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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1377316 |
審判番号 | 不服2020-13555 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-09-28 |
確定日 | 2021-09-07 |
事件の表示 | 特願2016-162249「マウス」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月 1日出願公開、特開2018- 32103、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年8月22日の出願であって,令和2年1月21日付けで拒絶理由通知がされ,同年3月23日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年8月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年9月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年8月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1 本願請求項1に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3項に該当し,特許を受けることができないか,引用文献1に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 本願の請求項2?8に係る発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,また,本願の請求項9に係る発明は,引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2)に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2002-358159号公報 2.登録実用新案第3143838号公報 第3 本願発明 本願請求項1?9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」といいう。)は,令和2年9月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 筐体の上面に隆起部が形成され,当該隆起部の筐体左右方向における頂部は,利用者が筐体を把持した状態で,当該利用者の手の掌側の面であって,第二指基節骨の近位側端の基部と第三指基節骨の近位側端の基部との間に相当する範囲に位置するマウス。」 なお,本願発明2?9は,本願発明1を減縮した発明である。 第4 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2002-358159号公報)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。 「【0022】(実施の形態4)図7(a)は実施の形態4のポインティング用マウスの斜視図であり,図7(b)は仕切り部の拡大断面図であり,図7(c)は変形例1の仕切り部における拡大断面図であり,図7(d)は変形例2の仕切り部における拡大断面図である。図7において,70は実施の形態4のポインティング用マウス,71はマウス本体,72はマウス本体71の前部に配置された右クリックボタン,73は左クリックボタン,74は左右のクリックボタン72,73の略後方中間位置に突設された仕切り部,75はマウスケーブルである。仕切り部74はマウス本体71上に一体に形成されるか,若しくは両者を別体に作成して仕切り部74の基部を初心者の指の位置に合わせて接着手段や嵌合手段を用いてマウス本体71上の所定位置に固定して形成される。仕切り部74とマウス本体71とを別体にした場合には,仕切り部74はマウス本体71と同材質の合成樹脂やそれとは異なる比較的軟質の合成樹脂等を用いることができ,これによって手にした時の感触をソフトにすることができる。また,仕切り部74の基部が設置されるマウス本体71上にその基部が嵌合される嵌合溝を複数設けておき,手の大きさ等や中クリックボタンの有無等の使用環境に応じてこれらの中から選択して用いることもできる。図7(b)?(d)に示すようにマウス本体71上に突設される仕切り部は,マウス本体71の上部に穿設された嵌合溝部71aと底部に嵌合溝部71aに嵌合される嵌合突起74aとを有した三角状仕切り部74b(図7(b))のものや,左右何れかに湾曲させた湾曲状仕切り部74c(図7(c)の変形例1),上部側を左右両側に拡大した傘状仕切り部74d(図7(d)の変形例2)のもの等が適用でき,製造コストや使用条件に応じて適宜選択することができる。また,湾曲状仕切り部74cや傘状仕切り部74dにも前述の嵌合固定手段を設けてもよい。なお,マウス本体71における仕切り部74の左右両側に湾曲して形成された位置ズレ防止用の凸部を設けることもできる。これにより,指をクリックボタン上の所定位置に位置付ける操作を更に容易に行うことができる。 【0023】実施の形態4のポインティング用マウス70は以上のように構成されているので以下の作用を有する。 (a)パソコンの初心者や高齢者でも人差指と中指とで仕切り部74を挟み込むことにより,左右の指先を左右のクリックボタン73,72上の適正位置に安定に固定,保持させることができ,マウス操作を容易にしてパソコン操作全般の学習効果を向上させることができる。 (b)指先が開放された状態に保持できるので,指先の脱着が自由であり,長時間に亘って衛生的かつ快適にポインティング用マウス70を操作できる。 (c)マウス本体71上に突設された仕切り部74を有するので,これを手がかりやガイドとして視力の弱い人でも容易にマウスの操作を行うことができる。 (d)ポインティング用マウス70から指を離したり,ポインティング用マウス70を掴んだりする際の動作を確実に行うことができる。これによりキーボードとマウスとの間の切替え操作を初心者でも簡単に行え,操作性に優れている。 (e)仕切り部74を着脱式にした場合,仕切り部の形状を選択でき,種々の使用環境に対応した利便性を付与することができる。 (f)仕切り部74の上部を傘状に形成した場合には,仕切り部74を中指や人差し指にかけた状態でマウス本体71を持ち上げることができ,手の不自由な障害者等でもポインティング用マウス70を容易に扱うことができる。 (g)仕切り部74の左右両側もしくはいずれかに湾曲して形成された位置ズレ防止用の凸部を設けた場合,この位置ズレ防止用の凸部と仕切り部74との間の空間に指を安定に配置して,人差し指や中指をマウス本体71上の左クリックボタン73と右クリックボタン72上部の適正位置におくことができる。」 