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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1377437
審判番号 不服2020-8055  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-10 
確定日 2021-08-24 
事件の表示 特願2018-559994「信号伝送方法,ネットワーク装置および端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月16日国際公開,WO2017/193381,令和元年7月25日国内公表,特表2019-521572〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)5月13日を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年12月25日 :手続補正書の提出
令和 元年 9月26日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月28日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 2年 2月 4日付け:拒絶査定
令和 2年 6月10日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 2年 6月26日 :手続補正書(方式)の提出
令和 2年 8月31日 :上申書の提出
令和 2年11月30日 :上申書の提出
令和 2年12月18日 :上申書の提出

第2 令和2年6月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年6月10日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)

「 【請求項1】
第1時間周波数リソースを決定するステップであって、前記第1時間周波数リソースは複数の物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)候補の中のPDCCH候補であり、PDCCH候補は、特定のルールに基づいて選択された1つ以上の時間周波数リソースサブセットを含むリソースである、ステップと、
前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第2時間周波数リソースおよび第3時間周波数リソースを取得するステップであって、前記第1時間周波数リソースは、複数のリソース要素(RE)セットで構成され、前記複数のREセットのすべてが同じ固定数量のREを含み、前記第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置され、前記第2時間周波数リソースは、前記第1時間周波数リソース内に前記第3時間周波数リソース以外のリソースを備え、前記予め設定されたルールは所定の箇所を示し、前記第2時間周波数リソースはビーム形成制御チャネルを搬送するために使用され、前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される、ステップと、
前記第2時間周波数リソースおよび前記第3時間周波数リソースを使用して、前記ビーム形成制御チャネルおよび前記ビーム形成制御チャネルの前記参照信号を端末装置にそれぞれ伝送するステップと、
を備える信号伝送方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和2年1月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。

「 【請求項1】
第1時間周波数リソースを決定するステップであって、前記第1時間周波数リソースは複数の候補リソースの中の第1候補リソースであり、候補リソースは、特定のルールに基づいて選択された1つ以上の時間周波数リソースサブセットを含むリソースである、ステップと、
前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第2時間周波数リソースおよび第3時間周波数リソースを取得するステップであって、前記第3時間周波数リソースは、前記第1時間周波数リソース内の所定の箇所に少なくとも1つのリソース要素REを備え、前記第2時間周波数リソースは、前記第1時間周波数リソース内に前記第3時間周波数リソース以外のリソースを備え、前記予め設定されたルールは前記所定の箇所を示し、前記第2時間周波数リソースはビーム形成制御チャネルを搬送するために使用され、前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される、ステップと、
前記第2時間周波数リソースおよび前記第3時間周波数リソースを使用して、前記ビーム形成制御チャネルおよび前記ビーム形成制御チャネルの前記参照信号を端末装置にそれぞれ伝送するステップと、
を備える信号伝送方法。」

2.補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「候補リソース」,「第1時間周波数リソース」,及び「第3時間周波数リソース」について,上記のとおり限定を付加するものであって,本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、これらの補正は特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記「1」の「(1)」に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載,引用発明及び周知技術
ア.引用例1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1(特開2013-197877号公報)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)

(ア)「【0015】
図1は、MU-MIMO伝送が適用されるHetnetの一例を示す図である。図1に示すシステムは、無線基地局装置(例えば、eNB:eNodeB)のカバレッジエリア内に局所的なカバレッジエリアを有する小型基地局装置(例えば、RRH:Remote Radio Head)が設けられ、階層的に構成されている。このようなシステムにおける下りリンクのMU-MIMO伝送では、無線基地局装置の複数のアンテナから複数のユーザ端末UE(User Equipment)#1及び#2に対するデータが同時に送信される。また、複数の小型基地局装置の複数のアンテナから複数のユーザ端末UE#3、#4に対するデータも同時に送信される。
【0016】
図2は、下りリンクのMU-MIMO伝送が適用される無線フレーム(例えば、1サブフレーム)の一例を示す図である。図2に示すように、MU-MIMO伝送が適用されるシステムでは、各サブフレームにおいて先頭から所定のOFDMシンボル(1?3OFDMシンボル)まで、下り制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)用の無線リソース領域(PDCCH領域)として確保される。また、サブフレームの先頭から所定のシンボルより後の無線リソースに、下り共有データチャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)用の無線リソース領域(PDSCH領域)が確保される。
【0017】
PDCCH領域には、ユーザ端末UE(ここでは、UE#1?#4)に対する下り制御情報(DCI:Downlink Control Information)が割当てられる。下り制御情報(DCI)には、PDSCH領域における割当て情報が含まれる。このように、各サブフレームにおいて、ユーザ端末UEに対する下りデータ用の信号と、当該下りデータを受信するための下り制御情報(DCI)用の信号とは時分割多重されて送信される。
【0018】
MU-MIMO伝送においては、同一時間及び同一周波数で複数のユーザ端末UEに対するデータ送信が可能となる。このため、図2のPDSCH領域において、ユーザ端末UE#1に対するデータとユーザ端末UE#5に対するデータを同一の周波数領域に多重することが考えられる。同様に、ユーザ端末UE#4に対するデータとユーザ端末UE#6に対するデータを同一の周波数領域に多重することも考えられる。
(中略)
【0020】
このように、MU-MIMO伝送により同一の無線リソースに多重されるユーザ端末数を増加させても、下り制御情報を伝送するためのPDCCH領域が不足する場合には、PDSCH領域の利用効率を十分に図れないおそれがある。
【0021】
このようなPDCCH領域の不足を解決する方法として、サブフレームの先頭から最大3OFDMシンボルの制御領域以外にPDCCH用の無線リソース領域を拡張する(既存のPDSCH領域にPDCCH領域を拡張する)ことが考えられる。例えば、PDSCHとPDCCHとを周波数分割多重する方法(周波数分割(FDM)アプローチ)が考えられる。このようなPDSCHと周波数分割多重されるPDCCHは、既存のPDCCHと区別するために、拡張PDCCH(拡張下り制御チャネル、E-PDCCH、Enhanced PDCCH、FDM型PDCCH、UE-PDCCH等とも呼ぶ)と呼ばれる。
【0022】
周波数分割アプローチを適用する場合、ユーザ固有の参照信号である復調用参照信号(DM-RS(DeModulation-Reference Signal)、ユーザ固有参照信号、UE-Specific RS、DRS(Dedicated Reference Signal)などとも呼ばれる)(以下、DM-RSと呼ぶ)を用いて拡張PDCCHの復調を行うことでビームフォーミングゲインを得ることが可能となる。この場合、ユーザ端末UEに対して個別にビームフォーミングが可能となることによって十分な受信品質が得られるため、容量の増大に有効となると考えられる。
【0023】
ところで、各ユーザに拡張PDCCHを割り当てる方法としては、既存のPDCCHと同様に、システム帯域全体に渡り、複数のリソース要素グループ(REG)からなる制御チャネル要素(CCE)単位で割当てる方法(with cross interleaving)と、システム帯域全体に分散された物理リソースブロック(PRB)内で、所定のリソース(例えば、拡張制御チャネル要素(eCCE))単位で割り当てる方法(without cross interleaving)のいずれかが適用できる。
【0024】
without cross interleavingでは、拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBにはDM-RSが配置される。このため、拡張PDCCHの復調をDM-RSを用いて行うことができる。この場合、DM-RSを用いたチャネル推定が可能であり、各ユーザ端末UEに対して効果的にビームフォーミングを形成できる。
(中略)
【0026】
また、図3Bに示すように、システム帯域は物理リソースブロック(PRB)(単に、リソースブロック(RB)ともいう)で構成される。なお、図示しないが、システム帯域は、複数の連続するPRBからなるリソースブロックグループ(RBG)で構成されてもよい。図3Bでは、システム帯域の一部のPRBが拡張PDCCHに割り当てられ、残りがPDSCHに割り当てられる。なお、PRBは、PDSCHのスケジューリングの一単位でもある。」

