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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1377133
審判番号 不服2020-11446  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-18 
確定日 2021-08-31 
事件の表示 特願2018- 86945号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月31日出願公開、特開2019-188001号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年4月27日の出願であって、令和1年9月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月28日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月6日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月13日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年5月14日付け(送達日:同年5月19日)で、同年3月13日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年8月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1及び2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2016-137195号公報
2.特開2008-126008号公報


第3 令和2年8月18日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)について

1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正後:令和2年8月18日付け手続補正書による補正)
「【請求項1】
A 本体後側に配置され且つ複数段階の甲値に関する選択操作が可能な甲操作手段と、
B 本体前側に配置され且つ複数段階の乙値に関する選択操作が可能な乙操作手段と、
C 前記甲操作手段により得られた前記甲値及び前記乙操作手段により得られた前記乙値に基づいて、エラー音を含まない通常音に関する音量である所定値を設定可能な所定値設定手段とを備え、
D 電源投入時に、所定条件に基づいて実行されるRAMクリア処理を含む電源投入処理を実行するように構成された
E 遊技機において、
F1 前記甲操作手段の操作により第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により第1乙値が選択された場合に第1所定値が設定され、
F2 前記甲操作手段の操作により前記第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第1乙値よりも大となる第2乙値が選択された場合に第2所定値が設定され、
G1 前記甲操作手段の操作により第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第1乙値が選択された場合に第3所定値が設定され、
G2 前記甲操作手段の操作により前記第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第2乙値が選択された場合に第4所定値が設定され、
I1 前記第1所定値と前記第3所定値とを同一とし、
I2 前記第1所定値と前記第2所定値との変化量と、前記第3所定値と前記第4所定値との変化量とを異ならせ、
F3 前記第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により選択可能な上限乙値が選択されている場合に第1上限所定値が設定され、
G3 前記第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により選択可能な上限乙値が選択されている場合に第2上限所定値が設定され、
I3 前記第1上限所定値と前記第2上限所定値とを異ならせ、
J1 前記甲操作手段により得られた前記甲値に基づいて、エラー音設定テーブルから前記エラー音に関するエラー音量を設定可能であり、
J2 前記RAMクリア処理が行われたことを報知するRAMクリア報知中を含むエラー発生中は、RAMクリア報知音を含む前記エラー音を前記エラー音量にて出力し、
J3 前記甲値を変更した場合、前記エラー音設定テーブルの参照先は変化する一方、前記所定値の値にかかわらず、前記エラー音量として共通の特定値を参照することで、当該エラー音量が変化しないように構成され、
J4 前記特定値は、前記第1上限所定値及び前記第2上限所定値よりも大きな値であり、
J5 前記RAMクリア報知中は、前記甲操作手段による前記所定値の設定を可能とする
E ことを特徴とする遊技機。」へと補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。また、符号AからJ5は、当審にて分説して付した。)。

2 補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、補正前の請求項1について、
(i)発明を特定するために必要な事項である「エラー音に関するエラー音量」について、「前記RAMクリア処理が行われたことを報知するRAMクリア報知中を含むエラー発生中は、RAMクリア報知音を含む前記エラー音を前記エラー音量にて出力」することを限定し、それに必要な前提として、「電源投入時に、所定条件に基づいて実行されるRAMクリア処理を含む電源投入処理を実行するように構成された」ことを加えるとともに、

(ii)発明を特定するために必要な事項である「前記エラー音量として共通の特定値を参照することで、当該エラー音量が変化しないように構成され」ることについて、「前記所定値の値にかかわらず」という限定を加え、

(iii)発明を特定するために必要な事項である「所定値を設定可能」であることについて、「前記RAMクリア報知中は、前記甲操作手段による前記所定値の設定を可能とする」という限定を加えるものである。

(2)補正目的
上記(1)の補正事項(i)?(iii)は、補正前の発明特定事項に限定を加えるものであって、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(3)新規事項
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の【0057】、【0059】、【0115】、【0238】、【0260】?【0264】、図8、図9、図34の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に掲げる要件を満たす。

(4)独立特許要件
「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。


第4 本願発明
本願発明は、本件補正により補正された、上記「第3 1 本件補正」で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。


第5 引用文献1に記載された発明
1 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶理由において引用された特開2016-137195号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

(1)記載事項
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、弾球遊技台(パチンコ機)、回胴遊技台(スロットマシン)、封入式遊技台あるいはメダルレススロットマシンに代表される遊技台に関する。
・・・
【0005】
本発明の目的は、発光手段に特徴を持った遊技台を提供することにある。」

イ 「【0011】
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係るパチンコ機100の全体構成について説明する。なお、同図はパチンコ機100を正面側(遊技者側)から見た外観斜視図である。
・・・
【0015】
また、チャンスボタン136の正面視右横には、第1出力設定スイッチ(第一の操作手段)190を配設している。この第1出力設定スイッチ190は、パチンコ機100のスピーカ(音出力手段)120から出力する音(例えば、BGM、効果音、エラー音等)の音量(音圧)や、各種LED・各種ランプ(光出力手段)の輝度(光量)を調整するためのスイッチである。第1出力設定スイッチ190は、パチンコ機100の正面に配設されているため、後述する第2出力設定スイッチ194(図2参照)とは異なり、遊技者による操作が可能な操作手段である。
・・・
【0021】
RWMクリアスイッチ180は、操作を行いながらパチンコ機100の電源投入を行うことで、RWMクリア(RAMの初期化)を行うことができるスイッチである。なお、RAMクリアスイッチ180は、操作を行いながらパチンコ機100の電源投入を行った場合に、所定の報知(例えば、「RAMクリアする場合はもう一度押してください」という文字表示や音、または、文字表示と音の両方)を行い、再度、操作を行った場合に、RAMクリアを行うように構成してもよい。
【0022】
また、第1副基板ケース162の左上には、第2出力設定スイッチ(第二の操作手段)194を配設している。この第2出力設定スイッチ194は、パチンコ機100のスピーカ(音出力手段)120から出力する音(例えば、BGM、効果音、エラー音等)の音量(音圧)や、各種LED・各種ランプ(光出力手段)の輝度(光量)を調整するためのスイッチである。第2出力設定スイッチ194は、パチンコ機100の背面に配設されているため、前面枠扉106の施解錠を行うことができる者(例えば、遊技店の店員等)は前面枠扉160を開放することで操作を行うことができるが、前面枠扉106の施解錠を行うことができない者(例えば、遊技者)は操作を行うことができないように構成されている。」

