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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1377312
審判番号 不服2020-17557  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-23 
確定日 2021-09-07 
事件の表示 特願2017- 97362「磁気センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月 6日出願公開、特開2018-194393、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)5月16日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和2年 7月31日付け:拒絶理由通知書
同年 9月14日 :手続補正書、意見書の提出
同年10月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年11月 4日 :原査定の謄本の送達)
同年12月23日 :審判請求書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は、令和2年9月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1?9の記載は、次のとおりである。

「 【請求項1】
磁気検出素子及び複数の端子電極が形成された素子形成面と、前記素子形成面と略直交する実装面とを有するセンサチップと、
互いに略直交する第1及び第2の表面を有する磁性体ブロックと、
複数のランドパターンが形成された搭載面を有する回路基板と、を備え、
前記センサチップは、前記実装面が前記回路基板の前記搭載面と対向するよう、前記回路基板に搭載され、
前記磁性体ブロックは、前記第1の表面が前記センサチップの前記素子形成面と対向し、且つ、前記第2の表面が前記回路基板の前記搭載面と対向するよう、前記回路基板に搭載され、
前記磁性体ブロックは、前記第1の表面と前記第2の表面の間に位置する切り欠き部を有しており、前記切り欠き部によって形成される空間に、前記複数の端子電極の少なくとも一部が配置されることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記空間に、前記複数の端子電極と前記複数のランドパターンをそれぞれ接続する複数の接続導体の少なくとも一部がさらに配置されることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記接続導体がハンダであることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記複数の端子電極は、前記素子形成面のエッジに沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記磁性体ブロックの前記切り欠き部は、前記第1の表面と略平行な第3の表面と、前記第2の表面と略平行な第4の表面を含み、
前記空間は、前記第3の表面、前記第4の表面、前記搭載面及び前記素子形成面に囲まれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記磁性体ブロックの前記切り欠き部は、前記第1及び第2の表面に対して鈍角である第5の表面を含み、
前記空間は、前記第5の表面、前記搭載面及び前記素子形成面に囲まれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記磁性体ブロックの前記切り欠き部は凹型の曲面を含み、
前記空間は、前記曲面、前記搭載面及び前記素子形成面に囲まれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記磁気検出素子は、第1乃至第4の磁気検出素子を含み、
前記第1及び第2の磁気検出素子は、前記磁性体ブロックの前記第1の表面から見て一方側に位置し、
前記第3及び第4の磁気検出素子は、前記磁性体ブロックの前記第1の表面から見て他方側に位置することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記複数の端子電極は、前記素子形成面と前記実装面の境界であるエッジに沿って配置され、
前記磁気検出素子は、前記複数の端子電極よりも前記エッジから離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の磁気センサ。」


第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

本願の請求項1?9に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献1?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2009-276159号公報
引用文献2:特開2009-47444号公報
引用文献3:特開平5-212152号公報
引用文献4:特開平11-194159号公報
引用文献5:実願昭54-86598号(実開昭56-4877号)のマイクロフィルム


第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献1(特開2009-276159号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものであり、後記の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。

