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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1377160
審判番号 不服2020-60  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-06 
確定日 2021-08-11 
事件の表示 特願2018- 31600「亜鉛金属及び過酸化亜鉛の反応接合により形成される層状の接合構造」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 93222〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成25年5月13日(パリ条約による優先権主張2012年5月14日、米国)に出願された特許出願(特願2013-101464号)の一部を、平成30年2月26日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2018?31600号)としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 3月20日 :手続補正書の提出
平成30年12月12日付け:拒絶理由通知書
平成31年 3月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 8月28日付け:拒絶査定
令和 2年 1月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 9月30日付け:補正の却下の決定、最後の拒絶理由通知書
令和 3年 1月21日 :意見書、手続補正書の提出

2 本願発明
令和3年1月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
単一層の接合構造(60)であって、
半導体を備える第1構造(10)と、
半導体を備える第2構造(20)と、
前記第1構造(10)及び第2構造(20)との間で前記第1構造(10)及び第2構造(20)の両方と接触して単一層の接合構造を形成する酸化亜鉛を含む層(50)とを含み、
前記酸化亜鉛は、前記第1構造及び前記第2構造の少なくとも1つの上の亜鉛金属の層を酸化させることにより形成され、当該層は、前記第1構造及び前記第2構造の少なくとも1つの上の過酸化亜鉛の層と接触しており、
前記第1構造及び前記第2構造の少なくとも1つは光起電性である、単一層の接合構造(60)。」(以下「本願発明」という。)

3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶の理由である、令和2年9月30日付け最後の拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)の理由は、概略、次のとおりのものである。

「本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1について
請求項1に係る発明は、「層状構造」という物の発明であるが、当該請求項には、「酸化亜鉛(50)を含む層であって、前記酸化亜鉛(50)は、前記第1層及び前記第2層を接触させて前記亜鉛金属(40)を酸化させることにより形成される、酸化亜鉛(50)を含む層」との記載があり、その物の製造方法が記載されているものと認められる(請求項1を直接・間接に引用する請求項2?4についても同様である。)。
ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、請求人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?4に係る発明は、明確でない。

(2)請求項2?4について
請求項2?4に係る発明は、「層状構造」という物の発明であるが、・・・(略)・・・の構成が、「層状構造」のどのような構造を特定するのか理解することができない。
よって、請求項2?4に係る発明は、明確でない。

4 判断
(1)本願発明は、「単一層の接合構造」という物の発明であるが、請求項1には、「前記酸化亜鉛は、前記第1構造及び前記第2構造の少なくとも1つの上の亜鉛金属の層を酸化させることにより形成され」との記載があり、その物の製造方法が記載されているものと認められる。

ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。

(2)しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がない。

(3)ア また、当審拒絶理由通知では、「(1)請求項1について」の<補正等の示唆>において、以下のように記載し、下記の(ア)?(エ)を参照するように説示した上で、補正の機会を付与した。

「<補正等の示唆>
出願人は、上記拒絶理由を解消するため、以下の対応をとることが考えられます、また、特許・実用新案審査ハンドブック第II部第2章2203?2205も適宜参照してください。
・・・(略)・・・
ウ.当該請求項に係る発明を、製造方法を含まない物の発明とする補正
エ.不可能・非実際的事情についての意見書等による主張・立証
・・・(略)・・・
補正の際は、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(「当初明細書等」)に記載した事項の範囲内で行う必要があることに留意してください。
特に上記ウにおいて単に製造方法の記載を削除する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でないものになりやすいことに留意してください。
また、上記エの対応をする際には、「原出願の優先日時点において当該物をその構造又は特性により直接特定すること」が不可能又はおよそ非実際的である事情を具体的に記載してください。

●請求項1についての対応について
請求人は、平成31年3月18日付け意見書において、「本願請求項1に係る酸化亜鉛は、・・・(略)・・・」と主張しているが、「不可能・非実際的事情」とは、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情」をいいます。」

(ア)特許・実用新案審査ハンドブック第II部第2章2203?2205、
(イ)特許庁HPの「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査の取扱いについて」平成28年9月28日、
(ウ)「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する「不可能・非実際的事情」の主張・立証の参考例」平成27 年11 月25 日(特に、「参考例1」、「参考例2」を参照。)、
(エ)「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査の取扱いについて」平成27年7月6日(特に「別紙2」PDFファイルの6/8ページを参照。)

イ しかしながら、令和3年1月21日付け意見書(以下「当審意見書」という。)において、不可能・非実際的事情が存在することについて、請求人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。

(4)よって、本願発明は、明確でない。

5 請求人の主張について
(1)ア 請求人は、当審意見書の<<本願が特許されるべき理由>>の「(2)拒絶理由の理由1について」において、以下のように主張する。
「(2)拒絶の理由1について
理由1について、上述のように新請求項1を上述のように修正し、旧請求項2-4を削除する補正をしましたので、本拒絶理由は解消されたものと思料致します。」

