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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
管理番号 1377745
異議申立番号 異議2018-700853  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-18 
確定日 2020-07-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6313029号発明「ロール製品パッケージ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6313029号の特許請求の範囲を令和 元年 7月18日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6313029号の請求項1?5に係る特許を取り消す。 特許第6313029号の請求項6及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6313029号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25年11月27日の出願であって、平成30年 3月30日にその特許権の設定登録がされ、平成30年 4月18日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年10月18日:特許異議申立人村上清子(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
平成30年12月 6日付け:取消理由通知書
平成31年 1月29日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成31年 2月 5日:特許権者による訂正請求書を補正対象とする手続補正書の提出
平成31年 4月 3日:申立人による意見書の提出
令和 元年 5月23日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 元年 7月18日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下本訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、その訂正を「本件訂正」という。)
令和 元年 8月26日:申立人による意見書の提出
(なお、本件訂正請求がされたことにより、上記平成31年 1月29日に提出された訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。)


第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6313029号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(訂正事項1)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品が2plyの場合、巻長が65?95m、コアを除く1ロールの質量が200?350g、巻き硬さが1.0?3.0mmであり、前記ロール製品が1plyの場合、巻長が125?185m、コアを除く1ロールの質量が250?430g、巻き硬さが0.5?2.5mmであり、
前記ロール製品が2plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.020?0.100(mm/(g/m^(2)))であり、前記ロール製品が1plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.015?0.080(mm/(g/m^(2)))であり、
前記フィルムの坪量が25?45g/m^(2)である」とあるのを、
「ポリエチレンからなり、密度が0.86?0.91g/cm^(3)、坪量が25.5?40.5g/m^(2)、厚さが29?47μmのフィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品を縦に2段で4個、キャラメル包装又はガゼット包装にて収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品パッケージは、前記ロール製品が前記包装袋に接するよう前記ロール製品の配置された寸法と略同一寸法で、
前記ロール製品が2plyの場合、巻長が65?95m、コアを除く1ロールの質量が200?350g、巻き硬さが1.2?2.3mmであり、前記ロール製品が1plyの場合、巻長が125?185m、コアを除く1ロールの質量が250?430g、巻き硬さが0.7?1.8mmであり、
前記ロール製品が2plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.037?0.071(mm/(g/m^(2)))であり、前記ロール製品が1plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.021?0.055(mm/(g/m^(2)))である」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2?5についても同様に訂正する。)
(訂正事項2)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記ロール製品が2plyの場合、坪量が13.1?17.0g/m^(2)であり、前記ロール製品が1plyの場合、坪量が16.5?21.5g/m^(2)である」とあるのを
「前記ロール製品が2plyの場合、坪量が1ply当たり15.0?16.8g/m^(2)であり、前記ロール製品が1plyの場合、坪量が19.0?21.2g/m^(2)である」に訂正する。
(訂正事項3)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「前記持手部が厚さ40?130μmのフィルムからなる」とあるのを、「前記持手部が厚さ40?130μm、幅が10?40mmのポリプロピレンを含むフィルムからなり、該把手部の両端部がそれぞれ前記包装袋の対向する短編側の側面に接合されている」に訂正する。
(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

ここで、訂正前の請求項1?7は、請求項2?7が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用するものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項に規定する一群の請求項1?7について請求されている。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の坪量が25?45g/m^(2)である包装袋のフィルムについて、「ポリエチレンからなり、密度が0.86?0.91g/cm^(3)、坪量が25.5?40.5g/m^(2)、厚さが29?47μm」であるものに限定し、包装袋に収納されるロール製品について、訂正前の「複数個」から「縦に2段で4個、キャラメル包装又はガゼット包装にて収納してなる」ものに限定し、ロール製品が2plyの場合の(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))について、「0.020?0.100(mm/(g/m^(2)))」から「0.037?0.071(mm/(g/m^(2)))」に、ロール製品が1plyの場合の(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))について、「0.015?0.080(mm/(g/m^(2)))」から「0.021?0.055(mm/(g/m^(2)))」にその範囲を狭め、さらにロール製品パッケージについて、「前記ロール製品が前記包装袋に接するよう前記ロール製品の配置された寸法と略同一寸法で」あるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0013】の「包装袋2は、例えば、チューブ状フィルムの内部に複数個のロール製品6を配置し、公知の包装方法(例えば、キャラメル包装、ガゼット包装等)で包装されている。なお、図1の例では、ロール製品6は、平面上に縦2個、横2個で配置され、これを包装袋2で包装している。
ロール製品パッケージ100に収納されるロール製品6のロール数は特に制限されないが、好ましくは2?12個、より好ましくは4?8個、さらに好ましくは4?6個、最も好ましくは4個である。」の記載、【0026】?【0037】の実施例1?12(特に【表1】、【表2】)のポリエチレンフィルムの密度、坪量、厚さの記載、トイレットロール製品の巻き硬さ、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))の記載、及び図2にロール状のものが1つの袋内に、縦に2段で4個入っていることが図示されていることに基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記訂正事項2は、本件訂正前の請求項3のロール製品の坪量について、2plyの場合、坪量の表記が1ply当たりであることが明瞭でなかったことを「1ply当たり」と明瞭とし、さらに「13.1?17.0g/m^(2)」から「15.0?16.8g/m^(2)」にその数値範囲を狭め、1plyの場合、「16.5?21.5g/m^(2)」から「19.0?21.2g/m^(2)」にその数値範囲を狭めたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、本件特許明細書の【0026】?【0037】の実施例1?12の坪量の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
上記訂正事項3は、本件訂正前の請求項5のフィルムからなる把手部について、「幅が10?40mmのポリプロピレンを含むフィルムからなり、該把手部の両端部がそれぞれ前記包装袋の対向する短編側の側面に接合されている」ものに限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項3は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3は、訂正前の【請求項6】、本件特許明細書の【0023】、【0024】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
上記訂正事項4は、請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項4は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
上記訂正事項5は、請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項5は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。


