方向側に配置され, 前記ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部は,前記Z方向において前記上壁から前記スプリング5の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されており, 前記ラッチロック本体2の右側のアーム部の先端部である回しスロット6は,ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部を含むラッチロック本体2を-Y方向に移動させる,液体供給ユニット。」 イ 対比 (ア)引用文献1における「インクカートリッジ本体1」は,本件訂正特許発明2における「液体供給ユニット」に相当する。 (イ)引用文献1における「スプリング5」が,本件訂正特許発明2における「付勢部」に相当する。 (ウ)引用文献1における「回しスロット6」が,本件訂正特許発明2における「操作部」に相当する。 (エ)引用文献1の「下壁」及び「上壁」は,本件訂正特許発明2の「第1壁」及び「第2壁」に相当する。 (オ)引用文献1の「左壁」及び「右壁」は,本件訂正特許発明2の「第3壁」及び「第4壁」に相当する。 (カ)引用文献1の「ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部」は,インクカートリッジ本体1がプリンタ設備に装着された状態においてプリンタ設備本体に設けられたインク・トロリー内の部品10と係合しているから,本件訂正特許発明2の「前記液体供給ユニットが前記液体噴射装置に装着された状態において前記可動部と係合する」「係合部」とは,「装置本体に装着された際に装置本体側の部品と係合する」「係合部」である点において共通する。 してみると,本件訂正特許発明2と引用発明1は以下の点で相違し,その余の点で一致する。 (ア)相違点1 本件訂正特許発明2が「液体噴射装置」であるのに対して,引用発明1は「プリンタ設備」であって液体を噴射する装置であるのか否かが不明である点。 (イ)相違点2 本件訂正特許発明2の「係合部」は,液体噴射装置の「可動部」と係合するものであるのに対して,引用発明1の「ラッチロック本体」は,プリンタ設備の部材に係合するものであるものの,プリンタ設備の係合する部材が「可動部」であるか否かが不明である点。 (ウ)相違点3 本件訂正特許発明2の液体噴射装置が「液体供給部」を有するものであるのに対して,引用発明1のプリンタ設備は「液体供給部」を有するものであるか否かが不明である点。 (エ)相違点4 本件訂正特許発明2の「係合部」が,第3壁に設けられた「開口」から突出するように設けられているのに対して,引用発明1のインクカートリッジ本体1の「ラッチロック本体」は露出しており,「左壁」は,ラッチロック本体が突出する開口を備えるものではない点。 ウ 判断 事案に鑑み,相違点4について検討する。 引用発明1のインクカートリッジ本体1の「(本件訂正特許発明2の「第3壁」に相当する)左壁」と「(本件訂正特許発明2の「係合部」に相当する)ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部(以下,単に「先端部」という。)」との関係について検討する。 引用発明1において,左壁に開口は設けられておらず,ラッチロック本体2は,プリンタ設備本体に装着される方向からみて左壁の前面に取り付けられているから,「先端部」は,「ラッチロック本体2」とともに露出しており,本件訂正特許発明2のように,該先端部が開口から突出するものではない。 そして,引用発明1の課題は,「従来,・・・一旦ラッチロックが損壊されると,交換できず,全体的なインクカートリッジが廃棄されるので,全体的な実用性が良くない(段落[0002]参照)」という点に鑑み,「現有技術の不足点を克服して,構造が簡単で,使用しやすく,且つ,交換しやすいインクカートリッジのラッチロックを提供すること(段落[0003]参照)」であって,このような課題を解決するために,上記の構成を採用したものである。 ここで,液体噴射装置に装脱着される液体供給ユニットの係合部を,液体供給ユニットの壁に設けた開口から突出するように設けることが,特開2012-206407号公報(甲第1号証),中国実用新案公告第200963932号明細書(甲第2号証)に記載されているとおり周知技術といえるところ,当該周知技術を引用発明1に適用して,引用発明1のラッチロック本体2をインクカートリッジ本体1内である壁の内側に配置し,「左壁」に「先端部」が突出する「開口」を形成する構成とした場合には,ラッチロック本体2の回しスロット6による操作が上壁により困難となるため,ラッチロック本体2が,その機能を果たすことが困難となることとなる。 また,合わせて,上壁に開口を設けてスロット6を突出させるものとするとしても,壁面の存在により,ラッチロックの交換は困難となるから,「交換しやすいラッチロックという作用」を果たすという引用発明1に係る目的に反するものとなることは明らかである。 したがって,引用発明1に,上記周知技術を適用することには,阻害要因があると言え,該周知技術を引用発明1に組み合わせることには動機付けがない。 以上検討したとおりであるから,本件訂正特許発明2は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件の請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。 (2)本件訂正特許発明3について 請求項3は,本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用しており,本件訂正特許発明2が引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定した請求項3に係る特許も,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない (3)小括 以上のとおりであるから,本件特許の請求項2及び3に係る特許,取消理由(決定の予告)で通知した理由によっては,取り消すことができない。 第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は,特許異議申立書において,訂正前の特許請求の範囲に関し,以下のとおり主張する。 請求項1ないし3に記載される本件特許発明1ないし3は,甲第1号証に記載された甲1発明である(以下,「主張1」という。), 請求項1ないし3に記載される本件特許発明1ないし3は,甲第2号証に記載された甲2発明,甲第3号証?甲第5号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものである(以下,「主張2」という。), 請求項1ないし3に記載される本件特許発明1ないし3は,甲第2号証に記載された甲2発明,甲第1号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものである(以下,「主張3」という。), 請求項1ないし3に記載される本件特許発明1ないし3は,甲第3号証に記載された甲3発明,甲第1号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものである(以下,「主張4」という。), 請求項1ないし3に記載される本件特許発明1ないし3は,甲第3号証に記載された甲3発明,甲第2号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものである(以下,「主張5」という。)。 なお,「甲第1号証」,「甲第1号証に記載された甲1発明」などの表記については,以下「甲1」,「甲1発明」などといい,他の甲号証についても「甲7」,「甲7発明」などという。 2 検討及び判断 (1)主張1について 甲1:特開2012-206407号公報 ア 甲1に記載された発明 甲1発明は,以下のとおりのものである。(令和2年1月27日付け取消理由通知参照) 「プリンタ10が備えるインク供給装置100に設けられるカートリッジ装着部110に装着され得るインクカートリッジ30であって, 幅方向51に短く,高さ方向52と奥行き方向53が幅方向51よりも長い扁平形状である略直方体形状の筐体31を有し,奥行き方向53は,挿入及び取出方向50と平行であり,幅方向51及び高さ方向52は,挿入及び取出方向50と直交し, 筐体31は,インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入される挿入向き56の前側の前壁40及び挿入向き56の後ろ側の後壁42を有し,前壁40と後壁42とは,奥行き方向53において所定の距離をおいて配置されており,筐体は,前壁40及び後壁42とを接続し,かつ前壁40の上端から後壁42の上端に向けて延びる上壁39,及び前壁40の下端から後壁42の下端に向けて延びる下壁41を有し,上壁39及び下壁41は,高さ方向52において対向しており, 筐体31の前壁40における高さ方向52の下側に設けられたインク供給部43と, 筐体31の後壁42側の高さ方向52の筐体31の上壁39の上側に設けられている操作部材60と,を有し, 