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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1377091
審判番号 不服2020-2092  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-17 
確定日 2021-08-31 
事件の表示 特願2018-510927「コンテンツ提示のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日国際公開、WO2017/039618、平成30年11月22日国内公表、特表2018-534650、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)8月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年8月28日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年 6月24日付け:拒絶理由通知書
令和 元年10月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月 9日付け:拒絶査定
令和 2年 2月17日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 3年 3月 9日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 3年 6月15日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月9日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1?19に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許第8468056号明細書
引用文献2:特開2006-11358号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和3年3月9日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1 理由1(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
各請求項の記載が、以下の点で不明である。

(1)請求項4に「前記コンピューティングデバイスが、前記第2のコンテンツアイテムに対する前記コンテンツフィードをブラウズするための、前記ディスプレイインタフェースを通じた第2のタッチスクリーンジェスチャを決定するステップ」と記載されているが、特に、「決定する」とは技術的にどのような動作であるのか理解できず、発明の詳細な説明の記載を参照しても対応する記載が不明で動作が把握できないから、当該「ステップ」が「第2のタッチスクリーンジェスチャ」に関して何を行うステップであるのか不明である。
(2)請求項4には、上記(1)の記載に加えて「前記コンピューティングデバイスが、前記第2のコンテンツアイテムを前記ディスプレイインタフェースを通じて再生するステップ」とも記載されているが、上記(1)の「第2のタッチスクリーンジェスチャを決定するステップ」との相互関係が不明である。
(3)請求項5に「前記コンピューティングデバイスが、前記コンテンツフィード内の第3のコンテンツアイテムに対する前記コンテンツフィードをブラウズするための、前記ディスプレイインタフェースを通じた第3のタッチスクリーンジェスチャを決定するステップ」と記載されているが、上記(1)と同様の点が不明である。
(4)請求項5には、上記(3)の記載に加えて「前記コンピューティングデバイスが、前記ディスプレイインタフェースをアップデートして、前記コンテンツフィードを前記第3のコンテンツアイテムに進めるステップ」とも記載されているが、上記(3)の「第3のタッチスクリーンジェスチャを決定するステップ」との相互関係が上記(2)と同様に不明である。
(5)請求項6に「第2のコンテンツアイテムの再生は・・・自動的に開始される」と記載されているが、この自動的な再生と、請求項6が引用する請求項4の「第2コンテンツアイテム」を「再生」することとの相互関係が不明である。
(6)請求項13,18にも上記(1)、(2)と同様の記載があり、請求項14,19にも上記(3)、(4)と同様の記載がある。

2 理由2(進歩性)
この出願の請求項1?19に係る発明は、以下の引用文献1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許第8468056号明細書
引用文献2:特開2006-11358号公報