「【0026】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図7を参照して説明する。図1は、GMR素子の特性を説明する図である。図2乃至図5は、GMRチップの一例を示す図である。図6乃至図7は、本実施形態における磁気センサの一例を示す図である。
【0027】
まず、本発明にて用いられるGMR素子の特性について、図1を参照して説明する。GMR素子は、入力される磁界の向きに応じて出力される抵抗値が変化するスピンバルブ型のGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)である。そして、図1に、GMR素子に対する磁界Hの侵入角と、抵抗値との関係について示す。
【0028】
図1(a)の例におけるGMRチップ100は、その上面にGMR素子が形成されている。このGMR素子は、矢印A方向の磁界を検出可能なよう当該矢印A方向に磁化固定されて、構成されていることとする。
【0029】
そして、図1(a)において、GMR素子は、当該GMR素子の形成面に対して垂直に入射する磁界H中に配置されている。この場合に、GMR素子の抵抗値は、図1(b)に示すように、「Ro」となる。これに対し、磁界Hの向きが傾くと、図1(a)の点線にて示すように、GMR素子面に対する磁界Hの入射角が、垂直方向から-△θ(△(デルタ):変化量を表すこととして用いる)、あるいは、+△θの角度だけ傾く。すると、GMR素子は、上述したように一方向に磁化固定されているため、その方向において磁界の向きが変化することとなり、図1(b)に示すように、MR抵抗値が変化する。このように、GMR素子は、入射する磁界の向きが垂直な状態にて抵抗値をRoと設定したときに、当該磁界Hの向きが微小角度だけ傾いたときに特に抵抗値が大きく変化するという特性を有する。
【0030】
[構成]
次に、図2乃至図5を参照して、本実施形態の磁気センサ1に用いるGMRチップ10の構成について説明する。GMRチップ10は、図2に示すように、略直方体形状であり、その一面(上面)に、4つのGMR素子R1,R2,R3,R4が形成されている。これらGMR素子R1,R2,R3,R4は、図4に示すように接続され、ブリッジ回路を構成している。つまり、GMR素子R1,R3と、GMR素子R2,R4がそれぞれ直列に接続されており、当該直列接続されたGMR素子R1,R3とR2,R4とは、電源に対して並列に接続され、閉回路を構成している。これにより、GMR素子R1とR3の接続点Vaと、GMR素子R2とR4の接続点Vbと、の間における差動電圧を検出することが可能である。なお、ブリッジ回路は、予めGMRチップ10に、上述したように差動電圧が検出可能なよう形成されていることとする。
【0031】
そして、本実施形態では、特に、図2に示すように、4つのGMR素子のうち、図4に示すブリッジ回路において相互に隣り合って接続されていない対となる2つのGMR素子R1,R4が、ほぼ同一箇所である素子形成部11に形成されている。また、ブリッジ回路において相互に隣り合って接続されていない対となる他の2つのGMR素子R2,R3が、ほぼ同一箇所である素子形成部12に形成されている。ここで、図3には、素子形成部11の拡大図を示すが、この図に示すように、2つのGMR素子R1,R4が同一箇所にミアンダ形状(ジグザグ)に形成されており、また、素子形成部12におけるGMR素子R2,R3も同様に同一箇所にミアンダ形状に形成されている。また、全てのGMR素子R1,R2,R3,R4は、同一方向、つまり、矢印A方向に磁化固定されている。
【0032】
そして、上述したように、2つずつのGMR素子(R1とR4、R2とR3)が形成された各素子形成部11,12は、相互に離間して形成されている。例えば、図2に示すように、GMRチップ10の長辺方向つまりGMR素子の磁化固定方向における両端付近に、各素子形成部11,12が形成されている。このとき、各素子形成部11,12は、その間に後述する磁性体21が配置可能な領域を空けて形成されている。
【0033】
ここで、図5は、上述したGMRチップ10を側方から見た図であり、当該GMRチップ10が磁界H中に配置されているときの様子を示す図である。この図に示すように、GMR素子R1,R2,R3,R4の磁化固定方向Aに対して磁界Hが垂直である状態から、当該磁界Hの向きが変化した場合には、全てのGMR素子R1,R2,R3,R4に対してほぼ同一の角度だけ変化する。すると、全てのGMR素子R1,R2,R3,R4の抵抗値がほぼ同一の値だけ変化することとなる。ところが、この場合には、これらGMR素子R1,R2,R3,R4にて構成された図4に示すブリッジ回路においては、上述した接続点Va-Vb間の差動電圧を検出することが困難となる。
【0034】
これに対して、本発明における磁気センサ1は、上述したGMRチップ10に形成されているブリッジ回路の周囲に、GMR素子R1,R2,R3,R4に入力される磁界Hの向きを変化させる磁性体21を配置している。具体的に、本実施形態における磁気センサ1は、基板B上に上述したGMRチップ10を搭載し、さらに、GMRチップ10上に形成されたブリッジ回路の各素子形成部11,12の間に、磁性体21を載置している。なお、磁性体21は、例えば、ソフトフェライト(軟磁性体)である。このように、本実施形態では、特に、磁性体21とGMR素子R1、R2,R3,R4とが、当該GMR素子の磁化固定方向Aに沿って同一直線状に配置された状態となっている。なお、磁性体21の配置位置は、上記位置に限定されない。例えば、GMRチップ10に載置されず、当該GMRチップ10の上方に配置されていてもよい。また、必ずしも各素子形成部11,12の間に配置されていることに限定されない。
【0035】
[動作]
次に、上記構成の磁気センサ1の動作を、図7を参照して説明する。図7は、上述した図5の例と同様に、GMR素子R1,R2,R3,R4の素子面に対してほぼ垂直な磁界H中に磁気センサ1が配置されている場合を示している。すると、本実施形態においては、この図に示すように、磁性体21よりも上方から当該磁性体21の中心付近にかけては、磁界Hは磁性体21に対して引き寄せられ、また、磁性体21の中心付近から各素子形成部11,12が形成された下方においては、磁界Hは磁性体21から離れる方向に曲折される。すると、磁性体21を挟んで位置する各素子形成部11,12(GMR素子(R1とR4、R2とR3))に対しては、それぞれ反対方向の磁界Hが入射することとなる。具体的には、図7の点線矢印Y1,Y2に示すように、素子形成部11のGMR素子R1,R4に対しては、磁化固定方向Aと同一方向の向きに変化した磁界Hが入射し、素子形成部12のGMR素子R2,R3に対しては、磁化固定方向Aとは反対方向の向きに変化した磁界Hが入射することとなる。
【0036】
すると、ブリッジ回路においては、GMR素子R1,R4の抵抗値と、GMR素子R2,R3の抵抗値と、がそれぞれ反対の符号に変化する。例えば、GMR素子R1,R4の抵抗値は+ΔRだけ変化し、GMR素子R2,R3の抵抗値は-ΔRだけ変化する。これにより、差動電圧の検出点であるVaとVbの差が大きくなり、大きな差動電圧値を検出することができる。なお、差動電圧を検出する回路は、例えば、基板B上に形成されており、GMRチップ10上に形成された上記ブリッジ回路に接続されることで、差動電圧を検出することができる。
