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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61F
管理番号 1377088
審判番号 不服2021-6805  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-26 
確定日 2021-09-01 
事件の表示 特願2020-206944号「鼻腔拡張具」拒絶査定不服審判事件〔、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月14日の出願であって、同年12月20日に手続補正書が提出され、令和3年2月18日付けで拒絶理由が通知され、同年2月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月10日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、同年5月26日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1-2
・刊行物等
1.米国特許出願公開第2010/0228282号明細書
2.国際公開第2017/130838号(周知技術を示す文献)
3.特開2014-73210号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2005-87766号公報(周知技術を示す文献)
以下、刊行物等1?4を引用文献1?4という。

第3 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、令和3年2月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
細長の弾性板と、弾性板の一面に形成された粘着層と、粘着層に密着した剥離カバーとを備え、粘着層は弾性板の前記一面の全面に形成されており、剥離カバーは粘着層の長手方向一端部を覆う第1部分と、粘着層の長手方向中央部を覆う第2部分と、粘着層の長手方向他端部を覆う第3部分とに三分割されており、使用時において剥離カバーの第1部分と第3部分とは粘着層から剥がされており、剥離カバーの第2部分は粘着層の長手方向中央部に密着したままであることを特徴とする鼻腔拡張具。
【請求項2】
細長の弾性板と、弾性板の一面に形成された粘着層と、粘着層に密着した剥離カバーとを備え、粘着層は弾性板の前記一面の全面に形成されており、剥離カバーは粘着層の長手方向一端部を覆う第1部分と、粘着層の長手方向中央部を覆う第2部分と、粘着層の長手方向他端部を覆う第3部分とに三分割された鼻腔拡張具の使用方法であって、剥離カバーの第1部分と第3部分とを粘着層から剥がして粘着層の長手方向一端部と他端部とを鼻梁側部に密着させる一方、剥離カバーの第2部分は粘着層に密着させたまま鼻梁頂部に当接させることを特徴とする鼻腔拡張具の使用方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付し、訳は当審が作成した。以下同様である。)。
(1a)
「[0005] The present invention teaches, enables, illustrates, describes and claims new, useful and non-obvious apparatus and methods of providing dilation and/or signaling to external tissue.」
(訳:[0005] 本発明は、外部組織に拡張を提供し及び/又は信号情報を提供する、新しく、有用であり、自明でない装置及び/又は方法を教示し、可能とし、図示し、明細を表し、請求(クレーム)する。」
(1b)
「[0024] FIG. 1 illustrates in perspective view one embodiment of a nasal device 10 according to the present invention. Nasal device 10 includes a strip of flexible material 12 and an adhesive 14 for securing nasal device 10 to nasal surfaces 16 of a user 18. A resilient member 20 may be provided to create lift to the nasal surfaces 16. Other embodiments of the present invention may not require resilient means 20 to provide lift to the nasal surfaces 16. Nasal device 10 further includes a signal unit 22 for providing communication to user 18 during usage of device 10.
・・・
[0026] Now with reference to FIG. 2 which is a perspective view of an embodiment of a nasal dilator 10 according to the present invention wherein at least one signal unit 22 is integrated with a nasal dilator 10. Signal unit 22 may be disposed at other locations, and multiple signal units 22 may be utilized. One or more of the signal units 22 may be affixed to the dilator 10. For example, a single signal unit 22 may be disposed at or near a midpoint of the dilator 10 so that firm contact is established with the bridge of the nose of the user or may be disposed in a location surrounded by, or nearly surrounded by, adhesive material. Signal unit 22 may be incorporated with dilator 10 at the time of manufacture or may be a removable device which is reusable by the user.
[0027] Release liners 24 may be removed to expose adhesive 14. Referring now to FIG. 3, signal unit 22 may include a microprocessor 50 which receives signals 52, 54, 56 from one or more sensors 58, 60, 62 and controls operation of functions such as communication, mechanical vibration, light emission, etc. Sensor 58 may be an acoustic sensor for sensing vibrations of nasal tissue indicative of a user's breathing patterns.」
(訳:[0024] 図1は、本発明に係る鼻装置10の一実施形態を斜視図として図示している。鼻装置10は、ユーザー18の鼻表面16に鼻装置10を固定するための可撓性材料のストリップ12と接着剤14を含む。弾性部材20は、鼻表面16に揚力を生成するために提供されてもよい。本発明の他の実施形態は、鼻表面16に揚力を提供するために、弾性部材20を必要としなくてもよい。鼻装置10は、装置10の使用中に、ユーザー18に通信を提供するための信号ユニット22をさらに含む。
・・・
[0026] さて、本発明による鼻拡張器10の一実施形態の斜視図である図2を参照すると、そこでは、少なくとも1個の信号ユニット22は鼻拡張器10と一体化されている。信号ユニット22は、他の場所に配置されてもよく、多数の信号ユニット22が利用されてもよい。1つ以上の信号ユニット22は、拡張器10に固定されていてもよい。例えば、単一の信号ユニット22は、ユーザーの鼻梁にしっかりと接触するように、拡張器10の中央に又はその付近に配置されてもよいし、接着材に囲まれた、又はほとんど囲まれた場所に配置されてもよい。信号ユニット22は、製造時に拡張器10に組み込まれていてもよく、又はユーザーによって再使用できる取り外し可能な装置であってもよい。
[0027] 剥離ライナー24は、接着剤14を露出させるために取り除かれてもよい。ここで図3を参照すると、信号ユニット22は、1つ以上のセンサ58 60 62から信号52 54 56を受信し、通信、機械振動、発光等の機能の動作を制御するマイクロプロセッサ50を含んでもよい。センサ58は、使用者の呼吸パターンを示す鼻組織の振動を検出するための音響センサであってもよい。」
(1c)
図1及び図2は、以下のとおりである。