(イ)「【0030】
図4において、拡張PDCCHがマッピングされたPRB(PRB#1、#4、#8、#10)は、拡張制御チャネル要素(eCCE:enhanced Channel Control Element)に対応付けられる。具体的には、各PRBは、2個のeCCEに対応付けられ、各eCCEには、異なるeCCEインデックス番号#0?#7が付与される。
【0031】
ここで、eCCEとは、拡張PDCCHに対する無線リソースの割り当て単位である。eCCEは、既存のPDCCHに対する無線リソースの割り当て単位である制御チャネル要素(CCE:Channel Control Element)をリユースできるように定義されるものである。なお、既存のCCEは、9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され、各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成される。
(中略)
【0033】
具体的には、図5Aに示すように、無線基地局装置は、拡張PDCCHに割り当てられたeCCEインデックス番号#0?#7のeCCEをそれぞれ2個に分割する。この場合、1個のPRB(例えば、PRB#0)に対して、4個のeCCE(例えば、eCCEインデックス番号#0、#0、#1、#1のeCCE)が対応することとなる。なお、複数の分割されたeCCE(図5Aでは、4個)で構成されるPRBは、「PRB pair」と呼ばれてもよい。これは、「PRB Pair」は、時間方向に連続する2つの「PRB」で構成され、周波数方向においては「PRB」と同じ12サブキャリアから構成されるためである。なお、「PRB」の時間長は1スロットであるのに対して「PRB Pair」の時間長は2スロット(1サブフレーム)である。以下では、説明の便宜上、拡張PDCCHの割り当て単位であるeCCEが複数に分割されたeCCEについても、単に「eCCE」と称する場合もある。なお、拡張PDCCHが複数に分割されたeCCEは、「分割eCCE」や、「拡張リソース要素グループ(eREG)」等と呼ばれてもよい。」

(ウ)「【0039】
ところで、without cross interleavingでは、ユーザ端末UEがPRB単位でチャネル推定を行うことができるように、各PRBにDM-RSが配置される。また、MU-MIMO伝送では、最大8つの送信レイヤがサポートされ、送信レイヤ毎にDM-RSが設けられる。各送信レイヤのDM-RSは、直交符号による符号分割多重(CDM:Code Division Multiplexing)と周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)とのいずれか、又はそれらを併用して直交化される。例えば、送信レイヤ数が2である場合、各送信レイヤのDM-RSに対して符号長が2の直交符号を用いたCDMが適用される。また、送信レイヤ数が3?4である場合、各送信レイヤのDM-RSに対して符号長が2の直交符号を用いたCDM及びFDMが適用される。また、送信レイヤ数が5?8である場合、各送信レイヤのDM-RSに対して符号長が4の直交符号を用いたCDM及びFDMが適用される。
(中略)
【0041】
図6に、送信レイヤ数が4である場合のDM-RSの配置を示す。なお、各送信レイヤに対してはアンテナポートが予め割り当てられている。送信レイヤ数が4である場合、送信レイヤ#0?#3に対して、それぞれ、アンテナポート#7?#10が割り当てられている。
【0042】
図6に示すように、送信レイヤ数が4である場合、時間方向に連続する2つのリソースエレメント(RE)にアンテナポート(AP)#7、#8のDM-RSが符号分割多重される。同様に、時間方向に連続する2つのREにアンテナポート(AP)#9、#10のDM-RSが符号分割多重される。なお、符号分割多重においては、符号長が2の直交符号が用いられる。AP#7、#8のDM-RSとAP#9、#10とは、隣接するサブキャリアで周波数分割多重される。
【0043】
ところで、拡張PDCCHは、PRB単位ではなく、PRBを分割したeCCE単位で割り当てられることが検討されている。また、図5で説明したように、1eCCEが更に複数に分割されて、分割されたeCCE同士が異なるPRBに分散マッピングされることも検討されている。このため、図6において、1PRBを構成する各eCCE(eCCE#1?#4)に対してそれぞれ異なるユーザ端末UEに対する拡張PDCCHがマッピングされることも想定される。この場合、AP#7?#10のDM-RSに対してそれぞれ異なるビームフォーミングウェイト(ウェイト)が乗算される。このため、ビームフォーミングを行う場合、例えば、1PRB内を構成する各eCCEに拡張PDCCHがマッピングされたユーザ端末UEに対して、どのアンテナポートのDM-RSを用いて当該拡張PDCCHを復調すべきかを認識させる必要がある。この方法としては、eCCE#1?#4とDM-RSのAP#7?#9とを関連付ける第1の方法と、上位レイヤシグナリングによりどのアンテナポートのDM-RSを用いるかをユーザ端末UEに通知する第2の方法とが考えられる。
(中略)
【0045】
第1の方法では、図7に示すように、1PRBを構成するeCCE#1?#4に対して、それぞれ、DM-RSのアンテナポート(AP)#7?#10が関連付けられる。この場合、ユーザ端末UEは、AP#7?#10のDM-RSを用いてチャネル推定を行い、AP#7?#10のチャネル推定値を取得する。図7では、eCCE#1とDM-RSのAP#7とが関連付けられるので、ユーザ端末UEは、AP#7のチャネル推定値を用いて、eCCE#1にマッピングされた拡張PDCCHを復調する。同様に、図7では、eCCE#2?#4とDM-RSのAP#8?#10とがそれぞれ関連付けられるので、ユーザ端末UEは、AP#8?#10のチャネル推定値を用いて、eCCE#2?#4にマッピングされた拡張PDCCHをそれぞれ復調する。」