「【図7】 」 以上によれば,引用文献1には,ポインティング用マウスは,マウス本体71上であって,左右のクリックボタン72,73の略後方中間位置に仕切り部74が突設されること(【0022】),パソコンの初心者や高齢者が,人差指と中指とで仕切り部74を挟み込むことにより,左右の指先を左右のクリックボタン73,72上の適正位置に安定に固定,保持させることができ,マウス操作を容易にしてパソコン操作全般の学習効果を向上させることができるという作用を有するものであること(【0023】)が記載されている。 そうすると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「マウス本体71上であって,左右のクリックボタン72,73の略後方中間位置に仕切り部74が突設されているポインティング用マウス。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献2(登録実用新案第3143838号公報)には,次の事項が記載されている。 「【実施例1】 【0011】 本考案の第一実施例では,一つのマウス本体10を設置する。 該マウス本体10の内部構造と一般のマウス構造は同じであるため,ここでは説明しない。 本実施例は該マウス本体10右側上に一つの第一結合部品11を設置する。 本実施例では開孔とする。 別に該マウス本体10外には更に第一結合部品11と相対する位置に一つの補助体20を設置する。 該補助体20上には第一結合部品11と合わせる第二結合部品21を設置する。 本実施例では掛止凸部とする。使用する時には,第一,第二結合部品11,21と合わせることにより,マウス本体10と補助体20がひとつに結合される。 【0012】 更に該補助体20は一つの補助体底面22を設置する。 該補助体底面2は,マウス本体10の底面12と平らに揃っており,該マウス本体10とひとつにしてデスク面に置いた時,平らに設置することできる。 他に該補助体20上には人体工学に符合した表面23が成形され,補助体底面22と隣り合う。 【0013】 該補助体表面23は,平滑な湾曲面(図2参照),若しくは連続波面(図4参照)で,ユーザの親指,薬指若しくは小指を支え,ユーザがマウスを操作する時,掌の人差し指,中指はマウス本体10の表面上に乗せ,薬指,小指を補助体20の表面23上に乗せることにより,ユーザが快適な状態でマウスを操作できて(図5参照),同時に薬指,小指が直接デスク面に触れないようにする。 これによってマウス本体10を移動する時,薬指,小指がデスク面に接触することにより,傷ついたり,皮膚にタコができたりしない。」 「【図2】 【図3】 」 以上によれば,マウス本体の側面に,利用者の指を保持する保持部を形成することは,本願出願前より周知技術であるといえる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「マウス本体71」,「ポインティング用マウス」は,それぞれ,本願発明1の「筐体」,「マウス」に相当する。 そして,引用発明1の「仕切り部74」は,「マウス本体71上に」「突設され」ているから,「マウス本体71上に」隆起している隆起部であるといえるのに対し,本願発明1の「隆起部」は,「筐体の上面に」「形成され」ているから,引用発明1の「仕切り部74」と本願発明1の「隆起部」とは,「筐体の上面に」「形成され」ている「隆起部」である点で共通する。 イ 以上から,本願発明1と引用発明1との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「筐体の上面に隆起部が形成されている,マウス。」 <相違点> 相違点1:「筐体の上面に」「形成されて」いる「隆起部」について,本願発明1は,「当該隆起部の筐体左右方向における頂部は,利用者が筐体を把持した状態で,当該利用者の手の掌側の面であって,第二指基節骨の近位側端の基部と第三指基節骨の近位側端の基部との間に相当する範囲に位置する」のに対し,引用発明1は,そのような事項を備えているか不明な点 (2)判断 ア 前記第4 1における引用文献1の【0023】の記載によれば,引用発明1の「仕切り部74」は,パソコンの初心者や高齢者が,人差指と中指とで挟み込むことにより,左右の指先を左右のクリックボタン73,72上の適正位置に安定に固定,保持させることができ,マウス操作を容易にしてパソコン操作全般の学習効果を向上させることができるという作用を有するものである。 ここで,上記パソコンの初心者や高齢者は,本願発明1の「利用者」に相当するものであるところ,引用発明1の「仕切り部74」は,上記のとおり,パソコンの初心者や高齢者が,人差指と中指とで挟み込むものであるから,引用発明1の「仕切り部74が突設されている」「左右のクリックボタン72,73の略後方中間位置」とは,パソコンの初心者や高齢者が,人差指と中指とで挟み込める位置であるといえる。 そうすると,引用発明1において,「仕切り部74」の「マウス本体71」左右方向における頂部は,その機能,効果からすると,パソコンの初心者や高齢者の手の掌の面に位置するものではない。 したがって,相違点1は実質的な相違点であるから,本願発明1は引用発明1であるとはいえない。 イ 引用文献1には,「仕切り部74」の「マウス本体71」左右方向における頂部を,パソコンの初心者や高齢者の手の掌側の面であって,第二指基節骨の近位側端の基部と第三指基節骨の近位側端の基部との間に相当する範囲に位置させることは,何ら記載も示唆もされていないし,このことが本願出願前において当該技術分野における周知技術であったともいえない。 したがって,本願発明1は,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2?9について 本願発明2?8は,本願発明1を減縮した発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記1(2)イで検討したのと同様の理由により,引用発明1に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。 また,本願発明9も本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記1(2)イで検討したのと同様の理由により,引用発明1及び周知技術(引用文献2)に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明1は,引用発明1ではないし,また,本願発明1?9は,引用発明1及び周知技術(引用文献2)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-08-18 |
出願番号 | 特願2016-162249(P2016-162249) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 酒井 優一 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
▲吉▼澤 雅博 河本 充雄 |
発明の名称 | マウス |
代理人 | 竹居 信利 |