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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1377667
審判番号 不服2020-10440  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-27 
確定日 2021-09-08 
事件の表示 特願2016-511089「頭部装着型光学系を提供する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日国際公開、WO2014/177684、平成28年 6月23日国内公表、特表2016-518626〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)5月2日(パリ条約による優先権主張 2013年5月2日、欧州、2013年10月22日、欧州)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成30年 2月13日付け:拒絶理由通知書
平成30年 5月21日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年10月25日付け:拒絶理由通知書
平成31年 3月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 8月27日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 3月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月18日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 7月27日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年7月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月27日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
令和2年7月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)。

[本件補正前]
「 装着者に適合化された頭部装着型光学系を提供する方法であって、
- 能動機能を有する光学系が提供される光学系提供工程(S1)と、
- 少なくとも前記装着者の処方箋を含む装着者データが提供される装着者データ提供工程(S2)と、
- 前記光学系が透明カプセル内に少なくとも部分的に封入される封入工程(S8)と、
- 前記光学系の少なくとも1つの面又は前記透明カプセルの1つの面(32、34)がそれぞれ前記装着者データに従ってカスタム化されるカスタム化工程(S9)とを含み、
前記光学系は、前記光学系と前記透明カプセルの少なくとも1つの基板とを密着して積層することにより前記透明カプセル内に少なくとも部分的に封入され、接着剤により一体化され、
前記光学系は、光導波路光学素子を備え、
前記封入工程(S8)は、次の副工程:
-少なくとも一滴の接着剤又は接着剤膜が透明カプセルの面上に及び/又は前記光導波路光学素子の面の1つの面上に堆積される接着剤堆積工程と、
-透明カプセルの面と対向する前記光導波路光学素子の面との間に接着剤の層を形成するために力が透明カプセル及び/又は前記光導波路光学素子に印加される力印可工程と、
-前記光導波路光学素子と透明カプセルが接着剤により一体化される接着工程と、を含む方法。」

[本件補正後]
「 装着者に適合化された頭部装着型光学系を提供する方法であって、
- 能動機能を有する光学系が提供される光学系提供工程(S1)と、
- 少なくとも前記装着者の処方箋を含む装着者データが提供される装着者データ提供工程(S2)と、
- 前記封入工程に先立つ前記光学系の面の形状と前記光学系の屈折率とを少なくとも表す光学系データが提供される光学系データ提供工程(S3)と、
- 前記透明カプセルの前記屈折率を少なくとも表すカプセルデータが提供されるカプセルデータ提供工程(S4)と、
- 前記装着者のデータと前記光学系のデータとに従って前記装着者に提供される光機能が判断される光機能判断工程(S5)と、
- 前記透明カプセルのカスタム化される少なくとも1つの面の表面を表す表面データが前記光機能と前記カプセルデータとに従って判断される表面データ判断工程(S6)と、
- 前記光学系が透明カプセル内に少なくとも部分的に封入される封入工程(S8)と、
- 前記光学系の少なくとも1つの面又は前記透明カプセルの1つの面(32、34)がそれぞれ前記表面データに従ってカスタム化されるカスタム化工程(S9)とを含み、
前記光学系は、前記光学系と前記透明カプセルの少なくとも1つの基板とを密着して積層することにより前記透明カプセル内に少なくとも部分的に封入され、接着剤により一体化されることを特徴とする方法。」

2 補正の適否
本件補正は、
本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「封入工程(S8)」について、「次の副工程: -少なくとも一滴の接着剤又は接着剤膜が透明カプセルの面上に及び/又は前記光導波路光学素子の面の1つの面上に堆積される接着剤堆積工程と、 -透明カプセルの面と対向する前記光導波路光学素子の面との間に接着剤の層を形成するために力が透明カプセル及び/又は前記光導波路光学素子に印加される力印可工程と、 -前記光導波路光学素子と透明カプセルが接着剤により一体化される接着工程と、を含む」との事項を削除する(以下「補正事項1」という。)とともに、
本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「装着者に適合化された頭部装着型光学系を提供する方法」の工程について、「 - 前記封入工程に先立つ前記光学系の面の形状と前記光学系の屈折率とを少なくとも表す光学系データが提供される光学系データ提供工程(S3)と、 - 前記透明カプセルの前記屈折率を少なくとも表すカプセルデータが提供されるカプセルデータ提供工程(S4)と、 - 前記装着者のデータと前記光学系のデータとに従って前記装着者に提供される光機能が判断される光機能判断工程(S5)と、 - 前記透明カプセルのカスタム化される少なくとも1つの面の表面を表す表面データが前記光機能と前記カプセルデータとに従って判断される表面データ判断工程(S6)」を含むものに限定する(以下「補正事項2」という。)、
というものである。

補正事項1が、特許法第17条の2第5項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
補正事項1は、発明を特定するために必要な事項である「封入工程(S8)」について、副工程を削除するものであることは明らかである。
したがって、当該補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものには該当しない。
また、当該補正事項1を含む本件補正が、特許法第17条の2第5項第1号、第3号、第4号にそれぞれ掲げられた請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年7月27日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年3月3日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1の[本件補正前]に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1ないし11に記載された発明に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
というものである。

引用文献1:国際公開第2005/088384号
引用文献2:特表2008-506980号公報
引用文献3:特表2012-510075号公報
引用文献4:特開2010-210735号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2005-234309号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6:特開昭63-276542号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:国際公開第2012/082807号
引用文献8:特表2005-536782号公報(周知技術を示す文献)
引用文献9:特開平10-301055号公報(周知技術を示す文献)
引用文献10:特開2009-75195号公報(周知技術を示す文献)
引用文献11:国際公開第2012/088478号(周知技術を示す文献)

3 判断
以下、原査定の拒絶の理由(進歩性)について検討する。

(1)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審が付した。以下同様。)

(ア)「[0001] 本発明は、アイグラスディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、カメラ、携帯電話、双眼鏡、顕微鏡、望遠鏡などの光学機器に搭載され、液晶表示素子などの表示画面の虚像を観察眼の前方に形成するための画像表示光学系及び画像表示装置に関する。
・・・(中略)・・・
[0005] しかし、この画像表示光学系には、基板の加工が難しい、或いは加工が煩雑であるといった問題がある。例えば、基板の内部にハーフミラーを形成するためには、基板を多数に切断し、多数の切断面に半透過面を形成し、再びそれらの切断面を接着する必要がある。
そこで本発明は、基板の構成をシンプルに抑えながらも大きな射出瞳を確保することのできる画像表示光学系及び画像表示装置を提供することを目的とする。」

