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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1377105
審判番号 不服2020-11288  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-14 
確定日 2021-08-10 
事件の表示 特願2015-166314「タービンバケット」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月14日出願公開、特開2016-53361〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
この出願(以下「本願」という。)は、2015年(平成27年)8月26日(パリ条約による優先権主張2014年(平成26年)9月3日(US)アメリカ合衆国)の出願であって、令和元年6月26日付け(発送日:同年6月28日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内の令和元年9月25日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年12月26日付け(発送日:令和2年1月10日)で拒絶理由が通知され、令和2年2月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年4月9日(発送日:同年4月17日)で拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年8月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 令和2年8月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年8月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前(令和2年2月18日の手続補正書)の請求項1として、
「【請求項1】
タービンバケット(40)であって、
前縁(52)と、
後縁(54)と、
根元部(44)と、
先端部(42)と、
前記タービンバケットの本体を通って延び、入口(58)及び出口(60)を含み、前記タービンバケットを通って冷却流体流を送るように構成された、複数の冷却通路(56)と、
前記先端部の内部に定められたプレナム(64)と、
を備え、
前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)が、前記プレナム(64)内に配置され、
前記タービンバケットの翼弦が、前記前縁(52)と前記後縁(54)との間に画定される翼弦長を有し、
前記プレナムは、該プレナムに冷却流体流を排出するために前記複数の冷却通路の前記出口に直接流体連通し、前記プレナムは、前記前縁(52)と前記後縁(54)との間に画定される前記翼弦長の最後の1/3の範囲内に少なくとも1つの出口孔(70)を備え、前記翼弦長の最初の2つの1/3の範囲内に前記プレナムの出口孔(70)が配置されない、タービンバケット。」
とあったものを、
「【請求項1】
タービンバケット(40)であって、
前縁(52)と、
後縁(54)と、
根元部(44)と、
先端部(42)と、
前記タービンバケットの本体を通って延び、入口(58)及び出口(60)を含み、前記タービンバケットを通って冷却流体流を送るように構成された、複数の冷却通路(56)と、
前記先端部の内部に定められたプレナム(64)と、
を備え、
前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)が、前記プレナム(64)内に配置され、
前記タービンバケットの翼弦が、前記前縁(52)と前記後縁(54)との間に画定される翼弦長を有し、
前記プレナムは、該プレナムの外周の周り及び該プレナムの先端面において完全に取り囲まれており、
前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)は、前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)からの前記冷却流体流が、前記先端面を冷却するための衝突噴流を成すように、前記翼弦長に沿って配置され、
前記プレナムは、該プレナムに冷却流体流を排出するために前記複数の冷却通路の前記出口に直接流体連通し、前記プレナムは、前記前縁(52)と前記後縁(54)との間に画定される前記翼弦長の最後の1/3の範囲内に少なくとも1つの出口孔(70)を備え、前記翼弦長の最初の2つの1/3の範囲内に前記プレナムの出口孔(70)が配置されない、タービンバケット。」
と補正することを含むものである(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「プレナム」について、「前記プレナムは、該プレナムの外周の周り及び該プレナムの先端面において完全に取り囲まれており」との限定を付加し、また「複数の冷却通路」について、「前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)は、前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)からの前記冷却流体流が、前記先端面を冷却するための衝突噴流を成すように、前記翼弦長に沿って配置され」との限定を付加するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて、検討する。

2 引用文献、引用発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、米国特許第3057597号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「MODIFICATION AND IMPROVEMENTS TO COOLED BLADES」に関して、図面(特に、図7及び8を参照。)と共に次の記載がされている(下線は当審が付したものである。また、翻訳は当審が作成したものである。以下同様。)。

ア「The present invention relates to turbine rotor blading or stationary guide vanes and more particularly to air-cooled turbine blades and vanes wherein the cooling me dium is exhausted into the main hot gas stream which propels the turbine.」(明細書1欄15ないし19行)
〔翻訳〕
「本発明は、タービンロータのブレードまたは固定ガイドベーンに関し、より詳細には、空冷式タービンブレードおよびベーンに関し、ここでは、冷却された冷却水がタービンを推進する主な高温ガス流に排気されるようになっている。」