【0037】
以上のように、上記構成の磁気センサを用いることで、磁界の検出精度の向上を図ることができる。その結果、磁気センサを種々の計測機器に利用することが可能となる。特に、本実施形態では、ブリッジ回路を一チップ上に形成できることから、個々のGMR素子のばらつきを小さくすることができ、このためブリッジ回路におけるオフセット電圧を抑制して、磁界検出精度のさらなる向上を図ることができる。加えて、ブリッジ回路を構成するGMR素子を複数の分割されたチップ上に形成することなく、一チップ上に形成しているため、チップ全体の小型化を図ることができ、これによりチップの製造効率も向上し、センサの低コスト化を図ることもできる。
【0038】
[製造方法]
次に、上述した磁気センサ1の製造方法について説明する。まず、上述したようにブリッジ回路を構成し、各素子形成部11,12に配置されるよう、4つのGMR素子R1,R2,R3,R4をGMRチップ10上に形成する(第一の工程)。続いて、このGMRチップ10上に、つまり、各素子形成部11,12の間に、磁性体21を載置して配置する(第二の工程)。なお、必要に応じて、任意のタイミングにて、GMRチップ10を基板上に配置し、また、各種配線を接続する。
【0039】
このようにして、磁気センサ1を製造することができ、単体で、あるいは、他の構成に組み込まれることで、各種計測機器として利用することができる。
【0040】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、図8乃至図9を参照して説明する。
【0041】
[構成]
図8に示すように、本実施形態における磁気センサ1は、上述した実施形態1におけるGMRチップ10上に配置された磁性体21に加えて、さらに別の磁性体22,23(例えば、ソフトフェライト(軟磁性体))を2つ備えている。具体的には、GMRチップ10の両端側に、つまり、上記各素子形成部11,12のさらに外側に、それぞれ磁性体22,23が配置されている。換言すると、素子形成部11に対して素子形成部12側とは反対側に位置するGMRチップ10の端部と、素子形成部12に対して素子形成部11側とは反対側に位置するGMRチップ10の端部と、にそれぞれ磁性体22,23が配置されている。これにより、図9に示すように、各磁性体22,23は、上記各素子形成部11,12に形成されたGMR素子R1,R2,R3,R4の素子面の下方に配置された状態となっている。
【0042】
[動作]
次に、上記構成の磁気センサ1の動作を、図9を参照して説明する。図9は、上述した図7の例と同様に、GMR素子R1,R2,R3,R4の素子面に対してほぼ垂直な磁界H中に磁気センサ1が配置されている場合を示している。すると、磁性体21の中心付近から各素子形成部11,12が形成された下方においては、上述同様に、磁界Hは、磁性体21から離れる方向に曲折され、さらに、GMRチップ10の両端部に設けられた各磁性体22,23に引き寄せられる。従って、上述した実施形態1の場合と比較して、各素子形成部11,12(GMR素子(R1とR4、R2とR3))に対しては、それぞれ反対方向により大きな角度を有して磁界Hが入射することとなる。具体的には、図9の点線矢印Y1,Y2に示すように、素子形成部11のGMR素子R1,R4に対しては、磁化固定方向Aと同一方向の向きに変化した磁界Hが入射し、素子形成部12のGMR素子R2,R3に対しては、磁化固定方向Aとは反対方向の向きに変化した磁界Hが入射することとなる。
【0043】
すると、ブリッジ回路においては、GMR素子R1,R4の抵抗値と、GMR素子R2,R3の抵抗値と、がそれぞれ反対の符号に変化する。例えば、GMR素子R1,R4の抵抗値は+ΔRだけ変化し、GMR素子R2,R3の抵抗値は-ΔRだけ変化する。これにより、差動電圧の検出点であるVaとVbの差が大きくなり、大きな差動電圧値を検出することができる。なお、差動電圧を検出する回路は、例えば、基板B上に形成されており、当該基板B上の差動電圧検出回路がGMRチップ10上に形成された上記ブリッジ回路に接続されることで、差動電圧を検出することができる。
【0044】
以上のように、上記構成の磁気センサを用いることで、磁界の検出精度の向上を図ることができる。その結果、磁気センサを種々の計測機器に利用することが可能となる。特に、本実施形態では、ブリッジ回路を一チップ上に形成できることから、個々のGMR素子のばらつきを小さくすることができ、このためブリッジ回路におけるオフセット電圧を抑制して、磁界検出精度のさらなる向上を図ることができる。加えて、ブリッジ回路を構成するGMR素子を複数の分割されたチップ上に形成することなく、一チップ上に形成しているため、チップ全体の小型化を図ることができ、これによりチップの製造効率も向上し、センサの低コスト化を図ることもできる。
【0045】
[製造方法]
なお、上述した磁気センサ1の製造方法は、上記実施形態1と同様である。つまり、まず、上述したようにブリッジ回路を構成した4つのGMR素子R1,R2,R3,R4をGMRチップ10上に形成する(第一の工程)。続いて、このGMRチップ10上に、及び、GMRチップ10の両端部に、磁性体21,22,23をそれぞれ配置する(第二の工程)。なお、必要に応じて、任意のタイミングにて、GMRチップ10を基板B上に配置し、また、各種配線を接続する。
【0046】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態を、図10乃至図11を参照して説明する。図10に示すように、本実施形態における磁気センサ1は、上述した実施形態1におけるGMRチップ10上に配置された磁性体21を備えておらず、上記実施形態2で説明した磁性体22,23(例えば、ソフトフェライト(軟磁性体))を、GMRチップ10の両端側にそれぞれ備えた構成を採っている。
【0047】
このような構成であって、図11に示すように、各素子形成部11,12が形成された箇所においては、上述同様に、磁界Hの向きは、GMRチップ10の両端部に設けられた各磁性体22,23に引き寄せられよう変化する。従って、各素子形成部11,12(GMR素子(R1とR4、R2とR3))に対しては、それぞれ反対方向に角度を有して磁界Hが入射することとなる。つまり、図11の点線矢印Y1,Y2に示すように、素子形成部11のGMR素子R1,R4に対しては、磁化固定方向Aと同一方向の向きに変化した磁界Hが入射し、素子形成部12のGMR素子R2,R3に対しては、磁化固定方向Aとは反対方向の向きに変化した磁界Hが入射することとなる。
【0048】
すると、ブリッジ回路においては、GMR素子R1,R4の抵抗値と、GMR素子R2,R3の抵抗値と、がそれぞれ反対の符号に変化する。例えば、GMR素子R1,R4の抵抗値は+ΔRだけ変化し、GMR素子R2,R3の抵抗値は-ΔRだけ変化する。これにより、差動電圧の検出点であるVaとVbの差が大きくなり、大きな差動電圧値を検出することができる。なお、差動電圧を検出する回路は、例えば、基板B上に形成されており、当該基板BにGMRチップ1上に形成された上記ブリッジ回路が接続されることで、差動電圧を検出することができる。」