操作部材60は,長孔49に案内され,高さ方向52に沿ってスライド可能であり,操作部材60において,前壁40側となる先端には,係止部45が形成されており,操作部材60の後端62は,後壁42から突出可能とされており,係止部45は,インクカートリッジ30の幅方向51及び高さ方向52に拡がる係止面46を有する突部であり,筐体31の上壁39から上側へ,上壁39に形成された開口から突出されており,係止面46には,インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態で,カートリッジ装着部110の筐体としてのケース101に設けられた係合部材145が係合し,長孔49には,操作部材60を高さ方向52の上向きへ付勢するコイルバネ64が設けられており,操作部材60に外力が付与されていない状態では,操作部材60は,高さ方向52の上向きにコイルバネ64により付勢されて,係止部45が筐体31の上壁39から突出する位置となり,操作部材60が高さ方向52の下向きへ押されることにより,操作部材60は,コイルバネ64の付勢に抗して下向きへ移動可能とされ, カートリッジ装着部110に挿入されると,係合部材145が係止部45の傾斜面48に接し,これにより,係合部材145が回動して,付勢力に抗してロック位置からアンロック位置へ移動し,装着位置に到達すると,筐体31の係止部45における係止面46が,係合部材145の係合端部146を挿入向き56へ通り過ぎ,これにより,係合部材145の係合端部146が傾斜面48に支持されなくなるので,係合部材145が回動して,係合端部146が係止面46に接し,これにより,係合部材145が係止部45に係合し, カートリッジ装着部110から取り外されるときには,操作部材60の後端62の一部分が高さ方向52の下向きへコイルバネ64の付勢に抗して,ユーザによって押し下げられ,これにより,操作部材60の係合部45が筐体31の上壁39に没入され,これにより,係合部材145の係合端部146から係止面46が離れる, インクカートリッジ30。」 イ 対比 本件訂正特許発明2と甲1発明とを対比すると,本件訂正特許発明2の係合部が「Z方向において前記第2壁から前記付勢部の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されている」のに対して,甲1発明において(本件訂正特許発明2の係合部に相当する)係合端部146が,そのような範囲に配置されない点において,少なくとも相違しており,本件訂正発明2と甲1発明との間において相違点がある以上,本件訂正特許発明2は甲1発明とはいえない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に新たな発明特定事項を付加して限定したものであるから,本件訂正特許発明3が甲1発とはいえない。 ウ 判断 本件訂正特許発明2及び3は,甲1発明ではないから,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。 エ 小括 以上のとおりであって,異議申立人の主張1による理由によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第1項の規定に違反してされたものということはできないから,異議申立人の当該主張を採用することはできない。 (2)主張2について 甲2:中国実用新案公告第200963932号(なお,甲2に記載された事項及び発明を認定するにあたり,異議申立人が提出した日本語訳文を用いた。) ア 甲2に記載された発明 (ア)「 」(第3頁第13?23行) (訳:本実用新案は,構造が簡単で,位置決めが正確で確実に機能するロックラッチ・ロケート手段付きインクカートリッジを開示する。 上記の目的を達成するために,本実用新案は以下の技術案によって実現する。 インクカートリッジ本体またはインクタンクとそれに接続されたカートリッジホルダーを備え,インクカートリッジ本体またはインクタンクにインク流出口が設けられ,インクカートリッジ本体またはカートリッジホルダーの上部に,インクカートリッジ本体またはカートリッジホルダーの側面に突出した独立のロック本体が装着され,ロック本体にロックラッチが形成され,ロック本体に弾性体が取り付けられ,ロックラッチの位置は,装着されたプリンタのロック溝の位置に対応していることを特徴としている。前記ロック本体に,さらにロックラッチと連動するハンドルが接続される。 前記技術案に基づき製造されたロックラッチ・ロケート手段付きインクカートリッジは,ロックラッチがプリンタのロック溝に対応する位置に設置され,精確な位置決めができる。インクカートリッジを装着するときは,インクカートリッジをプリンタのカートリッジフレームに挿入し,ロックラッチでプリンタのロック溝に係合し,弾性体で押さえ,インクカートリッジをプリンタに正しく固定する。インクカートリッジを取り外すときは,ハンドルをつまみ,弾性体を圧縮してハンドルをロックラッチと一緒にロックケース内に縮め,ロックラッチがプリンタのロック溝から外れ,インクカートリッジを簡単に取り出すことができる。) (イ)「 」(第4頁第11?20行) (訳: 図1,図2はロックラッチ・ロケート手段付きインクカートリッジの構成模式図である。図に示すように,インクカートリッジ本体1は開口部を有するインク格納槽2であり,インク格納槽2にはインク流出口3が形成され,インク格納槽2の開口部にはインクタンク蓋4が被せられ,それによって密封され,インク格納槽2の上部にはロックケース5が形成され,ロックケース5にはストッパ6が形成され,図3に示すように,ロックケース5内には湾曲型の開口を有するロック本体7が装着され,ロック本体7の一端はくさび状のロックラッチ8で,他端はハンドル9であり,ロック本体7はロックケース5のストッパ6に挿入され,ロックケース5の内壁とロック本体7との間にはばね10が取り付けられており,ばね10によってロック本体7の両端をインクカートリッジ本体1の側面の外に押し出して付勢し,ロックラッチ8の位置は対応するプリンタのロック溝の位置に対応している。カートリッジ蓋4もロックケース5の開口部を覆い,ロック本体7とばね10をインクカートリッジ本体1に固定させる。上記実施形態では,ばね10のほか,ロック本体7を弾性ゴムで付勢してもよい。ロックラッチ8に対向する別のインクカートリッジ本体1の側面には,ロックラッチ8と係合してインクカートリッジ1をプリンタに固定する位置決めブロック11が形成される。) (ウ) (エ) (オ)上記(ウ)及び(エ)で摘記した図1及び図2からは,インク流出口3が形成されるインク格納槽2の壁(以下,「第1壁」という。)と,該第1壁に対向する壁(以下,「第2壁」という。)を備えることが看取できる。 また,第1壁と第2壁が対向する方向を「Z方向」と定義し,該「Z方向」は図1において上下方向となる。 (カ)上記(ウ)及び(エ)で摘記した図1及び図2からは,ロックラッチ8が突出する開口が設けられるインク格納槽2の壁(以下,「第3壁」という。)と,該第3壁と対向する壁(以下,「第4壁」という。)を備えることが看取できる。 また,第3壁と第4壁が対向する方向を「Y方向」と定義し,該「Y方向」は図1において左右方向となる。 (キ)上記(ウ)及び(エ)で摘記した図1及び図2からは,インク格納槽2の6面を構成する壁のうち,第1壁ないし第4壁以外の壁である第5壁と第6壁を備えることが看取できる。 また,第5壁と第6壁が対向する方向を「X方向」と定義し,該「X方向」は図1において紙面奥行き方向を「X方向」となる。 (ク)上記(ウ)で摘記した図1からは,ロック本体7は,X方向から見て「コ字状」の形状をしており,「コ字」を構成する上の横棒は「ハンドル9」,下の横棒は「ロックラッチ8」が相当し,上下の横棒を連結する縦棒の上部に「ばね10」が当接していることが看て取れる。 また,ロックラッチ8の下端は,ロックケース5の底部と摺動して,Y方向に移動するものであって,ロックラッチ8のくさび状に形成された先端は,Z方向で見てロックケース5の底部よりも下方にあることが看て取れる。 (ケ)上記(ア)の摘記事項における,「ロックラッチ」,「弾性体」,「ハンドル」及び「ロックケース」は,それぞれ,上記(イ)の摘記事項における,「ロックラッチ8」,「ばね10」,「ハンドル9」及び「ロックケース5」と同一のものを指すことは明らかである。 (コ)上記(イ)で摘記した「ばね10によってロック本体7の両端をインクカートリッジ本体1の側面の外に押し出して付勢し」という記載における,「インクカートリッジ本体1の側面」は,上記(カ)で定義した「第3壁」と同じものであることは明らかである。 (サ)上記(ア)ないし(コ)の事項から,甲2には,以下の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「プリンタのカートリッジフレームに挿入されるインクカートリッジであって, インクカートリッジ本体1はインク格納槽2であり, インク格納槽2は, Z方向において対向する第1壁及び第2壁と, Y方向において対向する第3壁及び第4壁と, X方向において対向する第5壁及び第6壁と, 前記第1壁に形成されたインク流出口3と, を備え, インク格納槽2の上部には,ロックケース5が形成され, ロックケース5内には湾曲型の開口を有するロック本体7が装着され, ロック本体7は,X方向から見て「コ字状」の形状をしており,「コ字」を構成する上の横棒はハンドル9,下の横棒はロックラッチ8であり, ロックラッチ8は,前記第3壁に形成された開口から突出するように設けられるとともに,ロックラッチ8の位置はプリンタのロック溝の位置に対応しており,ロックラッチ8の下端は,ロックケース5の底部と摺動して,Y方向に移動するものであって,ロックラッチ8の先端は,Z方向で見てロックケース5の底部よりも下方にあって, ロックケース5の内壁とロック本体7との間にはばね10が取り付けられており,上下の横棒を連結する縦棒の上部に当接するばね10によってロック本体7の両端であるハンドル9とロックラッチ8をインクカートリッジ本体1の第3壁の外に押し出して付勢し, 装着されるときには,インクカートリッジは,プリンタのカートリッジフレームに挿入され,ロックラッチ8がプリンタのロック溝に係合され,ばね10で押さえられ,プリンタに正しく固定され, 取り外されるときには,ハンドル9がつままれ,ばね10が圧縮されてハンドル9がロックラッチ8と一緒にロックケース内に縮められ,ロックラッチ8がプリンタのロック溝から外れる, インクカートリッジ。」 