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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1377113
審判番号 不服2020-10763  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-03 
確定日 2021-08-31 
事件の表示 特願2019-224021「情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 6月17日出願公開、特開2021- 93035、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年12月11日を出願日とする出願であって、令和2年3月3日付けで拒絶理由が通知され、同年4月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、同年10月26日に前置報告がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年6月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1-8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2017-16354号公報
2.特開2018-156295号公報(周知技術を示す文献)

第3 本件補正について
本件補正は、請求項1、6に、予測の際に参照する価格として「前記第1の住戸および前記第2の住戸の各々の前記予測対象時以前における中古販売の成約価格」を追加する補正であって、「前記第1の住戸および前記第2の住戸の各々の前記予測対象時以前における中古販売の成約価格」を参照して予測することは、当初明細書の段落【0062】に記載されているから、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項及び同第4項に規定する要件に違反するものではない。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-8に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、本願発明1は、以下のとおりである。

「共同住宅に含まれる住戸を特定する入力情報を取得する入力情報取得部と、
予測モデルを用いて、前記入力情報が示す住戸の中古販売の成約が想定される予測対象時における予測価格を予測する予測部と、
を備え、
前記予測モデルは、
前記共同住宅に含まれる第1の住戸の前記予測価格と、前記共同住宅において前記第1の住戸に類似する第2の住戸の前記予測価格とを、
前記共同住宅を示す共同住宅情報と、前記第1の住戸および前記第2の住戸の各々の前記予測対象時以前における中古販売の成約価格とを参照して、前記第1の住戸の新築価格と、前記第2の住戸の新築価格との大小関係を維持して予測するよう学習されている、
ことを特徴とする情報処理装置。」

本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、本願発明1における予測モデルの学習を行う学習部を備えた情報処理装置に関する発明である。
本願発明7は、本願発明1に対応する情報処理方法の発明である。
本願発明8は、本願発明1?6の情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該情報処理装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムの発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載されている事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2017-16354号公報(平成29年1月19日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。下線は、注目箇所に当審が付与した。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション等の集合住宅における不動産物件の中古販売価格を算定するためのシステム、同システムの動作方法および同システムを動作させるためのプログラムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
不動産の中古物件を取引する際、当該物件の販売価格を算定するにあたっては不動産業者や不動産鑑定士などの専門家に取引価格の参考値の値づけを依頼するのが通常である。不動産業者らは自らの知見に基づいて妥当と思われる価格を算定算出し、不動産物件の所有者もしくは取得希望者に対して提示する。
ここで上記専門家による取引価格の参考値の値付けは、その経験やノウハウなど主観的要素によりなされることもあり、その算定方法が不明確なため取引当事者双方にとり適正な取引価格であるのかについての信頼性が十分でないことがあった。そのため取引の信頼性を高めるべく、取引価格の算定方法を客観的にすることで算定算出された取引価格の適正を担保する技術がこれまで知られてきた。具体的には、特許文献1に、過去のある不動産物件の取引事例に基づき、当該取引事例の対象物件の情報(広さや周辺環境等)と取引対象となる不動産物件の情報とを比較することで当該不動産物件の推定取引価格を算定する方法が記載されている。また特許文献2には、不動産物件の分譲価格に修繕履歴や法定耐用年数などの情報を修正要素として用いることで推定取引価格を算出する技術が開示されている。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこれらの技術はいずれも、部屋の広さや周辺環境、修繕履歴や築年数などの情報を数値化して評価可能としている点において情報の客観化を図っているものの、これらの情報をどのように数値化するかという点においてやはり評価者の恣意的・主観的な判断が含まれる点において従来技術の抱える課題を克服できてはいなかった。そのため、これらの従来技術を用いたとしても、不動産所有者あるいは購買希望者が心から信頼できる不動産物件の取引価格を算出し提示できているとは言い難かった。」

「【発明の効果】
【0006】
主に上記のような構成をとる本発明を採用することによって、集合住宅における不動産物件の中古販売価格を算定するルールを客観的に示すことが可能になり、よって不動産取引を行う当事者にとり当該透明性の優れた算定ルールに基づいて算定された信頼性の高い取引価格を提示することが可能になる。」

「【0026】
(算定ルールのバリエーションその3)
また、算定ルールbとは別に、算定住戸と同じ間取りの売約済住戸のデータベースからの選択を算定ルールの内容としてもよい(算定ルールc)。例えばファミリー層の間で4LDKの住戸物件に人気が集まってきているような場合、4LDKの住戸物件の中古販売価格は他の間取りの住戸物件の中古販売価格に比べ高い上昇傾向を示す。そしてそのような傾向があることを前提として4LDKの住戸を算定住戸とする場合、算定ルールcを適用すると、仮に直近で2LDKの住戸について中古取引が行われたとしても、当該住戸ではなく、それ以前に中古取引が行われた4LDKの住戸物件を売約済住戸として選択する。なお該当する同じ間取りの売約済住戸が複数ある場合には、最も直近に中古取引が行われた4LDKの物件を売約済住戸として選択する。
【0027】
同じ間取りかどうかは、算定ルール適用対象情報に含まれる間取りの情報を取得して判断する。図4に示した例の場合であれば、売約済住戸のうち算定住戸である1702号室と同じ2LDKである1802号室と1902号室がまず抽出され、そのうち最も直近で取引が行われた1802号室が算定に用いる売約済住戸として選択される。その後は先ほどの[式1]を用いて具体的な算定を行う。なお間取に代えて各住戸の広さや見晴らし、騒音の有無及び程度、周辺公共施設、日当たり、日照時間、配置位置、その他各住戸の属性の一部が一致する物件を売約済住戸として採用してもよい。」