第4 本願発明
本願請求項1?17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明17」という。)は、令和3年6月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
コンピュータが実行する方法であって、
コンピューティングデバイスが、ディスプレイインタフェースを通じて、第1のコンテンツアイテムと第2のコンテンツアイテムとを少なくとも有するスクロール可能なコンテンツフィードを提供するステップであって、前記第1のコンテンツアイテムは調節可能な閾値再生時間と関連付けられ、前記スクロール可能なコンテンツフィードは、1つ又は複数のタッチスクリーンスクロールジェスチャを用いてナビゲートされる、前記提供するステップと、ここで当該提供するステップはさらに、
コンピューティングデバイスが、広告関連コンテンツを閲覧するタイミング嗜好が特定されていないことを決定するステップを含むものであり、当該タイミング嗜好は、前記広告関連コンテンツが、プレロールコンテンツ、ミッドロールコンテンツ又はエンドロールコンテンツとして提示されているかどうかと関連付けられており、
前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されていることを決定するステップであって、前記第2のコンテンツアイテムの少なくとも一部は、前記ディスプレイインタフェースを通じた前記第1のコンテンツアイテムの再生中に前記コンテンツフィード内において目視可能であり、前記スクロール可能なコンテンツフィードに含まれる前記第1のコンテンツアイテムは、前記ディスプレイインタフェースのビューポート領域内に位置付けられると自動的に再生を開始する、前記決定するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記第2のコンテンツアイテムを閲覧するための前記コンテンツフィードをスクロールさせるために、少なくとも1つのタッチスクリーンスクロールジェスチャを、前記ディスプレイインタフェースを通じて受信するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生されるまで、前記タッチスクリーンスクロールジェスチャへの応答を妨げるステップであって、前記スクロール可能なコンテンツフィードのブラウジングを妨げることを少なくとも含む、前記妨げるステップと、
前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生された後に、前記コンピューティングデバイスが、前記コンテンツフィードを前記第2のコンテンツアイテムへとスクロールさせるために、少なくとも1つの第2のタッチスクリーンスクロールジェスチャを受信するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記第2のタッチスクリーンスクロールジェスチャに応答して、前記第2のコンテンツアイテムを再生するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記タッチスクリーンスクロールジェスチャを受信すると、前記コンピューティングデバイスが、前記コンテンツフィードのブラウジングが無効にされていることを示す少なくとも1つのメッセージを、前記ディスプレイインタフェースを通じて提供するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タッチスクリーンスクロールジェスチャを受信すると、前記コンピューティングデバイスが、前記コンテンツフィードのブラウジングが有効にされるまでの残り時間量を示す少なくとも1つのメッセージを、前記ディスプレイインタフェースを通じて提供するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間、前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されたと決定するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のコンテンツアイテムは、対応する閾値再生時間と関連付けられない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のコンテンツアイテムの一部に対応する前記コンテンツフィードの領域は、明るさのレベルを落として表示される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
コンピューティングシステムが、前記コンテンツフィード内の1つまたは複数のコンテンツアイテムを取得するコストを満たす収益額を決定するステップと、
前記コンピューティングシステムが、前記収益額に少なくとも部分的に基づいて、前記閾値再生時間を決定するステップと、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
システムであって、
少なくとも1つのプロセッサと、
命令を格納するメモリと、を備え、
前記命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記システムに、
ディスプレイインタフェースを通じて、第1のコンテンツアイテムと第2のコンテンツアイテムとを少なくとも有するスクロール可能なコンテンツフィードを提供することであって、前記第1のコンテンツアイテムは調節可能な閾値再生時間と関連付けられ、前記スクロール可能なコンテンツフィードは、1つ又は複数のタッチスクリーンスクロールジェスチャを用いてナビゲートされる、前記提供することと、ここで当該提供することはさらに、
広告関連コンテンツを閲覧するタイミング嗜好が特定されていないことを決定することを含むものであり、当該タイミング嗜好は、前記広告関連コンテンツが、プレロールコンテンツ、ミッドロールコンテンツ又はエンドロールコンテンツとして提示されているかどうかと関連付けられており、
前記第1のコンテンツアイテムがディスプレイインタフェースを通じて再生されていることを決定することであって、前記第2のコンテンツアイテムの少なくとも一部は、前記ディスプレイインタフェースを通じた前記第1のコンテンツアイテムの再生中に前記コンテンツフィード内において目視可能であり、前記スクロール可能なコンテンツフィードに含まれる前記第1のコンテンツアイテムは、前記ディスプレイインタフェースのビューポート領域内に位置付けられると自動的に再生を開始する、前記決定すること、
前記第2のコンテンツアイテムを閲覧するための前記コンテンツフィードをスクロールさせるために、少なくとも1つのタッチスクリーンスクロールジェスチャを、前記ディスプレイインタフェースを通じて受信すること、
前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生されるまで、前記タッチスクリーンスクロールジェスチャへの応答を妨げることであって、前記スクロール可能なコンテンツフィードのブラウジングを妨げることを少なくとも含む、前記妨げること、
前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生された後に、前記コンテンツフィードを前記第2のコンテンツアイテムへとスクロールさせるために、少なくとも1つの第2のタッチスクリーンスクロールジェスチャを受信することと、
前記第2のタッチスクリーンスクロールジェスチャに応答して、前記第2のコンテンツアイテムを再生することと、
を行わせる、システム。
【請求項9】
前記命令は、前記システムに、
前記タッチスクリーンスクロールジェスチャを受信すると、前記コンテンツフィードのブラウジングが無効にされていることを示す少なくとも1つのメッセージを、前記ディスプレイインタフェースを通じて提供することをさらに行わせる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記命令は、前記システムに、
前記タッチスクリーンスクロールジェスチャを受信すると、前記コンテンツフィードのブラウジングが有効にされるまでの残り時間量を示す少なくとも1つのメッセージを、前記ディスプレイインタフェースを通じて提供することをさらに行わせる、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記命令は、前記システムに、
前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間、前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されたと決定することをさらに行わせる、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2のコンテンツアイテムは、対応する閾値再生時間と関連付けられない、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
命令を含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記命令は、コンピューティングシステムの少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記コンピューティングシステムに、
ディスプレイインタフェースを通じて、第1のコンテンツアイテムと第2のコンテンツアイテムとを少なくとも有するスクロール可能なコンテンツフィードを提供するステップであって、前記第1のコンテンツアイテムは調節可能な閾値再生時間と関連付けられ、前記スクロール可能なコンテンツフィードは、1つ又は複数のタッチスクリーンスクロールジェスチャを用いてナビゲートされる、前記提供するステップと、当該提供するステップはさらに、
広告関連コンテンツを閲覧するタイミング嗜好が特定されていないことを決定するステップを含むものであり、当該タイミング嗜好は、前記広告関連コンテンツが、プレロールコンテンツ、ミッドロールコンテンツ又はエンドロールコンテンツとして提示されているかどうかと関連付けられており、
前記第1のコンテンツアイテムが前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されていることを決定するステップであって、前記第2のコンテンツアイテムの少なくとも一部は、前記ディスプレイインタフェースを通じた前記第1のコンテンツアイテムの再生中に前記コンテンツフィード内において目視可能であり、前記スクロール可能なコンテンツフィードに含まれる前記第1のコンテンツアイテムは、前記ディスプレイインタフェースのビューポート領域内に位置付けられると自動的に再生を開始する、前記決定するステップと、
前記第2のコンテンツアイテムを閲覧するための前記コンテンツフィードをスクロールさせるために、少なくとも1つのタッチスクリーンスクロールジェスチャを、前記ディスプレイインタフェースを通じて受信するステップと、
前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生されるまで、前記タッチスクリーンスクロールジェスチャへの応答を妨げるステップであって、前記スクロール可能なコンテンツフィードのブラウジングを妨げることを少なくとも含む、前記妨げるステップと、
前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生された後に、前記コンテンツフィードを前記第2のコンテンツアイテムへとスクロールさせるために、少なくとも1つの第2のタッチスクリーンスクロールジェスチャを受信するステップと、
前記第2のタッチスクリーンスクロールジェスチャに応答して、前記第2のコンテンツアイテムを再生するステップと、
を含む方法を行わせる、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記命令は、前記コンピューティングシステムに、
前記タッチスクリーンスクロールジェスチャを受信すると、前記コンテンツフィードのブラウジングが無効にされていることを示す少なくとも1つのメッセージを、前記ディスプレイインタフェースを通じて提供することをさらに行わせる、請求項13に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記命令は、前記コンピューティングシステムに、
前記タッチスクリーンスクロールジェスチャを受信すると、前記コンテンツフィードのブラウジングが有効にされるまでの残り時間量を示す少なくとも1つのメッセージを、前記ディスプレイインタフェースを通じて提供することをさらに行わせる、請求項13に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記命令は、前記コンピューティングシステムに、
前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間、前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されたと決定すること、
をさらに行わせる、請求項13に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記第2のコンテンツアイテムは、対応する閾値再生時間と関連付けられない、請求項16に記載の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。」

