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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16F
管理番号 1377739
審判番号 不服2021-1668  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-05 
確定日 2021-09-28 
事件の表示 特願2016-143561号「ダンパ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月25日出願公開,特開2018- 13191号,請求項の数(3)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成28年7月21日の出願であって,令和2年4月7日付けで拒絶理由が通知され,同年6月9日に期間延長請求書が提出され,同年8月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年11月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,これに対し,令和3年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2.原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明及び周知の技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1,2
・引用文献等 1,2,5,6

・請求項 1
・引用文献等 3,2,5,6

・請求項 3
・引用文献等 3,2,4-6

<引用文献等一覧>
1.特公平5-73633号公報
2.特開平8-219377号公報
3.特開2009-168233号公報
4.特開2014-163496号公報
5.特開2010-242940号公報(周知の技術を示す文献)
6.特開2000-213595号公報(周知の技術を示す文献)

第3.本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は,令和3年2月5日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
エラストマーで形成されて弾性を有する粒状体を収容する筒状の第一シリンダと,
前記第一シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと,
前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に前記粒状体が通過可能な環状の隙間を形成する第一ピストンと,
前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に粒状体を利用して減衰力を発揮する減衰部と,
伸縮時に弾性力を発揮する弾性部とを備え,
前記減衰部と前記弾性部は,前記減衰力と前記弾性力が並列に発揮されるように連結されている
ことを特徴とするダンパ。
【請求項2】
前記弾性部は,前記第一シリンダの外周に設けられ,前記第一シリンダと前記ロッドとの間に介装されるばねを有して構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のダンパ。
【請求項3】
前記第一シリンダから軸方向に延びて,内部に前記ロッドが移動可能に挿入される第二シリンダと,
前記ロッドに連結されて前記第二シリンダ内に部屋を形成する第二ピストンとを備え,
前記弾性部は,前記部屋に封入される気体を有して構成される気体ばねと,前記部屋に収容される弾性を有する粒状体のうちの少なくとも一方を有して構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のダンパ。」

第4.引用文献,引用発明等
(1)引用文献1
引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
ア 特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
1 スプリングによる弾性機構と流体の流動抵抗を利用する減衰機構とからなり,かつ前記弾性機構には弾性力調節機構を,また前記減衰機構には減衰力調節機構を設けた懸架装置を車輌中央に設けた自動二輪車等において,前記弾性力調節機構の操作部と前記減衰力調節機構の操作部をそれぞれ動力伝達手段を介して車輌側部に設け,前記両操作部の少なくとも一方に制動力を与える制動機構を設け,かつ該両操作部を連動機構により互いに連結すると共に,該連動機構にトルクリミッタを介在させたことを特徴とする自動二輪車等の懸架装置。」
イ 1ページ15?16行
「本発明は自動二輪車等の懸架装置に関するものである。」
ウ 2ページ左欄16行?右欄10行
「第3図に示すように,油圧シリンダ7bはシリンダ10とこのシリンダ10に摺動自在に嵌合するピストン11からなり,ピストン11に連結した中空ロッド12が上方へ延長している。中空ロッド12の上端にはブラケット13が固定され,そのブラケット13にネジ環14が螺合している。さらにネジ環14にはスプロケット15とバネ受け16とが固定され,バネ受け16は案内筒18を介して上記スプリング7aの上端を受けている。スプリング7aの下端はシリンダ10側に固定されたバネ受け17に支持されている。そのため,外部動力の伝達手段であるチエン23を介して上記スプロケット15に回転力を入力すると,ネジ環14が回動してバネ受け16が上下動し,スプリング7aの弾性力を調節する弾性力調節機構になっている。
ピストン11には貫通孔46と,この貫通孔46を閉塞する弁板47が設けてあり,シリンダ10内を上部油圧室10aと下部油圧室10bとに区分している。また中空ロッド12下端には,上部油圧室10aと下部油圧室10bとを連通するオリフィス19が設けてある。ピストン11が衝撃力により上下動すると,弁板47並びにオリフィス19を介して油が上部油圧室10aと下部油圧室10bとの間を流動し,その流動抵抗により減衰力を発生する。
上記オリフィス19には針弁20が対向し,針弁20の上端は中空ロッド12の中心を通ってブラケット13まで貫通し,調節ロッド21のテーパ面21aに当接している。この調節ロッド21が外部動力の伝達手段であるワイヤ24から回転力を入力して回動すると,ネジ21bにより図の左右に微小移動し,テーパ面21aと針弁20上端との当接位置を変化させる。このため針弁20は上下方向に変位してオリフィス19の開口面積を変化させ,かつオリフィス19を通過する油の流量が変化して上記流動抵抗,即ち減衰力が調節される。即ち,上記構成は減衰機構の減衰力調節機構になっている。」
エ 第3図?第6図
第3図?第6図には,以下の内容が示されている。







オ 第3図からみて,技術常識を考慮すると,シリンダ10が筒状であることは明らかである。
カ 上記ウの「油圧シリンダ7bは筒状のシリンダ10とこのシリンダ10に摺動自在に嵌合するピストン11からなり,ピストン11に連結した中空ロッド12が上方へ延長し,中空ロッド12の上端にはブラケット13が固定され」るという記載事項から,「中空ロッド12」は「ピストン11に連結」されるととともに「ピストン11」は「シリンダ10に摺動自在に嵌合する」こと,及び,上記エの第3図からみて,「中空ロッド12」は「シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入され」ていることは明らかである。
キ 上記ウの「ピストン11には貫通孔46と,この貫通孔46を閉塞する弁板47が設けてあり,シリンダ10内を上部油圧室10aと下部油圧室10bとに区分している。また中空ロッド12下端には,上部油圧室10aと下部油圧室10bとを連通するオリフィス19が設けてある。ピストン11が衝撃力により上下動すると,弁板47並びにオリフィス19を介して油が上部油圧室10aと下部油圧室10bとの間を流動し,その流動抵抗により減衰力を発生する。」という記載事項と上記エの第3図からみて,シリンダ10が上下動すると,シリンダ10内をピストン11が移動することにより減衰力を発生すると共に,ブラケット13に螺合したネジ環14に固定されたバネ受け16とシリンダ10側に固定されたバネ受け17間に設けたスプリング7aが伸縮して弾性力が発生することは明らかである。

これらの事項からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「スプリング7aによる弾性機構と流体の流動抵抗を利用する減衰機構とからなる自動二輪車等の懸架装置であって,
油圧シリンダ7bは筒状のシリンダ10とこのシリンダ10に摺動自在に嵌合するピストン11からなり,ピストン11に連結した中空ロッド12が上方へ延長し,中空ロッド12の上端にはブラケット13が固定され,シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入される中空ロッド12と,そのブラケット13にネジ環14が螺合し,ネジ環14にはバネ受け16とが固定され,バネ受け16は案内筒18を介して上記スプリング7aの上端を受けており,スプリング7aの下端はシリンダ10側に固定されたバネ受け17に支持され,
ピストン11には貫通孔46と,この貫通孔46を閉塞する弁板47が設けてあり,シリンダ10内を上部油圧室10aと下部油圧室10bとに区分し,中空ロッド12下端には,上部油圧室10aと下部油圧室10bとを連通するオリフィス19が設けてあり,ピストン11が衝撃力により上下動すると,弁板47並びにオリフィス19を介して油が上部油圧室10aと下部油圧室10bとの間を流動し,その流動抵抗により減衰力を発生し,
シリンダ10が上下動すると,シリンダ10内をピストン11が移動することにより減衰力を発生すると共に,ブラケット13に螺合したネジ環14に固定されたバネ受け16とシリンダ10側に固定されたバネ受け17間に設けたスプリング7aが伸縮して弾性力が発生する,
自動二輪車等の懸架装置。」

