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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01L |
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管理番号 | 1377751 |
異議申立番号 | 異議2019-700946 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-11-22 |
確定日 | 2021-05-06 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6518788号発明「半導体デバイス用処理液の保管方法、処理液収容体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6518788号の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1-13][14-21]について訂正することを認める。 特許第6518788号の請求項1-13,15に係る特許を維持する。 特許第6518788号の請求項14,18-21に係る特許を取り消す。 特許6518788号の請求項16,17に係る特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6518788号の請求項1?21に係る特許についての出願は,平成28年12月7日に出願され,平成31年4月26日にその特許権の設定登録がされ,令和元年5月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は,以下のとおりである。 令和元年11月22日:特許異議申立人中村光代(以下「申立人」という。)による請求項1?21に係る特許に対する特許異議の申立て 令和2年3月9日付け:取消理由通知書 令和2年6月8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和2年7月20日 :申立人による意見書の提出 令和2年9月16日 :取消理由通知書(決定の予告) 令和2年11月19日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和3年1月5日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 (1)訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る 「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって, 前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が,処理液全質量に対して4?25質量%であり,Feイオンの含有量が,10質量ppt?10質量ppmであり, 前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%とする,半導体デバイス用処理液の保管方法。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100」 を,訂正後の 「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液であって, 冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって, 前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が,処理液全質量に対して4?25質量%であり,Feイオンの含有量が,1質量ppb?50質量ppbであり, 前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%とし, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,酸素を含む,半導体デバイス用処理液の保管方法。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100」 に訂正する。(請求項1を引用する請求項5?13についても同様に訂正する。) (2)訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項2に係る 「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって, 前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液を前記保管容器内に封入して,前記処理液を前記保管容器内に保管し, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,空気を含む,半導体デバイス用処理液の保管方法。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100」 を,訂正後の 「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液であって, 冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって, 前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液を前記保管容器内に封入して,前記処理液を前記保管容器内に保管し, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,空気を含む,半導体デバイス用処理液の保管方法。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100」 に訂正する。(請求項2を引用する請求項3?13についても同様に訂正する。) (3)訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項4に係る 「前記処理液中,Feイオンの含有量が,10質量ppt?10質量ppmである,請求項2又は3に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。」 を,訂正後の 「前記処理液中,Feイオンの含有量が,1質量ppb?50質量ppbである,請求項2又は3に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。」 に訂正する。(請求項4を引用する請求項5?13についても同様に訂正する。) (4)訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項14に係る 「保管容器と,前記保管容器内に収容された,ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体であって, 前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が,処理液全質量に対して4?25質量%であり,Feイオンの含有量が,10質量ppt?10質量ppmであり, 前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%である,処理液収容体。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100」 を,訂正後の 「保管容器と,前記保管容器内に収容された,ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,4級水酸化アンモニウム類と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体であって, 前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が,処理液全質量に対して4?25質量%であり,Feイオンの含有量が,1質量ppb?50質量ppbであり, 前記処理液中,前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%であり, 前記保管容器内の空隙率が12?20体積%であり, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,酸素を含む,処理液収容体。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100」 に訂正する。(請求項14を引用する請求項18?21も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項15に係る 「保管容器と,前記保管容器内に収容された,ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体であって, 前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液が前記保管容器内に封入されて,前記処理液が前記保管容器内に保管されており, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,空気を含む,処理液収容体。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100」 を,訂正後の 「保管容器と,前記保管容器内に収容された,ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,4級水酸化アンモニウム類と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体であって, 前記処理液中,前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%であり, 前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように,前記処理液が前記保管容器内に封入されて,前記処理液が前記保管容器内に保管されており, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,空気を含む,処理液収容体。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100」 に訂正する。(請求項15を引用する請求項18?21も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 (8)訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項18に 「前記保管容器の内壁の材質が樹脂である,請求項14?17のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 と記載されているのを,訂正後の 「前記保管容器の内壁の材質が樹脂である,請求項14又は15のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 に訂正する。 (請求項18を引用する請求項19?21も同様に訂正する。) (9)訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項19に 「前記保管容器の内壁の材質が,高密度ポリエチレン,高密度ポリプロピレン,6,6-ナイロン,テトラフルオロエチレン,テトラフルオロエチレンとパーフロロアルキルビニルエーテルの共重合体,ポリクロロトリフルオロエチレン,エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体,エチレン・四フッ化エチレン共重合体,及び,四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体から選ばれる1以上の樹脂である,請求項14?18のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 と記載されているのを,訂正後の 「前記保管容器の内壁の材質が,高密度ポリエチレン,高密度ポリプロピレン,6,6-ナイロン,テトラフルオロエチレン,テトラフルオロエチレンとパーフロロアルキルビニルエーテルの共重合体,ポリクロロトリフルオロエチレン,エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体,エチレン・四フッ化エチレン共重合体,及び,四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体から選ばれる1以上の樹脂である,請求項14,15,及び,18のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 に訂正する。 (請求項19を引用する請求項20及び21も同様に訂正する。) (10)訂正事項10 訂正前の特許請求の範囲の請求項20に, 「前記保管容器の内壁の材質が,分子内にフッ素原子を含むフッ素系樹脂である,請求項14?19のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 と記載されているのを,訂正後の 「前記保管容器の内壁の材質が,分子内にフッ素原子を含むフッ素系樹脂である,請求項14,15,18,及び,19のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 に訂正する。 (請求項20を引用する請求項21も同様に訂正する。) (11)訂正事項11 訂正前の特許請求の範囲の請求項21に, 「前記保管容器が,開口部を複数有する,請求項14?20のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 と記載されているのを,訂正後の 「前記保管容器が,開口部を複数有する,請求項14,15,18,19,及び,20のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 に訂正する。 (12)一群の請求項について 訂正前の請求項1?13について,訂正事項1,2を含む請求項1,2の記載を,その他の請求項3?13がそれぞれ引用しているものであるから,請求項3?13は,訂正事項1,2によって記載が訂正される請求項1,2に連動して訂正されるものである。よって,訂正前の請求項1?13に対応する訂正後の請求項〔1?13〕は,特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また,訂正前の請求項14?21について,訂正事項4,5を含む請求項14,15の記載を,その他の請求項16?21がそれぞれ引用しているものであるから,請求項16?21は,訂正事項4,5によって記載が訂正される請求項14,15に連動して訂正されるものである。よって,訂正前の請求項14?21に対応する訂正後の請求項〔14?21〕は,特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2.訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について (1.1)訂正の目的の適否 訂正事項1は,以下の限定を含むものである。 ア 請求項1の「半導体デバイス用処理液を保管容器内に保管する」を「半導体デバイス用処理液であって,冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する」と限定すること。 イ 請求項1の「Feイオンの含有量」を「10質量ppt?10質量ppm」から「1質量ppb?50質量ppb」と限定すること。 ウ 請求項1の「保管容器」について,「保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,酸素を含む」と限定すること。 すなわち,訂正事項1は上記ア?ウの限定により特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (1.2)新規事項の有無 上記(1.1)アの事項は,本件特許の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の段落0006の記載に基づくものである。 上記(1.1)イの事項は,当初明細書等の段落0019の記載に基づくものである。 上記(1.1)ウの事項は当初明細書等の段落0072の記載に基づくものである。 以上によれば,訂正事項1は当初明細書等の上記の記載に基づくものであるといえる。よって,訂正事項1は当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,新規事項を追加するものではない。 (1.3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は,本件訂正前の請求項1に係る発明及び請求項2?13に係る発明の技術的範囲を狭めるものであり,それらのカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。 (2)訂正事項2について (2.1)訂正の目的の適否 訂正事項2は,上記(1.1)アに示した限定と同様の限定をするものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2.2)新規事項の有無 訂正事項2は,上記(1.1)アに示した限定と同様の限定をするものであるから,上記(1.2)に示したとおり,当初明細書等の段落0006に記載された事項に基づくものであるといえる。よって,訂正事項2は当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,新規事項を追加するものではない。 (2.3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は,本件訂正前の請求項2に係る発明及び請求項2?13に係る発明の技術的範囲を狭めるものであり,それらのカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。 (3)訂正事項3について (3.1)訂正の目的の適否 訂正事項3は,上記(1.1)イに示した限定と同様の限定をするものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3.2)新規事項の有無 訂正事項3は,上記(1.1)イに示した限定と同様の限定をするものであるから,上記(1.2)に示したとおり,当初明細書等の段落0019に記載された事項に基づくものであるといえる。よって,訂正事項3は当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,新規事項を追加するものではない。 (3.3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は,本件訂正前の請求項4に係る発明及び請求項5?13に係る発明の技術的範囲を狭めるものであり,それらのカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。 (4)訂正事項4について (4.1)訂正の目的の適否 訂正事項4は,以下の限定を含むものである。 ア 請求項14の「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液」が,さらに「4級水酸化アンモニウム類」を含有することを限定すること。 イ 請求項14の「Feイオンの含有量」を「10質量ppt?10質量ppm」から「1質量ppb?50質量ppb」と限定すること。 ウ 請求項14の「半導体デバイス用処理液」中の「水の含有量」を「処理液全質量に対して60?98質量%」と限定すること。 エ 「保管容器中の空隙率」を「0.01?30体積%」から「12?20体積%」と限定すること。 オ 請求項14の「保管容器」について,「保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,酸素を含む」と限定すること。 すなわち,訂正事項1は上記ア?オの限定により特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (4.2)新規事項の有無 上記(4.1)アの事項は,当初明細書等の段落0052の記載に基づくものである。 上記(4.1)ウの事項は,当初明細書等の段落0014の記載に基づくものである。 上記(4.1)エ,オの事項は,当初明細書等の段落0072に基づくものである。 また,上記(4.1)イは上記(1.1)イと同様の限定であり,上記(1.2)で示したとおり,当初明細書等の段落0019の記載に基づくものである。 以上によれば,訂正事項4は当初明細書等の上記の記載に基づくものであるといえる。よって,訂正事項4は当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,新規事項を追加するものではない。 (4.3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は,本件訂正前の請求項14に係る発明及び請求項16?21に係る発明の技術的範囲を狭めるものであり,それらのカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。 (5)訂正事項5について (5.1)訂正の目的の適否 訂正事項5は,上記(4.1)のア,ウ,エに示したのと同様の限定を含むものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (5.2)新規事項の有無 上記(4.2)に示したとおり,上記(4.1)のア,ウ,エの限定は,当初明細書等の段落0052,0014,0072の記載にそれぞれ基づくものであるといえる。よって,上記(4.1)のア,ウ,エに示したのと同様の限定を含む訂正事項5も,当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,新規事項を追加するものではない。 (5.3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は,本件訂正前の請求項15に係る発明及び請求項16?21に係る発明の技術的範囲を狭めるものであり,それらのカテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。 (6)訂正事項6?7について (6.1)訂正の目的の適否 訂正事項6?7は,いずれも請求項の削除を目的とするものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (6.2)新規事項の有無 訂正事項6?7は,いずれも請求項を削除するものであるから,当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (6.3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6?7は,いずれも請求項を削除するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。 (7)訂正事項8?11について (7.1)訂正の目的の適否 訂正事項8?11は,いずれも引用請求項数を削減して特許請求の範囲を減縮するものであるから,特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (7.2)新規事項の有無 訂正事項8?11は,いずれも引用請求項数を削減して特許請求の範囲を減縮するものであるから,当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。 (7.3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項8?11は,いずれも引用請求項数を削減して特許請求の範囲を減縮するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。 (8)小括 以上のとおり,本件訂正請求による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-13〕[14-21]について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?21に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」?「本件発明21」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1?21に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液であって, 冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって, 前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が,処理液全質量に対して4?25質量%であり,Feイオンの含有量が,1質量ppb?50質量ppbであり, 前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%とし, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,酸素を含む,半導体デバイス用処理液の保管方法。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 【請求項2】 ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液であって, 冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって, 前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液を前記保管容器内に封入して,前記処理液を前記保管容器内に保管し, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,空気を含む,半導体デバイス用処理液の保管方法。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 【請求項3】 前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が,処理液全質量に対して1?30質量%である,請求項2に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項4】 前記処理液中,Feイオンの含有量が,1質量ppb?50質量ppbである,請求項2又は3に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項5】 前記保管容器内の空隙率が1?25体積%である,請求項1?4のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項6】 前記保管容器内の空隙率が12?20体積%である,請求項1?5のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項7】 前記半導体デバイス用処理液が,さらに,腐食防止剤を含む請求項1?6のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項8】 前記半導体デバイス用処理液が,さらに,水溶性有機溶剤及びアルカノールアミン類の少なくとも一方を含む請求項1?7のいずれか1項に記載の半導体デバ イス用処理液の保管方法。 【請求項9】 前記半導体デバイス用処理液が,さらに,4級水酸化アンモニウム類を含む請求項1?8のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項10】 前記半導体デバイス用処理液が,さらに,フッ化物を含む請求項1?9のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項11】 前記半導体デバイス用処理液が,さらに,キレート剤を含む請求項1?10のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項12】 前記腐食防止剤が,下記式(A)?式(C)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7?11のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【化1】 前記式(A)において,R^(1A)?R^(5A)は,それぞれ独立に,水素原子,炭化水素基,水酸基,カルボキシ基,又は,アミノ基を表す。ただし,構造中に水酸基,カルボキシ基,及び,アミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。 前記式(B)において,R^(1B)?R^(4B)は,それぞれ独立に,水素原子,又は,炭化水素基を表す。 前記式(C)において,R^(1C),R^(2C)及びR^(N)は,それぞれ独立に,水素原子,又は,炭化水素基を表す。また,R^(1C)とR^(2C)とが結合して環を形成してもよい。 【請求項13】 前記半導体デバイス用処理液のpHが6?11である請求項1?12のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項14】 保管容器と,前記保管容器内に収容された,ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,4級水酸化アンモニウム類と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体であって, 前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか種の総含有量が,処理液全質量に対して4?25質量%であり,Feイオンの含有量が,1質量ppb?50質量ppbであり, 前記処理液中,前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%であり, 前記保管容器内の空隙率が12?20体積%であり, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,酸素を含む,処理液収容体。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 【請求項15】 保管容器と,前記保管容器内に収容された,ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,4級水酸化アンモニウム塩と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体であって, 前記処理液中,前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%であり, 前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように,前記処理液が前記保管容器内に封入されて,前記処理液が前記保管容器内に保管されており, 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,空気を含む,処理液収容体。 なお,空隙率は,以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 (削除) 【請求項18】 前記保管容器の内壁の材質が樹脂である,請求項14又は15に記載の処理液収容体。 【請求項19】 前記保管容器の内壁の材質が,高密度ポリエチレン,高密度ポリプロピレン,6,6-ナイロン,テトラフルオロエチレン,テトラフルオロエチレンとパーフロロアルキルビニルエーテルの共重合体,ポリクロロトリフルオロエチレン,エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体,エチレン・四フッ化エチレン共重合体,及び,四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体から選ばれる1以上の樹脂である,請求項14,15及び18のいずれか1項に記載の処理液収容体。 【請求項20】 前記保管容器の内壁の材質が,分子内にフッ素原子を含むフッ素系樹脂である,請求項14,15,18及び19のいずれか1項に記載の処理液収容体。 【請求項21】 前記保管容器が,開口部を複数有する,請求項14,15,18,19及び20のいずれか1項に記載の処理液収容体。」 なお,以下においては,「空隙率」とは以下の式(1)によって求められるものを意味するものとして検討を行う。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 第4 取消理由通知(決定の予告)における取消理由の概要 訂正前の請求項1?21に係る特許に対して,当審が令和2年9月16日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由(以下,単に「取消理由」という。)の概要は,以下のとおりである。 1.