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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1377209
審判番号 不服2019-9564  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-18 
確定日 2021-08-18 
事件の表示 特願2016-544374「マルチレイヤコーディングにおいて回復点補足エンハンスメント情報(SEI)メッセージと領域リフレッシュ情報SEIメッセージとをコーディングするための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 9日国際公開、WO2015/103240、平成29年 3月16日国内公表、特表2017-507539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年1月3日 (US)アメリカ合衆国、2014年12月29日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 8月26日 :国際出願翻訳文提出
平成28年 9月 2日 :手続補正
平成28年 9月 5日 :手続補正
平成29年12月 1日 :手続補正
平成30年10月31日付け:拒絶理由通知
平成31年 2月 6日 :意見書提出
平成31年 3月12日付け:拒絶査定
令和 1年 7月18日 :拒絶査定不服審判請求
令和 2年 8月18日付け:当審拒絶理由通知
令和 2年10月 8日 :意見書提出および手続補正
令和 2年11月30日付け:当審拒絶理由通知(最後)
令和 3年 1月13日 :意見書提出および手続補正

第2 本件発明について
本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、本件発明という)は、令和3年1月13日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものである。(下線部は上記補正により補正された箇所であり、以下、「本件補正」という。下線を符号A?Dは請求項の記載を分節するため当審で付したものであり、請求項の記載を、符号A?Dを用いて、以下、「発明特定事項A」?「発明特定事項D」と称する。)

【請求項1】
A マルチレイヤビットストリームのビデオ情報を符号化または復号するための方法であって、
B 少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点補足エンハンスメント情報(SEI)メッセージを関連付けるべきアクセスユニット内に含まれる複数のピクチャのうちの少なくとも1つのピクチャを決定することと、前記アクセスユニットの前記複数のピクチャの各々は前記マルチレイヤビットストリームの異なるレイヤ内に含まれる、
C 前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記決定された少なくとも1つのピクチャに関連付けることと、
D 前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージの、前記決定された少なくとも1つのピクチャへの前記関連付けに少なくとも部分的に基づいて、前記ビデオ情報をコーディングすることと
を備え、
C ここにおいて、前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記決定された少なくとも1つのピクチャに前記関連付けることは、
C1 回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定することにより、前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記アクセスユニットの中に含まれる1つよりも多くのピクチャに関連付けることを備え、ここにおいて、前記レイヤの各々はtargetlayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ、
C2 前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージによって示される前記回復点は、前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージに関連付けられた前記レイヤの中に含まれる前記ピクチャのすべてが復号されたコンテンツにおいて適正またはほぼ適正となる点である、
A 方法。

第3 当審拒絶理由
令和2年11月30日付けで最後の拒絶理由として通知した当審拒絶理由は以下のとおりである。
(ただし、令和3年1月13日付意見書の[1]のとおり、理由番号の「2」及び適用条文が一部(理由4の第36条第6項第「2」号)欠如していること、請求項1に記号C2を付すところ、誤ってCと付した部分があるものの、審判請求人が正しい理由番号、適用条文を認識しているものであることから、これらを正しく改めたものを示す。)

1.(委任省令要件) 本件出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(実施可能要件) 本件出願は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(サポート要件) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
4.(明確性) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


令和2年10月8日付手続補正書により補正された本件出願の特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりのものである。(下線は上記補正に付されている。また、記号A?Dは分説するために審判合議体が付した。以下、構成A?D等という。)

【請求項1】
A マルチレイヤビットストリームのビデオ情報を符号化または復号するための方法であって、
B 少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点補足エンハンスメント情報(SEI)メッセージを関連付けるべきアクセスユニット内に含まれる複数のピクチャのうちの少なくとも1つのピクチャを決定することと、前記アクセスユニットの前記複数のピクチャの各々は前記マルチレイヤビットストリームの異なるレイヤ内に含まれる、
C 前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記決定された少なくとも1つのピクチャに関連付けることと、
D 前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージの、前記決定された少なくとも1つのピクチャへの前記関連付けに少なくとも部分的に基づいて、前記ビデオ情報をコーディングすることと
を備え、
C ここにおいて、前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記決定された少なくとも1つのピクチャに前記関連付けることは、
C1 回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定することにより、前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記アクセスユニットの中に含まれる1つよりも多くのピクチャに関連付けることを備え、
C2 前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージによって示される前記回復点は、前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージに関連付けられた前記レイヤの中に含まれる前記ピクチャのすべてが復号されたコンテンツにおいて適正またはほぼ適正となる点である、
A 方法。

●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)について

1 (1) 本件明細書【0011】?【0012】には以下の記載がある。(下線は合議体が付した。)

