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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1377272
審判番号 不服2020-11029  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-07 
確定日 2021-08-19 
事件の表示 特願2017-503465「保護フィルム付き偏光フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 9日国際公開、WO2016/140182〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2017-503465号(以下「本件出願」という。)は、平成28年2月29日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年3月3日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年1月30日付け:拒絶理由通知書
平成2年3月31日付け:意見書
平成2年3月31日付け:手続補正書
令和2年4月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年8月 7日付け:審判請求書

2 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明は、令和2年3月31日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの、次のものである(以下「本願発明」という。)。
「偏光フィルムの片面に第1の保護フィルムが積層された片面保護フィルム付き偏光フィルムにおける第1の保護フィルムが積層された側とは反対側の面に第2の保護フィルムが積層された両面保護フィルム付き偏光フィルムを製造する方法であって、
偏光フィルムの片面に接着剤を介して第1の保護フィルムを重ね合せた状態で互いに平行な一対のロール間に挟み込む第1貼合工程と、
片面保護フィルム付き偏光フィルムにおける第1の保護フィルムが積層された側とは反対側の面に、接着剤を介して第2の保護フィルムを重ね合せた状態で互いに平行な一対のロール間に挟み込む第2貼合工程と、
をこの順に含み、
前記第1貼合工程において、ロールの軸線方向に対し垂直な平面において、ロール間に挟み込まれる偏光フィルムと第1の保護フィルムとの成す角度が45度以上であり、
前記第2貼合工程において、ロールの軸線方向に対し垂直な平面において、ロール間に挟み込まれる片面保護フィルム付き偏光フィルムと第2の保護フィルムとの成す角度が45度以上であり、
前記第2貼合工程において、片面保護フィルム付き偏光フィルムが、一対のロールの間の軸線を含む平面に対して直交する方向に対して成す角度β_(3)、及び、第2の保護フィルムが、一対のロールの間の軸線を含む平面に対して直交する方向に対して成す角度β_(8)がいずれも、5度以上、80度以下である、両面保護フィルム付き偏光フィルムの製造方法。」

3 原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(特開2008-37092号公報:引用文献2)に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2008-37092号公報)は、先の出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物であるところ、そこには、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

ア 「【請求項1】
水分率10?60重量%の樹脂フィルムの両面に、水分率0.5?5重量%の第1透明フィルムおよび第2透明フィルムを接着層または粘着層を介して貼り合わせる多層積層フィルムの製造方法において、
樹脂フィルムと第1透明フィルムを、第1金属ロールと第1弾性ロールの一対のロール間を第1透明フィルムが第1金属ロールの側になるように通過することにより圧着して積層フィルムを形成した後、
当該積層フィルムを巻き取ることなく、当該積層フィルムと第2透明フィルムを、第2金属ロールと第2弾性ロールの一対のロール間を第2透明フィルムが第2金属ロールの側になるように通過することにより圧着して多層積層フィルムを形成することを特徴とする多層積層フィルムの製造方法。
・・・中略・・・
【請求項5】
第1弾性ロールの変形凹部端点における接線と樹脂フィルムの搬送線のなす角度(θ1a)と、
第1弾性ロールの変形凹部端点における接線と第1透明フィルムの搬送線のなす角度(θ1b)とが、
第1弾性ロールの変形凹部端点における接線に対して逆方向にあることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の多層積層フィルムの製造方法。
ただし、第1弾性ロールの変形凹部端点は、第1弾性ロールが、第1金属ロールにより接触押圧されることにより生じる、第1弾性ロールの変形凹部における、第1弾性ロールと第1金属ロールとの最始接触点をいう。
樹脂フィルムの搬送線は、樹脂フィルムと第1弾性ロールとの最始接触点における接線をいう。
第1透明フィルムの搬送線は、第1透明フィルムと第1金属ロールとの最始接触点における接線をいう。
・・・中略・・・
【請求項7】
第2弾性ロールの変形凹部端点における接線と積層フィルムの搬送線のなす角度(θ2a)と、
第2弾性ロールの変形凹部端点における接線と第2透明フィルムの搬送線のなす角度(θ2b)とが、
第2弾性ロールの変形凹部端点における接線に対して逆方向にあることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の多層積層フィルムの製造方法。
ただし、第2弾性ロールの変形凹部端点は、第2弾性ロールが、第2金属ロールにより接触押圧されることにより生じる、第2弾性ロールの変形凹部における、第2弾性ロールと第2金属ロールとの最始接触点をいう。
積層フィルムの搬送線は、積層フィルムと第2弾性ロールとの最始接触点における接線をいう。
第2透明フィルムの搬送線は、第2透明フィルムと第2金属ロールとの最始接触点における接線をいう。
【請求項8】
積層フィルムを、第2金属ロールと第2弾性ロールの一対のロール間に搬送する前に、第2弾性ロールの変形凹部端点における接線と積層フィルムの搬送線のなす角度(θ2a)を変更する手段を有することを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の多層積層フィルムの製造方法。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、水分率10?60重量%の樹脂フィルムの両面に、水分率0.5?5重量%の第1および第2透明フィルムを接着層または粘着層を介して貼り合わせる多層積層フィルムの製造方法に関する。
【0002】
本発明の製造方法は、各種多層積層フィルムの製造に適用できるが、例えば、樹脂フィルムとして偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて、偏光板を製造する方法において用いることができる。その他、食品、医療機器などの包装に用いられる多層積層フィルムの製造において適用できる。
【背景技術】
【0003】
従来より、樹脂フィルムの両面に透明フィルムを貼り合せて、多層積層フィルムを製造するにはあたっては、通常、水系接着剤または粘着剤が用いられている。樹脂フィルムの両面に透明フィルムを貼り合せる方法としては、例えば、一対のロール間に樹脂フィルムを搬送するとともにその両面に透明フィルムを搬送して透明フィルムを同時に貼り合せる同時ラミネート法、一対のロール間に樹脂フィルムを搬送するとともにその片面に透明フィルムを搬送して貼り合わせた後、次いで、樹脂フィルムの他の片面に透明フィルムを貼り合せる逐次ラミネート法が採用されている。
【0004】
しかし、上記のラミネート法により、樹脂フィルムと透明フィルムを貼り合せを行うと得られる多層積層フィルムにおける樹脂フィルムと透明フィルムの間に気泡が発生する。またシワが発生したり、スジ状の凹凸ムラが生じたりする。
【0005】
上記シワの発生等に関する課題に対しては、樹脂フィルム(含水率0.1?20重量%のポリビニルアルコール系フィルム)と透明フィルム(セルロース系フィルム)を所定のニップ圧にて貼り合せる方法が提案されている(特許文献1)。しかし、この方法によっても、多層積層フィルムにおける樹脂フィルムと透明フィルムの間に発生する気泡は十分に抑えることができていない。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂フィルムに透明フィルムを貼り合わせる多層積層フィルムの製造方法であって、樹脂フィルムと透明フィルムの間に発生する気泡を抑えることができ、かつシワやスジ状の凹凸ムラの発生を抑えることができる多層積層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。」

