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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A24F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A24F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A24F
管理番号 1377434
審判番号 不服2020-1680  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-06 
確定日 2021-08-24 
事件の表示 特願2017-145544「物質を吸入するためのエアロゾル装置、物質を吸入する方法、及びその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月21日出願公開、特開2017-221213〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)12月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年12月18日(米国)、2008年12月16日(米国))を国際出願日とする特願2010-539818号の一部を平成27年7月29日に新たな特許出願とした特願2015-149132号について、さらにその一部を平成29年7月27日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年10月29日付けで拒絶の理由の通知
令和元年5月7日に意見書及び手続補正書の提出
令和元年9月30日付けで拒絶査定(10月8日送達)
令和2年2月6日に拒絶査定不服審判の請求及びその請求と同時に手続補正書の提出
令和2年10月1日付けで当審における拒絶の理由の通知
令和3年2月4日に意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?20に係る発明は、令和3年2月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項10に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項10】
室炉と、カートリッジとを備えるエアロゾル発生装置であって、前記カートリッジは揮発性材料を含むケースと前記ケース上の蓋とを備え、
前記装置は、前記揮発性材料を、伝導もしくは対流によって少なくとも目標温度に加熱するときに、ホフマンアナライトのレベルを低減したエアロゾルを発生させ、
前記揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が、前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低く、
前記揮発性材料は、タバコ製品と、プロピレングリコール及びグリセリンを含んでいるエアロゾルを形成する媒体とを含み、
前記エアロゾルは、生成後にろ過されることなく直接使用者に送達され、
前記エアロゾル中のアンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、およびスチレンの少なくとも1つのレベルが、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品(当審注:「タバコ製品」の誤記である。)の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され、前記使用者によって前記エアロゾルが吐き出される際に視覚的蒸気を生成する量でプロピレングリコールおよびグリセリンが存在する、エアロゾル発生装置。」

第3 令和3年2月4日付けで通知した拒絶の理由
当審において、令和3年2月4日付けで通知した拒絶の理由のうち、本願の請求項10に係る発明についての理由1?4は、概略以下のとおりである。
1 理由1(明確性)
本願の請求項10において、「基準のたばこを燃焼させることによって発生する物質」(15行)が、どのようなものであるのか不明であり、さらに、「基準のたばこ」自体も明確ではなく、仮に「基準のたばこ」が明確であるとしても、「燃焼」の条件(温度等)や、燃焼させる「たばこ」の量によって、発生する物質の種類や量が異なり得るから、「基準のたばこを燃焼させることによって発生する物質」は明確でない。
したがって、本願の請求項10に係る発明は不明確であるから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2(サポート要件)
本願の発明の詳細な説明には、本願の請求項10に記載されたホフマンアナライト及び化学物質の少なくとも1つのレベルが、基準のたばこを燃焼させることによって発生する物質と比較して少なくとも70%低減されることを如何にして達成するのか技術的な根拠が記載されておらず、本願の優先日前の技術常識を考慮しても理解できないから、本願の請求項10に係る発明は、本願明細書の段落0003に記載された課題を解決できるとはいえない。
また、列記されたホフマンアナライト及び化学物質の少なくとも1つのレベルが、基準のたばこを燃焼させることによって発生する物質と比較して少なくとも70%低減されたとしても、低減されなかったホフマンアナライト及び化学物質が多量である場合は、上記課題が解決できたとはいうことはできない。
したがって、本願の請求項10に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 理由3(実施可能要件)
本願の発明の詳細な説明には、列記されたすべてのホフマンアナライト及び化学物質が70%低減されたことを示す実験結果及び方法等は、記載されておらず、「基準のたばこを燃焼させることによって発生する物質」の具体的な量、それを発生させる具体的な方法が十分に記載されていない。
したがって、本願は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願の請求項10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

4 理由4(進歩性)
本願の請求項10に係る発明は、本願の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3、4に例証される周知事項及び引用文献5?8に例証される周知技術に基いて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許出願公開第2007/0102013号明細書(翻訳文として、特表2009-509523号公報を参照。)
引用文献2:国際公開第2007/012007号(翻訳文として、特表2009-502136号公報を参照。)
引用文献3:実公昭54-34000号公報(周知事項を示す文献)
引用文献4:特開平6-114105号公報(周知事項を示す文献)
引用文献5:特開平3-90163号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開平11-164679号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:特開2005-34021号公報(周知技術を示す文献)
引用文献8:国際公開第2003/056949号(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1 理由1?3について
(1)発明の詳細な説明の記載内容
本願発明の「前記エアロゾル中のアンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、およびスチレンの少なくとも1つのレベルが、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され」という特定事項(以下「特定事項A」という。)に関し、本願明細書の発明の詳細な説明には、次の内容が記載されている(下線は、当審で付したものである。)。

ア 発明が解決しようとする課題
「【0003】
エアロゾル化されたタバコ製品を送達できる装置を開発することおよび販売することの難しさは、視覚的および物理的な使用の魅力という点で使用者の要望に応えることである。使用者に対して、目視可能な蒸気など、喫煙による視覚的な類似の感覚を提供しながら、様々な異なる物質をエアロゾル化するために複数回使用することのできる装置が望まれる。また、タバコ製品をエアロゾル化し、喫煙と比較して、使用者に送達されるホフマンアナライトや突然変異誘発性化合物を低減することのできる装置および製品が望ましい。」

イ 課題を解決するための手段
「【0004】
本発明の一態様において、材料をエアロゾル化する装置に使用するためのカートリッジが開示されるが、これは高粘度の揮発性材料を収容しているケース(シェル)と、ケースの上を封止する蓋とを含み、それによって高粘度の揮発性材料を収容している封止されたカートリッジを形成する。蓋は浸透性とすることができ、浸透された蓋は高粘度の揮発性材料の加熱によって発生するエアロゾルの出口とすることができる。また、蓋はヒートシール可能なフィルムとすることができ、このヒートシール可能なフィルムは、ベース層とヒートシール可能な層とを含む。カートリッジのケースまたはカートリッジの蓋は、アルミニウムを含むことができる。本発明のカートリッジのケースがフランジを備えているとき、蓋はフランジの上を封止することができる。
【0005】
カートリッジはケース内に収容される材料をエアロゾル化するために必要な温度まで加熱することができ、好ましくは400°F(204℃)未満まで加熱される。カートリッジ内の高粘度の揮発性材料はエアロゾルを形成する媒体、プロピレングリコール、若しくはグリセリンの少なくとも1つで構成することができる。高粘度の揮発性材料は、タバコを含むことができる。
・・・
【0011】
他の態様において、本発明は喫煙を模倣する装置を提供し、装置は植物物質を含む高粘度の材料を約150℃に加熱することによって人による吸入用のエアロゾルを発生し、エアロゾルは口腔または呼吸器管の中に触覚の応答を作り出す。高粘度材料はエアロゾルを形成する媒体を含むことができ、エアロゾルを形成する媒体はプロピレングリコールおよびグリセリンの少なくとも1つを含んで加熱されるとき可視のエアロゾルを生成することができる。また、高粘度材料はタバコおよび香料を含むこともできる。
・・・
【0016】
本発明の他の態様において、エアロゾル発生装置が開示され、装置は喫煙可能な材料を目標温度に加熱すると実質的に少なくとも一種類のホフマンアナライトを含まないエアロゾルを発生する。ホフマンアナライトは、アンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、およびスチレンからなる群から選択することができる。
【0017】
装置の中で高粘度材料を加熱するための目標温度は、約100℃から約200℃とすることができる。目標温度は約150℃であるのが好ましく、目標温度で直径約2ミクロン未満の粒子を含むエアロゾルが発生する。
【0018】
また、本発明はエアロゾル発生装置を提供し、装置は喫煙可能な材料を目標温度に加熱するとき通常の刻みタバコの紙巻きたばこよりもホフマンアナライトが少なくとも70%少ないエアロゾルを発生し、ホフマンアナライトは、アンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、およびスチレンからなる群から選択することができる。通常の刻みタバコの紙巻きたばこはフィルタを含むことができる。
【0019】
装置の中で高粘度材料を加熱するための目標温度は、約100℃から約200℃とすることができる。目標温度は約150℃であるのが好ましく、目標温度で直径約2ミクロン未満の粒子を含むエアロゾルが発生する。」

