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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62B
管理番号 1377215
審判番号 不服2020-12857  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-14 
確定日 2021-08-18 
事件の表示 特願2018-551320「懸垂下降装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月5日国際公開、WO2017/167601、令和元年6月20日国内公表、特表2019-516431〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)3月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年3月31日(GB)英国)を国際出願日とする出願であって、令和元年9月3日付け(発送日:同年9月10日)で拒絶の理由が通知され、令和2年3月5日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年5月7日(発送日:同年5月12日)で拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年9月14日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に、手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年9月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和2年9月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前(令和2年3月5日の手続補正書)の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
懸垂下降装置において、
内部表面を備えた環状スプールであって、中心軸の周りに回転可能であり、前記中心軸に面するギヤ歯を備えた周囲の周りに環状ギヤを備える、前記環状スプールと、
前記スプールに巻回されたラインであって、一端が前記スプールに固定され、他端が取付け手段を備える、前記ラインと、
前記中心軸と同軸のシャフトと、
ブレーキ力を前記スプールに加える為のブレーキパッドを備える前記シャフトに取付けられた遠心ブレーキと、
前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと共に回転可能なブレーキギヤと、
前記ブレーキギヤと係合する為の第1ギヤおよび前記環状ギヤと係合する為の第2ギヤを備える複合ギヤと、
を備え、
前記第1ギヤは前記第2ギヤより多い歯数を有し、前記スプールが静止しているとき、前記ブレーキパッドは、前記スプールの前記内部表面の円周の80%を越えて延び、
前記複合ギヤは、前記スプールの最大地点を通り越して延びている、懸垂下降装置。」

(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は、請求人が補正箇所を示すために付したものである。)。

「【請求項1】
懸垂下降装置において、
内部表面を備えた環状ドラムスプールであって、中心軸の周りに回転可能であり、前記中心軸に面するギヤ歯を備えた周囲の周りに環状ギヤを備える、前記環状ドラムスプールと、
前記ドラムスプールに巻回されたラインであって、一端が前記ドラムスプールに固定され、他端が取付け手段を備える自由端部である、前記ラインと、
前記中心軸と同軸のシャフトと、
ブレーキ力を前記ドラムスプールに加える為のブレーキパッドを備える前記シャフトに取付けられた遠心ブレーキと、
前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと共に回転可能なブレーキギヤと、
前記ブレーキギヤと係合する為の第1ギヤおよび前記環状ギヤと係合する為の第2ギヤを備える複合ギヤと、
を備え、
前記第1ギヤは前記第2ギヤより多い歯数を有し、前記ドラムスプールが静止しているとき、前記ブレーキパッドは、前記ドラムスプールの前記内部表面の円周の80%を越えて延び、
前記複合ギヤは、前記ドラムスプールの最も外側の部分を通り越して延びている、懸垂下降装置。」

2.本件補正の適否
(1)新規事項について
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「他端が取付け手段を備える」に関して、「他端が取付け手段を備える自由端部である」とするものを含むものである。
そして、当該補正について請求人は、審判請求書の「4.補正の根拠」において「また、構成(C)において、ラインの他端が取付け手段を備える自由端部であると限定しています。」と述べている。
しかしながら、出願当初の明細書の段落【0018】及び図6等を参照しても、「ワイヤ21の緩い端部は、(図6において火災4が示される)緊急事態が発生しているビル23のアンカー点に取り付けられ」と記載されているものの、他端が「自由端部」であることは記載されていない。
そうすると、本件補正事項は、当初明細書等に記載されておらず、しかも、当初明細書等の記載から自明であるということもできないから、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないので、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定(新規事項の追加)に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)予備的な検討
仮に、上記補正が新規事項を追加するものではないとした場合について、以下検討する。

本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「スプール」に関して「ドラム」との限定を付加するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、請求項1に記載された発明において不明りょうであった「最大地点」との記載を「最も外側の部分」と補正するものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明に該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、英国特許第11790号明細書(1912)号公報(以下「引用文献1」という。)には、「Improvements in Fire-escapes(火災避難装置の改良)」(翻訳は当審による。以下同様)に関して、図面と共に次の事項が記載されている(下線は、当審が付したものである。また、翻訳は当審が作成したものである。以下同様。)。