(進歩性)請求項14?21に係る発明は,その優先権主張の日前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基いて,その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項14?21に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 引用例1.特開2012-195590号公報(甲1号証) 引用例2.国際公開第2009/078123号 引用例3.特開平10-272492号公報 引用例4.特開2001-261312号公報(甲4号証) 引用例5.“ヒドロキシルアミンに係る爆発災害等の防止について,”[online],平成13年6月11日,厚生労働省労働基準局,インターネット,<URL:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-42/hor1-42-37-1-0.htm>(甲7号証) 引用例6.“ドラムカタログ”,[online],インターネット・アーカイブ ウェイバック・マシン(Internet Archive Wayback Machine)の保存日:2015年11月23日,コダマ樹脂工業株式会社,インターネット,<URL:http://www.d-kjk.co.jp/catalog/pdf/drum.pdf>(甲8号証) 引用例7.”コダマの「タマカン」”,[online],2010年4月,コダマ樹脂工業株式会社,インターネット,<URL:http://www.d-kjk.co.jp/catalog/pdf/tamakan.pdf>(甲10号証) 第5 引用例の記載 1.引用例1の記載と引用発明1 (1)引用例1の記載 取消理由において引用した引用例1(特開2012-195590号公報:甲1号証)には,次の記載がある。(下線は当審により付加。以下同じ。) 「【0002】 本発明は,例えば,半導体基材上の,好ましからざるレジスト膜,エッチング後,およびアッシング後残留物を除去することを含む種々の用途のために使用できるクリーニング組成物を提供する。特に,本発明は,有機成分の使用を最小化するラインの終端側での(back-end-of-the-line)作業のために特に有用であるクリーニング組成物を提供する。」 「【0038】 本発明の別の態様では,半導体から残留物を除去するのに有用な組成物は,約4?約10wt%のヒドロキシルアミン;約60?約80wt%の水;約0.1?約1.0wt%の腐食防止剤;約0?約30wt%の水混和性溶媒;および約10?約25wt%のpKa<9.0を有するアルカノールアミンを含むか,これらから本質的に成るかおよび/またはこれらからなる。本発明の別の態様では,半導体から残留物を除去するのに有用な組成物は,約4?約10wt%のヒドロキシルアミン;約60?約80wt%の水;約0.1?約1.0wt%の腐食防止剤;約10?約25wt%のpKa<9.0を有するアルカノールアミンを含むか,これらから本質的に成るかおよび/またはこれらからなる。本発明は,さらに,約2?約12(または約2?約15)%,または約2?約10%,または約4?約10%,または約1?約10%,または約5?約7.5wt%のヒドロキシルアミン;約50?約80%,または約55?約80%,または約60?約80%,または約60?約70wt%の水;約0.01?約5.0%,または約0.01?約3%,または約0.1?1wt%の腐食防止剤;pKa<9.0を有するアルカノールアミン,水混和性溶媒,およびそれらの混合物からなる群から選択される約5?約42または約5?約45wt%の成分(ここで該アルカノールアミンは,約5?約42または約5?約45%,または約5?約25%,または約10?約25%,または約0?約42または約0?約45wt%存在し,そして該水混和性溶媒は,約5?約42または約5?約45%,または約5?約30%,または約10?約25%,または約0?約42または約0?約45wt%存在する);および他の添加物を有するかまたは有さない,約0?約5%または約0.1?約2wt%の金属キレート剤を含むか,これらから本質的に成るかおよび/またはこれらからなる半導体から残留物を除去するのに有用な組成物を含む。(質量)パーセンテージは,全組成物に基づく。アルカノールアミンおよび水混和性溶媒は,両者が組成物中に存在する場合,さらに,全ての規定された質量パーセンテージと組み合わせた明細書中に記載された比のいずれにおいても使用されることができることに留意する。任意の本明細書中に記載された組成物は,本発明の方法において有用である。本発明のクリーニング組成物は,典型的には,すべての固体が水性系媒体中に溶解されるまで,容器室温で容器中において共に成分を混合することによって調製される。」 (2)引用発明1 上記によれば,引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「半導体から残留物を除去するのに有用なクリーニング組成物であって, 前記クリーニング組成物は, 約4?約10wt%のヒドロキシルアミン; 約60?約80wt%の水; 約0.1?約1.0wt%の腐食防止剤; 約0?約30wt%の水混和性溶媒; および約10?約25wt%のpKa<9.0を有するアルカノールアミンを含み, すべての固体が水性系媒体中に溶解されるまで容器中において共に成分を混合することによって調製された, クリーニング組成物。」 2.引用例2?7の記載 (1)引用例2の記載 取消理由で引用した引用例2(国際公開第2009/078123号)には,次の記載がある。 「[0001] 本発明は電子材料用洗浄剤及び洗浄方法に関する。更に詳しくはフラットパネルディスプレイ,フォトマスク,ハードディスク又は半導体の基板用として好適な洗浄剤及び洗浄方法に関する。」 「[0111] <経時安定性> 50mlのガラス容器に洗浄剤45mlを採り,5℃及び50℃の条件下で6ヶ月静置保存し,下記の評価点に従い,経時安定性を評価した。 ◎:5℃,50℃いずれも外観変化なし。 ○:5℃又は50℃のいずれかでわずかに分離するが,軽く振ると均一になる。 △:5℃又は50℃いずれかでかなり分離するが,軽く振ると均一になる。 ×:5℃,50℃いずれも分離し,軽く振っても均一にならない。」 上記によれば,引用例2には,洗浄剤を空隙率10体積%で保管容器に保管することが記載されているものといえる。 (2)引用例3の記載 取消理由通知で引用した引用例3(特開平10-272492号公報)には,次の記載がある。 「【0016】なお,従来例2の高温超純水装置において,上記溶出防止処理を実施しない場合,得られた高温超純水には,Fe50ppt,Ni10ppt程度の金属イオンが含まれることが確認されている。半導体製造工程では,ウエハ表面に金属イオンが1×10^(10)atoms/cm^(2)以上あることは許容されないと考えられている。このような微量金属イオンの除去対策を講じない場合の純水中微量金属イオン濃度とウエハ表面汚染量の関係を調べた。その結果を表1に示す(測定方法は後述する)。 【0017】 【表1】 表1より,微量金属イオン未除去の場合,純水中に49?67pptのFeイオンが含まれ,このFeイオン含有純水を半導体製造工程のウエハ洗浄に使用すると,ウエハ表面に1.57?8.64×10^(10)atoms/cm^(2) のFeイオンが付着して該表面を汚染し,また,高温ほどその汚染量が多くなるという問題があることがわかる。」 (3)引用例4の記載 取消理由で引用した引用例4(特開2001-261312号公報:甲4号証)には,次の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】ヒドロキシルアミン水溶液は,従来より電子部品の製造を行う際の処理剤,洗浄剤として有用とされている。最近では,例えば超小型で,かつ高密度化した半導体集積回路等の電子材料を洗浄するために,不純物(特に金属分)の含有量のより少ない高純度で高濃度のヒドロキシルアミン水溶液が求められている。」 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】上記の各種の安定剤は,しかしながら,通常の使用法では,その効果が十分であるとは言い難い。また,一般に得られたヒドロキシルアミン水溶液には,原料中に含まれていた,あるいは製造工程において混入した不純物,例えば鉄,アルミニウム,アルカリ金属(ナトリウム,カリウム等)などの金属分が含まれている。このため,半導体などの加工や洗浄に適した純度の高いフリーのヒドロキシルアミン水溶液を得るには,加熱濃縮および蒸留操作が必要になるが,爆発の恐れがあり,不安定性で腐食性の高いヒドロキシルアミン水溶液を安全にかつ不純物を混入させずに蒸留して,高濃度,高純度のフリーヒドロキシルアミン水溶液を得ることは極めて困難であった。」 「【0015】図1に示した蒸留装置により,本発明のヒドロキシルアミン水溶液を製造する方法について詳述する。まず,出発原料である粗製ヒドロキシルアミン水溶液を原料タンクAに導入する。粗製ヒドロキシルアミン水溶液は,前述したような公知の製法により得ることができる。この粗製ヒドロキシルアミン水溶液には通常,鉄,アルミニウム,ナトリウム,カリウム,カルシウム等の不揮発性の金属成分などからなる不純物が含まれている。原料としては一般に,ヒドロキシルアミン含有量が40?60重量%,鉄の含有量が15?200ppbの範囲にある粗製ヒドロキシルアミン水溶液を用いる。製造に先立ち,粗製ヒドロキシルアミン水溶液の分解を抑制して安定化する目的で,この水溶液にトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-テトラ酢酸(CDTA)安定剤を,ヒドロキシルアミン水溶液の重量に対して0.0005?0.05重量%の範囲の量で添加する。」 「【0020】このようにして得られた本発明の高濃度・高純度フリーヒドロキシルアミン水溶液は,ヒドロキシルアミン含有量が30重量%以上となる。また,鉄の含有量は10ppb以下,好ましくは5ppb以下,更に好ましくは3ppb以下である。鉄以外の金属成分の含有量は,各金属成分について5ppb以下,好ましくは2ppb以下,更に好ましくは1ppb以下である。特に,ナトリウムおよびカリウムの含有量はそれぞれ2ppb以下であることが好ましく,更に好ましくは1ppb以下である。さらに,本発明のヒドロキシルアミン水溶液は,安定剤としてトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-テトラ酢酸を0.0005?0.5重量%含有する。」 (4)引用例5の記載 取消理由で引用した引用例5(“ヒドロキシルアミンに係る爆発災害等の防止について,”[online],平成13年6月11日,厚生労働省労働基準局,インターネット,<URL:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-42/hor1-42-37-1-0.htm>)(甲7号証)には,次の記載がある。 「ヒドロキシルアミン水溶液を取り扱う場合には,みだりに鉄等の金属と接触させ,又は金属イオンを混入させないこと。 なお,容器,配管,器具等ヒドロキシルアミン水溶液と接触する部分は,ガラス,プラスチック等,ヒドロキシルアミンに対して不活性なものを使用することが望ましいこと。」