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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1377665 |
審判番号 | 不服2020-9349 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-03 |
確定日 | 2021-09-08 |
事件の表示 | 特願2018-104682「電気素子クーリングモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月27日出願公開、特開2018-207107〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年5月31日(パリ条約による優先権主張 2017年5月31日 韓国(KR)、2017年5月31日 韓国(KR))の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和 1年 6月10日付け:拒絶理由通知 令和 1年 9月18日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 2月21日付け:拒絶査定 令和 2年 7月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和2年7月3日の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和2年7月3日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正 本件補正は、本件補正前における特許請求の範囲の請求項2ないし4について、 「 【請求項2】 内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部と、 前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンクと、 前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプと、を含む電気素子冷却用熱交換器を備え、 前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され、 前記電気素子冷却用熱交換器には、互いに異なる発熱量を有する複数個の前記電気素子が配置され、 前記ヘッダータンクおよび前記冷却流路部は、前記冷却流体が通過する2つの冷却流路を形成し、相対的に長さが短い冷却流路が発熱量の大きい電気素子と熱交換することを特徴とする電気素子クーリングモジュール。 【請求項3】 内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部と、 前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンクと、 前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプと、を含む電気素子冷却用熱交換器を備え、 前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され、 前記電気素子冷却用熱交換器には、互いに異なる発熱量を有する複数個の前記電気素子を冷却するための冷却流路が形成され、 前記入口パイプおよび前記出口パイプのうちの少なくとも一つは、相対的に発熱量が多い前記電気素子に隣接して配置されていることを特徴とする電気素子クーリングモジュール。 【請求項4】 内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部と、 前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンクと、 前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプと、を含む電気素子冷却用熱交換器を備え、 前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され、 前記電気素子冷却用熱交換器には、複数個の前記電気素子を冷却するための冷却流路が形成され、 前記入口パイプおよび前記出口パイプのうちの少なくとも一つは、相対的に発熱量が多い前記電気素子に隣接して配置されていることを特徴とする電気素子クーリングモジュール。」 とあったところを、 「 【請求項2】 内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部と、 前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンクと、 前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプと、を含む電気素子冷却用熱交換器を備え、 前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着する電気素子クーリングモジュールにおいて、 前記電気素子クーリングモジュールは、 前記第1ヘッダータンクおよび前記第2ヘッダータンクが交互にずれるように高さ方向に同一線上に配置されないように形成されて、 前記電気素子冷却用熱交換器には、互いに異なる発熱量を有する複数個の前記電気素子が配置され、 前記ヘッダータンクおよび前記冷却流路部は、前記冷却流体が通過する2つの冷却流路を形成し、相対的に長さが短い冷却流路が発熱量の大きい電気素子と熱交換することを特徴とする電気素子クーリングモジュール。 