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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23D
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23D
管理番号 1376764
異議申立番号 異議2021-700296  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-19 
確定日 2021-08-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6764979号発明「炒め調理用の油脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6764979号の請求項1?11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6764979号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成26年11月28日を出願日として特許出願された特願2014-242109号の一部を、令和1年6月20日に新たな特許出願としたものであって、令和2年9月16日に特許権の設定登録がされ、令和2年10月7日にその特許公報が発行され、その後、令和3年3月19日に、特許異議申立人 石井 千秋(以下、「申立人1」という。)により、その請求項1?11に係る発明の特許について特許異議の申立て(以下、「申立1」という。)がされ、さらに、令和3年4月1日に、特許異議申立人 菅原 結(以下、「申立人2」という。)により、その請求項1に係る発明の特許について特許異議の申立て(以下、「申立2」という。)がされたものである。

第2 本件発明
特許第6764979号の請求項1?11に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明11」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、炊飯済の米飯を炒め調理するための油脂組成物であって、
乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%である、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)。
【請求項2】
(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して4.5重量%以上である、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
(a)と(b)の重量比が、90:10?10:90である、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
(a)と(b)の重量比が、70:30?30:70である、請求項1?3のいずれかに記載の油脂組成物。
【請求項5】
前記乳化剤(a)が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステルから選ばれる1以上を含む、請求項1?4のいずれかに記載の油脂組成物。
【請求項6】
前記乳化剤(a)が、クエン酸モノオレイン酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1以上を含む、請求項1?5のいずれかに記載の油脂組成物。
【請求項7】
前記乳化剤(b)が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1以上を含む、請求項1?6のいずれかに記載の油脂組成物。
【請求項8】
米飯に対して0.1?5重量%の量で使用される、請求項1?7のいずれかに記載の油脂組成物。
【請求項9】
請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物を添加して炊飯済の米飯を炒め調理して、炒め調理後の米飯のパラパラ感を向上させることを含む、米飯の調理方法。
【請求項10】
請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物を、下記:
(1)前記油脂組成物を、炒め油として炒め調理を行う調理器具に付着させる;
(2)前記油脂組成物を、米飯に予め付着させてから炒め調理に供する;
(3)前記油脂組成物を、炒め調理中の米飯に直接的又は間接的に付着させる;
(4)前記油脂組成物を、米飯を炒め調理した食品を再加熱する際に食品に付着させる;
のいずれか1以上の態様で用いることを含む、炊飯済の米飯の調理方法。
【請求項11】
前記油脂組成物が、米飯に対して0.1?5重量%の量で使用される、請求項9または10に記載の方法。」

第3 申立理由の概要及び証拠方法

1 申立1の申立理由の概要及び証拠方法
申立人1は、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第17号証を提出し、以下の申立理由を主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2009-39021号公報(以下「申立1甲1」という。)
甲第2号証:特開平4-187048号公報(以下「申立1甲2」という。)
甲第3号証:特開2014-209887号公報(以下「申立1甲3」という。)
甲第4号証:特開2014-113116号公報(以下「申立1甲4」という。)
甲第5号証:特開2003-144085号公報(以下「申立1甲5」という。)
甲第6号証:特許第4835965号公報(以下「申立1甲6」という。)
甲第7号証:油化学、第32巻、第5号、(1983)、p.245-257(以下「申立1甲7」という。)
甲第8号証:特開2007-105035号公報(以下「申立1甲8」という。)
甲第9号証:特開平8-131071号公報(以下「申立1甲9」という。)
甲第10号証:特開2003-230367号公報(以下「申立1甲10」という。)
甲第11号証:特開2011-50301号公報(以下「申立1甲11」という。)
甲第12号証:特開平9-220464号公報(以下「申立1甲12」という。)
甲第13号証:特開2000-157168号公報(以下「申立1甲13」という。)
甲第14号証:特開2001-240894号公報(以下「申立1甲14」という。)
甲第15号証:特開2006-20549号公報(以下「申立1甲15」という。)
甲第16号証:特開2014-62175号公報(以下「申立1甲16」という。)
甲第17号証:藤本武彦著、「全訂版 新・界面活性剤入門」、(1992年)、三洋化成工業株式会社発行、p.192-195(以下「申立1甲17」という。)

(申立理由の概要)
申立理由1(新規性)(以下「申立1理由1」という。)
本件発明1?3、5?11は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された申立1甲1?申立1甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1?3、5?11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

申立理由2(進歩性)(以下「申立1理由2」という。)
本件発明1?11は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された申立1甲1?申立1甲6に記載された発明及び申立1甲1?申立1甲16に記載された技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1?11に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

申立理由3(サポート要件)(以下「申立1理由3」という。)
本件発明1?11は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件発明1?11に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)特許明細書に具体的に記載されている事項は、乳化剤(a)及び(b)に相当する特定の乳化剤を特定の量で組み合わせると、炒め飯のパラパラ感が非常に良好となったことであり、これらの範囲外の場合でも、炒め飯のパラパラ感が非常に良好となると合理的に推論できる理由はないから、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものといえる。

(2)周知技術を示す甲17によれば、一般に、油脂組成物に複数の乳化剤を混用した場合、乳化剤の総合的な挙動は、各乳化剤のHLBの加重平均値をもって評価できることが知られており、本件発明の油脂組成物においても、乳化剤(a)及び(b)のHLBの加重平均値の影響を受ける可能性が高いところ、特許明細書には当該加重平均値をもつ乳化剤を単独に使用した油脂組成物を用いた炒め飯の評価がなく、HLBの異なる乳化剤(a)及び(b)を併用したことによってはじめて炒め飯のパラパラ感が非常に良好となったことが証明できていないから、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。

申立理由4(明確性要件)(以下「申立1理由4」という。)
本件発明1?11は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件発明1?11に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)請求項1に記載の「炒め調理するための油脂組成物」が炒め油以外の使用を含むのであれば、当該記載は不明確であり、請求項1を引用する本件発明2?11についても同様である。

(2)請求項5に記載の「有機酸脂肪酸エステル」に何が含まれ、何が含まれないのか把握できず、本件発明5、7?11の範囲が不明確である。

2 申立2の申立理由の概要及び証拠方法
申立人2は、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第5号証を提出し、以下の申立理由を主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2009-72163号公報(以下「申立2甲1」という。)
甲第2号証:理研ビタミン株式会社の公式ホームページ、「蒸留ジグリセリン脂肪酸エステル」、[online]、公開年月日不明、[検索日2021年2月17日]、インターネット URL: https://www.rikenvitamin.jp/chemicals/product/polyglycerin/002.html (以下「申立2甲2」という。)
甲第3号証:理研ビタミン株式会社の公式ホームページ、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」、[online]、公開年月日不明、[検索日2021年2月17日]、インターネットURL:https://www.rikenvitamin.jp/chemicals/product/polyglycerin/003.html (以下「申立2甲3」という。)
甲第4号証:cookpadの公式ホームページ、「食べラーチャーハン」、[online]、2011年1月20日、[検索日2021年3月30日]、インターネット URL: https://cookpad.com/recipe/1334397(以下「申立2甲4」という。)
甲第5号証:価格.comマガジンの公式ホームページ、「料理がもっと美味しくなる、キユーピーマヨネーズの裏ワザ」、[online]、2013年4月22日、[検索日2021年3月31日]、インターネット URL: https://kakakumag.com/food/?id=6545(以下「申立2甲5」という。)

(申立理由の概要)
申立理由(新規性)(以下「申立2理由」という。)
本件発明1は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された申立2甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断

I 新規性進歩性(申立1理由1、申立1理由2、申立2理由)について

1 申立1甲1?申立1甲16及び申立2甲1の記載、並びに、引用発明

(1)申立1甲1について

ア 申立1甲1の記載

申立1甲1a「【請求項1】
食用油脂、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、微粒二酸化ケイ素、およびレシチンを含む調理用油脂組成物。
・・・・・
【請求項5】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、実質的にジグリセリンモノオレイン酸エステルからなることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の調理用油脂組成物。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか一項に記載の調理用油脂組成物を使用してなる食品。」

申立1甲1b「【背景技術】
【0002】
従来、食品加工業界において、加熱調理の際、焼成後の食品素材と調理器具、焼型、天板などとの付着を防止する目的で、離型油が使用されている。特に、食品工業では、コンベアや鉄板上の調理食品を次工程に移管する際、調理食品が自重により剥離することを可能にする離型油は、省力化や無人化を図り、製造コストを下げ、さらに衛生に寄与する。
・・・・・
【0012】
本発明の目的は、連続的に高温加熱調理される食品工業用途に充分な離型性と作業性を与えるとともに、最終調理食品に良好な外観(こげ)を付与する調理用油脂組成物を提供することである。
・・・・・
【0014】
すなわち、本発明は、食用油脂、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、微粒二酸化ケイ素、およびレシチンを含む調理用油脂組成物を提供する。本発明の調理用油脂組成物は、離型油、鉄板焼油、天板油として使用される。
・・・・・
【発明の効果】
【0019】
本発明の調理用油脂組成物は、炒め工程や焼き工程といった加熱調理の際に高い離型性を保持する。本発明の調理用油脂組成物は、最終調理食品に好ましいこげ感や調理感を付与して、該食品の外観や風味を改善する。さらに、本発明の調理用油脂組成物は、調理器具、焼型、天板などに付着したカスの拭き取りが容易にし、作業性を向上する。したがって、本発明の調理用油脂組成物は、コンベアなどを用いた連続生産工程での使用に好適である。」

申立1甲1c「【0024】
本発明に使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸の種類と数やグリセリン重合度に特に制限されない。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、単独でもよく、あるいは2種類以上を併用することができる。
【0025】
ポリグリセリン脂肪酸エステルグリセリンの重合度は、具体的には2?10であり、好ましくは2?6であり、さらに好ましくは2(すなわち、ジグリセリン脂肪酸エステル)である。
【0026】
特に好ましくは、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルである。ジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、ジグリセリン残基に一個の脂肪酸がエステル結合したものであり、一般に、食品添加物の乳化剤として使用されている。ジグリセリンモノ脂肪酸エステルは、一般に、ジグリセリンと脂肪酸のエステル化反応、あるいは、ジグリセリンとトリグリセライドとのエステル交換反応の後、分子蒸留によって、目的に合うモノエステル純度まで高めることにより製造される。モノエステル純度は、通常、30?100%でよく、50%以上が好ましく、70%以上のものがより好ましい。
【0027】
ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、具体的には、炭素数8?24であり、炭素数8?22であることが好ましく、炭素数16?22であることがさらに好ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸などが挙げられる。構成脂肪酸は、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸のいずれでもよいが、不飽和脂肪酸が好ましく、オレイン酸がさらに好ましい。
【0028】
したがって、本発明の調理用油脂組成物に最も好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルは、実質的にジグリセリンモノオレイン酸エステルからなる。
【0029】
本発明の調理用油脂組成物において、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの添加量に特に制限はない。通常、0.05?15重量%であり、好ましくは0.1?5重量%であり、特に好ましくは0.1?3重量%である。
【0030】
本発明の調理用油脂組成物に配合されるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、食品添加物である乳化剤の一種である。親油性が強く、一般的には強力なO/W乳化剤として使用されている。本発明では、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、レシチンの沈殿、分離を防止するために使用される。すなわち、本発明の調理用油脂組成物にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを添加しないと、レシチンが分離するなどの調理用油脂組成物として不適切な性状が現れる。
【0031】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、結合脂肪酸数、グリセリンの重合度および添加量に特に制限されることなく用いることができる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、リシノレイン酸同士をエステル化して得られる縮合リシノレイン酸とポリグリセリンとをエステル化することにより得られる。
【0032】
本発明の調理用油脂組成物においてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの添加量は、通常、0.01?10重量%でよく、0.1?5重量%であることが好ましく、0.5?3重量%であることがより好ましい。
・・・・・
【0049】
本発明は、また、上記調理用油脂組成物を使用してなる食品を提供する。その食品素材は、卵焼き、焼きそば、焼肉、チャーハン、野菜炒めなどの炒め物類;各種ケーキ類、パン類、ピザ、クレープ、お好み焼きなどの加工食品および生地;肉類;魚介類;卵類;これらをカット、ミンチなどの加工を施したもの;上記食品に類似させた動植物タンパク含有食品などが挙げられる。また、これらの食品素材を加熱調理前に、塩や醤油、砂糖などを含むタレにつけこんだもの、加熱し適度な「こげ」を付与することで好ましい風味や調理感をつけることが可能なものも、本発明における食品素材の範囲内である。これらの食品素材に、本発明の調理用油脂組成物を刷毛やスプレーで塗布する。
【0050】
さらに、本発明の調理用油脂組成物は、食品素材に塗布、散布する使い方だけでなく、鉄板や型上に生地を載せ、該生地を焼成して製造する食品の製造に際し、鉄板などに塗布してもよい。特に、コンベアを用いる連続式焼成機での食品製造では、良好な離型性が得られる。焼成後の食品は、剥離性が良好なものとなる。このような食品(焼成品)は、例えば卵焼き、焼きそば、焼肉、チャーハン、野菜炒め、各種炒め物類、ケーキ類、パン類、ピザ、クレープ、お好み焼きなどが挙げられる。」

申立1甲1d「【0053】
〔実施例1?21、比較例1?5〕
(調理用油脂組成物の調製)
本発明に従う調理用油脂組成物(実施例1?21)を表1?3に示す組成で調合した。また、比較例1?5として、表4に示す組成の調理用油脂組成物を調合した。ここで、微粒二酸化ケイ素として、気相法で製造されたものは平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)、湿式法で製造されたものは平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)を使用した。クルードレシチンには、商品名:SLPペーストNP(辻製油(株)製)を、高純度に精製した精製レシチンには、商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)を使用した。また、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルには、商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)を使用した。
【0054】
配合された調理用油脂組成物を、60℃にて溶解、撹拌し、放冷後、サンプル瓶に充填して、25℃にて一晩保管した。
【0055】
次に、各調理用油脂組成物の保管後の状態を、均一性、および調理器具へ塗布する際の作業性の2項目について評価した。結果を、表1?4に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】



イ 申立1甲1に記載された発明

(ア)申立1甲1の実施例5(申立1甲1d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「菜種油94.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]1重量%で調合された、調理用油脂組成物」(以下、「申立1甲1発明1」という。)

また、実施例の調理用油脂組成物は、食品の提供のために使用されていることも明らかであるから、
「菜種油94.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]1重量%で調合された、調理用油脂組成物の使用方法」(以下、「申立1甲1発明1-2」という。)

(イ)申立1甲1の実施例10(申立1甲1d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「菜種油92.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル3重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]0.5重量%で調合された、調理用油脂組成物」(以下、「申立1甲1発明2」という。)

「菜種油92.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル3重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]0.5重量%で調合された、調理用油脂組成物の使用方法」(以下、「申立1甲1発明2-2」という。)

(ウ)申立1甲1の実施例12(申立1甲1d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「菜種油92.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]3重量%で調合された、調理用油脂組成物」(以下、「申立1甲1発明3」という。)

「菜種油92.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]3重量%で調合された、調理用油脂組成物の使用方法」(以下、「申立1甲1発明3-2」という。)

(エ)申立1甲1の実施例20(申立1甲1d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「菜種油90.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]0.5重量%で調合された、調理用油脂組成物」(以下、「申立1甲1発明4」という。)

「菜種油90.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]0.5重量%で調合された、調理用油脂組成物の使用方法」(以下、「申立1甲1発明4-2」という。)

(オ)申立1甲1の実施例21(申立1甲1d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「菜種油90.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]5重量%で調合された、調理用油脂組成物」(以下、「申立1甲1発明5」という。)

「菜種油90.5重量%、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]2重量%、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]1重量%、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]1重量%、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.5重量%、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]5重量%で調合された、調理用油脂組成物の使用方法」(以下、「申立1甲1発明5-2」という。)

(2)申立1甲2について

ア 申立1甲2の記載

申立1甲2a「2.特許請求の範囲
(1)食用油脂100重量部に対して、クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステル0.3?5重量部、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.1?1重量部、蔗糖脂肪酸エステル0.05?0.5重量部、およびエタノール1?7重量部を添加したことを特徴とする食用油脂組成物。」(特許請求の範囲)

申立1甲2b「〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、食用油脂の上記の問題点を解決し、食品を焼く、あるいは炒める等の加熱調理に用いる際、油脂の着色を伴うことなくスパッタリング現象を防止し、また食品へのしみ込みが少なく、さらに乳化力の優れた調理、加工食用の油脂組成物を提供することである。」(2頁右上欄9?15行)

申立1甲2c「 本発明に用いられる食用油脂としては特に制限がなく、たとえばコーン油、ナタネ油、大豆油、パーム油等の植物性油脂や、乳脂、牛脂、豚脂、魚油等の動物性油脂などを、種類を問わず使用することができる。得られる食用油脂組成物の粘稠度を調節するために、これらの油脂を水添硬化して使用してもよい。
本発明で用いるクエン酸モノグリセリン脂肪酸エステルはグリセリンに脂肪酸が1個結合したモノグリセリン脂肪酸エステルにクエン酸が結合したエステルであり、乳化剤として用いられる。クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステルはその脂肪酸が不飽和脂肪酸を主体とするものが望ましいが、飽和脂肪酸を主体とするものでもよい。
本発明で乳化剤の一成分として使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、主にひまし油を原料とする縮合リシノレイン酸とポリグリセリンとのエステル化反応により得られるものであり、ポリグリセリンの重合度は2?16、好ましくは4?10、リシノレイン酸の縮合度は2?16、好ましくは3?6が適当である。
本発明で他の乳化剤成分として使用する蔗糖脂肪酸エステルについては、HLB7以下であることが望ましく、また脂肪酸としては炭素数10?20、好ましくは14?18のものが適している。」(2頁左下欄3?右下欄7行)

申立1甲2d「〔実施例〕
・・・・・
実施例中、部は重量基準である。
実施例1?2、比較例1?2
(乳化剤の沈澱および油脂部の白濁の確認)
ナタネ油100部に対して、第1表に示す乳化剤およびエタノールを添加し、実施例1?2および比較例1?2の食用油脂組成物を得た。これを室温で1週間放置し、沈澱物および油脂部の白濁状況を見た。結果を第1表に示す。
なお、用いた乳化剤は、クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステルとしてポエムK-37(理研ビタミン(株)製、商品名)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとしてSY-グリスターCR-310(阪本薬品工業(株)製、商品名)、蔗糖脂肪酸エステルとしてリョートーシュガーエステルP-370(HLB3、三菱化成食品(株)製、商品名)を使用した。

実施例3?4、比較例3?14
(油脂組成物の調製)
コーンサラダ油100部に対し、第2表に示す乳化剤およびエタノールを添加し、実施例3?4および比較例3?14の食用油脂組成物を得た。
・・・・・
(ナス巻きテスト)
180℃に熱したホットプレートの一定面積上(10cm×10cm)に実施例3?4および比較例3?14の油脂組成物15gを敷き、30秒後に縦割にしたナスを2枚並べて表裏を弱火で各2分ずつ焼き、色の観察を行い、試食した。・・・

」(3頁右下欄3行?5頁第2表)

イ 申立1甲2に記載された発明

(ア)申立1甲2の実施例2(申立1甲2d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「ナタネ油100重量部、クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステル[ポエムK-37(理研ビタミン(株)製、商品名)]5.0重量部、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[SY-グリスターCR-310(阪本薬品工業(株)製)、商品名]1.0重量部、蔗糖脂肪酸エステル[リョートーシュガーエステルP-370(HLB3、三菱化成食品(株)製、商品名)]0.5重量部、エタノール7.0重量部からなる食用油脂組成物」(以下、「申立1甲2発明1」という。)

(イ)申立1甲2の実施例4(申立1甲2d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「コーンサラダ油100重量部、クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステル[ポエムK-37(理研ビタミン(株)製、商品名)]5.0重量部、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[SY-グリスターCR-310(阪本薬品工業(株)製)、商品名]1.0重量部、蔗糖脂肪酸エステル[リョートーシュガーエステルP-370(HLB3、三菱化成食品(株)製、商品名)]0.5重量部、エタノール3.0重量部からなる食用油脂組成物」(以下、「申立1甲2発明2」という。)

「コーンサラダ油100重量部、クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステル[ポエムK-37(理研ビタミン(株)製、商品名)]5.0重量部、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[SY-グリスターCR-310(阪本薬品工業(株)製)、商品名]1.0重量部、蔗糖脂肪酸エステル[リョートーシュガーエステルP-370(HLB3、三菱化成食品(株)製、商品名)]0.5重量部、エタノール3.0重量部からなる食用油脂組成物を用いたナス焼きの調理方法」(以下、「申立1甲2発明2-2」という。)

(3)申立1甲3について

ア 申立1甲3の記載

申立1甲3a「【請求項1】
液状油脂100質量部に対して、乳化剤として、下記の乳化剤(A)0.2?2.5質量部及び/又は下記の乳化剤(B)0.5?2.5質量部、並びに、下記の乳化剤(C)0.2?1.0質量部及び/又は下記の乳化剤(D)0.2?1.0質量部のみを含有する炊飯用油脂組成物。
乳化剤(A):グリセリン重合度が10のポリグリセリンと、炭素数18以上22以下の一価の不飽和脂肪酸又は飽和脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤(B):グリセリン重合度が2のポリグリセリンと、炭素数18の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステル
乳化剤(C):ソルビタンと、炭素数18の飽和脂肪酸又は一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるソルビタン脂肪酸エステル
乳化剤(D):ショ糖と、炭素数18以上22以下の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるショ糖脂肪酸エステル
・・・・・
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の炊飯用油脂組成物を精白米100質量部に対して0.2?2.0質量部添加し炊飯したご飯。
【請求項5】
請求項4に記載のご飯を加工して得られる加工食品。
【請求項6】
請求項1?3のいずれか1項に記載の炊飯用油脂組成物を精白米100質量部に対して0.2?2.0質量部添加し炊飯することによりご飯を製造するご飯の製造方法。」

