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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01F |
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管理番号 | 1377394 |
審判番号 | 不服2021-636 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-01-15 |
確定日 | 2021-09-14 |
事件の表示 | 特願2016-160601「コイル部品及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開、特開2017- 98528、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年8月18日(パリ条約に基づく優先権主張 2015年11月20日、大韓民国)の出願であって、令和2年6月4日付けで拒絶理由が通知され、令和2年7月20日に手続補正がなされ、令和2年9月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、令和3年1月15日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和2年9月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 「●理由1(特許法第29条第2項)について ・請求項 1-3,11 ・引用文献等 1-3 ・請求項 4-6 ・引用文献等 1-3 ・請求項 7-10 ・引用文献等 1-3 <引用文献等一覧> 1.特表2013-535107号公報 2.特開2013-211526号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2014-063981号公報(周知技術を示す文献)」 第3 本件補正について 審判請求時の補正によって、請求項1に「前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面」という事項を追加する補正、及び請求項8に「前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面」という事項を追加する補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するための事項である「金属間化合物(IMC)」の形成箇所を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、追加された事項は、出願当初の図9、図10に記載されているから、出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし11に係る発明は、独立特許要件を満たすものである(なお、請求項12ないし14について、補正はなされていない。)。 よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 第4 本願発明 本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和3年1月15日の手続補正(以下、「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の1ないし14に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 平面スパイラル状のパターンを有する複数の導体層と、 前記複数の導体層間に配置された一つ以上の絶縁層と、 前記絶縁層を貫通し、前記複数の導体層を連結し、平面スパイラル状のパターンを有し、前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面に形成された金属間化合物(IMC)を含む一つ以上のビア層とを含む本体、及び 前記本体上に配置された電極を含むコイル部品。 【請求項2】 前記複数の導体層及び前記ビア層が連結され、同一方向に回転する一つのコイルを構成する、請求項1に記載のコイル部品。 【請求項3】 前記コイルは、アスペクト比が2以上である、請求項2に記載のコイル部品。 【請求項4】 前記コイルは、前記電極と連結された第1端子及び第2端子を有し、 前記第1端子は、前記コイルの側部に配置され、 前記第2端子は、前記コイルの上部または下部に配置された、請求項2または3に記載のコイル部品。 【請求項5】 前記本体は、前記複数の導体層を取り囲む複数の磁性層をさらに含む、請求項1?4の何れか1項に記載のコイル部品。 【請求項6】 前記絶縁層及び磁性層は、絶縁樹脂及び磁性フィラーを含み、 前記絶縁層及び前記磁性層は、全て一体化された、請求項5に記載のコイル部品。 【請求項7】 各導体層の厚さは、前記絶縁層の厚さより厚い、請求項1?6の何れか1項に記載のコイル部品。 