現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C03C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C03C
管理番号 1377047
審判番号 不服2019-11145  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-23 
確定日 2021-08-12 
事件の表示 特願2019- 5651「金属酸化物濃度勾配を有するガラスおよびガラスセラミック」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月11日出願公開、特開2019- 55911〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る特願2019-5651号の出願(以下、「本願」という。)は、2015年(平成27年)10月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2014年10月8日(US)アメリカ合衆国、2015年2月18日(US)アメリカ合衆国、同年6月4日(US)アメリカ合衆国、同年7月21日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-518941号の一部を、平成29年8月16日に特願2017-157071号として分割出願し、その一部を、平成30年6月19日に特願2018-115956号として分割出願し、さらにその一部を、平成31年1月17日に分割出願したものであって、同年2月6日付けで拒絶理由が通知され、同年4月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月22日付けで拒絶査定がされ、令和1年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年10月9日に手続補正書(方式)が提出され、その後、令和2年9月29日付けで、当審から拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明(本願特許請求の範囲の記載)
本願の請求項1?19に係る発明は、令和2年12月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1、7及び13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明7」及び「本願発明13」といい、まとめて「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
ガラス基体において、
60モル%から70モル%の範囲の量のSiO_(2)、
0モル%から5モル%の範囲の量のMgO、
超0から2モル%までの量のCaO、
1モル%から5モル%の範囲の量のNa_(2)O、および
4モル%から10モル%の範囲の量のLi_(2)O、
を含み、
Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、Rb_(2)O、およびCs_(2)Oの合計であるR_(2)Oで表される金属酸化物の総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量(モル%)との間の差(R_(2)O-Al_(2)O_(3))が、-5から0の範囲にあり、前記R_(2)Oで表される金属酸化物の総量(モル%)に対するLi_(2)Oの量(モル%)の比が、0.5より大きく1以下の範囲にあり、
当該ガラス基体がTiO_(2)を実質的に含まず、かつ
当該ガラス基体がZrO_(2)を実質的に含まない、ガラス基体。」
「【請求項7】
ガラス基体において、
60モル%から70モル%の範囲の量のSiO_(2)、
5モル%から28モル%の範囲の量のAl_(2)O_(3)、
0.1モル%から10モル%の範囲の量のP_(2)O_(5)、
超0から5モル%未満の量のMgO、および
2モル%から10モル%の範囲の量のLi_(2)O、
を含み、
ガラス基体における一価および二価の陽イオン酸化物の合計であるR_(x)Oで表される金属酸化物の総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量(モル%)との間の差(R_(x)O-Al_(2)O_(3))が、0から3の範囲にあり、
当該ガラス基体がB_(2)O_(3)を実質的に含まず、かつ、
当該ガラス基体がTiO_(2)を実質的に含まない、ガラス基体。」
「【請求項13】
ガラス基体において、
60モル%から70モル%の範囲の量のSiO_(2)、
5モル%から28モル%の範囲の量のAl_(2)O_(3)、
超0から2.3モル%までの量のZnO、
超0から5モル%未満の量のMgO、および
2モル%から10モル%の範囲の量のLi_(2)O、
を含み、
ガラス基体における一価および二価の陽イオン酸化物の合計であるR_(x)Oで表される金属酸化物の総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量(モル%)との間の差(R_(x)O-Al_(2)O_(3))が、0から3の範囲にあり、
当該ガラス基体がTiO_(2)を実質的に含まない、ガラス基体。」

3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、次の(1)及び(2)を含むものである。

(1)サポート要件違反の拒絶理由
本件補正前の請求項1、7及び13に係る発明は、その課題を「改善された破壊抵抗を示す薄いガラス系物品を提供すること」とするところ、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえないし、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該課題を解決できる範囲のものであるともいえないから、本願特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものではないため、本願は、同項に規定する要件を満たしていない。

(2)進歩性欠如に関する拒絶理由
本件補正前の請求項1に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができ、特許を受けることができないから、その発明は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものである。
(引用文献一覧)
引用文献2 特表2003-505327号公報

4 本願明細書及び図面の記載
本願明細書及び図面には、以下の記載がある。

(1)「【背景技術】
【0003】
ガラス系物品は、そのような物品の表面に大きい傷をもたらし得る激しい衝撃をしばしば経験する。そのような傷は、表面から約200マイクロメートルまでの深さにまで延在することがある。従来、そのような傷をガラスにもたらすかもしれない破損を防ぐために、熱強化されたガラスが使用されてきた。何故ならば、熱強化されたガラスは、大抵、大きい圧縮応力(CS)層(例えば、ガラスの全厚の約21%)を示し、これが、傷の伝搬を防ぎ、それゆえ、破損を防ぐことができるからである。熱強化により生じる応力プロファイルの一例が図1に示されている。図1において、熱処理されたガラス系物品100は、第1の表面101、厚さt_(1)、および表面CS110を有する。このガラス系物品100は、第1の表面101から、ここに定義されるような層の深さ(DOL)130まで減少するCSを示し、この層の深さで、応力は、圧縮応力から引張応力に変化し、最大中央張力(CT)120に到達する。
【0004】
熱強化は、現在、厚いガラス系物品(すなわち、厚さt_(1)が約3ミリメートル以上のガラス系物品)に限られている。何故ならば、熱強化および所望の残留応力を達成するために、そのような物品のコアと表面の間に、十分な温度勾配が形成されなければならないからである。そのような厚い物品は、ディスプレイ(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む家庭用電化製品)、建物(例えば、窓、シャワーパネル、カウンター甲板など)、輸送機関(例えば、自動車、列車、航空機、航海用船舶など)、電化製品、または優れた破壊抵抗を要求するが薄い軽量の物品を必要とする任意の用途などの多くの用途において、望ましくないかまたは実用的ではない。
【0005】
公知の化学強化されたガラス系物品は、熱強化されたガラス系物品の応力プロファイルを示さないが、化学強化は、熱強化と同じ様式でガラス系物品の厚さにより制限されない。化学強化(例えば、イオン交換法による)により生じる応力プロファイルの一例が、図2に示されている。図2において、化学強化されたガラス系物品200は、第1の表面201、厚さt_(2)、および表面CS210を有する。このガラス系物品200は、第1の表面201から、ここに定義されるようなDOC230まで減少するCSを示し、この層の深さで、応力は、圧縮応力から引張応力に変化し、最大CT220に到達する。図2に示されるように、そのようなプロファイルは、平らなCT領域、もしくは引張応力が一定またはほぼ一定のCT領域、および大抵、図1に示された最大中央値と比べて、より小さい最大CT値を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、改善された破壊抵抗を示す薄いガラス系物品が必要とされている。」

(2)「【0019】
この開示の第2の態様は、モル%で、約68から約75の範囲の量のSiO_(2)、約12から約15の範囲の量のAl_(2)O_(3)、約0.5から約5の範囲の量のB_(2)O_(3)、約2から約8の範囲の量のLi_(2)O、約0から約6の範囲の量のNa_(2)O、約1から約4の範囲の量のMgO、約0から約3の範囲の量のZnO、および約0から約5の範囲の量のCaOを含む組成を有する非晶質ガラス基体に関する。いくつかの実施の形態において、そのガラス基体は、約0.5から約1の範囲のR_(2)Oに対するLi_(2)Oの比;約-5から約0の範囲にあるR_(2)Oの総量とAl_(2)O_(3)の量の間の差;約0から約3の範囲にあるR_(x)Oの総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量の間の差;および約0から約2の範囲にあるROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比のいずれか1つ以上を示す。」