イ「An object of this invention is to cause the cooling medium to depart the blade in a region where the static pressure of the main hot gas stream is always less than the cooling medium supply pressure and to prevent hot gases from entering the airfoil section where the external pressure is greater than the internal coolant pressure.」(明細書1欄35ないし40行)
〔翻訳〕
「本発明の目的は、主ホットガス流の静圧が常に冷却媒体供給圧よりも低い領域で冷却媒体をブレードから離脱させ、外圧が冷却媒体内圧よりも高い領域でホットガスが翼部に進入するのを防止することにある。」

ウ「FlG. 7 is a cross-sectional view of an airfoil shell having internal vertical corrugated finning and an exhaust opening along the trailing edge.
FIG. 8 is a side view of a modification of the blade tip which has an exhaust opening adjacent to the trailing edge.」(明細書2欄3ないし8行)
〔翻訳〕
「図7は、内部に垂直なコルゲートフィニングと、後縁に沿った排気口を有する翼型シェルの断面図である。
図8は、後縁に隣接して排気口を有するブレード先端部の改良版の側面図である。」

エ「Referring now to FIGS. 2 and 3, a vertical corrugated shell 14, the tip corners of which are removed so as to provide a small plenum chamber for the expended cooling air to exhaust into before moving through the blade tip, covers the strut 10 and inner shell 15 in FIG. 2, whereas a completed unit is shown in FIG.3, having a rotor 17 and a tip cap 18 which is attached to or integrally formed with blade shell 16 by any appropriate means, leaving an exhaust opening 32.」(明細書2欄23ないし31行)
〔翻訳〕
「図2および図3を参照すると、図2のストラット10およびインナーシェル15を覆う垂直なコルゲートシェル14は、ブレード先端を通って移動する前に排出される冷却空気のための小さなプレナムチャンバを提供するように先端の角が取り除かれており、一方、完成したユニットは、排気口32を残して、任意の適切な手段によってブレードシェル16に取り付けられるか、またはブレードシェル16と一体的に形成されるロータ17および先端キャップ18を有する、図3に示されている。」

オ「In the normal operation of the turbine, the main hot gas flows from right to left in FIGS. 2 to 5 and from left to right in FIGS. 6 to 10. These hot gases would normally enter the turbine blade with high static pressures in the leading edge 21 region of the blade. As work is removed by the turbine rotor and/or pressure is converted into higher velocities in passing between or around the airfoil sections, the static pressure be comes quite low in the trailing edge22 region.」(明細書2欄46ないし54行)
〔翻訳〕
「タービンの通常の運転では、主な高温ガスは、図2から図5では右から左に、図6から図10では左から右に流れる。これらの高温ガスは、通常、タービンブレードの前縁21の領域で高い静圧でタービンブレードに入るであろう。仕事がタービンロータによって除去され、かつ/または圧力が、翼形セクション間または翼形セクションの周りを通過する際に、より高い速度に変換されるように、静圧は、後縁22の領域でかなり低くなる。」

カ「To provide good coolant flow to all internal parts of the hollow airfoil shells, the cooling air must all be exhausted at locations where the ambient pressure is less than the cooling air supply pressure.」(明細書2欄66ないし70行)
〔翻訳〕
「中空翼シェルのすべての内部部品に良好な冷却剤の流れを提供するために、冷却空気は、周囲の圧力が冷却空気の供給圧力よりも低い位置ですべて排気されなければならない。」

キ「In FIG.7, the blade shell 16 encloses vertical corrugations 24 and the tip cap 25 extends from the leading edge 21 to a point short of the trailing edge 22, the exhaust opening 35 comprising the corner formed by the tip cap 25 and the trailing edge 22. In FIG.8, the tip cap 26 wholly covers the tip of the hollow blade shell 16 extending from the leading edge 21 to the trailing edge 22, while the exhaust opening 36 is situated on the hollow shell 16 adjacent the corner formed by the trailing edge 22 and the tip cap 26.」(明細書3欄12ないし21行)
〔翻訳〕
「図7において、ブレードシェル16は、垂直なコルゲーション24を囲み、先端キャップ25は、前縁21から後縁22の短い点まで延びており、排気口35は、先端キャップ25と後縁22によって形成された角部を構成している。 図8において、先端キャップ26は、前縁21から後縁22まで延びる中空ブレードシェル16の先端部を全体的に覆い、排気口36は、後縁22と先端キャップ26によって形成された角部に隣接する中空ブレードシェル16上に位置している。」

