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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F25D |
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管理番号 | 1377525 |
審判番号 | 不服2020-16868 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-08 |
確定日 | 2021-09-02 |
事件の表示 | 特願2019- 76291号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日出願公開、特開2019-109047号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年12月6日に出願した特願2011-267139号の一部を順次分割して、平成31年4月12日に特願2019-76291号として新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年4月1日付けで拒絶理由通知 令和2年6月5日に意見書及び手続補正書の提出 令和2年6月16日付けで拒絶理由(最後)通知 令和2年8月7日に意見書及び手続補正書の提出 令和2年9月9日付けで補正の却下の決定及び拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和2年12月8日に審判請求書及び手続補正書の提出 第2 令和2年12月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年12月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2について補正がなされたところ、請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「 【請求項1】 断熱箱体として構成される冷蔵庫本体および前記断熱箱体の前面開口部を開閉する扉を有し、該扉は扉断熱材を備え、前記冷蔵庫本体の側壁は側壁断熱材を備えて構成される冷蔵庫であって、 前記扉の内側部分に、前記側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出し、内部に突出部断熱材の第一部分を備える突出部の第一部分が形成され、前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットに向けて前記突出部の第一部分から冷蔵庫の幅方向外側に突出し、内部に前記突出部断熱材の第二部分を備える前記突出部の第二部分が形成されて、前記突出部および前記突出部断熱材が平面視で屈曲形状に形成され、 前記突出部断熱材の第一部分は、冷蔵庫の幅方向から見て前記側壁断熱材と重なり合っていることを特徴とする冷蔵庫。」 (2) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前の、令和2年6月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 断熱箱体として構成される冷蔵庫本体および前記断熱箱体の前面開口部を開閉する扉を有し、該扉は扉断熱材を備え、前記冷蔵庫本体の側壁は側壁断熱材を備えて構成される冷蔵庫であって、 前記扉の内側部分に、前記側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出し、内部に突出部断熱材を備える突出部が形成され、 前記突出部断熱材は、冷蔵庫の幅方向から見て前記側壁断熱材と重なり合っていることを特徴とする冷蔵庫。」 2 補正の適否 (1) 本件補正は、本件補正前の請求項1の記載された「内部に突出部断熱材を備える突出部」について、「内部に突出部断熱材の第一部分を備える突出部の第一部分が形成され、前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットに向けて前記突出部の第一部分から冷蔵庫の幅方向外側に突出し、内部に前記突出部断熱材の第二部分を備える前記突出部の第二部分が形成されて、前記突出部および前記突出部断熱材が平面視で屈曲形状に形成され」と限定し、「前記突出部断熱材」について、上記限定した「突出部断熱材の第一部分」が、「冷蔵庫の幅方向から見て前記側壁断熱材と重なり合っていること」とさらに限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (2) 本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (3) 引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア) 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願(原出願の出願日である平成23年12月6日)前に頒布された刊行物である、特開平10-259983号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、下線は当審において付したものである。