「【0011】
・・・従来の単一レイヤコーディング方式は、マルチレイヤコーディング方式に適合するビデオエンコーダ/デコーダの正確で一貫した挙動のため回復点SEIメッセージがどのように処理されるべきであるのかを定義するための、必要なセマンティクスを有していない。
【0012】
[0022]本開示は、回復点SEIメッセージについてのあいまいさ(ambiguity)を解消する、マルチレイヤコーディング方式のためのセマンティクスに関する。いくつかの実装形態では、回復点SEIメッセージは、マルチレイヤビットストリームの中のアクセスユニットの特有のピクチャにあいまいさを残さずに(unambiguously)関連付けられる。これらのセマンティクスは、マルチレイヤビットストリームのコーディングが回復点SEIメッセージを1つまたは複数の特有のピクチャにあいまいさを残さずに関連付けることを可能にする」

また、本件明細書【0127】?【0128】には以下の記載がある。

「【0127】
・・・従来の単一レイヤコーディング方式では、回復点SEIメッセージがアクセスユニットに関連付けられるので、これらの単一レイヤコーディング方式は、どのように回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式のアクセスユニット内の可能な複数のピクチャのうちの1つまたは複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティクスを有していない。従来の方式における回復点SEIメッセージに関するこのあいまいさは、ビデオエンコーダまたはデコーダの実装が、マルチレイヤコーディング方式のアクセスユニット内の可能な複数のピクチャの中からのピクチャに回復点SEIメッセージを制約なく関連付けることを容認する。したがって、これらのビデオエンコーダおよびデコーダの回復点SEIメッセージに対する挙動は予測可能でなく、異なる実装の間で変わる場合があり、その結果、これらの異なる実装はビデオシーケンスを矛盾なく符号化/復号することができない。したがって、本開示の1つの目的は、回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式内のアクセスユニットの1つまたは複数のピクチャにあいまいさを残さずに関連付けられ得るように、回復点SEIメッセージのセマンティクスを明確にすることである。
【0128】
[0138]本開示によれば、回復点SEIメッセージは、アクセスユニットの1つまたは複数のピクチャに関連付けられてよく、および/または適用されてよい。この技法は、回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式内のアクセスユニットの特有のピクチャにあいまいさを残さずに関連付けられ得るように、回復点SEIメッセージのセマンティクスを明確にする/修正する。」

以上の記載から、従来技術は「どのように回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式のアクセスユニット内の複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有していない」ものであり、本件発明の目的ないし課題解決手段は、「回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式内のアクセスユニットの1つまたは複数のピクチャにあいまいさを残さずに関連付けられ得るように、回復点SEIメッセージのセマンティックスを明確にすること」ないしそのための手段であるといえる。

(2) また、本件明細書の【0150】の【表1-1】、【表1-2】には、回復点SEIメッセージのセマンティックスの修正に関して、以下の記載がある。

「回復点SEIメッセージのセマンティックスへの修正
以下のセマンティックスは、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤの、targetLayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ特定の各レイヤに独立に適用される。
現在ピクチャは、現在のSEIメッセージを含むアクセスユニットにおいてtargetLayerIdに等しいnuh_layer_idを持つピクチャを指す。
注1- ネストされていない場合、VCL NALユニットが、SEIメッセージを含むSEI NALユニットのnuh_layer_idに等しいnuh_layer_idを有するレイヤに、回復点SEIメッセージが適用される。そうでない場合、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤは、SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定される。
・・・
recovery_poc_cntは、出力順序においてtargetLayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ復号ピクチャの回復点を指定する。
・・・」

(3) しかしながら、元々マルチレイヤコーディング内のアクセスユニットの1つまたは複数のピクチャに回復点SEIメッセージを関連付けることのセマンティックスはどのような不明な点があったのか、それをどのように修正したのか、また、その修正において、(1)の「複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有していない」部分がどのようにして「複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有する」ようになったのか、本件明細書および図面の記載からでは理解することができない。
【0150】には、マルチレイヤコーディング内のアクセスユニットの1つまたは複数のピクチャに回復点SEIメッセージを関連付ける部分については、上記摘記箇所以上の事項は見あたらない(他の記載はマルチレイヤコーディング内のアクセスユニットの1つまたは複数のピクチャとは直接関係しないと考えられる)ところ、【0150】の記載からは全く理解することができない。

(4) そうすると、発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする技術上の課題を解決するための手段によって、どのようにして課題が解決されたかについて記載されていないといえる。

2 (1) 本件明細書【0134】?【0135】、図5には、上記補正により追加された、請求項1の構成A、B、Cを踏まえた、構成C1、C2に関連する「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」について、以下の記載がある。(下線は合議体が付した。)