(3)「【0106】
前記ガラス系物品は、非晶質基体、結晶質基体、またはその組合せ(例えば、ガラスセラミック基体)を含むことがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス系物品の基体(ここに記載されるように化学強化される前)は、モルパーセント(モル%)で表して、約40から約80の範囲のSiO_(2)、約10から約30の範囲のAl_(2)O_(3)、約0から約10の範囲のB_(2)O_(3)、約0から約20の範囲のR_(2)O、および約0から約15の範囲のROを含む、組成を有するガラスを含むことがある。ある場合には、その組成は、約0モル%から約5モル%の範囲のZrO_(2)および約0モル%から約15モル%の範囲のP_(2)O_(5)のいずれか一方または両方を含むことがある。TiO_(2)は、約0モル%から約2モル%で存在し得る。」

(4)「【0107】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、モル%で表して、約45から約80、約45から約75、約45から約70、約45から約65、約45から約60、約50から約70、約55から約70、約60から約70、約70から約75、約70から約72、または約50から約65の範囲の量でSiO_(2)を含むことがある。
【0108】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、モル%で表して、約5から約28、約5から約26、約5から約25、約5から約24、約5から約22、約5から約20、約6から約30、約8から約30、約10から約30、約12から約30、約14から約30、約16から約30、約18から約30、約18から約28、または約12から約15の範囲の量でAl_(2)O_(3)を含むことがある。
【0109】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、モル%で表して、約0から約8、約0から約6、約0から約4、約0.1から約8、約0.1から約6、約0.1から約4、約1から約10、約2から約10、約4から約10、約2から約8、約0.1から約5、または約1から約3の範囲の量でB_(2)O_(3)を含むことがある。ある場合には、そのガラス組成物は、B_(2)O_(3)を実質的に含まないことがある。ここに用いたように、ガラス組成物の成分に関する「実質的に含まない」という句は、その成分が、最初のバッチ配合中またはその後のイオン交換中に、そのガラス組成物に積極的または意図的に加えられていないが、不純物として存在することがあることを意味する。例えば、ガラスは、ある成分が約0.1001モル%未満の量で存在する場合、その成分を実質的に含まないとして記載してよい。
【0110】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、MgO、CaOおよびZnOなどのアルカリ土類金属酸化物を1種類以上含むことがある。いくつかの実施の形態において、1種類以上のアルカリ土類金属酸化物の総量は、ゼロではない量から約15モル%であることがある。1つ以上の特別な実施の形態において、アルカリ土類金属酸化物のいずれの総量も、ゼロではない量から約14モル%まで、約12モル%まで、約10モル%まで、約8モル%まで、約6モル%まで、約4モル%まで、約2モル%まで、または約1.5モル%までであることがある。いくつかの実施の形態において、前記1種類以上のアルカリ土類金属酸化物のモル%で表された総量は、約0.1から10、約0.1から8、約0.1から6、約0.1から5、約1から10、約2から10、または約2.5から8の範囲にあることがある。MgOの量は、約0モル%から約5モル%(例えば、約2モル%から約4モル%)の範囲にあることがある。ZnOの量は、約0モル%から約2モル%の範囲にあることがある。CaOの量は、約0モル%から約2モル%の範囲にあることがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、MgOを含むことがあり、CaOおよびZnOを実質的に含まないことがある。1つの変種において、そのガラス組成物は、CaOまたはZnOのいずれか一方を含むことがあり、MgO、CaOおよびZnOの他のものを実質的に含まないことがある。1つ以上の特別な実施の形態において、そのガラス組成物は、MgO、CaOおよびZnOのアルカリ土類金属酸化物の2種類のみを含むことがあり、そのアルカリ土類金属酸化物の第3のものを実質的に含まないことがある。
【0111】
前記ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物R_(2)Oのモル%で表された総量は、約5から約20、約5から約18、約5から約16、約5から約15、約5から約14、約5から約12、約5から約10、約5から約8、約6から約20、約7から約20、約8から約20、約9から約20、約10から約20、約6から約13、または約8から約12の範囲にあることがある。
【0112】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0モル%から約18モル%、約0モル%から約16モル%、約0モル%から約14モル%、約0モル%から約10モル%、約0モル%から約5モル%、約0モル%から約2モル%、約0.1モル%から約6モル%、約0.1モル%から約5モル%、約1モル%から約5モル%、約2モル%から約5モル%、または約10モル%から約20モル%の範囲の量でNa_(2)Oを含む。
【0113】
いくつかの実施の形態において、Li_(2)OおよびNa_(2)Oの量は、成形性およびイオン交換性のバランスをとるために、特定の量または比に制御される。例えば、Li_(2)Oの量が増加するにつれて、液相粘度は減少することがあり、よってある種の成形法が使用できなくなる;しかしながら、そのようなガラス組成物は、ここに記載されるように、より深いDOCレベルまでイオン交換される。Na_(2)Oの量は、液相粘度を変えることができるが、より深いDOCレベルまでのイオン交換を阻害し得る。
【0114】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約5モル%未満、約4モル%未満、約3モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満の量でK_(2)Oを含むことがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、前記ガラス組成物は、K_(2)Oを、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。
【0115】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0モル%から約18モル%、約0モル%から約15モル%、または約0モル%から約10モル%、約0モル%から約8モル%、約0モル%から約6モル%、約0モル%から約4モル%、または約0モル%から約2モル%の量でLi_(2)Oを含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、約2モル%から約10モル%、約4モル%から約10モル%、約6モル%から約10モル%、または約5モル%から約8モル%の量でLi_(2)Oを含むことがある。1つ以上の代わりの実施の形態においてそのガラス組成物は、Li_(2)Oを、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。
【0116】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、Fe_(2)O_(3)を含むことがある。そのような実施の形態において、Fe_(2)O_(3)は、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、およびそれらの間の全ての範囲および部分的な範囲の量で存在することがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、そのガラス組成物は、Fe_(2)O_(3)を、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。
【0117】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、ZrO_(2)を含むことがある。そのような実施の形態において、ZrO_(2)は、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、およびそれらの間の全ての範囲および部分的な範囲の量で存在することがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、そのガラス組成物は、ZrO_(2)を、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。
【0118】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0モル%から約10モル%、約0モル%から約8モル%、約0モル%から約6モル%、約0モル%から約4モル%、約0.1モル%から約10モル%、約0.1モル%から約8モル%、約4モル%から約8モル%、または約5モル%から約8モル%の範囲でP_(2)O_(5)を含むことがある。ある場合には、そのガラス組成物は、P_(2)O_(5)を実質的に含まないことがある。
【0119】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、TiO_(2)を含むことがある。そのような実施の形態において、TiO_(2)は、約6モル%未満、約4モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満の量で存在することがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、そのガラス組成物は、TiO_(2)を、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。いくつかの実施の形態において、TiO_(2)は、約0.1モル%から約6モル%、または約0.1モル%から約4モル%の範囲の量で存在する。
【0120】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、様々な組成の関係を含むことがある。例えば、そのガラス組成物は、約0.5から約1の範囲にある、R_(2)Oの総量(モル%)に対するLi_(2)Oの量(モル%)の比を含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、約-5から約0の範囲にある、Al_(2)O_(3)の量(モル%)に対するR_(2)Oの総量(モル%)の差を含むことがある。ある場合には、そのガラス組成物は、約0から約3の範囲にある、R_(x)Oの総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量(モル%)の間の差を含むことがある。1つ以上の実施の形態のガラス組成物は、約0から約2の範囲にある、ROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比を示すことがある。
【0121】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、核形成剤を実質的に含まないことがある。典型的な核形成剤の例に、TiO_(2)、ZrO_(2)などがある。核形成剤は、ガラス中の晶子の形成を開始できるガラス中の成分であるという機能の観点で記載されることがある。
【0122】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス基体に使用される組成物に、Na_(2)SO_(4)、NaCl、NaF、NaBr、K_(2)SO_(4)、KCl、KF、KBr、およびSnO_(2)を含む群から選択される少なくとも1種類の清澄剤を0?2モル%の量で配合してもよい。1つ以上の実施の形態によるガラス組成物は、約0から約2、約0から約1、約0.1から約2、約0.1から約1、または約1から約2の範囲でSnO_(2)をさらに含むことがある。ここに開示されたガラス組成物は、As_(2)O_(3)および/またはSb_(2)O_(3)を実質的に含まないことがある。」

