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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1376776
異議申立番号 異議2021-700368  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-09-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-23 
確定日 2021-08-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6775411号発明「飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6775411号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6775411号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成28年12月21日の出願であって、令和2年10月8日に特許権の設定登録がされ、令和2年10月28日にその特許公報が発行され、令和3年4月23日に、その請求項1?4に係る発明の特許に対し、田中 亜実(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6775411号の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
不飽和脂肪酸を含み720nmの吸光度が0.01以下であり、光によって生じる劣化臭が感じられるのが抑えられている飲料であって、
ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲で含有する飲料(但し、蒸留酒類を除く)。
【請求項2】
ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?5ppmの範囲で含有する請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記飲料が容器詰飲料である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
不飽和脂肪酸を含み720nmの吸光度が0.01以下である飲料においてヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲となるように含有させることを含む、不飽和脂肪酸に由来して光により生じる劣化臭のマスキング方法。」

第3 申立理由の概要及び証拠方法
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第3号証を提出して、以下の申立理由を主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:林 典夫等編、「シンプル生化学(改訂第3版)」、(1997年)、株式会社南江堂発行、p.25-27(以下「甲1」という。)
甲第2号証:愛知県衛生研究所の公式ホームページ、「トランス脂肪酸」、[online]、平成19年3月12日、[検索日令和3年4月22日]、インターネット(以下「甲2」という。)
甲第3号証:ウィキペディア、「トランス脂肪酸」、[online]、2021年2月2日、[検索日令和3年4月19日]、インターネット(以下「甲3」という。)

(申立理由の概要)
申立理由1(実施可能要件)
本件発明1?4に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)本件明細書には、光劣化した状態とは、どのような状態であるのかについては記載されておらず、また、LEDライト照射をどのくらいの時間を行ったかについても記載されていないから、本件明細書を参照した当業者が実施例を再現実施することは到底できるものではなく、本件発明の効果を確認することは不可能である。

(2)不飽和脂肪酸を含有する飲料の劣化臭を抑えるという本件発明の効果について、実施例で評価した飲料が確かに不飽和脂肪酸を含有するものであるかは不明であるから、本件明細書の実施例によっては本件発明の効果を理解することができない。

(3)不飽和脂肪酸が何ら特定されていない実施例の記載に基づいては、本件発明に関して、請求項1又は4に規定するように「ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲」で含む場合に、広範で多種多様な不飽和脂肪酸のすべてに対して、また、一定とはならない劣化臭に対して、実施例と同様の効果を奏するものと理解することはできない。

申立理由2(サポート要件)
本件発明1?4は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件発明1?4に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)本件明細書には、光劣化した状態とは、どのような状態であるのかについては記載されておらず、また、LEDライト照射をどのくらいの時間を行ったかについても記載されていないから、本件明細書を参照した当業者が実施例を再現実施することは到底できるものではなく、本件発明の効果を確認することは不可能である。

(2)不飽和脂肪酸を含有する飲料の劣化臭を抑えるという本件発明の効果について、実施例で評価した飲料が確かに不飽和脂肪酸を含有するものであるかは不明であるから、本件明細書の実施例によっては本件発明の効果を理解することができない。

(3)不飽和脂肪酸が何ら特定されていない実施例の記載に基づいては、本件発明に関して、請求項1又は4に規定するように「ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲」で含む場合に、広範で多種多様な不飽和脂肪酸のすべてに対して、また、一定とはならない劣化臭に対して、実施例と同様の効果を奏するものと理解することはできない。

上記(1)?(3)より、本件発明1?4は、本件発明1?4の一部が発明の詳細な説明において裏付けられておらず、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。

第4 当審の判断

1 申立理由2(サポート要件)について
申立人は、「イ 記載不備の理由(特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号)」(特許異議申立書4頁3行?6頁4行)において、申立理由1(実施可能要件)及び申立理由2(サポート要件)の具体的理由として、同じ主張内容に基づいて、両方の理由を同様に主張していることから、当決定では、事案に鑑み、申立理由2(サポート要件)から検討する。