申立1甲3b「【発明が解決しようとする課題】
・・・・・
【0005】
従って、本発明の目的は、炊飯したご飯を1日以上保管しても軟らかく、優れた食感を長持ちさせることができる炊飯用油脂組成物、当該炊飯用油脂組成物を用いて炊飯したご飯及びその製造方法、並びに当該ご飯を加工して製造した加工食品を提供することである。」

申立1甲3c「【0011】
本発明の実施の形態における乳化剤(A)としては、グリセリン重合度が10のポリグリセリンと、炭素数18以上22以下の一価の不飽和脂肪酸又は飽和脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる。中でも、グリセリン重合度が10のポリグリセリンと、炭素数18の一価の不飽和脂肪酸又は炭素数22の飽和脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましく、グリセリン重合度が10のポリグリセリンと、炭素数18の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることがより好ましい。
【0012】
炊飯用油脂組成物中の乳化剤(A)の含有量は、液状油脂100質量部に対して、0.2?2.5質量部であり、0.5?2.5質量部であることが好ましく、0.8?2.5質量部であることがより好ましく、1.0?2.5質量部であることがさらに好ましい。乳化剤(B)と併用する場合には、0.3?2.0質量部であることが好ましく、0.5?1.5質量部であることがより好ましく、0.7?1.3質量部であることがさらに好ましい。また、乳化剤(A)の含有量は、乳化剤(C)や乳化剤(D)の含有量と同量以上であることが好ましく、乳化剤(C)や乳化剤(D)の含有量よりも大であることがより好ましく、乳化剤(C)や乳化剤(D)の含有量の2?4倍であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明の実施の形態における乳化剤(B)としては、グリセリン重合度が2のポリグリセリンと、炭素数18の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる。
【0014】
炊飯用油脂組成物中の乳化剤(B)の含有量は、液状油脂100質量部に対して、0.5?2.5質量部であり、1.0?2.5質量部であることが好ましく、1.3?2.5質量部であることがより好ましく、1.5?2.5質量部であることがさらに好ましい。乳化剤(A)と併用する場合には、0.8?2.0質量部であることが好ましく、1.0?2.0質量部であることがより好ましく、1.2?1.8質量部であることがさらに好ましい。また、乳化剤(B)の含有量は、乳化剤(C)や乳化剤(D)の含有量と同量以上であることが好ましく、乳化剤(C)や乳化剤(D)の含有量よりも大であることがより好ましく、乳化剤(C)や乳化剤(D)の含有量の2?4倍であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明の実施の形態における乳化剤(C)としては、ソルビタンと、炭素数18の飽和脂肪酸又は一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるソルビタン脂肪酸エステルを用いる。中でも、ソルビタンと、炭素数18の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0016】
炊飯用油脂組成物中の乳化剤(C)の含有量は、液状油脂100質量部に対して、0.2?1.0質量部であり、0.5?1.0質量部であることが好ましく、0.7?1.0質量部であることがより好ましい。乳化剤(D)と併用する場合には、0.2?0.8質量部であることが好ましく、0.3?0.7質量部であることがより好ましい。
【0017】
本発明の実施の形態における乳化剤(D)としては、ショ糖と、炭素数18以上22以下の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるショ糖脂肪酸エステルを用いる。中でも、ショ糖と、炭素数18又は22の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましく、ショ糖と、炭素数22の一価の不飽和脂肪酸とのエステルであるショ糖脂肪酸エステルを用いることがより好ましい。
【0018】
炊飯用油脂組成物中の乳化剤(D)の含有量は、液状油脂100質量部に対して、0.2?1.0質量部であり、0.25?1.0質量部であることが好ましく、0.3?1.0質量部であることがより好ましい。乳化剤(C)と併用する場合には、0.2?0.8質量部であることが好ましく、0.2?0.5質量部であることがより好ましい。
【0019】
本発明の実施の形態で用いる液状油脂は、特に限定されるものではないが、5℃で液状のものであり、植物性原料から製造される油脂であることが好ましい。具体的には、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、紅花油、ヒマワリ油、落花生油、オリーブ油、ゴマ油などが挙げられる。・・・
・・・・・
【0020】
本発明で用いる乳化剤(A)?(D)の合計量は、液状油脂100質量部に対して、0.6?6.0質量部であることが好ましく、1.0?5.0質量部であることがより好ましく、1.2?4.0質量部であることが最も好ましい。
・・・・・
【0022】
〔ご飯及びその製造方法〕
本発明の実施の形態に係るご飯は、上記の炊飯用油脂組成物を精白米100質量部に対して0.2?2.0質量部、好ましくは0.5?1.0質量部、より好ましくは1.0質量部添加し炊飯したものである。
【0023】
当該ご飯の製造方法としては、例えば、精白米の1.3?1.5倍量の水、好ましくは1.4倍量の水を精白米に加えて0.5?2時間、好ましくは1?1.5時間浸漬させた後に、本発明の実施の形態に係る炊飯用油脂組成物を精白米100質量部に対して0.2?2.0質量部となるように添加し、炊飯器にて炊飯することにより製造できる。
【0024】
〔加工食品〕
本発明の実施の形態に係る加工食品は、上記ご飯を加工して得られる。加工食品としては、例えば、おにぎり、いなりずし、炒飯、オムライス等が挙げられる。
【0025】
〔本発明の実施の形態の効果〕
本発明の実施の形態に係る炊飯用油脂組成物によれば、1日以上保管しても軟らかく、優れた食感を長持ちできるご飯を炊飯することができる。また、ほぐれ易く、べたつき難く、かつ成形性が良いおにぎり等を製造できるご飯が得られる。

申立1甲3d「【実施例】
【0027】
〔炊飯用油脂組成物の製造〕
液状油脂としてはコーン油を用い、表1及び2に示した配合に従って実施例1?8及び比較例1?3の炊飯用油脂組成物を調製した。表1及び2中の配合量は、コーン油100質量部に対する質量部で表した数値である。
【0028】
<使用材料>
・乳化剤(A):デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(商品名:O-50D、三菱化学フーズ株式会社製)
・乳化剤(B):ジグリセリンモノオレート(商品名:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製)
・乳化剤(C):モノオレイン酸ソルビタン(商品名:サンソフトNo.81S、太陽化学株式会社製)
・乳化剤(D):ショ糖エルカ酸エステル(商品名:ER-290、三菱化学フーズ株式会社製)
【0029】
〔ご飯の製造(炊飯)〕
精白米の1.4倍量の水を精白米に加えて1時間浸漬させた後、得られた実施例1?8及び比較例1?3の炊飯用油脂組成物のいずれかをそれぞれ精白米100質量部に対して1.0質量部(実施例8は0.5質量部)となるように添加し、よく攪拌した。その後、電気炊飯器にて炊飯することによりご飯を製造した。
【0030】
炊き上がりから30分後にボウルへ移し、米粒を潰さぬように杓文字で底から大きく混ぜ、湯気が出なくなるまで5分に1回の間隔で攪拌し、その後は15分に1回攪拌し、ご飯の温度が40℃付近になったらラップをかけ、次の評価に供した。
【0031】
【表1】



イ 申立1甲3に記載された発明

(ア)申立1甲3の実施例2(申立1甲3d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「コーン油100質量部、ジグリセリンモノオレート(商品名:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製)2.5質量部、ショ糖エルカ酸エステル(商品名:ER-290、三菱化学フーズ株式会社製)1.0質量部からなる炊飯用油脂組成物」(以下、「申立1甲3発明1」という。)

「コーン油100質量部、ジグリセリンモノオレート(商品名:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製)2.5質量部、ショ糖エルカ酸エステル(商品名:ER-290、三菱化学フーズ株式会社製)1.0質量部からなる炊飯用油脂組成物を用いたご飯の製造方法」(以下、「申立1甲3発明1-2」という。)

(イ)申立1甲3の実施例7(申立1甲3d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「コーン油100質量部、デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(商品名:O-50D、三菱化学フーズ株式会社製)1.0質量部、ジグリセリンモノオレート(商品名:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製)1.5質量部、モノオレイン酸ソルビタン(商品名:サンソフトNo.81S、太陽化学株式会社製)0.5質量部、ショ糖エルカ酸エステル(商品名:ER-290、三菱化学フーズ株式会社製)0.3質量部からなる炊飯用油脂組成物」(以下、「申立1甲3発明2」という。)

「コーン油100質量部、デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(商品名:O-50D、三菱化学フーズ株式会社製)1.0質量部、ジグリセリンモノオレート(商品名:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製)1.5質量部、モノオレイン酸ソルビタン(商品名:サンソフトNo.81S、太陽化学株式会社製)0.5質量部、ショ糖エルカ酸エステル(商品名:ER-290、三菱化学フーズ株式会社製)0.3質量部からなる炊飯用油脂組成物を用いたご飯の製造方法」(以下、「申立1甲3発明2-2」という。)

(4)申立1甲4について

ア 申立1甲4の記載

申立1甲4a「【請求項1】
風味油にHLB 1?15 である乳化剤を0.01?7重量%添加することを特徴とする加熱時の風味を維持する方法。
【請求項2】
前記風味油が100℃以上で使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドのいずれか1種または2種以上である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記風味油がバターフレーバーオイル、ガーリックオイル、または、ねぎ油である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。」

申立1甲4b「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、風味油は、加熱等により風味を消失されやすい欠点を有していたにもかかわらず、風味油の加熱時の風味を維持する方法は、まだ、見出されていない。従って、本発明は、このような問題点に鑑み、風味油の加熱時の風味を維持する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、風味油に所定の乳化剤を所定量含有することにより、加熱時の風味を持続できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、風味油に、HLB 1?15 である乳化剤を0.01?7重量%含有させることを特徴とする、当該風味油の加熱時の風味を維持する方法である。」

申立1甲4c「【0014】
本発明の風味油とは、第一の風味油としては、フレーバー等の香料を添加した油脂である。例えば、バターフレーバーオイル等である。第二の風味油としては、ねぎ、ガーリック等の香味を有する野菜等を油脂中で加熱することで得られる当該野菜等の風味を有する油脂である。例えば、ねぎ油、ガーリックオイル等である。風味油としては、バターフレーバーオイル、ねぎ油、ガーリックオイルであることが好ましく、風味持続性の点で、特にバターフレーバーオイルが好ましい。また、2種以上の風味油を混合していても良い。
【0015】
風味油に使用される油脂には、焙煎ごま油やオリーブオイル等のように油脂そのものが風味を有しているものと異なり、風味を有していない、あるいは、風味の少ない油脂が使用される。例えば、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油等であり、また、これらの水添油、分別油、エステル交換油、さらにはこれらの油を1種あるいは2種以上配合した油脂等である。
【0016】
本発明で使用する乳化剤は、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)が1?15である。好ましくは4?13であり、より好ましくは6.0?12.5であり、さらに好ましくは6.5?12である。15より大きいと加熱時の十分な風味持続性を得ることができない。
また、乳化剤の配合量は、0.01?7重量%であり、好ましくは0.08?7重量%であり、より好ましくは0.8?7重量%であり、さらに好ましくは0.8?5重量%である。
【0017】
また、乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を使用することができる。好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリドのいずれか1種または2種以上であり、より好ましくは、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステルまたはクエン酸モノオレイン酸グリセリンのいずれか1種または2種であり、さらに好ましくは、クエン酸モノオレイン酸グリセリンである。また、ポリグリセリン脂肪酸エステル及び有機酸モノグリセリドを併用することで、より効果が得られ、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル及びクエン酸モノオレイン酸グリセリンを併用することで、さらに効果を得ることができる。」

申立1甲4d「【0021】
(使用油脂)
バターフレーバーオイル
Savor Up バターフレーバーオイル(株式会社J-オイルミルズ社製)
ガーリックオイル
Savor Up ガーリックオイル(株式会社J-オイルミルズ社製)
ねぎ油
Savor Up ねぎ油(株式会社J-オイルミルズ社製)
【0022】
(使用乳化剤)
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(CRS-75 HLB 1 阪本薬品工業株式会社製)
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(CR-ED HLB 3 阪本薬品工業株式会社製)
ヘキサグリセリンペンタオレイン酸エステル(PO-5S HLB 4.9 阪本薬品工業株式会社製)
蒸留ジグリセリンモノオレイン酸エステル(DO-100V HLB 7.3 理研ビタミン株式会社製)
テトラグリセリンモノラウリン酸エステル(ML-310 HLB 10.3 阪本薬品工業株式会社製)
ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル(MO-5S HLB 11.6 阪本薬品工業株式会社製)
デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(MM-750 HLB 15.5 阪本薬品工業株式会社製)
ショ糖エルカ酸エステル(ER-290 HLB 2 三菱化学フーズ株式会社製)
クエン酸モノオレイン酸グリセリン(623M HLB 7 太陽化学株式会社製)
・・・・・
【0031】
(1-3)乳化剤の組み合わせ
表3に示すようにバターフレーバーオイルに乳化剤を添加した風味油を調製した。評価方法1に従い、加熱時の風味の持続性を測定した。その結果を表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
表3に示すように、2種類の乳化剤を組み合わせても、加熱時の風味持続性効果を得ることができた。特に623MとMO-5Sの組合せが好ましく、加熱4分後まで、相乗効果を得ることができた。
・・・・・
【0036】
(2-2)
表5に示すようにガーリックオイルに乳化剤を添加した風味油を調製した。評価方法1に従い、加熱時の風味の持続性を測定した。その結果を表5に示す。
【0037】
【表5】

・・・・・
【0045】
(4-2)パスタ
120℃に加熱したフライパンに実施例4-1の油脂15gをひいた。10秒後、1%塩水で茹でたパスタ100g、茹で汁20cc、食塩、こしょうを加え、炒めて、ガーリック風味パスタを調理した。同様に実施例4-2、対照(乳化剤無添加)の油脂で調理した。ガーリック風味パスタを食したところ、実施例4-1の油脂で調理したときは、対照の油脂に比べ、ガーリックの風味、香りが強かった。また、乳化剤の添加量が多い実施例4-2の油脂のほうが、実施例4-1の油脂に比べ、ガーリックの風味、香りが強かった。」

イ 申立1甲4に記載された発明

(ア)申立1甲4の実施例3-1(申立1甲4d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「バターフレーバーオイル(Savor Up バターフレーバーオイル(株式会社J-オイルミルズ社製))に、乳化剤である、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(CRS-75 HLB 1 阪本薬品工業株式会社製)0.5重量%、及び、蒸留ジグリセリンモノオレイン酸エステル(DO-100V HLB 7.3 理研ビタミン株式会社製)0.5重量%を添加した、風味油」(以下、「申立1甲4発明1」という。)

「バターフレーバーオイル(Savor Up バターフレーバーオイル(株式会社J-オイルミルズ社製))に、乳化剤である、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(CRS-75 HLB 1 阪本薬品工業株式会社製)0.5重量%、及び、蒸留ジグリセリンモノオレイン酸エステル(DO-100V HLB 7.3 理研ビタミン株式会社製)0.5重量%を添加した、風味油の使用方法」(以下、「申立1甲4発明1-2」という。)

(イ)申立1甲4の実施例3-4(申立1甲4d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「バターフレーバーオイル(Savor Up バターフレーバーオイル(株式会社J-オイルミルズ社製))に、乳化剤である、ショ糖エルカ酸エステル(ER-290 HLB 2 三菱化学フーズ株式会社製)0.5重量%、及び、クエン酸モノオレイン酸グリセリン(623M HLB 7 太陽化学株式会社製)0.5重量%を添加した、風味油」(以下、「申立1甲4発明2」という。)

「バターフレーバーオイル(Savor Up バターフレーバーオイル(株式会社J-オイルミルズ社製))に、乳化剤である、ショ糖エルカ酸エステル(ER-290 HLB 2 三菱化学フーズ株式会社製)0.5重量%、及び、クエン酸モノオレイン酸グリセリン(623M HLB 7 太陽化学株式会社製)0.5重量%を添加した、風味油の使用方法」(以下、「申立1甲4発明2-2」という。)

(ウ)申立1甲4の実施例5-1(申立1甲4d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「ガーリックオイル(Savor Up ガーリックオイル(株式会社J-オイルミルズ社製))に、乳化剤である、ショ糖エルカ酸エステル(ER-290 HLB 2 三菱化学フーズ株式会社製)0.5重量%、及び、クエン酸モノオレイン酸グリセリン(623M HLB 7 太陽化学株式会社製)0.5重量%を添加した、風味油」(以下、「申立1甲4発明3」という。)

「ガーリックオイル(Savor Up ガーリックオイル(株式会社J-オイルミルズ社製))に、乳化剤である、ショ糖エルカ酸エステル(ER-290 HLB 2 三菱化学フーズ株式会社製)0.5重量%、及び、クエン酸モノオレイン酸グリセリン(623M HLB 7 太陽化学株式会社製)0.5重量%を添加した、風味油の使用方法」(以下、「申立1甲4発明3-2」という。)

(5)申立1甲5について

ア 申立1甲5の記載

申立1甲5a「【請求項1】 風味成分を含有するW/O型乳化組生物であって、HLB値が2以下で且つ融点の低い乳化剤と、HLB値が2を超え且つ融点の高い乳化剤とを含有することを特徴とする炒め物用調味料。
・・・・・
【請求項3】 請求項1又は2に記載の調味料を用いて調理された炒め物。
【請求項4】 請求項1又は2に記載の炒め物用調味料を製造する方法であって、25℃のときに液状の油脂と固形状の油脂とを加熱混合して得られた油相を、HLB値が2を超え且つ融点の高い乳化剤の融点よりも低い温度に冷却した後、当該油相に、HLB値が2以下で且つ融点の低い乳化剤と、HLB値が2を超え且つ融点の高い乳化剤とを添加混合し、その後、風味成分を含有する水相を添加混合してW/O型乳化組生物とすることを特徴とする炒め物用調味料の製造方法。
【請求項5】 風味成分を含有するW/O型乳化組生物であって、HLB値が2以下で且つ融点の低い乳化剤と、HLB値が2を超え且つ融点の高い乳化剤とを含有することを特徴とする、電子レンジ又はオーブンにより加熱調理して炒め物を得るための炒め物用調味料。」

申立1甲5b「【0002】
【従来の技術】・・一般に、炒飯は中華鍋やフライパン等に油脂を入れて熱し、これに溶き卵を入れ、この溶き卵が固まるか又は固まらないうちに米飯、具材その他調味料を加え、これらを炒めながら混合して調理されるが、この際、手早く上手に混合して米粒の表面に速やかに油膜を形成すると、米飯がべとつかず、ぱらりとした舌触り・食感を有する炒飯に仕上げることができる。しかしながら、この調理操作には熟練した調理技術を要し、通常の一般家庭では、このように手早く上手に混合することができないことから、米粒の表面に油膜が形成される前に、米粒同士が糊化してくっつき、べとついた舌触り・食感の炒飯となり易く、また焦げを生じさせてしまう場合もある。
【0003】このため、一般家庭等でも、米飯がべとつかず、ぱらりとした舌触り・食感の炒飯を簡単に調理するための調味料として、HLB値が4?10程度の乳化剤を含ませた粉体調味料が提案され、上市されている。この粉体調味料を用いると、比較的速やかに米粒の表面に油膜を形成することができ、ぱらりとした舌触り・食感の炒飯を調理し易くなる。しかしながら、この粉体調味料は、別途油脂を準備する必要があるとともに、油脂と上記HLB値の乳化剤とを別々に添加するため、実際の調理においては、依然としてある程度の調理技術を要し、べとついた舌触り・食感の炒飯となる場合が多いのが実情であった。これに対して、このような調味料を、上記HLB値の乳化剤を含ませたW/O型乳化組生物の形態とすれば、油脂を別途準備する必要がなくなり、また、油脂に予め上記HLB値の乳化剤が含まれているため、求める炒飯を一層簡単に調理することが可能になる。しかしながら、W/O型乳化組生物には、上記HLB値の乳化剤を含ませると乳化状態が直ぐに壊れるという別の問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、良好な舌触り・食感を有する炒飯等の炒め物を簡単に調理することができる乳化安定性の優れたW/O型乳化組生物からなる炒め物用調味料を提供することを目的とする。また、本発明は、当該調味料を用いて調理された炒め物を提供することを目的とする。更に、本発明は、当該調味料の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、風味成分を含有するW/O型乳化組生物に、HLB値が2以下で且つ融点の低い乳化剤と、HLB値が2を超え且つ融点の高い乳化剤とを含有させることにより、上記課題を解決することができるとの知見に基づくものである。」

