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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1377409
審判番号 不服2020-13741  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-01 
確定日 2021-09-14 
事件の表示 特願2015-227974号「照明器具、照明システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年6月1日出願公開、特開2017-98034号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成27年11月20日の出願であって、平成30年11月6日に明細書について補正する手続補正書が提出され、令和元年8月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月9日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出され、令和2年2月13日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、同年3月9日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出されたが、同年7月8日付けで、同年3月9日の手続補正に対する補正の却下の決定がされるとともに、拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされたものであり、それに対して同年10月1日に拒絶査定不服審判の請求と同時に、特許請求の範囲及び明細書について補正する手続補正書が提出され、当審が令和3年4月20日付けで拒絶理由通知をし、同年6月18日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲及び明細書について補正をする手続補正書が提出されたものである。

2 原査定の概要

この出願の下記に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1,4
・引用文献 1,2

・請求項 2
・引用文献 1,3

・請求項 3
・引用文献 1,4

・請求項 5?7
・引用文献 5

・請求項 8
・引用文献 5,6

・請求項 9
・引用文献 5,1

・引用文献等一覧
1.特表2010-503948号公報
2.特開2004-303685号公報
3.特開2003-290249号公報
4.特開2007-59289号公報
5.特開2009-24404号公報
6.特開2008-134857号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、令和3年6月18日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。なお、審判請求時の手続補正書により、原査定の対象となった請求項5?9は削除された。

「【請求項1】
照明器具と、
非接触型情報記憶媒体の読み取りを行うリーダと通信し、前記照明器具を照明制御するコントローラと、
を備え、
前記リーダで前記非接触型情報記憶媒体に記憶されたID情報の読み取りが行われ、前記ID情報に前記照明器具がひもづけられている場合に、前記リーダに対する前記非接触型情報記憶媒体のかざし方の違いに基づいて、前記コントローラが照明制御を行い、
前記非接触型情報記憶媒体の第一のかざし方を前記リーダが読み取ったときに前記照明器具の調光率を増加させ、前記非接触型情報記憶媒体の前記第一のかざし方と異なる第二のかざし方を前記リーダが読み取ったときに前記照明器具の調光率を低下させるように構築され、
前記第一のかざし方と前記第二のかざし方は、前記リーダが前記ID情報を読み取ることで判別される照明システム。
【請求項2】
照明器具と、
非接触型情報記憶媒体の読み取りを行うリーダと通信し、前記照明器具を照明制御するコントローラと、
を備え、
前記リーダで前記非接触型情報記憶媒体に記憶されたID情報の読み取りが行われ、前記ID情報に前記照明器具がひもづけられている場合に、前記リーダに対する前記非接触型情報記憶媒体のかざし方の違いに基づいて、前記コントローラが照明制御を行い、
前記リーダに対して前記非接触型情報記憶媒体をかざし続ける時間の長短に基づいて、前記コントローラが複数の異なる照明制御を選択的に行い、
前記非接触型情報記憶媒体をかざし続ける時間は、前記リーダによるデータ読み取り開始からデータ読み取り終了までの時間長である照明システム。
【請求項3】
照明器具と、
非接触型情報記憶媒体の読み取りを行うリーダと通信し、前記照明器具を照明制御するコントローラと、
を備え、
前記リーダで前記非接触型情報記憶媒体に記憶されたID情報の読み取りが行われ、前記ID情報に前記照明器具がひもづけられている場合に、前記リーダに対する前記非接触型情報記憶媒体のかざし方の違いに基づいて、前記コントローラが照明制御を行い、
前記リーダに対して前記非接触型情報記憶媒体を繰り返しかざした回数に基づいて、前記コントローラが複数の異なる照明制御を選択的に行い、
前記かざした回数は、前記リーダによる前記ID情報の検出回数である照明システム。
【請求項4】
非接触型情報記憶媒体に記憶されたID情報の読み取りを行うリーダと通信し、前記ID情報に自身がひもづけられている場合に、前記リーダに対する前記非接触型情報記憶媒体のかざし方の違いに基づいて照明制御を行うように構築され、
前記非接触型情報記憶媒体の第一のかざし方を前記リーダが読み取ったときに照明器具の調光率を増加させ、前記非接触型情報記憶媒体の前記第一のかざし方と異なる第二のかざし方を前記リーダが読み取ったときに前記照明器具の調光率を低下させるように構築され、
前記第一のかざし方と前記第二のかざし方は、前記リーダが前記ID情報を読み取ることで判別される照明器具。」