第5 当審拒絶理由の理由1について
令和3年6月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲では、請求項4の記載において、「前記コンピューティングデバイスが、前記第2のコンテンツアイテムに対する前記コンテンツフィードをブラウズするための、前記ディスプレイインタフェースを通じた第2のタッチスクリーンジェスチャを決定するステップ」との記載及び「前記コンピューティングデバイスが、前記第2のコンテンツアイテムを前記ディスプレイインタフェースを通じて再生するステップ」との記載が削除され、請求項11,16の記載においても同様に削除された(上記理由1の(1)、(2)、(6)に対応。)。
また、同じく請求項5の記載において、「前記コンピューティングデバイスが、前記コンテンツフィード内の第3のコンテンツアイテムに対する前記コンテンツフィードをブラウズするための、前記ディスプレイインタフェースを通じた第3のタッチスクリーンジェスチャを決定するステップ」との記載及び「前記コンピューティングデバイスが、前記ディスプレイインタフェースをアップデートして、前記コンテンツフィードを前記第3のコンテンツアイテムに進めるステップ」との記載が削除され、請求項12,17の記載においても同様に削除された(上記理由1の(3)、(4)、(6)に対応。)。
また、補正前の請求項6が補正により削除された(上記理由1の(5)に対応。)。
以上のことから、当審拒絶理由の理由1は解消した。

第6 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1(米国特許第8468056号明細書)
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

ア 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。)。
(ア)「In general, online ads that are expected to generate the most interest from audience members should be scheduled for insertion in the media stream, to ensure the largest revenue for the ad publisher.」(1欄15-18行)
(当審訳: 一般に、視聴者会員が最も関心を寄せると予想されるオンライン広告を、メディアストリームに挿入するようにスケジュールすることで、広告出版者の収益の最大化を確実にすべきである。)

(イ)「FIG. 1A shows a conceptual diagram of an example system 100 for presenting advertisement streams.
An audience member can use a client computer 10 to run a media player 50 for playing online media content that is streamed via the Internet 40 from a media publisher associated with a media streaming server computer 20. The media player 50 can include a viewer panel 52 and an additional panel 54 for presenting a companion-element of an ad stream that is being played in the viewer panel 52. For example, the companion-element may be a banner displayed in a banner-panel 54. Additionally, the media player may be configured to display a skip-element 56 for receiving, from an audience member associated with the client computer 10, an instruction to skip the presentation of the currently playing ad stream.」(8欄28-42行)
(当審訳: 図1Aは、広告ストリームを提示するための例示的システム100の概念図を示す。
視聴者会員は、メディアストリーミングサーバコンピュータ20と関連付けられたメディア公開者からインターネット40を介してストリーミングされるオンラインメディアコンテンツを再生するためのメディアプレーヤ50を実行するために、クライアントコンピュータ10を使用することができる。メディアプレーヤ50は、ビューアパネル52と、ビューアパネル52で再生されている広告ストリームの同伴エレメントを提示するための付加パネル54を含み得る。例えば、同伴エレメントは、バナーパネル54に表示されたバナーであってもよい。加えて、メディアプレーヤは、クライアントコンピュータ10に関連する視聴者会員から、現在再生されている広告の提示をスキップする指示を受信するためのスキップエレメント56を表示するように構成されてもよい。)

