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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1377325
審判番号 不服2020-2412  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-21 
確定日 2021-08-25 
事件の表示 特願2018-127800「床下空調システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月16日出願公開、特開2020- 8195〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年7月4日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和元年8月1日付けで拒絶の理由の通知
令和元年10月4日に意見書及び手続補正書の提出
令和元年11月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年2月21日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出
令和2年10月8日付けで当審における拒絶の理由の通知
令和2年12月8日に意見書及び手続補正書の提出
令和3年1月22日付けで当審における拒絶の理由の通知
令和3年3月25日に意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、令和3年3月25日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに願書に最初に添付された図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
家屋の床下から床上に向かって空調された空気が流れるように、空気を空調して床下に吹き出す空調装置と、床下の空間と床上の空間とが連通するように床板に形成された通気口とを備える床下空調システムにおいて、
前記家屋は二階建て家屋であって前記床板は一階を構成する床板であり、前記通気口と異なる位置に、前記床板を境にして前記空調装置を床上と床下に跨って設置可能に構成され、
前記空調装置は、設置された状態で前記床上に吸い込み口を有し床下に吹き出し口を有するように配置され、前記床板と前記床板下方に設置された基礎との間に空調風を放出し、
前記家屋の床下に空気が自然に外部へ抜け出す換気口が設けられず且つ前記家屋の床下に木炭が設けられるとともに、基礎スラブ内側底面部の一部又は全部を残して前記基礎を被覆する断熱材が設けられ、前記空調装置から吹き出された前記空調風により前記床下に蓄熱する床下蓄熱構造を備え、
前記空調装置を用いて前記床下に蓄熱し、前記床下から前記床上へ空調風を前記通気口を介して室内を流通させ、前記床下及び前記床上を含め家屋全体を空調し、
前記木炭は、前記基礎スラブの上面部から持ち上げられて設置されており、前記通気孔(当審注:「通気口」の誤記である。)は前記家屋を構成する外壁に隣接して形成されていると共に、前記空調装置は前記外壁に対向する他の外壁に隣接して設けられていることを特徴とする床下空調システム。」

第3 令和3年1月22日付けで通知した拒絶の理由
当審において、令和3年1月22日付けで通知した拒絶の理由のうち、理由の一部は、概略以下のとおりである。
<理由(進歩性)>
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献については引用文献一覧を参照)
・請求項1
・引用文献1?9
・備考
本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1及び7?9記載の事項、引用文献4?6に例証される周知技術1並びに引用文献2、3及び9に例証される周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献一覧>
引用文献1:特開2008-298328号公報
引用文献2:特開2001-20403号公報
引用文献3:特開2000-146231号公報
引用文献4:特開2003-147868号公報
引用文献5:特開2013-53439号公報
引用文献6:特開2007-175872号公報
引用文献7:特開2017-83097号公報
引用文献8:特開2017-48932号公報
引用文献9:特開2006-200280号公報

第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された引用文献1には、「空調システム」に関し、次の記載がある。
なお、「・・・」は記載の省略を示し、下線は当審において付したものである(以下同様。)。
ア 「【0001】
本発明は、空調システムに関し、特に、空気調和機をマンション造等に組み合わせた床下空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マンションや一般住宅における近年のエネルギー志向に伴い、高気密・高断熱化が推進されており、空調システムにおいても省エネルギー化が必須課題となってきている。
・・・
【0008】
本発明は、天井高を高く保つことができ、効率の良い空調システムを提供することを目的とする。」

