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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1377123
審判番号 不服2020-3659  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-17 
確定日 2021-08-11 
事件の表示 特願2018-55130「弾性ベルトを有する着用可能物品」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月2日出願公開、特開2018-118093〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月4日(パリ条約による優先権主張 2014年(平成26年)8月27日 中国)を国際出願日として出願した特願2017-510654号の一部を平成30年3月22日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 4月 2日 :手続補正書(自発)の提出
平成31年 3月18日付け:拒絶理由通知
令和 元年 6月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年11月19日付け:拒絶査定
令和 2年 3月17日 :審判請求書の提出、同時に手続補正書の提出
令和 2年 9月18日付け:審尋
令和 3年 1月26日 :応対記録の作成
令和 3年 2月10日 :面接記録の作成(同日面接)
令和 3年 2月22日 :回答書の提出

第2 令和2年3月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年3月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の請求項1の記載は次のとおりである。なお、本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項3が削除され、請求項4?11がそれぞれ補正後の請求項3?10に繰り上げられた。

「長手方向及び横方向に連続している着用可能物品であって、本体と環状弾性ベルトとを備え、前記環状弾性ベルトが、前側ベルトと後側ベルトとを備え、前記前側ベルトの中心が、前記本体の前側腰部パネルに接合され、前記後側ベルトの中心が、前記本体の後側腰部パネルに接合され、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、前記本体が重ならない左側部パネル及び右側部パネルを有し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横方向縁部がシームのみにより接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、内側シートと、外側シートと、それらの間に挟まれて、実質的に互いに平行に横方向に延びる複数の弾性体と、によって形成される着用可能物品において、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に連続する近位縁部及び遠位縁部を有し、前記近位縁部が前記遠位縁部よりも、前記物品の長手方向の中心に対してより近い位置にあり、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが側縁部を有し、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの前記遠位縁部は、実質的に平行であり、前記後側ベルトの長手方向の長さは、前記前側ベルトの長手方向の長さよりも長く、前記前側ベルトの前記遠位縁部は、前記後側ベルトの前記遠位縁部と整列し、前記前側ベルトの前記近位縁部は、前記後側ベルトの前記近位縁部と整列しておらず、
前記前側ベルトのベルト側縁部の全長が、前記後側ベルトのベルト側縁部のある一定の長さと継ぎ合わされて、シーム長LSを画定し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーンであり、
本明細書に記載のベルトシーム形状測定法による伸張状態において、前記長手方向における前記ベルト側縁部の長さを伸張シーム長LSSとし、前記ベルト側縁部上の第1点を、前記腰部開口部から伸張シーム長LSSの70%の点とし、前記ベルト側縁部上の第2点を前記伸張シーム長LSSの25%の点とし、前記第1点と前記第2点との前記横方向における距離をd値とし、前記第1点が前記第2点に比べて前記前側ベルトの前記横方向の中心のより近くに位置したときに前記d値を正の値とすると、前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている、着用可能物品。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和元年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「長手方向及び横方向に連続している着用可能物品であって、本体と環状弾性ベルトとを備え、前記環状弾性ベルトが、前側ベルトと後側ベルトとを備え、前記前側ベルトの中心が、前記本体の前側腰部パネルに接合され、前記後側ベルトの中心が、前記本体の後側腰部パネルに接合され、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、前記本体が重ならない左側部パネル及び右側部パネルを有し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横方向縁部がシームのみにより接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、内側シートと、外側シートと、それらの間に挟まれて、実質的に互いに平行に横方向に延びる複数の弾性体と、によって形成される着用可能物品において、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に連続する近位縁部及び遠位縁部を有し、前記近位縁部が前記遠位縁部よりも、前記物品の長手方向の中心に対してより近い位置にあり、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが側縁部を有し、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの前記遠位縁部は、実質的に平行であり、前記後側ベルトの長手方向の長さは、前記前側ベルトの長手方向の長さよりも長く、前記前側ベルトの前記遠位縁部は、前記後側ベルトの前記遠位縁部と整列し、前記前側ベルトの前記近位縁部は、前記後側ベルトの前記近位縁部と整列しておらず、
前記前側ベルトのベルト側縁部の全長が、前記後側ベルトのベルト側縁部のある一定の長さと継ぎ合わされて、シーム長LSを画定し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーンであり、
本明細書に記載のベルトシーム形状測定法による伸張状態において、前記長手方向における前記ベルト側縁部の長さを伸張シーム長LSSとし、前記ベルト側縁部上の第1点を、前記腰部開口部から伸張シーム長LSSの70%の点とし、前記ベルト側縁部上の第2点を前記伸張シーム長LSSの25%の点とし、前記第1点と前記第2点との前記横方向における距離をd値とし、前記第1点が前記第2点に比べて前記前側ベルトの前記横方向の中心のより近くに位置したときに前記d値を正の値とすると、前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている、着用可能物品。」

2.補正の適否(新規事項の追加)について
補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かにより、その補正が新規事項を追加する補正であるか否かを判断するものであり、また、補正された事項が、「当初明細書等に明示的に記載された事項」である場合や、当初明細書等に明示的な記載がなくても、「当初明細書等の記載から自明な事項」である場合には、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではないから許されるところ、以下検討する。なお、以下下線は、当審が付した。