(ウ)「FIG. 1B is a swim-lane diagram that shows a time sequence of processes for presenting advertisement streams implemented in system 100'. The time sequence includes time t1 (at the top of the swim-lane diagram), time t7 (at the bottom of the swim-lane diagram), and intermediate times in-between. System 100' illustrated schematically in FIG. 1B can correspond to system 100 described in FIG. 1A. For example, the representations of user device 10', media streaming server computer 20' and hub computer system 30' in FIG. 1B can correspond, respectively, to client computer 10, media streaming server computer 20, and hub computer system 30 of system 100 described in FIG. 1A. Additionally, the media streaming server computer 20' can be communicatively coupled with storage devices configured to store media streaming files, while the hub computer system 30' can be communicatively coupled with other storage devices configured to store ad streaming files.
In the example implementation of system 100', the user device 10' is operable by an audience member to interact with the publishing server system 20' and with the hub computer system 30' as a client. The publishing server system 20' is configured to stream 101, 107 a media stream 140 to the user device 10'. The hub computer system 30' is configured to stream 103, 105 an ad stream 160 to the user device 10'.
For example at time t1, media streaming server computer 20' streams 101 a portion 142 of the media stream 140 to a client computer 10'. End 143 of portion 142 of media stream 140 coincides with the beginning 143 of ad slot 146 of media stream 140.
The time to switch between the media stream 140 and the ad stream 160 coincides with the ending time 143 of the portion 142 of media stream 140 and with the starting time 161 of the ad stream 160. The hub computer system 30' is configured to stream ad stream 160 to the user device 10' for the duration of the ad slot 146. Later, the time to switch back between the ad stream 160 and the media stream 140 coincides with the ending time 169 of the ad stream 160 and with the starting time 147 of portion 148 of the media stream 140.
The ad stream 160 contains a first portion 162 referred to as the “grabber” portion, and a second portion 168 referred to as the “full story” portion. The grabber portion 162 of an ad stream 160 can be a short stream segment, e.g. 7-10 seconds, of the ad stream that cannot be skipped. This is the time when a content of the ad stream 160 (e.g., a message delivered by the ad stream) may grab the audience's interest. The full story portion 168 of the ad stream 160 includes the remainder portion of the ad stream 160, beyond the grabber portion 162.
The skip-element 56 may be presented in association with the media player 50 while streaming 103 the grabber portion 162 of the ad stream 160, for instance at time t3. In some implementations, presentation of the skip-element 56 can start when switching 142/161 the media stream 140 for the ad stream 160. However, the skip-element 56 can be activated after a predetermined time interval since switching 142/161 the media stream 140 for the ad stream 160. The predetermined time interval defines the end 165 of the grabber portion 162. Alternatively, presentation of the skip-element 56 can start at the end 165 of the grabber portion 162 and simultaneously the skip-element 56 can be activated.」(9欄62行-10欄53行)
(当審訳: 図1Bは、システム100'において実施される広告ストリームを提示するための処理の時系列を示すスイムレーン図である。時系列は、(スイムレーン線図の頂部の)時刻t1、(スイムレーン図の底部の)時刻t7、及びそれらの間における中間の時刻を含む。図1Bに概略的に示されたシステム100'は、図1Aで説明したシステム100に対応するものであり得る。例えば、図1Bにおいて、ユーザ装置10'、メディアストリーミングサーバコンピュータ20'及びハブコンピュータシステム30'の表記は、それぞれ、図1Aに記載されているシステム100のクライアントコンピュータ10、メディアストリーミングサーバコンピュータ20及びコンピュータシステム30に対応し得る。加えて、メディアストリーミングサーバコンピュータ20'は、メディアストリーミングファイルを記憶する記憶装置と通信可能に接続され得る一方、ハブコンピュータシステム30'は、広告ストリーミングファイルを格納するように構成される他の記憶装置と通信可能に接続され得る。
システム100'の例示の実施形態において、ユーザ装置10'は、公開サーバシステム20'及びハブコンピュータシステム30'とクライアントとして対話するために視聴者会員によって操作可能である。公開サーバシステム20'は、メディアストリーム140をユーザデバイス10'へストリームする101、107ように構成されている。ハブコンピュータシステム30'は、広告ストリーム160をユーザ装置10'へストリームする103、105ように構成されている。
例えば、時間t1において、メディアストリーミングサーバコンピュータ20'は、メディアストリーム140の部分142をクライアントコンピュータ10'へストリームする101。メディアストリーム140の部分142の終了点143は、メディアストリーム140の広告スロット146の開始点143と一致している。
メディアストリーム140と広告ストリーム160との間で切り換える時刻は、メディアストリーム140の部分142の終了時刻143及び広告ストリーム160の開始時刻161に一致する。ハブコンピュータシステム30'は、広告ストリーム160をユーザ装置10'へ広告スロット146の継続期間にわたりストリームするように構成されている。その後、広告ストリーム160とメディアストリーム140との間で切り換えを戻す時刻は、広告ストリーム160の終了時刻169及びメディアストリーム140の部分148の開始時刻147に一致する。
広告ストリーム160は、“つかみ”部分と呼ばれる第1の部分162と、“フルストーリー”部分と呼ばれる第2の部位168を含んでいる。広告ストリーム160のつかみ部分162は、例えば7-10秒の、スキップすることができない、広告ストリームの短いストリームセグメントであり得る。これは、広告ストリーム160の内容(例えば、広告ストリームによって配信されたメッセージ)が視聴者の関心を得ることができる時間である。広告ストリーム160のフルストーリーの部分168は、つかみ部162の先の、広告ストリーム160の残りの部分を含む。
スキップエレメント56は、広告ストリーム160のつかみ部162をストリームしている103間、例えば時刻t3において、メディアプレーヤ50に関連して提示されてもよい。いくつかの実施形態では、スキップエレメント56の提示は、メディアストリーム140を広告ストリーム160に切り換える142/161ときに開始し得る。しかし、スキップエレメント56は、メディアストリーム140を広告ストリーム160に切り換える142/161ことを行ってから所定の時間間隔後に有効化され得る。所定の時間間隔は、つかみ部分162の終了点165を画定する。代替として、スキップエレメント56の提示は、つかみ部162の終了点165で開始し得、それと同時にスキップエレメント56が有効化され得る。)