(5)「【0123】
1つ以上の実施の形態において、前記組成物は、具体的に、62モル%から75モル%のSiO_(2)、10.5モル%から約17モル%のAl_(2)O_(3)、5モル%から約13モル%のLi_(2)O、0モル%から約4モル%のZnO、0モル%から約8モル%のMgO、2モル%から約5モル%のTiO_(2)、0モル%から約4モル%のB_(2)O_(3)、0モル%から約5モル%のNa_(2)O、0モル%から約4モル%のK_(2)O、0モル%から約2モル%のZrO_(2)、0モル%から約7モル%のP_(2)O_(5)、0モル%から約0.3モル%のFe_(2)O_(3)、0モル%から約2モル%のMnO_(x)、および0.05モル%から約0.2モル%のSnO_(2)を含むことがある。1つ以上の実施の形態において、前記組成物は、67モル%から約74モル%のSiO_(2)、11モル%から約15モル%のAl_(2)O_(3)、5.5モル%から約9モル%のLi_(2)O、0.5モル%から約2モル%のZnO、2モル%から約4.5モル%のMgO、3モル%から約4.5モル%のTiO_(2)、0モル%から約2.2モル%のB_(2)O_(3)、0モル%から約1モル%のNa_(2)O、0モル%から約1モル%のK_(2)O、0モル%から約1モル%のZrO_(2)、0モル%から約4モル%のP_(2)O_(5)、0モル%から約0.1モル%のFe_(2)O_(3)、0モル%から約1.5モル%のMnO_(x)、および0.08モル%から約0.16モル%のSnO_(2)を含むことがある。1つ以上の実施の形態において、前記組成物は、70モル%から75モル%のSiO_(2)、10モル%から約15モル%のAl_(2)O_(3)、5モル%から約13モル%のLi_(2)O、0モル%から約4モル%のZnO、0.1モル%から約8モル%のMgO、0モル%から約5モル%のTiO_(2)、0.1モル%から約4モル%のB_(2)O_(3)、0.1モル%から約5モル%のNa_(2)O、0モル%から約4モル%のK_(2)O、0モル%から約2モル%のZrO_(2)、0モル%から約7モル%のP_(2)O_(5)、0モル%から約0.3モル%のFe_(2)O_(3)、0モル%から約2モル%のMnO_(x)、および0.05モル%から約0.2モル%のSnO_(2)を含むことがある。
【0124】
1つ以上の実施の形態において、前記組成物は、52モル%から約63モル%のSiO_(2)、11モル%から約15モル%のAl_(2)O_(3)、5.5モル%から約9モル%のLi_(2)O、0.5モル%から約2モル%のZnO、2モル%から約4.5モル%のMgO、3モル%から約4.5モル%のTiO_(2)、0モル%から約2.2モル%のB_(2)O_(3)、0モル%から約1モル%のNa_(2)O、0モル%から約1モル%のK_(2)O、0モル%から約1モル%のZrO_(2)、0モル%から約4モル%のP_(2)O_(5)、0モル%から約0.1モル%のFe_(2)O_(3)、0モル%から約1.5モル%のMnO_(x)、および0.08モル%から約0.16モル%のSnO_(2)を含むことがある。」

(6)「【0125】
ここに記載されたような、化学強化される前のガラス系物品の他の例示の組成が、表1に示されている。
【0126】
【表1-1】

【0127】
【表1-2】



(7)「【実施例】
【0143】
以下の実施例により、様々な実施の形態をさらに明確にする。実施例において、実施例は、強化される前に、「基体」と称される。実施例は、強化が施された後、「物品」または「ガラス系物品」と称される。
【0144】
実施例1
下記の表2に示された公称組成を有するガラスセラミック基体を提供した。それらのガラスセラミック基体は、厚さが0.8mmであり、主結晶相としてβスポジュメン固溶体およびルチルを含む1種類以上の副相を含む結晶相集合体を含んだ。ガラスセラミック基体を、10時間(条件A)、13時間(条件B)、または24時間(条件C)に亘り485℃の温度を有するNaNO_(3)を含む溶融塩浴、もしくは2時間に亘り430℃の温度(比較条件D)を有するNaNO_(3)を含む溶融塩浴中に浸漬して、ガラスセラミック物品を形成した。
【0145】
【表2】