(イ)「[0016] 以下、本発明の最良の形態(実施形態)を説明する。
[第1実施形態]
以下、図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7、図8に基づき本発明の第1実施形態を説明する。
本実施形態は、アイグラスディスプレイの実施形態である。
[0017] 先ず、アイグラスディスプレイの構成を説明する。
図1に示すように、本アイグラスディスプレイは、画像表示光学系1、画像導入ユニット2、ケーブル3などからなる。画像表示素子光学系1、画像導入ユニット2は、眼鏡のフレームと同様の支持部材4(テンプル4a、リム4b、ブリッジ4cなどからなる。)によって支持され、観察者の頭部に装着される。
[0018] 画像表示光学系1は、眼鏡のレンズと同様の外形をしておりリム4bによって周囲から支持される。
画像導入ユニット2は、テンプル4aによって支持される。画像導入ユニット2には、外部機器からケーブル3を介して映像信号及び電力が供給される。
装着時、観察者の一方の眼(以下、右眼とし「観察眼」という。)の眼前に画像表示光学系1が配置される。以下、装着時のアイグラスディスプレイを、観察者及び観察眼の位置を基準として説明する。
[0019] 画像導入ユニット2の内部には、図2に示すように、映像信号に基づき映像を表示する液晶表示素子21(請求項における画像表示素子に対応。)と、液晶表示素子21の近傍に焦点を有した対物レンズ22とが配置される。
この画像導入ユニット2は、対物レンズ22から射出する光束(表示光束)Lを、画像表示光学系1の観察者側の面の右端部に向けて出射する。
[0020] 画像表示光学系1は、観察者の側から順に、基板13,11,12を密着して重ねて配置してなる。
基板13,11,12の各々は、外界(画像表示光学系1の反観察者側の領域)から観察眼に向かう外界光束の少なくとも可視光成分に対し透過性を有した基板である。
このうち、2つの基板13,12によって挟まれた基板11は、画像導入ユニット2から導入された表示光束Lを外界側の面11-1と観察者側の面11-2とで繰り返し内面反射する平行平板である(請求項における透過性の基板に対応する。)。
[0021] 基板11の外界側に配置された基板12は、主に、基板11が内面反射する表示光束Lを観察者の方向に偏向する働きと、観察眼の視度補正をする働きの一部とを担う。基板12は、観察者側の面12-2が平面となったレンズである。
基板11の観察者側に配置された基板13は、観察眼の視度補正をする働きの一部を担う。基板13は、外界側の面13-1が平面となったレンズである。
[0022] なお、基板11の内部において表示光束Lが最初に入射する領域には、表示光束Lの角度を内面反射可能な角度に偏向する反射面11aが形成される。
また、基板12の観察者側の面12-2には、マルチミラー(請求項における偏向光学部に対応。)12aが設けられる(詳細は後述。)。
また、基板11の内部において、画像導入ユニット2から最も離れた領域には、表示光束Lの伝搬方向と略同じ方向に法線を有した折り返し反射面11bが設けられる。
[0023] また、基板13の外界側の面13-1には、エアギャップと同等の働きをする反射透過面13aが設けられる。
この反射透過面13aは、比較的大きい入射角度で入射する光に対して高い反射性を示し、小さい入射角度で(略垂直に)入射する光に対して高い透過性を有する。このような反射透過面13aが形成されていれば、基板11による内面反射の機能を保ちながら、基板13と基板11とを接合し、画像表示光学系1の強度を高めることができる。」

(ウ)「[0034] 復路進行中の表示光束Lも、マルチミラー12aに入射する度に、往路進行中の表示光束Lと同様に偏向される。
その後、マルチミラー12aによって反射された表示光束Lは、反射透過面13aを透過し、基板13を介して射出瞳Eにそれぞれ入射する。
次に、基板11,基板12,基板13の各々製造方法の例を簡単に説明しておく。
[0035] 基板11の製造方法では、基板11の原型として、光学ガラス又は光学プラスチックなどからなる基板を用意する。
その基板を2箇所で斜めに切断し、切断してできた2対の切断面を光学研磨し、各対の切断面の一方に反射面となりうるアルミニウム・銀・誘電体多層膜などを成膜し、その後再び各切断面を接合する。接合面の一方が反射面11a、他方が折り返し反射面11bとなる。」

(エ)「[0054]・・・(中略)・・・
次に、視度補正について説明する。
先ず、図8に示すように、基板13の観察者側の面13-2、及び基板12の外界側の面12-1は、曲面になっている。また、対物レンズ22の光軸方向の位置は、変更可能である。
[0055] 液晶表示素子21の表示画面の虚像に対する観察眼の視度補正(近方視度の補正)は、対物レンズ22の光軸方向の位置(図8※l)と、基板13の観察者側の面13-2の曲面形状(図8※3)との組み合わせの最適化によって行うことができる。一方、外界の像に対する観察眼の視度補正(遠方視度の補正)は、基板12の外界側の面12-1の曲面形状(図8※2)と、基板13の観察者側の面13-2の曲面形状(図8※3)との組み合わせの最適化によって行うことができる。
[0056] 或いは、対物レンズ22の位置に何の変更も加えずに、外界の像に対する観察眼の視度補正(遠方視度の補正)を主に基板12の外界側の面12-1の曲面形状(図8※2)の最適化により図り、表示画面の虚像に対する観察眼の視度補正(有限距離視度の補正)を主に基板13の観察者側の面13ー2の曲面形状(図8※3)の最適化により図ることとしてもよい。
[0057] このように、本アイグラスディスプレイにおいては、マルチミラー12aの形成箇所が基板12の一方の面(観察者側の面12-2)のみなので、他方の面(外界側の面12-1)を視度補正に利用することができる。
また、本アイグラスディスプレイにおいては、表示画面の虚像に対する観察眼の視度補正を、外界の像に対する観察眼の視度補正と独立して行うことができるので、観察眼の特性(近視、遠視、老視、乱視、弱視の程度)だけでなくアイグラスディスプレイの使用環境にも応じたきめ細かい視度補正が可能である。」

(オ)「[0092] また、幾つかの実施形態では反射透過面13aが用いられたが、その反射透過面13aの代わりに、それと同じ位置にエアギャップを設けてもよい。但し、画像表示光学系1の強度が高められる点においては反射透過面13aを適用する方が望ましい。
また、各実施形態のアイグラスディスプレイは、2枚又は3枚の基板からなるので、何れかの基板に、予め着色した素子、又は紫外線によって着色するフォトクロミック素子、又は通電によって着色するエレクトロクロミック素子、その他の透過率が変化する素子を適用してもよい。
[0093] このような素子を適用すると、観察眼に入射する外界光束の輝度を弱めたり、肉眼に有害な紫外線・赤外線・レーザ光線などの影響を弱めたり遮断したりする機能(サングラスやレーザ防護眼鏡の機能)をアイグラスディスプレイに搭載することができる。
また、外界光束を遮光/開放する遮光マスク(シャッター)などの機構を設け、観察者が必要に応じて表示画面に没入できるようアイグラスディスプレイを構成することもできる。」

(カ)図1は次のものである。

(キ)図2は次のものである。

(ク)上記(ア)及び(ウ)によれば、引用文献1はアイグラスディスプレイを提供することを目的とし、その部材の製造方法が記載されていることから、引用文献1にはアイグラスディスプレイを提供する方法が記載されているといえる。

(ケ)上記(ア)?(ク)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。(括弧書きは、参考までに、記載の根拠を示したものである。以下同様。)

「アイグラスディスプレイを提供する方法であって、(上記(ク))
アイグラスディスプレイは、画像表示光学系1、画像導入ユニット2、ケーブル3などからなり、画像表示光学系1、画像導入ユニット2は、眼鏡のフレームと同様の支持部材4によって支持され、([0017])
画像表示光学系1は、眼鏡のレンズと同様の外形をしておりリム4bによって周囲から支持され、([0018])
画像導入ユニット2の内部には、映像信号に基づき映像を表示する液晶表示素子21と、液晶表示素子21の近傍に焦点を有した対物レンズ22とが配置され、([0019])
画像表示光学系1は、観察者の側から順に、基板13,11,12を密着して重ねて配置してなり、([0020])
基板13,11,12の各々は、外界から観察眼に向かう外界光束の少なくとも可視光成分に対し透過性を有した基板であり、([0020])
2つの基板13,12によって挟まれた基板11は、画像導入ユニット2から導入された表示光束Lを外界側の面11-1と観察者側の面11-2とで繰り返し内面反射する平行平板であり、([0020])
基板11の外界側に配置された基板12は、主に、基板11が内面反射する表示光束Lを観察者の方向に偏向する働きと、観察眼の視度補正をする働きの一部とを担い、([0021])
基板11の観察者側に配置された基板13は、観察眼の視度補正をする働きの一部を担い、([0021])
外界の像に対する観察眼の視度補正を主に基板12の外界側の面12-1の曲面形状の最適化により図り、表示画面の虚像に対する観察眼の視度補正を主に基板13の観察者側の面13ー2の曲面形状の最適化により図ることとしてもよく、([0056])
何れかの基板に、通電によって着色するエレクトロクロミック素子、その他の透過率が変化する素子を適用してもよい、([0092])
方法」

イ 引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【0001】
本発明は、眼鏡レンズの装用者に、眼科的視覚および追加的視覚を含む少なくとも2つの種類の視覚を提供する、眼鏡レンズの製造方法に関する。」