【請求項8】 平面スパイラル状のパターンを有する複数の導体層と、 前記複数の導体層の間に配置され、前記複数の導体層を連結し、平面スパイラル状のパターンを有し、前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面に形成された金属間化合物(IMC)を含む一つ以上のビア層と、 前記複数の導体層及び前記ビア層を埋め込む電気絶縁性磁性体とを含む本体、及び 前記本体上に配置された電極を含むコイル部品。 【請求項9】 前記複数の導体層及び前記ビア層が連結され、同一方向に回転する一つのコイルを構成する、請求項8に記載のコイル部品。 【請求項10】 前記コイルは、アスペクト比が2以上である、請求項9に記載のコイル部品。 【請求項11】 前記複数の導体層のうちの一の導体層と他の導体層とは、前記複数の導体層が積層される方向において、1つの前記ビア層により接続され、 前記複数の導体層が積層される方向における、1つの前記ビア層の一端において、前記金属間化合物(IMC)と前記一の導体層とが接し、 前記複数の導体層が積層される方向における、1つの前記ビア層の他端において、前記金属間化合物(IMC)と前記他の導体層とが接する、 請求項1?10の何れか1項に記載のコイル部品。 【請求項12】 支持部材及び前記支持部材の少なくとも一面上に金属層が配置された一つ以上のコア基板を準備する段階と、 前記コア基板の金属層上に平面スパイラル状のパターンを有する導体層を形成する段階と、 前記支持部材から前記導体層を分離して複数の導体層を得る段階と、 前記導体層に残存する金属層を除去する段階と、 前記導体層のいずれか一つ以上に絶縁層を形成する段階と、 前記絶縁層に平面スパイラル状のパターンを有するビア層を形成する段階と、 前記段階を通じて形成された複数の導体層、一つ以上の絶縁層、及び一つ以上のビア層を含む本体前駆体を積層して本体を形成する段階と、 前記本体上に電極を形成する段階とを含むコイル部品の製造方法。 【請求項13】 前記絶縁層を積層する段階前に前記導体層を取り囲む磁性層を形成する段階をさらに含む、請求項12に記載のコイル部品の製造方法。 【請求項14】 前記金属層は、前記支持部材の少なくとも一面上に配置された第1金属層及び前記第1 金属層上に配置された第2金属層を含み、 前記導体層を分離する段階は、前記第1金属層及び前記第2金属層を分離させることである、請求項12に記載のコイル部品の製造方法。」 第5 引用発明、引用文献等 1 引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、誘導性構造に関し、更に特定して言えば、取り付けられたコア構造を備えた誘導性構造、及び取り付けられたコア構造を備えた誘導性構造を形成する方法に関連する。 【背景技術】 【0002】 インダクタは、電磁エネルギーをストアする周知の構造であり、変圧器は、電気エネル ギーを一次コイルから二次コイルへ誘導的に伝達する周知の構造である。インダクタ及び変圧器は、通常、インダクタンス、及びストアされた又は一次コイルから二次コイルへ伝達されたエネルギーの量を増加させるため、コアとして知られる、磁気材料を用いる。 【0003】 半導体インダクタ及び変圧器は通常、バックエンドシリコン処理の間に形成される。半導体インダクタ及び変圧器を形成するための従来技術には多くの手法があるが、半導体インダクタ及び変圧器を形成する更なる方法が必要とされている。」 「【発明を実施するための形態】 【0009】 図1A?図1Bから図20A?図20Bは、本発明に従ってインダクタ100を形成する方法の一例を図示する一連の図を示す。図1A?図20Aは一連の平面図であり、図1B?図20Bは、それぞれ図1A?図20Aにおける線1B?20Bによる一連の断面図 である。これ以降により詳細に説明するように、コア構造が、半導体構造の上にある厚いコイル構造と統合されて、改善されたインダクタンスを提供する。 【0010】 図1A?図1Bに図示するように、インダクタ100を形成する方法は、従来のように形成された半導体ウエハ110を利用する。ウエハ110は、シリコンなどの導電性材料、又は石英又はG10-FR4などの非導電性材料で実装され得る。図1A?図1Bに更に示すように、この方法は、パターニングされたフォトレジスト層112をウエハ110の上面上に形成することから始まる。 【0011】 パターニングされたフォトレジスト層112は従来の方式で形成され、この方式は、フォトレジストの層を堆積すること、マスクとして知られるパターニングされた黒/透明ガラスプレートを介して光を投射して、光に曝されたフォトレジスト領域を軟化させるフォトレジストの層上に、パターニングされた画像を形成すること、及び軟化されたフォトレジスト領域を取り除くことを含む。」 【0012】 図2A?図2Bに図示するように、パターニングされたフォトレジスト層112が形成された後、ウエハ110の露出された領域が従来の方式でエッチングされて、ウエハ110内にキャビティ114を形成する。キャビティ114の形成に続いて、パターニングされたフォトレジスト層112が従来の方式で取り除かれる。ウエハ110が導電性である場合、キャビティ114の底面が非導電性であるようにキャビティ114をライニングする(line)よう、酸化物又はプラズマ窒化物などのコンフォーマル非導電性材料を、任意でウエハ110上に形成することができる。」 