(2)引用文献2
引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,防振装置に関し,例えば船舶のディーゼル主機関の振動抑制に好適な防振装置に関する。なお,内燃機関のほか各種構造物の防振装置にも適用可能である。」
・「【0009】また上述の従来例のうち,油圧ダンパー式ステー(図5)の場合,上述の摩擦式ステーの場合と異なり,ダンパー特性を持たせることができるが,その一方で,内封された油の漏洩対策が問題となる。すなわちOリング26が変形し,弾力性がなくなると,そこから油が洩れ油圧ダンパーとしての働きがなくなることに加え,船の機関室の汚損ひいては火災の危険性すら生じてくるなどの問題点がある。
【0010】本発明は,これらの問題点の解決をはかろうとするもので,摩擦式ステーのように剛でなく,ダンピング(粘性)特性を有するとともに,油圧ダンパー式ステーと異なり,液体(特に可燃物)を用いず漏洩の恐れがない防振装置を提供することを目的とする。」
・「【0013】
【作用】上述の本発明の防振装置では,次のような作用が行なわれる。
(1) 粉粒体中に入れられた抵抗体が外部から動かされると,抵抗体の傾斜面に沿って粉粒体が押しのけられる。この粉粒体の動きの反力として抵抗体には動きの速度に応じた抵抗(力)が発生する。そしてこの抵抗力が振動を抑える力(ダンピング力)として作用する。
(2) 上記の抵抗力の強弱は,抵抗体の大きさ(容積)および傾斜面の傾斜角度ならびに粉粒体の種類,粒径および量,さらに容器の容量,形状によって変化する。したがってこれらのうちの少なくとも1つを任意に選定することで,振動抑制装置のダンピング特性を調節できる。
(3) 粉粒体は液体に比しシールが容易であり,また素材も豊富であるので,不燃物(または難燃性物質)を用いることにより,油漏洩による汚損・火災の危険を回避できる。
【0014】
【実施例】以下,図面により本発明の一実施例としての防振装置について説明すると,図1はその側断面図,図2はその平断面図である。なお,図1,2において,図3?5と同じ符号はほぼ同一の符号を示している。
【0015】この実施例の防振装置は,振動体としての機関主機1と固定構造体としての船体構造物4との間に介装され,振動体の振動成分以外の静的相対変位を吸収する機能と,振動に対するダンピング機能とを有し,図1,2に示すように,第1のステー32と第2のステー33および両ステー32,33間に取り付けられた振動抑制装置3とをそなえている。
【0016】振動抑制装置3は円筒形容器31と,円筒形容器31の内部に配設されたコマ状の抵抗体30および円筒形容器31内に充填された抵抗発生手段としての粉粒体38とをそなえている。符号31bは容器31の蓋,符号31cは容器31の上部開口部と主体部との間に形成される傾斜面(細首部)を示している。
【0017】抵抗体30は中央の円筒部30aと,円筒部30aの両端部に連設された左右一対の截頭円錐台部30b,30cとから構成され,一方の截頭円錐台部(この実施例では図1,2において左側の截頭円錐台部)30bの外端面(同左端部)30dに,短い摺動軸33aが突設され,他方の截頭円錐台部(同右側の円錐台部)30cの外端面(同右端部)30eに第2のステー33が突設されている。
【0018】摺動軸33aおよび第2のステー33は同一軸線上に配設され,これらと抵抗体30とは,第2のステー33および摺動軸33aならびに後述の第1のステー32の共通の軸線に対して軸対称に形成されている。そして,第2のステー33および摺動軸33aは容器31の壁面に形成された開口を貫通して容器31の右側および左側にそれぞれ摺動可能に延出しており,容器31の側壁面に第2のステー33を摺動可能に支持する軸受部31aが形成されている。また摺動軸33aは,後述の第1のステー32の先端部に形成された軸受部32aに摺動可能に支持される。
【0019】第1のステー32はその基端部(図1,2における左端部)を主機1の上方横側に突設されたブラケット1aにピン5を介して回動可能に連結され,その先端部(図1,2における右端部)に形成された軸受部32aで円筒形容器31に溶接されている。
【0020】上記の構成により,コマ状抵抗体30は円筒形容器31の内部に位置し,かつ抵抗体30の両端面から互いに反対方向に延出した第2のステー33および摺動軸33aの各摺動貫通部分としての軸受部31aおよび32aで拘束されて,円筒形容器31の中で両ステー33,32の共通の軸線方向(図1,2における左右方向)のみに移動可能に支持されたことになる。さらに,第2のステー33の基端部(図1,2の右端部)は,船体構造物4に突設したブラケット4aにピン5を介して回動可能に接続されている。
【0021】円筒形容器31に充填される粉粒体38としては,例えば金属またはプラスチックスの粉粒体が適しているものの,この粉粒体は単一物質であったりあるいは粒径の揃ったものであったりする必要はなく,要求される摩擦係数および耐摩耗性を持つものであれば何でもよい。
【0022】上述のとおり,両ステー32,33が振動抑制装置3を介して,主機1の上方横側と船体構造物4との間に取り付けられた状態で,主機1が横方向(図1,2における左右方向)に揺れ(振動し)ようとすると,ピン5を介してステー32を押したり引いたりする運動が交互に繰返えされる。
【0023】主機1に押されて第1のステー32が右に動く時,円筒形容器31の内部で抵抗体30が相対的に左に寄ることとなり,容器31の内壁と抵抗体30の截頭円錐台部30bとには挟まれた部分の粉粒体38は周囲に押し出される。この時,粉粒体38の相互間あるいは粉粒体38と截頭円錐台部30bの斜面との間に,それぞれ滑る摩擦抵抗(粘性抵抗力)が発生する。
【0024】抵抗体30の動きが,静的変化のような緩やかな動きの時には,抵抗力は小さく,したがって振動抑制装置は主として静的相対変位を吸収する作用を行なう。一方振動のような抵抗体30の急速な動きに対しては,大きな抵抗力となる。そしてこの抵抗力により第2のステー33が右に押圧され,第2のステー33に作用するこの押圧力がもう一方のピン5を介して船体構造物4に伝えられる。そしてこの力の流れの反力が船体構造物4から主機1に伝わり,主機1の振動を抑制する力(ダンピング力)として働く。
【0025】主機1が反対に第2のステー32を左に引く時には,上述の力と反対向きの力が抵抗体30の反対側の截頭円錐台部30cの傾斜面を介して,上述の場合と同様に,船体構造物4に伝えられ,上述と同様の作用効果が奏される。ここで,円筒形容器31の容積および形状ならびにコマ状抵抗体30の大きさ(容積)および截頭円錐台部の傾斜角度を変えたり,あるいは円筒形容器31に入れる粉粒体の種類や粒径,注入量等を選択することにより,抵抗体30の移動時に発生する抵抗(力)を調整することができ,これにより振動抑制装置3のダンピング特性を調整することが可能となる。
【0026】したがってこの実施例の場合,振動抑制装置3および第1のステー32ならびに第2ステー33を船体にそれぞれ取り付けた後でも,容器30に充填する粉粒体38の種類または粒径もしくは量を変えることにより,振動抑制装置3のダンピング特性を任意に調節(変更)することができる。
【0027】また,第2のステー33が容器31の壁面を貫通する構成となっているが,粉粒体38の粒径を軸受31aにおける第2のステー33との隙間より大きくとることにより,粉粒体が外部にこぼれるのを防止することができる。また粉粒体38は不燃物なため,火災等の危険がない。なお抵抗体30としては,中央部に平坦部を持たない断面菱形のものや,中央部の上側あるいは下側を鋭角に形成された楔形のものでも,同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0028】
【発明の効果】以上詳述したように,本発明の防振装置によれば,次のような効果ないし利点が得られる。
(1) 振動体の動こうとする力が粉粒体を介して第1のステーから第2のステーへと伝わるが,粉粒体の粘性抵抗を利用しているので,静的変化のような緩やかな動きには小さな抵抗力のもとで相対変位の吸収を行なうことができる。一方振動のような急速な動きに対しては大きな抵抗力が発生し,この抵抗力が制振力として利用され,振動体の振動抑制(ダンピング)を行なうことができる。
(2) ダンピング(粘性)特性の変更を容易に行なうことができ,特に実際にステー等を装備した後でも,ダンピング特性の変更が可能である。
(3) 粉粒体が外部にこぼれることがなく,また粉粒体として不燃物を選定でき,火災等の危険性の面において有利である。」
・図1,図2には,以下の内容が示されている。



これらの記載事項からみて,引用文献2には,以下の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。
「ダンピング(粘性)特性を有するとともに,油圧ダンパー式ステーと異なり,液体(特に可燃物)を用いず漏洩の恐れがない防振装置を提供することを目的として,
第1のステー32と第2のステー33および両ステー32,33間に取り付けられた振動抑制装置3とをそなえ,振動抑制装置3は円筒形容器31と,円筒形容器31の内部に配設されたコマ状の抵抗体30および円筒形容器31内に充填された抵抗発生手段としての粉粒体38とをそなえ,
抵抗体30は中央の円筒部30aと,円筒部30aの両端部に連設された左右一対の截頭円錐台部30b,30cとから構成され,一方の截頭円錐台部30bの外端面30dに,短い摺動軸33aが突設され,他方の截頭円錐台部30cの外端面30eに第2のステー33が突設され,第2のステー33および摺動軸33aは容器31の壁面に形成された開口を貫通して容器31の右側および左側にそれぞれ摺動可能に延出しており,容器31の側壁面に第2のステー33を摺動可能に支持する軸受部31aが形成され,摺動軸33aは,後述の第1のステー32の先端部に形成された軸受部32aに摺動可能に支持され,
第1のステー32はその基端部を主機1の上方横側に突設されたブラケット1aにピン5を介して回動可能に連結され,その先端部に形成された軸受部32aで円筒形容器31に溶接され,
コマ状抵抗体30は円筒形容器31の内部に位置し,かつ抵抗体30の両端面から互いに反対方向に延出した第2のステー33および摺動軸33aの各摺動貫通部分としての軸受部31aおよび32aで拘束されて,円筒形容器31の中で両ステー33,32の共通の軸線方向のみに移動可能に支持され,第2のステー33の基端部は,船体構造物4に突設したブラケット4aにピン5を介して回動可能に接続され,
円筒形容器31に充填される粉粒体38としては,例えば金属またはプラスチックスの粉粒体が適しているものの,要求される摩擦係数および耐摩耗性を持つものであれば何でもよく,
主機1に押されて第1のステー32が右に動く時,円筒形容器31の内部で抵抗体30が相対的に左に寄ることとなり,容器31の内壁と抵抗体30の截頭円錐台部30bとには挟まれた部分の粉粒体38は周囲に押し出され,粉粒体38の相互間あるいは粉粒体38と截頭円錐台部30bの斜面との間に,それぞれ滑る摩擦抵抗(粘性抵抗力)が発生し,主機1の振動を抑制する力(ダンピング力)として働き,主機1が反対に第2のステー32を左に引く時には,上述の力と反対向きの力が抵抗体30の反対側の截頭円錐台部30cの傾斜面を介して,船体構造物4に伝えられ,円筒形容器31の容積および形状ならびにコマ状抵抗体30の大きさ(容積)および截頭円錐台部の傾斜角度を変えたり,あるいは円筒形容器31に入れる粉粒体の種類や粒径,注入量等を選択することにより,抵抗体30の移動時に発生する抵抗(力)を調整することができ,これにより振動抑制装置3のダンピング特性を調整することが可能となり,
粉粒体38の粒径を軸受31aにおける第2のステー33との隙間より大きくとることにより,粉粒体が外部にこぼれるのを防止することができ,粉粒体38は不燃物なため,火災等の危険がない,振動抑制装置3。」