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1について
引用文献1には、図面とともに以下の記載がある(下線は当審が付与。以下同様。)。

(1)「【要約】
相互作用方法及びシステムは、場面データを含むカード310と、前記場面データを読み取るように構成される読み取り器320と、前記場面データと関連付けられる場面を提供するために、前記場面データに従い少なくとも1つの制御可能装置340を有効状態にさせるように構成される処理器350と、を有する。光源及び/又は投影器/ディスプレイなどの制御可能装置は、例えば、読み取り器320のスロットへカード310を挿入するステップ、又は読み取り器320の表面232にカード310を置くステップ、に応答して有効状態にされる。処理器350は、場面を提供する制御可能装置340の明暗度及び色を変更することを含む、ユーザによる前記場面の属性の調整を可能にするように構成される。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、カード又はいずれかのタグをカード/タグ読み取り器へ挿入することに応答して、照明制御システムにおける照明設定を選択及び制御する相互作用システムに関する。」

(3)「【0003】
容易に且つ直感的に照明システムを制御する一方で、システム複雑性を隠すことは、システム自体における課題である。個別の光源を制御すること(例えば、調光又は色変化)の異なる相互作用の規範(例えば、制御関数の選択)に関して複数の解決法が存在する。これらの解決法は個別の光源へ調整されるが、システムの解決法へも多く場合同様に拡張される。しかし、ユーザの視点からは、ユーザの精神モデルは、利用可能な制御システム及びユーザ動作への応答と一致しないので、混乱及び不満を生じさせる。
【0004】
更に、異なる相互作用の規範が組み合わせられるようなシステムにおいて様々な解決法が組み合わせられる場合、ユーザにはより多くの混乱が生じる。単一の規範が使用される場合においても、個々の光源の設定を変化させることは、他の光源からおとずれる光の知覚に影響を及ぼし、したがって、全体照明経験(システム効果との称される)に影響を与える又は変化させることを注意しなければならない。したがって、好ましい/所定の光源及びその制御(の設定)の自動的な選択を可能にする、直感的であり且つシステム複雑性を隠すより簡単でより優れたユーザインターフェイスに関する必要性が存在する。」

(4)「【0011】
様々な実施例に従うシステム及び方法は、開始点として一群の光場面を提供し、ユーザの個人の好みに調整するために、様々な場面の個別の制御、及び/又は個別の若しくはグループ化された制御可能な光源の光源属性の制御を可能にし、したがって、初期場面から開始して容易に所望な場面を選択及び調整し得る。例えば、カード及び読み取り器の組み合わせは、開始点として1つの以上の場面からの選択を提供し、「一気に(in one go)」、選択された場面の調整を可能にする。場面の雰囲気を示すイラストが、カードに視覚化される。これらの視覚的イラストは、ユーザに対する初期選択の補佐として作用する。カードが、例えば、部屋の壁におけるスロットであり得る、読み取り器へ挿入されると、場面は有効状態にされ、読み取り器になお留まったままのカードインターフェイス、及び/又は読み取り器インターフェイスは、選択された場面を調整するように使用され得る。例えば、カードがディスク形状を有する場合、調光又は場面の色の変更などの場面制御は、調光又は色変更モードのそれぞれにおいて、読み取り器のスロットにおけるディスクを回転させることによって達成され得る。」

(5)「【0021】
図2A-2Cは、少なくとも1つのカード及び読み取り器を含む相互作用システム200の正面、側面及び上面図を示し、この場合、カード読み取り器210・215の上面図は、それぞれのカード読み取り器210・215のスロット230(図2A及び2B)に挿入される円状カード220及び長方形カード225などの非円状カードを示す。スロット230は、カードを受け入れ、カードに記憶されるデータを読み取ることが可能であるいかなる種類の入力装置であり得ることを理解されるべきである。例えば、図2Bに示されるように、入力装置は、スロット230の代わりに又は加えて、カードが位置されるカード読み取り器の上部表面232としてなどのいずれかの表面であり得、この場合、表面232は、例えば、読み取り器を保持する壁234から延在し、カードをスライド可能に保持し、例えば、回転を含むスライド、及びカードの運動を可能にする。」