(2)引用文献1に記載された発明

摘記(1b)の「鼻装置10」、「装置10」、「鼻拡張器10」及び「拡張器10」は、同じものを意味していることが明らかであり、いずれも「鼻拡張器10」として特定できる。

上記アに併せ、摘記(1b)の「鼻拡張器10の一実施形態の斜視図である図2」、「鼻装置10は、ユーザー18の鼻表面16に鼻装置10を固定するための可撓性材料のストリップ12と接着剤14を含む。」、「単一の信号ユニット22は、・・・接着材に囲まれた、又はほとんど囲まれた場所に配置されてもよい。」という記載を踏まえつつ、図2に記載された「可撓性材料のストリップ12」、「接着剤14」、「信号ユニット22」及び「剥離ライナー24」の形状と、これらの部材の相互関係からみて、「鼻拡張器10」は、可撓性材料のストリップ12と、前記ストリップ12の一面に形成された接着剤14と、前記接着剤14に囲まれた信号ユニット22と、前記接着剤14を露出させるために取り除かれてもよい剥離ライナー24とを備える鼻拡張器10として特定できる。

図2から、「剥離ライナー24」が左側剥離ライナーと右側剥離ライナーとに二分割され、左側剥離ライナーは、ストリップ12の一面に形成された接着剤14の長手方向左側部分を覆い、右側剥離ライナーは、前記接着剤14の長手方向中央部分から長手方向右側部分を覆うことが看取できる。
そうすると、上記ア、イ、及び、図1(鼻拡張器10の使用時の状態を示すことが明らかである。)を踏まえると、剥離ライナー24は、可撓性材料のストリップ12の一面に形成された接着剤14の長手方向左側部分を覆う左側剥離ライナーと、前記接着剤14の長手方向中央部分から長手方向右側部分を覆う右側剥離ライナーとに二分割されており、使用時において前記左側剥離ライナー及び前記右側剥離ライナーはすべて前記接着剤14から取り除かれる、鼻拡張器10が特定できる。