「【0134】
[0144]図5に示す実施形態では、AU430は、ELピクチャ412AとELピクチャ412Cの両方に関連付けられている単一の回復点SEIメッセージを含む。回復点SEIメッセージが図5に示すように1つよりも多くのピクチャに関連付けられているとき、回復点SEIメッセージは、スケーラブルネスティングSEIメッセージとして実施され得る。スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージは、AU430内の斜線領域によって図5に示される。
【0135】
[0145]ELピクチャ412AおよびELピクチャ412Cに関連付けられたスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージは、ELピクチャ418AおよびELピクチャ418Cにおける回復点を示す。この実施形態では、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージは、そのSEIメッセージに関連付けられたELピクチャ412AおよびELピクチャ412Cのための単一の回復点を一意に示す。スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージによって示される回復点は、回復点SEIメッセージに関連付けられたピクチャのレイヤの中に含まれるピクチャのすべてが、復号されたコンテンツに関して適正またはほぼ適正となる点である。したがって、復号ピクチャのうちの1つまたは複数は、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージの回復点の前に、コンテンツに関して適正またはほぼ適正であり得る。」





(2) そこで、【0134】、【0135】及び図5の記載からすると、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージに関連して、
(i)複数のピクチャに関連付けられる回復点SEIメッセージはスケーラブルネスティングSEIメッセージとして実施される。
(ii)1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージは複数のピクチャに関連付けられる。
(iii)1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージは単一の回復点を一意に示すと考えられる。

(3) しかしながら、【0134】?【0135】と図5には、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージの正確なシンタックスやセマンティックスについての記述は存在せず、本件明細書および図面のうち、【0134】?【0135】と図5の他には、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージについての記載は存在しない。特に、【0150】の「回復点SEIメッセージのセマンティックスへの修正」は、単なる回復点SEIメッセージに関するものにすぎず、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージに関するものではない。
そうすると、本件明細書及び図面には、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージに関する正確なシンタックスやセマンティックスは記載されていないことから、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージとはどのような回復点SEIメッセージであるのか、本件明細書及び図面中には技術的に正しく記載されていない。
したがって、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージによって、回復点SEIメッセージのセマンティックスに関するどのような技術的課題が解決されたのか理解することもできない。

(4) 以上のことから、発明の詳細な説明には、「発明が解決しようとする課題」として、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」に関する請求項1に係る発明が解決しようとする技術上の課題が少なくとも一つ記載されているとも、「その解決手段」として、請求項1に係る発明によってどのようにして課題が解決されたかについて記載されているともいえない。

3 1,2を総合すると、発明の詳細な説明には、「発明が解決しようとする課題」として、請求項1に係る発明が解決しようとする技術上の課題が少なくとも一つ記載されているとも、「その解決手段」として、請求項1に係る発明によってどのようにして課題が解決されたかについて記載されているともいえない。
したがって、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。(委任省令要件1)

4 また、発明の詳細な説明には、請求項1の構成C1の「回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定することにより、前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記アクセスユニットの中に含まれる1つよりも多くのピクチャに関連付けること」について、
(1)【0134】、【0135】、図5、【0150】の記載をみても、スケーラブルネスティングSEIメッセージ自体では(スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージが複数のレイヤを指定するのとは異なり)、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを指定することができるわけではない。
(2)【0134】、【0135】や図5には、スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージは複数のレイヤ(のピクチャ)を指定する旨の記載があるが、明細書および図面中にはスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージのセマンティクスの説明はもちろん、シンタックスの説明すら存在しないため、これらの記載を見ても、1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージがどのようなシンタックス及びセマンティックスを有することで、複数のレイヤ(のピクチャ)が指定できるのか、当業者が実施可能に発明を開示していない。
(3)【0150】を参酌しても、【0150】には1つの回復点SEIメッセージにより複数のレイヤを指定するためのセマンティックスの修正点を具体的に示したものではないことから、1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージがどのようなシンタックス及びセマンティックスを有することで、複数のレイヤが指定できるのか、当業者が実施可能に発明を開示していない。

したがって、本件明細書及び図面の記載によっては、本件請求項1に係る発明を当業者が実施可能に開示していない。(実施可能要件1)

●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)、理由3(サポート要件)、理由4(明確性)について

5 上記1?4のとおりであるが、ここでは、請求項1の構成A,B,Cを踏まえた構成C1の「スケーラブルネスティング回復点SEI」について、【0134】、【0135】および図5の記載(上記2(2)の条件)や、【0150】の記載とある程度整合すると推察された実現形態について検討する。