(1)本願の当初明細書等の記載事項
本願の当初明細書等には、次の記載がある。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
長手方向及び横方向に連続している着用可能物品であって、本体と環状弾性ベルトとを備え、前記環状弾性ベルトが、前側ベルトと後側ベルトとを備え、前記前側ベルトの中心が、前記本体の前側腰部パネルに接合され、前記後側ベルトの中心が、前記本体の後側腰部パネルに接合され、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、前記本体が重ならない左側部パネル及び右側部パネルを有し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横方向縁部がシームのみにより接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、内側シートと、外側シートと、それらの間に挟まれて、実質的に互いに平行に横方向に延びる複数の弾性体と、によって形成される着用可能物品において、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に連続する近位縁部及び遠位縁部を有し、前記近位縁部が前記遠位縁部よりも、前記物品の長手方向の中心に対してより近い位置にあり、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが側縁部を有し、
前記前側ベルトのベルト側縁部の全長が、前記後側ベルトのベルト側縁部のある一定の長さと継ぎ合わされて、シーム長LSを画定し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーンであり、
前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である、着用可能物品。
【請求項2】
前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力が、前記後側遠位腹部ゾーンの引張り応力より小さい、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力が、前記後側遠位腹部ゾーンの引張り応力の70%以下である、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、前記後側近位腹部ゾーンの引張り応力の150%以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記前側脚部ゾーンの引張り応力が、前記後側脚部ゾーンの引張り応力の80%?200%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記前側腰部ゾーンの引張り応力が、前記後側腰部ゾーンの引張り応力の80%?120%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
本明細書のベルトシーム形状測定法によるd値が、+10mm以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記前側近位腹部ゾーン上に配置された前記弾性体のそれぞれが、540dtex以上の密度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記前側近位腹部ゾーン上の前記弾性体のそれぞれが、250%以上の伸びにおいて配置されている、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
6?18つの弾性体が前記前側近位腹部ゾーン上に配置されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記前側腰部ゾーンの少なくとも3つの弾性体、及び前記後側腰部ゾーンの少なくとも3つの弾性体が、前記サイドシームで位置が一致して腰部バンドの外観を作るように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記腰部ゾーンが、弾性体の間の10?20mmの1つのインターバルを有して指フックを形成する、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記前側脚部ゾーンの少なくとも3つの弾性体、及び前記後側脚部ゾーンの少なくとも3つの弾性体が、前記サイドシームで位置が一致して脚部バンドの外観を作るように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
同一ゾーンの前記前側ベルト及び前記後側ベルト上に配置された前記弾性体の伸び率が、実質的に一致している、請求項1から13のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
前記弾性ベルトには、合計60個以下の弾性体が配置されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
本明細書の物品全体力測定法による腰部周囲力が10N以下である、請求項1から15のいずれか一項に記載の物品。
【請求項17】
前記物品の長手方向の軸線に沿った長さが420mm以上である、請求項1から16のいずれか一項に記載の物品。
【請求項18】
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの前記近位縁部及び前記遠位縁部のそれぞれが実質的に平行であり、前記後側ベルトの長手方向の長さが、前記前側ベルトの長手方向の長さよりも長く、前記前側ベルトの前記遠位縁部が、前記後側ベルトの前記遠位縁部と整列しており、前記前側ベルトの前記近位縁部が、前記後側ベルトの前記近位縁部と整列していない、請求項1から17のいずれか一項に記載の物品。
【請求項19】
前記弾性体のうちの少なくとも1つの弾力性の少なくとも一部が、前記本体の前記前側腰部パネル及び前記後側腰部パネルと重なる領域で取り除かれる、請求項1から18のいずれか一項に記載の物品。」

イ 明細書(発明の詳細な説明)及び図面
「【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の引張り応力プロファイルのゾーンを有する弾性ベルトを有する着用可能物品に関する。」
「【0004】
・・・一体型タイプであるか、ベルトタイプであるかを問わず、できる限り直線のサイドシームを提供することを含む、衣服にほぼ類似した外観のパンツタイプの着用可能物品を提供したいという要望が存在する。一方、人体に、特に36ヶ月未満の年齢の子供の下部胴体に、よりフィットするパンツタイプの着用可能物品を提供することが望まれている。・・・」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の事情により、フィット感、おしり領域のカバー、履き心地、ずり落ち防止、及び漏れの防止などの、バランスの取れた性能を有する、パンツタイプの着用可能物品が必要とされている。そのような着用可能物品を経済的な方法で提供することもまた必要とされている。」
「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、・・・
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記腰部開口部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーンであり、近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である。」
「【発明を実施するための形態】
【0019】
・・・
【0030】
図3を参照すると、前側及び後側ベルト84、86はそれぞれ、横方向に延びる4つのゾーンに分割されている。その4つのゾーンは、遠位縁部88から近位縁部90への間のそれぞれの位置の、シーム長LSのパーセンテージで定義されている。前側ベルト84のベルト側縁部89の全長が、後側ベルト86のベルト側縁部89のある長さと継ぎ合わされて、シーム長LSが画定されている。シーム長LSが、前側ベルト84の遠位縁部88で0%、前側ベルト84の近位縁部90で100%とされる場合、上記のゾーンは以下のように定義される:0?25%が腰部ゾーン102、25?50%が遠位腹部ゾーン104、50?85%が近位腹部ゾーン106、そして85?100%が脚部ゾーン108である。・・・
【0031】
本発明の物品では、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力が、前側又は後側のいずれかの、他のどのゾーンの引張り応力よりも大きい。前側近位腹部ゾーン106の引張り応力は、前側遠位腹部ゾーン104の引張り応力の200%以上であってもよい。一実施形態では、前側遠位腹部ゾーン104の引張り応力は、後側遠位腹部ゾーン104の引張り応力より小さいか、又はその70%以下であってもよい。一実施形態では、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力は、後側近位腹部ゾーン106の引張り応力の150%以上であってもよい。
【0032】
理論に縛られないで言うならば、引張り応力に関する前述のゾーンごとのプロファイリングは、本発明の物品に、人間の身体、特に36か月よりも年少の幼児の下部胴体によく沿うような形の腰ベルト40を提供するものと信じられている。それゆえ、本発明の物品は着用者によくフィットし、着用者に快適な着心地を感じさせるが、そのために、ずり落ち防止や漏れ防止といった面で妥協をしていない。すなわち、前側近位腹部ゾーン106は、高い引張り応力にさらされて、物品が着用者の転子部に向かって固定されてもよく、一方では後側近位腹部ゾーン106により多くの領域を残し、着用者のおしりを収容する。物品が転子部に確実に固定されている限り、前側脚部開口部に隣接する脚部ゾーン108には、近位腹部ゾーン106に比べて、極めて小さい引張り応力が作用し得る。したがって、前側脚部開口部領域120では、ソフトなフィットが脚の動きを容易にする。更に、後側遠位腹部ゾーン104に、前側遠位腹部ゾーン104に比べてより大きな引張り応
力を与えることで、着用者の前側腰部領域が収容される。
【0033】
上述したプロファイリングの結果、本発明の物品に、図4に示されるような、物品を着用者が着用している状態を側方から見た場合にS字形のサイドシーム32を取らせることができる。前側ベルト84が、前側近位腹部ゾーン106の物品中で最も大きい引張り応力によって前側に向かって引っ張られるので、サイドシーム32の残りの部分は、それに応じて湾曲し得る。本発明の腰部ベルト40は、以下に説明する「ベルトシーム形状測定法」によって測定されると、d値は+10mm以上、又は+15mm以上、又は+20mm以上になり得る。このようなd値は、物品が、着用者の比較的大きな腰部領域及びおしり領域へ適合し、一方では前側近位腹部ゾーン106での良好な固定を提供することを示している。・・・」
「【0062】
挿入されたストレッチボード180を伴う試料は、次に1分間放置されて、25±2℃及び相対湿度50±10%の環境で平衡に到達する。この伸張状態(LSS)での端から端の直線のサイドシーム長さ(輪郭長さではなく)が測定される。長手方向に腰部開口部から離れたLSSの70%点(70%点)、及び腰部開口部から離れたLSSの25%(25%点)における、シーム32の横方向の位置が測定され、差「d」(単位mm)を得る(図7参照)。70%点が、25%点に比べてベルトの前側長手方向中心線のより近くに位置していれば、d値は正である。25%点が、70%点に比べてベルトの前側長手方向中心線のより近くに位置していれば、d値は負である。ストレッチボード180の両方の側部上の両シーム32に対してd値を得る。5つの同じ物品の「d」値を測定し、平均d値(10値の平均)を1mm単位で求める。」
「【実施例】
【0063】
(実施例1)
本発明の着用可能物品であって、弾性のプロファイルは図2及び図3、並びに下記表1にしたがい、有効ベルト幅LWが355mmで、シーム長LSが130mmのもの。
・・・
【0067】
それぞれ実施例1及び比較例1について、腰部周囲力及び引張り応力がそれぞれのゾーンについて、本明細書の物品全体力測定法及びベルトゾーン引張り応力測定法により測定された。本明細書のベルトシーム形状測定法によって、実施例1及び比較例1についてd値が測定された。測定結果は表2に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
実施例1については、前側近位腹部ゾーンの引張り応力は、他のどのゾーンよりも大きく、前側遠位腹部ゾーン104の引張り応力の200%を超え、後側近位ゾーンの引張り応力の150%を超える。また、実施例1については、前側腰部ゾーン102の引張り応力は、後側腰部ゾーン102の引張り応力の80?120%であり、前側脚部ゾーン108の引張り応力は、後側脚部ゾーン108の引張り応力の80?200%であった。
【0070】
実施例1については、前側近位腹部ゾーンの引張り応力は、前側遠位腹部ゾーン104の引張り応力より小さく、後側近位ゾーンの引張り応力の150%未満である。」
「図3