「【0013】 次に、図3A?図3Bに示すように、底部コアセクション120が、キャビティ114内に配置され、キャビティ114の底面に取り付けられる。底部コアセクション120は、従来のピックアンドプレースマシンを用いてキャビティ114内に配置され得、例えば、ダイ取り付けフィルムなど、従来の導電性又は非導電性の接着材を用いて、従来の方式で取り付けられる。ダイ取り付けフィルムは、例えば、25μmの厚みであり得る。また、個別のプロセスで従来の方式で形成される底部コアセクション120は、例えば、(Co)NiFeの電気めっきされた合金又はNiZn及びMnZnなどのソフトフェライトで実装され得る。」 【0014】 図4A?図4Bに図示するように、底部コアセクション120がキャビティ114の底面に取り付けられた後、非導電性層122が底部コアセクション120及びウエハ110上に堆積される。図示するように、非導電性層122は、キャビティ114の残りも充填する。非導電性層122が堆積された後、底部コアセクション120の上面を露出させるため、多数の開口124が非導電性層122内に形成される。 【0015】 本例では、非導電性層122は、実質的に自己平坦化する、SU-8などの感光性(photoimageable)エポキシ又はポリマーの層で形成される。感光性エポキシ又は重合体が堆積されると、マスクを介して光を投射して、光に曝された非導電性層122の領域を軟化させる非導電性層122上に、パターニングされた画像を形成し、その後、非導電性層122の軟化された領域を取り除くことによって、開口124が形成される。」 「【0016】 開口124の形成に続いて、図5A?図5Bに示すように、コイル構造126が、底部コアセクション120の一部の上にあるように、非導電性層122上に形成される。図6A?図6Bに示すように、コイル構造126は、まず、開口124をライニングしかつ底部コアセクション120の上面に接するように、非導電性層122上にシード層130を形成することにより形成される。 【0017】 例えば、シード層130は、300Åのチタン、3000Åの銅、及び300Åのチタンを堆積することによって形成され得る。シード層130が形成されると、シード層130の上面上にめっきモールド132が形成される。めっきモールド132は開口を有し、この開口は、シード層130の一部を露出させ、形成されるべきコイル構造の形状を画定する。」 「【0018】 図7A?図7Bに図示するように、めっきモールド132の形成に続いて、頂部チタン層が剥がされ、電気めっきにより銅が堆積されて、コイル構造126を形成する。図8A?図8Bに示すように、電気めっきの後、めっきモールド132及び下にあるシード層130の領域が取り除かれる。」 「【0019】 コイル構造126が形成された後、図9A?図9Bに示すように、コイル構造126と、非導電性層122と、底部コアセクション120の上面との上に非導電性層140が堆積される。非導電性層140が堆積された後、多数の開口142が非導電性層140内に形成される。 【0020】 本例では、非導電性層140は、実質的に自己平坦化される、SU-8などの感光性エポキシ又はポリマーの層で形成される。感光性エポキシ又は重合体が堆積されると、マスクを介して光を投射して、光に曝された非導電性層140の領域を軟化させる非導電性層140上に、パターニングされた画像を形成し、その後、非導電性層140の軟化された領域を取り除くことによって、開口142が形成される。 【0021】 コイル構造126が、要求されるインダクタンスを提供するのに充分に厚い場合、コイル構造126はインダクタ100のコイルを形成する。この場合、開口142は、開口124により予め露出された底部コアセクション120の上面の同じ領域を露出させる開口142Eのみを含む。一方、コイル構造126が、要求されるインダクタンスを提供するのに充分に厚くない場合、開口142は、図9A?図9Bに示すようにコイル構造126を露出させるトレンチ開口142Tを更に含む。 【0022】 本例では、トレンチ開口142Tは、コイル構造126の一端からコイル構造126の他端までコイル構造126の上面を露出させる。代替として、トレンチ開口142Tを形成するのではなく、コイル構造126の上面を露出するため、多数の離間したビア開口が形成されてもよい。」 「【0023】 図10A?図10Bに図示するように、コイル構造126が充分に厚くない場合、コイル構造126上にコイル構造144が形成されて一層厚いコイルを提供する。図11A?図11Bに示すように、コイル構造144は、まず、開口142をライニングし、かつコイル構造126と底部コアセクション120の上面とに接するように、非導電性層140上にシード層150を形成することにより形成される。 【0024】 例えば、シード層150は、300Åのチタン、3000Åの銅、及び300Åのチタンを堆積することによって形成され得る。シード層150が形成されると、シード層150の上面上にめっきモールド152が形成される。