【0146】
前記ガラスセラミック物品の応力プロファイルをマイクロプローブにより測定した。その応力プロファイルが図5に示されている。図5に示されるように、Na^(+)イオンは、より高温の浴が利用された場合(すなわち、条件A?C)、物品のほぼ全厚に亘りイオン交換される。そのようなガラスセラミックにおいて、Na_(2)Oは、CT領域中に約1.2モル%以上の量で存在する。より低温の浴(比較条件D)においてイオン交換されたガラスセラミック物品は、公知の応力プロファイルに似た応力プロファイルを示した。
【0147】
実施例2
表2に示されたものと同じ組成および0.8mmの厚さを有するが、非晶質構造(結晶相なし)を有するガラス基体を、様々な期間に亘り約430℃の温度を有する100%のNaNO_(3)を含む溶融塩浴中に浸漬することにより化学強化して、ガラス物品を提供した。そのガラス物品のDOCおよび最大CTは、散乱光偏光器(SCALP)を使用して測定した。図6に示されるように、DOCおよび最大CTは、浸漬すなわちイオン交換の長さが増加するにつれて増加する。最大CT値は、約16時間に亘りガラスを浸漬した後に観察された。
【0148】
実施例2のガラス物品の応力プロファイルをSCALPを使用して測定した。その応力プロファイルが図7に示されている。正の応力値を示すx軸の上側部分はCT層であり、負の応力値を示すx軸の下側部分はCS値である。16時間に亘り化学強化したガラス物品の応力プロファイルは、最大CT値(すなわち、175MPa)および100マイクロメートルの、深さ方向に、線形部分を実質的に含まない放物線状の形状を示した。SCALPにより測定した表面CSは約410MPaであった。したがって、実施例2の表面CSに対する最大CTの比は、約0.4375である。
【0149】
実施例3
比較のために、各々が約0.8mmの厚さを有する、実施例1のガラスセラミック基体および実施例2のガラス基体に、3.5時間に亘り、350℃の温度を有するNaNO_(3)の溶融塩浴中に浸漬することによって、化学強化を行った(それぞれ、実施例3Aおよび3B)。図8に示されたガラスセラミック物品およびガラス物品の得られた応力プロファイルは、誤差関数(erfc)または準線形形状に似ている。さらに、層のCS深さは、ガラスまたはガラスセラミック中に交換されたアルカリイオンの深さ(または化学イオン交換深さ)よりも小さい。
【0150】
各々が約0.8mmの厚さを有する、実施例1のガラスセラミック基体および実施例2のガラス基体に、24時間に亘り、430℃の温度を有するNaNO_(3)の溶融塩浴中に浸漬することによって、ここに記載された化学強化を行った場合(それぞれ、実施例3Cおよび3D)、得られたガラス系物品は、図9に示されるような金属酸化物濃度プロファイル(EPMAにより得られる)を示した。その金属酸化物濃度プロファイルは、放物線状であり、全厚に亘りNa^(+)イオンのイオン交換を示す。その化学プロファイルはEMPAを使用して測定した。Na_(2)O拡散の化学深さは、400マイクロメートル以上と示されている。さらに、Na_(2)Oは、CT層を含む厚さに亘り、約1モル%以上の濃度で存在する。実施例3Dの得られたガラスセラミック物品は、ガラスセラミック基体が同一の携帯電話の筐体に据え付けられた落下試験において優れた破壊抵抗を示した。詳しくは、実施例3Dの5つのサンプルを携帯電話装置に組み込み、50cmの深さで始まる連続落下に関して、研磨紙上に落とした。各サンプルがある高さからの落下に生存するにつれて、割れが生じるまで、サンプルを再び増加された高さから落とした。割れた時点で、そのサンプルの破損高さを図9Aに記録した。実施例3Dは、172.5cmの平均破損高さを示した。
【0151】
図10は、公知のプロセスにより化学強化したガラス系基体およびここに記載された方法にしたがって化学強化したガラス系基体の応力プロファイルを示している。図10に示されるように、ここに記載された実施の形態のガラス系物品の応力プロファイルは、線形セグメント(約50マイクロメートル超の長さまたは絶対深さを有する)を実質的に含まない形状を有し、約0.2・tのDOCを示す一方で、公知の応力プロファイルは、約0.1ミリメートルから約0.7ミリメートルの深さに実質的に線形の部分を示す(約0.6ミリメートルまたは600マイクロメートルの全長)。公知の応力プロファイルは、より低いCT値およびより小さいDOCも示す。
【0152】
実施例4
表2の組成を有するガラス基体(各々が約1mmの厚さを有する)に、24時間に亘り430℃の温度を有するNaNO_(3)の第1の溶融塩浴中に浸漬することによって、化学強化を行った。1つのガラス系物品には、どのような追加の強化工程も施さなかった(実施例4A)。3つのガラス系物品に、0.75時間、4時間、または8時間のいずれかに亘り(それぞれ、実施例4B、4Cおよび4D)、430℃の温度を有するKNO_(3)の第2の溶融塩浴中に浸漬することによって、第2の強化工程を行った。得られたガラス系物品のSCALPにより測定した応力プロファイルが図11に示されている。ガラス系物品の深さまたは厚さがx軸にプロットされており、応力がy軸にプロットされている。正の応力値はCT値であり、負の応力値はCS値である。装置の空間分解能のために、第2のKNO_(3)イオン交換工程に関連するCSの測定が妨げられる。実施例4Aおよび4Bのガラス系物品は同様のプロファイルを示した。実施例4Cおよび4Dのガラス系物品は、時間と共に、第2の強化工程での浸漬後に、減少するCT(実施例4Aおよび4Bと比べて)および減少するCS(実施例4Aおよび4Bと比べて)を示した。実施例4Cおよび4Dのガラス系物品は、実施例4Aおよび4Bと比べて、増加したDOCも示し、そのようなDOC値は、0.2・tよりも大きかった。
【0153】
図12は、実施例4B?4Dの各々に関するJ/m^(2)で表された貯蔵引張エネルギーを示しており、これは、KNO_(3)の第2の溶融塩浴中に浸漬した時間に応じて、15J/m^(2)超である。貯蔵引張エネルギーは、測定したSCALP応力プロファイルデータから、先の式(3)を使用して計算できる。
【0154】
図13および14は、実施例4B?4Dの各々について、深さ(マイクロメートル)の関数としてのK_(2)OおよびNa_(2)Oの各々の濃度プロファイルを示している。図13に示されるように、K_(2)Oの化学深さは、3マイクロメートル(実施例4B、KNO_(3)浴中の0.75時間の浸漬)、6マイクロメートル(実施例4C、KNO_(3)浴中の4時間の浸漬)、および5マイクロメートル(実施例4D、KNO_(3)浴中の8時間の浸漬)である。図14に示されるように、Na_(2)Oは、全深さに浸透し、ガラス系物品の全深さに沿って、実施例4B?4Dの各々について、約1モル%以上の濃度を有する。
【0155】
実施例4Eおよび4Fは、表2の組成を有するガラス基体(各々が約1mmの厚さを有する)を含んだ。その基体に、24時間に亘る430℃の温度を有するNaNO_(3)の第1の溶融塩浴中の浸漬により、化学強化を行い、それぞれ、4時間または8.25時間に亘る空気中における430℃の温度への熱処理を行った。実施例4E、4Fのガラス系物品の応力プロファイルが図15に示されており、実施例4A、4Cおよび4Dに関する応力プロファイルが比較のために示されている。図16は、0.5・tの深さまたはその近くで応力プロファイルの差を示すために、より小さい目盛りで、図15と同じグラフを示している。
【0156】
実施例5
表2の組成を有するガラス基体(各々が約1mmの厚さを有する)に、24時間に亘り430℃の温度を有するNaNO_(3)の第1の溶融塩浴中に浸漬することによって、化学強化を行った。1つのガラス系物品には、どのような追加の強化工程も施さなかった(実施例5A)。2つのガラス系物品に、390℃の炉内にガラス系物品を置き、8時間または28時間に亘り(それぞれ、実施例5B?5C)、炉内にガラス系物品を維持することによって、第2の強化工程を行った。4つのガラス系物品に、4時間または8時間に亘り、430℃の温度を有するKNO_(3)の第2の溶融塩浴中に浸漬することによって(第1の強化工程および異なる第2の強化工程のいずれかの後)、第3の強化工程を行った(実施例5D?5G)。実施例5A?5Gの各々に関する強化工程が、表3に示されている。測定したCT値も、表3に示されている。
【0157】
【表3】

【0158】
得られたガラス系物品の応力プロファイルが図17に示されている。ガラス系物品の深さまたは厚さがx軸にプロットされており、応力がy軸にプロットされている。正の応力値はCT値であり、負の応力値はCS値である。図17に示されるように、第2のおよび/または第3の熱処理の期間が増加するにつれて、DOCは増加し、CTは減少した。DOCおよびCTの減少が、それぞれ、図18および19により明白に示されている。
【0159】
次いで、実施例5A?5Gのガラス系物品に、そのガラス系物品の一方の面にテープを貼り付け、反対の裸の面に鋭利な器具を衝突させ、割る、突き試験(poke test)を行った。得られた破片の数を、ガラス系物品の貯蔵引張エネルギーに相間させることができる。実施例5A、5Bおよび5Dは多数の破片を示し(すなわち、50および100さえ超える)、一方で、実施例5Fは10の破片を示し、実施例5Cは3つの破片を示し、実施例5Eおよび5Gは4つの破片を示した。多数の破片を示した実施例5A、5Bおよび5Dは、全てが約100MPa以下のCT値を有した実施例5C、5E、5Fおよび5Gよりも高いCT(約100MPa超)を示した。
【0160】
実施例6
57.5モル%のSiO_(2)、16.5モル%のAl_(2)O_(3)、16.7モル%のNa_(2)O、2.5モル%のMgO、および6.5モル%のP_(2)O_(5)の公称組成を有し、約0.4mm、0.55mm、または1mmの厚さを有するガラス基体に化学強化を行った。厚さおよび化学強化の条件が、表4に示されている。
【0161】
【表4】

