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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02S
管理番号 1377514
審判番号 不服2020-8782  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-24 
確定日 2021-09-02 
事件の表示 特願2016- 65300「太陽光発電システムおよび太陽光パネルの温度異常検知方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-184355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月29日の出願であって、令和元年11月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、令和2年1月31日に意見書が提出され、その後、令和2年3月23日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、令和2年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、令和3年3月30日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、令和3年5月31日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、令和3年5月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
太陽からの光エネルギーを電力に変換して、直流電力を生成する複数の太陽光パネルと、
前記複数の太陽光パネルのそれぞれで生成された前記直流電力を集電する接続箱と、
集電後の直流電力を交流電力に変換し、負荷に供給するパワーコンディショナと
を備える太陽光発電システムにおいて、
前記複数の太陽光パネルで生成された前記直流電力が、前記太陽光パネルから前記接続箱を経由して前記パワーコンディショナに供給されるまでの経路上に、開状態と閉状態を切り替え可能なノーマルオープン/アクティブクローズのリレー接点が挿入されたリレーと、
前記複数の太陽光パネルに張り巡らされ、前記複数の太陽光パネルの少なくとも1つが、あらかじめ設定された許容温度を超えた温度異常状態を検出する火災検知線と、
前記火災検知線の両端が接続され、前記火災検知線で前記温度異常状態が検出された場合には、前記リレー接点を前記開状態に切り換え、前記経路上を流れる直流電流を遮断する制御信号を出力する火災検知装置と
を備える太陽光発電システム。」

第3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶の理由である、令和3年3月30日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。

本件出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1 特開2014-68509号公報
2 特開2015-14918号公報
3 特開2015-103196号公報
4 特開2015-186286号公報
5 米国特許出願公開第2016/0036235号明細書

第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献1
(1)当審からの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1である、特開2014-68509号公報(平成26年4月17日公開)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審で付与。以下同じ。)
ア 「【請求項1】
建物の屋根に設置され、直列接続した複数の太陽電池により太陽光を受光して直流電力を生成する太陽電池列と、
前記太陽電池列で生成した直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する直交流変換手段と、
を備えた太陽光発電システムに於いて、
前記建物の火災を検知して火災検知信号を出力する火災検知手段と、
前記火災検知手段からの火災検知信号を受信した場合に、前記太陽電池列の出力端子を前記直交流変換手段側から切り離すと共に、切り離した前記出力端子間に、所定の抵抗値をもつ抵抗手段を接続して所定の安全端子電圧以下とする感電防止手段と、
を設けたことを特徴とする太陽光発電システム。」

イ 「【0029】
[第1実施形態]
(システム構成の概略)
図2は本発明による太陽光発電システムの第1実施形態を示したブロック図である。図2において、本実施形態の太陽光発電システムは、太陽電池列として機能する太陽電池ストリングス10-1?10-n、感電防止手段として機能する感電防止回路部14-1?14-n、逆流阻止用ダイオード20、サージアブソーバ22,主開閉器(ブレーカ)25、直交流変換手段として機能するDC/ACインバータ16、商用交流系統18及び制御部38を備える。
【0030】
ここで、感電防止回路部14-1?14-n及び逆流阻止用ダイオード20は、図1に示した接続箱3に収納し、サージアブソーバ22,主開閉器(ブレーカ)25及びDC/ACインバータ16は、図1に示したパワーコンディショナ4に収納している。また、商用交流系統18は、図1に示した分電盤6の出力となる住宅内の交流系統及び電力メータ7を備えた電力会社の交流系統に対応する。」