ウ 「【発明の効果】
【0018】
上記本発明の多層積層フィルムの製造方法では、逐次ラミネート法を採用するとともに、各フィルムの貼り合せには、弾性ロールと金属ロールとを組み合わせた一対のロールを用いている。そして、樹脂フィルムと透明フィルムの貼り合わせにあたり、また樹脂フィルムと透明フィルムを貼り合わせた積層フィルムにおける樹脂フィルム側と透明フィルムの貼り合わせにあたっては、いずれも、透明フィルムが金属ロールの側になるように通過させている。かかるロールの組み合わせによって、含水している樹脂フィルムには金属ロールが接触することがなくなり、かつ、弾性ロールの弾性力によって、樹脂フィルムと透明フィルムが貼り合わされるため、樹脂フィルムと透明フィルムの間に発生する気泡を抑えて、多層積層フィルムを製造することができる。また、シワが発生したり、スジ状の凹凸ムラが生じたりすることも抑えることができる。
【0019】
上記本発明の多層積層フィルムの製造方法において、樹脂フィルムの搬送角度(θ1a)と、第1透明フィルムの搬送角度(θ1b)とが、第1弾性ロールの変形凹部端点における接線に対して逆方向になるようにすることで、また、積層フィルムの搬送角度(θ2a)と、第2透明フィルムの搬送角度(θ2b)とが、第2弾性ロールの変形凹部端点における接線に対して逆方向になるように、搬送される各フィルムの角度を制御することにより、樹脂フィルムと第1透明フィルムとの最始接触時期または積層フィルムと第2透明フィルムとの最始接触時期と、それぞれのフィルムがロールにより圧着される時期との時間を短く制御でき、樹脂フィルムと透明フィルムの間に発生する気泡をより抑えることができる。
【0020】
前記多層積層フィルムの製造方法は、樹脂フィルムとして偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて、偏光板を製造する方法において好適であり、各フィルム間に気泡の発生がなく、またシワの発生やスジ状の凹凸ムラがない外観良好な偏光板が得られる。かかる偏光板は、面内均一性に優れており、高解像度であり、且つ高コントラストな液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示装置(ELD)等の画像表示装置を実現することができる。」

エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の多層積層フィルムの製造方法を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の多層積層フィルムの製造方法の一例を示すものであり、まず、樹脂フィルムAと第1透明フィルムB1を、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1の一対のロール間を通過することにより圧着して積層フィルムL1を形成している。前記一対のロールにおいて、樹脂フィルムAが第1弾性ロールa1の側になり、一方、第1透明フィルムB1が第1金属ロールb1の側になるようになっている。次いで、積層フィルムL1は巻き取ることなく、当該積層フィルムL1(樹脂フィルムA側)と第2透明フィルムB2を、第2金属ロールb2と第2弾性ロールa2の一対のロール間を通過することにより圧着して多層積層フィルムL2を形成している。多層積層フィルムL2は、樹脂フィルムAの両面に、第1透明フィルムB1および第2透明フィルムB2を有する。前記一対のロールにおいて、積層フィルムL1が第2弾性ロールa2の側になり、一方、第2透明フィルムB2が第2金属ロールb2の側になるようになっている。
【0022】
また、図1では、樹脂フィルムAを、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1の一対のロール間に搬送する前に、樹脂フィルムAの角度変更手段M1が設けられている。また、積層フィルムL1を、第2弾性ロールa2と第2金属ロールb2の一対のロール間に搬送する前に、積層フィルムL1の角度変更手段M2が設けられている。角度変更手段M1により、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1の間に侵入する樹脂フィルムAの角度を制御することができる。また角度変更手段M2により、第2弾性ロールa2と第2金属ロールb2の間に侵入する積層フィルムL1の角度を制御することができる。角度変更手段M1、M2は、図1では、一対のロールが示されており、これを、図1において、左右に移動させることにより、前記侵入角度を制御できる。
・・・中略・・・
【0030】
前記多層積層フィルムの製造方法において、図2Aに示すように、樹脂フィルムAの搬送角度(θ1a)と、第1透明フィルムB1の搬送角度(θ1b)とが、第1弾性ロールa1の変形凹部端点x1における接線y1に対して逆方向になるよう制御することが好ましい。すなわち、第1弾性ロールa1の変形凹部端点x1における接線y1と樹脂フィルムAの搬送線のなす角度(θ1a)と、第1透明フィルムB1の搬送線のなす角度(θ1b)とが、接線y1に対して逆方向になるようにすることが好ましい。これにより、樹脂フィルムAと第1透明フィルムB1との最始接触時期と、これらフィルムが第1弾性ロールa1および第1金属ロールにより圧着される時期との時間を短く制御でき、これにより、樹脂フィルムAと第1透明フィルムB1の間に発生する気泡をより抑えることができる。前記角度(θ1a)の制御は、図1の角度制御手段M1により行うことができる。
【0031】
図2Aにおいて、第1弾性ロールa1の変形凹部端点x1は、第1弾性ロールa1が、第1金属ロールb1により接触押圧されることにより生じる、第1弾性ロールの変形凹部z1における、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1との最始接触点(回転方向の最初の接触点)をいう。また、樹脂フィルムAの搬送線は、樹脂フィルムAと第1弾性ロールa1との最始接触点における接線(搬送される樹脂フィルムAの延長線上の線)をいう。第1透明フィルムB1の搬送線は、第1透明フィルムB1と第1金属ロールb1との最始接触点における接線(搬送される第1透明フィルムB1の延長線上の線)である。
【0032】
図2Aにおいて、角度(θ1a)、角度(θ1b)は、接線y1を基準に右回りを「+」、左回りを「-」として表すと、角度(θ1a)は、「-」の角度であれば特に制限はない。角度(θ1b)は、「+」の角度であれば特に制限はない。
【0033】
上記では、図2Aについて、樹脂フィルムAの搬送される角度(θ1a)と、第1透明フィルムB1の搬送される角度(θ1b)とについて言及しているが、同様に、図2Bに示すように、積層フィルムL1の搬送される角度(θ2a)と、第2透明フィルムB2の搬送される角度(θ2b)についても制御することにより、積層フィルムL1における樹脂フィルムAと第2透明フィルムB2の間に発生する気泡をより抑えることができる。前記角度(θ2a)の制御は、図1の角度制御手段M2により行うことができる。
【0034】
図2Bにおいて、角度(θ2a)、角度(θ2b)は、接線y2を基準に右回りを「+」、左回りを「-」として表すと、角度(θ2a)は、「+」の角度であれば特に制限はない。角度(θ2b)は、「-」の角度であれば特に制限はない。
【0035】
本発明の多層積層フィルムの製造方法に用いる、樹脂フィルムは、水分率10?60重量%のものである。樹脂フィルムの水分率は、15?50重量%、さらには20?40重量%の場合に本発明に好適に適用される。一方、第1および第2透明フィルムの水分率は、0.5?5重量%である。前記透明フィルムの水分率は、1?3重量%の場合に本発明に好適に適用される。なお、第1および第2透明フィルムの材料は同じあってもよく、異なっていてもよい。また、水分率も同じあってもよく、異なっていてもよい。なお、多層積層フィルムの製造方法において、接着層または粘着層を形成する材料は、用いる樹脂フィルム、透明フィルムに応じて適宜に決定される。
【0036】
以下は、樹脂フィルムとしては、偏光フィルムを用い、透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて、接着層または粘着層を介してこれらを貼り合わせて、偏光板を製造する場合について述べる。
・・・中略・・・
【0060】
この保護フィルムを偏光フィルムの両面に貼り合わせる場合、その片面ごとにそれぞれ異なる特性をもつものを用いてもよい。その特性としては、例えば、厚み、材質、光透過率、引張り弾性率あるいは光学機能層の有無等が挙げられる。
・・・中略・・・
【0090】
前記偏光フィルムと透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着層または粘着層は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤またはラジカル硬化型接着剤が好適である。
・・・中略・・・
【0098】
ラジカル硬化型接着剤としては、電子線硬化型、紫外線硬化型等の活性エネルギー線硬化型、熱硬化型等の各種のものを例示できるが、短時間で硬化可能な、活性エネルギー線硬化型が好ましい。特に、電子線硬化型が好ましい。」

