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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25B |
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管理番号 | 1377513 |
審判番号 | 不服2020-7826 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-08 |
確定日 | 2021-09-02 |
事件の表示 | 特願2016-16428号「冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月3日出願公開、特開2017-133808号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年1月29日に出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年11月12日 手続補正書の提出 令和1年9月20日付け 拒絶理由通知 令和1年11月29日 意見書、手続補正書の提出 令和2年2月26日付け 拒絶査定 令和2年6月8日 審判請求書 令和3年3月5日付け 当審による拒絶理由通知 令和3年5月10日 意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和1年11月29日の手続補正により補正された明細書及び令和3年5月10日の手続補正により補正された特許請求の範囲からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 熱源ユニット(10)と、 利用ユニット内部管路(29a?29c)を有する利用ユニット(20A)と、 前記熱源ユニットと前記利用ユニット内部管路とを接続する液冷媒配管(31)およびガス冷媒配管(32)と、 前記熱源ユニット、前記利用ユニット、前記液冷媒配管および前記ガス冷媒配管を循環する冷媒と、 酸素含有炭化水素を主成分とする冷凍機油と、 を備え、 前記冷媒は、炭素?炭素不飽和結合を1以上有する分子式で表される化合物を含み、 前記冷媒の不均化反応を抑制する不均化反応抑制剤(40)が、前記液冷媒配管、前記ガス冷媒配管、および前記利用ユニット内部管路、のうちの少なくとも一部の内面に塗布されている、 冷凍装置(100)。」 第3 当審拒絶理由 (進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用例一覧> 1.特開2009-270727号公報 2.特開2002-71231号公報 3.国際公開2015/125885号 4.特開2015-7257号公報 5.国際公開2014/158663号 ・請求項1 ・引用例1及び2 請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明、及び引用例2の記載にみられるような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項2 ・引用例1及び2 請求項2に係る発明は、引用例1に記載された発明、及び引用例2の記載にみられるような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項3 ・引用例1ないし3 請求項3に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2の記載にみられるような周知技術、及び引用例3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項4 ・引用例1ないし4 請求項4に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2の記載にみられるような周知技術、引用例3の記載事項、及び引用例4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項5 ・引用例1ないし4 請求項5に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2の記載にみられるような周知技術、引用例3の記載事項、及び引用例4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・請求項6 ・引用例1ないし5 請求項6に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2の記載にみられるような周知技術、引用例3の記載事項、引用例4の記載事項、及び引用例5の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 当審の判断 1.