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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1377369
審判番号 不服2020-7520  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-02 
確定日 2021-09-21 
事件の表示 特願2018-230601「ゲームシステム、ゲーム制御装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月30日出願公開、特開2019- 80928、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月27日に出願した特願2017-61954号(以下、「原出願」という。)の一部を平成30年12月10日に新たな特許出願としたものであって、同日に手続補正がされ、令和1年12月11日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年2月14日に意見書が提出され、同年2月21日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年6月2日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和3年1月14日付けで拒絶理由(以下、「第1の当審拒絶理由」という。)が通知され、同年3月12日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年6月15日付けで拒絶理由(以下、「第2の当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月8日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和1年9月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願の請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016-9473号公報
引用文献2:特開2014-203417号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 第1の当審拒絶理由について
(1)理由1(明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)理由2(新規性)本願の請求項1-3に係る発明は、本願の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(3)理由3(進歩性)本願の請求項1-3に係る発明は、本願の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016-9473号公報(原査定時の引用文献1)

2 第2の当審拒絶理由について
(1)理由1(明確性)本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)理由2(実施可能要件)本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
1 本願発明の内容
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和3年7月8日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであり、その内容は、以下のとおりである。

「【請求項1】
タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定するとともに、方向指示操作を受け付ける受付領域であって、前記基準位置を中心点とする受付領域を前記タッチパネルに設定する領域設定手段と、
前記タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定し、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に前記操作位置を移動させる操作位置設定手段と、
前記基準位置から前記操作位置設定手段により移動された後の前記操作位置への方向を指示方向として取得する指示方向取得手段と、
を含み、
前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる、
ゲームシステム。
【請求項2】
タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定するとともに、方向指示操作を受け付ける受付領域であって、前記基準位置を中心点とする受付領域を前記タッチパネルに設定する領域設定手段と、
前記タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定し、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に前記操作位置を移動させる操作位置設定手段と、
前記基準位置から前記操作位置設定手段により移動された後の前記操作位置への方向を指示方向として取得する指示方向取得手段と、
を含み、
前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる、
ゲーム制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のゲームシステム、又は、請求項2に記載のゲーム制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の原出願の出願前である平成28年1月18日に頒布された刊行物である特開2016-9473号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部に表示された疑似操作キーを、タッチパネルを介して操作することが可能な端末装置に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の端末装置においては、疑似操作キーの表示位置が一旦決められると、その操作の間、疑似操作キーの表示位置は固定されており、必ずしも使い勝手の良いものではなかった。例えば、端末装置上でゲームプログラムを実行していると、ユーザが継続的にその疑似的に表示された十字キー上に左手親指を接触させていたとしても、キャラクタの移動などのゲームの進行に集中するがために、いつの間にか十字キー上から指が移動してしまいキャラクタの移動が意図せず停止してしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明の様々な実施形態により、より使い勝手の良い疑似操作キーによる操作が可能な端末装置を提供する。」

ウ 「【0013】
<本発明の一実施形態の概要>
以下、本発明の一実施形態に係る端末装置として、本実施形態に係るプログラムを実行可能なタッチパネルを有する端末装置100(携帯電話、スマートフォン、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、PDA、無線コントローラー端末、デスクトップパソコン、ラップトップパソコン、ゲームセンター等に設置されるようなアーケードゲーム用端末など)を例にとって具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る端末装置100のユーザの使用状態を示す図である。図1を参照すると、ユーザは端末装置100を横長方向に用い、その両端を左手及び右手でそれぞれ把持する。そして、本実施形態に係るプログラムが制御部110によって実行されると、表示部113に、いわゆるジョイスティックを疑似的に模した疑似ジョイスティック131や、可動オブジェクト132が表示される。そして、タッチパネルを介し、例えば左手の親指で疑似ジョイスティック131を操作して、表示された可動オブジェクト132の移動を制御する。また、タッチパネルを介し、右手の親指で疑似操作ボタンA133及び/又は疑似操作ボタンB134を操作して、可動オブジェクト132が保持する武器の表示を制御する。なお、可動オブジェクト132は、人物や動物、モンスターなどのキャラクタに加えて、武器や岩など、プログラムの実行中に仮想空間上を動くあらゆるものを含みうる。
【0015】
なお、本実施形態において、指示体として指を利用し、当該指の接触をタッチパネルで検出する例を記載するが、指示体としては指に限定されない。採用するタッチパネルの方式に応じて、スタイラスペンなど、各方式に適した公知の指示体を用いることが可能である。
【0016】
また、本実施形態に係るプログラムは、一例としては、ゲームプログラムが挙げられるが、それに限定はされない。図1に記載するような疑似操作キーによる操作が必要とするプログラムであれば、いずれでもよい。このようなプログラムは、あらかじめ端末装置100のメモリ部114に記憶されているが、通信処理部111を介して外部のサーバー装置(図示しない)から受信することも可能である。また、当該プログラムを所定のカートリッジに記憶しておき、そのカートリッジとコネクタ124を介して端末装置100を接続し、制御部110は、そのカートリッジから当該プログラムを読みだすことも可能である。また、いわゆるネイティブアプリと呼ばれるプログラムのように、当該プログラムがサーバー装置に記憶され、端末装置100にダウンロードして実行することも可能である。」

エ 「【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る端末装置の表示部に表示される画面の例であって、ユーザが疑似ジョイスティック131を操作している状態を示す図である。端末装置100の表示部113には、疑似操作キーとして機能する疑似ジョイスティック131が、あらかじめ決められた定位置に表示されている。疑似ジョイスティック131は、基準位置C0を中心とする円で形成されている。また、上記表示部113には、ユーザが指を接触した表示部113上の位置を明示的に把握するために、ユーザの指の接触位置C1を中心とする円で形成された操作オブジェクト135を表示している。
【0019】
ここで、本実施形態においては、表示される疑似ジョイスティック131及び操作オブジェクト135は半透明に表示するようにし、例えば可動オブジェクト132に表示が重畳した場合であっても可動オブジェクト132が視認可能にする。
【0020】
図2においては、ユーザが疑似ジョイスティック131上の任意の位置に指で接触した後、任意の方向に指をドラッグさせて接触位置C1の位置まで移動させた状態を示している。そして、基準位置C0の座標値と接触位置C1の座標値とから基準位置C0から見た接触位置C1の方向A0と両位置間の距離D0を決定する。そして、決定された方向A0と距離D0に基づいて、可動オブジェクト132の表示位置の移動方向Ax及び移動距離Dxを決定する。その結果、可動オブジェクト132は、当初表示されていた位置(図中、破線で示した可動オブジェクト132の位置)から決定された方向Axに距離Dxだけ移動して表示される。
【0021】
なお、本実施形態では、上記のとおり疑似ジョイスティック131及び操作オブジェクト135は半透明に表示するようにしているが、必ずしも、疑似ジョイスティック131及び操作オブジェクト135は常に表示されている必要はない。特に図示はしないが、一例としてはタッチパネル116に指示体が接触した時に初めてそれらが表示されるようにしてもよい。また、疑似ジョイスティック131及び操作オブジェクト135に対応する領域をタッチパネルの対応する位置に仮想的に設け、表示部113にはこれらを明示的に表示しないようにすることも可能である。」