ウ 発明を実施するための形態
「【0029】
I エアロゾル発生装置
本発明の例示的装置は図1に示される。装置100は装置100内に収容された製品をエアロゾル化するために十分高い温度を生成することが可能である。本発明の装置はマウスピース110と、ヒータ122、室炉124、燃料タンク126、および運転温度を維持するための調節手段を備える発火器を有する本体120とを含むことができる。装置の運転温度の調節手段の例は、バイメタル式アクチュエータである。または、ブタンの流れを調節するためにパラフィンを充填した伸び縮みする部品を用いることができる。または、例えば熱電対センサによって現在の温度を測定し、例えばマイクロ調節手段によって所定温度と比較し、電気機械的バルブ、例えばサーボまたはソレノイドバルブを制御することによるシステムを用いることができる。使用者の選択した温度は、上述のように、このシステムへの入力として用いることができる。
・・・
【0034】
典型的に装置の運転温度は200℃以下である。しばしば製品をエアロゾル化するために必要な温度は約100?200℃である。いくつかの実施形態において、製品をエアロゾル化するために必要な温度は約150℃である。装置内の製品がエアロゾル化されると、エアロゾル化された製品はマウスピースを通って使用者に提供される。多くの場合、本発明の装置は紙巻きたばこ、パイプ、またはシガーホルダなどの喫煙装置を模倣するように設計される。
・・・
【0052】
図3に示すように、本発明の装置300は装置300の室炉324内に挿入することのできるカートリッジ370内に収容された材料のエアロゾル化に用いることができる。点火器のスパークによって(ガスの流れの開始直後)ガスが点火し、熱はヒータ組み立て体322全体への伝導を開始する。熱は伝導、対流、および/または放射によってカートリッジ370に伝わる。カートリッジ370は、熱伝導のための表面接触を最大にするように室炉324を充填するための形状とすることができる。カートリッジ370が加熱されると蒸気がカートリッジ370内およびそのすぐ上の空間に発生する。使用者が装置300を吸い込むと、新鮮な空気が空気入口から入り、蒸気と混合し、混合物は吸入通路を経由して使用者に送達される。空気入口または複数の入口はカートリッジ370から蒸気の引き抜きを改善するために下方に向けることができる。また、空気入口はカートリッジ370の上でマウスピース310と斜めに、またはケース自体の横に向けることができる。空気入口または複数の入口は、周囲空気を室炉(チャンバ)324の中に入れて、運転温度に影響を与えないで蒸気と攪拌する直径と方向を有することができる。また、空気入口孔は、流入して室炉424で発生した蒸気と混合する周囲空気の速度を、設定速度または使用者の選択する速度のいずれかに調節することができる。例えば、装置300に入る空気の速度は使用者にあたかも煙が紙巻きたばこを通って吸い込まれるような知覚を与えることができる。カートリッジ370が用いられると、装置300は停止することができ、カートリッジ370は装置300の室炉324を開くことによって取り外すことができる。カートリッジ370は手またはカートリッジ370を迅速かつ容易に取り外すことのできる機構によって取り外すことができる。この機構は、装置300の他の部品が移動または取り外されるように、カートリッジ370を射出するピンまたは滑り部品の使用を含むことができる。また、取り外し機構は外部物体の導入を含むこともできる。」
「 【0070】
III エアロゾル化された材料
当業者であれば明らかなように、エアロゾル化して使用者によって吸入することのできる任意の材料を本発明の装置またはカートリッジの中に組み込むことができる。材料が、呼吸器管の中の触覚としての応答という点で、または吸入された材料の吐き出しに関する可視のフィードバックという点で、経験を使用者に与えることは特に興味深い。例えば、これに限定されないが、タバコ、天然または人工香料、コーヒー粉またはコーヒー豆、ミント、ローマカミツレ、レモン、蜂蜜、茶葉、ココア、および他の植物に基づく他のタバコではない代替物を含むものなど多くの材料を本発明と一緒に用いることが考えられる。また、本発明の装置またはカートリッジは、医薬品化合物または合成化合物を医薬用または娯楽用に両立して使用できることが意図されている。比較的低い温度で有害な劣化生成物なしに蒸発(または揮発)できるそれらの任意の化合物は、本発明のカートリッジまたは装置と一緒に使用するのに適している。化合物の例には、メントール、カフェイン、タウリン、およびニコチンが含まれるがこれに限定されない。
【0071】
植物に含まれる活性成分は異なる温度で蒸発する。装置は例えば、特定の製品を蒸発させる目的で単一の安定な温度を確立するように較正することができる。また、調節手段を用いて様々な温度設定を選択することができる。使用者は使用するカートリッジの種類に基づいてその設定を選択するであろう。また、調節手段はバルブの流量を変化させることなどによって望ましい温度を機械的に得ることができ、または電気機械的バルブおよび中間のマイクロ調節手段などによって電気的に得ることができる。例えば、本発明の装置の運転温度を変更するには、室炉をバイメタルのディスクなどの温度調節手段に対して動かすことができる。
「 【0080】
V ホフマンアナライト
紙巻きたばこの煙は数千の化学成分の複雑な混合物である。これらの多くは喫煙に関係する疾患と結びついている。ホフマンアナライトの表は、紙巻きたばこの煙に見出されるさらに有害な化合物の標準的な基準であり、主要な煙に存在する約44種の異なるアナライトが認められる。それは生化学者でタバコの発癌現象の先導的権威者であるディートリッヒ・ホフマンに敬意を表して名づけられている。この表は喫煙の健康危険性に通常伴う化学物質を含む。これらのアナライトおよび化学物質は、例えば、アンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、スチレン、およびその他多くを含む。喫煙具からの主要煙の中で、いくつかのホフマンアナライトは望ましくないと判断されている。このように、ホフマンアナライトの低減について広範囲の研究が行われてきた。また、ホフマンアナライトは発癌性があり、喫煙または喫煙模倣の装置が望ましい。
【0081】
本発明の装置を用いて、材料を燃焼させることなくタバコ材料をエアロゾル化することができる。タバコをエアロゾル化することによって、多くの望ましくない化学物質およびホフマンアナライトが使用者によって吸入されない。例えば、本発明の装置はホフマンアナライトの吸入を約70%以上低減することができる。いくつかの実施形態において、本発明の装置はホフマンアナライトの吸入を約50%以上低減することができる。いくつかの実施形態において、本発明の装置はホフマンアナライトの吸入を約60%以上低減することができる。いくつかの実施形態において、本発明の装置はホフマンアナライトの吸入を約70%以上低減することができる。いくつかの実施形態において、本発明の装置はホフマンアナライトの吸入を約80%以上低減することができる。いくつかの実施形態において、本発明の装置はホフマンアナライトの吸入を約90%以上低減することができる。」
「 【0082】
VI エームス試験
細菌の復帰突然変異試験は元来エームスらによって開発された。エームス試験はヒトに発癌現象を招く化合物の予測として働く。方法は広く適用され、FDAはそれを新しい食品添加物および薬物に対するより総合的な研究の一部として組み込んでいる。同じ試験はタバコ製品およびタバコの煙の毒性研究に広く用いられてきた。エームス試験は化学化合物の突然変異誘発性の可能性を評価する生化学的試験である。癌はしばしばDNA損傷に関連するので、試験は化合物の発癌可能性を予測する迅速な試験としても働く。これに比べて、齧歯動物に行われた発癌性の標準的な試験は完了まで数年を要し、高価である。・・・
【0083】
下の実施例2に示したように、タバコ含有材料と一緒に使用するための本発明の装置は、多くの種類のタバコ喫煙に比べてエームス試験結果の顕著な改善を示すことができる。したがって、本発明の装置は、タバコの燃焼または煙に付随するいくつかの重要な発癌性成分を与えることなく、ニコチンなどのタバコの多くの物質を使用者に提供することができる。
【実施例1】
【0084】
紙巻きたばこの煙は数千の化学成分の複雑な混合物である。これらの多くは喫煙に関係する疾患に結びついていた。ホフマンアナライト表は紙巻きたばこの煙に見出されるさらに有害な化合物の標準的な基準である。52種の目標化合物がホフマン表に基づいて選択されるであろう。本発明の装置によって生成された蒸気はこれらの目標化合物のレベルを顕著な量(70%以上の低減)低減することが期待される。
【0085】
本発明の試作装置および参照用の紙巻きたばこ(KY2R4F)の成分試験が実験室で実施される。両方の装置の種類からのサンプルは、現場の自動喫煙機械で、カナダの強度型(30秒ごとに55立方センチメートル(cc)の吸吐)の下で得られる。この方法はFTC型(60秒ごとに35ccの吸吐)よりも実際の喫煙状態に近似すると考えられる。アリスタは文献に基づいて目標化合物の分析について広範囲の記録を展開した。これらの記録は試験に用いられる。各アナライトグループについての収集および抽出方法を表1に纏める。
・・・表1は省略・・・」
「【0086】
本発明の装置と参考用の紙巻きたばこの両方について、各目標化合物に5回の繰り返し試験が行われる。2つの品目の間の平均値の差をパーセントとして求める。本発明の装置は参照用の紙巻きたばこに比べて約70%以上ホフマンアナライトのレベルを低減することが期待される。
【実施例2】
【0087】
細菌復帰突然変異試験、または「エームス試験」は人に発癌現象を招く化合物の予測として働く。この試験はタバコ製品およびタバコの煙の毒性研究に広く用いられてきた。本明細書に説明したこの研究の目的は、ネズミチフス菌のTA98菌株における突然変異誘発性について、エームス試験を用いて本発明の煙の濃縮物をスクリーニングすることであった。菌株TA98は、それがネズミチフス菌の中でも最も敏感な菌株であり、様々な突然変異を検出することができる理由から選択された。服用依存性の応答が検出される場合、煙の凝縮物はその菌株について突然変異の誘発性があると考えられる。
【0088】
試験施設:試験物品調製(すなわち、「喫煙」および抽出)、化学成分分析および遺伝子毒性はArista Laboratories,1941 Reymet Road,Richmond,VA.23237にて行った。
【0089】
試験物品の抽出の調製:自動回転喫煙機械(Borgwaldt RM-20CSR)に接続された本発明の装置を用いて、繰り返し毎に、以下のパラメータを用いて3つのカートリッジを「喫煙」した。(1)吸吐容量55ml、(2)吸吐期間30秒、およびISO標準に従う空気流。全粒子状物質(TPM)相を44mmのケンブリッジ・フィルタ・パッド上に収集し、ジメチルスルホキシド(DMSO)の中に抽出した。抽出に続いて直ちに、TPMサンプルを個々の茶色試験瓶に分別し、エームス試験の前に少なくとも-70℃以下で48時間以上貯蔵した。試験のために溶解され使用されると、TPM抽出物は再使用または再冷凍しなかった。
【0090】
突然変異試験(エームス試験):エームス試験は3つの独立した「喫煙」期間中に発生したTPM抽出物で行われた。試験はArista Standard Operating Procedure#TOX001に従って行われた。TPMサンプルは外因性代謝活性システム(S9)の追加により3回繰り返して試験した。各繰り返しサンプルについて、プレート当たり0以上2000μg以下のTPM粒子相の10個の濃縮物を濃縮物当たり最小3つのプレートで試験した。菌株特定の陽性対照試験(S9あり、なしで)および単一の濃縮物(すなわち100μg)のKY2R4F参照用の紙巻きたばこの濃縮物を同時に行った。試験はCanada Official Method 501、第2版、2004-11-01、Arista Standard Operating Procedure#TOX001に従って行った。エームス試験の結果は図16に示される。媒体および陽性対照物、KY2R4F、および各試験で菌株と培養条件に付属して同時に発生した自発的復帰突然変異は予期した研究所の制御限界内でありまたは研究監督者によって化学的に許容可能であると判断された。
【0091】
結果:図16に示すように、研究では、本発明の装置の「喫煙」によって発生した全粒子状物質(TPM)の服用依存性効果は見出せなかった。さらに、全てのTPMサンプルは対照試験のものの半分未満の復帰突然変異率を示した。対照的に、「1R4F」Kentucky参照用の紙巻きたばこ、通常のタバコの紙巻きたばこおよびフィルタ組成物の刊行されたデータはTA98試験菌株について正の傾斜の傾向を有した。D.W.Bombickら、“Chemical and Biological Studies of a New Cigarette that Primarily Heats Tobacco(「主としてタバコを加熱する新しい紙巻きたばこの化学的および生物学的研究、パート3、煙全体のインビトロ毒性」)、Food and Chemical Toxicology,36:183-190(1997)を参照されたい。
【0092】
本明細書において、本発明の好ましい実施形態が示され、詳細に説明されたが、当業者であれば、実施形態が例示のためにのみ提供されたことは明らかである。本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、および代替が当業者には想起されるであろう。本明細書に説明した本発明の実施形態の様々な代替が本発明の実施に用いることができることを理解すべきである。以下の請求項は本発明の範囲を定義し、これらの請求項およびその等価の範囲内の方法と構造はそれによって包含されることが意図される。」

(2)理由1(明確性)について
令和3年2月4日に提出された手続補正書により、補正前の請求項10に記載された「基準のたばこを燃焼させることによって発生する物質」は、本願明細書の段落0018及び0084の記載に基づき、補正後の請求項10において、「一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベル」とされた。
しかしながら、「一本の紙巻きたばこ」は、製造元毎に材料(たばこの葉の種類等)が異なり、発生する物質のレベル、すなわち「前記エアロゾル中のアンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、およびスチレンの少なくとも1つのレベル」(以下「有害な化合物のレベル」ともいう。)も異なるものとなるから、「一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベル」を特定することができず、本願発明は不明確である。
したがって、本願は、特許請求の範囲の請求項10の記載が、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない。