また、「・・・」は記載の省略を示す。)。 「【請求項1】箱体と、該箱体内に形成された貯蔵区画に対応する一つ以上の扉と、該扉の裏面四周に設けられたパッキンとを有し、前記扉を閉めた場合には少なくとも前記箱体の貯蔵区画の前面四周と前記パッキンの表面とが当接することにより前記箱体内部の冷気を封止する構造となっている冷蔵庫において、前記パッキンの最も庫内側に位置するヒレの先端を前記扉の扉内板に接着または固定により密着させたことを特徴とする冷蔵庫。」(特許請求の範囲) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵庫に係り、特に、庫内の冷気を箱体と扉との間に設けたパッキンにより封止する冷蔵庫に関するものである。 ・・・ 【0003】しかしながら、箱体や扉の内部には既に高断熱性能な発泡ウレタンや真空断熱材等が使われており、また壁の厚さ増加は庫内容積の減少につながることから、前者の熱侵入量の低減は技術とコスト面から頭打ちの傾向にある。一方、後者のパッキン周辺からの熱侵入量は、特に熱侵入に関係する表面積(熱侵入経路の断面積)が小さいことから、上記のように前者より少ない。」 ・・・ 【0019】 【発明の実施の形態】冷蔵庫におけるパッキンとその周辺部分の構造とそれらへの外部からの熱侵入の状況、および熱侵入量の低減に関する問題点を、図面を使用して具体的に説明する。図25は、従来の冷蔵庫全体の斜視図であり、一部の扉を開けた状態にしてパッキンの配置がわかるようにしたものである。図26は、従来のパッキンを備えた冷蔵庫の、扉を閉めた状態のパッキン周辺の部分断面図であり、また図27は、従来のパッキンと第2パッキンを備えた冷蔵庫についての、同様な部分断面図である。 【0020】図25において、冷蔵庫1は、内部に貯蔵区画が形成された箱体2と、各貯蔵区画の前面に対応する扉3とから基本的に構成され、扉3はヒンジによる回動やレールによる滑動のかたちで開閉される。扉3の裏面四周にはパッキン4が設置されており、その表面は対向する箱体2の貯蔵区画の前面四周に扉3を閉めた状態では当接して、庫内の冷気が外部に漏れ出さないように気密状態を保つと共に、扁平な断面形状で内部に空気室を備えた構造であるため幅方向(外部空気に曝される庫外側側面から庫内冷気に曝される庫内側側面に向かう方向)の熱侵入量は少なく抑えられる。 【0021】図26は、最も一般的な、各貯蔵区画の封止が1個所のパッキンのみで行われる、言い換えれば単独パッキン構造というべき構成の家庭用冷蔵庫を例にとって、パッキンとその周辺部分の構造の詳細を示したものである。この例も含め発明の実施形態に至るまでのパッキンとその周辺部分の構造の説明では、対象を全体構造の簡単な箱体の上下左右の外周壁と扉との間のパッキンに限った。パッキンは外周壁の他に箱体の上下に並んだ貯蔵区画間の仕切り壁と扉との間にも設置されるが、その場合、1枚の仕切り壁に上下の扉に設置された2つのパッキンが並んで当接するやや複雑な全体構造となるものの、一方のパッキンとその周辺部分の構造を見れば箱体の外周壁の場合と同等であり、発明に関係した対象として同様に考えることができる。また以下の説明では、現状の家庭用冷蔵庫での典型的な構造・材質を示しているが、この例も含め発明の実施形態に至るまでの説明でも同様に、新構造(樹脂材料や真空断熱材の大幅採用等)や業務用(扉閉状態の保持がラッチ式のものがある等)の冷蔵庫のように一部の構造・材質が異なる場合であっても、パッキンの柔軟性等を利用して箱体と扉の間を封止するというパッキンとしての機能が同じであれば、発明に関係した対象として同様に考えることができる。 【0022】箱体2の外周壁は、鋼板製の外箱5と樹脂製の内箱6が主に硬質発泡ウレタン製の断熱部材7を挟んで一体化された構造となっており、扉3の裏面と対向する前面の庫外側には内部に外箱5表面への結露を防止するための露付き防止ヒータ8が設けられている。扉3は、主に鋼板製の扉外板9と樹脂製の扉内板10が主に硬質発泡ウレタン製の断熱部材7を挟んで一体化された構造(扉の外周端を樹脂製の扉端板で構成することもある)となっており、箱体2の前面と対向する裏面四周にパッキン固定溝11に主に軟質塩化ビニール製のパッキン4がその根本部をはめ込む形で固定されている。パッキン4は、扉3を閉めた場合に庫内冷気12の漏れ出しと外部から庫内への熱侵入を抑えるため、閉塞部4aのすぐ内側に備えたマグネット4bと箱体2の外箱5(鋼板製のため強磁性体)とに働く磁力や、内部に空気室4cを形成して大きくしたパッキンの高さ方向の弾性変形を利用して、庫外寄りの表面である閉塞部4aが対向する箱体2の前面に密着する構造となっている。パッキン4の根本部は矢尻状の固定部4dと一体成形されて前述のパッキン固定溝11に固定され、またパッキン4の庫内側の側面に形成されたヒレ4eは扉内板10の表面に接触して、それらで区画された空間Aの空気層はパッキン内部の空気室4cと共にパッキン4の幅方向の断熱性能を高める働きをしている。 ・・・ 【図面の簡単な説明】 ・・・ 【図25】従来の冷蔵庫全体の斜視図である。 【図26】従来のパッキンを備えた冷蔵庫の、扉を閉めた状態のパッキン周辺の部分断面図である。 