イ 対比 本件訂正特許発明2と甲2発明とを対比すると,本件訂正特許発明2の係合部が「Z方向において前記第2壁から前記付勢部の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されている」のに対して,甲2発明において(本件訂正特許発明2の係合部に相当する)ロックラッチ8が,そのような範囲に配置されない点において,少なくとも両者は相違している。 ウ 判断 上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項について,甲3ないし甲5には記載も示唆もなく,当業者が適宜行う程度の設計的事項であるとも認められない。 したがって,本件訂正特許発明2は,甲2発明及び甲3ないし甲5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定したものであるから,同様の理由により,本件訂正特許発明3も,甲2発明及び甲3ないし甲5に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 小括 以上のとおりであって,異議申立人の主張2による理由によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできないから,異議申立人の当該主張を採用することはできない。 (3)主張3について 甲2発明は「(2)主張2について」のアで,認定した上記のとおりのものである。 そして,本件訂正特許発明2と甲2発明とを対比すると,両者の間には,上記「(2)主張2について」のイで認定したとおりの相違点が存在する。 そして,甲1に上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項については記載も示唆もされておらず,また,上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項が,当業者が適宜行う程度の設計的事項であるとする証拠も見出せない。 したがって,本件訂正特許発明2は,甲2発明及び甲1に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定したものであるから,同様の理由により,本件訂正特許発明3も,甲2発明及び甲1に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 以上のとおりであって,異議申立人の主張3による理由によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできないから,異議申立人の,当該主張を採用することはできない。 (4)主張4について 甲3:特開2013-141804号公報 ア 甲3に記載された事項及び発明 (ア)「【0024】 A.第1実施例: A-1.印刷材供給システムの全体構成: 図1は,本発明の第1実施例としての印刷材供給システム1を説明するための図である。図1には,互いに直交するXYZ軸が描かれている。図1のXYZ軸は他の図のXYZ軸に対応している。これ以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸を付している。印刷材供給システム1は,カートリッジ10と,印刷装置としてのプリンター50とを備える。 【0025】 印刷材供給システム1のカートリッジ10は,内部に印刷材としてのインクを収容し,ヘッド540にインクを流通させる。本実施例では,プリンター50のホルダー20(「カートリッジ装着部20」ともいう。)には,複数のカートリッジ10が着脱可能に装着される。本実施例では,6色(ブラック,イエロー,マゼンタ,ライトマゼンタ,シアンおよびライトシアン)のインクに対応して6種類のカートリッジ10が1つずつ,すなわち合計6つのカートリッジ10がホルダー20に装着される。なお,ホルダー60に装着されるカートリッジの数は,6つ以下であっても良いし,6つ以上であっても良い。 【0026】 印刷材供給システム1のプリンター50は,個人向けの小型インクジェットプリンターである。プリンター50は,キャリッジ520と,制御部510とを備える。キャリッジ520は,インクを紙やラベル等の印刷媒体90に噴射(供給)するヘッド540と,ホルダー20とを備える。ヘッド540は,インクを印刷媒体90に噴射するインク噴射機構を備える。プリンター50は,ホルダー20に装着されたカートリッジ10からヘッド540にインクを流通させ,ヘッド540から印刷媒体90にインクを吐出(供給)する。これにより,ヘッド540を用いて文字,図形および画像などのデータを印刷媒体90に印刷する。」 (イ)「【0038】 容器本体100は,略直方体形状である。容器本体100は,印刷材収容室180に対して異なる側(例えば,Z軸負方向側)に位置する第1?第6面100a?100fを有する。第1?第6面100a?100fは,容器本体100の外表面を形成する。また,第1?第6面100a?100fは,印刷材収容室180を区画規定する容器本体100の壁部の外表面を形成する。 【0039】 第1面100aは,印刷材収容室180に対してZ軸負方向側に位置する。第2面100bは,印刷材収容室180に対してX軸正方向側に位置する。第3面100cは,印刷材収容室180に対してX軸負方向側に位置する。第4面100dは,印刷材収容室180に対してZ軸正方向側に位置する。第5面100eは,印刷材収容室180に対してY軸正方向側に位置する。第6面100fは,印刷材収容室180に対してY軸負方向側に位置する。なお,カートリッジ10について,第1面100aと第4面100dとが対向(Z軸方向)する方向を高さ方向とする。また,第2面100bと第3面100cとが対向する方向(X軸方向)を長さ方向とする。また,第5面100eと第6面100fとが対向する方向(Y軸方向)を幅方向とする。 【0040】 第1面100aは,装着状態において,ホルダー20の装置側収容室220の底面と対向する。よって,第1面100aは,「底面100a」とも言える。第1面100aは平面であり,外形が長方形である。本実施例では,装着状態において第1面100aは水平面となる。なお,他の実施例では,装着状態において第1面100aが鉛直方向に平行な面となっても良い。また,本実施例において「平面」とは,概形が平面であれば良く,面全域が一様に平坦である必要はない。例えば,面の一部に凹凸を有していても良い。 【0041】 印刷材供給口110は,第1面100aから容器本体100の外方(Z軸負方向)に突出した突起形状である。すなわち,印刷材供給口110は,第1面100aから印刷材収容室180が位置する側とは反対側に突出する。図6に示すように,印刷材供給口110は,容器本体100に形成された流通流路114を介して印刷材収容室180と連通している。また,印刷材供給口110の内側にはスポンジ状のフォーム(発泡樹脂体)112が配置され,印刷材供給口110からインクが漏れ出すことを防止している。」 (ウ)「【0044】 図3及び図6に示すように,第2面100bは,第1面100aから第4面100dに向かう順に,第1の接続面100b1と,傾斜面100b2(図6)と,第2の接続面100b3とを有する。」 (エ)「【0047】 第2の接続面100b3には,容器側係合部124と,力点部190とが形成されている。容器側係合部124は,第2の接続面100b3のうち,傾斜面100b2が接続された部分に近接している。容器側係合部124は,第2面100b(詳細には,第2の接続面100b3)から外方(X軸正方向)に突出する突起状である。すなわち,容器側係合部124は,第2面100bから印刷材収容室180が位置する側とは反対側に向けて突出する。また,図4に示すように,容器側係合部124のY軸方向の長さはカートリッジ10の幅よりも短い。容器側係合部124は,レバー40と係合することで装着状態におけるカートリッジ10の動きを規制する。具体的には,装着状態におけるカートリッジ10の上方向(Z軸正方向)への動きを規制する。」 (オ)「【0053】 図7に示すように,ホルダー20は,カートリッジ10を着脱可能とするために凹状形状の装置側収容室220を有する。凹状形状の装置側収容室220は,カートリッジ10の着脱の際にカートリッジ10を通過させるための開口25dが形成されている。装置側収容室220は,複数の壁によって区画形成されている。詳細には,ホルダー20は,底壁25aと,第1の側壁25bと,第2の側壁25cと,第3の側壁25eと,第4の側壁25fと,を有する。