• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1377570
審判番号 不服2020-684  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-17 
確定日 2021-09-09 
事件の表示 特願2017-533349「フレキシブルプリント配線板、これを含む電子装置、およびフレキシブルプリント配線板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日国際公開、WO2016/099011、平成29年12月28日国内公表、特表2017-539095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)10月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年12月15日 韓国)を国際出願日とする出願であって、平成30年6月22日付けで拒絶理由が通知され、同年10月3日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年2月6日付けで拒絶理由が通知され、令和1年5月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月9日付けで拒絶査定されたところ、令和2年1月17日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がされたものである。その後当審において令和2年9月25日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和2年12月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 折り曲げ領域、第1領域および第2領域を含むベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一面上に形成され、外部接続部を含んでいる第1導電配線と、
前記第1導電配線上に形成されるが、前記ベースフィルムの前記折り曲げ領域を含めて形成される第1保護層と、
前記第1導電配線上に形成されるが、前記第1保護層が形成されていない前記第1導電配線上に形成される第1メッキ層と、
前記第1メッキ層および前記第1保護層上に形成される第2保護層とを含んでなり、
前記第2保護層は前記第1保護層と前記第1メッキ層との境界部を覆い、
前記折り曲げ領域は、前記第1領域と前記第2領域との間に配置され、
前記外部接続部は、前記第2保護層が形成されていない前記第1導電配線上に形成され、前記折り曲げ領域から離間している、フレキシブルプリント配線板。」


第3 拒絶の理由の概要
本願の請求項1に対して令和2年9月25日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由1は、次のとおりのものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2005-50971号公報


第4 引用文献の記載および引用発明
1.当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2005-50971号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

あ「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶パネル等の電気部品基板に接続されるフレキシブル回路基板の構成に関する。」

い「【0010】
本発明のフレキシブル回路基板1は、図1に示すように、ポリイミド樹脂等の絶縁性樹脂からなり、厚さ20?75μm(本実施形態においては22μm)の可撓性のフィルム基板2を有しており、このフィルム基板2上に、銅等の導電性素材により厚さ8?38μm(本実施形態においては12μm)の所定の導電パターン3が形成されている。
【0011】
前記導電パターン3の表面には、後述する液晶パネル9と接続される端部を除き絶縁性素材からなる厚さ5?25μm(本実施形態においては5μm)の第1のカバーフィルム7が配設される。
【0012】
また、前記導電パターン3の露出した表面には、前記導電パターン3に沿うようにして厚さ4μm以下(本実施形態においては4μm)のニッケルメッキ4、厚さ0.03μm以上(本実施形態においては0.03μm)の金メッキ5の順にメッキが施され、長さ3.5mmの電極端子部6が形成されている。なお、前記ニッケルメッキ4の代わりに錫メッキを施してもよい。
【0013】
さらに、前記電極端子部6と前記第1のカバーフィルム7の境界には、境界から両側にそれぞれに0.5mm以上、好ましくは0.5mm?1.5mm(本実施形態においては1.0mm)の長さだけ延在する、厚さ5?25μm(本実施形態においては10μm)の第2のカバーフィルム8が配設されている。なお、前記第2のカバーフィルム8は、前記第1のカバーフィルム7と同厚か、それよりも厚いことが好ましい。このような構成において、フレキシブル回路基板1の電気部品基板と接続するのに必要な接続幅(本実施形態においては2.5mm)が確保できる。」

う「【0016】
まず、図2に示すように、本実施形態のフレキシブル回路基板1を、電気部品基板の1つである液晶表示パネル9に接続する。なお、図2において、前記液晶表示パネル9は簡略化されており、2枚のガラス基板10、11と、前記ガラス基板11の前記ガラス基板10よりも突出した延長部11aの表面に配設されたリード電極12のみが示されている。
【0017】
前記フレキシブル回路基板1と前記液晶表示パネル9は、それぞれ電極端子部6とリード電極12を対向させ、この対向する面に異方性導電フィルム13を配設して、加熱および加圧することにより接続されている。
【0018】
そして、前記液晶表示パネル9に接続された前記フレキシブル回路基板1を、前記ガラス基板11のリード電極12が配設された面の背面側へ折り曲げる。
【0019】
この時、本実施形態におけるフレキシブル回路基板1によれば、折曲部に掛かる応力を前記第2のカバーフィルム8により分散することができ、前記フレキシブル回路基板1の電極端子部6と第1のカバーフィルム7の境界に応力が集中することを防止することができ、その結果、前記電極端子部6と第1のカバーフィルム7の境界において導電パターン3に断線が生じることを防止することができる。」