ウ 「【0043】
(感電防止回路部)
図2に示すように、太陽電池ストリングス10-1?10-nに対しては感電防止回路部14-1?14-nを設けている。感電防止回路部14は、制御手段として機能する制御部38により制御される。図1に示した住警器8が火災を検知して無線送信した火災連動信号をアダプタ装置9で受信して火災検知信号を出力した場合、この火災検知信号はモニタ装置5を経由して例えばパワーコンディショナ4に設けた制御部38で受信する。
【0044】
火災検知信号を受信した制御部38は、感電防止回路部14へ制御信号を出力し、太陽電池ストリングス10の出力端子側をDC/ACインバータ16から切り離すと共に、切り離した出力端子間に、所定の抵抗値をもつ抵抗手段である感電防止用抵抗36を接続して所定の安全端子電圧以下とする。
【0045】
ここで、人体に影響を及ぼす危険電圧は通常数十ボルト以上であることが知られており、感電防止用抵抗36の接続による所定の安全端子電圧以下の電圧とは、危険電圧未満の電圧とすればよいが、望ましくは人体が濡れていたとしても影響のない例えば20ボルト以下とする。
【0046】
感電防止回路部14は、2回路の常開リレー接点28,30と常閉リレー接点32,34を備えたリレー24を備え、常開リレー接点28,30を、太陽電池ストリングス10の出力端子とDC/ACインバータ16の入力端子を結ぶ電路に挿入接続すると共に、常閉リレー接点32,34を、太陽電池ストリングス10の出力端子間に感電防止用抵抗36を接続する電路に挿入接続している。
【0047】
制御部38は、火災検知信号を受信していない定常運転状態ではリレー24を作動し、常開リレー接点28,30の閉成により太陽電池ストリングス10で生成した直流電力をDC/ACインバータ16へ供給すると共に、常閉リレー接点32,34の開成により感電防止用抵抗36を太陽電池ストリングス10の出力端子から切り離している。
【0048】
一方、制御部38は、住警器8の火災検知に基づく火災検知信号を受信した場合、リレー24を非作動として、常開リレー接点28,30の開成により太陽電池ストリングス10をDC/ACインバータ16から切り離す共に、常閉リレー接点32,34の閉成により感電防止用抵抗36を太陽電池ストリングス10の出力端子間に接続し、所定の安全端子電圧以下とする。」

エ 図1は以下のとおりである。


オ 図2は以下のとおりである。


(2)上記記載及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。(なお、引用発明の各構成の根拠箇所を参考として当審で付した。以下同じ。)

引用発明1
「建物の屋根に設置され、直列接続した複数の太陽電池により太陽光を受光して直流電力を生成する太陽電池列と、
前記太陽電池列で生成した直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給する直交流変換手段と、
を備えた太陽光発電システムに於いて、
前記建物の火災を検知して火災検知信号を出力する火災検知手段と、
前記火災検知手段からの火災検知信号を受信した場合に、前記太陽電池列の出力端子を前記直交流変換手段側から切り離すと共に、切り離した前記出力端子間に、所定の抵抗値をもつ抵抗手段を接続して所定の安全端子電圧以下とする感電防止手段と、
を設け(請求項1)、
感電防止手段として機能する感電防止回路部14-1?14-nは、接続箱3に収納し、サージアブソーバ22、主開閉器(ブレーカ)25及びDC/ACインバータ16は、パワーコンディショナ4に収納しており(【0029】【0030】)、
火災検知信号を受信した制御部38は、感電防止回路部14へ制御信号を出力し、太陽電池ストリングス10の出力端子側をDC/ACインバータ16から切り離し(【0044】)、
制御部38は、火災検知信号を受信していない定常運転状態ではリレー24を作動し、常開リレー接点28、30の閉成により太陽電池ストリングス10で生成した直流電力をDC/ACインバータ16へ供給すると共に、常閉リレー接点32、34の開成により感電防止用抵抗36を太陽電池ストリングス10の出力端子から切り離し(【0047】)、
一方、制御部38は、住警器8の火災検知に基づく火災検知信号を受信した場合、リレー24を非作動として、常開リレー接点28、30の開成により太陽電池ストリングス10をDC/ACインバータ16から切り離すと共に、常閉リレー接点32、34の閉成により感電防止用抵抗36を太陽電池ストリングス10の出力端子間に接続し、所定の安全端子電圧以下とする(【0048】)、
太陽光発電システム。」

2 引用文献2
(1)当審からの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2である、特開2015-14918号公報(平成27年1月22日公開)には、次の記載がある。
ア 「【請求項2】
面状の監視対象物の発熱状態を検知する火災検出装置であって、
前記監視対象物の一面に貼付されており、所定の低融点で溶融する被覆を備えた1組の電線が配置されたシートと、
前記監視対象物の発熱に起因して、前記シート上の前記被覆が溶融することによって前記1組の電線が短絡状態となることを、前記1組の電線間の電圧を監視することで検知し、前記監視対象物の発熱状態を検知する制御部と
を備える火災検出装置。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
このような太陽光発電システムが普及する一方で、太陽光発電システムに起因する火災の増加が問題となっている。太陽光パネルは、光が照射されれば、常に発電するため、太陽光パネル内の故障が火災発生につながることがある。
・・・
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、太陽光パネル等の面状の監視対象物の発熱を、安価で簡易な構成を用いて迅速に検出することのできる火災検出装置および火災検出方法を得ることを目的とする。」