(1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

(2)特許請求の範囲の記載
前記第2に記載したとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載

ア 背景技術に関する記載
「【0002】
果汁や香料に由来する不飽和脂肪酸を含む飲料においては、光に暴露されることで不飽和脂肪酸から(E)-2-デセナール、1-オクテン-3-オン等の異臭を感じさせる成分が生成されることがわかっている(光劣化)。近年LEDライトの普及により、容器詰飲料が店頭で強い光に暴露されるケースが増えており、光劣化抑制対策が急務であった。
【0003】
一方、光劣化のような成分変化の抑制には抗酸化剤(例えば特許文献1に記載の抗酸化剤)の使用が効果的である。」

イ 発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段及び効果に関する記載
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、抗酸化剤を使用するとなると、その分、商品設計の自由度が制限されることとなる。また、透明な飲料においては抗酸化剤由来の濁り成分により透明度が落ちてしまうといった課題があった。
【0006】
本発明は、不飽和脂肪酸を含有し720nmの吸光度が0.01以下である飲料において光の影響により生じる劣化臭が感じられるのを抑えることができる新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、不飽和脂肪酸を含有し720nmの吸光度が0.01以下である飲料において光の影響により劣化臭が生じやすいことに気付き、鋭意研究の結果、当該飲料中に所定の成分を含有させることで劣化臭が感じられるのを抑えることができることを見出し、本発明を完成させた。
・・・・・
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不飽和脂肪酸を含有し720nmの吸光度が0.01以下である飲料において光の影響により生じる劣化臭が感じられるのを抑えることができる新規な技術を提供することができる。」

ウ 劣化臭及び不飽和脂肪酸に関する実施の態様の記載
「【0011】
・・・・・
本実施形態に係る飲料は不飽和脂肪酸を含み720nmの吸光度が0.01以下である飲料であって、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲で含有する。当該構成を満足することで、光の影響により不飽和脂肪酸から劣化臭の原因物質が生成されるときにも、飲んだとき(口にしたとき)に当該劣化臭が感じられるのを抑えることができる。
【0012】
本明細書において、劣化臭とは飲料を飲んだときに感じられる、金属様臭、油の酸化臭、樹脂臭、またはカメムシを想起させるような不快な臭いをいう。当該劣化臭の原因物質は光の影響により不飽和脂肪酸から生成される化合物であり、具体的には(E)-2-デセナール、1-オクテン-3-オンなどが挙げられる。
【0013】
なお、本実施形態の飲料において不飽和脂肪酸の含有量は発明の目的を達成できる限り特に限定されない。また、本実施形態においては不飽和脂肪酸がどのようにして飲料中に含まれるようになっているかも特に限定されない。不飽和脂肪酸は果汁や香料などに含まれているため、例えば、これらのうちいずれか、または両方が飲料中に含有されることにより不飽和脂肪酸が飲料中に含まれるようになったものなどが挙げられる。
【0014】
例えば本実施形態においては、5重量%以下の果汁を含有する果汁入り飲料とすることができ、当該5重量%以下の果汁入り飲料において劣化臭が感じられるのを抑えることができる。
・・・・・
本実施形態においては、モモ、ブドウ、イチゴ、ウメ、リンゴ、和梨、洋梨などの果汁を挙げることができ、特に限定されず、例えば飲料においてこれらのうち1種または2種以上の果汁が含まれるようにすることができる。」