「【0044】
<具体的な構成>
図9は、本実施形態の中古販売価格算定システムを一の装置にて実現した場合の機能的な各構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図である。これらの図を利用して、それぞれのハードウェア構成部の働きについて説明する。中古販売価格算定システムは、各種演算処理を実行するための「CPU」0901と、「記憶装置(記憶媒体)」0902と、「メインメモリ」0903と、「入力インターフェース」0904と、「出力インターフェース」0905と、「ネットワークインターフェース」0906と、を備え、入出力インターフェースを介して、例えば「タッチパネル」0914や「スキャナ」0924、「ディスプレイ」0915や算定結果レポートや利用登録のための識別情報を出力するための「プリンタ」0925と、また、ネットワークインターフェースを介して算定住戸の所有者の管理する端末である「所有者端末」0916や不動産事業者等の管理する端末である「外部端末」0926などの外部周辺装置と情報の送受信を行う。なお、記憶装置には以下で説明するような各種プログラムが格納されており、CPUはこれら各種プログラムをメインメモリのワーク領域内に読み出して展開、実行する。なお、これらの構成は、「システムバス」0907などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0045】
(算定ルール保持部の具体的な構成)
算定ルール保持部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、特にコンピュータの記憶領域に算定住戸の中古販売価格又は/及び中古販売価格の坪単価を計算するためのルールが算定住戸の新築時売出価格又は/及び売出価格の坪単価と、算定集合住宅における算定住戸以外の住戸である売約済住戸の新築時売出価格又は/及び売出価格の坪単価と、前記売約済住戸の中古売買価格又は/及び中古売買価格の坪単価とを関連付け可能に格納されている。この記憶領域は不揮発性メモリであるハードディスクやメインメモリである。これら関連付け可能とされる情報については、記憶領域にデータベースを構築することで算定ルールと関連付けられデータベースを構築することで算定ルール保持部を構成することになる。
【0046】
(算定部の具体的な構成)
コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「算定プログラム」0920をメインメモリに読み出して実行し、メインメモリに格納されている算定ルールを読み出すとともに、売約済住戸の新築時売出価格と算定住戸の新築時売出価格の関係と、前記売約済住戸の中古売買価格の各情報を読み出して算定住戸の中古販売価格を算定し、当該算定結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0047】
なお、算定ルール保持部にて複数の算定ルールを保持している場合には、算定プログラムの実行に際して算定ルール選択サブプログラムを実行し、読みだされた算定ルールのなかから一又は複数の算定ルールを選択し、選択した算定ルールを用いて算定住戸の中古販売価格を算定し、算定結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0048】
<処理の流れ>
図10は、本実施形態の中古販売価格算定システムにおける処理の流れの一例を示す図である。まずステップS1001では、算定住戸の中古販売価格を算定するかどうかを判断し、算定するとの判断結果である場合にのみステップS1002に移行する。算定しないとの判断結果であれば、その後の処理は行わない。ステップS1002では、算定集合住宅を識別するマンションIDを入力し、続いてステップS1003にて算定住戸の住戸IDを入力する。その後ステップS1004では算定住戸の新築時売出価格を取得する。ここでは図5を用いて説明したように、あらかじめデータベースに記録格納された算定住戸の新築時売出価格を読み出して取得する構成が考えられる。
次にステップS1005では同一算定住戸内の住戸のなかに売約済住戸があるか否かを判断する処理を行う。具体的には、図5に示されているように、各住戸と関連付けられて格納されている情報のうち中古取引IDが記録されている住戸があるかどうかを判断する。ここで中古取引IDが記録されている住戸がある、すなわち売約済住戸があるとの判断結果が出た場合にはステップS1006に移行し、そうでない場合にはその後の処理を行わない。
ステップS1006では中古取引実績のある住戸(売約済住戸)の住戸IDを取得する。このとき、該当する売約済住戸の住戸IDが複数ある場合には、最も中古取引年月日が新しい中古取引が行われた住戸IDを取得することが考えられる。そのような構成を採用すれば、後記算定ルールを適用する際に、直近の不動産取引市場の状況を反映させることができる。いっぽう、複数ある住戸IDのうち、所定期間(例えば過去1年)内に中古販売が行われた住戸の住戸IDを全て取得する構成にしてもよい。そのような構成を採用すれば、算定集合住宅をめぐる中古取引全体の傾向を踏まえて算定ルールを適用することができる。
ステップS1007では、ステップS1006で取得した住戸IDと関連付けられた新築時売出価格及び中古販売価格を取得し、ステップS1008では算定ルールを取得する。このとき複数の算定ルールを保持している場合には、そのなかから一又は複数の算定ルールを選択して取得する。なお算定ルールの取得はステップS1008以前であればどの段階であってもよい。
ステップS1009では、取得した算定ルールに基づいて算定住戸の中古販売価格を算定する。ここでステップS1006で複数の住戸IDを取得しステップS1007で複数の新築時売出価格および中古販売価格を取得している場合には、当該価格のそれぞれの平均値を算出し、その算出された平均値を用いて算定住戸の中古販売価格を算定することが考えられる。そしてステップS1010では算定した中古販売価格を出力する。ステップS1011では引き続き中古販売価格の算定を行うか否かを判断し、行うとの判断結果である場合にはステップS1003以降の処理に移行する。行わないとの判断結果であればその後の処理は行わない。」