ウ 「【0014】
図2は、本発明の実施の形態1における先の図1に示したシートをカスケード接続した場合の例示図である。図1に示した単位シートは、面状の監視対象物である太陽光パネルを構成するそれぞれの太陽電池モジュールの裏面に対して貼り付けられる。そして、それぞれのシートは、図2に示したように、第1導電パターン20a同士、第2導電パターン20b同士がそれぞれ接続されることでカスケード接続されている。」

エ 図1、2は以下のとおりである。
図1


図2


(2)上記記載から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

引用発明2
「太陽光発電システムに起因する火災の増加が問題となっているところ(【0004】)、
面状の監視対象物の発熱状態を検知する火災検出装置であって、
前記監視対象物の一面に貼付されており、所定の低融点で溶融する被覆を備えた1組の電線が配置されたシートと、
前記監視対象物の発熱に起因して、前記シート上の前記被覆が溶融することによって前記1組の電線が短絡状態となることを、前記1組の電線間の電圧を監視することで検知し、前記監視対象物の発熱状態を検知する制御部とを備え(請求項2)、
太陽光パネル等の面状の監視対象物の発熱を、安価で簡易な構成を用いて迅速に検出することのできる、火災検出装置(【0006】)。」

3 引用文献3
当審からの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3である、特開2015-103196号公報(平成27年6月4日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
このような太陽光発電システムが普及する一方で、太陽光発電システムに起因する火災(例えば、太陽光パネルを構成する太陽電池モジュールの製品不良、経年劣化、施工不良などによる異常発熱や火災)の増加が問題となっている。太陽光パネルは、光が照射されれば、常に発電するため、太陽光パネル内の故障が火災発生につながることがある。
・・・
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、太陽光パネル等の面状の監視対象物の異常発熱状態を、安価で簡易な構成を用いて迅速に検出することのできる火災検出装置および火災検出方法を得ることを目的とする。」

イ 「【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における面状監視対象物の異常発熱状態を検知するための火災検出装置の全体構成図である。本実施の形態1における面状監視対象物として、図1では、複数の太陽電池モジュール11を3×3で配列してなる太陽光パネル10が、2つ配置されている場合を例示している。このような太陽光パネル10が、取付具を介して住宅の屋根などに設置されることとなる。
【0013】
また、図1では図示していないが、複数の太陽電池モジュール11のそれぞれの背面には、隣接する太陽電池モジュール11との配線接続を行うための端子箱(ジャンクションボックス)が設けられている。そして、太陽電池モジュール11では、この端子箱が異常発熱しやすい箇所として挙げられる。
【0014】
本実施の形態1における火災検出装置は、太陽光パネル10を構成する全ての太陽電池モジュール11を経由する配線ルートで張り巡らされたプラスティック光ファイバ20と、プラスティック光ファイバ20を介して光信号を送受信する光送受信部30と、光送受信部30による受信状態から複数の太陽電池モジュール11の異常発熱状態の有無を監視する監視制御部40とを備えて構成されている。
【0015】
次に、基本的な検出原理について、説明する。本実施の形態1における火災検出装置に使用されるプラスティック光ファイバ20としては、熱変形温度および融点が規定された市販のプラスティック製光ファイバを使用することができる。例えば、ポリメタクリル酸メチル系の物質を用いた光ファイバでは、熱変形温度85℃、融点160℃であり、ポリカーボネートを用いた光ファイバでは、熱変形温度129℃、融点230℃ である。この両者を比較すると、ポリカーボネートは、ポリメタクリル酸メチルに比べて耐熱性が高い。
【0016】
プラスティック光ファイバ20が正常な状態では、光送受信部30から送信された光が許容範囲内の光量として受光されることとなる。すなわち、適正な透過率で光信号が送受信されることとなる。しかしながら、複数の太陽電池モジュール11のいずれかで異常発熱状態が発生し、プラスティック光ファイバ20の温度が、熱変形温度あるいは融点を超えてしまった場合には、光信号が適正な透過率では伝送されず、受光量が許容範囲を逸脱して低下する。」