ウ 「【0481】
図36(a)は、スピーカ120から出力される音の音量(音圧)の設定値を示す音量設定テーブルの一例である。この音量設定テーブルは、遊技台の記憶手段(本例では、第1副制御部400のROM406)に予め記憶されるテーブルである。
【0482】
第1副制御部400は、第1副制御部メイン処理のステップS608(サウンド制御メインループ処理)において、この音量設定テーブルを参照するとともに、第2出力設定スイッチ192による設定値に基づいて、音量の初期値や音量の調整可能範囲の設定を行う。
・・・
【0484】
音量(音圧)は、第2出力設定スイッチ194の操作によって管理者設定値(目盛り0?F)を変更するか、設定値調整モードにおいて、第1出力設定スイッチ190の操作によって遊技者設定値(目盛り0?5)を変更することにより調整可能である。
【0485】
本例では、第2出力設定スイッチ194による設定のうち「1」?「F」は通常営業用(通常モード)や開発および販促用に使用され、「0」は申請用に使用される。
・・・
【0490】
設定が「6」であるときには、音圧の初期値は114dBに設定され、音量設定の初期位置は2に設定される。すなわち、設定値調整モードに遷移したとき、音量のユーザー設定値はデフォルトとして目盛り2(音圧114dB)に設定される。設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190の操作により、音量調整画面の目盛り0?5のそれぞれに対応して、音圧0dB、72dB、114B、128dB、144B、および152dBの各レベルに調整可能である。
【0491】
設定が「5」?「4」であるときには、音圧の初期値は91dBに設定され、音量設定の初期位置は2に設定される。すなわち、調整値設定モードに遷移したとき、音量のユーザー設定値はデフォルトとして目盛り2(音圧91dB)に設定される。また、設定「5」?「4」のときには、設定「9」?「6」のときと比較して、音量調整画面で調整可能な音圧レベルの範囲が全体的に狭くなっており、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190の操作により、音量調整画面の目盛り0?5のそれぞれに対応して、音圧が0dB、72dB、91dB、102dB、108dB、および114dBの各レベルに調整可能である。」

エ 図36(a)
「【図36(a)】



オ 「【0499】
図36(b)は、第1出力設定スイッチ190の正面図である。上述のとおり、この第1出力設定スイッチ190は、パチンコ機100のスピーカ(音出力手段)120から出力する音(例えば、BGM、効果音、エラー音等)の音量(音圧)や、各種LED・各種ランプ(光出力手段。以下、「発光手段」と称する場合がある)の輝度(光量)を調整するための操作手段である。
・・・
【0502】
<特別演出中の音量設定/出力設定スイッチ/第2出力設定スイッチ>
【0503】
図36(c)は、第2出力設定スイッチ194の正面図である。上述のとおり、この第2出力設定スイッチ194は、パチンコ機100のスピーカ(音出力手段)120から出力する音(例えば、BGM、効果音、エラー音等)の音量(音圧)や、各種LED・各種ランプ(光出力手段。以下、「発光手段」と称する場合がある)の輝度(光量)を調整するための操作手段である。
・・・
【0524】
続く図38(b)は、島一斉演出中の状態を示しており、続く図38(c)?同図(d)は、島一斉演出中にエラーが発生した状態を示している。第1副制御部400は、予め定めたエラー(本例では、前面枠扉106が開放されたことを示す扉開放エラー)が発生したことを契機として、演出に用いる音(第一の種類の音)の音量を消音するとともに、エラー報知に用いる音(第二の種類の音)の音量を、現在の音量設定値の音量(第一の音量。本例では、0dB)から、現在の音量値設定において第1出力設定スイッチ190(遊技者操作)によって設定することが可能な最大音量(第二の音量。本例では、目盛り5に対応する音量)に変更している。」


(2)認定事項
ア 認定事項ア
引用文献1の【0481】には、「図36(a)は、スピーカ120から出力される音の音量(音圧)の設定値を示す音量設定テーブルの一例である。」と、【0484】には、「音量(音圧)は、・・・第2出力設定スイッチ194の操作によって管理者設定値(目盛り0?F)を変更するか、設定値調整モードにおいて、第1出力設定スイッチ190の操作によって遊技者設定値(目盛り0?5)を変更することにより調整可能である。」と記載され、また、図36(a)より、音量設定テーブルにおける「出力設定スイッチ」の欄に、縦方向に下側から、「0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、A、B、C、D、E、F」という16個の数字及びアルファベットが記載される点、及び、同欄に、横方向に左側から、「0、1、2、3、4、5」という6個の数字が記載される点が見てとれるから、引用文献1には、スピーカ120から出力される音の音量(音圧)の調整を行うための設定値に関し、目盛り0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、A、B、C、D、E、Fの16個の管理者設定値を変更する第2出力設定スイッチ194、及び、目盛り0、1、2、3、4、5の6個の遊技者設定値を変更する第1出力設定スイッチ190を備えることが記載されていると認められる。

