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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1377237
審判番号 不服2020-275  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-09 
確定日 2021-09-07 
事件の表示 特願2014-157665「システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日出願公開、特開2016- 35627、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月1日の出願であって、平成30年7月24日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月26日に手続補正がされ、同31年3月15日付けで拒絶理由通知がされ、令和元年5月20日に手続補正がされたが、令和元年10月7日付けで同年5月20日にされた手続補正が却下されるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同2年1月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、当審より同3年4月21日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知し、これに対し、同年6月15日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献A-Cに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2007-85772号公報
B.特開2013-246011号公報
C.国際公開第2013/103723号

第3 当審拒絶理由の概要
1(サポート要件及び明確性要件)この出願の特許請求の範囲の記載は、係り受けが不明な記載や発明の詳細な説明と対応していない記載があるため、特許法第36条第6項第1号又は同条同項第2号の規定に適合しない。

2(進歩性要件)本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2003-346010号公報

第4 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年6月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(補正箇所に下線を付した。)

「 移動体に設置される車載装置と、情報処理装置とを有するシステムであって、
前記車載装置は、
前記移動体に搭載された電子制御ユニット(ECU)から該ECUに関するECU情報を受信する車載ECU情報受信部と、
前記ECU情報を前記情報処理装置に送信する車載ECU情報送信部とを備え、
前記情報処理装置は、
前記車載装置から前記ECU情報を受信するECU情報受信部と、
前記ECU情報が格納されるECU情報格納部と、
前記ECU情報受信部が受信する前記ECU情報を前記ECU情報格納部に蓄積するECU情報蓄積部と、
店舗の位置を示す店舗位置情報と前記店舗の連絡先を示す店舗識別情報とを有する店舗情報と、前記ECU情報により特定される前記移動体が備える部品を識別する部品識別情報とを含む店舗管理情報を格納する店舗管理情報格納部と、
前記ECU情報が予め決められた条件を満たす場合に、交換情報として、前記ECU情報により特定される前記部品識別情報を含む前記店舗管理情報を前記店舗管理情報格納部から取得する交換情報取得部と、
前記情報処理装置の現在位置を示す現在位置情報を取得する現在位置情報取得部と、
前記交換情報取得部が取得した前記店舗管理情報に含まれる前記店舗情報を、前記店舗位置情報が示す位置が前記現在位置から近い順に並ぶように出力する出力部と、
前記出力部が出力した前記店舗情報の中から選択された前記店舗情報を第一予約指示として受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた前記店舗情報が有する前記店舗識別情報を宛先として、前記部品識別情報を含む第二予約指示を送信する送信部と、
前記第二予約指示を送信した前記店舗識別情報が示す前記店舗から、前記部品の交換に関する作業の開始から終了までの時間帯を示す作業時間情報を受信する作業時間情報受信部と、
地図を示す地図情報が格納される地図情報格納部と、
前記現在位置情報と、選択された前記店舗情報が示す前記店舗の前記店舗位置情報と、前記地図情報とを用いて、前記現在位置から、前記店舗までの経路を探索し、前記経路を示す経路情報を取得する経路探索部とを備え、
前記ECU情報は、時間的に連続する第一ECU情報と第二ECU情報とを有し、前記予め決められた条件は、前記第一ECU情報と前記第二ECU情報との差分が、所定値以上であり、
前記出力部は、前記作業時間情報と、前記地図情報と共に前記経路情報とを表示するシステム。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-346010号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0010】【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態のサービス提供システムは、情報センタ1と、車両2と、クライアント端末を備えた部品工場3と、同じくクライアント端末を備えた販売店4とを通信網5によって接続することで、車両の補修作業や車両部品の販売を効率良く行うシステムである。本実施の形態のサービス提供システムの情報センタ1は、車両2から送信された情報に基づいて、車両の補修作業日程の管理や補修作業用部品の需要予測、車両部品の販売サポート等の処理を行う情報管理センタである。この情報管理センタはサーバ機能を備え、通信網5を介して、部品工場3や販売店4のクライアント端末に情報を発信する。」