(3)理由2(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)に適合するか否かを検討するにあたり、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討する。
ア 本願発明の課題
特定事項Aに関する本願発明の課題は、上記(1)アによれば、「タバコ製品をエアロゾル化し、喫煙と比較して、使用者に送達されるホフマンアナライトや突然変異誘発性化合物を低減することのできる装置および製品が望ましい。」というものである(以下「本願発明の課題」という。)。

イ 本願発明
本願発明は、上記第2で示したとおりである。

ウ 発明の詳細な説明の記載
本願発明の特定事項Aに関する発明の詳細な説明の記載は、上記(1)のとおりである。

エ 判断
本願発明の特定事項Aについて、発明の詳細な説明には、段落0016、0018、0080?0091において、有害な化合物の標準的な基準であるホフマンアナライトについての記載はあるものの、請求項10に記載されたホフマンアナライト及び化学物質の少なくとも1つのレベルが、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減されることを如何にして達成するのか、技術的な根拠が記載されておらず、本願の優先日前の技術常識を考慮しても理解できない。
なお、請求人は、令和3年2月4日に提出された意見書の3.(2)において、「以上のように、本願明細書には、前記揮発性材料であるたばこ材料を燃焼させないことが明確に記載されています。このため、請求項1,5,10,14には、「前記揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が、前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低く、」のときに、「・・・のレベルが、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され、」であることは、明細書の記載によって十分にサポートされています。」と主張する。
しかしながら、「前記揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が、前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低いこと」と、特定事項Aに列記されたホフマンアナライト及び化学物質の少なくとも1つのレベルが、「少なくとも一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され」ることとの関係は、発明の詳細な説明において、技術的な説明が何らされておらず、本願の優先日前の技術常識を考慮しても当業者が理解することはできない。すなわち、特定事項Aに列記されたホフマンアナライト及び化学物質の少なくとも1つのレベルが少なくとも70%低減したという結果を証明する実験データ等に基づく技術的な説明が記載されていないため、どのような条件の場合にそのような結果になるのか不明であり、実際にそのような結果となることを当業者が認識し確認することができない。さらに、本願発明において、特定事項Aが「前記揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が、前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低いこと」とは別の技術手段により達成されるものも含んでいる可能性も考えられるところ、その別の技術手段を当業者が理解することができない。
そうすると、本願発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ということはできず、また、本願発明の課題を解決できるとはいえない。
また、特定事項Aで列記されたホフマンアナライト及び化学物質の少なくとも1つのレベルが、「少なくとも一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され」たとしても、低減されなかったホフマンアナライト及び化学物質が多量である場合は、本願発明の課題が解決できたとはいうことはできない。
したがって、本願発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(4)理由3(実施可能要件)について
特許法36条4項1号は、発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない旨規定するところ、実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要するので、これを満たすか否かも含めて検討を行う。
本願発明は、特定事項Aを備えるところ、発明の詳細な説明には、列記されたすべてのホフマンアナライト及び化学物質が70%低減されたことを示す実験結果及び方法等は、記載されていない。すなわち、「一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量」の具体的な量、それを発生させる具体的な方法や、本願発明によって発生する物質の具体的な量、それを発生させる具体的な方法が十分に記載されていない。
(なお、本願明細書の発明の詳細な説明には、タバコ製品と、プロピレングリコール及びグリセリンを含む揮発材料がどのようなものであり、また、揮発性材料が100℃以上200℃以下の範囲内のどのような温度でエアロゾル化された場合に、列記されたホフマンアナライト及び化学物質がどの程度低減されたかの具体例は一切記載されておらず、どのようにして列記されたホフマンアナライト及び化学物質を70%低減するのか理解することができない。)
例えば、アンモニアを少なくとも70%低減するには、具体的にどのようにすれば良いのかを発明の詳細な説明から把握することができないし、ニコチンを少なくとも70%低減するには、具体的にどのようにすれば良いのかを発明の詳細な説明から把握することができない。また、アンモニア及びニコチンのそれぞれを少なくとも70%低減するには、具体的にどのようにすれば良いのかを発明の詳細な説明から把握することができない。
そして、当業者が本願発明を実施するにあたり、上述のとおり発明の詳細な説明には特定事項Aについて具体的な記載はされておらず、ホフマンアナライト及び化学物質の少なくとも1つのレベルが、少なくとも70%低減する結果となる実験データ、及び実験条件が具体的に記載されていないから、そのような結果を再現することは困難であり、特定事項Aに列記されたホフマンアナライト及び化学物質のそれぞれのレベルについて、「一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され」るようにするためには、過度の試行錯誤を要するものといわざるを得ない。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(5)まとめ
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 理由4(進歩性)について
本願発明は、理由1で述べたとおり不明確であるが、仮に、特定事項Aの「一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベル」が特定され、本願発明が明確であるとして、理由4について以下に検討する。
(1)引用文献
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献1には、以下の記載がある(なお、翻訳文はファミリー文献である特表2009-509523号公報によるものである。下線は、当審で付したものである。以下同様。)。

「[0023] Turning to FIG. 1, an electrically operated tobacco smoking system 20 according to this disclosure is depicted. The smoking system 20 includes at least a heating system 22 and a tobacco mass that may comprise a plug 24 of cut filler tobacco. The heating system may be an inductively heated arrangement, a resistively heated arrangement, a radiantly heated arrangement, or a convectively heated arrangement. Here, resistively heated arrangements will be described as currently preferred embodiments. The tobacco plug 24 preferably weighs in the range of 5 to 500 mg. For single and multiple puff applications, weights in the range of 5 to 150 mg. are more preferable. Weights in the range of 300 to 500 mg. are more preferable where tobacco is to be used on multiple occasions. The tobacco mass may be made from any type of tobacco, or from any portion of the tobacco plant including, without limitation, sheet products, dust, leaf, stem, and combinations thereof. In the final form, the tobacco mass could involve any type of common tobacco processing steps including, without limitation, blending, flavoring, and the like.

[0024] If desired, the tobacco plug 24 may include a paper or mesh cover or carrier to facilitate handling. When paper is used around the tobacco plug, the paper substrate may have porosity and weight selected according to the particular shape of the heating chamber and the manner in which the tobacco plug 24 is to be used. For example, where the tobacco plug 24 is replaceable, the paper needs to have sufficient strength to maintain integrity of the tobacco plug during handling, removal, and insertion. Moreover, where the paper covers the principal movement of air through the smoking system, the paper needs to have sufficient porosity to allow air movement therethrough. Where a mesh material is selected, mesh opening should be sized small enough to contain a substantial majority, if not all, of the cut filler tobacco particles.

[0025] The tobacco mass may also be formed from tobacco particles. Whether particles or other tobacco cuts are used, the tobacco itself may function as a binder to hold tobacco pieces in a preferred shape. If desired, the tobacco used in the system can be pretreated to enhance flavor generation. Similarly, if desired, flavorants can be provided on the tobacco surface.

[0026] The tobacco mass may be rotationally symmetric in shape or configuration. Moreover, the tobacco mass may be generally cylindrical, disk-like, or generally toroidal. Where a cylindrical configuration is adopted, it may be solid or shell-like with an open center. The particular shape of the tobacco mass is preferably adapted to the shape of the heating apparatus.

[0027] The heating system 22 substantially encloses or surrounds a substantial portion of the tobacco mass such that at least part of the surface of the tobacco mass conforms to the heating apparatus. An actuation system connected with the heating system 22 is operable to electrically energize the heating system 22. The actuation system may include a source of electrical energy such as one or more batteries 37. To preserve battery life and to control activation of the heating system 22, a suitable switch 38 may be connected in series with the batteries 37. Depending on the application, the switch 38 may be a push-button switch, a flow sensing device, or a puff sensing device. A suitable conductor 36 connects the batteries 37, the switch 38, and the heating system 22 in series.

[0028] The heating system 22 is operable to heat the tobacco mass to a temperature in the range of about 150 to about 220 C. to release flavorful volatiles without reaching the tobacco kindling temperature and without generating smoke and/or ash. Further, the heating system defines a heat transfer channel or pathway through which air is directed.

[0029] As shown, the heating system 22 may comprise a generally cylindrical shell having both ends open. As best seen in FIG. 2, the generally cylindrical shell surrounds the sides of the tobacco plug 24. The heating system 22 is electrically energized to generate heat. To that end, the heating system 22 may be connected to a suitable source of electrical energy, such as, for example, domestic power grid, portable power generating devices like an automobile cigarette lighter, batteries, and any other suitable conventional source. The source of energy must be capable of delivering heat from the heating system 22 to the tobacco plug 24 so that the tobacco in the plug is raised to a temperature in the range of about 150 C. to about 220 C. Within this temperature range, the tobacco releases flavorful volatiles that produce a satisfying experience while generating little to no visible smoke.

[0030] The heating system 22 may operate continuously for a period of time corresponding to the length of time normally used to smoke a cigarette. Conventionally, that length of time is typically taken as about 5 to 10 minutes. Alternatively, the heating system 22 may operate intermittently, on demand, for example in response to puffs by the system user.

[0031] In use, the heating system 22 is activated, for example, by a puff sensor or a suitable on-off device. Ambient air 26 is drawn through the open end 28 of the heating system 20 and into the tobacco plug 24. The heating system 22 closely conforms to the periphery of the tobacco plug 24 and heats the tobacco plug 24 to the desired temperature range (about 150 C. to about 220 C.) by conductive and/or convective heat transfer to release flavorful volatiles from the tobacco. As the ambient air 26 moves through the tobacco plug 24, the air 26 entrains the released tobacco volatiles and distills those volatiles by cooling them. As the air with entrained volatiles leaves the second end of the heating system 22, see arrow 30, exposure to ambient air further cools the entrained volatiles to form an aerosol 32 which is delivered from the heating system 22.

[0032] If desired, an aerosol former may be added to the tobacco plug 24. Suitable aerosol formers include, for example, glycerol, propylene glycol, triacetin, and the like, as well as mixtures thereof. Concentrations of aerosol former in the range of about 0 to about 25% by weight can be used. The aerosol formers also enhance tobacco involvement in the aerosol formation.

[0033] After the tobacco plug 24 has been used, it may be removed from the heating system 22 and replaced with a fresh plug or cartridge. The spent tobacco plug 24 may be discarded.

[0034] It will be appreciated by those skilled in the art that the electric tobacco smoking system described herein provides numerous advantages. For example, a smaller amount of tobacco is used so tobacco supplies can be extended. By using less tobacco, the disposable waste from the smoking experience is also reduced. In addition, since the heating system releases principally the flavorful volatiles from the tobacco which may be perceived as more pleasing than the sidestream aroma resulting from cigarette combustion.

[0035] The tobacco plug 24 is not subject to actual combustion as occurs with lit-end smoking articles. Because the electric tobacco smoking system described here does not have a smoldering coal, it presents less risk of starting a fire when carelessly handled than a conventional lit-end cigarette. For the same reason, the smoking system herein described requires less cleaning as there is essentially no ash with which to contend. Furthermore, the disposable waste which does exist has less residual aroma due to the lack of combustion. Moreover, absence of smoke should obviate non-smoker objections to second-hand smoke.