イ 認定事項イ
上記アの検討を踏まえ、スピーカ120から出力される音の音量(音圧)の設定値を示す音量設定テーブルを表す図36(a)の記載から、
引用文献1には、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「1」であるときに対応する音量(音圧)が72dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「2」であるときに対応する音量(音圧)が91dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「5」であるときに対応する音量(音圧)が114dbである各レベルに調整可能であるとともに、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「1」であるときに対応する音量(音圧)が72dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「2」であるときに対応する音量(音圧)が114dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「5」であるときに対応する音量(音圧)が152dbである各レベルに調整可能であることが記載されていると認められる。

ウ 認定事項ウ
(ア)引用文献1の【0524】には、「続く図38(b)は、島一斉演出中の状態を示しており、続く図38(c)?同図(d)は、島一斉演出中にエラーが発生した状態を示している。第1副制御部400は、予め定めたエラー(本例では、前面枠扉106が開放されたことを示す扉開放エラー)が発生したことを契機として、演出に用いる音(第一の種類の音)の音量を消音するとともに、エラー報知に用いる音(第二の種類の音)の音量を、現在の音量設定値の音量(第一の音量。本例では、0dB)から、現在の音量値設定において第1出力設定スイッチ190(遊技者操作)によって設定することが可能な最大音量(第二の音量。本例では、目盛り5に対応する音量)に変更している。」と記載されている。

引用文献1の【0482】には、「第1副制御部400は、第1副制御部メイン処理のステップS608(サウンド制御メインループ処理)において、この音量設定テーブルを参照するとともに、第2出力設定スイッチ194による設定値に基づいて、音量の初期値や音量の調整可能範囲の設定を行う。」と、【0484】には、「音量(音圧)は、第2出力設定スイッチ194の操作によって管理者設定値(目盛り0?F)を変更する」と、【0490】には、「設定が「6」であるときには、音圧の初期値は114dBに設定され、音量設定の初期位置は2に設定される。すなわち、設定値調整モードに遷移したとき、音量のユーザー設定値はデフォルトとして目盛り2(音圧114dB)に設定される。設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190の操作により、音量調整画面の目盛り0?5のそれぞれに対応して、音圧0dB、72dB、114B、128dB、144B、および152dBの各レベルに調整可能である。」と記載されている。

(ウ)以上を併せると、上記(ア)で摘記した【0524】における「現在の音量値設定」とは、第2出力設定スイッチ194による管理者設定値を意味し、【0524】における上記「現在の音量値設定において第1出力設定スイッチ190(遊技者操作)によって設定することが可能な最大音量(第二の音量。本例では、目盛り5に対応する音量)に変更している。」という記載は、第2出力設定スイッチ194による管理者設定値に基づいて設定された音量の調整可能範囲である目盛り0?5からなる遊技者設定値のうち、最大音量である目盛り5に対応する音量に変更することを意味していると認められる。
また、上記(ア)で摘記した【0524】における「エラー報知に用いる音」は「エラー音」と、同「音量」は「音量(音圧)」とも記載されるから(例えば、【0499】等を参照。)、
引用文献1には、エラーの例として、扉開放エラーが発生したことを契機として、第2出力設定スイッチ194による管理者設定値に基づいて設定された音量の調整可能範囲である目盛り0?5からなる遊技者設定値のうち、最大音量である目盛り5に対応する音量に、エラー音の音量(音圧)を変更することが記載されていると認められる。

(3)引用発明
上記(1)、(2)を総合すると、引用文献1には、次の引用発明が記載されていると認められる(符号a?j1は、本願発明の分説に対応させて、当審が付した。)。

引用発明
「a パチンコ機100の背面に配設され、スピーカ120から出力するBGM、効果音、エラー音等の音の音量(音圧)を操作によって目盛り0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、A、B、C、D、E、Fの16個の管理者設定値を変更する第2出力設定スイッチ194と(【0022】、【0484】、図36(a)、認定事項ア)、

b パチンコ機100の正面に配設され、スピーカ120から出力するBGM、効果音、エラー音等の音の音量(音圧)を操作によって目盛り0、1、2、3、4、5の6個の遊技者設定値を変更する第1出力設定スイッチ190と(【0015】、【0484】、図36(a)、認定事項ア)、

c、f1?f3、g1?g3、i1?i3、j1 音量設定テーブルを参照するとともに、第2出力設定スイッチ194による設定値に基づいて、音量(音圧)の初期値や音量(音圧)の調整可能範囲の設定を行うとともに、音量(音圧)は、第2出力設定スイッチ194の操作によって管理者設定値を変更するか、設定値調整モードにおいて、第1出力設定スイッチ190の操作によって遊技者設定値を変更することにより調整可能である第1副制御部400とを備え(【0482】、【0484】)、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「1」であるときに対応する音量(音圧)が72dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「2」であるときに対応する音量(音圧)が91dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「5」であるときに対応する音量(音圧)が114dbである各レベルに調整可能であるとともに、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「1」であるときに対応する音量(音圧)が72dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「2」であるときに対応する音量(音圧)が114dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「5」であるときに対応する音量(音圧)が152dbである各レベルに調整可能であり(認定事項イ)、
扉開放エラーが発生したことを契機として、第2出力設定スイッチ194による管理者設定値に基づいて設定された音量の調整可能範囲である目盛り0?5からなる遊技者設定値のうち、最大音量である目盛り5に対応する音量に、エラー音の音量(音圧)を変更する(認定事項ウ)、

e パチンコ機100(【0022】)。」

2 引用文献2に記載された技術
原査定の拒絶理由において引用された特開2008-126008号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。