申立1甲5c「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。本発明の炒め物用調味料は、上述の炒飯に限らず、種々の炒め物に適用することができる。このような炒め物としては、例えば、ピラフ、ドリヤ、焼飯、蕎麦飯等の米飯の炒め物、チンジャオロース、ホイコウロウ、野菜炒め等の肉類、野菜類、魚介類の炒め物、スパゲッティ、パスタ等が挙げられる。特に、これらのうちでも、米飯の炒め物に有用である。尚、本発明において「炒め物」とは、中華鍋等を用い直火で炒めて調理されるものに限らず、電子レンジ又はオーブンにより加熱調理して得られるものをも包含するものとする。
・・・・・
【0009】また、W/O型乳化組生物の油相を構成する油性成分としては、食用油脂を用いることができる。食用油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、サフラワー油、牛脂、豚脂、バター、及びこれらの分別油脂、水素添加油脂、エステル交換油脂等の加工油脂、マーガリン、ショートニング等が挙げられる。これらの油脂は単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。特に、本発明では、25℃のときに液状の油脂と固形状の油脂とを例えば60?100℃程度で加熱混合することにより、常温下では高粘度で且つ高温下では低粘度となる油脂混合物を調製し、当該油脂混合物をW/O型乳化組生物の油相として用いることにより、後述する好適な粘度の炒め物用調味料を得ることができる。上記油脂は、炒め物用調味料中に好ましくは30?90質量%(以下、%という)、より好ましくは40?60%含有させるのがよい。
・・・・・
【0011】本発明の炒め物用調味料には、HLB値が2以下で且つ融点の低い乳化剤(以下、低融点乳化剤という)を含有させる。本発明において、HLB値が2以下の低融点乳化剤を含有させるのは、W/O型乳化組生物の乳化を促進し、安定に保持するためである。尚、低融点乳化剤の最も好ましいHLB値は1である。低融点乳化剤の融点は、50℃未満、より好ましくは47℃以下、更に好ましくは45℃以下であるのがよい。このような低融点乳化剤としては、例えば、不飽和脂肪酸又は炭素数が14未満の飽和脂肪酸のエステル等が挙げられる。当該脂肪酸の中では、オレイン酸が好ましい。
【0012】また、低融点乳化剤として、具体的には、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用してもよい。低融点乳化剤は、炒め物用調味料中に好ましくは1?10%、より好ましくは2?8%含有させるのがよい。尚、本明細書において「融点」とは、示唆走査熱量計等によって測定した融点(ピークトップ温度)をいう。
【0013】本発明の炒め物用調味料には、HLB値が2を超え且つ融点の高い乳化剤(以下、高融点乳化剤という)を含有させる。これにより、W/O型乳化組生物の乳化状態を保持し、かつ、炒飯等の炒め物を簡単に調理することができる炒め物用調味料を得ることができる。その原理は定かでないが、次のように考えられる。すなわち、保存時等の常温下では、高融点乳化剤は実質的に溶解していないか又は低融点油脂と比較して溶解の不充分な状態にあるためにW/O型乳化組生物の乳化破壊の作用が抑えられ、一方、調理時の高温下では、高融点乳化剤は充分に溶解して、米飯等の食材表面への油膜の形成を促進し、良好な舌触り・食感を有する炒め物を簡単に調理することができると考えられる。尚、高融点乳化剤のHLB値は、好ましくは4?10であり、より好ましくは5?7である。
【0014】高融点乳化剤の融点は、50℃以上、より好ましくは50?70℃、更に好ましくは55?65℃であるのがよい。このような高融点乳化剤としては、例えば、炭素数が14以上の飽和脂肪酸のエステル等が挙げられる。当該飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、パルチミン酸、ベヘリン酸等が挙げられる。また、具体的には、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用してもよい。高融点乳化剤は、炒め物用調味料中に好ましくは0.1?2.0%、より好ましくは0.2?1.0%含有させるのがよい。また、低融点乳化剤と高融点乳化剤の割合は、5:1?40:1とするのが好ましく、より好ましくは10:1?30:1である。
・・・・・
【0018】このようにして得られる炒め物用調味料は、容器に充填密封するなどして製品に供することができる。容器としては、柔軟性で炒め物用調味料を絞り出し可能なものが好ましく、例えば、チューブ状容器、パウチ等が挙げられる。本発明の炒め物用調味料の使用方法は任意であるが、例えば、中華鍋やフライパン等の調理器具に、炒め物用調味料とともに米飯等の食材、適当な大きさに刻んだ野菜・肉等の具材、溶き卵等を入れて炒めながら混合することにより、良好な風味、舌触り・食感を有する炒飯等の炒め物を簡単に調理することができる。・・・
・・・・・
【0019】また、本発明の炒め物用調味料によれば、電子レンジ又はオーブンを用いて、良好な風味、舌触り・食感を有する炒飯等の炒め物を簡単に調理することもできる。ここで、本発明の炒め物用調味料について、電子レンジを用いて炒め物を得る場合の好ましい使用方法 の一例について説明する。すなわち、料理皿等の食器に米飯等の食材と炒め物用調味料を入れ、これらを混合することなく、そのまま電子レンジに入れて2?3分間程度加熱調理する。そして、電子レンジによる加熱調理後に、米飯等の食材と炒め物用調味料を箸やスプーン等を用いて混合すればよい。この方法によれば、電子レンジによる加熱により炒め物用調味料中の高融点乳化剤が充分に溶解しているため、米飯等の食材に対し、炒め物用調味料を簡単かつ均一に混合することができ、しかも、中華鍋等を用いて直火で加熱調理したものと同等の良好な風味、舌触り・食感を有する炒飯等の炒め物を得ることができる。・・・
・・・・・
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、良好な風味、舌触り・食感を有する炒飯等の炒め物を簡単に調理することができる乳化安定性の優れたW/O型乳化組生物からなる炒め物用調味料が提供される。また、本発明によれば、当該調味料を用いて調理された良好な風味、舌触り・食感を有する炒め物が提供される。更に、本発明によれば、電子レンジ又はオーブンにより加熱調理して、良好な風味、舌触り・食感を有する炒飯等の炒め物を簡単に得ることができる炒め物用調味料及び炒め物用素材が提供される。」

申立1甲5d「【0023】
【実施例】実施例1
1)炒飯用調味料の製造
○1 顆粒醤油25質量部(以下、部という)、肉エキス25部、食塩105部、胡椒5部、グルタミン酸ナトリウム120部、ゼラチン25部、及びブイヨン210部をミキサーで5分間攪拌混合して水相部を調製した。
○2 サラダ油(液状)400部及び菜種極度硬化油(固形状)35部をミキサーで70℃で加熱しながら5分間攪拌混合して油相部を調製した。
○3 この油相部を品温30℃に冷却した後、融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部を添加し、ホモジナイザーを用いて、1000rpmで5分間攪拌混合した。
○4 次に、この油相部に、上記○1で得られた水相部を加え、ホモジナイザーにより、1000rpmで10分間攪拌混合して、W/O型乳化組生物の炒飯用調味料を製造した。そして、この炒飯用調味料を23gずつパウチに充填密封して、パウチ入りの炒飯用調味料を得た。尚、この炒飯用調味料は、品温25℃における粘度が25000mPa・sであり、品温90℃における粘度が1700mPa・sのものであった(B型粘度計)。
【0024】2)炒飯の調理
試作人25名により、次の○1?○3の手順に従って炒飯を調理した。
○1 フライパンに、パウチを開封して炒飯用調味料を絞り出すとともに米飯250gを入れ、弱火で2分間炒めながらフライ返しを用いてかき混ぜる。
○2 次に、刻んだハム10gと長ネギ5gを加え、中火で30秒間炒めながらかき混ぜる。
○3 次に、溶き卵(1個分)を加え、中火で更に2分30秒間炒めながらかき混ぜる。
【0025】3)評価
試作人25名が自ら調理した炒飯について、(1)ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっている、(2)ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっていない、(3)どちらともいえない、の基準により評価を行った。その結果は、次のとおりであった。
(評価結果)
(1) ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっている: 23名
(2) ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっていない: 2名
(3) どちらともいえない: 0名
4)乳化安定性
前記のパウチ入り炒飯用調味料は、25℃で30日間保存後も、水性成分の分離が認められず良好な乳化状態を保持していた。
【0026】実施例2
1)炒飯用調味料の製造
○1 実施例と同様にして水相部を調製した。
○2 サラダ油(液状)200部にネギ10部を添加し、攪拌混合しながら20分間で120℃にまで昇温させ、当該温度を20分間保持した後、残渣をとり除き、油相を採取して香味油を得た。この香味油200部、サラダ油(液状)200部及び菜種極度硬化油(固形状)35部をミキサーで70℃で加熱しながら5分間攪拌混合して油相部を調製した。
○3 この油相部を品温30℃に冷却した後、融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部を添加し、ホモジナイザーを用いて、1000rpmで5分間攪拌混合した。
○4 次に、この油相部に、上記○1で得られた水相部を加え、ホモジナイザーにより、1000rpmで10分間攪拌混合して、W/O型乳化組生物の炒飯用調味料を製造した。そして、この炒飯用調味料を23gずつパウチに充填密封して、パウチ入りの炒飯用調味料を得た。尚、この炒飯用調味料は、品温25℃における粘度が25000mPa・sであり、品温90℃における粘度が1700mPa・sのものであった(B型粘度計)。
2)乾燥食材の製造
○1 溶き卵をマイクロウェーブドライヤーにより乾燥し、乾燥卵(水分7.5%)を得た。また、生のエビ、ネギをそれぞれ熱風乾燥し、乾燥エビ(水分6.0%)、乾燥ネギ(水分6.0%)を得た。
○2 上記乾燥卵6.0g、上記乾燥エビ1.0g及び上記乾燥ネギ2.0gずつパウチに充填密封して、パウチ入り乾燥食材を得た。
【0027】3)炒飯の調理
皿に米飯(冷飯)250gを盛り、その上に、パウチを開封して炒飯用調味料を絞り出すとともに乾燥食材を振り掛け、この皿をそのまま電子レンジに入れて2分間加熱調理した。次に、電子レンジから皿を取り出し、スプーンを用いて米飯、炒飯用調味料及び乾燥食材を混ぜ合わせた。
【0028】4)評価
得られた炒飯は、香ばしいネギの香味が活かされ、実施例1と同様に、ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっていた。又、卵、エビ及びネギが復元されており、良好な食味・食感を有するものであった。」(決定注:○数字は、丸付き数字を表す。以下同様。)

イ 申立1甲5に記載された発明

(ア)申立1甲5の実施例1(申立1甲5d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。なお、申立1甲5に記載の「組生物」は、「組成物」の誤記と認める。
「○1 顆粒醤油25質量部(以下、部という)、肉エキス25部、食塩105部、胡椒5部、グルタミン酸ナトリウム120部、ゼラチン25部、及びブイヨン210部をミキサーで5分間攪拌混合して水相部を調製し、
○2 サラダ油(液状)400部及び菜種極度硬化油(固形状)35部をミキサーで70℃で加熱しながら5分間攪拌混合して油相部を調製し、
○3 この油相部を品温30℃に冷却した後、融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部を添加し、ホモジナイザーを用いて、1000rpmで5分間攪拌混合し、
○4 次に、この油相部に、上記○1で得られた水相部を加え、ホモジナイザーにより、1000rpmで10分間攪拌混合して製造された、W/O型乳化組成物の炒飯用調味料」(以下、「申立1甲5発明1」という。)

「○1 フライパンに、パウチを開封して以下の炒飯用調味料を絞り出すとともに米飯250gを入れ、弱火で2分間炒めながらフライ返しを用いてかき混ぜ、
○2 次に、刻んだハム10gと長ネギ5gを加え、中火で30秒間炒めながらかき混ぜ、
○3 次に、溶き卵(1個分)を加え、中火で更に2分30秒間炒めながらかき混ぜ、
ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっている、炒飯の調理方法であって、
該炒飯用調味料が、
○1 顆粒醤油25質量部(以下、部という)、肉エキス25部、食塩105部、胡椒5部、グルタミン酸ナトリウム120部、ゼラチン25部、及びブイヨン210部をミキサーで5分間攪拌混合して水相部を調製し、
○2 サラダ油(液状)400部及び菜種極度硬化油(固形状)35部をミキサーで70℃で加熱しながら5分間攪拌混合して油相部を調製し、
○3 この油相部を品温30℃に冷却した後、融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部を添加し、ホモジナイザーを用いて、1000rpmで5分間攪拌混合し、
○4 次に、この油相部に、上記○1で得られた水相部を加え、ホモジナイザーにより、1000rpmで10分間攪拌混合して製造された、W/O型乳化組成物の炒飯用調味料である。」(以下、「申立1甲5発明1-2」という。)

(イ)申立1甲5の実施例2(申立1甲5d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「○1 顆粒醤油25部、肉エキス25部、食塩105部、胡椒5部、グルタミン酸ナトリウム120部、ゼラチン25部、及びブイヨン210部をミキサーで5分間攪拌混合して水相部を調製し、
○2 サラダ油(液状)200部にネギ10部を添加し、攪拌混合しながら20分間で120℃にまで昇温させ、当該温度を20分間保持した後、残渣をとり除き、油相を採取して香味油を得、この香味油200部、サラダ油(液状)200部及び菜種極度硬化油(固形状)35部をミキサーで70℃で加熱しながら5分間攪拌混合して油相部を調製し、
○3 この油相部を品温30℃に冷却した後、融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部を添加し、ホモジナイザーを用いて、1000rpmで5分間攪拌混合し、
○4 次に、この油相部に、上記○1で得られた水相部を加え、ホモジナイザーにより、1000rpmで10分間攪拌混合して製造された、W/O型乳化組成物の炒飯用調味料」(以下、「申立1甲5発明2」という。)

「皿に米飯(冷飯)250gを盛り、その上に、パウチを開封して以下の炒飯用調味料を絞り出すとともに乾燥食材を振り掛け、この皿をそのまま電子レンジに入れて2分間加熱調理し、次に、電子レンジから皿を取り出し、スプーンを用いて米飯、炒飯用調味料及び乾燥食材を混ぜ合わせ、ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっている、炒飯の調理方法であって、
該炒飯用調味料が、
○1 顆粒醤油25部、肉エキス25部、食塩105部、胡椒5部、グルタミン酸ナトリウム120部、ゼラチン25部、及びブイヨン210部をミキサーで5分間攪拌混合して水相部を調製し、
○2 サラダ油(液状)200部にネギ10部を添加し、攪拌混合しながら20分間で120℃にまで昇温させ、当該温度を20分間保持した後、残渣をとり除き、油相を採取して香味油を得、この香味油200部、サラダ油(液状)200部及び菜種極度硬化油(固形状)35部をミキサーで70℃で加熱しながら5分間攪拌混合して油相部を調製し、
○3 この油相部を品温30℃に冷却した後、融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部を添加し、ホモジナイザーを用いて、1000rpmで5分間攪拌混合し、
○4 次に、この油相部に、上記○1で得られた水相部を加え、ホモジナイザーにより、1000rpmで10分間攪拌混合して製造された、W/O型乳化組成物の炒飯用調味料である。」(以下、「申立1甲5発明2-2」という。)

(6)申立1甲6について

ア 申立1甲6の記載

申立1甲6a「【請求項1】
食用油脂にHLBが5以下であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1?3重量%添加し、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルに対して重量比で1/30以上1/3未満のポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを添加してなる油脂組成物。」

申立1甲6b「【0001】
本発明は、使用量を低減しても美味しい炒め物を作ることができ、かつ、揚げ調理、マヨネーズの調製などの生食にも使用可能な汎用性を有する新規な油脂組成物に関する。
・・・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来の少ない使用量で炒め物ができる油は、汎用性が低く、専用用途に限らざるを得ないという上記問題点に鑑みて、揚げ物調理やマヨネーズの調製等もできる汎用性のきわめて広い炒め油を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決せんと鋭意研究を行った結果、特定の範囲のHLBを有する乳化剤を0.1?3重量%添加することで、上記機能を有する油を提供することが出来ることを見出した。すなわち、本発明は、食用油脂にHLBが5以下である乳化剤を0.1?3重量%添加してなる油脂組成物である。ここで、HLBとはGriffin計算式 HLB=20×(1-SV/NV)(SV:エステルのケン化価、NV:脂肪酸の中和価)で算出したものである。」

申立1甲6c「【0015】
乳化剤はポリグリセリン脂肪酸エステルなどが好適に使用できるが、これに限定されるものではない。食品用に一般的に使用可能な乳化剤を単独又は組み合わせて使用して良いが、界面張力を13mN/mよりも下げたり、表面張力を上昇させたりする乳化剤は適切ではない。さらに、炒め機能を発揮する乳化剤が沈降するのを防止するために、沈降防止剤を添加することが望ましいが、沈降防止剤としては、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)が特に好ましく、かつ、乳化剤とPGPRとの添加比率が特定の範囲内の場合においてのみ、使用量低減機能と極めて広い汎用性を両立し、さらに風味のよさを実現できることを見出した。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、従来、用途に合わせた専用の油を準備する必要があったが、一種類の油で炒め物、揚げ物調理やマヨネーズの調製もできるようになる。
・・・・・
【0018】
以下、本発明の油脂組成物について説明する。なお、本明細書において、「炒め物」とは、例えば、焼きそば、チンジャオロース、ホイコウロウ、八宝菜、チャーハン等の料理、一般的な肉類、野菜類、魚介類の炒め物、ソテー、焼き肉、餃子等、その他これらに関する料理を意味する。
【0019】
本発明で用いる乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリド等の食用乳化剤があるが、HLBが5以下であることが必須であり、さらには4以下であることがより好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは風味が好ましく、かつ油脂使用量軽減効果が大きいため特に好ましい。
【0020】
なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、炭素数14?24のものでは、例えば、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニン酸、エルカ酸等が挙げられ、リノール酸、リノレン酸と比較すると酸化されにくいステアリン酸、オレイン酸が特に好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステル中の遊離グリセリンおよび遊離ポリグリセリンの合計含量は、1重量%未満であることが望ましい。
【0021】
さらに、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種類または2種類以上を混合して使用することができ、他の乳化剤、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどと併用してもよい結果が得られる。また、酸化防止剤、例えば、トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、ローズマリー抽出物などを添加しても良い。
【0022】
本発明で用いる食用油脂は、食用に適するものであれば特に限定されるものではない。例えば、常温で液状の食用油脂として、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、サフラワー油、ひまわり油、オリーブ油など、また、常温で固形状の食用油脂として、パーム油、牛脂、豚脂などが挙げられる。また、前述の油脂を2種類以上混合した調合油、油脂を水素添加して得られる硬化油、固形油脂を分別して得られる分別油、油脂をエステル交換して得られる油などでもよい。」

申立1甲6d「【0024】
(実施例1)
(油脂組成物の調製)
菜種油(J-オイルミルズ製)に以下に示す乳化剤を添加し、本発明に従う油脂組成物A?Gおよび比較例となる油脂組成物A?Fを調製した(表1)。
ペンタオレイン酸テトラグリセリン (阪本薬品工業株式会社 SYグリスターPO-3S)
デカオレイン酸デカグリセリン (阪本薬品工業株式会社 SYグリスターDAO-7S)
ペンタオレイン酸ヘキサグリセリン (阪本薬品工業株式会社 SYグリスターPO-5S)
モノオレイン酸テトラグリセリン (阪本薬品工業株式会社 SYグリスターMO-3S)
モノオレイン酸ヘキサグリセリン (阪本薬品工業株式会社 SYグリスターMO-5S)
モノオレイン酸デカグリセリン (阪本薬品工業株式会社 SYグリスターMO-7S)
モノカプリル酸デカグリセリン (阪本薬品工業株式会社 SYグリスターMCA-750)
大豆レシチン (J-オイルミルズ製 レシチンAY)
【0025】
【表1】

【0026】
(画像解析法による評価方法)
「少ない量で美味しい炒めものができる」機能を客観的に評価するため、下記に示す評価法を構築した(以下画像解析法と記載)。すなわち、
1.試験油を食用色素(ゼアキサンチン)で着色した。
2.キャベツを4cm×1.5cmにカットした。
3.表面温度200℃に熱したフライパンに、着色した試験油を入れ、続いて上記のキャベツ150gを入れて1分30秒間炒めた。
4.炒めたキャベツを取り出し、室温まで冷却した後、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製)を用いてキャベツ表面の状態を撮影した。
5.撮影した写真の視野における着色部位(油に被覆された部位)の割合を画像解析ソフト(Scion Image Scion社)で定量し、数値化した。
ただし、炒め調理においてキャベツ150gに対する標準的な油の使用量は、文献などを参考に10gとした。
・・・・・
【0033】
(実施例2) 汎用性の評価(揚げ調理適性・加熱臭)
実施例A?Gおよび比較例A?Fの油脂組成物400gをステンレス製片手鍋に張り込み、180℃に加熱し、加熱時の臭気を官能的に評価した。さらに、これらの油脂組成物で市販の冷凍コロッケ(味の素冷凍食品社製)を揚げて泡立ちを目視し、揚げ調理適性を評価し、結果を表3にまとめた。
・・・・・
【0039】
(実施例4) ポリグリセリン脂肪酸エステルとPGPRとの比率
菜種油にペンタオレイン酸テトラグリセリンを0.3重量%およびPGPR(阪本薬品工業株式会社 SYグリスターCR-ED)を0?0.3重量%添加した油脂組成物(実施例BおよびH?M)を調製し、実施例1に記載の方法で炒め機能を評価した。また、実施例2に記載の方法で揚げ調理適性を評価した。
さらに、油脂組成物をビーカーに入れ、蓋をせずに相対湿度90%、温度40℃の環境で保管し、乳化剤に起因する濁り・沈殿の生成を2週間経時的に観察し、保存安定性を評価した。評価結果は、◎:濁り・沈殿なし、○:透明度が僅かに低下、△:濁りが発生、×:沈殿生成の4段階で表わした。
また、実施例3に記載の方法でマヨネーズを調製し、加工適性を評価した。全ての結果を表5にまとめた。
【0040】
【表5】

【0041】
表5より、乳化剤に対して重量比で1/30以上1/3未満、好ましくは1/30以上1/6以下、さらに好ましくは1/30以上1/15以下のポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)を添加した油脂組成物は、少ない油でおいしい炒め物を作るのに適しており、且つ、揚げ調理に使用が可能で、保存安定性が高く、マヨネーズの調製も可能な極めて広い汎用性を兼ね備えていた。
【0042】
(実施例5) 油種の比較
菜種油(実施例I)、大豆油(実施例N)、パームオレイン(実施例O)(いずれもJ-オイルミルズ製)にペンタオレイン酸テトラグリセリンを0.3重量%およびPGPRを0.01重量%添加した油脂組成物を調製し、実施例1に記載の方法で炒め機能を評価した。また、実施例2に記載の方法で揚げ調理適性を評価した。結果を表6にまとめた。
【0043】
【表6】