(「2ヒドロキシルアミンを取り扱うに当たって留意すべき事項」の「(3)鉄等の金属との接触防止」の項) (5)引用例6の記載 取消理由通知で引用した引用例6(“ドラムカタログ”,[online],インターネット・アーカイブ ウェイバック・マシン(Internet Archive Wayback Machine)の保存日:2015年11月23日,コダマ樹脂工業株式会社,インターネット,<URL:http://www.d-kjk.co.jp/catalog/pdf/drum.pdf>)(甲8号証)には,次の記載がある。 引用例6の第1頁には,「パワードラム」及び「ケミカルドラム」について,次の記載がある。 上記によれば,「パワードラム」が,ブロー成形で形成され,原料にポリエチレンを使用した樹脂ドラムであり,「ハイレベルな気密性」と「優れた耐薬品性」を備えた保管容器であることが理解できる。 また,引用例6の第10頁には,上記「パワードラム」について以下の記載がある。 上記の表には「パワードラム」の容量(3列目)と実容量(4列目)が記載されており,実容量/容量=空隙率が示されていると理解できる。そうすると,引用例6には,空隙率0.8体積%(POM-120:容量120L,実容量121L)から空隙率9.1体積%(PL-100-AW;容量100L,実容量110L)(PL-200-KW;容量200L,実容量220L)の「パワードラム」が記載されているものといえる。 (6)引用例7の記載 取消理由通知で引用した引用例7(”コダマの「タマカン」”,[online],2010年4月,コダマ樹脂工業株式会社,インターネット,<URL:http://www.d-kjk.co.jp/catalog/pdf/tamakan.pdf>)(甲10号証)には,次の記載がある。 「長年の経験から蓄積されたノウハウにより 生まれたコダマの「タマカン」。 高品質ポリ容器の逸品です。」(第1頁) 「高度な一体ブロー成形技術から生まれた「タマカン」。 工業用薬品はじめ,塗料,食品,医薬品,農薬などの分野で 幅広く内容液の保管,輸送にご利用頂いております。」(第1頁) また,引用例7の第9頁には,上記「タマカン」について次の記載がある。 上記において,容器の外寸から計算した体積を実容量として空隙率を求めると,引用例7には,空隙率が約20体積%(PO-30;容量30L,四体寸法φ312×H492[mm])から約44体積%(KM-346;容量10L,本体寸法W200×L263×H338[mm])の「タマカン」が記載されているものといえる。 (7)引用例2?7のまとめ ア 上記引用例2には,空隙率10%で洗浄剤を保管することが記載されている。上記引用例6には,空隙率が0.8?9.1体積%の範囲にある「パワードラム」が記載され,上記引用例7には,空隙率が約20?約44体積%の範囲にある「タマカン」が記載されている。ここで上記「パワードラム」及び「タマカン」が保管容器であることは自明である。 そうすると,空隙率が0.8?約44体積%の範囲にある保管容器で洗浄剤を保管することは,当業者に周知であったと理解できる。 イ 上記引用例3,4の記載によれば,微量金属イオン未除去の純水には49?67pptのFeイオンが含まれること,粗製ヒドロキシルアミン水溶液には通常15?200ppbの鉄が含まれており,それを3ppb以下に調整できることが当業者に周知であったと理解できる。 ウ 上記引用例5の記載によれば,爆発災害等の防止のため,ヒドロキシルアミン水溶液を保管する容器としてヒドロキシルアミンに対して不活性であるプラスチック等を用いることが,当業者に周知であったと理解できる。 エ 上記引用例6,7の記載によれば,高密度ポリエチレン製の耐薬品性容器が周知であったと理解できる。 第6 当審の判断 1.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について (1)本件発明14(29条2項)について (1.1)対比 本件発明14と引用発明1を比較する。 ア 引用発明1における「クリーニング組成物」は,「約4?約10wt%のヒドロキシルアミン」と「約60?約80wt%の水」を含み,「半導体から残留物を除去するのに有用」な組成物であるから,本件発明14における「半導体デバイス用処理液」に対応し,両者はともに,「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と」「を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液」である点で一致する。 イ 引用発明1において「クリーニング組成物」が「約60?約80wt%の水」を含む点は,本件発明14において「前記処理液中,前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%」であることに相当する。 ウ 引用発明1において「クリーニング組成物」が「約4?約10wt%のヒドロキシルアミン」を含む点は,本件発明14において「前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか種の総含有量が,処理液全質量に対して4?25質量%」であることに相当する。 エ 以上のア?ウによれば,本件発明14と引用発明1の一致点及び相違点は,次のとおりである。 <一致点> 「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液であって, 前記処理液中,前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか種の総含有量が,処理液全質量に対して4?25質量%であり, 前記処理液中,前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%である, 処理液。」である点。 <相違点1> 本件発明14が「保管容器と,前記保管容器内に収容された」「半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体」であるのに対し,引用発明1では,「クリーニング組成物」を収容する「保管容器」の記載がなく,また,「処理液収容体」であることが特定されていない点。 <相違点2> 本件発明14では,「前記保管容器内の空隙率が12?20体積%であり」と特定されるのに対し,引用発明1では「保管容器内の空隙率」の数値範囲が具体的に特定されていない点。 <相違点3> 本件発明14では,「前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,酸素を含む」のに対し,引用発明1では「処理液で満たされていない空間」の雰囲気について特定されていない点。 <相違点4> 本件発明14では,「半導体デバイス用処理液」が「4級水酸化アンモニウム類」を含有するのに対し,引用発明1ではそのことが特定されていない点。 <相違点5> 本件発明14では,「半導体デバイス用処理液」の「Feイオンの含有量が,1質量ppb?50質量ppb」であるのに対し,引用発明1ではそのことが特定されていない点。 (1.2)相違点に対する判断 (1.2.1)相違点1について 引用発明1の「クリーニング組成物」は「すべての固体が水性系媒体中に溶解されるまで容器中において共に成分を混合することによって調製された」ものであるから,当然に液体であり,「半導体から残留物を除去」するのに使用する時以外は,何らかの「保管容器」に収容され,本件発明14でいう「処理液収容体」を構成していることは明らかである。よって,相違点1は実質的な相違点ではない。 仮にそうでないとしても,処理液を「保管容器内に収容」して「処理液収容体」を構成することは当業者が普通に行うことであり,引用発明1において相違点1に係る構成とすることも,容易になし得たことである。 (1.2.2)相違点2について 空隙率は,液体を何らかの容器に収容し使用することに伴い,必然的に定められる数値であると理解できる。また,上記第5の2.(7)アに示したとおり,引用例2,6,7によれば,0.8?約44体積%の範囲内の空隙率で液体を容器に収容することは当業者に周知であったといえる。 そうすると,封入直後から所定回の処理液使用後までのいずれかの時点において,処理液収容体の空隙率を「12?20体積%」の範囲内の数値とすることは,処理液を製造又は使用する当業者にとって,格別の困難無くなし得たことである。 (1.2.3)相違点3について 上記(1.2.1)で述べたとおり,引用発明1の「クリーニング組成物」を容器に収容することは当然に行うことであり,その際,「前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間」を「空気」すなわち「酸素を含む」気体で満たすことは,ごく普通に行うことである。よって,引用発明1において相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。 (1.2.4)相違点4について ア ヒドロキシルアミンを含む半導体デバイス処理液に4級水酸化アンモニウム類を添加することは,下記の周知例1(特開2009-217267号公報:甲2号証)及び周知例2(特表2003-526111号公報:甲12号証)に記載されているとおり,当業者の周知技術であるから,引用発明1において4級水酸化アンモニウム類を添加することは,当業者が適宜なし得たことである。また,処理液に4級水酸化アンモニウム類を添加することによる格別の効果も認められない。 イ 周知例1(特開2009-217267号公報:甲2号証)には,次の記載がある。 「【0010】 本実施例では,以下の略語が使用される。 TMAH=水酸化テトラメチルアンモニウム DMSO=ジメチルスルホキシド HA=ヒドロキシルアミン NMP=N-メチルピロリジン DMAC=ジメチルアセトアミド DPM=ジプロピレングリコールモノメチルエーテル MEA=モノエタノールアミン AEEA=アミノエチルエタノールアミン DIW=脱イオン水 BZT=ベンゾトリアゾール」 【0013】 得られた本発明のフォトレジスト剥離剤配合物の実施形態は,表2に記載する組成の構成を有し,表2は,好ましい実施態様に関する組成含有物の好ましい範囲を示している。 【0014】 【表2】 」 以上によれば,周知例1には脱イオン水とヒドロキシルアミンを含む半導体処理液に水酸化テトラメチルアンモニウムを添加することが記載されているものと理解できる。 ウ 周知例2(特表2003-526111号公報:甲12号証)には,次の記載がある。 【0109】 実施例21 水溶液「M2」は0.67重量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH),0.46重量%トランス-(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CyDTA),0.14重量%(Si0_(2)%換算)珪酸テトラメチルアンモニウム(TMAS),1.0重量%ヒドロキシルアミンおよび0.07重量%非イオン界面活性剤Surfynol-465を用いて調製し(この溶液の残部は水),このpHは約12.1である。水溶液「M3」は0.94重量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH),0.45重量%トランス-(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CyDTA),0.20重量%(Si0_(2)%換算)珪酸テトラメチルアンモニウム(TMAS),5.1重量%ヒドロキシルアミンおよび0.1重量%非イオン界面活性剤Surfynol-465用いて調製し(この溶液の残部は水),このpHは約12.1である。