めっきモールド152は開口を有し、この開口は、シード層150の一部を露出させ、形成されるべきコイル構造の形状を画定する。」 「【0025】 図12A?図12Bに図示するように、めっきモールド152の形成に続いて、頂部チタン層が剥がされ、電気めっきにより銅が堆積されて、コイル構造144を形成する。コイル構造144は、トレンチ開口142T又は任意のビア開口内に形成される銅を含む。図13A?図13Bに示すように、電気めっきの後、めっきモールド152及び下にある シード層150の領域が取り除かれる。」 「【0026】 コイル構造144が形成された後、図14A?図14Bに示すように、コイル構造144と、非導電性層140と、底部コアセクション120の上面との上に非導電性層154が堆積される。非導電性層154が堆積された後、非導電性層154内に多数の開口156が形成される。 【0027】 本例では、非導電性層154は、実質的に自己平坦化される、SU-8などの感光性エポキシ又はポリマーの層で形成される。感光性エポキシ又はポリマーが堆積されると、マスクを介して光を投射して、光に曝された非導電性層154の領域を軟化させる非導電性層154上に、パターニングされた画像を形成し、その後、非導電性層154の軟化された領域を取り除くことによって、開口156が形成される。 【0028】 コイル構造126及びコイル構造144の組み合わせが、要求されるインダクタンスを提供するのに充分に厚い場合、コイル構造126及びコイル構造144の組み合わせは、インダクタ100のコイルを形成する。この場合、開口156は、開口124及び142Eにより予め露出された底部コアセクション120の上面の同じ領域を露出させる開口156Eのみを含む。一方、コイル構造126及びコイル構造144の組み合わせが、要求されるインダクタンスを提供するのに充分に厚くない場合、開口156は、図14A?図14Bに示すようにコイル構造144を露出させるトレンチ開口156Tを更に含む。 【0029】 本例では、トレンチ開口156Tは、コイル構造144の一端からコイル構造144の他端までコイル構造144の上面を露出させる。代替として、トレンチ開口156Tを形成するのではなく、コイル構造144の上面を露出させるための多数の離間したビア開口が形成されてもよい。」 「【0030】 図15A?図15Bに図示するように、コイル構造126及びコイル構造144の組み合わせが充分に厚くない場合、コイル構造144上にコイル構造160が形成されて一層厚いコイルを提供する。図16A?図16Bに示すように、コイル構造160は、まず、開口156をライニングし、かつ、コイル構造144と底部コアセクション120の上面とに接するよう、非導電性層154上にシード層162を形成することによって、形成される。 【0031】 例えば、シード層162は、300Åのチタン、3000Åの銅、及び300Åのチタンを堆積することによって形成され得る。シード層162が形成されると、シード層162の上面上にめっきモールド164が形成される。めっきモールド164は開口を有し、この開口は、シード層162の一部を露出させ、形成されるべきコイル構造の形状を画定する。」 「【0032】 図17A?図17Bに図示するように、めっきモールド164の形成に続いて、頂部チタン層が剥がされ、電気めっきにより銅が堆積されて、コイル構造160を形成する。コイル構造160は、トレンチ開口156T又は任意のビア開口内に形成される銅を含む。図18A?図18Bに示すように、電気めっきの後、めっきモールド164及び下にあるシード層162の領域が取り除かれる。」 「【0033】 コイル構造160が形成された後、図19A?図19Bに示すように、コイル構造160と、非導電性層154と、底部コアセクション120の上面との上に非導電性層170が堆積される。非導電性層170が堆積された後、非導電性層170内に多数の開口172が形成される。 【0034】 本例では、非導電性層170は、実質的に自己平坦化される、SU-8などの感光性エポキシ又はポリマーの層で形成される。感光性エポキシ又はポリマーが堆積されると、マスクを介して光を投射して、光に曝された非導電性層170の領域を軟化させる非導電性層170上に、パターニングされた画像を形成し、その後、非導電性層170の軟化された領域を取り除くことによって、開口172が形成される。 【0035】 コイル構造126、コイル構造144、及びコイル構造160の組み合わせが、要求されるインダクタンスを提供するのに充分に厚くない場合、開口172は、コイル構造160と底部コアセクション120の上面との両方を露出させる。これに続き、組み合わされたコイル構造が、要求されるインダクタンスを提供するのに充分に厚いコイルを形成するまで、上に重なる非導電性の層を備えた付加的なコイル構造が上述と同じ方式で形成される。 【0036】 一方、本例のように、コイル構造126、コイル構造144、及びコイル構造160の組み合わせが、要求されるインダクタンスを提供するのに充分に厚い場合、コイル構造126、コイル構造144、及びコイル構造160の組み合わせは、インダクタ100のコイルを形成する。この場合、図19A?図19Bに示すように、開口172は、底部コアセクション120の上面のみを露出させる。」 