(1)記載事項
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技の進行に合わせて所定の効果音を出力する遊技機に関する。
・・・
【0006】
本発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、遊技演出に関する効果音の出力音量を消音から大音量までの範囲で調整可能であるとともに、エラー発生時には、その旨を効果音によって確実に報知することが可能な技術の提供を目的とする。」

イ 「【0039】
また、裏機構盤102の中央部付近においては、演出制御基板ケース114、アンプ基板ケース115、装飾駆動基板ケース116、サブ制御基板ケース117などが設けられている。演出制御基板ケース114は、演出表示装置27を駆動する演出制御基板230を収容している。アンプ基板ケース115は、各種スピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板226を収容している。装飾駆動基板ケース116は、装飾用の各種LEDやランプを駆動する装飾駆動基板228を収容している。サブ制御基板ケース117は、これら演出制御基板230、アンプ基板226や装飾駆動基板228などを制御するサブ制御基板220を収容している。そして、サブ制御基板ケース117の前面には、各種スピーカ5y,6cから出力される音量を調節するための音量設定スイッチ300が設けられている。」

ウ 「【0079】
ここで、前述したように主制御基板200は、図10に示した遊技制御処理を実行する中で、遊技の演出に関する種々の制御コマンド(演出コマンド)をサブ制御基板220に向かって出力する。サブ制御基板220では、受け取った演出コマンドに基づいて具体的な演出の態様を決定し、演出表示装置27、各種スピーカ5y,6c、各種LEDやランプ類4b?4fを用いて様々な演出を行っている。また、遊技機1において何らかの異常が発生した場合には、その旨が主制御基板200からサブ制御基板220に伝達され、サブ制御基板220は、演出表示装置27、各種スピーカ5y,6c、各種LEDやランプ類4b?4fを用いてエラーの発生を報知するようになっている。そして、本実施例の遊技機1では、エラーの発生を効果音によって確実に報知するために、サブ制御基板220によって特別な処理が行われている。以下では、サブ制御基板220が効果音によってエラー発生を報知するために行う処理(エラー報知制御処理)の内容について詳しく説明する。・・・
【0081】
ここで、本実施例の音量設定スイッチ300には、いわゆるスライドスイッチが採用されており、前述したように、サブ制御基板ケース117の前面に設置されている(図2参照)。図12は、本実施例の遊技機1に設けられている音量設定スイッチ300を切り換える様子を示した説明図である。図示されているように、つまみ300aを左右にスライドさせることによって、4段階に設定可能となっている。先ず、つまみ300aを左端までスライドさせると、スイッチ0の状態となる。そして、つまみ300aを1段階右にスライドさせると(図12に示された状態)スイッチ1の状態となり、更にもう1段階右にスライドさせるとスイッチ2の状態となり、右端までスライドさせるとスイッチ3の状態となる。もちろん、音量設定スイッチ300は、スライドスイッチに限られるわけではなく、複数段階に切り換え可能であれば、どのようなタイプのスイッチであってもよく、また、複数のスイッチを設けることとしてもよい。尚、音量設定スイッチ300の4つの状態(スイッチ0?3)の中から何れかの状態を選択することによって効果音の音量を設定可能であることから、本実施例の音量設定スイッチ300は、本発明の「設定値選択手段」の一態様を構成している。
【0082】
このようにして効果音の内容および音量が指定された効果音指定信号を受け取ると、音源IC224では、効果音指定信号の内容に従って、サブ制御基板220に搭載されたROM223から効果音データの読み出しを行う。ROM223には予め様々な効果音データが記憶されており、その中から指定された効果音に該当するデータを読み出して、CPU221により指定された音量で効果音データ信号をアンプ基板226に向かって出力する。こうして出力された効果音データ信号はアンプ基板226で増幅されて、スピーカ5y,6cから効果音が出力される。また、音源IC224は、アンプ基板226に向けて効果音データ信号を出力すると同時に、効果音の出力中であることを示す信号(出力通知信号)をCPU221に向かって出力している。CPU221では、この出力通知信号に基づいて、効果音が出力されているか否かを判断可能となっている。
【0083】
以上のように、本実施例の遊技機1では、サブ制御基板220のCPU221が、主制御基板200からの演出コマンドまたはエラー報知コマンドに従って、出力する効果音の具体的な内容および音量を指定している。そして、音源IC224が、指定された音量で、指定された効果音データ信号を出力することにより、スピーカ5y,6cから効果音が出力されるようになっている。以下では、遊技機1に異常が発生した場合に、サブ制御基板220のCPU221が実行するエラー報知制御処理の内容について説明する。・・・
【0085】
一方、何れかのエラー報知コマンドを受け取ったと判断した場合には(S500:yes)、通常時用の音量テーブルからエラー時用の音量テーブルに変更する処理を行う(S502)。ここで、音量テーブルとは、出力する効果音の音量を決定する際に参照する専用のテーブルであり、このテーブルには、前述した音量設定スイッチ300の状態(図12参照)と効果音の音量との対応関係が設定されている。本実施例の遊技機1では、通常時に参照する通常時用の音量テーブルと、エラー発生時に参照するエラー時用の音量テーブルとが設けられている。尚、これらの音量テーブルは、ROM223に予め記憶されており、参照する音量テーブルをCPU221が読み出すようになっている。従って、本実施例のサブ制御基板220に搭載されたROM223は、本発明の「音量テーブル記憶手段」の一態様を構成しており、また、本実施例のサブ制御基板220に搭載されたCPU221は、本発明の「音量テーブル選択手段」の一態様を構成している。
【0086】
図14は、本実施例の遊技機1で用いられる通常時用の音量テーブルおよびエラー時用の音量テーブルを例示した説明図である。図14(a)に示した通常時用の音量テーブルでは、スイッチ0に対しては「消音」と設定されている。これは、音量設定スイッチ300がスイッチ0の状態であった場合には、効果音を出力しないことを表している。また、スイッチ1の状態であれば、効果音を「小」音量で出力するように設定されており、スイッチ2の状態であれば「中」音量で出力し、スイッチ3の状態であれば「大」音量で出力するように設定されている。従って、遊技ホールの管理者(店員)が音量設定スイッチ300をスイッチ0?3の何れの状態にしておくかによって、「消音」から「大」音量まで、遊技ホールの環境や雰囲気に合わせた効果音の音量調整が可能となっている。
【0087】
これに対して、図14(b)に示したエラー時用の音量テーブルでは、スイッチ0に対して「大」音量と設定されている。このため、音量設定スイッチ300がスイッチ0の状態であった場合には、効果音を「大」音量で出力するようになっている。」