オ 「【実施例】
【0148】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0149】
(偏光フィルムの水分率測定方法)
得られた偏光フィルムから、180mm×500mmのサンプルを切り出し、その初期重量(W(g))を測定した。そのサンプルを120℃の乾燥機内で2時間放置した後、乾燥後重量(D(g))を測定した。これらの測定値より、下記式により水分率を求めた。
水分率(%)={(W-D)/W}×100
【0150】
(偏光フィルムの作製)
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製:VF-PS7500,幅1000mm)を用いて、30℃の純水中に60秒間浸漬しながら延伸倍率2.5倍まで延伸し、30℃のヨウ素水溶液(重量比:純水/ヨウ素(I)/ヨウ化カリウム(KI)=100/0.01/1)中で45秒間染色し、4重量%ホウ酸水溶液中で延伸倍率が5.8倍になるように延伸し、純水中に10秒間浸漬した後、フィルムの張力を保ったまま40℃で3分間乾燥して偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの厚さは25μm、水分率は30重量%であった。
【0151】
(接着層付の透明保護フィルムの作成)
PVA樹脂(日本合成化学工業(株)製:ゴセノール)100重量部と架橋剤(大日本インキ化学工業(株)製:ウォーターゾール)35重量部を純水3760重量部中に溶解して接着剤を調製した。この接着剤を、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士写真フィルム社製:UZ-80T,水分率1.4重量%)の片面側にスロットダイにて塗布後、85℃で1分間乾燥して、厚さ0.1μmの接着層を有する、接着層付のTACフィルムを得た。
【0152】
実施例1
(偏光板の作製)
図1に示す方法にて、偏光板を作製した。樹脂フィルムAには上記偏光フィルムを用い、第1透明フィルムB1および第2透明フィルムB2には上記接着層付のTACフィルムを用いた。接着層付のTACフィルムは、TACフィルム側が第1金属ロールb1、第2金属ロールb2の側になるように搬送した。第1金属ロールb1、第2金属ロールb2として、直径200mmの鉄ロールを用いた。第1弾性ロールa1、第2弾性ロールa2として、鉄芯の周囲にゴム層(硬度90度、肉厚3mm)を有する構成の直径200mmのロールを用いた。
【0153】
第1弾性ロールと第1金属ロールのロール間に、偏光フィルムと接着層付のTACフィルムを搬送して、これらを圧着して、偏光フィルムの片面にTACフィルムを貼り合わせて積層フィルム(図1の積層フィルムL1)を得た。このとき、第1弾性ロールと第1金属ロールのラミネート圧力は3.5MPaであり、第1弾性ロールは第1金属ロールとの押圧により凹変形した。図2Aに示すような、凹部端点(x1)を確認した。偏光フィルムは、第1弾性ロールの変形凹部端点における接線(y1)と偏光フィルムの搬送線のなす角度(θ1a)が、-11.1°になるように搬送した。一方、第1透明フィルムは、凹部端点(x1)と第1透明フィルムの搬送線のなす角度(θ1b)が、+94°になるように搬送した。なお、前記角度は、接線(y1)を基準として、右回りを(+)、左回りを(-)とする角度である。
【0154】
その後、積層フィルムを巻き取ることなく、第2弾性ロールと第2金属ロールのロール間に、積層フィルムと接着層付のTACフィルムを搬送して、これらを圧着して、偏光フィルムの両面にTACフィルムを貼り合わせた偏光板(図1の多層積層フィルムL2に相当)を得た。このとき、第2弾性ロールと第2金属ロールのラミネート圧力は3.5MPaであり、第2弾性ロールは第2金属ロールとの押圧により凹変形した。図2Bに示すような、凹部端点(x2)を確認した。積層フィルムは、第2弾性ロールの変形凹部端点における接線(y2)と積層フィルムの搬送線のなす角度(θ2a)が、+11.1°になるように搬送した。一方、第2透明フィルムは、凹部端点(x2)と第2透明フィルムの搬送線のなす角度(θ2b)が、-94°になるように搬送した。なお、前記角度は、接線(y2)を基準として、右回りを(+)、左回りを(-)とする角度である。
【0155】
前記において、各フィルムの搬送速度は、30m/分であった。なお、上記で得られた偏光板は、貼り合せ後に、80℃で2分間乾燥した。
【0156】
実施例2?18
実施例1において、接線(y1)に対する各フィルムの搬送線のなす角度(θ1a)、(θ1b)、接線(y2)に対する各フィルムの搬送線のなす角度(θ2a)、(θ2b)またはラミネート圧力を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、偏光板を得た。
・・・中略・・・
【0159】
比較例1?9
実施例1において、表1に示すように、図1の方法に変えて、図3?6に記載の方法を採用して、各ロールと各フィルムの関係を変化したこと、接線(y1)に対する各フィルムの搬送線のなす角度(θ1a)、(θ1b)、接線(y2)に対する各フィルムの搬送線のなす角度(θ2a)、(θ2b)またはラミネート圧力を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、偏光板を得た。
【0160】
実施例および比較例で作製した偏光板について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0161】
(気泡の確認)
得られた偏光板から500mm×300mmのサンプルを切り出し、偏光フィルムとTACフィルムの間の気泡の数を確認した。」