引用例1 当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用例1(特開2009-270727号公報)には、「冷凍回路」に関して以下の記載がある(下線は、理解の一助のために当審が付与した。以下同様。)。 (1)引用例1の記載 「【請求項1】 冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮した冷媒を減圧・膨張させる減圧・膨張手段と、減圧・膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器とを備えた冷凍回路において、冷媒としてR1234yfを使用するとともに、冷凍回路内にラジカル捕捉剤または重合防止剤を配置したことを特徴とする冷凍回路。」 「【請求項7】 前記ラジカル捕捉剤または重合防止剤が、前記冷媒と接触する回路内面形成部材の表面にコーティングにより配置されている、請求項4または5に記載の冷凍回路。」 「【0002】 例えば車両用空調装置等に用いられる冷凍回路は、図1に示すような基本構成を有している。図1において、冷凍回路1は、冷媒を圧縮する圧縮機2と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器4と、凝縮した冷媒を減圧・膨張させる減圧・膨張手段としての膨張弁5と、減圧・膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器6とを備えており、この冷凍回路1中を冷媒がその状態を変化させながら循環される。このような冷凍回路1においては、現状、代表的な冷媒としてR134a等が使用されている。」 「【0004】 今までの冷媒は、二重結合を含まないので、二重結合に起因する問題を考慮する必要がない。ところが、上記新冷媒R1234yfの分子構造はCF_(3 )-CF=CH_(2 )であり、二重結合を含んでいる。二重結合はσ結合とπ結合から成立するが、π結合は一般に外部からの攻撃に脆弱である。もし、π結合が破壊された場合、二重結合が開き連鎖反応により-C-C-C-C・・・・C-の高分子を形成する可能性があり、高分子が形成されてしまうと、冷媒特性が大きく変化し、冷凍回路の性能が大幅に低下するおそれがある。 【0005】 上記二重結合を破壊する主な要因は、通常、ラジカル物質、例えばCl-、OH-、O_(3 )などであるが、蒸気圧縮式冷凍サイクルにおいては、一般的にラジカルの形成は考え難い。しかし、図1に示したように、例えば電動機3を内臓した圧縮機2、つまり電動圧縮機2を用いた場合には、電動機3内の高電圧によりラジカルが形成される可能性があり、上記新冷媒R1234yfのπ結合を攻撃して二重結合を開き、-C-C-C-C・・・・C-の高分子を形成することが予測される。 【0006】 そこで本発明の課題は、上記のような問題点に着目し、とくに使用冷媒を新冷媒であるR1234yfに変更する場合であって、ラジカルが形成される可能性がある場合に対し、ラジカルの発生を防止または抑制して、R1234yfの重合を防止し、新冷媒を用いた場合の目標とする性能を実現可能な冷凍回路を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するために、本発明に係る冷凍回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮した冷媒を減圧・膨張させる減圧・膨張手段と、減圧・膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器とを備えた冷凍回路において、冷媒としてR1234yfを使用するとともに、冷凍回路内にラジカル捕捉剤または重合防止剤を配置したことを特徴とするものからなる。すなわち、冷凍回路内のいずれかの部位に、好ましくは、ラジカルの発生のおそれがある部位または/およびその近傍に、ラジカル捕捉剤または重合防止剤を配置することで、ラジカルの発生を防止あるいは抑制してR1234yfの重合を未然に防ぐようにしたものである。」 「【0010】 このような本発明に係る冷凍回路においては、上記ラジカル捕捉剤または重合防止剤が、冷媒と接触する回路内面形成部材の表面に配置されることにより冷凍回路内に配置されている形態を採ることができる。この場合、表面にラジカル捕捉剤または重合防止剤が配置され、その表面に冷媒と接触する回路内面形成部材が、とくに上記圧縮機内、なかでも上記電動圧縮機内の部材からなると、高電圧によりラジカルが発生しやすい回路内の場所においてより効果的にラジカルの発生を防止あるいは抑制できる。またこの場合、ラジカル捕捉剤または重合防止剤が、冷媒と接触する回路内面形成部材の材料中に配合されている形態とすることも可能であるし、ラジカル捕捉剤または重合防止剤が、冷媒と接触する回路内面形成部材の表面にコーティングにより配置されている(固定されている)形態とすることも可能である。