え 図1、図2として以下の図面が記載されている。




2.上記「あ」ないし「え」から以下のことがいえる。

a.上記「あ」によれば、引用文献1は「フレキシブル回路基板」について記載されているといえる。

b.上記「い」の段落【0010】によれば、「フレキシブル回路基板1は」「ポリイミド樹脂等の絶縁性樹脂から」なる「可撓性のフィルム基板2を有しており、このフィルム基板2上に、銅等の導電性素材により」「所定の導電パターン3が形成されている」といえる。

c.そして、上記「い」の段落【0011】によれば、「前記導電パターン3の表面には液晶パネル9と接続される端部を除き絶縁性素材からなる」「第1のカバーフィルム7が配設され」ている。

d.さらに、上記「い」の段落【0012】によれば、「前記導線パターン3の露出した表面には導電パターンに沿うようにして」「メッキが施され」、「電極端子部6が形成されている」といえる。

e.上記「い」の段落【0013】によれば、「前記電極端子部6と前記第1カバーフィルム7の境界には、境界から両側にそれぞれに」「1.0mm」「の長さだけ延在」する「第2のカバーフィルム8が配設されている」といえる。

f.上記「う」の段落【0017】によれば、「前記フレキシブル回路基板1と前記液晶表示パネル9は、それぞれ電極端子部6とリード電極12を対向させ、この対向する面に異方性導電フィルム13を配設して、加熱および加圧することにより接続されている。」から、電極端子部6は液晶表示パネル9のリード電極12に対向し接続されているといえる。

g.さらに、上記「う」の段落【0018】によれば、「液晶表示パネル9に接続された前記フレキシブル回路基板1」は、「前記ガラス基板11のリード電極12が配設された面の背面側に折り曲げ」られ、また、上記「え」の図2によれば、フレキシブル回路基板1は、折り曲げられた領域を挟んでガラス基板に接続される側及びガラス基板の背面側は直線状に構成されていることが見て取れる。

3.以上のことから、上記記載事項「あ」ないし「え」を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ポリイミド樹脂等の絶縁性樹脂からなる可撓性のフィルム基板2を有し、
前記フィルム基板2上に、銅等の導電性素材により所定の導電パターン3が形成され、
前記導電パターン3の表面には、液晶パネル9と接続される端部を除き絶縁性素材からなる第1のカバーフィルム7が配設され、
前記導電パターン3の露出した表面には、前記導電パターン3に沿うようにしてメッキが施されて、電極端子部6が形成され、
さらに、前記電極端子部6と前記第1のカバーフィルム7の境界には、前記境界から両側にそれぞれに1.0mmの長さだけ延在する第2のカバーフィルム8が配設され、前記電極端子端6は液晶表示パネル9のリード電極12に対向し接続されており、
前記ガラス基板11のリード電極12が配設された面の背面側に折り曲げられ、折り曲げられた領域を挟んでガラス基板に接続される側及びガラス基板の背面側は直線状に構成される、
フレキシブル回路基板1。」


第5 対比・判断

1.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明のフレキシブル回路基板1は、「前記ガラス基板11のリード電極12が配設された面の背面側に折り曲げられ、折り曲げられた領域を挟んでガラス基板に接続される側及びガラス基板の背面側は直線状に構成され」ているから、フレキシブル回路基板1を構成するフィルム基板2についても「ガラス基板のリード電極12が配設された面の背面側に折り曲げられ」た領域、ガラス基板に接続される側において直線状に構成された領域、ガラス基板の背面側において直線状に構成された領域を有することは明らかであり、それぞれの領域が、本願発明の「折り曲げ領域」、「第1領域」、「第2領域」に相当し、これらの領域を有する引用発明の「フィルム基板2」が本願発明の「ベースフィルム」に相当する。
また、引用発明では、折り曲げられた領域を挟んで、ガラス基板に接続される側及びガラス基板の背面側の領域が構成されるから、引用発明と本願発明とは「前記折り曲げ領域は、前記第1領域と前記第2領域との間に配置され」る構成を有している点で共通する。

b.引用発明では、「前記フィルム基板2上に、銅等の導電性素材により所定の導電パターン3が形成され」るから、「導電パターン3」は「前記フィルム基板2上に」形成されている。
また、引用発明では「前記導電パターン3の表面には、液晶パネル9と接続される端部を除き絶縁性素材からなる第1のカバーフィルム7が配設され」ており、また「前記電極端子端6は液晶表示パネル9のリード電極12に対向し接続されて」いるから、「導電パターン3」の「端部」は「電極端子部6」を介して、フレキシブル回路基板1の外部の構成である液晶パネル9と接続される構成であり、本願発明の「外部接続部」に相当する。
そうすると、引用発明の「導電パターン3」は、本願発明の「前記ベースフィルムの一面上に形成され、外部接続部を含んでいる第1導電配線」に相当する。

c.引用発明の「第1のカバーフィルム7」は、液晶パネル9と接続される端部を除く導電パターン3の表面に配設されるから、折り曲げられる領域を含めて配設されることは明らかであり、本願発明の「前記第1導電配線上に形成されるが、前記ベースフィルムの前記折り曲げ領域を含めて形成される第1保護層」に相当する。