【請求項3】 内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部と、 前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンクと、 前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプと、を含む電気素子冷却用熱交換器を備え、 前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着する電気素子クーリングモジュールにおいて、 前記電気素子クーリングモジュールは、 前記第1ヘッダータンクおよび前記第2ヘッダータンクが交互にずれるように高さ方向に同一線上に配置されないように形成されて、 前記電気素子冷却用熱交換器には、互いに異なる発熱量を有する複数個の前記電気素子を冷却するための冷却流路が形成され、 前記入口パイプおよび前記出口パイプのうちの少なくとも一つは、相対的に発熱量が多い前記電気素子に隣接して配置されていることを特徴とする電気素子クーリングモジュール。 【請求項4】 内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部と、 前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンクと、 前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプと、を含む電気素子冷却用熱交換器を備え、 前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着する電気素子クーリングモジュールにおいて、 前記電気素子クーリングモジュールは、 前記第1ヘッダータンクおよび前記第2ヘッダータンクが交互にずれるように高さ方向に同一線上に配置されないように形成されて、 前記電気素子冷却用熱交換器には、複数個の前記電気素子を冷却するための冷却流路が形成され、 前記入口パイプおよび前記出口パイプのうちの少なくとも一つは、相対的に発熱量が多い前記電気素子に隣接して配置されていることを特徴とする電気素子クーリングモジュール。」 とすることを含むものである(下線は補正箇所を示す。)。 2 補正の適否 (1)請求項2に係る補正について ア 請求項2についての本件補正は、本件補正前の請求項2の「前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され、」を、「前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着する電気素子クーリングモジュールにおいて、」とする補正を含むものである。 イ 上記補正は、本件補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「冷却流路部」について「前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され」との発明特定事項を削除するものであって、本件補正前の請求項2の発明特定事項を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められないし、また、請求項の削除、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものとも認められない。 ウ してみると、上記補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでない。 (2)請求項3に係る補正について ア 請求項3についての本件補正は、本件補正前の請求項3の「前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され、」を、「前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着する電気素子クーリングモジュールにおいて、」とする補正を含むものである。 イ 上記補正は、本件補正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「冷却流路部」について「前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され」との発明特定事項を削除するものであって、本件補正前の請求項3の発明特定事項を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められないし、また、請求項の削除、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものとも認められない。 ウ してみると、上記補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでない。 (3)請求項4に係る補正について ア 請求項4についての本件補正は、本件補正前の請求項4の「前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され、」を、「前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着する電気素子クーリングモジュールにおいて、」とする補正を含むものである。 