[0036] Of course, various other embodiments of the electric tobacco smoking system are not only possible but also are within the scope of this disclosure. For example (see FIG. 3), the tobacco plug 24 may be substantially enclosed by the heating system 22. In this embodiment, the heating system may include a heater 40 that is received within a generally cylindrical shroud 42. The actuation system of FIG. 3 is like that of FIG. 1 and includes conductors 36, batteries 37, and a switch 38.

[0037] To provide one or more channels for air flow around the heater 40, the heater 40 and/or the shroud 42 may include two or more radially outwardly extending ribs 44, 46 (see FIG. 4) which are operable to space the heater 40 from the shroud 42. The ribs 44, 46 may extend longitudinally along the outer surface of the heater 40. The ribs 44, 46, cooperate with the shroud 42 and the heater 40 to define a pair of preheating chambers or channels 48, 50 through which air can enter the smoking system as indicated by the arrows in FIG. 3. At least one of the ribs 44, 46 also extends axially beyond the heater 40 and functions as a spacer to hold the heater 40 away from the end wall 52 of the shroud 42.

[0038] The cross-sectional area of the channels 48, 50 may be selected as desired. For example, it may be desired to provide a flow area around the heater 40 which is equivalent to the flow area through the inside of the heater 40. Or, it may be desired to provide a flow area equivalent to the flow area through the tobacco plug 24. Regardless of the flow area selected, the heater 40 is preferably spaced from the end wall 52 by a sufficient distance that the flow area at the inner end of the heater 40 is at least as large as the flow area through the channels 48, 50. In this manner, the puff resistance (resistance-to-draw) is defined by the tobacco plug rather than by the assembly of the heater 40 and the shroud 42.

[0039] With the arrangement of FIGS. 3 and 4, air entering the electric tobacco smoking system, see arrows 54, flows axially through the preheating chambers or channels 48, 50 between the heater 40 and the shroud 42. During that time, the air is heated by thermal energy that might otherwise escape from the outer surface of the heater 40. That air then passes around the end of the heater, and flows through the tobacco plug 24 where it picks up flavorful volatiles from the tobacco heated by the heater 40. As the air 54 leaves the heater 40, it cools so that the volatiles condense and form the aerosol 56 for delivery from the heating system 22.

[0040] If desired, the spacing between the heater 40 and the shroud 42 may be accomplished with structures other than the longitudinal ribs described above. For example, discontinuous ribs, radially extending pins, and baffles may be used as desired. Baffles might be used to improve heat transfer to air under some circumstances.

[0041] Thus, the embodiment of FIGS. 3 and 4 improves the heat transfer to air and is more efficient than embodiments without the shroud 42.

[0042] The electric tobacco smoking system of this disclosure may also include a mouthpiece 60 (see FIGS. 5 and 6) having an end in fluid communication with the tobacco mass. The mouthpiece 60 may be constructed and arranged such that it has a cross-sectional configuration corresponding to the cross section of the heater assembly 22. In addition, the mouthpiece 60 may include a generally cylindrical shell 62 and an attachment sheath 64. The shell 62 preferably extends outwardly from the tobacco plug 24, has an open interior, and provides a channel or passage to deliver the aerosol 32. The shell 62 also functions to provide structural support for the heater 22 and tobacco plug 24. The sheath 64 preferably surrounds the shell 62 and may be constructed from paper or any other suitable conventional material.

[0043] The sheath 64 extends beyond the end of the shell 62 and into an opening within the heating assembly 22, which opening may be between the heating assembly 22 and the tobacco mass. By attaching the sheath 64 to the electric tobacco smoking system 20, the combination of the smoking system 20 and the mouthpiece 60 cosmetically resembles a conventional cigarette.

[0044] When more than one mouthpiece 60 will be used with the smoking system 20, or when one mouthpiece 60 will be used with more than one smoking system 20, the sheath may be fabricated from a sufficiently rigid material that the mouthpiece can be removably attached to the smoking system 20 by inserting the extending portion of the sheath 64 between the heating assembly 22 and the tobacco plug 24. For some applications, it may also be desirable to provide a suitable filter (not shown) such as a plug of cellulose acetate in the discharge end of the mouthpiece 60. Typically, such a filter would be located at an end of the mouthpiece. The actuation system of FIG. 5 is like that of FIG. 1 and includes conductors 36, batteries 37, and a switch 38; however, in FIG. 5, the switch 38 may be a puff sensing device or an air flow sensing device.」
<翻訳文>
「【0004】
図1に移ると、本発明の開示による電気作動式タバコ喫煙システム20が示されている。喫煙システム20は、少なくとも1つの加熱システム22と、切断充填タバコのプラグ24を含むことができるタバコ塊とを含む。加熱システムは、誘導加熱構成、抵抗加熱構成、放射加熱構成、又は対流加熱構成とすることができる。ここでは、現在好ましい実施形態として抵抗加熱装置を以下に説明する。タバコプラグ24は、好ましくは、5mgから500mgの範囲の重さである。単一及び複数吸煙が適用される場合、5mgから150mgの重さがより好ましい。タバコが複数の機会に使用される場合、300mgから500mgの範囲の重さがより好ましい。タバコ塊は、あらゆる種類のタバコから、又は以下に限定されるものではないが、シート生成物、粉塵、葉、茎、及びその組合せを含むタバコ草のあらゆる部分から作ることができる。最終的な形態では、タバコ塊は、以下に限定されるものではないが、配合及び香味付けなどを含むあらゆる種類の共通したタバコ処理段階を伴う可能性があると考えられる。
【0005】
必要に応じて、タバコプラグ24は、取扱いを容易にするために紙又は網カバー又は担体を含むことができる。タバコプラグの周りに紙が使用される場合、紙基体は、加熱チャンバの特定の形状及びタバコプラグ24が使用される方法によって選択された孔隙率及び重さを有することができる。例えば、タバコプラグ24が交換可能な場合、紙は、取扱い、取り外し、及び挿入中に一体性を維持するために十分な強度を有するべきである。更に、紙が喫煙システムを通る空気の主要な移動を担う場合、紙は、空気が通過するのに十分な孔隙率を有するべきである。網材料が選択される場合、網の開口部は、全部とは言わないまでも実質的に大部分の切断充填タバコ微粒子を収容するように十分小さく寸法設定すべきである。
【0006】
タバコ塊はまた、タバコ微粒子で形成することができる。微粒子が使用されるか又は他のタバコ切断物が使用されるかに関わらず、タバコ自体は、結合剤として機能し、タバコ部分を好ましい形状に保持することができる。必要に応じて、本発明のシステムで使用されるタバコは、香味発生を高めるように前処理することができる。同様に、必要に応じて、香味料を使用することができる。タバコ塊の形状又は構成は、回転対称とすることができる。更に、タバコ塊は、ほぼ円筒形、ディスク状、又はほぼドーナツ形とすることができる。円筒形構成が適用される場合、それは、中心が開放した中実又はシェル形状とすることができる。タバコ塊の特定の形状は、好ましくは、加熱装置の形状に適応される。
【0007】
加熱システム22は、タバコ塊の表面の少なくとも一部が加熱装置に適合するようにタバコ塊の実質的な部分を実質的に封入するか又は取り囲んでいる。加熱システム22に接続した作動システムは、加熱システム22に通電するように作動可能である。作動システムは、1つ又はそれよりも多くのバッテリ37のような電気エネルギ源を含むことができる。バッテリ寿命を保存して加熱システム22の始動を制御するために、適切なスイッチ38をバッテリ37と直列に接続することができる。用途に応じて、スイッチ38は、押しボタンスイッチ、流量感知装置、又は吸煙感知装置とすることができる。適切な導体36が、バッテリ37、スイッチ38、及び加熱システム22を直列に接続する。加熱システム22は、タバコ発火温度に到達せず、かつ煙及び/又は灰を発生させずに香味豊かな揮発成分を放出するように、約150℃から約220℃の範囲の温度までタバコ塊を加熱するように作動可能である。更に、加熱システムは、空気が通過して導かれる熱伝達チャンネル又は通路を形成する。
【0008】
図示のように、加熱システム22は、両端が開放しているほぼ円筒形のシェルを含むことができる。図2で最も良く分るように、ほぼ円筒形のシェルは、タバコプラグ24の側面を取り囲む。加熱システム22は、通電されて熱を発生する。そのために加熱システム22は、例えば、家庭用の電力供給網、自動車用のシガレット点火器のような携帯用発電装置、バッテリ、及び他のあらゆる適切な従来型の電源のような適切な電気エネルギ源に接続することができる。エネルギ源は、プラグ内のタバコが約150℃から約220℃の範囲の温度に上げられるように、加熱システム22からタバコプラグ24まで熱を供給できなければならない。この温度範囲内では、タバコは、満足できる体験をもたらす香味豊かな揮発成分を放出する一方、可視煙を殆ど又は全く生成しない。加熱システム22は、シガレットを喫煙するために通常使用される時間の長さに対応する期間にわたって連続して作動することができる。従来的には、その時間の長さは、一般的に約5から10分かかる。代替的に、加熱システム22は、例えばシステムユーザによる吸煙に応答して、オンデマンドで断続的に作動することができる。
【0009】
使用中は、加熱システム22は、例えば、吸煙センサ又は適切な「オン-オフ」装置によって起動される。加熱システム20の開放端部28を通してタバコプラグ24に外気26が吸引される。加熱システム22は、タバコプラグ24の周囲に密接に適合し、伝導及び/又は対流熱伝達によって望ましい温度範囲(約150℃から約220℃)までタバコプラグ24を加熱し、タバコから香味豊かな揮発成分を放出する。周囲空気26がタバコプラグ24を通って移動すると、空気26は、放出されたタバコ揮発成分を同伴し、かつそれら揮発成分を冷却することによって蒸留する。同伴揮発成分を伴った空気は、矢印30で示すように加熱システム22の第2の端部を出ると、周囲空気に露出されて同伴揮発成分を更に冷却してエーロゾル32を形成し、それが、加熱システム22から送出される。
【0010】
必要に応じて、タバコプラグ24にエーロゾル形成剤を付加することができる。適切なエーロゾル形成剤は、例えば、グリセロール、プロピレン、グリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物などである。エーロゾル形成剤の濃度には、重量比で約0から25%の範囲を使用することができる。エーロゾル形成剤はまた、エーロゾル形成におけるタバコの関与を強める。タバコプラグ24が使用された後は、それは、加熱システム22から取り外されて新しいプラグ又はカートリッジと交換される。使い果たされたタバコプラグ24は、廃棄することができる。
【0011】
本明細書に説明する電気式タバコ喫煙システムが多くの利点を提供することは、当業者によって認められるであろう。例えば、より少量のタバコが使用されるので、タバコの供給を延ばすことができる。より少ないタバコを使用することにより、喫煙体験から使い捨てされる廃棄物も減少する。更に、加熱システムがタバコから主として香味豊かな揮発成分を放出するので、これは、シガレットの燃焼からもたらされる副流芳香よりも満足感のあるものとして感知することができる。
【0012】
タバコプラグ24は、端部着火式喫煙物品で起こるような実際の燃焼を受けない。本明細書で説明する電気式タバコ喫煙システムには、くすぶっているコールがないので、不注意な処理をした場合に従来の着火端部シガレットと比べて火災を起こす危険性が少ない。同じ理由で、本明細書で説明する喫煙システムは、本質的に対処する灰がないのでより少ない清掃しか必要としない。更に、使い捨てされる廃棄物が存在せず、燃焼がないために残存芳香がより少ない。更に、煙がないことは、間接喫煙に対する非喫煙者の異議を未然に防ぐはずである。
【0013】
勿論のことであるが、電気式タバコ喫煙システムの様々な他の実施形態が実現可能であるばかりか、本発明の開示の範囲にも入る。例えば(図3を参照されたい)、タバコプラグ24は、加熱システム22によって実質的に封入することができる。この実施形態では、加熱システムは、ほぼ円筒形の覆い42内に収容された加熱器40を含むことができる。図3の作動システムは、図1のそれと同様であり、かつ導体36、バッテリ37、及びスイッチ38を含む。
【0014】
加熱器40周りの空気流のための1つ又はそれよりも多くのチャンネルを設けるために、加熱器40及び/又は覆い42は、加熱器40を覆い42から離間させるように作動可能な2つ又はそれよりも多くの半径方向外側に延びるリブ44、46(図4参照)を含むことができる。リブ44、46は、加熱器40の外面に沿って縦方向に延びることができる。リブ44、46は、覆い42及び加熱器40と協働して、図3に矢印で示すように喫煙システムに空気が通過して入ることができる1対の予熱チャンバ又はチャンネル48、50を形成する。リブ44、46の少なくとも一方はまた、加熱器40を超えて軸線方向に延び、かつスペーサとして機能して加熱器40を覆い42の端部壁52から離して保持する。
【0015】
チャンネル48、50の断面積は、自由に選択することができる。例えば、加熱器40の周りに加熱器40内部を通る流れ領域と同様の流れ領域をもたらすように要求することができる。代替的に、タバコプラグ24を通る流れ領域と同様の流れ領域をもたらすように要求することもできる。選択された流れ領域とは無関係に、加熱器40は、好ましくは、加熱器40の内側端部での流れ領域がチャンネル48、50を通る流れ領域と少なくとも同じ大きさになるように十分な距離だけ端部壁52から離間している。このようにして、加熱器40と覆い42のアセンブリによってではなく、タバコプラグによって吸煙抵抗(吸引抵抗)が形成される。
【0016】
図3及び4の装置により、電気式タバコ喫煙システムに入る空気は、矢印54で示すように加熱器40と覆い42の間の予熱チャンバ又はチャンネル48、54を通って軸線方向に流れる。その時間中に、空気は、そうでなければ加熱器40の外面から逃げる場合がある熱エネルギによって加熱される。その空気は、次に、加熱器の端部周りを通り、タバコプラグ24を通って流れ、そこで加熱器40によって加熱されたタバコから香味豊かな揮発成分を拾い上げる。空気54は、加熱器40を出ると冷えて、そのために揮発成分が凝縮し、かつエーロゾル56を形成して加熱システムから送出される。
【0017】
必要に応じて、加熱器40と覆い42の間の間隔は、上述の縦方向のリブ以外の構造体により達成することができる。例えば、必要に応じて、不連続リブ、半径方向に延びるピン、及びバッフルを使用することができる。バッフルは、一部状況下で空気に対する熱伝達を改善するのに使用されであろう。従って、図3及び4の実施形態は、空気に対する熱伝達を改善するので、覆い42がない実施形態よりも効率的である。
【0018】
本開示の電気式タバコ喫煙システムはまた、タバコ塊と流体連通している端部を有するマウスピース(図5及び6を参照)を含むことができる。マウスピース60は、それが加熱器アセンブリ22の断面に対応する断面形状を有するように構成して配置することができる。更に、マウスピース60は、ほぼ円筒形のシェル62及び取付鞘64を含むことができる。シェル62は、好ましくは、タバコプラグ24から外側に延び、開放内部を有し、エーロゾル32を送出するためのチャンネル又は通路を提供する。シェル62はまた、加熱器22及びタバコプラグ24に対して構造的支持を提供するように機能する。鞘64は、好ましくはシェル62を取り囲み、紙又は他のあらゆる適切な従来の材料で作ることができる。鞘64は、シェル62の端部を超えて加熱アセンブリ22内の開口部の中に延び、開口部は、加熱アセンブリ22とタバコ塊との間とすることができる。鞘64を電気式タバコ喫煙システム20に取り付けることにより、喫煙システム20とマウスピース60の組合せは、外観上従来のシガレットに類似する。
【0019】
喫煙システム20と共に1つよりも多いマウスピース60が使用されることになる時には、あるいは、1つよりも多い喫煙システム20と共に1つのマウスピースが使用されることになる時には、加熱アセンブリ22とタバコプラグ24の間に鞘64の延長部分を挿入することによって、鞘は、マウスピースが喫煙システム20に移動可能に取り付けられるように十分に剛性のある材料で作ることができる。一部の用途の場合、マウスピース60の排気端にセルロースアセテートのプラグのような適切なフィルタ(図示せず)を設けることも望ましい。通常は、そのようなフィルタは、マウスピースの端部に配置されるであろう。図5の作動システムは、図1のそれと同様であり、かつ導体36、バッテリ37、及びスイッチ38を含むが、図5では、スイッチ38は、吸煙感知装置又は空気流感知装置とすることができる。」