(2)本件補正後の明細書等の記載事項
ア 特許請求の範囲
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記1.(1)のとおりである。

イ 明細書及び図面
平成30年4月2日提出の手続補正書(自発)、令和元年6月10日提出の手続補正書、及び令和2年3月17日提出の手続補正書によって明細書及び図面は補正されていない。よって、本件補正後の明細書及び図面の記載は、上記(1)イのとおりである。

(3)判断
ア 本件補正後の特許請求の範囲と当初の特許請求の範囲の対比
上記1.(1)本件補正後の請求項1の記載と上記2.(1)本願の当初明細書等の請求項1の記載を対比すると、
「着用可能物品」を特定する「前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーン」(以下「4つのゾーン」という)に関して、本願の当初明細書等の請求項1において記載されていた「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である」が、「本明細書に記載のベルトシーム形状測定法による伸張状態において、前記長手方向における前記ベルト側縁部の長さを伸張シーム長LSSとし、前記ベルト側縁部上の第1点を、前記腰部開口部から伸張シーム長LSSの70%の点とし、前記ベルト側縁部上の第2点を前記伸張シーム長LSSの25%の点とし、前記第1点と前記第2点との前記横方向における距離をd値とし、前記第1点が前記第2点に比べて前記前側ベルトの前記横方向の中心のより近くに位置したときに前記d値を正の値とすると、前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」と補正されている。
かかる補正により、「着用可能物品」の「4つのゾーン」の引っ張り応力について、本願の当初明細書等の請求項1の「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である」という記載事項が、本件補正後の請求項1では「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」と記載されて、「前記d値が+10mm以上である」ことを満たす限り、「前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力」を様々に設定する構成を包含するものとなっており、本件補正後の事項は、例えば、「前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力よりも大きくした構成(以下「構成A」という。)のほかにも、「前側近位腹部ゾーンと後側近位腹部ゾーンの引張り応力を同じとし、前側遠位腹部ゾーンの引張り応力を後側遠位腹部ゾーンの引張り応力より小さくした構成」(以下「構成B」という。)、「前側近位腹部ゾーンの引張り応力を後側近位腹部ゾーンの引張り応力よりも小さくしたものであっても、後側遠位腹部ゾーンが前側遠位腹部ゾーンをより強く引っ張るような引張り応力にした構成」(以下「構成C」という。)、又は「前側近位腹部ゾーンと前側遠位腹部ゾーンと後側遠位腹部ゾーンの引張り応力を同じにして、後側近位腹部ゾーンの引張り応力のみ小さくした構成」(以下「構成D」という。)などを包含するものと解することができる。
なお、以上のような、本件補正後の特許請求の範囲の記載に係る解釈は、例えば、請求人が令和3年3月15日に提出した回答書(以下、単に「回答書」という。)の1.(1)(ア)における「前側近位腹部ゾーンの引張応力だけでなく、他のゾーンの引張応力が、請求項1に記載の「d値」を満たすように設定されるものであり、この点は、請求項1において、「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成され、」と特定されている。」との主張とも整合するものである。
そうすると、本願の当初明細書等の特許請求の範囲の記載を、本件補正後の特許請求の範囲の記載のようになす補正は、請求項の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更したものである。
ここで、請求項の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更する補正は、新たな技術的事項を導入するものである場合には、許されない。他方、この補正により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合は、新たな技術的事項を導入するものではない。例えば、削除する事項が発明による課題の解決には関係がなく、任意の付加的な事項であることが当初明細書等の記載から明らかである場合には、この補正により新たな技術上の意義が追加されない場合が多いところ、さらに検討する。