ク 図7において、ブレードシェル16の下部は図示されていないが、図6等を参照するとロータ部17に接続される下端部を有することは自明である。

ケ 上記記載キ及び図7には、ブレードシェル16内部に、冷却空気を送るように構成された、コルゲーション24が示されており、上記記載エ及び図3には、ブレード先端を通って移動する前に排出される冷却空気のためのプレナムチャンバを備えた構造が示されていることを踏まえると、図7における先端キャップ25と、ブレードシェル16と、上記コルゲーション24の上記先端キャップ25側の端部との間に画定される空間(以下、「上記先端キャップ25の内部に定められた空間」という。)は、図3と同様に冷却空気のためのプレナムチャンバであるといえる。そして、冷却空気を送る前記コルゲーション24の上記先端キャップ25側の端部は、上記冷却空気の出口といえるところ、図7には、当該出口がプレナムチャンバ内に配置されることが図示されており、プレナムチャンバは前記出口に連通していることが看取できる。また、図示されていないもののコルゲーション24は冷却空気のための入口を備えていることは自明である。そして、コルゲーション24の出口から冷却空気が送られていることにより、先端キャップ25も冷却されていることは明らかである。

コ 図7に図示される中空ブレードシェル16は、タービンロータのブレードであることから、前縁21と後縁22との間に確定される翼弦長を有すことは自明である。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
タービンブレードであって、
前縁21と、
後縁22と、
下端部と、
前縁21から後縁22の短い点まで延びている先端キャップ25と、
ブレードシェル16内部に、入口及び出口を含み、前記ブレードシェル16内部に冷却空気を送るように構成された、コルゲーション24と、
前記先端キャップ25の内部に定められたプレナムチャンバと、
を備え、
前記コルゲーション24の前記出口が、前記プレナムチャンバ内に配置され、
前記タービンブレードの翼弦が、前記前縁21と前記後縁22との間に画定される翼弦長を有し、
前記プレナムチャンバは、上記先端キャップ25とブレードシェル16と上記コルゲーション24の上記先端キャップ25側の端部との間に画定される空間であり、
前記コルゲーション24の前記出口は、冷却空気を送ることにより先端キャップ25を冷却し、
前記プレナムチャンバは、該プレナムチャンバに冷却空気を送るコルゲーション24の出口に連通し、前記プレナムチャンバにおいて、排気口35を、先端キャップ25と後縁22によって形成された角部に排気口35を位置する、タービンブレード。

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2000-291405号公報(以下「引用文献2」という。)には、「ガスタービン・バケット及び上部シュラウド用冷却回路」に関して、図面(特に、【図2】ないし【図5】を参照。)と共に次の記載がされている(下線は当審が付したものである。)。

ア「【0012】図2乃至図5に、タービン動翼又は翼30が、それに付設した半径方向外側上部シュラウド32と共に図示されている。翼部分30は、全体に34で示す内部の半径方向に延在する第1組の冷却孔を有し、これら冷却孔は翼の前縁38の近くでそれに沿って配列されている。同時に、全体に36で示す内部の半径方向に延在する第2組の冷却孔が翼の後縁40の近くでそれに沿って配列されている。冷却孔の両組とも半径方向外方向上部シュラウド32中に延在し、詳細には、共通の比較的大きいが浅い部室或いはプリナム44まで延在している。プリナム44は、上部シュラウドに亘って、略前部から後部まで、横から横までシュラウドの面内に延在している。プリナムは、上部シュラウド内にセラミック中子によって造られ、インベストメント鋳造処理中に形成される。中子は上部シュラウドの縁から延び出る一つ以上のタブにより適所に保持される。鋳造処理の一部でこれらのタブを除去したときに、これらタブによって残された開口46,48及び50を通って冷却空気は高温ガス路に排出する。」

イ 【図2】及び【図3】には、複数の冷却孔が前縁38から後縁40に亘って配置される構造が図示されている。

上記記載事項及び【図2】ないし【図5】の図示内容から、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献2記載事項〕
タービン動翼において、タービン動翼30の内部の半径方向に延在する複数の冷却孔34、36をプリナム44まで延在し、前縁38から後縁40に亘って配置すること。

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開平2-33402号公報(以下「引用文献3」という。)には、「ガスタービン動翼」に関して、図面(特に、【図1】ないし【図3】を参照。)と共に次の記載がされている(下線は当審が付したものである。)。

ア 「ガスタービン動翼の冷却方法の一つとして、動翼の半径方向に円孔を貫通させた単純対流冷却方式がある。」(明細書2ページ左上欄2ないし4行)