【図1】




【図2】




【図3】




【図4】




【図5】




【図6】




【図7】




(2) 図面から読み取れる事項の認定
引用文献1において、当該磁性体21は、段落【0034】に記載されているように「GMRチップ10上に形成されたブリッジ回路の各素子形成部11,12の間に」「載置」又は「GMRチップ10の上方に配置」されるものであるところ、【図6】の記載から、以下の事項を読み取ることができる。
<図面から読み取れる事項>
「GMRチップ10の素子形成部に載置される磁性体21は略直方体形状であること。」


(3) 引用発明の認定
上記(1)及び(2)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「基板B上にGMRチップ10を搭載し、さらに、GMRチップ10上に形成されたブリッジ回路の各素子形成部11、12の間に、磁性体21を載置した磁気センサ1であって(【0034】)、
GMRチップ10は、略直方体形状であり、その上面に、4つのGMR素子R1、R2、R3、R4が形成されたものであり、GMR素子R1、R2、R3、R4は、ブリッジ回路を構成し、GMR素子R1、R3と、GMR素子R2、R4がそれぞれ直列に接続されており、当該直列接続されたGMR素子R1、R3とR2、R4とは、電源に対して並列に接続され、閉回路を構成しており、GMR素子R1とR3の接続点Vaと、GMR素子R2とR4の接続点Vbと、の間における差動電圧を検出することが可能であり(【0030】)、
ブリッジ回路において相互に隣り合って接続されていない対となる2つのGMR素子R1、R4が、ほぼ同一箇所である素子形成部11に形成され、また、ブリッジ回路において相互に隣り合って接続されていない対となる他の2つのGMR素子R2、R3が、ほぼ同一箇所である素子形成部12に形成され(【0031】)、
全てのGMR素子R1、R2、R3、R4は、同一方向Aに磁化固定され(【0031】)、
GMR素子は、当該磁化固定方向Aの磁界を検出可能なようにされており(【0028】)、
GMRチップ10の素子形成部に載置される磁性体21は略直方体形状であって(図面から読み取れる事項)、
差動電圧を検出する回路は、基板B上に形成されており、GMRチップ10上に形成された上記ブリッジ回路に接続されることで、差動電圧を検出することができ(【0036】)、
GMR素子R1、R2、R3、R4の素子面に対してほぼ垂直な磁界H中に磁気センサ1が配置されている場合、磁性体21よりも上方から当該磁性体21の中心付近にかけては、磁界Hは磁性体21に対して引き寄せられ、磁性体21の中心付近から各素子形成部11、12が形成された下方においては、磁界Hは磁性体21から離れる方向に曲折され、素子形成部11のGMR素子R1、R4に対しては、磁化固定方向Aと同一方向の向きに変化した磁界Hが入射し、素子形成部12のGMR素子R2、R3に対しては、磁化固定方向Aとは反対方向の向きに変化した磁界Hが入射することとなるため、磁性体21を挟んで位置する各素子形成部11、12(GMR素子(R1とR4、R2とR3))に対しては、それぞれ反対方向の磁界Hが入射することとなり(【0035】)、
ブリッジ回路においては、GMR素子R1、R4の抵抗値と、GMR素子R2、R3の抵抗値と、がそれぞれ反対の符号に変化し、差動電圧の検出点であるVaとVbの差が大きくなり、大きな差動電圧値を検出することができる(【0036】)、
磁気センサ1」