(6)「【0024】
図2Cにおいて示されるように、複数の場面の表現が、円状ディスク220に関する未完のパイ形状の場面イラスト250、及び長方形ディスク225において表示されるボックス形状(例えば、長方形)場面255として表示され得る。円状ディスク220に関して、パイ形状の場面250のうちの1つは、選択されるパイ形状場面が矢印240の近くに位置するように、円状ディスク220を回転させることによって、選択され得る。長方形ディスク225に関して、ボックス形状場面255のうちの1つは、選択されるボックス形状場面イラスト/表現255を矢印245の近くに位置するように、長方形ディスク225を(矢印260によって示されるようにカード読み取り器へ向かって又はから離れて)スライドさせることによって、選択され得る。
【0025】
カード及び/又は読み取り器は、様々な機能を実現させるために、カードが挿入される又は読み取り器に置かれる際に無線で通信するなど、読み取り器と通信する時に、ハードウェアキー262・264・266・268、又はカードタッチスクリーン280・285及び/又は読み取り器タッチスクリーン290・295などにおけるソフトウェアキー272・274・276・278を有し得る。例えば、カード及び/又は読み取り器におけるキーは、様々なモード又は場面の中から切り替えをするために使用され得、この場合、現在のモード又は場面の指示が、カードスクリーン280・285及び/又は読み取り器スクリーン290・295に表示され得る。
【0026】
選択された場面が、例えばスロットへのカード挿入又は読み取り器表面232へのカード配置をして有効状態にされると、有効状態にされた場面は、その後、読み取り器の及び/又はカードが読み取り器表面232へ配置され、アクセス可能なインターフェイスキー及び/又はスクリーンを有する場合にはカードのユーザインターフェイスを介して制御され得る。
【0027】
カード/読み取り器のインターフェイスキー/スクリーンを使用することに加えて又は代えて、有効状態にされる場面を制御することは、カードの形状に依存して特定の方向へカードを動かすことによって実行され得る。例えば、場面若しくは個別の照明ユニット又は他の制御可能装置が、時計回り又は反時計回り297に長方形又はディスク形状カード220を回転させることにより、又は長方形カード225を右又は左方向298へスライドさせることによって、選択及び/又は制御され得る。」

(7)「【0029】
図3は、図2において示される相互作用システム200のブロック図300を示す。図3に示されるように、カード310は、少なくとも1つの制御可能装置340の初期場面設定などの、カード310のメモリ330において含まれるデータを読み取る読み取り器320へ動作可能に接続される。例えば、カードメモリ330において記憶される場面データに従い、静止画又はストリーミングビデオを含む、部屋の壁又は天井などの表面に所望な画像を投影する及び/又は環境を照らす少なくとも1つの光源及び/又は投影器を含む様々な制御可能装置340が設けられ得る。光源及び/又は投影器は、例えば、操作可能な鏡などを介して所望な方向に照明又は画像を供給するために、物理的に又は電子的に操作可能であり得る。
【0030】
読み取り器320は、読み取り器320によって読み取られるシステムメモリ360及び/又はカードメモリ330において記憶されるプログラムに基づく命令の実行などにより記述されように、所望な動作行動を実行するように構成される処理器350へ動作可能に結合される。システムメモリ360は、オペレーティングシステムなどの、システムオペレーションに関する他のデータを記憶する。例えば、処理器350は、読み取り器320が、カードメモリ330から場面データを読み取ることに応答して、場面を有効状態にするように構成され得る。・・・」

(8)「【0032】
当然、読み出し器は、携帯型読み取り器であり得る、又は更なる携帯型読み取り器が、図2Bに示される壁234などの部屋表面へ固定される読み取り器に加えて設けられ得る。携帯型読み取り器は、RF、IR、レーザ及びソナーなどの、いずれかの無線チャネルを介してシステム処理器350及び/又はカード310と通信する。同様に、システム処理器350は、制御可能装置340と無線で通信及び制御し、制御可能装置340は、所用又は所望なRFIDタグ及び読み取り器がなどの、送受信器及び固有識別子又はタグなどの様々な装置を有し得、この場合、類似の装置が、カード/読み取り器に含まれ得る。当然、無線通信の代わりに、いずれかの通信も、ワイヤ、ケーブル、光ファイバなどを介して実施化され得る。」