カ 「【0162】
【表1】

」(当合議体注:【表1】は便宜上、右方向に90度回転して掲記した。)

キ 図1




ク 「



(2) 引用発明
引用文献2の【0152】?【0155】、図1、図2A及び図2Bには、実施例1の偏光板の作製方法の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。そして、上記箇所に記載されたθ1a、θ2a、θ1b、θ2b、y1、y2及び「変形凹部」の位置関係等は、【0030】?【0034】において理解されるものである。また、これら記載に接した当業者からしてみると、「第1弾性ロールa1」及び「第1金属ロールb1」並びに「第2弾性ロール2a」及び「第2金属ロール2b」がそれぞれ互いに平行な一対のロールであることは、引用文献2に記載されているに等しい事項である。
なお、「第1透明フィルムB1」と「第1透明フィルム」、「第2透明フィルムB2」と「第2透明フィルム」、「積層フィルムL1」と「積層フィルム」及び「樹脂フィルムA」と「偏光フィルム」は、それぞれ用語を後者に統一した。また、「第1弾性ロール」及び「第1弾性ロールa1」は、用語を後者に統一し、その他の「ロール」についても同様とした。

「樹脂フィルムAには偏光フィルムを用い、第1透明フィルムおよび第2透明フィルムには接着層付のTACフィルムを用い、
互いに平行な一対のロールである、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1のロール間に、偏光フィルムと接着層付のTACフィルム(第1透明フィルム)を搬送して、これらを圧着して、偏光フィルムの片面にTACフィルムを貼り合わせて積層フィルムを得、偏光フィルムは、第1弾性ロールa1の変形凹部端点における接線(y1)と偏光フィルムの搬送線のなす角度(θ1a)が、-11.1°になるように搬送し、第1透明フィルムは、凹部端点(x1)と第1透明フィルムの搬送線のなす角度(θ1b)が、+94°になるように搬送し、前記角度は、接線(y1)を基準として、右回りを(+)、左回りを(-)とする角度であり、
その後、積層フィルムを巻き取ることなく、互いに平行な一対のロールである、第2弾性ロールa2と第2金属ロールb2のロール間に、積層フィルムと接着層付のTACフィルム(第2透明フィルム)を搬送して、これらを圧着して、偏光フィルムの両面にTACフィルムを貼り合わせた偏光板を得、積層フィルムは、第2弾性ロールa2の変形凹部端点における接線(y2)と積層フィルムの搬送線のなす角度(θ2a)が、+11.1°になるように搬送し、第2透明フィルムは、凹部端点(x2)と第2透明フィルムの搬送線のなす角度(θ2b)が、-94°になるように搬送し、前記角度は、接線(y2)を基準として、右回りを(+)、左回りを(-)とする角度である、
偏光板の作製方法。
ここで、
第2弾性ロールa2として、鉄芯の周囲にゴム層(硬度90度、肉厚3mm)を有する構成の直径200mmのロールを用い、
接線(y1)は、第1弾性ロールa1の変形凹部端点x1における接線であって、第1弾性ロールa1の変形凹部端点x1は、第1弾性ロールa1が、第1金属ロールb1により接触押圧されることにより生じる、第1弾性ロールa1の変形凹部z1における、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1との最始接触点(回転方向の最初の接触点)をいい、偏光フィルムの搬送線は、偏光フィルムと第1弾性ロールa1との最始接触点における接線(搬送される偏光フィルムの延長線上の線)をいい、
また、接線(y2)は、第2弾性ロールa2の変形凹部端点x2における接線であって、第2弾性ロールa2の変形凹部端点x2は、第2弾性ロールa2が、第2金属ロールb2により接触押圧されることにより生じる、第2弾性ロールa2の変形凹部における、第2弾性ロールa2と第2金属ロールb2との最始接触点(回転方向の最初の接触点)をいい、積層フィルムの搬送線は、積層フィルムと第2弾性ロールa2との最始接触点における接線(搬送される積層フィルムの延長線上の線)をいう。」