イ 「【0013】
図1は空調システムの概観図である。1は空気調和機の室内機、2a,2bは室内機1からの吹出空気を案内する角ダクト、3は室内機1で熱交換するための空気を吸込む吸込グリル、4は空気調和機の室外機であり玄関横やベランダに設置される。5は室内機1と室外機4を繋いで冷凍サイクルを構成する冷媒配管、6は建物の一部であるコンクリートスラブ、7は角ダクト2a,2bから吹き出された空気が流れる床下空間、20は床、50は室内機1が据え付けられるスペースである玄関ホール等、60は室外である。
【0014】
室内機1は冷房,暖房,再熱除湿運転が可能なものであり、使用者の要求に応じた運転を行うものである。この室内機1は、いわゆる天井カセットタイプのエアコンと同様の構造であり、詳細は図4を用いて後述する。室内機1の設置場所は、例えば下駄箱の下のスペースである。通常の空気調和機、いわゆるルームエアコンや天井カセットタイプのエアコンでは部屋12に直接空気を吹き出すものであるが、この空調システムでは、室内機1から角ダクト2a,2bを介して一旦床下空間7に空気を吹き出す。このように室内機1で熱負荷された空気は床下空間7に吐出面風速を抑えて吐出静圧を維持した状態で放散される。また、この吐出空気は常時一定速で送風される。この床下空間7は床20とコンクリートスラブ6で囲まれた大きな空間であり、その空間内で自然と温度分布がバランスして均一になり、また、圧力もバランスして均一になる。この床下空間7は、熱負荷された空気を溜める空間である吐出用チャンバとなり、1つの熱源となる。なお、床下空間7の高さは200mm?250mm程度である。
【0015】
図2は空調システムによる空気の流れを示す図である。11は吐出口、12は部屋である。上記のように1つの熱源となった床下空間7の空気が、部屋12に配設された各吐出口11を介してから部屋12に吹き出される。吹き出された空気は、吸込グリル3へと吸込まれていく。これによって気流が作られ、この気流によって部屋12を暖房等する。この気流を常時一定速とすることで、部屋12内に常時一定の空気の環流を形成することができる。
【0016】
本空調システムにおいては、マンション等の各戸内を1つの空間のように考え、1台の空気調和機、つまり、冷凍サイクル1つで戸内全体を空調する全館空調を行う。各部屋12にルームエアコンを設置するような個別空調とは異なるものである。全館空調では、冷凍サイクルを1つとすることで、排出するCO_(2) も低減することができ、地球にやさしい空調システムを実現する。
【0017】
室内機1の据え付けについて図3を用いて説明する。図3は空気調和機の据え付けに関する図である。室内機1は下駄箱の下のスペース等に設置されることとなるが、筐体から吊り下げる構造をとる。111は室内機1から空気を吹き出す室内機吐出口、201a,201bは筐体から室内機1を吊り下げるための取付具、202a,202bは室内機1に取り付けられ、取付具201a,201bと係合する本体吊金具である。この取付具201a,201bは筐体から吊り下げられるように固定されており、室内機1の本体吊金具202a,202bと係合する。この係合によって室内機1は筐体から吊り下げられる。
【0018】
次に室内機1の室内機吐出口111と床下空間7との連通について説明する。室内機吐出口111は斜視図上、角が丸くなっておらず文字通り長方形で表されている。この室内機吐出口111から吹き出される空気を床下空間7に導くために、角ダクト2a,2bを室内機1に取り付ける。取り付けは角が丸くなった四角いエリアの外側にあるねじ穴にねじで取り付けられる。この取り付けにより室内機1と床下空間7とが連通し、送風路が形成される。
【0019】
送風路の断面積は、室内機吐出口111の断面積から角ダクト2a,2bの断面積へというように変化することとなる。角ダクト2a,2bの内寸は、室内機吐出口111よりも約1.5 倍大きな面積に設定されている。従って、室内機1からの流れは角ダクト2a,2bにより拡大,減速することとなる。つまり、このような面積関係にすることで床下への突入風速を抑えることができる。これは、床下空間7での乱流の軽減に寄与することとなり、効率の良い空調を実現するのに資するものである。
【0020】
次に室内機1自体について図4を用いて説明する。図4は空気調和機を下から見上げた図(床から天井方向に向かって見た図)であり、(a)は露受皿を取り付けた概観図、(b)は露受皿を外した図である。
【0021】
101は室内機1の外箱、102は送風機であるシロッコファン、103は熱交換器、104は露受皿、105は露受皿104の固定具である露受皿固定具、106は吸込口であり少なくとも片面は吸込グリル3に繋がっている、107は湿度センサ、108は運転状態を制御する制御回路を内蔵した電気品箱、109は停電復帰用のオートリスタートスイッチ、110は静圧スイッチである。
【0022】
これらの部品は外箱101に収納される。シロッコファン102によって吸込グリル3を介して吸込口106から空気を吸い込み、熱交換器103で熱交換させ、室内機吐出口111から熱交換した空気を吹き出す。この空気調和機では冷暖房運転の他、除湿運転も可能な構成となっているため、除湿運転時に熱交換器103に結露する。この結露した露が外箱101内に垂れないように露受皿104を設けている。この露受皿104は露受皿固定具105で3箇所固定されている。
【0023】
冷房・暖房・除湿等の運転状態(室内温度,室内湿度,風量)は、湿度センサ107,後述の温度センサ,後述のワイヤードリモコン40の情報に基づいて、電気品箱108内の制御回路が各アクチュエータに指令を出すことで制御される。湿度センサ107を室内機1の下面に配置しているのは、フロアの空気の一番集まる部位での湿度判定を基準とした制御を行うためである。
【0024】
このような室内機1をマンション等の一戸に据え付けた場合について、図2よりも詳細に、図5,図6,図7を用いて説明する。図5は空調システムを実際の部屋に適用した際の空気の流れを示す側面図、図6は空調システムを実際の部屋に適用した際の空気の流れを示す平面図であり、図7は床下空間から吹き出す空気の流れを示す断面図である。12は部屋、20は床、21は扉、22は扉21に設けられたアンダーカット、23は天井面、24は天井裏、30は巾木、31は巾木30部分で床下空間7からの空気を吹き出す巾木吐出口、40は空気調和機を操作するためのワイヤードリモコン、50は玄関ホール等、51は下駄箱・物入等である。また、15は家具等である。
【0025】
図5では、図2のように、部屋12に配設された各吐出口(各吐出口11・各巾木吐出口31)から、床下空間7の空気が部屋12に吹き出される。巾木30からの吹き出しは図7に示す通りである。床下空間7全体を空気調和機の吐出用チャンバとして利用しているので、その吐出用チャンバに蓄えられ熱負荷された空気は均一な温度バランスを持っており、各吐出口(各吐出口11・各巾木吐出口31)で温度バランスのとれた空気が吹き出される(図6も参照)。その床下空間7の熱負荷された空気を各部屋12に設置された各吐出口(各吐出口11・各巾木吐出口31)から吹き出すことで各部屋12全体を一様に空調して、各部屋12間の温度バランスを調整することができる。
【0026】
図2で述べたように、空気が常時一定速で還流しているからである。吹き出された空気はその気流に乗って、吸込グリル3へと吸込まれていく。このようにして温度のバリアフリーを実現することができる。なお、温度のバリアフリーとは、各部屋12間で温度差が無いことをいう。
【0027】
このようなことを可能とするためには、室内機1で熱負荷した空気を角ダクト2a,2bを通して床下空間7へ放散させることと、常時一定の送風を行うことが重要である。ここでいう常時一定とは、風量が変更されない場合にはファンの回転数を一定に保つということである。ホテル等にあるように、風量は例えば「強」「中」「弱」と3段階に変更することが可能である。
【0028】
仮に、室内機1から遠い位置に空気を吹き出すよう床20の下にダクトを這わせて強制的に指向性を持たせると、指向性は非常に良いが、ダクト内部の圧力損失が大きくなり、床下全体を循環する風量自体が落ちてしまう。また、床下空間の圧力・温度バランスを損なうこととなる。すると、室内機1から近い部屋と遠い部屋とでは温度差が大きくなり、温度のバリアフリーを行うことができなくなる。
【0029】
従って、そのようなダクトを用いずに床下空間7全体を吐出用チャンバとした。このように床下空間7全体を吐出用チャンバとした場合であっても、床下全体を循環する風量を落とさずに床下空間7の空気に指向性を持たせるためには、室内機吐出口111を設けることが必要である。その際、室内機1から床下空間7へ吹き出す空気の面風速をある程度落として、床下での乱流等による圧力損失を押さえ、吐出静圧を維持することが重要である。
【0030】
このため、先ず第1に、室内機1から吹き出す空気を床20と平行に吹き出さず、角ダクト2a,2bによって略真下に吹き出すこととした。実施例では90度であるが、据え付け上の問題で90度にならない場合も考えられるので、床20と角ダクト2a,2bの軸線とのなす角が75度以上であれば良いものとする。こうすることで床下空間7内の気流に大きな速度を持たせず、乱流を軽減している。次に、角ダクト2a,2bの内寸を、室内機吐出口111よりも約1.5 倍大きな面積にして床下への突入風速を抑え、床下空間7での乱流を軽減している。以上の構成とし、床下空間7をかき回さないようにして、吐出用チャンバを均一な熱源として保っている。
【0031】
実際の気流について説明する。実際の部屋12は扉21や壁によって区画されているので、扉21が閉じられている場合等には、空気が流れなくなってしまう。そこで、扉21にアンダーカット22を設け、扉21が閉じられていたとしても空気が流れるように工夫している。場合によっては壁にアンダーカット22としての孔を設けても良い。このような構成とすることで各部屋12に気流を生じさせることができる。
【0032】
なお、本空調システムでは、天井裏24を利用せず、天井裏24には空調のための構成を備えていない。つまり、簡易な構成で空調システムを実現できる。また、その分だけ天井高を低くすること無く、空調システムを導入できる。」