上記ア?ウ、摘記(1b)及び図1、2(摘記(1c)参照)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明A]
「可撓性材料のストリップ12と、前記ストリップ12の一面に形成された接着剤14と、前記接着剤14に囲まれた信号ユニット22と、前記接着剤14を露出させるために取り除かれてもよい剥離ライナー24とを備え、
剥離ライナー24は、前記接着剤14の長手方向左側部分を覆う左側剥離ライナーと、前記接着剤14の長手方向中央部分及び長手方向右側部分を覆う右側剥離ライナーとに二分割されており、
使用時において前記左側剥離ライナー及び前記右側剥離ライナーはすべて前記接着剤14から取り除かれる、
鼻拡張器10。」

ここで、摘記(1b)の[0024]の「鼻装置10は、ユーザー18の鼻表面16に鼻装置10を固定するための可撓性材料のストリップ12と接着剤14を含む。」、同[0026]の「単一の信号ユニット22は、ユーザーの鼻梁にしっかりと接触するように、拡張器10の中央に又はその付近に配置されてもよい」という記載及び図1を踏まえると、鼻装置10は、ユーザー18の鼻表面16の鼻梁側部及び鼻梁頂部に固定するものであることが明らかであるから、引用文献1には、実質的に、引用発明Aの使用方法も記載されており、前記左側剥離ライナー及び前記右側剥離ライナーをすべて前記接着剤14から取り除いて、前記接着剤14の長手方向左側部分、長手方向中央部分及び長手方向右側部分をユーザー18の鼻表面16の鼻梁側部及び鼻梁頂部に固定する、鼻装置10の使用方法も特定できる。
このことと、上記ア?エ、摘記(1b)及び図1、2(摘記(1c)参照)から、引用文献1には、次の方法の発明(以下、「引用発明B」という。)も記載されていると認められる。
[引用発明B]
「可撓性材料のストリップ12と、前記ストリップ12の一面に形成された接着剤14と、前記接着剤14に囲まれた信号ユニット22と、前記接着剤14を露出させるために取り除かれてもよい剥離ライナー24を備え、
前記剥離ライナー24は、前記接着剤14の長手方向左側部分を覆う左側剥離ライナーと、前記接着剤14の長手方向中央部分及び長手方向右側部分を覆う右側剥離ライナーとに二分割された鼻拡張器10の使用方法であって、
前記左側剥離ライナー及び前記右側剥離ライナーをすべて前記接着剤14から取り除いて、前記接着剤14の長手方向左側部分、長手方向中央部分及び長手方向右側部分をユーザー18の鼻表面16の鼻梁側部及び鼻梁頂部に固定する、
鼻装置10の使用方法。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「[0004] 本発明の目的は、爪周囲の炎症の予防及び/又は処置を簡便かつ効果的に行える絆創膏を提供することである。」
(2b)
「[0025] 剥離材層40は、使用時に剥離材層40の剥離が容易となるように、スリットを有していてもよい。本実施形態では剥離材層40は、絆創膏1の中心軸Axと平行かつ中心軸Axと等距離隔てた2つのスリット41,42で分離された3つの部分43,44,45からなる。このため、スリット41,42の位置から、皮膚への剥離材層40の貼付に合わせたタイミングで、別々に粘着剤層30を露出させるよう3つの部分43,44,45を剥離できる構成となっている。また、スリット41,42を有することで、貼付の際、粘着剤層30に触れて粘着力が低下することを防ぐことができる。」
(2c)
図1?3は、以下のとおりである。