エ 720nmの吸光度、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナール及びトランス-2-ヘキセノールに関する実施の態様の記載
「【0015】
本実施形態の飲料は上述のとおり不飽和脂肪酸を含有するとともに720nmの吸光度が0.01以下である飲料である。当該飲料は外観が例えば無色透明などである飲料であり、上述のとおり、光の影響で劣化臭が生じやすい。
本明細書において無色透明とは、透けて見え、特定の色もなく、水と同様の外観である状態をいう。なお、720nmの吸光度は、例えば、分光光度計を用い、光路長1cmとして測定することができる。
【0016】
本実施形態においては、ヘキサナール(Hexanal)、トランス-2-ヘキセナール(Trans-2-hexenal)およびトランス-2-ヘキセノール(Trans-2-hexenol)のうち少なくとも1種以上の化合物が、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲で飲料中に含有される。また、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールのうち少なくとも1種以上の化合物をその合計含有量が0.01?5ppmの範囲で飲料中に含有される場合、飲料のおいしさについても改善されるため、好ましい。さらに、劣化臭が感じられるのをさらに抑制する観点から、合計含有量は0.05ppm?5ppmの範囲であることがさらに好ましく、さらにより好ましくは0.5ppm?5pmmである。
飲料におけるこれら化合物の合計含有量が0.01ppm以上であるとき、0.01ppm未満である場合と比較して飲んだときに劣化臭が感じられにくくなる。また、50ppmより高い合計含有量とする場合も劣化臭が感じられるのを抑えることができるが、青葉のような風味が増し、果実飲料としての嗜好性が下がることから、50ppm以下であることが好ましい。
本実施形態の飲料において、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールは、これら各化合物のうち1種が飲料中に含まれている態様であってもよく、また、これらのうち2種または3種の化合物が飲料中に含まれる態様であってもよい。2種または3種の化合物が飲料中に含まれる場合、各化合物の含有量や比率などは特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
・・・・・
【0018】
本実施形態の飲料は、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールまたはトランス-2-ヘキセノールに加えて本願発明の目的を達成できる範囲で他の成分を含んでもよく、特に限定されない。具体的な他の成分としては、甘味料、香料、色素成分、果汁、pH調整剤、抗酸化剤(酸化防止剤)、保存料、調味料、酸味料、ビタミン、アミノ酸等を挙げることができる。
また、飲料のpHなどは特に限定されず適宜設定できるが、例えば飲料が無色透明である場合にはpHは2.6?3.6の範囲とされることがあり、当該範囲においては本実施形態に係る構成を適用することがより好適である。
すなわち、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールのうち1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲で含有させることにより、抗酸化剤を添加しなくとも劣化臭が感じられるのを抑えることができる。その結果、抗酸化剤由来の濁り成分の影響がより大きい無色透明のpH2.6?3.6である飲料において、抗酸化剤の使用量をより少なくしたり、あるいは未使用として飲料を製造することが可能となる。そのため、無色透明のpH2.6?3.6である飲料において上記の本実施形態に係る飲料の構成が適用されることが、より好ましい。
また、本実施形態の飲料は、炭酸ガスが溶解している発泡性の飲料(炭酸飲料)であってもよい。炭酸飲料である場合、特に限定されないが、ガス圧は例えば0.13?0.46MPaとすることができる。
なお、本明細書において、ガス圧とは、1気圧、20℃における容器詰め飲料のガス内圧力をいう。その測定は、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定の値になった時の値をMpaに換算することにより行うことができる。
また、アルコールが添加され、アルコール飲料として製造することもできる。
【0019】
本実施形態の飲料においてその製造方法は特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。例えばヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールまたはトランス-2-ヘキセノールについて、これらのうち1種または2種以上の化合物を飲料における合計含有量が0.01?50ppmの範囲となるようにして、水、果汁や香料などの不飽和脂肪酸を含む成分、その他必要に応じて添加される成分に混合するなどして製造することができる。」

オ 作用機序に関する記載
「【0022】
以上、本実施形態によれば、不飽和脂肪酸を含み720nmの吸光度が0.01以下である飲料において、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲で含有することにより、光の影響により生じる劣化臭が感じられるのを抑えることができる。
その結果、720nmの吸光度が0.01以下である飲料において抗酸化剤の添加量を少なくして、あるいは添加しないでも嗜好性を有する飲料を構成することができ、より自由度の高い設計が可能となり、また、飲料が透明(特に無色透明)である場合には、その透明度の維持にも貢献できる。」