イ 上位概念化、削除又は変更された事項が任意付加的な事項であるか否か
上記(1)イの本願の当初明細書等の記載によると、「子供の下部胴体に、よりフィットするパンツタイプの着用可能物品を提供する」(【0006】)という課題を解決するための【課題を解決するための手段】は、「本発明は、・・・、近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である。」(【0007】)と記載されおり、さらに、実施の形態として、「本発明の物品では、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力が、前側又は後側のいずれかの、他のどのゾーンの引張り応力よりも大きい。」(【0031】)との記載や「すなわち、前側近位腹部ゾーン106は、高い引張り応力にさらされて、物品が着用者の転子部に向かって固定されてもよく、一方では後側近位腹部ゾーン106により多くの領域を残し、着用者のおしりを収容する。」(【0032】)との記載、さらには、段落【0069】以降の実施例においても、前側近位腹部ゾーンの引張り応力が107.7N/mであり、他のいずれのゾーンの引張り応力(19.5?49.5N/m)より大きいもののみが記載されていることを総合すると、本願の当初明細書等の請求項1における、「着用可能物品」の「4つのゾーン」の引っ張り応力についての「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大き」いという事項は、本願の当初明細書等において、一貫して、課題を解決するため解決手段として記載されている。
そうすると、「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大き」いという事項は、本願発明において必要不可欠の事項として記載されており、これが、任意の付加的な事項であるとはいえない。

ウ 補正により新たな技術的事項を導入するものであるか否か
補正された事項が「当初明細書等に明示的に記載された事項」である場合や、当初明細書等の記載から自明な事項にする補正された事項が「当初明細書等の記載から自明な事項」である場合には、当初明細書等に明示的な記載がなくても、その補正は、新たな技術的事項を導入するものではないから許されるところ、以下さらに検討する。

(ア)本願の当初明細書等に明示的に記載された事項であるか否か
上記(1)ア及びイのとおり、本件補正後の請求項1の「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」という事項(文言)は、本願の当初明細書等に明示的に記載されていない。
また、本件補正後の前記事項は、上記アのとおり、「前記d値が+10mm以上である」ことを満たす限り、「前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力」を様々に設定する構成を包含するものと解されるが、これら様々な構成のうち、構成Aは、「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大き」く(請求項1、段落【0007】、【0031】)と明示的に記載されているものの、構成B?Dその他構成についての明示の記載はない。

(イ)本願の当初明細書等の記載から自明な事項であるか否か
「当初明細書等の記載から自明な事項」といえるためには、当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、補正された事項が当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項でなければならないところ、以下検討する。
上記イで検討したとおり、本願の当初明細書等の特許請求の範囲に記載された「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大き」いという事項(構成A)は、本願の当初明細書等において、一貫して、課題を解決するため解決手段として記載されている。
また、本願の当初明細書等では、「本発明の物品では、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力が、前側又は後側のいずれかの、他のどのゾーンの引張り応力よりも大きい。」(【0031】)や「すなわち、前側近位腹部ゾーン106は、高い引張り応力にさらされて、物品が着用者の転子部に向かって固定され」(【0032】)ると記載され、さらに、「前側ベルト84が、前側近位腹部ゾーン106の物品中で最も大きい引張り応力によって前側に向かって引っ張られるので、サイドシーム32の残りの部分は、それに応じて湾曲し得る。本発明の腰部ベルト40は、・・・測定されると、d値は+10mm以上・・・になり得」と記載されていることに照らせば、「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大き」いという事項(原因)によって、「物品が着用者の転子部に向かって固定され」ることや「d値は+10mm以上」という事象(結果)が生じる関係にあるものとして記載されている。
さらに、「前記d値が+10mm以上である」ことを満たす限り、「前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力」を様々に設定する構成のうち、特に、構成Cにあっては、前側近位腹部ゾーンが、高い引張り応力にさらされることはないため、物品が着用者の転子部に向かって固定されないことは明らかであるから、本願課題を解決することができないものであること、また、構成Bや構成Dも同様の理由により本願課題を十分に解決することができないものであることも、技術常識に照らせば、当業者にとって自明である。
以上のとおり、「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大き」いという事項(構成A)が、一貫して、課題を解決するための手段として記載され、また、「d値」が、課題解決手段がもたらす一事象(結果)として記載されている本願の当初明細書等に接した当業者が、必ずしも本願の課題を解決することができないような構成までも包含する「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」という事項が、本願の当初明細書等に記載されているのと同然であると理解することはない。

3.まとめ
以上のとおり、請求項1の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更したものである本件補正において、上位概念化、削除又は変更した請求項1の発明特定事項は、任意の付加的な事項であるとはいえず、本件補正後の「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」という事項は、「本願の当初明細書等に明示的に記載された事項」でも、「本願の当初明細書等の記載から自明な事項」でもないから、本件補正は、本願の当初明細書等との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではない。
よって、本件補正後の請求項1についての補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4.審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、[主張1]「「前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく」という構成が特定されなくても、第1点と第2点との横方向における距離を示すd値が、+10mm以上という構成が特定されることで、「S字形のサイドシーム」が形成されることは明白である。そして、「S字形のサイドシーム」によって、物品が、着用者の比較的大きな腰部領域及びおしり領域へ適合し、一方では前側近位腹部ゾーンでの良好な固定を提供することは明らかである。」(審判請求書4.(1))、[主張2]「本願明細書の段落[0032]には、転子部に固定することによりずり落ちを防止することができる着用可能物品について記載されている。この着用可能物品の一態様が、原出願で特定されている「近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である。」という特定事項であり、他の態様として、本願の請求項1に記載の「d値」を用いた特定事項が成り立つものと思料する。前側近位腹部ゾーンの引張応力だけでなく、他のゾーンの引張応力が、請求項1に記載の「d値」を満たすように設定されるものであり、この点は、請求項1において、「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成され、」と特定されている。」(回答書のB.1.(1)(ア))と主張している。

(2)主張1について
「S字形のサイドシーム」が形成されたもの、すなわち「d値が+10mm以上」のものであっても、本願課題を解決することができないものが含まれることは、上記2.(3)に示したとおりである。

(3)主張2について
上記2.(3)に示したとおり、本願の当初明細書等には、「d値」を用いた特定事項が成り立つことについて記載も示唆もされていない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
1.本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?11に係る発明は、令和元年6月10日になされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1の記載は、上記第2[理由]1.(2)に記載のとおりである。