ウ 「【0040】
次に、マンション造について図8を用いて説明する。図8はマンション造を示す図であり、(a)は外断熱造を示す図、(b)は内断熱造を示す図である。70は外壁、71は通気層、72は断熱材である。
【0041】
図8(a)に示す外断熱造は、室外60と部屋12との間には、外壁70,通気層71,断熱材72,コンクリートスラブ6が存在している。断熱材72が蓄熱体であるコンクリートスラブ6よりも室外側にあることで、コンクリートスラブ6を通した熱橋の影響を軽減することができる。つまり、室内は室外の熱影響が軽減されている。また、コンクリートスラブ6自体を蓄熱体として利用できるため、コンクリートスラブ6自体に熱を持たせて保温層を形成し、室内での熱消費エネルギーを軽減することができる。暖房時には室内あるいは屋内の熱を逃がさない構造であり、保温性能が高いといえる。従って、空気調和機の暖房運転時においては、床暖房の効果を奏するものである。このとき床下空間7の上面は床20で覆われ、他の5面はコンクリートスラブ6で覆われている。」

「【図1】


【図2】



「【図5】



「【図8a】



(2)上記(1)記載から認められること
ア 上記(1)の段落0001、0002、0008、0013?0016、0024及び0032並びに図1、図2及び図5の記載によれば、引用文献1には、「空調システム」が記載されている。

イ 上記(1)の段落0013?0015、0018及び0025並びに図1、図2及び図5の記載によれば、空調システムは、建物の床下から床上に向かって空調された空気が流れるように、空気を空調して床下に吹き出す空気調和機の室内機1と、床下の空間と床上の空間とが連通するように床20に形成された吐出口11、31とを備えることが分かる。

ウ 上記(1)の段落0001、0013、0014、0016及び0017並びに図1、図2及び図5の記載によれば、空調システムにおいて、建物はマンション造り等の建物の一戸であって前記床20は戸を構成する床20であり、吐出口11、31と異なる位置に、空気調和機の室内機1を床上(例えば下駄箱の下のスペース)に設置可能に構成されることが分かる。

エ 上記(1)の段落0013?0015、0018及び0022並びに図1、図2及び図5の記載によれば、空調システムにおいて、空気調和機の室内機1は、設置された状態で床上に吸込グリル3を有し床下に角ダクト2a,2bを介して空気を吹き出すための口を有するように配置され、床20と前記床20下方に設置されたコンクリートスラブ6との間である床下空間7に空調風を放出することが分かる。

オ 上記(1)の段落0015、0016、0025及び0031並びに図1、図2及び図5の記載によれば、空調システムにおいて、床下から床上へ空調風を吐出口11、31を介して室内を流通させ、前記床下及び前記床上を含め、建物の戸内全体を空調することが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「建物の床下から床上に向かって空調された空気が流れるように、空気を空調して床下に吹き出す空気調和機の室内機1と、床下の空間と床上の空間とが連通するように床20に形成された吐出口11、31とを備える空調システムにおいて、
前記建物はマンション造り等の建物の一戸であって前記床20は戸を構成する床20であり、前記吐出口11、31と異なる位置に、前記空気調和機の室内機1を床上に設置可能に構成され、
前記空気調和機の室内機1は、設置された状態で前記床上に吸込グリル3を有し床下に角ダクト2a,2bを介して空気を吹き出すための口を有するように配置され、前記床20と前記床20下方に設置されたコンクリートスラブ6との間である床下空間7に空調風を放出し、
前記床下から前記床上へ空調風を前記吐出口11、31を介して室内を流通させ、前記床下及び前記床上を含め、建物の戸内全体を空調する、空調システム。」