3 引用文献3について
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「【0010】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、3分割タイプの剥離ライナーを備える貼付剤を患部へ貼付する際に、剥離ライナーの中央部を剥離した後、当該中央部を患部に仮貼付するまでの間に粘着層の中央部どうしが互いに付着してしまうことを十分に防止することのできる貼付剤を提供することを目的とする。」
(3b)
「【0029】
図1は本発明の一実施形態に係る貼付剤1の斜視図である。貼付剤1は、シート状の基材である支持体2と、支持体2上に薬剤を含有する粘着層(図示せず)と、粘着層を介して支持体2の全面を覆って積層されている剥離ライナー3と、を備える。尚、本発明が提供する貼付剤の形態としては、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、硬膏剤等が挙げられる。
【0030】
貼付剤1においては、剥離ライナー3は、3つの分割部分である、左側剥離部31、右側剥離部32、及び中央剥離部33から構成される。そして、貼付剤1は、この左側剥離部31、右側剥離部32、及び中央剥離部33の各形状を、本願特有の形状に限定することにより、貼付時の操作性を大きく向上させたものである。以下、まず初めに貼付剤1の特徴的構成要件である剥離ライナー3とその各構成部分について詳しく説明し、続いて他の構成要件について説明する。」
(3c)
図1は、以下のとおりである。

4 引用文献4について
引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(4a)
「【0022】
接着物質46の一部を覆うためのパッド化エレメント48の使用によって形成される着用者14の鼻12の鼻柱58における接着剤の無い部分は、いくらかの使用者にとっては、刺激を引き起こし得る。そのような刺激は、パッド化エレメント48と鼻12の鼻柱58における皮膚との間の相対的な移動(その皮膚の移動を引き起こす顔面の筋肉に起因するか、または使用時の種々の時間にて鼻拡張器10に力を加える外部物質(例えば、枕)に起因して生じる移動)から引き起こされると考えられる。この問題は、当然ながら、接着剤46が鼻12の鼻柱58ならびに外壁組織60および62の全てに接着するように、パッドエレメント48を使用しないことによって回避され得る。このようなパッドエレメント48の省略は、一方で、使用後の鼻拡張器10の除去時の鼻柱58の皮膚に対する剥離力の回避のような、それの使用から得られる利点を消し去る。
・・・
【0029】
従って、ネット48’は、中間セグメント24の位置における接着剤46の被覆部分中の部分的マスクとして、ならびに使用者の鼻12の鼻柱58の皮膚(使用される場合)と接着材料46および可撓性材料帯48の両方の部分との間のスペーサーとしての両方に役立つ。そのマスキング機能において接着材料46の部分を覆うことによって、ならびに使用者の鼻12の鼻柱58の皮膚に対する接着剤46の圧迫を減少させることにより、鼻柱58の皮膚と拡張器10のその中間セグメント24における部分との間の接着の減少が得られる。得られる接着は、大部分の状況における使用者の鼻12の鼻柱58の皮膚に関する拡張器10の相対的な移動を防ぐのに十分であるが、それは拡張器10とその皮膚との間の剥離力(さもなくばネット材料48’の非存在下で生じる)を経験することなく、使用の完了後に拡張器10の除去を可能にするのに十分に減少している。」
(4b)
図2及び図7は、以下のとおりである。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明Aとを対比する。

(ア)
引用発明Aの「可撓性材料のストリップ12」は、可撓性とは物質の弾性変形のしやすさを示す性質を表すことから、本願発明1の「細長の弾性板」に相当する。
(イ)
上記(ア)踏まえると、引用発明Aの「前記ストリップ12の一面に形成された接着剤14」は、接着剤14がストリップ12の一面上で層の態様となっていることが明らかであることから、本願発明1の「弾性板の一面に形成された粘着層」に相当する。
(ウ)
引用発明Aの「前記接着剤14を露出させるために取り除かれてもよい剥離ライナー24」は、剥離ライナー24が剥離される前には当該剥離ライナー24は接着剤14に密着していることが明らかであることから、本願発明1の「粘着層に密着した剥離カバー」に相当する。
(エ)
上記(ア)?(ウ)を踏まえると、引用発明Aの「可撓性材料のストリップ12と、前記ストリップ12の一面に形成された接着剤14と、前記接着剤14に囲まれた信号ユニット22と、前記接着剤14を露出させるために取り除かれてもよい剥離ライナー24とを備え」る構成は、本願発明1の「細長の弾性板と、弾性板の一面に形成された粘着層と、粘着層に密着した剥離カバーとを備え」る構成に相当する。
(オ)
上記(ア)、(イ)を踏まえると、引用発明Aの「接着剤14」は「前記ストリップ12の一面に形成された」構成と、本願発明1の「粘着層は弾性板の前記一面の全面に形成されて」いる構成とは、「粘着層は弾性板の前記一面に形成されて」いる構成の限りにおいて、共通している。