実施形態(その1)
(a)「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」とは、1つの回復点SEIメッセージと別の(回復点SEIメッセージではない)SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージのことである。
(b)1つの回復点SEIメッセージは複数のELピクチャに関連付けられる。
(c)【0134】【0135】や図5のようにするには、スケーラブルネスティング回復点メッセージ(すなわち、スケーラブルネスティングSEIメッセージ)に含まれる1つの回復点SEIメッセージがELピクチャ412Aと、ELピクチャ412Cの両者と関連付けられる。
(d)【0150】の記載は不正確な点があるものの、「「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」(すなわち、スケーラブルネスティングSEIメッセージ)に含まれる、1つの回復点SEIメッセージが複数のレイヤを指定し、その結果、1つの回復点SEIメッセージを含む1つの「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」(スケーラブルネスティングSEIメッセージ)が2つ以上のレイヤを指定できる」という意味を含む。

実施形態(その2)
(a)「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」とは、複数の回復点SEIメッセージを含む(別のSEIメッセージを含むかどうかは問わない)スケーラブルネスティングSEIメッセージのことである。
(b)1つの回復点SEIメッセージはELピクチャ1つに関連付けられる。
(c)【0134】【0135】や図5のようにするには、スケーラブルネスティング回復点メッセージ(すなわち、スケーラブルネスティングSEIメッセージ)に含まれる2つの回復点SEIメッセージのうちの1つがELピクチャ412Aと、1つがELピクチャ412Cと関連付けられる。
(d)【0150】の記載は不正確な点があるものの、「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」(すなわち、スケーラブルネスティングSEIメッセージ)に含まれる、2つ以上の回復点SEIメッセージの各々が1つのレイヤを指定し、その結果、2つ以上の回復点SEIメッセージを含む1つの「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」(スケーラブルネスティングSEIメッセージ)が2つ以上のレイヤを指定できる」という意味を含む。

実施形態(その3)
(a)「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」は、1つの回復点SEIメッセージと別の(回復点SEIメッセージではない)SEIメッセージを含む特定のスケーラブルネスティングSEIメッセージであり、(「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」である)上記特定のスケーラブルネスティングSEIメッセージは、さらに別のスケーラブルネスティングSEIメッセージに含まれている。
(b)1つの回復点SEIメッセージは複数のELピクチャに関連付けられる。
(c)【0134】【0135】や図5のようにするには、1つの回復点SEIメッセージのうちのELピクチャ412Aと、ELピクチャ412Cの両者と関連付けられる。このような回復点SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージのことを「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」という。
(d)【0150】の記載は不正確な点があるものの、「「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」に含まれる1つの回復点SEIメッセージが複数のレイヤを指定し、その結果、1つの回復点SEIメッセージを含む1つの「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」が2つ以上のレイヤを指定できる。このような「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」が別のスケーラブルネスティングSEIメッセージに含まれる」という意味を含む。

実施形態(その4)
(a)「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」は、複数の回復点SEIメッセージを含む(回復点SEIメッセージではない、別のタイプのSEIメッセージを含むかどうかを問わない)特定のスケーラブルネスティングSEIメッセージであり、(「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」である)上記特定のスケーラブルネスティングSEIメッセージは、さらに別のスケーラブルネスティングSEIメッセージに含まれている。
(b)単一の回復点SEIメッセージはELピクチャ1つに関連付けられる。
(c)【0134】【0135】や図5のようにするには、2つの回復点SEIメッセージのうちの1つがELピクチャ412Aと、1つがELピクチャ412Cと関連付けられ、この2つの回復点SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージのことを「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」という。
(d)【0150】の記載は不正確な点があるものの、「「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」に含まれる2つ以上の回復点SEIメッセージの各々が1つのレイヤを指定し、その結果、2つ以上の回復点SEIメッセージを含む1つの「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」が2つ以上のレイヤを指定できる。このような「スケーラブルネスティング回復点メッセージ」が別のスケーラブルネスティングSEIメッセージに含まれる」という意味を含む。

6 しかしながら、上記(その1)?(その4)は、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」の構成としては全く異なるものである。
さらに、本件においては、本来は上記(その1)?(その4)のいずれとも異なる、別個の実現形態を想定しているかもしれないとも推察される。
このような異なる実現形態が推察できることは、本件明細書及び図面の記載では、本件の従来技術の課題である、「どのように回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式のアクセスユニット内の複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有していない」ものであり、本件発明の目的ないし課題解決手段である、「回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式内のアクセスユニットの1つまたは複数のピクチャにあいまいさを残さずに関連付けられ得るように、回復点SEIメッセージのセマンティックスを明確にすること」は本件明細書及び図面の記載によっては、何も解決されていないことを裏付けるといえる。(委任省令要件2)