イ 上記補正は、本件補正前の請求項4に記載した発明を特定するために必要な事項である「冷却流路部」について「前記冷却流路部の幅方向に離隔して2列に配列され」との発明特定事項を削除するものであって、本件補正前の請求項4の発明特定事項を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められないし、また、請求項の削除、誤記の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものとも認められない。 ウ してみると、上記補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年7月3日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、令和1年9月18日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部と、 前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンクと、 前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプと、を含む電気素子冷却用熱交換器を備え、 前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に2列に配列され、 前記冷却流路部の幅方向に離隔する長さが、前記電気素子から前記冷却流路部の幅方向の内側に配置された端子の前記冷却流路部から突出した対向する2つの端子の長さの合計よりも大きくなるように形成されている電気素子クーリングモジュールにおいて、 前記電気素子クーリングモジュールは、 前記電気素子から前記冷却流路部の幅方向の内側に突出した対向する2つの端子間の離隔長さが、前記入口パイプの直径よりも小さく形成されることにより、小型化が可能なことを特徴とする電気素子クーリングモジュール。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1、2、5ないし14 ・引用文献等 1 ・請求項 3、4、15ないし18 ・引用文献等 1、2 <引用文献等一覧> 1.特開2015-220977号公報 2.特開2007-5682号公報 3 引用文献、引用発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2015-220977号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。) ア 「【0002】 ハイブリッド車両や電気自動車のように、電気モータを駆動源に用いる親環境車両は、通常、電気モータを駆動するためのエネルギー源として、高電圧バッテリーなどを使用しており、電力変換部品として、モータに電源を提供するインバータと、車両用12V電源を生じるためのLDC(LOW DC-DC CONVERTOR)とを使用している。 (中略) 【0004】 最近、このようなインバータ、コンバータ及びこれら(前記インバータとコンバータ)の制御のための制御器をパッケージ形態に統合して構成し、これをハイブリッド電力制御装置(HPCU:Hybrid Power Control Unit)と称している。 【0005】 また、環境車両用HPCUは、冷却効率の向上及びパッケージング構造の改善による小型化、単純化及び高効率化が要求されている。 【0006】 図1は、従来の技術による環境車両用電力制御装置を概略的に示すものである。 【0007】 図1に示すように、従来の環境車両用電力制御装置は、第1ハウジング1内に設けられるコンバータ2と、第2ハウジング3内に設けられるインバータ4と、制御器5とから構成され、前記第1ハウジング1と第2ハウジング3とが互いに隣接して配置される。 【0008】 前記インバータ4には、IGBT(Insulated Gate bipolar Transistor)のようなパワーモジュールが複数個で構成され、当該パワーモジュールの制御のために、ゲートボード及びキャパシタモジュールが構成される。 (中略) 【0022】 図2及び図3に示すように、本発明の実施形態による自動車のハイブリッド電力制御装置は、閉鎖可能な内部空間を持つハウジング10と、当該ハウジング10内に設けられる部品実装部20と、当該部品実装部20に取り付けられるインバータモジュール30と、LDCモジュール40と、制御部50とを含む。 (中略) 【0029】 前記インバータモジュール30は、スイッチング素子である複数のパワーモジュール31、キャパシタモジュール32、ゲートボード33、冷却器34などで構成され、前記LDCモジュール40は、パワーボード、インダクタ、トランスフォーマ、ダイオードなどで構成される。 (中略) 【0032】 前記インバータモジュール30は、冷却効率を向上し、サイズ縮小を図るために、図4に示すように、複数のパワーモジュール31にそれぞれ両面接触すると共に、キャパシタモジュール32の一側に接触し、部品実装部20を媒介としてLDCモジュール40の一側に接触する形態の冷却器34を用いている。 【0033】 図5は、ハウジング10内に実装されたパワーモジュール31の配列、及び冷却器34との接触形態を示すものであって、図5に示すように、インバータモジュール30を構成する複数のパワーモジュール31は、左右両側に二分されて2列に配置され、冷却器34は、前記各パワーモジュール31の両面を冷却可能な形態に形成される。 (中略) 【0035】 図5及び図6に示すように、前記冷却器34は、冷却水の移動及び循環のための冷却流路を持つパイプ構造に基づくものであって、冷却水の流入のための流路入口35と、冷却水の排出のための流路出口36と、左右一側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第1冷却部37と、左右他側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第2冷却部38と、流路入口35を介して流入された冷却水の分配のためのディバイド39とから構成される。 【0036】 前記ディバイド39は、一側に流路入口35と流路出口36とが一体に連結され、他側に(これと対向する側に)第1冷却部37と第2冷却部38とが一体に連結されるので、流路入口35に流入された冷却水が、第1冷却部37と第2冷却部38とに分割されて流入され、第1冷却部37と第2冷却部38とを循環した後、流路出口36を介して冷却器34の外部に排出される。 (中略) 【0038】 すなわち、前記ディバイド39は、内部の隔膜39aによって上下二層構造で冷却流路が区分され、これによって、流路入口35に流入された冷却水は、下層の冷却流路39cを介して第1及び第2冷却部37、38に流入された後、上層の冷却流路39bを介して流路出口36に排出される。 【0039】 そして、前記第1及び第2冷却部37、38は、それぞれその中央部が屈曲して、両端がディバイド39の上層及び下層の冷却流路39b、39cと連通可能にディバイド39に連結され、このような形態によって、一列に配列された複数のパワーモジュール31を取り囲みつつ、各パワーモジュール31の両面に同時接触する。 (中略) 【0042】 このようなパッケージ構造によって、前記冷却器34は、各パワーモジュール31の上下両面に熱伝達可能に接触すると共に、前記キャパシタモジュール32の一側(下端面)と、前記LDCモジュール40の一側(上端面)とにそれぞれ熱伝達可能に接触し、このように、一つの冷却器34でパワーモジュール31、キャパシタモジュール32及びLDCモジュール40を全て冷却することで、冷却効率を向上すると共に、ハウジング10内の部品のサイズ縮小、材料費低減及び安定性確保ができる。 (中略) 【0045】 また、図5に示すように、各パワーモジュール31は、左右一側に高電圧連結部31aが備えられ、左右他側に低電圧連結部31bが備えられるが、左右一側(具体的には、第1冷却部37側)に配置されたパワーモジュールと、左右他側(具体的には、第2冷却部38側)に配置されたパワーモジュールとの高電圧連結部31aと低電圧連結部31bとを互いに逆方向に配置して構成することで、電磁波性能を向上することができる。 【0046】 この時、各パワーモジュール31の高電圧連結部31aは、冷却器34を基準として内側(すなわち、第1冷却部37と第2冷却部38との間)に位置し、前記各パワーモジュール31の低電圧連結部31bは、冷却器34を基準として外側(すなわち、第1冷却部37の外側及び第2冷却部38の外側)に位置する。 【0047】 前記高電圧連結部31aは、キャパシタモジュール32と電気的に連結される直流入力部31aaと、ハウジング10の外部のモータ側に電気的に連結される交流出力部31abとから構成され、前記低電圧連結部31bは、パワーモジュール31の制御のためのゲートボード33と電気的に連結可能に構成される。 イ 「 ![]() 」 ウ 「 ![]() 」 (2)引用文献1の上記記載及び図面によれば、以下のことがいえる。 ア 段落【0042】によれば、複数のパワーモジュール31の上下両面に熱伝達可能に接触し、パワーモジュール31を冷却する冷却器34が記載されている。 また、同段落【0008】及び【0029】によれば、複数のパワーモジュール31は、IGBTのようなスイッチング素子からなる。 イ 段落【0035】によれば、冷却器34は、冷却水の移動及び循環のための冷却流路を持つパイプ構造に基づくものであって、冷却水の流入のための流路入口35と、冷却水の排出のための流路出口36と、左右一側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第1冷却部37と、左右他側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第2冷却部38と、流路入口35を介して流入された冷却水の分配のためのディバイド39とから構成される。 ウ 段落【0036】、【0038】、図6によれば、ディバイド39は、一側に流路入口35と流路出口36とが一体に連結され、他側に(これと対向する側に)第1冷却部37と第2冷却部38とが一体に連結されると共に、内部の隔膜39aによって上下二層構造で冷却流路が区分され、流路入口35に流入された冷却水が、下層の冷却流路39cを介して第1及び第2冷却部37、38とに分割されて流入され、第1冷却部37と第2冷却部38とを循環した後、上層の冷却流路39bを介して流路出口36から外部に排出される。 エ 段落【0039】によれば、第1及び第2冷却部37、38は、それぞれその中央部が屈曲して、両端がディバイド39の上層及び下層の冷却流路39b、39cと連通可能にディバイド39に連結され、これによって、一列に配列された複数のパワーモジュール31を取り囲みつつ、各パワーモジュール31の両面に同時接触するといえる。 