ウ 図1は以下のとおりである。


第5 対比、判断
1 引用発明1を主引用発明とした場合
本願発明と引用発明1を比較する。
(1)引用発明1の「太陽電池ストリングス」、「接続箱」、「パワーコンディショナ」、「リレー」は、それぞれ本願発明の「太陽からの光エネルギーを電力に変換して、直流電力を生成する複数の太陽光パネル」、「接続箱」、「パワーコンディショナ」、「リレー」に相当する。

(2)引用発明1において「制御部38」は、「火災検知信号を受信していない定常運転状態ではリレー24を作動し、常開リレー接点28、30の閉成により太陽電池ストリングス10で生成した直流電力をDC/ACインバータ16へ供給すると共に」、「住警器8の火災検知に基づく火災検知信号を受信した場合、リレー24を非作動として、常開リレー接点28、30の開成により太陽電池ストリングス10をDC/ACインバータ16から切り離す」ことから、「常開リレー接点28、30」は、いわゆる「ノーマルオープン/アクティブクローズ」のリレー接点であることは明らかであり、よって、引用発明1は、本願発明の「前記複数の太陽光パネルで生成された前記直流電力が、前記太陽光パネルから前記接続箱を経由して前記パワーコンディショナに供給されるまでの経路上に、開状態と閉状態を切り替え可能なノーマルオープン/アクティブクローズのリレー接点が挿入されたリレー」との構成を有する。

(3)引用発明1の「制御部38」は、「住警器8の火災検知に基づく火災検知信号を受信した場合、リレー24を非作動として、常開リレー接点28、30の開成により太陽電池ストリングス10をDC/ACインバータ16から切り離す」から、本願発明の「火災検知線で前記温度異常状態が検出された場合には、前記リレー接点を前記開状態に切り換え、前記経路上を流れる直流電流を遮断する制御信号を出力する火災検知装置」と、「火災検知で異常状態が検出された場合には、前記リレー接点を前記開状態に切り換え、前記経路上を流れる直流電流を遮断する制御信号を出力する火災検知装置」の点で一致する。

(4)したがって、本願発明と引用発明1は、以下の一致点で一致し、相違点1で相違する。

<一致点>
「太陽からの光エネルギーを電力に変換して、直流電力を生成する複数の太陽光パネルと、
前記複数の太陽光パネルのそれぞれで生成された前記直流電力を集電する接続箱と、
集電後の直流電力を交流電力に変換し、負荷に供給するパワーコンディショナと
を備える太陽光発電システムにおいて、
前記複数の太陽光パネルで生成された前記直流電力が、前記太陽光パネルから前記接続箱を経由して前記パワーコンディショナに供給されるまでの経路上に、開状態と閉状態を切り替え可能なノーマルオープン/アクティブクローズのリレー接点が挿入されたリレーと、
火災検知で異常状態が検出された場合には、前記リレー接点を前記開状態に切り換え、前記経路上を流れる直流電流を遮断する制御信号を出力する火災検知装置と
を備える太陽光発電システム。」

<相違点1>
火災検知について、本願発明は「複数の太陽光パネルに張り巡らされ、前記複数の太陽光パネルの少なくとも1つが、あらかじめ設定された許容温度を超えた温度異常状態を検出する火災検知線」を備え、「火災検知線の両端が接続され、前記火災検知線で前記温度異常状態が検出された場合」に制御するのに対し、引用発明1は「建物の火災を検知して火災検知信号を出力する火災検知手段」を備え、当該火災検知信号の受信により制御する点。