「【0037】 底部コアセクション120の上面を露出させるように頂部コイル構造に接する非導電性層内に開口が形成されると、開口内に頂部コアセクションが配置される。本例では、図20A?図20Bに示すように、頂部コアセクション180が、開口172内に配置され、非導電性層170の上面のセクションSSに沿って非導電性層170の上面に取り付けられて、インダクタ100の形成を終了する。本例では、頂部コアセクション180は、底部コアセクション120に接していてもよいが、それに取り付けられない。 【0038】 頂部コアセクション180は、従来のピックアンドプレースマシンを用いて開口172内に配置され得、例えば、ダイ取り付けフィルムなど、従来の導電性又は非導電性の接着材を用いて、従来の方式で取り付けられ得る。ダイ取り付けフィルムは、例えば、20μmの厚みであり得る。また、個別のプロセスで従来の方式で形成される頂部コアセクション180は、例えば、(Co)NiFeの電気めっきされた合金又はNiZn及びMnZnなどのソフトフェライトで実装され得る。 【0039】 頂部コアセクション180が、開口172内に配置され、非導電性層170の上面に粘着的に取り付けられて、インダクタ100の形成を終了した後、製造は、上に重なるパッシベーション層の形成、及び/又は、例えば、本例ではコイル構造160の端部など、コイルの端部の上面を露出させる開口の形成など、従来のバックエンド処理工程で継続する。また、コイルの端部が露出されると、ワイヤボンドの接着を改善するため、ダイシング及びワイヤボンディング前に、アルミニウム、アルミニウム銅、又は金などの金属がコイルの端部上に形成され得る。 【0040】 このように、底部及び頂部コアセクション120及び180を取り付けるために従来のピックアンドプレース技術を利用することにより厚いコアを、及び多数のコイル構造を利用することにより厚いコイルを形成する、インダクタを形成する方法を説明してきた。上述のように、用いられるコイル構造の数は、必要とされるコイルの厚みに依存する。このため、コイル構造126単独、コイル構造126及び144の組み合わせ、コイル構造126、144、及び160の組み合わせ、又はコイル構造126、144、160、及び一つ又は複数の付加的なコイル構造の組み合わせを、必要とされるコイルの厚みに応じて用いることができる。 【0041】 本発明の一つの利点は、1つ又は複数のコイル構造でつくられるインダクタ100の厚いコイルが低抵抗を有し、これにより、インダクタ100が大きな電流を搬送することが可能となることである。また、別の利点は、大きな電流容量と組み合わされた厚いコアは、品質係数を増大させることである。」 (2)引用文献1に記載された技術事項について 引用文献1は、段落【0003】に記載されているとおり、「半導体インダクタ」「を形成する」「方法」に関するものであるが、以下では、該方法により形成された図20の「インダクタ100」の構成について、引用文献1の記載から読み取れる事項を列挙する。 ア 段落【0012】、【0013】及び【0036】より、「インダクタ100」が、「コイル構造126、コイル構造144、及びコイル構造160の組み合わせ」からなる「コイル」と、「ウエハ110内」の「キャビティ114」に配置された「底部コアセクション120」と、「頂部コアセクション180」とを含むことを読み取ることができる。 イ 段落【0016】より、前記「底部コアセクション120」の「上」の「非導電性層122上に」、「コイル構造126」が設けられていることを読み取ることができる。 ウ 段落【0019】、【0021】ないし【0023】、【0023】より、「コイル構造126」の「上に」「非導電性層140」が設けられ、該「非導電性層140」は、「コイル構造126の一端からコイル構造126の他端までコイル構造126の上面を露出させるトレンチ開口142Tを」「含」み、「コイル構造126に接する」「シード層150」を介して「電気めっきにより銅が堆積されて」、「トレンチ開口142T」「内」の「銅を含む」「コイル構造144」が設けられ、「コイル構造126上にコイル構造144が形成されて一層厚いコイル」が「提供」されることを読み取ることができる。 エ 段落【0026】、【0028】ないし【0030】、【0032】より、「コイル構造144」の「上に」「非導電性層154」が設けられ、該「非導電性層154」は、「コイル構造144の一端からコイル構造160の他端までコイル構造126の上面を露出させるトレンチ開口156Tを」「含」み、「コイル構造144に接する」「シード層162」を介して「電気めっきにより銅が堆積されて」、「トレンチ開口156T」「内」の「銅を含む」「コイル構造160」が設けられ、「コイル構造144上にコイル構造160が形成されて一層厚いコイル」が「提供」されることを読み取ることができる。 オ 段落【0033】より、「コイル構造160」の「上に」「非導電性層170」が設けらていることを読み取ることができる。 カ 段落【0039】より、さらに「コイル構造160」の「上面」が「露出され」、「露出した」「コイルの端部上」に「ワイヤボンド」のため「金属」が設けられていることを読み取ることができる。 