(イ)上記(ア)から認められること
a 上記(ア)の段落0023及び0029?0031(翻訳文の段落0004、0008及び0009)並びに図1、2、5及び6の記載によれば、引用文献1には、加熱システム22と、タバコプラグ24とを備える電気作動式タバコ喫煙システム20が記載されている。
b 上記(ア)の段落0029(翻訳文の段落0008)並びに図1、2、5及び6の記載によれば、加熱システム22は、両端が開放している円筒状のシェルを含んでいる。
c 上記(ア)の段落0028及び0031(翻訳文の段落0007及び0009)並びに図1、2、5及び6の記載によれば、加熱システム22を構成として含む電気作動式タバコ喫煙システム20は、タバコプラグ24を、伝導及び/又は対流熱伝達によって望ましい温度範囲まで加熱するときに、エーロゾル32を形成し、前記タバコプラグ24は、望ましい温度範囲である約150℃から約220℃まで加熱されて、タバコ発火温度に到達せず、かつ煙及び/又は灰を発生させずに香味豊かな揮発成分を放出する。
d 上記(ア)の段落0023及び0032(翻訳文の段落0004及び0010)並びに図1、2、5及び6の記載によれば、タバコプラグ24は、タバコ塊である切断充填タバコと、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物などであるエーロゾル形成剤とを含んでいる。
e 上記(ア)の段落0042?0044(翻訳文の段落0018?0019])並びに図1、2、5及び6の記載によれば、電気作動式タバコ喫煙システム20は、エーロゾル32を送出するためのチャンネル又は通路を提供するほぼ円筒形のシェル62及び取付鞘64を含むマウスピース60から前記エーロゾル32をシステムユーザに送達するといえる。

(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「両端が開放している円筒状のシェルを含む加熱システム22と、タバコプラグ24とを備える電気作動式タバコ喫煙システム20であって、
前記電気作動式タバコ喫煙システム20は、前記タバコプラグ24を、伝導及び/又は対流熱伝達によって望ましい温度範囲まで加熱するときに、エーロゾル32を形成し、
前記タバコプラグ24は、望ましい温度範囲である約150℃から約220℃まで加熱されて、タバコ発火温度に到達せず、かつ煙及び/又は灰を発生させずに香味豊かな揮発成分を放出し、
前記タバコプラグ24は、タバコ塊である切断充填タバコと、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物などであるエーロゾル形成剤とを含み、
前記エーロゾル32を送出するためのチャンネル又は通路を提供するほぼ円筒形のシェル62及び取付鞘64を含むマウスピース60から前記エーロゾル32をシステムユーザに送達する、電気作動式タバコ喫煙システム20。」

イ 引用文献2について
(ア)引用文献2の記載
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献2には、以下の記載がある(なお、翻訳文はファミリー文献である特表2009-502136号公報によるものである。)。

「 The present invention is drawn to a novel smoking device consisting of a mouthpiece and a casing having a heater, a low temperature vaporization chamber , a fuel tank, an igniter with control means for maintaining equilibrium point by keeping the operating temperature below 400F, preferably below 350F during combustion whereby in order to maintain a stable operating temperature, a thermal regulator is used to control flow rate of the fuel.」(2頁20行?同頁25行)
<翻訳文>
「【0012】
本発明は、マウスピースと、加熱器、低温蒸発チャンバ、燃料タンク、及び燃焼中の作動温度を400F未満、望ましくは350F未満に保つことによって平衡点を維持し、これにより安定した作動温度を維持するために、熱調整器を使用して燃料の流量を制御するための制御手段を備えている点火器、を有するケーシングと、から成る画期的な喫煙装置に向けられている。」

「 Referring to FIG. 1 and FIG. 2, the exterior of the device 10 comprises a mouthpiece 11, a tubular case 12, and the base 14 of a butane tank 21. The mouthpiece is removable and creates an airtight seal with the interior of the case. With the mouthpiece removed, a tobacco cartridge (FIG.5) is introduced to vaporization chamber 15 of a heater 16. The mouthpiece is then reinserted to close the device.

The mouthpiece is made of a high-temperature and food-safe material such as ceramic, glass, or various high-temperature plastics such as PEI resin (brand name Ultem). Design is simplified by use of high temperature materials, but standard plastics or wood, etc, could also be used with the addition of an insulating component that prevents any excessive heat from reaching the user's lips.

To activate the device, the butane tank is pulled axially outward, partially removing it from the case. This starts the flow of butane by opening a master valve 18, and then activating a piezoelectric igniter 13. The tank remains in the partially removed position for the duration of use. While the master valve is open, butane flows through a thermal regulator 17, and into the carburetor 20. Ambient air enters the case through slot 19. A venturi in the carburetor entrains air, causing it to mix with the butane. The mixture then flows into the heater 16.

The lead of the ignitor is positioned in the heater. With the spark of the ignitor (immediately following the start of gas flow) the gas ignites and heat starts conducting throughout the heater. Heat transfers to the cartridge by conduction, convection, and radiation. The cartridge is shaped to fill the chamber, so as to maximize surface contact for thermal conduction.