(イ)「【0009】
図1aおよび1bは、このような、眼科的視覚および追加的視覚を提供する眼鏡レンズの原理を示す図である。この眼鏡レンズは、挿入物2が内部に配置された基本レンズ1を有している。基本レンズ1は、透明且つ屈折性の材料から構成されている。この材料は、眼科分野において使用される任意の有機材料または鉱物性材料であってよい。基本レンズ1は、凸状の前面FAおよび凹状の後面FPを有している。これらの面FAおよび面FPは、それぞれ、曲率を有している。これらの各曲率と、基本レンズ1の屈折媒体の光の屈折率の値とにより、眼科的視覚のための、眼鏡レンズの、挿入物2の外部の光出力が決定される。この光出力は、装用者がレンズを通して見る様々な方向において、変動し得る。
【0010】
挿入物2は、基本レンズ1の面FAと面FPとの間に位置する比較的薄い光導体であってよい。挿入物2は、基本レンズ1とは異なる光反射性および/または屈折特性を有していてよく、詳細には示されていないソース3からの追加的光VSをもたらすために適した光反射性および/または屈折特性を有していてよい。こうして、光VSは、装用者の眼の方を向いた挿入物出力ウィンドウFSにもたらされる。挿入物2の構造は、本明細書の対象ではなく、当該対象について入手可能な他の文献が参照され得る。概して、基本レンズ1は、挿入物2と前面FAとの間に前部1a、および、挿入物2と後面FPとの間に後部1pを有していてよい。挿入物2はまた、基本レンズ1の区域内において、面FAおよび面FPにほぼ平行である特定の方向に横方向に制限されていてもよい。このような構成では、基本レンズ1の前部1aおよび後部1pは、挿入物2の周辺端部2bを越えてのびている。従って、基本レンズ1は、挿入物2のエッジ2bを超えてのびると共に、部分1aおよび1bを連続的に基本レンズ1の周辺端部Bに連結させる中間部1bを有している。基本レンズ1のエッジは、例えば、60mm(ミリメートル)の直径を有する円状であってよい。」

(ウ)「【0016】
図2a?2dおよび図3a?3dは、本発明を実施せずに製造された、2つの眼科的視覚および追加的視覚を有する眼鏡レンズに関する。
・・・(中略)・・・
【0021】
従って、図2a?2dおよび図3a?3dは、これら2つのレンズの光学収差が、水平面および垂直面の両方において、眼科的視界および追加的視界を減少させることを示している。この視界の減少は、特に眼鏡フレーム内のレンズのハウジングの寸法が大きい場合に、特に眼科的視覚にとって、不利となる。また、追加的視界の減少は、広い出力ウィンドウを有する挿入物の使用を妨げる。
【0022】
従って、本発明の目的は、装用者に両方の視覚を提供するように意図されると共に、上述の欠点が低減された、眼鏡レンズを提供することにある。
【0023】
特に、本発明の一目的は、このような眼鏡レンズの視界、すなわち眼科的視界および追加的視界を増大させることにある。
【0024】
このため、本発明は、上述の少なくとも2つの種類の視覚を有する眼鏡レンズを製造する方法を提案する。この方法は、次の連続するステップを含む。
(1)レンズの装用者の眼科的処方を得るステップ、
(2)上記眼科的処方、および追加的画像の位置から、追加的視覚のための追加的処方を決定するステップ、
(3)上記ステップ(2)において決定された追加的処方に対応するレンズの後面用の少なくとも1つの曲率値を、追加的処方点において決定するステップ、
(4)上記ステップ(1)において得られた眼科的処方、および、上記ステップ(3)において決定されたレンズの後面の曲率値に応じて、レンズの前面用の少なくとも1つの曲率値を、眼科的処方点において決定するステップ、
(5)少なくとも、挿入物の出力ウィンドウに相当する上記後面の区域(Z)の内部において、レンズの後面の値を算出するステップであって、上記後面の区域が、上記ステップ(2)において決定された追加的処方に対応する追加的視覚用の補正を生成するように設計されたステップ、
(6)レンズの前面の値を算出するステップであって、レンズの後面が、上記ステップ(5)において算出された値を有している時に、レンズが、上記ステップ(1)において得られた眼科的処方に対応する眼科的視覚用の補正を生成するように設計されたステップ、および、
(7)各ステップ(5)および(6)においてそれぞれ算出された前面および後面用の値を有する、眼鏡レンズを製造するステップ。」

(エ)FIG.1aは次のものである。

(オ)FIG.1bは次のものである。

(カ)上記(ア)?(ウ)に記載された「眼鏡レンズ」が、眼鏡に使用されるものであることは明らかである。

(キ)上記(ア)?(カ)から、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「眼鏡に使用する眼鏡レンズの製造方法であって、(【0001】、上記(カ))
この眼鏡レンズは、挿入物2が内部に配置された基本レンズ1を有し、(【0009】)
基本レンズ1は、凸状の前面FAおよび凹状の後面FPを有し、(【0009】)
これらの面FAおよび面FPは、それぞれ、曲率を有し、(【0009】)
これらの各曲率と、基本レンズ1の屈折媒体の光の屈折率の値とにより、眼科的視覚のための、眼鏡レンズの、挿入物2の外部の光出力が決定され、(【0009】)
挿入物2は、ソース3からの追加的光VSをもたらすために適した光反射性および/または屈折特性を有していてよく、光VSは、装用者の眼の方を向いた挿入物出力ウィンドウFSにもたらされるものであって、(【0010】)
次に示す連続ステップである、(【0024】)
(1)レンズの装用者の眼科的処方を得るステップ、(【0024】)
(2)上記眼科的処方、および追加的画像の位置から、追加的視覚のための追加的処方を決定するステップ、(【0024】)
(3)上記ステップ(2)において決定された追加的処方に対応するレンズの後面用の少なくとも1つの曲率値を、追加的処方点において決定するステップ、(【0024】)
(4)上記ステップ(1)において得られた眼科的処方、および、上記ステップ(3)において決定されたレンズの後面の曲率値に応じて、レンズの前面用の少なくとも1つの曲率値を、眼科的処方点において決定するステップ、(【0024】)
(5)少なくとも、挿入物の出力ウィンドウに相当する上記後面の区域(Z)の内部において、レンズの後面の値を算出するステップであって、上記後面の区域が、上記ステップ(2)において決定された追加的処方に対応する追加的視覚用の補正を生成するように設計されたステップ、(【0024】)
(6)レンズの前面の値を算出するステップであって、レンズの後面が、上記ステップ(5)において算出された値を有している時に、レンズが、上記ステップ(1)において得られた眼科的処方に対応する眼科的視覚用の補正を生成するように設計されたステップ、および、(【0024】)
(7)各ステップ(5)および(6)においてそれぞれ算出された前面および後面用の値を有する、眼鏡レンズを製造するステップ(【0024】)
を含む、眼鏡レンズの製造方法」

ウ 引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
接着剤を介して複数の光学素子から形成される光学物品の製造方法に関する。」