(3)引用文献3
引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
車体側チューブと車輪側チューブとを有するフォーク本体の内側に両ロッド型のダンパ部を有しながら油面を境にする気室を有してなるフロントフォークにおいて,両ロッド型のダンパ部がピストン体と,このピストン体にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体および下方ロッド体と,この上方ロッド体の先端側を貫通させる上方軸受部材および下方ロッド体の先端側を貫通させる下方軸受部材とを有し,上方軸受部材が車輪側チューブに連結され,ピストン体が車輪側チューブに摺接し,下方軸受部材が車輪側チューブにシールの配在下に密接してなることを特徴とするフロントフォーク。」
・「 【技術分野】
【0001】
この発明は,フロントフォークに関し,特に,二輪車の前輪側に架装されて二輪車の前輪を懸架するフロントフォークであって,その前輪に入力される路面振動を吸収する両ロッド型のダンパ部を内側に有するフロントフォークの改良に関する。」
・「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に,原理図たる図1および要部の具体図たる図2,図3および図4に示す実施形態に基づいて,この発明を説明するが,この発明によるフロントフォークは,フォーク本体が大径のアウターチューブからなる車体側チューブ1と小径のインナーチューブからなる車輪側チューブ2とを有する倒立型に設定され,このフォーク本体の内側に両ロッド型のダンパ部を有しながら油面Oを境にする気室Aを有してなる。
【0013】
両ロッド型のダンパ部(以下,単にダンパ部と称する)は,図示するところでは,ピストン体3と,このピストン体3にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体4および下方ロッド体5と,この上方ロッド体4の先端側を貫通させる上方軸受部材6および下方ロッド体5の先端側を貫通させる下方軸受部材7とを有してなる。
【0014】
そして,ダンパ部にあって,上方軸受部材6が車輪側チューブ2に連結され,ピストン体3が車輪側チューブ2に摺接し,下方軸受部材7が車輪側チューブ2にシール71の配在下に密接され,この下方軸受部材7の下方に気室A1を直列させている。
【0015】
気室A1は,これを設けることで,フロントフォークにおいて,注入する作動油量を減少でき,作動油量を減少させることに依る重量の軽減および材料費の削減が可能になる。
【0016】
すなわち,前記した特許文献1に開示のものを含めて両ロッド型のダンパを有する凡そ従前のフロントフォークにあっては,ダンパの下方がリザーバ室に連通する油室部分とされて作動油が充満されているが,この油室部分の作動油は,原理的に,両ロッド型のダンパの作動に関与しない。
【0017】
このことからすると,ダンパの下方の油室部分に収容されている作動油は不要であり,したがって,この発明にあっては,これを削減させることで上記した注入する作動油量を減少できるとしている。
【0018】
以上からすると,この気室A1は,たとえば,車輪側チューブ2のボトム部2aに開穿した気孔2bを介して大気に連通させ,たとえば,冷却手段として機能させても良く,また,大気に連通させずに密封空間にして,下方ロッド体5の出没に依って膨縮させてエアバネ力を発揮させても良い。
【0019】
ピストン体3は,車輪側チューブ2をシリンダ体に見立て,上方軸受部材6および下方軸受部材7の配設で画成される油室部分に収装されることで上方油室R1と下方油室R2を画成している。
【0020】
そして,このピストン体3は,上方油室R1からの作動油の下方油室R2への通過を許容して所定の大きさの伸側減衰力を発生する伸側減衰バルブ3aと,反対に,下方油室R2からの作動油の上方油室R1への通過を許容して所定の大きさの圧側減衰力を発生する圧側減衰バルブ3bとを有している。
【0021】
このように,ダンパ部を形成するのにあって,ピストン体3が車輪側チューブ2の内周に直接摺接する構成とする場合には,図示しないが,車輪側チューブの内側に配設されるシリンダ体を構成部品にしてダンパ部を形成する場合に比較して,上方油室R1および下方油室R2における受圧面積を大きく設定でき,その分制御油圧を下げることが可能になる。
【0022】
その結果,このダンパ部にあっては,ピストン体3における受圧面積を大きくして制御油圧を低くし,たとえば,下方軸受部材7が有するシール71などの軽微化を具現化し得る点で有利となる。
【0023】
そして,ピストン体3における受圧面積を大きくして制御油圧を低くするから,発生減衰力を低くすることが可能になり,たとえば,下方油室R2の作動油中に混入したエアの圧縮に伴う上方油室R1における負圧現象の発生を防止でき,所望の減衰力の安定した発生を期待する上で有利となる。
【0024】
一方,上方軸受部材6は,車輪側チューブ2に連結される,すなわち,図2に示すように,下端部に上方軸受部材6を保持する有孔パイプ8の上端部が車輪側チューブ2の上端部に吊持されることで,車輪側チューブ2に対して一体的に連結されている。
【0025】
このように,上方軸受部材6が上端部を車輪側チューブ2の上端部に連結させて吊持される有孔パイプ8の下端部に連結されることで,有孔パイプ8の内側に懸架バネSの収納スペースを確保して有効長さを保障しつつ懸架バネSの下端を上方軸受部材6に担持させることが可能になる。
【0026】
それに対して,下方軸受部材7は,図3にも示すように,外周にシール71を有しながら車輪側チューブ2の内側に立設された支持パイプ9の上端に担持されて,車輪側チューブ2に対して不動に配設されている。
【0027】
支持パイプ9は,下端部が車輪側チューブ2の下端開口を閉塞しながらボトム部2a(図1参照)を形成するアクスルブラケット21(図3参照)に螺着などで固定的に連結されている。
【0028】
ちなみに,下方軸受部材7を車輪側チューブ2に対して不動に配設させるについては,種々の提案をなし得るが,車輪側チューブ2の内周を加工して下方軸受部材7を支持する構成を選択する場合には,部品コストの高騰化を招くであろうから好ましくない。
【0029】
それに対して,図示するように,支持パイプ9に支持させる場合には,車輪側チューブ2に対する加工を要しないから,いたずらな部品コストの高騰化を招来させずして目的を達成できる点で有利となる。
【0030】
なお,支持パイプ9を配設する原理からすれば,この支持パイプ9は,図示するように,車輪側チューブ2との間に隙間を有して配在されても良く,また,図示しないが,車輪側チューブ2に密接するように配設されても良い。
【0031】
上方ロッド体4は,基端がピストン体3に連結され,先端が上方軸受部材6の軸芯部および外部たる前記した気室Aを貫通して,車体側チューブ1の上端部に連結されている。
【0032】
そして,下方ロッド体5は,先端が下方軸受部材7の軸芯部を貫通して前記した気室A1に出没可能に臨在され,基端がピストン体3に連結されるが,この基端がピストン体3に対して,図示しないが,たとえば,軸線方向を横切る方向に移動可能に連結されて,フォーク本体の曲げに起因する下方ロッド体5の下方軸受部材7に対する齧り現象の発現を回避するとしても良い。
【0033】
フォーク本体の内側,すなわち,上方軸受部材6の上方は,リザーバ室Rとされ,このリザーバ室Rが前記した油面Oを境にする気室Aを有し,この気室Aが不活性ガスなどを充満させている。
【0034】
それゆえ,この気室Aが膨縮されるとき,エアバネ力を発揮し,リザーバ室Rは,上方軸受部材6に配設のチェック弁61を介して上方油室R1に連通し,上方油室R1で作動油不足を生じた場合に作動油の補給源となる。
【0035】
のみならず,このチェック弁31の配設で,このフロントフォークを組み立てる際の作動油の注入が,すなわち,上方油室R1およびピストン体3を介しての下方油室R2への作動油の充満作業を実践できる。
【0036】
懸架バネSは,図示するところにあって,下端が上方軸受部材6の上端に担持されながら上端がバネ受(図示せず)を介して車体側チューブ1の上端部あるいは上方ロッド体4の上端部に係止され,車輪側チューブ2が車体側チューブ1内から抜け出る方向に,すなわち,フォーク本体を伸長方向に附勢している。
【0037】
それゆえ,このフロントフォークにあっては,フォーク本体の伸縮時に,懸架バネSの伸縮に依るバネ力と,気室Aの膨縮に依るエアバネ力との合力からなるバネ特性を具現化し得る。
【0038】
そして,このフロントフォークにあっては,フォーク本体が伸縮することで,車輪側チューブ2内をピストン体3が昇降し,伸側減衰バルブ5aと圧側減衰バルブ6とに依って所定の大きさの減衰力を発生する。
【0039】
ちなみに,ダンパ部にあって,上方ロッド体4と下方ロッド体5は,同径に設定されており,このダンパ部の伸縮時には,上方油室R1および下方油室R2において,作動油の過不足が発現されることはなく,ダンパ部とリザーバ室Rとの間で作動油の遣り取りはない。」
・図1には,以下の内容が示されている。