また、上記ア(ア)?(オ)を踏まえると、
引用発明Aの
「剥離ライナー24は、前記接着剤14の長手方向左側部分を覆う左側剥離ライナーと、前記接着剤14の長手方向中央部分及び長手方向右側部分を覆う右側剥離ライナーとに二分割されており、
使用時において前記左側剥離ライナー及び前記右側剥離ライナーはすべて前記接着剤14から取り除かれる」構成と、
本願発明1の
「剥離カバーは粘着層の長手方向一端部を覆う第1部分と、粘着層の長手方向中央部を覆う第2部分と、粘着層の長手方向他端部を覆う第3部分とに三分割されており、使用時において剥離カバーの第1部分と第3部分とは粘着層から剥がされており、剥離カバーの第2部分は粘着層の長手方向中央部に密着したままである」構成とは、
「剥離カバーは複数に分割されており、使用時において剥離カバーの少なくとも一部が粘着層から剥がされる」構成の限りにおいて、共通している。

さらに、引用発明Aの「鼻拡張器10」は、本願発明1の「鼻腔拡張具」に相当する。

以上から、本願発明1と引用発明Aとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「細長の弾性板と、弾性板の一面に形成された粘着層と、粘着層に密着した剥離カバーとを備え、粘着層は弾性板の前記一面に形成されており、剥離カバーは複数に分割されており、使用時において剥離カバーの少なくとも一部が粘着層から剥がされる鼻腔拡張具。」
<相違点1-1>
「粘着層は弾性板の前記一面に形成されて」いることについて、本願発明1では、粘着層は弾性板の前記一面「の全面」に形成されているのに対して、引用発明Aでは、そのような構成を有するか明らかでない点。
<相違点2-1>
「剥離カバーは複数に分割されており、使用時において剥離カバーの少なくとも一部が粘着層から剥がされる」ことについて、本願発明1では、「剥離カバーは粘着層の長手方向一端部を覆う第1部分と、粘着層の長手方向中央部を覆う第2部分と、粘着層の長手方向他端部を覆う第3部分とに三分割されており、使用時において剥離カバーの第1部分と第3部分とは粘着層から剥がされており、剥離カバーの第2部分は粘着層の長手方向中央部に密着したままである」のに対して、引用発明Aでは、「剥離ライナー24は、前記接着剤14の長手方向左側部分を覆う左側剥離ライナーと、前記接着剤14の長手方向中央部分及び長手方向右側部分を覆う右側剥離ライナーとに二分割されており、使用時において前記左側剥離ライナー及び前記右側剥離ライナーはすべて前記接着剤14から取り除かれる」点。