(イ)「【0018】
次に、本実施形態にかかる光学物品の製造方法について、図3及び図4に基づいて説明する。
図3及び図4は本実施形態にかかる光学物品の製造方法の手順を示す概略図である。
[接着剤塗布工程]
まず、第1の光学素子11,21の一面に紫外線硬化型接着剤を塗布する。そのため、図3(A)に示される通り、回転テーブル101に第1の光学素子11,21を載置し、回転テーブル101の上部に配置されたノズル102から接着剤を第1の光学素子11,21の中心部に滴下する。
そして、スピンコート法により、第1の光学素子11,21の一面に滴下された接着剤を塗布する。そのため、図3(B)に示される通り、回転テーブル101を回転操作する。回転テーブル101に載置された第1の光学素子11,21が回転すると、第1の光学素子11,21の中心に滴下された接着剤が遠心力により径方向に押し広げられて接着層13が形成される。なお、図3(B)では、接着層13の形状を見やすくするために、中心部が盛り上がって表示されているが、実際は、中心から周縁にかけて平坦な接着層13が形成されている。
【0019】
[加温工程]
その後、第1の光学素子11,21に形成された接着層13を接着剤が硬化する温度よりも低く室温(25℃)より高い温度で加温する。そのため、図3(C)に示される通り、加温装置103に接着層13が形成された第1の光学素子11,21を投入する。
この加温装置103はホットプレートの構造である。加温装置103は、第1の光学素子11,21を配置する平板部材106と、この平板部材106を加熱する加熱源(図示せず)とを備えたものであり、平板部材106の表面温度が所定温度、例えば、60℃を維持するように設定される。
所定温度が60℃に設定された加温装置103に接着層13が形成された第1の光学素子11,21を3分?5分投入することで、接着層13は50±3℃まで加温される。なお、接着層13の加温温度は、第1の光学素子11,21の大きさや厚さ、加温時間、その他の条件により変わるが、例えば、加温時間が3分である場合では、加温装置103の内部温度が40℃以下や80℃以上では、十分な効果を得ることができなかった。
【0020】
[押合工程]
第1の光学素子11,21に形成された接着層13の上に第2の光学素子12,22を貼り合わせて次に主面同士を押し合わせる。そのため、図4(D)に示される通り、貼合装置107の内部に接着層13が形成された光学素子11,21を投入する。
この貼合装置107は、内部が真空状態とされたケース108と、このケース108に配置され第1の光学素子11,21を昇降させる昇降テーブル109と、この昇降テーブル109の上部に配置される第2の光学素子12,22を保持する図示しない保持部とを備えている。
【0021】
図4(D)に示される通り、予め、第2の光学素子21,22をケース108にセットしておき、昇降テーブル109に第1の光学素子11,21を配置し、その後、図4(E)に示される通り、昇降テーブル109を上昇させる。すると、第1の光学素子11,21と第2の光学素子21,22とが接着剤で互いに貼り合わされ、さらに、互いの主面同士を押し合わせる。この際、第1の光学素子11,21と第2の光学素子12,22との互いに対向する主面(接着面)は平行度が保たれている状態とする。
[硬化工程]
押し合わされた第1の光学素子11,21と第2の光学素子12,22とを貼合装置107から取り出し、接着剤を硬化する。
そのため、図4(F)に示される通り、第1の光学素子11,21を通じて接着層13に紫外線を照射して接着剤を硬化させる。紫外線の照射条件は従来と同じである。これにより、光学物品1,2が製造される。
【0022】
従って、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)第1の光学素子11,21に光学接着剤を塗布して接着層13を形成し、塗布された接着剤からなる接着層13の上に第2の光学素子12,22を貼り合わせて押し合わせ、押し合わされた第1の光学素子11,21と第2の光学素子12,22との間の接着剤を硬化させて光学物品1,2を製造する。そして、接着層13を介して第1の光学素子11,21と第2の光学素子12,22とを貼り合わせる前に第1の光学素子11,21に塗布された接着剤を、接着剤が硬化する温度よりも低く室温より高い温度で加温する。そのため、接着剤を前述の温度で加温することで、接着剤の流動性が向上する。すると、接着剤13と光学素子11,21との間の界面、および接着剤と光学素子12,22との間の界面、これらにおける残留応力の偏在化が緩和される。この温度範囲よりも高いと接着剤13の硬化が進行し、流動性が低下する。逆にこの温度範囲よりも低い場合は流動性が不十分である。従って、この温度範囲であれば、接着剤が光学素子11,21又は光学素子12、22の主面に沿って形状の変形が容易におこなわれ、主面内の接着剤の厚み分布が均一となって、波面収差等の光学特性が改善される。」

(ウ)図3は次のものである。

(エ)図4は次のものである。

エ 引用文献5には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品の製造方法、光学部品に関する。」

(イ)「【0026】
次に、カバーガラス基板422上面(レンズ基板421との対向面)の基準位置、すなわち、カバーガラス基板422上面の幾何学的中心位置の一点に、シリンジ35から接着剤Sを滴下する(接着剤塗布工程、処理S3)。
接着剤Sの滴下量は、例えば、カバーガラス基板422一枚に対し、0.5gである。滴下された接着剤Sは直径30mm程度の大きさとなる。
なお、接着剤Sの滴下量は、前述した量に限らず、レンズ基板421とカバーガラス基板422との間の寸法や、レンズ基板421やカバーガラス基板422の大きさ等に応じて適宜設定することが好ましい。
また、図4に示すように、予めカバーガラス基板422上面の外周部には、ビーズ状のギャップ材422Aを等間隔で設置しておく。例えば、径が7μm程度のギャップ材422Aを10個配置する。
カバーガラス基板422上に滴下された接着剤Sは、酸素との反応が進行し、表面に変質した部分SXが形成されることとなる(図5参照)。
【0027】
次に、接着剤Sが塗布されたカバーガラス基板422を、搬送手段34の吸着プレート341に吸着させ、図5に示すように、チャンバー33のホットプレート332上に設置する。なお、このホットプレート332も30℃以上、70℃以下、好ましくは、50℃前後に加熱されている。
さらに、搬送手段34の吸着プレート341にレンズ基板421を吸着させ、チャンバー33内に搬送する。そして、図6に示すように、レンズ基板421をホットプレート332上面から突出した可動ピン332A上に設置する。なお、このとき、レンズ基板421のマイクロレンズアレイが形成された面をカバーガラス基板422に対向させて設置する。
【0028】
次に、チャンバー33内を真空状態とする。具体的には、30?500秒程度、図示しない真空ポンプを駆動して、チャンバー33内の空気を排出する。
そして、図7に示すように、加圧プレート331を下降させて、レンズ基板421及びカバーガラス基板422を加圧プレート331及びホットプレート332で挟持する。この際、可動ピン332Aは、ホットプレート332内部に没入する。
さらに、接着剤Sの一部、すなわち、酸素により変質した部分SXがレンズ基板421及びカバーガラス基板422の光束透過範囲の外周部の外側にはみ出すまで、接着剤Sを押し広げる。本実施形態では、レンズ基板421及びカバーガラス基板422の全面が光束透過範囲となるので、レンズ基板421及びカバーガラス基板422の外周縁から外側にはみ出すまで、接着剤Sを押し広げる(接着工程、処理S4)。
【0029】
ここで、加圧プレート331から、レンズ基板421及びカバーガラス基板422に対して加えられる圧力は、例えば0.1kg/cm^(2)以上、2.0kg/cm^(2)以下であり、特に好ましくは、0.5kg/cm^(2)である。
また、加圧プレート331及びホットプレート332により、レンズ基板421及びカバーガラス基板422を挟持する時間は、60秒以上、180秒以下が好ましい。
その後、チャンバー33内から、接着されたレンズ基板421及びカバーガラス基板422を取り出し、UVを照射して、接着剤Sを硬化させる(硬化工程、処理S5)。これにより、図8及び図9(A)に示すように、大型の対向基板42が完成する。」

(ウ)図5は次のものである。

(エ)図6は次のものである。

(オ)図7は次のものである。

オ 引用文献6には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「(産業上の利用分野)
この発明は、曲面積層体を接着、製造する積層接着装置に関する。」(第2欄8行ー9行)

(イ)「 一方、製品チャンバー25内はそのまま真空状態に保持する。この状態は第2図中C3の部分で示される。これにより、上部ダイアフラム17を第1図の破線で示すように変形させて、積層体26を加圧する。
次に、各チャンバー18,22,25内を真空状態に保持した後に、赤外線ヒータ37,38に電源から電流を流して、積層体26を上側および下側の両方向から輻射熱で加熱する。この場合、中間膜28,30により透明ガラス27とフッ素フィルム31との間で太陽電池素子30が融着するまで加熱を続ける。すなわち、150℃の温度で約10分?60分間加熱する。この状態を第2図中の折れ線Dで示す。」。」(第11欄4行ー17行)