図2C


図3

(9)上記(5)及び(6)によれば、「円状カード220」、「円状ディスク220」及び「ディスク形状カード220」は同じものであり、以下は、主に「円状カード220」を用いるものとする。また、上記(7)の【0029】によれば、図3は、図2に示される相互作用システム200のブロック図であるから、図3に示される、「カード310」、「読み取り器320」は、それぞれ、図2Cに示される、「円状カード220」、「カード読み取り器210」に対応するものである。

(10)上記(5)、上記(6)の【0025】、上記(9)及び図2Cによれば、カード読み取り器210は、円状カード220と無線で通信すると認められる。

(11)上記(7)、(9)、図2C及び図3によれば、相互作用システム200は、光源である制御可能装置340と、処理器350とを備えると認められ、上記(8)も参酌すると、処理器350は、カード読み取り器210と通信し、光源である制御可能装置340を制御すると認められ、上記(4)及び(6)の【0027】も参酌すると、相互作用システム200は、円状カード220がカード読み取り器210に挿入された状態で、時計回り又は反時計回り297に円状カード220を回転させることにより、光源である制御可能装置340の調光又は色変更を行うと認められる。

(12)上記(9)?(11)を総合すると、引用文献1には、相互作用システム200として、以下の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。

「光源である制御可能装置340と、
円状カード220と無線で通信するカード読み取り器210と通信し、光源である制御可能装置340を制御する処理器350と、
を備え、
円状カード220がカード読み取り器210に挿入された状態で、時計回り又は反時計回り297に円状カード220を回転させることにより、光源である制御可能装置340の調光又は色変更を行う相互作用システム200。」

(13)上記(1)によれば、光源などの制御可能装置340は、読み取り器350へカードを挿入することに応答して有効状態となるものであるから、上記(9)も参酌すると、光源である制御可能装置340は、円状カード220と無線で通信するカード読み取り器210と通信すると認められ、上記(12)によれば、光源である制御可能装置340は、円状カード220がカード読み取り器210に挿入された状態で、時計回り又は反時計回り297に円状カード220を回転させることにより、調光又は色変更を行うよう構成されると認められる。

(14)上記(13)によれば、引用文献1には、光源である制御可能装置340として、以下の発明(以下、「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。

「円状カード220と無線で通信するカード読み取り器210と通信し、
円状カード220がカード読み取り器210に挿入された状態で、時計回り又は反時計回り297に円状カード220を回転させることにより、調光又は色変更を行うよう構成される、光源である制御可能装置340。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図面とともに以下の記載がある。

(1)「【0010】
【発明の実施の形態】
第1の実施形態に係る照明器具用制御装置について、図1?図5を参照して説明する。
図1はこの制御装置の使用方法について示している。(A)において、10で示す装置は、例えば床やテーブル上に設置した照明器具用制御装置である。この制御装置10に、上方の反射物体(この例では、この制御装置10を利用しようとする人の手H)までの距離を計測する距離計測手段を備えている。この例では距離区間として区間A、区間1、区間2、区間3をそれぞれ設定していて、区間1に手をかざせば第1の照明器具の点灯/消灯状態が反転し、区間2に手をかざせば第2の照明器具の点灯/消灯状態が反転し、同様に区間3に手をかざせば第3の照明器具の点灯/消灯状態が反転する。さらに、区間Aに手をかざせば第1?第3の全ての照明器具が点灯または消灯する。
【0011】
第2の照明器具が消灯状態である時、図1の(A)に示すように、手Hを区間2にかざせば第2の照明器具が点灯する。そして、手Hを制御装置10の上面(距離計測部)からの距離が変わるように上下動すると、それに合わせて第2の照明器具の明るさが変化する。例えば手Hを高く上げるほど明るくなり、下げるほど暗くなる。このときの調光範囲と各区間とは関係が無く、最初に手をかざした位置からの上下動の距離に応じて調光を行う。」