回路内面形成部材の材料中に配合する場合には、例えばラジカル捕捉剤や重合防止剤を配合した高分子材料等を使用すればよく、コーティングにより配置する場合には、例えばラジカル捕捉剤や重合防止剤を適切な溶媒に溶解または混合した状態の溶液を塗布した後、溶媒を除去すればよい。」 「【発明の効果】 【0013】 本発明に係る冷凍回路によれば、新冷媒R1234yfを使用し、回路内でラジカルが形成される可能性がある場合に対し、とくに高電圧が印加される電動圧縮機を用いる場合に対し、ラジカルの発生を防止または抑制して、R1234yfの重合を防止し、R1234yfの安定した使用を可能として目標とする冷凍回路性能を発揮させることができ、新冷媒を用いる意図としての地球温暖化係数(GWP)等の改善を確実に推進することが可能になる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下に、本発明について、とくに本発明において使用されるラジカル捕捉剤または重合防止剤の具体例について説明する。 前述の如く、本発明においては、冷凍回路内のいずれかの部位に、好ましくは、ラジカルが形成される可能性がある部位または/およびその近傍に、ラジカル捕捉剤または重合防止剤が、材料への練り込みやコーティング等によって、あるいは直接冷媒中に含有させることによって、冷凍回路内に配置することで、ラジカルの発生を防止あるいは抑制して新冷媒R1234yfの重合を未然に防ぐようにし、新冷媒R1234yfの特性を長期間安定して発揮できるようにしている。上記ラジカルが形成される可能性がある部位としては、例えば高電圧が印加されラジカルの発生のおそれがある電動圧縮機内または/およびその近傍が挙げられるが、本発明はベルト駆動圧縮機の場合であっても適用可能であり、冷凍回路内のいずれかの部位に本発明を適用することにより、新冷媒R1234yfの重合を未然に防ぐことが可能になる。この新冷媒R1234yfの重合の防止は、ラジカルの捕捉を介して、あるいは直接的に重合を防止することにより達成されるが、ラジカルの捕捉も直接的な重合防止も、最終的な達成目標は新冷媒R1234yfの重合防止にあるので、実際には、ラジカル捕捉剤または重合防止剤は区別することなく例示可能である。」 「 」 (2)引用発明 上記(1)における記載を総合すると、引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を備える冷凍回路を循環する冷媒を備え、冷媒としてR1234yfを使用するとともに、冷媒の重合防止のためのラジカル捕捉剤または重合防止剤が、冷媒と接触する回路内面形成部材の表面にコーティングにより配置されている冷凍回路を有する空調装置。」 2.引用例2 当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用例2(特開2002-71231号公報)には、「冷媒回路装置及び冷媒充填システム」に関して以下の記載がある。 (1)引用例2の記載 「【請求項1】 冷媒が循環する冷媒回路(20)を備えた冷媒回路装置において、水和反応によって水分をアルコールに転化する水分捕捉剤が冷媒回路(20)に設けられていることを特徴とする冷媒回路装置。」 「【0083】したがって、上記オキサゾリジン基を有する有機物質よりなる水分捕捉剤を、レシーバ(25)の内面又はアキュムレータ(26)の内面に塗布するようにしてもよい。更に、上記水分捕捉剤を冷媒配管(27)の内面の全部又は一部に塗布するようにしてもよい。つまり、水分捕捉剤が冷媒回路(20)における全部の内表面又は一部の内表面に塗布するようにしてもよい。要するに、水分捕捉剤が冷媒回路(20)における少なくとも一部の内表面に塗布されておればよい。 【0084】以上のように、この変形例によれば、水分捕捉剤を冷媒回路(20)の少なくとも一部の内表面に塗布するようにしたために、反応生成物が経路内に拡散することを防止することができる。この結果、より膨張弁(23)の詰まり等を未然に防止することができる。」 「【0086】本実施形態は、図2に示すように、本発明の冷媒回路装置としてヒートポンプ式空気調和装置(30)を適用したものである。 【0087】上記空気調和装置(30)は、熱源ユニットである室外ユニット(31)と利用ユニットである室内ユニット(32)とより構成されている。該室外ユニット(31)は、圧縮機(21)と四路切換弁(28)と熱源側熱交換器である室外熱交換器(22)と膨張機構である膨張弁(23)とアキュムレータ(26)とを備えている。上記室内ユニット(32)は、利用側熱交換器である室内熱交換器(24)を備えている。 