(エ)「【0047】
図8に、第1の方法におけるアグリゲーションレベル毎のeCCEとDMRSのアンテナポートとの関連付けを示す。図8では、1PRBを構成するeCCE#1?#4と、送信レイヤ数が4である場合のアンテナポート(AP)#7?#9とがアグリゲーションレベル毎に関連付けられる。
【0048】
ここで、アグリゲーションレベル(AGL)とは、ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHにeCCEを何個連続で割り当てるかを示すものである。例えば、AGL1では、1個のeCCEがユーザ端末UEに対する拡張PDCCHに割り当てられる。同様に、AGL2では、連続する2個のeCCEが割り当てられ、AGL4では、連続する4個のeCCEが割り当てられる。アグリゲーションレベルは、ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいて決定される。また、アグリゲーションレベルに基づいて、ユーザ端末UEがブラインドデコーディングを行う範囲を示すサーチスペースが定義される。
(中略)
【0053】
一方、第2の方法では、上位レイヤシグナリングにより、ユーザ端末UEに対して、当該ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHの復調に用いるDM-RSのアンテナポート(AP)が通知される。この場合、ユーザ端末UEは、上位レイヤシグナリングにより通知されたアンテナポートのDM-RSを用いてチャネル推定を行い、当該アンテナポートのチャネル推定値を取得する。ユーザ端末UEは、取得したチャネル推定値を用いて、eCCEにマッピングされた拡張PDCCHを復調する。」

(オ)図6として以下の図が記載されている。




(カ)図7として以下の図が記載されている。




イ.引用発明
引用例1の上記「ア」の記載、及びこの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

(ア)
a.上記「ア」の「(ア)」の段落[0023]には「各ユーザに拡張PDCCHを割り当てる方法としては、・・・(中略)・・・システム帯域全体に分散された物理リソースブロック(PRB)内で、所定のリソース(例えば、拡張制御チャネル要素(eCCE))単位で割り当てる方法(without cross interleaving)・・・(中略)・・・が適用できる。」こと,同段落[0026]には「システム帯域は、複数の連続するPRBからなるリソースブロックグループ(RBG)で構成されてもよい。図3Bでは、システム帯域の一部のPRBが拡張PDCCHに割り当てられ」ること,及び上記「ア」の「(ウ)」の段落[0043]には「1PRBを構成する各eCCE(eCCE#1?#4)に対してそれぞれ異なるユーザ端末UEに対する拡張PDCCHがマッピングされる」ことが記載されている。これらの記載によれば,引用例1には「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB内で、所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)に対して,各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHをマッピングする」ことが記載されている。

b.上記「ア」の「(エ)」の段落[0048]には「アグリゲーションレベル(AGL)とは、ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHにeCCEを何個連続で割り当てるかを示すものである。例えば、AGL1では、1個のeCCEがユーザ端末UEに対する拡張PDCCHに割り当てられる。同様に、AGL2では、連続する2個のeCCEが割り当てられ、AGL4では、連続する4個のeCCEが割り当てられる。アグリゲーションレベルは、ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいて決定される。」ことが記載されている。当該記載によれば,引用例1において,各ユーザ端末UEにして拡張PDCCHを割り当てる際,「各ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいてアグリゲーションレベル(AGL)が決定され,決定されたアグリゲーションレベルがAGL1では、1個のeCCEがユーザ端末UEに対する拡張PDCCHに割り当てられ,AGL2では、連続する2個のeCCEが割り当てられる」といえる。

c.上記「ア」の「(ア)」の段落[0021]には「サブフレームの先頭から最大3OFDMシンボルの制御領域以外にPDCCH用の無線リソース領域を拡張する(既存のPDSCH領域にPDCCH領域を拡張する)ことが考えられる。・・・(中略)・・・このようなPDSCHと周波数分割多重されるPDCCHは、既存のPDCCHと区別するために、拡張PDCCH(拡張下り制御チャネル、E-PDCCH、Enhanced PDCCH、FDM型PDCCH、UE-PDCCH等とも呼ぶ)と呼ばれる。」ことが記載されており,また同段落[0016]には「下り制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)」との記載がある。これらの記載によれば,引用例1の「拡張PDCCH」は,「PDCCH用の無線リソース領域を拡張するためのものであって,PDSCHと周波数多重されるPDCCHであり,PDCCHは下り制御チャネルである」といえる。

d.上記「ア」の「(イ)」の段落[0033]には「複数の分割されたeCCE(図5Aでは、4個)で構成されるPRB」との記載があることから,引用例1の「PRBは複数の分割されたeCCEで構成されるもの」といえる。

上記「a」ないし「d」を総合すれば,引用例1には「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB内で、所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)に対して,各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHをマッピングすることであって,各ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいてアグリゲーションレベル(AGL)が決定され,決定されたアグリゲーションレベルがAGL1では,1個のeCCEがユーザ端末UEに対する拡張PDCCHに割り当てられ,AGL2では,連続する2個のeCCEが割り当てられるものであり,ここで,前記拡張PDCCHはPDCCH用の無線リソース領域を拡張するためのものであって,PDSCHと周波数多重されるPDCCHであり,PDCCHは下り制御チャネルであり,また前記PRBは複数の分割されたeCCEで構成されるもの」が記載されているといえる。

(イ)
a.上記「ア」の「(ア)」の段落[0022]には「ユーザ固有の参照信号である復調用参照信号(DM-RS(DeModulation-Reference Signal)、ユーザ固有参照信号、UE-Specific RS、DRS(Dedicated Reference Signal)などとも呼ばれる)(以下、DM-RSと呼ぶ)を用いて拡張PDCCHの復調を行うことでビームフォーミングゲインを得ることが可能となる。」ことが記載されている。当該記載によれば,引用例1における「拡張PDCCHは,復調用参照信号(DM-RS)を用いて復調を行うことでビームフォーミングゲインを得ることが可能となるもの」であるといえる。

b.上記「ア」の「(ア)」の段落[0024]には「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBにはDM-RSが配置される。」こと,及び上記「ア」の「(ウ)」の段落[0045]には「1PRBを構成するeCCE#1?#4に対して、それぞれ、DM-RSのアンテナポート(AP)#7?#10が関連付けられる。」ことが記載されている。これらの記載によれば,「DM-RS」は,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRB」を「構成する各eCCE」に「関連付けられる」ものといえる。
また,上記「ア」の「(ウ)」の段落[0042]には「図6に示すように、送信レイヤ数が4である場合、時間方向に連続する2つのリソースエレメント(RE)にアンテナポート(AP)#7、#8のDM-RSが符号分割多重される。」こと,同段落[0045]には「図7に示すように、1PRBを構成するeCCE#1?#4に対して、それぞれ、DM-RSのアンテナポート(AP)#7?#10が関連付けられる。」ことが記載されており,上記「ア」の「(オ)」の図6,及び同「(カ)」の図7からは,例えば,1PRBを構成するeCCE#1には,周波数軸方向に1つめであって,時間軸方向に6つ及び7つめのリソースエレメントにアンテナポート#7,#8のDM-RSが配置され,同eCCE#2には,周波数軸方向に6つめであって,時間軸方向に6つ及び7つめのリソースエレメントにアンテナポート#7,#8のDM-RSが配置されていることを読み取ることができる。これらの記載によれば,「DM-RS」は「アンテナポート」毎に設けられるものであって,「アンテナポート」の「DM-RS」は各「eCCE」の所定の位置の「リソースエレメント」に配置されるものといえる。
以上のことから,引用例1において,「DM-RSは,拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメントに,アンテナポート毎に配置されるもの」といえる。