イ 申立1甲6に記載された発明

(ア)申立1甲6の実施例4(申立1甲6d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「菜種油にペンタオレイン酸テトラグリセリン(HLB3)を0.3重量%およびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)(阪本薬品工業株式会社 SYグリスターCR-ED)を0?0.3重量%添加した油脂組成物」(以下、「申立1甲6発明1」という。)

また、申立1甲6の実施例1、2(申立1甲6d)にそれぞれ、炒め機能評価、揚げ調理特性の評価が行われ、それらの用途に使用されることが明らかであるから、
「菜種油にペンタオレイン酸テトラグリセリン(HLB3)を0.3重量%およびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)(阪本薬品工業株式会社 SYグリスターCR-ED)を0?0.3重量%添加した、油脂組成物の炒め調理、揚げ調理への使用方法」(以下、「申立1甲6発明1-2」という。)

(イ)申立1甲6の実施例5(申立1甲6d)の記載より、以下の発明が記載されていると認められる。
「菜種油、大豆油又はパームオレイン(いずれもJ-オイルミルズ製)にペンタオレイン酸テトラグリセリン(HLB3)を0.3重量%およびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)を0.01重量%添加した油脂組成物」(以下、「申立1甲6発明2」という。)

「菜種油、大豆油又はパームオレイン(いずれもJ-オイルミルズ製)にペンタオレイン酸テトラグリセリン(HLB3)を0.3重量%およびポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)を0.01重量%添加した、油脂組成物の炒め調理、揚げ調理への使用方法」(以下、「申立1甲6発明2-2」という。)

(7)申立1甲7の記載
申立1甲7a「 2 いためものに用いる油脂
いため物には油脂を用いる。この場合の油脂の機能は次のようである。
1)食品に付着または吸収されて油の持ち味を出す。
2)食品のフレーバーや色の発現に役立つ。食品のフレーバーにはいろいろなものが関与するが,特に油脂の分解生成物のフレーバーは重要である。
3)食品がなべに付着するのを防ぐ,また食品が相互に付着するのを防ぐ。
いため物に用いた油脂は次のようになる。
1)大部分の油脂は食品に移行する。食品内部に浸透するとともに表面に付着する。
2)一部は加熱器具に付着する。
3)一部のものは食品の水分の蒸発とともに飛散する。
4)過剰に用いられた時には残油となる。」(246頁右欄下から21行?下から7行)

(8)申立1甲8の記載
申立1甲8a「【0003】
炒め物は、上述したような油脂を少量用いて食品を撹拌しながら加熱を行う調理方法である。炒め物を行う際の油脂の役割は、食品と食品とが、また食品と調理器具とが付着することを防止すると共に、高温加熱による食品及び油脂の風味を向上させることである。味、風味、食感等の調理効果を向上させるための調理用油脂組成物として、特許文献1に、ジグリセリンモノオレイン酸エステルを含有する調理用油脂組成物が開示されている。特許文献1に開示された調理用油脂組成物によれば、上記調理効果の向上は達成することができると記載されているが、調理後の調理器具、及び調理品を乗せた後の食器の洗浄効果は十分なものでなく、これらの洗浄効果を更に向上させることが望まれていた。
・・・・・
【0010】
以下、本発明の炒め物用油脂組成物について説明する。なお、本明細書において、「炒め物」とは、例えば、焼きそば、チンジャオロース、ホイコウロウ、八宝菜、チャーハン等の料理、一般的な肉類、野菜類、魚介類の炒め物、ソテー、焼き肉、餃子等、その他これらに関する料理を意味する。」

(9)申立1甲9の記載
申立1甲9a「【0005】また、炒め物は少量の油脂を用いて食品を絶えず攪拌しながら加熱を行う。この油脂の役割は食品間、または食品と鍋の間で付着するのを防ぐと同時に、高温加熱で食品および油脂の風味を向上させることである。」

(10)申立1甲10の記載
申立1甲10a「【0002】
【従来の技術】通常、中華料理専門店等で出されるチャーハン、ピラフ等の調理飯は、米飯粒のホグレ性が良好で、パラパラと分散しているため米飯粒同士のべたつきがなく、また、米飯粒個々に均一な味付けがなされている。更に、米飯粒自体も柔らかくふっくらしており、非常に口当たりが良く、風味、食感に優れた調理飯である。
・・・・・
【0011】すなわち、本発明者らは、炊飯後の米飯に調味料を添加し、更に加熱調理して得る調理飯において、誰でも簡単にホグレ性、風味及び食感に優れた調理飯を得ることができる調味料について検討を行った。なお、本発明で得ようとするホグレ性とは、米飯粒同士の非結着性である。風味とは、乳化剤等由来の臭みがなく、素材が十分に生かされているかどうかということである。また、食感とは、喫食時に口中でのべたつきがなく、パラパラ感が得られるかということである。
・・・・・
【0014】
【発明の実施の形態】・・・また、調理飯とは、炊飯後の米飯を更に加熱調理したものを指し、例えば、チャーハン、ピラフ、ナシゴレン等が挙げられる。」

(11)申立1甲11の記載
申立1甲11a「【0003】
炒飯のパラパラ感は、米粒の表面に油がコーティングされることで付与され、粘りやふっくらとした食感が少ない米飯の方が炒飯の製造には適している。炒飯を製造するための米飯と白米を食するいわゆる銀しゃりと呼ばれる米飯とは、求められる米飯の物性が異なるものであり、米飯の捌きを良くするための炊飯油も、炒飯の製造用としては不充分なものである。
【0004】
一般に、炒飯の製造には米飯のべたつきをカバーするため、炒め油に乳化剤を含む油脂組成物が用いられている。乳化剤を含む炒め油を用いると焦げ付きが少なくなることから炒め時の作業性が改善されるが、一方で炒め油に含まれる乳化剤特有の匂いが必要以上に炒飯に付着するおそれがあり、場合によっては食味の低下を招きかねない。
【0005】
こうした中、特許文献1には、米飯を炊飯する際に用いる炊飯油と、米飯を炒める際に用いる炒め油に、レシチンやポリグリセリン脂肪酸エステルのような乳化剤と風味油脂とを添加した調理用油脂組成物が開示されている。かかる油脂組成物を用いれば、米飯にある程度のパラパラ感を付与しつつ、乳化剤に由来する独特の匂いや食味に誘発される風味の低下を風味油脂によって抑制した炒飯類を得ることが可能である。」

(12)申立1甲12の記載
申立1甲12a「【0042】実施例10
還元澱粉糖化物液(東和化成工業(株)製、PO-40)50.0g、ジェランガム0.6g、グアーガム0.2g、乳酸カルシウム0.2g、クエン酸ナトリウム0.1g及び水50.0gの混合溶解物を水相(80℃)とし、硬化魚油(融点40℃)50.0g、大豆油20.0g、アスコルビン酸ステアレート0.1g、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(阪本薬品工業(株)製、SYグリスターCR-ED、HLB:2)4.0g及びグリセリン脂肪酸モノエステル(実施例3と同じ)2.0gの混合溶解物を油相(80℃)とした以外は、実施例2と同様の乳化法により油中多価アルコールゲル型乳化組成物を得た。ゲル微粒子の数平均粒子径は1.1μmであった。」

(13)申立1甲13の記載
申立1甲13a「【0054】実施例10
茶抽出物(太陽化学(株)製、サンフェノン)80.0g、水溶性コーンファイバー(日本食品化工(株)製、セルエース#40)20.0g、D-ソルビトール液(東和化成工業(株)製、ソルビットL-70、水分含有量:30重量%)20.0g及び20重量%エタノール水溶液450.0gを混合して60℃に加温したものを水相とし、大豆油400.0g、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(阪本薬品工業(株)製、SYグリスターCR-310、HLB:2)28.0g及びグリセリン脂肪酸モノエステル(理研ビタミン(株)製、エマルジーMU、HLB:4.2)2.0gを混合して60℃で溶解させたものを油相とした。・・・」

(14)申立1甲14の記載
申立1甲14a「【0017】
【実施例】以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。(以下、質量%を%と現す。)
実施例1?2及び比較例1?4
グリセリン脂肪酸エステルとして、HLBが6.0であるクエン酸モノグリセリド(ポエムK-37:理研ビタミン(株)製)とHLBが9.1であるグリセリンステアリン酸エステル(阪本薬品工業(株)製:SY-グリスターTS-750)とHLBが7.0のグリセリンエルカ酸エステル(三菱化学フーズ(株)製:リョートーポリグリエステルER-60D)とをそれぞれ(a)、(b)、(c)とした。・・・」

(15)申立1甲15の記載
申立1甲15a「【0018】
表1?3中、下記のものを用いた。
・・・・・
デカグリセリンモノオレエート:リョートーポリグリエステルO-50D〔三菱化学フーズ(株)製〕、HLB=8.0
・・・・・」

(16)申立1甲16の記載
申立1甲16a「【0026】
<比較例2?3>
表2の配合になるように、、HLB2のショ糖エルカ酸エステル(リョートーシュガーエステルER290:エルカ酸純度約90% 三菱化学フーズ株式会社製)、又はHLB値1のショ糖オレイン酸エステル(リョートーシュガーエステルO-170:オレイン酸純度約80% 三菱化学フーズ株式会社製)を60℃で加温し、窒素雰囲気下で密閉された40℃の精製菜種油(日清オイリオグループ株式会社製)にプロペラで撹拌しながら添加した。・・・
・・・・・
【0028】
<比較例4>
表3の配合になるように、HLB値5.1のモノオレイン酸ソルビタン(サンソフトNo.81S:太陽化学株式会社製)、HLB約7のデカグリセリンオレイン酸エステルを60℃で加温混合し、乳化剤混合液を得た。・・・」

(17)申立2甲1について

ア 申立2甲1の記載
申立2甲1a「【請求項1】
下記のA成分とB成分とを含有することを特徴とする香味油組成物。
A成分:トリグリセリン不飽和脂肪酸エステルおよび/またはテトラグリセリン不飽和脂肪酸エステル;
B成分:ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルおよび/またはプロピレングリコール脂肪酸エステル;
【請求項2】
ラー油(辣油)、葱油またはガーリックオイルである、請求項1に記載の香味油組成物。」

申立2甲1b「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水相への分散性が改善され、且つ室温下で乳化剤に起因する濁りの発生が抑えられた香味油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、香味油に(a)トリグリセリン不飽和脂肪酸エステルおよび/またはテトラグリセリン不飽和脂肪酸エステルと(b)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルおよび/またはプロピレングリコール脂肪酸エステルとを組み合わせて含有せしめることにより、目的に叶う香味油組成物が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
・・・・・
【0010】
本発明で言うところの香味油とは、例えば唐辛子、花山椒、陳皮、黒胡麻、白胡麻、麻の実、けしの実、胡椒、桂皮、八角などの香辛料類、例えば五香粉、七味唐辛子、カレー粉、ガラムマサラなどの調合香辛料類、並びに例えば長ねぎ(青い部分)、生姜、にんにく、玉ねぎ、人参、セロリ、紫蘇、茗荷などの香味野菜類などと油脂とを接触させ、香辛料や香味野菜に含まれる香味成分や色素類などを油脂に移行させたものを指し、具体的には、例えばラー油(辣油)、葱油およびガーリックオイル(アーリオオイルとも言う。)などが挙げられる。・・・・・
【0011】
香味油の製造に用いられる油脂としては、食用可能な油脂であれば特に制限はないが、例えばオリーブ油、ごま油、こめ油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、なたね油、パーム油、パームオレイン、パーム核油、ひまわり油、ぶどう油、綿実油、やし油、落花生油などの植物油脂が好ましく、これら植物油脂のサラダ油が特に好ましい。本発明においては、これらの油脂を一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0012】
本発明の香味油組成物は、A成分(トリグリセリン不飽和脂肪酸エステルおよび/またはテトラグリセリン不飽和脂肪酸エステル)とB成分(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルおよび/またはプロピレングリコール脂肪酸エステル)の二群の食品用乳化剤を含有することを特徴とするものである。」

申立2甲1c「【0035】
[モノエステル体含有量測定法]
HPLCを用いて、以下に示す分析条件でエステル組成分析を行い、データ処理装置によってクロマトグラム上に記録されたモノエステル体に該当するピークの面積から、モノエステル体含有量を面積百分率(%)として求める。
〈HPLC分析条件〉
装置 島津高速液体クロマトグラフ
ポンプ(型式:LC-10A;島津製作所社製)
カラムオーブン(型式:CTO-10A;島津製作所社製)
データ処理装置(型式:C-R7A;島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF-802;昭和電工社製)
2本連結
移動相 THF
流量 1.0mL/min
検出器 RI検出器(型式:RID-6A;島津製作所社製)
カラム温度 40℃
検液注入量 15μL(in THF)
【0036】
[実施例1]
[香味油組成物の作製]
(1)原材料
1)辣油(市販品;エスビー食品社製)
2)ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製)
3)トリグリセリンオレイン酸エステル(試作品)
4)テトラグリセリンオレイン酸エステル(商品名:SYグリスターMO-3S;阪本薬品工業社製)
5)ペンタグリセリンオレイン酸エステル(商品名:サンソフトA-171E;太陽化学社製)
6)デカグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムJ-0381V;理研ビタミン社製)
7)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR-300;理研ビタミン社製)
8)プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO-100V;理研ビタミン社製)
【0037】
(2)香味油組成物の配合
上記原材料を用いて作製した香味油組成物(試料1?12)の配合組成を表1に示した。この内、試料1?5は本発明に係る実施例であり、試料6?12はそれらに対する比較例である。
【0038】
【表1】

【0039】
(3)香味油組成物の作製
表1に示した配合に基づいて辣油と各種乳化剤とを混合し、約50℃に加熱して溶解し香味油組成物(試料1?12)を作製した。なお、各試料の一回の作製量は30gとした。」

イ 申立2甲1に記載された発明
申立2甲1の実施例において、比較例の一つとして、【表1】(申立2甲1c【0038】)中の「試料10」に示される配合に基づいて、原材料として、「辣油(市販品:エスビー食品社製)」「98」、「ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製)」「1」、「ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR-300;理研ビタミン社製)」「1」「合計100」を混合し、約50℃に加熱して溶解し「香味油組成物」を作製したことが記載されている(申立2甲1c)ことから、以下の発明が記載されていると認められる。

「辣油(市販品:エスビー食品社製)98%、ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製)1%、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR-300;理研ビタミン社製)1%を混合し、約50℃に加熱して溶解し作製された香味油組成物」(以下、「申立2甲1発明」という。)

(18)申立2甲2の記載
申立2甲2a「蒸留ジグリセリン脂肪酸エステル」(標題)

申立2甲2b「

」(表)

(19)申立2甲3の記載
申立2甲3a「ポリグリセリン脂肪酸エステル」(標題)

申立2甲3b「

」(表)

(20)申立2甲4の記載
申立2甲4a「食べラーチャーハン」(標題)

申立2甲4b「作り方
1 ウィンナーを輪切りにして油で炒める。
2 だいたい火が通ったら、溶き卵にごはんを入れて混ぜものを(卵掛けごはんみたいにする)フライパンに入れていためる。
3 ごはんがぱらぱらになってきたら、ネギを入れて塩こしょうをかける。その後に食べラーをいれてよくいためる。
4 最後に鍋肌に醤油をたらして香ばしい香りが出てきたら完成!」(作り方)

(21)申立2甲5の記載
申立2甲5a「料理がもっと美味しくなる、キユーピーマヨネーズの裏ワザ」(標題)

申立2甲5b「[裏ワザ3]:パラパラ炒飯が作れる!
油の代わりにマヨネーズで炒めると、マヨネーズ中の卵黄と乳化された植物油が、ご飯の一粒一粒をコーティングするから、パラッと仕上がります。」([裏ワザ3])

2 申立1甲1を主引用例とする場合

(1)本件発明1について

ア 申立1甲1発明1との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲1発明1の「菜種油」は、食用油脂であるから、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

b 申立1甲1発明1の「調理用油脂組成物」は、食用油脂の組成物であり、W/O型乳化組成物ではないから、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」に相当する。

c 申立1甲1発明1の「ジグリセリンモノオレイン酸エステル」及び「ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]」は、乳化剤であるから(申立1甲1c)、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」と、2種類の乳化剤である点で共通する。

そうすると、本件発明1と申立1甲1発明1とは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲1発明1)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲1発明1は、調理用である点
(申立1甲1発明1)相違点2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲1発明1は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

(イ)判断

a 新規性について

(a)(申立1甲1発明1)相違点1について

i 本件発明1は、炊飯済の米飯の炒め調理用で、特定の2種類の乳化剤を特定重量%食用油脂に配合した油脂組成物を用いることにより、調理後の米飯のパラパラ感を向上させた炒め調理した食品が得られることを見出したことによる発明である[本件明細書【0013】、実施例の試験1?6(【0037】?【0057】)]。
申立1甲1には、その特定の2種類の乳化剤を特定重量%食用油脂に配合した油脂組成物を用いることにより、炊飯済の米飯を炒め調理するためのものであることも、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることも記載されていない。
また、そのことが記載されているに等しいといえる本件出願時の技術常識も存在しない。
したがって、申立1甲1発明1の「調理用油脂組成物」が、炊飯済の米飯を炒め調理するためのものであり、かつ、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることは、実質的相違点である。

ii 申立人1は、令和3年3月19日付けの特許異議申立書(以下、「申立書1」という。)36頁4行?37頁10行において、
(i)申立1甲1には、申立1甲1に記載の調理用油脂組成物は、チャーハン等の炒め物の離型油として用いられ、焼成後の食品は、剥離性が良好なものとなることが記載され、申立1甲7?9の周知技術に記載されるように、炒め油は、食品と調理器具との間の離型油として機能するとともに、食品間の付着を防止するために用いられることから、申立1甲1に記載の調理用油脂組成物は、炒め油として、炊飯済の米飯を炒め調理するために用いられるものに相当する旨、及び、
(ii)申立1甲10?11の周知技術から、チャーハン等の調理飯には一般にホグレ性やパラパラ感が求められ、ホグレ性やパラパラ感は、米飯粒同士のべたつきや結着性がないことによって生じることや米粒の表面に油がコーティングされることにより付与されることが周知であるから、調理後の米飯のパラパラ感の向上は、炒め油に新たな用途を限定したことにならない旨を主張している。

前記主張の(i)について、申立1甲1には、「【0014】・・本発明の調理用油脂組成物は、離型油、鉄板焼油、天板油として使用される」及び「【0002】従来、食品加工業界において、加熱調理の際、焼成後の食品素材と調理器具、焼板、鉄板などとの付着を防止する目的で、離型油が使用されている」(申立1甲1b)(決定注:下線は当審が付与。以下同様。)と記載され、申立1甲1発明1の「調理用油脂組成物」は、食品素材と調理器具等の付着を防止するための離型油、鉄板焼油、天板油として使用されるものである。
申立1甲1には、さらに、「【0049】本発明は・・上記調理用油脂組成物を使用してなる食品を提供する。その食品素材は・・チャーハン・・などの炒め物類・・」及び「【発明の効果】【0019】本発明の調理用油脂組成物は、炒め工程や焼き工程といった加熱調理の際に高い離型性を発揮する。本発明の調理用油脂組成物は、最終調理食品に好ましいこげ感や調理感を付与して、該食品の外観や風味を改善する」(申立1甲1b)と記載されている。
これらの記載から、離型油、鉄板焼油、天板油として使用される申立1甲1発明1の「調理用油脂組成物」は、チャーハンの調理に使用し得ること、及び、最終調理食品に調理感を付与して風味を改善することまでは記載されていると認められる。

しかしながら、前記主張の(ii)について、申立1甲7?9には、「いため物には油脂を用いる。この場合の油脂の機能は次のようである・・・3)食品がなべに付着するのを防ぐ、また食品が相互に付着するのを防ぐ。いため物に用いた油脂は次のようになる。1)大部分の油脂は食品に移行する。食品内部に浸透するとともに表面に付着する」(申立1甲7a)と記載され、油脂は、食品が調理器具に付着するのを防ぐ、すなわち、離型油として機能するとともに、食品が相互に付着するのを防ぐ機能もあることは理解されるが、油脂が米飯飯の表面に付着するだけでは、チャーハン等の料理飯で求められるパラパラ感が向上されるとは認められない。
実際に、本件明細書の実施例の試験1-6及び試験1-7(【0040】【表1-1】)には、油脂組成物を用いた場合であっても、炒め調理時の米飯のほぐれ状態、調理直後及び冷却保存後の炒め飯のパラパラ感は、いずれも良好な結果を得られなかったことが示されている。
したがって、申立1甲1発明1の「調理用油脂組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるとは認められない。

したがって、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

(b)したがって、(申立1甲1発明1)相違点1は、実質的な相違点といえる。

よって、(申立1甲1発明1)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲1に記載された発明(申立1甲1発明1)ではない。

b 進歩性について

(a)(申立1甲1発明1)相違点1について

i 申立1甲1発明1の「調理用油脂組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることについて、申立1甲1には記載も示唆もなされていない。

本件発明1は、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための、炊飯済みの米飯を炒め調理するための油脂組成物を提供する課題の下、HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する油脂組成物であって、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量を、食用油脂に対して1.5?20重量%とすることにより、当該課題を解決したものである。