(エ)「A variable called “Skip Minimum” 184 represents the minimum duration 165 that the ad stream 160 is to be played prior to activating the skip-element 56. The Skip Minimum variable 184 sets the length of the “grabber” portion 162 of the ad stream 160. The Skip Minimum variable 184 can be specified as a duration (in seconds) or a fraction (in percentage) of the ad stream 160 (e.g. 25%). The Skip Minimum variable 184 is intended to ensure that the audience members play enough of the ad stream for the ad message to potentially grab their interest.」(12欄8-18行)
(当審訳: “最小スキップ”184と呼ばれる変数は、要素56を作動させる前に、広告ストリーム160が再生されるべき最小の期間165を表す。最小スキップ変数184は、広告ストリーム160の“つかみ”部分162の長さを定める。最小スキップ変数184は、 (秒数による) 継続時間として、又は、(パーセントによる)広告ストリーム160に対する割合(例えば、25%)として指定することができる。最小スキップ変数184は、視聴者会員が、広告メッセージが彼らの関心を引くのに十分な長さの広告ストリームを再生することを確実にすることが意図されている。)

(オ)図1B




イ 上記ア(ウ)の「図1Bにおいて、ユーザ装置10'、メディアストリーミングサーバコンピュータ20'及びハブコンピュータシステム30'の表記は、それぞれ、図1Aに記載されているシステム100のクライアントコンピュータ10、メディアストリーミングサーバコンピュータ20及びコンピュータシステム30に対応し得る。」との記載によれば、図1Bの「ユーザ装置10'」について、図1Aの「クライアントコンピュータ10」に関する上記ア(イ)の記載事項が当てはまるといえる。
そうすると、「ユーザ装置10'」は、「オンラインメディアコンテンツを再生するメディアプレーヤ50を実行する」ものであって、「メディアプレーヤ50」は、「現在再生されている広告の提示をスキップする指示を受信するためのスキップエレメント56を表示する」ものである。
また、「広告ストリームを提示するための処理」を示す図1Bに関して上記ア(ウ)、(エ)に記載されている事項は、「ユーザ装置10'」が実行する方法であるといえる。

ウ 上記ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「一般に、視聴者会員が最も関心を寄せると予想されるオンライン広告を、メディアストリームに挿入するようにスケジュールすることで、広告出版者の収益の最大化を確実にすべきであり、
オンラインメディアコンテンツを再生し、現在再生されている広告の提示をスキップする指示を受信するためのスキップエレメント56を表示するメディアプレーヤ50を実行するユーザ装置10'が実行する方法であって、
メディアストリーム140と広告ストリーム160との間で切り換える時刻は、メディアストリーム140の部分142の終了時刻143及び広告ストリーム160の開始時刻161に一致し、広告ストリーム160とメディアストリーム140との間で切り換えを戻す時刻は、広告ストリーム160の終了時刻169及びメディアストリーム140の部分148の開始時刻147に一致し、
広告ストリーム160は、“つかみ”と呼ばれる第1の部分162と、“フルストーリー”と呼ばれる第2の部位168を含み、
広告ストリーム160のつかみ部分162は、例えば7-10秒の、スキップすることができない、広告ストリームの短いストリームセグメントであり、
スキップエレメント56は、広告ストリーム160のつかみ部162をストリームしている103間、メディアプレーヤ50に関連して提示されてもよく、しかし、スキップエレメント56は、メディアストリーム140を広告ストリーム160に切り換えることを行ってから所定の時間間隔後に有効化され得、所定の時間間隔は、つかみ部分162の終了点165を画定し、
“最小スキップ”184と呼ばれる変数は、要素56を作動させる前に、広告ストリーム160が再生されるべき最小の期間165を表し、最小スキップ変数184は、広告ストリーム160の“つかみ”部分162の長さを定め、最小スキップ変数184は、視聴者会員が、広告メッセージが彼らの関心を引くのに十分な長さの広告ストリームを再生することを確実にすることが意図されている、
方法。」