2 引用文献2について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、次の記載がある。
「【0025】
【発明の実施の形態】図1は本発明の蓄熱型基礎の一構成例を示す全体斜視図であり、図2は図1中のA-A’断面図である。図中、1は外周部分を囲むコンクリート基礎梁、2は基礎梁1に連続してその内側底部に形成されたコンクリート基礎スラブであり、これらにより船底型コンクリート基礎を形成している。3a及び3bは夫々、基礎梁1および基礎スラブ2の全外周を覆う合成樹脂発泡板からなる断熱材であり、5は発熱体、6は発熱体5を被覆している表面蓄熱層である。」

「【0039】以上の構成を有する本発明の蓄熱型基礎は完全な外断熱構造であるため、基礎に蓄熱された熱が土中に放散する率が減少し、蓄熱効率が極めて高い。また、発熱体5により積極的に蓄熱するに際し、蓄熱量の増大を図るために発熱体の温度を高く設定しても、基礎内部では温度分布が小さく、温度差ストレスによる亀裂(クラック)の発生を抑制することができる。この点について、本発明者は基礎内部における温度分布に関するシュミレーションを行っており、その一例を簡単に説明する。」

「【0045】図2に示した例では、基礎スラブ2上に打設されたコンクリート又はモルタルからなる被覆層6が基礎スラブ2と一体化された構造を有しているため、基礎全体として熱の伝達性が良く、発熱体5による熱を極めて効率良く基礎全体に蓄熱することができる。
・・・
【0047】また、基礎に蓄熱された熱の放散を緩慢にし、より長時間暖房を可能にすると共に、基礎梁内の温度差を小さくするために基礎の内側面も部分的に断熱材で覆うことができる。この場合の具体例を図3乃至図6に示す。
【0048】図3は外周部分のコンクリート基礎梁1の内側面を合成樹脂発泡板(断熱材)3cで覆った例であり、図4は基礎梁1の内側に設けられている基礎梁4の両側面を合成樹脂発泡板(断熱材)3dで覆った例であり、図5はこれらを組み合わせた例である。尚、これらの合成樹脂発泡板3c,3dは、前述の合成樹脂発泡板3aと同様に基礎の捨て型枠として利用すれば、後から取り付ける手間が省け、もちろん、型枠を取り外す手間も省ける。
【0049】このように基礎梁1の内側や基礎梁4の両側面にも断熱材を設けることにより、基礎梁とスラブ間の温度差を小さくできるので、温度差ストレスによる亀裂発生の危険性をより一層小さくすることもできる。
【0050】図6は、更に発熱体5が埋設されたコンクリート基礎スラブ2の最上面にも部分的に合成樹脂発泡板(断熱材)3eを敷設した例である。
【0051】上記のように基礎スラブの上面にも断熱材を設け、放熱面(断熱材が設けられない部分)の大きさを適宜設計することにより、暖房時の立ち上がり時間及び暖房継続時間(放熱時間)の大まかな調整を行うことができる。」

「【0053】次に、本発明の蓄熱型基礎を適用した建物の構造の一例を、図7を参照して施工方法と共に説明する。
・・・
【0056】また、蓄熱型基礎によって暖められた床下空間の温空気を建物全体に循環させるため、床下空間、壁内、小屋裏および室内を連通させるのが望ましい。さらに、温空気の循環を従来の自然対流にたよるだけでは、理想的な設計がなされない限り、建物内で温度むらを発生し易いため、空気の循環は空気循環用ファン101によって、床下の温空気を建物の上方に向けて送り出すようにして行うことが望ましい。上方に向けらた温空気は、室内の空気を暖めると共に、建物の構造部材にも熱を伝達するが、建物全体を高気密・高断熱仕様とすることにより、熱損失を最小限に抑えることができる。
【0057】図7中には、床下に空気循環用ファン101を設置した場合における空気の流れの一例を矢印で示している。
【0058】本例では、蓄熱型基礎によって暖められた床下空間の温空気は、ファン101及びダクト102により間仕切り壁内を上昇し、一部が1階天井裏(2階床下)からガラリを介して各室内に供給され、他の一部が2階天井裏から廊下等を介してドア下空間等から各室内に供給される。また、1階室内からの排気・循環は床面に設けられたガラリを介して行われ、2階室内からの排気・循環は天井裏に設けたファン103による強制循環によって行われる。なお、本発明の建物の構造は高気密・高断熱仕様によって熱損失を最小限に抑えるものであるため、換気手段104としては熱交換型のものを設置するのが好ましい。」