【0088】そして、上記圧縮機(21)と四路切換弁(28)と室外熱交換器(22)と膨張弁(23)と室内熱交換器(24)とが冷媒配管(27)によって順に直列に接続されて冷媒回路(20)が形成されている。尚、上記アキュムレータ(26)は圧縮機(21)の吸込み側に接続されている。 【0089】したがって、上記冷媒回路(20)は、冷房運転時に次のように動作する。先ず、上記圧縮機(21)から吐出された冷媒が室外熱交換器(22)において、室外空気と熱交換して凝縮する。この凝縮した液冷媒は、膨張弁(23)で減圧され、室内熱交換器(24)で室内空気と熱交換して蒸発する。この蒸発したガス冷媒は、アキュムレータ(26)を経て圧縮機(21)に戻る。この冷媒の循環動作が繰り返され、室内が冷房される。 【0090】一方、暖房運転時は、次のように動作する。先ず、上記圧縮機(21)から吐出された冷媒が室内熱交換器(24)において、室内空気と熱交換して凝縮する。この凝縮した液冷媒は、膨張弁(23)で減圧され、室外熱交換器(22)で室外空気と熱交換して蒸発する。この蒸発したガス冷媒は、アキュムレータ(26)を経て圧縮機(21)に戻る。この冷媒の循環動作が繰り返され、室内が暖房される。」 「 」 (2)引用例2に記載された事項 上記(1)における記載を総合すると、引用例2には以下の事項が記載されている。 「空気調和装置(30)の冷凍回路において、圧縮機(21)、膨張弁(23)及び室外熱交換器(22)を含む部分を室外ユニット(31)、室内熱交換器(24)を含む部分を室内ユニット(32)として分け、室外ユニット(31)と室内ユニット(32)との間を冷媒配管(27)により結合することにより、室外ユニット(31)、室内ユニット(32)及び冷媒配管(27)において冷媒を循環させること。」(以下、「引用例2記載事項」という。) 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「冷媒としてR1234yfを使用する」ことは、本願発明における「冷媒は、炭素?炭素不飽和結合を1以上有する分子式で表される化合物を含」むことに相当し、以下同様に、「冷媒の重合防止のためのラジカル捕捉剤または重合防止剤」は「冷媒の不均化反応を抑制する不均化反応抑制剤(40)」に、「冷凍回路を有する空調装置」は「冷凍装置」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明における「圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を備える冷凍回路を循環する冷媒」と、本願発明における「前記熱源ユニット、前記利用ユニット、前記液冷媒配管および前記ガス冷媒配管を循環する冷媒」とは、「冷凍回路を循環する冷媒」という限りにおいて一致し、 さらに、引用発明における「冷媒と接触する回路内面形成部材の表面にコーティングにより配置されている」、「冷媒の重合防止のためのラジカル捕捉剤または重合防止剤」と、本願発明における「前記液冷媒配管、前記ガス冷媒配管、および前記利用ユニット内部管路、のうちの少なくとも一部の内面に塗布されている」、「前記冷媒の不均化反応を抑制する不均化反応抑制剤(40)」とは、「冷凍回路の内部に設けられている」、「冷媒の不均化反応を抑制する不均化反応抑制剤」という限りにおいて一致する。 したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「冷凍回路を循環する冷媒を備え、 冷媒は、炭素?炭素不飽和結合を1以上有する分子式で表される化合物を含み、 冷媒の不均化反応を抑制する不均化反応抑制剤が、冷凍回路の内部に設けられている、 冷凍装置。」 [相違点1] 本願発明においては、「冷凍装置(100)」が「熱源ユニット(10)と、利用ユニット内部管路(29a?29c)を有する利用ユニット(20A)と、前記熱源ユニットと前記利用ユニット内部管路とを接続する液冷媒配管(31)およびガス冷媒配管(32)」とを備えるものであり、「冷媒」が「前記熱源ユニット、前記利用ユニット、前記液冷媒配管および前記ガス冷媒配管」を循環するのに対して、引用発明においては、「冷凍回路を有する空調装置」が、熱源ユニット、利用ユニット内部管路を有する利用ユニット、熱源ユニットと利用ユニット内部管路とを接続する液冷媒配管およびガス冷媒配管を備えるか不明であり、したがって、冷媒が熱源ユニット、利用ユニット、液冷媒配管およびガス冷媒配管を循環するかも不明である点。 [相違点2] 本願発明は、「酸素含有炭化水素を主成分とする冷凍機油」を備えるのに対して、引用発明は、そのような冷凍機油を備えるか不明である点。 [相違点3] 「冷凍回路の内部に設けられている」、「冷媒の不均化反応を抑制する不均化反応抑制剤」が、本願発明においては、「前記液冷媒配管、前記ガス冷媒配管、および前記利用ユニット内部管路、のうちの少なくとも一部の内面に塗布されている」のに対して、引用発明においては、「冷媒と接触する回路内面形成部材の表面にコーティングにより配置されている」点。 