「【0053】
なお、本実施形態において中古販売価格を算定する場合は、売出価格比「を用いて」いればよく、これは売出価格比「により」中古販売価格を算定する場合と区別される。すなわち、売出価格比を用いていれば、さらにこの値に所定の係数(例えばk)を乗じたり、所定数(例えばα)を加除したりする算定処理を対比ルールの内容としてもよい。ここで売約済住戸の新築時売出価格をA1、算定住戸の新築時売出価格をA2とし、売約済住戸の中古販売価格をB1、算定住戸の中古販売価格をB2とすると、B2を算定するための対比ルールの一例は以下の数式のように表わすことが可能である。
【0054】
[式2]

【0055】
上記[式2]について、通常は係数kは1であり加除すべき所定数αはゼロである。ただし、不動産取引市場の相場が急激に変動しているような場合にはkに具体的な数値を代入することがある。また、算定住戸及び/又は売約済住戸特有の取引材料(備えつけの家具の有無、リフォームの必要性の有無等)がある場合などには所定数αを加除する。」

「【0078】
「時期ルール保持手段」1511は、時期情報取得手段が取得した時期情報を用いて算定住戸の中古販売価格又は/及び中古販売価格の坪単価を算定するルールである時期ルールを保持するように構成されている。時期ルールの内容として時期情報を用いてどのように算定住戸の中古販売価格を算定するのかについては例えば、国土交通省が毎月発表する不動産価格指数を用いることが考えられる。すなわち、売約済住戸の中古販売価格と、公開された不動産販売価格に関する指数または指標を用いて売約済住戸の現在時点において想定される販売価格である想定販売価格を算出し、算出された想定販売価格と、売約済住戸の新築時売出価格と算定住戸の新築時売出価格の関係とに基づいて算定住戸の中古販売価格を算定することが考えられる。不動産価格指数とは、所定のスクリーニング処理を施したうえで取得した毎月の不動産価格の情報を、前年同月における不動産価格の情報と比較して指数化したものである。
【0079】
より具体的には、前年同月における不動産価格をもとに算出される不動産価格指数を用いてひと月ごとの指数を算出し(以下、この指数のことを「月単位価格指数」という)、当該月単位価格指数を用いて算定月(現在時点)における想定販売価格を算定する。例えば、算定月、すなわち現在時点が属する月に取得した不動産価格指数が97.6(前年比マイナス2.4%の価格下落を意味する)とされた場合には、この値をひと月あたり換算((97.6-100)÷12)した値であるマイナス0.2を月単位価格指数とする。この値はつまり、月あたり0.2%の価格下落を意味している。
その後は想定販売価格を用いて実施形態1または2で説明したような算定ルールに基づき算定住戸の中古販売価格を算定する。上記指数または指標は当該指数等が公開される所定のタイミングで取得され、更新されることが望ましい。当該構成を採用することにより、中古売買取引がおこなわれてから現時点までの間一定期間が経過していたとしても、当該期間に伴う不動産価格の変動を客観的な情報を用いて考慮したうえで算定住戸の中古販売価格を算定することが可能になる。」

「【0081】
以上の一例について図16を用いて詳しく説明する。同図も図9を用いて行った説明と同様、売約済住戸である1802号室の新築時売出価格と算定住戸である1702号室の新築時売出価格との割合をもとに1702号室の中古販売価格を算定するためのグラフである。
同図のうち(a)には売約済住戸である1802号室の新築時売出価格(A1、5530万円)と売約時(2014年9月)における中古売買価格(B1、5200万円)、そして売約の3か月後の現在時点(2014年12月と仮定)における想定販売価格(B´1)とが示されている。想定販売価格は、中古販売価格に対し、前記月単位価格指数(Vとする)に売約時から現在時点までの経過月数(mとする)を乗算した割合だけ増減した価格であり以下の式のように表すことができる。
【0082】
[式3]

【0083】
そして上記例において算出された月単位価格指数(V=マイナス0.2)を[式2]に代入すると、B´1は、5200万円×(1-0.2×3/100)=5168.8万円と算定される。
【0084】
次に図16のうち(b)は算定住戸である1702号室の新築時売出価格(A2、5380万円)が示されている。同グラフにおいては、図16(a)で算出された想定販売価格B´1を用いて算定住戸の中古販売価格B2を算定する。なお、ここで時期ルールは、対比ルールとの比較において、売約済住戸の中古販売価格(B1)に代えて売約済住戸の現在時点における想定販売価格(B´1)を用いる。すなわち以下の式を用いる。
【0085】
[式4]

【0086】
この[式3]にこれまでの例で挙げた各値を代入することで算定住戸の中古販売価格を算定する。このときk=1、α=ゼロであれば、5380万円/5530万円×5168.8万円≒5028.60万円が算定住戸の中古販売価格として算定される。


「【図4】



「【図9】


「【図10】



「【図16】



(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の摘記事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されている。
ア 引用文献1に記載の技術は、マンション等の集合住宅における不動産物件の中古販売価格を算定するためのシステムであって(【0001】)、従来は、専門家による取引価格の参考値の値付けが、その経験やノウハウなど主観的要素によりなされることもあり、その算定方法が不明確なため取引当事者双方にとり適正な取引価格であるのかについての信頼性が十分でないという問題、部屋の広さや周辺環境、修繕履歴や築年数などの情報を数値化して評価可能として情報の客観化を図っても、これらの情報をどのように情報化するかという点において評価者の恣意的・主観的な判断が含まれるという問題、不動産所有者あるいは購買希望者が心から信頼できる不動産物件の取引価格を算出し提示できるとは言い難かったという問題を、客観的に示すことが可能な算定ルールに基づいて集合住宅における不動産物件の中古販売価格を算定する中古販売価格算定システムを提案することによって解決することを目的としたものである(【0002】、【0004】、【0006】)。
してみると、引用文献1に記載の中古販売価格算定システムは、算定ルールに基づいて集合住宅における不動産物件の中古販売価格を算定する中古販売価格算定システムである。