As the cartridge heats, vapor generates within the cartridge and in the space immediately above it. When a user draws on the device, fresh air enters through air inlet 22, mixes with the vapor, and the mixture is delivered to the user via the inhalation passage 23. In the preferred embodiment, the air inlet or inlets are directed downward, so as to improve the extraction of vapor from the cartridge. They could also be directed along a diagonal through the mouthpiece, or laterally through the case itself, above the cartridge.」(4頁10行?5頁5行)
<翻訳文>
「【0020】
図1と図2に示すように、装置10の外側は、マウスピース11、管状ケーシング12、及びブタンタンク21の基部14を備えている。マウスピースは、取り外し可能であり、ケーシングの内側と共に気密シールを作っている。マウスピースを取り外した状態で、タバコカートリッジ(図5)が、加熱器16の蒸気チャンバ15に導入される。次に、装置を閉鎖するためにマウスピースが再度挿入される。
【0021】
マウスピースは、セラミック、ガラスの様な高温と食品に安全な材料か、又は、PEI樹脂(商標名Ultem)の様な各種高温プラスチックで作られている。設計は、高温材料を使用することによって単純化されるが、絶縁構成要素を追加して過剰な熱がユーザーの唇に到達するのを防げば、標準的なプラスチック又は木材などを使用することもできる。
【0022】
装置を作動させる際は、ブタンタンクを軸方向外向きに引き、ケーシングから部分的に外す。これは、主弁18を開いてブタンの流れを開始させ、次に、圧電点火器13を作動させることになる。タンクは、使用中は、部分的に取り外された位置に留まる。主弁が開いている間、ブタンは、熱調整器17を通り気化器20に流入する。周囲の空気は、スロット19を通ってケーシングに入る。気化器のベンチュリ管は、空気を巻き込んで、それをブタンと混合させる。混合気は、加熱器16へと流れる。
【0023】
点火器のリード線は、加熱器の中に配置されている。気体は、(気体が流れ始めた直後の)点火器の火花によって着火し、熱が加熱器に伝わり始める。熱は、伝導、対流、及び輻射によってカートリッジに伝達される。カートリッジはチャンバを一杯にする形に作られているので、熱伝導のための表面接触が最大になっている。
【0024】
カートリッジが熱くなると、カートリッジ内と、その直ぐ上の空間の中に蒸気が発生する。ユーザーが装置を吸引すると、新鮮な空気が空気入口22を通って入り、蒸気と混ざり合い、混合気が、吸入路23を通してユーザーへ送られる。好適な実施形態では、1つ又は複数の空気入口は、カートリッジからの蒸気の抽出を改良するため下に向けられている。空気入口は、マウスピースを通り対角線に沿って、又は、カートリッジ上方のケーシング自体を通り横方向に向けられていてもよい。」

「 For the purposes of vaporizing most botanicals in this device, the desired operating temperature is below 400F; preferably below 350F. 」(5頁33行?34行)
<翻訳文>
「【0028】
好適な実施形態では、調整器は、部分的には、バイメタル条片とシリコン管弁を備えている。別の実施形態では、調整器は、後で述べる様な他の材料と構成を備えている。この装置の大部分の植物性要素を蒸発させる目的で、所望の作動温度は、400F未満であり、350F未満であるのが望ましい。」

「 FIG. 5 depicts a sectional view of the tobacco cartridge 30. In the preferred embodiment, it consists of tobacco material 31, enclosed in a wrapper 32, with perforations 33, and aeration wells 34. The wrapped cartridge allows for the easy insertion and disposal of tobacco material without creating a mess, while the perforations allow the formed vapor to be released. When the cartridge is used up it can be easily disposed of in its entirety.

Here, tobacco or tobacco material is defined as any combination of natural and synthetic material that can be vaporized for pleasure or medicinal use. As an example, one test cartridge was prepared as embodiment of the present invention using flue-cured tobacco, glycerin, and flavorings. Those skilled in the art of tobacco product manufacture are familiar with these and other ingredients used for cigarettes, cigars, and the like. The test cartridge was produced by chopping tobacco into fine pieces (less than 3mm diameter, preferably less than 2mm), adding the other ingredients, and mixing until even consistency was achieved.

In the preferred embodiment, the cartridge is primarily cylindrical. In other embodiments, the form could be modified for various reasons. As an example, the walls of the cartridge might be drafted for easier insertion into the vaporization chamber. Or, the bottom of the cartridge might possess receptacles, which when combined with complimentary features on the surface cavity of the vaporization chamber would allow for more surface contact and hence improved thermal conduction.

Any material could be used for the wrapper, provided that when heated to the operating temperature, it does not produce significant amounts of harmful gases. Aluminum foil and parchment paper are two examples. With papers, the cartridge would be manufactured in a folded-cup design, similar to that shown in FIG. 6. With films or metal foils, the wrapper could be pressed or blow-molded to the appropriate shape.

During manufacture of the preferred embodiment, the cartridge is enclosed on all sides, and perforated on the top so that vapors can emanate upwards. In the perforation step, or in an additional step, the optional aeration wells would be created.

In an alternate embodiment, the cartridge might be wrapped on all sides but leaving the top exposed, as shown in FIG. 7. This is possible since the purpose of the wrapper is primarily to prevent tobacco material from touching the sides and bottom of the vaporization chamber.

In another embodiment, the material for the top of the cartridge might be vapor- permeable, such that perforations are not necessary.

In another embodiment, the cartridge as purchased by the user has no openings, but is punctured prior to insertion into the device, or upon introduction to the vaporization device. The latter could be achieved by adding a hollow puncturing means to the mouthpiece part of the device. For example, the inhalation passage of the mouthpiece could be extended by a hollow tube. When the mouthpiece is reinserted to close the device, it pierces the cartridge previously introduced, and allows a path for vapor to exit to the user.」(8頁32行?10頁4行)
<翻訳文>
「【0044】
図5は、タバコカートリッジ30の断面図を示している。好適な実施形態では、カートリッジは、包装紙32内に封入され、孔33と通気井戸34が設けられている、タバコ材料31で構成されている。包装されているカートリッジは、タバコ材料を、散らかすことなく容易に挿入及び廃棄することができるようにし、孔は、形成された蒸気が放出されるようにしている。カートリッジを使用し尽くしたときは、全体を容易に廃棄することができる。
【0045】
ここで、タバコ又はタバコ材料は、嗜好又は医薬用途として気化させることのできる天然及び合成材料の任意の組み合わせと定義されている。一例として、1つの試験カートリッジが、熱風乾燥タバコ、グリセリン、及び香料を使って、本発明の実施形態として準備された。タバコ製品製造業の当業者であれば、巻きタバコ、葉巻などに用いられる以上及び他の成分について良く知っている。試験カートリッジは、タバコを微細片(直径3mm未満、望ましくは2mm未満)に刻み、他の成分を加え、均一な粘度になるまで混ぜ合わせることによって作られた。
【0046】
好適な実施形態では、カートリッジは、基本的に円筒形である。他の実施形態では、形態は、様々な理由で修正される。一例として、カートリッジの壁は、蒸発チャンバに容易に挿入できるように抜き勾配が付けられている。そうでない場合は、カートリッジの底部は、差込口を有しており、差込口は、蒸発チャンバの表面空洞の相補型の造形と組み合わせられると、接触面積が大きくなり、従って、熱伝導が改良される。
【0047】
作動温度に加熱されるとき大量の有害な気体を発生しない限り、どの様な材料を包装紙に用いてもよい。2つ例を挙げると、アルミニウム箔と硫酸紙である。カートリッジは、紙の場合、図6に示しているのと同様の折り畳み式カップのデザインで製造される。包装紙は、フィルム又は金属箔の場合、適切な形状にプレス又はブロー成形される。
【0048】
好適な実施形態の製造中に、カートリッジは、全面が閉じられ、蒸気が上方向に発散できるように上部に孔が開けられる。孔を開ける段階又は追加の段階で、随意的に通気井戸が作られる。
【0049】
別の実施形態では、カートリッジは、全面が包装されるが、上部は、図7に示している様に露出したままにされる。これは、包装紙の目的が、主に、タバコ材料が蒸発チャンバの側面と底部に接触するのを防ぐことにあるので、構わない。
【0050】
別の実施形態では、カートリッジの上部の材料が蒸気透過性なので、孔は必要ない。 別の実施形態では、ユーザーが購入するカートリッジは、開口部を有していないが、装置に挿入される前に、又は蒸発装置への導入時に、孔が開けられる。後者は、中空の穿孔手段を、装置のマウスピース部分に追加することによって実現される。例えば、マウスピースの吸入路は、中空管によって伸ばされる。マウスピースが再挿入され、装置が閉じられると、マウスピースは、先に導入されているカートリッジを穿孔し、蒸気がユーザーまで出る経路ができる。」











(イ)引用文献2の記載事項
上記(ア)の記載によれば、次の技術事項(以下「引用文献2の記載事項」という。)が記載されているものと認める。
「タバコ材料を加熱して蒸気を発生する喫煙装置において、包装紙内に封入されたタバコ材料で、折り畳み式カップのデザインのカートリッジが構成されること。」

ウ 引用文献3について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献3には、以下の記載がある。

「然るに、この煙草による喫煙法に於いては、紙巻煙草を1部に着火燻燃せしめる為に、COガスや、CNガスやアンモニアガス、ニコチンタールガス、ピレンガス等の有害ガスを発生し、喫煙する事が多いので、発癌性となり、又、ヘモグロビンと結着する、非衛生面の上で、多くの問題があり、その改善法が要求されていた。この多くは、燻燃による、熱分解ガスの発生による、悪影響が強く、又、喫煙を好まない隣人にも悪影響がありその改善か求められていた。この喫煙愛好家の多くは、ニコチン及びタールを主体とするが、ハツカネヅミを試験動物として、ニコチン酸を50mgを吸引せしめる時は致死する。
特に、ニコチンとタール成分を混入したものでは、20?30mgで致死し、又、ニコチン酸アミドをアルコール、ヘキサン、グライコールに溶解して、約50mgを試食せしめる時はハツカネヅミは致死せず、アルコールによる解毒性によって無害化される。又、このアルコール、グライコールでニコチンを原料から抽出せしめ、不燃繊維や同多孔スポンヂ体にこのニコチンを含浸せしめたものを300℃以下の温度で加熱する時は、着火することなく、ニコチンや芳香剤のみが、溶媒と共に揮散し、従つてこの蒸発ガスを吸引する時は、ニコチン等が吸引され発癌性の高いタール成分中のピレン系熱分解物の吸引は殆んど無いから極めて衛生的となる。」(2欄7行?同欄33行)

「以上の如く、この考案は不燃性、耐火性の無機縮合体のパーライトの多孔スポンヂ円筒や同繊維円筒にニコチン類を芳香剤と溶媒とを、吸着乾燥したものを中空体のパイフ中に嵌挿して半導体より成る電気加熱体で加熱し、ニコチン類を揮散しその揮散ガスをパイプにより吸引喫煙するもので250?280℃の比較的低温で揮散吸引を行うので、有害分解ガスの発生が少く、火災の危険性がなく、脱灰汚染がなく、含浸材を時々取換える事によつて、喫煙が可能となり発癌性がない特徴があり、又、煙草屑を主原料として抽出するニコチン類を使用するので、煙草加工の従来法の生産性を向上し他人への悪影響が少ないので産業上有用な考案である。」(6欄17行?同欄30行)