オ 「【0023】
図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る端末装置100は、制御部110、アンテナ112に接続された無線通信処理部111、表示部113、メモリ部114、タッチパネル116及びハードキー117を含む操作部115、スピーカー119及びマイクロフォン120に接続された音声処理部118、加速度センサ122やGPSセンサ123を含む検出部121、コネクタ124、カメラ126と接続された画像処理部125を含む。これらの各要素が制御ラインおよびデータラインを介して互いに電気的に接続されている。
【0024】
制御部110は、CPU(マイクロコンピュータ:マイコン)から構成され、タッチパネル116への接触により入力される座標情報に基づいて、メモリ部114に記憶された各画像情報の表示部113への表示を制御する。また、制御部110は、メモリ部114に記憶された本実施形態に係るプログラムを当該メモリ部114から読みだして、本実施形態に係るアプリケーションの進行を制御する。すなわち、制御部110は、メモリ部114に記憶された各種プログラムに基づいて、接続された他の構成要素を制御する。」

カ 「【0043】
メモリ部114には、基準位置C0の位置座標(X0,Y0)と、入手した接触位置C2の位置座標(X2,Y2)、又は接触位置C3の位置座標(X3,Y3)とで形成される線分A2及びA3のなす角度及び長さ、すなわち、基準位置C0から見た各接触位置C2及びC3の方向並びに基準位置C0と各接触位置C2及びC3間の距離と、可動オブジェクト132の移動方向と移動量のとの対応関係を示すテーブルが記憶されている。制御部110は、そのテーブルを参照して、決定された基準位置C0から見た各接触位置C2及びC3の方向並びに基準位置C0と各接触位置C2及びC3間の距離から、可動オブジェクト132の移動方向と移動量を決定し、それに応じた可動オブジェクトの表示制御を行う。
【0044】
なお、上記の例ではテーブルを用いたが、所定の関係式を記憶しておき、それに基づいて可動オブジェクトの移動量及び移動量を決定してもよいし、その決定方法は公知のいかなる方法も利用することができる。また、可動オブジェクトの移動量としては、一例としては、移動する際の速度であっても良いし、移動する距離であっても良く、適宜選択することが可能である。」

キ 「【0045】
図5は、疑似ジョイスティック131の表示制御の方法を説明する図である。まず、本実施形態に係る擬似ジョイスティック131には、疑似ジョイスティック131の表示領域に対応して、あらかじめ操作検出領域136がタッチパネル116上に定められている。この操作検出領域136は、この領域内に対して指示体による接触操作が行われた場合には、擬似ジョイスティック131への操作として制御部が認識するための領域である。
【0046】
図5(a)を参照すると、円で形成された擬似ジョイスティック131の表示領域と同一の領域を操作検出領域136として設定した場合が示されている。擬似ジョイスティック131の表示領域と操作検出領域136は完全に対応した同一の領域である。接触位置C1は、ユーザが指示体を操作して擬似ジョイスティック131上をドラッグ操作して指示体の移動してきた位置を示している。そしてユーザが指示体を操作してさらに擬似ジョイスティック131の中心である基準位置C0から遠ざかる方向にドラッグすると、指示体の接触位置C1は擬似ジョイスティック131の表示領域、すなわち操作検出領域136を越える。
【0047】
制御部110は、その時、擬似ジョイスティック131の表示位置を、越えた指示体の接触位置C1の位置に応じて変更するように制御する。すなわち、制御部110は、擬似ジョイスティック131の指示体の移動方向に追従して表示されるように制御する。一例としては、制御部110は、指示体の接触位置C1が擬似ジョイスティック131の表示領域を所定距離D1だけ越えたときに擬似ジョイスティック131の表示位置の移動を開始する。そして指示体の接触位置であるC1-1と疑似ジョイスティック131の表示領域との外縁との距離を、距離D1に維持するように、疑似ジョイスティック131の追従表示制御を行う。言い換えると、制御部110は、指示体によるドラッグ操作によって、その接触位置が疑似ジョイスティック131の表示領域を越えた時に、指示体の接触位置であって操作オブジェクト135を形成する円の中心である位置C1-1が疑似ジョイスティック131の表示領域、つまりは、疑似ジョイスティック131を形成する円の外側に位置するように表示を制御する。」

ク 「【0057】
<擬似ジョイスティックの制御フロー>
図7は、端末装置100の制御部110で本実施形態に係るプログラムを実行することで行われる処理の流れを示すフロー図である。メモリ部114に記憶された本実施形態に係るプログラムを制御部114が実行すると当該処理フローは開始される。そして、ユーザの指示体によって、タッチパネル116を介して、擬似ジョイスティック131に接触したことを検出する(S101)。次に、制御部110は、その接触位置が依然として擬似ジョイスティック131の表示領域内にあるか否かを判断する(S102)。なお、図5において説明したとおり、S102における判断の基準としては、擬似ジョイスティック131の表示領域に変えて、操作検出領域136を用いることも可能である。
【0058】
S102において、まだ擬似ジョイスティック内に指示体の接触位置があると判断された場合、その接触位置と擬似ジョイスティック内に設けられた基準位置とに基づいて、基準位置から見た接触位置の方向と接触位置と基準位置との間の距離を決定する(S103及びS104)。そして、制御部110は、その決定された方向及び距離に基づいて、メモリ部114内に記憶された参照テーブルから表示部113に表示された可動オブジェクトの移動方向及び移動量を決定し、その可動オブジェクトの移動表示を制御する(S105)。」