【図27】従来のパッキンと第2パッキンを備えた冷蔵庫の、扉を閉めた状態のパッキン周辺の部分断面図である。 【符号の説明】 2…箱体、3…扉、4…パッキン、5…外箱、6…内箱、7…断熱部材、9…扉外板、14…緩衝断熱部材、15…第2パッキン、17…第2可動パッキン、18…区画パッキン。」 「 」 「 」 「 」 「 」 (イ) 上記(ア)及び図面の記載から認められる事項 上記(ア)及び図面の記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 上記(ア)の【0022】、【符合の説明】及び図26の記載によれば、冷蔵庫の扉の内側に、冷蔵庫の側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出し、内部に硬質発泡ウレタン製の断熱部材を挟んでいる突出部が記載されている。 b 上記(ア)の【0022】、【符合の説明】及び図26の記載によれば、上記aの突出部の内部に挟まれている硬質発泡ウレタン製の断熱部材は、冷蔵庫の幅方向から見て、冷蔵庫の側壁内にある硬質発泡ウレタン製の断熱部材(7)と重なっていることが記載されている。 (ウ) 引用発明 上記(ア)及び(イ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「冷蔵庫の箱体の外周壁は、鋼板製の外箱と樹脂製の内箱が硬質発泡ウレタン製の断熱部材を挟んで一体化された構造となっており、 冷蔵庫の扉の内側に、冷蔵庫の側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出し、内部に硬質発泡ウレタン製の断熱部材を挟んでいる突出部が設けられ、箱体の前面と対向する扉の裏面四周にパッキン固定溝に軟質塩化ビニール製のパッキンがその根本部をはめ込む形で固定されていて、 突出部の内部に挟まれている硬質発泡ウレタン製の断熱部材は、冷蔵庫の幅方向から見て、冷蔵庫の側壁内に有る硬質発泡ウレタン製の断熱部材と重なっている、 冷蔵庫。」 (エ) 引用文献1に記載された技術的事項 上記(ア)?(ウ)を総合すると(特に、図14、図19)、引用文献1には、次の技術的事項(以下「引1技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「冷蔵庫の扉に設けられた突出部は、扉に設けられたパッキンに向けて突出部の部分が冷蔵庫の幅方向外側に突出し、平面視で、屈曲した形状に形成されることがあること。」 (4) 引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ア 後者における「箱体」は、前者における「断熱箱体」及び「冷蔵庫本体」に相当し、以下同様に、「冷蔵庫」は「冷蔵庫」に、「扉」は「扉」に、「突出部」は「突出部」に、「硬質発泡ウレタン製の断熱部材」は「断熱材」に、「軟質塩化ビニール製のパッキン」は「ガスケット」に、「側壁」は「側壁」に、それぞれ相当する。 イ 後者の「箱体の外周壁は、鋼板製の外箱と樹脂製の内箱が硬質発泡ウレタン製の断熱部材を挟んで一体化された構造」は、前者の「断熱箱体として構成される」態様に相当する。 そして、後者の「冷蔵庫の扉」は、冷蔵庫の箱体の前面の開口部を開閉することは明らかなので、前者の「前記断熱箱体の前面開口部を開閉する」態様をそなえるものである。 後者の「突出部」が「挟んでいる」の「硬質発泡ウレタン製の断熱部材」は、前者の「突出部断熱材」に相当し、また、「扉」に「硬質発泡ウレタン製の断熱部材」が配置された態様からみて、前者の「扉断熱材」に相当する部分を備える。 後者の「冷蔵庫の側壁内に有る硬質発泡ウレタン製の断熱部材」は、前者の「側壁断熱材」に相当する。 後者の「冷蔵庫の扉の内側に、冷蔵庫の側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出」することは、前者の「前記扉の内側部分に、前記側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出」することに相当する。 後者の「内部に硬質発泡ウレタン製の断熱部材を挟んでいる突出部が設けられ」る態様は、その配置からみて、前者の「内部に突出部断熱材の第一部分を備える突出部の第一部分が形成され」る態様に相当する。 後者の「箱体の前面と対向する扉の裏面四周にパッキン固定溝に軟質塩化ビニール製のパッキンがその根本部をはめ込む形で固定されてい」ることは、パッキンの固定位置やパッキンの機能を考慮すると、前者の「前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケット」を備えることに相当する。 後者の「突出部の内部に挟まれている硬質発泡ウレタン製の断熱部材は、冷蔵庫の幅方向から見て、冷蔵庫の側壁内に有る硬質発泡ウレタン製の断熱部材と重なっている」ことは、前者の「前記突出部断熱材の第一部分は、冷蔵庫の幅方向から見て前記側壁断熱材と重なり合っていること」に相当する。 