他方、申立1甲1発明1は、食品素材と調理器具等の付着を防止するための離型油、鉄板焼油、天板油として使用される調理用油脂組成物で、連続的に高温加熱調理される食品工業用途に充分な離型性と作業性を与えるとともに、最終調理食品に良好な外観(こげ)を付与する調理用油脂組成物を提供することを課題とするものであって、そのような調理用油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとしようという動機付けがあるとは認められない。

ii また、申立1甲2?16には、以下に示すように、申立1甲1発明1のような調理用油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆を認めることができない。

申立1甲2は、後述の3で詳細に説明するように、食品を焼くあるいは炒める等の加熱調理に用いる際、油脂の着色を伴うことなくスパッタリング現象を防止し、また食品へのしみ込みが少なく、さらに乳化力の優れた調理、加工食用の油脂組成物を提供することを課題とするものであって、そのような食用油脂組成物に関する記載より、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆があるとは認められない。

申立1甲3は、後述の4で詳細に説明するように、炊飯したご飯を1日以上保管しても軟らかく、優れた食感を長持ちさせることができる炊飯用油脂組成物を提供することを課題とするものであって、そのような炊飯用油脂組成物に関する記載より、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆があるとは認められない。

申立1甲4は、後述の5で詳細に説明するように、風味油の加熱時の風味を維持する方法を提供することを課題とするものであって、そのような風味油に関する記載より、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆があるとは認められない。

申立1甲5は、後述の6で詳細に説明するように、良好な舌触り・食感を有する炒飯等の炒め物を簡単に調理することができる乳化安定性の優れたW/O型乳化組成物からなる炒め物用調味料を提供することを課題とするものであって、そのようなW/O型乳化組成物からなる炒め物用調味料に関する記載より、W/O型乳化組成物である場合を除く油脂組成物につき調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆があるとは認められない。

申立1甲6は、後述の7で詳細に説明するように、揚げ物調理やマヨネーズの調製等もできる汎用性のきわめて広い炒め油を提供することを課題とするものであって、そのような炒め油に関する記載より、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆があるとは認められない。

申立1甲7には、いためものに用いる一般的な油脂の機能が記載されている。

申立1甲8には、炒め物を行う際の油脂の役割は、食品と食品とが、また食品と調理器具とが付着することを防止することが記載されている。

申立1甲9には、炒め物における油脂の役割は、食品間または食品と鍋との間で付着するのを防ぐことであることが記載されている。

申立1甲10には、チャーハン、ピラフ等の調理飯は、米飯粒のホグレ性が良好で、パラパラと分散しているため米飯粒同士のべたつきがないものであること、ホグレ性とは、米飯粒同士の非結着性であることが記載されている。

申立1甲11には、炒飯のパラパラ感は、米粒の表面に油がコーティングされることで付与されること、一般に、炒飯の製造には米飯のべたつきをカバーするため、炒め油に乳化剤を含む油脂組成物が用いられており、米飯を炊飯する際に用いる炊飯油と、米飯を炒める際に用いる炒め油に、レシチンやポリグリセリン脂肪酸エステルのような乳化剤と風味油脂とを添加した調理用油脂組成物を用いれば、米飯にある程度のパラパラ感を付与し得ることが記載されている。

申立1甲12には、「ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(阪本薬品工業(株)製、SYグリスターCR-ED、HLB:2)」が記載されている。

申立1甲13には、「テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(阪本薬品工業(株)製、SYグリスターCR-310、HLB:2)」が記載されている。

申立1甲14には、「HLBが6.0であるクエン酸モノグリセリド(ポエムK-37:理研ビタミン(株)製)」が記載されている。

申立1甲15には、「デカグリセリンモノオレエート:リョートーポリグリエステルO-50D〔三菱化学フーズ(株)製〕、HLB=8.0」が記載されている。

申立1甲16には、「HLB2のショ糖エルカ酸エステル(リョートーシュガーエステルER290:エルカ酸純度約90% 三菱化学フーズ株式会社製)」及び「HLB値5.1のモノオレイン酸ソルビタン(サンソフトNo.81S:太陽化学株式会社製)」が記載されている。

iii そうすると、申立1甲1発明1に申立1甲1?16の記載を組み合わせたとしても、申立1甲1発明1の調理用油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとしようとすることについては、申立1甲1?16いずれにも記載も示唆もなく、本件出願当時の技術常識であったとも認められず、他に動機付けられるものもない以上、本件発明1の(申立1甲1発明1)相違点1に係る構成を採用することは、当業者といえども、申立1甲1?16の記載から容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。

(b)本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0015】の記載及び実施例の試験1?6(【0037】?【0057】)の記載より理解されるように、炒め調理後の米飯のパラパラ感が出るように炒め調理することが容易になり、米飯と調理器具の付着性を抑制できるのみならず、炒め調理によって美味しい食品を得ることが容易になることであり、そのような効果は、申立1甲1?16の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(c)したがって、(申立1甲1発明1)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲1発明1及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 申立1甲1発明2?5それぞれとの対比・判断

(ア)対比
申立1甲1発明2?5は、それぞれ、申立1甲1発明1と、調理用油脂組成物を構成する成分の種類(菜種油、精製レシチン[商品名:SLPホワイト(辻製油(株)製)]、気相法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径0.01μmのアエロジル200(日本アエロジル(株)製)]、湿式法微粒二酸化ケイ素[平均粒子径4μmのサイロページ720(富士シリシア化学(株)製)]、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)])は同一で、菜種油、ジグリセリンモノオレイン酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[商品名:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)]の組成(配合量)が異なるのみである。

a そうすると、前記ア(ア)で検討したa?cについては、申立1甲1発明2?5それぞれにおいても、同じである。

b したがって、本件発明1と、申立1甲1発明2?5それぞれとは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲1発明2?5)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲1発明2?5それぞれは、調理用である点
(申立1甲1発明2?5)相違点2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲1発明2?5それぞれは、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

(イ)判断
(申立1甲1発明2?5)相違点1及び(申立1甲1発明2?5)相違点2は、前記ア(ア)に記載の(申立1甲1発明1)相違点1及び(申立1甲1発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲1発明2?5)相違点1についての判断は、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲1発明2?5)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲1に記載された発明(申立1甲1発明2?5)ではなく、また、申立1甲1発明2?5及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 小括
以上より、本件発明1は、申立1甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明1は、申立1甲1に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(2)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明2、3、5?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明2?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲1に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(3)本件発明9について

ア 申立1甲1発明1-2、申立1甲1発明2-2、申立1甲1発明3-2、申立1甲1発明4-2、申立1甲1発明5-2(決定注:「申立1甲1発明1-2?5-2」という。以下同様。)それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲1発明1-2?5-2における「調理用油脂組成物」と、本件発明9の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲1発明1-2?5-2の「調理用油脂組成物の使用方法」と、本件発明9の「米飯の調理方法」とは、油脂組成物に関する方法である点で、共通する。

c そうすると、本件発明9と、申立1甲1発明1?5それぞれとは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)に関する方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点9-1:油脂組成物について、本件発明9は炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲1発明1-2?5-2それぞれは、調理用である点
(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点9-2:2種類の乳化剤について、本件発明9は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲1発明1-2?5-2それぞれは、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点
(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点9-3:油脂組成物に関する方法について、本件発明9は、油脂組成物を添加して炊飯済の米飯を炒め調理して、炒め調理後のパラパラ感を向上させることを含む、米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲1発明1-2?5-2それぞれは、油脂組成物の使用方法である点

(イ)判断
(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点9-1及び(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点9-2は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲1発明1)相違点1及び(申立1甲1発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点9-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点9-2及び(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点9-3を検討するまでもなく、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲1に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(4)本件発明10について

ア 申立1甲1発明1-2?5-2それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲1発明1-2?5-2における「調理用油脂組成物」1-2?5-2と、本件発明10の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲1発明1-2?5-2の「調理用油脂組成物の使用方法」と、本件発明10の「炊飯済の米飯の調理方法」とは、油脂組成物に関する方法である点で、共通する。

c そうすると、本件発明10と、申立1甲1発明1-2?5-2それぞれとは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)に関する方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点10-1:油脂組成物について、本件発明10は炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲1発明1-2?5-2それぞれは、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとの特定がない点
(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点10-2:2種類の乳化剤について、本件発明10は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲1発明1-2?5-2それぞれは、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点
(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点10-3:油脂組成物に関する方法について、本件発明10は、油脂組成物を、下記:
(1)前記油脂組成物を、炒め油として炒め調理を行う調理器具に付着させる;
(2)前記油脂組成物を、米飯に予め付着させてから炒め調理に供する;
(3)前記油脂組成物を、炒め調理中の米飯に直接的又は間接的に付着させる;
(4)前記油脂組成物を、米飯を炒め調理した食品を再加熱する際に食品に付着させる;
のいずれか1以上の態様で用いることを含む、炊飯済の米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲1発明1-2?5-2それぞれは、油脂組成物の使用方法である点

(イ)判断
(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点10-1及び(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点10-2は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲1発明1)相違点1及び(申立1甲1発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点10-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点10-2及び(申立1甲1発明1-2?5-2)相違点10-3を検討するまでもなく、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲1に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(5)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲1に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

3 申立1甲2を主引用例とする場合

(1)本件発明1について

ア 申立1甲2発明1との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲2発明1の「ナタネ油」は、食用油脂であるから、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

b 申立1甲2発明1の「食用油脂組成物」は、食用油脂の組成物であり、W/O型乳化組成物ではないから、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」に相当する。

c 申立1甲2発明1の「クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステル[ポエムK-37(理研ビタミン(株)製、商品名)]」及び「ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル[SY-グリスターCR-310(阪本薬品工業(株)製)、商品名]」は、乳化剤であるから(申立1甲2c)、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」と、2種類の乳化剤である点で共通する。

そうすると、本件発明1と申立1甲2発明1とは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲2発明1)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲2発明1は、食用である点
(申立1甲2発明1)相違点2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲2発明1は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

(イ)判断

a 新規性について

(a)(申立1甲2発明1)相違点1について

i 本件発明1は、炊飯済の米飯の炒め調理用で、特定の2種類の乳化剤を特定重量%食用油脂に配合した油脂組成物を用いることにより、調理後の米飯のパラパラ感を向上させた炒め調理した食品が得られることを見出したことによる発明である[本件明細書【0013】、実施例の試験1?6(【0037】?【0057】)]。
申立1甲2には、その特定の2種類の乳化剤を特定重量%食用油脂に配合した油脂組成物を用いることにより、炊飯済の米飯を炒め調理するためのものであることも、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることも記載されていない。
また、そのことが記載されているに等しいといえる本件出願時の技術常識も存在しない。
したがって、申立1甲2発明1の「食用油脂組成物」が、炊飯済の米飯を炒め調理するためのものであり、かつ、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることは、実質的相違点である。

ii 申立人1は、申立書1の37頁11行?38頁15行において、
(i)申立1甲2には、申立1甲2に記載の食用油脂組成物は、炊飯済の米飯を炒め調理するための油脂組成物と実質的に等価であり、たとえ、実質的に等価でないとしても、申立1甲1?6の記載のように、HLBの異なる2つの乳化剤を配合したものが炒め調理後の炒め物の優れた離型性、ほぐれやすさ、パラパラ感に寄与することも、当業者が認識できるから、申立1甲2に記載の食用油脂組成物を炊飯済の米飯の炒め調理用に使用することは、容易に想到し得る旨、及び、
(ii)申立1甲7?11の周知技術から、炒め油は食品間の付着を防止するためにも用いられ、チャーハン等の調理飯には一般にホグレ性やパラパラ感が求められ、ホグレ性やパラパラ感は、米飯粒同士のべたつきや結着性がないことによって生じることや米粒の表面に油がコーテイングされることにより付与されることが周知であるから、調理後の米飯のパラパラ感の向上は、炒め油に新たな用途を限定したことにならない旨を主張している。

前記主張の(i)について、申立1甲2には、「本発明の目的は、食用油脂の上記の問題点を解決し、食品を焼く、あるいは炒める等の加熱調理に用いる際、油脂の着色を伴うことなくスパッタリング現象を防止し、また食品へのしみ込みが少なく、さらに乳化力の優れた調理、加工食用の油脂組成物を提供すること」(申立1甲2b)と記載されている。
しかしながら、前記主張の(ii)については、前記2(1)ア(イ)で述べたとおりであり、申立1甲2発明1の「食用油組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるとは認められない。

したがって、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

(b)したがって、(申立1甲2発明1)相違点1は、実質的な相違点といえる。

よって、(申立1甲2発明1)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲2に記載された発明(申立1甲2発明1)ではない。

b 進歩性について

(a)(申立1甲2発明1)相違点1について

i 申立1甲2発明1の「食用油脂組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることについて、申立1甲2には記載も示唆もなされていない。

本件発明1は、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための、炊飯済みの米飯を炒め調理するための油脂組成物を提供する課題の下、HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する油脂組成物であって、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量を、食用油脂に対して1.5?20重量%とすることにより、当該課題を解決したものである。

他方、申立1甲2発明1は、食品を焼くあるいは炒める等の加熱調理に用いる際、油脂の着色を伴うことなくスパッタリング現象を防止し、また食品へのしみ込みが少なく、さらに乳化力の優れた調理、加工食用の油脂組成物を提供することを課題とするものであって、そのような食用油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとしようという動機付けがあるとは認められない。
また、申立1甲1?16には、申立1甲2発明1のような食用油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆を認めることができない。

そうすると、申立1甲2発明1に申立1甲1?16の記載を組み合わせたとしても、申立1甲2発明1の食用油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとしようとすることについては、申立1甲1?16いずれにも記載も示唆もなく、本件出願当時の技術常識であったとも認められず、他に動機付けられるものもない以上、本件発明1の(申立1甲2発明1)相違点1に係る構成を採用することは、当業者といえども、申立1甲1?16の記載から容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。
また、本件発明1の効果は、申立1甲1?16の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(b)したがって、(申立1甲2発明1)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲2発明1及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 申立1甲2発明2との対比・判断

(ア)対比
申立1甲2発明2は、申立1甲2発明1と、食用油脂の種類が異なり、かつ、エタノールの配合量が異なるのみである。
そうすると、前記ア(ア)で検討したa?cについては、申立1甲2発明2においても、同じである。

したがって、本件発明1と、申立1甲2発明2とは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲2発明2)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲2発明2は、食用である点
(申立1甲2発明2)相違点2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲2発明2は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

(イ)判断
(申立1甲2発明2)相違点1及び(申立1甲2発明2)相違点2は、前記ア(ア)に記載の(申立1甲2発明1)相違点1及び(申立1甲2発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲2発明2)相違点1についての判断は、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲2発明2)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲2に記載された発明(申立1甲2発明2)ではなく、また、申立1甲2発明2及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 小括
以上より、本件発明1は、申立1甲2に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明1は、申立1甲2に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(2)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明2、3、5?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲2に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明2?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲2に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(3)本件発明9について

ア 申立1甲2発明2-2との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲2発明2-2における「食用油脂組成物」と、本件発明9の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲2発2-2の「ナス焼きの調理方法」と、本件発明9の「米飯の調理方法」とは、油脂組成物を用いた食品の調理方法である点で、共通する。

c そうすると、本件発明9と、申立1甲2発明2-2とは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)を用いた食品の調理方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲2発明2-2)相違点9-1:油脂組成物について、本件発明9は炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲2発明2-2は、食用である点
(申立1甲2発明2-2)相違点9-2:2種類の乳化剤について、本件発明9は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲2発明2-2は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点
(申立1甲2発明2-2)相違点9-3:食品の調理方法について、本件発明9は、油脂組成物を添加して炊飯済の米飯を炒め調理して、炒め調理後のパラパラ感を向上させることを含む、米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲2発明2-2は、ナス焼きの調理方法である点

(イ)判断
(申立1甲2発明2-2)相違点9-1及び(申立1甲2発2-2)相違点9-2は、前記(1)イ(ア)に記載の(申立1甲2発明2)相違点1及び(申立1甲2発明2)相違点2と、さらには、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲2発明1)相違点1及び(申立1甲2発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲2発明2-2)相違点9-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲2発明2-2)相違点9-2及び(申立1甲2発明2-2)相違点9-3を検討するまでもなく、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲2に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲2に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(4)本件発明10について

ア 申立1甲2発明2-2との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲2発明2-2における「食用油脂組成物」と、本件発明10の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲2発明2-2の「ナス焼きの調理方法」と、本件発明10の「炊飯済の米飯の調理方法」とは、油脂組成物を用いた食品の調理方法である点で、共通する。

c そうすると、本件発明10と、申立1甲2発明2-2とは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)を用いた食品の調理方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲2発明2-2)相違点10-1:油脂組成物について、本件発明10は炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲2発明2-2は、食用である点
(申立1甲2発明2-2)相違点10-2:2種類の乳化剤について、本件発明10は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲2発明2-2は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点
(申立1甲2発明2-2)相違点10-3:食品の調理方法について、本件発明10は、油脂組成物を、下記:
(1)前記油脂組成物を、炒め油として炒め調理を行う調理器具に付着させる;
(2)前記油脂組成物を、米飯に予め付着させてから炒め調理に供する;
(3)前記油脂組成物を、炒め調理中の米飯に直接的又は間接的に付着させる;
(4)前記油脂組成物を、米飯を炒め調理した食品を再加熱する際に食品に付着させる;
のいずれか1以上の態様で用いることを含む、炊飯済の米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲2発明2-2は、ナス焼きの調理方法である点

(イ)判断
(申立1甲2発明2-2)相違点10-1及び(申立1甲2発明2-2)相違点10-2は、前記(1)イ(ア)に記載の(申立1甲2発明2)相違点1及び(申立1甲2発明2)相違点2と、さらには、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲2発明1)相違点1及び(申立1甲2発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲2発明2-2)相違点10-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。

したがって、(申立1甲2発明2-2)相違点10-2及び(申立1甲2発明2-2)相違点10-3を検討するまでもなく、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲2に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲2に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(5)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲2記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲2に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

4 申立1甲3を主引用例とする場合

(1)本件発明1について

ア 申立1甲3発明1との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲3発明1の「コーン油」は、食用油脂であるから、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

b 申立1甲3発明1の「炊飯用油脂組成物」は、食用油脂の組成物であり、W/O型乳化組成物ではないから、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」に相当する。

c 申立1甲3発明1の「ジグリセリンモノオレート(商品名:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製)」及び「ショ糖エルカ酸エステル(商品名:ER-290、三菱化学フーズ株式会社製)」は、乳化剤であるから(申立1甲3c)、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」と、複数種類の乳化剤である点で共通する。

そうすると、本件発明1と申立1甲3発明1とは、
「複数種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲3発明1)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲3発明1は、炊飯用である点
(申立1甲3発明1)相違点2:複数種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲3発明1は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

(イ)判断

a 新規性について

(a)(申立1甲3発明1)相違点1について

i 本件発明1は、炊飯済の米飯の炒め調理用で、特定の2種類の乳化剤を特定重量%食用油脂に配合した油脂組成物を用いることにより、調理後の米飯のパラパラ感を向上させた炒め調理した食品が得られることを見出したことによる発明である[本件明細書【0013】、実施例の試験1?6(【0037】?【0057】)]。
他方、申立1甲3発明1の油脂組成物は、炊飯用、すなわち、炊飯前の精白米に対して添加し炊飯して米飯を製造するためのものであり(申立1甲3a請求項4及び6、申立1甲3c)、炊飯済の米飯を炒め調理するための用途とは異なるものである。
さらに、申立1甲3には、特定の2種類の乳化剤を特定重量%食用油脂に配合した油脂組成物を用いることにより、炊飯済の米飯を炒め調理するためのものであることも、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることも記載されていない。
また、そのことが記載されているに等しいといえる本件出願時の技術常識も存在しない。
したがって、申立1甲3発明1の「炊飯用油脂組成物」が、炊飯済の米飯を炒め調理するためのものであり、かつ、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることは、実質的相違点である。

ii 申立人1は、申立書1の38頁16行?40頁3行において、
(i)申立1甲3に記載の炊飯用油脂組成物は、炊飯前の精米に添加されて、得られた米飯を炒飯等に加工するために使用され、その結果、米飯がほぐれ易く、べたつき難くなるものであり、一方、本件発明1の油脂組成物は、米飯に予め付着させてから炒め調理に供することも記載されている[請求項10、段落【0017】]ことから、油脂組成物の米飯への添加時期が異なっても、ほぐれ易い炒飯が得られる点で変わりないから、申立1甲3発明1の炊飯用油脂組成物は、本件発明1の炊飯済の米飯を炒め調理するための油脂組成物と実質的に等価である旨、及び、
(ii)申立1甲7?11の周知技術から、炒め油は食品間の付着を防止するためにも用いられ、チャーハン等の調理飯には一般にホグレ性やパラパラ感が求められ、ホグレ性やパラパラ感は、米飯粒同士のべたつきや結着性がないことによって生じることや米粒の表面に油がコーテイングされることにより付与されることが周知であるから、調理後の米飯のパラパラ感の向上は、炒め油に新たな用途を限定したことにならない旨を主張している。

前記主張の(i)について、申立1甲3には、「本発明の目的は、炊飯したご飯を1日以上保管しても軟らかく、優れた食感を長持ちさせることができる炊飯用油脂組成物・・を提供すること」(申立1甲3b)及び「【0023】当該ご飯の製造方法としては・・水を精白米に加えて・・浸漬させた後に、本発明の・・炊飯用油脂組成物を精白米・・に対して・・添加し、炊飯器にて炊飯することにより製造できる」(申立1甲3c)と記載され、申立1甲3に記載の炊飯用油脂組成物は、炊飯前の精白米に添加し炊飯して米飯を得るためのものであり、炊飯済の米飯に添加して調理するためのものではない。
一方、本件発明1の油脂組成物は、米飯に予め付着させてから炒め調理に供することも記載されている[請求項10、段落【0017】]が、これは油脂組成物を炊飯済の米飯に予め付着させてから炒め調理に供する意味であり、油脂組成物を炊飯前の精白米に対して添加し炊飯して米飯とすることを意味するものではない。
それ故、申立1甲3発明1の炊飯用油脂組成物の用途である、炊飯前の精白米に添加して炊飯して米飯を得るための「炊飯用」が、本件発明1の油脂組成物の用途である「炊飯済の米飯を炒め調理するための」と、実質的に等価であるとは認められない。