2 引用文献2(特開2006-11358号公報)
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0110】
図5は、本実施の形態にかかるコンテンツデータの情報表示方法における処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートを参照して、本実施の形態にかかる情報表示方法について説明する。
【0111】
ユーザによって、表示画面の再生領域が変更された場合には、制御部12は、記憶部13の出力設定情報記憶部107に、再生領域を記憶する(S10)。この再生領域の取得および記憶は、再生領域が変更される毎に行われる。
【0112】
まず、ユーザから操作部141の出力データ指示部を介して、再生表示させるコンテンツデータが指定されると、出力データ読込部106は、通信部11を介して外部ネットワークよりコンテンツデータの取得を指示する。取得されたコンテンツデータは、データ保持部136に記憶される。
【0113】
続いて、出力制御部105において、前記取得したコンテンツデータの再生制御に必要な情報を準備する。まず、データ取得部130が、データ保持部136より前記取得したコンテンツデータを読込み、これをコンテンツデータ解析部154に受け渡す。コンテンツデータ解析部154では、取得したコンテンツデータを解析し、図29に示したようなデータ構造を作成する。作成されたデータ構造は再生制御データ構造管理部152にて管理される。
【0114】
その後、ユーザから操作部141の移動速度指示部を介して、コンテンツデータの再生指示がなされる(S11)と、出力設定情報記憶部107に記憶されているスクロール速度情報に従って、コンテンツデータのスクロール再生が開始される(S12)。
【0115】
コンテンツデータのスクロール再生制御はスクロール動作制御部133主導で行われる。スクロール動作制御部133は、スクロールバー制御部151を介して、コンテンツデータ再生制御部155に対して、スクロールバーおよびスクロールバー・スライダの描画を指示する。一方、再生開始後の経過時間を逐一カウントし、出力要素データ判定部153に通知する。再生時刻の通知を受けた出力要素データ判定部153は、前記通知された現在時刻、および、再生制御データ構造とを参照して、再生表示すべき要素データを判定する。そして、前記判定した要素データをデータ取得部130を介して取得する。
【0116】
次に、出力要素データ判定部153は、コンテンツデータのスクロール再生によって、当該コンテンツデータに含まれる動画データの表示領域が再生領域に入ったか否かを判定する(S13)。具体的には、スクロール動作制御部133から通知される現在時刻と、再生制御データ構造を参照して、スクロール再生を開始してから所定時間後に動画データが再生領域に表示されることを示す情報が記されている場合には、動画データが再生領域に入ったか否かを判定することができる。
【0117】
そして、上記ステップS13にて、動画データの表示領域が再生領域に入ったと判定すると、出力要素データ判定部153は、再生領域に入った動画データの表示領域が再生領域に収まるか否かを判定する(S14)。これは、例えば、出力要素データ判定部153は、要素データ変倍決定部131の判断結果により、判定することができる。
【0118】
ステップS14にて、動画データの表示領域が再生領域に収まらないと判定すると、出力要素データ判定部153は、変倍処理部132に上記動画データの表示領域の変倍命令を出す。変倍処理部132は、動画データの表示領域が再生領域に収まるように変倍処理を行う(S15)。そして、処理はステップS16に進む。
【0119】
次に、動画データの表示領域が再生領域に収まると判定する、または、上記表示領域が再生領域に収まるように変倍処理が行われると、次に、出力要素データ判定部153は、スクロール再生によって、動画データの表示領域が再生領域内に収まったか否かを判定する(S16)。具体的には、スクロール動作制御部133から通知される現在時刻における、コンテンツデータの再生領域に出力される座標値の範囲と、再生制御データ構造を参照して得られる動画データの表示領域の座標値の範囲とを比較することで判定する。
【0120】
そして、スクロール再生によって、動画データの表示領域が再生領域内に収まったと判定すると、出力要素データ判定部153は、スクロール動作制御部133に、スクロール再生の停止を指示する。スクロール停止命令を受信したスクロール動作制御部133は、スクロール再生を停止する(S17)。
【0120】
そして、スクロール動作制御部133は、スクロール再生を停止させた後、コンテンツデータ再生制御部155に対して動画再生命令を送信する。上記動画再生命令を受信したコンテンツデータ再生制御部155は、再生領域に表示されている動画データを再生する(S18)。」

「【図6】



(2)上記(1)から、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。
「ユーザから操作部141の移動速度指示部を介して、コンテンツデータの再生指示がなされると、コンテンツデータのスクロール再生が開始され、
スクロール再生によって、動画データの表示領域が再生領域内に収まったと判定すると、スクロール再生を停止させた後、再生領域に表示されている動画データを再生する、
コンテンツデータの情報表示方法。」

第7 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明の「ユーザ装置10'が実行する方法」は、後述する相違点を別にすれば、本願発明1の「コンピュータが実行する方法」に相当する。

(イ)引用発明の「ユーザ装置10'」において、「オンラインメディアコンテンツを再生」し、「メディアストリーム140と広告ストリーム160との間で切り換える」ことは、少なくとも「メディアストリーム140」及び「広告ストリーム160」を有する「オンラインメディアコンテンツ」を、「ユーザ装置10'」のディスプレイに表示して「再生」することであることが明らかである。また、ここで、「オンラインメディアコンテンツ」のディスプレイによる表示は、「ディスプレイインタフェースを通じて」、ユーザに「コンテンツフィードを提供する」ことであるといえる。
そして、引用発明の「ユーザ装置10'」、「広告ストリーム160」、「メディアストリーム140」は、それぞれ、本願発明の「コンピューティングデバイス」、「第1のコンテンツアイテム」、「第2のコンテンツアイテム」に相当する。

(ウ)引用発明では、「スキップエレメント56」は「現在再生されている広告の提示をスキップする指示を受信するため」のものであるとともに、「広告ストリーム160のつかみ部分162は、例えば7-10秒の、スキップすることができない、広告ストリームの短いストリームセグメント」であるから、「広告ストリーム160」は、その再生が「例えば7-10秒」経過するまでは、「スキップすることができない」ものである。したがって、「広告ストリーム160」は、「例えば7-10秒」の再生時間の閾値、すなわち閾値再生時間と「関連付けられ」ているといえる。
また、「例えば7-10秒」の時間は、任意の長さに定めることができる、すなわち「調節可能」であることが明らかである。

(エ)上記(イ)、(ウ)から、本願発明1の
「コンピューティングデバイスが、ディスプレイインタフェースを通じて、第1のコンテンツアイテムと第2のコンテンツアイテムとを少なくとも有するスクロール可能なコンテンツフィードを提供するステップであって、前記第1のコンテンツアイテムは調節可能な閾値再生時間と関連付けられ、前記スクロール可能なコンテンツフィードは、1つ又は複数のタッチスクリーンスクロールジェスチャを用いてナビゲートされる、前記提供するステップ」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「コンピューティングデバイスが、ディスプレイインタフェースを通じて、第1のコンテンツアイテムと第2のコンテンツアイテムとを少なくとも有するコンテンツフィードを提供するステップであって、前記第1のコンテンツアイテムは調節可能な閾値再生時間と関連付けられる、前記提供するステップ」
を有する点で共通している。

(オ)引用発明の「現在再生されている広告」とは、「広告ストリーム160」が「ユーザ装置10'」において「現在再生されている」ことであって、「ユーザ装置10'」は、「広告ストリーム160」が「再生されている」ことを「決定する」といえる。
この点について上記(イ)も踏まえると、引用発明は、本願発明1の
「前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されていることを決定するステップ」
に相当する構成を有している。