2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 偏光フィルムを製造する方法
引用発明の「偏光板の作製方法」は、「樹脂フィルムAには偏光フィルムを用い、第1透明フィルムB1および第2透明フィルムB2には接着層付のTACフィルムを用い、」「偏光フィルムと接着層付のTACフィルム(第1透明フィルム)を搬送して、これらを圧着して、偏光フィルムの片面にTACフィルムを貼り合わせて積層フィルムを得、」「その後、」「第2弾性ロールa2と第2金属ロールb2のロール間に、積層フィルムと接着層付のTACフィルム(第2透明フィルム)を搬送して、これらを圧着して、偏光フィルムの両面にTACフィルムを貼り合わせ」るものである。
上記作製方法からみて、引用発明の「積層フィルム」は、「偏光フィルム」の一方の面に「第1透明フィルム」が積層されたものであるから、片面保護フィルム付き偏光フィルムといえる。また、引用発明の「偏光板」は、上記「積層フィルム」の「偏光フィルム」の他方の面に「第2透明フィルム」が積層されたものであるから、両面保護フィルム付き偏光フィルムといえる。
そうしてみると、引用発明の「偏光フィルム」、「第1透明フィルム」、「第2透明フィルム」、「積層フィルム」、「偏光板」及び「偏光板の作製方法」は、それぞれ本願発明の「偏光フィルム」、「第1の保護フィルム」、「第2の保護フィルム」、「片面保護フィルム付き偏光フィルム」、「両面保護フィルム付き偏光フィルム」及び「両面保護フィルム付き偏光フィルムの製造方法」に相当する。加えて、引用発明の「積層フィルム」は、本願発明の「片面保護フィルム付き偏光フィルム」における、「偏光フィルムの片面に第1の保護フィルムが積層された」という要件を満たす。また、引用発明の「偏光板」は、本願発明の「両面保護フィルム付き偏光フィルム」における、「偏光フィルムの片面に第1の保護フィルムが積層された片面保護フィルム付き偏光フィルムにおける第1の保護フィルムが積層された側とは反対側の面に第2の保護フィルムが積層された」という要件を満たす。

イ 第1貼合工程
引用発明の「偏光板の作製方法」は、「互いに平行な一対のロールである、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1のロール間に、偏光フィルムと接着層付のTACフィルム(第1透明フィルム)を搬送して、これらを圧着して、偏光フィルムの片面にTACフィルムを貼り合わせて積層フィルムを得」る工程(以下「積層フィルムを得る工程」という。)を有する。
上記の工程からみて、引用発明の「積層フィルムを得る工程」は、「TACフィルム」の「接着層」を介して行われ、「偏光フィルム」と「接着層付のTACフィルム」とを、「偏光フィルムの片面」に接着剤を介して「TACフィルム」を重ね合わせた状態で、「互いに平行な一対のロールである、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1のロール間に」挟み込むように「搬送して、これらを圧着して」行われる。
以上の点並びに上記ア及びイの対比結果によれば、引用発明の「積層フィルムを得る工程」は、本願発明において、「偏光フィルムの片面に接着剤を介して第1の保護フィルムを重ね合せた状態で互いに平行な一対のロール間に挟み込む」とされる、「第1貼合工程」に相当する。
さらに、引用発明の上記工程では、「偏光フィルムは、第1弾性ロールa1の変形凹部端点における接線(y1)と偏光フィルムの搬送線のなす角度(θ1a)が、-11.1°になるように搬送し、第1透明フィルムは、凹部端点(x1)と第1透明フィルムの搬送線のなす角度(θ1b)が、+94°になるように搬送」される。
ここで、引用発明の「θ1a」及び「θ1b」は、「接線(y1)を基準として、右回りを(+)、左回りを(-)とする角度」であるから、引用発明の「偏光フィルム」と「第1透明フィルム」との成す角度は11.1°+94°=115.1°と計算される。また、この角度が、「互いに平行な一対のロールである、第1弾性ロールa1と第1金属ロールb1」の軸線方向に対し垂直な平面における角度であることは、技術的にみて明らかである。
そうしてみると、引用発明の「積層フィルムを得る工程」は、本願発明の「第1貼合工程」における、「ロールの軸線方向に対し垂直な平面において、ロール間に挟み込まれる偏光フィルムと第1の保護フィルムとの成す角度が45度以上であり」との要件を満たす。