c.上記「ア」の「(ウ)」の段落[0043]には「1PRB内を構成する各eCCEに拡張PDCCHがマッピングされたユーザ端末UEに対して、どのアンテナポートのDM-RSを用いて当該拡張PDCCHを復調すべきかを認識させる必要がある。この方法としては、eCCE#1?#4とDM-RSのAP#7?#9とを関連付ける第1の方法と、上位レイヤシグナリングによりどのアンテナポートのDM-RSを用いるかをユーザ端末UEに通知する第2の方法とが考えられる。」と記載されている。当該記載によれば,引用例1は「拡張PDCCHがマッピングされたeCCEと各アンテナポートのDM-RSを関連付ける,又はどのアンテナポートのDM-RSを用いるかをユーザ端末に通知している」といえる。

d.上記「ア」の「(イ)」の段落[0031]には「eCCEとは、拡張PDCCHに対する無線リソースの割り当て単位である。eCCEは、既存のPDCCHに対する無線リソースの割り当て単位である制御チャネル要素(CCE:Channel Control Element)をリユースできるように定義されるものである。なお、既存のCCEは、9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され、各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成される。」ことが記載されている。当該記載によれば,引用例1における「eCCE」は,「既存のCCEをリユースできるように定義されるものであって,既存のCCEは9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され,各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成される」ものといえる。

上記「a」ないし「d」を総合すれば,引用例1には「拡張PDCCHは,復調用参照信号(DM-RS)を用いて復調を行うことでビームフォーミングゲインを得ることが可能となるものであり,前記DM-RSは,前記拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメントに,アンテナポート毎に配置されるものであり,前記拡張PDCCHがマッピングされた前記eCCEと各アンテナポートの前記DM-RSを関連付ける,又はどのアンテナポートのDM-RSを用いるかをユーザ端末に通知し,ここで,前記eCCEは,既存のCCEをリユースできるように定義されるものであって,既存のCCEは9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され,各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成される」ことが記載されているといえる。

(ウ)上記「ア」の「(ア)」の段落[0016]には「MU-MIMO伝送が適用されるシステムでは、各サブフレームにおいて先頭から所定のOFDMシンボル(1?3OFDMシンボル)まで、下り制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)用の無線リソース領域(PDCCH領域)として確保される。」こと,同段落[0017]には「PDCCH領域には、ユーザ端末UE(ここでは、UE#1?#4)に対する下り制御情報(DCI:Downlink Control Information)が割当てられる。・・・(中略)・・・このように、各サブフレームにおいて、ユーザ端末UEに対する下りデータ用の信号と、当該下りデータを受信するための下り制御情報(DCI)用の信号とは時分割多重されて送信される。」ことが記載されていることから,「PDCCH」はPDCCH領域に割り当てられ,「ユーザ端末UE」に送信されるものといえる。
また,同段落[0021]には「サブフレームの先頭から最大3OFDMシンボルの制御領域以外にPDCCH用の無線リソース領域を拡張する(既存のPDSCH領域にPDCCH領域を拡張する)ことが考えられる。・・・(中略)・・・このようなPDSCHと周波数分割多重されるPDCCHは、既存のPDCCHと区別するために、拡張PDCCH(拡張下り制御チャネル、E-PDCCH、Enhanced PDCCH、FDM型PDCCH、UE-PDCCH等とも呼ぶ)と呼ばれる。」と記載され,拡張PDCCHはPDCCH用の無線リソース領域を拡張するためのものであるから,「拡張PDCCH」も,「PDCCH」と同様に「ユーザ端末UE」に送信されるものといえる。
そして,同段落[0022]には「ユーザ固有の参照信号である復調用参照信号(DM-RS(DeModulation-Reference Signal)、ユーザ固有参照信号、UE-Specific RS、DRS(Dedicated Reference Signal)などとも呼ばれる)(以下、DM-RSと呼ぶ)を用いて拡張PDCCHの復調を行う」と記載されていることから,「拡張PDCCH」を受信する「ユーザ端末UE」は,「DM-RS」を用いて「拡張PDCCH」の復調を行うものであり,そのためには「拡張PDCCH」とともに,「DM-RS」も「ユーザ端末UE」に送信されることは明らかである。
してみれば,引用例1には,「拡張PDCCH及びDM-RSをユーザ端末UEに送信する」ことが記載されているといえる。

したがって,上記「(ア)」ないし「(ウ)」を総合すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB内で、所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)に対して,各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHをマッピングすることであって,各ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいてアグリゲーションレベル(AGL)が決定され,決定されたアグリゲーションレベルがAGL1では,1個のeCCEがユーザ端末UEに対する拡張PDCCHに割り当てられ,AGL2では,連続する2個のeCCEが割り当てられるものであり,ここで,前記拡張PDCCHはPDCCH用の無線リソース領域を拡張するためのものであって,PDSCHと周波数多重されるPDCCHであり,PDCCHは下り制御チャネルであり,また前記PRBは複数の分割されたeCCEで構成されるものであり,
前記拡張PDCCHは,復調用参照信号(DM-RS)を用いて復調を行うことでビームフォーミングゲインを得ることが可能となるものであり,前記DM-RSは,拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメントに,アンテナポート毎に配置されるものであり,前記拡張PDCCHがマッピングされた前記eCCEと各アンテナポートの前記DM-RSを関連付ける,又はどのアンテナポートのDM-RSを用いるかをユーザ端末に通知し,ここで,前記eCCEは,既存のCCEをリユースできるように定義されるものであって,既存のCCEは9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され,各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成されるものであり,
前記拡張PDCCH及び前記DM-RSを前記ユーザ端末UEに送信する,
方法。」

ウ. 周知技術
原査定の拒絶の理由で引用された引用例2(国際公開第2013/002528号)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)




(当審仮訳:多重ノードシステムのために新たに定義されたe-PDCCHを割り当てるにあたって、図14で説明された既存のR-PDCCHの構造を再使用することができる。即ち、RB内の第1のスロットにはDLグラントのみが割り当てられ、第2のスロットにはULグラント又はPDSCHが割り当てられることができる。また、制御領域、CRS及びDMRSがマッピングされるリソース要素を除いた残りのリソース要素にe-PDCCHが割り当てられることができる。既存の構造をそのまま使用することによって既存標準に大きい影響を及ぼさずにe-PDCCHを割り当てることができる。)