イ 引用文献1に記載の中古販売価格算定システムは、Aマンション内の算定住戸1702号室と、同じAマンション内で同じ間取りの売約済住戸1802号室を算定に用いる売約済住戸として選択する(【0026】、【0027】、図4)。

ウ 引用文献1に記載の中古販売価格算定システムの算定部の具体的な構成は、CPU0901、記憶装置0902及びメインメモリ0903を備え(【0044】、図9)、前記CPU0901は、記憶装置から算定プログラムをメインメモリに読み出して実行し、メインメモリに格納されている算定ルールを読み出すとともに、売約済住戸の新築時売出価格と算定住戸の新築時売出価格の関係と、前記売約済住戸の中古販売価格の各情報を読み出して算定住戸の中古販売価格を算定するものである(【0046】)。
してみると、引用文献1には、算定ルールを用いて、算定住戸の中古販売価格を算定する算定部が記載されている。

エ 引用文献1に記載の中古販売価格算定システムは、入力インターフェース0904、ネットワークインターフェース0906を備え(【0044】、図9)、算定集合住宅を識別するマンションIDを入力し(ステップS1002)、続いて算定住戸の住戸IDを入力し(ステップS1003)、その後算定住戸の新築時売出価格を取得し(ステップS1004)、次に同一算定住戸内の住戸のなかに売約済住戸があるか否かを判断し(ステップS1005)、売約済住戸があるとの判断結果が出た場合には、中古取引実績のある住戸(売約済住戸)の住戸IDを取得し(ステップS1006)、ステップS1006で取得した住戸IDと関連付けられた新築時売出価格及び中古販売価格を取得し(ステップS1007)、算定ルールを取得し(ステップS1008)、取得した算定ルールに基づいて算定住戸の中古販売価格を算定する(ステップS1009)(【0048】、図10)。
ここで、前記入力インターフェース0904や前記ネットワークインターフェース0906は、入出力インターフェースを介して、例えば「タッチパネル」0914と、また、ネットワークインターフェースを介して算定住戸の所有者の管理する端末である「所有者端末」0916や不動産事業者等の管理する端末である「外部端末」0926などの外部周辺装置と情報の送受信を行うのであるから(【0044】)、前記中古販売価格算定システムに対する前記マンションID及び前記住戸IDの入力は、前記入力インターフェース0904や前記ネットワークインターフェース0906を介して行われる。
また、同じマンションは、同じマンションIDを付与されるから、上記イの算定住戸1702号室と売約済住戸1802号室とは、同じ算定集合住宅内にある。

オ 引用文献1に記載の中古販売価格算定システムは、時期ルールに基づいて、売約済住戸の中古販売価格と、公開された不動産販売価格に関する指数または指標を用いて売約済住戸の現在時点において想定される販売価格である想定販売価格を算出し、その後、当該想定販売価格を用いて、算定ルールに基づき算定住戸の中古販売価格を算定する(【0078】、【0079】)。
してみると、引用文献1の前記想定販売価格は、前記売約済住戸の売約された時の中古販売価格と、公開された不動産販売価格に関する指数を用いる時期ルールに基づいて算出する。

カ 引用文献1に記載の中古販売価格算定システムの算定ルールは、売約済住戸1802号室の新築時売出価格をA1、売約された時の中古販売価格をB1、売約の後の現在時点における想定販売価格をB´1、前年同月における不動産価格をもとに算出される不動産価格指数を用いて算出されたひと月ごとの指数である月単位価格指数をV、売約時から現在時点までの経過月数をmとしたとき、前記想定販売価格B´1は、
[式3]

で表され(【0081】、【0082】、図16(a))、通常は1であるが、不動産取引市場の相場が急激に変動しているような場合に具体的な数値を代入することがある係数をk、算定住戸及び/又は売約済住戸特有の取引材料(備えつけの家具の有無、リフォームの必要性の有無等)がある場合などに加除する所定数をα(【0053】、【0055】)、算定住戸1702号室の新築時売出価格をA2、現在時点における中古販売価格をB2としたとき、前記中古販売価格B2は、
[式4]

で表される(【0084】、【0085】、図16(b))。
ここで、式3及び図16(a)によれば、売約済住戸1802号室の現在時点における想定販売価格B´1は、売約された時の中古販売価格B1を参照して算定する。
また、式4及び図16(b)によれば、算定住戸1702号室の現在時点における中古販売価格B2は、算定住戸1702号室の新築時売出価格A2と売約済住戸1802号室の新築時売出価格A1との比を係数として売約済住戸1802号室の現在時点における想定販売価格B´1に比例して算定されることから、算定住戸1702号室の現在時点における中古販売価格B2と売約済住戸1802号室の現在時点における想定販売価格B´1とは、算定住戸1702号室の新築時売出価格と売約済住戸1802号室の新築時売出価格との大小関係を維持して算定する。