オ 段落【0045】ないし【0047】によれば、各パワーモジュール31は、高電圧連結部31aが備えられ、高電圧連結部31aは、冷却器34を基準として内側(すなわち、第1冷却部37と第2冷却部38との間)に位置し、キャパシタモジュール32と電気的に連結される直流入力部31aaと、ハウジング10の外部のモータ側に電気的に連結される交流出力部31abとから構成されるといえる。 カ 図5によれば、第1冷却部37側に配置された各パワーモジュール31の高電圧連結部31aと第2冷却部38側に配置されたパワーモジュール31の高電圧連結部31aとが、それぞれ第1冷却部37と第2冷却部38から突出して対向していることが見て取れる。 また、図5によれば、第1冷却部37と第2冷却部38との幅方向における間隔が、第1冷却部37から突出した高電圧連結部31aの長さと第2冷却部38から突出した高電圧連結部31aの長さの合計より大きいことも見て取れる。 (3)上記アないしカによれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「 IGBTのようなスイッチング素子からなる複数のパワーモジュール31の上下両面に熱伝達可能に接触し、パワーモジュール31を冷却する冷却器34であって、 冷却器34は、冷却水の移動及び循環のための冷却流路を持つパイプ構造に基づくものであって、冷却水の流入のための流路入口35と、冷却水の排出のための流路出口36と、左右一側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第1冷却部37と、左右他側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第2冷却部38と、流路入口35を介して流入された冷却水の分配のためのディバイド39とから構成され、 ディバイド39は、一側に流路入口35と流路出口36とが一体に連結され、他側に(これと対向する側に)第1冷却部37と第2冷却部38とが一体に連結されると共に、内部の隔膜39aによって上下二層構造で冷却流路が区分され、流路入口35に流入された冷却水が、下層の冷却流路39cを介して第1及び第2冷却部37、38とに分割されて流入され、第1冷却部37と第2冷却部38とを循環した後、上層の冷却流路39bを介して流路出口36から外部に排出され、 第1及び第2冷却部37、38は、それぞれその中央部が屈曲して、両端がディバイド39の上層及び下層の冷却流路39b、39cと連通可能にディバイド39に連結され、これによって、一列に配列された複数のパワーモジュール31を取り囲みつつ、各パワーモジュール31の両面に同時接触し、 各パワーモジュール31は、高電圧連結部31aが備えられ、高電圧連結部31aは、冷却器34を基準として内側(すなわち、第1冷却部37と第2冷却部38との間)に位置し、キャパシタモジュール32と電気的に連結される直流入力部31aaと、ハウジング10の外部のモータ側に電気的に連結される交流出力部31abとから構成され、 第1冷却部37側に配置された各パワーモジュール31の高電圧連結部31aと第2冷却部38側に配置されたパワーモジュール31の高電圧連結部31aとが、それぞれ第1冷却部37と第2冷却部38から突出して対向し、第1冷却部37と第2冷却部38との幅方向における間隔が、第1冷却部37から突出した高電圧連結部31aの長さと第2冷却部38から突出した高電圧連結部31aの長さの合計より大きい、 冷却器34。」 4 対比・判断 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「冷却水」は、流体であるから、本願発明の「冷却流体」に相当する。 そして、引用発明では、「流路入口35に流入された冷却水」が「第1及び第2冷却部37、38とに分割されて流入され、第1冷却部37と第2冷却部38とを循環」するから、引用発明の「第1冷却部37と第2冷却部38」は、冷却水が流動可能に構成されているといえ、本願発明の「冷却媒体が流動可能に形成された冷却流路部」に相当する。 よって、引用発明の「流路入口35に流入された冷却水が、下層の冷却流路39cを介して第1及び第2冷却部37、38とに分割されて流入され、第1冷却部37と第2冷却部38とを循環」することは、本願発明の「内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部」に相当する構成を備えている。 イ 引用発明では、「ディバイド39」は「他側に(これと対向する側に)第1冷却部37と第2冷却部38とが一体に連結されると共に、内部の隔膜39aによって上下二層構造で冷却流路が区分」され、「冷却水が、下層の冷却流路39cを介して第1及び第2冷却部37、38とに分割されて流入され、第1冷却部37と第2冷却部38とを循環した後、上層の冷却流路39bを介して流路出口36から外部に排出」され、さらに、「第1及び第2冷却部37、38」は「両端がディバイド39の上層及び下層の冷却流路39b、39cと連通可能にディバイド39に連結され」るから、「ディバイド39」の「下層」は、「第1及び第2冷却部37、38」の一端に連結され、冷却水を「第1及び第2冷却部37、38」とに分割するものであり、また、「ディバイド39」の「上層」は、「第1及び第2冷却部37、38」の他端に連結され、「第1冷却部37と第2冷却部38」とを循環した冷却水を統合するものといえ、「ディバイド39」の「上層」が「ディバイド39」の「下層」の上方に位置していることは当然のことである。 