上記記載によれば,引用例2には,次の周知技術が記載されていると認められる。

「e-PDCCHを割り当てるにあたって,DMRSがマッピングされるリソース要素を除いたリソース要素にe-PDCCHを割り当てる。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア.
(ア)引用発明の「物理リソースブロック(PRB)」(以下,「PRB」という。)は,「複数の分割されたeCCEで構成されるもの」である。また,引用発明の「eCCE」は「既存のCCEをリユースできるように定義されるものであって,既存のCCEは9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され,各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成されるもの」であるから,「eCCE」は「既存のCCE」と同様に,「9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され,各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成されるもの」といえる。そして,「リソース要素」が,1つのOFDMシンボルと1つのOFDMサブキャリアから構成される時間周波数リソースであることは,無線通信の分野における技術常識であることを考慮すれば,引用発明において,「リソース要素」から構成される「一部のPRB」は,本件補正発明の「第1時間周波数リソース」に相当する。
また,引用発明は「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB内で、所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)に対して,各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHをマッピングする」ものであるから,「各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHをマッピングする」ために,「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)」内で,「一部のPRB」を決定しているものといえる。
よって,引用発明の「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB」を決定することは,本件補正発明の「第1時間周波数リソースを決定するステップ」に相当する。

(イ)引用発明の「拡張PDCCHはPDCCH用の無線リソース領域を拡張するためのものであって,PDSCHと周波数多重されるPDCCHであ」るから,引用発明の「拡張PDCCH」は「PDCCH」の一種であるといえる。
そして,引用発明は「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB内で、所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)に対して,各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHをマッピングする」ものである。つまり,引用発明の「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)」は,いずれも「拡張PDCCH」がマッピングされる「所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)」(以下,「eCCE」という。)を含む「一部のPRB」となる可能性があるといえるから,引用発明の「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)」は,本件補正発明の「複数の物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)候補」に含まれ,引用発明の「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)」内の「一部のPRB」は,本件補正発明の「複数の物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)候補の中のPDCCH候補」に含まれる。
そして、(ア)で説示したように、引用発明の「一部のPRB」は,本件補正発明の「第1時間周波数リソース」に相当する。
よって,引用発明の「一部のPRB」は「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB」であることは,本件補正発明の「第1時間周波数リソースは複数の物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)候補の中のPDCCH候補であ」ることに含まれる。

(ウ)引用発明は「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB内で、所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)に対して,各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHをマッピングする」ものであって,「各ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいてアグリゲーションレベル(AGL)が決定され,決定されたアグリゲーションレベルがAGL1では,1個のeCCEがユーザ端末UEに対する拡張PDCCHに割り当てられ」るものであることを考慮すれば,引用発明は「各ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいてアグリゲーションレベル(AGL)」(以下,「AGL」という。)を「決定」し,決定されたAGLに基づいた個数の「eCCE」を選択するものである。
ここで,上記「(ア)」で説示したとおり,引用発明の「eCCE」は,時間周波数リソースである「リソース要素」を複数個含んで構成されるものであるから,時間周波数リソース(リソース要素)のサブセットといえる。また,引用発明は「各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCH」を,それぞれ異なる「eCCE」にマッピングすることは明らかであるから,ユーザ端末UEにマッピングされる「eCCE」が1つ以上存在することは明らかである。してみれば,引用発明の「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」は,本件補正発明の「1つ以上の時間周波数リソースサブセット」に相当する。
そして,引用発明は「各ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいてアグリゲーションレベル(AGL)」を「決定」し,決定されたAGLに基づいた個数の「eCCE」を選択するものであるから,引用発明の当該「eCCE」を選択するルールが,本件補正発明の1つ以上の時間周波数リソースセットを選択する「特定のルール」に相当する。
また,引用発明の「PRB」は,上記「(ア)」で説示したとおり,時間周波数リソースであるから,リソースの一種であることは明らかである。してみれば,引用発明の「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」を含む「一部のPRB」は,本件補正発明の,1つ以上の時間周波数リソースサブセットを含む「リソース」に対応する。
さらに,上記「(イ)」のとおり,引用発明の「一部のPRB」が本件補正発明の「複数の物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)候補の中のPDCCH候補」に含まれるものであることを考慮すれば,引用発明の「一部のPRB」が『「各ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいてアグリゲーションレベル(AGL)」が「決定」され,決定されたAGLに基づいた個数の「eCCE」が選択され,当該選択された「eCCE」を含むリソースである』ことは,本件補正発明の「PDCCH候補は、特定のルールに基づいて選択された1つ以上の時間周波数リソースサブセットを含むリソースである」ことに含まれる。

上記「(ア)」ないし「(ウ)」によれば,引用発明の「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB」を決定することであって,前記「一部のPRB」は「各ユーザ端末UEにおける信号の受信品質に基づいてアグリゲーションレベル(AGL)」が「決定」され,決定されたAGLに基づいた個数の「eCCE」が選択され,当該選択された「eCCE」を含むリソースであることは,本件補正発明の「第1時間周波数リソースを決定するステップであって、前記第1時間周波数リソースは複数の物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)候補の中のPDCCH候補であり、PDCCH候補は、特定のルールに基づいて選択された1つ以上の時間周波数リソースサブセットを含むリソースである、ステップ」に含まれる。

イ.
(ア)ここでは,本件補正発明の「前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第2時間周波数リソースおよび第3時間周波数リソースを取得するステップ」についての対比を行うにあたり,まず当該ステップに含まれる「第1時間周波数リソース」,「第2時間周波数リソース」及び「第3時間周波数リソース」について対比を行う。

a.最初に,本件補正発明の「前記第1時間周波数リソース」について検討を行う。本件補正発明の「前記第1時間周波数リソースは,複数のリソース要素(RE)セットで構成され、前記複数のREセットのすべてが同じ固定数量のREを含」むものである。

(a)上記「ア」の「(ア)」で説示したとおり,引用発明の「一部のPRB」は,本件補正発明の「第1時間周波数リソース」に相当する。また,引用発明の「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」は,上記「ア」の「(ア)」で説示したとおり,「既存のCCE」と同様に,「9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され,各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成されるもの」といえるから,本件補正発明の「リソース要素(RE)セット」に相当する。そして,引用発明の「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」は,「システム帯域全体に分散された複数の物理リソースブロック(PRB)の一部のPRB内」の「eCCE」であること,「PRBは複数の分割されたeCCEで構成されるもの」であることを考慮すれば,引用発明において,「拡張PDCCH」がマッピングされる「一部のPRB」が「複数の分割されたeCCEで構成される」ことは,本件補正発明の「前記第1時間周波数リソースは,複数のリソース要素(RE)セットで構成され」ることに相当する。

(b)引用発明における「eCCE」は,上記のとおり,「9つのリソース要素グループ(REG:Resource Element Group)から構成され,各REGは、4つのリソース要素(RE:Resource Element)のセットから構成されるもの」であるから,1つの「eCCE」が36個のリソース要素を含んでいることは明らかである。そして,「既存のCCE」に含まれるリソース要素の数は固定であることが無線通信分野における技術常識であること,及び引用発明の「PRBは複数の分割されたeCCEで構成されるもの」であることを考慮すれば,引用発明の「PRB」を構成する複数の「eCCE」は,すべて36個のリソース要素を含むものといえる。してみれば,引用発明における「PRB」を構成する複数の「eCCE」が36個のリソース要素を含むことは,本件補正発明の「前記複数のREセットのすべてが同じ固定数量のREを含」むことに相当する。