ウ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「断熱箱体として構成される冷蔵庫本体および前記断熱箱体の前面開口部を開閉する扉を有し、該扉は扉断熱材を備え、前記冷蔵庫本体の側壁は側壁断熱材を備えて構成される冷蔵庫であって、 前記扉の内側部分に、前記側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出し、内部に突出部断熱材の第一部分を備える突出部の第一部分が形成され、前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットを備え、 前記突出部断熱材の第一部分は、冷蔵庫の幅方向から見て前記側壁断熱材と重なり合っている、 冷蔵庫。」 [相違点] 突出部及び突出部断熱材について、本件補正発明では、「ガスケットに向けて前記突出部の第一部分から冷蔵庫の幅方向外側に突出し、内部に前記突出部断熱材の第二部分を備える前記突出部の第二部分が形成されて、前記突出部および前記突出部断熱材が平面視で屈曲形状に形成され」るのに対して、引用発明では、そのような構成を有していない点(以下「相違点」という。)。 (5) 判断 ア 相違点について 冷蔵庫の扉に設けられた突出部において、扉に設けられたパッキンに向けて突出部の一部が冷蔵庫の幅方向外側に突出し、平面視で、屈曲した形状に形成されたものは、本願の出願(原出願の出願日である平成23年12月6日)前に周知の構成である(例えば、上記引1技術的事項、特開平10-96584号公報図1、請求項1、【0005】、【0014】?【0019】、実願昭56-107785号(実開昭58-15188号)のマイクロフィルム第3図、第4図の「突出部外側側面」等、韓国特許出願公開10-2011-0016171号公報図2等参照)。 そうすると、引用発明の冷蔵庫の扉に設けられた突出部の形態として、より庫外に放出される冷気の漏れを減少させる等のために、上記周知の構成を採用することは、当業者にとって、困難なことではなく、また、引用発明の突出部の形状として、上記周知の構成を採用したものは、パッキンに向けて突出部から冷蔵庫の幅方向外側に突出した部分は、本件補正発明の「突出部」の「第二部分」に相当し、また、その中に配置される「硬質発泡ウレタン製の断熱部材」は、本件補正発明の「突出部断熱材の第二部分」に相当する。 そして、本件補正発明において、上記相違点に係る構成を採用することによる効果を格別有していることが、本願明細書から認めることができない。 そうすると、引用発明において、上記相違点に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 請求人の主張について なお、請求人は、令和2年12月8日に提出された審判請求書において、以下のとおり主張している。 「本願発明によれば、『前記扉の内側部分に、前記側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出し、内部に突出部断熱材の第一部分を備える突出部の第一部分が形成され、前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットに向けて前記突出部の第一部分から冷蔵庫の幅方向外側に突出し、内部に前記突出部断熱材の第二部分を備える前記突出部の第二部分が形成されて、前記突出部および前記突出部断熱材が平面視で屈曲形状に形成され』る構成により、『冷蔵庫の扉の端部における断熱性能が向上すると共に、この部分に結露温度帯が閉じ込められ、結露が発生することも防止することができる』という効果(本願明細書の段落[0019]?[0022]、図4参照)を得ることができます。」 しかしながら、本願明細書の段落[0019]?[0022]に記載された事項は、以下のとおりである。 図4において、 「【0019】 図4および図5は、本発明および従来における上述した第1の冷凍室扉21と左側板状部9との角部の温度特性を角部の構造の上に重複して示す図である。なお、図4および図5において、符号aは、温度22.6゜C、符号bは、温度16.8゜C、符号cは、温度11.0゜C、符号dは、温度5.2゜C、符号eは、温度?0.6゜C、符号fは、温度?6.4゜Cを示す点であり、これらと同じ温度を示す複数の点を連結した線で示す同じ温度帯がグラフとして示されている。 【0020】 まず、図5を参照して、従来の温度特性について説明すると、図5に示す従来の温度特性では、第1の冷凍室扉21の真空断熱材は、符号101で示すように、第1の冷凍室扉21の左端部まで延出してなく、手前のスロート部のところで終端している。従って、この従来における温度分布において、符号aで示す温度22.6゜Cと符号bで示す温度16.8゜Cとの間の結露温度帯は、従来の真空断熱材のない角部に発生し、この角部に結露が発生する可能性を有していた。 【0021】 これに対して、図4に示す本発明の実施形態では、第1の冷凍室扉21の真空断熱材35は、第1の冷凍室扉21の左端部まで延出し、側壁部である左側板状部9内の真空断熱材95の扉に向かって延出する先端部を覆うように延出している。従って、この本発明の実施形態における温度分布において、符号aで示す温度22.6゜Cと符号bで示す温度16.8゜Cとの間の結露温度帯は、第1の冷凍室扉21の真空断熱材35内に発生し、この角部の結露温度帯は、真空断熱材35内で塞がっており、すなわち真空断熱材35内に閉じ込められていて、第1の冷凍室扉21の端部に結露が発生する可能性が全く無いものとなっている。 