図1


3 引用文献3について
引用文献3には、以下の記載がある。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は歯科医院において歯の治療を行う時に患者の口腔内を照明するデンタルライトにおいて、患者の治療を行うための照度とコンポジットレジンを使用している時の治療時の照度との切り換えを、非接触型センサに手をかざす等することによって行うようにしたデンタルライトの照度調整装置に関する。」

(2)「【0005】本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、デンタルライトの通常の治療時における照度とコンポジットモード時の照度の変更をスイッチに触れることなく行え、また、デンタルライトのオン・オフと前記照度の切り換えとを非接触型センサにかざす時間によって選択することが可能で、さらに、歯科医の好みの照度を一度設定して記憶させることで、それ以降は歯科医毎に設定されたスイッチを選択することで、前記デンタルライトの好みの照度を得ることができるデンタルライトの照度調整装置を提供せんとするにある。」

4 引用文献4について
引用文献4には、以下の記載がある。

(1)「【0022】
したがって、照明装置100の点灯/消灯を切り替えたい使用者は、一旦手をかざした後、5秒以内に再び手をかざすという動作を行わなければならない。すなわち、一旦手をかざしただけでは、照明装置100の点灯/消灯は、切り替わらないのである。このようにして、照明装置100の誤動作を防止しているのである。つまり、点灯状態の切り替えを意図していない使用者や、使用者以外の反射体から反射光S0’が入力されたとしても、所定時間内に所定回数の反射光S0’が入力されなければ点灯状態の切り替えが行われないので、誤動作を防止することができるのである。・・・」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1-1とを対比すると、後者における「光源である制御可能装置340」は、前者における「照明器具」に相当し、以下同様に、「カード読み取り器210」は「リーダー」に、「通信」することは「通信」することに、「処理器350」は「コントローラ」に、「備え」ることは「備え」ることに、「相互作用システム200」は「光源である制御可能装置340の調光又は色変更を行う」から「照明システム」に相当する。
後者における「円状カード220」は、カード読み取り器210と無線で通信することにより、カード読み取り器210が円状カード220のデータを読み取るものであるから、前者における「非接触型情報記憶媒体」に相当し、後者における「円状カード220と無線で通信するカード読み取り器210と通信し、光源である制御可能装置340を制御する処理器350」は、前者における「非接触型情報記憶媒体の読み取りを行うリーダと通信し、前記照明器具を照明制御するコントローラ」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

<一致点1>
「照明器具と、
非接触型情報記憶媒体の読み取りを行うリーダと通信し、前記照明器具を照明制御するコントローラと、
を備える、
照明システム。」

<相違点1>
本願発明1は、「前記リーダで前記非接触型情報記憶媒体に記憶されたID情報の読み取りが行われ、前記ID情報に前記照明器具がひもづけられている場合に、前記リーダに対する前記非接触型情報記憶媒体のかざし方の違いに基づいて、前記コントローラが照明制御を行い、前記非接触型情報記憶媒体の第一のかざし方を前記リーダが読み取ったときに前記照明器具の調光率を増加させ、前記非接触型情報記憶媒体の前記第一のかざし方と異なる第二のかざし方を前記リーダが読み取ったときに前記照明器具の調光率を低下させるように構築され、前記第一のかざし方と前記第二のかざし方は、前記リーダが前記ID情報を読み取ることで判別される」のに対し、
引用発明1-1は、「円状カード220がカード読み取り器210に挿入された状態で、時計回り又は反時計回り297に円状カード220を回転させることにより、光源である制御可能装置340の調光又は色変更を行う」点。