2.請求項1の記載について、審判請求人は回答書において次のように述べている。
(1)「「前記前側ベルトの中心」との記載を、上記のように「前記前側ベルトの横方向の中心」と補正すれば、「中心」という記載が明確化されるものと思料する。この補正事項は、例えば、本願明細書の段落[0019]、[0020]、本願図面の図2等に基づいているものと思料する。「前記後側ベルトの中心」も同様である。」(回答書の2.(1))
(2)「「前記前側ベルトのベルト側縁部の全長が前記後側ベルトのベルト側縁部のある一定の長さ」との記載を、上記のように「前記前側ベルトのベルト側縁部の全体が、前記後側ベルトのベルト側縁部の一部」と補正すれば、当該記載が明確化されるものと思料する。すなわち、「前側ベルトのベルト側縁部の全長」は「後側ベルトのベルト側縁部の全長」よりも短くなっていることを意味している。この補正事項は、例えば、本願明細書の段落[0030]、本願図面の図3等に基づいているものと思料する。」(回答書の2.(2))
(3)「「ベルトシーム形状測定法」について、上記のように請求項1を補正すれば、「ベルトシーム形状測定法」が明確化されるものと思料する。この補正事項は、例えば、本端明細書の段落[0055]?[0062]等に基づいているものと思料する。なお、このように請求項1を補正する場合には、請求項2は、上記のように請求項1を引用するように補正する予定である旨、付言する。
また、同段落[0059]の[表3]において、「サンプル試料のフル伸張時幅の70%-ボード長」との記載を「サンプル試料のフル伸張時幅の70%-ボ ード厚」に補正する予定である。当該補正は、同段落[0060]等、及び技術常識に基づくものと思料する。
すなわち、本願の図7および本願の同段落[0061]に示されているように、遠位縁部88(すなわち腰部開口部)がストレッチボード180の横方向(すなわち幅方向)に沿うように、着用可能物品を伸ばしながらストレッチボード180が着用可能物品に挿入される。この場合、(ボードの幅+ボードの厚み)×2で求められる数値が、ストレッチボード180の横方向の周長であり、着用可能物品の周長に相当することは明らかであるものと思料する。このため、ストレッチボード180の幅は、腰部開口部の幅からボードの厚みを差し引けば求められることは、当業者にとって容易に理解できるものと思料する。
従って、[表3]における上記提案の補正は、本願の出願当初の明細書等に基づいているものと思料する。」(回答書の2.(3))

3.上記2.に示した審判請求人の回答書による釈明も参酌して、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)を改めて認定すれば、次のとおりのものである。
「長手方向及び横方向に連続している着用可能物品であって、本体と環状弾性ベルトとを備え、前記環状弾性ベルトが、前側ベルトと後側ベルトとを備え、前記前側ベルトの前記横方向の中心が、前記本体の前側腰部パネルに接合され、前記後側ベルトの前記横方向の中心が、前記本体の後側腰部パネルに接合され、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、前記本体が重ならない左側部パネル及び右側部パネルを有し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横方向縁部がシームのみにより接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、内側シートと、外側シートと、それらの間に挟まれて、実質的に互いに平行に横方向に延びる複数の弾性体と、によって形成される着用可能物品において、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に連続する近位縁部及び遠位縁部を有し、前記近位縁部が前記遠位縁部よりも、前記物品の長手方向の中心に対してより近い位置にあり、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが側縁部を有し、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの前記遠位縁部は、実質的に平行であり、前記後側ベルトの長手方向の長さは、前記前側ベルトの長手方向の長さよりも長く、前記前側ベルトの前記遠位縁部は、前記後側ベルトの前記遠位縁部と整列し、前記前側ベルトの前記近位縁部は、前記後側ベルトの前記近位縁部と整列しておらず、
前記前側ベルトのベルト側縁部の全体が、前記後側ベルトのベルト側縁部の一部と継ぎ合わされて、シーム長LSを画定し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーンであり、
ベルトシーム形状測定法による伸張状態において、前記長手方向における前記ベルト側縁部の長さを伸張シーム長LSSとし、前記ベルト側縁部上の第1点を、前記腰部開口部から伸張シーム長LSSの70%の点とし、前記ベルト側縁部上の第2点を前記伸張シーム長LSSの25%の点とし、前記第1点と前記第2点との前記横方向における距離をd値とし、前記第1点が前記第2点に比べて前記前側ベルトの前記横方向の中心のより近くに位置したときに前記d値を正の値とすると、前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成され、
前記ベルトシーム形状測定法においては、前記本体と接合されていない前記環状弾性ベルトの内側にストレッチボードを挿入し、25℃±2℃の温度及び50%±10%の湿度の環境下で1分間放置し、その後、前記d値を測定し、
前記ストレッチボードを前記環状弾性ベルトの内側に挿入したとき、前記ストレッチボードの幅方向が、前記環状弾性ベルトの前記横方向に沿っており、前記環状弾性ベルトの2つの前記シームのうちの一方の前記シームは、前記ストレッチボードの一方の面に配置され、他方の前記シームは、前記ストレッチボードの他方の面に配置され、それぞれの前記シームの前記近位縁部及び前記遠位縁部は、前記物品の長手方向の軸線に対して±5mm以内に配置され、
前記ストレッチボードの厚みは、8.5mm±5mmであり、前記ストレッチボードの長さは、(前記シーム長LS+40mm)?(前記シーム長LS+100mm)であり、前記ストレッチボードの幅は、前記環状弾性ベルトのフル伸張時幅の70%-前記ストレッチボードの厚みである、着用可能物品。」

第4 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由は、概略、次のとおりのものである。
本願は出願の分割要件を満たしていないので、本願の出願日である平成30年3月22日に出願されたものとして新規性進歩性の判断を行う。

1.理由1(新規事項)
令和元年6月10日になされた手続補正は、本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.理由2(新規性)
本願出願の請求項1?11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3.理由3(進歩性)
本願出願の請求項1?11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2017-525487号公報

第5 当審の判断
1.分割要件(特許法第44条第1項)について
本願の願書の記載によれば、本願は、特許法第44条第1項の規定による特許出願(いわゆる分割出願。)として出願をしたものであるから、まず、本願が適法に分割出願されたものであるか否かを検討する。