(ア)「This invention relates to fire-escapes of the kind adapted for use in private dwelling houses, factories and the like places, and refers more particularly to the type having a sling or cage attached to a line wound upon a spring drum, the spring drum being geared to a centrifugal brake which is brought into action when the speed of the drum exceeds a certain predetermined limit and automatically regulates the descent of the line.」(明細書1頁25行ないし30行)
〔翻訳〕
「本発明は、個人住宅や工場などでの使用に適した火災避難装置に関するものであり、特にスプリングドラムに巻かれたラインに取り付けられたスリングまたはケージを有するタイプに関するもので、スプリングドラムは、ドラムの速度が所定の制限を超えると作動し、ラインの降下を自動的に調節する遠心ブレーキに適合されている。」

(イ)「In these drawings A is a casing for containing the spring drum and its mechanism, B is an arm pivoted, hinged or otherwise secured thereto and carrying a guide pulley C at its free end over which passes the cord D one end of said cord being fixed to the spring drum and its other end secured to the passenger sling or cage, not shown in the drawings, EE are standards (broken away to clearly show the invention) secured to or formed integrally with the base of the casing and supporting the bearings F1, G1 for the shafts F and G respectively.」(明細書1頁36行ないし2頁6行)
〔翻訳〕
「これらの図面において、Aはスプリングドラムとその機構を収容するためのケーシングであり、Bはそこに枢動、ヒンジまたはその他の方法で固定されたアームであり、その自由端でガイドプーリCを担いでおり、その上にコードDを渡し、そのコードDの一端はスプリングドラムに固定され、他端は乗客用スリングまたはケージに固定されている、図面には示されていない、EEはケーシングの基部に固定または一体的に形成された基準(本発明を明確に示すために分割されている)であり、それぞれシャフトFおよびGのためのベアリングF1、G1を支持している。」

(ウ)「On the main shaft F is keyed a spring drum H having a boss H1 to which one end of the spiral spring J is secured as shown at Ji, its other end being secured to the base or to some other fixed part of the casing A. The spring drum carries an internally toothed wheel K which gears with a spur wheel L fast on the parallel shaft G rotatably mounted in the fixed bearing G1. Fast on the said parallel shaft G is a toothed wheel M which gears with a pinion wheel N secured to or formed integrally with a sleeve O rotatably mounted on the main shaft F and extending into the interior of the drum H.」
(明細書2頁7行ないし14行)
〔翻訳〕
「メインシャフトFには、ボスH1を有するスプリングドラムHがキーで固定されている。スプリングドラムは、固定ベアリングG1に回転自在に取り付けられた平行軸G上に平歯車Lで高速に歯車を変速する内歯歯車Kを備える。前記平行シャフトG上には、メインシャフトFに回転可能に取り付けられ、ドラムHの内部に延びるスリーブOに固定または一体的に形成されたピニオンホイールNで歯車を変速する歯付きホイールMがある。」

(エ)「Two or more lugs or projections P are secured to or formed integrally with the sleeve O and are arranged symmetrically therearound being equidistant from each other.
Two only of such lugs are shown in the drawings, and they are diametrically disposed with reference to the main shaft F.」(明細書2頁14行ないし18行)
〔翻訳〕
「2つ以上の突出部または突起Pは、スリーブOに固定されているか、またはスリーブOと一体的に形成されており、互いに等距離にあるように対称的に配置されている。
そのような突出部のうち、2つだけが図面に示されていますが、それらは、互いに対向しています。メインシャフトFを基準にして配置されている。」

(オ)「To each of said lugs is pivoted an arm Q carrying an are shaped weight R which is adapted to engage the inner periphery of the drum H and act as a brake thereon.
These arcuate weights R are normally held away from the drum H by the coiled springs r, but when the gear is rotated at high velocity the centrifugal action on the weights R will overcome the power of the springs r and will cause the weights to act as a brake on the drum H and retard its rotation.」(明細書2頁19行ないし25行)
〔翻訳〕
「前述の各突出部には、ドラムHの内周面と係合し、その上でブレーキとして機能するように適合されている円弧状の錘Rを運ぶアームQが揺動されている。これらの円弧状の錘Rは、通常はコイル状のスプリングrによってドラムHから離れて保持されていますが、歯車が高速で回転すると、錘Rに作用する遠心力がスプリングrの力に打ち勝って、ドラムHにブレーキとして作用し、その回転を遅らせることになる。」