(ウ)第1図は次のものである。

カ 引用文献7には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「[0061]・・・(中略)・・・The display includes a light guide optical element 112, opacity filter 114, see-through lens 116 and see-through lens 118. In one embodiment, opacity filter 114 is behind and aligned with see-through lens 116, lightguide optical element 112 is behind and aligned with opacity filter 114, and see-through lens 118 is behind and aligned with lightguide optical element 112. See-through lenses 116 and 118 are standard lenses used in eye glasses and can be made to any prescription (including no prescription).」
(仮訳:[0061]・・・(中略)・・・ディスプレイは、光ガイド光学要素112、不透明フィルタ114、シースルーレンズ116およびシースルーレンズ118を含む。一実施形態では、不透明度フィルタ114は、シースルーレンズ116の後ろにあり、シースルーレンズ116と位置合わせされる。光ガイド光学要素112は、不透明フィルタ114の後ろにあり、不透明フィルタ114と位置合わせされる。シースルーレンズ118は、光ガイド光学要素112の後ろに位置合わせされ、光ガイド光学要素112と位置合わせされる。シースルーレンズ116および118は、眼鏡に使用される標準レンズであり、任意の処方(処方なしを含む)に対して行うことができる。)

(イ)「[0066] Opacity filter 114, which is aligned with light guide optical element 112, selectively blocks natural light, either uniformly or on a per-pixel basis, from passing through light guide optical element 112. In one embodiment, the opacity filter can be a see-through LCD panel, electro chromic film, PDLC ( Polymer dispersed Liquid Crystal ) or similar device which is capable of serving as an opacity filter. Such a see-through LCD panel can be obtained by removing various layers of substrate, backlight and diffusers from a conventional LCD. The LCD panel can include one or more light-trans missive LCD chips which allow light to pass through the liquid crystal. Such chips are used in LCD projectors, for instance.」
(仮訳:[0066]光ガイド光学素子112と整列された不透明フィルタ114は、自然光が光ガイド光学素子112を通過するのを均一にまたはピクセルごとに選択的に遮断する。一実施形態では、不透明フィルタは、不透明フィルタとして機能する、透過LCDパネル、エレクトロクロミック膜、PDLC(ポリマー分散液晶)または同様の装置とすることができる。このような透過LCDパネルは、従来の液晶表示装置から、基板、バックライトおよび拡散器の様々な層を除去することにより得ることができる。LCDパネルは、光が液晶を通過することを可能にする1つ以上の光透過性LCDチップを含むことができる。このようなチップは、LCDプロジェクタにおいて使用される。)

(ウ)FIG.3Aは次のものである。

キ 引用文献8には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は電気活性レンズを製造する効率的な方法に関する。」

(イ)「【0035】
再び図7Aに参照して、前側レンズウェハー930の凸状表面の反対側の表面と後側レンズウェハー900の凹状表面の反対側の表面の一方または両方に溝が形成されてよい。あるいは、溝は、製造時などに前もって作られていて、レンズウェハー900、930にすでに存在していてもよい。図7Aは、前側レンズウェハー930の凸状表面の反対側の表面に単一の溝940を有する前側レンズウェハー930を示している。電気活性素子910と可撓性導電性バス920は後側レンズウェハー900と前側レンズウェハー930の間に置かれ、電気活性素子910と可撓性導電性バス920は溝940内にはまるように位置している。ステップ1030に記載されるように、前側レンズウェハー930と後側レンズウェハー900は屈折率整合接着剤で一体に接着されて電気活性レンズを作る。」

(ウ)図7Aは次のものである。

ク 引用文献9には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はヘッドマウントディスプレイやヘッドアップディスプレイ等の画像表示装置に係り、特にリップマンブラッグ体積ホログラムシートを眼鏡レンズ内に設けることにより、眼鏡本来の機能を維持したまま拡大表示像と眼鏡レンズ越しの透過背景像とを融合してみることができるディスプレイ眼鏡に関する。」

(イ)「【0045】前記HOEシート27とレンズとの取り付けは、例えば図7に図示するように眼鏡のレンズ34a,34bを貼り合わせることにより行い、その間にホログラムシート27a(厚さ数ミクロン?数十ミクロン)を挟み込むという方法が考えられる。この場合、レンズ34a,34bどうしの接合にはUV硬化接着剤41などによる接着や、バイフォーカルレンズなどで使用されている融着などが考えられる。」

(ウ)図7は次のものである。

ケ 引用文献10には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡型画像表示装置及び画像表示装置付き眼鏡に関し、特に、瞳孔の瞳分割によってシースルーした外界像と重畳して電子像を表示可能な眼鏡型画像表示装置とそのような画像表示装置を取り付けた眼鏡に関するものである。」

(イ)「【0033】
そして、本発明に基づいて、図5(b)に示すように、この眼鏡レンズ20Rに切り込まれた横溝30に接眼窓4が眼鏡の装着者の眼球に対向するように表示バー10を位置調節しながら挿入して、この場合は、透明接着材等を用いて眼鏡レンズ20Rに一体に表示バー10を固定する。」

(ウ)図5は次のものである。

コ 引用文献11には、図面とともに、次の記載がある。

(ア)「[0005] This invention concerns an ergonomic optical see-through head mounted display (OST-HMO) device with an eyeglass-form appearance and freeform optical systems for use as an optical viewing device in such display devices.」
(仮訳:[0005]本発明は、人間工学に基づいた眼鏡型光学シースルーヘッドマウントディスプレイ(OST-HMO)デバイス、およびそのようなディスプレイデバイスの光学観察デバイスとして使用するための自由形状の光学システムに関する。)

(イ)「[0059]・・・(中略)・・・Index matching glue can fill in the air gap 195 to cement the compensation lens 160 with the waveguide prism 100 if there is no TIR requirement on the outer surface 125 of the waveguide prism 100.」
(仮訳:[0059]・・・(中略)・・・導波路プリズム100の外面125にTIR条件がない場合、屈折率整合接着剤は、エアギャップ195を埋めて、補償レンズ160を導波路プリズム100と接合することができる。)

(ウ)Figure1は次のものである。

(3)対比・判断
ア 引用発明1を主引用発明としたとき
(ア)対比
本願発明と引用発明1を対比する。

a 本願発明の「装着者に適合化された頭部装着型光学系を提供する方法であって、」との特定事項について
引用発明1の「観察者」は本願発明の「装着者」に相当する。
また、引用発明1の「アイグラスディスプレイ」は「画像表示光学系1、画像導入ユニット2、ケーブル3など」を備え、「観察者」の頭部に装着されるから、引用発明1の「アイグラスディスプレイ」は本願発明の「頭部装着型光学系」に相当する。
さらに、引用発明1の「画像表示光学系1」は「観察者の側から順に、基板13,11,12」を備え、「基板12」は「観察眼の視度補正をする働きの一部」「を担い」、「基板13」は「観察眼の視度補正をする働きの一部を担」うことから、引用発明1の「アイグラスディスプレイ」は「観察者」に適合化されたものといえる。
そして、引用発明1は「アイグラスディスプレイを提供する方法」である。
したがって、引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備える。

b 本願発明の「- 能動機能を有する光学系が提供される光学系提供工程(S1)と、」との特定事項について
引用発明1において、少なくとも「画像導入ユニット2から導入された表示光束Lを外界側の面11-1と観察者側の面11-2とで繰り返し内面反射する平行平板であ」る「基板11」は、光学系を構成しているといえる。そして、引用発明1が、上記光学系が提供される工程を備えることは明らかである。
したがって、引用発明1は、本願発明の上記特定事項のうち、「光学系が提供される光学系提供工程(S1)と、」との特定事項を備える。

c 本願発明の「- 少なくとも前記装着者の処方箋を含む装着者データが提供される装着者データ提供工程(S2)と、」との特定事項について
引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備えない。

