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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1377550
審判番号 不服2020-13133  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-18 
確定日 2021-08-30 
事件の表示 特願2016- 66328「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-183417〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年11月 5日付け:拒絶理由通知
令和 1年12月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月29日付け:拒絶査定
令和 2年 9月18日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 3月24日付け:当審における拒絶理由通知
令和 3年 5月20日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、令和3年5月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
半導体チップと、
上面および下面を有し、前記上面に前記半導体チップがダイボンディングされている平面視矩形状のダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に配置され、前記半導体チップと電気的に接続された複数のリードと、
前記リードの下面および前記半導体チップとは反対側の外側端面が露出するように、前記半導体チップ、前記ダイパッドおよび前記リードを封止する平面視矩形状の封止樹脂と
を含み、
前記ダイパッドは、平面視において、前記ダイパッドの4辺が前記封止樹脂の4辺に対向した姿勢で、前記封止樹脂の中央部に配置されており、
前記リードの下面は、前記リードの下面に直交する方向から見て、前記封止樹脂と重なっており、
前記リードの外側端面は、前記リードの外側端面に直交する方向から見て、前記封止樹脂と重なっており、
前記複数のリードは、平面視において、前記封止樹脂の4つの辺に対応した4つの側縁部のそれぞれに、その辺の長さ方向に間隔をおいて配置された複数のリードを含み、
前記封止樹脂の各前記側縁部に配置された前記複数のリードは、平面視において、前記封止樹脂の前記側縁部と、前記ダイパッドの対応する側縁部とに挟まれた領域内に配置されており、
前記封止樹脂の各前記側縁部に配置された前記複数のリードは、両端に配置された2つの端リードと、前記2つの端リード間に配置された複数の中間リードとを含んでおり、前記複数の中間リードの下面露出部の長さが全て同じであり、前記2つの端リードの下面露出部の長さが、前記中間リードの長さよりも長く形成されており、
前記封止樹脂の互いに隣接する2つの前記側縁部に配置された前記端リードのうち、前記2つの前記側縁部の連結部側に配置された2つの前記端リードは、前記2つの前記側縁部のいずれの長さ方向から見ても重なっていない、半導体装置。」

第3 当審の拒絶理由の概要
当審において令和3年3月24日付けで通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1、2
・引用文献1、3、4

・請求項3
・引用文献2

・請求項4ないし6
・引用文献1ないし4

<引用文献等一覧>
1.特開平11-214606号公報
2.特開2001-077278号公報
3.特開平10-012790号公報
4.特開平6-224353号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付したものである。以下同じ。)。
「【0054】図1?図3に示すように、本実施形態の樹脂封止型半導体装置は、リードフレームの一部である吊りリード10と、吊りリード10により支持されるダイパッド11と、ダイパッド11上に搭載され内部に多数の半導体素子を有する半導体チップ12と、先端が半導体チップ12の近傍に配置されたリード13と、半導体チップ12の主面上の電極パッド(図示せず)とリード13とを電気的に接続する接続部材としての金属細線14と、吊りリード10,ダイパッド11,半導体チップ12,リード13及び金属細線14とを封止する封止樹脂15とによって構成されている。そして、リード13の下部が外部電極16として機能する。つまり、外部電極16の下面とプリント配線板等の実装基板の配線面とをはんだ等により接合することで、半導体装置を実装基板上に実装できるように構成されている。」

「【0064】なお、本実施形態ではダイパッド11は搭載しようとする半導体チップ12よりも小さな面積を有する構成としているが、本発明はかかる実施形態の構造に限定されるものではない。」

「【0069】次に、トランスファーモールドにより、半導体チップ12,ダイパッド11,吊りリード10,リード13及び金属細線14を封止樹脂15により封止する。この場合、ダイパッド11の下方に封止樹脂15の下方部分15aが存在し、半導体チップ12の上方には封止樹脂の上方部分15bが存在するように、つまり、半導体チップ12とダイパッド11を両面側において封止する。封止樹脂15の厚みは、ダイパッド部11の下方にある下方部分15aの下面がリード部13の裏面と同一面になり、半導体チップ12の上方にある上方部分15bでは、金属細線14のループ高さ以上の厚さになるように封止する。なお、樹脂封止工程では、リード13の裏面側に封止樹脂15が回り込まないように気密性よく封止することが好ましい。
【0070】そして、リードフレームのアウターリードの切断を行い、封止樹脂15の側端とリードの先端とほぼ同一面になるように成形する。」