ここで、本願発明の「ヘッダータンク」に関し、本願明細書段落【0075】に、「図17および図19を参照すると、ヘッダータンク120は、その内部に入口パイプ131から流入された冷却流体を、第1電気素子1aを冷却する第1冷却流路部110Aに分配する第1分配流路210Aと、第2電気素子1bを冷却する第2冷却流路部110Bに分配する第2分配流路210Bと、を含む分配流路210と、第1冷却流路部110Aを通過して排出される冷却流体を出口パイプ132に移動させる第1統合流路220Aと、第2冷却流路部110Bを通過して排出される冷却流体を出口パイプ132に移動させる第2統合流路220Bと、を含む統合流路220とが形成され」と記載され、図19を参照すると、第1ヘッダータンクに分配流路210、第2ヘッダータンクに統合流路220がそれぞれ形成されることが見て取れる。 よって、本願発明の「第1ヘッダータンク」は、流入された冷却流体を第1冷却流路部110A及び第2冷却流路部110Bに分配するものを含むことを踏まえると、引用発明の「ディバイド39」の「下層」は、本願発明の「第1ヘッダータンク」に相当するものであるといえる。 そして、本願発明の「第2ヘッダータンク」は、第1冷却流路部110A及び第2冷却流路部110Bから排出される冷却流体を統合するものを含むことを踏まえると、引用発明の「ディバイド39」の「上層」は、本願発明の「第2ヘッダータンク」に相当するものであるといえる。 したがって、引用発明の「ディバイド39は、一側に流路入口35と流路出口36とが一体に連結され、他側に(これと対向する側に)第1冷却部37と第2冷却部38とが一体に連結されると共に、内部の隔膜39aによって上下二層構造で冷却流路が区分され、流路入口35に流入された冷却水が、下層の冷却流路39cを介して第1及び第2冷却部37,38とに分割されて流入され、第1冷却部37と第2冷却部38とを循環した後、上層の冷却流路39bを介して流路出口36から外部に排出され」ること、及び、「第1及び第2冷却部37,38は、それぞれその中央部が屈曲して、両端がディバイド39の上層及び下層の冷却流路39b,39cと連通可能にディバイド39に連結され」ることとは、本願発明の「前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンク」に相当する構成を備えている。 ウ 引用発明の「流路入口35」は、「冷却水の流入のため」のものであるから、本願発明の「冷却流体が流入される入口パイプ」に相当する。 そして、引用発明の「流路出口36」は、「冷却水の排出のため」のものであるから、本願発明の「冷却流体が排出される出口パイプ」に相当する。 さらに、引用発明では、「ディバイド39は、一側に流路入口35と流路出口36とが一体に連結され」るから、「流路入口35と流路出口36」は、「ディバイド39」に連結されるといえ、本願発明の「ヘッダータンクに形成され」る「入出口パイプ」に相当する。 よって、引用発明の「冷却水の流入のための流路入口35と、冷却水の排出のための流路出口36」及び「ディバイド39は、一側に流路入口35と流路出口36とが一体に連結され」ることとは、本願発明の「前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプ」に相当する構成を備えている。 エ 引用発明において、「冷却器34」は、「複数のパワーモジュール31の上下両面に熱伝達可能に接触し、パワーモジュール31を冷却する」ものであって、冷却器34に流れる冷却水にパワーモジュール31からの熱が伝達されるのであるから、本願発明の「電気素子冷却用熱交換器」に相当する。 オ 本願発明の「電気素子」に関し、本願明細書段落【0026】に「ここで、上述の電気素子1は、IGBTなどの半導体素子およびダイオードを内蔵した半導体モジュールが使用される自動車用インバータ、モータ駆動インバータ、およびエアコンインバータである。」と記載されていることから、本願発明の「電気素子」は、IGBTなどの半導体素子およびダイオードを内蔵した半導体モジュールを含むことを踏まえると、引用発明の「IGBTのようなスイッチング素子からなる複数のパワーモジュール31」は、本願発明の「電気素子」に相当するものであるといえる。 そして、引用発明における「第1及び第2冷却部37,38」は「それぞれその中央部が屈曲」され、「一列に配列された複数のパワーモジュール31を取り囲みつつ、各パワーモジュール31の両面に同時接触」することは、本願発明の「冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着」することに相当する。 さらに、引用発明において、「第1冷却部37」は「左右一側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能」であり、「第2冷却部38」は「左右他側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能」であるから、引用発明においても、「第1冷却部37」と「第2冷却部38」は、その幅方向に配列されていることは明らかである。 