(1)特許法第44条第1項は、「特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」、同条第2項本文は、「前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。」と規定している。
分割出願が、同条第2項本文の適用を受けるためには、分割出願に係る発明が、もとの当初明細書等に記載されていること、又はこれらの記載から自明であることが必要である。
そして、当該要件は、「分割出願の明細書等が「原出願の出願当初の明細書等」に対する補正後の明細書等であると仮定した場合に、その補正が「原出願の出願当初の明細書等」との関係において、新規事項を追加する補正であるか否かで判断する」(「特許・実用新案審査基準」第VI部第1章第1節3.2)ものとされている。

(2)本件原出願の当初明細書等の記載事項
本願のもとの特許出願である特願2017-510654号(以下「本件原出願」という。)の当初明細書等の記載と本願の当初明細書等の記載とは同一である。なお、この点、平成30年4月2日提出の上申書にも説明されている。
そうすると、本件原出願の当初明細書等の記載は、上記第2[理由]2.(1)ア及びイの記載と同じである。

(3)本願の明細書等の記載事項
ア 特許請求の範囲
本願の請求項1の記載は、令和元年6月10日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載のものであり、上記第2[理由]1.(2)に記載とおりである。

イ 明細書及び図面
平成30年4月2日提出の手続補正書(自発)、及び令和元年6月10日提出の手続補正書によって明細書及び図面は補正されていない。よって、本願の明細書及び図面の記載は、上記(2)で参照した、上記第2[理由]2.(1)イの記載と同じである。

(4)判断
ア 本願の特許請求の範囲と本件原出願の当初明細書等の特許請求の範囲の対比
本願の請求項1の記載と上記(2)の本件原出願の当初明細書等の請求項1の記載を対比すると、
「着用可能物品」を特定する「前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーン」(以下「4つのゾーン」という)に関して、本件原出願の当初明細書等の請求項1では、「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である」と記載されていたのに対して、本願の請求項1では、「本明細書に記載のベルトシーム形状測定法による伸張状態において、前記長手方向における前記ベルト側縁部の長さを伸張シーム長LSSとし、前記ベルト側縁部上の第1点を、前記腰部開口部から伸張シーム長LSSの70%の点とし、前記ベルト側縁部上の第2点を前記伸張シーム長LSSの25%の点とし、前記第1点と前記第2点との前記横方向における距離をd値とし、前記第1点が前記第2点に比べて前記前側ベルトの前記横方向の中心のより近くに位置したときに前記d値を正の値とすると、前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」と記載されている。

イ 本願が分割要件を満たすか否か
上記(1)に示したとおり、分割要件は、「分割出願の明細書等が「原出願の出願当初の明細書等」に対する補正後の明細書等であると仮定した場合に、その補正が「原出願の出願当初の明細書等」との関係において、新規事項を追加する補正であるか否かで判断する」(「特許・実用新案審査基準」第VI部第1章第1節3.2)ものとされている。
そこで、本願の請求項1が、本件原出願の当初明細書等に対する補正後の請求項1であると仮定して、その補正が本件原出願の当初明細書等との関係において、新規事項を追加する補正であるか否かを検討する。
上記アに示した本願の請求項1の記載と本件原出願の当初明細書等の請求項1の記載の相違により、「着用可能物品」の「4つのゾーン」の引っ張り応力について、本件原出願の当初明細書等の請求項1の「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である」という記載事項が、本願の請求項1では「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」と記載されて、「前記d値が+10mm以上である」ことを満たす限り、「前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力」を様々に設定する構成を包含するものとなっており、本願の請求項1の事項は、「前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力よりも大きくした構成以外の構成を包含するものと解することができる。
ここで、請求項の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更する補正は、新たな技術的事項を導入するものである場合には、許されない。他方、この補正により新たな技術上の意義が追加されないことが明らかな場合は、新たな技術的事項を導入するものではない。例えば、削除する事項が発明による課題の解決には関係がなく、任意の付加的な事項であることが当初明細書等の記載から明らかである場合には、この補正により新たな技術上の意義が追加されない場合が多いところ、本願の請求項1の「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」という発明特定事項は、上記第2[理由]2.(3)に示したのと同様の理由により、任意の付加的な事項であるとはいえず、また、本件原出願の当初明細書等に明示的に記載された事項でも、本件原出願の当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、本願の請求項1が、本件原出願の当初明細書等に対する補正後の請求項1であると仮定した場合、その補正が本件原出願の当初明細書等との関係において、新規事項を追加するものであるから、本願は分割要件を満たさない。

(3)まとめ
よって、本願は、適法に分割出願されたものではないから、本願について特許法第44条第2項本文の規定は適用されない。
そうすると、本願の出願日は、現実の出願日である平成30年3月22日である。