「【0078】(第3の実施形態)次に、第3の実施形態について説明する。図6は本実施形態における半導体装置の裏面図である。本実施形態においても、半導体装置の断面構造は上記第1の実施形態における図1に示す構造と同じであるので、断面図の図示は省略する。また、本実施形態の半導体装置の上面構造は図6に示す裏面図から容易に理解できるので、上面図の図示は省略する。
【0079】図6に示すように、本実施形態の半導体装置において、各辺における外部電極16(つまりリード13)の配列ピッチが各辺の中央部で小さくコーナー部で大きい点は上記第1の実施形態と同じである。本実施形態では、半導体装置のコーナー部においては外部電極16の幅が広いのに対し、中央部に向かうほど外部電極16の幅が狭くなるように形成されている点が特徴である。ただし、各外部電極16の長さは共通である。」

「【0081】また、本実施形態では、外部電極16の下面の面積を辺の中央部におけるよりもコーナー部で大きくしているので、以下の作用効果が得られる。上述のように、プリント配線板等の実装基板に搭載された状態では、半導体装置のコーナー部ほど両者の接続部に加わる熱応力等の応力が大きい。そこで、外部電極16の下面の面積を辺の中央部におけるよりもコーナー部で大きくすることにより、コーナー部付近における外部電極と実装基板の接続端子との間の接合力を高めることができ、外部電極16と実装基板との接合の信頼性を高く維持することができる。」







第3の実施形態の半導体装置の断面構造は第1の実施形態と同じであり(段落【0078】)、リード13の配列ピッチは第1の実施形態と同じである旨記載されている(段落【0079】)。

(2)したがって、第3の実施形態の半導体装置に関して、次の技術的事項が記載されている。なお、半導体装置の構造及びリード13の配列等については、第1の実施形態を参酌する。
ア 吊りリード10と、吊りリード10により支持されるダイパッド11と、ダイパッド11上に搭載される半導体チップ12と、半導体チップ12の近傍に配置されたリード13と、半導体チップ12の主面上の電極パッドとリード13とを電気的に接続する金属細線14と、吊りリード10,ダイパッド11,半導体チップ12,リード13及び金属細線14とを封止する封止樹脂15とによって構成されている樹脂封止型半導体装置(段落【0054】)。

イ リード13の下部が外部電極16として機能する(段落【0054】)。

ウ 封止樹脂15の下面がリード13の裏面と同一面になり、封止樹脂15の側端とリード13の先端はほぼ同一面になる(段落【0069】、【0070】)。

エ 各辺における外部電極16は、各外部電極16の長さは共通であり、半導体装置のコーナー部においては外部電極16の幅が広いのに対し、中央部に向かうほど外部電極16の幅が狭くなるように形成されている(段落【0079】)。

オ 図1より、ダイパッド11は、上面及び下面を有することが見て取れる。

カ 図2より、ダイパッド11及び封止樹脂15について、次のことが見て取れる。
ダイパッド11は平面視矩形状であり、封止樹脂15は角部を面取りした略平面視矩形状であり、平面視において、ダイパッド11の4辺が封止樹脂15の4辺に対向した姿勢で、ダイパッド11は封止樹脂15の中央部に配置されている。

キ 図2より、リード13について、次のことが見て取れる。
・複数のリード13は、ダイパッド11の周囲に配置されている。
・複数のリード13は、平面視において、封止樹脂15の4つの辺に対応した4つの側縁部のそれぞれに、その辺の長さ方向に間隔をおいて配置された複数のリード13を含んでいる。
・複数のリード13は、平面視において、封止樹脂15の側縁部と、半導体チップ12の対応する側縁部とに挟まれた領域内に配置されている。
・封止樹脂15の互いに隣接する2つの側縁部に配置された複数のリード13のうち、2つの側縁部の連結部側に配置された2つの端リード13は、2つの側縁部のいずれの長さ方向から見ても重なっていない。