エ 「【0097】
D.変形例 :
D-1.第1変形例 :
以上に説明した実施例では、通常時用の音量テーブルとエラー時用の音量テーブルとを比較すると、スイッチ0に対する設定のみが変更(「消音」から「大」音量へ)されていた。しかし、エラー時用の音量テーブルは、このような設定に限られるわけではない。例えば、スイッチ0?スイッチ3の状態の何れに対しても、通常時用の音量テーブルにおける最大音量である「大」音量を設定しておいてもよい。こうすれば、通常時の効果音の音量が「消音」、「小」、「中」、「大」の何に設定されていても(すなわち、音量設定スイッチ300の状態とは関係なく)、エラー報知音は全て「大」音量で出力されるため、より確実にエラー発生を報知することが可能となる。尚、エラー時用の音量テーブルのスイッチ0?スイッチ3のすべてに対して、通常時の音量テーブルにおける最大音量の「大」音量よりも大きな音量を設定してもよい。このようにすれば、通常時の効果音の最大音量よりも大きな音量でエラー報知音を出力することができるので、さらに確実にエラー発生を報知することが可能となる。」

オ 図14


(2)上記(1)から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

引用文献2に記載の技術
「各種スピーカ5y,6cから出力される音量を調節するための音量設定スイッチ300がサブ制御基板ケース117の前面に設けられ(【0039】)、
音量設定スイッチ300の4つの状態(スイッチ0?3)の中から何れかの状態を選択することによって効果音の音量を設定可能であって(【0081】)、
音量設定スイッチ300の状態と効果音の音量との対応関係が設定され、出力する効果音の音量を決定する際に参照する音量テーブルには、通常時に参照する通常時用の音量テーブルと、エラー発生時に参照するエラー時用の音量テーブルとが設けられ(【0085】)、
通常時用の音量テーブルでは、音量設定スイッチ300がスイッチ0の状態であった場合には、効果音を出力しないことを表し、スイッチ1の状態であれば、効果音を「小」音量で出力するように設定され、スイッチ2の状態であれば「中」音量で出力し、スイッチ3の状態であれば「大」音量で出力するように設定され、エラー時用の音量テーブルのスイッチ0?スイッチ3のすべてに対して、通常時の音量テーブルにおける最大音量の「大」音量よりも大きな音量を設定する遊技機1という技術(【0081】、【0086】、【0097】)。」


第6 対比・判断
1 対比
分説に従い、引用発明と本願発明とを対比する。
ア 構成Aについて
引用発明の
「パチンコ機100の背面に配設され」ること、
「スピーカ120から出力するBGM、効果音、エラー音等の音の音量(音圧)を」「変更する」「目盛り」が「16個」あること、
「管理者設定値」、
「操作によって」「変更する」こと、
「第2出力設定スイッチ194」は、それぞれ、
本願発明の
「本体後側に配置され」ること、
「複数段階」、
「甲値」、
「選択操作が可能」であること、
「甲操作手段」に相当する。

よって、引用発明の「パチンコ機100の背面に配設され」、「スピーカ120から出力するBGM、効果音、エラー音等の音の音量(音圧)を」「変更する」「目盛り」が「16個」ある「管理者設定値」を「操作によって」「変更する第2出力設定スイッチ194」は、本願発明の「本体後側に配置され且つ複数段階の甲値に関する選択操作が可能な甲操作手段」に相当するので、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

イ 構成Bについて
引用発明の
「パチンコ機100の正面に配設され」ること、
「スピーカ120から出力するBGM、効果音、エラー音等の音の音量(音圧)を」「変更する」「目盛り」が「6個」あること、
「遊技者設定値」、
「操作によって」「変更する」こと、
「第1出力設定スイッチ190」は、それぞれ、
本願発明の
「本体前側に配置され」ること、
「複数段階」、
「乙値」、
「選択操作が可能」であること、
「乙操作手段」に相当する。

よって、引用発明の「パチンコ機100の正面に配設され」、「スピーカ120から出力するBGM、効果音、エラー音等の音の音量(音圧)を」「変更する」「目盛り」が「6個」ある「遊技者設定値」を「操作によって」「変更する第1出力設定スイッチ190」は、本願発明の「本体前側に配置され且つ複数段階の乙値に関する選択操作が可能な乙操作手段」に相当するので、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する。