これらの事項からみて,引用文献3には,以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「入力される路面振動を吸収する両ロッド型のダンパ部を内側に有するフロントフォークであって,
フロントフォークは,フォーク本体が大径のアウターチューブからなる車体側チューブ1と小径のインナーチューブからなる車輪側チューブ2とを有する倒立型に設定され,このフォーク本体の内側に両ロッド型のダンパ部を有しながら油面Oを境にする気室Aを有し,
両ロッド型のダンパ部は,ピストン体3と,このピストン体3にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体4および下方ロッド体5と,この上方ロッド体4の先端側を貫通させる上方軸受部材6および下方ロッド体5の先端側を貫通させる下方軸受部材7とを有し,
ダンパ部にあって,上方軸受部材6が車輪側チューブ2に連結され,ピストン体3が車輪側チューブ2に摺接し,下方軸受部材7が車輪側チューブ2にシール71の配在下に密接され,この下方軸受部材7の下方に気室A1を直列させ,
気室A1は,密封空間にして,下方ロッド体5の出没に依って膨縮させてエアバネ力を発揮させ,
ピストン体3は,上方油室R1からの作動油の下方油室R2への通過を許容して所定の大きさの伸側減衰力を発生する伸側減衰バルブ3aと,反対に,下方油室R2からの作動油の上方油室R1への通過を許容して所定の大きさの圧側減衰力を発生する圧側減衰バルブ3bとを有し,
フォーク本体の内側,すなわち,上方軸受部材6の上方は,リザーバ室Rとされ,このリザーバ室Rが前記した油面Oを境にする気室Aを有し,この気室Aが不活性ガスなどを充満させ,
気室Aが膨縮されるとき,エアバネ力を発揮し,リザーバ室Rは,上方軸受部材6に配設のチェック弁61を介して上方油室R1に連通し,上方油室R1で作動油不足を生じた場合に作動油の補給源となり,
懸架バネSは,下端が上方軸受部材6の上端に担持されながら上端がバネ受を介して車体側チューブ1の上端部あるいは上方ロッド体4の上端部に係止され,車輪側チューブ2が車体側チューブ1内から抜け出る方向に,すなわち,フォーク本体を伸長方向に附勢し,
フォーク本体の伸縮時に,懸架バネSの伸縮に依るバネ力と,気室Aの膨縮に依るエアバネ力との合力からなるバネ特性を具現化し得,フォーク本体が伸縮することで,車輪側チューブ2内をピストン体3が昇降し,伸側減衰バルブ5aと圧側減衰バルブ6とに依って所定の大きさの減衰力を発生する,
フロントフォーク。」

(4)引用文献4
引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,流体ダンパに関する。
・「【0084】
次に,第3実施形態の作用について説明する。
【0085】
ピストンロッド80をピストン82A,82B,82C毎に一端側分割ロッド80A,中間分割ロッド80B,及び他端側分割ロッド80Cに分解すると共に,各流体収容室62A,62B,62Cの位置でシリンダ62を軸方向に本体シリンダ66,2つの内側シリンダ72,及び蓋部材78に分解することにより,3つの流体収容室62A,62B,62Cに3つのピストン82A,82B,82Cをそれぞれ容易に配置することができる。したがって,オイルダンパ60の製造性が向上する。
【0086】
なお,本実施形態では,内側シリンダ72の筒状部72Aの軸方向一端部に一端側壁部72Bを設けた例を示したが,これに限らない。例えば,筒状部72Aの軸方向中間部に,当該筒状部72Aの内部を塞ぐと共にロッド孔76が形成された壁部を設けても良い。
【0087】
また,本実施形態では,一端側分割ロッド80Aの軸方向他端部にピストン82Aを設け,当該ピストン82Aに中間分割ロッド80Bの軸方向一端部を連結した例を示したが,これに限らない。例えば,一端側分割ロッド80Aの軸方向中間部にピストン82Aを設け,当該一端側分割ロッド80Aの軸方向他端部に中間分割ロッド80Bの軸方向一端部を連結しても良い。中間分割ロッド80Bと他端側分割ロッド80Cとの連結構造についても同様である。
【0088】
また,本実施形態では,シリンダ62に3つの流体収容室62A,62B,62Cを形成した例を示したが,これに限らない。例えば,1つの内側シリンダ72を省略し,シリンダ62の内部に2つの流体収容室62A,62Bを形成しても良いし,本体シリンダ66を省略し,シリンダ62の内部に2つの流体収容室62B,62Cを形成しても良い。この場合,ピストンロッド80は,流体収容室の数に応じて適宜分割すれば良い。
【0089】
次に,上記第1?第3実施形態の変形例について説明する。なお,以下では,第1実施形態を例に各種の変形例について説明するが,これらの変形例は第2,第3実施形態にも適宜適用可能である。」
・「【0094】
さらに,上記第1実施形態では,流体としてオイルWを用いた例を示したが,オイルWに代えて例えば空気を用いても良い。つまり,上記第1実施形態は,エアダンパにも適用可能である。
・図5には以下の内容が示されている。



これらの事項からみて,引用文献4には以下の事項(以下「引用文献4に記載された事項」という。)が記載されているといえる。
「ピストンロッド80をピストン82A,82B,82C毎に一端側分割ロッド80A,中間分割ロッド80B,及び他端側分割ロッド80Cに分解すると共に,各流体収容室62A,62B,62Cの位置でシリンダ62を軸方向に本体シリンダ66,2つの内側シリンダ72,及び蓋部材78に分解することにより,3つの流体収容室62A,62B,62Cに3つのピストン82A,82B,82Cをそれぞれ容易に配置することができ,
流体としてオイルWを用いた例を示したが,オイルWに代えて空気を用いても良い,
流体ダンパ。」