水溶液「M4」は1.1重量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH),0.46重量%トランス-(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CyDTA),0.18重量%(Si0_(2)%換算)珪酸テトラメチルアンモニウム(TMAS),10.0重量%ヒドロキシルアミンおよび0.09重量%非イオン界面活性剤Surfynol-465を用いて調製し(この溶液の残部は水),このpHは約12.1である。水溶液「M5」は1.3重量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH),0.42重量%トランス-(1,2-シクロヘキシレンジニトリロ)四酢酸(CyDTA),0.14重量%(Si0_(2)%換算)珪酸テトラメチルアンモニウム(TMAS)および47.3重量%ヒドロキシルアミンを用いて調製し(この溶液の残部は水),このpHは約12.1である。その基盤においてアルミ銅金属を露出する誘電層および窒化チタン層を貫通する0.5ミクロンの深度の孔(バイアス)に対して0.3ないし0.5ミクロンの幅を有するウェーハーサンプル#11は,(a)アルミ銅,次いで窒化チタンでメッキし,(b)化学蒸着を用いて酸化珪素誘電体で被覆し,(c)フォトレジスト材料を用いてバイアスのリトグラフパターンをとり,(d)反応性イオンエッチングを用いてパターンを誘電層に転写し,(e)酸素プラズマ灰化により残存するフォトレジストの大部分を除去し,一方主に無機チタン含有残渣を後に残すことで予め製造した(残渣を経る横断面のAuger電子顕微鏡解析によって測定した)。これらのサンプルを用いて溶液の性能を評価した。35℃にて20分間溶液にウェーハーサンプルを入れて取り出し,脱イオン水ですすぎ,加圧窒素ガスで乾燥させた。乾燥後,サンプルバイアスの横断面をとり,次いで電界放射走査電子顕微鏡(FE-SEM)で観察して起伏の洗浄および/または腐食の程度を求めた。結果を表20に示す。 【表26】 【0110】 表20によれば,データはヒドロキシルアミンの低温でのチタン含有残渣の除去を促進する能力を示している。」 以上によれば,周知例2には,ヒドロキシルアミンを含む水溶液に水酸化テトラメチルアンモニウムを添加することが記載されているものと理解できる。 (1.2.5)相違点5について 上記第5の2.(7)イに示したとおり,引用例3及び4から,微量金属イオン未除去の純水には49?67pptのFeイオンが含まれ,粗製ヒドロキシルアミン水溶液には通常15?200ppbの鉄が含まれ,それを3ppb以下に調整できることは,当業者に周知の事項である。 そうすると,引用発明1においてFeイオンの含有量を1質量ppb?50質量ppbの範囲内に調整することは,必要に応じ適宜なし得たことであるといえる。 (1.2.6)特許権者の主張について ア 上記(1.2.2)の相違点2について,特許権者は令和2年11月19日付け意見書(6頁1行?5行)において次のように述べ,本件発明14の進歩性を主張している。 「ここで,本明細書の表1?表13に示されるとおり,空隙率が12?20%の範囲内になる場合,保管された処理液を用いて行われた試験の評価が特異的に良化することが示されている。 すると,「空隙率が12?20%」とする構成について,「格別の技術的意義」が存在するといえ,設計事項には当たらない。」 しかしながら,「空隙率が12?20体積%」とすることの効果は,「容器に封入された各処理液に対し,通常の冷蔵保管温度である5℃で8時間→室温である25℃で4時間→通常の冷蔵保管温度である5℃で8時間→室温である25℃で4時間を1サイクルとして180日間繰り返すサーモサイクル試験を実施した。」(本件特許公報段落0085)際に現れた効果であり,サーモサイクルの間にあっても一定の空隙率を維持することによってはじめて発揮される効果であると理解できる。 一方,本件発明14は,処理液収容体の保管状態を何ら特定していない。すなわち,本件発明14は,保管状態を問わない物の発明として,処理液収容体における公知の処理液の収容量を「空隙率」というパラメータで単に特定したに過ぎない発明である。そうすると,特定の「空隙率」を維持した保管状態を前提とした効果である「試験の評価が特異的に良化」したとの効果を,保管状態を問わない本件発明14の奏する効果と認めることはできない。よって,上記特許権者の主張は採用できない。 イ 上記(1.2.4)の相違点4について,特許権者は令和2年11月19日付け意見書(7頁5行?15行)において次のように述べて,本件発明14の進歩性を主張している。(なお,以下でいう「引用文献1」は上記「引用例1」に相当し,「引用文献5A」は「周知例1(甲2号証)」に相当する。) 「ここで,引用文献1では,いずれの独立項でも水の含有量が50wt%以上である溶液を使用すべきことを規定している。 一方で,引用文献5Aの請求項3や実施例の配合を参照すると,引用文献5Aにおける溶液は,水の含有量を50wt%未満として有機溶剤をリッチに配合するべき想定がされていることは明らかである。 ・・・(中略)・・・ このような,引用文献1と引用文献5Aとを組み合わせて進歩性を検討することは妥当であるとは言えない。」 しかしながら,上記周知例2に記載されているように,水の含有量が50wt%以上のヒドロキシルアミン水溶液に水酸化テトラメチルアンモニウム等の4級水酸化アンモニウム類を添加することは,当業者の周知技術であるから,引用発明1において相違点4に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。よって,上記特許権者の主張は採用できない。 (1.3)小括 上記(1.2)のとおり,本件発明14は,引用例2?4,6?7及び周知例1?2に示される周知技術に照らし,引用発明1から当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明18?21(29条2項)について ア 上記第5の2.(7)ウに示したとおり,引用例5から,爆発災害等の防止のためヒドロキシルアミン水溶液をプラスチック製の容器に収容することは,当業者に周知の事項である。さらに,上記第5の2.(7)エに示したとおり,引用例6,7から,高密度ポリエチレン製の耐薬品容器は周知のプラスチック容器である。そうすると,ヒドロキシルアミン水溶液である引用発明1の「クリーニング組成物」を高密度ポリエチレン製の容器に収容することは,上記周知技術を知る当業者が普通に行うことであるといえる。 したがって,本件発明18及び19は,周知技術に照らし引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 保管容器内壁の材質をフッ素系樹脂とすることは,下記周知例3(特開2005-236050号公報:甲6号証)に記載のとおり,当業者の周知技術である。 したがって,本件発明20は,周知技術に照らし引用発明1に基づいて当業者が容易になし得たものである。 周知例3(特開2005-236050号公報:甲6号証)には,次の記載がある。 「【0015】 さらに,本発明の電子デバイス製造用薬液の供給装置において,薬液が接触する部分,すなわち配管の内側および耐圧容器の内側は,使用する薬液に対して耐性のある材料であることが好ましい。これは腐食などによる不純物の混入を防ぐためである。このような材料は使用する薬液によって異なるが,ステンレススチール製またはフッ素樹脂製であることが好ましい。 【0016】 また,配管や耐圧容器をステンレススチールで形成させ,薬液が接触する表面がフッ素樹脂等の耐食性材料,より具体的にはテフロン(登録商標),で被覆されていることも好ましい。さらに,耐圧性容器の内側に,フッ素樹脂等の耐食性材料で形成された袋状フィルム容器を装填し,薬液をその内側に充填することもできる。なお,これらの配管および耐圧容器自体がステンレススチール製またはフッ素樹脂製であってもよい。」 ウ また,保管容器の開口の数は当業者の設計事項であり,複数開口とすることも適宜なし得たことである。 したがって,本件発明21は,周知技術に照らし引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明15(29条2項)について (3.1)対比 本件発明15と引用発明1を比較する。 ア 引用発明1における「クリーニング組成物」は,「約4?約10wt%のヒドロキシルアミン」と「約60?約80wt%の水」を含み,「半導体から残留物を除去するのに有用」な組成物であるから,本件発明15における「半導体デバイス用処理液」に対応し,両者はともに,「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と」「を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液」である点で一致する。 イ 引用発明1において「クリーニング組成物」が「約60?約80wt%の水」を含む点は,本件発明15において「前記処理液中,前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%」であることに相当する。 以上のア?イによれば,本件発明15と引用発明1の一致点及び相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液であって, 前記処理液中,前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%である 処理液。」 である点。 <相違点1‘> 本件発明15が「保管容器と,前記保管容器内に収容された」「半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体」であるのに対し,引用発明1では,「クリーニング組成物」を収容する「保管容器」の記載がなく,また,「処理液収容体」であることが特定されていない点。 <相違点2‘> 本件発明15では,「前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように,前記処理液が前記保管容器内に封入されて,前記処理液が前記保管容器内に保管されており」と特定されるのに対し,引用発明1では処理液の保管状態について特定されていない点。 <相違点3‘> 本件発明15では,「前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,空気を含む」のに対し,引用発明1では「処理液で満たされていない空間」の雰囲気について特定されていない点。 <相違点4‘> 本件発明15では,「半導体デバイス用処理液」が「4級水酸化アンモニウム塩」を含有するのに対し,引用発明1ではそのことが特定されていない点。 (3.2)相違点に対する判断 事案に鑑み,はじめに相違点2‘について検討する。 上記第5の2.(7)アに示したとおり,空隙率が0.8?44体積%の範囲にある保管容器で洗浄剤を保管することは,引用例2,6,7に記載されているように,当業者の周知技術であるといえる。 