カ 実施例に関する記載
「【実施例】
・・・・・
【0024】
[モモ香料含有飲料(1)]
果糖ぶどう糖液糖136.5g、クエン酸1.0g、モモ果汁1.4g(8倍濃縮、ストレート換算1%)、モモ香料(果実・果汁由来の成分を含む)1.0gを混合し、加水して全量が1000mLとした溶液をPETボトル(200mL)へホットパック充填し、容器詰飲料を得た。(未劣化品)。
また、未劣化品へLEDライト照射して光劣化した状態にある飲料を調製した。(劣化品)。
また、光劣化した状態にある飲料についてヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールまたはトランス-2-ヘキセノールを図1に示す量でそれぞれ添加した。
得られた各容器詰飲料について720nmの吸光度(A720)を測定した。具体的には、分光光度計((株)日立製作所製、U-3990H)を用い、光路長1cm(1cmセル)として、サンプルを希釈することなく測定に供した。また、水をブランクとして用いて測定した。いずれの容器詰飲料についても、その値はゼロ(小数点4桁以下切捨て、以下同じ)であった。
【0025】
得られた各容器詰飲料について、劣化臭が抑えられているか否かおよび飲料のおいしさを5名のパネリストによる官能試験で評価した(N=5)。
劣化臭については、比較例である劣化品を最も劣化臭が強い評価である1とした5段階で評価を行った。
また、おいしさについても、未劣化品について最もおいしいとの評価である5とした5段階で評価を行った。
【0026】
[ブドウ香料含有飲料]
モモ果汁およびモモ香料に代えてブドウ果汁1.7g(6倍濃縮、ストレート換算1%)およびブドウ香料(果実・果汁由来の成分を含む)1.2gを用いた以外はモモ香料含有飲料(1)と同様の方法で各飲料を製造した。
得られた各容器詰飲料についてモモ香料含有飲料(1)と同様の方法で720nmの吸光度(A720)を測定した。いずれの容器詰飲料についても、その値はゼロであった。
また、モモ香料含有飲料(1)と同様に劣化臭が抑えられているか否かおよび飲料のおいしさを5名のパネリストによる官能試験で評価した(N=5)。
【0027】
モモ香料含有飲料(1)およびブドウ香料含有飲料に係る官能評価の結果を図1?12に示す。
図1?12から理解できるとおり、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールのいずれについても、その含有量を0.01?50ppmとした容器詰飲料(実施例)において、感じられる劣化臭が抑えられていることが理解できる。具体的には、ヘキサナールについてはその含有量を0.01ppmとすることで、劣化品に対してモモ香料含有飲料(1)では5%有意差(ブドウ香料含有飲料では1%有意差)で抑制が確認できた。また、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールについても、その含有量を0.01ppmとすることで、劣化品に対してモモ香料含有飲料(1)では1%有意差(ブドウ香料含有飲料では5%有意差)で抑制が確認できた。
さらに含有量を0.01?5ppmの範囲とする場合には飲料のおいしさについても改善されていることが理解できる。具体的には、モモ香料含有飲料(1)とブドウ香料含有飲料の両方において、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールのいずれについても、その含有量を0.01ppmとすることで、劣化品に対して1%有意差でおいしさの改善が確認された。
【0028】
[モモ香料含有飲料(2)]
モモ香料含有飲料(1)の場合と同様の方法で光劣化した状態にある飲料を製造するとともに、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセノールのいずれかまたはその両方を添加した。
得られた各容器詰飲料についてモモ香料含有飲料(1)と同様の方法で720nmの吸光度(A720)を測定した。いずれの容器詰飲料についても、その値はゼロであった。
【0029】
得られた容器詰飲料について、同様に劣化臭が抑えられているか否かおよび飲料のおいしさを5名のパネリストによる官能試験で評価した(N=5)。
結果を図13に示す。図13から理解できるとおり、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセノールの両方を添加したときにも劣化臭が抑えられており、また、飲料のおいしさについても改善できることが理解できる。」