d.引用発明の「電極端子部6」は「導電パターン3の露出した表面」、すなわち、導電パターン3の表面の第1のカバーフィルム7に覆われていない表面に形成されるから、本願発明の「前記第1導電配線上に形成されるが、前記第1保護層が形成されていない前記第1導電配線上に形成される第1メッキ層」に相当する。

e.引用発明において、「前記電極端子部6と前記第1のカバーフィルム7の境界には、前記境界から両側にそれぞれに1.0mmの長さだけ延在する第2のカバーフィルム8が配設され」るから、「第2のカバーフィルム8」は電極端子部6と第1のカバーフィルム7の上に形成され、電極端子部6と第1のカバーフィルム7の境界を覆っていることは明らかである。したがって、引用発明の「第2のカバーフィルム8」は本願発明の「第2保護層」に相当する。そして、「前記第1メッキ層および前記第1保護層上に形成される第2保護層とを含んでなり、前記第2保護層は前記第1保護層と前記第1メッキ層との境界部を覆」う構成を有する点で、引用発明は本願発明と共通する。

f.上記「b.」で検討したように、「導電パターン3」の「端部」は、電極端子部6を介して液晶パネル9と接続されるから、第2のカバーフィルム8が形成されていない導電パターン3上の構成であるといえる。したがって、引用発明は本願発明と「前記外部接続部は、前記第2保護層が形成されていない前記第1導電配線上に形成され」る点で共通する。
ただし、「導電パターン3」の「端部」が「折り曲げられた領域」と離間しているか明確ではない点で本願発明とは相違する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「 折り曲げ領域、第1領域および第2領域を含むベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一面上に形成され、外部接続部を含んでいる第1導電配線と、
前記第1導電配線上に形成されるが、前記ベースフィルムの前記折り曲げ領域を含めて形成される第1保護層と、
前記第1導電配線上に形成されるが、前記第1保護層が形成されていない前記第1導電配線上に形成される第1メッキ層と、
前記第1メッキ層および前記第1保護層上に形成される第2保護層とを含んでなり、
前記第2保護層は前記第1保護層と前記第1メッキ層との境界部を覆い、
前記折り曲げ領域は、前記第1領域と前記第2領域との間に配置された、
前記外部接続部は、前記第2保護層が形成されていない前記第1導電配線上に形成された、フレキシブルプリント配線板。」

(相違点)
本願発明では、前記外部接続部は前記折り曲げ領域から離間しているのに対して、引用発明においては対応する構成が明らかではない点。

2.判断
上記相違点について検討する。
上記「b.」で検討したように、引用発明の「導電パターン3」の「端部」は、電極端子部を介してフレキシブル回路基板1の外部である液晶パネル9と接続される構成であるから、本願発明の「外部接続部」に相当する。液晶パネル9と接続される端部は、接続される相手側の構成、すなわちガラス基板の延長部上のリード電極の形状に合わせて構成することは、接着強度などを踏まえて一般的に採用される手法であると考えられるところ、ガラス基板の表面は平坦(直線状)に構成されているから、これに合わせて、引用発明の「端部」及び当該端部上の「電極端子部6」は直線上に構成することは適宜なし得る程度の事項にすぎない。したがって、引用発明の電極端子部6を介して接続する端部を折り曲げられる領域から離間させる構成とすることは当業者が容易に想到できた事項である。

この点について、審判請求人は令和2年12月24日に提出された意見書において、以下のa.及びb.の旨の主張をしている。
a.引用文献1において電極端子部6は、曲げ領域から離れて形成することができないことは明らかである。
b.引用文献1では、第2のカバーフィルム8は、曲げ領域の一部に形成されるのに対して、本願発明は、フレキシブルプリント回路基板10は、第1の保護層120および第2の保護層140によって曲げ領域100の曲率を低減することができ、第2の保護層140は、曲げ領域100のすべての部分に形成される。
しかしながら、上記a.に関して、上記「1.(b)」で述べたように、引用発明の液晶パネル9と電極端子部6を介して接続される「導電パターン3」の「端部」が本願発明の「外部接続部」に相当し、電極端子部6全体が「外部接続部」に相当するものではないから、請求人の主張は採用できない。
また、上記b.に関して、請求人の主張は第2の保護層140が曲げ領域100の全ての部分に形成されることを前提とするものであるが、本願の請求項1には当該構成は特定されていないから、請求人の主張は特許請求の範囲に基づかないものであり、採用することはできない。


第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2021-03-30 
結審通知日 2021-04-06 
審決日 2021-04-21 
出願番号 特願2017-533349(P2017-533349)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 貴志  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 赤穂 嘉紀
山本 章裕
発明の名称 フレキシブルプリント配線板、これを含む電子装置、およびフレキシブルプリント配線板の製造方法  
代理人 八田国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