底壁25aは,開口25dと対向し,凹状形状の装置側収容室220の底面を形成する。第1?第4の側壁25b,25c,25e,25fは凹状形状の装置側収容室220の側面(側部)を形成する。5つの壁25a,25b,25c,25e,25fは,変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)やポリプロピレン(PP)等を用いて形成されている。また,装置側収容室220を区画形成する5つの壁25a,25b,25c,25e,25fをまとめて「収容室形成壁200」とも呼ぶ。」 (カ)「【0058】 図7及び図8に示すように,第1の側壁25bにはレバー40が設けられている。レバー40は,カートリッジ10のホルダー20に対する着脱に利用される。レバー40は,装着されるカートリッジ10の個数(6つ)に対応して6つ配置されている。レバー40は,第1の側壁25bに回動自在に支持されている。レバー40は,Y軸方向(複数のカートリッジ10の配列方向)に平行な回転軸410wを支点として回動する。なお,レバー40の詳細は後述する。」 (キ)「【0062】 図9(A),(B)に示すように,レバー40は,凹状形状の案内部420と,案内部420の両側面に設けられた突起状の一対の軸部410と,案内部420よりも下方に形成された切欠状のホルダー側係合部(装置側係合部)440と,案内部420の上端部に接続されると共に下方に延び,外力が加えられるためのホルダー側解除部(装置側解除部)402と,案内部420の上端側部分から下方に延び弾性変形する腕部450と,を備える。レバー40は,案内部420の凹状形状の凹部が装置側収容室220を向くようにホルダー20に設けられている。ホルダー側解除部402を単に「解除部402」とも呼ぶ。」 (ク)「【0067】 A-4.カートリッジ10の脱着動作: 図10及び図11を用いてカートリッジ10をホルダー20に取り付ける様子について説明する。図10及び図11は,カートリッジ10をホルダー20に取り付ける様子を示した図である。図10(A)は,取り付けの様子を示した第1の図である。図10(B)は,取り付けの様子を示した第2の図である。図11(A)は,取り付けの様子を示した第3の図である。図11(B)は,取り付けの様子を示した第4の図である。また図10及び図11は,図2のF2-F2断面に相当する図である。なお,図10及び図11のホルダー20の断面図は,レバー40近傍以外の部分は簡略化して図示している。 【0068】 図10(A)に示すように,利用者は,第3面100cが第2面100bよりも下方になるようにカートリッジ10を傾斜させて,カートリッジ10を装置側収容室220に収容する。詳細には,利用者は,第3面100cの突起部160をホルダー20の孔部202に挿入する。 【0069】 次に,図10(B)に示すように,利用者はカートリッジ10の第2面100b側を下方に押し進める。詳細には,利用者は,レバー40の案内部420の底面に容器側係合部124を当接させた状態で,第2面100bを下方に押し進める。第2面100bが下方に押し進められることで,容器側係合部124が案内部420を装置側収容室220の外方(X軸正方向側)に押す。これにより腕部450が第1の側壁25bに当接する。この状態で,さらに案内部420が外方に押されることで,腕部450が弾性変形する。 【0070】 図11(A)に示すように,さらに利用者は案内部420の底面に容器側係合部124を当接させてカートリッジ10を下方に押し進める。これにより,図11(B)に示すように,容器側係合部124が装置側係合部440に到達し,無負荷状態の形状にレバー40が戻ろうとする。すなわち,装置側係合部440が腕部450によりカートリッジ10側に押し出され,装置側係合部440と容器側係合部124とが係合する。本実施例では,装着状態において,腕部450は弾性変形していない状態であり,レバー40は無負荷状態の形状である。装着状態において,力点部190は回転支点166w,216wよりも高さ方向について上側に位置する。また,装着状態において,解除部402が第2面100bの一部(力点部190)よりも下側に位置するように装置側収容室220はカートリッジ10を収容する。また,装着状態において,カートリッジ10は,ホルダー20に設けられたシール部材242(図8)と接点機構280(図8)からそれぞれ外力Ft,Fvを受ける。外力Ftの向きはZ軸正方向であり,外力Fvの向きはZ軸正方向とX軸負方向とを含む方向である。」 (ケ)「【0075】 図13(A)に示すように,カートリッジ10をホルダー20から取り外す際には,利用者は,まず装置側解除部402に外力Fsを加える。これにより,腕部450が第1の側壁面部25bに当接し弾性変形すると共に,装置側係合部440が第2の側壁面部25cから離れるように変位する。そして,容器側係合部124と装置側係合部440との係合が解除される。」 上記(ア)ないし(ケ)より,甲3には,以下の発明(以下,「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「カートリッジ10と,プリンター50とを備える印刷材供給システム1であって, プリンター50は,ホルダー20に装着されたカートリッジ10からインクを流通させて,インクを印刷媒体90に噴射するインク噴射機構を備えるヘッド540に供給し, カートリッジ10は,内部にインクを収容する容器本体100と,インクを外部に流通させる印刷材供給口110とを備え, 容器本体100は,略直方体形状であって,容器本体100の外表面は第1?第6面100a?100fによって形成され, 第1面100aと第4面100dとが対向するZ軸方向を高さ方向とし, 第2面100bと第3面100cとが対向するX軸方向を長さ方向とし, 第5面100eと第6面100fとが対向するY軸方向を幅方向とし, 第1面100aは,装着状態において,ホルダー20の装置側収容室220の底面と対向するとともに,第1面100aから容器本体100の外方(Z軸負方向)には印刷材供給口110が突出し, 第2面100bは,第1面100aから第4面100dに向かう順に,第1の接続面100b1と,傾斜面100b2と,第2の接続面100b3とを有するものであって,そのうち第2の接続面100b3には,容器側係合部124と,力点部190とが形成され, 容器側係合部124は,第2の接続面100b3からX軸正方向に突出しており,レバー40と係合することで装着状態におけるカートリッジ10の動きを規制し, レバー40は,カートリッジ10を着脱可能とするために凹状形状の装置側収容室220の第1の側壁25bに設けられて,装置側解除部402と案内部420と装置側係合部440を有し, カートリッジ10をホルダー20に取り付ける際には,レバー40の案内部420の底面に容器側係合部124を当接させた状態で,第2面100bを下方に押し進め,容器側係合部124が装置側係合部440に到達すると,装置側係合部440がカートリッジ10側に押し出され,装置側係合部440と容器側係合部124とが係合し, カートリッジ10をホルダー20から取り外す際には装置側解除部402に外力を加え,装置側係合部440が第2の側壁面部25cから離れるように変位して,容器側係合部124と装置側係合部440との係合が解除される印刷材供給システム1。」 イ 対比 本件訂正特許発明2と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「装置側解除部402と案内部420と装置側係合部440を有するレバー40」は,本件訂正特許発明2の「可動部」に相当する。 甲3発明の「インク噴射機構を備えるヘッド540」は,本件訂正特許発明2の「液体噴射装置」に相当する。 甲3発明の「第1面100a」は,本件訂正特許発明2の「第1壁」に相当する。 甲3発明の「第4面100d」は,本件訂正特許発明2の「第2壁」に相当する。 甲3発明の「第2面100b」は,本件訂正特許発明2の「第3壁」に相当する。 甲3発明の「第3面100c」は,本件訂正特許発明2の「第4壁」に相当する。 甲3発明の「印刷材供給口110」は,本件訂正特許発明2の「液体供給部」に相当する。 甲3発明の「容器側係合部124」は,本件訂正特許発明2の「係合部」に相当する。 甲3発明の「第1面100aと第4面100dとが対向するZ軸方向を高さ方向とし」,「第1面100aから容器本体100の外方(Z軸負方向)には印刷材供給口110が突出」との記載から,甲3発明において,第4面100dから第1面100aに向かう方向が,Z軸の負方向である。したがって,甲3発明の「Z軸」は,本件訂正特許発明2の「Z軸」に相当し,甲3発明の「-Z方向」「+Z方向」は,本件訂正特許発明2の「-Z方向」「+Z方向」に相当する。 甲3発明の「第2面100bと第3面100cとが対向するX軸方向を長さ方向とし」,「容器側係合部124は,第2の接続面100b3からX軸正方向に突出しており」との記載から,甲3発明において,第3面100cから第2面100bに向かう方向が,X軸の正方向である。したがって,甲3発明の「X軸」は,本件訂正特許発明2の「Y軸」に相当し,甲3発明の「-X方向」「+X方向」は,本件訂正特許発明2の「-Y方向」「+Y方向」に相当する。 上記によれば,本件訂正特許発明2と甲3発明とは,少なくとも本件訂正特許発明2の係合部が「Z方向において前記第2壁から前記付勢部の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されている」のに対して,甲3発明において(本件訂正特許発明2の係合部に相当する)容器側係合部124が,そのような範囲に配置されない点において相違している。 