2 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献2(特開2009-47444号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0023】
本発明の第1の実施例を、図1乃至図4を参照して説明する。図1及び図2は、実施例1における磁気センサの構成の概略を示す図であり、図3は、磁気センサの使用時の様子を示す図である。図4は、GMRチップの向きを説明するための説明図である。
【0024】
まず、本実施例における磁気センサは、磁界の変化を検出する素子として、入力される磁界の向きに応じて出力される抵抗値が変化するスピンバルブ型のGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)を用いたGMRチップ1(磁界検出チップ)を備えている。具体的に、GMRチップ1は、図1に示すように、略直方体形状であり、その一面に、所定の方向の磁界を検出可能なよう所定方向に磁化固定されたGMR素子11と、このGMR素子11から出力される出力信号である抵抗値を出力する1対の出力端子12と、が形成されている。なお、図1に示す例では、1つのGMRチップ1にGMR素子11及び対となる出力端子12が2組形成されているが、1組のGMR素子11及び対となる出力端子12が1つのGMRチップ1に形成されていてもよく、3組以上のGMR素子11及び対となる出力端子12が1つのGMRチップ1に形成されていてもよい。また、図1に示す例では、上述したGMRチップ1が2つ並んで設けられているが、後述するように基板2上に搭載されるGMRチップ1の数はこれに限定されない。
【0025】
そして、上記GMRチップ1が基板2に搭載されることで、磁気センサが構成される。このGMRチップ1が搭載される基板2は、当該GMRチップ1の搭載面に、上述したGMRチップ1に形成された出力端子12と接続される接続端子21が、当該出力端子12の数と同数、及び、各出力端子12の配置に対応して形成されている。例えば、図1の例では、8つの接続端子が直線状に形成されている。
【0026】
ここで、基板2に搭載する際のGMRチップ1の向きについて説明する。図1に示すように、GMRチップ1は、出力端子12及びGMR素子11の形成面が、基板2の搭載面とほぼ垂直になる向きで、当該基板2上に配置される。このとき、GMRチップ1の各出力端子12が、基板2上に形成された各接続端子21にそれぞれ対応して、相互に近接して位置するよう配置される。これにより、図2(b)の側方から見た図に示すように、GMRチップ11の出力端子12と、基板2の接続端子21とが、若干の隙間を空けているが、ほぼ直角に位置するようになる。そして、相互に近接して配置されたGMRチップ1の出力端子12と基板2上に形成された接続端子21とは、それらの間に配置される半田ボール3にて、物理的及び電気的に接続される。
【0027】
なお、このとき、GMRチップ1の一面、つまり、GMR素子形成面と隣り合う一面が、基板2の搭載面に当接した状態で、当該搭載面にGMRチップ1が載置される。これにより、GMRチップ1を基板2上に安定して搭載することができ、また、GMRチップ1と基板2とをより近くして配置できることから、上述したように、ほぼ直角に位置するGMRチップ11の出力端子12と基板2の接続端子21との距離もより近接して位置することとなる。従って、これらの接続が容易となり、また、金ボールや半田ボールなどを用いたボールボンディングにて接続することも可能であるため、後述するように、磁気センサの小型化を図ることができる。
【0028】
なお、本実施例における磁気センサは、上述したように、GMR素子11が形成されたGMR素子形成面11aが、基板2のGMRチップ1搭載面に対してほぼ垂直に配置されるため、当該基板2の搭載面に垂直な方向の磁界を検出可能となる。従って、磁気センサを使用する際には、図3(a)に示すように、GMR素子形成面11aが垂直に位置する基板2の載置面に対向して磁石7を配置し、当該磁石7による磁力線(矢印A)がGMR素子形成面11aに平行となるよう配置することで、この磁力線の向きの変化を検出可能な磁気センサとして利用可能となる。具体的に、磁気センサは、図3(b)に示すように、基板2に搭載されたGMRチップ1を覆うよう、当該基板2の搭載面上を樹脂などの絶縁性部材4にて封止してパッケージ化することで構成される。この場合には、GMRチップ1が側面を向いて配置されるため、図3(b)の符号41に示す側面に平行な方向(矢印A参照)の磁界に対して、検出感度を有することとなる。
【0029】
さらに、図4を参照して、GMRチップの検出向きについて説明する。図4に示すXYZ空間では、XY平面に沿って基板が配置されていることとし、この基板上に上記本実施例におけるGMRチップ1及び上述した従来例におけるGMRチップ501が配置された状態を示す。すると、従来例におけるGMRチップ501は素子面がXY平面に平行であるため、当該XY平面に沿った磁界の向きを検出可能であるのに対し、本実施例のGMRチップ1は素子面がXZ平面に平行であるため、当該XZ平面に沿った磁界の向きを検出可能である。
【0030】
以上のように、本実施例における磁気センサは、基板2の搭載面に対して垂直に位置するGMRチップ1の側面側に、当該GMRチップ1と基板2との接続部を構成する半田ボール3が位置することとなる。従って、図2(b)に示すように、GMRチップ1の高さ方向に接続に必要な他の要素(半田ボールやワイヤーなど)が配置されないこととなり、基板2からの高さHを抑制することができる。また、図2(a)に示すように、GMRチップ1の出力端子12と基板2の接続端子21との距離Dも近くできるため、GMRチップ1の搭載に必要な面積も小さくすることができる。ここで、図22乃至図23を参照して説明した従来例の磁気センサと比較すると、図22(b)、図23に示すように、従来例では、接続に用いたワイヤーボンディングによるワイヤー513や金ボール503のため、基板502からの高さがGMRチップ501の高さ以上になってしまうが(符号h,h’)、本実施例では、GMRチップ1の厚さHを超えることがない。また、図22(a)に示すように、従来例では、ワイヤー513のスペースを確保するためGMRチップ501と基板502上の接続端子512との距離dを所定の距離まで離して配置する必要があったが、本実施例では、各端子12,21を近接配置させることができる。以上より、磁気センサの小型化を図ることができる。
【0031】