前記主張の(ii)については、前記2(1)ア(イ)で述べたとおりである。
したがって、申立1甲3発明1の「炊飯用油脂組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるとは認められない。

したがって、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

(b)したがって、(申立1甲3発明1)相違点1は、実質的な相違点といえる。

よって、(申立1甲3発明1)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲3に記載された発明(申立1甲3発明1)ではない。

b 進歩性について

(a)(申立1甲3発明1)相違点1について

申立1甲3発明1の「炊飯用油脂組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることについて、申立1甲3には記載も示唆もなされていない。

本件発明1は、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための、炊飯済みの米飯を炒め調理するための油脂組成物を提供する課題の下、HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する油脂組成物であって、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量を、食用油脂に対して1.5?20重量%とすることにより、当該課題を解決したものである。
他方、申立1甲3発明1は、炊飯したご飯を1日以上保管しても軟らかく、優れた食感を長持ちさせることができる炊飯用、すなわち、炊飯前の精白米に対して添加し炊飯して米飯を製造するための油脂組成物を提供することを課題とするものであって、本件発明1の課題と異なるものであり、そのような炊飯用の油脂組成物を、炊飯済みの米飯を炒め調理するための用途としようという動機付けがあるとは認められないし、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとしようという動機付けがあるとも認められない。
また、申立1甲1?16には、申立1甲3発明1のような炊飯用油脂組成物を、炊飯済みの米飯を炒め調理するための用途とすること、及び、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆を認めることができない。

そうすると、申立1甲3発明1に申立1甲1?16の記載を組み合わせたとしても、申立1甲3発明1の食用油脂組成物を、炊飯済みの米飯を炒め調理するための用途とすること、及び、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとしようとすることについては、申立1甲1?16いずれにも記載も示唆もなく、本件出願当時の技術常識であったとも認められず、他に動機付けられるものもない以上、本件発明1の(申立1甲3発明1)相違点1に係る構成を採用することは、当業者といえども、申立1甲1?16の記載から容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。
また、本件発明1の効果は、申立1甲1?16の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(b)したがって、(申立1甲3発明1)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲2発明1及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 申立1甲3発明2との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲3発明2の「コーン油」は、食用油脂であるから、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

b 申立1甲3発明2の「炊飯用油脂組成物」は、食用油脂の組成物であり、W/O型乳化組成物ではないから、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」に相当する。

c 申立1甲3発明2の「デカグリセリンペンタオレイン酸エステル(商品名:O-50D、三菱化学フーズ株式会社製)」、「ジグリセリンモノオレート(商品名:ポエムDO-100V、理研ビタミン株式会社製)」、「モノオレイン酸ソルビタン(商品名:サンソフトNo.81S、太陽化学株式会社製)」及び「ショ糖エルカ酸エステル(商品名:ER-290、三菱化学フーズ株式会社製)」は、乳化剤であるから(申立1甲3c)、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」と、複数種類の乳化剤である点で共通する。

d したがって、本件発明1と、申立1甲3発明2とは、
「複数種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲3発明2)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲3発明2は、炊飯用である点
(申立1甲3発明2)相違点2:複数種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲3発明2は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

(イ)判断
(申立1甲3発明2)相違点1及び(申立1甲3発明2)相違点2は、前記ア(ア)に記載の(申立1甲3発明1)相違点1及び(申立1甲3発明1)相違点2と、それぞれ同様である。
そうすると、(申立1甲3発明2)相違点1についての判断は、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲3発明2)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲3に記載された発明(申立1甲3発明2)ではなく、また、申立1甲3発明2及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

ウ 小括
以上より、本件発明1は、申立1甲3に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明1は、申立1甲3に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(2)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明2、3、5?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲3に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明2?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲3に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(3)本件発明9について

ア 申立1甲3発明1-2、申立1甲3発明2-2(決定注:「申立1甲3発明1-2?2-2」という。以下同様。)それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲3発明1-2?2-2における「炊飯用油脂組成物」と、本件発明9の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲3発1-2?2-2の「ご飯の製造方法」と、本件発明9の「米飯の調理方法」とは、油脂組成物を用いた食品の調理方法である点で、共通する。

c そうすると、本件発明9と、申立1甲3発明1-2?2-2それぞれとは、
「複数種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)を用いた食品の調理方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点9-1:油脂組成物について、本件発明9は炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲3発明1-2?2-2それぞれは、炊飯用である点
(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点9-2:複数種類の乳化剤について、本件発明9は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲3発明1-2?2-2それぞれは、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点
(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点9-3:食品の調理方法について、本件発明9は、油脂組成物を添加して炊飯済の米飯を炒め調理して、炒め調理後のパラパラ感を向上させることを含む、米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲3発明1-2?2-2それぞれは、ご飯の製造方法 である点

(イ)判断
(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点9-1及び(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点9-2は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲3発明1)相違点1及び(申立1甲3発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点9-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点9-2及び(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点9-3を検討するまでもなく、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲3に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲3に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(4)本件発明10について

ア 申立1甲3発明1-2?2-2それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲3発明1-2?2-2における「炊飯用油脂組成物」と、本件発明10の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲3発1-2?2-2の「ご飯の製造方法」と、本件発明10の「炊飯済の米飯の調理方法」とは、油脂組成物を用いた食品の調理方法である点で、共通する。

c そうすると、本件発明10と、申立1甲3発明1-2?2-2それぞれとは、
「複数種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)を用いた食品の調理方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点10-1:油脂組成物について、本件発明10は炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲3発明1-2?2-2それぞれは、炊飯用である点
(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点10-2:複数種類の乳化剤について、本件発明10は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲3発明1-2?2-2それぞれは、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点
(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点10-3:食品の調理方法について、本件発明10は、油脂組成物を、下記:
(1)前記油脂組成物を、炒め油として炒め調理を行う調理器具に付着させる;
(2)前記油脂組成物を、米飯に予め付着させてから炒め調理に供する;
(3)前記油脂組成物を、炒め調理中の米飯に直接的又は間接的に付着させる;
(4)前記油脂組成物を、米飯を炒め調理した食品を再加熱する際に食品に付着させる;
のいずれか1以上の態様で用いることを含む、炊飯済の米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲3発明1-2?2-2それぞれは、ご飯の製造方法である点

(イ)判断
(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点10-1及び(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点10-2は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲3発明1)相違点1及び(申立1甲3発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点10-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点10-2及び(申立1甲3発明1-2?2-2)相違点10-3を検討するまでもなく、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲3に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲3に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(5)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲3記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲3に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

5 申立1甲4を主引用例とする場合

(1)本件発明1について

ア 申立1甲4発明1との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲4発明1の「バターフレーバーオイル(Savor Up バターフレーバーオイル(株式会社J-オイルミルズ社製))」は、食用油脂であるから、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

b 申立1甲4発明1の「風味油」は、バターフレーバーオイルに2種類の乳化剤を添加した食用油脂の組成物であり、W/O型乳化組成物ではないから、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」に相当する。

c 申立1甲4発明1の「乳化剤である」「ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(CRS-75 HLB 1 阪本薬品工業株式会社製)」は、本件発明1の「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」に相当する。

d 申立1甲4発明1の「乳化剤である」「クエン酸モノオレイン酸グリセリン(623M HLB 7 太陽化学株式会社製)」は、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」に相当する。

e 申立1甲4発明1の「乳化剤である、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(CRS-75 HLB 1 阪本薬品工業株式会社製)0.5重量%、及び、蒸留ジグリセリンモノオレイン酸エステル(DO-100V HLB 7.3 理研ビタミン株式会社製)0.5重量%」の合計の配合量は、食用油脂である「バターフレーバーオイルに」対して、1.0重量%[=100×(0.5重量%+0.5重量%)/100重量%]といえ、前記c及びdで述べたことを踏まえると、本件発明1の「乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%」と、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して特定重量%である点で共通する。

そうすると、本件発明1と申立1甲4発明1とは、
「HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、油脂組成物であって、
乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して特定重量%である、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲4発明1)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲4発明1は、風味用である点
(申立1甲4発明1)相違点2:乳化剤(a)および(b)の合計の配合量について、本件発明1は、1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲4発明1は、1.0重量%である点

(イ)判断 (進歩性について)

a (申立1甲4発明1)相違点1について

(a)申立1甲4発明1の「風味油」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることについて、申立1甲4には記載も示唆もなされていない。

本件発明1は、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための、炊飯済みの米飯を炒め調理するための油脂組成物を提供する課題の下、HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する油脂組成物であって、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量を、食用油脂に対して1.5?20重量%とすることにより、当該課題を解決したものである。
他方、申立1甲4発明1は、風味油の加熱時の風味を維持する方法を提供することを課題とするものであって、そのような風味油を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとしようという動機付けがあるとは認められない。
また、申立1甲1?16には、申立1甲4発明1のような風味油を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆を認めることができない。

そうすると、申立1甲4発明1に申立1甲1?16の記載を組み合わせたとしても、申立1甲4発明1の風味油を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとしようとすることについては、申立1甲1?16いずれにも記載も示唆もなく、本件出願当時の技術常識であったとも認められず、他に動機付けられるものもない以上、本件発明1の(申立1甲4発明1)相違点1に係る構成を採用することは、当業者といえども、申立1甲1?16の記載から容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。
また、本件発明1の効果は、申立1甲1?16の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(b)申立人1は、申立書1の40頁4行?41頁10行において、
i 申立1甲4に記載の風味油を炊飯済の米飯を炒め調理するために用いることについては、申立1甲4の実施例4-2(申立1甲4d)に、HLB7の乳化剤を単独に添加した風味油でパスタを炒め、風味油を「炒め油」として使用しており、申立1甲1?3、5、6にも接した当業者であれば、食用油脂に二種類のHLBを有する乳化剤を添加した油脂組成物が、炒飯等の炒め物の調理用に使用されることを踏まえ、申立1甲4発明1の風味油についても、炊飯済の米飯の炒め調理用として使用することに特段の創意を要しない旨、
ii 申立1甲4に記載の風味油中の乳化剤の合計の配合量について、申立1甲4には、「【0016】・・乳化剤の配合量は、0.01?7重量%であり」(申立1甲4c)と記載されていることから、当該記載を参考に、申立1甲4に記載の風味油中の乳化剤の合計の配合量を、本件発明1の構成とすることに、格別の創意工夫を要しない旨、及び、
iii 申立1甲7?11の周知技術から、炒め油は食品間の付着を防止するためにも用いられ、チャーハン等の調理飯には一般にホグレ性やパラパラ感が求められ、ホグレ性やパラパラ感は、米飯粒同士のべたつきや結着性がないことによって生じることや米粒の表面に油がコーテイングされることにより付与されることが周知であるから、調理後の米飯のパラパラ感の向上は、炒め油に新たな用途を限定したことにならず、また、当該効果は当業者の予測の範囲内である旨を主張している。

前記主張のiについて、申立1甲4の実施例4-2(申立1甲4d)には、HLB7の乳化剤を単独に添加した風味油でパスタを炒め、ガーリック風味パスタを調理したことが記載されていることから、申立1甲4発明1の「風味油」は、炒め油として用いられるとは認められる。
また、前記主張のiiについて、申立1甲4には、「【0016】・・乳化剤の配合量は、0.01?7重量%であり」(申立1甲4c)と記載されていることから、風味油の加熱時の風味を維持する方法を提供するという課題の下、申立1甲4発明1の乳化剤の合計の配合量を、0.01?7重量%の範囲内で変更し得るとは認められる。
しかしながら、前記主張のiiiについては、前記2(1)ア(イ)で述べたとおりであり、申立1甲4発明1の「風味油」を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

したがって、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

b したがって、(申立1甲4発明1)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲4発明1及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 申立1甲4発明2?3との対比・判断

(ア)対比
申立1甲4発明2?3は、申立1甲4発明1と、乳化剤の種類(HLBはそれぞれ本件発明1の乳化剤(a)、(b)の範囲内)及び/又は使用油脂の種類が異なるのみである。
そうすると、前記ア(ア)で検討したa?eについては、申立1甲4発明2?3においても、同じである。

したがって、本件発明1と、申立1甲4発明2?3とは、
「HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、油脂組成物であって、
乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して特定重量%である、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲4発明2?3)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲4発明2?3は、風味用である点
(申立1甲4発明1)相違点2:乳化剤(a)および(b)の合計の配合量について、本件発明1は、1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲4発明2?3は、1.0重量%である点

(イ)判断
(申立1甲4発明2?3)相違点1及び(申立1甲4発明2?3)相違点2は、前記ア(ア)に記載の(申立1甲4発明1)相違点1及び(申立1甲4発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲4発明2?3)相違点1についての判断は、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲4発明2?3)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲4発明2?3及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 小括
以上より、本件発明1は、申立1甲4に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(2)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明2?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲4に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(3)本件発明9について

ア 申立1甲4発明1-2、申立1甲4発明2-2、申立1甲4発明3-2(決定注:「申立1甲4発明1-2?3-2」という。以下同様。)それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲4発明1-2?3-2における「風味油」と、本件発明9の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲4発1-2?3-2の「風味油の使用方法」と、本件発明9の「米飯の調理方法」とは、油脂組成物に関する方法である点で、共通する。

c そうすると、本件発明9と、申立1甲4発明1-2?3-2それぞれとは、
「HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、油脂組成物に関する方法であって、
乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して特定重量%である、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点9-1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲4発明1-2?3-2は、風味用である点
(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点9-2:乳化剤(a)および(b)の合計の配合量について、本件発明1は、1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲4発明1-2?3-2は、1.0重量%である点
(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点9-3:本件発明9は、油脂組成物を添加して炊飯済の米飯を炒め調理して、炒め調理後のパラパラ感を向上させることを含む、米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲4発明1-2?3-2それぞれは、風味油の使用方法である点

(イ)判断
(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点9-1及び(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点9-2は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲4発明1)相違点1及び(申立1甲4発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点9-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点9-2及び(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点9-3を検討するまでもなく、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲4に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(4)本件発明10について

ア 申立1甲4発明1-2?3-2それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲4発明1-2?3-2における「風味油」と、本件発明10の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲4発1-2?3-2の「風味油の使用方法」と、本件発明10の「炊飯済の米飯の調理方法」とは、油脂組成物に関する方法である点で、共通する。

c そうすると、本件発明10と、申立1甲4発明1-2?3-2それぞれとは、
「HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、油脂組成物であって、
乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して特定重量%である、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点10-1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲4発明1-2?3-2は、風味用である点
(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点10-2:乳化剤(a)および(b)の合計の配合量について、本件発明1は、1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲4発明1-2?3-2は、1.0重量%である点
(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点10-3:本件発明10は、油脂組成物を、下記:
(1)前記油脂組成物を、炒め油として炒め調理を行う調理器具に付着させる;
(2)前記油脂組成物を、米飯に予め付着させてから炒め調理に供する;
(3)前記油脂組成物を、炒め調理中の米飯に直接的又は間接的に付着させる;
(4)前記油脂組成物を、米飯を炒め調理した食品を再加熱する際に食品に付着させる;
のいずれか1以上の態様で用いることを含む、炊飯済の米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲4発明1-2?3-2それぞれは、風味油の使用方法である点

(イ)判断
(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点10-1及び(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点10-2は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲4発明1)相違点1及び(申立1甲4発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点10-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点10-2及び(申立1甲4発明1-2?3-2)相違点10-3を検討するまでもなく、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲4に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(5)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲4に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

6 申立1甲5を主引用例とする場合

(1)本件発明1について

ア 申立1甲5発明1との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲5発明1の「サラダ油(液状)」「及び菜種極度硬化油(固形状)」は、食用油脂であるから、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

b 申立1甲5発明1の「炒飯用」について、申立1甲5発明1の「炒飯用調味料」を用いた「炒飯の調理」の実施例(申立1甲5d【0024】)では、当該「炒飯用調味料」と「米飯」とを炒め調理していることから、炊飯済の米飯の炒め調理用といえる。
さらに、当該「炒飯の調理」した炒飯の「評価」(申立1甲5d【0025】)には、「試作人25名」中、「(1)ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっている:23名」と記載されていることから、調理後の米飯のパラパラ感が向上されているといえる。
そうすると、申立1甲5発明1の「炒飯用」は、本件発明1の「炊飯済の米飯を炒め調理するための」及び「調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための」に相当する。

c 申立1甲5発明1の「W/O型乳化組成物の炒飯用調味料」は、食用油脂である「サラダ油(液状)・・及び菜種極度硬化油(固形状)」を攪拌混合して調製された「油相部」に、乳化剤である「融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)・・及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)」を添加し攪拌混合した油相部に、「水相部」を加え攪拌混合して製造された組成物であり、油脂組成物といえる。
そうすると、申立1甲5発明1の「W/O型乳化組成物の炒飯用調味料」と、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」とは、油脂組成物である点で共通する。

d 申立1甲5発明1の「融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)」は、HLB値が1の乳化剤であるから(申立1甲5c)、本件発明1の「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」に相当する。

e 申立1甲5発明1の「融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5」は、HLB値が5の乳化剤であるから(申立1甲5c)、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」に相当する。

f 申立1甲5発明1の「サラダ油(液状)400部及び菜種極度硬化油(固形状)35部を・・攪拌混合して油相部を調製し、・・この油相部を・・冷却した後、融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部を添加し」について、食用油脂である「サラダ油(液状)400部及び菜種極度硬化油(固形状)35部」に対して、「融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部」を添加しているから、申立1甲5発明1の「融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部」及び「融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部」の合計の配合量は、食用油脂である「サラダ油(液状)400部及び菜種極度硬化油(固形状)35部」に対して、14.9質量部[=100×(60質量部+5質量部)/(400質量部+35質量部)]といえ、質量部は重量%と同様であるから、本件発明1の「乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%」に相当する。

そうすると、本件発明1と申立1甲5発明1とは、
「 HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、炊飯済の米飯を炒め調理するための油脂組成物であって、
乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%である、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための油脂組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲5発明1)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、W/O型乳化組成物である場合を除くものであるのに対し、申立1甲5発明1は、W/O型乳化組成物である点

(イ)判断 (進歩性について)

a (申立1甲5発明1)相違点1について

(a)申立1甲5発明1は、「良好な舌触り・食感を有する炒飯等の炒め物を簡単に調理することができる乳化安定性の優れたW/O型乳化組成物からなる炒め物用調味料を提供すること」を課題とするものであって、「風味成分を含有するW/O型乳化組成物に、HLB値が2以下で且つ融点の低い乳化剤と、HLB値が2を超え且つ融点の高い乳化剤とを含有させることにより、上記課題を解決することができるとの知見に基づくもの」である(申立1甲5b)。
それ故、申立1甲5発明1の炒飯用調味料が、W/O型乳化組成物であることは、必須の技術的特徴であるといえるから、申立1甲5発明1の炒飯用調味料を、W/O型乳化組成物以外のものとしようという動機付けがあるとは認められない。
また、申立1甲1?16の記載を検討しても、申立1甲5発明1のような炒飯用調味料を、W/O型乳化組成物以外のものとすることを導き出す記載や示唆を認めることができない。

そうすると、申立1甲5発明1に申立1甲1?16の記載を組み合わせたとしても、申立1甲5発明1の炒飯用調味料を、W/O型乳化組成物以外のものとしようとすることについては、申立1甲1?16いずれにも記載も示唆もなく、本件出願当時の技術常識であったとも認められず、他に動機付けられるものもない以上、本件発明1の(申立1甲5発明1)相違点1に係る構成を採用することは、当業者といえども、申立1甲1?16の記載から容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。

(b)申立人1は、申立書1の41頁11行?42頁12行において、申立1甲5発明1は良好な風味と良好な舌触り・食感を企図するところ、良好な風味は、風味成分を溶解した水相にあり、良好な舌触り・食感は専ら油相部から得られ、申立1甲5発明1の炒飯用調味料からW/O型乳化組成物を除いた発明(例えば実施例1の油相部)においても、良好な舌触り・食感を有する炒め物用調味料が得られると当業者は容易に予測するから、W/O型乳化組成物を単に除いただけでは、申立1甲5発明1に対する進歩性は解消されない旨を主張している。