(カ)引用発明では、「ユーザ装置10'」は、「現在再生されている広告の提示をスキップする指示を受信するためのスキップエレメント56を表示する」から、「スキップエレメント56」は、「ユーザ装置10'」の表示装置により表示されて、それに対するユーザによる「現在再生されている広告の提示をスキップする指示」を「受信する」といえ、ここで、当該「指示」と本願発明1の「タッチスクリーンスクロールジェスチャ」とは、「スクリーンジェスチャ」である点で共通している。
そして、以上の点について上記(イ)も踏まえると、本願発明1の
「前記コンピューティングデバイスが、前記第2のコンテンツアイテムを閲覧するための前記コンテンツフィードをスクロールさせるために、少なくとも1つのタッチスクリーンスクロールジェスチャを、前記ディスプレイインタフェースを通じて受信するステップ」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「前記コンピューティングデバイスが、少なくとも1つのスクリーンジェスチャを、前記ディスプレイインタフェースを通じて受信するステップ」
を有する点で共通している。

(キ)引用発明では、「ユーザ装置10'」が、「現在再生されている広告の提示をスキップする指示を受信するためのスキップエレメント56を表示」し、「スキップエレメント56は、広告ストリーム160のつかみ部162をストリームしている103間、メディアプレーヤ50に関連して提示される」ものの、「広告ストリーム160のつかみ部分162は、例えば7-10秒の、スキップすることができない、広告ストリームの短いストリームセグメント」であるから、「ユーザ装置10'」は、「広告ストリーム160」を「再生」する(上記(イ))ことが「例えば7-10秒」だけ行われるまで、表示されている「スキップエレメント56」に対する「スキップする指示」を受け付けない、すなわち当該「指示」への「応答を妨げる」ことを行うといえる。
また、引用発明の「現在再生されている広告の提示をスキップする」ことに関して「スキップすることができない」とは、「再生」のユーザによる自由な閲覧を制限する、すなわち「ブラウジング」を「妨げる」ことであるといえる。そうすると、上記「指示」への「応答を妨げる」ことは、当該「ブラウジング」を「妨げる」ことを「少なくとも含む」ものである。
そして、以上の点について上記(イ)、(カ)も踏まえると、本願発明1の
「前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生されるまで、前記タッチスクリーンスクロールジェスチャへの応答を妨げるステップであって、前記スクロール可能なコンテンツフィードのブラウジングを妨げることを少なくとも含む、前記妨げるステップ」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生されるまで、前記スクリーンジェスチャへの応答を妨げるステップであって、前記コンテンツフィードのブラウジングを妨げることを少なくとも含む、前記妨げるステップ」
を有する点で共通している。

(ク)引用発明では、「スキップエレメント56は、メディアストリーム140を広告ストリーム160に切り換えることを行ってから所定の時間間隔後に有効化され得、所定の時間間隔は、つかみ部分162の終了点165を画定」するから、引用発明の「ユーザ装置10'」は、「広告ストリーム160」が「例えば7-10秒」だけが「再生」された後に、「広告ストリーム160」における「“フルストーリー”と呼ばれる第2の部位168」において、「広告ストリーム160の終了時刻169」よりも前に、「現在再生されている広告の提示をスキップする指示を受信するためのスキップエレメント56」による、上記(キ)の受け付けないものとされた「スキップする指示」と異なる「スキップする指示」を「受信」した場合は、これに「応答して」、「広告ストリーム160とメディアストリーム140との間で切り換えを戻」し、「メディアストリーム140」を再生するものと理解することができる。
この点について上記(イ)、(カ)も踏まえると、本願発明1の
「前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生された後に、前記コンピューティングデバイスが、前記コンテンツフィードを前記第2のコンテンツアイテムへとスクロールさせるために、少なくとも1つの第2のタッチスクリーンスクロールジェスチャを受信するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記第2のタッチスクリーンスクロールジェスチャに応答して、前記第2のコンテンツアイテムを再生するステップ」
に関して、引用発明と本願発明1とは、
「前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生された後に、前記コンピューティングデバイスが、少なくとも1つの第2のスクリーンジェスチャを受信するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記第2のスクリーンジェスチャに応答して、前記第2のコンテンツアイテムを再生するステップ」
とを有する点で共通している。

イ したがって、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致する。
(一致点)
「コンピュータが実行する方法であって、
コンピューティングデバイスが、ディスプレイインタフェースを通じて、第1のコンテンツアイテムと第2のコンテンツアイテムとを少なくとも有するコンテンツフィードを提供するステップであって、前記第1のコンテンツアイテムは調節可能な閾値再生時間と関連付けられる、前記提供するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されていることを決定するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、少なくとも1つのスクリーンジェスチャを、前記ディスプレイインタフェースを通じて受信するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生されるまで、前記スクリーンジェスチャへの応答を妨げるステップであって、前記コンテンツフィードのブラウジングを妨げることを少なくとも含む、前記妨げるステップと、
前記第1のコンテンツアイテムが前記閾値再生時間だけ再生された後に、前記コンピューティングデバイスが、少なくとも1つの第2のスクリーンジェスチャを受信するステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記第2のスクリーンジェスチャに応答して、前記第2のコンテンツアイテムを再生するステップと、
を含む方法。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1では、「コンテンツフィード」が「スクロール可能な」ものであって、「1つ又は複数のタッチスクリーンスクロールジェスチャを用いてナビゲートされる」るのに対し、引用発明では、「メディアストリーム140」及び「広告ストリーム160」を有する「オンラインメディアコンテンツ」に関して、「スクロール可能」であるとの特定はなく、「1つ又は複数のタッチスクリーンスクロールジェスチャを用いてナビゲートされる」ものであるとの特定もない点。