上記「(a)」及び「(b)」によれば,引用発明において,「拡張PDCCH」がマッピングされる「一部のPRB」が「複数の分割されたeCCEで構成され」,当該「PRB」を構成する複数の「eCCE」が36個のリソース要素を含むことは,本件補正発明の「前記第1時間周波数リソースは,複数のリソース要素(RE)セットで構成され,前記複数のREセットのすべてが同じ固定数量のREを含」むことに相当する。

b.次に,本件補正発明の「第2時間周波数リソース」について対比を行う。本件補正発明の「前記第2時間周波数リソースは、前記第1時間周波数リソース内に前記第3時間周波数リソース以外のリソースを備え」るものであって,「前記第2時間周波数リソースはビーム形成制御チャネルを搬送するために使用され」るものである。

(a)対比を行うにあたり,まず,本件補正発明の「前記第2時間周波数リソースはビーム形成制御チャネルを搬送するために使用され」るものである点について対比を行う。
引用発明の「拡張PDCCH」は,上記「ア」の「(イ)」で説示したとおり,「PDCCH」の一種であり,また「PDCCHは下り制御チャネルであ」る。そして,引用発明の「拡張PDCCH」は「復調用参照信号(DM-RS)を用いて復調を行うことでビームフォーミングゲインを得ることが可能となるもの」であるから,ビームフォーミングにより形成された「制御チャネル」といえる。してみれば,引用発明のビームフォーミングにより形成された「制御チャネル」である「拡張PDCCH」は,本件補正発明の「ビーム形成制御チャネル」に相当する。
また,引用発明は「所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)に対して,各ユーザ端末UEに対する拡張PDCCHをマッピングする」ものであるから,「拡張PDCCH」は,「eCCE」に対して「マッピング」されるものである。そして,「eCCE」は,上記「ア」の「(ア)」に説示したとおり,「リソース要素」から構成されるものであり,
また情報を送信する際は,当該「リソース要素」を用いること,及び送信することが搬送することに含まれることは,無線通信の分野における技術常識である。さらに,上記「ア」の「(ア)」に説示したように,「リソース要素」は,時間周波数リソースであることも,無線通信の分野における技術常識である。してみれば,引用発明の「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」は,「拡張PDCCH」の送信に使用されるものといえるから,本件補正発明の「ビーム形成制御チャネルを搬送するために使用され」る「第2時間周波数リソース」に相当する。
したがって,引用発明において,「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」が「拡張PDCCH」を送信するために使用されるものであることは,本件補正発明の「前記第2時間周波数リソースはビーム形成制御チャネルを搬送するために使用され」るものであることに相当する。

(b)一方,引用発明には,本件補正発明の「前記第2時間周波数リソースは、前記第1時間周波数リソース内に前記第3時間周波数リソース以外のリソースを備え」ることについては,明確に特定されていない。

c.最後に,本件補正発明の「第3時間周波数リソース」について対比を行う。本件補正発明の「前記第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置され」るものであって,「前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される」ものである。

(a)対比を行うにあたり,まず,本件補正発明の「前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される」ものである点について対比を行う。
引用発明の「復調用参照信号(DM-RS)」(以下,「DM-RS」という。)は,「拡張PDCCHは,復調用参照信号(DM-RS)を用いて復調を行う」ものであるから,「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「復調用参照信号」である。そして,引用発明の「拡張PDCCH」は,上記「b」の「(a)」で説示したとおり,本件補正発明における「ビーム形成制御チャネル」に相当するものであるから,引用発明の「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」は,本件補正発明の「ビーム形成制御チャネルの参照信号」に相当する。
また,引用発明の「DM-RS」は「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメントに,・・・(中略)・・・配置されるもの」である。ここで,情報を送信する際に,「リソースエレメント」を用いること,及び送信することは搬送することに含まれることが,無線通信の分野における技術常識であることを考慮すれば,引用発明において,上記「各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」は,「DM-RS」の搬送に使用されるものといえる。ここで,引用発明の「リソースエレメント」が「リソース要素(RE:Resource Element)」と同じものであることは明らかである。してみれば,上記「ア」の「(ア)」に説示したことと同様に,引用発明の「リソースエレメント」も時間周波数リソースであるといえる。以上のことから,引用発明の「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」が配置される,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」は,「DM-RS」の送信に使用されるものであるから,本件補正発明の「前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される」「第3時間周波数リソース」に相当する。
したがって,引用発明の「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」が配置される,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」が「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」の送信に使用されることは,本件補正発明の「前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される」ことに相当する。

(b)次に,本件補正発明の「前記第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置され」るものである点について対比を行う。
上記「(a)」に説示したとおり,引用発明において「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」が配置される,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」が,本件補正発明の「第3時間周波数リソース」に相当するものである。ここで,「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」を含む「eCCE」が構成する「PRB」は,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRB」であることから,「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」を含む「一部のPRB」と同じ「PRB」を表しているといえる。
また、上記「イ」の「(ア)」の「a」の「(a)」に説示したとおり,引用発明の「eCCE」は,本件補正発明の「リソース要素(RE)セット」に相当する。
してみれば,引用発明の「DM-RS」が配置される上記「リソースエレメント」は,「一部のPRB」を「構成する各eCCEの所定の位置」に配置されるものといえるから,引用発明において「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」が配置される,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」が「一部のPRB」を「構成する各eCCEの所定の位置」に配置されることが,本件補正発明の「前記第3の時間周波数リソースは,前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置され」ることに相当する。

上記「(a)」及び「(b)」によれば,引用発明の「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」が配置される,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」が,「一部のPRB」を「構成する各eCCEの所定の位置」に配置され,「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」の送信に使用されることは,本件補正発明の「前記第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置され」るものであって,「前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される」ことに相当する。

(イ)そして,上記「(ア)」を踏まえ,本件補正発明の「前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第2時間周波数リソースおよび第3時間周波数リソースを取得するステップ」であって,「前記予め設定されたルールは所定の箇所を示」す点について対比を行う。

a.上記「ア」の「(ア)」に説示したとおり,引用発明の「一部のPRB」は,本件補正発明の「第1時間周波数リソース」に相当する。また,上記「(ア)」の「b」の「(a)」に説示したとおり,引用発明において,「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」は,本件補正発明の「第2時間周波数リソース」に相当する。ここで,引用発明の「一部のPRB」とは,「拡張PDCCH」が「マッピング」される「PRB」であるから,「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」は「一部のPRB」に含まれるものである。そうすると,引用発明の「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」は,「一部のPRB」に基づいて取得されるものといえる。
よって,引用発明の「一部のPRB」に基づいて「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」が取得されることは,本件補正発明の「第1時間周波数リソース」「に基づいて第2時間周波数リソースを取得するステップ」に含まれる。一方で,引用発明には,本件補正発明の「第2時間周波数リソース」が「予め設定されたルールに基づいて」取得することについては,明確に特定されていない。