ウ 第2貼合工程
引用発明の「偏光板の作製方法」は、「互いに平行な一対のロールである、第2弾性ロールa2と第2金属ロールb2のロール間に、積層フィルムと接着層付のTACフィルム(第2保護フィルム)を搬送して、これらを圧着して、偏光フィルムの両面にTACフィルムを貼り合わせた偏光板を得」る工程(以下「偏光板を得る工程」という。)を有する。
上記の工程からみて、引用発明の「偏光板を得る工程」は、「TACフィルム」の「接着層」を介して行われ、「積層フィルム」と「接着層付のTACフィルム」とを、「積層フィルム」の「接着層付のTACフィルム」が積層された側とは反対側の面に、接着層を介して「TACフィルム」を重ね合わせた状態で、「互いに平行な一対のロールである、第2弾性ロールa2と第2金属ロールb2のロール間に」挟み込むように「搬送して、これらを圧着して」行われる。
以上の点及び上記ア?イの対比結果によれば、引用発明の「偏光板を得る工程」は、本願発明において、「片面保護フィルム付き偏光フィルムにおける第1の保護フィルムが積層された側とは反対側の面に、接着剤を介して第2の保護フィルムを重ね合せた状態で互いに平行な一対のロール間に挟み込む」とされる、「第2貼合工程」に相当する。
さらに、上記イと同様の考察により、引用発明の「偏光板を得る工程」は、本願発明の「第2貼合工程」の、「ロールの軸線方向に対し垂直な平面において、ロール間に挟み込まれる片面保護フィルム付き偏光フィルムと第2の保護フィルムとの成す角度が45度以上であり」との要件を満たす。

エ 両面保護フィルム付き偏光フィルムの製造方法
上記対比結果ア?ウを踏まえれば、引用発明の「偏光板の作製方法」は、本願発明の「両面保護フィルム付き偏光フィルムの製造方法」における、「第1貼合工程と、」「第2貼合工程と、をこの順に含み、」との要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明は、次の構成で一致する。
「偏光フィルムの片面に第1の保護フィルムが積層された片面保護フィルム付き偏光フィルムにおける第1の保護フィルムが積層された側とは反対側の面に第2の保護フィルムが積層された両面保護フィルム付き偏光フィルムを製造する方法であって、
偏光フィルムの片面に接着剤を介して第1の保護フィルムを重ね合せた状態で互いに平行な一対のロール間に挟み込む第1貼合工程と、
片面保護フィルム付き偏光フィルムにおける第1の保護フィルムが積層された側とは反対側の面に、接着剤を介して第2の保護フィルムを重ね合せた状態で互いに平行な一対のロール間に挟み込む第2貼合工程と、
をこの順に含み、
前記第1貼合工程において、ロールの軸線方向に対し垂直な平面において、ロール間に挟み込まれる偏光フィルムと第1の保護フィルムとの成す角度が45度以上であり、
前記第2貼合工程において、ロールの軸線方向に対し垂直な平面において、ロール間に挟み込まれる片面保護フィルム付き偏光フィルムと第2の保護フィルムとの成す角度が45度以上である、
両面保護フィルム付き偏光フィルムの製造方法。」

イ 相違点
本願発明と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点)
「第2貼合工程」が、本願発明では、「片面保護フィルム付き偏光フィルムが、一対のロールの間の軸線を含む平面に対して直交する方向に対して成す角度β_(3)、及び、第2の保護フィルムが、一対のロールの間の軸線を含む平面に対して直交する方向に対して成す角度β_(8)がいずれも、5度以上、80度以下である」という要件を満たすのに対して、引用発明では、この要件を満たさないと考えられる点。
(当合議体注:次の(3)アで述べるとおりなので、引用発明は「角度β_(8)」の要件を満たさないと考えられる。)

(3) 判断
ア 引用発明の「第2弾性ロールa2」が「直径200mm」、「ゴム層」が「肉厚3mm」であることを考慮すると、引用発明の「接線(y1)」は、「第2弾性ロールa2」及び「第2金属ロールb2」の間の軸線を含む平面に対してほぼ直交すると考えられる。
そうしてみると、引用発明においては、「第2透明フィルム」が「第2弾性ロールa2」及び「第2金属ロールb2」の間の軸線を含む平面に対して直交する方向に対して成す角度、すなわち、本願発明でいう「角度β_(8)」は、80°を超えていると考えられる。

イ しかしながら、引用発明の「θ2a」及び「θ2b」に関連して、引用文献2には、以下の記載がある。
(ア)「積層フィルムの搬送角度(θ2a)と、第2透明フィルムの搬送角度(θ2b)とが、第2弾性ロールの変形凹部端点における接線に対して逆方向になるように、搬送される各フィルムの角度を制御することにより、樹脂フィルムと第1透明フィルムとの最始接触時期または積層フィルムと第2透明フィルムとの最始接触時期と、それぞれのフィルムがロールにより圧着される時期との時間を短く制御でき、樹脂フィルムと透明フィルムの間に発生する気泡をより抑えることができる。」(【0019】)(当合議体注:下線は強調のため当合議体で付与した。)
(イ)「図2Bにおいて、角度(θ2a)、角度(θ2b)は、接線y2を基準に右回りを「+」、左回りを「-」として表すと、角度(θ2a)は、「+」の角度であれば特に制限はない。角度(θ2b)は、「-」の角度であれば特に制限はない。」(【0034】)