ウ 構成Cについて
上記ア、イより、引用発明の「管理者設定値」、「第2出力設定スイッチ194」、「遊技者設定値」、「第1出力設定スイッチ190」は、それぞれ、本願発明の「甲値」、「甲操作手段」、「乙値」、「乙操作手段」に相当することを踏まえると、
引用発明の
「第2出力設定スイッチ194による管理者設定値」、
「設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値」、
「スピーカ120から出力するBGM、効果音」、
「管理者設定値」と「遊技者設定値」に「対応する音量(音圧)」、
「調整可能である」こと、
「第1副制御部400」は、それぞれ、
本願発明の
「前記甲操作手段により得られた前記甲値」、
「前記乙操作手段により得られた前記乙値」、
「通常音」、
「所定値」、
「設定可能」であること、
「所定値設定手段」に相当し、
引用発明の構成c、f1?f3、g1?g3、i1?i3、j1と本願発明の構成Cとは、前記甲操作手段により得られた前記甲値及び前記乙操作手段により得られた前記乙値に基づいて、通常音に関する音量である所定値を設定可能な所定値設定手段とを備える点で共通する。

エ 構成Eについて
引用発明の「パチンコ機100」は、本願発明の「遊技機」に相当するから、引用発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する。

オ 構成F1について
上記ウより、引用発明の「第2出力設定スイッチ194による管理者設定値」、「設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値」は、それぞれ、本願発明の「前記甲操作手段により得られた前記甲値」、「前記乙操作手段により得られた前記乙値」に相当するから、
引用発明の
「管理者設定値」である「「5」」、
「遊技者設定値」である「「1」」、
「対応する音量(音圧)」である「72db」は、それぞれ、
本願発明の
「第1甲値」、
「第1乙値」、
「第1所定値」に相当し、
引用発明の「第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「1」であるときに対応する音量(音圧)が72dbであ」ることは、本願発明の「前記甲操作手段の操作により第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により第1乙値が選択された場合に第1所定値が設定され」ることに相当する。

よって、引用発明の構成c、f1?f3、g1?g3、i1?i3、j1は、本願発明の構成F1に相当する構成を含んでいる。

カ 構成F2について
上記オで検討したとおり、引用発明の「管理者設定値」である「「5」」は、本願発明の「第1甲値」に相当する。
そして、引用発明の
「「1」」より大きい「遊技者設定値」である「「2」」、
「対応する音量(音圧)」である「91db」は、それぞれ、
本願発明の
「前記第1乙値よりも大となる第2乙値」、
「第2所定値」に相当し、
引用発明において、「第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「2」であるときに対応する音量(音圧)が91dbであ」ることは、本願発明の「前記甲操作手段の操作により前記第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第1乙値よりも大となる第2乙値が選択された場合に第2所定値が設定され」ることに相当する。

よって、引用発明の構成c、f1?f3、g1?g3、i1?i3、j1は、本願発明の構成F2に相当する構成を含んでいる。

キ 構成G1、G2について
上記オより、引用発明の「遊技者設定値」である「「1」」は、本願発明の「第1乙値」に相当し、上記カより、引用発明の「遊技者設定値」である「「2」」は、本願発明の「第2乙値」に相当することを踏まえて対比を行うと、
引用発明の
「管理者設定値」である「「6」」、
「対応する音量(音圧)」である「72db」、
「対応する音量(音圧)」である「114db」は、それぞれ、
本願発明の
「第2甲値」、
「第3所定値」、
「第4所定値」に相当し、
引用発明の「第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「1」であるときに対応する音量(音圧)が72dbであり、
第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「2」であるときに対応する音量(音圧)が114dbであ」ることは、本願発明の「前記甲操作手段の操作により第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第1乙値が選択された場合に第3所定値が設定され、
前記甲操作手段の操作により前記第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第2乙値が選択された場合に第4所定値が設定され」ることに相当する。

よって、引用発明の構成c、f1?f3、g1?g3、i1?i3、j1は、本願発明の構成G1、G2に相当する構成を含んでいる。

ク 構成I1、I2について
上記オより、引用発明の「対応する音量(音圧)」である「72db」は、本願発明の「第1所定値」に相当し、
上記カより、引用発明の「対応する音量(音圧)」である「91db」は、本願発明の「第2所定値」に相当し、
上記キより、引用発明の「対応する音量(音圧)」である「72db」、同「114db」は、それぞれ、本願発明の「第3所定値」、「第4所定値」に相当することを踏まえて対比を行うと、
引用発明の「対応する音量(音圧)」である「72db」にともに相当する本願発明の「第1所定値」と「第3所定値」とは同じ値あり、また、引用発明の「対応する音量(音圧)」である「91db」と「72db」との差は19dbであって、同「114db」と「72db」との差は19dbとは異なる値である42dbである。

よって、引用発明の構成c、f1?f3、g1?g3、i1?i3、j1は、本願発明の構成I1、I2に相当する構成を含んでいる。

ケ 構成F3、G3、I3について
上記イより、引用発明の「遊技者設定値」は、本願発明の「乙操作手段」に相当し、上記オより、引用発明の「管理者設定値」である「「5」」は、本願発明の「第1甲値」に相当し、上記キより、引用発明の「管理者設定値」である「「6」」は、本願発明の「第2甲値」に相当することを踏まえて対比すると、
引用発明の構成bより、「第1出力設定スイッチ190」の操作により変更する「遊技者設定値」は、「目盛り0、1、2、3、4、5の6個」あるから、「遊技者設定値」である「「5」は、本願発明の「乙操作手段の操作により選択可能な上限乙値」に相当する。

構成F3について、引用発明において、「管理者設定値が「5」」(本願発明の「第1甲値」に相当。)であって、「遊技者設定値が「5」」(本願発明の「上限乙値」相当。)「であるときに対応する音量(音圧)」である「114db」は、本願発明の「第1上限所定値」に相当する。