しかしながら、前記(a)で述べたとおり、申立1甲5発明1の炒飯用調味料を、W/O型乳化組成物以外のものとしようという動機付けがあるとは認められないことから、申立1甲5発明1の炒飯用調味料を、W/O型乳化組成物以外のものとしようとすることは、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
したがって、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

b したがって、本件発明1は、申立1甲5発明1及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 申立1甲5発明2との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲5発明2の「香味油」、「サラダ油(液状)」及び「菜種極度硬化油(固形状)」は、食用油脂であるから、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

b 申立1甲5発明2の「炒飯用」について、申立1甲5発明2の「炒飯用調味料」を用いた「炒飯の調理」の実施例(申立1甲5d【0027】)では、当該「炒飯用調味料」と「米飯」と併せ電子レンジで加熱調理しており、炒め物を得ているといえる(申立1甲5c【0019】)ことから、炊飯済の米飯の炒め調理用といえる。
さらに、当該「炒飯の調理」した炒飯の「評価」(申立1甲5d【0028】)には、「ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっていた」と記載されていることから、調理後の米飯のパラパラ感が向上されているといえる。
そうすると、申立1甲5発明2の「炒飯用」は、本件発明1の「炊飯済の米飯を炒め調理するための」及び「調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための」に相当する。

c 申立1甲5発明2の「W/O型乳化組成物の炒飯用調味料」は、食用油脂である「香味油・・、サラダ油(液状)・・及び菜種極度硬化油(固形状)」を攪拌混合して調製された「油相部」に、乳化剤である「融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)・・、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)」を添加し攪拌混合した油相部に、「水相部」を加え攪拌混合して製造された組成物であり、油脂組成物といえる。
そうすると、申立1甲5発明2の「W/O型乳化組成物の炒飯用調味料」と、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」とは、油脂組成物である点で共通する。

d 申立1甲5発明2の「融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)」は、HLB値が1の乳化剤であるから(申立1甲5c)、本件発明1の「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」に相当する。

e 申立1甲5発明2の「融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5」は、HLB値が5の乳化剤であるから(申立1甲5c)、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」に相当する。

f 申立1甲5発明2の「香味油200部、サラダ油(液状)200部及び菜種極度硬化油(固形状)35部を・・攪拌混合して油相部を調製し、・・この油相部を・・冷却した後、融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部を添加し」について、食用油脂である「香味油200部、サラダ油(液状)200部及び菜種極度硬化油(固形状)35部」に対して、「融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部、及び融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部」を添加しているから、申立1甲5発明2の「融点が30℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルO-170、HLB値:1)60部」及び「融点が55℃のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、商品名:リョウトウエステルS-570、HLB値:5)5部」の合計の配合量は、食用油脂である「香味油200部、サラダ油(液状)200部及び菜種極度硬化油(固形状)35部」に対して、14.9質量部[=100×(60質量部+5質量部)/(200質量部+200質量部+35質量部)]といえ、質量部は重量%と同様であるから、本件発明1の「乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%」に相当する。

そうすると、本件発明1と申立1甲5発明2とは、
「 HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、炊飯済の米飯を炒め調理するための油脂組成物であって、
乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%である、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための油脂組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲5発明2)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、W/O型乳化組成物である場合を除くものであるのに対し、申立1甲5発明2は、W/O型乳化組成物である点

(イ)判断 (進歩性について)
(申立1甲5発明2)相違点1は、前記ア(ア)に記載の(申立1甲5発明1)相違点1と同じである。
そうすると、(申立1甲5発明2)相違点1についての判断は、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明1は、申立1甲5発明2及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 小括
以上より、本件発明1は、申立1甲5に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(2)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明2?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲5に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(3)本件発明9について
ア 申立1甲5発明1-2、申立1甲5発明2-2(決定注:「申立1甲5発明1-2?2-2」という。以下同様。)それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲5発明1-2?2-2における「炒飯用調味料」と、本件発明9の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲5発明1-2?2-2の「炒飯の調理方法」は、炒飯が米飯といえるから、本件発明9の「米飯の調理方法」に相当する。

c 申立1甲5発明1-2の「フライパンに・・炒飯用調味料を絞り出すとともに米飯・・を入れ、弱火で・・炒めながら・・かき混ぜ」、及び、申立1甲5発2-2の「米飯(冷飯)・・その上に・・炒飯用調味料を絞り出す・・そのまま電子レンジに入れ・・加熱調理し」は、共に、炒飯用調味料を添加して炊飯済の米飯を炒め調理しているといえるから、本件発明9の「油脂組成物を添加して炊飯済の米飯を炒め調理して」に相当する。

d 申立1甲5発明1-2?2-2の「ぱらりとした舌触り・食感に仕上がっている」は、炒め調理後の米飯のパラパラ感を向上させているといえるから、本件発明9の「炒め調理後の米飯のパラパラ感を向上させる」に相当する。

e そうすると、本件発明9と、申立1甲5発明1-2?2-2それぞれとは、
「HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、炊飯済の米飯を炒め調理するための油脂組成物であって、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%である、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための油脂組成物を添加して炊飯済に米飯を炒め調理して、炒め調理後の米飯のパラパラ感を向上させることを含む、米飯の調理方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲5発明1-2?2-2)相違点9-1:油脂組成物について、本件発明1は、W/O型乳化組成物である場合を除くものであるのに対し、申立1甲5発明1-2?2-2は、W/O型乳化組成物である点

(イ)判断
(申立1甲5発明1-2?2-2)相違点9-1は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲5発明1)相違点1と同じである。
そうすると、(申立1甲5発明1-2?2-2)相違点9-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲5に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(4)本件発明10について

ア 申立1甲5発明1-2?2-2それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲5発明1-2?2-2における「W/O型乳化組成物の炒飯用調味料」と、本件発明10の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲5発明1-2?2-2の「炒飯の調理方法」は、炒飯が炊飯済の米飯といえるから、本件発明10の「炊飯済の米飯の調理方法」に相当する。

c 申立1甲5発明1-2の「フライパンに・・炒飯用調味料を絞り出すとともに米飯・・を入れ、弱火で・・炒めながら・・かき混ぜ」、及び、申立1甲5発2-2の「米飯(冷飯)・・その上に・・炒飯用調味料を絞り出す・・そのまま電子レンジに入れ・・加熱調理し」は、共に、炒飯用調味料と炊飯済の米飯とを調理器具に入れ炒め調理しており、炒飯用調味料を炒め調理中の米飯に直接的に付着させているといえるから、本件発明10の「(3)前記油脂組成物を、炒め調理中の米飯に直接的又は間接的に付着させる」に相当する。

d そうすると、本件発明10と、申立1甲5発明1-2?2-2それぞれとは、

「 HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する、炊飯済の米飯を炒め調理するための油脂組成物であって、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%である、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための油脂組成物を、
(3)前記油脂組成物を、炒め調理中の米飯に直接的又は間接的に付着させる:
態様で用いることを含む、炊飯済の米飯の調理方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲5発明1-2?2-2)相違点10-1:油脂組成物について、本件発明1は、W/O型乳化組成物である場合を除くものであるのに対し、申立1甲5発明1-2?2-2は、W/O型乳化組成物である点

(イ)判断
(申立1甲5発明1-2?2-2)相違点10-1は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲5発明1)相違点1と同じである。
そうすると、(申立1甲5発明1-2?2-2)相違点10-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲5に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(5)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲5に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

7 申立1甲6を主引用例とする場合

(1)本件発明1について

ア 申立1甲6発明1との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲6発明1の「菜種油」は、食用油脂であるから、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

b 申立1甲6発明1の「油脂組成物」は、W/O型乳化組成物ではないから、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」に相当する。

c 申立1甲6発明1の「ペンタオレイン酸テトラグリセリン(HLB3)」及び「ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)(阪本薬品工業株式会社 SYグリスターCR-ED)」は、乳化剤であるから(申立1甲6c)、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」と、2種類の乳化剤である点で共通する。

そうすると、本件発明1と申立1甲6発明1とは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物であって、
2種類の乳化剤の合計の配合量が、食用油脂に対して特定重量%である、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲6発明1)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲6発明1は、そのような用途であるか明らかでない点
(申立1甲6発明1)相違点2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲6発明1は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

a (申立1甲6発明1)相違点1について

(a)申立1甲6発明1の「油脂組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることについて、申立1甲6には記載も示唆もなされていない。

本件発明1は、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるための、炊飯済みの米飯を炒め調理するための油脂組成物を提供する課題の下、HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する油脂組成物であって、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量を、食用油脂に対して1.5?20重量%とすることにより、当該課題を解決したものである。
他方、申立1甲6発明1は、揚げ物調理やマヨネーズの調製等もできる汎用性のきわめて広い炒め油を提供することを課題とするものであって、本件発明1の課題と異なるものであり、そのような油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとする動機付けがあるとは認められない。
また、申立1甲1?16には、申立1甲6発明1のような油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることを導き出す記載や示唆を認めることができない。

そうすると、申立1甲6発明1に申立1甲1?16の記載を組み合わせたとしても、申立1甲6発明1の油脂組成物を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることについては、申立1甲1?16いずれにも記載も示唆もなく、本件出願当時の技術常識であったとも認められず、他に動機付けられるものもない以上、本件発明1の(申立1甲6発明1)相違点1に係る構成を採用することは、当業者といえども、申立1甲1?16の記載から容易に想到し得る技術的事項であるとはいえない。
また、本件発明1の効果は、申立1甲1?16の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。

(b)申立人1は、(申立1甲6発明1)相違点1に関し、申立書1の42頁13行?43頁1行において、申立1甲7?11の周知技術から、炒め油は食品間の付着を防止するためにも用いられ、チャーハン等の調理飯には一般にホグレ性やパラパラ感が求められ、ホグレ性やパラパラ感は、米飯粒同士のべたつきや結着性がないことによって生じることや米粒の表面に油がコーテイングされることにより付与されることが周知であるから、調理後の米飯のパラパラ感の向上は、炒め油に新たな用途を限定したことにならず、また、当該周知技術を理解している当業者は、申立1甲6発明1の油脂組成物を炒飯にパラパラ感を付与するために用いることに特段の創意を要するとはいえない旨を主張している。

しかしながら、当該主張については、前記2(1)ア(イ)で述べたとおりである。
したがって、申立1甲6発明1の「油脂組成物」を、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

したがって、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

b したがって、(申立1甲6発明1)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲6発明1及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 申立1甲6発明2との対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲6発明2は、申立1甲6発明1と、食用油脂の種類が異なり、かつ、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(PGPR)の配合量が異なるのみである。
そうすると、前記ア(ア)で検討したa?cについては、申立1甲6発明2においても、同じである。

b したがって、本件発明1と申立1甲6発明2とは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲6発明2)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲6発明2は、そのような用途であるか明らかでない点
(申立1甲6発明2)相違点2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲6発明2は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

(イ)判断
(申立1甲6発明2)相違点1及び(申立1甲6発明2)相違点2は、前記ア(ア)に記載の(申立1甲6発明1)相違点1及び(申立1甲6発明1)相違点2と、それぞれ同じである。

そうすると、(申立1甲6発明2)相違点1についての判断は、前記ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲6発明2)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲6発明2及び申立1甲1?16に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 小括
以上より、本件発明1は、申立1甲6に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(2)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明2?8は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲6に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(3)本件発明9について

ア 申立1甲6発明1-2、申立1甲6発明2-2(決定注:「申立1甲6発明1-2?2-2」という。以下同様。)それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲6発明1-2?2-2における「油脂組成物」と、本件発明9の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲6発明1-2?2-2の「油脂組成物の炒め調理、揚げ調理への使用方法」と、本件発明9の「米飯の調理方法」とは、油脂組成物に関する方法である点で共通する。

c そうすると、本件発明9と、申立1甲6発明1-2?2-2それぞれとは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)に関する方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点9-1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲6発明1-2?2-2それぞれは、そのような用途であるか明らかでない点
(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点9-2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲6発明1-2?2-2それぞれは、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点
(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点9-3:油脂組成物に関する方法について、本件発明9は、油脂組成物を添加して炊飯済の米飯を炒め調理して、炒め調理後のパラパラ感を向上させることを含む、米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲6発明1-2?2-2それぞれは、油脂組成物の炒め調理、揚げ調理への使用方法である点

(イ)判断
(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点9-1?(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点9-2は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲6発明1)相違点1?(申立1甲6発明1)相違点2と、それぞれ同じである。
そうすると、(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点9-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点9-2?(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点9-3を検討するまでもなく、本件発明9は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲6に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(4)本件発明10について

ア 申立1甲6発明1-2?2-2それぞれとの対比・判断

(ア)対比

a 申立1甲6発明1-2?2-2における「油脂組成物」と、本件発明10の「請求項1?8のいずれかに記載の油脂組成物」とは、前記(1)ア(ア)及び(1)イ(ア)で述べた、一致点及び相違点と同じである。

b 申立1甲6発明1-2?2-2の「油脂組成物の調製方法」と、本件発明10の「炊飯済の米飯の炒め調理、揚げ調理への使用方法」とは、油脂組成物に関する方法である点で共通する。

c そうすると、本件発明10と、申立1甲6発明1-2?2-2それぞれとは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)に関する方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点10-1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立1甲6発明1-2?2-2それぞれは、そのような用途であるか明らかでない点
(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点10-2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立1甲6発明1-2?2-2それぞれは、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点
(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点10-3:油脂組成物に関する方法について、本件発明10は、油脂組成物を、下記:
(1)前記油脂組成物を、炒め油として炒め調理を行う調理器具に付着させる;
(2)前記油脂組成物を、米飯に予め付着させてから炒め調理に供する;
(3)前記油脂組成物を、炒め調理中の米飯に直接的又は間接的に付着させる;
(4)前記油脂組成物を、米飯を炒め調理した食品を再加熱する際に食品に付着させる;
のいずれか1以上の態様で用いることを含む、炊飯済の米飯の調理方法であるのに対し、申立1甲6発明1-2?2-2それぞれは、油脂組成物の炒め調理、揚げ調理への使用方法である点

(イ)判断
(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点10-1?(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点10-2は、前記(1)ア(ア)に記載の(申立1甲6発明1)相違点1?(申立1甲6発明1)相違点2と同じである。
そうすると、(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点10-1についての判断は、前記(1)ア(イ)で述べたことと同様である。
したがって、(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点10-2?(申立1甲6発明1-2?2-2)相違点10-3を検討するまでもなく、本件発明10は、本件発明1と同様の理由により、申立1甲6に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

(5)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10をさらに技術的に限定した発明である。
したがって、本件発明11は、本件発明10と同様の理由により、申立1甲6に記載された発明及び申立1甲1?16に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

8 申立2甲1発明との対比 (本件発明1のみ)

(1)本件発明1と申立2甲1発明との対比

ア 申立2甲1発明の「辣油(市販品:エスビー食品社製)」は、「香味油」、すなわち、香辛料類等と油脂とを接触させ、香辛料等に含まれる香味成分や色素類などを油脂に移行させたものであり、香味油の製造に用いられる油脂は、食用可能な油脂であるから(申立2甲1b)、本件発明1の「食用油脂」に該当する。

イ 申立2甲1発明の「香味油組成物」は、前記アより、食用油脂の組成物といえ、W/O型乳化組成物ではないから、本件発明1の「油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」に相当する。

ウ 申立2甲1発明の「ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製)」及び「ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR-300;理研ビタミン社製)」は、乳化剤であるから(申立2甲1b)、本件発明1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」と、2種類の乳化剤である点で共通する。

エ そうすると、本件発明1と申立2甲1発明とは、
「2種類の乳化剤および食用油脂を含有する、油脂組成物(ただし、W/O型乳化組成物である場合を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

(申立2甲1発明)相違点1:油脂組成物について、本件発明1は、炊飯済の米飯を炒め調理するためのもので、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるのに対し、申立2甲1発明は、香味油用である点
(申立2甲1発明)相違点2:2種類の乳化剤について、本件発明1は、HLBが4.7?8の乳化剤(a)及びHLBが2.5以下の乳化剤(b)であり、乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%であるのに対し、申立2甲1発明は、乳化剤のHLB及びその配合量がそのようなものか明らかでない点

(2)判断 (新規性のみ)

ア (申立2甲1発明)相違点1について

(ア)申立2甲1発明の「香味油組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであることについて、申立2甲1には記載も示唆もなされておらず、そのことが記載されているに等しいといえる本件出願時の技術常識も存在しない。
したがって、申立2甲1発明の「香味油組成物」が、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであるとは認められない。

(イ)申立人2は、令和3年4月1日付けの特許異議申立書(以下、「申立書2」という。)6頁下から4行?8頁下から3行において、「甲5には、「乳化した油で米飯を炒めることにより、パラッとした炒飯を作ることができること」が記載されている。そして、申立2甲1の「ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製)」及び「ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR-300;理研ビタミン社製)」は乳化剤であることから、調理後の米飯のパラパラ感を向上させる効果を有する。」、よって、申立2甲1発明は、調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものである旨主張している。

しかしながら、申立2甲5は、「料理がもっと美味しくなる、キユーピーマヨネーズの裏ワザ」(申立2甲5a)に関し記載するものであって、申立2甲5には「[裏ワザ3]:パラパラ炒飯が作れる! 油の代わりにマヨネーズで炒めると、マヨネーズ中の卵黄と乳化された植物油が、ご飯の一粒一粒をコーティングするから、パラッと仕上がります」(申立2甲5b)と記載されている。
この記載より、マヨネーズ中の卵黄が乳化剤として用いられ乳化された植物油が、炒飯がパラッと仕上がると理解される。

一方、申立2甲1発明は、「香味油組成物」に含有される乳化剤として、「ジグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;理研ビタミン社製)1%」及び「ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(商品名:ポエムPR-300;理研ビタミン社製)1%」を用いたものであり、乳化剤として卵黄を用いたものとは異なると理解される。

そして、一般に、油脂組成物において、含有する乳化剤の種類が異なれば、その乳化剤により奏される作用を、同様に有しているとは限らないと理解される。
実際に、本件明細書の実施例の試験1-6及び試験1-7(【0040】【表1-1】)には、食用油脂及び乳化剤(HLB1又はHLB0.5)を含有する油脂組成物を用いた場合であっても、炒め調理時の米飯のほぐれ状態、調理直後及び冷却保存後の炒め飯のパラパラ感は、いずれも良好な結果を得られなかったことが示されている。

そうすると、申立2甲1発明の香味油組成物は、甲5に記載のマヨネーズ、すなわち、マヨネーズ中の卵黄と乳化された植物油を含有する油脂組成物ではないから、申立2甲1発明の香味油組成物の用途の理解に、甲5の記載を参照して、申立2甲1発明の香味油組成物は調理後の米飯のパラパラ感を向上させるためのものであると理解しなければならない理由は存在しない。

したがって、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

(ウ)以上より、(申立2甲1発明)相違点1は、実質的な相違点といえる。

(3)小括
したがって、(申立2甲1発明)相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、申立2甲1に記載された発明であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。

9 まとめ
以上より、本件発明1?11に係る特許は、特許法第29条第1又は2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

II サポート要件(申立1理由3)について

1 特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

2 発明の詳細な説明の記載

(1)背景技術に関する記載
「【背景技術】
【0002】
一般に米飯や麺類などの澱粉系食材は、調理直後の結着性はそれほど強くないものの、時間の経過とともに、澱粉によって互いが結着したり、食材同士がべとつきやすくなる。これは、糊化された澱粉の粘着性によって、食材が互いに付着してしまうことが原因である。
【0003】
従来、麺類などの澱粉系食材の付着を抑制し、ほぐれ性を改善するために、いくつかの技術が提案されている。例えば、食用油脂を用いて麺類の付着を抑制することが提案されているが、単に食用油脂を添加しただけでは、均一に食用油脂を付着させることが難しく、むらができてしまう場合がある。
【0004】
そこで、麺類への食用油脂の付着性を高めるために、食用油脂に乳化剤を添加した組成物を麺類のほぐれ性向上剤として使用することが提案されている。例えば、特許文献1?3には、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが記載されており、特許文献4には、ジグリセリン脂肪酸エステルを用いることが記載されている。また、特許文献5には、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを併用することが記載されている。
【0005】
また、炒め調理などの調理時に用いる油脂組成物にレシチンを用いることも提案されている。例えば、特許文献6?8には、食用油脂にレシチンを配合することによって調理用の油脂組成物を調製することが記載されている。
【0006】
さらに、炒め調理などの調理時に用いる油脂組成物に乳化剤を用いることも提案されている。例えば、特許文献9には、グリセリンのオレイン酸エステルを食用油脂に配合した炒め物用の油脂組成物が記載されている。」

(2)発明が解決しようとする課題に関する記載
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、澱粉系食材を炒め調理する際の技術課題として、フライパンや中華鍋などの調理器具への付着防止が重視され、種々の提案がなされてきた。例えば、炒め調理の際に用いられる油脂(炒め油)については、上述したように、レシチンや乳化剤を配合することによって調理器具への剥離性を向上させることが提案されてきた(特許文献6?9)。
【0009】
また近年は、調理器具や調理設備、さらには調理手法の観点から、炒め調理する際の食材と調理器具との付着防止技術の改良が進んでおり、炒め油にあまり依存せずに食材と調理器具の付着防止を図ることも可能になっている。
【0010】
このような状況の中、炒め調理時に用いられる油脂(炒め油)に求められるニーズが変化してきており、従来重視されてきた調理器具への澱粉系食材の付着防止だけでなく、炒め調理した食材へ付加価値を与えられるような炒め調理用油脂が求められている。例えば、炒め調理時に用いることによって、調理器具への澱粉系食材の付着防止を図ることはもちろん、炒め飯であればパラパラ感、麺類であればつるみ感などを食材に付与するなど、炒め調理後の食品の美味しさをも向上させるような油脂組成物が求められている。
【0011】
上述したように、炒め調理用の油脂組成物としては、従来、レシチンを配合することが知られているが、レシチンを配合した油脂組成物を用いて炒め調理を行うと味や臭いに影響が生じてしまい、また、炒め調理時の熱によって着色(加熱着色)が生じてしまうという問題があった。すなわち、従来用いられてきたレシチンを配合した油脂組成物では、炒め調理時の調理器具と食材との剥離性を向上させることはできるものの、調理後の食品の価値を損なってしまうことがあった。
【0012】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、特に澱粉系食材を炒め調理した後の食品の価値を高められる、炒め調理に利用するための油脂組成物を提供することである。」