キ 図8A,10A,13A,15Aより、コイル構造126、コイル構造144及びコイル構造160は、スパイラル状の構造であることを見て取れる。 ク 段落【0041】より、「複数のコイル構造でつくられる」「厚いコイルが低抵抗を有」することを読みとめことができる。 (3)引用文献1に記載された発明について したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「コイル構造126、コイル構造144、及びコイル構造160の組み合わせからなるコイルと、ウエハ110内のキャビティ114に配置された底部コアセクション120と、頂部コアセクション180とを含むインダクタ100であって、 前記底部コアセクション120の上の非導電性層122上に、コイル構造126が設けられ、 コイル構造126の上に非導電性層140が設けられ、該非導電性層140は、コイル構造126の一端からコイル構造126の他端までコイル構造126の上面を露出させるトレンチ開口142Tを含み、コイル構造126に接するシード層150を介して電気めっきにより銅が堆積されて、トレンチ開口142T内の銅を含むコイル構造144が設けられ、コイル構造126上にコイル構造144が形成されて一層厚いコイルが提供され、 コイル構造144の上に非導電性層154が設けられ、該非導電性層154は、コイル構造144の一端からコイル構造144の他端までコイル構造144の上面を露出させるトレンチ開口156Tを含み、コイル構造144に接するシード層162を介して電気めっきにより銅が堆積されて、トレンチ開口156T内の銅を含むコイル構造160が設けられ、コイル構造144上にコイル構造160が形成されて一層厚いコイルが提供され、 コイル構造160の上に非導電性層170が設けられ、 コイル構造160の上面が露出され、露出したコイルの端部上にワイヤボンドのため金属が設けられ、コイル構造126、コイル構造144及びコイル構造160は、スパイラル状の構造であり、 複数のコイル構造でつくられる厚いコイルが低抵抗を有する、 インダクタ100。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に、周知技術を示す文献として引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0058】 その後、図5に示すように、各プリント配線基材10?40及び電子部品90を位置決めし、積層する(ステップS150)。最後に、例えば真空プレス機を用いて、1kPa以下の減圧雰囲気中にて加熱加圧することで熱圧着により一括積層し(ステップS152)、本フローチャートによる一連の処理を終了して、図1に示すような部品内蔵基板1を製造する。 【0059】 一括積層時には、層間の各接着層9や各樹脂基材21,31等の硬化と同時に、ビアホール2,4内に充填された導電性ペーストの硬化及び合金化が行われる。従って、導電性 ペーストからなる放熱用ビア15と接する放熱用配線13や、他のビア及び配線等との間には、金属間化合物の合金層が形成される。」 【図1】 【図5】 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0058】 次に、図3(f)に示すように、第1の銅板82および第2の銅板92がサブトラクティブ法によってパターン形成され、配線パターン98が形成される。なお、絶縁樹脂88の両面の配線パターン98は、凸部86とCu-Snの金属間化合物94によって形成されたビア接続部96によって接続される。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 引用発明1における「コイル構造126、コイル構造144及びコイル構造160」の「スパイラル状の構造」が、本願発明1における「平面スパイラル状のパターン」に相当する。 イ 引用発明1では、「コイル構造126上にコイル構造144が形成されて一層厚いコイルが提供され」、「コイル構造144上にコイル構造160が形成されて一層厚いコイルが提供され」、「複数のコイル構造で」「厚いコイル」が「つくられ」ている。そして、引用発明1における「コイル構造126、コイル構造144及びコイル構造160」は「銅」で形成されているから、上記「ア」を踏まえると、引用発明1における「コイル構造126」、「コイル構造144」及び「コイル構造160」の各々は、「平面スパイラル状のパターン」を有し、「厚いコイル」を構成する複数の導体「層」であるといえる。 よって、引用発明1における「コイル構造126」、「コイル構造144」及び「コイル構造160」の各々が、本願発明1における「平面スパイラル状のパターンを有する複数の導体層」に相当する。 ウ 引用発明1における「コイル構造126」の「上に」に設けられた「非導電性層140」、及び「コイル構造144」の「上に」に設けられた「非導電性層154」が、本願発明1における「前記複数の導体層間に配置された一つ以上の絶縁層」に相当する。 エ 本願明細書の段落【0020】には「第1から第4ビア層31、32、33、34も別途のシード層を有しない。