しかしながら,「前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように,前記処理液が前記保管容器内に封入されて,前記処理液が前記保管容器内に保管されており」との点は,引用例2,6,7には記載されていない。本件発明15は,冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化が繰り返される中でも「前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように,前記処理液が前記保管容器内に封入されて,前記処理液が前記保管容器内に保管されており」との事項により,ヒドロキシルアミンを含む処理液の残渣物除去性能劣化を抑制する効果が得られるものであり(本件特許公報段落0095?0096),当該効果は引用発明1に引用例2,6,7の周知技術を適用したものからは予測し得ない効果である。さらに,引用例3?5には「空隙率が12?20体積%となるように」保管することについての記載がなく,当該効果を示唆するものでもない。 したがって,引用例2,6,7に示された周知技術及び引用例3?5に記載の技術的事項から,引用発明1において「前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように・・・保管されており」とすることが当業者にとって容易であったとはいえない。 上記のとおり,引用発明1において相違点2‘に係る構成とすることは当業者にとって容易であったとはいえないから,他の相違点について検討するまでもなく,本件特許15は引用発明1及び引用例2?7から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3.3)申立人の主張について 令和3年1月5日付け意見書において申立人は, (a)引用例6には空隙率が約0.8体積%のドラムと,空隙率が約9.1体積%のドラムが記載されていること, (b)引用例7には,外寸から計算した空隙率として,空隙率が30,23,29,20体積%であるドラムが記載されていること, (c)KK-128-1の実容量を測定したところ,23.8?24Lであり,空隙率は16.0?16.7体積%となったこと, (d)処理液が充填された処理液収容体において,少量の必要量だけ取り出して使用することは極めて一般的に行われていることであり,仮に充填時の空隙率が12体積%未満となるように充填したとしても,使用時または一部使用時には必ず空隙率が12?20体積%の値を経由すること, を指摘し,本件発明15は引用例1に引用例7を組み合わせて容易に想到できたものである旨主張している。 上記主張について検討すると,保管容器の満杯状態における仕様上の空隙率で保管された処理液収容体は周知であるところ,上記(a)(b)によれば,満杯状態における仕様上の空隙率が12?20体積%の保管容器は引用例6,7には示されていない。引用例7のPO-30の外寸から算出した空隙率は20体積%であるものの,現実の実容量が外寸から算出した容量とどれだけ異なるかは不明であるため,PO-30の満杯状態での空隙率が12?20体積%の範囲内となることが引用例7の記載上明らかとまではいえない。 また,上記(c)については,その事実を客観的に把握できる具体的な証拠が示されていないため,上記(c)に示される事実の存否を確認することができない。 さらに,上記(d)について検討すると,本件発明15は「前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように,前記処理液が前記保管容器内に封入されて,前記処理液が前記保管容器内に保管されて」いるもの,すなわち,封入時から保管時までの間「空隙率が12?20体積%となるように」保管されているものである。そうすると,上記(d)における,充填時の空隙率が12体積%未満であるものは,「空隙率が12?20体積%となるように」「封入されて」いるものではないから,本件発明15とは異なるものである。 したがって,上記申立人の主張は採用できない。 (4)小括 上記(1)(2)のとおり,本件発明14,18?21は,周知技術に照らし引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項14,18?21に係る特許は,いずれも,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。したがって,本件請求項14,18?21に係る特許は,特許法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。 また,上記(3)のとおり,本件発明15は引用例1に記載された発明及び引用例2?7に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許異議申立理由の概要 令和元年11月22日付け特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由の概要は,本件特許の請求項1?21に係る特許は,下記の申立理由のとおり,特許法113条2号及び4号に該当する,というものである。 ・申立理由1-1A(新規性) 本件訂正前の請求項1?8,11?13に係る発明は,甲1号証に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1?8,11?13に係る特許は,同法113条2号に該当する。 ・申立理由1-1B(新規性) 本件訂正前の請求項14?17,21に係る発明は,甲1号証に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項14?17,21に係る特許は,同法113条2号に該当する。 ・申立理由1-2A(新規性) 本件訂正前の請求項1?9,12に係る発明は,甲2号証に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項1?9,12に係る特許は,同法113条2号に該当する。 ・申立理由1-2B(新規性) 本件訂正前の請求項14?17,21に係る発明は,甲1号証に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができないものであるから,本件特許の請求項14?17,21に係る特許は,同法113条2号に該当する。 ・申立理由2-1A(進歩性) 本件訂正前の請求項1?8,10?13に係る発明は,甲1号証に記載された発明及び甲3,4,5号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法113条2号に該当する。 ・申立理由2-1B(進歩性) 本件訂正前の請求項14?21に係る発明は,甲1号証に記載された発明及び甲3,4,6号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法113条2号に該当する。 ・申立理由2-2A(進歩性) 本件訂正前の請求項1?10,12に係る発明は,甲2号証に記載された発明及び甲3,4,5号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法113条2号に該当する。 ・申立理由2-2B(進歩性) 本件訂正前の請求項14?21に係る発明は,甲2号証に記載された発明及び甲3,4,6号証に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,同法113条2号に該当する。 ・申立理由3(サポート要件) 本件訂正前の請求項1?21に係る発明は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号の規定に適合するものではないから,本件特許の請求項1?21に係る特許は,同法113条4号に該当する。 ・申立理由4(明確性) 本件訂正前の請求項2?13,15?21に係る発明は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号の規定に適合するものではないから,本件特許の請求項2?13,15?21に係る特許は,同法113条4号に該当する。 (2)証拠方法 ア 上記特許異議申立書とともに提出された証拠方法は,以下のとおりである。 甲1号証:特開2012-195590号公報(上記引用例1) 甲2号証:特開2009-217267号公報(上記周知例1) 甲3号証:国際公開第2012/090669号 甲4号証:特開2001-261312号公報(上記引用例4) 甲5号証:特表2006-501327号公報 甲6号証:特開2005-236050号公報(上記周知例3) イ 令和2年7月20日付け意見書とともに提出された証拠方法は,以下のとおりである。 甲7号証:“ヒドロキシルアミンに係る爆発災害等の防止について,”[online],平成13年6月11日,厚生労働省労働基準局,インターネット,<URL:https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-42/hor1-42-37-1-0.htm>(上記引用例5) 甲8号証:“ドラムカタログ”,[online],インターネット・アーカイブ ウェイバック・マシン(Internet Archive Wayback Machine)の保存日:2015年11月23日,コダマ樹脂工業株式会社,インターネット,<URL:http://www.d-kjk.co.jp/catalog/pdf/drum.pdf>(上記引用例6) 甲9号証:インターネットサイトWayback Machineで調査した甲8号証のウェブ掲載日に関する調査結果 甲10号証:“コダマの「タマカン」”,[online],2010年4月,コダマ樹脂工業株式会社,インターネット,<URL:http://www.d-kjk.co.jp/catalog/pdf/tamakan.pdf>(上記引用例7) ウ 令和3年1月5日付け意見書とともに提出された証拠方法は,以下のとおりである。 甲11号証:特開平9-283507号公報 甲12号証:特表2003-526111号公報(上記周知例2) (3)甲号証の記載事項 甲1号証の記載事項は,上記第5の1.(1)のとおりである。 甲2号証の記載事項は,上記第6の1.(1.2.4)イのとおりである。 甲4号証の記載事項は,上記第5の1.(3)のとおりである。 甲6号証の記載事項は,上記第6.1.(2)イのとおりである。 甲7号証の記載事項は,上記第5の1.(4)のとおりである。 甲8号証の記載事項は,上記第5の1.(5)のとおりである。 甲9号証は,甲8号証が2015年11月23日にアップロードされたことを示すものである。 甲10号証の記載事項は,上記第5の1.(6)のとおりである。 甲12号証の記載事項は,上記第6の1.(1.2.4)ウのとおりである。 甲3号証の記載事項は以下のとおりである。 「[0096] 本実施の形態に係る保管方法は,上記の電極用バインダー組成物を充填して保存する容器において,該容器の内容積に対する電極用バインダー組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率(%)(以下,「空隙率」ともいう)が1?20%であることが必須であり,好ましくは3?15%であり,より好ましくは5?10%である。