上記ア?カを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「算定ルールに基づいて集合住宅における不動産物件の中古販売価格を算定する中古販売価格算定システムであって、
算定ルールを保持する算定ルール保持部と、
保持されている算定ルールに基づいて、算定住戸1702号室の現在時点の中古販売価格B2を算定する算定部と、
算定集合住宅を識別するマンションID及び前記算定集合住宅に含まれる算定住戸の住戸IDを入力することを介する入力インターフェース0904やネットワークインターフェース0906と、
を備え、
前記算定部は、
前記算定住戸1702号室の前記現在時点における前記中古販売価格B2を、前記算定集合住宅内の前記算定住戸と同じ間取りで選択した売約済住戸1802号室について、前記売約済住戸1802号室の売約された時の中古販売価格B1と公開された不動産販売価格に関する指数Vとを用いる時期ルールに基づいて算出された前記現在時点における想定販売価格B´1に対して、前記算定住戸1702号室の新築時売出価格A2と前記売約済住戸1802号室の新築時売出価格A1との大小関係を維持して算定する
中古販売価格算定システム。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2に記載されている事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2018-156295号公報(平成30年10月4日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【背景技術】
【0002】
従来、インターネットを介した情報提供サービスの技術が知られている。このような情報提供サービスの一例として、販売や賃貸等の取引対象となる不動産の不動産情報を提供するサービスが知られている。例えば、このような不動産情報を提供するサービスとして、自己資金に関する情報と、融資額に関する情報とに基づいて、購入可能な物件の検索を行う技術が知られている。」

「【0023】
また、情報検索装置100は、利用者Uが物件を所有している場合は、物件を売却した際の価格を物件価格として推定する。例えば、情報検索装置100は、物件の検索サイト等、物件広告を提供する機能を有するとともに、各物件の立地、間取り、広さ、築年数、リフォームの有無等、各種物件に関する情報と物件の売却価格との関係性を所定の学習モデルに学習させる。そして、情報検索装置100は、学習モデルを用いて、利用者Uが有する物件に関する各種の情報に基づいて、利用者Uが有する物件の価格を推定する。なお、情報検索装置100が物件の価格を予測する技術については、任意かつ周知の価格予測技術が適用可能であるものとし、以下の説明を省略する。」

(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)の摘記事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されている。
「不動産情報を提供するサービスにおいて、各物件の立地、間取り、広さ、築年数、リフォームの有無等、各種物件に関する情報と物件の売却価格との関係性を所定の学習モデルに学習させ、当該学習モデルを用いて、利用者が有する物件に関する各種の情報に基づいて、利用者が有する物件の価格を推定すること。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3に記載されている事項
前置報告書において、周知技術を示す文献として引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特許第6548805号公報(令和元年7月24日発行。以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、不動産物件に関する情報を処理する物件情報処理装置等に関するものである。」

「【0034】
物件情報格納部111は、1または2以上の物件情報が格納される。物件情報は、不動産物件に関する情報である。不動産は、例えば、マンション、アパート等の集合住宅、戸建て等である。不動産は、中古でも良いし、新築でも良い。
【0035】
物件情報は、通常、2以上の属性値を有する。2以上の各属性値は、通常、不動産物件に関する属性値であり、不動産物件のデータ等である。2以上の属性値は、物件の所有者の属性値である所有者属性値を有しても良い。所有者属性値は、例えば、年収を特定する年収情報、所有者の所得税を特定する所得税情報、所有者の住民税を特定する住民税情報である。年収情報は、例えば、年収そのもの、または年収のランクと示す情報である。所得税情報は、例えば、所得税そのもの、または所得税のランクと示す情報である。所得税情報は、例えば、所得税そのもの、または所得税のランクと示す情報である。物件情報は、物件の位置を特定する位置情報を有しても良い。位置情報は、例えば、(緯度,経度)、特定され得る区域の中の相対的な位置を示す情報、または住所である。また、物件情報は、物件を含む集合住宅の中の相対的な配置を特定する配置情報を有しても良い。配置情報は、例えば、部屋番号、階数と部屋番号、建物の図面の中の相対的な位置を示す情報(例えば、1以上の座標値)である。物件情報は、例えば、物件を識別する物件識別子を有する。物件識別子は、例えば、ID、住所、電話番号等であり、物件を識別する情報であれば何でも良い。なお、物件情報に含まれる2以上の各属性値の取得方法は問わない。
【0036】
物件情報が有する2以上の属性値は、例えば、物件の種類を示す種類情報を含む。種類情報は、例えば、中古住宅を示す情報(例えば、「中古」)、または新築物件を示す情報(例えば、「新築」)である。
【0037】
物件情報が有する2以上の属性値は、例えば、住宅種類情報を含む。住宅種類情報は、住宅の構成の種類を示す情報である。住宅種類情報は、例えば、集合住宅を示す情報、または戸建て住宅を示す情報である。また、種類情報は、例えば、マンション、戸建て等のうちのいずれかを示す情報でも良い。また、種類情報は、例えば、マンション、アパート、戸建て等のうちのいずれかを示す情報でも良い。
【0038】
物件情報が有する2以上の属性値は、例えば、売出価格情報、成約価格情報、査定価格情報、割安感情報、定期期間賃料情報、空室率情報、表面利回情報、儲かり確率情報、値下率情報、築年数情報、物件中古値上率情報、補正後物件中古値上率情報、補正後駅中古値上率情報、補正後行政区中古値上率情報、補正後物件中古値上率前年度比情報、補正後駅中古値上率前年度比情報、補正後行政区中古値上率前年度比情報、将来換算含み益情報、住戸比較割安感情報、物件価格前年度比情報、駅前年度比情報、行政区前年度比情報、平均下落率情報、駅平均下落率情報、行政区平均下落率情報、ローン減少情報のうちの1または2以上の情報を含む。
【0039】
売出価格情報は、売り出し価格を特定する情報である。売出価格情報は、例えば、売出価格そのもの、売出価格をランク分けした情報(例えば、1000万円台、5000万円台、5500万円?5000万円など)である。売出価格情報は、例えば、受付部12が図示しない外部のサーバから受信した情報、またはユーザが入力し、受付部12が受け付けた情報である。
【0040】
成約価格情報は、成約価格を特定する情報である。成約価格情報は、例えば、成約価格そのもの、成約価格をランク分けした情報(例えば、1500万円台、6000万円台、3500万円?3800万円など)である。成約価格情報は、例えば、受付部12が図示しない外部のサーバから受信した情報、またはユーザが入力し、受付部12が受け付けた情報である。
【0041】
査定価格情報は、査定価格を特定する情報である。査定価格情報は、例えば、査定価格そのもの、査定価格をランク分けした情報(例えば、2000万円台、6800万円台、2500万円?3000万円など)である。また、査定価格情報は、例えば、図示しない外部のサーバから受信した情報、またはユーザが入力し、受付部12が受け付けた情報である。査定価格情報は、例えば、処理部13が1以上の属性値を用いて取得した価格である。処理部13は、例えば、売出価格情報、定期期間賃料情報、表面利回情報、儲かり確率情報、物件中古値上率情報、補正後物件中古値上率情報、補正後駅中古値上率情報、補正後行政区中古値上率情報、補正後物件中古値上率前年度比情報、補正後駅中古値上率前年度比情報、補正後行政区中古値上率前年度比情報、将来換算含み益情報、住戸比較割安感情報、物件価格前年度比情報、駅前年度比情報、行政区前年度比情報のうち1以上の属性値をパラメータとする増加関数により算出し査定価格情報を取得する。なお、処理部13は、査定価格を自動算出する技術として、特許文献1等に記載されているような公知技術を用いることができる。
【0042】
また、処理部13は、例えば、物件情報が有する2以上の属性値を用いて構成されるベクトルに最も近いベクトルと対になる査定価格情報を対応表から取得しても良い。かかる場合、対応表は、2以上の属性値を用いて構成されるベクトルと査定価格情報との対である2以上の対応情報を有するテーブルである。また、この対応表および後述する対応表は、例えば、格納部11に格納されている、とする。
【0043】
また、処理部13は、例えば、物件情報が有する2以上の属性値を用いて構成されるベクトルと査定価格とを機械学習のアルゴリズムにより学習し、学習器を構成し、かかる学習器に、査定対象の物件の物件情報が有する2以上の属性値を用いて構成されたベクトルを機械学習のアルゴリズムにより適用し、査定価格情報を取得する。なお、本処理、および後述する機械学習において、使用するアルゴリズムは問わないことは言うまでもない。機械学習は、例えば、深層学習、SVR、ランダムフォレスト、決定木等が使用可能である。また、機械学習において、学習器を構成するためには、例えば、機械学習の関数(例えば、fasttext、tiny_svm、各種のrandomForest関数等)に、入力となる情報群(例えば、2以上の属性値を用いて構成されたベクトル)と出力させたい情報(例えば、査定価格情報)とを引数として与えると学習器が得られる。また、機械学習において、予測する場合、機械学習の関数に学習器と入力となる情報群(例えば、2以上の属性値を用いて構成されたベクトル)とを引数として与えると、予測された情報(例えば、査定価格情報)が得られる。」