ケ 「【0069】
<画面遷移>
図8は、本実施形態に係るプログラムの実行による画面例を示す模式図である。図8(a)を参照すると、端末装置100の制御部110は、本実施形態に係るプログラムの実行を開始すると、表示部113の所定の定位置に擬似ジョイスティック131及び所定の可動オブジェクト132を表示する。なお、可動オブジェクト132は、人物や動物、モンスターなどのキャラクタに加えて、武器や岩など、プログラムの実行中に仮想空間上を動くあらゆるものを含みうる。
【0070】
さらに図8(a)を参照すると、表示部113には、ユーザが指示体を接触したタッチパネル116上の位置を明示的に把握するための操作オブジェクト135を表示している。この操作オブジェクト135は指示体によるタッチ位置が操作オブジェクト135の中心になるように指示体の移動と共に表示位置を移動する。
【0071】
なお、図8(a)においては、まだユーザが指示体を使ってタッチパネル116上の接触操作を行っていないので、疑似ジョイスティック131及び可動オブジェクト132は、ともにあらかじめ決められた定位置に表示されている。具体的には、疑似ジョイスティック131の中心C0と接触位置を示す操作オブジェクト135の中心とが重なるように表示されている。
【0072】
図8(b)は、図8(a)に示す表示がなされているときにユーザが指示体で擬似ジョイスティック131上をドラッグ操作しているときの画面例を示す模式図である。図8(b)を参照すると、指示体で接触位置C1の位置に接触することによって操作オブジェクト135も一緒に表示位置が移動されている。また、基準位置C0と接触位置C1に基づいて接触位置C1の方向と接触位置C1までの距離を決定し、その決定された方向と距離に基づいて決定された方向及び距離で可動オブジェクト132の表示位置が移動されている。なお、このとき指示体の接触位置は擬似オブジェクト131の表示領域を越えてはいないので、制御部110は擬似オブジェクト131の表示位置の追従表示制御は行わず、定位置に表示するように制御する。」

コ 「【0078】
1.擬似ジョイスティック131の表示位置
上記実施形態においては、上記実施形態に係るプログラムを実行すると、あらかじめ決められた定位置に擬似操作オブジェクト131を表示して、その擬似操作オブジェクト131上を指示体で接触することによって処理が開始する場合を説明した。しかし、それに代えて、任意の位置を指示体で接触することによって処理が開始するようにしてもよい。
【0079】
図9は、その具体例として、擬似ジョイスティック131の表示位置を示す他の実施形態に係る画面例を示す模式図である。図9を参照すると、プログラムの実行によって定位置(図9中、破線で示す。)に擬似ジョイスティック131が表示されている。その後、指示体によって、任意の位置が接触されると、その接触位置を基準位置C0として、その基準位置C0を中心とする表示位置に擬似ジョイスティック131を移動する。そして、その移動後の位置において擬似操作オブジェクト131を用いた可動オブジェクトの表示制御や、擬似操作オブジェクト131の追従表示制御を行う。その具体的な処理フローなどは上記実施形態において実施するものと同様である。
【0080】
このように、表示位置を設定することで、よりユーザの利便性を向上することができる。」

サ 「【図2】



(2)引用文献1の記載事項から認定できる事項
ア 符号「131」について、たとえば、上記(1)のウの【0014】、上記(1)のエの【0018】?【0020】には、「疑似ジョイスティック131」と記載され、たとえば、上記(1)のキの【0046】、上記(1)のクの【0057】には、「擬似ジョイスティック131」と記載されており、引用文献1全体を通して記載が統一されていないが、一般的に、「疑似」と「擬似」は同じ意味で用いられることから、符号「131」については、すべて「疑似ジョイスティック131」であるものとして認定する。

イ 上記(1)のウの【0015】には、「なお、本実施形態において、指示体として指を利用し、当該指の接触をタッチパネルで検出する。」と、指示体として指を利用し、当該指の接触をタッチパネルで検出することが、上記(1)のオの【0024】には「また、制御部110は、メモリ部114に記憶された本実施形態に係るプログラムを当該メモリ部114から読みだして、本実施形態に係るアプリケーションの進行を制御する。」と、「制御部110」がプログラムを読みだしてアプリケーションの進行を制御することが、それぞれ記載されているとともに、上記(1)のキの【0046】に、「図5(a)を参照すると、円で形成された擬似ジョイスティック131の表示領域と同一の領域を操作検出領域136として設定した場合が示されている。擬似ジョイスティック131の表示領域と操作検出領域136は完全に対応した同一の領域である。」と記載されていること、及び、上記(1)のコの【0079】には、「図9を参照すると、プログラムの実行によって定位置(図9中、破線で示す。)に擬似ジョイスティック131が表示されている。その後、指示体によって、任意の位置が接触されると、その接触位置を基準位置C0として、その基準位置C0を中心とする表示位置に擬似ジョイスティック131を移動する。そして、その移動後の位置において擬似操作オブジェクト131を用いた可動オブジェクトの表示制御や、擬似操作オブジェクト131の追従表示制御を行う。その具体的な処理フローなどは上記実施形態において実施するものと同様である。」と記載されていることからすれば、上記(1)のコの【0079】に記載の「任意の位置」とは、タッチパネル116上の任意の位置であることは明らかであるとともに、ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触したときの疑似ジョイスティック131の表示領域と同一の領域が設定される操作検出領域136の中心が基準位置C0であることも明らかであるから、引用文献1には、制御部110が、ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触したときに、接触した当該任意の位置を基準位置C0として設定し、その基準位置C0を中心とする表示位置に疑似ジョイスティック131を移動するとともに、当該基準位置C0を中心とした領域である操作検出領域136を設定することが記載されていると認められる。

ウ 上記(1)のサの【図2】に記載の「D0」、「Dx」は、上記(1)のエの【0020】の記載から、それぞれ「両位置(基準位置C0と接触位置C1)間の距離」、「可動オブジェクト132の表示位置の移動距離」であって、【図2】によって示される「D0」、「Dx」それぞれの長さより、距離Dxは距離D0よりも大きいことが看取できる。

エ 上記(1)のウの【0015】には、「なお、本実施形態において、指示体として指を利用し、当該指の接触をタッチパネルで検出する。」と、指示体として指を利用し、当該指の接触をタッチパネルで検出することが記載されていることから、上記(1)のキの【0045】及び上記(1)のケの【0070】に記載の「指示体」は、「指」であると認められる。

(3)引用発明1について
上記(1)及び(2)の事項から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「制御部110を含む端末装置100であって、
前記制御部110は、
ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触したときに、接触した当該任意の位置を基準位置C0として設定し、その基準位置C0を中心とする表示位置に疑似ジョイスティック131を移動するとともに、当該基準位置C0を中心とした領域であって、領域内に対して指による接触操作が行われた場合に、疑似ジョイスティック131への操作として制御部110が認識するための領域である操作検出領域136を設定し、
ユーザが指を接触したタッチパネル116上の位置を明示的に把握するための操作オブジェクト135を表示し、この操作オブジェクト135は指によるタッチ位置が操作オブジェクト135の中心になるように指の移動と共に表示位置を移動し、
ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触した後、任意の方向に指をドラッグさせて接触位置C1の位置まで移動させたとき、基準位置C0の座標値と接触位置C1の座標値とから基準位置C0から見た接触位置C1の方向A0と両位置間の距離D0を決定し、決定された方向A0と距離D0に基づいて、可動オブジェクト132の表示位置の移動方向Ax及び距離D0よりも大きい移動距離Dxを決定し、
当初表示されていた位置から決定された方向Axに距離Dxだけ、人物や動物、モンスターなどのキャラクタに加えて、武器や岩など、ゲームプログラムの実行中に仮想空間上を動く可動オブジェクト132を移動して表示する、
処理を実行する
携帯型ゲーム機、アーケードゲーム用端末などの端末装置100。」