(2)判断
相違点1について検討する。
引用文献2には、照明器具用制御装置において、最初に手をかざした位置からの上下動の距離に応じて調光を行うこと等が記載されているが、リーダが非接触型情報記憶媒体からID情報を読み取ることで判別される、リーダに対する非接触型情報記憶媒体のかざし方について、何ら記載されておらず、示唆もない。
よって、引用発明1-1に、引用文献2に記載された事項を適用しても、相違点1に係る本願発明1の構成にはならない。
そして、相違点1に係る本願発明1の構成により、本願発明1は、「『かざし方の違い』に基づいた照明制御を行うので、1つの記憶媒体を用いて実現可能な照明制御の種類を増やすことができる。」(本願の明細書の段落【0025】)という格別の作用・効果を奏するものである。
なお、原査定において、請求項2に対し引用された引用文献3には、デンタルライトのオン・オフと照度の切り換えとを非接触型センサに手をかざす時間によって選択すること等が記載され、請求項3に対し引用された引用文献4には、一旦手をかざした後、5秒以内に再び手をかざすという動作を行うことによって、照明装置の点灯/消灯を切り替えること等が記載されているが、いずれにも、リーダが非接触型情報記憶媒体からID情報を読み取ることで判別される、リーダに対する非接触型情報記憶媒体のかざし方について、何ら記載されておらず、示唆もない。
以上によれば、本願発明1は、引用発明1-1及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
上記1(1)を参照すると、本願発明2と引用発明1-1の一致点は、上記一致点1と同じであり、その相違点は以下のとおりとなる。

<相違点2>
本願発明2は、「前記リーダで前記非接触型情報記憶媒体に記憶されたID情報の読み取りが行われ、前記ID情報に前記照明器具がひもづけられている場合に、前記リーダに対する前記非接触型情報記憶媒体のかざし方の違いに基づいて、前記コントローラが照明制御を行い、前記リーダに対して前記非接触型情報記憶媒体をかざし続ける時間の長短に基づいて、前記コントローラが複数の異なる照明制御を選択的に行い、前記非接触型情報記憶媒体をかざし続ける時間は、前記リーダによるデータ読み取り開始からデータ読み取り終了までの時間長である」のに対し、
引用発明1-1は、「円状カード220がカード読み取り器210に挿入された状態で、時計回り又は反時計回り297に円状カード220を回転させることにより、光源である制御可能装置340の調光又は色変更を行う」点。

(2)判断
相違点2について検討する。
引用文献3には、リーダによるデータ読み取り開始からデータ読み取り終了までの時間長の長短に基づいて、異なる照明制御を選択的に行うことについて、何ら記載されておらず、示唆もないから、引用発明1-1に、引用文献3に記載された事項を適用しても、相違点2に係る本願発明2の構成にはならない。
そして 、相違点2に係る本願発明2の構成により、本願発明2は、「『かざし続ける時間の長短』に基づいた照明制御を行うので、1つの記憶媒体を用いて実現可能な照明制御の種類を増やすことができる。」(本願の明細書の段落【0025】)という格別の作用・効果を奏するものである。
なお、原査定において、請求項1に対し引用された引用文献2、及び、請求項3に対し引用された引用文献4には、いずれにも、リーダが非接触型情報記憶媒体からID情報を読み取ることで判別される、リーダに対する非接触型情報記憶媒体のかざし方について、何ら記載されておらず、示唆もない。
以上によれば、本願発明2は、引用発明1-1及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明3について
(1)対比
上記1(1)を参照すると、本願発明3と引用発明1-1の一致点は、上記一致点1と同じであり、その相違点は以下のとおりとなる。

<相違点3>
本願発明3は、「前記リーダで前記非接触型情報記憶媒体に記憶されたID情報の読み取りが行われ、前記ID情報に前記照明器具がひもづけられている場合に、前記リーダに対する前記非接触型情報記憶媒体のかざし方の違いに基づいて、前記コントローラが照明制御を行い、前記リーダに対して前記非接触型情報記憶媒体を繰り返しかざした回数に基づいて、前記コントローラが複数の異なる照明制御を選択的に行い、前記かざした回数は、前記リーダによる前記ID情報の検出回数である」のに対し、
引用発明1-1は、「円状カード220がカード読み取り器210に挿入された状態で、時計回り又は反時計回り297に円状カード220を回転させることにより、光源である制御可能装置340の調光又は色変更を行う」点。