2.理由1(特許法第17条の2第3項:新規事項)
本願の請求項1の記載と、上記第2で補正却下された令和2年3月17日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載とは同一のものである。
そうすると、上記第2[理由]3.で、「請求項の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更したものである本件補正において、上位概念化、削除又は変更した請求項の発明特定事項は、任意の付加的な事項であるとはいえず、本件補正後の「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」という事項は、「本願の当初明細書等に明示的に記載された事項」でも、「本願の当初明細書等の記載から自明な事項」でもないから、本件補正は、本願の当初明細書等との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではない。」としたのと同様の理由により、本願の請求項1についても、請求項の発明特定事項を上位概念化、削除又は変更したものである令和元年6月10日手続補正において、上位概念化、削除又は変更した請求項の発明特定事項は、任意の付加的な事項であるとはいえず、当該手続補正後の請求項1、すなわち本願の請求項1の「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成されている」という事項は、「本願の当初明細書等に明示的に記載された事項」でも、「本願の当初明細書等の記載から自明な事項」でもないから、当該手続補正は、本願の当初明細書等との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものではない。
よって、令和元年6月10日提出の手続補正書による本願の請求項1についての補正は、本願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3.理由2(特許法第29条第1項第3号:新規性)、理由3(特許法第29条第2項:進歩性)
(1)引用文献の記載
ア 上記1のとおり、分割が認められず、本願の出願日は現実の出願日である平成30年3月22日のところ、本願出願日前である平成29年9月7日に公表された引用文献1(本件原出願の公表公報)には、次の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向及び横方向に連続している着用可能物品であって、本体と環状弾性ベルトとを備え、前記環状弾性ベルトが、前側ベルトと後側ベルトとを備え、前記前側ベルトの中心が、前記本体の前側腰部パネルに接合され、前記後側ベルトの中心が、前記本体の後側腰部パネルに接合され、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、前記本体が重ならない左側部パネル及び右側部パネルを有し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横方向縁部がシームのみにより接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、内側シートと、外側シートと、それらの間に挟まれて、実質的に互いに平行に横方向に延びる複数の弾性体と、によって形成される着用可能物品において、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に連続する近位縁部及び遠位縁部を有し、前記近位縁部が前記遠位縁部よりも、前記物品の長手方向の中心に対してより近い位置にあり、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが側縁部を有し、
前記前側ベルトのベルト側縁部の全長が、前記後側ベルトのベルト側縁部のある一定の長さと継ぎ合わされて、シーム長LSを画定し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーンであり、
前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力の200%以上である、着用可能物品。」
「【請求項7】
本明細書のベルトシーム形状測定法によるd値が、+10mm以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品。」
「【0019】
図1は、本発明の着用可能物品20の一実施形態の斜視図であり、図2は、シームの接合が解除され、平らに伸ばされた状態で、衣類に面する側の表面を見せるようにした、当該物品の模式的平面図である。着用可能物品20は、長手方向の軸線として機能する長手方向中心線L1を有し、横方向の軸線として機能する横方向中心線T1を有する。着用可能物品20は、肌に面する側の表面、衣類に面する側の表面、前側領域26、後側領域28、股部領域30、及びシーム32を有する。シーム32は、前側領域26及び後側領域28を接合し、2つの脚部開口部、及び腰部開口部を形成する。着用可能物品20は、着用者の股部領域を覆う本体38、並びに前側ベルト84及び後側ベルト86(以後、「前側及び後側ベルト」と呼ぶ場合もある)と、を備える。前側及び後側ベルト84、86は、横方向に延び、腰部開口部を画定する環状弾性ベルト40(以後、「腰ベルト」と呼ぶ場合もある)を形成する。前側及び後側ベルト84、86、並びに本体38は、共に脚部開口部を画定する。
【0020】
本体38は、本体38上に配置され、身体排出物を吸収し収容するための吸収性コア62を内包している。図2に示される実施形態では、本体38はほぼ長方形の形状であり、左右の長手方向に延びる側縁部48(以下、「側縁部」と呼ぶこともある)、並びに前側及び後側の、横方向に延びる末端縁部50(以下、「末端縁部」と呼ぶこともある)を有する。また、本体38は、着用可能物品20の前側領域26に位置する前側腰部パネル52、及び後側領域28に位置する後側腰部パネル54を有する。更に本体38は、股部領域30において、前側腰部パネル52と後側腰部パネル54との間に位置する股部パネル56を有する。前側ベルト84の中心部は、本体38の前側腰部パネル52に接合され、後側ベルト86の中心部は、本体38の後側腰部パネル54に接合される。前側及び後側ベルト84、86は、本体38が重なり合わない左側部パネル及び右側部パネル82をそれぞれ有する。」
「【0027】
後側ベルト86の長手方向の長さLBと前側ベルト84の長手方向の長さLFとが等しいか否かに関わらず、前側ベルト84のベルト側縁部89の長手方向の長さLFの全体が、後側ベルト86のベルト側縁部89と継ぎ合わされて、図3に示すようなシーム長LSを画定する。前側ベルト84が、実質的に互いに平行な、真っ直ぐの遠位縁部88と近位縁部90を有する場合には、前側ベルト84の長手方向の長さLFはシーム長LSと等しくなる。」
「【0030】
図3を参照すると、前側及び後側ベルト84、86はそれぞれ、横方向に延びる4つのゾーンに分割されている。その4つのゾーンは、遠位縁部88から近位縁部90への間のそれぞれの位置の、シーム長LSのパーセンテージで定義されている。前側ベルト84のベルト側縁部89の全長が、後側ベルト86のベルト側縁部89のある長さと継ぎ合わされて、シーム長LSが画定されている。シーム長LSが、前側ベルト84の遠位縁部88で0%、前側ベルト84の近位縁部90で100%とされる場合、上記のゾーンは以下のように定義される:0?25%が腰部ゾーン102、25?50%が遠位腹部ゾーン104、50?85%が近位腹部ゾーン106、そして85?100%が脚部ゾーン108である。ある弾性体が遠位縁部88から25%の位置に配置されている時には、当該弾性体は、腰部ゾーン102に含まれていると考えられる。ある弾性体が遠位縁部88から50%の位置に、又は遠位縁部88から85%の位置に配置されている時には、当該弾性体は、近位腹部ゾーン106に含まれていると考えられる。後側ベルト86の長手方向の長さLBが、前側ベルト84の長手方向の長さLFよりも長い実施形態においては、後側ベルト86の「LBからLSを引いた」残りの長さに相当する部分は、上記の4ゾーンには入れないものとする。」
「【0033】
上述したプロファイリングの結果、本発明の物品に、図4に示されるような、物品を着用者が着用している状態を側方から見た場合にS字形のサイドシーム32を取らせることができる。前側ベルト84が、前側近位腹部ゾーン106の物品中で最も大きい引張り応力によって前側に向かって引っ張られるので、サイドシーム32の残りの部分は、それに応じて湾曲し得る。本発明の腰部ベルト40は、以下に説明する「ベルトシーム形状測定法」によって測定されると、d値は+10mm以上、又は+15mm以上、又は+20mm以上になり得る。このようなd値は、物品が、着用者の比較的大きな腰部領域及びおしり領域へ適合し、一方では前側近位腹部ゾーン106での良好な固定を提供することを示している。・・・」
「【0055】
ベルトシーム形状測定法
パンツタイプの吸収性物品20からのベルト試料と、サンプルのサイズにしたがってサンプルを支持するボード(以下「ストレッチボード」と呼ぶ)と、が準備される。
【0056】
ベルト試料は、腰部ベルトと本体との接着を分離して、物品の本体38から腰部ベルト40を取り外すことによって準備される。ベルト部分にしわを作らないように留意して、コールドスプレーを使ってもよい。ベルト状弾性体96にはスプレーをかけないように留意する。サンプルのシーム長さLS(図3参照)を、ベルトを平らにして張力をかけずに、±1mm以内まで測定する。
【0057】
上述したように、フル伸張時周長が、同一バッチの別の物品を使用する物品全体力測定中に決定される。フル伸張時幅は、フル伸張時周長の50%として定義される。
【0058】
ストレッチボードは180であり、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、又は類似の堅い材料からなり、以下の寸法を有する。
【0059】
【表3】