「【図2】


【図3】



「【図6】


【図7】



3 引用文献3について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3には、次の記載がある。
「【0011】図1?図3において、上階および下階のスラブ1、2間には、天井3、天井チャンバ4および室Rが形成され、室Rの下部にはOAフロアとなる低床の二重床20が配設され、二重床20とスラブ2との間に二重床チャンバ21が形成されている。室Rの窓W側の各柱22には、柱一体型レタンダクト23が配設され、各レタンダクト23の間に窓カウンタ24が配設されている。天井3には複数の天井吹出口25が設けられ、また、室Rの窓と反対側のスラブ2上には、中央熱源式冷温水供給方式若しくは冷暖房兼用のヒートポンプ式の空調機27が設置されている。なお、27aは室内側熱交換器、27bは送風ファンである。
【0012】天井チャンバ4内には、各天井吹出口25に接続された給気ダクト29が配設され、給気ダクト29は第1の切替ダンパD1を介して空調機27の吐出側ダクト30に接続されている。また、二重床チャンバ21内の空調機27側には、給還気口31が設けられ、第2の切換ダンパD2を介して空調機27の吸込側ダクト32に接続されると共に、給気ダクト33及び第3の切替ダンパD3を介して空調機27の吐出側ダクト30に接続されている。さらに、天井チャンバ4内の空調機27側には、還気口34が設けられ、還気ダクト35及び第4の切替ダンパD4を介して空調機27の吸込側ダクト32に接続されている。各切替ダンパD1?D4は電動モータ又は電磁ソレノイドにより制御される。
【0013】なお、図1において、37はスラブ2、4の下面に設けられた断熱材、図2において、36は躯体蓄熱部を示している。断熱材37をスラブの下面に設ける理由は、スラブの上面には二重床を支える多数の支柱が存在するため施工が難しいためである。」

「【図1】



4 引用文献4について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4には、次の記載がある。
「【0010】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る建物用吸着装置及び建物の床下構造について詳細に説明する。尚、上記と同様のものには同一の符号を付して説明する。図1乃至図6には、本発明の実施の形態に係る建物用吸着装置及び建物の床下構造を示している。先ず、本発明の実施の形態に係る建物用吸着装置Kについて説明する。この建物用吸着装置Kは、主に図2及び図3に示すように、木炭等の吸着材Kaを収納する収納体10と、収納体10を建物1の構成部材に吊下する吊下部11とを備えて構成されている。吸着材Kaとしては、木炭を初め、トルマリン等の鉱物やセラミックス等適宜のものが用いられる。木炭の例を挙げれば、例えば、なら,松,杉を原料とする木炭をブレンドしたものを用いる。収納体10は、木製板で形成されており、上開放の開口12を有した直方体の箱状に形成され、その底壁及び側壁には多数の小孔13が設けられている。また、吊下部11は剛性部材で構成されている。詳しくは、吊下部11は収納体10に連結される棒状部材14で構成され、一端に収納体10の開口12の中央に架設される架設棒15を備え、他端にビス16で構成部材に取付けられる取付け板17を備えている。」

「【0014】従って、この実施の形態に係る建物用吸着装置Kを用いた建物の床下構造によれば、以下のように作用をする。床下空間Sにおいては、空気が外壁2の連通路8を通って流通させられている。この状態において、建物用吸着装置Kにおいては、図2及び図3に示すように、空気が収納体10の開口12や多数の小孔13を通って木炭等の吸着材Kaに接触し、空気中の悪性成分が吸着材Kaに吸着され、調湿,防臭,除菌,防虫等の機能が発揮させられる。この場合、収納体10は木製板で形成されているので、木製板そのものも吸着材Kaまでは行かずとも少なからず同様の機能を発揮する。そして、この場合、収納体10は、吊下部11によって吊下させられているので、多数の小孔13が空気中に露出することになり、良く空気が流通することから、吸着材Kaに対する接触効率が良く吸着効率が向上させられる。また、収納体10は、上開放の開口12を有しているので、この開口12から空気の出入りが円滑に行なわれ、より一層吸着材Kaに対する接触効率が良く吸着効率が向上させられる。また、外側基礎3で囲繞される床下空間Sの面積の70%以上が連通状態になっており、この床下空間Sで床板4を支持するのは柱状の束25なので、従来のように内側基礎9によって床下空間Sが細かく区画されていないことから、それだけ流通が良くなって改善された雰囲気が縦横に行き来し、それだけ、建物用吸着装置Kへの空気の接触効率が良くなり、この点でも、吸着効率が向上させられる。」

「【図1】


【図2】


【図3】


【図4】



5 引用文献5について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献5には、次の記載がある。
「【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。図において、1は空気浄化式建屋を構成し、地盤Gに設置した基礎、2は該基礎1上に構築した二階建て構造の建屋本体を示し、該建屋本体2は土台3A上に築いた外柱3B、内柱、梁3C等からなる躯体3と、該躯体3に設けた一階床部4、断熱仕様の外壁5、内壁6、ドア7、一階天井部8、二階床部9、二階天井部10及び屋根11から構成してあり、建屋本体2内に一階部屋2A及び二階部屋2Bが複数画成してある。」

「【0019】
16、16、・・は外気浄化室13に配置した複数の微多孔吸着体で、該各微多孔吸着体16は織布等の通気性のある素材からなる収容袋に木炭、竹炭、セラミックス等の微多孔質の吸着材を収容して構成してある。そして、各微多孔吸着体16は躯体3を構成する梁3Bに吊下することにより、外気との接触面積を可及的に広くしてある。」

「【図1】


【図2】



6 引用文献6について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献6には、次の記載がある。
「【0028】
図4は、本発明に係る木炭ボード7を木炭断熱パネルとして住宅建築物20のフローリング等の床板21の下の根太25と根太25の間に敷き込んだ例を示したものである。同図に示すように、地面30の基礎22の上の土台23に掛け渡した大引き24の上に根太25と根太25の間に位置して桟26、26を架け渡し、この桟26、26の上に木炭ボード7が設置されている。なお、木炭ボード7は床板21から吊下げるようにしてもよい。用いた木炭ボード7のサイズは長さ×幅×厚さ=1m×260mm×25mmである。」