第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリエチレンからなり、密度が0.86?0.91g/cm^(3)、坪量が25.5?40.5g/m^(2)、厚さが29?47μmのフィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品を縦に2段で4個、キャラメル包装又はガゼット包装にて収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品パッケージは、前記ロール製品が前記包装袋に接するよう前記ロール製品の配置された寸法と略同一寸法で、
前記ロール製品が2plyの場合、巻長が65?95m、コアを除く1ロールの質量が200?350g、巻き硬さが1.2?2.3mmであり、前記ロール製品が1plyの場合、巻長が125?185m、コアを除く1ロールの質量が250?430g、巻き硬さが0.7?1.8mmであり、
前記ロール製品が2plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.037?0.071(mm/(g/m^(2)))であり、前記ロール製品が1plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.021?0.055(mm/(g/m^(2)))であるロール製品パッケージ。
【請求項2】
前記ロール製品の軸方向が上下方向となるように前記包装袋に収納され、前記包装袋の上面を跨いで、持手部の両端部がそれぞれ前記包装袋の対向する側面に接合されている請求項1記載のロール製品パッケージ。
【請求項3】
前記ロール製品が2plyの場合、坪量が1ply当たり15.0?16.8g/m^(2)であり、前記ロール製品が1plyの場合、坪量が19.0?21.2g/m^(2)である請求項1又は2記載のロール製品パッケージ。
【請求項4】
前記包装袋の所定箇所に開封用のミシン目が設けられ、該ミシン目の(カット部/非カット部)の比が、0.3?3.0である請求項1?3のいずれかに記載のロール製品パッケージ。
【請求項5】
前記持手部が厚さ40?130μm、幅が10?40mmのポリプロピレンを含むフィルムからなり、該把手部の両端部がそれぞれ前記包装袋の対向する短編側の側面に接合されている請求項2記載のロール製品パッケージ。」


第4 当審の判断
1 取消理由の概要
当審が通知した令和元年 5月23日付け取消理由通知(決定の予告)に含まれる理由の概要は、次のとおりである。

(1)(サポート要件)本件発明1?5は、以下の点で発明の詳細な説明に記載した範囲内のものでないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるから、その特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

ア ロール製品の個数、配置等について
包装されるロール製品(トイレットペーパー)の個数(重量)の増加及び配置によって、破れる可能性が高くなることは技術常識であるところ、本件特許明細書には、実施例において、個数が4個かつ図2で図示された配置のものしか確認しておらず、本件発明1の範囲に含まれる、例えば個数が12個の場合や他の配置においても破れやすさに関して当該実施例のものと同様の結果となることが理解できない。

イ 包装方法、サイズについて
包装の形態についても、キャラメル包装、ガゼット包装等の包装の形態が、破れやすさに影響することは技術常識であるから、全ての包装の形態において、破れやすさに関して同様の結果となるとは理解できない。よって、本件特許明細書の記載からは、本件発明1の範囲に含まれる全ての包装の形態において、本件発明の課題が解決できることは理解できない。

(2)(実施可能要件)本件特許の発明の詳細な説明は、以下の点で当業者がその実施をすることができる程度に記載されていないから、その特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたロール製品パッケージが、持ち運ぶ際に破れにくいものであるとはいえないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?5について実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

2 サポート要件についての判断
(1)本件発明1について
特許請求の範囲の記載が、特許明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきであるから、以下検討する。
ア 発明の課題について
本件発明の課題は、「長巻のロール製品を包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運ぶ際に破れにくくてゴワゴワせず、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難いロール製品パッケージの提供」(【0004】)である。