よって、引用発明の「左右一側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第1冷却部37と、左右他側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第2冷却部38」及び「第1及び第2冷却部37,38は、それぞれその中央部が屈曲して、両端がディバイド39の上層及び下層の冷却流路39b,39cと連通可能にディバイド39に連結され、これによって、一列に配列された複数のパワーモジュール31を取り囲みつつ、各パワーモジュール31の両面に同時接触」することは、本願発明の「前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に2列に配列され」る構成を備えている。 カ 引用発明の「第1冷却部37と第2冷却部38との幅方向における間隔」は、本願発明の「冷却流路部の幅方向に離隔する長さ」に相当する。 また、引用発明の「高電圧連結部31a」は、「キャパシタモジュール32と電気的に連結される直流入力部31aaと、ハウジング10の外部のモータ側に電気的に連結される交流出力部31ab」から構成されるから、他の機器と電気的に接続するための端子といえ、本願発明の「端子」に相当する。 そして、引用発明において、「高電圧連結部31a」が「冷却器34を基準として内側(すなわち、第1冷却部37と第2冷却部38との間)に位置」することは、高電圧連結部31aが第1冷却部37と第2冷却部38の幅方向の内側に位置することであるから、本願発明の「端子」が「電気素子から前記冷却流路部の幅方向の内側に配置」されることに相当する。 さらに、引用発明において、「第1冷却部37側に配置された各パワーモジュール31の高電圧連結部31aと第2冷却部38側に配置されたパワーモジュール31の高電圧連結部31a」とは、「それぞれ第1冷却部37と第2冷却部38から突出して対向し」ているから、本願発明の「冷却流路部から突出した対向する2つの端子」に相当し、引用発明の「第1冷却部37から突出した高電圧連結部31aの長さと第2冷却部38から突出した高電圧連結部31aの長さの合計」とは、本願発明の「2つの端子の長さの合計」に相当する。 したがって、引用発明の「各パワーモジュール31は、高電圧連結部31aが備えられ、高電圧連結部31aは、冷却器34を基準として内側(すなわち、第1冷却部37と第2冷却部38との間)に位置し、キャパシタモジュール32と電気的に連結される直流入力部31aaと、ハウジング10の外部のモータ側に電気的に連結される交流出力部31abとから構成され」ること、及び、「第1冷却部37側に配置された各パワーモジュール31の高電圧連結部31aと第2冷却部38側に配置されたパワーモジュール31の高電圧連結部31aとが、それぞれ第1冷却部37と第2冷却部38から突出して対向し、第1冷却部37と第2冷却部38との幅方向における間隔が、第1冷却部37から突出した高電圧連結部31aの長さと第2冷却部38から突出した高電圧連結部31aの長さの合計より大きい」ことは、本願発明の「前記冷却流路部の幅方向に離隔する長さが、前記電気素子から前記冷却流路部の幅方向の内側に配置された端子の前記冷却流路部から突出した対向する2つの端子の長さの合計よりも大きくなるように形成されている」ことに相当する。 キ 引用発明の「冷却器34」は、「IGBTのようなスイッチング素子からなる複数のパワーモジュール31の上下両面に熱伝達可能に接触し、パワーモジュール31を冷却」し、「冷却水の移動及び循環のための冷却流路を持つパイプ構造に基づくものであって、冷却水の流入のための流路入口35と、冷却水の排出のための流路出口36と、左右一側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第1冷却部37と、左右他側に一列に配列された複数のパワーモジュール31の上下両面に接触可能な第2冷却部38と、流路入口35を介して流入された冷却水の分配のためのディバイド39とから構成され」るのであるから、パワーモジュール31を冷却するためのモジュールといえ、本願発明の「電気素子クーリングモジュール」に相当する。 ただし、「電気素子クーリングモジュール」に関し、本願発明は、「前記電気素子から前記冷却流路部の幅方向の内側に突出した対向する2つの端子間の離隔長さが、前記入口パイプの直径よりも小さく形成されることにより、小型化が可能」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。 (2)上記アないしキによれば、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「 内部を冷却流体が流動可能に形成された冷却流路部と、 前記冷却流路部の一端に結合された第1ヘッダータンクおよび前記冷却流路部の他端に結合されて前記第1ヘッダータンクの上方に配置された第2ヘッダータンクを含むヘッダータンクと、 前記ヘッダータンクに形成されて、前記冷却流体が流入される入口パイプおよび前記冷却流体が排出される出口パイプを含む入出口パイプと、を含む電気素子冷却用熱交換器を備え、 前記冷却流路部は、所定の箇所で折り曲げられ、互いに対向する面の間に配置された電気素子の両面に密着し、前記冷却流路部の幅方向に2列に配列され、 前記冷却流路部の幅方向に離隔する長さが、前記電気素子から前記冷却流路部の幅方向の内側に配置された端子の前記冷却流路部から突出した対向する2つの端子の長さの合計よりも大きくなるように形成されている電気素子クーリングモジュール。」 (相違点) 「電気素子クーリングモジュール」に関し、本願発明は、「前記電気素子から前記冷却流路部の幅方向の内側に突出した対向する2つの端子間の離隔長さが、前記入口パイプの直径よりも小さく形成されることにより、小型化が可能」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。 (3)相違点の判断 ア 引用文献1によれば、環境車両用ハイブリッド電力制御装置は、冷却効率の向上及びパッケージング構造の改善による小型化、単純化及び高効率化が要求されており(上記「3」「(1)」段落【0002】、【0004】、【0005】を参照)、実施形態として、ハイブリッド電力制御装置におけるインバータモジュール30において、冷却効率を向上し、サイズ縮小を図るために、複数のパワーモジュール31にそれぞれ両面接触すると共に、キャパシタモジュール32の一側に接触し、部品実装部20を媒介としてLDCモジュール40の一側に接触する形態の冷却器34を用いる(上記「3」「(1)」段落【0022】、【0032】を参照)ことが記載されていることからすれば、環境車両用ハイブリッド電力制御装置を構成する「冷却器34」においても、小型化・サイズ縮小化が求められることは当然のことであって、引用発明における「第1冷却部37側に配置された各パワーモジュール31の高電圧連結部31a」と「第2冷却部38側に配置されたパワーモジュール31の高電圧連結部31a」との間隔を、電気的に短絡しない程度に狭くするよう設定することは当業者が普通に行うことである。 イ また、本願発明の「電気素子の幅方向の内側に配置された端子間の離隔長さ」に関し、本願明細書には、「なお、電気素子1の幅方向の内側に配置される端子間の離隔長さは、入口パイプ131の直径よりも小さく形成される。」(段落【0054】を参照)、「すなわち、電気素子1の幅方向の内側に配置される端子間の離隔長さを入口パイプ131の直径よりも小さくなるように電気素子冷却用熱交換器100を形成することで、本実施形態による電気素子クーリングモジュール1000の小型化を可能にする。これにより、小型化が可能な電気素子クーリングモジュール1000を用いて環境にやさしい車両を含む様々な大きさの車両に適用可能にすることができる。」(段落【0055】を参照)と記載されているのみであり、本願明細書及び図面には「電気素子1の幅方向の内側に配置される端子間の離隔長さ」を設定する際に、比較対象として「入口パイプ131の直径」を採用することによる格別な作用効果に関わる記載、又はそれを示唆する記載も見当たらない。 ウ そして、冷媒を導入する管の径をより小さく設定すると、圧力損失が増大することは技術常識(国際公開第2014/069174号段落[0028]、国際公開第2015/178064号段落[0008]を参照)であって、引用発明においても、「冷却水の流入のための流路入口35」の直径を所定の大きさにする必要性があることは明らかであるから、このような「流路入口35」の直径を基準として、「第1冷却部37側に配置された各パワーモジュール31の高電圧連結31部a」と「第2冷却部38側に配置されたパワーモジュール31の高電圧連結部31a」との間隔を、「流入入口35」の直径より小さく設定することは、当業者が適宜設計しうる事項であって格別な困難性を有することではない。 エ なお、審判請求人は、令和1年9月18日提出の意見書(「三.」「〔理由2、3について〕」「(2)」を参照)において、「新請求項1に係る発明は、2列に配列された冷却流路部に配置された電気素子から冷却流路部の幅方向の内側に突出した端子間の幅方向への離隔長さが入口パイプの直径よりも小さく形成される構成を備えることを特徴とし、電気素子の位置制御を通じて上述した端子間の離隔長さを制御することにより、電気素子クーリングモジュールの小型化が期待できます。このような特徴と効果は、引用例1に記載の発明に開示された図面からは把握できず、その構成も記載されていません。」と主張する。 しかしながら、上記「ア」で述べたように、引用発明における「第1冷却部37側に配置された各パワーモジュール31の高電圧連結部31a」と「第2冷却部38側に配置されたパワーモジュール31の高電圧連結部31a」との間隔を、電気的に短絡しない程度に狭くするよう設定することは当業者が普通に行うことであって、上記「イ」で述べたように、本願明細書及び図面には「電気素子1の幅方向の内側に配置される端子間の離隔長さ」を設定する際に、比較対象として「入口パイプ131の直径」を採用することによる格別な作用効果に関わる記載、又はそれを示唆する記載も見当たらない。 よって、審判請求人の主張は採用できない。 オ したがって、引用発明において、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (4)以上から、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-03-30 |
結審通知日 | 2021-04-06 |
審決日 | 2021-04-23 |
出願番号 | 特願2018-104682(P2018-104682) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
P 1 8・ 57- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 五貫 昭一 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
畑中 博幸 赤穂 嘉紀 |
発明の名称 | 電気素子クーリングモジュール |
代理人 | 特許業務法人共生国際特許事務所 |