7 また、どのような実現形態をとろうとも、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」のセマンティックスもシンタックスも【0150】には記載されていない以上、発明の詳細な説明からでは、当業者が実現可能に発明を開示していないといえる。
特に、【0150】の記載では、1つの回復点SEIメッセージは、targetLayerIdを1つしか指定できないのか、複数指定できるのかすら不明である。仮に、1つの回復点SEIメッセージが複数のtargetLayerIdが指定できる場合では、「targetLayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ特定の各レイヤに独立に適用される」ことはなく、targetLayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ複数のレイヤに(従属的に)適用されることになる。
このように、【0150】の記載はセマンティックスの修正について、技術的に多義的かつ首尾一貫していない記載であることから、当業者が実施可能に発明を開示したものとはいえない。(実施可能要件2)。

8 さらに、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」に関する事項は、発明の詳細な説明には正しい技術的定義が与えられておらず、サポートされていないともいえる(サポート要件)。
加えて、このような多義的な理解ができる請求項1は明確性を欠くともいえる(明確性)。

9 請求項1を引用する請求項2-6および13、方法の発明である請求項1を装置の発明として特定した請求項7、請求項7を引用する請求項8-12に記載の発明についても、理由1?4がある。

10 なお、審判請求人は令和2年10月8日付意見書[3-1](2)において、【0150】の記載を引用し、以下の通り主張している。
「この記載は、出願時の規格における回復点SEIメッセージのセマンティックスを本願発明に基づいて修正するものです。
そして,この修正によって、ネストされている場合(そうでない場合)、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤは、SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定され、その指定されたレイヤにおいて、セマンティックが、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤの、targetLayeridに等しいnuh_layer_idをもつ特定の各レイヤに独立に適用されることになります。
そして、1つの回復点SEIメッセージをアクセスユニットの中に含まれる複数のレイヤ、すなわち、1つよりも多くのピクチャに関連付けることが実現可能であることは当業者であれば明らかであると思料いたします。」

11 そこで、上記主張について検討する。

【0150】の「回復点SEIメッセージのセマンティックス」の修正により、請求項1の構成A,B,Cを踏まえた構成C1における「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」のセマンティックスが特定されたわけではない。
また、「回復点SEIメッセージが適用されるレイヤは、SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定され」との主張がある。
ところが、スケーラブルネスティングSEIメッセージが回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを指定するための、スケーラブルネスティングSEIメッセージのセマンティックスはもちろん、シンタックスも、【0150】の記載から正しく読み取ることはできない。
さらに、「その指定されたレイヤにおいて、セマンティックが、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤの、targetLayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ特定の各レイヤに独立に適用される」のであれば、ある1つの回復点SEIメッセージは特定の1つのレイヤに適用されるというだけである。
そうすると、「1つの回復点SEIメッセージをアクセスユニットの中に含まれる複数のレイヤ、すなわち、1つよりも多くのピクチャに関連付けることが実現可能であることは当業者であれば明らか」ではなく、当該主張の具体的な技術的根拠は理解可能な程度に説明されていない。

以上のことから、上記意見書の主張は採用できないものである。

第4 当審拒絶理由が解消したか否かの検討及び判断
1.明細書および図面の記載事項
(1) 本件明細書の発明の詳細な説明には、本件明細書【0011】?【0012】、【0127】?【0128】、【0134】?【0135】、図5、【0150】には、上記第3の「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)について」の1(1)(2)、2(1)において示したとおりの記載がある。
さらに、本件明細書の発明の詳細な説明には、【0149】において、以下の記載がある。
「【0149】
例示的な実装形態
[0159]本開示のいくつかの実施形態が、以下に要約され説明される。本明細書で説明される方法のうちの1つまたは複数を実施するために組み込まれ得る追加および削除を示すために、HEVC規格のいくつかの部分が転載されるとき、そのような修正は、それぞれイタリック体および取り消し線で示される。」

2. 本件明細書に記載された従来技術、課題及び課題解決手段
上記第3の「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)について」の1(1)のとおり、【0011】?【0012】、【0127】?【0128】の記載から、従来技術は「どのように回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式のアクセスユニット内の複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有していない」ものであり、本件発明の目的ないし課題解決手段は、「回復点SEIメッセージがマルチレイヤコーディング方式内のアクセスユニットの1つまたは複数のピクチャにあいまいさを残さずに関連付けられ得るように、回復点SEIメッセージのセマンティックスを明確にすること」ないしそのための手段であるといえる。