「【図4】



7 引用文献7について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献7には、次の記載がある。
「【0015】
床下空間3は、基礎5と地面6と床7とで囲まれた非居住空間である。・・・
【0016】
床上空間4は、床下空間3の上方に設けられた空間である。・・・
【0017】
本実施形態の換気空調システム1は、建物2の居室4A乃至4Cの少なくとも一つを換気しながら空調するためのものである。換気空調システム1は、空気調和機8と、チャンバーボックス11と、制御手段Cmとを含んでいる。図2は、図1に示した換気空調システム1の部分拡大図である。図3は、図2の部分斜視図である。」

「【図1】


【図2】


【図3】



8 引用文献8について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献8には、次の記載がある。
「【0017】
建物2は、床下空間3と、床上空間4とを具えている。・・・
【0018】
本実施形態の換気空調システム1は、建物2の居室4A乃至4Cの少なくとも一つを換気しながら空調するためのものであって、空気調和機8と、供給手段9とを含んでいる。図2には、図1に示されている本実施形態の換気空調システム1の部分拡大図が示されている。」

「【図1】


【図2】



9 引用文献9について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献9には、次の記載がある。
「【0016】
以下軸組工法の家屋を例にして説明する。建物の基礎1は、基本的に従前の基礎と同様であるが、床下面部分(べた基礎としても良い)及び布基礎1の床下側面を発泡樹脂の断熱板2で被覆する。また外壁部3は、柱の間や間柱の間を発泡樹脂断熱板で密閉断熱構造とし、更に所定の外壁材やシーリング板等を張着して形成するものである。

「【0025】
床下空間Aに吹き出された暖気流aは、壁面内空間Bを通過して2階床下空間Cに侵入し、2階居室は床暖房効果によって暖房がなされる。
【0026】
更に上下階の各居室5,6は、壁面に設けたガラリ部75から居室5,6内に暖気bが入り込み、これによって室温維持の暖房効果を奏するものである。
【0027】
本発明は、暖房装置72が床上に半露出状態で設置されているので、暖気流aの吹き出しに際して、床上空間の空気cも床下に引き込むことになり、結果的には家全体の暖気の対流が実現するものである。特にドアの開閉によって他の居室空間との空気流通が行われやすいリビング5aに暖房装置72を設置することによって、前記した家全体の暖気対流が効率的に行われることになり、また同時にリビングにおいてガラリ部75からの暖気侵入量が多くなり、家族が集うことが多いリビングの暖房が他の居室に比較して速やかに行われることになる。」

「【図1】


【図2】



第5 対比
本願発明(以下「前者」ともいう。)と引用発明(以下「後者」という。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「空気調和機の室内機1」は、前者の「空調装置」に相当し、以下同様に、「床20」は「床板」に、「吐出口11、31」は「通気口」に、「空調システム」は「床下空調システム」に、「吸込グリル3」は「吸い込み口」に、「角ダクト2a,2bを介して空気を吹き出すための口」は「吹き出し口」に、それぞれ相当する。

・後者の「建物」は、マンション造り等の建物の一戸であるから、前者の「家屋」に相当する。

・後者の「前記吐出口11、31と異なる位置に、前記空気調和機の室内機1を床上に設置可能に構成され」ることは、前者の「前記通気口と異なる位置に、前記床板を境にして前記空調装置を床上と床下に跨って設置可能に構成され」ることに、「前記通気口と異なる位置に、前記空調装置を設置可能に構成され」るという限りにおいて一致する。

・前者の「基礎」は基礎スラブで構成されるから、後者の「コンクリートスラブ6」は、前者の「基礎」に、「スラブ」という限りにおいて一致する。
そして、後者の「前記床20と前記床20下方に設置されたコンクリートスラブ6との間である床下空間7に空調風を放出し」は、前者の「前記床板と前記床板下方に設置された基礎との間に空調風を放出し」に、「前記床板と前記床板下方に設置されたスラブとの間に空調風を放出し」という限りにおいて一致する。

・後者は、「前記床20と前記床20下方に設置されたコンクリートスラブ6との間である床下空間7に空調風を放出」するところ、引用文献1の段落0041の記載によると、「コンクリートスラブ6」は「蓄熱体」であるから、「前記空調装置から吹き出された前記空調風により前記床下に蓄熱する床下蓄熱構造」を備え、「前記空調装置を用いて前記床下に蓄熱し」ていることは明らかである。

・後者の「前記床下及び前記床上を含め、建物の戸内全体を空調する」ことは、前者の「前記床下及び前記床上を含め家屋全体を空調」することに相当する。

したがって、両者の間に次の一致点、相違点が認められる。
[一致点]
「家屋の床下から床上に向かって空調された空気が流れるように、空気を空調して床下に吹き出す空調装置と、床下の空間と床上の空間とが連通するように床板に形成された通気口とを備える床下空調システムにおいて、
前記通気口と異なる位置に、前記空調装置を設置可能に構成され、
前記空調装置は、設置された状態で前記床上に吸い込み口を有し床下に吹き出し口を有するように配置され、前記床板と前記床板下方に設置されたスラブとの間に空調風を放出し、
前記空調装置から吹き出された前記空調風により前記床下に蓄熱する床下蓄熱構造を備え、
前記空調装置を用いて前記床下に蓄熱し、前記床下から前記床上へ空調風を前記通気口を介して室内を流通させ、前記床下及び前記床上を含め家屋全体を空調する床下空調システム。」