即ち、後述する工程から分かるように、これらは、金属間化合物IMC(Inter Metallic Compound)で形成される。」と記載されているから、シード層は、本願発明1における「ビア層」に含まれない。この点を踏まえて、以下、対比を行う。 引用発明1における、「非導電性層140」の「トレンチ開口142T」は、「コイル構造126の一端からコイル構造126の他端までコイル構造126の上面を露出させ」るものであるから、「スパイラル状」の「コイル構造126」の上面に沿って掘られた「トレンチ」(即ち、「堀」)の形状であって、「スパイラル状」をしていることは明らかである。 そして、引用発明1では「シード層150を介して電気めっきにより銅が堆積されて、トレンチ開口142T内の銅を含むコイル構造144が設けられ、コイル構造126上にコイル構造144が形成されて一層厚いコイルが提供され」ているから、引用発明1における「トレンチ開口142T内の銅」は、「非導電性層140」を貫通し、その下の「コイル構造126」とその「上」の(「トレンチ開口142T」を覆う)「コイル構造144」とを連結していることは明らかであって、本願発明1における「前記絶縁層を貫通し、前記複数の導体層を連結し」、「平面スパイラル状のパターンを有」する「一つ以上のビア層」に相当する。 オ 上記エと同様に、引用発明1における「トレンチ開口156T内の銅」は、「非導電性層154」を貫通し、その下の「コイル構造144」とその「上」の(「トレンチ開口156T」を覆う)「コイル構造160」とを連結していることは明らかであって、本願発明1における「前記絶縁層を貫通し、前記複数の導体層を連結し」、「平面スパイラル状のパターンを有」する「一つ以上のビア層」に相当する。 カ 引用発明1における「コイル」は、「コイル構造126、コイル構造144、及びコイル構造160の組み合わせ」であって、「コイル構造144」は「非導電性層140」と「トレンチ開口142T内の銅」を含み、「コイル構造160」は「非導電性層154」と「トレンチ開口156T内の銅」を含むから、本願発明1における導体層、絶縁層及びビア層を含む「本体」に相当する。 キ 引用発明1における「ワイヤボンドのための金属」は、「露出したコイルの端部上」に設けられるから、本願発明1における「前記本体上に配置された電極」に相当する。 ク 本願発明1では、「一つ以上のビア層」が、前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面に形成された金属間化合物(IMC)を含む」のに対し、引用発明1では、「トレンチ開口142T内の銅」と、その上の(「トレンチ開口142T」を覆う)「コイル構造144」との間、あるいは「トレンチ開口156T内の銅」と、その上の(「トレンチ開口156T」を覆う)「コイル構造166」との間に界面は存在せず、したがって、界面に形成された金属間化合物(IMC)は含まれていない点で相違する。 ケ 上記「カ」及び「キ」によれば、引用発明1における「インダクタ10」が、本願発明1における「コイル部品」に相当する。 上記「ア」ないし「ケ」によれば、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点、相違点を有するものと認められる。 (一致点) 「平面スパイラル状のパターンを有する複数の導体層と、前記複数の導体層間に配置された一つ以上の絶縁層と、 前記絶縁層を貫通し、前記複数の導体層を連結し、平面スパイラル状のパターンを有する、一つ以上のビア層とを含む本体、及び 前記本体上に配置された電極を含むコイル部品。」 (相違点) 「一つ以上のビア層」について、本願発明1では、「前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面に形成された金属間化合物(IMC)を含む」のに対し、引用発明1では、界面は存在せず、したがって、界面に形成された金属間化合物(IMC)は含まれていない点。 (2)判断 そこで上記相違点について検討すると、 ア 引用文献2(段落【0059】)、引用文献3(段落【0058】)に記載されているように、「ビアと配線との間に、金属間化合物の合金層を形成すること」は周知技術である。 イ しかし、引用発明1では、「トレンチ開口142T内の銅」と、その上に重なる(「トレンチ開口142T」を覆う)「コイル構造144」とを、「電気めっきにより銅」を「堆積」することで形成しているのであるから、「トレンチ開口142T内の銅」と、「トレンチ開口142T内の銅」を覆う「コイル構造144」との間に金属間化合物が形成されることはない。 よって、「トレンチ開口142T内の銅」を、「銅」以外の金属であって、その上に重なる(「トレンチ開口142T」を覆う)「コイル構造144」の「銅」と金属間化合物を形成する金属に代えることは、当業者に動機付けられないことである。 ウ また、上記「(1)」「エ」に記載したとおり、本願明細書の段落【0020】には「第1から第4ビア層31、32、33、34も別途のシード層を有しない。即ち、後述する工程から分かるように、これらは、金属間化合物IMC(Inter Metallic Compound)で形成される。」