以下、相違点について検討する。 [相違点1、3について] 上記引用例2記載事項は、「空気調和装置(30)の冷凍回路において、圧縮機(21)、膨張弁(23)及び室外熱交換器(22)を含む部分を室外ユニット(31)(熱源ユニット)、室内熱交換器(24)を含む部分を室内ユニット(32)(利用ユニット)として分け、室外ユニット(31)(熱源ユニット)と室内ユニット(32)(利用ユニット)との間を冷媒配管(27)(液冷媒配管、ガス冷媒配管)により結合することにより、室外ユニット(31)(熱源ユニット)、室内ユニット(32)(利用ユニット)及び冷媒配管(27)(液冷媒配管、ガス冷媒配管)において冷媒を循環させること」(括弧内は、対応する本願発明の用語を表す)であって、引用例2記載事項に例示されるように、空気調和装置の冷凍回路を熱源ユニットと利用ユニットとに分け、熱源ユニットと利用ユニットとを液冷媒配管とガス冷媒配管とで結合することにより冷凍回路を構成することは、空気調和機の技術分野において周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。 そして、周知技術1における利用ユニットが、液冷媒配管とガス冷媒配管と結合し、冷媒を循環するための冷媒配管を内部に備えることは、技術常識からみて明らかである。 そうすると、引用発明において、空気調和機の技術分野であることにおいて共通する周知技術1を適用して、冷凍回路の圧縮機、凝縮器、膨張弁を含む部分を熱源ユニット、蒸発器を含む部分を利用ユニットとして区分けし、熱源ユニットと利用ユニット内部の冷媒配管とを結合する配管を液冷媒配管とガス冷媒配管とすることには困難性はなく、その際に、「冷媒の重合防止のためのラジカル捕捉剤または重合防止剤」を「コーティングにより配置」する「冷媒と接触する回路内面形成部材の表面」として、冷媒と接触することが明らかである液冷媒配管、ガス冷媒配管、および利用ユニット内部の冷媒配管のうちの少なくとも一部の内面を選択することは、当業者が適宜なし得ることであり、また、コーティングを塗布によるものとすることは、ごく一般的に行われる技術的事項にすぎない。 したがって、引用発明に周知技術1を適用することにより、上記相違点1及び3に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。 [相違点2について] 炭素?炭素不飽和結合を1以上有する分子式で表される化合物を含む冷媒に適用される冷凍機油を、冷媒との相溶性の確保、潤滑性の向上、及び難燃化などの目的で酸素含有炭化水素を主成分とするものとすることは、 ・国際公開2015/119080号(【0008】、【0021】、【0044】、【0075】の記載ほか参照。) ・国際公開2014/112417号(【請求項1】、【請求項9】、【0013】、【0023】の記載ほか参照。) ・特開2015-174917号公報(【請求項1】、【0104】の記載ほか参照。)に例示されるように、周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。 そうすると、引用発明においては、冷凍機油の特定がないものの、冷凍回路において冷媒とともに冷凍機油を用いることは技術常識からみて明らかであるところ、引用発明において、炭素?炭素不飽和結合を1以上有する分子式で表される化合物を含む冷媒であるR1234yfとともに用いる冷凍機油として、冷媒との相溶性の確保、潤滑性の向上、及び難燃化などの目的で、周知技術2における酸素含有炭化水素を主成分とするものを採用することにより、上記相違点2に係る本願発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願発明は、引用発明、周知技術1、及び周知技術2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、周知技術1、及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-06-24 |
結審通知日 | 2021-06-29 |
審決日 | 2021-07-15 |
出願番号 | 特願2016-16428(P2016-16428) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F25B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河内 誠 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
松下 聡 後藤 健志 |
発明の名称 | 冷凍装置 |
代理人 | 新樹グローバル・アイピー特許業務法人 |