イ 本件特許明細書において、持ち運ぶ際に破れにくいという課題を解決できると認識できるロール製品パッケージについて
まず、実施例において、持ち運ぶ際に破れにくいという課題を解決できると当業者が認識できるロール製品パッケージについて検討する。
(ア)実施例の官能評価について
本件特許明細書(【0026】?【0037】)には、実施例1?12のトイレットロール製品パッケージが記載されており、実施例1?12について、【0030】に記載された官能評価を行った結果が、【表1】及び【表2】に記載されている。
しかし、当該官能評価中、フィルムの破れについて評価したのは、「フィルムの強さ:トイレットロールを包装後のパッケージにおいて、フィルムの破れの有無を評価した。」(【0030】)のみである。
そして、当該「フィルムの強さ」は、単に包装した後のフィルムの状態を評価したものであるのか、何かしらの使用後のフィルムの状態を評価したものであるのか等、どのような状況でのフィルムの破れの有無を評価したものであるのか何ら記載されておらず、文言からは単に包装後のパッケージの破れの有無を評価しているとも考えられることから、持ち運ぶ際の破れにくさを表しているとは、理解できない。
ここで、特許権者は、令和 元年 7月18日の意見書の5(7)において、乙第1号証(特許第5217293号公報)、乙第2号証(特許第5518415号公報)及び乙第3号証(登録実用新案公報第3004939号公報)に示されるとおり、把手部を有するパケージの把手部やフィルムの強度の評価として、把手部を持って所定時間運んだり、上下動させることは当業者が通常行っていることであり、当該「フィルムの強さ」は、「持ち運ぶ際に(又はそれを促進する評価としての上下動で)」破れるかどうかを確認していることは明らかである旨主張する。
しかし、本件特許明細書の「フィルムの強さ」が、乙第1?3号証に記載された把手部を持って所定時間運んだり、上下動させる際のフィルムのものであることは、本件特許明細書に何ら記載されていないのであるから、特許権者の当該主張は当を得ないものである。

さらに、【表1】及び【表2】の「フィルムの強さ」が、特許権者の主張する持ち運ぶ際に破れにくいことを表しているとして以下検討する。
(イ)包装形態について
また、実施例のトイレットロール製品パッケージの包装形態は、【0026】に「表1に示す物性のポリエチレンフィルムを用意し、図2に示す形態でトイレットロール製品を包装してロール製品パッケージを得た。」と記載されているところ、図2を見ても、どのような包装形態(キャラメル包装であるのか、ガゼット包装であるのか等)のものであるのか、一義的に理解できない。
そして、令和 元年 8月26日申立人提出の意見書に添付した甲第8?13号証にも示されているように、トイレットロール製品パッケージは、包装形態によって持ち運ぶ際に力の集中する箇所が異なることが技術常識であるから、持ち運ぶ際の破れにくさは、包装形態、把手部の形態等によって異なることは明らかである。
そうすると、そもそも包装形態が明らかでない実施例1?12の結果から、本件発明1のキャラメル包装やガゼット包装のものが、持ち運ぶ際に破れにくいという課題を解決できるとは認識できず、ましてや、把手部を有しないパッケージを含む本件発明1が持ち運ぶ際に破れにくいという課題を解決できるとは認識できない。
ここで、特許権者は、令和 元年 7月18日提出の意見書の5(7)において、図2にかかる実施例のパッケージはキャラメル包装であることは図面上明らかである旨主張するが、図2には、キャラメル包装を示す折り畳み線等が一切記載されておらず、キャラメル包装のみ把手部が取り付けられるとする技術常識もないから、特許権者の主張は根拠に欠くものであり、採用できない。

(ウ)トイレットロール製品の重量について
本件特許明細書には、【0004】に「上記した長巻のロール製品は1個のロール当りの重量が大きいため、ロール製品を包装したパッケージを消費者が持ち運ぶ際、持ち手部や包装袋の底面に荷重がかかる。」、及び【0015】に、「上記した巻長、質量、巻き硬さを有する長巻のトイレットペーパーは、通常のトイレットペーパーに比べて1ロールの重量が重いため、通常のトイレットペーパー用のフィルムで包装すると、フィルムが破れやすい。」と記載されており、包装される1個のロール製品(トイレットペーパー)の重量の増加によって、破れる可能性が高くなることは技術常識である。
一方、本件特許明細書で確認したのは、コアを除く質量(g)が、2plyで318g(実施例4)、1plyで390g(実施例10)のパッケージまでであり、2plyで368g(比較例2、比較例3)、1plyの比較例5及び比較例8のパッケージの「フィルムの強さ」を参照しても、本件発明1の2plyで350g、1plyで430gのパッケージまでが破れがないとまでは理解できない。

(エ)まとめ
上記のとおり、本件特許明細書からは、本件発明1が持ち運ぶ際に破れにくいという課題を解決できることは認識できないから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲のものではない。

(2)本件発明2?5について
本件発明2?5は、上記(1)で検討したのと同じ理由で、発明の詳細な説明に記載した範囲のものでない。

(3)小括
上記のとおりであるから、本件発明1?5は、発明の詳細な説明に記載した範囲内のものでないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。

3 実施可能要件についての判断
(1)本件発明の課題には、上記2(1)アに示したとおり、持ち運ぶ際に破れにくいロール製品パッケージの提供が含まれている。

(2)そして、本件特許明細書において、具体的にフィルムの破れに関して評価したのは、「フィルムの強さ:トイレットロールを包装後のパッケージ

において、フィルムの破れの有無を評価した。」、「評価基準は5点満点で行った。5点:大変良好である、4点:良好である、3点:実用上問題ない、2点:劣る、1点:顕著に劣る。」(【0030】)のみである。
そして、当該評価の結果として【表1】及び【表2】に「1」、「3」及び「5」の記載がある。

(3)まず、「フィルムの強さ」が、持ち運ぶ際に破れにくいことを表しているかについて検討するに、上記2(1)イ(ア)で検討したのとおり、当該「フィルムの強さ」は、持ち運ぶ際の破れにくさを表しているとは、理解できない。

(4)仮に【表1】及び【表2】の「フィルムの強さ」が、持ち運ぶ際に破れにくいことを評価しているとしても、「破れの有無」は、通常、破れが有るか無いかの2段階評価と考えられ、少なくとも「5点:大変良好である」、「3点:実用上問題ない」、「1点:顕著に劣る」が、それぞれ、「破れ」のどのような状態を表しているのか、持ち運ぶ際の破れにくさをどのように表しているのかが理解できない。

(5)したがって、本件特許明細書には、本件発明1?5において、持ち運ぶ際に破れにくいロール製品パッケージについて、当業者が実施できる程度に記載されておらず、その特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものである。


第5 むすび
以上のとおり、本件発明1?5は、発明の詳細な説明に記載した範囲内のものでないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、本件特許明細書は、当業者が本件発明1?5について実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号の規定に違反してされたものであり、それぞれ同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項6及び7に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による請求項6及び7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンからなり、密度が0.86?0.91g/cm^(3)、坪量が25.5?40.5g/m^(2)、厚さが29?47μmのフィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙のシートを巻いたロール製品を縦に2段で4個、キャラメル包装又はガゼット包装にて収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品パッケージは、前記ロール製品が前記包装袋に接するよう前記ロール製品の配置された寸法と略同一寸法で、
前記ロール製品が2plyの場合、巻長が65?95m、コアを除く1ロールの質量が200?350g、巻き硬さが1.2?2.3mmであり、前記ロール製品が1plyの場合、巻長が125?185m、コアを除く1ロールの質量が250?430g、巻き硬さが0.7?1.8mmであり、
前記ロール製品が2plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.037?0.071(mm/(g/m^(2)))であり、前記ロール製品が1plyの場合、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.021?0.055(mm/(g/m^(2)))であるロール製品パッケージ。
【請求項2】
前記ロール製品の軸方向が上下方向となるように前記包装袋に収納され、前記包装袋の上面を跨いで、持手部の両端部がそれぞれ前記包装袋の対向する側面に接合されている請求項1記載のロール製品パッケージ。
【請求項3】
前記ロール製品が2plyの場合、坪量が1ply当たり15.0?16.8g/m^(2)であり、前記ロール製品が1Plyの場合、坪量が19.0?21.2g/m^(2)である請求項1又は2記載のロール製品パッケージ。
【請求項4】
前記包装袋の所定箇所に開封用のミシン目が設けられ、該ミシン目の(カット部/非カット部)の比が、0.3?3.0である請求項1?3のいずれかに記載のロール製品パッケージ。
【請求項5】
前記持手部が厚さ40?130μm、幅が10?40mmのポリプロピレンを含むフィルムからなり、該持手部の両端部がそれぞれ前記包装袋の対向する短辺側の側面に接合されている請求項2記載のロール製品パッケージ。
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-20 
出願番号 特願2013-244532(P2013-244532)
審決分類 P 1 651・ 537- ZAA (B65D)
P 1 651・ 536- ZAA (B65D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小川 悟史高橋 裕一  
特許庁審判長 高山 芳之
特許庁審判官 久保 克彦
佐々木 正章
登録日 2018-03-30 
登録番号 特許第6313029号(P6313029)
権利者 日本製紙クレシア株式会社
発明の名称 ロール製品パッケージ  
代理人 下田 昭  
代理人 赤尾 謙一郎  
代理人 栗原 和彦  
代理人 栗原 和彦  
代理人 赤尾 謙一郎  
代理人 下田 昭  

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