イ 「動翼4は動翼本体1とシヤンク2及びダブテイル3から形成され、半径方向に貫通した前縁側冷却孔5と後縁側冷却孔6を設けている。」

ウ 第3図には、冷却孔5、6が、前縁から後縁に亘って配置される構造が図示されている。

上記記載事項及び第1図ないし第3図の図示内容から、引用文献3には、以下の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献3記載事項〕
ガスタービン動翼において、半径方向に貫通した冷却孔5、6を前縁から後縁に亘って配置すること。

3 対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「タービンブレード」はその機能、構成又は技術的意義からみて本件特許発明の「タービンバケット」に相当し、以下同様に、「前縁21」は「前縁(52)」に、「後縁22」は「後縁(54)」に、「下端部」は「根元部(44)」に、「前縁21から後縁22の短い点まで延びている先端キャップ25」は「先端部(42)」に、「ブレードシェル16」は「タービンバケットの本体」に、「冷却空気」は「冷却流体流」に、「プレナムチャンバ」は「プレナム(64)」に、「コルゲーション24」は「冷却通路56」に、「翼弦」は「翼弦」に、「翼弦長」は「翼弦長」に、「出口に連通し」は「出口に直接流体連通し」に、「排気口35」は「出口孔(70)」に、それぞれ相当し、「プレナムチャンバは、上記先端キャップ25とブレードシェル16と上記コルゲーション24の上記先端キャップ25側の端部との間に画定される空間であり」は「プレナムは、該プレナムの外周の周り及び該プレナムの先端面において完全に取り囲まれており」に相当する。

上記相当関係を踏まえると、引用発明の「前記ブレードシェル16内部に冷却空気を送るように構成され」、「前記出口が、前記プレナムチャンバ内に配置され」、「前記出口は、冷却空気を送ることにより先端キャップ25を冷却し」た「コルゲーション24」と、本件補正発明の「前記タービンバケットを通って冷却流体流を送るように構成され」、「前記出口(60)が、前記プレナム(64)内に配置され」、「前記出口(60)は、前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)からの前記冷却流体流が、前記先端面を冷却するための衝突噴流を成すように、前記翼弦長に沿って配置され」た「複数の冷却通路」とは、「タービンバケットを通って冷却流体流を送るように構成され」、「出口が、プレナム内に配置され」、「出口は、冷却通路の出口からの冷却流体流が、先端部を冷却する」「冷却通路」という限りにおいて一致する。

また、引用発明の「前記プレナムチャンバにおいて、排気口35を、先端キャップ25と後縁22によって形成された角部に排気口35を位置する」と、本件補正発明の「前記プレナムは、前記前縁(52)と前記後縁(54)との間に画定される前記翼弦長の最後の1/3の範囲内に少なくとも1つの出口孔(70)を備え、前記翼弦長の最初の2つの1/3の範囲内に前記プレナムの出口孔(70)が配置されない」とは、「プレナムは、前縁と後縁との間の所定範囲内に少なくとも1つの出口孔を備え」という限りにおいて一致する。

そうすると、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点がある。

〔一致点〕
「タービンバケットであって、
前縁と、
後縁と、
根元部と、
先端部と、
前記タービンバケットの本体を通って延び、入口及び出口を含み、前記タービンバケットを通って冷却流体流を送るように構成された、冷却通路と、
前記先端部の内部に定められたプレナムと、
を備え、
前記冷却通路の前記出口が、前記プレナム内に配置され、
前記タービンバケットの翼弦が、前記前縁と前記後縁との間に画定される翼弦長を有し、
前記プレナムは、該プレナムの外周の周り及び該プレナムの先端面において完全に取り囲まれており、
冷却通路の出口は、冷却通路の出口からの冷却流体流が、先端部を冷却し、
前記プレナムは、該プレナムに冷却流体流を排出するために前記複数の冷却通路の前記出口に直接流体連通し、前記プレナムは、前記前縁と前記後縁との間の所定の範囲内に少なくとも1つの出口孔を備える、タービンバケット。」