そして、【0149】【0150】の記載を総合すると、回復点SEIメッセージのセマンティックスを修正することで上記課題を解決するものであり、そのセマンティックスの修正内容は、上記第2に記載される、補正された特許請求の範囲の請求項1の発明特定事項C1である、
「回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定することにより、前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記アクセスユニットの中に含まれる1つよりも多くのピクチャに関連付けることを備え、ここにおいて、前記レイヤの各々はtargetlayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ、」
ようにすることであるといえる。

3.検討及び判断
3-1.委任省令要件違反について
(1)発明特定事項C1の「前記レイヤの各々はtargetlayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ」ことについて
上記補正された発明特定事項C1を有する本件補正により、従来技術の「複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有していない」部分が、「複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有する」ようになったのか、について検討する。
ある1つの回復点SEIメッセージについて、当該回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを「targetLayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ」レイヤにより指定することで、当該回復点SEIメッセージが適用されるレイヤが所定のtargetLayerIdをもつ1つのレイヤに決まる(すなわち、回復点SEIメッセージが適用されるピクチャが1つに決まる)ことがいえる。
なぜならば、変数targetLayerIdは1つの値を有するものであり、複数の値を有するものではないからである。
ところで、ある1つの回復点SEIメッセージについて、「targetLayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ」レイヤにより指定することで、当該回復点SEIメッセージが適用されるレイヤが1つのレイヤに決まるのであれば、1つの回復点SEIメッセージが1つのピクチャに関連付けられることになる。
一方、1つの回復点SEIメッセージについて、複数のピクチャに正確に関連付けられるような、回復点SEIメッセージのセマンティックスは本件明細書および図面には示されておらず、ただ、明細書【0134】に、回復点SEIメッセージのセマンティックスとは関係なく、「AU430は、ELピクチャ412AとELピクチャ412Cの両方に関連付けられている単一の回復点SEIメッセージを含む」という記載があるにすぎない。
したがって、本件補正によっては、「複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有していない」部分が「複数のピクチャに正確に関係するのかを定義するための、必要なセマンティックスを有する」ようになったわけではないことから、上記「第3 当審拒絶理由」の「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)について」の3の不備(委任省令要件1)を解消するものではないし、「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)、理由3(サポート要件)、理由4(明確性)について」の6 の不備(委任省令要件2)を解消するものでもない。

(2)発明特定事項C1の「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」について
(1)と併せて、発明特定事項C1の「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」について検討する。
上記補正は、上記「第3 当審拒絶理由」の「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)について」の2(3)(4)において示した拒絶の理由を解消するものではなく、上述のとおり、発明特定事項C1は、「発明が解決しようとする課題」として、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」に関する本件発明が解決しようとする技術上の課題が少なくとも一つ記載されているとも、「その解決手段」として、本件発明によってどのようにして課題が解決されたかについて記載されているともいえず、当該不備(委任省令要件1)を解消するものではない。

(3)まとめ
(1)(2)を総合すると、本件補正によって、本件発明が解決しようとする技術上の課題がどのようにして解決されたかについて記載されているということはできず、本件出願の発明の詳細な説明は、本件発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものではないことに変わりは無い。

3-2.実施可能要件について
(4) 本件補正により、発明特定事項C1の「回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを前記少なくともスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定することにより」、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記アクセスユニットの中に含まれる1つよりも多くのピクチャに関連付ける」ことが実現可能に開示されているといえるのか、について検討する。

上記「回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを前記少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定する」ことについて、上記「第3 当審拒絶理由」の「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)について」の4 の(実施可能要件1)において示したとおり、
(4-1-1)スケーラブルネスティングSEIメッセージ自体では、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを指定することができるわけではなく、
(4-1-2)発明の詳細な説明および図面には、これを可能とするようなスケーラブルネスティングSEIメッセージのシンタックスやセマンティックスの説明もないことから、
(4-1-3)本件明細書及び図面の記載によっては、当業者が発明特定事項C1の「回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを」「スケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定する」ことを実現可能な程度に開示していないことに変わりはない。

また、
(4-2-1)明細書および図面中にはスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージのシンタックスやセマンティクスの説明は存在しない上、
(4-2-2)上記(1)のとおり、「targetLayerIdに等しいnuh_layer_idをもつ」ことで指定することで、当該回復点SEIメッセージが適用されるレイヤが1つに決まることがいえるが、1つの回復点SEIメッセージについて、複数のピクチャに正確に関連付けられる回復点SEIメッセージのセマンティックスは本件明細書および図面には示されていないことには変わりは無く、複数のピクチャに関連づけられる回復点SEIメッセージは当業者が実施可能な程度に開示されておらず、
(4-2-3)本件明細書および図面の記載によっては、当業者が発明特定事項C1の「スケーラブル回復点SEIメッセージ」を「前記アクセスユニットの中に含まれる1つよりも多くのピクチャに関連付ける」ことが実施可能な程度に開示していないことに変わりは無い。