b.上記「ア」の「(ア)」に説示したとおり,引用発明の「一部のPRB」は,本件補正発明の「第1時間周波数リソース」に相当する。また,上記「(ア)」の「c」の「(a)」に説示したとおり,引用発明において,「拡張PDCCH」の「復調」に用いられる「DM-RS」が配置される,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」が,本件補正発明の「第3時間周波数リソース」に相当する。
ここで,引用発明の「一部のPRB」とは,「拡張PDCCH」が「マッピング」される「PRB」であるから,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRB」に含まれるものである。そうすると,引用発明の「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」は「一部のPRB」内に存在するものといえる。また,当該「リソースエレメント」は「DM-RS」を送信する際に取得されることは明らかである。これらのことから,当該「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」は「一部のPRB」に基づいて取得されるものといえる。
よって,引用発明の「一部のPRB」に基づいて「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」が取得されることは,本件補正発明の「第1時間周波数リソース」「に基づいて第3時間周波数リソースを取得するステップ」に含まれる。

c.一方,引用発明の「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」は,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメントに,・・・(中略)・・・配置される」ものである。そして,引用発明は「拡張PDCCHがマッピングされた前記eCCEと各アンテナポートの前記DM-RSを関連付ける,又はどのアンテナポートのDM-RSを用いるかをユーザ端末に通知」されるものであるから,「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」は,「拡張PDCCH」がマッピングされた「eCCE」と関連付けられた位置,又は通知された位置にあるといえる。

そして,引用発明の「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」が「DM-RS」を送信する際に取得されることは明らかである。
してみれば,引用発明において,「DM-RS」を送信する際に取得される,「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」が,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」であって,「拡張PDCCH」がマッピングされた「eCCE」と関連付けられた位置,又は通知された位置にあることが,本件補正発明における「第3時間周波数リソースを取得する」際に用いられる本件補正発明の「予め設定したルール」であって,「前記予め設定されたルールは所定の箇所を示」すことに含まれる。
したがって,引用発明において,『一部のPRB』,及び『「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」であって,当該「リソースエレメント」が「拡張PDCCH」がマッピングされた「eCCE」と関連付けられた位置,又は通知された位置にあること』に基づいて,「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」を取得することは,本件補正発明の「前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて」「第3時間周波数リソースを取得する」ことに含まれる。

そして,上記「(ア)」及び「(イ)」によれば,本件補正発明と引用発明は,「第1時間周波数リソースに基づいて第2時間周波数リソース,及び第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第3時間周波数リソースを取得するステップであって、前記第1時間周波数リソースは、複数のリソース要素(RE)セットで構成され、前記複数のREセットのすべてが同じ固定数量のREを含み、前記第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置され、前記予め設定されたルールは所定の箇所を示し、前記第2時間周波数リソースはビーム形成制御チャネルを搬送するために使用され、前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される、ステップ」を備える点で一致するものといえる。

ウ.引用発明の「ユーザ端末UE」は,本件補正発明の「端末装置」に相当する。
また,引用発明において,「拡張PDCCH及び前記DM-RSがユーザ端末に送信される」際,上記「イ」の「(ア)」の「b」の「(a)」及び同「c」の「(a)」に説示したとおり,「拡張PDCCH」は当該「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」を使用し,「DM-RS」は,当該「DM-RS」が配置される,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」を使用するものである。
してみれば,引用発明の「拡張PDCCH」がマッピングされる「所定の拡張制御チャネル要素(eCCE)」に含まれる「リソース要素」,及び「DM-RS」が配置される,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」を使用して,「前記拡張PDCCH及び前記DM-RSを前記ユーザ端末UEに送信する」ことは,本件補正発明の「前記第2時間周波数リソースおよび前記第3時間周波数リソースを使用して、前記ビーム形成制御チャネルおよび前記ビーム形成制御チャネルの前記参照信号を端末装置にそれぞれ伝送するステップ」に相当する。

エ.引用発明は,「拡張PDCCH及び前記DM-RSがユーザ端末UEに送信される」ものであって,当該「拡張PDCCH」及び「DM-RS」は信号といえ,信号を送信することは信号を伝送することに含まれるものである。してみれば,引用発明は,全体として,信号伝送方法が記載されているといえるから,本件補正発明と引用発明は「信号伝送方法」である点で共通する。

したがって,上記「ア」ないし「エ」を総合すれば,本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。

<一致点>
「 第1時間周波数リソースを決定するステップであって、前記第1時間周波数リソースは複数の物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)候補の中のPDCCH候補であり、PDCCH候補は、特定のルールに基づいて選択された1つ以上の時間周波数リソースサブセットを含むリソースである、ステップと、
前記第1時間周波数リソースに基づいて第2時間周波数リソース,及び前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第3時間周波数リソースを取得するステップであって、前記第1時間周波数リソースは、複数のリソース要素(RE)セットで構成され、前記複数のREセットのすべてが同じ固定数量のREを含み、前記第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置され、前記予め設定されたルールは所定の箇所を示し、前記第2時間周波数リソースはビーム形成制御チャネルを搬送するために使用され、前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される、ステップと、
前記第2時間周波数リソースおよび前記第3時間周波数リソースを使用して、前記ビーム形成制御チャネルおよび前記ビーム形成制御チャネルの前記参照信号を端末装置にそれぞれ伝送するステップと、
を備える信号伝送方法。」

<相違点>
「第2時間周波数リソースを取得するステップ」に関し,本件補正発明は「前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第2時間周波数リソース」「を取得するステップであって」,「前記第2時間周波数リソースは、前記第1時間周波数リソース内に前記第3時間周波数リソース以外のリソースを備え,前記予め設定されたルールは所定の箇所を示」すものであるのに対し,引用発明は「一部のPRB」に基づいて「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」を取得するものであるが,当該発明特定事項が明確に特定されていない点。