(2)判断
事案に鑑み、最初に相違点2-1について検討する。

引用文献2には、「絆創膏」に関して、「爪周囲の炎症の予防及び/又は処置を簡便かつ効果的に行える絆創膏を提供する」(摘記(2a))という課題を解決するために、「剥離材層40は、・・・2つのスリット41,42で分離された3つの部分43,44,45からなる・・・皮膚への剥離材層40の貼付に合わせたタイミングで、別々に粘着剤層30を露出させるよう3つの部分43,44,45を剥離できる」(摘記(2b))という技術事項が記載されているといえる。
引用文献3には、「貼付剤」に関して、「3分割タイプの剥離ライナーを備える貼付剤を患部へ貼付する際に、剥離ライナーの中央部を剥離した後、当該中央部を患部に仮貼付するまでの間に粘着層の中央部どうしが互いに付着してしまうことを十分に防止することのできる貼付剤を提供する」(摘記(3a))という課題を解決するために、「剥離ライナー3は、・・・左側剥離部31、右側剥離部32、及び中央剥離部33から構成され・・・この左側剥離部31、右側剥離部32、及び中央剥離部33の各形状を、本願特有の形状に限定する」(摘記(3b))という技術事項が記載されているといえる。
これらのことから、引用文献2、3には、「絆創膏」ないし「貼付剤」において、「粘着層の長手方向一端部を覆う第1部分と、粘着層の長手方向中央部を覆う第2部分と、粘着層の長手方向他端部を覆う第3部分とに三分割されている剥離カバーを設ける」技術事項が記載され、この技術事項は、周知技術(以下「周知技術1」ともいう。)といえる。

引用文献4には、「パッドエレメント48の省略は、一方で、使用後の鼻拡張器10の除去時の鼻柱58の皮膚に対する剥離力の回避のような、それの使用から得られる利点を消し去る。」及び「ネット48’は、・・・使用者の鼻12の鼻柱58の皮膚(使用される場合)と接着材料46および可撓性材料帯48の両方の部分との間のスペーサーとして・・・役立つ。そのマスキング機能において接着材料46の部分を覆うことによって、・・・鼻柱58の皮膚と拡張器10のその中間セグメント24における部分との間の接着の減少が得られる。」(摘記(4a))という技術事項が記載されているといえる。
引用文献4は、本願の従来技術として示された文献であり、引用文献4の「鼻拡張器10」及び「拡張器10」は、いずれも、鼻腔拡張具といえるから、引用文献4の上記の記載事項によると、「鼻腔拡張具において、鼻腔拡張具の取り外し時に、粘着層が鼻梁頂部の皮膚に密着していることが問題となること」は、鼻腔拡張具においてよく知られた課題ないし周知技術(以下「周知技術2」ともいう。)であるといえる。

ここで、引用発明Aは、「鼻拡張器」に関するものであり、解決しようとする課題は、「外部組織に拡張を提供し及び/又は信号情報を提供する、新しく、有用であり、自明でない装置及び方法」を提供することであるところ、周知技術1は、「絆創膏」ないし「貼付剤」に関するものであり、当該周知技術1に関連する課題は、上記アのとおりであって、引用発明Aと周知技術1とは、技術分野が異なり課題も異なるから、引用発明Aに周知技術1を適用する動機付けが存在するとはいえず、引用発明Aに周知技術1を適用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

上記ウのとおりであるが、念のため、引用発明Aに周知技術1を適用する場合についても、以下検討する。
(ア)
仮に、引用発明Aに「粘着層の長手方向一端部を覆う第1部分と、粘着層の長手方向中央部を覆う第2部分と、粘着層の長手方向他端部を覆う第3部分とに三分割されている剥離カバーを設ける」という周知技術1を適用するとして、引用発明Aにおいて、剥離ライナー24が左剥離ライナーと右剥離ライナーに二分割されているものを、単に三分割にするというだけであれば、当業者が容易に想起し得るともいえる。
(イ)
しかしながら、引用文献4(周知技術2)で示されるように、鼻腔拡張具の取り外し時に、粘着層が鼻梁頂部の皮膚に密着していることが問題となることがよく知られた課題ないし周知技術であったとしても、上記相違点2-1に係る本願発明1の構成である「使用時において・・・剥離カバーの第2部分は粘着層の長手方向中央部に密着したまま」にするものは、引用文献1、周知技術1、それを示す引用文献2、3、さらに引用文献4(周知技術2)のいずれにも記載も示唆もされていない。
つまり、引用発明Aにおいては、使用時に剥離シートをすべて取り除き、接着剤の一面の全てを鼻梁に固定することが前提となっているから、そのような引用発明Aの剥離シートにおいて、粘着剤の長手方向中央部を覆う部分を新たに分割して形成し、その部分だけを剥離せずに残して粘着層に密着したまま使用することについて動機付けがなく、当業者といえどもそのようなことは想定し得ない。
また、周知技術1は、あくまでも引用文献2、3に記載されたように、使用時にはすべての剥離カバーを取り除いて粘着層の全てで人体に貼付するものであり、粘着層の長手方向中央部を剥離しないようにすると、その本来の課題(摘記(2a)、(3a)参照)が解決できなくなることが明らかであり、そのようにすることには阻害要因があるといえる。
そうすると、引用発明Aに周知技術1を適用することは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明A、周知技術1,2及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