「【0028】次に、図面を用いて、さらに本実施の形態で用いられる車両2の構成について説明する。図3に示すように、車両2は、制御部21と、通信アンテナ22と、通信ユニット23と、車両搭載センサ類24と、車両搭載制御ユニット類25と、車内LAN(Local Area Network)26と、入力操作部27と、表示部28とを備えている。制御部21は、CPU(中央演算装置)を備えたコンピュータシステムであって車両状態管理プログラムを実行し、車両2に搭載された車両搭載センサ類24や車両搭載制御ユニット類25から車両2の状態を取得し、故障診断結果や部品寿命のモニタ結果等の車両の判定情報を管理するとともに、この判定情報と当該補修品との関連から他の消耗品を推定しその推定結果を関連部品情報として管理する。また、車両の判定情報および関連部品情報または補修要求を情報センタ1へ通知するための通信を制御する。通信アンテナ22は、情報センタ1へ車両の判定情報および関連部品情報や補修要求(なお、これらは、場合によっては1つの情報として送られる)を送信するものであって、制御部21で管理される車両の判定情報や補修要求を無線電波にのせて発信する無線通信用の通信ユニット23と接続されている。
【0029】車両搭載センサ類24は、車速センサ、いわゆるGセンサ、ブレーキの作動を検出するブレーキスイッチ、ステアリングの操舵量を検出する操舵センサ、ヨーレートを検出するヨーレートセンサ、シフト位置を検出するシフトポジションセンサ、スロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ、エンジンオイルやATF(Automatic Transmission Fluid)オイルの温度を検
出するそれぞれの油温センサ等のセンサ類と、積算走行距離計等のメータ類を含んでいる。さらに、ウィンカ(方向指示スイッチ)やヘッドライト、ワイパーのスイッチのような、運転者が操作するスイッチの状態に基づいて運転者による自車両の制御状態を取得する手段を含むものとする。
【0030】また、車両搭載制御ユニット類25は、エンジンの燃料噴射制御システムや、車両の制動を制御する4輪アンチロックブレーキシステム、車両の駆動を制御するトラクションコントロールシステム、さらには駆動力の伝達を制御するオートマティックトランスミッションのための各種ECU(Electronic Control Unit)やGPS(Global Positioning System )を利用したナビゲーションシステムと称される位置情報提示装置、メータ類、ドアロック等を制御するために、車両の各部に配置され、車両の走行制御や操作・表示制御を行うために用いられる制御ユニットを含んでいる。なお、制御部21と車両搭載センサ類24、及び車両搭載制御ユニット類25の間は、車内LAN26を構成するCAN(Controller Area Network)等によって接続され、双方向に情報の送受信が可能となっている。
【0031】また、車両2に搭載される制御部21と、通信アンテナ22と、通信ユニット23は、上述のナビゲーションシステムと称される位置情報提示装置の一部として機能しても良く、この場合、サービス条件に含まれる販売店の位置情報等は、具体的な地図上の情報として表示することが可能となる。また、車両の積算走行距離計と同様に積算走行距離の他、平均燃費等も得ることができるようになる。なお、通信アンテナ22と通信ユニット23は、これに替わるインターフェースユニット29と携帯電話機30とで、その機能を実現しても良い。また、携帯電話機30とインターフェースユニット29の接続方法は近距離無線等で接続しても良い。さらに、制御部21には、ユーザが制御部21を操作するために用意されたキーパッド、ボタン、ポインティングデバイス等を含む入力操作部27と、車両搭載センサ類24や車両搭載制御ユニット類25から取得した車両2の状態、あるいは故障診断結果や部品寿命のモニタ結果等を表示したり、情報センタ1から受信した情報を表示するための表示部28とが接続されている。なお、表示部28には、音や音声を表示する音声出力手段と画像や文字情報を表示する自車両のメータ類と一体化されたメータ一体Displayや自車両のコンソールに設置されるNAVIDisplay、さらにフロントウィンドウの運転者の前方視界を妨げない位置に情報を表示するHUD(Head Up Display )等を含む。
【0032】また、制御部21は、特に、車両搭載センサ類24や車両搭載制御ユニット類25から取得した車両2の状態に基づいて、車両2の故障診断を行う故障診断部201と、部品寿命のモニタを行いその交換時期を計算する部品寿命計算部202と、故障診断部201と部品寿命計算部202による処理結果と診断対象の補修品と関連する他の消耗品(オイル等の消耗品を含む)を推定する関連部品推定部203と、所定の時期毎に故障
診断部201と部品寿命計算部202の処理結果を車両の判定情報として、関連部品推定部203の処理結果を関連部品情報として情報センタ1へ送信する車両情報送信部204と、補修作業の必要性が発生したときに車両の補修要求を情報センタ1へ送信する補修要求送信部205とを有している。この車両情報送信部204にて判定情報が送出される際、補修要求送信部205にて情報センタ1へ送信する補修要求がある場合には、この補修要求は判定情報に含められ通信ユニット12から情報センタ1に送信される。また、情報センタ1から受信した販売店名やサービス内容(このサービス内容には、補修要求の内容を満たしうるばかりでなく更なるサービスを提供することができる旨の付加情報を含んでいる)を含む複数のサービス条件を表示して、ユーザに希望のサービス条件を選択させるサービス条件選択部206とを有している。さらに、ユーザの選択したサービス条件を情報センタ1へ通知するサービス条件通知部207と、ユーザの選択したサービス条件に対して、情報センタ1または販売店4から送信された予約日とサービス内容の確認情報を表示部28へ表示し、ユーザに確認情報に対する応答を入力させるサービス確認処理部208とを有する。
【0033】ここで、部品寿命計算部202が計算する部品寿命には、例えば、エンジン回転数センサから得られるエンジンの積算回転数や油温センサから得られる油温等に基づいて計算するエンジンオイル劣化のパラメータ、積算走行距離計やナビゲーションシステムから得られる走行距離や加速度センサから得られる加減速度の積算結果等に基づいて計算するタイヤ消耗パラメータ、さらには、ワイパースイッチの制御状態(ON/OFF)
から得られる利用積算時間やワイパーを交換してからの経過時間等に基づいて計算するワイパー劣化のパラメータ等が挙げられる。また、上述の補修品に対する故障診断や部品寿命計算ならびに関連する消耗品の推定は、車両搭載制御ユニット類25に含まれる制御ユニット側で行っても良い。なお、制御部21の動作の詳細は後述する。」

「【0038】ステップS1において車両2自らが取得した故障診断の結果や部品寿命の計算結果、さらに関連する消耗品の推定結果は車体番号とともに、車両情報送信部204によって、通信ユニット23と通信アンテナ22を介して、情報センタ1へ定期的に送信される(ステップS2)。このとき部品の補修要求がある場合は、情報センタ1に通知する故障診断の結果や部品寿命の計算結果からなる判定情報に補修要求を含めて情報センタ1に通知する。また、情報センタ1では、部品需要予測部101が、車両2から取得した車両の判定情報に含まれる診断結果や部品寿命の計算結果と、関連部品情報と、顧客データベース13に記憶されたユーザが過去に購入した部品の履歴等の統計結果に基づいて部品の需要予測を行う(ステップS3)。情報センタ1における部品の需要予測結果は、部品工場3の端末を介して部品工場3に開示されており(ステップS4)、部品工場3では、部品の需要予測結果に基づいて、部品の生産計画の立案や適正在庫の管理を行う(ステップS5)。
【0039】一方、情報センタ1は、場合によっては車両2へオイルの交換時期を通知しても良い(ステップS6)。車両2では、オイルの交換時期の通知があった場合や、部品寿命計算部202がオイルの交換時期と判定した場合、補修要求送信部205が情報センタ1に対して車両2の車体番号を示し、オイル交換の要求(車両の補修要求送信)を行う(ステップS7)。上記判定情報および関連部品情報または補修要求を受信した情報セン
タ1の販売店選択部102は、車両2から取得した車両の判定情報および関連部品情報または補修要求とともに受けた車体番号を利用して顧客データベース13を検索し、得られた車両2のユーザの住所または位置情報をサービス範囲とする販売店であって、情報センタの運営者により定められた所定のサービス内容を提供し得る販売店4を販売店データベース15から可能な限り抽出する。そして、販売店データベース15に記憶された販売
店4に対する情報提供範囲を確定する(ステップS8)。
【0040】そして、サービス情報提供部103が、確定された情報提供範囲に含まれる販売店4の端末に対して、ユーザ情報とともに判定情報および関連部品情報または補修要求を通知する(ステップS9)。ユーザ情報とともに判定情報および関連部品情報または補修要求を通知された販売店4は、部品の在庫状況を確認し、必要ならば端末を介して部品工場3へ部品発注を行う(ステップS10)。部品発注を受けた部品工場3では、ステ
ップS5における部品の生産計画や適正在庫の管理結果に従って納期を計算し、端末を介して販売店4に対し納期回答を行う(ステップS11)。部品工場3より納期回答を受けた販売店4は、この回答と、先に受信した判定情報および関連部品情報または補修要求に基づいて、自店の部品交換のサービス内容や推奨商品、予約状況、さらには、キャンペーン等の情報を生成し、これらの情報をサービス条件として、端末から情報センタ1へ送信
する(ステップS12)。ここで、部品の交換のサービス内容や推奨商品とは、例えばオイル交換の所要時間や費用等のサービス内容、推奨する交換用オイルフィルターの情報やフラッシングをすすめる情報等が挙げられる。
【0041】また、判定情報および関連部品情報や補修要求の通知に応答して送信される部品交換のサービス内容や推奨商品、予約状況、さらには、キャンペーン等の情報(サービス条件)を販売店4から受信した情報センタ1では、サービス条件中継部104が、受信したサービス条件を、車両2へ中継して通知する(ステップS13)。車両2では、運転中にサービス条件の通知を受けた場合は、運転者である車両管理者(ユーザ)に情報受
信を報知する(ステップS14)。そして、車両2のサービス条件選択部206が、表示部28に、情報センタ1から受信した販売店名やサービス内容を含む複数のサービス条件から、サービス条件を提示する販売店4をユーザに選択させるための表示をさせ(ステップS15)、ユーザに利用販売店等、希望のサービス条件の選択を行わせる(ステップS16)。次に、サービス条件通知部207が、ユーザの選択したサービス条件を情報
センタ1へ通知する(ステップS17)。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(当審拒絶理由における引用発明と異なる部分に下線を付した。)

情報センタと、車両と、部品工場の端末、販売店の端末とが通信網によって接続されたシステム(図1)における車両に備えられ、制御部と、通信アンテナと、通信ユニットと、車両搭載センサ類と、車両搭載制御ユニット類と車内LANと、入力操作部と、表示部と、からなるシステム(図2)であって(【0010】、【0028】)、
車両搭載制御ユニット類は、各種ECU等であり(【0030】)、
制御部は、CPUを備えてプログラムを実行し、車両搭載センサ類や車両搭載制御ユニット類から車両の状態を取得し、故障診断結果や部品寿命のモニタ結果等の車両の判定結果と判定結果等からの推定結果である関連部品情報を管理し、車両の判定情報および関連部品情報または補修要求を情報センタへ通知するための通信を制御するものであり(【0028】)、部品寿命のモニタを行いその交換時期を計算する部品寿命計算部(【0032】)において、例えばエンジン回転数センサから得られるエンジンの積算回転数や油温センサから得られる油温等に基づいて計算するエンジンオイル劣化のパラメータのような部品寿命が計算されるものであり(【0033】)、
制御部は、ナビゲーションシステムとして機能しても良く、この場合、サービス条件に含まれる販売店の位置情報等は、具体的な地図上の情報として表示することが可能となるものであり(【0031】)
情報センタに部品寿命の計算結果等である判定情報を定期的に送信し、オイルの交換時期と判定した場合補修要求を情報センタに送信し(【0038】、【0039】図4)、
判定情報と補修要求の通知を受けた販売店から情報センタに通知された、部品交換サービス内容や推奨商品、予約状況等のサービス条件について情報センタからの通知を受けた場合、運転者である車両管理者(ユーザ)に情報受信を報知し、表示部に情報センターから受信した販売店名やサービス内容を含む、サービス条件をユーザに選択させるための表示をさせ(【0040】【0041】)、ここで、部品の交換のサービス内容や推奨商品とは、例えばオイル交換の所要時間や費用等のサービス内容等である(【0040】)、
システム。