また、上述したように、GMRチップ1の出力端子12の形成面を基板2に対して垂直に配置したことで、出力端子12と接続端子21との距離をより近接させて配置させることができ、半田ボール3による接続を実現できる。なお、接続は半田ボール3を用いたボールボンディングに限定されず、金ボールを用いたボールボンディングであってもよい。また、接続方法も、ボールボンディングに限定されず、他の手法にて接続されてもよい。そして、いかなる接続方法を用いた場合であっても、接続対象となる各端子12,21間が近接しているため、接続作業が容易となり、また、接続状態も安定しうる。その結果、磁気センサの製造が容易となり、構造効率が高まり、製造コストの削減をも図ることができる。
【0032】
ここで、本実施例では、基板2上に搭載されるGMRチップ1を、その出力端子形成面11aが基板2に対してほぼ垂直になるよう配置する場合を例示したが、必ずしも垂直には配置されることに限定されない。基板2とGMRチップ1の出力端子形成面とが成す角は、ほぼ垂直つまり90度前後が望ましいが、0度から180度の間であってもよい。例えば、GMRチップ1の出力端子形成面11aが所定の傾斜を有して形成されていて、基板2と鈍角、あるいは、鋭角を成して配置され、かかる状態で出力端子12と接続端子21とが半田ボールなどで接続されてもよい。換言すると、GMRチップ1の出力端子12の形成面が、基板2のGMRチップ1の搭載面に平行ではなく、基板2にGMRチップ1を搭載した状態における磁気センサの高さ方向に向かずに配置されることで、各端子12,21を接続するボールボンディングやワイヤーボンディングなどの接続手段が、磁気センサの高さ方向に突出しなければよい。
【0033】
また、上記では、GMRチップ1の同一面にGMR素子11及び対となる出力端子12が形成されている場合を例示したが、それぞれが別々の面に形成されていてもよい。かかる場合であっても、出力端子12の形成面が、GMRチップ1の側面、つまり、基板2に搭載された際に搭載面とほぼ垂直に位置するよう基板2に配置することで、上述したように、接続が容易となると共に、省スペース化を図ることができる。但し、GMR素子11と出力端子12とは、通常、GMRチップ1の所定の一面にのみに対して積層形成するため、これらを同一面に形成した方が、GMRチップ1自体及び磁気センサの製造が容易となるため、望ましい。
【0034】
ここで、本実施例では、検出対象である磁界を検出するGMRチップ1(磁界検出チップ)に搭載される磁界検出素子として、スピンバルブ型のGMR素子を用いる場合を例示するが、ホール素子やMR素子など、他の磁界検出素子を用いてもよい。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の第2の実施例を、図5乃至図16を参照して説明する。図5乃至図7は、本実施例における磁気センサの構成を示す図である。図8乃至図13は、本実施例における磁気センサの変形例を説明する図である。図14乃至図16は、磁気センサの製造方法を説明する図である。
【0036】
まず、本実施例における磁気センサは、上述した実施例1の図1に示したものとほぼ同様の構成を採っている。つまり、基板2上に、それぞれ2つのGMR素子が形成されたGMRチップ101,102を搭載し、合計4つのGMR素子を備えて構成されている。このとき、2つのGMRチップ101,102は、それぞれに形成されたGMR素子A,B,C,Dが直線状に配置されるよう、基板2上に並んで配置される。また、このとき、符号101のGMRチップ101に形成された符号A,BのGMR素子と、符号102のGMRチップ102に形成された符号C,DのGMR素子と、の磁化固定方向(図5の矢印参照)が相互に反対向きとなるよう、各GMRチップ101,102の上下が反転されて配置される。つまり、符号A,BのGMR素子の形成面と、符号C,DのGMR素子の形成面とが、相互に180度回転した状態で、各GMRチップ101,102が配置される。このとき、4つのGMR素子A,B,C,Dの形成面が同一直線上に配置されるため、各GMR素子が同一平面上に位置している。
【0037】
そして、本実施例では、さらに、上記4つのGMR素子が、基板2上の接続端子21に接続されることで、当該基板2の配線を介して、GMR素子を2個ずつ直列に接続し、これらを並列に接続したブリッジ回路を形成している。具体的には、図5(b)に示すように、GMRチップ101に形成された符号AのGMR素子と、これと磁化固定方向が反対に配置されたGMRチップ102に形成された符号DのGMR素子とを直列に接続し、また、GMRチップ101に形成された符号BのGMR素子と、これと磁化固定方向が反対に配置されたGMRチップ102に形成された符号CのGMR素子とを直列に接続し、これらを並列に接続する。そして、かかるブリッジ回路の差動電圧Vを検出可能なよう、基板2は構成されている(差動電圧検出手段)。つまり、図5(b)の例では、直列接続されたGMR素子A,Dの間と、同じく直列接続されたC,Bの間の差動電圧Vを検出するよう構成される。
【0038】
そして、図6(a)に示すように、上記配置のGMRチップ101,102の各GMR素子形成面11aに対して磁石7による磁力線(矢印A)が平行になるよう、つまり、磁力線がGMRチップ101,102を載置する図示しない基板の載置面に対して垂直になるよう、磁石7を配置することで、磁気センサとして利用可能となる。具体的に、図6(b)に示すように、基板2に搭載されたGMRチップ101,102を覆うよう、当該基板2の搭載面上を樹脂などの絶縁性部材104にて封止してパッケージ化されることで、磁気センサは構成される。この場合には、GMRチップ101,102が側面を向いて配置されるため、図6(b)の符号141に示す側面に平行な方向の磁界(矢印A参照)に対して、検出感度を有することとなる。
【0039】
以上のように構成されることで、4つのGMR素子が形成された面は、全て磁界の向きに沿って同一方向を向いているため、検出対象となる磁界の向き(図6の符号A参照)が変化すると、各GMR素子の抵抗値が変化する。このとき、上述したように各GMR素子(A,B,C,D)の磁化固定方向を2個ずつそれぞれ反対向きに設定しているため、図4(b)に示すように、それぞれが+、-の値に変化する。すると、ブリッジ回路の差動電圧が微小な磁界の変化であっても生じることとなり、高感度に磁界の向きを検出可能となる。また、各GMR素子の形成面が同一平面上に位置しているため、各素子が同1条件にて磁界の向きを検出することができ、検出精度の向上を図ることができる。」