(5)相違点1について
引用文献2、3に記載されているように、太陽光発電システムに起因する火災の増加が問題となっていることは、周知の課題である(引用文献2の【0004】等、引用文献3の【0004】等参照。)。
また、太陽電池パネルに火災検知線を配することによって、火災検知することは、引用文献2、3に記載されている。(引用文献2については上記第4の2、引用文献3については上記第4の3参照)
そして、引用発明1は、建物の火災を検知することが前提であるところ、太陽電池パネルも建物の一部であり、太陽電池パネル由来の火災が建物全体に延焼する可能性があることに鑑みれば、引用発明1に接した当業者にとって、当該太陽電池パネルの火災についても検知できるようにする動機はあるといえる。
さらに、引用発明1、引用文献2、3に記載された事項は、共に火災検知という同じ技術分野に属しているから、上記周知の課題に基づいて、引用発明1の火災検知手段の一つとして、太陽電池パネルの火災を検知するための手段を付加すると共に、当該付加される検知手段として、上記引用文献2、3に記載されているような手段を採用すること(具体的には、住警器8に加えて、太陽電池パネルに火災検知線を配するような形を想定)は、当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎないし、その際「火災検知線」を「複数の太陽光パネルに張り巡ら」せる点は、引用文献2の図2や引用文献3の図1からも看て取れるように、常套手段にすぎず、格別な事項とはいえない。

(6)作用効果について
相違点1に係る本願発明の効果について、引用発明1、引用文献2、3に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が予測しうる程度のことにすぎない。

(7)請求人の主張について
請求人は、令和3年5月31日の意見書において、「審判合議体によるご見解を要約すると、引用文献1?3に接した当業者であれば、「住警器8に加えて、太陽電池パネルに火災検知線を配するような形を想定できる」というものです。・・・従って、このような動機付けだけでは、引用文献1?3に接した当業者といえども、「住警器による火災検知に代えて、火災検知線による太陽光パネルそのものの火災検知を用いることで、本願の請求項1に係る発明の構成とする」ことまでは、動機付けがなく、本願の請求項1に係る発明を容易に想到できないことは明らかです。」(2頁7行?16行、下線は請求人が付与)と主張する。
しかしながら、本願請求項1の記載から見て、住警器による火災検知を排除している記載はなく、また、本願の願書に添付された明細書又は図面(以下「本願明細書等」という。)の記載を参酌しても、住警器による火災検知を使ってはならないといった特別な事情も記載されていない。これらのことから、本願発明は、火災検知線による火災検知があれば足りるということであり、さらに、住警器による火災検知の有無について限定されていない、つまり、本件発明は、住警器による火災検知と火災検知線による火災検知の両者を有するような態様も含み得るというべきである。
よって、請求人の主張は、本願発明の特定事項に基づかないものであって、採用できない。

(8)したがって、本願発明は、引用発明1、引用文献2、3に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明2を主引用発明とした場合
本願発明と引用発明2を比較する。
(1)引用発明2の「太陽光パネル」が、本願発明の「太陽からの光エネルギーを電力に変換して、直流電力を生成する複数の太陽光パネル」と、「太陽からの光エネルギーを電力に変換して、電力を生成する太陽光パネル」の点で一致する。
引用発明2は、「1組の電線が短絡状態となることを、前記1組の電線間の電圧を監視することで検知し、前記監視対象物の発熱状態を検知する制御部」「を備え」ており、「電線」は火災検出のための線であるといえるから、引用発明2の「電線」は、本願発明の「あらかじめ設定された許容温度を超えた温度異常状態を検出する火災検知線」に相当する。
また、引用発明2が「太陽光発電システム」を含んでいることは明らかである。

(2)したがって、本願発明と引用発明2は、以下の一致点で一致し、相違点A、Bで相違する。

<一致点>
「太陽からの光エネルギーを電力に変換して、電力を生成する太陽光パネル
を備える太陽光発電システムにおいて、
前記太陽光パネルが、あらかじめ設定された許容温度を超えた温度異常状態を検出する火災検知線、
を備える太陽光発電システム。」

<相違点A>
太陽光発電システムについて、本願発明は「直流電力を生成する複数の」太陽光パネルにおいて「複数の太陽光パネルのそれぞれで生成された前記直流電力を集電する接続箱と、集電後の直流電力を交流電力に変換し、負荷に供給するパワーコンディショナ」を備えるのに対し、引用発明2はそのような特定がなされていない点。

<相違点B>
本願発明は「複数の太陽光パネルで生成された前記直流電力が、前記太陽光パネルから前記接続箱を経由して前記パワーコンディショナに供給されるまでの経路上に、開状態と閉状態を切り替え可能なノーマルオープン/アクティブクローズのリレー接点が挿入されたリレーと」、「前記火災検知線の両端が接続され、前記火災検知線で前記温度異常状態が検出された場合には、前記リレー接点を前記開状態に切り換え、前記経路上を流れる直流電流を遮断する制御信号を出力する火災検知装置」を備えるのに対し、引用発明2はそのような特定がなされていない点。