【0162】
実施例6Aは、4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間に亘り(実施例6A-1から6A-6)、表4に示されたような溶融塩浴中に浸漬した。実施例6Bは、4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間に亘り(実施例6B-1から6B-6)、表4に示されたような溶融塩浴中に浸漬した。実施例6Cは、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、および32時間に亘り(実施例6C-1から6C-6)、表4に示されたような溶融塩浴中に浸漬した。実施例6Dは、4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間に亘り(実施例6D-1から6D-6)、表4に示されたような溶融塩浴中に浸漬した。実施例6A-1から6A-6、6B-1から6B-6、6C-1から6C-6、および6D-1から6D-6の応力プロファイルが、それぞれ、図20、22、24および26に示されている。図20、22、24および26において、ガラス物品の深さまたは厚さはx軸にプロットされており、応力はy軸にプロットされている。正の応力値はCT値であり、負の応力値はCS値である。
【0163】
実施例6A-1から6A-6、実施例6B-1から6B-6、実施例6C-1から6C-6、および実施例6D-1から6D-6に関する、溶融塩浴中に浸漬した時間の関数としてのCT値およびDOC値が、それぞれ、図21、23、25、および27に示されている。
【0164】
実施例7
表2に示されたような公称組成を有し、約1mmの厚さを有するガラス基体に、430℃の温度で、100%のNaNO_(3)を含む溶融塩浴中における化学強化を行った。ガラス基体をその溶融塩浴中に浸漬した期間が、表5に示されている。
【0165】
【表5】

【0166】
実施例7A?7Gのガラス系物品の応力プロファイルが、図28に示されている。これらの応力プロファイルはSCALPを使用して測定した。図28に示されるように、16時間および24時間に亘る溶融塩浴中のガラス基体の浸漬により、絶対項で、最大表面CS値および最大CT値を示すガラス系物品が得られる。両方ともイオン交換時間の関数としての、CT値および貯蔵引張エネルギーにおける変化を示すグラフが、図29に示されている。
【0167】
実施例8
表2に示されたような公称組成を有し、各々が約0.8mmの厚さを有するガラス基体に、15分間(比較例8A)および16時間(実施例8B)に亘り、500℃の温度で、NaNO_(3)およびNaSO_(4)の混合物を含む溶融塩浴中における化学強化を行った。例8Aおよび8Bのガラス系物品の応力プロファイルが、図30に示されている。図30に示されるように、比較例8Aは公知の応力プロファイルを示したのに対し、実施例8Bは、本開示の1つ以上による応力プロファイルを示した。例8Aおよび8Bのガラス系物品の貯蔵引張エネルギーを、実施例4B?4Dと同じ様式で計算した。計算された貯蔵引張エネルギーが、図31に示されるように、測定したCT(MPa)の関数としてプロットされている。
【0168】
図31に示されるように、比較例8Aは、実施例8Bよりも、所定のCT値について、ずっと大きい貯蔵引張エネルギー値を示した(同じCT値について)。詳しくは、約55MPaのCTで、比較例8Aは約8J/m^(2)の貯蔵引張エネルギーを示したのに対し、実施例は約3.5J/m^(2)の貯蔵引張エネルギーを示した。比較例8Aおよび実施例8Bは割れ、実施例8Bは、比較例8Aよりも少ない破片に割れた。比較例8Aはずっと多い数の破片に割れた。したがって、理論により束縛せずに、貯蔵引張エネルギーを制御することにより、割れパターンまたは割れから生じる破片の数を制御または予測する方法が与えられるであろうと考えられる。
【0169】
表2に示されたような公称組成を有し、各々が約1mmの厚さを有するガラス基体に、4時間(比較例8C)および61.5時間(実施例8D)に亘り、430℃の温度で、NaNO_(3)を含む溶融塩浴中における化学強化を行った。比較例8Cは公知の応力プロファイルを示したのに対し、実施例8Dは、本開示の1つ以上による応力プロファイルを示した。例8Cおよび8Dの貯蔵引張エネルギーを、実施例4B?4Dに使用したのと同じ方法を使用して計算し、図32に示されるように、測定したCT(MPa)の関数としてプロットした。
【0170】
図32に示されるように、比較例8Cは、実施例8Dよりも、所定のCT値について、ずっと大きい貯蔵引張エネルギー値を示した(同じCT値について)。比較例8Cおよび実施例8Dは割れ、実施例8Dは、比較例8Cよりも少ない破片に割れた。比較例8Cはずっと多い数の破片に割れた。
【0171】
実施例9
70.9モル%のSiO_(2)、12.8モル%のAl_(2)O_(3)、1.95モル%のB_(2)O_(3)、7.95モル%のLi_(2)O、2.43モル%のNa_(2)O、2.98モル%のMgO、0.89モル%のZnO、および0.1モル%のSnO_(2)の公称組成を有し、約0.8mmの厚さを有するガラス基体に、表6のイオン交換条件を施した。実施例9の様々な性質が、表7において、実施例2と比べられている。
【0172】
【表6】

【0173】
【表7】

【0174】
実施例9のガラス系物品の応力プロファイルを測定した。これらの応力プロファイルは、ここに記載された形状を示した。
【0175】
実施例9と同じ厚さを有する、実施例2、実施例6、および比較例9Aによるガラス基体を提供した。実施例2によるガラス基体は、33時間に亘り430℃の温度を有する100%のNaNO_(3)の溶融浴中でイオン交換した。実施例6によるガラス基体をイオン交換すと、公知の誤差関数応力プロファイルが示された。比較例9Aは、16時間に亘り390℃の温度を有する100%のNaNO_(3)の溶融浴中でイオン交換し、これも公知の誤差関数応力プロファイルを示した。ここに用いたように、「誤差関数応力プロファイル」という用語は、図1に似た応力プロファイルを称する。
【0176】
次いで、実施例2、実施例6、実施例9、および比較例9Aからのガラス系物品を、同一の携帯電話装置に据え付けた。これらの電話装置を、30グリットの研磨紙上に20センチメートルで始まる増分高さから落とした。ガラス系物品がある高さ(例えば、20cm)からの落下に生存した場合、その携帯電話を、より高い高さ(例えば、30cm、40cm、50cmなど)から再び落とした。ガラス系物品が破損した高さが図33にプロットされている。これは、実施例2、6および9、並びに比較例9Aのサンプルに関する平均破損高さも示している。図33に示されるように、実施例2および9は、実施例6および比較例9Aよりも著しく高い落下高さで破損を示した。詳しくは、実施例6および比較例9Aは、それぞれ、約38cmおよび55cmの落下高さで破損を示し、一方で、実施例2および9は、それぞれ、約147cmおよび132cmの落下高さで破損を示した。
【0177】
同じ試験を、180グリットの研磨紙上に同じ携帯電話装置を使用して新たなサンプルに繰り返した。実施例6の平均破損高さは190cmであり、比較例9Aについては、204cmであり、実施例2については214cmであり、実施例9については、214cmであった。
【0178】
65モル%のSiO_(2)、5モル%のB_(2)O_(3)、14モル%のAl_(2)O_(3)、14モル%のNa_(2)O、2モル%のMgO、および0.1モル%のSnO_(2)の公称組成、および0.8mmの厚さを有する、比較例9Bによるガラス基体にイオン交換を行うと、公知の誤差関数応力プロファイルが示された。実施例2および実施例6(この実施例において上述した応力プロファイルを示す)、比較例9Bのガラス系物品のサンプルおよび表5に示されるような条件4にしたがってイオン交換した実施例9のガラス系物品に、ここに記載されたように、A-ROR試験を行った。
【0179】
実施例6および9、並びに比較例9Bは、25psi(約172kPa)および45psi(約310kPa)の荷重または圧力を使用して研磨し、実施例2は、25psi(約172kPa)の荷重のみを使用して研磨した。そのARORデータが図34に示されている。図34に示されるように、実施例2および9は、実施例6および比較例9Bよりも高い破壊荷重を示した。
【0180】
実施例2(この実施例において上述したようにイオン交換した)および9(条件4にしたがってイオン交換した)のガラス系物品のサンプルに、4点曲げ試験を行った。その結果が、図35のワイブル分布プロットに示されている。図35に示されるように、実施例9は、より高い破壊荷重または応力(例えば、約400MPa超)を示した。
【0181】
先に示したように、525℃より高い歪み点を有する組成物から製造されたガラス系物品は、約350℃から約480℃の範囲のイオン交換温度(またはイオン交換浴温度)を可能にする。いくつかの実施の形態において、約800平方ミリメートル/時より大きい拡散性を示すガラス組成物は、金属酸化物がガラス系物品中に拡散して、応力緩和が最小になるほど急激にその物品の全深さまたは厚さに浸透することができる。過剰な応力緩和により、ガラス系物品の表面圧縮応力が低下し得る。」