ウ 判断 甲1において,上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項について,記載も示唆もないこと,上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項が,当業者が適宜行う程度の設計的事項であるとも認められないことは,上記(3)において上述したとおりである。 したがって,本件訂正特許発明2は,甲3発明及び甲1に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定したものであるから,同様の理由により,本件訂正特許発明3も,甲3発明及び甲1に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 小括 以上のとおりであって,異議申立人の主張4による理由によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできないから,異議申立人の当該主張を採用することはできない。 (5)主張5について 甲3発明は「(4)主張4について」で,認定した上記のとおりのものであり,本件訂正特許発明2と甲3発明とを対比すると,両者の間には,上記「(4)主張4について」のウで認定したとおりの相違点が存在することは上述のとおりである。。 そして,甲2において,上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項を備えていないことは,上記(2)のについて,記載も示唆もないことは上記(2)イのとおりであるし,,上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項当業者が適宜行う程度の設計的事項であるとも認められないことも上述のとおりである。 したがって,本件訂正特許発明2は,甲3発明及び甲2に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定したものであるから,同様の理由により,本件訂正特許発明3も,甲3発明及び甲2に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 以上のとおりであって,異議申立人の主張5によるり優によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできないから,異議申立人の当該主張を採用することはできない。 第5 令和2年11月18日付けで,特許異議申立人が提出した意見書の主張について 1 意見書の主張 特許異議申立人は,上記意見書において,令和2年9月28日付け訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項2及び3に関し,以下のとおり主張する。 請求項2及び3に記載される本件特許発明2及び3は,甲6に記載された甲6発明である(以下,「主張6」という。), 請求項2及び3に記載される本件特許発明2及び3は,甲2に記載された甲2発明,甲3?甲5,及び甲6,甲7に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものである(以下,「主張7」という。), 請求項2及び3に記載される本件特許発明2及び3は,甲3に記載された甲3発明,甲7に記載された甲7発明から当業者が容易に発明をすることができたものである(以下,「主張8」という。), 請求項2及び3に記載される本件特許発明2及び3は,甲4に記載された甲4発明,甲7に記載された甲7発明から当業者が容易に発明をすることができたものである(以下,「主張9」という。)。 2 検討及び判断 (1)主張6について 甲6は,「第3 当審の判断」,「3 特許法第29条第2項に関する取消理由ついて」,「ア 引用文献1に記載された事項及び発明」で検討した引用文献1であるから,「甲6発明」は「引用発明1」のことであり,本件訂正特許発明2と甲6発明との間には,「イ 対比」で検討したとおりの「相違点1ないし4」が存在する。 そして,相違点がある以上,本件訂正特許発明2は甲6発明ではない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定したものであるから,本件訂正特許発明3と甲6発明とを対比すると,少なくとも上記の相違点があることになるから,本件訂正特許発明3も甲6発明ではない。 したがって,本件訂正特許発明2及び3は,甲6発明ではないから,異議申立人の主張6による理由によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものということはできないから,異議申立人の当該主張を採用することはできない。 (2)主張7について 本件訂正特許発明2と甲2発明とを対比すると,本件訂正特許発明2の係合部が「Z方向において前記第2壁から前記付勢部の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されている」のに対して,甲2発明において(本件訂正特許発明2の係合部に相当する)ロックラッチ8が,そのような範囲に配置されない点において,少なくとも両者は相違している。 そして,上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項について,甲3ないし甲5には記載も示唆もなく,当業者が適宜行う程度の設計的事項であるとも認められない,としたことは,「第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について」,「(2)主張2について」で述べたとおりである。 そして,出願人は上記相違点にかかる本件訂正特許発明2の発明特定事項が,甲6,甲7に記載されていると主張しているので検討する。 ア 甲6の記載事項について 甲6は,「第3 当審の判断」,「3 特許法第29条第2項に関する取消理由ついて」,「ア 引用文献1に記載された事項及び発明」で検討した引用文献1であるから,「甲6発明」は「引用発明1」のことであり,「イ 対比」で検討したとおり,甲6の「ラッチロック本体2の左側のアーム部の先端部」は,前記Z方向において前記上壁から前記スプリング5の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されているといえる。 つまり,甲6には,上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項に相当する技術事項が記載されていると認められる。 イ 甲7の記載事項について 甲7:中国実用新案公告第200957693号(甲第7号証として,異議申立人が令和2年5月21日付け意見書とともに提出したもの。また,甲7に記載された事項を認定するにあたり,異議申立人が提出した日本語訳文を用いた。) 甲7における「締付ブロック2」は,図1から看て取れるように,略く字状の部材であり,一側の上端と中間部に二つの突起を,他側の中間部に一つの突起を有し,他側の一つの突起には(本件訂正特許発明2の「付勢部部」に相当する)スプリング5が嵌められるものである。 甲7において,締付ブロック2のどの部位が,液体噴射装置に係合するかは明記されないが,仮に,締付ブロック2の一側の中間部の突起が,本件訂正特許発明2の「係合部」に相当するとした場合,甲7の図1において,鉛直下方向を-Z方向,鉛直上方向を+Z方向とし,インクカートリッジ・ハウジング1の-Z方向にある壁を下壁,+Z方向にある壁を上壁とすると,甲7の「締付ブロック2の一側の中間部の突起」は,前記Z方向において前記上壁から前記スプリング5の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されているといえる。 つまり,甲7には,上記相違点に係る本件訂正特許発明2に係る発明特定事項に相当する技術事項が記載されていると認められる。 ウ 甲3ないし甲5に記載された事項 甲3ないし甲5には,本件訂正特許発明2における「液体噴射装置が有し,液体供給ユニットの係合部が係合する可動部」に相当する構成が記載されているものと認められる。 エ 判断 甲2発明のインクカートリッジ本体1における「(本件訂正特許発明2の「係合部」に相当する)ロックラッチ8の先端(以下,単に「先端」という。)」の位置について検討する。 ロックラッチ8の下端は,ロックケース5の底部と摺動して,Y方向に移動するものであって,ロックラッチ8の先端は,Z方向で見てロックケース5の底部よりも下方にある。 また,甲2発明の「(本件訂正特許発明2の「付勢部」に相当する)ばね10」は,「コ字状」の形状をしているロック本体7の上下の横棒を連結する縦棒の上部に当接している。 ここで,液体噴射装置に装脱着される液体供給ユニットの係合部において「Z方向において第2壁から付勢部の-Z方向における端部までの範囲に配置されている」ことが,例えば甲6,甲7に記載されているように周知技術であったとしても,甲2発明のような全体の形状として「コ字状」の形状をしているロック本体7であって,先端がZ方向で見てロックケース5の底部よりも下方にあり、かつ、付勢部であるばね10がロック本体7のZ方向で見て上部に当接するものに,上記の周知技術を適用する動機付けがない。 