(3)上記アないしキから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「吊りリード10と、
吊りリード10により支持される上面及び下面を有するダイパッド11と、
ダイパッド11上に搭載される半導体チップ12と、
半導体チップ12の近傍に配置されたリード13と、
半導体チップ12の主面上の電極パッドとリード13とを電気的に接続する金属細線14と、
吊りリード10,ダイパッド11,半導体チップ12,リード13及び金属細線14とを封止する封止樹脂15とによって構成されている樹脂封止型半導体装置であって、
リード13の下部が外部電極16として機能し、封止樹脂15の下面がリード13の裏面と同一面になり、封止樹脂15の側端とリード13の先端はほぼ同一面になり、
ダイパッド11は平面視矩形状であり、封止樹脂15は角部を面取りした略平面視矩形状であり、平面視において、ダイパッド11の4辺が封止樹脂15の4辺に対向した姿勢で、ダイパッド11は封止樹脂15の中央部に配置されており、
複数のリード13は、ダイパッド11の周囲に配置されており、
複数のリード13は、平面視において、封止樹脂15の4つの辺に対応した4つの側縁部のそれぞれに、その辺の長さ方向に間隔をおいて配置された複数のリード13を含み、
複数のリード13は、平面視において、封止樹脂15の側縁部と、半導体チップ12の対応する側縁部とに挟まれた領域内に配置されており、
各辺における外部電極16は、各外部電極16の長さは共通であり、半導体装置のコーナー部においては外部電極16の幅が広いのに対し、中央部に向かうほど外部電極16の幅が狭くなるように形成されており、
封止樹脂15の互いに隣接する2つの側縁部に配置された複数のリード13のうち、2つの側縁部の連結部側に配置された2つの端リード13は、2つの側縁部のいずれの長さ方向から見ても重なっていない、樹脂封止型半導体装置。」

2 引用文献4の記載
引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0012】
【作用】端部に位置する所要数の電極の強度を他の内側の電極よりも増大させることで、端部の電極の曲りを防止し、又端部の電極により他の内側の電極の保護を行う。或は、電子部品の接合状態では端部の電極に外力が掛かりやすいが、端部に位置する所要数の電極の基板に対する接合面積を他の内側の電極よりも増大させることで接合強度を増大させ電子部品と基板との接続信頼性を向上させる。」

「【0014】
図1、図2に示す様に、パッケージ部2の各辺にそれぞれ列状に設けた所要数の電極3の内、端電極3aの板厚T、幅Wの内少なくとも一方について他の電極3bよりも大きくする。」

「【0016】尚、端電極3aの剛性を増大させる他の手段として、端電極3aを塑性加工してもよい。又、電子部品1を基板4に接続した状態での強度を増大させたい場合は、図2で示す端電極3aの接合部のLの長さを他の電極3bよりも長くすればよい。」
【図2】


上記記載より、引用文献4に次の技術が記載されている。
「端部に位置する電極の基板に対する接合面積を増大させることにより、電子部品1を基板4に接続した状態での接合強度を増大させたい場合に、端電極3aの幅Wを大きくすることに加えて接合部のLの長さを他の電極3bよりも長くする」技術。

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。
1 引用発明の「半導体チップ12」は、本願発明の「半導体チップ」に相当する。

2 引用発明は「ダイパッド11上に」「半導体チップ12」が「搭載される」のであるから、「半導体チップ12」は「ダイパッド11」の上面にダイボンディングされているといえる。また、引用発明の「ダイパッド11は平面視矩形状」である。
したがって、引用発明の「上面及び下面を有するダイパッド11」は、本願発明の「上面および下面を有し、前記上面に前記半導体チップがダイボンディングされている平面視矩形状のダイパッド」に相当する。

3 引用発明の「複数のリード13は、ダイパッド11の周囲に配置されて」いるので、「半導体チップ12の主面上の電極パッド」と「電気的に接続」された「リード13」は、本願発明の「前記ダイパッドの周囲に配置され、前記半導体チップと電気的に接続された複数のリード」に相当する。

4 引用発明の「リード13の下部が外部電極16として機能し、封止樹脂15の下面がリード13の裏面と同一面になり、封止樹脂15の側端とリード13の先端はほぼ同一面にな」るように「リード13」「を封止する封止樹脂15」は、本願発明の「前記リードの下面および前記半導体チップとは反対側の外側端面が露出するように」「前記リードを封止する」「封止樹脂」に相当する。
また、本願明細書(段落【0017】、【0018】)における、封止樹脂5の下面5aおよび上面5bは、平面視において、たとえば略矩形状に形成されているとの記載を参酌すると、引用発明の「封止樹脂15は角部を面取りした略平面視矩形状であ」ることは、本願発明の「封止樹脂」は「平面視矩形状」であることに相当するといえる。
したがって、引用発明の「ダイパッド11,半導体チップ12,リード13」「とを封止する封止樹脂15」は、本願発明の「前記リードの下面および前記半導体チップとは反対側の外側端面が露出するように、前記半導体チップ、前記ダイパッドおよび前記リードを封止する平面視矩形状の封止樹脂」に相当する。

5 引用発明の「ダイパッド11は」「平面視において、ダイパッド11の4辺が封止樹脂15の4辺に対向した姿勢で、」「封止樹脂15の中央部に配置されて」いることは、本願発明の「前記ダイパッドは、平面視において、前記ダイパッドの4辺が前記封止樹脂の4辺に対向した姿勢で、前記封止樹脂の中央部に配置されて」いることに相当する。