と記載されているから、シード層は、本願発明1における「ビア層」に含まれない。これに対し、引用発明1では、「トレンチ開口142T内の銅」と、その土台となる「コイル構造126」の上面との間には「シード層150」が介されているのであるから、両者の間の「シード層150」を取り除き、代わりに両者が「金属間化合物(IMC)」の界面で接するように製造工程を変更することも、当業者に動機付けられないことである。 エ 上記「イ」、「ウ」と同様の理由から、引用発明1において、「トレンチ開口156T内の銅」を、「銅」以外の金属であって、その上に重なる(「トレンチ開口156T」を覆う)「コイル構造166」の「銅」と金属間化合物を形成する金属に代えることも、「トレンチ開口156T内の銅」と、その下の「コイル構造144」の上面との間の「シード層162」を取り除き、代わりに両者が「金属間化合物(IMC)」の界面で接するように製造工程を変更することも、当業者に動機付けられないことである。 オ したがって、上記「ア」のとおり、「ビアと配線との間に、金属間化合物の合金層を形成すること」が周知技術であったとしても、引用発明1において上記周知技術を適用し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。 カ よって、本願発明1は、当業者といえども、引用発明1及び周知技術(引用文献2、3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2ないし7ついて 本願発明2ないし7は、本願発明1に係る構成を含み、更に技術的に限定したものであるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者といえども、引用発明1及び周知技術(引用文献2、3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明8について 本願発明8は、本願発明1と同様に「前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面に形成された金属間化合物(IMC)を含む一つ以上のビア層」(相違点に係る構成)を含むものである。 よって、本願発明8は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者といえども、引用発明1及び周知技術(引用文献2、3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本願発明9ないし10ついて 本願発明9ないし10は、本願発明8に係る構成を含み、更に技術的に限定したものであるから、本願発明8について述べたのと同様の理由により、当業者といえども、引用発明1及び周知技術(引用文献2、3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 本願発明11ついて 本願発明11は、本願発明1ないし10に係る構成を含み、更に技術的に限定したものであるから、本願発明1ないし10について述べたのと同様の理由により、当業者といえども、引用発明1及び周知技術(引用文献2、3)に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定について 審判請求時の補正によって、本願発明1は「前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面に形成された金属間化合物(IMC)を含む一つ以上のビア層」(下線は、補正箇所を示す)という発明特定事項1を有するものとなっている。また、本願発明8も「前記複数の導体層と一つ以上のビア層とが接触する領域のそれぞれに存在する界面に形成された金属間化合物(IMC)を含む一つ以上のビア層」(下線は、補正箇所を示す)という発明特定事項2を有するものとなっている。 そして、上記発明特定事項1を有する本願発明1及び本願発明1に係る構成を含み、更に技術的に限定した本願発明2ないし7、上記発明特定事項2を有する本願発明8及び本願発明8に係る構成を含み、更に技術的に限定した本願発明9ないし10、本願発明1ないし10に係る構成を含み、更に技術的に限定した本願発明11が、当業者といえども、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものといえないことは、上記「第6 対比・判断」で述べたとおりである。 よって、原査定を維持することはできない。 第8 まとめ 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-08-25 |
出願番号 | 特願2016-160601(P2016-160601) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 秋山 直人 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
清水 稔 須原 宏光 |
発明の名称 | コイル部品及びその製造方法 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |