ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02J 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H02J |
---|---|
管理番号 | 1377397 |
審判番号 | 不服2021-1763 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-02-08 |
確定日 | 2021-09-14 |
事件の表示 | 特願2019- 32208「アダプター及び充電制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日出願公開、特開2019-110753、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年1月7日(パリ条約による優先権主張2016年2月5日 中国、2016年7月26日 中国)を国際出願日とする特願2018-508703号の一部を平成31年2月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続きの経緯は以下のとおりである。 令和 2年 4月 7日付け:拒絶理由通知 令和 2年 6月11日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年11月27日付け:拒絶査定 令和 3年 2月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年11月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ●理由1(特許法第36条第6項第2号)について ・請求項 1ないし15 請求項1に記載された「素子」は、アダプターにおいて、何をするためのどのような機能をする素子であるのか等明確でない。 ●理由3(特許法第29条第2項)について ・請求項 1、15 ・引用文献等 1,a ・請求項 2ないし5 ・引用文献等 1 ・請求項 5 ・引用文献等 1,5 ・請求項 6 ・引用文献等 1,5,6 ・請求項 7 ・引用文献等 1,5ないし7 ・請求項 8ないし11 ・引用文献等 1,3,5ないし7 ・請求項 12、13 ・引用文献等 1,3,5ないし9 ・請求項 14 ・引用文献等 1ないし9 <引用文献等一覧> 1.韓国公開特許第10-2014-0084369号公報 2.特開2009-017648号公報 3.中国特許出願公開第104810877号明細書 4.国際公開2015/159560号 5.特表2010-523074号公報 6.特開2003-116232号公報 7.特開2006-158073号公報 8.特開2015-082967号公報 9.特開平09-285026号公報 a.特開2010-288360号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献) 第3 本願発明 本願の請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は、令和3年2月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 なお、審判請求項時の補正によって請求項1に「前記素子は制御ユニットを含み」を追加する補正は、原査定の理由1で指摘された事項を明確にするための、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、「前記素子は制御ユニットを含み」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものでない。そうすると、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件に違反しているものとはいえない。 「【請求項1】 電源を必要とする素子を備えるアダプターであって、 入力された交流を充電対象機器に出力される出力電圧及び出力電流に変換するための電力変換ユニットと、 入力端が前記電力変換ユニットに接続され、出力端が前記素子に接続され、前記電力変換ユニットからリップル波形の入力電圧を取得し、リップル波形の前記入力電圧を前記素子の正常作動を満たす目標電圧に変換するために用いられ、該目標電圧で前記素子に給電する電圧保持ユニットとを備え、 前記素子は制御ユニットを含み、前記出力電流が交流又はリップル直流電流であるアダ プター。 【請求項2】 前記電力変換ユニットは、1次ユニットと、2次ユニットとを備え、 前記電圧保持ユニットが前記2次ユニットに接続され、前記1次ユニットから前記2次ユニットに結合された前記2次ユニットの出力であるリップル波形の前記入力電圧を前記目標電圧に変換し、前記素子に給電する請求項1に記載のアダプター。 【請求項3】 前記電圧保持ユニットは、 入力端が前記2次ユニットに接続され、前記2次ユニットの電流を整流してリップル式の電流及び電圧を取得するための整流ユニットと、 入力端が前記整流ユニットの出力端に接続され、出力端が前記素子に接続され、前記リップル式の前記入力電圧を前記目標電圧に変換し、該目標電圧に基づいて前記素子に給電するためのフィルタユニットとを備える請求項2に記載のアダプター。 【請求項4】 前記整流ユニットは、ダイオードを備え、 該ダイオードのアノードが前記2次ユニットに接続され、前記ダイオードのカソードが前記フィルタユニットの前記入力端に接続される請求項3に記載のアダプター。 【請求項5】 前記フィルタユニットは、コンデンサを備え、 該コンデンサの一端が前記整流ユニットの前記出力端と前記素子に接続され、前記コンデンサの他端が接地される請求項3又は請求項4に記載のアダプター。 【請求項6】 前記フィルタユニットにおけるコンデンサの容量及び/又は数量は、前記素子の消費電力に基づいて決定される請求項3から請求項5のいずれかに記載のアダプター。 【請求項7】 前記電力変換ユニットがトランスを備え、 該トランスの1次巻線と2次巻線とのコイル巻数比は、前記目標電圧のピーク値に基づいて決定される請求項1から請求項6のいずれかに記載のアダプター。 【請求項8】 第1充電モード及び第2充電モードを有し、 前記第2充電モードにおける充電対象機器への充電速度が、前記第1充電モードにおける前記充電対象機器への充電速度より速く、 前記充電対象機器に接続されるプロセスにおいて、前記制御ユニットは、前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードにおける出力を制御する請求項1から請求項7のいずれかに記載のアダプター。 【請求項9】 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードにおける出力を制御するプロセスは、 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記アダプターと前記充電対象機器との間の充電モードをネゴシエーションすることを含む請求項8に記載のアダプター。 【請求項10】 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記アダプターと前記充電対象機器との間の充電モードをネゴシエーションすることは、 前記制御ユニットが、前記充電対象機器が前記第2充電モードをオンにするか否かを尋ねるための第1コマンドを前記充電対象機器に送信することと、 前記制御ユニットが、前記充電対象機器から送信された、前記充電対象機器が前記第2充電モードをオンにすることに同意するか否かを指示するための前記第1コマンドの返事コマンドを受信することと、 前記充電対象機器が前記第2充電モードをオンにすることに同意した場合に、前記制御ユニットが前記第2充電モードで前記充電対象機器を充電することとを含む請求項9に記載のアダプター。 【請求項11】 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードにおける出力を制御するプロセスは、 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードで出力された前記充電対象機器を充電するための充電電圧を決定することと、 前記制御ユニットが前記出力電圧を調整し、該出力電圧が、前記第2充電モードで出力された前記充電対象機器を充電するための前記充電電圧と等しくなるようにすることとを含み、 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードで出力された前記充電対象機器を充電するための前記充電電圧を決定することは、 前記制御ユニットが、前記出力電圧と前記充電対象機器のバッテリの現在の電圧とがマッチングしているか否かを尋ねるための第2コマンドを前記充電対象機器に送信することと、 前記制御ユニットが、前記充電対象機器から送信された、前記出力電圧と前記バッテリの現在の電圧とがマッチングしている、高めである又は低めであることを指示するための前記第2コマンドの返事コマンドを受信することとを含む請求項8から請求項10のいずれかに記載のアダプター。 【請求項12】 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードにおける出力を制御するプロセスは、 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードにおける出力された前記充電対象機器を充電するための充電電流を決定することと、 前記制御ユニットが前記出力電流を調整し、該出力電流が、前記第2充電モードにおける出力された前記充電対象機器を充電するための前記充電電流と等しくなるようにすることとを含み、 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードにおける出力された前記充電対象機器を充電するための前記充電電流を決定することは、 前記制御ユニットが、前記充電対象機器の現在サポートする最大充電電流を尋ねるための第3コマンドを前記充電対象機器に送信することと、 前記制御ユニットが、前記充電対象機器から送信された、前記充電対象機器の現在サポートする前記最大充電電流を指示するための前記第3コマンドの返事コマンドを受信することと、 前記制御ユニットが前記充電対象機器の現在サポートする前記最大充電電流に基づいて、前記第2充電モードにおける出力された前記充電対象機器を充電するための前記充電電流を決定することとを含む請求項8から請求項11のいずれかに記載のアダプター。 【請求項13】 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記第2充電モードにおける出力を制御するプロセスは、 前記第2充電モードで充電するプロセスにおいて、前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記出力電流を調整することを含み、 前記制御ユニットが前記充電対象機器と二方向通信して、前記出力電流を調整することは、 前記制御ユニットが、前記充電対象機器のバッテリの現在の電圧を尋ねるための第4コマンドを前記充電対象機器に送信することと、 前記制御ユニットが、送信された前記充電対象機器のバッテリの現在の電圧を指示するための前記第4コマンドの返事コマンドを受信することと、 前記制御ユニットが前記充電対象機器のバッテリの現在の電圧に基づいて、前記出力電流を調整することとを含む請求項8から請求項12のいずれかに記載のアダプター。 【請求項14】 前記出力電圧及び前記出力電流は、直接に前記充電対象機器のバッテリの両端に印加されて、前記充電対象機器のバッテリを直接充電する請求項8に記載のアダプター。 【請求項15】 電源を必要とする素子を備えるアダプターに適用される充電制御方法であって、 前記アダプターは、電力変換ユニットを備え、 該電力変換ユニットは、入力された交流を充電対象機器に出力する出力電圧及び出力電流に変換するために用いられ、前記出力電流が交流又はリップル直流電流であり、前記素子は制御ユニットを含み、 前記方法は、 前記電力変換ユニットからリップル波形の入力電圧を取得し、リップル波形の前記入力電圧を前記素子の正常作動を満たす目標電圧に変換するステップと、 前記目標電圧で前記素子に給電するステップとを含む充電制御方法。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。) 「[0050] 」 「[0053] 」 「[0065] 」 「[0067] 」 「[0068] 」 図4 当審訳を以下に記載する。 「[0050] 図1は、本発明が適用される電源供給装置及び搭載型緩速充電器を含んだ電気自動車用充電システムを示す図面である。図1を参照すると、電源供給装置(100)はコネクター(120)を通じて自動車(110)と連結される。一方、前記自動車(110)には、充電器(112)及び充電制御器(113)で構成されたオン-ボード充電装置(OBC)(111)が搭載されて、前記充電器(112)を介してバッテリー(115)が充電される。」 「[0053] この時、本発明の実施例により前記充電制御器(113)には、前記制御電子装置(103)から制御信号を提供され、受信された制御信号によって判断された各状態(state)により充電器(112)の充電動作を制御し、オン-ボード充電装置(111)を駆動するための電力供給を制御する。」 「[0065] 図3は、本発明が適用された搭載型緩速充電器の連結関係を示す図面である。図3を参照すると、上述のとおり、電源供給装置(100)を介して家庭用AC電源(例えば、110V、220V等)等が自動車(110)内のオン-ボード充電装置(OBC)(111)に供給されれば、前記オン-ボード充電装置(111)の充電器(112)は、本発明の実施例により充電制御器(113)を介して制御されて第1バッテリー(115)(例えば、高電圧250?450V DCリチウム-イオンバッテリー)を充電させる。前記第1バッテリー(115)に充電された電力は、インバーター(208)を介してモーター(300)を駆動させることによって、自動車(110)を駆動させる。」 「[0067] 図4は、本発明の実施例による充電器(112)の詳細構造を示す回路図である。図4を参照すると、オン-ボード充電装置(111)内に具備される充電器(112)は、本発明の実施例によりフィルター及び整流部(420)、LLCコンバータ部(430)及びブーストコンバータ部(440)を含んで構成され得る。また、前記LLCコンバータ部(430)は、1次スイッチング部(431)、絶縁部(431)、2次スイッチング部(433)等で構成され得る。 [0068] まず、フィルター及び整流部(420)は、入力された220V AC電流(410)をフィルタリングし、整流して図示されたとおり、240V 120Hzの電流を出力させる。1次スイッチング部(431)では、前記フィルター及び整流部(420)から供給された電流をLLCによってスイッチングして100kHzのパルス信号で変換させる。絶縁部(432)では、トランスフォーマーによって電力を2次スイッチング部(433)で伝達し、2次スイッチング部(433)では、80V DCリンク(link)電流を生成する。最後にブースト及び電流制御部(441)では、前記DCリンク電流をブーストして50kHz電流として出力させてバッテリー(115)を充電させる。」 図4より、リップル状の50kHz電流を、バッテリー(115)に印加していることが見て取れる。 上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、引用文献1の記載箇所を示す。)。 「充電器(112)及び充電制御器(113)で構成されたオン-ボード充電装置(OBC)(111)であって([0050])、 充電器(112)は、250?450VのDCリチウム-イオンバッテリーであるバッテリー(115)を充電させ([0065])、 充電制御器(113)は充電器(112)の充電動作を制御し([0053])、 充電器(112)は、フィルター及び整流部(420)、LLCコンバータ部(430)及びブーストコンバータ部(440)を含んで構成され([0067])、 入力された220V AC電流(410)からリップル状の50kHz電流を出力させてバッテリー(115)を充電させる([0068]、図4)、 オン-ボード充電装置(OBC)(111)。」 2 引用文献aについて 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献aには、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0010】 実施の形態1. 以下、この発明の実施の形態1による電力変換装置を図に基づいて説明する。 図1は、この発明の実施の形態1による電力変換装置としての電圧変動補償装置の構成図である。電圧変動補償装置は、補償回路であるインバータ回路10と、このインバータ回路10の出力制御をする制御回路15とを備え、交流電源1からトランス2を介して入力される交流電圧Vin(以下、入力電圧Vinと称す)に、インバータ回路10の出力電圧である補償電圧を重畳して所望の出力交流電圧Vac(以下、出力電圧Vacと称す)の交流電力を負荷5に供給する。」 上記記載より、引用文献aには、次の技術が記載されている。 「補償回路であるインバータ回路10と、このインバータ回路10の出力制御をする制御回路15とを備え、交流電源1からトランス2を介して入力される交流電圧Vinに、インバータ回路10の出力電圧である補償電圧を重畳して所望の出力交流電圧Vacの交流電力を負荷5に供給する電力変換装置。」 第5 対比、判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「オン-ボード充電装置(OBC)(111)」は、リップル状の50kHz電流を出力させてバッテリー(115)を充電させるものであるから、本願発明1の交流又はリップル直流電流である出力電流を充電対象機器に出力する「アダプター」に相当する。 また、引用発明の「充電制御器(113)」は、何らかの電源を必要とすることは明らかであるから、本願発明1の「電源を必要とする素子」に相当する。 したがって、引用発明の「充電器(112)及び充電制御器(113)で構成されたオン-ボード充電装置(OBC)(111)」は、本願発明1の「電源を必要とする素子を備えるアダプター」に相当する。 イ 引用発明の「バッテリー(115)」は、本願発明1の「充電対象機器」に相当する。 また、引用発明の「充電器(112)」は「入力された220V AC電流(410)からリップル状の50kHz電流を出力させてバッテリー(115)を充電させ」ているので、入力された交流をバッテリー(115)に出力される出力電圧及び出力電流に変換しているものである。 そうすると、引用発明1の「入力された220V AC電流(410)からリップル状の50kHz電流を出力させてバッテリー(115)を充電させる」「充電器(112)」は、本願発明1の「入力された交流を充電対象機器に出力される出力電圧及び出力電流に変換するための電力変換ユニット」に相当する。 ウ 引用発明の「充電制御器(113)」が本願発明1の「電源を必要とする素子」に相当することは、上記アで述べたとおりである。そして、引用発明の「充電制御器(113)」は、充電の制御を行う中心部ともいえる制御部を含んでいることは当然であるので、本願発明1の「制御ユニット」を含む「素子」に相当する。 そうすると、引用発明の「リップル状の50kHz電流を出力させ」ている「充電器(112)及び充電制御器(113)で構成されたオン-ボード充電装置(OBC)(111)」は、本願発明1の「電源を必要とする素子を備え」、「前記素子は制御ユニットを含み、前記出力電流が交流又はリップル直流電流であるアダプター」に相当する。 エ 上記アないしウでの検討を踏まえると、引用発明の「充電器(112)及び充電制御器(113)で構成されたオン-ボード充電装置(OBC)(111)」と本願発明1とは、「電源を必要とする素子」と、「電力変換ユニット」とを備える「アダプター」である点で共通する。 但し、本願発明1の「アダプター」は、「入力端が前記電力変換ユニットに接続され、出力端が前記素子に接続され、前記電力変換ユニットからリップル波形の入力電圧を取得し、リップル波形の前記入力電圧を前記素子の正常作動を満たす目標電圧に変換するために用いられ、該目標電圧で前記素子に給電する電圧保持ユニットとを備え」るのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。 (一致点) 「電源を必要とする素子を備えるアダプターであって、 入力された交流を充電対象機器に出力される出力電圧及び出力電流に変換するための電力変換ユニットとを備え、 前記素子は制御ユニットを含み、前記出力電流が交流又はリップル直流電流であるアダプター。」 (相違点) 本願発明1の「アダプター」は、「入力端が前記電力変換ユニットに接続され、出力端が前記素子に接続され、前記電力変換ユニットからリップル波形の入力電圧を取得し、リップル波形の前記入力電圧を前記素子の正常作動を満たす目標電圧に変換するために用いられ、該目標電圧で前記素子に給電する電圧保持ユニットとを備え」るのに対して、引用発明はそのような特定がない点。 (2)相違点についての判断 引用発明は「充電制御器(113)」の電源がどのようなものであるのか特定されていないが、制御装置の電源としては数V程度の電圧を用いることが一般的である。 そうすると、引用発明の「250?450VのDCリチウム-イオンバッテリーであるバッテリー(115)」を充電させるための「リップル状の50kHz電流」から、「充電制御器(113)」に給電するための電圧に変換して電源として用いることは、例えば、引用発明の「オン-ボード充電装置(OBC)(111)」に供給されている家庭用AC電源から変換するのに比べて降圧の幅が増大し、それに伴い、回路規模の増大、素子の高耐圧化及び損失の増加等が見込まれるので、当業者が想定しないことである。 また、拒絶査定で周知技術として引用された引用文献aには「補償回路であるインバータ回路10と、このインバータ回路10の出力制御をする制御回路15とを備え、交流電源1からトランス2を介して入力される交流電圧Vinに、インバータ回路10の出力電圧である補償電圧を重畳して所望の出力交流電圧Vacの交流電力を負荷5に供給する電力変換装置」(上記「第4 2」)が記載されているが、上記相違点に係る構成は記載されていない。 したがって、上記相違点に係る構成は、引用発明、引用文献aに記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献aに記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、拒絶査定において、従属請求項に対して引用された引用文献2ないし9には、上記相違点に係る構成は記載されていない。 2 本願発明2ないし14について 本願発明2ないし14も、本願発明1の「入力端が前記電力変換ユニットに接続され、出力端が前記素子に接続され、前記電力変換ユニットからリップル波形の入力電圧を取得し、リップル波形の前記入力電圧を前記素子の正常作動を満たす目標電圧に変換するために用いられ、該目標電圧で前記素子に給電する電圧保持ユニットとを備え」る「アダプター」(上記相違点に係る構成)を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献aに記載された技術及び拒絶査定において引用された引用文献2ないし9に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 本願発明15について 本願発明15は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「入力端が前記電力変換ユニットに接続され、出力端が前記素子に接続され、前記電力変換ユニットからリップル波形の入力電圧を取得し、リップル波形の前記入力電圧を前記素子の正常作動を満たす目標電圧に変換するために用いられ、該目標電圧で前記素子に給電する電圧保持ユニットとを備え」る「アダプター」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献aに記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 原査定について 1.理由1(特許法第36条第6項第2号)について 審判請求時の補正により、「電源を必要とする素子」について「制御ユニットを含み」と特定されており、原査定の理由1で指摘した記載不備は解消した。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。 2.理由3(特許法第29条第2項)について 本願発明1ないし15は「入力端が前記電力変換ユニットに接続され、出力端が前記素子に接続され、前記電力変換ユニットからリップル波形の入力電圧を取得し、リップル波形の前記入力電圧を前記素子の正常作動を満たす目標電圧に変換するために用いられ、該目標電圧で前記素子に給電する電圧保持ユニットとを備え」る「アダプター」(上記相違点に係る構成)又は対応する構成を有するものであり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし9、aに基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由3を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-08-30 |
出願番号 | 特願2019-32208(P2019-32208) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H02J)
P 1 8・ 121- WY (H02J) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂東 博司 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 山本 章裕 |
発明の名称 | アダプター及び充電制御方法 |
代理人 | 柳 順一郎 |
代理人 | 小栗 眞由美 |
代理人 | 上田 邦生 |
代理人 | 竹内 邦彦 |