(4)判断

ア 本件発明の課題について
発明の詳細な説明の、背景技術の記載(【0002】?【0004】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0005】)、実施例の記載(【0023】?【0029】)、及び本件明細書全体の記載からみて、本件発明1?3の課題は、不飽和脂肪酸を含有し720nmの吸光度が0.01以下である飲料において、光により生じる劣化臭が感じられるのを抑えられている飲料を提供することであり、本件発明4の課題は、不飽和脂肪酸を含有し720nmの吸光度が0.01以下である飲料において、光により生じる劣化臭が感じられるのを抑えることができる劣化臭のマスキング方法を提供することであると認める。

イ 発明の詳細な説明の、【0002】の背景技術に関する記載、【0009】の効果に関する記載、【0012】の劣化臭に関する記載、【0015】の720nmの吸光度に関する記載、【0016】及び【0018】の含有成分(ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノール)の上下限の技術的意義に関する記載、並びに、【0022】の作用機序に関する記載が示された上で、実施例(【0023】?【0029】)には、光劣化臭の抑制効果を評価するための官能試験で、モモ香料含有飲料(1)、ブドウ香料含有飲料、モモ香料含有飲料(2)の未劣化品に対し、同じLED照射条件下で光劣化した状態にある飲料(光劣化品)[モモ果汁又はフドウ果汁を含むことから不飽和脂肪酸を含有していると認められ、720nmの吸光度が0.01以下のゼロである飲料であり、蒸留酒類ではない(【0002】、【0022】)]を製造し、それらの飲料に、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナール又はトランス-2-ヘキセノールをそれぞれ添加し、劣化臭が抑えられているか否かの官能試験をしたところ、比較例である劣化品を最も劣化臭が強い評価1とした5段階評価の結果、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナール又はトランス-2-ヘキセノールのいずれについても、その含有量を0.01?50ppmとした飲料において、劣化臭が抑えられていることを客観的に確認したことが記載されている。

それ故、上記作用機序や上下限の技術的意義や実施例の記載を考慮すれば、本件発明1?4の「不飽和脂肪酸を含み720nmの吸光度が0.01以下であり、光によって生じる劣化臭が感じられるのが抑えられている飲料」であって、「ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲で含有する飲料(但し、蒸留酒類を除く)」を得て前記本件発明1?3の課題が解決できていることを当業者は認識できるし、結果として、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲で含有させることにより光によって生じる劣化臭のマスキング方法を提供でき、本件発明4の前記課題を解決できているといえる。

ウ 申立人の主張(1)について
申立人は、発明の詳細な説明には、光劣化した状態とはどのような状態であるのかについては、果汁や香料に由来する不飽和脂肪酸を含む飲料は、光に暴露されることで不飽和脂肪酸から(E)-2-デセナール、1-オクテン-3-オン等の異臭を感じさせる成分が生成され(光劣化)、これが劣化臭の原因物質であること(【0002】、【0012】)が記載されているに留まり、また、LEDライト照射をどのくらいの時間行ったかについては、具体的な記載がないので、本件発明1?4のサポート要件が欠如している旨主張している。

しかしながら、上述のとおり、実施例(【0023】?【0029】)には、同じLED照射条件下で(決定注:下線は当審が付与。以下同様。)光劣化した状態にある飲料(モモ果汁又はフドウ果汁を含むことから不飽和脂肪酸を含有していると認められ、720nmの吸光度が0.01以下のゼロの飲料であり、蒸留酒類ではない)を製造し、それらの飲料に、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナール又はトランス-2-ヘキセノールをそれぞれ添加し、劣化臭が抑えられているか否かの官能試験をしたところ、比較例である劣化品を最も劣化臭が強い評価1とした5段階評価の結果、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナール又はトランス-2-ヘキセノールのいずれについても、その含有量を0.01?50ppmとした飲料において、劣化臭が抑えられていることが客観的に確認されている。