(カ)上記(ア)ないし(ウ)及び図1において、メインシャフトFとスリーブOが同軸に設けられ、スプリングドラムHがメインシャフトFの周りに回転可能であることが看取される。

(キ)上記(ア)、(ウ)ないし(オ)及び図1には、スプリングドラムHにブレーキとして作用する円弧状の錘Rを備えるスリーブOに、遠心ブレーキが取付けられた構造が示されている。

(ク)上記(ウ)、図1及び図2には、スリーブOに固定または一体的に形成されたピニオンホイールNを備えること、平行シャフトG上に、ピニオンホイールNと係合する歯付きホイールM、及び内部歯付きホイールKと係合する平歯車Lを備える機構が示されている。

(ケ)図1から、歯付きホイールMは平歯車Lより多い歯数を有していることが看取される。

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「火災避難装置において、
内周面を備えたスプリングドラムHであって、メインシャフトFの周りに回転可能であり、内部歯付きホイールKを備える、前記スプリングドラムHと、
一端はスプリングドラムに固定され、他端は乗客用スリングまたはケージに固定されているコードDと、
メインシャフトFと同軸のスリーブOと、
ドラムHにブレーキとして作用する円弧状の錘Rを備えるスリーブOに取付けられた遠心ブレーキと、
前記スリーブOに固定または一体的に形成されたピニオンホイールNと、
平行シャフトG上に、ピニオンホイールNと係合する歯付きホイールMおよび内部歯付きホイールKと係合する平歯車Lを備える機構と、
を備え、
歯付きホイールMは平歯車Lより多い歯数を有している、火災避難装置。」

(2)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「火災避難装置」は、(1)(ア)に記載されているように、個人住宅や工場などでの避難の際に使用する装置であり、スプリングドラムに巻かれたラインの降下、すなわち、懸垂下降を自動的に調節する遠心ブレーキを備えるものであることから、本件補正発明の「懸垂下降装置」に相当し、以下同様に、「内周面」は「内部表面」に、「スプリングドラムH」は「環状ドラムスプール」に、「メインシャフトF」は「中心軸」に、「内部歯付きホイールK」は「環状ギヤ」に、「コードD」は「ライン」に、「スリーブO」は「シャフト」に、「円弧状の錘R」は「ブレーキパッド」に、「遠心ブレーキ」は「遠心ブレーキ」に、「ピニオンホイールN」は「ブレーキギヤ」に、「歯付きホイールM」は「第1ギヤ」に、「平歯車L」は「第2ギヤ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「他端は乗客用スリングまたはケージに固定されているコードD」とは、スプリングドラムに固定されている一端に対して、他端は他の部材に固定されるための構造を備えることから、本願補正発明の「他端が取付け手段を備える自由端部」に相当する。
そして、引用発明の「歯付きホイールM」及び「平歯車L」は、いずれも平行シャフトG上に備えられていることから、本願補正発明の「複合ギヤ」に相当する。

したがって、両者は、
「懸垂下降装置において、
内部表面を備えた環状ドラムスプールであって、中心軸の周りに回転可能であり、前記中心軸に面するギヤ歯を備えた周囲の周りに環状ギヤを備える、前記環状ドラムスプールと、
前記ドラムスプールに巻回されたラインであって、一端が前記ドラムスプールに固定され、他端が取付け手段を備える自由端部である、前記ラインと、
前記中心軸と同軸のシャフトと、
ブレーキ力を前記ドラムスプールに加える為のブレーキパッドを備える前記シャフトに取付けられた遠心ブレーキと、
前記シャフトに取り付けられ、前記シャフトと共に回転可能なブレーキギヤと、
前記ブレーキギヤと係合する為の第1ギヤおよび前記環状ギヤと係合する為の第2ギヤを備える複合ギヤと、
を備え、
前記第1ギヤは前記第2ギヤより多い歯数を有する、懸垂下降装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

〔相違点1〕
本件補正発明は「前記ドラムスプールが静止しているとき、前記ブレーキパッドは、前記ドラムスプールの前記内部表面の円周の80%を越えて延び」る事項を備えているのに対して、引用発明は、円弧状の錘Rが、スプリングドラムHの内周面の円周の80%を越えて延びているか不明である点。