上記記載によれば、引用発明において、積層フィルムと第2透明フィルムの間に発生する気泡を抑えるためには、「θ2a」及び「θ2b」を、接線(y2)に対して逆方向、すなわち、「θ2a」は「+」の角度、かつ、「θ2b」は「-」の角度となる範囲であれば、特に制限はなく、各フィルムの角度を必要に応じて制御する余地があることが理解される。
また、特開2012-215821号公報(【0027】)及び特開2012-53078号公報(【0194】)等に記載されているように、保護フィルム付き偏光フィルムの製造装置において、製造装置の配置上の制約を考慮して各フィルムの搬送方向ないし搬送角度を工夫することは、先の出願前において当業者が普通に行っていた創意工夫と認められる。
そして、例えば、引用発明1において使用される製造装置において、一対のロールである、第2弾性ロールa2と第2金属ロールb2のロール」のうち「第2金属ロールb2」側(当合議体注:図2Bの「第2金属ロールb2」の左側)近傍に何らかのスペースの制約がある場合は、それに応じて、当業者は、「接着層付のTACフィルム(第2透明フィルム)」の搬送方法を、θ2b(=94°)が小さくなるように修正することは、上記創意工夫の範囲内の事項といえる。
そうしてみると、引用発明において、「θ2b」を修正することで、本願発明の相違点に係る構成に到ることは、積層フィルムと第2透明フィルムの間の気泡の発生を抑制しつつ、製造装置の配置上の制約を考慮する当業者が容易になし得る事項である。(当合議体注:当業者は、「θ2b」を小さくした分、「θ2a」を大きく修正することで、ロール対に搬送される、積層フィルムと第2透明フィルムの間の角度は維持することができることから、気泡の発生を抑制する効果が低減してしまうことはない。)

(4) 発明の効果について
本件出願の明細書の【0016】には、「本発明によれば、1枚の偏光フィルムと2枚の保護フィルムとを同時に貼合するのではなく、1枚の偏光フィルムまたは1枚の保護フィルム付き偏光フィルムと1枚の保護フィルムとを貼合するようにしており、また偏光フィルムまたは片面保護フィルム付き偏光フィルムと保護フィルムとの成す角度を比較的大きくすることができるので、貼合の際の偏光フィルムと第1の保護フィルムとの成す角度、ならびに、片面保護フィルム付き偏光フィルムと第2の保護フィルムとの成す角度の調整が容易であり、製造ラインのレイアウトの自由度を担保しながら、貼合の際の気泡の噛み込みを抑えつつ、接着剤層の厚みを小さくすることができ(接着剤層の薄肉化)、これにより、全体の厚みがより小さな片面保護フィルム付き偏光フィルム、両面保護フィルム付き偏光フィルムを好適に製造することができる。」と記載されている。
しかしながら、本願発明の上記効果は、前記(3)で述べたように創意工夫を行う当業者が予想し得る効果である。
あるいは、当該効果は、少なくとも、創意工夫した結果想到し得た構成から、当業者が予想することができた範囲の効果を超える顕著なものであるとまではいえない。

(5) 請求人の主張について
令和2年8月7日付け審判請求書において、以下の点を主張する。
[A]「本願発明によれば、第1貼合工程における角度α及び第2貼合工程における角度βが、それぞれ上記範囲内にあるので、貼合するフィルム間に10μm?5μm程度の気泡が生じることを抑制することができます(本願明細書[0022][0031])。そのうえ、第2貼合工程における角度β3、β8それぞれ上記範囲内にあるので、製造ラインのレイアウトの自由度を確保することができます(本願明細書[0032])」(請求書「1.(2)」))
[B]「引用文献2は、一対のロールの間の軸線を含む平面に対して直交する方向に対して成す角度を特定の範囲内とすることを教示・示唆しません。示唆しないどころか、引用文献2は、角度β_(3)及びβ_(8)を本願所定の範囲外とすることしか開示していません。・・・引用文献2は、本願所定の確度β3及びβ8を教示・示唆しません。引用文献2は、角度αや角度βを限定することは示唆すらされていません。」(請求書「2.(1)」)

上記主張について検討する。
ア 主張[A]について
前記(4)で述べたとおりである。また、第2貼合工程における角度β_(3)、β_(8)をそれぞれ「5度以上、80度以下」の範囲内としたときの効果が、範囲外としたときの効果と比較して、格別、顕著なものと認めるに足りる根拠はない。
したがって、請求人の主張[A]は採用できない。

イ 主張[B]について
前記(3)で述べたとおり、相違点に係るβ_(3)及びβ_(8)の数値範囲は、当業者が創意工夫し得る範囲内のものである。また、「引用文献2は、角度β_(3)及びβ_(8)を本願所定の範囲外とすることしか開示していません」との主張は、前記(3)イに記載された、引用文献2の記載事項と整合しない。
したがって、請求人の主張[B]は採用できない。
以上ア?イによれば、請求人の主張はいずれも理由がないから採用しない。

(6) 小括
本願発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-06-10 
結審通知日 2021-06-15 
審決日 2021-06-29 
出願番号 特願2017-503465(P2017-503465)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
里村 利光
発明の名称 保護フィルム付き偏光フィルムの製造方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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