エ 引用文献4について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献4には、以下の記載がある。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、タバコを点火,燃焼させることなく無煙にてニコチン,香料等の嗜好成分を口内に吸引し、或いは漢方薬等の医薬品中のある種の有効成分を気相で投与するための、タバコまたは薬品成分の無煙吸引摂取用具および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】タバコを喫煙することによって発生するタールは、発ガン物質と考えられる有害成分(多環芳香族炭化水素類、並びにNヘテロ多環芳香族アミン類)を含んでおり、医学的にも好ましくないとされている。また、点火によって生じる煙がもたらす大気汚染については、特に密室において、ヒト及び動植物に与える危害が甚だしく、また、喫煙による清浄な空気の損失は意外に大きく、1本のタバコの燃焼に消費する酸素は約8リットル(空気に換算して約40リットル)と、家庭生活上も好ましくない。なお従来ではタバコの不完全燃焼によって生じるガス成分については殆ど論じられていなかったが、ガスクロマトグラフィーによる測定によれば、特に点火後に短時間で吸い終わる場合、毒性の強い一酸化炭素は必ずしも無視できないものである。このためすでに文明国においては、喫煙は野蛮な行為とされ、世界保健機構もこれを禁止する方向に指導している。」

「【0013】このように構成したタバコ嗜好用具では、容器10中の水和性繊維11に適度に水を含ませると共に電熱ヒータ6に通電してタバコ5を上記温度に加熱し、吸口2を口にくわえ呼気を肺に吸い込めば該パイプ体1内は個人差はあるにせよ-130mmHg前後の負圧になる。このため通気小孔13より外部の空気が吸引されこの空気は水和性繊維11中を通過することにより水蒸気を含んで中空軸部3に流れる。なおこのように負圧であることから水蒸気の蒸発はさかんになり飽和状態に近い充分な水蒸気を含んで加熱状態にあるタバコ5中を通過する。このためこの水蒸気により減圧下にてタバコ5は115℃前後で低温蒸留されニコチンおよび香料等の嗜好成分を揮発させこれを口内に吸引できる。
【0014】このように低温蒸留法によりタバコ葉中のニコチンを酸化等何等の化学変化も伴なわないでほぼ定量的に吸引できる。一方、タール,一酸化炭素等の有害物質は発生せず、通常の喫煙のように周囲に紫煙をまき散らすこともない。」

オ 引用文献5について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献5には、以下の記載がある。

「本発明に使用するエアロゾル形成物質は、燃焼する燃料部材により加熱された際、エアロゾル発生手段に存在する温度にてエアロゾルを形成できねばならない。好ましくは、この種の物質は炭素と水素と酸素とで構成されるが、他の物質を含むこともある。エアロゾル形成物質は固体、半固体又は液状とすることができる。この物質及び(又は)物質の混合物の沸点は約500℃までの範囲である。これら特性を有する物質は多価アルコール、たとえばグリセリン及びプロピレングリコール並びにモノ-、ジー若しくはポリ-カルボン酸の脂肪族エステル、たとえばメチルステアレート、ドデカンジオエート、ジメチルテトラドデカンジオエートなどを包含する。」(9頁右下欄1行?同欄14行)

「実施例 3
A.第2図に示したように4個の喫煙用物品を作成し、これらに第2A図に示したテーバ付き着火用端部を備える10mmの圧縮炭素燃料部材を設けた。燃料部材は、約5000ポンド(2273kg)の荷重を加えて90%のPCB-G炭素と10%のSCMCとから作成した。部材の中心には0.040インチ(1.02mm)の穴を穿設した。エアロゾル形成物質用の支持体をユニオン・カーバイド・コーポレーション社(コネクチカット州、ダンベリー在)により販売されるPC-25、すなわち多孔質炭素から切り取り、機械加工して成形した。各物品における支持体は長さ約2.5mmかつ直径的8mmとした。これに平均約27mgの1:1プロピレングリコール-グリセリン混合物を充填した。」(13頁左上欄9行?同頁右上欄4行)

カ 引用文献6について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献6には、以下の記載がある。

「【0031】香味を生成するための香味成分及びエアロゾル煙を生成するためのエアロゾル基剤としては、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質及び/またはそれらの構成成分を選択することができる。香味成分としては、例えば、メンソール、カフェイン、或いは熱分解により香味を生成する配糖体等の前駆体、或いはたばこ抽出物成分やたばこ煙凝縮物成分等のたばこ成分を用いることができる。エアロゾル基剤としては、グリセリン、プロピレングリコール等のポリオール類、低級アルコール類、糖類或いはこれらの混合物を用いることができる。」

キ 引用文献7について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献7には、以下の記載がある。

「【0025】香味生成媒体は、燃焼によることなく、それを液滴として吐出することにより香味を生成することのできる媒体であり、用途等に応じて適宜選択される。この香味生成媒体には、例えば、種々の天然物からの抽出物質や、それらの構成成分等のうちの所定のものが含まれる。香味生成媒体が含有する香味物質としては、例えば、メンソール、カフェイン、熱分解により香味を生成する配糖体等の前駆体、タバコ抽出成分やタバコ煙擬縮物成分等のタバコ成分等を用いることができる。この場合、香味生成媒体を無害化するのが好ましく、有害成分は取り除かれるのが好ましい。
また、香味生成媒体は、香味に煙を加えるため、例えば、加熱時にエアロゾルを生成する物質を含むことができる。エアロゾルを生成する物質としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等のポリオール類、低級アルコール類、糖類や、これらの混合物等を用いることができる。」

ク 引用文献8について
当審において通知した拒絶の理由に引用された引用文献であって、本願の優先日前に頒布された引用文献8には、以下の記載がある。

「香味物質は、着火された発熱体からの熱によって加熱されることによりによりエアロゾルを生成する物質(アルコール類、糖類、水)や、香味のみを生成する物質(メンソール、カフェイン、天然抽出物)、 たばこ、たばこ抽出物、これらの混合物等を含む。アルコール類としては、例えばグリセリンやプロピレ ングリコール、これらの混合物を使用できる。」(5頁24行?6頁4行)

(2)対比
本願発明(以下「前者」ともいう。)と引用発明(以下「後者」という。)とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者の「電気作動式タバコ喫煙システム20」は前者の「エアロゾル発生装置」に相当し、以下同様に、「タバコプラグ24」は「揮発性材料」に、「伝導及び/又は対流熱伝達」は「伝導もしくは対流」に、「エーロゾル32」は「エアロゾル」に、「タバコ塊である切断充填タバコ」は「タバコ製品」に、「グリセロール」は「グリセリン」に、「エーロゾル形成剤」は「エアロゾルを形成する媒体」に、「システムユーザ」は「使用者」に、それぞれ相当する。

・後者の「加熱システム22」は、「両端が開放している円筒状のシェルを含」んでおり、室炉を構成しているといえるから、前者の「室炉」に相当する。
また、後者の「電気作動式タバコ喫煙システム20」が、「タバコプラグ24」「を備える」ことは、前者の「エアロゾル発生装置」が、「カートリッジ」「を備え」、「前記カートリッジは揮発性材料を含むケースと前記ケース上の蓋とを備え」ることに、「エアロゾル発生装置」が、「揮発性材料」「を備える」という限りにおいて一致する。
さらに、後者の「例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物などであるエーロゾル形成剤」は、前者の「プロピレングリコールおよびグリセリンを含んでいるエアロゾルを形成する媒体」に、「所定の成分を含んでいるエアロゾルを形成する媒体」という限りにおいて一致する。

・後者の「望ましい温度範囲まで加熱する」は、前者の「少なくとも目標温度に加熱する」に相当する。
そして、後者の「前記電気作動式タバコ喫煙システム20は、前記タバコプラグ24を、伝導及び/又は対流熱伝達によって望ましい温度範囲まで加熱するときに、エーロゾル32を形成」することは、前者の「前記装置は、前記揮発性材料を、伝導もしくは対流によって少なくとも目標温度に加熱するときに、ホフマンアナライトのレベルを低減したエアロゾルを発生させ」ることに、「前記装置は、前記揮発性材料を、伝導もしくは対流によって少なくとも目標温度に加熱するときに、エアロゾルを発生させ」るという限りにおいて一致する。

・後者の「前記タバコプラグ24は、望ましい温度範囲である約150℃から約220℃まで加熱されて」、「煙及び/又は灰を発生させずに香味豊かな揮発成分を放出」することは、前者の「前記揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化」することに、「前記揮発性材料は所定温度範囲の温度でエアロゾル化」するという限りにおいて一致する。
そして、後者の「前記タバコプラグ24は、望ましい温度範囲である約150℃から約220℃まで加熱されて、タバコ発火温度に到達せず、かつ煙及び/又は灰を発生させずに香味豊かな揮発成分を放出」することは、タバコ発火温度に到達しないことから、目標温度が、タバコプラグ24(揮発性材料)が燃焼する温度よりも低いことは明らかであり、前者の「前記揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が、前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低く」に、「前記揮発性材料は所定温度範囲の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が、前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低く」という限りにおいて一致する。

・後者の「前記エーロゾル32を送出するためのチャンネル又は通路を提供するほぼ円筒形のシェル62及び取付鞘64を含むマウスピース60から前記エーロゾル32をシステムユーザに送達する」ことは、これによりエーロゾル32(エアロゾル)を吸入のためにシステムユーザ(使用者)に送達すること、及び、システムユーザ(使用者)によって前記エーロゾル32が吐き出される際に蒸気を生成する量でエーロゾル形成剤(エアロゾルを形成する媒体)の例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物など(所定の成分)が存在することは明らかであるから、
前者の「前記エアロゾルは、生成後にろ過されることなく直接使用者に送達され、
前記エアロゾル中のアンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、およびスチレンの少なくとも1つのレベルが、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され、前記使用者によって前記エアロゾルが吐き出される際に視覚的蒸気を生成する量でプロピレングリコールおよびグリセリンが存在する」ことに、
「前記エアロゾルは、使用者に送達され、
前記使用者によって前記エアロゾルが吐き出される際に蒸気を生成する量でエアロゾルを形成する媒体の所定の成分が存在する」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の間に次の一致点及び相違点が認められる。
[一致点]
「室炉と、揮発性材料とを備えるエアロゾル発生装置であって、
前記装置は、前記揮発性材料を、伝導もしくは対流によって少なくとも目標温度に加熱するときに、エアロゾルを発生させ、
前記揮発性材料は所定温度範囲の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が、前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低く、
前記揮発性材料は、タバコ製品と、所定の成分を含んでいるエアロゾルを形成する媒体とを含み、
前記エアロゾルは、使用者に送達され、
前記使用者によって前記エアロゾルが吐き出される際に蒸気を生成する量でエアロゾルを形成する媒体の所定の成分が存在する、エアロゾル発生装置。」