【図1】




【図2】





3 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献3(特開平5-212152号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明のパチンコ台用磁気検出器は、磁気センサと、この磁気センサの前方側又は後方側、或いは両側に設けられた磁性体とを備えることを特徴とする。本発明の磁気検出器では、磁性体によって磁石の磁力線、つまり磁束が磁気センサに集中するように構成してあるため、磁気検出感度が向上すると共に磁気検出領域が広くなり、従来は検出不可能であったような弱い磁石でも広範囲に検出することができる。これに加えて、多数の磁力線が磁気センサを通過するため、自ずとS/N比が高くなり、磁気検出の安定性・確実性・信頼性が増す。」

「【0020】図5の(a)では、磁気センサ10の前方側に設けられた磁性体51が角柱状の部分51aと51bからなり、角柱状部分51aは部分51bに垂直方向(鉛直方向)に延びている。又、センサ10の後方側の磁性体52も角柱状である。同図の(b)では、(a)と同様に、前方側の磁性体61が角柱状部分61aと61bで構成されているが、角柱状部分61aが部分61bに水平方向に延びている。同図の(c)では、(a)と(b)を組み合わせたもので、前方側の磁性体71が十字状の部分71aと角柱状の部分71bとからなる。
【0021】更に図6の(a)においては、前方側の磁性体81は、等角度間隔(120°)を置いて放射状に延びる3本の角柱状部分を持つ菱形状部分81aを有する。同図の(b)と(c)では、いずれも前方側の磁性体が面状体である。つまり、(b)に示す磁性体91は、矩形状(正方形)の部分91aを有し、(c)に示すものは、図3に示した磁気検出器1’で用いたものと同じで、磁性体21が円板状部分21aを有する。
【0022】これら各種の磁性体においては、前記した検出感度の原理からも明らかなように検出距離に多少の差は生ずるが、パチンコ台の構造やスペース等を考慮し、任意の形状のものを自由に設定することができる。例えば、パチンコ台の入賞穴が水平方向に在る場合は図5の(b)に示すものを、或いは入賞穴が三方向に在る場合には図6の(a)に示すものを用いるなど、検出方向に応じたものを選定することで、より安定性且つ信頼性良く磁石の磁気を高効率で検出することができる。
【0023】なお、図4?図6に示す各種磁性体において、構造的、強度的にサイズを大きくしたり、肉厚を厚くすることは何ら問題はなく、前方側の磁性体と後方側の磁性体を入れ換えても多少の感度差は発生するが問題なく使用できる。但し、集めた磁力線を全て磁気センサに進入させるためには、磁気センサと接する部分をセンサの感磁スペースに対応して細くすることが大切である。」

【図5】




【図6】





















4 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献4(特開平11-194159号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0024】図5は、本発明に係る磁気センサで有利に使用することができる磁束案内部材の他の形状を示す図である。
【0025】図5(a)に示すように、この磁束案内部材21は、底面の面積が小さく、頂面の面積が大きく、これらの端面をテーパ状の側面で結合した形状を有している。
【0026】図6に示すように、このような形状により、広い方の端面で捕獲した磁束を収束させてSQUIDに導くことにより、更に効率良く磁束をSQUIDに導入させることができる。尚、この他にも、様々な形状のものを用意することにより、磁束案内部材を磁気センサとしての感度の調整等にも利用できる。
【0027】尚、図5(a)では磁束案内部材の水平断面形状を円形としたが、図5(c)に示すように、SQUIDのホールパターンに合わせて矩形にしてもよい。更に、必要に応じて適宜任意の形状を選択すべきであることはいうまでもない。また、水平断面形状に係わらず、本発明の効果が得られることはいうまでもない。」

【図5】




【図6】





5 引用文献5に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(実願昭54-86598号(実開昭56-4877号)のマイクロフィルム)には、以下の事項が記載されている。

(2頁15行?3頁5行)
「第2図は本考案の磁気検出装置の一実施例の図であり、第1図の従来の磁気検出装置に、強磁性体材料の円錐状の集磁片6の突出部7を磁気検出器2の両端部に向けて有する磁気検出装置を水中において使用した例であり、水中の磁速は集磁片6に集磁され集磁片の突出部7を通過するため、磁気検出器2の磁気検出値は増加し、当該集磁片を有する収納容器に収納しない場合に比べて2?3倍の磁気検出値を示す。実験データでは100ミリガウスの磁界で200ミリガウスの検出値を得た。」

(第2図)





第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 本願発明1と引用発明の対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 本願発明1と引用発明は、磁気センサの発明である点で一致する。

イ(ア) 引用発明の「GMR素子」は、磁化固定された方向の磁界を検出可能なものであるから、本願発明1の「磁気検出素子」に相当する。また、引用発明の「GMRチップ10」は、「略直方体形状」であり、「GMRチップ10」の、GMR素子R1?R4が形成された面と、基板B上に搭載されたときに基板Bに接する面を備えるものであるところ、このGMR素子R1?R4が形成された面と基板Bに接する面は、それぞれ本願発明1の「磁気検出素子」が「形成された」「素子形成面」と「実装面」に相当する。また、引用発明の「GMRチップ10」は、「磁気センサ1」において「磁界を検出可能」な「GMR素子」を備える「チップ」であるから、本願発明1の「センサチップ」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明は、「磁気検出素子が形成された素子形成面と実装面とを有するセンサチップ」を備える点で共通する。
(イ) 引用発明の「磁性体21」は、「略直方体形状」であるから、互いに略直交する2つの表面を有し、ブロック状であることは明らかである。よって、本願発明1と引用発明は、「互いに略直交する第1の表面及び第2の表面を有する磁性体ブロック」を備える点で一致する。
(ウ) 引用発明の「差動電圧を検出する回路」が「形成され」た「基板B」は、本願発明1の「回路基板」に相当する。また、引用発明の「基板B」における「GMRチップ10」が「搭載される」面は、本願発明1の「回路基板」の「搭載面」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明は、「搭載面を有する回路基板」を備える点で共通する。

ウ(ア) 前記イの(ア)及び(ウ)でも検討したとおり、引用発明の「GMRチップ10」は、「基板B上に」「搭載」されるものであるところ、当該「GMRチップ10」の「基板B」に対向する面と「基板B」の「GMRチップ10」に対向する面は、それぞれ本願発明1の「センサチップ」の「実装面」と「回路基板」の「搭載面」に相当する。この点も踏まえると、引用発明において、「GMRチップ10」が「基板B上に」「搭載」されることは、本願発明1の「前記センサチップは、前記実装面が前記回路基板の前記搭載面と対向するよう、前記回路基板に搭載」されることに相当する。
(イ) 引用発明の「磁性体21」は、「GMRチップ10」におけるGMR素子R1?R4が形成された面に「載置」されているところ、この面に対向する「磁性体21」の表面は、本願発明1の「磁性体ブロック」の「第1の表面」に相当する。また、前記イ(ア)でも検討したとおり、「GMRチップ10」のGMR素子R1?R4が形成された面は、本願発明1の「素子形成面」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明は、「前記磁性体ブロックは、前記第1の表面が前記センサチップの前記素子形成面と対向」する点で共通する。