この記載より、同じLED照射条件下で光劣化した状態にある、不飽和脂肪酸を含有し720nmの吸光度が0.01以下の飲料を基に、劣化臭に関する官能試験がなされ、比較例である劣化品の劣化臭との相対的評価の結果、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナール又はトランス-2-ヘキセノールのいずれについても、その含有量を0.01?50ppmとした飲料において、劣化臭抑制効果が客観的に確認されていることから、光劣化した状態とはどのような状態であるのか、また、LEDライト照射をどのくらいの時間行ったかについての具体的な記載はなくとも、同じLED照射条件下で光劣化した状態にある、不飽和脂肪酸を含有し720nmの吸光度が0.01以下の飲料を基に実施すれば、相対的評価により、光により生じる劣化臭が感じられるのを抑えられている飲料を得ることができ、また、光により生じる劣化臭が感じられるのを抑えることができる劣化臭のマスキング方法を実施することができると、当業者は理解できるといえ、発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、本件発明1?4の前記課題が一定程度解決できることを認識できるといえる。本件明細書に記載された実施例に関し、実施例の実施条件の一部の明記がないことで、実際に行ったのと全く同じ実験が再現できないこと自体は、本件発明がサポート要件を欠如していることの直接の理由とはならない。

よって、申立人の上記主張(1)は採用できない。

エ 申立人の主張(2)について
申立人は、不飽和脂肪酸を含有する飲料の劣化臭を抑えるという本発明の効果について、実施例で評価した飲料が確かに不飽和脂肪酸を含有するものであるかは不明であるから、本件特許明細書の実施例によっては本発明の効果を理解することができないので、本件発明1?4のサポート要件が欠如している旨主張している。

しかしながら、発明の詳細な説明において、実施例(【0023】?【0029】)では、光劣化臭の抑制効果を評価するための官能試験で、未劣化品及び光劣化品の飲料として、[モモ香料含有飲料(1)]、[ブドウ香料含有飲料]、[モモ香料含有飲料(2)]を用いている。
[モモ香料含有飲料(1)]は、「・・モモ果汁・・(8倍濃縮、ストレート換算1%)、モモ香料(果実・果汁由来の成分を含む)・・を混合し、加水して・・容器詰飲料・・(未劣化品)」としたものであり、[ブドウ香料含有飲料]は、「モモ果汁およびモモ香料に代えてブドウ果汁・・(6倍濃縮、ストレート換算1%)およびブドウ香料(果実・果汁由来の成分を含む)・・を用いた以外はモモ香料含有飲料(1)と同様の方法で各飲料を製造した」ものであり、[モモ香料含有飲料(2)]は、「モモ香料含有飲料(1)の場合と同様の方法で光劣化した状態にある飲料を製造」したものであり、これらの飲料の中には、モモ果汁又はブドウ果汁が含まれていることが分かる。

発明の詳細な説明には、従来技術として「【0002】果汁や香料に由来する不飽和脂肪酸を含む飲料においては、光に暴露されることで不飽和脂肪酸から(E)-2-デセナール、1-オクテン-3-オン等の異臭を感じさせる成分が生成されることがわかっている(光劣化)」こと、及び、実施の態様として「【0013】・・不飽和脂肪酸は果汁や香料などに含まれているため、例えば、これらのうちいずれか、または両方が飲料中に含有されることにより不飽和脂肪酸が飲料中に含まれるようになったものなどが挙げられる」との記載があり、それらの一般的記載と実施例の記載の関係を考慮すれば、果汁や香料を含む飲料中には、不飽和脂肪酸が含まれていることが理解される。
なお、技術常識であるといえる下記参考資料1?2には、モモ果汁(果実類/もも類/ネクタリン、白桃類)及びブドウ果汁には、成分として不飽和脂肪酸が含まれていることが示されており、これらの日本食品標準成分表には、不飽和脂肪酸として具体的にどのような化合物が含まれているのかについては明記されていないものの、不飽和脂肪酸を含有していることは理解でき、上記果汁や香料を含む飲料に関する判断と整合している。

そうすると、上述のとおり、実施例において、不飽和脂肪酸を含有していると理解できる、[モモ香料含有飲料(1)]、[ブドウ香料含有飲料]、[モモ香料含有飲料(2)]を用いて、劣化臭に関する官能試験がなされ、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナール又はトランス-2-ヘキセノールのいずれについても、その含有量を0.01?50ppmとした飲料(720nmの吸光度が0.01以下)において、劣化臭抑制効果を客観的に確認し、本件発明1?3の飲料を得ることができ、結果として、本件発明4のマスキング方法を提供でき、本件発明1?4の前記課題を解決できていることは明らかである。