(5) さらに、上記「第3 当審拒絶理由」の「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)、理由3(サポート要件)、理由4(明確性)について」の7 において示したとおり、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」のセマンティックスもシンタックスも【0150】には記載されておらず、【0134】【0135】にも記載されていないことから、発明特定事項C1の上記事項について、発明の詳細な説明からでは、当業者が実現可能に発明を開示していないといえ、当該7 の不備(実施可能要件2)を解消していない。

(6)まとめ
(4)(5)を総合すると、本件明細書および図面の記載によっては、本件請求項1に係る発明、とりわけ発明特定事項C1、を当業者が実施可能な程度に開示しているということはできない。

3-3.サポート要件について
(7) 本件補正によっては、
上記(1)より、1つの回復点SEIメッセージが複数のピクチャに正確に関連付けられる回復点SEIメッセージのセマンティックスは本件明細書および図面には示されていないこと、
上記(4-1-1)より、スケーラブルネスティングSEIメッセージ自体では、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを指定することができるわけではなく、
上記(4-1-2)より、発明の詳細な説明および図面には、これを可能とするようなスケーラブルネスティングSEIメッセージのシンタックスやセマンティックスの説明もないこと、
上記(5)より、発明の詳細な説明および図面には、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」のセマンティックスもシンタックスも示されていないことから、
本件明細書の発明の詳細な説明には、発明特定事項C1は裏付けられていないことには変わりは無い。

(8) さらに、上記「第3 当審拒絶理由」の「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)、理由3(サポート要件)、理由4(明確性)について」の8 において示したとおり、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」に関する事項は、発明の詳細な説明には正しい技術的定義が与えられておらず、発明の詳細な説明中にサポートされていないともいえ、当該8 の不備(サポート要件)を解消していない。

(9)まとめ
(7)(8)を総合すると、本件請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明中に記載されているということはできない。

3-4.明確性について
(10)さらに、本件補正によっては、上記「第3 当審拒絶理由」の「●理由1(委任省令要件)、理由2(実施可能要件)、理由3(サポート要件)、理由4(明確性)について」の5に示したように、本件発明の「スケーラブル回復点SEIメッセージ」「スケーラブルSEIメッセージ」について、発明特定事項C1の条件を満たすような技術事項が多義的に理解され、かつどれも正しい技術的定義がなされていないことから、本件発明は明確性を欠くということができ、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

4 小括
3-1のとおり、この出願の発明の詳細な説明は、本件発明について、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものということはできないことから、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでなく、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものではない。
また、3-2のとおり、本件発明はその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明を実施できる程度に開示されたものではなく、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすものではない。
さらに、3-3のとおり、本件発明は発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものではない。
加えて、3-4のとおり、本件発明は明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものではない。

5. 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和3年1月13日付意見書において、
「本願明細書の段落0011には、「(略)」と記載されています。この記載から、単一レイヤコーディング方式では、各アクセスユニットは、単一のピクチャを一意に含むので、回復点SEIメッセージにおいて、そのセマンティクスは、アクセスユニットをピクチャと読み替えて処理することが可能であったこと、一方、マルチレイヤビットストリームのアクセスユニットは、複数のピクチャを含み得るのに対して、回復点SEIメッセージのセマンティックはアクセスユニットの何れのピクチャを示すのかを示すことが出来なかったことが理解できます。
そして、続く、段落0012には、「(略)」と記載されています。
そして、明細書の段落0149には、「(略)」と記載され、続く段落0150には、本願発明の上記した目的を達成するための回復点SEIメッセージの修正が表1-1に開示されています。
この表1-1では、「(略)」と記載され、ピクチャが、targetLayerIdに等しいnuh_layer_idで特定されることが記載されています。そして、表1-1中においては、HEVC規格における「ピクチャ」が、「targetLayerIdに等しいnuh_layer_idを持つピクチャ」と修正されています。
したがって、本願発明が提案する回復点SEIメッセージにおいては、その対象とするピクチャが、targetLayerIdに等しいnuh_layer_idを持つピクチャであることから、マルチレイヤビットストリームのコーディングが、回復点SEIメッセージを1つまたは複数の特有のピクチャにあいまいさを残さずに関連付けることが可能になっていることが記載されています。
そして、補正後の本願発明の請求項1には、「(略)」と記載されており、表1-1に記載された修正を裏付けています。
一方、明細書の段落0134-0135、及び図5には、スケーラブルネスティングSEIメッセージが開示されています。ここには、「(略)」と記載され、スケーラブルネスティングSEIメッセージが、複数のピクチャに関連付けられた回復点SEIメッセージであることが記載されています。
したがって、スケーラブルネスティングSEIメッセージも、段落0011に記載された従来技術と同様な課題を有することが理解できます。
そして、その課題は、回復点SEIメッセージと同様に解決されることは、表1-1の「そうでない場合、回復点SEIメッセージが適用されるレイヤは、SEIメッセージを含むスケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定される。」の記載からも明らかであると思料いたします。」
と主張しているので、これについて検討する。