第6 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(対比)
引用発明の「車両」は、本願発明の「移動体」に相当する。
引用発明の「車両搭載制御ユニット類」は、本願発明の「移動体に搭載された電子制御ユニット(ECU)」に相当する。また、引用発明の「制御部」は、CPUを備えてプログラムを実行するものであり、本願発明の「情報処理装置」に相当する。引用発明の「車内LAN」は、「移動体に搭載された電子制御ユニット(ECU)」からの情報を受信する受信部とこれを情報処理装置に送信する送信部を備えるものであり、本願発明の「車載装置」に相当する。
引用発明の情報処理装置は、車載装置(車内LAN)を経由して車両搭載センサ類や車両搭載制御ユニット類から車両の状態を取得するから、車載装置からの情報を受信する受信部と受信した情報が格納される格納部とこれを格納部に蓄積する蓄積部とを備える点で、本願発明と共通しているといえる。
引用発明における、例えばエンジン回転数センサから得られるエンジンの積算回転数や油温センサから得られる油温等に基づいて計算するエンジンオイル劣化のパラメータのような部品寿命は、部品がECU情報により特定される部品識別情報を含む店舗管理情報でないものの、部品であるオイルの交換の必要性にかかる状態を示す情報であるから、本願発明の「交換情報」に対応するといえ、本願発明と引用発明とは、ECU情報が予め決められた条件を満たす場合に、交換情報を取得する交換情報取得部を備える点で共通するといえる。
引用発明における「部品交換サービス内容や推奨商品、予約状況等のサービス条件」は、オイル交換の所要時間等を示す情報であるから、本願発明の「部品の交換」に関する「作業時間情報」に対応する。そして、引用発明の情報処理装置は、部品寿命のような車両の判定情報や補修要求を店舗に通知するための通信を制御するものであり、また、ユーザにサービス条件を選択させるための店舗から通知されたサービス内容の表示を表示部に行わせるから、本願発明と引用発明とは、店舗から作業時間情報を受信する作業時間情報受信部と作業時間情報を表示する出力部を備える点で共通するといえる。
引用発明の情報処理装置は、ナビゲーションシステムとして機能する場合にサービス条件に含まれる販売店の位置情報が地図上の情報として表示されるものであり、このことを踏まえると、引用発明は、本願発明と同様の「現在位置情報取得部」、「地図を示す地図情報が格納される地図情報格納部」を備えるものである。さらに、本願発明と引用発明とは、いずれも、現在位置情報と店舗の店舗位置情報と地図情報とを用いて現在位置から店舗までの経路を探索して経路を示す経路情報を取得する「経路探索部」を備え、出力部が「地図情報」と共に「経路情報」を出力するものである点でも、共通するといえる。

以上を踏まえれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
移動体に設置される車載装置と、情報処理装置とを有するシステムであって、
前記車載装置は、
前記移動体に搭載された電子制御ユニット(ECU)から該ECUに関するECU情報を受信する車載ECU情報受信部と、
前記ECU情報を前記情報処理装置に送信する車載ECU情報送信部とを備え、
前記情報処理装置は、
前記車載装置から前記ECU情報を受信するECU情報受信部と、
前記ECU情報が格納されるECU情報格納部と、
前記ECU情報受信部が受信する前記ECU情報を前記ECU情報格納部に蓄積するECU情報蓄積部と、
ECU情報が予め決められた条件を満たす場合に、交換情報を取得する交換情報取得部と、
情報処理装置の現在位置を示す現在位置情報を取得する現在位置情報取得部と、
店舗から作業時間情報を受信する作業時間情報受信部と、
地図を示す地図情報が格納される地図情報格納部と、
前記現在位置情報と、店舗の店舗位置情報と、前記地図情報とを用いて、前記現在位置から、前記店舗までの経路を探索し、前記経路を示す経路情報を取得する経路探索部と、
作業時間情報と、前記地図情報と共に前記経路情報を表示する出力部と、
を備える、
システム。