2.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願の原出願の出願前である平成26年10月27日に頒布された刊行物である特開2014-203417号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び操作制御方法並びに操作制御プログラムに関し、特に、表示画面上で操作が可能な表示パネルを制御する制御装置及び表示画面上での操作を制御する操作制御方法並びに操作制御プログラムに関する。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、オブジェクト表示領域に対するタッチ操作により、オブジェクトに対する処理が指示可能な表示パネルを制御する制御装置であって、オブジェクトに対する処理を指示する指示位置を、タッチ操作のタッチ位置から離れた位置に設定する機能を有する制御部を備えることを特徴とする。」

ウ 「【発明の効果】
【0012】
本発明の制御装置及び操作制御方法並びに操作制御プログラムによれば、タッチ操作のタッチ位置から離れた位置に表示されているオブジェクトに対して、タッチ操作に対応する処理を指示可能にすることにより、操作用の画面を別途用意することなく、オブジェクト表示領域に対する操作のみで、任意の場所のオブジェクトを操作することができる。」

エ 「【0019】
図1に示すように、本実施例の操作制御システムは、オブジェクトの表示や画面上での操作が可能な表示パネル10と、表示パネル10を制御する制御装置20と、で構成され、表示パネル10と制御装置20とは、有線又は無線で接続されている。なお、図1では、表示パネル10と制御装置20とを別々の装置としているが、表示パネル10と制御装置20とは一体的な構成(表示パネル10の内部に制御装置20が格納された構成)としてもよい。」

オ 「【0025】
[制御装置]
制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶手段とで構成される制御部を含み、制御部は、表示パネル10及び制御装置20の動作を制御する。この制御部は、画像処理部21と処理判定部22とタッチ位置/操作検出部23とユーザ位置判定部24と状態決定部25と時間管理部26と座標変換部27などとして機能する。
【0026】
画像処理部21は、処理判定部22から受け取った指示に基づいて、オブジェクトの表示位置や表示形態を変更する。そして、位置や形態を変更した後のオブジェクトの表示画像を生成し、表示画像のデータを表示操作部11に送信する。
【0027】
処理判定部22は、座標変換部27がタッチ位置に基づいて設定した位置(指示位置と呼ぶ。)に、タッチ位置/操作検出部23が検出した操作を反映し、反映した結果(例えば、指示位置にオブジェクトを移動させる指示)を画像処理部21に通知する。
【0028】
タッチ位置/操作検出部23は、表示パネル10の表示操作部11から送信される信号に基づいて、画面上のタッチ位置を検出し、そのタッチ位置をユーザ位置判定部24、状態決定部25及び時間管理部26に通知する。また、タッチ位置やタッチ位置の変化から、操作を検出し、検出した操作を処理判定部22に通知する。例えば、タッチ位置が移動した場合は、指示位置(カーソル)やオブジェクトを移動させる操作であると判断する。」

カ 「【0033】
なお、上記画像処理部21、処理判定部22、タッチ位置/操作検出部23、ユーザ位置判定部24、状態決定部25、時間管理部26、座標変換部27は、制御装置20のCPU上で動作するソフトウェア(操作制御プログラム)として構成してもよいし、ハードウェアとして構成してもよい。」

キ 「【実施例2】
【0058】
次に、本発明の実施例2に係る制御装置及び操作制御方法並びに操作制御プログラムについて、図11乃至図13を参照して説明する。図11及び図12は、本実施例の制御装置の処理を示すフローチャート図であり、図13は、タッチ位置と指示位置との関係を説明する模式図である。
【0059】
前記した実施例1では、ユーザ位置に基づいて領域分けを行い、タッチ位置がどの領域に属するかに応じて指示位置をタッチ位置と同じ位置又は異なる位置に設定したが、画面上のどこにタッチしても同じ処理が行われるようにすることもできる。その場合、操作制御システムの基本構成は実施例1と同様であるが、制御装置20の状態決定部25は、タッチ位置/操作検出部23からの指示に従って、制御装置20の動作状態を第1状態又は第2状態に決定し、その結果を座標変換部27に通知する制御を行う。
【0060】
以下、上記構成の操作制御システム(制御装置20)におけるタッチ検出処理について、図11及び図12のフローチャート図を参照して説明する。なお、このタッチ検出処理は、制御装置20に含まれるCPUが、ROMに記憶された操作制御プログラムを実行することによって実現される。また、表示操作部11には、動作状態を選択するためのボタンなどが設けられており、操作者はそのボタンを操作して動作状態を第1状態又は第2状態のいずれかを設定しているものとする。
【0061】
まず、タッチ位置/操作検出部23は、表示パネル10の表示操作部11のタッチセンサから受信した信号に基づいて、ユーザが表示操作部11をタッチした位置(座標)を検出する(S300)。
【0062】
次に、タッチ位置/操作検出部23は、操作者が行ったボタン操作を検出して状態決定部25に通知し、状態決定部25は、ボタン操作に応じて、制御装置20の動作状態を第1状態又は第2状態に設定する(S310)。若しくは、タッチ位置/操作検出部23は、操作者が行った特定の操作(例えば、複数の指のタッチ操作)を検出したら、動作状態の切り換え指示であると認識して状態決定部25に通知し、状態決定部25は、制御装置20の動作状態を第1状態又は第2状態に設定する。第1状態に設定した場合は(S320のYes)、座標変換部27は、S300で検出したタッチ位置を指示位置に設定し(S360)、S370のステップに遷移する。
【0063】
一方、第2状態に設定した場合は(S320のNo)、座標変換部27は、タッチ位置に基づいて指示位置を算出し(S330)、算出した位置を指示位置として設定する(S340)。図12は、この指示位置算出処理の詳細を示しており、まず、座標変換部27は、今回のタッチが第1状態から第2状態に切り換えた後の初回のタッチであるかを判断する(S331)。本実施例の場合、領域が分かれておらず、変倍する際の基準位置がないため、初回のタッチの場合は、そのタッチ位置を指示位置算出のための基準位置として設定し(S332)、その基準位置からの距離に基づいて、実施例1と同様の手法を用いて指示位置を算出する(S333)。
【0064】
ここで、本実施例でも、第2状態では画面上のタッチ位置と実際の指示位置とが異なるため、あるオブジェクトを所定の場所に移動したい場合に、タッチ位置をどのように動かせばよいかが正確には分からず、オブジェクトが所定の場所からずれて配置されてしまう場合が考えられる。そこで、このような不都合を解消するために、状態決定部25は、連続操作オブジェクトの位置補正を行い(S350)、オブジェクトを連続して操作できるようにしてオブジェクトの位置を調整できるようにする。この位置補正処理は、実施例1の図7と同様であるため、説明は省略する。
【0065】
次に、処理判定部22は、指示位置に基づいて処理を判定し(S370)、判定した処理を実行する(S380)。そして、画像処理部21は、処理に応じた画像(オブジェクトの移動操作の場合は、オブジェクトの位置を移動させた画像)を生成して表示操作部11に送り、表示操作部11はその画像を表示して処理を反映させる(S390)。その後、処理判定部22は、タッチが継続しているかを判断し(S400)、タッチが継続している場合は、S300に戻って同様の処理を繰り返し、タッチが継続していなければ、一連の処理を終了する。」