構成G3について、引用発明において、「管理者設定値が「6」」(本願発明の「第2甲値」に相当。)であって、「遊技者設定値が「5」」(本願発明の「上限乙値」相当。)「であるときに対応する音量(音圧)」である「152db」は、本願発明の「第2上限所定値」に相当する。

構成I3について、上記(ア)、(イ)より、引用発明において、「管理者設定値が「5」」(本願発明の「第1甲値」に相当。)であって、「遊技者設定値が「5」」(本願発明の「上限乙値」相当。)「であるときに対応する音量(音圧)」である「114db」(本願発明の「第1上限所定値」に相当。)と、「管理者設定値が「6」」(本願発明の「第2甲値」に相当。)であって、「遊技者設定値が「5」」(本願発明の「上限乙値」相当。)「であるときに対応する音量(音圧)」である「152db」(本願発明の「第2上限所定値」に相当。)とは異なる値である。

そうすると、引用発明において、「第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「5」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「5」であるときに対応する音量(音圧)が114dbである」とともに、「第2出力設定スイッチ194による管理者設定値が「6」であって、設定値調整モードにおける第1出力設定スイッチ190による遊技者設定値が「5」であるときに対応する音量(音圧)が152dbである」という「レベルに調整可能である」ことは、本願発明において、「前記第1上限所定値と前記第2上限所定値とを異ならせ」ることに相当する。

よって、引用発明の構成c、f1?f3、g1?g3、i1?i3、j1は、本願発明の構成F3、G3、I3に相当する構成を含んでいる。

コ 構成J1について
上記ウより、引用発明の「管理者設定値」、「第2出力設定スイッチ194」は、それぞれ、本願発明の「甲値」、「甲操作手段」に相当することを踏まえると、
引用発明において、
「第2出力設定スイッチ192による管理者設定値に基づいて設定された音量の調整可能範囲である目盛り0?5からなる遊技者設定値のうち、最大音量である目盛り5に対応する」ことは、
本願発明において、
「前記甲操作手段により得られた前記甲値に基づいて」いることに相当し、
また、引用発明の
「扉開放エラーが発生したことを契機として」「変更」される「エラー音の音量(音圧)」、
「変更する」こと、はそれぞれ、
本願発明の
「エラー音に関するエラー音量」、
「設定可能であ」ることに相当する。

よって、引用発明の構成c、f1?f3、g1?g3、i1?i3、j1において、「扉開放エラーが発生したことを契機として」、「第2出力設定スイッチ192による管理者設定値に基づいて設定された音量の調整可能範囲である目盛り0?5からなる遊技者設定値のうち、最大音量である目盛り5に対応する」「エラー音の音量(音圧)」に「変更する」ことは、本願発明の構成J1と、前記甲操作手段により得られた前記甲値に基づいて、前記エラー音に関するエラー音量を設定可能である点で共通する。

サ 構成J2について
上記コで検討したとおり、引用発明の「エラー音の音量(音圧)」は、本願発明の「エラー音に関するエラー音量」に相当し、
引用発明の「扉開放エラーが発生したこと」は、本願発明の「エラー発生中」に相当し、
引用発明の構成aにおいて、「エラー音」が、「スピーカ120から出力」されることは、本願発明において、「エラー音を」「出力」することに相当するから、
引用発明において、「扉開放エラーが発生したことを契機として」、「エラー音」が、「変更」された「エラー音の音量(音圧)」で「スピーカ120から出力」されることは、本願発明の構成J2と、エラー発生中は、前記エラー音を前記エラー音量にて出力する点で共通する。

2 一致点・相違点
上記ア?コによれば、本願発明と引用発明は、
一致点
「A 本体後側に配置され且つ複数段階の甲値に関する選択操作が可能な甲操作手段と、
B 本体前側に配置され且つ複数段階の乙値に関する選択操作が可能な乙操作手段と、
C’ 前記甲操作手段により得られた前記甲値及び前記乙操作手段により得られた前記乙値に基づいて、通常音に関する音量である所定値を設定可能な所定値設定手段とを備えた
E 遊技機において、
F1 前記甲操作手段の操作により第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により第1乙値が選択された場合に第1所定値が設定され、
F2 前記甲操作手段の操作により前記第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第1乙値よりも大となる第2乙値が選択された場合に第2所定値が設定され、
G1 前記甲操作手段の操作により第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第1乙値が選択された場合に第3所定値が設定され、
G2 前記甲操作手段の操作により前記第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により前記第2乙値が選択された場合に第4所定値が設定され、
I1 前記第1所定値と前記第3所定値とを同一とし、
I2 前記第1所定値と前記第2所定値との変化量と、前記第3所定値と前記第4所定値との変化量とを異ならせ、
F3 前記第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により選択可能な上限乙値が選択されている場合に第1上限所定値が設定され、
G3 前記第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により選択可能な上限乙値が選択されている場合に第2上限所定値が設定され、
I3 前記第1上限所定値と前記第2上限所定値とを異ならせ、
J1’ 前記甲操作手段により得られた前記甲値に基づいて、前記エラー音に関するエラー音量を設定可能であり、
J2’ エラー発生中は、前記エラー音を前記エラー音量にて出力する
E 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点
(1)相違点1(構成Cについて)
所定値設定手段が設定可能な所定値が、本願発明は、「エラー音を含まない通常音に関する音量である」のに対し、引用発明の「音量(音圧)」が、扉開放エラー以外のエラー音を含まないかどうか不明である点。

(2)相違点2(構成Dについて)
本願発明は、「電源投入時に、所定条件に基づいて実行されるRAMクリア処理を含む電源投入処理を実行するように構成され」ているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えているかどうか明らかでない点。