【0022】 以上のように構成される本実施形態の冷蔵庫において、第1の冷凍室扉21を構成する真空断熱材35は、扉外板31と扉内板33との間に挟まれて、第1の冷凍室扉21の左端部まで延出し、断熱箱体を構成する側壁部である左側板状部9内の真空断熱材95の扉に向かって延出する先端部を覆うように当該先端部を超えて延出しているため、第1の冷凍室扉21の左端部における断熱性能が向上するとともに、この部分に結露温度帯が閉じ込められ、結露が発生することも防止することができる。」 「 」 これらの記載からは、本願明細書には、冷凍室扉21と左側板状部9との角部の温度特性を角部の構造の上に重複して示され、温度22.6゜Cと符号bで示す温度16.8゜Cとの間の結露温度帯は、第1の冷凍室扉21の真空断熱材35内に発生し、この角部の結露温度帯は、真空断熱材35内で塞がっており、すなわち真空断熱材35内に閉じ込められていて、第1の冷凍室扉21の端部に結露が発生する可能性が全く無いものとなっていることが記載されるものの、「前記扉の内側部分に、前記側壁よりも内側に位置して冷蔵庫内部に向けて突出し、内部に突出部断熱材の第一部分を備える突出部の第一部分が形成され、前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットに向けて前記突出部の第一部分から冷蔵庫の幅方向外側に突出し、内部に前記突出部断熱材の第二部分を備える前記突出部の第二部分が形成されて、前記突出部および前記突出部断熱材が平面視で屈曲形状に形成され」る構成により、「冷蔵庫の扉の端部における断熱性能が向上すると共に、この部分に結露温度帯が閉じ込められ、結露が発生することも防止することができる」という効果をいうものとは認められない。 したがって、請求人の上記主張は、採用できない。 ウ 効果について そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の構成の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ まとめ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知の構成に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、令和2年6月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。 <理由> (1)(新規性)この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)(進歩性)この出願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(上記第2の2(4)で表記したように「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> A.特開平10-259983号公報(当審注:上記引用文献1に同じ。) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「内部に突出部断熱材を備える突出部」について、「内部に突出部断熱材の第一部分を備える突出部の第一部分が形成され、前記扉の密閉性を高めるために当該扉の端部に設けられるガスケットに向けて前記突出部の第一部分から冷蔵庫の幅方向外側に突出し、内部に前記突出部断熱材の第二部分を備える前記突出部の第二部分が形成されて、前記突出部および前記突出部断熱材が平面視で屈曲形状に形成され」との限定を削除し、「前記突出部断熱材」について、上記限定した「第一部分」が、「冷蔵庫の幅方向から見て前記側壁断熱材と重なり合っていること」の限定を削除するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 そうすると、上記第2[理由]2(3)の事項及び(4)の検討を踏まえると、本願発明と引用発明との間には、上記相違点が存在しないことになり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 仮に、本願発明と引用発明との間に相違点があったとしても、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号及び第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-06-24 |
結審通知日 | 2021-06-29 |
審決日 | 2021-07-16 |
出願番号 | 特願2019-76291(P2019-76291) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(F25D)
P 1 8・ 572- WZ (F25D) P 1 8・ 121- WZ (F25D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 笹木 俊男 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 槙原 進 |
発明の名称 | 冷蔵庫 |
代理人 | 三好 秀和 |