ク 「【0066】
図13は、上記手順に基づく操作制御を模式的に示す図であり、説明の都合上、タッチ位置の移動軌跡と指示位置の移動軌跡とをずらして記載している。
【0067】
図13(a)に示すように、第1状態においてタッチ位置(図中の丸印)をx1(又はx2)だけ移動させた場合、図11のS360でタッチ位置がそのまま指示位置となるため、指示位置(図中の三角印)の移動距離y1(又はy2)は、タッチ位置と同じx1(又はx2)となる。
【0068】
一方、図13(b)に示すように、第2状態においてタッチ位置をx1(又はx2)だけ移動させた場合、図11のS330で算出された位置がS340で指示位置として設定されるため、指示位置の移動距離y1(又はy2)は、タッチ位置の移動距離を変倍した値(ここではx1を2倍した値又はx2を2倍した値)となる。
【0069】
従って、オブジェクトを通常通り操作したい場合は、第1状態に設定すればよく、また、手元にあるオブジェクトを離れた場所に移動させたい場合や手の届かない場所のオブジェクトを操作したい場合は、第2状態に設定すればよく、同じオブジェクト表示領域内の同様の操作で、オブジェクト表示領域内の任意の場所のオブジェクトを容易に操作することができる。」

ケ 「【図12】


コ 「【図13】



(2)引用文献2の記載事項から認定できる事項
ア 上記(1)のキの【0063】には、「一方、第2状態に設定した場合は(S320のNo)、座標変換部27は、タッチ位置に基づいて指示位置を算出し(S330)、算出した位置を指示位置として設定する(S340)。図12は、この指示位置算出処理の詳細を示しており、まず、座標変換部27は、今回のタッチが第1状態から第2状態に切り換えた後の初回のタッチであるかを判断する(S331)。本実施例の場合、領域が分かれておらず、変倍する際の基準位置がないため、初回のタッチの場合は、そのタッチ位置を指示位置算出のための基準位置として設定し(S332)、その基準位置からの距離に基づいて、実施例1と同様の手法を用いて指示位置を算出する(S333)。」と記載されているところ、「この指示位置算出処理」が、第2状態に設定した場合において「タッチ位置に基づいて指示位置を算出」する際の処理を指していることは明らかである。

イ 上記(1)のキの【0063】の「その基準位置からの距離に基づいて、実施例1と同様の手法を用いて指示位置を算出する(S333)」処理は、上記(1)のケの【図12】のフローチャートから、今回のタッチが第1状態から第2状態に切り換えた後の初回のタッチであるかの判断とは無関係に行われる処理であるから、当該初回のタッチであるか否かにかかわらず、その基準位置からの距離に基づいて指示位置を算出する処理を行うものであることは明らかである。

(3)引用発明2について
上記(1)及び(2)の事項から、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「表示パネル10の表示操作部11のタッチセンサから受信した信号に基づいて、ユーザが表示操作部11をタッチした位置(座標)を検出し、
操作者が行ったボタン操作に応じて、制御装置20の動作状態を第1状態又は第2状態に設定し、
第2状態に設定した場合は、タッチ位置に基づいて指示位置を算出し、算出した位置を指示位置として設定し、
指示位置に基づいて処理を判定し、判定した処理を実行し、
第2状態に設定した場合においてタッチ位置に基づいて指示位置を算出する際は、今回のタッチが第1状態から第2状態に切り換えた後の初回のタッチであるかを判断し、初回のタッチの場合は、そのタッチ位置を指示位置算出のための基準位置として設定し、当該初回のタッチであるか否かにかかわらず、その基準位置からの距離に基づいて指示位置を算出する処理を行い、
第2状態においてタッチ位置をx1(又はx2)だけ移動させた場合、指示位置の移動距離y1(又はy2)は、タッチ位置の移動距離を変倍した値となるよう制御する、
制御装置20。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明1の「タッチパネル116」、「基準位置C0」は、それぞれ本願発明1の「タッチパネル」、「基準位置」に相当する。

イ 引用発明1の「ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触したときに、接触した当該任意の位置を基準位置C0として設定する」は、「任意の位置」がタッチパネルにタッチ(接触)した時点のタッチ位置であることは明らかであるから、本願発明1の「タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定する」に相当する。

ウ 引用発明1の「ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触した後、任意の方向に指をドラッグさせて接触位置C1の位置まで移動させ」る操作は、「ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触した」時点で、基準位置C0を中心とする表示位置に疑似ジョイスティック131を移動し、その後、任意の方向に指をドラッグさせて接触位置C1の位置まで移動させることで、可動オブジェクト132を方向Axに距離Dxだけ移動させるものであることから、疑似ジョイスティック131への操作であることは明らかであり、かつ、この操作が、可動オブジェクト132に対する方向指示操作を含んでいることも明らかである。
また、引用発明1の「操作検出領域136」は、基準位置C0を中心とした領域でもあることから、引用発明1の「操作検出領域136」は、本願発明1の「方向指示操作を受け付ける受付領域であって、前記基準位置を中心点とする受付領域」に相当する。

エ 上記イ及びウを踏まえれば、引用文献1の「ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触したときに、接触した当該任意の位置を基準位置C0として設定し、その基準位置C0を中心とする表示位置に疑似ジョイスティック131を移動するとともに、当該基準位置C0を中心とした領域であって、領域内に対して指による接触操作が行われた場合に、疑似ジョイスティック131への操作として制御部110が認識するための領域である操作検出領域136を設定」する「制御部110」は、本願発明1の「タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定するとともに、方向指示操作を受け付ける受付領域であって、前記基準位置を中心点とする受付領域を前記タッチパネルに設定する領域設定手段」に相当する。