〔相違点2〕
本件補正発明は「複合ギヤは、前記ドラムスプールの最も外側の部分を通り越して延びている」のに対して、引用発明はそのような発明特定事項を備えていない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
円弧状の錘Rは、スプリングドラムHの内周面表面との摩擦力で制動力を得ることから、接触面積が大きいほど制動力が得られることは自明といえる。
ここで、ブレーキパッドの面積をどの程度とするかは、スプリングドラムHにおける必要な制動力等を考慮することで当業者が適宜決定し得る事項といえ、スプリングドラムHの内周面表面の80%を越えて延びるようにすることに格別な困難性を有しない。なお、遠心ブレーキにおいて、ブレーキパッドの外周がドラムスプールの内部表面の略100%とすること(以下「周知技術」という。)については、必要に応じて、特開平11-267230号公報の段落【0029】ないし【0031】及び図5、米国特許第829134号明細書の1頁54ないし59行及び図4等を参照されたい。
したがって、引用発明から、または引用発明及び周知技術から本件補正発明の相違点1に係る発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

〔参考〕
米国特許第829134号(明細書の1頁54ないし59行)(訳は当審によるもの。)
「On this shaft are mounted four radial arms 14, on which are slidable the weights 15. These blocks have beveled outer edges 16, which when the weights have been thrown out by centrifugal force engage the beveled ring 17 on the cap 3.」
〔翻訳〕
「このシャフトには、4つのラジアルアーム14が据え付けられており、錘15は、その上でスライド可能となっている。これらのブロックは面取りされた外縁16を有しており、重りが遠心力によって投げ出されるときに、キャップ3上のベベルリング17と係合する。」

(イ)相違点2について
上記(1)(オ)には「歯車が高速で回転すると、錘Rに作用する遠心力がスプリングrの力に打ち勝って、ドラムHにブレーキとして作用し、その回転を遅らせることになる。」と記載されており、引用文献1の図1からも、ピニオンホイールNを高速で回転させることにより、スプリングドラムHに対して制動力が働き、その回転を遅らせることがわかる。
そして、引用発明において、ピニオンホイールNの回転数は、ピニオンホイールN、複合ギヤである歯付きホイールM及び平歯車L、並びに内部歯付きホイールKのギア比によって決まるところ、必要な制動力を得るために、それぞれの径及び歯数を調整することにより適切なギア比を決定することは当業者が適宜なし得るということができる。そして、制動力をより強力なものとするためには、歯付きホイールMの歯数、つまり径を相対的に大きくすると良いことは当然である。一方、スプリングドラムHの径及び最も外側の部分についても、装置自体に求められる機能、コードにおける必要な長さ、剛性等に対応して適宜決定し得る事項といえる。
すなわち、当該装置の設置状況や要求される装置の性能に応じて、歯付きホイールMの径、及びスプリングドラムHの径を調整することは当業者が適宜なし得る事項であり、引用発明は、また、制動力を高めること、つまり歯付きホイールMの径を相対的に大きくするための動機付けを有しているといえるから、引用発明において、歯付きホイールMの径を、スプリングドラムHの外縁を越える程度に大きくすることで、本件補正発明の相違点2に係る発明特定事項のようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

また、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和2年3月5日の手続補正により補正された請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、第2 [理由] 1.(1)に記載したとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。

理由1.本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.英国特許第11790号明細書(1912)(本審決における引用文献1)
引用文献2.特開平11-267230号公報(本審決における引用文献2)
引用文献3.米国特許第829134号明細書(本審決における引用文献3)

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(本審決における引用文献1)は、前記第2[理由]2.(1)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本件発明は、前記第2[理由]2.で検討した本件補正発明における「ドラム」及び「自由端部」との事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(3)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も実質的に同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-12 
結審通知日 2021-03-16 
審決日 2021-03-30 
出願番号 特願2018-551320(P2018-551320)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A62B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 楠永 吉孝  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 高島 壮基
北村 英隆
発明の名称 懸垂下降装置  
代理人 野田 雅一  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 山田 行一  
代理人 池田 成人  
代理人 阿部 寛  
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