[相違点1]
「前記床板と前記床板下方に設置されたスラブとの間に空調風を放出し」、「前記床下及び前記床上を含め家屋全体を空調する」ことに関し、本願発明では、「前記家屋は二階建て家屋であって前記床板は一階を構成する床板であり」、「前記床板と前記床板下方に設置された基礎との間に空調風を放出し」、「前記床下及び前記床上を含め家屋全体を空調」するのに対して、引用発明では、「前記建物はマンション造り等の建物の一戸であって前記床20は戸を構成する床20であり」、「前記床20と前記床20下方に設置されたコンクリートスラブ6との間である床下空間7に空調風を放出し」、「前記床下及び前記床上を含め、建物の戸内全体を空調する」ものの、建物が二階建て家屋であること、コンクリートスラブ6が基礎であること、及び二階建て家屋の家屋全体を空調することは特定されていない点。

[相違点2]
「前記通気口と異なる位置に、前記空調装置を設置可能に構成され」ることに関し、本願発明では、「前記通気口と異なる位置に、前記床板を境にして前記空調装置を床上と床下に跨って設置可能に構成され」るのに対して、引用発明では、「前記吐出口11、31と異なる位置に、前記空気調和機の室内機1を床上に設置可能に構成され」る点。

[相違点3]
「床下蓄熱構造」に関し、本願発明では、「前記建物の床下に空気が自然に外部へ抜け出す換気口が設けられ」ていないのに対して、引用発明では、そのような構成を有しているか否か不明である点。

[相違点4]
「床下蓄熱構造」に関し、本願発明では、「前記建物の床下に木炭が設けられ」、「前記木炭は、前記基礎スラブの上面部から持ち上げられて設置されて」いるのに対して、引用発明では、そのような構成を有していない点。

[相違点5]
「床下蓄熱構造」に関し、本願発明では、「基礎スラブ内側底面部の一部又は全部を残して前記基礎を被覆する断熱材が設けられ」ているのに対して、引用発明では、そのような構成を有していない点。

[相違点6]
本願発明では、「前記通気孔は前記家屋を構成する外壁に隣接して形成されていると共に、前記空調装置は前記外壁に対向する他の外壁に隣接して設けられている」のに対して、引用発明では、そのような構成は特定されていない点。

第6 判断
1 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1の上記第4の1(1)アの段落0001及び0002の記載によれば、引用発明において、「マンション造等の建物の一戸」の一形態として一般住宅が想定されており、また、二階建ての家屋において基礎にスラブを用いることは本願の出願前に周知の事項(以下「周知事項1」という。例えば、引用文献2(特に、段落0025及び0053並びに図2及び7)を参照。)であるから、建物の一戸を対象とした引用発明の空調システムを同じく一戸である一般住宅の一形態である二階建て家屋に適用することにより、コンクリートスラブ6を基礎とするとともに、床下及び前記床上を含め家屋全体を空調するようにし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、請求人は、令和3年3月25日提出の意見書(以下「意見書」という。)の4.(1)iにおいて、「引用文献1では明らかに『マンションにおける空調システム』の構造のみが開示されているものであり、単に『マンション造等』という一語のみの文言記載があったからといって、開示内容の全く異なる建築技術を用いる『二階建て家屋』への空調システムの適用を、当業者であれば容易にできる、というご指摘には承服できません。」と主張するが、引用文献1の段落0002には「マンションや一般住宅における近年のエネルギー志向に伴い、高気密・高断熱化が推進されており、空調システムにおいても省エネルギー化が必須課題となってきている。」と記載されており、上述のとおり、引用発明において、「マンション造等の建物の一戸」の一形態として一般住宅が想定されていることから、請求人の当該主張は採用できない。

(2)相違点2について
上記第4の7?9で摘記した引用文献7(段落0015?0017及び図1?3)、引用文献8(段落0017及び0018並びに図1及び2)及び引用文献9(段落0016及び0025?0027並びに図1及び2)の記載から理解できるように、床板を境にして空調装置を床上と床下に跨って設置することは、本願の出願前に周知の事項(以下「周知事項2」という。)であり、当該周知事項2より空気装置の床上の寸法を小さくできることは、当業者が当然に認識し得ることである。
そうすると、引用発明において、周知事項2を考慮して、床20(床板)を境にして空気調和機の室内機1(空調装置)を床上と床下に跨って設置可能に構成するようにし、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、空気調和機の室内機1の寸法、床上及び床下の各設置スペースを考慮して、当業者が適宜なし得たことである。
なお、請求人は、意見書4.(1)iiにおいて、「従って、確かに『空気調和機を床下と床上に跨って設置する構成』そのものは引用文献7?9に開示されておりますが、本願発明においては、引用文献所載の発明のように、空調風供給ダクトを設置すること、及び二階建て家屋全体を高断熱高気密構造に建築することは不要であります。」、「従って、本願発明は引用文献7?9記載の発明に対し『建築、空調コストを低減した状態で空調装置を利用して居室の空調を行うことができる』という、引用文献所載の発明からは予測不可能な顕著な効果を奏するものであります。」と主張するが、引用文献7?9から認められる周知事項2において床下のダクトの構成を含むものではないから、請求人の当該主張は採用できない。