「【0068】
築年数情報は、築年数を特定する情報である。築年数情報は、例えば、築年数、築年数のランクを示す情報(例えば、1年?3年、1年?5年、10年以上など)である。築年数情報は、例えば、図示しないサーバから受信した情報、またはユーザが入力し、受付部12が受け付けた情報である。処理部13が、物件情報が有する建設された年の情報を取得し、図示しない時計から現在を特定する情報(例えば、年、年月)を取得し、当該2つの情報の差である築年数である築年数情報を取得する。
【0069】
物件中古値上率情報は、不動産物件の新築時からの中古の値上がり率を特定する情報である。物件中古値上率情報は、例えば、中古の値上がり率そのもの、中古の値上がり率のランクを特定する情報である。物件中古値上率情報は、例えば、図示しないサーバから受信した情報、またはユーザが入力し、受付部12が受け付けた情報である。
【0070】
処理部13は、例えば、予め決められた演算式を用いて中古値上がり率を算出しても良い。予め決められた演算式は、例えば、「物件中古値上率=(中古の成約価格-過去に新築分譲されたマンションの住戸別新築時の価格)/中古成約価格」である。
【0071】
補正後物件中古値上率情報は、分譲年で補正した新築時からの中古の値上がり率を特定する情報である。補正後物件中古値上率情報は、例えば、当該値上がり率そのもの、当該値上がり率のランクを特定する情報である。補正後物件中古値上率情報は、例えば、図示しないサーバから受信した情報、またはユーザが入力し、受付部12が受け付けた情報である。なお、処理部13は、例えば、物件の分譲年ごとに、2以上の物件の物件中古値上率情報の平均値を算出し、基準の分譲年の物件中古値上率情報の平均値と、当該物件の分譲年の物件中古値上率情報の平均値との差異を算出し、当該差異を用いて、特定の物件の中古値上率情報を補正して(例えば、差異を加算する、または差異に係数を乗じて加算する等)、当該物件の補正後物件中古値上率情報を算出する。なお、物件中古値上率情報の平均値は、特定の地域(例えば、首都圏、近畿圏)の物件の物件中古値上率情報のみを用いて算出されることは好適である。
【0072】
また、処理部13は、例えば、演算式「補正後物件中古値上率/築年数」を取得し、当該取得した情報を用いた属性値を取得しても良い。かかる属性値は、えば、「補正後物件中古値上率/築年数-2%」である。」

「【0098】
平均下落率情報は、物件価格の単位期間の価格の平均下落率を特定する情報である。平均下落率情報は、例えば、平均下落率そのもの、平均下落率のランクを特定する情報である。平均下落率情報は、例えば、図示しないサーバから受信した情報、またはユーザが入力し、受付部12が受け付けた情報である。
【0099】
処理部13は、例えば、対象となる2以上の各物件の特定期間前の価格と現在の価格とを取得し、当該2つの価格を用いて、下落率を算出し、当該下落率の平均値を算出する。なお、対象となる2以上の各物件の範囲は、例えば、同一のマンション内であるが、その範囲は問わないとしても良い。