仮に適用したとして,甲2発明の「先端」を,「Z方向において第2壁から付勢部の-Z方向における端部までの範囲に配置されている」ようにすることは,当業者が容易になし得る技術的事項の範囲を超えたものと言わざるを得ない。 したがって,本件訂正特許発明2は,甲2発明,甲3?甲5,及び甲6,甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定したものであるから,同様の理由により,本件訂正特許発明3も,甲2発明,甲3?甲5,及び甲6,甲7に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 小括 以上のとおりであって異議申立人の主張7による理由によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできないから異議申立人の当該主張を採用することはできない。 (3)主張8について 本件訂正特許発明2と甲3発明とを対比する。 ここで,甲3発明は「(4)主張4について」で検討したとおりであって,本件訂正特許発明2と甲3発明とは, 少なくとも,本件訂正特許発明2の係合部が「第3壁に設けられた開口からの突出寸法が変化するよう,+Y方向及び-Y方向に移動可能に設けられ」,「+Y方向に付勢する付勢部を備え」,「Z方向において第2壁から付勢部の-Z方向における端部までの範囲に配置」されるものであるのに対して,甲3発明において,「(本件訂正特許発明2の係合部に相当する)容器側係合部124」が,移動可能ではなく,付勢部を備えるものではなく,そのような範囲に配置されない点において相違している。 そして,甲7には「(2)主張7について」,「イ 甲7の記載事項について」で検討したとおり,甲7には,上記相違点に係る本件訂正特許発明2の発明特定事項が記載されているものと認められる。 しかしながら,甲3発明において,本件訂正特許発明2の係合部に相当する「容器側係合部124」は,そもそも移動可能に設けられたものではなく,プリンター50にカートリッジ10を着脱する際に付勢部を必要とするものでもなく,そのような甲3発明に甲7に記載された発明を適用する動機付けがない。 仮に適用したとして,甲3発明の「容器側係合部124」を,「第3壁に設けられた開口からの突出寸法が変化するよう,+Y方向及び-Y方向に移動可能に設けられ」,「+Y方向に付勢する付勢部を備え」,「Z方向において第2壁から付勢部の-Z方向における端部までの範囲に配置」ようにすることは,当業者が容易になし得る技術的事項の範囲を超えたものと言わざるを得ない。 したがって,本件訂正特許発明2は,甲3発明,甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定したものであるから,同様の理由により,本件訂正特許発明3も,甲3発明,甲7発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 以上のとおりであって異議申立人の主張8による理由によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできないから異議申立人の当該主張を採用することはできない。 (4)主張9について 甲4:特開2013-163364号公報 ア 甲4に記載された事項及び発明 (ア)「【0096】 A.第1実施形態: A-1.印刷材供給システムの全体構成: 図1は,印刷材供給システム10の構成を示す斜視図である。図1には,互いに直交するXYZ軸が描かれている。図1のXYZ軸は他の図のXYZ軸に対応している。これ以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸を付している。印刷材供給システム10は,カートリッジ20と,印刷装置としてのプリンター50とを備える。印刷材供給システム10では,プリンター50のホルダー60に,利用者によってカートリッジ20が着脱可能に装着される。」 (イ)「【0099】 図1に示す印刷材供給システム10のプリンター50は,個人向けの小型インクジェットプリンターである。プリンター50は,ホルダー60の他,制御部510と,ホルダー60を有するキャリッジ520と,を備える。キャリッジ520はヘッド540を備える。プリンター50は,ホルダー60に装着されたカートリッジ20から後述する印刷材供給管を介してヘッド540にインクを流通させ,紙やラベルなどの印刷媒体90に対してヘッド540からインクを吐出(供給)する。これにより,ヘッド540を用いて文字,図形および画像などのデータを印刷媒体90に印刷する。インクジェットプリンターに関して記述されているが,以下により詳細に記述されるように,他のタイプのプリンターや印刷材供給システムへの適用性は,当業者によって十分に理解され,本発明はこれに限定されるべきものではない。」 (ウ)「【0126】 外殻22(「カートリッジ本体22」とも呼ぶ。)は,カートリッジ20のインク収容部200を含む内部空間を区画形成する。また,外殻22はカートリッジ20の外壁面の少なくとも一部を構成する。外殻22はポリプロピレン(PP)等の合成樹脂により形成されている。カートリッジ20は,側面が合同な形状を有する角柱形状である。また,カートリッジ20は,概形が略直方体形状であるとも言える。なお,外殻22の一部は,樹脂製フィルムにより形成されていても良い。」 (エ)「【0128】 カートリッジ20の外殻22は,第1壁又は底部201と,第2壁又は上部202と,第3壁又は前部203と,第4壁又は後部204と,第5壁205と,第6壁206と,接続壁209とを有する。接続壁209は,第7壁207と第8壁208(図9)とを有する。第1?第8壁201?208は,カートリッジ20のインク収容部200を含む内部空間を形成する。なお,以下の説明で,符号201?208は,カートリッジの外殻22を構成する壁の,特に外表面(第1?第8面201?208)を意味するものとしても利用する。第1?第8壁の外表面(第1?第8面)201?208は,概ね平面である。概ね平面とは,面全域が完全に平坦である場合と,面の一部に凹凸を有する場合を含むことができる。つまり,面の一部に多少の凹凸があっても,カートリッジ20の外殻を構成する面や壁が把握できるような場合を含む。第1?第8面201?208の平面視における外形は,いずれも長方形である。 【0129】 ここで,第1面(第1壁)201,第2面(第2壁)202,第3面(第3壁)203,第4面(第4壁)204,第5面(第5壁)205,第6面(第6壁)206を,それぞれ,底面(底壁)201,上面(上壁)202,正面(前壁)203,背面(後壁)204,を左側面(左壁)205,右側面(右壁)206とも呼ぶ。壁の外表面を,前部203,後部204,上部202,底部201,あるいは第1から第4表面と呼ぶこともあり,第1表面は前部203,第2表面は後部204,第3表面は上部202,第4表面は底部201を指す。 【0130】 第1面201と第2面202は,Z軸方向において対向する。第1面201は,-Z軸方向側に位置する。第2面202は,+Z軸方向側に位置する。第3面203と第4面204は,X軸方向において対向する。第3面203は,+X軸方向側に位置する。第4面204は,-X軸方向側に位置する。第5面205と第6面206は,Y軸方向において対向する。第5面205は,+Y軸方向側に位置する。第6面206は,-Y軸方向側に位置する。」 (オ)「【0160】 図9に示すように,インク供給部280は第1面201から-Z軸方向側に突出して設けられている。インク供給部280は,印刷材流路282を介してインク収容部200と連通している。インク供給部280はプリンター50の印刷材供給管640が接続されて,インク収容部200のインクをヘッド540に流通させる。すなわち,インク供給部280は外部に向かって開口し,インク収容部200のインクを外部に流通させる。図5Aに示すように,インク供給部280は,第1面201から突出していなくても良い。1つの実施形態において,インク供給部280は,第1面201と面一または実質的に面一であっても良い。このような実施形態において,材供給管640はカートリッジ20が装着されたときに第1面と近接するよう起立させる。」 (カ)「【0166】 図7に示すように,第1のカートリッジ側規制部分210は,第3面203に設けられ ている。第1のカートリッジ側規制部分210は,インク供給部280および回路基板40よりも+Z軸方向側かつ+X軸方向側に設けられている。第1のカートリッジ側規制部分210は,レバー80(図2)に係止されることで装着状態におけるカートリッジ20の動きを規制する。第1のカートリッジ側規制部分210は,第3面203から+X軸方向(外方)に突出する突起である。Z軸方向の位置に関して,第1のカートリッジ側規制部分210は,第2辺291よりも第1辺290に近い側に設けられている。本実施形態では,第1のカートリッジ側規制部分210は,第1辺290と隣接している。」 (キ)「【0169】 カートリッジ20は,さらに,第4面204に設けられた第2のカートリッジ側規制部220と,第3面203に設けられた突出部260と,第7面207に設けられた第3のカートリッジ側規制部250とを備える。」 (ク)「【0185】 先に説明したとおり,プリンター50のホルダー60は,カートリッジ20を受け入れる凹形状のカートリッジ収容室602を形成する壁面として,5つの壁部601,603,604,605,606を有する。