6 引用発明は「封止樹脂15の下面がリード13の裏面と同一面になり、封止樹脂15の側端とリード13の先端はほぼ同一面にな」っているので、リード13は封止樹脂15からはみ出ることなく封止されている。
そうすると、引用発明の「封止樹脂15の下面がリード13の裏面と同一面になり、封止樹脂15の側端とリード13の先端はほぼ同一面にな」っていることは、本願発明の「前記リードの下面は、前記リードの下面に直交する方向から見て、前記封止樹脂と重なっており、前記リードの外側端面は、前記リードの外側端面に直交する方向から見て、前記封止樹脂と重なって」いることに相当する。

7 引用発明の「複数のリード13は、平面視において、封止樹脂15の4つの辺に対応した4つの側縁部のそれぞれに、その辺の長さ方向に間隔をおいて配置された複数のリード13を含」むことは、本願発明の「前記複数のリードは、平面視において、前記封止樹脂の4つの辺に対応した4つの側縁部のそれぞれに、その辺の長さ方向に間隔をおいて配置された複数のリードを含」むことに相当する。

8 引用発明の「封止樹脂15の」「4つの側縁部のそれぞれに」「配置された複数のリード13」が、「平面視において、封止樹脂15の側縁部と、半導体チップ12の対応する側縁部とに挟まれた領域内に配置されて」いることと本願発明とは、「前記封止樹脂の各前記側縁部に配置された前記複数のリードは、平面視において、前記封止樹脂の領域内に配置されて」いる点で共通する。
但し、複数のリードが配置された領域が、本願発明は「前記封止樹脂の前記側縁部と、前記ダイパッドの対応する側縁部とに挟まれた領域内」であるのに対して、引用発明は「封止樹脂15の側縁部と、半導体チップ12の対応する側縁部とに挟まれた領域内」である点で相違する。

9 引用発明の「封止樹脂15の」「4つの側縁部のそれぞれに」「配置された複数のリード13」は、両端に配置された2つの「リード13」と、複数の中間「リード13」とを含んでいることは明らかである。
また、引用発明は「リード13の下部が外部電極16として機能」するのであるから「外部電極16」は、本願発明の「リードの下面露出部」に相当する。
そうすると、引用発明の「封止樹脂15の」「4つの側縁部のそれぞれに」「配置された複数のリード13」について「各外部電極16の長さは共通であ」ることと本願発明とは、「前記封止樹脂の各前記側縁部に配置された前記複数のリードは、両端に配置された2つの端リードと、前記2つの端リード間に配置された複数の中間リードとを含んでおり、前記複数の中間リードの下面露出部の長さが全て同じであ」る点で共通する。
但し、本願発明は「前記2つの端リードの下面露出部の長さが、前記中間リードの長さよりも長く形成されて」いるのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

10 引用発明の「封止樹脂15の互いに隣接する2つの側縁部に配置された複数のリード13のうち、2つの側縁部の連結部側に配置された2つの端リード13は、2つの側縁部のいずれの長さ方向から見ても重なっていない」ことは、本願発明の「前記封止樹脂の互いに隣接する2つの前記側縁部に配置された前記端リードのうち、前記2つの前記側縁部の連結部側に配置された2つの前記端リードは、前記2つの前記側縁部のいずれの長さ方向から見ても重なっていない」ことに相当する。

11 引用発明の「導体チップ12と、」「ダイパッド11と、」複数の「リード13と、」「封止樹脂15とによって構成されている樹脂封止型半導体装置」は、本願発明の「半導体チップと、」「ダイパッドと、」「複数のリードと、」「封止樹脂とを含」む「半導体装置」に相当する。

上記1ないし11によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「半導体チップと、
上面および下面を有し、前記上面に前記半導体チップがダイボンディングされている平面視矩形状のダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に配置され、前記半導体チップと電気的に接続された複数のリードと、
前記リードの下面および前記半導体チップとは反対側の外側端面が露出するように、前記半導体チップ、前記ダイパッドおよび前記リードを封止する平面視矩形状の封止樹脂とを含み、
前記ダイパッドは、平面視において、前記ダイパッドの4辺が前記封止樹脂の4辺に対向した姿勢で、前記封止樹脂の中央部に配置されており、
前記リードの下面は、前記リードの下面に直交する方向から見て、前記封止樹脂と重なっており、
前記リードの外側端面は、前記リードの外側端面に直交する方向から見て、前記封止樹脂と重なっており、
前記複数のリードは、平面視において、前記封止樹脂の4つの辺に対応した4つの側縁部のそれぞれに、その辺の長さ方向に間隔をおいて配置された複数のリードを含み、
前記封止樹脂の各前記側縁部に配置された前記複数のリードは、平面視において、前記封止樹脂の領域内に配置されており、
前記封止樹脂の各前記側縁部に配置された前記複数のリードは、両端に配置された2つの端リードと、前記2つの端リード間に配置された複数の中間リードとを含んでおり、前記複数の中間リードの下面露出部の長さが全て同じであり、
前記封止樹脂の互いに隣接する2つの前記側縁部に配置された前記端リードのうち、前記2つの前記側縁部の連結部側に配置された2つの前記端リードは、前記2つの前記側縁部のいずれの長さ方向から見ても重なっていない、半導体装置。」