(2)引用文献3に記載された技術的事項
上記(1)の摘記事項から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されている。
「集合住宅等の不動産物件に関する情報を処理する物件情報処理装置において、
物件情報が有する2以上の属性値を用いて構成されるベクトルと査定価格とを機械学習のアルゴリズムにより学習し、学習器を構成し、かかる学習器に、査定対象の物件の物件情報が有する2以上の属性値を用いて構成されたベクトルを機械学習のアルゴリズムにより適用し、査定価格情報を取得し、
前記物件情報が有する前記属性値としては、例えば、物件の位置を特定する位置情報、集合住宅を示す情報、売出価格情報、成約価格情報、査定価格情報、築年数情報、物件中古値上率情報、補正後物件中古値上率情報、平均下落率情報などがあり、
このうち、査定価格情報は、例えば、売出価格情報、定期期間賃料情報、表面利回情報、儲かり確率情報、物件中古値上率情報、補正後物件中古値上率情報、補正後駅中古値上率情報、補正後行政区中古値上率情報、補正後物件中古値上率前年度比情報、補正後駅中古値上率前年度比情報、補正後行政区中古値上率前年度比情報、将来換算含み益情報、住戸比較割安感情報、物件価格前年度比情報、駅前年度比情報、行政区前年度比情報のうち1以上の属性値をパラメータとする増加関数により算出することも可能であり、
物件中古値上率情報は、不動産物件の新築時からの中古の値上がり率を特定する情報であり、
補正後物件中古値上率情報は、物件の分譲年ごとに、2以上の物件の物件中古値上率情報の平均値を算出し、基準の分譲年の物件中古値上率情報の平均値と、当該物件の分譲年の物件中古値上率情報の平均値との差異を算出し、当該差異を用いて、特定の物件の中古値上率情報を補正して(例えば、差異を加算する、または差異に係数を乗じて加算する等)、当該物件の補正後物件中古値上率情報を算出し、
平均下落率情報は、対象となる2以上の各物件の特定期間前の価格と現在の価格とを取得し、当該2つの価格を用いて、下落率を算出し、当該下落率の平均値を算出し、対象となる2以上の各物件の範囲は、例えば、同一のマンション内であるが、その範囲は問わないものである。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明を、以下で対比する。

ア 引用発明の「中古販売価格算定システム」は、算定ルールに基づいて、集合住宅における不動産物件の中古販売価格を算定するものであるから、本願発明1の「共同住宅に含まれる住戸を特定」し、「予測モデルを用いて、前記入力情報が示す住戸の中古販売の成約が想定される予測対象時における予測価格を予測する」「情報処理装置」とは、具体的な処理の内容は別にして、「情報処理装置」という点で共通する。

イ 引用発明の「算定集合住宅を識別するマンションID及び前記算定集合住宅に含まれる算定住戸の住戸IDを入力することを介する入力インターフェース0904やネットワークインターフェース0906」は、算定集合住宅を特定するマンションID及び当該マンションに含まれる住戸を特定する住戸IDを、中古販売価格算定システムに入力することを介するインターフェースであるから、本願発明1における「共同住宅に含まれる住戸を特定する入力情報を取得する入力情報取得部」に相当する。

ウ 引用発明の「前記算定ルールに基づいて、算定住戸1702号室の現在時点の中古販売価格B2を算定する算定部」が行う算定について、上記イでの検討を参照すると、「算定住戸1702号室」は、「入力情報」によって示され、「現在時点の中古販売価格B2」は、算定部により算定されるから、具体的な時点としては異なるものの、本願発明1における「予測対象時における予測価格」と共通する。よって、引用発明における「算定部」が行う「中古販売価格B2の算定」は、具体的な算定手法は異なるものの、本願発明1における「予測部」が行う「予測価格を予測する」ことと共通する。
また、引用発明の「算定ルールに基づいて、」「中古販売価格B2を算定する」ことと、本願発明1の「予測モデルを用いて、」「予測価格を予測する」こととは、モデルが異なるものの、何らかの「予測」によって、「予測価格を予測する」という点で共通する。
してみると、引用発明の「前記算定ルールに基づいて、算定住戸1702号室の現在時点の中古販売価格B2を算定する算定部」と本願発明1の「予測モデルを用いて、前記入力情報が示す住戸の中古販売の成約が想定される予測対象時における予測価格を予測する予測部」とは、前記入力情報が示す住戸の予測対象時における予測価格を予測する予測部という点で共通する。

エ 引用発明における「算定住戸1702号室の前記現在時点における前記中古販売価格B2」は、上記ウで検討したように、具体的な時点としては異なるものの、本願発明1における「前記共同住宅に含まれる第1の住戸の前記予測価格」と共通する。

オ 引用発明における「前記算定集合住宅内の前記算定住戸と同じ間取りで選択した売約済住戸1802号室」は、算定住戸と同じ間取りであるため選択されているから、本願発明1における「前記共同住宅において前記第1の住戸に類似する第2の住戸」に相当する。

カ 引用発明における「前記算定集合住宅内の前記算定住戸と同じ間取りで選択した売約済住戸1802号室について、前記売約済住戸1802号室の売約された時の中古販売価格B1と公開された不動産販売価格に関する指数Vとを用いる時期ルールに基づいて」「前記現在時点における想定販売価格B´1」を「算出」することは、上記ウ及びオでの検討を参照すると、具体的な時点及び具体的な算出方法は異なるものの、本願発明1と「前記共同住宅において前記第1の住戸に類似する第2の住戸の前記予測価格」を「前記第2の住戸の」「前記予測対象時以前における中古販売の成約価格」を「参照して」「予測する」点で共通する。