[相違点1]
「エアロゾル」に関し、本願発明では、「ホフマンアナライトのレベルを低減した」ものであって、「前記エアロゾル中のアンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、およびスチレンの少なくとも1つのレベルが、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され」たものであるのに対して、引用発明では、ホフマンアナライトのレベルを低減することは特定されていない点。

[相違点2]
「エアロゾル発生装置」が、「揮発性材料」「を備える」ことに関し、本願発明では、「カートリッジ」「を備え」、「前記カートリッジは揮発性材料を含むケースと前記ケース上の蓋とを備え」ているのに対して、引用発明では、そのようなカートリッジを備えていない点。

[相違点3]
「エアロゾルを形成する媒体」が含む「所定の成分」に関し、本願発明では、「プロピレングリコールおよびグリセリン」であり、「前記使用者によって前記エアロゾルが吐き出される際に視覚的蒸気を生成する量で」「存在する」のに対して、引用発明では、「例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物など」であり、プロピレングリコール及びグリセリン(グリセロール)を含むものに特定されず、また、視覚的蒸気を生成する量で存在するかは不明である点。

[相違点4]
「前記揮発性材料」が「エアロゾル化」する「所定温度範囲の温度」に関し、本願発明では、「100℃以上200℃以下の温度」であるのに対して、引用発明では、「望ましい温度範囲である約150℃から約220℃」の温度である点。

[相違点5]
「前記エアロゾルを吸入のために使用者に送達する」ことに関し、本願発明では、「生成後にろ過することなく」送達するのに対して、引用発明では、生成後にろ過することなく送達するかは不明である点。

(3)判断
ア 相違点の検討
上記相違点について検討する。
(ア)相違点1及び4について
電気加熱式のエアロゾル発生装置において、揮発性材料を燃焼させない低温で加熱することにより、発がん物質(ホフマンアナライト)等の有害な化合物の発生を低減することは、上記(1)ウ及びエで摘記した引用文献3及び4の記載から理解できるように本願の優先日前に周知の事項であり、電気加熱式のエアロゾル発生装置に関する引用発明において、有害な化合物のである、エアロゾル中のアンモニア、アミノナフタレン、ベンゾピレン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、シアン化水素、酸化窒素、タバコ特有のニトロソアミン(TSNA)、ピリジン、キノリン、ハイドロキノン、フェノール、クレゾール、タール、ニコチン、一酸化炭素、1,3-ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、ベンゼン、トルエン、およびスチレンの少なくとも1つのレベルをできる限り低減することは、当業者が当然に考慮することである。
そして、引用発明では、「前記タバコプラグ24は、望ましい温度範囲である約150℃から約220℃まで加熱されて、タバコ発火温度に到達せず、かつ煙及び/又は灰を発生させずに香味豊かな揮発成分を放出」するところ、その温度範囲の付近である100℃以上200℃以下の温度で加熱されて、煙及び/又は灰を発生させずに香味豊かな揮発成分を放出する(エアロゾル化する)ようにすることは、タバコプラグ24(揮発性材料)の構成材料及びその量に応じて適宜なし得ることであり、上記周知の事項である有害な化合物の発生を低減させることを考慮して、その数値範囲を採用することは当業者にとって格別困難なことではない(例えば、その数値範囲の一例として、引用文献2の5頁33行?34行(翻訳文の段落0028)には、喫煙装置において、植物性要素(揮発性材料)を400F(約204℃)未満、望ましくは350F(約177℃)未満で加熱することが記載されているので、参照。)。
さらに、有害な化合物の発生を低減させる程度については、有害な化合物の種類等に応じて当業者が適宜設定するものであり、引用発明において、有害な化合物のレベルを「一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され」るように構成することは、格別な創意工夫を要するものではなく、当業者が容易になし得たことである。
なお、本願明細書においては、100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化する点と、有害な化合物のレベルが、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減される点との因果関係について、実験データ等を用いて明確に説明されていないが、令和3年2月4日付け意見書によれば、請求人は、「揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が燃焼する温度よりも低く、」のときに、「・・・のレベルが一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減され、」であると主張している(3.(2)理由2、3(サポート要件、実施可能要件)について)。上記主張は、揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が燃焼する温度よりも低くすれば、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減されることが実現できると理解できる。
そして、上記請求人の主張を踏まえれば、引用発明において、タバコプラグ24(揮発性材料)を100℃以上200℃以下の温度で加熱されて、煙及び/又は灰を発生させずに香味豊かな揮発成分を放出する(エアロゾル化する)ようにすることにより、上記有害な化合物のレベルを、一本の紙巻きたばこにおける前記たばこ製品の同等量を燃焼させることによって発生するレベルと比較して少なくとも70%低減されたものとすることは、上記のとおり、当業者が容易になし得たことといえる。
したがって、引用発明において、上記相違点1及び4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点2について
引用文献2には、上記(1)イ(イ)で示した引用文献2の記載事項、すなわち、タバコ材料(揮発性材料)を加熱して蒸気(エアロゾル)を発生する喫煙装置(エアロゾル発生装置)において、包装紙内に封入されたタバコ材料で、折り畳み式カップのデザイン(揮発性材料を含むケースを含み、更にケース上の蓋を備えた)のカートリッジが構成されることが記載されている。
そして、引用文献2の記載事項は、揮発性材料を加熱してエアロゾルを発生するエアロゾル発生装置という技術部分野において引用発明と共通し、使用における利便性を向上できるから、引用発明に引用文献2の記載事項を適用し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(ウ)相違点3について
エアロゾル発生装置において、エアロゾルを形成する媒体として、プロピレングリコールやグリセリンを用いることは、上記(1)オ?クで摘記した引用文献5?8の記載から理解できるように本願の優先日前に周知の技術であり、また、プロピレングリコールやグリセリン等のエアロゾルを形成する成分により視覚蒸気を生成することは、引用文献7の段落0025に「また、香味生成媒体は、香味に煙を加えるため、例えば、加熱時にエアロゾルを生成する物質を含むことができる。エアロゾルを生成する物質としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等のポリオール類、低級アルコール類、糖類や、これらの混合物等を用いることができる。」と記載されているように本願の優先日前に技術常識である(他に必要があれば、特開平3-112477号公報(特に、5頁左上欄11行?同欄19行)、特開平4-246365号公報(特に、段落0016)及び特開平5-184675号公報(特に、段落0062)を参照。)。
よって、電気加熱式のエアロゾル発生装置に関する引用発明において、周知の技術及び技術常識を考慮して、エーロゾル形成剤(エアロゾルを形成する媒体)に選択肢として挙げられていたプロピレングリコール及びグリセリンを、システムユーザ(使用者)によってエーロゾル32(エアロゾル)が吐き出される際に視覚蒸気を生成する量で含むようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(エ)相違点5について
引用文献1の段落0044(翻訳文の段落0019)には、フィルタを設けることはが任意である旨の記載があり、引用発明において、生成後にろ過することなくエーロゾル32(エアロゾル)を吸入するように構成することは、当業者が適宜なし得たことである。

(オ)請求の主張について
なお、請求人は、令和3年2月4日提出の意見書において、
「引用文献1-8には、本願発明1,5,10,14(以下、「本願発明」と総称する)の「 前記揮発性材料は100℃以上200℃以下の温度でエアロゾル化し、前記目標温度が、前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低く、」という発明特定事項(以下「発明特定事項1」)、「前記揮発性材料は、タバコ製品と、プロピレングリコール及びグリセリンを含んでいるエアロゾルを形成する媒体とを含み、」という発明特定事項(以下「発明特定事項2」)、および「前記使用者によって前記エアロゾルが吐き出される際に視覚的蒸気を生成する量でプロピレングリコールおよびグリセリンが存在する、」という発明特定事項(以下「発明特定事項3」)について記載されておりません。このため引用発明1-8を組み合わせても、発明特定事項1-3を実現することはできません。
まず、引用文献1-8には、発明特定事項1-3に規定されるように、プロピレングリコールとグリセリンの両方を含み、低温で加熱されると、使用者が吐き出すときに見えるエアロゾルを生成する前記揮発性材料について何ら記載されていません。
・・・
引用文献1-8には、吐き出されたときに見えるエアロゾルを生成する、という本願発明が解決しようとする課題について何ら記載されていません。このため、当業者が引用文献1-8に基づいて本願発明を容易に想到することはできません。
引用文献1の[0029]には、「Within this temperature range, the tobacco releases flavorful volatiles that produce a satisfying experience while generating little to no visible smoke.」と記載されています。このように、引用文献1には、煙がほとんど又は全く見えないことが明確に記載されています。したがって、「前記使用者によって前記エアロゾルが吐き出される際に視覚的蒸気を生成する量でプロピレングリコールおよびグリセリンが存在する、」という発明特定事項3を当業者が想到する動機付けは引用文献1には何ら記載されておりません。
・・・
本願発明1によれば、発明特定事項1-3により、吐き出されたときに見えるエアロゾルを生成することができるという、引用発明1-8が奏することのできない格別な効果を得ることができます。この効果は、出願時の技術水準から当業者が予測することができたものではありません。
以上より、引用文献1-8に基づいて当業者が請求項1,5,10,14に係る発明を容易に想到することはできません。したがって、請求項1,5,10,14の従属項に係る発明もまた、引用文献1-8に基づいて当業者が容易に想到することはできません。」(3頁9?12行)
と主張する。
しかしながら、引用文献1の段落0032(翻訳文の段落0010)に記載されているように、引用発明の「例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物などであるエーロゾル形成剤」は必要に応じて付加されるものであって、上記(ア)で述べたとおり、プロピレングリコールやグリセリン等のエアロゾルを形成する成分により視覚蒸気を生成することは、本願の優先日前に技術常識である。また、引用文献1の段落0029における、煙がほとんど又は全く見えない旨の記載は上記エーロゾル形成剤が含まれていない条件での現象を説明したものであり、エーロゾル形成剤を付加した引用発明に該当するものではなく、さらに、「Within this temperature range,」が「about 150℃. to about 220℃.」を示すから、使用者が吐き出す際の説明ではない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。

イ 効果について
そして、本願発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用発明、引用文献2の記載事項、周知の事項、周知の技術及び技術常識から、当業者が予測し得る範囲のものである。
特に、揮発性材料がエアロゾル化する温度が、「100℃以上200℃以下」であり、ヒータで加熱する目標温度が前記揮発性材料が燃焼する温度よりも低いことには、いわゆる臨界的な意義は認められない。また、エアロゾル中のアンモニア等の少なくとも1つのレベルが、「少なくとも70%」低減されることにも、いわゆる臨界的な意義は認められない。

ウ まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項、周知の事項、周知の技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-26 
結審通知日 2021-03-29 
審決日 2021-04-09 
出願番号 特願2017-145544(P2017-145544)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A24F)
P 1 8・ 536- WZ (A24F)
P 1 8・ 537- WZ (A24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 槙原 進
山田 裕介
発明の名称 物質を吸入するためのエアロゾル装置、物質を吸入する方法、及びその使用  
代理人 上島 類  
代理人 二宮 浩康  
代理人 前川 純一  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 森田 拓  

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