5つの壁部601,603,604,605,606をまとめて,「収容室形成壁部600」と呼ぶ。本実施形態では,5つの壁部601,603,604,605,606は,樹脂製の板状部材で形成されている。本実施形態では,5つの壁部601,603,604,605,606は,合成樹脂により形成されている。本実施形態では,5つの壁部601,603,604,605,606は,変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)を用いて形成されている。」 (ケ)「【0190】 壁部603は,壁部601の+X軸方向側に立設されている。本実施形態では,壁部603の最も+X軸方向側に,外壁603Wが設けられている。外壁603Wは,プリンター50の使用状態において,ホルダー60の正面を構成する。外壁603Wは,複数のカートリッジ20が装着された際のカートリッジ20の配列方向(Y軸方向)に沿って延びる。また,壁部603には,カートリッジ20の着脱に利用されるレバー80が設けられている。レバー80は,保持部材690を介して壁部603に動くことができるように,より詳細には回動可能に固定されている。言い換えれば,レバー80は,壁部603の一部を構成する保持部材690に固定されている。レバー80の回転軸は,Y軸方向に平行である。」 (コ)「【0208】 図19及び図21に示すように,レバー80は,操作部830と,一対の軸部850と,案内部820と,係合部810と,を有する。レバー80は,一端(+Z軸方向の端部)に操作部830を有し,他端(-Z軸方向の端部に)係合部810を有する。また,レバー80は,操作部830と装置側規制部810との間に回転軸800cを有している。つまり,レバー80は,操作部830と係合部810との間の位置を軸800cとして回動する。」 (サ)「【0232】 A-5.ホルダー60に対するカートリッジ20の着脱動作: 図24?図27は,カートリッジ20をホルダー60に対して装着する際の動作(装着又は搭載動作)を示す説明図である。図24?図27は,図5及び図17に対応する断面図である。図24?図27の順で時系列となっている。 【0233】 カートリッジ20をホルダー60に装着する際には,図24に示すように,ホルダー60の上面からカートリッジ20を挿入する。そして,カートリッジ20を第2のカートリッジ側規制部220側からホルダー60の内部へと-Z軸方向又は搭載方向に移動させつつ,第2のカートリッジ側規制部220を第2の装置側規制部620に挿入する。図24に示す状態では,カートリッジ20の第1のカートリッジ側規制部分210は,ホルダー60側のレバー80にある係合部810の+Z軸方向側に位置する。 【0234】 次に,図24に示す状態から,第2の装置側規制部620に挿入されている第2のカートリッジ側規制部220を回転支点として,+Y軸方向から見て時計回りに,つまり,第3壁203側をホルダー60の底壁部601に向って押し込むように,カートリッジ20を回転させる。すると,図25に示すように,第1のカートリッジ側規制部分210は,レバー80の案内部820,すなわち,図19に示した一対の案内壁部860a,860b及び案内底壁面821によって,Y軸及びX軸方向の動きが制限されながら,-Z軸方向に進む。 【0235】 さらに,図25に示す状態から,カートリッジ20の第3壁203側を押し込むように回転させると,第1のカートリッジ側規制部分210がさらに-Z軸方向側に押し込まれる。すると,図26に示すように,レバー80は,第1のカートリッジ側規制部分210によって-X軸方向に押されて,+Y軸方向から見て反時計回りに回転する。その際,レバー80は,弾性部材682に当接して,+Y軸方向から見て時計回りにレバー80を押し戻す方向への付勢力を弾性部材682から受ける。この付勢力は,-X軸方向のベクトル成分を含む外力である。つまり,レバー80の回動領域は,弾性部材682によって制限される。レバー80が弾性部材682に当接して付勢される状態は,図26に示す状態から,カートリッジ20をさらに押し込んで,第1のカートリッジ側規制部分210がレバー80の案内部820を乗り越えるまで維持される。 【0236】 さらに,図26に示す状態から,カートリッジ20の第3壁203側を押し込むように回転させて,第1のカートリッジ側規制部分210がレバー80の案内部820を乗り越えると,図27に示すように,第1のカートリッジ側規制部分210が-X軸方向側に移動するようにレバー80が回転する。これにより,係合部810が,第1係止位置810Lに移動して第1のカートリッジ側規制部分210を係止する。詳細には,右下の拡大図に示すように,係合部810の第1の装置側係止面811(第1の部分)と,第1のカートリッジ側規制部分210の第1のカートリッジ側係止面211(第1当接部)とが当接することで,カートリッジ20の+Z軸方向への動きが規制される。また,詳細には,係合部810の第2の装置側係止面813(第2の部分)と,第1のカートリッジ側規制部分210の第2のカートリッジ側係止面213(第2当接部)とが当接することで,カートリッジ20の+X軸方向側への動きが規制される。図27Aからわかるように,第1のカートリッジ側規制部分210と第2のカートリッジ側係止面213は,2つの独立したほぼ直角の面として図27の拡大図に示されているが,第1のカートリッジ側係止面211と第2のカートリッジ側係止面213とが,同じ面の独立した部分として構成されるように,第1の規制部210の第1の部分212が曲面で形成されていても良い。また,図27Bからわかるように,第1のカートリッジ側係止面211と第2のカートリッジ側係止面213とが同じ面の独立した部分として構成されるように,第1のカートリッジ側規制部分210の第1の部分212が,平坦な傾斜面や,それ以外の形状で形成されていても良い。搭載の一部として,カートリッジ20のインク供給部280が印刷材供給管640と接続し,第2のカートリッジ側規制部220と第2の装置側規制部620とが係合し,第1のカートリッジ側規制部分210と係合部810とが係合することで,カートリッジ20のホルダー60への装着が完了する。また,設計された装着位置に正しくカートリッジが装着されることで,カートリッジ側端子群400と装置側端子群700が電気的に接続され,カートリッジ20とプリンター50との間で信号の伝達が行なわれる。」 (シ)「【0240】 次に,カートリッジ20をホルダー60から取り外す際の動作を説明する。カートリッジ20をホルダー60から取り外す際には,利用者は操作部830を-X軸方向に押す。つまり,操作部830に対して,-X軸方向のベクトル成分を含む方向に外力Pr(図5)を加える。すると,レバー80は,回転軸800cを中心に係合部810を+X軸方向成分を含む方向に移動させる。同時に,第1のカートリッジ側係止面211が,図23に示す矢印Y22の方向へ回転移動する。これにより,係合部810と第1のカートリッジ側規制部分210との係止が外れ,カートリッジ20の第3面203側の+Z軸方向への動きの規制が解除される。カートリッジ20の+Z軸方向への動きの規制が解除されると,接点機構70からの付勢力Ptによってカートリッジ20の第3面203側が+Z軸方向側に移動する。すなわち,カートリッジ20を,図27に示す状態から,図26に示す状態へ移動させる。図26に示す状態から,第2の装置側規制部620に挿入されている第2のカートリッジ側規制部220を支点として,+Y軸方向から見て反時計回りに,つまり,第3壁203側をホルダー60の底壁部601から引き離すように回転させて,カートリッジ20を,図26の状態から図25の状態へ,さらには,図24の状態へ移動させる。このとき,利用者は突出部260に-X軸方向のベクトル成分を含む外力を加えることで,カートリッジ20を回転させることが可能である。このような操作に伴い,+Y軸方向側から見て,第3面203側が反時計回りに移動し第3面203側がさらに+Z軸方向側に移動する。最後に,カートリッジ20の第3面203側を利用者が摘まんで第2のカートリッジ側規制部220を第2の装置側規制部620から引き抜くことで,ホルダー60からカートリッジ20を取り外すことができる。」 (ス)段落【0240】の「図23に示す矢印Y22の方向」は,反時計回りの回転方向である。 (シ)上記(ア)ないし(ス)より,甲4には,以下の発明(以下,「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 「カートリッジ20と,プリンター50とを備える印刷材供給システム10であって, プリンター50は,ホルダー60に装着されたカートリッジ20からインクを流通させて,インクを印刷媒体90に噴射するインク噴射機構を備えるヘッド540に供給し, カートリッジ20は,内部にインクを収容するカートリッジ本体22と,インクを外部に流通させるインク供給部280とを備え, カートリッジ本体22は,略直方体形状であって,カートリッジ本体22の外表面は第1?