<相違点C>
火災検知線について、本願発明は「複数の太陽光パネルに張り巡らされ」るのに対し、引用発明2はそのような特定がなされていない点。

(3)相違点について
ア 相違点Aについて
太陽光発電システムにおいて、太陽光パネルを複数設けること、及び直流電力を生成するようにすることは、文献を示すまでもなく常套手段にすぎない。また、接続箱、パワーコンディショナを備えることは、引用文献1に記載されているように周知技術にすぎない。
そして、引用発明2において、そもそもそのような構成を有している蓋然性が高いし、仮にそうでないとしても、そのような構成を採用することは当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎない。

イ 相違点Bについて
引用発明2において、太陽光パネルの火災を検出していることから、火災検出後に何らかの対応を行うことが前提となっていることは明らかであり、引用文献2の「【0004】・・・太陽光パネルは、光が照射されれば、常に発電するため、太陽光パネル内の故障が火災発生につながることがある。」等の記載も参酌すれば、引用発明2に接した当業者にとって、火災検出後は、太陽電池の発電機能を制限する動機付けはあるといえる。
また、太陽光パネルの発電機能を制御するためにノーマルオープン/アクティブクローズのリレー接点を有するリレーを用いること、及び当該リレーの開閉を火災検知信号に基づいて行うことが、引用文献1に記載されている。
そして、引用発明2と引用文献1に記載された事項は、共に火災検知技術に関する太陽光パネルという同一の技術分野に属し、引用発明2において、上記したような動機があることから、引用文献1に記載された事項を採用し、相違点Bに係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到しうる事項にすぎない。

ウ 相違点Cについて
相違点Cに係る「火災検知線」を「複数の太陽光パネルに張り巡ら」せる点は、引用文献2の図2や引用文献3の図1からも看て取れるように、常套手段にすぎず、上記アで説示したように、引用発明2において、複数の太陽光パネルを採用する際には、当業者であれば、当然選択しうるような事項にすぎない。

(4)作用効果について
相違点A?Cに係る本願発明の効果について、引用発明2、引用文献1に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が予測しうる程度のことにすぎない。

(5)請求人の主張について
請求人は、令和3年5月31日の意見書において、「本願発明は、「火災検知線で温度異常状態が検出された場合には、リレー接点を開状態に切り換え、経路上を流れる直流電流を遮断する制御信号を出力する」構成を備えるものであり、所定の抵抗値をもつ抵抗手段を接続して所定の安全端子電圧以下とするように機能する「感電防止手段」を有していません。」(3頁3行?6行)、「従って、引用文献1、2に接した当業者は、引用文献2に係る発明に対して引用文献1に開示された「感電防止手段」を組み合わせることまでは容易に想到できたとしても、常閉リレー接点を有さず、「感電防止手段」を備えていない本願発明の構成までは容易に想到できないことは明らかです。」(3頁18行?21行)と主張する。
しかしながら、本願請求項1の記載から見て、「感電防止手段」や「常閉リレー接点」を排除している記載はなく、また、本願明細書等の記載を参酌しても、「感電防止手段」や「常閉リレー接点」を使ってはならないといった特別な事情も記載されていないことから、本願発明において、「感電防止手段」や「常閉リレー接点」の存在は排除されておらず、「感電防止手段」や「常閉リレー接点」を有するような態様も含み得る(排除されていない)というべきである。
よって、請求人の主張は、本願発明の特定事項に基づかないものであって、採用できない。

(6)したがって、本願発明は、引用発明2、引用文献1に記載された事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
よって、本願発明は、引用発明1、引用文献2、3に記載された事項及び周知技術、又は、引用発明2、引用文献1に記載された事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-06-30 
結審通知日 2021-07-06 
審決日 2021-07-19 
出願番号 特願2016-65300(P2016-65300)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐竹 政彦  
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 清水 督史
井上 博之
発明の名称 太陽光発電システムおよび太陽光パネルの温度異常検知方法  
代理人 上田 俊一  
代理人 曾我 道治  
代理人 吉田 潤一郎  
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