(5)引用文献5
引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
制振対象となる構造体に制振部材を設けてなる制振構造であって,
前記制振部材は,中空体と,前記中空体内に上部に一部空間を残して充填され前記構造体が振動を受けた際に前記中空体内で運動する粉粒体と,振動時に前記粉粒体に接して力を及ぼすように前記中空体内に取り付けられ前記中空体に対し相対的に振動する振動体より構成されることを特徴とする制振構造。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は,モータや発電機のステータやロータ,或いは減速機などの歯車や回転シャフト,自動車等輸送機器の梁部材,更には,建築物の躯体構造,大型機械構造やその固定構造物等の振動している構造体等に有効に用いることができる制振構造に関するものである。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,これら従来の問題を解決せんとしてなされたもので,中空体内での粉粒体の運動を促進することで,振幅が小さい振動に対しても,十分な制振効果を得ることができる制振構造を提供することを課題とするものである。」
・「 【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1記載の制振構造によると,振動を受けた際に粉粒体に接して力を及ぼすように設けられた振動体が中空体内で振動して,中空体内での粉粒体の運動を促進させるので,中空体内部に単に粉粒体を充填した場合と比較して,粉粒体はより激しく運動することになり,粉粒体が互いに衝突,弾性変形,摩擦することによって,その振動エネルギーを吸収することができ,振動加速度が1G未満の小さな振動であっても,制振効果を確実に発現することができる。」
・「【0025】
図1に示す実施形態は,直方体形状の容器でなる中空体5に粉粒体3を,一部空間4を残して充填すると共に,その粉粒体3で被覆されるようにして,すなわち,振動時に粉粒体3に接して力を及ぼすようにして,中空体5の内壁面から棒状或いは板状の振動体6を片持ち方式で突出した実施形態である。粉粒体3は,中空体5に一部空間4を残して充填されているため,中空体5内で運動可能である。尚,粉粒体3および中空体5は,鋼,アルミなどの金属,プラスチック,ゴムなどの樹脂,ガラス,焼結体などのセラミックス等で形成されている。また,本発明で説明する粉粒体3とは,粉状体或いは粒状体のことを示しており,粉状体と粒状体の混合物だけではなく,粉状体,粒状体のいずれかであっても良い。
【0026】
この実施形態の場合,制振対象となる構造体1,例えば,モータや発電機のステータ,建築物の躯体構造などに両方向矢印で示すような上下方向の振動が発生すると,制振部材2も同様に上下に振動するが,片持ち方式で中空体5の内壁面に取り付けられた振動体6は,その取付部を基点としてより大きく上下に振れて振動する。中空体5内の粉粒体3も中空体5内部で運動するが,振動体6からも振動を受けることにより,その運動はより激しくなる。
【0027】
そのより激しくなった粉粒体3の運動により,構造体1の振動エネルギーは,粒子(粉粒体3)間の弾性変形,摩擦,衝突などのエネルギーに変換され,すなわち,振動エネルギーは散逸され,制振作用が発現して,構造体1の振動は抑制されることとなる。
【0028】
尚,振動体6は,制振対象周波数帯域において共振するように構成されていることが,粉粒体3をより激しく運動させることができるので好ましい。
【0029】
図2に示す実施形態は,直方体形状の容器でなる中空体5に粉粒体3を,一部空間4を残して充填すると共に,中空体5の上下の内壁面間にバネで支持した質量体でなる振動体6を設け,その振動体6を粉粒体3で被覆されるようにして位置させた実施形態である。その他の構成は図1に示す実施形態と同様である。
【0030】
この実施形態でも,制振対象となる構造体1,例えば,モータや発電機のステータ,建築物の躯体構造などに両方向矢印で示すような上下の振動が発生すると,制振部材2も同様に上下に振動し,中空体5の内壁面にバネ支持された振動体6は,より大きく上下に振動する。中空体5内の粉粒体3は中空体5内部で運動するが,粉粒体3内に設けられた振動体6の動きにより,その運動を促進されて更に大きく動くことになる。
【0031】
よって,構造体1の振動エネルギーは,粒子(粉粒体3)間の弾性変形,摩擦,衝突などのエネルギーに変換され,すなわち,振動エネルギーは散逸され,制振作用によって,構造体1の振動は抑制されることとなる。尚,この実施形態でも,振動体6は,制振対象周波数帯域において共振するように構成されていることが,粉粒体3をより激しく運動させることができるので好ましい。また,振動体6を支持するバネは,金属製のコイルバネ,板バネ,皿バネやゴムなどの弾性樹脂部材などから,制振部材2の使用環境などによって適宜選択すれば良い。」
・図1,図2には,以下の内容が示されている。



これらの記載事項からみて,引用文献5には,以下の事項が記載されているといえる。
「制振対象となる構造体に制振部材を設けてなる制振構造であって,
前記制振部材は,中空体と,前記中空体内に上部に一部空間を残して充填され前記構造体が振動を受けた際に前記中空体内で運動する粉粒体と,振動時に前記粉粒体に接して力を及ぼすように前記中空体内に取り付けられ前記中空体に対し相対的に振動する振動体より構成され,
粉粒体は,ゴムなどの樹脂で形成され,
構造体の振動エネルギーは,粉粒体間の弾性変形,摩擦,衝突などのエネルギーに変換され,すなわち,振動エネルギーは散逸され,制振作用によって,構造体の振動は抑制される,
制振構造。」

(6)引用文献6
引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】 容器内に粉粒体材料を封入して成ることを特徴とする防振部材。
【請求項2】 容器の側壁部の剛性が,粉粒体材料の剛性よりも小さいことを特徴とする請求項l記載の防振部材。
【請求項3】 粉粒体材料に粘弾性材料粒子が混入されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の防振部材。
【請求項4】 混入される粘弾性材料粒子がゴム系材料であることを特徴とする請求項3記載の防振部材。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,防振部材に関し,詳しくは様々な構造物や機器等から発生する振動を床部や他の部位へ伝達させず,或いは,振動する床部の振動を構造物や機器等へ伝達させないような防振,振動絶縁の性能を有する防振部材に関するものである。」
・「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,防振設計因子であるばね定数,損失係数の広範囲での調整を可能とする防振部材を提供するにある。」
・「【0011】また上記粉粒体材料2に粘弾性材料粒子4が混入されているのが好ましく,このように構成することで,粘弾性材料粒子4の混入により粉粒体材料2の粒子間の摩擦接触減衰が増加し,その混入量により防振部材5の損失の値を広範囲で調整することが可能となる。
【0012】また上記混入される粘弾性材料粒子4がゴム系材料であるのが好ましく,このように構成することで,粘性の高いゴム系粒子の少量の混入によって,防振部材5の損失の値をより広範囲で調整可能となる。」
・「【0017】このように粉粒体材料2を封入する同一の容器形状において,粉粒体材料2の種類(ガラス,ニトリルゴム等)や封入量を変えるだけで,防振支持の設計因子であるばね,損失を変化させ,調整することができる。従って,振動周波数など防振の対象に応じた防振部材5の設計を行う際に,従来のように防振領域N(図9),振動増幅領域M(図9)それぞれにおいて,加振源の周波数成分に応じた防振部材5のばね定数k,そして損失係数ηの最適な設計を行う必要がなくなるので,防振設計因子であるばね定数k,損失係数ηの調整が広範囲で可能となる。
【0018】また,粉粒体材料2の種類や封入量以外に,粒子剛性,粒径,粒子表面摩擦などを変えた場合でも,防振支持の設計因子であるばね,損失を変化させ,調整することができる。以下にその例を説明する。
【0019】図4は,防振部材5の容器1の側壁部3の剛性を粉粒体2の剛性より小さくした場合を示している。振動が加わると容器1内の粉粒体同士が接触してエネルギー減衰が生じ,振動エネルギーが吸収される。このとき,粉粒体材料2の剛性よりも容器1の側壁部3の剛性が小さいので,図4(c)のように振動を受けると容器1の側壁部3が外側に膨らむようになり,これにより粉粒体材料2は容器1の側壁部3の剛性の影響を受けなくなり,粉粒体材料2による防振部材5のばね,損失の調整がより広範囲なものとなる。
【0020】図5は,防振部材5に封入される粉粒体材料2に粘弾性材料粒子4が混入されている場合を示している。粘弾性材料粒子4の混入により,粉粒体材料2の粒子間の摩擦接触減衰が増加し,その混入量により損失を広範囲に調整することが可能となる。
【0021】ここで,上記混入される粘弾性材料粒子4としてゴム系材料が好ましい。このゴム系材料は,低弾性体で,弾性変形による粘性(ヒステリシス性)を有するものであり,イソプレンゴム(IR),スチレン?ブタジエンゴム(SBR),ブタジエンゴム(BR),エチレンーブロピレンゴム(EPM,EPDM),ブチルゴム(IIR),クロロプレンゴム(CR),ニトリルゴム(NBR),アクリルゴム(ACM),エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO),塩素化ポリエチレン(CM),クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)などの合成ゴムなどが挙げられる。 また,天然ゴム(NR),そしてリサイクル利用の再生ゴムなども対象である。このようにゴム系材料に関する限定は,粘性の高いゴム系粒子による少量の混入によって,防振部材5の損失調整のための損失増加が可能となる。」
・図5(a)(b)には,以下の内容が示されている。