(参考資料1)文部科学省の公式ホームページ、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)第2章 日本食品標準成分表 7果実類 食品番号07136(もも類)もも 生」、[online]、2015年、[検索日令和3年7月30日]、インターネット URL: https://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/01/15/1365343_1-0207r2_1.pdf


(参考資料2)文部科学省の公式ホームページ、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2016年 食品番号07178 ぶどう 皮つき,生」、[online]、2016年、[検索日令和3年7月30日]、インターネットURL: https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2017/02/16/1380797Rev4.pdf


よって、申立人の主張(2)は採用できない。

オ 申立人の主張(3)について
申立人は、不飽和脂肪酸が何ら特定されていない実施例の記載に基づいては、請求項1又は4に規定するように「ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲」で含む場合に、広範で多種多様な不飽和脂肪酸のすべてに対して、また、一定とはならない劣化臭に対して、実施例と同様の効果を奏するものと理解することはできないので、本件発明1?4のサポート要件が欠如している旨主張している。

発明の詳細な説明には、従来技術として、「【0002】果汁や香料に由来する不飽和脂肪酸を含む飲料においては、光に暴露されることで不飽和脂肪酸から(E)-2-デセナール、1-オクテン-3-オン等の異臭を感じさせる成分が生成されることがわかっている(光劣化)」ことが記載されている。
これらの記載より、本件発明1?4における「不飽和脂肪酸」の例としては、果汁や香料を含む飲料に含まれる不飽和脂肪酸であると認識され、それらの不飽和脂肪酸から光により生成される劣化臭を感じさせる化合物として、(E)-2-デセナールや1-オクテン-3-オン等が知られていると理解される。
本件発明1?4は、不飽和脂肪酸を含み光によって劣化臭が生じる飲料を対象としているといえるところ、本件明細書では、前記アで述べたように、果汁や香料に由来する不飽和脂肪酸を含むといえる飲料について、その光による劣化臭を抑制することが実施例を以て裏付けられているから、本件発明1?4の前記課題が解決できることを認識できるといえる。

申立人は、下記に示す甲1?甲3の記載を指摘し、不飽和脂肪酸は、立体異性体を含めて非常に広範な多種多様な化合物を包含し得、その物性も種々異なることは技術常識であり、すべての不飽和脂肪酸が、劣化した場合に(E)-2-デセナールや1-オクテン-3-オン等に分解されるとは限らない旨主張しているが、甲1には、不飽和脂肪酸の代表例として、炭素数や構造が種々異なる化合物があることが記載され(表3-2)、甲2には、不飽和脂肪酸には、炭素数と二重結合の数が異なる種々の不飽和脂肪酸があり、シス型とトランス型があることが記載され、甲3には、化学式が同じ不飽和脂肪酸であるエライジン酸(トランス型)とオレイン酸(シス型)とでは融点が異なることが記載されるだけで、申立人は具体的に異なる劣化臭の化合物を示しているわけでもなく、本件発明1?4は、ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールの少なくとも1種を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲で含有させることで、含まれる不飽和脂肪酸の光劣化臭を抑制することを技術的思想とする発明であり、本件発明1?4についての前記結論に影響するものではない。


(甲1の記載)
「3-2 脂肪酸
・・・・・
脂肪酸は二重結合をもたない飽和脂肪酸saturated fatty acidと二重結合をもつ不飽和脂肪酸unsaturated fatty acidの2つに大別される.・・・
・・・・・
脂肪酸の構造は分子を構成する炭素数,二重結合の数と位置,不飽和結合に基づく立体異性などによって決定される.・・・
・・・・・

」(25頁下から6行?26頁12行、27頁表3-2)