(3)相違点3について
引用発明において、部屋内に常時一定の空気の環流を形成することにより、部屋の空調を行うこと(引用文献1の段落0015)、床下空間7全体を吐出用チャンバとして機能させること(引用文献1の段落0028、0029)を考慮すると、空気の外部への漏れが生じて、空気の環流が円滑に行われるのを妨げないようにするため、又は、床下空間7を構成する蓄熱体であるコンクリートスラブ6に効率よく蓄熱できるようにするため、建物(家屋)の床下に空気が自然に外部へ抜け出す換気口を設けないようにし、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
なお、請求人は、意見書4.(1)iiiにおいて、「本願発明において『家屋の床下に空気が自然に外部へ抜け出す換気口を設けない』(請求項1)の理由は、床下に床下蓄熱構造を形成するためであります。当然のことながら、床下に『換気口』を設けた場合には蓄熱構造を構成することはできません。」、「従って、『床下に換気口を設けない』ことは『空気の還流が円滑に行われる』こととは無関係であり、この点に関するご指摘は当を得ていないものと思料いたします。」と主張するが、上記第5の対比で検討したように、引用発明においても床下蓄熱構造を有するものといえ、また、上述のとおり、床下蓄熱構造を構成すること以外の目的であっても上記相違点3に係る本願発明の構成とすることができるのであるから、請求人の当該主張は採用できない。

(4)相違点4について
上記第4の4?6で摘記した引用文献4(段落0010及び0014並びに図1?4)、引用文献5(段落0015及び0019並びに図1及び2)及び引用文献6(段落0028及び図4)の記載から理解できるように、家屋の床下に、木炭を、床下空間の下方の面から持ち上げて設置することは、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術1」という。)であり、当該周知技術1は、空気の調湿を図るものである。
そうすると、引用発明において、空気の調湿のために上記周知技術1を適用し、家屋の床下に設けられる木炭を、コンクリートスラブの上面部から持ち上げられて設置されるようにし、上記相違点4に係る本願発明の構成することは、当業者にとって格別困難ではない。
なお、請求人は、意見書4.(1)ivにおいて、「本願発明において『木炭を基礎スラブの上面部から持ち上げて設置する』ことの趣旨は、『温風71の基礎スラブ161への移行が阻害されることがなく、基礎スラブ161に効果的に蓄熱される。』という引用文献4及び引用文献5には記載されていない作用、効果を奏させるためであります。」、「従って、このような本願発明特有の効果を奏し、その効果が引用文献4及び5には記載されていない以上、引用文献1に対して本件引用文献4及び5を適用することの動機付けはない、と思料いたします。」と主張するが、本願明細書の段落0080には、「また、床下に木炭塊18,18・・が設けられているため、床下の空間を密室状としても床下の湿気が炭材に吸収され床下が調湿される。」と記載されているように、上記相違点4に係る本願発明の構成も周知技術1と同様に空気の調湿を図るものであるから、請求人の当該主張は採用できない。

(5)相違点5について
引用文献1の段落0041及び図8(a)には、室内と室外との間にコンクリートスラブを設ける構造において、コンクリートスラブの室外側の面に断熱材を設けることにより、コンクリートスラブを蓄熱体として利用し、空調装置を設けた室内での熱消費エネルギーを軽減すること(以下「引用文献1の記載事項」という。)が記載されている。
また、上記第4の2及び3で摘記した引用文献2(段落0025、0039、0045、0047?0051及び0053?0058並びに図2、3、6及び7)及び引用文献3(段落0011?0013及び図1)に記載されているように、床と蓄熱体であるスラブとの間に空気を流すようにした空調システムにおいて、少なくとも空気と熱の授受を行う領域であるスラブ内側底面部の一部又は全部を残して前記スラブを被覆する断熱材を設けた床下蓄熱構造とすることは、本願の出願前に周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
そうすると、二階建て家屋に適用した引用発明において、上記引用文献1の記載事項を考慮して、周知技術2を適用することにより、上記相違点5に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別困難ではない。
なお、請求人は、意見書4.(1)vにおいて、「従って、ご指摘に係るいずれの引用文献にも、本願発明における『基礎スラブ内側底面部の一部又は全部を残して前記基礎を被覆する断熱材が設けられ、前記空調装置から吹き出された前記空調風により(二階建て家屋の一階を構成する床板の)床下に蓄熱する床下蓄熱構造』は開示されておりません。」、「従って、当業者は、上記引用文献を参照したとしても、本願発明の床下蓄熱構造の構成に至るヒントは得られません。」と主張するが、上記第5の対比で述べたように、空調装置から吹き出された空調風により床下に蓄熱する床下蓄熱構造は引用発明において備えており、上述のとおり、二階建て家屋に適用した引用発明に周知技術2を適用することにより、上記相違点5に係る本願発明の構成とすることができるのであるから、請求人の当該主張は採用できない。

(6)相違点6について
引用発明は建物の戸内全体を空調するものであり、そのために床上に空気を吹き出す吐出口11、31(通気口)から空気を吸い込む空気調和機の室内機1(空調装置)の吸込グリル3までの距離を、できる限り長くすることは当然に考慮されることであるから、引用発明において、吐出口11、31(通気口)を建物(家屋)を構成する外壁に隣接して形成すると共に、空気調和機の室内機1(空調装置)が前記外壁に対向する他の外壁に隣接して設けられるようにし、上記相違点6に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

2 効果について
そして、本願発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用発明、引用文献1の記載事項、周知技術1、周知技術2、周知事項1及び周知事項2から、当業者が予測し得る範囲のものである。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1の記載事項、周知技術1、周知技術2、周知事項1及び周知事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-06-24 
結審通知日 2021-06-25 
審決日 2021-07-08 
出願番号 特願2018-127800(P2018-127800)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十嵐 康弘瀧本 絢奈  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 槙原 進
林 茂樹
発明の名称 床下空調システム  
代理人 木村 高明  
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