(相違点2)
本願発明1では、「コンテンツフィードを提供するステップ」がさらに、
「コンピューティングデバイスが、広告関連コンテンツを閲覧するタイミング嗜好が特定されていないことを決定するステップを含むものであり、当該タイミング嗜好は、前記広告関連コンテンツが、プレロールコンテンツ、ミッドロールコンテンツ又はエンドロールコンテンツとして提示されているかどうかと関連付けられて」いる
ものであるのに対し、引用発明では、「オンラインメディアコンテンツを再生する」ことに関して、そのように特定されるものではない点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されていることを決定するステップ」について、「前記第2のコンテンツアイテムの少なくとも一部は、前記ディスプレイインタフェースを通じた前記第1のコンテンツアイテムの再生中に前記コンテンツフィード内において目視可能」であるのに対し、引用発明では、「メディアストリーム140」及び「広告ストリーム160」を「再生」する態様について、そのように特定されるものではない点。

(相違点4)本願発明1では、「前記コンピューティングデバイスが、前記第1のコンテンツアイテムが前記ディスプレイインタフェースを通じて再生されていることを決定するステップ」について、(相違点3に加えて)「前記スクロール可能なコンテンツフィードに含まれる前記第1のコンテンツアイテムは、前記ディスプレイインタフェースのビューポート領域内に位置付けられると自動的に再生を開始する」ものであるのに対し、引用発明では、「メディアストリーム140」及び「広告ストリーム160」を「再生」する態様について、そのように特定されるものではない点。

(相違点5)「スクリーンジェスチャ」が、本願発明1では「タッチスクリーンスクロールジェスチャ」であって、かつ「前記第2のコンテンツアイテムを閲覧するための前記コンテンツフィードをスクロールさせるため」のものであるのに対し、引用発明では、「スクリーンジェスチャ」としての「スキップエレメント56」に対する「スキップする指示」について、「タッチスクリーンジェスチャ」と特定されるものではなく、「オンラインメディアコンテンツ」を「スクロールさせるため」のものと特定されるものでもない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
本願明細書には、相違点2に関連して、次の記載がある(段落【0032】)。
「いくつかの実施形態では、エンティティ(例えば、ソーシャルネットワーキングシステムのユーザ、または広告者)は、ユーザがコンテンツフィードをナビゲートすることが妨げられる本明細書に記載されるアプローチに代わって、嗜好を特定して、ユーザがコンテンツアイテムにアクセスするかもしくはこれを再生することができるようになる前(例えば、プレロール広告)、コンテンツアイテムにアクセスしているかもしくはこれを再生している間(例えば、ミッドロール広告)、またはコンテンツアイテムのアクセスもしくは再生が止まった後(例えば、エンドロール広告)に、広告関係コンテンツを代わりに提示することができる。」
この記載から、「嗜好」が特定されるか否かにより処理を排他的に行い、「嗜好」が特定されない場合は、「ユーザがコンテンツフィードをナビゲートすることが妨げられる」処理を実行し、「嗜好」が特定される場合は、「プレロール広告」、「ミッドロール広告」、「エンドロール広告」のいずれかの「タイミング」で広告の提示を実行することが理解できる。
この点を、念のため、参酌すると、
「コンピューティングデバイスが、広告関連コンテンツを閲覧するタイミング嗜好が特定されていないことを決定するステップを含むものであり、当該タイミング嗜好は、前記広告関連コンテンツが、プレロールコンテンツ、ミッドロールコンテンツ又はエンドロールコンテンツとして提示されているかどうかと関連付けられて」いる
との相違点2に係る発明特定事項を含む本願発明1では、「プレロールコンテンツ」等に関連付けられた「タイミング嗜好」が特定されているか否かを判断し、特定されていないと決定することを条件に「応答を妨げるステップ」を実行することが、請求項1の上記の記載により特定されているものと理解できる。
しかしながら、上記のような関連付けを伴う条件判断に基づいて応答を妨げる処理を実行することについては、引用文献1,2には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であったともいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?17について
本願発明8,13は、それぞれ、本願発明1に対応するシステム、コンピュータ可読記憶媒体の発明であり、いずれも本願発明1の相違点2に対応する発明特定事項を含んでいる。
本願発明2?7,9?12,14?17は、それぞれ本願発明1,8,13を減縮した発明である。
そうすると、本願発明2?17も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1,2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第8 原査定についての判断
令和3年6月15日に提出された手続補正書により、請求項1?17は、「コンピューティングデバイスが、広告関連コンテンツを閲覧するタイミング嗜好が特定されていないことを決定するステップを含むものであり、当該タイミング嗜好は、前記広告関連コンテンツが、プレロールコンテンツ、ミッドロールコンテンツ又はエンドロールコンテンツとして提示されているかどうかと関連付けられて」いるとの技術的事項又はこれに対応する技術的事項を含むものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献1,2には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であったとも認められないので、本願発明1?17は、当業者であっても、原査定における引用文献1,2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-10 
出願番号 特願2018-510927(P2018-510927)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 野崎 大進
富澤 哲生
発明の名称 コンテンツ提示のためのシステムおよび方法  
代理人 特許業務法人World IP  

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