キ 引用発明における「前記算定住戸1702号室の前記現在時点における中古販売価格B2」を、「前記売約済住戸1802号室の」「想定販売価格B´1に対して、前記算定住戸1702号室の新築時売出価格A2と前記売約済住戸1802号室の新築時売出価格A1との大小関係を維持して算定する」ことは、本願発明1における「第1の住戸の前記予測価格」に関していえば、本願発明1における「第1の住戸の前記予測価格」と「第2の住戸の前記予測価格とを、」「前記第1の住戸の新築価格と、前記第2の住戸の新築価格との大小関係を維持して予測する」ことに相当する。

(2)一致点及び相違点
以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「共同住宅に含まれる住戸を特定する入力情報を取得する入力情報取得部と、
前記入力情報が示す住戸の予測対象時における予測価格を予測する予測部と、
を備え、
前記予測は、
前記共同住宅に含まれる第1の住戸の前記予測価格と、前記共同住宅において前記第1の住戸に類似する第2の住戸の前記予測価格とを、
前記第2の住戸の前記予測対象時以前における中古販売の成約価格を参照して、前記第1の住戸の新築価格と、前記第2の住戸の新築価格との大小関係を維持して予測する、
情報処理装置。」

<相違点1>
「予測部」における「予測価格を予測する」「予測対象時」が、本願発明1では、「前記入力情報が示す住戸の中古販売の成約が想定される」時であるのに対し、引用発明では、「現在時点」である点。

<相違点2>
本願発明1は、「第1の住戸の前記予測価格」と「第2の住戸の前記予測価格」とが、同じ「予測モデル」を用いて予測された価格であるのに対し、引用発明では、算定ルールと時期ルールという異なるルールによって算定された価格である点。

<相違点3>
本願発明1は、「予測部」において、「予測モデル」を用いており、「前記予測モデルは、前記共同住宅に含まれる第1の住戸の前記予測価格と、前記共同住宅において前記第1の住戸に類似する第2の住戸の前記予測価格とを、前記共同住宅を示す共同住宅情報と、前記第1の住戸および前記第2の住戸の各々の前記予測対象時以前における中古販売の成約価格とを参照して、」「予測するよう学習されている」のに対し、引用発明では、予測部において、算定ルールを用いており、前記算定ルールに共同住宅情報を使用しておらず、第1の住戸の予測対象時以前における中古販売の成約価格を参照せず、学習も行わない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点3を先に検討する。

引用文献2には、第4 2(2)に記載されているように「不動産情報を提供するサービスにおいて、各物件の立地、間取り、広さ、築年数、リフォームの有無等、各種物件に関する情報と物件の売却価格との関係性を所定の学習モデルに学習させ、当該学習モデルを用いて、利用者が有する物件に関する各種の情報に基づいて、利用者が有する物件の価格を推定すること。」という技術的事項が記載されており、物件の価格の推定を、本願発明のように、「共同住宅情報」に相当する「各物件の立地」、「築年数」を使用して学習を行った「学習モデル」を用いて行うことは記載されているものの、上記相違点3に係る構成のように、予測モデルが、前記共同住宅に含まれる第1の住戸の前記予測価格と、前記共同住宅において前記第1の住戸に類似する第2の住戸の予測価格とを、前記第1の住戸および前記第2の住戸の各々の前記予測対象時以前における中古販売の成約価格を参照して、予測するよう学習されていることは記載されていない。
引用発明に引用文献2に記載された上記技術事項を組み合わせた場合を検討すると、引用発明の第1の住戸の予測価格を算定する算定ルールに代えて、引用文献2の予測モデルを用いて予測することは想到可能であるが、当該予測モデルは、物件の立地、間取り、広さ、築年数、リフォームの有無等、各種物件に関する情報と物件の売却価格との関係性を学習しているものであるため、本願発明1とは学習に利用する情報が「共同住宅情報」については共通するものの、それ以外の情報について異なる。また、第2の住戸の予測価格を同じ予測モデルを用いて予測することや、学習に第1の住戸の予測対象時以前における中古販売の成約価格を参照することも、引用発明及び引用文献2にはない構成である。したがって、引用発明に引用文献2に記載された上記技術事項を組み合わせたとしても、当業者が本願発明を想到し得たとはいえない。
さらに、引用文献3にも、予測モデルが、前記共同住宅に含まれる第1の住戸の前記予測価格と、前記共同住宅において前記第1の住戸に類似する第2の住戸の予測価格とを、前記第1の住戸および前記第2の住戸の各々の前記予測対象時以前における中古販売の成約価格を参照して、予測するよう学習されていることは記載されていない。
このため、引用文献2及び3の記載を参酌しても、引用発明から相違点3に係る事項を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
そして、当該事項を記載する他の引用文献も発見されない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点1?3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1における予測モデルの学習を行う学習部を備えた情報処理装置に関する発明であり、上記相違点3に係る構成の予測モデルの学習を行う学習部を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明7及び8について
本願発明7及び8は、それぞれ本願発明1に対応する方法及びプログラムの発明であり、本願発明1の相違点1?3に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-8は、第6 1(3)で検討した相違点3に係る「前記第1の住戸および前記第2の住戸の各々の前記予測対象時以前における中古販売の成約価格と」を参照してという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-08-11 
出願番号 特願2019-224021(P2019-224021)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 上田 智志
畑中 高行
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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