オ 引用発明1の「ユーザが指を接触したタッチパネル116上の位置を明示的に把握するための操作オブジェクト135を表示し、この操作オブジェクト135は指によるタッチ位置が操作オブジェクト135の中心になるように指の移動と共に表示位置を移動し、」は、ユーザがタッチパネル116上の任意の位置に指で接触したときに、接触した時点の当該任意の位置に操作オブジェクト135が表示されるよう制御部110によって設定されることは明らかであるとともに、指の移動と共に操作オブジェクト135の表示位置を移動する以上、指の移動方向、すなわち、接触(タッチ)位置の移動方向を取得して、取得した移動方向と同じ方向に操作オブジェクト135を移動させるものであることも明らかであるから、引用発明1の「操作オブジェクト135」は、本願発明1の「操作位置」に相当するとともに、引用発明1の「ユーザが指を接触したタッチパネル116上の位置を明示的に把握するための操作オブジェクト135を表示し、この操作オブジェクト135は指によるタッチ位置が操作オブジェクト135の中心になるように指の移動と共に表示位置を移動」する「制御部110」は、本願発明1の「前記基準位置から前記操作位置設定手段により移動された後の前記操作位置への方向を指示方向として取得する指示方向取得手段」及び「前記タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定し、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向」「に前記操作位置を移動させる操作位置設定手段」に相当する。
また、上記の相当関係を踏まえれば、本願発明1の「前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる」と、引用発明1の「ユーザが指を接触したタッチパネル116上の位置を明示的に把握するための操作オブジェクト135を表示し、この操作オブジェクト135は指によるタッチ位置が操作オブジェクト135の中心になるように指の移動と共に表示位置を移動し、」とは、「前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向」に「移動させる」点で一致する。

カ 引用発明1の「携帯型ゲーム機、アーケードゲーム用端末などの端末装置100」は、ゲームプログラムの実行中に仮想空間上を動く可動オブジェクト132を移動して表示する制御を行っていることから、本願発明1の「ゲームシステム」に相当する。

キ 上記アないしカからすれば、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定するとともに、方向指示操作を受け付ける受付領域であって、前記基準位置を中心点とする受付領域を前記タッチパネルに設定する領域設定手段と、
前記タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定し、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向に前記操作位置を移動させる操作位置設定手段と、
前記基準位置から前記操作位置設定手段により移動された後の前記操作位置への方向を指示方向として取得する指示方向取得手段と、
を含み、
前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向に移動させる、
ゲームシステム。」

[相違点]
本願発明1は、操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、「前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離」移動させるのに対し、引用発明1は、制御部110が、指によるタッチ位置が操作オブジェクト135の中心になるように指の移動と共に操作オブジェクト135の表示位置を移動させるものであって、指の移動距離よりも長い距離、操作オブジェクト135の表示位置を移動させるものではない点

ク 上記キで示したように、本願発明1と引用発明1との間には上記相違点が存在するのであるから、本願発明1は、引用文献1に記載されたものではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(2)相違点についての判断
ア 引用発明1に基づく上記相違点に係る本願発明1の構成についての容易想到性の判断
上記相違点に係る本願発明1の構成は、操作位置を、タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、「前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離」移動させるものであって、タッチ位置を移動させたときの操作位置が、タッチ位置とは異なる位置となることは明らかである。
そして、引用発明1の「操作オブジェクト135」は、「ユーザが指を接触したタッチパネル116上の位置を明示的に把握する」ためのものであって、ユーザが指を接触したタッチパネル116上の位置から離れた位置に「操作オブジェクト135」を移動させることが想定されていないことは明らかであるから、引用発明1において、指の移動距離よりも長い距離、「操作オブジェクト135」の表示位置を移動させることによって、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることが、当業者が適宜なし得る程度の事項であるということはできない。
また、引用文献1において、指の移動距離よりも長い距離、「操作オブジェクト135」の表示位置を移動させることを示唆する記載は見いだせない。
さらに、本願発明の課題に照らせば、上記相違点に係る本願発明1の構成が当業者の設計的事項であるということもできない。
したがって、本願発明1は、当業者が、引用発明1から容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 引用発明1及び引用発明2に基づく上記相違点に係る本願発明1の構成についての容易想到性の判断
(ア)上記「第5 引用文献、引用発明等」の2.に記載のとおり、引用発明2は、制御装置が、第1状態から第2状態に切り換えた後の初回のタッチである場合に、タッチ位置を指示位置算出のための基準位置として設定し、その基準位置からの距離に基づいて指示位置を算出するとともに、第2状態においてタッチ位置をx1(又はx2)だけ移動させた場合、指示位置の移動距離y1(又はy2)は、タッチ位置の移動距離を変倍した値となるよう制御するものであるところ、第1状態から第2状態に切り換えた後の初回のタッチが行われた時点では、タッチ位置の移動距離が0であることから、タッチ位置を基準位置として設定しているだけでなく、指示位置も基準位置と同じ位置に設定していることは明らかである。

(イ)また、引用発明2は、第2状態において「タッチ位置をx1(又はx2)だけ移動させた場合、指示位置の移動距離y1(又はy2)は、タッチ位置の移動距離を変倍した値となるよう制御する」ものであって、タッチ位置の移動方向と、指示位置の移動方向が同じ方向であり、かつ、タッチ位置の移動による指示位置の移動距離が、タッチ位置の移動距離よりも長い距離になることも明らかである。

(ウ)さらに、引用発明2の「表示パネル」は、「表示パネル10の表示操作部11のタッチセンサ」との記載から、タッチパネルであることは明らかであるから、本願発明1の「タッチパネル」に相当する。

(エ)してみれば、引用発明2の「タッチ位置」、「指示位置」、「基準位置」は、それぞれ本願発明1の「タッチ位置」、「操作位置」「基準位置」に相当するとともに、引用発明2の制御装置は、本願発明1の「前記タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定し、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に前記操作位置を移動させる操作位置設定手段」及び「前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向」「に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる」に相当する構成を備えているといえるから、引用発明2には、上記相違点に係る本願発明1の構成が記載されているといえる。

(オ)引用発明1と引用発明2は、ともに、タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置及び所定のオブジェクトの表示位置として設定し、タッチ位置の移動に伴い、タッチ位置の移動方向と同じ方向に前記所定のオブジェクトの表示位置を移動させる制御を行うとともに、前記所定のオブジェクトの表示位置に基づく処理を実行する点で共通の作用を奏するものである。