(甲2の記載)
「 脂肪酸
・・・炭素炭素結合がすべて飽和である脂肪酸が飽和脂肪酸と呼ばれ、代表例としてパルミチン酸(C_(15)H_(31)COOH)、ステアリン酸(C_(17)H_(35)COOH)が挙げられます。また、1個以上の炭素炭素二重結合を有する脂肪酸が不飽和脂肪酸で、これにはオレイン酸(C_(17)H_(33)COOH、二重結合1個)、リノール酸(C_(17)H_(31)COOH、二重結合2個)、リノレン酸(C_(17)H_(29)COOH、二重結合3個)、アラキドン酸(C_(19)H_(31)COOH、二重結合4個)、エイコサペンタエン酸(EPA、C_(19)H_(29)COOH、二重結合5個)、ドコサヘキサエン酸(DHA、C_(21)H_(31)COOH、二重結合6個)などが属します。
・・・・・
トランス脂肪酸
不飽和脂肪酸について、二重結合を構成する炭素原子に結合する水素原子の結合の向きの違いによりシス型とトランス型が存在します。下図のとおりシス型は二重結合部分の水素原子の向きが同じ側にあり、トランス型は二重結合を挟んで水素原子が対角線上にあります。天然にはシス型の不飽和脂肪酸がほとんどです。トランス型脂肪酸の融点(固体が液体になり始める温度)はシス型脂肪酸より高いため固体になりやすく、同鎖長の飽和脂肪酸に近い融点となります。」(脂肪酸、トランス脂肪酸の項目)

(甲3の記載)


」(構造の項目)

よって、申立人の主張(3)は採用できない。

(5)まとめ
したがって、本件発明1?4は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

2 申立理由1(実施可能要件)について
前記1で述べたように、実施例の記載のように、果汁や香料に含まれる不飽和脂肪酸を含み720nmの吸光度が0.01以下の飲料が、「ヘキサナール、トランス-2-ヘキセナールおよびトランス-2-ヘキセノールからなる群から選択される1種または2種以上の化合物を、その合計含有量が0.01?50ppmの範囲」で含むよう調製すれば、光によって生じる劣化臭が感じられるのが抑えられている飲料が得られることを考慮すると、従来技術の記載や実施の態様の記載も併せて検討すれば、本件発明1?3の「飲料」、及び、本件発明4の「劣化臭のマスキング方法」を、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく実施できることは明らかである。

申立人は、前記第3「(申立理由の概要)」の「申立理由1(実施可能要件)」に示したように、(1)本件明細書には、光劣化した状態とは、どのような状態であるのかについては記載されておらず、また、LEDライト照射をどのくらいの時間を行ったかについても記載されておらず、本件明細書を参照した当業者が実施例を再現実施することは到底できるものではなく、本件発明の効果を確認することは不可能であるから、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?4の実施可能要件を満たさないこと、(2)実施例で評価した飲料が確かに不飽和脂肪酸を含有するものであるかは不明であり、本件明細書の実施例によっては本件発明の効果を理解することができないから、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?4の実施可能要件を満たさないこと、(3)不飽和脂肪酸が何ら特定されていない実施例の記載に基づいては、請求項1又は4に規定する含有成分を特定量で含む場合に、広範で多種多様な不飽和脂肪酸のすべてに対して、また、一定とはならない劣化臭に対して、実施例と同様の効果を奏するものと理解することはできないから、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?4の実施可能要件を満たさないことを、効果の観点から、サポート要件と同様に主張しているが、前記1(4)ウ?オで検討したように、本件発明1?4によって前記課題が解決され、同時に本件発明1?4が所定の効果を奏していることは理解できるのであるから、申立理由1(実施可能要件)の主張(1)?(3)についても、申立人の主張を採用することはできない。

したがって、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1?4を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

よって、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-08-06 
出願番号 特願2016-247749(P2016-247749)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 戸来 幸男  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 齊藤 真由美
冨永 保
登録日 2020-10-08 
登録番号 特許第6775411号(P6775411)
権利者 アサヒ飲料株式会社
発明の名称 飲料  
代理人 水野 勝文  
代理人 久松 洋輔  
代理人 成瀬 渓  
代理人 須澤 洋  
代理人 井出 真  
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