d 本願発明の「- 前記光学系が透明カプセル内に少なくとも部分的に封入される封入工程(S8)と、」との特定事項について
本願発明の「封入」の意味について、本願明細書には特段の定義がなされておらず、当該用語について、広辞苑(第6版)によれば、「封入」は『入れて封じること。封じ込むこと。』の意味であり、上記「封じる」は『閉じ込める』の意味であるから、本願発明の「封入」は、『入れて閉じ込めること。』程度の意味と解される。
一方、引用発明1の「基板13,11,12」は「密着して重ねて配置」されるところ、「基板12」と「基板13」は、「可視光成分に対し透過性を有した基板であり」、光学系を構成する「基板11」を「挟」みこむものであるから、「基板11」は「基板12」と「基板13」からなる部材の内部に『入れ』られており、「基板12」と「基板13」からなる部材は「基板11」を少なくとも部分的に『閉じ込め』ているということができる。そうすると、引用発明1の「基板12」と「基板13」とからなる部材と本願発明の「透明カプセル」は、光学系を少なくとも部分的に封入する透明部材である点で一致しているといえる。また、引用発明1が「基板12」と「基板13」とからなる部材に「基板11」を封入する工程を備えることは明らかである。
したがって、引用発明1は、本願発明の上記特定事項のうち、「- 前記光学系が」透明部材「内に少なくとも部分的に封入される封入工程(S8)と、」との特定事項を備える。

e 本願発明の「- 前記光学系の少なくとも1つの面又は前記透明カプセルの1つの面(32、34)がそれぞれ前記装着者データに従ってカスタム化されるカスタム化工程(S9)とを含み、」との特定事項について
引用発明1の「基板12の外界側の面12-1の曲面形状」は「外界の像に対する観察眼の視度補正」のために「最適化」され、「基板13の観察者側の面13-2の曲面形状」は「表示画面の虚像に対する観察眼の視度補正」のために「最適化」されるところ、上記「視度補正」が「観察者」のデータに基づいて行われることは明らかであるから、引用発明1の「基板12の外界側の面12-1」と「「基板13の観察者側の面13-2」は「観察者」のデータに基づいて「最適化」されるものといえる。
よって、引用発明1の「基板12の外界側の面12-1」又は「基板13の観察者側の面13-2」は本願発明の「1つの面(32、34)」に相当し、引用発明1の「最適化」は本願発明の「カスタム化」に相当する。
したがって、引用発明1は、本願発明の上記特定事項のうち、「- 前記光学系の少なくとも1つの面又は前記」透明部材「の1つの面(32、34)がそれぞれ前記装着者データに従ってカスタム化されるカスタム化工程(S9)とを含み、」との特定事項を備える。

f 本願発明の「前記光学系は、前記光学系と前記透明カプセルの少なくとも1つの基板とを密着して積層することにより前記透明カプセル内に少なくとも部分的に封入され、接着剤により一体化され、」との特定事項について
上記dで説示したとおり、引用発明1の「基板13,11,12」は「密着して重ねて配置」されるところ、光学系を構成する「基板11」は、「基板12」と「基板13」とからなる部材に封入されるといえる。そうすると、引用発明1の「基板12」又は「基板13」は、本願発明の「少なくとも1つの基板」に相当する。
したがって、引用発明1は、本願発明の上記特定事項のうち、「前記光学系は、前記光学系と前記」透明部材「の少なくとも1つの基板とを密着して積層することにより前記」透明部材「内に少なくとも部分的に封入され、」との特定事項を備える。

g 本願発明の「前記光学系は、光導波路光学素子を備え、」との特定事項について
引用発明1の光学系を構成する「基板11」は、「画像導入ユニット2から導入された表示光束Lを外界側の面11-1と観察者側の面11-2とで繰り返し内面反射する平行平板であ」るから、本願発明の「光導波路光学素子」に相当する。
したがって、引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備える。

h 本願発明の「前記封入工程(S8)は、次の副工程: -少なくとも一滴の接着剤又は接着剤膜が透明カプセルの面上に及び/又は前記光導波路光学素子の面の1つの面上に堆積される接着剤堆積工程と、 -透明カプセルの面と対向する前記光導波路光学素子の面との間に接着剤の層を形成するために力が透明カプセル及び/又は前記光導波路光学素子に印加される力印可工程と、 -前記光導波路光学素子と透明カプセルが接着剤により一体化される接着工程と、を含む」との特定事項について
引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備えない。

i 本願発明の「方法。」との特定事項について
引用発明1は、本願発明の上記特定事項を備える。

j 以上a?iにより、本願発明と引用発明1は、下記の点で一致している。

[一致点]
「 装着者に適合化された頭部装着型光学系を提供する方法であって、
- 光学系が提供される光学系提供工程(S1)と、
- 前記光学系が透明部材内に少なくとも部分的に封入される封入工程(S8)と、
- 前記光学系の少なくとも1つの面又は前記透明部材の1つの面(32、34)がそれぞれ装着者データに従ってカスタム化されるカスタム化工程(S9)とを含み、
前記光学系は、前記光学系と前記透明部材の少なくとも1つの基板とを密着して積層することにより前記透明部材内に少なくとも部分的に封入され、
前記光学系は、光導波路光学素子を備える、
方法。」

他方、本願発明と引用発明1は、次の点で相違する。

[相違点1]
「光学系」が、本願発明においては「能動機能を有する」のに対し、引用発明1においては能動機能を有するのか定かでない点

[相違点2]
本願発明においては、「- 少なくとも前記装着者の処方箋を含む装着者データが提供される装着者データ提供工程(S2)」を備えるのに対し、引用発明1においては、そのような工程を備えるのか定かでない点

[相違点3]
透明部材が、本願発明においては「透明カプセル」であるのに対し、引用発明1においては「基板12」と「基板13」からなる部材である点

[相違点4]
「光学系」と透明部材が、本願発明においては「接着剤により一体化」されるのに対し、引用発明1においては、接着剤で一体化されるのか不明である点

[相違点5]
「封入工程(S8)」が、本願発明においては、「次の副工程:
-少なくとも一滴の接着剤又は接着剤膜が透明カプセルの面上に及び/又は前記光導波路光学素子の面の1つの面上に堆積される接着剤堆積工程と、
-透明カプセルの面と対向する前記光導波路光学素子の面との間に接着剤の層を形成するために力が透明カプセル及び/又は前記光導波路光学素子に印加される力印可工程と、
-前記光導波路光学素子と透明カプセルが接着剤により一体化される接着工程」を有するのに対し、引用発明1は、そのような構成を有しない点

(イ)判断
a 相違点1について
(a)相違点1に係る「能動機能」について、本願明細書の[0216]には「・・・能動機能は、次のものからなる群から選択された少なくとも1つ又は複数の能動機能を含み得る: - 表示情報機能 - エレクトロクロミック機能 - フォトクロミック機能 - 偏光機能 - 防曇機能 - 着色機能。」と記載され、[0219]には「上に列挙されたいくつかの能動機能は、光学インサート16の主面20、22の一方又は両方・・・追加され得る。」と記載されていることに鑑みれば、「能動機能を有する」「光学系」とは、「光学インサート16の主面20、22の一方又は両方」に、「- 表示情報機能 - エレクトロクロミック機能 - フォトクロミック機能 - 偏光機能 - 防曇機能 - 着色機能」の「少なくとも1つ又は複数」が「追加され」たものを指すと解される。

(b)一方、引用発明1は「何れかの基板に、通電によって着色するエレクト口クロミック素子、その他の透過率が変化する素子を適用してもよい」ものであるところ、上記「何れかの基板」は「基板13,11,12」のいずれかを指し、上記「通電によって着色するエレクト口クロミック素子、その他の透過率が変化する素子」は上記(a)に照らし能動素子といえるものであるから、引用発明1は「基板13,11,12」のいずれかに対して上記能動素子を「適用」することができるものである。そうすると、引用発明1において、光学系を構成する「基板11」に対して上記能動素子を「適用」することは、当業者であるなら適宜なし得たことである。
さらに、引用文献7には、「シースルーレンズ116」と「シースルーレンズ118」とによって挟みこまれた「光ガイド光学素子112」に、「不透明フィルタ114」を隣接して配置した点について記載されている。ここで、「シースルーレンズ116」と「シースルーレンズ118」とからなる部材及び「光ガイド光学素子112」は、それぞれ、本願発明の「透明カプセル」及び「光導波路光学素子」に相当し、上記「不透明フィルタ114」は「透過LCDパネル、エレクトロクロミック膜、PDLC(ポリマー分散液晶)または同様の装置」であるから、上記(a)に照らし能動素子といえるものである。
そうすると、引用文献7には、引用発明1の「基板11」に相当する部材(「光ガイド光学素子112」)に対して、能動機能を隣接して配置する点について記載されているといえるから、この点からみても、引用発明1において、引用文献7に記載された技術的事項を参酌して、「基板11」に対して能動素子を隣接して配置することは、当業者であるなら適宜なし得たことといえる。