そして、本願発明1は、「使用時の鼻梁頂部への粘着層の密着防止のための専用部材を必要としない」(本願明細書の段落【0004】、【0008】)という格別に顕著な作用効果を奏するものである。

2 本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明Bとを対比する。

(ア)
引用発明Bの「可撓性材料のストリップ12」は、可撓性とは物質の弾性変形のしやすさを示す性質を表すことから、本願発明2の「細長の弾性板」に相当する。
(イ)
上記(ア)踏まえると、引用発明Bの「前記ストリップ12の一面に形成された接着剤14」は、接着剤14がストリップ12の一面上で層の態様となっていることが明らかであることから、本願発明2の「弾性板の一面に形成された粘着層」に相当する。
(ウ)
引用発明Bの「前記接着剤14を露出させるために取り除かれてもよい剥離ライナー24」は、剥離ライナー24が剥離される前には当該剥離ライナー24は接着剤14に密着していることが明らかであることから、本願発明2の「粘着層に密着した剥離カバー」に相当する。
(エ)
上記(ア)?(ウ)を踏まえると、引用発明Bの「可撓性材料のストリップ12と、前記ストリップ12の一面に形成された接着剤14と、前記接着剤14に囲まれた信号ユニット22と、前記接着剤14を露出させるために取り除かれてもよい剥離ライナー24とを備え」る構成は、本願発明2の「細長の弾性板と、弾性板の一面に形成された粘着層と、粘着層に密着した剥離カバーとを備え」る構成に相当する。
(オ)
上記(ア)、(イ)を踏まえると、引用発明Bの「接着剤14」は「前記ストリップ12の一面に形成された」構成と、本願発明2の「粘着層は弾性板の前記一面の全面に形成されて」いる構成とは、「粘着層は弾性板の前記一面に形成されて」いる構成の限りにおいて、共通している。

また、引用発明Bの「鼻拡張器10の使用補法」は、本願発明2の「鼻腔拡張具の使用方法」に相当する。

さらに、上記ア、イを踏まえると、
引用発明Bの
「前記剥離ライナー24は、前記接着剤14の長手方向左側部分を覆う左側剥離ライナーと、前記接着剤14の長手方向中央部分及び長手方向右側部分を覆う右側剥離ライナーとに二分割された鼻拡張器10の使用方法であって、
前記左側剥離ライナー及び前記右側剥離ライナーをすべて前記接着剤14から取り除いて、前記接着剤14の長手方向左側部分、長手方向中央部分及び長手方向右側部分をユーザー18の鼻表面16の鼻梁側部及び鼻梁頂部に固定する、
鼻装置10の使用方法」と、
本願発明2の
「剥離カバーは粘着層の長手方向一端部を覆う第1部分と、粘着層の長手方向中央部を覆う第2部分と、粘着層の長手方向他端部を覆う第3部分とに三分割された鼻腔拡張具の使用方法であって、剥離カバーの第1部分と第3部分とを粘着層から剥がして粘着層の長手方向一端部と他端部とを鼻梁側部に密着させる一方、剥離カバーの第2部分は粘着層に密着させたまま鼻梁頂部に当接させることを特徴とする鼻腔拡張具の使用方法」とは、
「剥離カバーは複数に分割された鼻腔拡張具の使用方法であって、剥離カバーの少なくとも一部が粘着層から剥がされる鼻腔拡張具の使用方法」の限りにおいて、共通している。