(2) 一致点及び相違点
上記(1)における対比の検討結果を総合すると、本願発明1と引用発明は、次の一致点において一致し、次の相違点1及び2において相違する。

<一致点>
「 磁気検出素子が形成された素子形成面と、実装面とを有するセンサチップと、
互いに略直交する第1及び第2の表面を有する磁性体ブロックと、
搭載面を有する回路基板と、を備え、
前記センサチップは、前記実装面が前記回路基板の前記搭載面と対向するよう、前記回路基板に搭載され、
前記磁性体ブロックは、前記第1の表面が前記センサチップの前記素子形成面と対向する、
磁気センサ。」

<相違点1>
本願発明1の「センサチップ」の「素子形成面」と「実装面」が「略直交」し、「磁性体ブロック」について「前記第2の表面が前記回路基板の前記搭載面と対向するよう、前記回路基板に搭載」されているのに対して、引用発明の「GMRチップ10」のGMR素子R1?R4が形成された面は基板B上に搭載されたときに基板Bに「対向」する面と「略直交」しておらず、「磁性体21」は、「基板B」の「GMRチップ10」が「搭載」される面と「対向」する面を有しておらず、「基板B」に「搭載」されない点。
<相違点2>
本願発明1の「センサチップ」における「素子形成面」に「複数の端子電極」が形成され、「回路基板」における「搭載面」に「複数のランドパターン」が形成され、「磁性体ブロック」が「互いに略直交する」「前記第1の表面と前記第2の表面の間に位置する切り欠き部」を有し、「前記切り欠き部によって形成される空間に、前記複数の端子電極の少なくとも一部が配置」されるのに対して、引用発明の「GMRチップ10」と「基板B」は、「GMRチップ10」と「基板」の「差動電圧を検出する回路」を接続するための構成が明記されておらず、「GMRチップ10」と「基板B」にそれぞれ「端子電極」と「複数のランドパターン」が形成されているか否か不明であり、「磁性体21」は、「切り欠き部」を有しておらず、「前記切り欠き部によって形成される空間に、前記複数の端子電極の少なくとも一部が配置」されない点。

(3) 相違点についての当審の判断
上記相違点1及び2は、相互に関連するため、これらを併せて検討したところ、以下のア及びイに示す理由により、相違点1及び2に係る構成につき、引用発明と引用文献2?5に記載の事項から、当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

ア 磁性体ブロックの切り欠きが各引用文献に開示されていない点について
前記第4 2で示したとおり、引用文献2には、「GMRチップ1は、出力端子12及びGMR素子11の形成面が、基板2の搭載面とほぼ垂直になる向きで、当該基板2上に配置」され、「GMRチップ11の出力端子12と、基板2の接続端子21とが、若干の隙間を空けているが、ほぼ直角に位置するようになり、相互に近接して配置されたGMRチップ1の出力端子12と基板2上に形成された接続端子21とは、それらの間に配置される半田ボール3にて、物理的及び電気的に接続」されることは記載されている(段落【0026】)。そして、前記第4の3?5に示したとおり、引用文献3?5に記載された事項から、磁気センサに適用する磁性体の形状を、種々の形状として良いことが読み取れる(引用文献3の【図5】、【図6】、引用文献4の【図5】、【図6】、引用文献5の第2図)。
しかしながら、これらの引用文献2?5においては、「磁性体ブロック」における「センサチップ」の「素子形成面」に接する面とこの面に直交する面の間に「切り欠き部」を設けることは記載も示唆もされていない。その結果、当然のことながら、当該引用文献2?5において、「前記切り欠き部によって形成される空間に、前記複数の端子電極の少なくとも一部が配置されること」は、記載も示唆もされていない。
また、「センサチップ」に「磁性体ブロック」を載置する際に、「磁性体ブロック」と半田ボール等の「接続導体」が干渉することは、引用文献1?5に記載されておらず、また、当業者にとって自明なことともいえないから、この干渉を避けるという課題や干渉を避けるために「磁性体ブロック」に対して「センサチップ」に載置される面を含むように、「切り欠き部」を設ける思想を引用文献1?5の記載から把握することもできない。

イ 設計事項該当性について
前記(ア)でも指摘したとおり、引用文献2?5には、「磁性体ブロック」に「切り欠き部」を設け、さらに、「前記切り欠き部によって形成される空間」に、「センサチップ」の「素子形成面に形成」された「複数の端子電極」の少なくとも一部が「配置」することは、記載も示唆もされていない。
そのため、引用発明において、「磁性体21」を載置した「GMRチップ」を「基板B」に搭載するときの設計指針の選択肢として、「磁性体21」の「GMRチップ」に対向する面を含むように「切り欠き部」を設け、さらに、「前記切り欠き部によって形成される空間に、前記複数の端子電極の少なくとも一部」を「配置」することが、本願出願前に当業者に知られているということはできない。よって、引用発明において、「磁性体21」の「GMRチップ」に対向する面を含むように「切り欠き部」を設け、この「切り欠き部によって形成される空間」に、引用発明に明記されていない「GMRチップ」の「複数の端子電極の少なくとも一部」を「配置」することは、当業者が適宜行う設計変更ではない。

相違点の判断のむすび
上記ア及びイの検討のとおりであるから、本願発明1は、当業者であっても、引用発明と引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?9について
本願発明2?9も、前記相違点1及び2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明と引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?9は、引用発明と引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-19 
出願番号 特願2017-97362(P2017-97362)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 清水 靖記
濱野 隆
発明の名称 磁気センサ  
代理人 緒方 和文  
代理人 鷲頭 光宏  
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