b 相違点2について検討する。
引用発明1において「視度補正」を行う際、「観察者」のデータが必要となることは明らかである(上記(ア)e)から、引用発明1において、「観察者」のデータを提供する工程を設けることに困難は認められない。また、一般に眼鏡による装着者の視度補正が眼科医の処方に基づくものであることに鑑みれば、引用発明1において「観察眼の視度補正」を行う際、「観察者」の上記データとして少なくとも「観察者」の処方箋を含むものとすることにも困難は認められない。
そうすると、引用発明1において上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者であるなら容易に想到しうる。

c 相違点3について
引用発明1の「基板12」と「基板13」からなる部材は、光学系を構成する「基板11」を少なくとも部分的に封入するものである(上記(ア)d)ところ、引用文献8、9に開示されるように、光学系を構成する部材(引用文献8においては「電気活性素子910」、引用文献9においては「ホログラムシート27a」)を、合わせると容器(カプセル)状となるような2つの基板(引用発明8においては「レンズウェハー900、930」、引用文献9においては「レンズ34a,34b」)の間に封入することは周知である。
そうすると、引用発明1において、「基板12」と「基板13」を合わせた際に容器形状(本願発明の「カプセル」に相当)となるように構成することは、当業者であるなら容易に想到しうる。

d 相違点4について
引用文献8には、レンズを構成する「前側レンズウェハー930」と「後側レンズウェハー900」との間に「電気活性素子」(本願発明の「光学系」に相当)を配置し、「前側レンズウェハー930」と「後側レンズウェハー900」を「屈折率整合接着剤で一体に接着」する点が記載されている。
引用文献9には、レンズを構成する「眼鏡のレンズ34a,34b」の間に「ホログラムシート27a」(本願発明の「光学系」に相当)を配置し、「レンズ34a,34bどうしの接合」を「UV硬化接着剤41などによる接着」とした点が記載されている。
引用文献10には、「表示バー10」(本願発明の「光学系」に相当)を「透明接着材等を用いて眼鏡レンズ20Rに一体に」「固定」する点が記載されている。
引用文献11には、レンズを構成する「補償レンズ160」と「導波路プリズム100」(本願発明の「光学系」に相当)を「屈折率整合接着剤」で「接合」する点が記載されている。
以上によれば、光学系とレンズとを接着剤によって一体化することは周知である。そうすると、引用発明1において、「基板11」と、「基板12」と「基板13」とからなる部材を接着剤で一体化することに困難は認められない。

e 相違点5について
引用文献4ないし6は、何れも光学部品の製造方法に関するものであり、それぞれ、以下の開示が認められる。
引用文献4には、「接着剤を第1の光学素子11,21の中心部に滴下する」「接着剤塗布工程」(本願発明の「接着剤堆積工程」に相当)、及び、「第1の光学素子11,21と第2の光学素子12,22とを貼合装置107から取り出し、接着剤を硬化する」「硬化工程」(本願発明の「接着工程」に相当)について記載されている。
引用文献5には、「カバーガラス基板422上面の幾何学的中心位置の一点に、シリンジ35から接着剤Sを滴下する」「接着剤塗布工程」(本願発明の「接着剤堆積工程」に相当)、「レンズ基板421及びカバーガラス基板422の外周縁から外側にはみ出すまで、接着剤Sを押し広げる」「接着工程」(本願発明の「力印可工程」に相当)、及び、「接着されたレンズ基板421及びカバーガラス基板422を取り出し、UVを照射して、接着剤Sを硬化させる」「硬化工程」(本願発明の「接着工程」に相当)について記載されている。
引用文献6には、「積層体26を加圧する」工程、及び、「中間膜28,30により透明ガラス27とフッ素フィルム31との間で太陽電池素子30」を「融着」させる工程(本願発明の「接着工程」に相当)について記載されている。
以上によれば、本願発明の「接着剤堆積工程」、「力印可工程」及び「接着工程」は、いずれも光学部品を接着剤によって一体化する際の周知の工程であり、引用文献5のように、これら全てを備えた、接着剤による一体化の工程も周知であるといえる。そうすると、引用発明1において、「基板11」と、「基板12」と「基板13」とからなる部材を接着剤で一体化する際に、これら全ての工程を採用することは当業者であるなら容易に想到しうる。

f よって、引用発明1において、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、相違点1ないし5に係る構成を得ることに困難はない。

g 以上によれば、本願発明は、引用発明1において、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

h 本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用発明1、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術から予測し得る程度のものであって格別なものということはできない。

i 請求人の主張について
上記第2で説示したように令和2年7月27日にされた手続補正は却下されているから、令和2年3月3日提出の意見書における本願発明に対する請求人の主張について検討する。
請求人は上記意見書の「(3)」において、引用文献1ないし11には本願発明の「前記光学系は、光導波路光学素子を備え、前記封入工程(S8)は、次の副工程:-少なくとも一滴の接着剤又は接着剤膜が透明カプセルの面上に及び/又は前記光導波路光学素子の面の1つの面上に堆積される接着剤堆積工程と、-透明カプセルの面と対向する前記光導波路光学素子の面との間に接着剤の層を形成するために力が透明カプセル及び/又は前記光導波路光学素子に印加される力印可工程と、-前記光導波路光学素子と透明カプセルが接着剤により一体化される接着工程と、を含む」について記載も示唆もなく、引用文献1ないし11から当業者が容易に想到しえたものでない旨主張する。
しかしながら、引用発明1の「基板11」は本願発明の「光導波路光学素子」に相当し(上記(ア)g)、本願発明の上記「副工程」は引用文献4ないし6によれば周知技術である(上記e)から、本願発明は、引用発明1において、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである(上記f、g)。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(ウ)小括
したがって、本願発明は、引用発明1において、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

イ 引用発明2を主引用発明としたとき
(ア)対比
本願発明と引用発明2を対比する。

a 本願発明の「装着者に適合化された頭部装着型光学系を提供する方法であって、」との特定事項について
引用発明2の「装用者」は本願発明の「装着者」に相当する。
また、引用発明2の「眼鏡レンズ」は「ソース3からの追加的光VSをもたらすために適した光反射性および/または屈折特性を有」する「挿入物2」を備え、「装用者」の頭部に装着されるから、引用発明2の「眼鏡」は本願発明の「頭部装着型光学系」に相当する。
さらに、引用発明2の「眼鏡レンズ」は、「装用者」の「眼科的視覚のため」に「挿入物2の外部の光出力が決定され」ることから、引用発明2の「眼鏡」は「装用者」に適合化されたものといえる。
そして、引用発明2は「眼鏡に使用する眼鏡レンズの製造方法」である。
したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備える。

b 本願発明の「- 能動機能を有する光学系が提供される光学系提供工程(S1)と、」との特定事項について
引用発明2において、少なくとも「挿入物2」は「ソース3からの追加的光VSをもたらすために適した光反射性および/または屈折特性を有」するから、光学系を構成しているといえる。そして、引用発明2が、上記光学系が提供される工程を備えることは明らかである。
したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項のうち、「光学系が提供される光学系提供工程(S1)と、」との特定事項を備える。

c 本願発明の「- 少なくとも前記装着者の処方箋を含む装着者データが提供される装着者データ提供工程(S2)と、」との特定事項について
引用発明2は「(1)レンズの装用者の眼科的処方を得るステップ」を備える。
したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備える。

d 本願発明の「- 前記光学系が透明カプセル内に少なくとも部分的に封入される封入工程(S8)と、」との特定事項について
引用発明2の「基本レンズ1」は、「挿入物2」を「内部に配置」するものであるから容器状であるといえ、本願発明の「透明カプセル」に相当する。また、引用発明2の「基本レンズ1」は「挿入物2」を「内部に配置」するものであるところ、「基本レンズ1」は「挿入物2」を少なくとも部分的に『入れて閉じ込め』ているといえ、本願発明の「封入」の意味(上記ア(ア)d)に照らせば、「挿入物2」は「基本レンズ1」内に少なくとも部分的に封入されているといえる。さらに、引用発明2が「基本レンズ1」に「挿入物2」を封入する工程を備えることは明らかである。
したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備える。