<相違点>
(相違点1)
本願発明の情報処理装置は、「店舗の位置を示す店舗位置情報と前記店舗の連絡先を示す店舗識別情報とを有する店舗情報と、前記ECU情報により特定される前記移動体が備える部品を識別する部品識別情報とを含む店舗管理情報を格納する店舗管理情報格納部」を備えるのに対し、引用発明の情報処理装置は、これを備えない点。

(相違点2)
本願発明の交換情報は、店舗管理情報格納部から取得される「店舗管理情報」であるとともに「部品識別情報」を含むのに対し、引用発明の交換情報は、店舗管理情報格納部から取得される店舗管理情報でなく、部品識別情報を含むか否か明らかでない点

(相違点3)
本願発明の情報処理装置の出力部は、取得された「店舗管理情報」に含まれる「店舗情報」を「前記店舗位置情報が示す位置が前記現在位置から近い順に並ぶように」出力するのに対し、引用発明の情報処理装置の出力部は、取得された店舗管理情報に含まれる店舗情報を出力しない点。

(相違点4)
本願発明の情報処理装置は、「前記出力部が出力した前記店舗情報の中から選択された前記店舗情報を第一予約指示として受け付ける受付部」を備えるのに対し、引用発明の情報処理装置は、これを備えない点。

(相違点5)
本願発明の情報処理装置は、「前記受付部が受け付けた前記店舗情報が有する前記店舗識別情報を宛先として、前記部品識別情報を含む第二予約指示を送信する送信部」を備えるのに対し、引用発明の情報処理装置は、これを備えない点。

(相違点6)
本願発明の情報処理装置の作業情報受信部は、作業時間情報として「部品の交換に関する作業の開始から終了までの時間帯を示す」ものを、「第二予約指示」を送信した「店舗識別情報」が示す店舗から、受信するのに対し、引用発明の情報処理装置の作業情報受信部は、部品の交換に関する作業の開始から終了までの時間帯を示す情報を第二予約指示を送信した店舗識別情報が示す店舗から受信するものでない点。

(相違点7)
本願発明は、「ECU情報」が「時間的に連続する第一ECU情報と第二ECU情報とを有」するものであり、状態情報取得部が「前記第一ECU情報と前記第二ECU情報との差分が、所定値以上であ」るという「予め決められた条件」を「満たす場合」に、情報を取得するのに対し、引用発明は、これらの特定事項を備えない点。

2 相違点についての判断
上記相違点1ないし6は、関連する相違点であり、まとめて検討する。
引用発明の「情報処理装置」は、車両に備えられた制御部であり、サービスに係る販売店名は、制御部に格納されておらず、情報センタから受信するものである。このことを踏まえれば、引用発明において、「情報処理装置」である制御部を「店舗の位置を示す店舗位置情報」や「店舗の連絡先を示す店舗識別情報」を有する「店舗情報」を含む「店舗管理情報」を格納する「店舗管理情報格納部」を備えるものとするように変更することや、「店舗管理情報格納部」から「店舗管理情報」を取得した上で現在位置から近い順に並ぶように出力されたものから選択された店舗への予約指示を行うことで当該店舗から部品の交換に関する作業の開始から終了までの時間帯を示す情報を取得するように構成することについて、動機付けがあるといえない。
さらに、これらの相違点に係る技術を開示した副引例となる文献も見当たらない。
したがって、上記相違点7について判断するまでもなく、本願発明は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献A-Cは、いずれも、上記第6で検討した相違点1ないし6に係る技術を開示した文献でなく、これらの引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 サポート要件及び明確性要件について
令和3年6月15日にされた手続補正により、係り受けが不明な記載や発明の詳細な説明と対応していない記載は補正されており、当審より通知した拒絶理由は解消した。
2 進歩性要件について
上記第6のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、当審より通知した拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審より通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-19 
出願番号 特願2014-157665(P2014-157665)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅岡 信幸  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 後藤 嘉宏
相崎 裕恒
発明の名称 システム  
代理人 山本 弘幸  

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