〔相違点1〕
「タービンバケットを通って冷却流体流を送るように構成され、出口が、プレナム内に配置され、出口は、冷却通路の出口からの冷却流体流が、先端部を冷却する冷却通路」に関して、本件補正発明においては「前記タービンバケットを通って冷却流体流を送るように構成され」、「前記出口(60)が、前記プレナム(64)内に配置され」、「前記出口(60)は、前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)からの前記冷却流体流が、前記先端面を冷却するための衝突噴流を成すように、前記翼弦長に沿って配置され」た「複数の冷却通路」であるのに対して、引用発明においては「前記ブレードシェル16内部に冷却空気を送るように構成され」、「前記出口が、前記プレナムチャンバ内に配置され」、「前記出口は、冷却空気を送ることにより先端キャップ25を冷却」する「コルゲーション24」である点。

〔相違点2〕
「プレナムは、前縁と後縁との間の所定範囲内に少なくとも1つの出口孔を備え」に関して、本件補正発明においては「前記プレナムは、前記前縁(52)と前記後縁(54)との間に画定される前記翼弦長の最後の1/3の範囲内に少なくとも1つの出口孔(70)を備え、前記翼弦長の最初の2つの1/3の範囲内に前記プレナムの出口孔(70)が配置されない」であるのに対して、引用発明においては「前記プレナムチャンバにおいて、排気口35を、先端キャップ25と後縁22によって形成された角部に排気口35を位置する」となっている点。

上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
まず、引用発明は、コルゲーション24の出口から冷却空気を送ることにより先端キャップ25を冷却するものであるから、前記冷却空気は、先端キャップ25に衝突する流れ、すなわち、衝突噴流をなすものと解するのが自然であるし、仮にそうでないとしても、インピジメント冷却は公知ないし周知の事項であり(必要であれば、特開昭59-231102号公報3ページ右下欄1ないし7行、特開平6-10608号公報段落【0004】についても参照されたい。なお、インピジメント冷却が公知の事項であることについては、審判請求書4頁下から2行ないし最終行の記載からみて、審判請求人も同じ認識であると解される。)、冷却効率の向上を図ることは当然の課題であることを考慮すると、コルゲーション24の出口からの冷却空気が衝突噴流をなすようにすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
また、引用発明のコルゲーション24は、中空ブレード16内部に存在するものであるところ、その配置を、前縁21と後縁22とを結ぶ直線である翼弦に沿わせるか否かは、翼型の形状に応じて適宜決定し得た設計的な事項にすぎない。
そして、引用文献2記載事項は「タービン動翼において、タービン動翼30の内部の半径方向に延在する複数の冷却孔34、36をプリナム44まで延在し、前縁38から後縁40に亘って配置すること。」というものであり、引用文献3記載事項は「ガスタービン動翼において、半径方向に貫通した冷却孔5、6を前縁から後縁に亘って配置すること。」であるところ、これらの記載事項によれば、ガスタービン動翼において、冷却を目的としてガスタービン動翼の内部に複数の冷却孔、つまり冷却通路を備えることは、当業者にとって、本願優先日前の周知技術(以下「周知技術」という。)であり、その採否は当業者が適宜決定し得た事項であったといえる。
してみると、引用発明において、上記周知技術を考慮し、冷却空気を流すための構造物である、コルゲーション24に代えて、複数の冷却通路を、前縁から後縁にわたって、当該冷却通路の出口からの冷却空気が、先端キャップ25を冷却するための衝突噴流をなすように、翼弦長に沿って配置するように、その構成を変更することは当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用発明の排気口35は、先端キャップ25と後縁22によって形成された角部に位置するよう設けられているが、先端キャップ25は前縁21から後縁22の短い点まで延びているものであり、当該前縁21から後縁22との間に画定される翼弦長を想定すると、排気口35は翼弦長の最後の1/3の範囲内に備えられているということができ、また、前記翼弦長の最初の2つの1/3の範囲内には排気口が設けられていないことから、相違点2は実質的な相違点とはいえない。

(3)効果について
本件補正発明が奏する効果、特に、本件補正発明において、プレナム(64)内に配置される複数の冷却通路の出口(60)に関して、複数の冷却通路(56)の前記出口(60)からの前記冷却流体流が、前記先端面を冷却するための衝突噴流を成すように、前記翼弦長に沿って配置されることが奏する作用効果については、本願明細書の発明の詳細な説明には、特段の記載もないところ、本件補正発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものでない。

(4)審判請求書における主張について
審判請求人は、令和2年8月14日の審判請求書において、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし3に対して、以下の主張をしている。