(8)「【0274】
実施形態89
強化ガラスにおけるガラス組成物の使用において、
前記ガラス組成物が、モル%で、
約68から約75の範囲の量のSiO_(2)、
約12から約15の範囲の量のAl_(2)O_(3)、
約0.5から約5の範囲の量のB_(2)O_(3)、
約2から約8の範囲の量のLi_(2)O、
約0から約6の範囲の量のNa_(2)O、
約1から約4の範囲の量のMgO、
約0から約3の範囲の量のZnO、および
約0から約5の範囲の量のCaO、
を含み、
前記ガラス基体はイオン交換可能かつ非晶質であり、
前記ガラス基体は、
約0.5から約1の範囲のR_(2)Oに対するLi_(2)Oの比、
約-5から約0の範囲にあるR_(2)Oの総量とAl_(2)O_(3)の量の間の差、
約0から約3の範囲にあるR_(x)Oの総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量の間の差、および
約0から約2の範囲にあるROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比、
のいずれか1つ以上を示し、
前記ガラス基体が核形成剤を実質的に含まない、使用。
【0275】
実施形態90
ガラス基体において、モル%で表して、
約68から約75の範囲の量のSiO_(2)、
約12から約15の範囲の量のAl_(2)O_(3)、
約0.5から約5の範囲の量のB_(2)O_(3)、
約2から約8の範囲の量のLi_(2)O、
約0から約6の範囲の量のNa_(2)O、
約1から約4の範囲の量のMgO、
約0から約3の範囲の量のZnO、および
約0から約5の範囲の量のCaO、
を含む組成を有し、
前記ガラス基体はイオン交換可能かつ非晶質であり、
前記ガラス基体は、
約0.5から約1の範囲のR_(2)Oに対するLi_(2)Oの比、
約-5から約0の範囲にあるR_(2)Oの総量とAl_(2)O_(3)の量の間の差、
約0から約3の範囲にあるR_(x)Oの総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量の間の差、および
約0から約2の範囲にあるROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比、
のいずれか1つ以上を示し、
前記ガラス基体が核形成剤を実質的に含まない、ガラス基体。
【0276】
実施形態91
ガラス基体において、モル%で表して、
約68から約75の範囲の量のSiO_(2)、
約12から約15の範囲の量のAl_(2)O_(3)、
約0.5から約5の範囲の量のB_(2)O_(3)、
約2から約8の範囲の量のLi_(2)O、
約0から約6の範囲の量のNa_(2)O、
約1から約4の範囲の量のMgO、
約0から約3の範囲の量のZnO、および
約0から約5の範囲の量のCaO、
を含む組成を有し、
前記ガラス基体は非晶質であり、前記ガラスは強化されており、
前記Na_(2)Oの濃度は変動し、核形成剤を実質的に含まない、ガラス基体。
【0277】
実施形態92
約0.5から約1の範囲のR_(2)Oに対するLi_(2)Oの比、
約-5から約0の範囲にあるR_(2)Oの総量とAl_(2)O_(3)の量の間の差、
約0から約3の範囲にあるR_(x)Oの総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量の間の差、および
約0から約2の範囲にあるROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比、
のいずれか1つ以上をさらに示す、実施形態91に記載の強化されたガラス基体。」

(9)「【図5】

・・・
【図7】

・・・
【図10】

【図11】

・・・
【図15】

【図16】

【図17】

・・・
【図20】

・・・
【図22】

・・・
【図24】

・・・
【図26】

・・・
【図28】

・・・
【図30】



5 引用文献2の記載事項
引用文献2には、「光増幅のためのホウ酸塩またはアルミノケイ酸塩ガラス組成物」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】少なくとも50モルパーセントのSiO_(2)、および
Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3)からなる群より選択される少なくとも1つのIII族酸化物を含有するガラス組成物であって、R≦1.3である、ここで、
【数1】

X_(2)Oが該組成物中の全てのアルカリ金属酸化物の合計を表し、YOが、アルカリ土類酸化物、ZnOおよびPbOからなる群より選択された該組成物中の全ての酸化物の合計を表す、
ことを特徴とするガラス組成物。」

(2)「【0009】
本発明によるガラス組成物は、好ましくは、50.0-90.0モル%のSiO_(2)、0.0-10.0モル%のGeO_(2)、0.0-30.0モル%のB_(2)O_(3)、0.0-30.0モル%のAl_(2)O_(3)、0.0-15.0モル%のLi_(2)O、0.0-25.0モル%のNa_(2)O、0.0-15.0モル%のK_(2)O、0.0-5.0モル%のMgO、0.0-10.0モル%のSrO、0.0-10.0モル%のCaO、0.0-15.0モル%のBaO、0.0-10.0モル%のZnO、0.0-10.0モル%のPbO、0.0-3.0モル%のY_(2)O_(3)、0.0-3.0モル%のGd_(2)O_(3)、および0.0-12.0モル%のYb_(2)O_(3)を含有し、
(B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))が5-35.0モル%であり、X_(2)Oが0.0-20.0モル%であり、XOが0.0-15.0モル%であり、YOが0.0-20.0モル%であり、
ここで、X_(2)Oは、ベース組成中に存在する全てのアルカリ金属酸化物の合計であり、XOは、ベース組成中に存在する全てのアルカリ土類酸化物の合計であり、YOは、ベース組成中に存在する全てのアルカリ土類酸化物にPbOおよびZnOを加えたものの合計である、
ベース組成を有する。」

(3)「【0021】
本発明によるガラスのいくつかの典型的な組成および特性が、3つの比較例の詳細と共に、以下の表1に与えられている。
【0022】
・・・
【表3】

表1において、Rは(X_(2)O+YO)対(B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))の比率を表し、ここで、X_(2)Oは、存在する全てのアルカリ金属酸化物の合計を表し、YOは、存在する全てのアルカリ土類酸化物並びにZnOおよびPbOの合計を表す。
・・・
【0025】
本発明に従う組成を有する様々なガラスが、第3の通信窓における光増幅に使用するのによく適していることが分かった。・・・」

6 当審の判断
(1)サポート要件について
ア サポート要件の判断手法について
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。

イ 特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の請求項1、請求項7及び請求項13の記載は、上記2のとおりである。

ウ 発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明(及び図面)には、上記4において摘記した記載があるところ、特に、以下の記載事項を認めることができる。
(ア)本願発明の課題に関して、上記4(1)には、「改善された破壊抵抗を示す薄いガラス系物品が必要とされている」ことが記載されている(【0006】)。

(イ)「ガラス基体」及び「ガラス系物品」という用語に関して、上記4(3)及び(7)には、「ガラス基体」が化学強化される前のガラスであり、「ガラス系物品」がガラス基体を化学強化したガラスであることが記載されている(【0106】、【0143】)。