これらの記載事項からみて,引用文献6には,以下の事項が記載されているといえる。
「容器内に粉粒体材料を封入して成る防振部材であって,粉粒体材料に粘弾性材料粒子が混入され,混入される粘弾性材料粒子がゴム系材料であり,粘弾性材料粒子の混入により,粉粒体材料の粒子間の摩擦接触減衰が増加し,その混入量により損失を広範囲に調整することが可能となる,防振装置。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)引用発明1を主引用発明とした場合
ア.対比
(ア)本願発明1と引用発明1とを対比すると,後者の「シリンダ10」は前者の「第一シリンダ」に,以下同様に,「中空ロッド12」は「ロッド」に,「ピストン11」は「第一ピストン」に,「減衰力を発生する」「減衰機構」は「減衰部」に,「スプリング7a」は「弾性部」に,弾性機構と減衰機構とからなる「自動二輪車等の懸架装置」は「ダンパ」に,それぞれ相当する。
(イ)後者の「筒状のシリンダ10」と前者の「エラストマーで形成されて弾性を有する粒状体を収容する筒状の第一シリンダ」とは「筒状の第一シリンダ」において共通する。
(ウ)後者の「シリンダ10内に軸方向へ移動可能に挿入される中空ロッド12」は前者の「前記第一シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド」に相当する。
(エ)後者の「ピストン11」は,「シリンダ10に摺動自在に嵌合する」とともに「中空ロッド12」と連結したものであるから,前者の「前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に前記粒状体が通過可能な環状の隙間を形成する第一ピストン」と,「前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置される第一ピストン」において共通する。
(オ)後者の「ピストン11には貫通孔46と,この貫通孔46を閉塞する弁板47が設けてあり,シリンダ10内を上部油圧室10aと下部油圧室10bとに区分し,中空ロッド12下端には,上部油圧室10aと下部油圧室10bとを連通するオリフィス19が設けてあり,ピストン11が衝撃力により上下動すると,弁板47並びにオリフィス19を介して油が上部油圧室10aと下部油圧室10bとの間を流動し,その流動抵抗により減衰力を発生」する「減衰機構」と前者の「前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に粒状体を利用して減衰力を発揮する減衰部」とは,「前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に減衰力を発揮する減衰部」において共通する。
(カ)後者の「ブラケット13に螺合したネジ環14に固定されたバネ受け16とシリンダ10側に固定されたバネ受け17間に設けたスプリング7aが伸縮して弾性力が発生する」「弾性機構」は,前者の「伸縮時に弾性力を発揮する弾性部」に相当する。
(キ)上記(ア)?(カ)を踏まえると,後者の「スプリング7aによる弾性機構と流体の流動抵抗を利用する減衰機構とからなる自動二輪車等の懸架装置」は,前者の「第一シリンダ」と「ロッド」と「第一ピストン」と「減衰部」と「弾性部」「とを備え」ることは明らかである
(ク)後者は「シリンダ10が上下動すると,シリンダ10内をピストン11が移動することにより減衰力を発生すると共に,ブラケット13に螺合したネジ環14に固定されたバネ受け16とシリンダ10側に固定されたバネ受け17間に設けたスプリング7aが伸縮して弾性力が発生する」ものであるところ,「シリンダ10が上下動すると,」「減衰力が発生すると共に」「弾性力が発生する」から,減衰力と弾性力が同時に発生するように連結されている,即ち,減衰力と弾性力が並列に発揮されるように連結されているものであり,後者の「スプリング7aによる弾性機構と流体の流動抵抗を利用する減衰機構とからなる自動二輪車等の懸架装置」は,前者の「前記減衰部と前記弾性部は,前記減衰力と前記弾性力が並列に発揮されるように連結されている」「ダンパ」に相当する。
(ケ)そうすると,両者は,
「筒状の第一シリンダと,
前記第一シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと,
前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置される第一ピストンと,
前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に減衰力を発揮する減衰部と,
伸縮時に弾性力を発揮する弾性部とを備え,
前記減衰部と前記弾性部は,前記減衰力と前記弾性力が並列に発揮されるように連結されている,
ダンパ。」
において一致し,以下の点で相違すると認められる。
<相違点>
筒状の第一シリンダと,前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置される第一ピストンと,前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に減衰力を発揮する減衰部に関して,本願発明1では,第一シリンダが「エラストマーで形成されて弾性を有する粒状体を収容する」ものであり,前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに「前記第一シリンダとの間に前記粒状体が通過可能な環状の隙間を形成する」第一ピストンと,前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に「粒状体を利用して」減衰力を発揮する減衰部であるのに対して,引用発明1では,第一シリンダが「油」を収容するものであり,ピストン11が中空ロッド12に連結されてシリンダ10内に配置されるものの,「ピストン11には貫通孔46と,この貫通孔46を閉塞する弁板47が設けてあり,シリンダ10内を上部油圧室10aと下部油圧室10bとに区分し,中空ロッド12下端には,上部油圧室10aと下部油圧室10bとを連通するオリフィス19が設けてあり,ピストン11が衝撃力により上下動すると,弁板47並びにオリフィス19を介して油が上部油圧室10aと下部油圧室10bとの間を流動し,その流動抵抗により減衰力を発生する」点。