【0060】
例えば、ベルトのサイドシーム長LSが130mmであれば、ストレッチボードの長さは170?230mmとすべきである。試料のフル伸張時幅が355mmで、ボード厚が8.5mmであれば、ボード幅は240mmとすべきである。
【0061】
図7に示すように、ボードの挿入のために試料をできる限りわずかに伸ばし、シーム32の全長がストレッチボード180の前側及び後側平面上(側面上ではなく)に置かれるように、ストレッチボード180が試料に挿入される。ストレッチボード180の1つの側部と他の側部上のそれぞれのシーム32の遠位縁部88(すなわち腰部開口部の)、並びに、ストレッチボード180の1つの側部と他の側部のそれぞれのシーム32の近位縁部(すなわち脚部開口部の)が、それぞれ同一長手方向軸線の±5mm以内に整列されるように、試料がストレッチボード180上で調整される。
【0062】
挿入されたストレッチボード180を伴う試料は、次に1分間放置されて、25±2℃及び相対湿度50±10%の環境で平衡に到達する。この伸張状態(LSS)での端から端の直線のサイドシーム長さ(輪郭長さではなく)が測定される。長手方向に腰部開口部から離れたLSSの70%点(70%点)、及び腰部開口部から離れたLSSの25%(25%点)における、シーム32の横方向の位置が測定され、差「d」(単位mm)を得る(図7参照)。70%点が、25%点に比べてベルトの前側長手方向中心線のより近くに位置していれば、d値は正である。25%点が、70%点に比べてベルトの前側長手方向中心線のより近くに位置していれば、d値は負である。ストレッチボード180の両方の側部上の両シーム32に対してd値を得る。5つの同じ物品の「d」値を測定し、平均d値(10値の平均)を1mm単位で求める。」
「【図2】


「【図3】



イ 上記アから、「前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく」することによってd値が+10mm以上であるようにすることで課題を解決している発明であることを踏まえると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「長手方向及び横方向に連続している着用可能物品であって、本体と環状弾性ベルトとを備え、前記環状弾性ベルトが、前側ベルトと後側ベルトとを備え、前記前側ベルトの前記横方向の中心が、前記本体の前側腰部パネルに接合され、前記後側ベルトの前記横方向の中心が、前記本体の後側腰部パネルに接合され、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、前記本体が重ならない左側部パネル及び右側部パネルを有し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横方向縁部がシームのみにより接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、内側シートと、外側シートと、それらの間に挟まれて、実質的に互いに平行に横方向に延びる複数の弾性体と、によって形成される着用可能物品において、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に連続する近位縁部及び遠位縁部を有し、前記近位縁部が前記遠位縁部よりも、前記物品の長手方向の中心に対してより近い位置にあり、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが側縁部を有し、前記前側ベルト及び前記後側ベルトの前記遠位縁部は、実質的に平行であり、前記後側ベルトの長手方向の長さは、前記前側ベルトの長手方向の長さよりも長く、前記前側ベルトの前記遠位縁部は、前記後側ベルトの前記遠位縁部と整列し、前記前側ベルトの前記近位縁部は、前記後側ベルトの前記近位縁部と整列しておらず、
前記前側ベルトのベルト側縁部の全体が、前記後側ベルトのベルト側縁部の一部と継ぎ合わされて、シーム長LSを画定し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までのそれぞれの位置によって画定され、0?25%が腰部ゾーンであり、25?50%が遠位腹部ゾーンであり、50?85%が近位腹部ゾーンであり、85?100%が脚部ゾーンであり、
前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく、
ベルトシーム形状測定法による伸張状態において、前記長手方向における前記ベルト側縁部の長さを伸張シーム長LSSとし、前記ベルト側縁部上の第1点を、前記腰部開口部から伸張シーム長LSSの70%の点とし、前記ベルト側縁部上の第2点を前記伸張シーム長LSSの25%の点とし、前記第1点と前記第2点との前記横方向における距離をd値とし、前記第1点が前記第2点に比べて前記前側ベルトの前記横方向の中心のより近くに位置したときに前記d値を正の値とすると、前記d値が+10mm以上であり、
前記ベルトシーム形状測定法においては、前記本体と接合されていない前記環状弾性ベルトの内側にストレッチボードを挿入し、25℃±2℃の温度及び50%±10%の湿度の環境下で1分間放置し、その後、前記d値を測定し、
前記ストレッチボードを前記環状弾性ベルトの内側に挿入したとき、前記ストレッチボードの幅方向が、前記環状弾性ベルトの前記横方向に沿っており、前記環状弾性ベルトの2つの前記シームのうちの一方の前記シームは、前記ストレッチボードの一方の面に配置され、他方の前記シームは、前記ストレッチボードの他方の面に配置され、それぞれの前記シームの前記近位縁部及び前記遠位縁部は、前記物品の長手方向の軸線に対して±5mm以内に配置され、
前記ストレッチボードの厚みは、8.5mm±5mmであり、前記ストレッチボードの長さは、(前記シーム長LS+40mm)?(前記シーム長LS+100mm)であり、前記ストレッチボードの幅は、前記環状弾性ベルトのフル伸張時幅の70%-前記ストレッチボードの厚みである、着用可能物品。」

(2)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいずれのゾーンの引張り応力より大きく」し、その結果、「d値が、+10mm以上であ」る事項は、本願発明の「前記d値が+10mm以上であるように、前記前側ベルトの4つのゾーン及び前記後側ベルトの4つのゾーンの引張り応力が構成され」た事項に含まれる一態様である。そうすると、引用発明の前記事項は、本願発明の前記事項に相当し、引用発明のその余の事項は、本願発明のその余の事項と一致するから、本願発明と引用発明とに相違点はない。
よって、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

また、本願発明と引用発明の間に相違点があるとしても、それは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
よって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、令和元年6月10日になされた手続補正は本願の当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-12 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-29 
出願番号 特願2018-55130(P2018-55130)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61F)
P 1 8・ 561- Z (A61F)
P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 森藤 淳志
特許庁審判官 横溝 顕範
藤井 眞吾
発明の名称 弾性ベルトを有する着用可能物品  
代理人 村田 卓久  
代理人 朝倉 悟  
代理人 出口 智也  
代理人 山下 和也  
代理人 小島 一真  
代理人 中村 行孝  
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