〔主張〕
「引用文献2は、図7、8に示される位置に排出開口35、36を設けることを開示します。しかし、引用文献2は、図1に示される2つのinner shells 11の両側にvertical corrugations 24を配置しており、先端面へのインピジメント冷却を行うことができません。引用文献2は、主流路への冷却流の排出を良好に行うことができるかもしれませんが、先端面へのインピジメント冷却を行いませんので、引用文献1と同様に先端面への有効な冷却を行うことができません。
引用文献3もプレナムの低制圧領域のみに出口孔を配置することと先端面へのインピジメント冷却の組み合わせを開示せず、先端面への有効な冷却を行うことができません。
プレナムの低静圧領域にのみ出口孔を配置することと先端面へのインピジメント冷却のそれぞれは公知かもしれませんが、閉鎖されたプレナムの先端面へのインピンジメント冷却の高い冷却効果を得る一方で発生する冷却流の圧力降下をプレナムの低静圧領域にのみ出口孔を配置することで圧力降下した冷却流を有効に排出でき、プレナムの先端面への有効な冷却が初めて可能になります。
かかる作用効果を考慮すると引用文献2を引用文献1に組み合わせることや引用文献1を引用文献2に組み合わせることは、当業者にとって困難であったことを示していると思料いたします。」

以下、上記主張について検討する。
上記(1)でも示したように、引用発明について、図7を参照すると、冷却空気はコルゲーション24によって運ばれ、先端キャップ25において流路を変えた後、後縁22に形成された排気口35より排出されることが看取される。そうすると、冷却空気は先端キャップ25に衝突していることは自明であり、引用発明は先端キャップ25に対してインピジメント冷却を行っているということができるし、仮にそうでないとしてもインピジメント冷却は本願優先日前に公知ないし周知の事項にすぎず、引用発明におけるコルゲーション24の出口の配置をインピジメント冷却をなし得る配置とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
そして、引用発明は、閉鎖された先端キャップ25へのインピンジメント冷却を行うとともに、プレナムチャンバの低静止圧領域である排出口35から冷却空気を排出する構造を備えているといえ、上記請求人の主張は当を得ていない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正(令和2年8月14日にされた手続補正)は、上記の通り却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和2年2月18日の手続補正により補正がされた請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献等 2、1、3
引用文献2には、冷却通路が波形の板で形成されることが記載されているが(第2欄第16行-第3欄第21行、図2-3、7-8)、複数の冷却通路を有する構成は、引用文献1(図2)、引用文献3(第1図)に記載されるように本願優先日前周知であり、引用文献2記載の発明の冷却通路を上記本願優先日前周知な構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用文献2は、キャップ25、26を有することから、先端部にプレナムを備え、冷却通路の出口はプレナム内に配置されている(図7-8)。
また、引用文献2には、出口孔は後端の近傍にあることが記載されているから(図7-8、10)、出口孔は翼弦長の最後の1/3の範囲内に含まれる。
したがって、請求項1に係る発明は、引用文献2記載の発明、及び、周知技術から当業者が容易に想到し得たものである。

・請求項2-10
・引用文献等 2、1、3
請求項2-10に係る発明は、引用文献2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2000-291405号公報
2.米国特許第3057597号明細書
3.特開平2-33402号公報

3 引用文献
原査定の引用文献1の記載事項等は、上記「第2〔理由〕2(2)引用文献2」で示したとおりであり、原査定の引用文献2の記載事項等は、上記「第2〔理由〕2(1)引用文献1」で示したとおりであり、原査定の引用文献3の記載事項等は、上記「第2〔理由〕2(3)引用文献3」で示したとおりである。

4 判断
本件補正発明は、上記「第2〔理由〕1」で示したとおり、本願発明における「タービンバケット」について、「前記プレナムは、該プレナムの外周の周り及び該プレナムの先端面において完全に取り囲まれており、前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)は、前記複数の冷却通路(56)の前記出口(60)からの前記冷却流体流が、前記先端面を冷却するための衝突噴流を成すように、前記翼弦長に沿って配置され」との限定を付したものであるから、本願発明の発明特定事項をすべて含んでいる。
そして、本願発明の発明特定事項をすべて含んでいる本件補正発明が、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-02 
結審通知日 2021-03-05 
審決日 2021-03-25 
出願番号 特願2015-166314(P2015-166314)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 彬小林 勝広  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 北村 英隆
高島 壮基
発明の名称 タービンバケット  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
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