イ.相違点の判断
(ア)引用文献2には,前述のとおり以下の事項が記載されている。
「ダンピング(粘性)特性を有するとともに,油圧ダンパー式ステーと異なり,液体(特に可燃物)を用いず漏洩の恐れがない防振装置を提供することを目的として,
第1のステー32と第2のステー33および両ステー32,33間に取り付けられた振動抑制装置3とをそなえ,振動抑制装置3は円筒形容器31と,円筒形容器31の内部に配設されたコマ状の抵抗体30および円筒形容器31内に充填された抵抗発生手段としての粉粒体38とをそなえ,
抵抗体30は中央の円筒部30aと,円筒部30aの両端部に連設された左右一対の截頭円錐台部30b,30cとから構成され,一方の截頭円錐台部30bの外端面30dに,短い摺動軸33aが突設され,他方の截頭円錐台部30cの外端面30eに第2のステー33が突設され,第2のステー33および摺動軸33aは容器31の壁面に形成された開口を貫通して容器31の右側および左側にそれぞれ摺動可能に延出しており,容器31の側壁面に第2のステー33を摺動可能に支持する軸受部31aが形成され,摺動軸33aは,後述の第1のステー32の先端部に形成された軸受部32aに摺動可能に支持され,
第1のステー32はその基端部を主機1の上方横側に突設されたブラケット1aにピン5を介して回動可能に連結され,その先端部に形成された軸受部32aで円筒形容器31に溶接され,
コマ状抵抗体30は円筒形容器31の内部に位置し,かつ抵抗体30の両端面から互いに反対方向に延出した第2のステー33および摺動軸33aの各摺動貫通部分としての軸受部31aおよび32aで拘束されて,円筒形容器31の中で両ステー33,32の共通の軸線方向のみに移動可能に支持され,第2のステー33の基端部は,船体構造物4に突設したブラケット4aにピン5を介して回動可能に接続され,
円筒形容器31に充填される粉粒体38としては,例えば金属またはプラスチックスの粉粒体が適しているものの,要求される摩擦係数および耐摩耗性を持つものであれば何でもよく,
主機1に押されて第1のステー32が右に動く時,円筒形容器31の内部で抵抗体30が相対的に左に寄ることとなり,容器31の内壁と抵抗体30の截頭円錐台部30bとには挟まれた部分の粉粒体38は周囲に押し出され,粉粒体38の相互間あるいは粉粒体38と截頭円錐台部30bの斜面との間に,それぞれ滑る摩擦抵抗(粘性抵抗力)が発生し,主機1の振動を抑制する力(ダンピング力)として働き,主機1が反対に第2のステー32を左に引く時には,上述の力と反対向きの力が抵抗体30の反対側の截頭円錐台部30cの傾斜面を介して,船体構造物4に伝えられ,円筒形容器31の容積および形状ならびにコマ状抵抗体30の大きさ(容積)および截頭円錐台部の傾斜角度を変えたり,あるいは円筒形容器31に入れる粉粒体の種類や粒径,注入量等を選択することにより,抵抗体30の移動時に発生する抵抗(力)を調整することができ,これにより振動抑制装置3のダンピング特性を調整することが可能となり,
粉粒体38の粒径を軸受31aにおける第2のステー33との隙間より大きくとることにより,粉粒体が外部にこぼれるのを防止することができ,粉粒体38は不燃物なため,火災等の危険がない,振動抑制装置3。」
(イ)本願発明1と引用文献2に記載された事項とを対比すると,後者の「円筒形容器31」は前者の「筒状の第一シリンダ」又は「第一シリンダ」に相当し,以下同様に,「第2のステー33及び摺動軸33a」は「ロッド」に,「コマ状抵抗体30」又は「抵抗体30」は「第一ピストン」に,「第2のステー33及び摺動軸33」及び「抵抗体30」及び「円筒形容器31」は「減衰部」に,「振動抑制装置3」は「ダンパ」に,それぞれ相当する。
(ウ)後者の「粉粒体38」を「充填」した「円筒形容器31」と前者の「エラストマーで形成されて弾性を有する粒状体を収容する筒状の第一シリンダ」とは「抵抗発生手段を収容する筒状の第一シリンダ」において共通する。
(エ)後者は「第2のステー33および摺動軸33aは容器31の壁面に形成された開口を貫通して容器31の右側および左側にそれぞれ摺動可能に延出して」いるところ,容器31は円筒形容器31のことであるから,後者の「第2のステー33および摺動軸33a」と,前者の「前記第一シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド」とは,「前記第一シリンダ内に移動可能に挿入されるロッド」において共通する。
(オ)後者は「抵抗体30は中央の円筒部30aと,円筒部30aの両端部に連設された左右一対の截頭円錐台部30b,30cとから構成され,一方の截頭円錐台部30bの外端面30dに,短い摺動軸33aが突設され,他方の截頭円錐台部30cの外端面30eに第2のステー33が突設され」るものであるところ,後者の「第2のステー33及び摺動軸33a」に「抵抗体30」が連結されていることは明らかである。
また,後者の「抵抗体30」は,「円筒形容器31の内部に配設され」ていることから,前者の「前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置され」た「第一ピストン」に相当する。
(カ)後者は「主機1に押されて第1のステー32が右に動く時,円筒形容器31の内部で抵抗体30が相対的に左に寄ることとなり,容器31の内壁と抵抗体30の截頭円錐台部30bとには挟まれた部分の粉粒体38は周囲に押し出され,粉粒体38の相互間あるいは粉粒体38と截頭円錐台部30bの斜面との間に,それぞれ滑る摩擦抵抗(粘性抵抗力)が発生し,主機1の振動を抑制する力(ダンピング力)として働き,主機1が反対に第2のステー32を左に引く時には,上述の力と反対向きの力が抵抗体30の反対側の截頭円錐台部30cの傾斜面を介して,船体構造物4に伝えられ」るものであるところ,「円筒形容器31」「の内壁と抵抗体30の截頭円錐台部30bとには挟まれた部分の粉粒体38は周囲に押し出され,粉粒体38の相互間あるいは粉粒体38と截頭円錐台部30bの斜面との間に,それぞれ滑る摩擦抵抗(粘性抵抗力)が発生」するから,後者の「抵抗体30」と円筒形容器31との間に隙間は形成されるものの,粉粒体38は抵抗体30と円筒形容器31の間の隙間を通過する必要はない。
(キ)上記(オ),(カ)を踏まえると,後者の「抵抗体30」と前者の「前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に前記粒状体が通過可能な環状の隙間を形成する第一ピストン」とは,「前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に隙間を形成する第一ピストン」において共通する。
ここで,引用文献2における図2は,図1の平断面図であって,引用文献2記載事項における「第1ピストンと」「前記第一シリンダとの間に」形成された「隙間」は「環状」の隙間とはいえない。
(ク)後者は「振動抑制装置3は円筒形容器31と,円筒形容器31の内部に配設されたコマ状の抵抗体30および円筒形容器31内に充填された抵抗発生手段としての粉粒体38とをそなえ,」「主機1に押されて第1のステー32が右に動く時,円筒形容器31の内部で抵抗体30が相対的に左に寄ることとなり,容器31の内壁と抵抗体30の截頭円錐台部30bとには挟まれた部分の粉粒体38は周囲に押し出され,粉粒体38の相互間あるいは粉粒体38と截頭円錐台部30bの斜面との間に,それぞれ滑る摩擦抵抗(粘性抵抗力)が発生し,主機1の振動を抑制する力(ダンピング力)として働き,主機1が反対に第2のステー32を左に引く時には,上述の力と反対向きの力が抵抗体30の反対側の截頭円錐台部30cの傾斜面を介して,船体構造物4に伝えられ」るものであるところ,後者の「第2のステー33及び摺動軸33」及び「抵抗体30」及び「円筒形容器31」は,「第2のステー33及び摺動軸33」と「抵抗体30」とを有し,第1のステー32によって円筒形容器31が右又は左に動くとき,「粉粒体38」を利用してダンピング力を働かせるから,前者の「前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に抵抗発生手段を利用して減衰力を発揮する減衰部」に相当する。
そうすると,引用文献2には,本願発明1に倣って整理すると,以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されているといえる。
「抵抗発生手段を収容する筒状の第一シリンダと,
前記第一シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドと,
前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に隙間を形成する第一ピストンと,
前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に抵抗発生手段を利用して減衰力を発揮する減衰部と,
を備え,
前記第一シリンダに充填される前記抵抗発生手段としては,例えば金属またはプラスチックスの粉粒体が適しているものの,要求される摩擦係数および耐摩耗性を持つものであれば何でもよく,
前記第一シリンダの容積および形状ならびに第一ピストンの大きさおよび截頭円錐台部の傾斜角度を変えたり,あるいは第一シリンダに入れる抵抗発生手段の種類や粒径,注入量等を選択することにより,第一ピストンの移動時に発生する抵抗力を調整することができる,
ダンパ。」
また,前述したように,引用文献5には,「制振対象となる構造体に制振部材を設けてなる制振構造であって,前記制振部材は,中空体と,前記中空体内に上部に一部空間を残して充填され前記構造体が振動を受けた際に前記中空体内で運動する粉粒体と,振動時に前記粉粒体に接して力を及ぼすように前記中空体内に取り付けられ前記中空体に対し相対的に振動する振動体より構成され,粉粒体は,ゴムなどの樹脂で形成され,構造体の振動エネルギーは,粉粒体間の弾性変形,摩擦,衝突などのエネルギーに変換され,すなわち,振動エネルギーは散逸され,制振作用によって,構造体の振動は抑制される,制振構造。」が記載されるとともに,引用文献6には,「容器内に粉粒体材料を封入して成る防振部材であって,粉粒体材料に粘弾性材料粒子が混入され,混入される粘弾性材料粒子がゴム系材料であり,粘弾性材料粒子の混入により,粉粒体材料の粒子間の摩擦接触減衰が増加し,その混入量により損失を広範囲に調整することが可能となる,防振装置。」が記載されているから,中空体又は容器に封入(収容)した粉粒体を利用した振動減衰装置において,粉粒体を弾性を有するゴム材料(エラストマー)で形成することは,本願出願前において周知の技術であるということは一応できる。
しかしながら,引用文献2における制振技術は,段落【0024】,【0028】に記載されているとおり,粉粒体の粘性抵抗を利用したものであり,粉粒体は,弾性を有さない金属やプラスチックが適しているとされ,【0023】に記載のとおり,「主機1に押されて第1のステー32が右に動く時,・・・(中略)・・・容器31の内壁と抵抗体30の截頭円錐台部30bとには挟まれた部分の粉粒体38は周囲に押し出され」,そのときにこの粉粒体の逃げ込むための空間(振動抑制装置3上部の空間)が不可欠な構成となっている。
そして,引用文献2記載事項は,「前記第一シリンダに充填される前記抵抗発生手段としては,例えば金属またはプラスチックスの粉粒体が適しているものの,要求される摩擦係数および耐摩耗性を持つものであれば何でもよ」いとしており,引用文献2には,抵抗発生手段としての「粉粒体38」を弾性体とする記載も示唆もないし,仮に粉粒体をエラストマーとした場合には,段落【0028】の「静的変化のような緩やかな動きには小さな抵抗力のもとで相対変位の吸収を行なうことができる。」という作用効果に対して阻害要因となることから,上記粉粒体の逃げ込むための空間が不可欠な構成を前提とした引用文献2記載事項の粉粒体として上記周知の技術の弾性粉粒体を適用することは,当業者には想起しえないことといわざるをえない。
また,引用文献5,引用文献6に記載された上記周知の技術は弾性粉粒体を利用した制振技術であるが,本願発明1や引用文献2に記載された制振技術の作動原理とは異なるものであるから,引用発明1に引用文献2記載事項を適用した上で,さらに,上記周知の技術を採用することは,後知恵によるものといえ,当業者であっても容易に想到し得るものではない。
さらに,引用文献2記載事項は,「前記第一シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドと,前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に隙間を形成する第一ピストン」であり,前記第一シリンダ内に(第一シリンダの)「軸方向に」移動可能に挿入されるロッドと前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に「前記抵抗発生手段が通過可能な環状の」隙間を形成する第一ピストンではないから,引用文献2に「前記第一シリンダの容積および形状ならびに第一ピストンの大きさおよび截頭円錐台部の傾斜角度を変えたり,あるいは第一シリンダに入れる抵抗発生手段の種類や粒径,注入量等を選択すること」が示唆されてはいるものの,引用発明1に引用文献2記載事項を適用しても,前記第一シリンダとの間に「前記粒状体が通過可能な環状の」隙間を形成する第一ピストンという構成には,至らない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明1,引用文献2記載事項,及び,上記周知の技術に基いて,容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)引用発明3を主引用発明とした場合
ア.対比
(ア)本願発明1と引用発明3とを対比すると,後者の「車輪側チューブ2」は前者の「第一シリンダ」に,以下同様に,「上方ロッド体4及び下方ロッド体5」は「ロッド」に,「ピストン体3」は「第一ピストン」に,「ダンパ部」は「減衰部」に,「懸架バネS」又は「気室A」は「弾性部」に,「フロントフォーク」は「ダンパ」に,それぞれ相当する。
(イ)後者の「車輪側チューブ2」には,作動油と気室A1のエアが収容されており,チューブであるから筒状であることは明らかであるから,後者の「車輪側チューブ2」と前者の「エラストマーで形成されて弾性を有する粒状体を収容する筒状の第一シリンダ」とは「筒状の第一シリンダ」において共通する。
(ウ)後者は「両ロッド型のダンパ部は,ピストン体3と,このピストン体3にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体4および下方ロッド体5と,この上方ロッド体4の先端側を貫通させる上方軸受部材6および下方ロッド体5の先端側を貫通させる下方軸受部材7とを有し,ダンパ部にあって,上方軸受部材6が車輪側チューブ2に連結され,ピストン体3が車輪側チューブ2に摺接し,下方軸受部材7が車輪側チューブ2にシール71の配在下に密接され,」「車輪側チューブ2をピストン体3が昇降」するものであるところ,後者の「ピストン体3及びピストン体3にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体4および下方ロッド体5」が車輪側チューブ2内に軸方向へ移動可能に挿入されることは明らかであるから,上記(ア)の相当関係を踏まえると,後者の「上方ロッド体4および下方ロッド体5」は前者の「前記第一シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド」に相当する。
(エ)後者は「このピストン体3にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体4および下方ロッド体5」であるから,後者の「ピストン体3」は「上方ロッド体4及び下方ロッド体5」に「連結され」ることは明らかであり,後者は「車輪側チューブ2内をピストン体3が昇降する」から,後者の「ピストン体3」と前者の「前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に前記粒状体が通過可能な環状の隙間を形成する第一ピストン」とは,「前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置される第一ピストン」において共通する。
(オ)後者は「両ロッド型のダンパ部は,ピストン体3と,このピストン体3にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体4および下方ロッド体5と,この上方ロッド体4の先端側を貫通させる上方軸受部材6および下方ロッド体5の先端側を貫通させる下方軸受部材7とを有」するものであるところ,後者の「ダンパ部」は「ピストン体3と,このピストン体3にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体4および下方ロッド体5と」を有することは明らかである。
(カ)後者は「ピストン体3は,上方油室R1からの作動油の下方油室R2への通過を許容して所定の大きさの伸側減衰力を発生する伸側減衰バルブ3aと,反対に,下方油室R2からの作動油の上方油室R1への通過を許容して所定の大きさの圧側減衰力を発生する圧側減衰バルブ3bとを有し,」「フォーク本体が伸縮することで,車輪側チューブ2内をピストン体3が昇降し,伸側減衰バルブ5aと圧側減衰バルブ6とに依って所定の大きさの減衰力を発生する」ものであるところ,後者の「ダンパ部」は,伸縮時に減衰力を発生することは明らかであるから,上記(オ)と上記(ア)の相当関係を踏まえると,後者の「ダンパ部」と前者の「前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に粒状体を利用して減衰力を発揮する減衰部」とは,「前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に減衰力を発揮する減衰部」において共通する。
(キ)後者は「フォーク本体の伸縮時に,懸架バネSの伸縮に依るバネ力と,気室Aの膨縮に依るエアバネ力との合力からなるバネ特性を具現化し得」るものであるところ,後者の「懸架バネS」又は「気室A」は前者の「伸縮時に弾性力を発揮する弾性部」に相当する。
(ク)後者の「フロントフォーク」は,「車輪側チューブ2」と,「上方ロッド体4および下方ロッド体5」と,「ピストン体3」と,「ダンパ部」と,「懸架バネS」と「気室A」を備えることは明らかである。
(ケ)後者は「両ロッド型のダンパ部は,ピストン体3と,このピストン体3にそれぞれの基端が連結される上方ロッド体4および下方ロッド体5と,」「を有し」「ピストン体3は,上方油室R1からの作動油の下方油室R2への通過を許容して所定の大きさの伸側減衰力を発生する伸側減衰バルブ3aと,反対に,下方油室R2からの作動油の上方油室R1への通過を許容して所定の大きさの圧側減衰力を発生する圧側減衰バルブ3bとを有し,」「フォーク本体の伸縮時に,懸架バネSの伸縮に依るバネ力と,気室Aの膨縮に依るエアバネ力との合力からなるバネ特性を具現化し得,フォーク本体が伸縮することで,車輪側チューブ2内をピストン体3が昇降し,伸側減衰バルブ5aと圧側減衰バルブ6とに依って所定の大きさの減衰力を発生する」ものであるところ,後者の「ダンパ部」と「懸架バネS」又は「気室A」は,フォーク本体の伸縮時に減衰力とバネ力を同時に発生するように連結されていることは明らかであるから,前者の「前記減衰部と前記弾性部は,前記減衰力と前記弾性力が並列に発揮されるように連結されている」ことに相当する。
(コ)そうすると,両者は,
「筒状の第一シリンダと,
前記第一シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと,
前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置される第一ピストンと,
前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に減衰力を発揮する減衰部と,
伸縮時に弾性力を発揮する弾性部とを備え,
前記減衰部と前記弾性部は,前記減衰力と前記弾性力が並列に発揮されるように連結されている,
ダンパ」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。
<相違点’>
筒状の第一シリンダと,前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置される第一ピストンと,前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に減衰力を発揮する減衰部に関して,本願発明1では,第一シリンダが「エラストマーで形成されて弾性を有する粒状体を収容する」ものであり,前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに「前記第一シリンダとの間に前記粒状体が通過可能な環状の隙間を形成する」第一ピストンと,前記ロッドと前記第一ピストンとを有して構成されて伸縮時に「粒状体を利用して」減衰力を発揮する減衰部であるのに対して,引用発明3では,第一シリンダが「作動油」と「気室A1のエア」を収容するものであり,「ピストン体3は,上方油室R1からの作動油の下方油室R2への通過を許容して所定の大きさの伸側減衰力を発生する伸側減衰バルブ3aと,反対に,下方油室R2からの作動油の上方油室R1への通過を許容して所定の大きさの圧側減衰力を発生する圧側減衰バルブ3bとを有し,」「フォーク本体が伸縮することで,車輪側チューブ2内をピストン体3が昇降し,伸側減衰バルブ5aと圧側減衰バルブ6とに依って所定の大きさの減衰力を発生する」点。
イ.相違点の判断