e 本願発明の「- 前記光学系の少なくとも1つの面又は前記透明カプセルの1つの面(32、34)がそれぞれ前記装着者データに従ってカスタム化されるカスタム化工程(S9)とを含み、」との特定事項について
引用発明2は「(1)レンズの装用者の眼科的処方を得るステップ」に基づいて「レンズの後面の値」及び「レンズの前面の値」を定め、最終的に「眼鏡レンズを製造するステップ」に至るものである。
よって、引用発明2の「レンズの後面」又は「レンズの前面」は本願発明の「透明カプセルの1つの面」し、引用発明2の「眼鏡レンズを製造するステップ」は本願発明の「カスタム化」に相当する。
したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備える。

f 本願発明の「前記光学系は、前記光学系と前記透明カプセルの少なくとも1つの基板とを密着して積層することにより前記透明カプセル内に少なくとも部分的に封入され、接着剤により一体化され、」との特定事項について
引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備えない。

g 本願発明の「前記光学系は、光導波路光学素子を備え、」との特定事項について
引用発明2の光学系を構成する「挿入物2」は、「ソース3からの追加的光VSをもたらすために適した光反射性および/または屈折特性を有し」、「光VS」を「装用者の眼の方を向いた挿入物出力ウィンドウFSにもたら」すものであるから、本願発明の「光導波路光学素子」に相当する。
したがって、引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備える。

h 本願発明の「前記封入工程(S8)は、次の副工程: -少なくとも一滴の接着剤又は接着剤膜が透明カプセルの面上に及び/又は前記光導波路光学素子の面の1つの面上に堆積される接着剤堆積工程と、 -透明カプセルの面と対向する前記光導波路光学素子の面との間に接着剤の層を形成するために力が透明カプセル及び/又は前記光導波路光学素子に印加される力印可工程と、 -前記光導波路光学素子と透明カプセルが接着剤により一体化される接着工程と、を含む」との特定事項について
引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備えない。

i 本願発明の「方法。」との特定事項について
引用発明2は、本願発明の上記特定事項を備える。

j 以上a?iにより、本願発明と引用発明2は、下記の点で一致している。

[一致点]
「 装着者に適合化された頭部装着型光学系を提供する方法であって、
- 光学系が提供される光学系提供工程(S1)と、
- 少なくとも前記装着者の処方箋を含む装着者データが提供される装着者データ提供工程(S2)と、
- 前記光学系が透明カプセル内に少なくとも部分的に封入される封入工程(S8)と、
- 前記光学系の少なくとも1つの面又は前記透明カプセルの1つの面(32、34)がそれぞれ前記装着者データに従ってカスタム化されるカスタム化工程(S9)とを含み、
前記光学系は、光導波路光学素子を備える、
方法。」

他方、本願発明と引用発明2は、次の点で相違する。
[相違点6]
「光学系」が、本願発明においては「能動機能を有する」のに対し、引用発明2においては能動機能を有するのか定かでない点

[相違点7]
「封入工程」が、本願発明においては、「光学系」が「前記光学系と前記透明カプセルの少なくとも1つの基板とを密着して積層することにより」「接着剤により一体化され」るのに対し、引用発明2においては、そのような構成を備えない点

[相違点8]
「封入工程(S8)」が、本願発明においては、「次の副工程: -少なくとも一滴の接着剤又は接着剤膜が透明カプセルの面上に及び/又は前記光導波路光学素子の面の1つの面上に堆積される接着剤堆積工程と、 -透明カプセルの面と対向する前記光導波路光学素子の面との間に接着剤の層を形成するために力が透明カプセル及び/又は前記光導波路光学素子に印加される力印可工程と、 -前記光導波路光学素子と透明カプセルが接着剤により一体化される接着工程」を有するのに対し、引用発明2は、そのような構成を有しない点

(イ)判断
a 相違点6について
(a)上記ア(イ)a(a)で説示したように、本願発明でいう「能動機能を有する」「光学系」とは、「光学インサート16の主面20、22の一方又は両方」に、「- 表示情報機能 - エレクトロクロミック機能 - フォトクロミック機能 - 偏光機能 - 防曇機能 - 着色機能」の「少なくとも1つ又は複数」が「追加され」たものを指すと解される。

(b)一方、引用文献1には、「眼鏡のレンズと同様の外形」である「画像表示光学系1」を「基板13,11,12」から構成し(引用文献1の[0018]、[0020])、「基板13,11,12」のいずれかに対して「通電によって着色するエレクトロクロミック素子、その他の透過率が変化する素子」(本願発明の「能動素子」に相当)を「適用」する(上記ア(イ)a(b))旨の技術的事項が記載されている。
また、引用文献7には、上記ア(イ)a(b)において説示したように、「シースルーレンズ116」と「シースルーレンズ118」とによって挟みこまれた「光ガイド光学素子112」(本願発明の「光導波路光学素子」に相当、引用発明1の「基板11」に相当)に、「不透明フィルタ114」(本願発明の「能動素子」に相当)を隣接して配置する旨の技術的事項が記載されている。
ここで、引用発明2と引用文献1,7に記載された発明は、共に眼鏡のレンズの技術分野に属するものであり、引用発明2の「眼鏡レンズ」のようなレンズに、透過率を変更するなどして付加価値を高めることは、周知な課題であるから、引用発明2に引用文献1,7に記載された技術的事項を採用し、引用発明2の光学系を構成する「挿入物2」に対して能動素子を隣接して配置することは、当業者であるなら適宜なし得たことである。

b 相違点7について
上記ア(イ)dにおいて説示したように、引用文献8ないし11によれば、光学系とレンズとを接着剤によって一体化することは周知である。さらに、上記ア(イ)cにおいて説示したように、光学系を構成する部材(引用文献8においては「電気活性素子910」、引用文献9においては「ホログラムシート27a」)を、合わせて容器をなす2つの基板(引用発明8においては「レンズウェハー900、930」、引用文献9においては「レンズ34a,34b」)の間に封入することも周知である。
そうすると、引用発明2において、「基本レンズ1」を2つの基板から構成し、「基本レンズ1」の一方の基板と、「挿入物2」と、「基本レンズ1」の他方の基板とを、この順に配置して、接着剤によって一体化することは、当業者であるなら容易に想到しうるものである。

c 相違点8について
上記ア(イ)eにおいて説示したように、引用文献4ないし6によれば、本願発明の「接着剤堆積工程」、「力印可工程」及び「接着工程」は、いずれも光学部品を接着剤によって一体化する際の周知の工程であり、引用文献5のように、これら全てを備えた、接着剤による一体化の工程も周知であるといえる。そうすると、引用発明2において、2つの基板から構成した「基本レンズ1」と「挿入物2」とを接着剤で一体化する際に、これらの工程を採用することは当業者であるなら容易に想到しうる。

d よって、引用発明2において、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、相違点6ないし8に係る構成を得ることに困難はない。

e 以上によれば、本願発明は、引用発明2において、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

f 本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用発明2、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術から予測し得る程度のものであって格別なものということはできない。

g 請求人の主張について
上記ア(イ)iで指摘したように、請求人は令和2年3月3日提出の意見書の「(3)」において、本願発明は、引用文献1ないし11から当業者が容易に想到しえたものでない旨主張する。しかしながら、上記a?eにおいて説示したように、本願発明は、引用発明2において、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(ウ)小括
したがって、本願発明は、引用発明2において、引用文献1,7に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-03-31 
結審通知日 2021-04-06 
審決日 2021-04-23 
出願番号 特願2016-511089(P2016-511089)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 瀬川 勝久
佐藤 洋允
発明の名称 頭部装着型光学系を提供する方法  
代理人 横堀 芳徳  
代理人 竹ノ内 勝  
代理人 竹沢 荘一  
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