(カ)しかしながら、引用発明1の「操作オブジェクト135」は、「ユーザが指を接触したタッチパネル116上の位置を明示的に把握するための」ものであるところ、引用発明1の「操作オブジェクト135」の移動を、引用発明2のように、タッチ位置の移動距離を変倍した値となるよう制御する構成を適用した場合、操作オブジェクト135はユーザの指の接触位置C1から離れるようになることは自明であり、このような操作オブジェクト135が、ユーザが指を接触した表示部113上の位置を明示的に把握するという操作オブジェクト135の本来の目的に反することは明らかである。
また、本願の原出願時におけるジョイスティックないし疑似ジョイスティックに関する技術常識を考慮すれば、引用発明1の「操作オブジェクト135」は、疑似ジョイスティックにおけるスティック部分の先端を示すオブジェクトであるといえる一方で、引用発明2の「指示位置」は、引用文献2の【0028】に「指示位置(カーソル)」と記載されていることを踏まえれば、画面上に表示されているオブジェクトを選択するためのポインタを示すオブジェクトであるといえることから、タッチ位置の移動に伴い、タッチ位置の移動方向と同じ方向に移動する両者の上記オブジェクトは、その性質を異にするものといえること、及び、引用文献1には、可動オブジェクト132を選択するためのポインタを表示することを示唆する記載もないことからすれば、引用発明1における、タッチ位置の移動と共に移動する「操作オブジェクト135」を、引用発明2のように、タッチ位置の移動距離を変倍した値となるよう制御する構成を適用することには阻害要因があると言わざるを得ない。

(キ)また、上記相違点に係る本願発明1の構成が、本願の原出願の出願前に当業者に知られていたことを示す証拠も見当たらない。

(ク)よって、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者が、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。

(3)小括
したがって、本願発明1は、当業者が、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の「ゲームシステム」を「ゲーム制御装置」に変更したものであって、その他の発明特定事項は本願発明1と同一である。
したがって、本願発明2は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項である、操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、「前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離」移動させる、という構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2は、引用文献1に記載されたものではないため、特許法第29条第1項第3号に該当せず、当業者が、引用発明1、若しくは、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3は、本願発明1のゲームシステム、又は、本願発明2のゲーム制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムの発明であり、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項である、操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、「前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離」移動させる、という構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明3は、引用文献1に記載されたものではないため、特許法第29条第1項第3号に該当せず、当業者が、引用発明1、若しくは、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 当審拒絶理由について
1 第1の当審拒絶理由について
(1)特許法第36条第6項第2号について
ア 第1の当審拒絶理由の概要
当審では、平成30年12月10日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明が、以下の理由で明確でない旨の拒絶の理由を通知している。

(ア)平成30年12月10日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「第1補正時請求項1」という。他の請求項についても同様。)には、「前記タッチパネルのタッチ位置に応じた操作位置を設定する手段であって、」と記載されているが、「応じた」との記載だけでは、「タッチ位置」が、「操作位置」を「設定する」ために、具体的にどのように用いられるのかを明確に把握することができない。第1補正時請求項2及び3についても同様である。

(イ)第1補正時請求項1には、「前記タッチ位置の移動に応じて、前記操作位置を移動させる」と記載されているが、「応じて」との記載だけでは、「タッチ位置の移動」が、「操作位置」を「移動させる」ために、具体的にどのように用いられるのかを明確に把握することができない。第1補正時請求項2及び3についても同様である。

(ウ)第1補正時請求項1には、「前記受付領域に対応する基準位置」と記載されているが、当該記載における「対応する」の意味するところが不明確であり、「受付領域」と「基準位置」との技術的関係が不明確である。第1補正時請求項2及び3についても同様である。

(エ)第1補正時請求項1には、「前記受付領域に対応する基準位置から前記操作位置への方向」と記載されているが、「前記操作位置」が、タッチ位置の移動に応じて移動する前の「操作位置」であることを特定しているのか、タッチ位置の移動に応じて移動した後の「操作位置」であることを特定しているのかが不明である。第1補正時請求項2及び3についても同様である。

(オ)第1補正時請求項1には、「前記受付領域に対応する基準位置から前記操作位置への方向に基づいて指示方向を取得する指示方向取得手段」と記載されているが、「基づいて」との記載だけでは、「基準位置」から「操作位置」への「方向」が、「指示方向」を「取得する」ために、具体的にどのように用いられるのかを明確に把握することができない。第1補正時請求項2及び3についても同様である。

(カ)第1補正時請求項1には、「前記指示方向に基づいてゲーム処理を実行するゲーム処理実行手段」と記載されているが、「基づいて」との記載だけでは、「指示方向」が、「ゲーム処理を実行する」ために、具体的にどのように用いられるのかを明確に把握することができない。 第1補正時請求項3についても同様である。

(キ)第1補正時請求項1には、「前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置の移動に応じて、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向に対応する方向に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる、」と記載されているが、「応じて」との記載だけでは、「タッチ位置の移動」が、「操作位置」を「移動させる」ために、具体的にどのように用いられるのかを明確に把握することができない。第1補正時請求項2及び3についても同様である。

(ク)第1補正時請求項1には、「前記タッチ位置の移動方向に対応する方向」と記載されているが、当該記載における「対応する」の意味するところが不明確であり、「タッチ位置の移動方向」と、対応する「方向」との技術的関係が不明確である。第1補正時請求項2及び3についても同様である。

イ 第1の当審拒絶理由を解消しているか否かについて
(ア)上記ア(ア)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「前記タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定」するものであって、「タッチパネルにタッチした時点」の「タッチ位置」を「操作位置」として「設定する」ことが明確に特定され、「タッチ位置」が、「操作位置」を「設定する」ために、具体的にどのように用いられるのかが明確になったことから、上記ア(ア)の理由は解消した。

(イ)上記ア(イ)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「前記タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定し、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に前記操作位置を移動させる」ものであって、タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に操作位置を移動させることが明確に特定され、「タッチ位置の移動」が、「操作位置」を「移動させる」ために、具体的にどのように用いられるのかが明確になったことから、上記ア(イ)の理由は解消した。

(ウ)上記ア(ウ)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定するとともに、方向指示操作を受け付ける受付領域であって、前記基準位置を中心点とする受付領域を前記タッチパネルに設定する」ものであることが明確に特定され、「基準位置」と「受付領域」の技術的関係が明確になったことから、上記ア(ウ)の理由は解消した。

(エ)上記ア(エ)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「前記基準位置から前記操作位置設定手段により移動された後の前記操作位置への方向を指示方向として取得する」ものであることが明確に特定され、タッチ位置の移動に応じて移動した後の「操作位置」であることを特定していることが明確になったことから、上記ア(エ)の理由は解消した。

(オ)上記ア(オ)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「前記基準位置から前記操作位置設定手段により移動された後の前記操作位置への方向を指示方向として取得する」ものであることが明確に特定され、「基準位置」から「操作位置」への「方向」が、「指示方向」であることが明確になったことから、上記ア(オ)の理由は解消した。

(カ)上記ア(カ)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1及び3が、「ゲーム処理実行手段」を含まないものとなったことから、上記ア(カ)の理由は解消した。

(キ)上記ア(キ)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる」ものであることが明確に特定され、タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に操作位置を移動させることが明確に特定され、「タッチ位置の移動」が、「操作位置」を「移動させる」ために、具体的にどのように用いられるのかが明確になったことから、上記ア(キ)の理由は解消した。