(ウ)化学強化される前の「ガラス基体」のガラス組成に関して、上記4(2)?(8)には、(i)各成分とそれらのモル割合で示したガラス組成(【0019】、【0106】、【0123】、【0124】、【0274】?【0277】)、(ii)その具体例としての、表1の実施例A?Nのガラス組成(【0126】【表1-1】、【0127】【表1-2】)、表2のガラス組成(【0145】【表2】)、実施例6のガラス組成(【0160】)、実施例9のガラス組成(【0171】)、及び、比較例9Bのガラス組成(【0178】)、並びに、(iii)各成分のモル割合(【0107】?【0119】)、特定成分間のモル割合の関係(R_(2)Oに対するLi_(2)Oの量比、Al_(2)O_(3)に対するR_(2)Oの量の差、R_(x)OとAl_(2)O_(3)の量の差、ROに対するMgOの量比)(【0120】)、核形成剤を実質的に含有しないこと(【0121】)、及び、清澄剤の種類とそのモル割合(【0122】)が、それぞれ記載されている。

(エ)実施例に関して、上記4(7)及び(9)には、(i)表2のガラス組成のガラス基体、実施例6のガラス組成のガラス基体、及び、実施例9のガラス組成のガラス基体に対して、特定条件での化学強化を行うこと(実施例1?実施例9)、(ii)当該化学強化で得られたガラス系物品の応力プロファイルが、深さ方向に線形部分を実質的に含まない放物線状の形状となること(【図5】、【図7】、【図10】、【図11】、【図15】?【図17】、【図20】、【図22】、【図24】、【図26】、【図30】)、並びに、(iii)当該ガラス系物品に対する落下試験、突き試験及び4点曲げ試験の結果(【0150】、【0159】、【0176】、【0180】)が、それぞれ記載されている。

エ サポート要件適合性について(特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との対比・検討)
(ア)本願発明の課題は、上記ウ(ア)からみて、「改善された破壊抵抗を示す薄いガラス系物品」を提供することにあると解されるところ、ここでいう「ガラス系物品」とは、上記ウ(イ)のとおり、ガラス基体を化学強化したガラスのことを指すから、この点に留意して、発明の詳細な説明の記載をみると、実際に、本願発明の課題を解決することができること、すなわち、化学強化に供され、改善された破壊抵抗を示す薄い「ガラス系物品」を提供することができることを具現したガラス基体は、上記ウ(エ)のとおり、実施例の表2のガラス組成のガラス基体、実施例6のガラス組成のガラス基体、及び、実施例9のガラス組成(表1の実施例Hのガラス組成と同じ。)のガラス基体のみであることが分かる。
また、これらのガラス基体に加え、発明の詳細な説明には、上記ウ(ウ)(i)及び(ii)のとおり、各成分とそれらのモル割合で示したガラス組成(以下、「【0019】等のガラス組成」という。)のガラス基体や、具体例として、表1の実施例A?G、I?N、及び、比較例9Bのガラス組成(以下、「表1等のガラス組成」という。)のガラス基体が記載されているものの、これらのガラス基体は化学強化に供されておらず、実際に化学強化した場合に、改善された破壊抵抗を示す薄い「ガラス系物品」が得られるか否かについては記載されていない。さらに、発明の詳細な説明には、上記ウ(ウ)(iii)のとおり、ガラス基体の各成分のモル割合や特定成分間のモル割合の関係について記載されているが、そこには、単にモル割合などに関する数値範囲が羅列されているだけであって、当該数値範囲とすることの技術的な意義についての説明はなく、ましてや、ガラス基体のガラス組成と化学強化後の特性との関係などについての説明は全くない。そうである以上、発明の詳細な説明の記載(特に実施例以外の記載)を参酌しても、ガラス基体のガラス組成から、化学強化後の特性(ガラス基体を化学強化して得たガラス系物品の特性)を推認することは困難であるといわざるを得ず、また、当該特性を推認するに足りる出願時の技術常識も見当たらないから、上述した「【0019】等のガラス組成」のガラス基体、又は、「表1等のガラス組成」のガラス基体が、実際に化学強化された後に所望の特性を発現し、ひいては上記課題を解決できることについてまで、当業者において認識することは到底できないというほかない。
そうしてみると、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から、当業者において、本願発明の課題を解決できると認識できる範囲(化学強化前のガラス基体の範疇)は、実際に化学強化後の特性について検証された、表2のガラス組成のガラス基体、実施例6のガラス組成のガラス基体、及び、実施例9のガラス組成のガラス基体のみであるか、これに類似するガラス組成のガラス基体に限られると解するのが合理的であり、これとはガラス組成が大きく異なるガラス基体についてまで、化学強化後の特性を推認して、当該範疇に加えることは妥当でないというべきである。

(イ)他方、特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記2のとおりであるところ、請求項1に記載されたガラス組成は、上述の表2のガラス組成とは、CaO、Na_(2)O及びTiO_(2)のモル割合において、実施例6のガラス組成とは、SiO_(2)、CaO、Na_(2)O及びLi_(2)Oのモル割合、並びにLi_(2)OとR_(2)Oのモル比において、さらに、実施例9のガラス組成とは、SiO_(2)及びCaOのモル割合において、それぞれ大きく異なっていることが認められる。
そのため、上記(ア)のとおり、表2のガラス組成のガラス基体をはじめとする特定の実施例に係るガラス基体については、当業者において、発明の詳細な説明の記載などから本願発明の課題を解決できると認識できるとしても、これとはガラス組成が大きく異なるガラス基体を包含する本願発明1についてまで、当業者において、上記課題が解決できると認識できるということはできない。
さらにいうと、そもそも請求項1に記載されたガラス組成は、発明の詳細な説明の「【0019】等のガラス組成」や「表1等のガラス組成」とも異なるため、発明の詳細な説明には、本願発明1の「ガラス基体」自体の明示的な記載はないといわざるを得ないし、当該本願発明1の「ガラス基体」が実質的に記載されているというには、そのガラス組成の諸規定に関する技術的意義についての説明に乏しすぎるというほかない。

(ウ)したがって、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとも、さらに、発明の詳細な説明の記載により、又は、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本願発明の課題を解決できる範囲のものであるともいえないから、特許請求の範囲の請求項1の記載は、サポート要件に適合しない。

(エ)加えて、特許請求の範囲の請求項7の記載は、上記2のとおりであるところ、請求項7に記載されたガラス組成は、上述の表2のガラス組成とは、P_(2)O_(5)、B_(2)O_(3)及びTiO_(2)のモル割合において、実施例6のガラス組成とは、SiO_(2)及びLi_(2)Oのモル割合において、さらに、実施例9のガラス組成とは、SiO_(2)、P_(2)O_(5)及びB_(2)O_(3)のモル割合において、それぞれ大きく異なっていることが認められる。
また、特許請求の範囲の請求項13の記載は、上記2のとおりであるところ、請求項13に記載されたガラス組成は、上述の表2のガラス組成とは、TiO_(2)のモル割合において、実施例6のガラス組成とは、SiO_(2)、ZnO及びLi_(2)Oのモル割合において、さらに、実施例9のガラス組成とは、SiO_(2)のモル割合において、それぞれ大きく異なっていることが認められる。
そして、特定の実施例に係るガラス基体とはガラス組成が大きく異なるガラス基体を包含する本願発明7及び13についても、当業者において、上記課題が解決できると認識できるということはできない。
したがって、上記(イ)と同様の理由により、特許請求の範囲の請求項7及び13の記載も、サポート要件に適合しない。

オ 請求人の主張の検討
請求人は、令和2年12月24日提出の意見書において、本願の関連出願においては、サポート要件違反を特段指摘されることなく、一定組成のガラス基体として特許されている(特許第6539419号)から、特許法第36条第6項第1号違反の拒絶の理由は解消している旨を主張している(第4頁(5))。
しかしながら、関連出願の審査経過は、本願に対する判断を拘束するものでないから、請求人の上記主張は採用できない。

カ 小括
以上のとおり、特許請求の範囲の請求項1、7及び13の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しない。