以上から、本願発明2と引用発明Bとの一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2>
「細長の弾性板と、弾性板の一面に形成された粘着層と、粘着層に密着した剥離カバーとを備え、粘着層は弾性板の前記一面に形成されており、剥離カバーは複数に分割された鼻腔拡張具の使用方法であって、剥離カバーの少なくとも一部が粘着層から剥がされる鼻腔拡張具の使用方法。」
<相違点1-2>
「粘着層は弾性板の前記一面に形成されて」いることについて、本願発明1では、粘着層は弾性板の前記一面「の全面」に形成されているのに対して、引用発明Aでは、そのような構成を有するか明らかでない点。
<相違点2-2>
「剥離カバーは複数に分割された鼻腔拡張具の使用方法であって、剥離カバーの少なくとも一部が粘着層から剥がされる鼻腔拡張具の使用方法」について、本願発明2は、「剥離カバーは粘着層の長手方向一端部を覆う第1部分と、粘着層の長手方向中央部を覆う第2部分と、粘着層の長手方向他端部を覆う第3部分とに三分割された鼻腔拡張具の使用方法であって、剥離カバーの第1部分と第3部分とを粘着層から剥がして粘着層の長手方向一端部と他端部とを鼻梁側部に密着させる一方、剥離カバーの第2部分は粘着層に密着させたまま鼻梁頂部に当接させる鼻腔拡張具の使用方法」であるのに対して、引用発明Bは、「前記剥離ライナー24は、前記接着剤14の長手方向左側部分を覆う左側剥離ライナーと、前記接着剤14の長手方向中央部分及び長手方向右側部分を覆う右側剥離ライナーとに二分割された鼻拡張器10の使用方法であって、前記左側剥離ライナー及び前記右側剥離ライナーをすべて前記接着剤14から取り除いて、前記接着剤14の長手方向左側部分、長手方向中央部分及び長手方向右側部分をユーザー18の鼻表面16の鼻梁側部及び鼻梁頂部に固定する、鼻装置10の使用方法」である点。

(2)判断
事案に鑑み、最初に相違点2-2について検討する。

引用文献2、3に記載された事項及び周知技術1は、上記1(2)アのとおりである。
引用文献4に記載された事項及び鼻腔拡張具においてよく知られた課題ないし周知技術(周知技術2)は、上記1(2)イのとおりである。

本願発明2は、本願発明1の使用方法の発明であり、引用発明Bは、引用発明Aを使用方法の発明としたものであり、相違点2-2に係る本願発明2の構成は、実質的に相違点2-1に係る本願発明1の構成と同じであるところ、引用発明Bに周知技術1、2を適用することについては、上記1(2)ウ、エで述べたのと同様である。
したがって、引用発明Bに周知技術1を適用する動機付けが存在するとはいえず、引用発明Bに周知技術1を適用することは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明2は、引用発明B、周知技術1、2及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

そして、本願発明2は、上記1(2)カで述べた格別に顕著な作用効果を奏するものである。

3 まとめ
よって、本願発明1及び2は、引用発明A、B、周知技術1,2及び引用文献2ないし4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-17 
出願番号 特願2020-206944(P2020-206944)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 公志郎  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 出口 昌哉
八木 誠
登録日 2021-09-03 
登録番号 特許第6938750号(P6938750)
発明の名称 鼻腔拡張具  
代理人 坂口 嘉彦  
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