(3)相違点3(構成J1について)
エラー音に関するエラー音量を設定するために、本願発明は、「エラー音設定テーブルから」設定するのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(4)相違点4(構成J2について)
エラー発生中にエラー音量で出力されるエラー音について、本願発明は、エラーの種類として、「前記RAMクリア処理が行われたことを報知するRAMクリア報知中を含む」とともに、エラー音として、「RAMクリア報知音を含む」のに対し、引用発明は、そのような構成を備えているかどうか明らかでない点。

(5)相違点5(構成J3について)
本願発明は、「前記甲値を変更した場合、前記エラー音設定テーブルの参照先は変化する一方、前記所定値の値にかかわらず、前記エラー音量として共通の特定値を参照することで、当該エラー音量が変化しないように構成され」ているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(6)相違点6(構成J4について)
本願発明は、「前記特定値は、前記第1上限所定値及び前記第2上限所定値よりも大きな値であ」るのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(7)相違点7(構成J5について)
本願発明は、「前記RAMクリア報知中は、前記甲操作手段による前記所定値の設定を可能とする」のに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

3 判断
事案に鑑み、相違点5及び相違点6について検討する。
(1)相違点5について
ア 引用文献2に記載の技術の
「音量設定スイッチ300」、
「音量設定スイッチ300の状態」である「スイッチ0」、「スイッチ1」、「スイッチ2」、「スイッチ3」及び「スイッチ0?スイッチ3」、
「エラー発生時に参照するエラー時用の音量テーブル」、
「エラー時用の音量テーブルのスイッチ0?スイッチ3のすべてに対して」「設定された」「通常時の音量テーブルにおける最大音量の「大」音量よりも大きな音量」は、それぞれ、
本願発明の
「甲操作手段」、
「甲値」、
「エラー音設定テーブル」、
「エラー音に関するエラー音量」に相当する。
そして、引用文献2に記載の技術において、「エラー発生時に参照するエラー時用の音量テーブル」が、「エラー時用の音量テーブルのスイッチ0?スイッチ3のすべてに対して」「音量」が「設定され」ていることは、本願発明において、「前記甲値を変更した場合、前記エラー音設定テーブルの参照先は変化する」ことに相当する構成を備えているといえる。
そうすると、「エラー発生時に参照するエラー時用の音量テーブル」が、「エラー時用の音量テーブルのスイッチ0?スイッチ3のすべてに対して」「音量」が「設定され」ている引用文献2に記載の技術は、本願発明の構成J3と、甲値を変更した場合、エラー音設定テーブルの参照先は変化するという点で共通する。

イ しかし、引用文献2に記載の技術は、「効果音の音量を」、「音量設定スイッチ300」(本願発明の「甲操作手段」に相当。)「の4つの状態(スイッチ0?3)の中から何れかの状態を選択することによって」「設定可能」としているから、本願発明の構成Cの「前記甲操作手段により得られた前記甲値」に相当する構成を有する一方、同構成Cの「乙操作手段」及び「乙値」に相当する構成を有しない。

ウ ここで、本願発明の構成J3における「前記所定値の値にかかわらず」という事項は、当該「所定値」が、構成Cにおいて、「前記甲操作手段により得られた前記甲値及び前記乙操作手段により得られた前記乙値に基づいて、」「設定可能」と特定され、構成J3において、「前記甲値を変更した場合」について特定されていることを踏まえると、乙値が異なっていても、ということを意味していると認められる。
しかし、上記イのとおり、引用文献2には、本願発明の「乙値」に相当する構成が記載も示唆もされていないので、本願発明の構成J3の「前記甲値を変更した場合、前記エラー音設定テーブルの参照先は変化する一方、前記所定値の値にかかわらず、前記エラー音量として共通の特定値を参照することで、当該エラー音量が変化しないように構成され」ているという構成が記載されているとは認められない。

(2)相違点6について
ア 上記(1)イと同様、引用文献2に記載の技術は、本願発明の構成F3及び構成G3の「乙操作手段」及び「乙値」に相当する構成を有しないから、そもそも、引用文献2には、「前記第1甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により選択可能な上限乙値が選択されている場合に」「設定され」る「第1上限所定値」(構成F3)及び「前記第2甲値が選択され且つ前記乙操作手段の操作により選択可能な上限乙値が選択されている場合に」「設定され」る「第2上限所定値」(構成G3)という構成が記載されていないのであるから、同構成J4の「前記第1上限所定値及び前記第2上限所定値よりも大きな値であ」る「前記特定値」という構成も当然に記載されているとはいえない。

イ よって、引用文献2には、本願発明の構成J4における「前記特定値は、前記第1上限所定値及び前記第2上限所定値よりも大きな値であ」るという構成が記載されているとは認められない。

(3)上記(1)、(2)から、相違点5及び相違点6は、引用文献2に記載されていないから、引用発明に引用文献2に記載の技術を採用できたとしても、相違点5及び相違点6に係る本願発明の構成が、当業者にとって想到容易であるとはいえない。

(4)したがって、本願発明は、その余の相違点である相違点1?4及び相違点7を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明は、「前記所定値の値にかかわらず、前記エラー音量として共通の特定値を参照することで、当該エラー音量が変化しないように構成され」ているという構成(構成J3)及び「前記特定値は、前記第1上限所定値及び前記第2上限所定値よりも大きな値であ」るという構成(構成J4)を有するものとなっており、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1及び引用文献2に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-10 
出願番号 特願2018-86945(P2018-86945)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 手塚 毅  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人谷藤特許事務所  

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