相違点’における本願発明の発明特定事項は,上記(1)ア(ケ)の相違点における本願発明1の発明特定事項と同じである。
引用文献2における制振技術は,段落【0024】,【0028】に記載されているとおり,粉粒体の粘性抵抗を利用したものであり,粉粒体は,弾性を有さない金属やプラスチックが適しているとされ,【0023】に記載のとおり,「主機1に押されて第1のステー32が右に動く時,・・・(中略)・・・容器31の内壁と抵抗体30の截頭円錐台部30bとには挟まれた部分の粉粒体38は周囲に押し出され」,そのときにこの粉粒体の逃げ込むための空間(振動抑制装置3上部の空間)が不可欠な構成となっている。
そして,引用文献2記載事項は,「前記第一シリンダに充填される前記抵抗発生手段としては,例えば金属またはプラスチックスの粉粒体が適しているものの,要求される摩擦係数および耐摩耗性を持つものであれば何でもよ」いとしており,引用文献2には,抵抗発生手段としての「粉粒体38」を弾性体とする記載も示唆もないし,仮に粉粒体をエラストマーとした場合には,段落【0028】の「静的変化のような緩やかな動きには小さな抵抗力のもとで相対変位の吸収を行なうことができる。」という作用効果に対して阻害要因となることから,上記粉粒体の逃げ込むための空間が不可欠な構成を前提とした引用文献2記載事項の粉粒体として上記周知の技術の弾性粉粒体を適用することは,当業者には想起しえないことといわざるをえない。
また,引用文献5,引用文献6に記載された上記周知の技術は弾性粉粒体を利用した制振技術であるが,本願発明1や引用文献2に記載された制振技術の作動原理とは異なるものであるから,引用発明3に引用文献2記載事項を適用した上で,さらに,上記周知の技術を採用することは,後知恵によるものといえ,当業者であっても容易に想到し得るものではない。
さらに,引用文献2記載事項は,「前記第一シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドと,前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に隙間を形成する第一ピストン」であり,前記第一シリンダ内に(第一シリンダの)「軸方向に」移動可能に挿入されるロッドと前記ロッドに連結されて前記第一シリンダ内に配置されるとともに前記第一シリンダとの間に「前記粒状体が通過可能な環状の」隙間を形成する第一ピストンではないから,引用文献2に「前記第一シリンダの容積および形状ならびに第一ピストンの大きさおよび截頭円錐台部の傾斜角度を変えたり,あるいは第一シリンダに入れる抵抗発生手段の種類や粒径,注入量等を選択すること」が示唆されてはいるものの,引用発明3に引用文献2記載事項を適用しても,前記第一シリンダとの間に「前記粒状体が通過可能な環状の」隙間を形成する第一ピストンという構成には,至らない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明3,引用文献2記載事項,及び,上記周知の技術に基いて,容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の発明特定事項を全て含み,さらに限定して発明を特定するものである。
してみると,本願発明2は,上記1(1)で本願発明1について検討したのと同じ理由により,引用発明1,引用文献2記載事項,及び,上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明3について
本願発明3は,本願発明1の発明特定事項を全て含み,さらに限定して発明を特定するものである。
上記第4の(4)のとおり,引用文献4に記載された事項は,流体を利用する流体ダンパに関するものであり,粒状体により減衰力を発揮するものではないことから,本願発明3は,上記1(2)で本願発明1について検討した理由を踏まえると,引用発明3,引用文献2記載事項,引用文献4に記載された事項,及び,上記周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6.むすび
以上のとおり,本願発明1,2は,引用発明1,引用文献2記載事項,及び,上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。
また,本願発明1は,引用発明3,引用文献2記載事項,及び,上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。
さらに,本願発明3は,引用発明3,引用文献2記載事項,引用文献4に記載された事項,及び,上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-09-07 
出願番号 特願2016-143561(P2016-143561)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 保田 亨介  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 藤井 昇
八木 誠
発明の名称 ダンパ  
代理人 石川 憲  
代理人 石川 憲  

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