(ク)上記ア(ク)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる」ものであることが明確に特定され、「タッチ位置の移動方向」と「同じ方向又は略同じ方向」に操作位置を移動させることが明確になったことから、上記ア(ク)の理由は解消した。

(2)特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項について
ア 第1の当審拒絶理由の概要
当審では、第1補正時請求項1ないし3に係る発明が、引用文献1(特開2016-9473号公報)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、少なくとも上記引用発明からその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知している。

イ 第1の当審拒絶理由を解消しているか否かについて
上記アの拒絶の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が特定された。
そして、本願発明1ないし3が、引用文献1に記載されたものでないため、特許法第29条第1項第3号に該当しないことは、上記「第6 対比・判断」の「1(1)ク」「2」「3」で示したとおりである。
また、本願発明1ないし3が、当業者が、引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものでないことも、上記「第6 対比・判断」の「1(2)ア」「2」「3」で示したとおりである。
したがって、上記アの理由は解消した。

(3)小括
上記(1)及び(2)より、「第3 当審拒絶理由の概要」の第1の当審拒絶理由は解消した。

2 第2の当審拒絶理由について
(1)特許法第36条第6項第2号について
ア 第2の当審拒絶理由の概要
当審では、令和3年3月12日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明が、以下の理由で明確でない旨の拒絶の理由を通知している。

(ア)令和3年3月12日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「第2補正時請求項1」という。他の請求項についても同様。)には、「方向指示操作を受け付ける受付領域をタッチパネルに設定する領域設定手段」及び「前記受付領域の中心点に設定される基準位置から前記操作位置設定手段により移動された後の前記操作位置への方向を指示方向として取得する指示方向取得手段」と記載されているが、「領域設定手段」が、いつ、どのように、何に基づいて、どのような特徴を有するものとして設定されるのかは何ら特定されていないことから、「受付領域の中心点」がいつどのようにして具体的に特定されるのかが不明確である。第2補正時請求項2及び3についても同様である。

(イ)第2補正時請求項1には、「前記タッチパネルのタッチ位置を操作位置として設定し、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に前記操作位置を移動させる操作位置設定手段」と、タッチ位置と操作位置が同一の位置であることを特定する記載がある一方で、「前記操作位置設定手段は、前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる」と、タッチ位置と操作位置が同一の位置とはならないことを特定する記載があることから、技術的に矛盾する構成が特定されているといえるため、「操作位置設定手段」が具体的にいかなる操作位置ないしタッチ位置の設定ないし移動を行うものであるのかが不明確である。第2補正時請求項2及び3についても同様である。

イ 第2の当審拒絶理由を解消しているか否かについて
(ア)上記ア(ア)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定するとともに、方向指示操作を受け付ける受付領域であって、前記基準位置を中心点とする受付領域を前記タッチパネルに設定する領域設定手段」を含むものであって、「領域設定手段」が、「タッチパネルにタッチした時点」の「タッチ位置」を「基準位置」として設定するとともに、「前記基準位置を中心点とする受付領域」を設定することが明確に特定され、「受付領域」の「中心点」がいつどのようにして具体的に特定されるのかが明確になったことから、上記ア(ア)の理由は解消した。

(イ)上記ア(イ)の理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「前記タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定し、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に前記操作位置を移動させる操作位置設定手段」を含むものであって、タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を操作位置として設定すること、及び、「前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に前記操作位置を移動させる」とともに、「前記タッチ位置が移動した場合に、前記操作位置を、前記タッチ位置の移動方向と同じ方向又は略同じ方向に、前記タッチ位置の移動距離よりも長い距離移動させる」ことが明確に特定され、「操作位置設定手段」が行う操作位置ないしタッチ位置の設定ないし移動の内容が明確になったことから、上記ア(イ)の理由は解消した。

(2)特許法第36条第4項第1号について
ア 第2の当審拒絶理由の概要
当審では、本願の発明の詳細な説明は、以下の[理由]により、当業者が第2補正時請求項1ないし3に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとの拒絶の理由を通知している。

[理由]
請求項1-3に係る発明は、「領域設定手段」について、
(A)タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定するとともに、基準位置を中心点とする、方向指示操作を受け付ける受付領域をタッチパネルに設定するものである
(B)タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置とは無関係に、予め定められた位置に、中心点を有する方向指示操作を受け付ける受付領域をタッチパネルに設定するものである
という両者の概念を含むものであるところ、上記(B)については、タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置と、受付領域の中心点とは無関係であるから、タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置と、受付領域の中心点との「ずれ」が生じる可能性があるところ、このときの処理は、発明の詳細な説明の【0159】?【0164】、図16Cの記載を参酌すれば、タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置が、受付領域の中心点とずれた場合には、請求項1に係る発明のように「前記タッチパネルのタッチ位置を操作位置として設定」することはできず、タッチ位置とは異なる位置に操作位置が設定されるものと認められる。

イ 第2の当審拒絶理由を解消しているか否かについて
(ア)上記アの理由に対して、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって、本願発明1ないし3が、「タッチパネルにタッチした時点のタッチ位置を基準位置として設定するとともに、方向指示操作を受け付ける受付領域であって、前記基準位置を中心点とする受付領域を前記タッチパネルに設定する領域設定手段」を含むものであることが特定されることにより、本願発明1ないし3の「領域設定手段」が、実施可能要件違反であると指摘していない上記アの(A)の概念のものであることが明確になったため、上記アの理由は解消した。

(3)小括
上記(1)及び(2)より、「第3 当審拒絶理由の概要」の第2の当審拒絶理由は解消した。

3 まとめ
以上より、「第3 当審拒絶理由の概要」の全ての当審拒絶理由は解消した。

第8 原査定についての判断
1 平成30年12月10日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとされた点について
(1)上記「第2 原査定の概要」の1.で示した、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1及び2は、それぞれ、上記「第5 引用文献、引用発明等」で示した引用文献1及び2と同一である。

(2)上記(1)、並びに、「第5 引用文献、引用発明等」、及び、上記「第6 対比・判断」での検討を踏まえれば、令和3年7月8日に提出された手続補正書でした補正によって特定された本願発明1ないし3は、当業者が、原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、「第2 原査定の概要」の拒絶理由は解消した。

(3)したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、引用文献1に記載されたものではなく、当業者が、引用文献1、若しくは、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。また、本願の請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているとともに、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-08-31 
出願番号 特願2018-230601(P2018-230601)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 536- WY (A63F)
P 1 8・ 537- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 牧 隆志  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 古川 直樹
吉村 尚
発明の名称 ゲームシステム、ゲーム制御装置、及びプログラム  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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