イ しかしながら、令和3年1月21日付け手続補正書により補正された、「新請求項1」には、依然として、上記4(1)のとおり、その物の製造方法が記載されているものと認められ、「不可能・非実際的事情」があると判断できる場合に該当するとはいえないから、請求人の上記主張を採用することはできない。

(2)上記(1)アのとおり、請求人は、当審意見書において、令和3年1月21日付け手続補正書により補正された請求項1の記載について、「不可能・非実際的事情」がある場合に該当するとの主張・立証をしていないが、原審における、平成30年12月12日付け拒絶理由通知で、理由1(明確性)特許法第36条第6項第2項に規定する要件違反)が、請求項3?5に対してプロダクトバイプロセスクレームに該当する旨通知されており、請求項1、2に対しては通知されていないものの、念のため、原審における、平成31年3月18日付け意見書(以下「原審意見書」という。)による請求人の主張についても、以下において検討する。

ア 請求人は、原審意見書において、以下のように主張する。
請求人は、平成31年3月18日付け手続補正書による補正後の請求項1について、原審意見書において、以下のように主張している。

「(3)本願が特許されるべき理由
1.明確性について
本願請求項1は、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームに該当すると判断されるものと思料いたします。
しかしながら、本願請求項1に係る酸化亜鉛は、引用文献1に開示されております酸化亜鉛とは異なるものであると思料いたします。すなわち、本願明細書の段落[0034]に記載されておりますように、過酸化亜鉛から酸素種(O)が生成することにより、過酸化亜鉛(ZnO2)は酸化亜鉛(ZnO)に変化し、また金属亜鉛(Zn)は酸素種(O)と反応することにより、酸化亜鉛(ZnO)が形成され、このように接合面に形成された酸化亜鉛により、接合構造の機械的強度が上がり電気抵抗が下がるという、単に酸化亜鉛を形成したものとは明らかに異なる、特有の効果を有します。
このことから、本願請求項1はプロダクトバイプロセスクレームに該当するものであったとしても、請求項1に係る酸化亜鉛は、不可能・非実際的事情に該当するものと思料いたしますので、本願請求項1は明確性の要件を満たすと思料いたします。
よって、拒絶理由1(特許法第36条第6項第2号)は解消されました。」

イ しかしながら、上記4(3)アに示したように、当審拒絶理由通知の「(1)請求項1について」の<補正等の示唆>に記載したとおり、また、上記4(3)アに示した、「(イ)特許庁HPの「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する審査の取扱いについて」平成28年9月28日」の「1 概要」に記載されているとおり、「「不可能・非実際的事情」とは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情をいいます」。

更に、上記4(3)アで示した、「(ア)特許・実用新案審査ハンドブック第II部第2章」の「2205 物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合の審査における「不可能・非実際的事情」についての判断」、及び「(ウ)「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査の取扱いについて」平成27年7月6日(特に「別紙2」PDFファイルの6/8ページを参照。)」には、以下のように記載されている。

「「不可能・非実際的事情」に該当する類型、具体例
類型(i): 出願時において物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であった場合
類型(ii):特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、物の構造又は特性を特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要する場合」

ウ そして、原審意見書においては、前記主張は、請求項1に記載された発明が、上記イの「不可能・非実際的事情」に該当する類型である前記類型(i)、(ii)に該当することを主張するものと認めることはできない。したがって、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情」が存在するということはできない。
よって、請求人の原審意見書における上記アの主張を勘案したとしても、「不可能・非実際的事情」があると判断できる場合に該当するとはいえないので、本願発明は、明確でない。

(3)ア 請求人は、審判請求書の「3.本願が特許されるべき理由」の「(3)拒絶理由の理由1(審決注:特許法第36条第6項第2項に規定する要件違反)について」において、以下のように主張する。

「(3)拒絶の理由1について
理由1について、上述のように旧請求項2-4を削除する補正をしましたので、本拒絶理由は解消されたものと思料致します。」

イ しかしながら、請求人の審判請求書における上記アの主張を勘案したとしても、令和3年1月21日付け手続補正書により補正された、請求項1には、依然として、上記4(1)のとおり、その物の製造方法が記載されているものと認められ、審判請求書では、請求項1に対する拒絶の理由1が解消されたことについて主張していないから、「不可能・非実際的事情」があると判断できる場合に該当するとはいえないから、請求人の上記主張を採用することはできない。

6 むすび
以上のことから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-10 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-29 
出願番号 特願2018-31600(P2018-31600)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石丸 昌平今井 聖和  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 辻本 泰隆
恩田 春香
発明の名称 亜鉛金属及び過酸化亜鉛の反応接合により形成される層状の接合構造  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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