(2)判断
相違点3について検討する。
引用文献4には、リーダによる非接触型情報記憶媒体からのID情報の検出回数に基づいて、異なる照明制御を選択的に行うことについて、何ら記載されておらず、示唆もないから、引用発明1-1に、引用文献4に記載された事項を適用しても、相違点3に係る本願発明3の構成にはならない。
そして 、相違点3に係る本願発明3の構成により、本願発明3は、「『繰り返しかざした回数』に基づいた照明制御を行うので、1つの記憶媒体を用いて実現可能な照明制御の種類を増やすことができる。」(本願の明細書の段落【0025】)という格別の作用・効果を奏するものである。
なお、原査定において、請求項1に対し引用された引用文献2、及び、請求項2に対し引用された引用文献3には、いずれにも、リーダが非接触型情報記憶媒体からID情報を読み取ることで判別される、リーダに対する非接触型情報記憶媒体のかざし方について、何ら記載されておらず、示唆もない。
以上によれば、本願発明3は、引用発明1-1及び引用文献4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明4について
(1)対比
上記1(1)を参照すると、本願発明4と引用発明1-2の一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

<一致点2>
「非接触型情報記憶媒体の読み取りを行うリーダと通信する、照明器具。」

<相違点4>
本願発明4は、「前記ID情報に自身がひもづけられている場合に、前記リーダに対する前記非接触型情報記憶媒体のかざし方の違いに基づいて照明制御を行うように構築され、前記非接触型情報記憶媒体の第一のかざし方を前記リーダが読み取ったときに照明器具の調光率を増加させ、前記非接触型情報記憶媒体の前記第一のかざし方と異なる第二のかざし方を前記リーダが読み取ったときに前記照明器具の調光率を低下させるように構築され、前記第一のかざし方と前記第二のかざし方は、前記リーダが前記ID情報を読み取ることで判別される」のに対し、
引用発明1-2は、「円状カード220がカード読み取り器210に挿入された状態で、時計回り又は反時計回り297に円状カード220を回転させることにより、調光又は色変更を行うよう構成される」点。

(2)判断
相違点4について検討する。
相違点4は相違点1と同様であるから、上記1(2)で説示したのと同様に、引用発明1-2に、引用文献2に記載された事項を適用しても、相違点4に係る本願発明4に構成にはならない。
そして、相違点4に係る本願発明4の構成により、本願発明4は、「『かざし方の違い』に基づいた照明制御を行うので、1つの記憶媒体を用いて実現可能な照明制御の種類を増やすことができる。」(本願の明細書の段落【0025】)という格別の作用・効果を奏するものである。
なお、原査定において、請求項2に対し引用された引用文献3、及び、請求項3に対し引用された引用文献4には、いずれにも、リーダが非接触型情報記憶媒体からID情報を読み取ることで判別される、リーダに対する非接触型情報記憶媒体のかざし方について、何ら記載されておらず、示唆もない。
以上によれば、本願発明4は、引用発明1-2及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
上記第5で説示したとおり、当業者であっても、本願発明1,4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるといえず、本願発明2は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるといえず、本願発明3は、引用文献1に記載された発明及び引用文献4に記載された事項に基いて、本願出願前に当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の拒絶理由は維持できない。

第7 当審拒絶理由について
・特許法第36条第6項第2項について
当審では、請求項2には、「前記非接触型情報記憶媒体をかざし続ける時間は、前記リーダによる前記
ID情報の読み取り開始から前記ID情報の読み取り終了までの時間長である」(以下、「記載1」という。)と記載されており、特に、前記下線部は、文言上、非接触型情報記憶媒体に記憶されたID情報自体を読み取る時間の長さを表すものとも解されるが、通常、ID情報自体の読み取り時間は実質的に同じであり、そうすると、上記記載は、同項における「前記リーダに対して前記非接触型情報記憶媒体をかざし続ける時間の長短に基づいて、前記コントローラが複数の異なる照明制御を選択的に行い」なる記載と整合せず、不明確であるとの拒絶理由を通知したが、令和3年6月18日の手続補正において、上記記載1は、「前記非接触型情報記憶媒体をかざし続ける時間は、前記リーダによるデータ読み取り開始からデータ読み取り終了までの時間長である」と補正されて、当該拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-08-24 
出願番号 特願2015-227974(P2015-227974)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H05B)
P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野木 新治  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
八木 誠
発明の名称 照明器具、照明システム  
代理人 高橋 英樹  
代理人 久野 淑己  
代理人 高田 守  
代理人 高田 守  
代理人 久野 淑己  
代理人 高橋 英樹  

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