第6面201?206と,第1面201と第3面203とで構成される隅部に設けられた,第7壁207と第8壁208とを有する接続壁209,によって形成され, 第1面201と第2面202とが対向するZ軸方向を高さ方向とし, 第3面203と第4面204とが対向するX軸方向を長さ方向とし, 第5面205と第6面206とが対向するY軸方向を幅方向とし, 第1面201は,装着状態において,ホルダー60の収容室形成壁部600の底面と対向するとともに,第1面201からカートリッジ本体22の-Z軸方向側にはインク供給部280が突出し, 第3面203には,第1のカートリッジ側規制部分210と,突出部260とが形成され, 第1のカートリッジ側規制部分210は,第3面203から+X軸方向側に突出しており,レバー80と係合することで装着状態におけるカートリッジ20の動きを規制し, レバー80は,カートリッジ20を着脱可能とするために凹状形状の収容室形成壁部600の壁部603に設けられて,操作部830と案内部820と係合部810を有し, カートリッジ20をホルダー60に取り付ける際には,レバー80の案内部820に第1のカートリッジ側規制部分210を当接させた状態で,第3面203を下方に押し進め,第1のカートリッジ側規制部分210が係合部810に到達すると,係合部810がカートリッジ20側に押し出され,係合部810と第1のカートリッジ側規制部分210とが係合し, カートリッジ20をホルダー60から取り外す際には操作部830に-X軸方向に外力を加えると,レバー80は,回転軸800cを中心に係合部810を+X軸方向成分を含む方向に移動させ,第1のカートリッジ側係止面211が,反時計回りの方向へ回転移動することで,係合部810と第1のカートリッジ側規制部分210との係止が外れる印刷材供給システム10。」 イ 対比 本件訂正特許発明2と甲4発明とを対比する。 甲4発明の「操作部830と案内部820と係合部810を有」する「レバー40」は,本件訂正特許発明2の「可動部」に相当する。 甲4発明の「インク噴射機構を備えるヘッド540」は,本件訂正特許発明2の「液体噴射装置」に相当する。 甲4発明の「第1面201」は,本件訂正特許発明2の「第1壁」に相当する。 甲4発明の「第2面202」は,本件訂正特許発明2の「第2壁」に相当する。 甲4発明の「第3面203」は,本件訂正特許発明2の「第3壁」に相当する。 甲4発明の「第4面204」は,本件訂正特許発明2の「第4壁」に相当する。 甲4発明の「インク供給部280」は,本件訂正特許発明2の「液体供給部」に相当する。 甲4発明の「第1のカートリッジ側規制部分210」は,本件訂正特許発明2の「係合部」に相当する。 甲4発明の「第1面201と第2面202とが対向するZ軸方向を高さ方向とし」,「第1面201からカートリッジ本体22の-Z軸方向側にはインク供給部280が突出し」との記載から,甲4発明において,第2面202から第1面201に向かう方向が,Z軸の負方向である。したがって,甲4発明の「Z軸」は,本件訂正特許発明2の「Z軸」に相当し,甲4発明の「-Z軸方向」「+Z軸方向」は,本件訂正特許発明2の「-Z方向」「+Z方向」に相当する。 甲4発明の「第3面203と第4面204とが対向するX軸方向を長さ方向とし」,「第1のカートリッジ側規制部分210は,第3面203から+X軸方向側に突出しており」との記載から,甲4発明において,第3面203から第4面204に向かう方向が,X軸の正方向である。したがって,甲4発明の「X軸」は,本件訂正特許発明2の「Y軸」に相当し,甲4発明の「-X軸方向」「+X軸方向」は,本件訂正特許発明2の「-Y方向」「+Y方向」に相当する。 上記によれば,本件訂正特許発明2と甲4発明とは, 少なくとも,本件訂正特許発明2の係合部が「第3壁に設けられた開口からの突出寸法が変化するよう,+Y方向及び-Y方向に移動可能に設けられ」,「+Y方向に付勢する付勢部を備え」,「Z方向において第2壁から付勢部の-Z方向における端部までの範囲に配置」されるものであるのに対して,甲3発明において,「(本件訂正特許発明2の係合部に相当する)容器側係合部124」が,移動可能ではなく,付勢部を備えるものではなく,そのような範囲に配置されない点において相違している。 ウ 判断 上記甲7には「(2)主張7について」,「イ 甲7の記載事項について」で検討したとおり,甲7には,上記相違点に係る本件訂正特許発明2の発明特定事項が記載されているものと認められる。 しかしながら,甲4発明において,本件訂正特許発明2の係合部に相当する「第1のカートリッジ側規制部分210」は,そもそも移動可能に設けられたものではなく,プリンター50にカートリッジ20を着脱する際に付勢部を必要とするものでもなく,そのような甲4発明に甲7に記載された発明を適用する動機付けがない。 仮に適用したとして,甲4発明の「第1のカートリッジ側規制部分210」を,「第3壁に設けられた開口からの突出寸法が変化するよう,+Y方向及び-Y方向に移動可能に設けられ」,「+Y方向に付勢する付勢部を備え」,「Z方向において第2壁から付勢部の-Z方向における端部までの範囲に配置」ようにすることは,当業者が容易になし得る技術的事項の範囲を超えたものと言わざるを得ない。 したがって,本件訂正特許発明2は,甲4発明,甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 また,本件訂正特許発明3は,請求項3が本件訂正特許発明2である請求項2に係る発明を直接的に引用して,本件訂正特許発明2に発明特定事項を付加して限定したものであるから,同様の理由により,本件訂正特許発明3も,甲4発明,甲7発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 小括 以上のとおりであって異議申立人の主張9による理由によっては,請求項2に係る特許,請求項2を引用する請求項3に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできないから異議申立人の当該主張を採用することはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから,取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立人の主張する特許異議申立理由によっては,本件請求項2及び3に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件の請求項2及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件の請求項1は,令和2年9月28日付け訂正請求により,削除されたため,請求項1に係る申立ては,申立ての対象が存在しないものとなり,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 したがって,上記結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】 可動部を有する液体噴射装置に装着可能な液体供給ユニットであって、 鉛直方向に沿った方向をZ方向、鉛直下方向を-Z方向、鉛直上方向を+Z方向としたときに、 前記Z方向において対向し、前記-Z方向側に位置する第1壁及び前記+Z方向側に位置する第2壁と、 前記Z方向と直交するY方向において対向する第3壁及び第4壁と、 前記第1壁に設けられた液体供給部と、 前記第2壁と前記第3壁との角部における前記第3壁に設けられた開口から突出するように設けられ、前記液体供給ユニットが前記液体噴射装置に装着された状態において前記可動部と係合する係合部と、 を備え、 前記第3壁から前記可動部に向かって離れる方向を+Y方向とし、前記可動部から前記第3壁に近づく方向を-Y方向としたとき、 前記係合部は、前記第3壁に設けられた開口からの突出寸法が変化するよう、前記+Y方向及び前記-Y方向に移動可能に設けられ、 前記係合部が前記開口から+Y方向に突出することにより前記可動部と係合し、 前記係合部を前記+Y方向に付勢する付勢部を備え、 前記係合部は、前記付勢部の前記+Y方向側に配置され、 前記係合部は、前記Z方向において前記第2壁から前記付勢部の前記-Z方向における端部までの範囲に配置されている、 ことを特徴とする液体供給ユニット。 【請求項3】 請求項2に記載の液体供給ユニットであって、 前記係合部を前記-Y方向に移動させるための操作部を有する、 ことを特徴とする液体供給ユニット。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-06-15 |
出願番号 | 特願2015-156779(P2015-156779) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(B41J)
P 1 651・ 121- YAA (B41J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 馬渕 貴洋、村田 顕一郎 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 吉村 尚 |
登録日 | 2019-05-31 |
登録番号 | 特許第6531551号(P6531551) |
権利者 | セイコーエプソン株式会社 |
発明の名称 | 液体供給ユニットおよび液体供給システム |
代理人 | 特許業務法人明成国際特許事務所 |
代理人 | 磯部 光宏 |
代理人 | 仲井 智至 |
代理人 | 渡辺 和昭 |
代理人 | 松岡 宏紀 |
代理人 | 特許業務法人明成国際特許事務所 |
代理人 | 松岡 宏紀 |
代理人 | 仲井 智至 |
代理人 | 渡辺 和昭 |
代理人 | 磯部 光宏 |