(3)「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」の種類、並びに、「乳化剤(a)および(b)の合計の配合量」についての実施の態様の記載
「【0021】
本発明に係る油脂組成物には、HLBが4.7?8である乳化剤(a)が配合される。本発明において乳化剤のHLBとは、Hydrophilic Lipophilic Balanceの略語であり、0(親油基のみの場合)?20(親水基のみの場合)の数値を有する。Griffin法による場合は、HLB=20×〔1-(エステルのケン化価/原料脂肪酸の中和価)〕によってHLBを算出することができる。乳化剤のHLBが8を超えると、乳化剤が油脂に溶解しにくくなり、白濁してしまう場合がある。一方、乳化剤のHLBが4.7未満であると、澱粉系食材を炒め調理した際に調理しにくく、また、調理後の澱粉系食材がべとつきやすくなる。HLBが4.7?8である乳化剤(a)については、ある態様において、HLBが5.5以上であってもよく、別の好ましい態様においてHLBを6.0以上としてもよい。
【0022】
HLBが4.7?8である乳化剤(a)の配合量は特に制限されないが、例えば、食用油脂100重量%に対して合計で0.1?20重量%の乳化剤を配合することが好ましく、0.5?15重量%がより好ましく、1.0?12重量%がさらに好ましく、1.5?10重量%としてもよい。
【0023】
HLBが4.7?8である乳化剤(a)としては、これに限定されるものではないが、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステルから選ばれる1以上を使用することができる。中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステルから選ばれる1以上が好ましい。有機酸脂肪酸エステルの中でも、有機酸としてはクエン酸が好ましく、脂肪酸としてはオレイン酸が好ましく、特にクエン酸モノオレイン酸エステル(クエン酸モノオレイン酸グリセリン)が好ましい。またポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルがより好ましく、脂肪酸エステルの脂肪酸としてはオレイン酸が特に好ましい。
【0024】
なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、一般にエステル化反応などの方法で製造することができる。ポリグリセリンは、例えば、グリセリンまたはグリシドールあるいはエピクロルヒドリンなどを加熱し、重縮合反応させて得ることができる。本発明で用いられるポリグリセリンとしては平均重合度が約2?10程度のものを使用してもよく、例えば、具体的にはジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、オクタグリセリン(平均重合度8)またはデカグリセリン(平均重合度10)などが挙げられ、好ましくはジグリセリン、トリグリセリンまたはテトラグリセリン、より好ましくはジグリセリンが挙げられる。上記脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6?24の直鎖の飽和または不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数8?18の直鎖の飽和または不飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数18の直鎖の不飽和脂肪酸が挙げられる。例えば、具体的にはオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸の群から選ばれる一種または二種以上の脂肪酸が挙げられる。
【0025】
本発明の好ましい態様において、HLBが4.7?8である乳化剤(a)とともにHLBが2.5以下の乳化剤(b)を使用する。併用する乳化剤(b)のHLBの下限は特にないが、HLBが0.1以上としてもよく、後述する実施例において示すようにHLBが0.5程度の乳化剤を用いても本発明の効果は十分に発揮される。HLBが4.7?8である乳化剤(a)と併用する乳化剤(b)は、HLBが2.5以下であるが、ある態様においてHLBが1.9以下とすることもでき、別の態様においてはHLBを1.5以下とすることもできる。
【0026】
HLBが2.5以下の乳化剤(b)としては、これに限定されるものではないが、例えば、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1以上が好ましく、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1以上が特に好ましい。
【0027】
HLBが4.7?8である乳化剤(a)とHLBが2.5以下である乳化剤(b)の両方を併用する場合、両者の併用比率は特に制限されないが、例えば、(a)と(b)の重量比を90:10?10:90とすることができ、好ましくは85:15?15:85であり、70:30?30:70としてもよい。また、本発明においては、HLBが4.7?8である乳化剤(a)とHLBが2.5以下である乳化剤(b)の合計量は、例えば、油脂100重量%に対して合計で0.3?20重量%の乳化剤を配合することが好ましく、1?15重量%がより好ましく、1.5?12重量%がさらに好ましく、2?10重量%としてもよい。」

(4)本件発明の実施例に関する記載
「【0037】
乳化剤
以下の実験例においては、下記の乳化剤を使用した。なお、各乳化剤のHLBはカタログ記載の数値である。
・モノオレイン酸ジグリセリン(HLB:7.4、理研ビタミン、ポエムDO100V)
・クエン酸モノオレイン酸グリセリン(HLB:6.0、理研ビタミン、ポエムK-37V)
・シュガーエステル(オレイン酸エステル)(HLB:1、三菱化学フーズ、O-170)
・ヘキサグリセリン縮合リシノレート(HLB:0.5、理研ビタミン、ポエムPR300)
・テトラグリセリン縮合リシノレート(HLB:1.0、理研ビタミン、ポエムPR100)
試験1:炒め飯
食用菜種油(キャノーラ油、昭和産業)に対して各種乳化剤を添加し、加温可能な容器において撹拌しながら60℃に加温し、均一な油脂組成物を得た。使用した乳化剤の種類と量を以下の表に示す。表における各種乳化剤の量は、食用菜種油に対する重量%である。
【0038】
千葉県産コシヒカリに対して水を加え(加水145%)、炊飯器を用いて米飯を調製した。ステンレス製フライパンに油脂組成物10gを入れ、電磁調理器で加熱し、150℃になったところで、50?60℃に保温した米飯500gを投入し、2分間炒め調理して炒め飯(具なし、味付けなしのチャーハン)を製造した。炒め調理時の米飯のほぐれ状態(ほぐれ性)を4段階で評価した。
【0039】
また、炒めた米飯について、調理直後、および、真空冷却後1時間経過した段階で、パラパラ感と食感(口当たり)をそれぞれ4段階で評価した。評価基準は以下のとおりである。
[炒め調理時の米飯のほぐれ状態]
◎:炒め時のほぐれが良好で、固まりがなく、全体がパラパラしている。
○:炒め時に固まりなくほぐれる。
△:炒め時の固まりは無いが、ご飯同士の粘着性は高い。
×:炒め時にご飯がもったりし、ほぐれが悪い。
[炒め飯のパラパラ感]
◎:非常に良好である。
○:良好である。
△:やや劣る。
×:パラパラしていない。
[食感(口当たり)]
◎:米飯の表面が滑らかで口当たりが非常に良い。
○:米飯の表面が滑らかで口当たりが良い。
△:米飯の表面に滑らかさが無く、口当たりが劣る。
×:米飯の表面がパサパサしており、口当たりが悪い。
【0040】
【表1ー1】

【0041】
【表1ー2】

【0042】
上記の表から明らかなように、HLBが4.7?8である乳化剤を食用油脂に配合した油脂組成物を炒め油として使用すると、炒め調理時の米飯のほぐれ性が良好であり、また、調理直後および冷却保存後の炒め飯のパラパラ感や食感も優れたものであった。
【0043】
一方、HLBが低い乳化剤のみを食用油脂に配合した油脂組成物を用いた場合(試験1-6、試験1-7)、炒め調理時の米飯のほぐれ性、調理直後および冷却保存後の炒め飯のパラパラ感や食感のいずれも、良好な結果は得られなかった。
【0044】
しかしながら、HLBが低い乳化剤であっても、HLBが4.7?8である乳化剤と併用した場合(試験1-8?試験1-13)、炒め調理時の米飯のほぐれ性、調理直後および冷却保存後の炒め飯のパラパラ感や食感のいずれも、良好な結果が得られた。HLBの異なる乳化剤を併用した場合に特に優れた効果が得られる理由の詳細は明らかでないが、HLBの大きく異なる乳化剤を併用することによって、澱粉系食材と調理器具という性状の異なる対象のいずれに対しても油脂組成物が迅速になじむことができるため優れた効果が奏されたものと推測される。
【0045】
試験2:炒め飯(その2)
試験1と同様にして米飯を調製した。テフロン(登録商標)コーティングされたフライパンに炒め油としてサラダ油(乳化剤無添加)5gを入れ、電磁調理器で加熱し、150℃になったところで、50?60℃に保温した米飯500gを投入し、1分間炒めたところで、下表の油脂組成物10gを鍋肌より添加し、さらに1分間炒めて炒め飯(具なし、味付けなし)を製造した。ここで、油脂組成物の調製、および、炒めた米飯の評価は、試験1と同様にして行った。
【0046】
【表2】

【0047】
試験3:炒め飯(その3)
試験1と同様にして米飯を調製し、この米飯に油脂組成物を2重量%添加して20℃の環境下で2時間保管した。
【0048】
テフロン(登録商標)コーティングされたフライパンに炒め油としてサラダ油(乳化剤無添加)5gを入れ、電磁調理器で加熱し、150℃になったところで、予め油脂組成物を添加しておいた冷飯500gを投入し、2分間炒めて炒め飯(具なし、味付けなし)を製造した。ここで、油脂組成物の調製、および、炒めた米飯の評価は、試験1と同様にして行った。
【0049】
【表3】

【0050】
試験4:炒め飯(その4、ケチャップライス)
試験1と同様にして米飯を調製した。ステンレス製フライパンに油脂組成物10gを入れ、電磁調理器で加熱して150℃になったところで、50?60℃に保温した米飯500gを投入して1分間炒め、塩5g、ケチャップ25gを加え、さらに1分炒めた。ここで、油脂組成物の調製、および、炒めた米飯の評価は、試験1と同様にして行った。
【0051】
【表4】

【0052】
試験5:炒め飯(その5)
ステンレス製フライパンに炒め油としてサラダ油10gを入れ、電磁調理器で加熱して150℃になったところで、みじん切りにしたタマネギ(1玉分)を入れて軽く炒め、次いで、輪切りにしたウインナー(2本分)と細かく切ったキャベツ(1/8玉分)を入れて、全体に火が通るまで炒めた。塩・コショウを少々添加した後、50?60℃に保温した米飯500gを投入し、次いで油脂組成物10gを米飯全体に振り掛けるように添加した。全体を均等に混ぜながら1分間炒めた後、ウスターソースを大さじ1杯添加し、さらに1分間炒めて炒め飯を製造した。なお、本試験において米飯および油脂組成物は試験1と同様にして調製したが、油脂組成物は、食用菜種油に対してモノオレイン酸ジグリセリン(HLB:7.4)2重量%、クエン酸モノオレイン酸グリセリン(HLB:6.0)3重量%、ヘキサグリセリン縮合リシノレート(HLB:0.5)3重量%を配合したものを使用した。
【0053】
この炒め飯は、皿に盛り付ける際に、米飯のパラパラ感を感じるほど良好な状態に仕上がった。また、喫食したところ、非常に良好なパラパラ感があり、おいしく食すことができた。
【0054】
試験6:炒め飯(その6)
試験1と同様にして米飯を調製した。テフロン(登録商標)コーティングされたフライパンに、炒め油としてサラダ油10gを入れ、電磁調理器で加熱して150℃になったところで、みじん切りにしたタマネギ(1玉分)を入れて軽く炒めた。次いで、50?60℃に保温した米飯500gを投入して2分間炒め、塩・コショウで味を調え、火を止めて炒め飯を調理した。
【0055】
炒め飯をステンレスバットに移して粗熱を取ったのち、全体を2等分した。片方に油脂組成物(試験3-1と同じ)5gを添加して全体に軽く混ぜ合わせ、プラスチック製容器に盛り付けて蓋をして20℃の環境下で4時間保管した(試験6-1)。もう一方は、油脂組成物を添加せずにそのままプラスチック製容器に盛り付けて蓋をして20℃の環境下で4時間保管した(試験6-2)。
【0056】
試験6-1の炒め飯は、電子レンジで再加熱を行ってから喫食した。一方、試験6-2の炒め飯は、油脂組成物(試験3-1と同じ)5gを全体に振り掛けるように添加してか
ら電子レンジで再加熱して喫食した。
【0057】
試験6-1、試験6-2の炒め飯は、いずれも、電子レンジで再加熱後、米飯のパラパラ感を感じる状態に仕上がっていた。また、喫食したところ、いずれも非常に良好なパラパラ感があり、おいしく食すことができた。」

3 本件発明の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の、背景技術の記載(【0002】?【0004】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0012】)及び実施例の記載(【0036】?【0066】)等からみて、本件発明1?8の解決しようとする課題は、炊飯済の米飯を炒め調理した後の米飯のパラパラ感を向上させられる、炊飯済みの米飯の炒め調理に利用するための油脂組成物を提供すること、本件発明9の解決しようとする課題は、炊飯済の米飯を炒め調理した後の米飯のパラパラ感を向上させられる米飯の調理方法を提供すること、及び、本件発明10?11の解決しようとする課題は、炊飯済の米飯を炒め調理した後の米飯のパラパラ感を向上させられる、炊飯済の米飯の調理方法を提供することであると認める。

4 特許請求の範囲の記載
前記第2に記載したとおりである。

5 判断

(1)発明の詳細な説明の、試験1?5(【0037】?【0053】)には、HLB7.4の乳化剤であるモノオレイン酸ジグリセリン又はHLB6.0の乳化剤であるクエン酸モノオレイン酸グリセリン、及び、HLB1の乳化剤であるシュガーエステル(オレイン酸エステル)又はHLB0.5の乳化剤であるヘキサグリセリン縮合リシノレートを、合計の配合量が食用菜種油に対して、4.5?15重量%含有する油脂組成物を、炊飯済の米飯用の炒め油として使用し、炒め調理後の米飯のパラパラ感は、「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」又は「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」をそれぞれ単独で使用した場合と比較し、優れたものであったことを客観的に確認したことが記載されている。

それ故、本件発明1?11の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)および食用油脂を含有する」「油脂組成物」であって、「乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%である」「油脂組成物」(W/O型乳化組成物ではない)を、「炊飯済の米飯を炒め調理するための」ものとして使用し、「炒め調理後の米飯のパラパラ感を向上させ」ていることは明らかであり、本件発明1?11の前記課題を解決できているといえる。

(2)申立人1の主張(1)について
本件発明1?11の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」の種類、並びに、「乳化剤(a)および(b)の合計の配合量」について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0023】HLBが4.7?8である乳化剤(a)としては、これに限定されるものではないが、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステルから選ばれる1以上を使用することができる。・・・
【0026】HLBが2.5以下の乳化剤(b)としては、これに限定されるものではないが、例えば、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1以上が好ましく・・・
【0027】・・・本発明においては、HLBが4.7?8である乳化剤(a)とHLBが2.5以下である乳化剤(b)の合計量は、例えば、油脂100重量%に対して合計で0.3?20重量%の乳化剤を配合することが好ましく、1?15重量%がより好ましく、1.5?12重量%がさらに好ましく・・」と記載されており、「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」の種類としては、特に限定されるものではなく、並びに、「乳化剤(a)および(b)の合計の配合量」としては、食用油脂100重量%に対して合計で1.5?20重量%であれば、炊飯済の米飯を炒め調理した後の米飯のパラパラ感を向上させられると理解され、そのことは、試験1?5の評価結果より裏付けられているといえる。
そうすると、試験1?5の記載のように油脂組成物を製造し、それを用いて炊飯済の米飯を炒め調理すれば、調理後の米飯のパラパラ感を向上させることができることを考慮に入れると、HLBが4.7?8の乳化剤(a)、HLBが2.5以下の乳化剤(b)及び食用油脂を含有する、炊飯済の米飯を炒め調理するための油脂組成物において、実施の態様の記載に基づいて、本件発明1?11に特定されている、「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」及び「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」として任意の種類の各乳化剤、並びに、「乳化剤(a)および(b)の合計の配合量が、食用油脂に対して1.5?20重量%」で実施すれば、炊飯済の米飯を炒め調理した後の米飯のパラパラ感を向上させられる油脂組成物を得ることができると、当業者は理解できるといえ、本件発明1?11の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。

(3)申立人1の主張(2)について
申立人1は、甲17の下記の記載を指摘し、前記主張(2)を主張している。

しかしながら、甲17には、「一般に、油脂組成物に複数の乳化剤を混用した場合、乳化剤の総合的な挙動は、各乳化剤のHLBの加重平均値をもって評価できること」は記載されておらず、また、本件出願当時の技術常識であったとも認められない。

本件明細書の試験1(【0037】?【0044】)には、表1-1の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」又は「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」それぞれを単独で用いた油脂組成物と比較し、表1-2の「HLBが4.7?8の乳化剤(a)」又は「HLBが2.5以下の乳化剤(b)」を併用した油脂組成物では、炒め飯のパラパラ感が向上していることが、客観的に示されている。

仮に、申立人1の主張する、本件発明の油脂組成物においても、乳化剤(a)及び(b)の加重平均値のHLBの影響を受ける可能性が高いとして、本件発明の実施例である、本件明細書の試験1の表1-2に記載の油脂組成物における乳化剤のHLB(加重平均値)を検討すると、次のように算出される。
「試験1-8」の乳化剤のHLB(加重平均値)=3.57[=7.4×2.0/(2.0+2.5)+0.5×2.5/(2.0+2.5)]
「試験1-9」の乳化剤のHLB(加重平均値)=3.95[=7.4×4.0/(4.0+4.0)+0.5×4.0/(4.0+4.0)]
「試験1-10」の乳化剤のHLB(加重平均値)=3.5[=6.0×4.0/(4.0+4.0)+1×4.0/(4.0+4.0)]
「試験1-11」の乳化剤のHLB(加重平均値)=4.2[=7.4×4.0/(4.0+4.0)+1×4.0/(4.0+4.0)]
「試験1-12」の乳化剤のHLB(加重平均値)=3.5[=6.0×3.0/(3.0+2.5)+0.5×2.5/(3.0+2.5)]
「試験1-13」の乳化剤のHLB(加重平均値)=3.25[=6.0×4.0/(4.0+4.0)+0.5×4.0/(4.0+4.0)]

これらのHLB(加重平均値)は3.25?4.2であるが、本件明細書には、実施の態様として「【0021】・・・一方、乳化剤のHLBが4.7未満であると、澱粉系食材を炒め調理した際に調理しにくく、また、調理後の澱粉系食材がべとつきやすくなる」と記載されており、HLBが4.7未満の乳化剤を用いると、単独に使用する場合も含め、調理後の澱粉系食材がべとつきやすくなり、炒め飯のパラパラ感は良好とならないと理解される。
実際に、本件明細書の試験1の表1-1の試験1-6及び試験1-7は、HLB1又は0.5の乳化剤を単独に使用した油脂組成物であるが、これらを用いた場合、炒め飯はパラパラしていないことが確認されている(表1-1(【0040】))。
そうすると、本件発明の油脂組成物において、乳化剤(a)及び(b)の加重平均値のHLBの影響を受ける可能性が高いとしても、乳化剤(a)及び(b)の加重平均値のHLBを持つ乳化剤を単独に使用した油脂組成物を用いた場合と比較し、異なる乳化剤(a)及び(b)を併用することにより、炒め飯のパラパラ感が向上すると理解されるといえ、本件発明1?11の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。


(申立1甲17の記載)
申立1甲17a「配合した乳化剤のHLBはそれぞれ配合原料の乳化分散剤のHLBの重量平均として求めることができる。
たとえば,だいたいHLB=10程度の乳化剤が欲しいときには,ソルビタンステアリン酸モノエステル(HLB=4.7)45%とソルビタンステアリン酸モノエステルEO付加物(HLB=14.9)55%とを配合すれば次の計算で示すようにHLB=10.3の配合乳化剤を得ることができる。
配合物のHLB=(4.7×0.45)+(14.9×0.55)=10.3
このようにして必要なHLBより高いものと低いものとをいろいろ組み合わせて数多く実験すれば適当な乳化剤を見つけることができる。」(193頁下から5行?194頁4行)

6 まとめ
したがって、本件発明1?11は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1?11に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

III 明確性要件(申立1理由4)について

1 申立人1の主張(1)について
本件発明1の発明特定事項として、請求項1が、2種の乳合剤及び食用油脂を含有すること、油脂組成物の用途を「炊飯済の米飯を炒め調理するための」ものであることを特定しているだけで、申立人1の主張する、本件発明1の油脂組成物とは別に、炒め油として別の油が使用されていたとしても、それによって「炒め調理するための」という特定が不明確になるとはいえない。
また、申立人1の主張する試験6を含めて試験6、7、8は、本件発明1に該当しない実施例であって、そのことは特許請求の範囲から明確であるから、本件発明1に該当しない例が「試験」として記載されているからといって、本件発明1が明確でないことにはならない。
したがって、請求項1に記載の「炒め調理するための油脂組成物」は、明確である。
請求項1を引用して特定されている本件発明2?11についても、同様である。

2 申立人1の主張(2)について
請求項5に記載の「有機酸脂肪酸エステル」について、本件明細書には「【0023】・・有機酸脂肪酸エステルの中でも、有機酸としてはクエン酸が好ましく、脂肪酸としてはオレイン酸が好ましく、特にクエン酸モノオレイン酸エステル(クエン酸モノオレイン酸グリセリン)が好ましい。」と記載されており、「有機酸脂肪酸エステル」とは、クエン酸等の有機酸とオレイン酸等の脂肪酸のエステルを意味するといえ、技術常識を勘案すれば、「有機酸脂肪酸エステル」として包含される化合物を、当業者は理解することができるといえる。
したがって、請求項5に記載の「有機酸脂肪酸エステル」は、明確である。
請求項5を引用して特定されている本件発明7?11についても、同様である。

3 まとめ
したがって、本件発明1?11は明確であるといえ、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
よって、本件発明1?11に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、申立1の理由及び証拠、並びに、申立2の理由及び証拠によっては、本件発明1?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-08-06 
出願番号 特願2019-114493(P2019-114493)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A23D)
P 1 651・ 121- Y (A23D)
P 1 651・ 537- Y (A23D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉岡 沙織  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 冨永 保
齊藤 真由美
登録日 2020-09-16 
登録番号 特許第6764979号(P6764979)
権利者 昭和産業株式会社
発明の名称 炒め調理用の油脂組成物  
代理人 中村 充利  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  

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