(2)進歩性欠如について
ア 上記(1)のとおり、本願特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しないものであるから、本願明細書記載の効果を、本願発明全体にわたって奏される効果として受け入れることはできないし、仮に、当該サポート要件に適合するものと解するには、当業者は、本願明細書記載の限られた具体例とはガラス組成が大きく異なるものであっても、その特性を推認できるほどの知識レベルにあることを要するから、これらの点を踏まえて、以下、進歩性の判断をする。

イ 引用文献2に記載された発明(引用2発明)
上記5(3)の記載事項を、「実施例21」のガラス組成物に注目して整理すると、引用文献2には、
「SiO_(2)が70.0モル%、GeO_(2)が0.0モル%、B_(2)O_(3)が0.0モル%、Al_(2)O_(3)が15.0モル%、Li_(2)Oが10.0モル%、Na_(2)Oが3.0モル%、K_(2)Oが0.0モル%、MgOが0.0モル%、SrOが0.0モル%、CaOが0.0モル%、BaOが0.0モル%、ZnOが0.0モル%、PbOが2.0モル%、Y_(2)O_(3)が0.0モル%、Gd_(2)O_(3)が0.0モル%、及び、Yb_(2)O_(3)が0.0モル%からなる組成であって、存在する全てのアルカリ金属酸化物の合計を表すX_(2)Oが13.0モル%、存在する全てのアルカリ土類酸化物、ZnO及びPbOの合計を表すYOが2.0モル%、(X_(2)O+YO)対(B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))の比率を表すRが1.00であるガラス組成物。」
の発明(以下、「引用2発明」という。)が記載されていると認められる。

ウ 本願発明1と引用2発明との対比
引用2発明の「SiO_(2)が70.0モル%」、「MgOが0.0モル%」、「Na_(2)Oが3.0モル%」、「Li_(2)Oが10.0モル%」及び「ガラス組成物」は、本願発明1の「60モル%から70モル%の範囲の量のSiO_(2)」、「0モル%から5モル%の範囲の量のMgO」、「1モル%から5モル%の範囲の量のNa_(2)O」、「4モル%から10モル%の範囲の量のLi_(2)O」及び「ガラス基体」にそれぞれ相当する。
また、引用2発明の上記組成から、差(R_(2)O-Al_(2)O_(3))、及び、比(Li_(2)O/R_(2)O)を算出すると、それぞれ、-2.0モル%(=(10.0モル%+3.0モル%+0.0モル%)-15.0モル%)、及び、0.77(=10.0モル%/(10.0モル%+3.0モル%+0.0モル%))になるから、引用2発明の上記組成は、本願発明1の「Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、Rb_(2)O、およびCs_(2)Oの合計であるR_(2)Oで表される金属酸化物の総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量(モル%)との間の差(R_(2)O-Al_(2)O_(3))が、-5から0の範囲にあり、前記R_(2)Oで表される金属酸化物の総量(モル%)に対するLi_(2)Oの量(モル%)の比が、0.5より大きく1以下の範囲にあ」るという規定を満足する。
さらに、引用2発明の上記組成は、TiO_(2)及びZrO_(2)を含有していない。
したがって、本願発明1と引用2発明とは、
「ガラス基体において、
60モル%から70モル%の範囲の量のSiO_(2)、
0モル%から5モル%の範囲の量のMgO、
1モル%から5モル%の範囲の量のNa_(2)O、および
4モル%から10モル%の範囲の量のLi_(2)O、
を含み、
Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、Rb_(2)O、およびCs_(2)Oの合計であるR_(2)Oで表される金属酸化物の総量(モル%)とAl_(2)O_(3)の量(モル%)との間の差(R_(2)O-Al_(2)O_(3))が、-5から0の範囲にあり、前記R_(2)Oで表される金属酸化物の総量(モル%)に対するLi_(2)Oの量(モル%)の比が、0.5より大きく1以下の範囲にあり、
当該ガラス基体がTiO_(2)を実質的に含まず、かつ
当該ガラス基体がZrO_(2)を実質的に含まない、ガラス基体」の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。
<相違点1>
本願発明1では、CaO含有量が「超0から2モル%までの量」であるのに対して、引用2発明では、CaO含有量が「0.0モル%」である点。

エ 相違点1の検討
引用文献2の上記5(1)によれば、引用2発明は、Al_(2)O_(3)又はB_(2)O_(3)の存在下、ガラス組成物中のSiO_(2)の含有量及び(X_(2)O+YO)対(B_(2)O_(3)+Al_(2)O_(3))の比率を表すRの数値を所定範囲とすることを前提としていることが理解できる。また、上記5(2)によれば、ガラス組成物中の各成分の含有量の好ましい範囲として、X_(2)O成分であるLi_(2)Oは0.0?15.0モル%、同Na_(2)Oは0.0?25.0モル%、同K_(2)Oは0.0?15.0モル%であること、YO成分であるMgOは0.0?5.0モル%、同SrOは0.0?10.0モル%、同CaOは0.0?10.0モル%、同BaOは0.0?15.0モル%、同ZnOは0.0?10.0モル%、同PbOは0.0?1.0モル%であることも記載されている。
そして、一般に、ガラス(組成物)の製造に際しては、ガラスの物性が多くの成分の総合的な作用により決定されるものであるため、ターゲットとされる物性を有するガラスを製造するにあたり、既知のガラスの配合組成を基本にして、その成分の一部を、当該物性に寄与することが知られている成分に置き換える作業を行い、ターゲットでない他の物性に支障がでないように複数の成分の混合比を変更するなどして試行錯誤を繰り返すことで当該配合組成を見出すことが通常行われる手順であり、このことは、本願優先日において、当該技術分野の技術常識(慣用の手法)であったものと認められる。
以上の引用文献2の記載や技術常識を併せ考えると、引用2発明において、上記の前提事項を維持した上で、ガラス組成物中の各成分の含有量を、好ましいとされている範囲内で変更すること、具体的には、YOの範疇に属する成分について、好ましいとされる範囲内で、同族的な成分であるPbOの一部をCaOに置き換え、CaO含有量を「超0から2モル%までの量」とすることは、当業者が、上記の慣用の手法を駆使して通常の能力を発揮したにすぎない程度のことであって、容易に想到し得ることであるというべきである。
よって、本願発明1は、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

オ 請求人の主張の検討
請求人は、本願発明1は、ガラス組成を特定することで、改善された破壊抵抗を含む改善された損傷抵抗を示すガラス基体を提供し得るという有利な効果を奏することができたのであって、このような構成及び作用効果に関して、引用文献2には、本願発明1の起因又は動機付けとなり得るものが存在しない旨を主張している(令和2年12月24日提出の意見書第5頁(ii))。
しかしながら、上記アのとおり、本願明細書記載の効果を、本願発明1全般にわたるものとして受け入れることはできないし、上記ウで検討したとおり、引用2発明のガラス組成を変更して本願発明1のガラス組成とする動機付けは十分にあることから、上記アの当業者の知識レベルに照らせば、その場合に奏される効果も、当業者の予測の範疇というべきである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

カ 小括
以上のとおり、本願発明1は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができ、特許を受けることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものである。

7 まとめ
以上のとおり、特許請求の範囲の請求項1、7及び13の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるとはいえないから、本願は、同項に規定する要件を満たしていないし、本願発明1は、同法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、その余の事項について検討するまでもなく、本願は、同法第49条第4号及び第2号に該当するため拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-03-16 
結審通知日 2021-03-17 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2019-5651(P2019-5651)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C03C)
P 1 8・ 537- WZ (C03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 瞳宮崎 大輔  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 末松 佳記
宮澤 尚之
発明の名称 金属酸化物濃度勾配を有するガラスおよびガラスセラミック  
代理人 柳田 征史  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