(4)判断
ア.上記相違点について
上記「(2)」の「ウ」に説示したように,e-PDCCHを割り当てるにあたって,DMRSがマッピングされるリソース要素を除いたリソース要素にe-PDCCHを割り当てることは,無線通信分野における周知技術である。ここで,e-PDCCHとは拡張PDCCHを表し,DMRSがDM-RSを表していることは自明である。してみれば,引用発明において「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」を取得する際,上記周知技術を適用することで,「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」として,「拡張PDCCH」がマッピングされる「一部のPRB」内の「eCCE」のうち,「DM-RS」に割り当てられた「リソースエレメント」を除いたリソースエレメントを用いることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,この際,引用発明の「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」は,上記「(3)」の「イ」の「(イ)」に説示したとおり,「拡張PDCCHが配置される可能性のあるPRBを構成する各eCCEの所定の位置のリソースエレメント」であって,「拡張PDCCH」がマッピングされた「eCCE」と関連付けられた位置,又は通知された位置にあるから,「拡張PDCCH」がマッピングされる「リソース要素」は,「拡張PDCCH」がマッピングされた「eCCE」のうち,「DM-RS」が配置される「所定の位置のリソースエレメント」以外の「リソース」となることは明らかである。してみれば,引用発明に上記周知技術を適用した際に,「拡張PDCCH」がマッピングされる「eCCE」に含まれる「リソース要素」として,「拡張PDCCH」がマッピングされる「一部のPRB」内の「eCCE」のうち,「DM-RS」に割り当てられた「リソースエレメント」を除いたリソースエレメントを用いるというルールが,本件補正発明の「予め設定されたルール」に含まれる。
同様に,引用発明に上記周知技術を適用した際に,「拡張PDCCH」がマッピングされた「eCCE」,すなわち「一部のPRB内」の所定の「eCCE」には,「DM-RS」が配置される「所定の位置のリソースエレメント」以外に,「拡張PDCCH」がマッピングされる「リソース要素」があるから,当該「一部のPRB」内に,「DM-RS」がマッピングされる「リソースエレメント」以外の「リソース要素」を含むことが,本件補正発明の「前記第2時間周波数リソースは、前記第1時間周波数リソース内に前記第3時間周波数リソース以外のリソースを備え」ることに含まれる。
さらに,引用発明に上記周知技術を適用した際に,「拡張PDCCH」がマッピングされる「リソース要素」は,「DM-RS」が配置される「所定の位置のリソースエレメント」以外の「リソース要素」であるから,「拡張PDCCH」がマッピングされる「リソース要素」も,「DM-RS」が配置される「所定の位置」以外の所定の箇所を用いるものといえる。そして,「DM-RS」が配置される「所定の位置」は,上記「(3)」の「イ」の「(イ)」の「c」に説示したとおり,予め設定されたものといえる。してみれば,「拡張PDCCH」がマッピングされる「リソース要素」を取得する際,当該「拡張PDCCH」がマッピングされる「リソース要素」として,「DM-RS」が配置される「所定の位置のリソースエレメント」以外の,所定の箇所の「リソース要素」を用いるというルールが,本件補正発明の「前記予め設定されたルールは所定の箇所を示」すことに含まれる。
よって,本件補正発明は,引用発明に上記周知技術を適用し,上記相違点の発明特定事項を採用することにより,当業者が容易になし得たことである。

イ.審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は,令和2年6月26日に提出された,審判請求書に対する手続補正書(方式)において,
「引用文献1は以下のa)、b)の特徴を開示していない。
a)第1時間周波数リソースを決定するステップであって、前記第1時間周波数リソースは...PDCCH候補...である、ステップと、
前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第2時間周波数リソースおよび第3時間周波数リソースを取得するステップであって、...前記第3時間周波数リソースは前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される、ステップ
(下線は強調のため)
b)前記第1時間周波数リソースは、複数のリソース要素(RE)セットで構成され、前記複数のREセットのすべてが同じ固定数量のREを含み、前記第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置されること」
と主張している。
しかしながら,上記a)の点,及びb)の点は,それぞれ上記「(3)」で説示したとおり,引用例1に記載されている。よって,審判請求人の上記主張を採用することはできない。

また,審判請求人は,「引用文献1では、ユーザ機器が候補を検出し、次いで事前設定されたルールに従って候補のリソース内のDMRSを取得し得ることは開示していない。
さらに、引用文献1では、複数のPDCCH候補に向けてブラインド検索をどのように行うかについてのみ言及しており、PDCCH候補の時間周波数リソースについては言及していない。
したがって、本願の特徴a)は引用文献1では開示されていない。」
と主張している。
しかしながら,審判請求人の主張内容は「ユーザ機器が候補を検出」すること,「候補のリソース内のDMRSを取得し得ること」や「複数のPDCCH候補に向けてブラインド検索をどのように行うか」といった「ユーザ機器」の動作に関する主張である。これに対し,本件補正発明は「前記第2時間周波数リソースおよび前記第3時間周波数リソースを使用して,前記ビーム形成制御チャネルおよび前記ビーム形成制御チャネルの参照信号を端末装置にそれぞれ伝送する送信ステップ」を備える「信号伝送方法」であって,「第1時間周波数リソースを決定するステップ」も「前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基痔手第2時間周波数リソースおよび第3時間周波数リソースを取得するステップ」も前記「送信ステップ」で信号を送信するために決定及び取得するものである。してみれば,本件補正発明が,端末装置(ユーザ機器)の方法発明ではなく,ネットワーク装置(基地局)の方法発明であることは明らかである。つまり,本件補正発明における「第1の時間周波数リソースを決定する」ことや,「第2の時間リソースおよび第3の時間周波数リソースを取得する」ことはネットワーク装置(基地局)が行う動作であって,端末装置(ユーザ機器)が行う動作ではないから,端末装置(ユーザ機器)が行う動作に関する上記主張は採用できない。

(イ)審判請求人は,令和2年12月18日に提出された上申書において,
「引用文献1では、前記第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置されておりません。したがって、DMRSを復調するためにDM-RS APを使用することは、「第3時間周波数リソース」と同じではない」と主張している。
しかしながら,上記「(3)」の「イ」で説示したとおり,引用例1に記載された「DM-RS」が配置される「リソースエレメント」は,本件補正発明の「第3時間周波数リソース」に相当するものである。よって,審判請求人の上記主張を採用することはできない。

また,審判請求人は「引用文献1は、少なくとも次の特徴を開示していません。
a)第1時間周波数リソースを決定するステップであって、前記第1時間周波数リソースは複数の物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)候補の中のPDCCH候補で・・・ある、ステップと、前記第1時間周波数リソースおよび予め設定されたルールに基づいて第2時間周波数リソースおよび第3時間周波数リソースを取得するステップであって、・・・前記第3時間周波数リソースはビーム形成制御チャネルの参照信号を搬送するために使用される、ステップ
b)第1時間周波数リソースは、複数のリソース要素(RE)セットで構成され、前記複数のREセットのすべてが同じ固定数量のREを含み、第3時間周波数リソースは、前記複数のREセットのそれぞれに予め設定された箇所に配置されること」
と主張している。
しかしながら,上記a)の点,及びb)の点は,それぞれ上記「(3)」で説示したとおり,引用例1に記載されている。よって,審判請求人の上記主張を採用することはできない。

(5)本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和2年6月10日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年1月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,上記「第2」の「[理由]」の「1」の「(2)」に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定(令和2年2月4日付け拒絶査定)における拒絶の理由は,「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1に係る発明に対して,以下の引用例1及び周知例として引用例2が引用されている。

引用例1.特開2013-197877号公報
引用例2.国際公開第2013/002528号

3.引用例の記載,引用発明及び周知技術
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし2,及びその記載事項は,前記「第2」の「[理由]」の「2」の「(2)」に記載したとおりである。

4.対比及び判断
本願発明は,前記「第2」の「[理由]」の「2」で検討した本件補正発明から,「候補リソース」,「第1時間周波数リソース」及び「第3時間周波数リソース」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「第2」の「[理由]」の「2」の「(3)」及び「(4)」に記載したとおり,引用発明及び引用例2に記載された周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用例2に記載された周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-18 
結審通知日 2021-03-22 
審決日 2021-04-08 
出願番号 特願2018-559994(P2018-559994)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 望月 章俊
廣川 浩
発明の名称 信号伝送方法、ネットワーク装置および端末装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 野村 進  

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