回復点SEIメッセージについて、ある1つの回復点SEIメッセージについて「その対象とするピクチャが、targetLayerIdに等しいnuh_layer_idを持つピクチャである」ことで、当該回復点SEIメッセージが適用されるレイヤが1つのレイヤに決まるのであれば、1つの回復点SEIメッセージが1つのピクチャに関連付けられることになるが、これは1つの回復点SEIメッセージが複数のピクチャに関連付けられることに必要なセマンティックスを示すものではない。
また、スケーラブルSEIメッセージが唯一の回復点SEIメッセージを有するのであれば、スケーラブルネスティングSEIメッセージが複数のピクチャに関連付けられることもない。
仮に、スケーラブルSEIメッセージが複数の回復点SEIメッセージを有するのであれば、スケーラブルSEIメッセージとしてそのような定義がなされなければならないが、明細書中にそのような定義は存在しない。
さらに、本件発明は、構成C1において、「回復点SEIメッセージが適用されるレイヤを」「スケーラブルネスティングSEIメッセージによって指定することにより」、「少なくとも1つのスケーラブルネスティング回復点SEIメッセージを前記アクセスユニットの中に含まれる1つよりも多くのピクチャに関連付ける」ものである。そうすると、本件明細書中に「スケーラブルネスティングSEIメッセージが複数のピクチャに関連付けられた回復点SEIメッセージであることが記載されてい」るからといって、本件発明の構成C1が明細書中にサポートされているわけではない。

以上を総合すると、上記主張によって、上記3の(3)や3の(6)、さらには3の(9)の不備を解消するものではない。

加えて、「スケーラブル回復点SEIメッセージ」、「スケーラブル回復点メッセージを含むスケーラブルSEIメッセージ」の具体的構成、「スケーラブル回復点SEIメッセージ」と「スケーラブルSEIメッセージ」の違いや、「スケーラブル回復点SEIメッセージ」と「回復点SEIメッセージ」の違いについて、明細書には何も記載されていない。

すなわち、審判請求人が上記のとおり、段落0134-0135、及び図5に開示されていると主張する「スケーラブルネスティングSEIメッセージ」は、本件明細書および図面によっては、技術的に不正確に特定されているにすぎず、上記主張によって、上記3の(10)の不備を解消するものではない。

結局、審判請求人は、本件明細書、特に段落0134-0135、0149-0150において、「スケーラブルネスティング回復点SEIメッセージ」、「スケーラブルSEIメッセージ」、「回復点SEIメッセージ」の3者の正確な定義を行わず、3者の関連性も明確にしないまま、本件明細書の上記箇所から技術的に不正確な記載を引用して、上記の主張をしているにすぎない。
そして、当該主張は上記拒絶理由が解消することに寄与していない。

したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、発明の詳細な説明には、「発明が解決しようとする課題」として、本件発明が解決しようとする技術上の課題が少なくとも一つ記載されているとも、「その解決手段」として、請求項1に係る発明によってどのようにして課題が解決されたかについて記載されているともいえず、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでなく、特許法第36条第4項第1項に規定する要件を満たしていない。
また、発明の詳細な説明及び図面の記載からでは、本件発明を実施可能に開示したということはできず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
さらに、本件発明の構成は、明細書中に正しい技術的定義が与えられておらず、発明の詳細な説明中に裏付けられていないといえ、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
加えて、本件発明の構成は、請求項1の記載において明確に特定されていないということもできるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

したがって、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-19 
結審通知日 2021-03-23 
審決日 2021-04-05 
出願番号 特願2016-544374(P2016-544374)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04N)
P 1 8・ 536- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牛丸 太希  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
五十嵐 努
発明の名称 マルチレイヤコーディングにおいて回復点補足エンハンスメント情報(SEI)メッセージと領域リフレッシュ情報SEIメッセージとをコーディングするための方法  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
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