(相違点1)
複数のリードが配置された領域が、本願発明は「前記封止樹脂の前記側縁部と、前記ダイパッドの対応する側縁部とに挟まれた領域内」であるのに対して、引用発明は「封止樹脂15の側縁部と、半導体チップ12の対応する側縁部とに挟まれた領域内」である点。
(相違点2)
本願発明は「前記2つの端リードの下面露出部の長さが、前記中間リードの長さよりも長く形成されて」いるのに対して、引用発明はそのような特定がない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。
1 相違点1について
例えば、引用文献1の図10に記載されているように、樹脂封止型半導体装置において、ダイパッドの大きさが半導体チップと同等のリードフレームを使用することは、通常行われていることである。
そして、引用文献1には「本実施形態ではダイパッド11は搭載しようとする半導体チップ12よりも小さな面積を有する構成としているが、本発明はかかる実施形態の構造に限定されるものではない。」(段落【0064】)と記載されていることに鑑みると、引用発明において、ダイパッドの大きさが半導体チップと同等のリードフレームを用いて、相違点1に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

2 相違点2について
引用文献4には、端部に位置する電極の基板に対する接合面積を増大させることにより、電子部品1を基板4に接続した状態での接合強度を増大させたい場合に、端電極3aの幅Wを大きくすることに加えて接合部のLの長さを他の電極3bよりも長くする技術が記載されている(上記「第4 2」)。
ここで、引用発明の「外部電極16」は、「半導体装置のコーナー部においては外部電極16の幅が広いのに対し、中央部に向かうほど外部電極16の幅が狭くなるように形成されて」いる。このことにより、外部電極の下面の面積をコーナー部で大きくし、コーナー部付近における外部電極と実装基板の接続端子との間の接合力を高めることができるものである(引用文献1の段落【0081】)。
そして、面積を大きくするための手段としては幅を広くすることに限らず、長さを長くすることもよく行われることである。
そうすると、引用発明において、外部電極の下面の面積をコーナー部で大きくするために、引用文献4に記載された端電極の幅Wを大きくすることに加えて接合部の長さを他の電極よりも長くする技術を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

3 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献4に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

よって、本願発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 意見書における請求人の主張ついて
請求人は令和3年5月20日の意見書において「引用文献1の段落0075には、『なお、コーナー部でリードを長くすると、相隣接する辺の端部のリードが互いに接触したり、吊りリードに接触するおそれもあるが、辺の中央部ではかかる制約はない。』と記載されている。つまり、引用文献1には、コーナー部でリードを長くすると、不都合が生じることが記載されている。したがって、引用文献1の図3の封止樹脂15の各側縁部に形成された複数のリード16において、両側に配置された2つの端リード16間に配置された中間リード16の下面露出部の長さに対して、2つの端リード16の下面露出部の長さを長くすることには、阻害要因が存在する。」と主張している。
しかしながら、上記「第6 相違点2について」で説示したように、引用発明において、引用文献4に記載された端電極の接合部の長さを他の電極よりも長くする技術の適用を試みることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、端の外部電極16の長さを不都合が生じるほど長くするはずがないことは、当業者の技術常識といえることである。
そうすると、端の外部電極16の長さは吊りリード10に接触しない範囲で中間の外部電極16より長くすればよいことであり、そのことにより、コーナー部付近における外部電極と実装基板の接続端子との間の接合力を高めることができることは明らかである。
したがって、引用文献1の上記段落【0075】の記載は、引用発明に引用文献4に記載された技術を適用し、端の外部電極16の長さを長くすることの阻害要因であるとはいえない。
よって、上記主張を採用することができない。

第8 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-06-25 
結審通知日 2021-07-01 
審決日 2021-07-13 
出願番号 特願2016-66328(P2016-66328)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 庄司 一隆  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 須原 宏光
永井 啓司
発明の名称 半導体装置  
代理人 特許業務法人あい特許事務所  

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