空隙率が前記範囲を超えると,保管温度が変化した場合に水分の揮発が大きくなり,その結果気液界面にて重合体粒子の凝集が発生し,異物が発生するため,安定に保管することができない。空隙率が前記範囲未満では,温度の変化により電極用バインダー組成物が体積変化を起こした場合,容器の変形や容器の破裂が発生するため,安定に保管することができない。」 「[0099] なお,このような金属溶出の少ない容器は,ガラス製,樹脂製の材質により構成されているものが好ましい。たとえば,特開昭59-035043号方法等により製造されたクリーンな容器を好ましく使用することができる。」 「[0173] 表7において,「クリーンボトル」はアイセロ化学株式会社より市販されている20リットルの角缶型のクリーンボトルを使用した。「洗浄ポリ容器」は,市販されている20リットルの角缶型のポリプロピレン容器の内部をクリーンルーム中で洗浄したものを使用した。「金属缶」は,市販の金属製の一斗缶を使用した。また,異物発生有無は,目視にて凝集物のある場合を不良として×,凝集物のない場合を良好として○と示した。容器態様は,目視にて容器外観に変化ない場合を良好と判断して○,容器外観に変化があるものを×と示した。ハードショートの有無,良品率は前述の方法にて評価した。」 甲5号証の記載事項は以下のとおりである。 「【0035】 <実施例A1> 実施例A1の組成物は,プロピレングリコールメチルエーテル63重量%,イオン交換水22.6重量%,フッ化アンモニウム0.8重量%,プロピレングリコール10重量%,ジエチルヒドロキシルアミン1.8重量%及び乳酸1.8重量%からなる。実施例Hは,低誘電率及び金属線及びビアからエッチング残渣及びフォトレジストを除去するための洗浄用及び剥離用組成物である。」 甲11号証の記載事項は以下のとおりである。 「【表1】 」 「【表2】 」 (4)申立理由についての判断 上記申立理由のうち,申立理由2-1B(進歩性)は,取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由と同旨であるから,申立理由2-1B(進歩性)についての当審の判断は上記第6の1.に示したとおりである。 そして,他の申立理由についての当審の判断は以下のとおりである。(なお,上記第6の1.に示すとおり,当審において本件請求項14,18?21に係る特許は取り消されるべきものと判断されているから,申立理由1-1B,1-2B,2-2Bについては,本件発明15についての判断を示す。) (4.1)申立理由1-1B(新規性)について 上記第6の1.(3.1)で示したとおり,本件発明15と引用発明1との間には,相違点1‘?4’の相違点があるから,本件発明15と引用発明1は同一ではない。 したがって,申立理由1-1B(新規性)によっては,本件請求項15に係る特許を取り消すことはできない。 (4.2)申立理由1-2B(新規性)について 上記第6の1.(1.2.4)イに示した甲2号証の記載によれば,甲2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「フォトレジスト剥離剤配合物であって, 8.26wt%のヒドロキシルアミンと, 5.72wt%の脱イオン水と, 22.87wt%の水酸化テトラメチルアンモニウムとを含む, フォトレジスト剥離剤配合物。」 本件発明15と甲2発明を比較すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と,水と,4級水酸化アンモニウム塩と,を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液。」である点。 <相違点1‘’> 本件発明15が「保管容器と,前記保管容器内に収容された」「半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体」であるのに対し,甲2発明では,「フォトレジスト剥離剤配合物」を収容する「保管容器」の記載がなく,また,「処理液収容体」であることが特定されていない点。 <相違点2‘’> 本件発明15では,「前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように,前記処理液が前記保管容器内に封入されて,前記処理液が前記保管容器内に保管されており」と特定されるのに対し,甲2発明では処理液の保管状態について特定されていない点。 <相違点3‘’> 本件発明15では,「前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が,空気を含む」のに対し,甲2発明では「処理液で満たされていない空間」の雰囲気について特定されていない点。 <相違点4‘’> 本件発明15では,「半導体デバイス用処理液中」の「前記水の含有量は,処理液全質量に対して60?98質量%」であるのに対し,甲2発明では脱イオン水の含有量が「5.72wt%」である点。 したがって,本件発明15と甲2発明は同一ではないから,申立理由1-2B(新規性)によっては,本件請求項15に係る特許を取り消すことはできない。 (4.3)申立理由2-2B(進歩性)について 上記(4.2)に示すとおり,本件発明15と甲2発明との間には相違点1‘’?4‘’が存在する。 事案に鑑み,はじめに相違点2‘’について検討すると,当該相違点は甲3号証?甲5号証には記載されていない。甲3号証は電極用バインダーの保管容器に関する技術を開示するものであり,甲2発明とは対象が異なり,適用することが容易とはいえない。そして,相違点2‘’の構成とすることによる効果も,甲2発明及び甲3号証?甲5号証からは予測し得ないものである。 したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明15は甲2号証に記載された発明及び甲3号証?甲5号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立理由2-2B(進歩性)によっては,本件請求項15に係る特許を取り消すことはできない。 (4.4)申立理由1-1A(新規性)について 甲1号証,すなわち引用例1には,「クリーニング組成物」の発明である引用発明1は記載されているものの,当該「クリーニング組成物」の保管方法については記載されていない。 そこで,本件発明1と引用発明1を比較すると,引用発明1は「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって」「前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%と」することが特定されていない点で主に相違する。 同様に,本件発明2と引用発明1を比較すると,引用発明1は「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって」「前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液を前記保管容器内に封入して,前記処理液を前記保管容器内に保管」することが特定されていない点で主に相違する。 したがって,本件発明1及び本件発明2は,引用発明1と同一ではない。また,本件発明3?8,11?13は,いずれも本件発明1又は2を減縮した発明であるから,同様にして,引用発明1と同一ではない。よって,申立理由1-1A(新規性)によっては,本件請求項1?8,11?13に係る特許を取り消すことはできない。 (4.5)申立理由2-1A(進歩性)について 上記(4.4)に示すとおり,引用発明1は「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって」「前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%と」することが特定されていない点で本件発明1と主に相違する。そして,当該相違点に係る構成は,甲3号証?甲5号証には記載されておらす,当該相違点に係る構成による効果も引用発明1及び甲3号証?甲5号証の記載からは予測し得ないものである。 また,引用発明1は「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって」「前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液を前記保管容器内に封入して,前記処理液を前記保管容器内に保管」することが特定されていない点で,本件発明1と主に相違する。そして,当該相違点に係る構成は,甲3号証?甲5号証には記載されておらす,当該相違点に係る構成による効果も引用発明1及び甲3号証?甲5号証の記載からは予測し得ないものである。 したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明1及び2は引用例1に記載された発明及び甲3号証?甲5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。さらに,本件発明3?8,10?13は,本件発明1又は2を減縮した発明であり,上記相違点に係る構成を含むものであるから,本件発明1及び2と同様に,引用例1に記載された発明及び甲3号証?甲5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。よって,申立理由2-1A(進歩性)によっては,本件請求項1?8,10?13に係る特許を取り消すことはできない。 令和2年7月20日付け意見書において申立人は,本件発明1?13において「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される」という要件は処理液を規定しており,保管時に冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返す工程を新たに規定するものではないので,当該規定は方法に関する本願発明に対して何の技術的意義も有しておらず,引用文献に記載されていなくても相違点とはならない旨,主張している。 しかしながら,本件発明1は,「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液」の「保管方法」として「前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%」とすることを特定するものであるから,「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される」との事項は,「処理液」の属性を特定するものではなく,本件発明1に係る「保管方法」の前提を特定するものであると理解するのが自然であり,当該「温度環境変化」を繰り返す間「空隙率を0.01?30体積%」として保管することを特定する事項としての技術的意義を有するものである。また,このような理解は,本件特許明細書における課題の記載(段落0005?0006),作用効果の記載(段落0012)及び試験内容の記載(段落0085)とも整合的である。よって,上記申立人の主張は採用できない。 (4.6)申立理由1-2A(新規性)について 甲2号証には,「フォトレジスト剥離剤配合物」の発明である甲2発明は記載されているものの,当該「フォトレジスト剥離剤配合物」の保管方法については記載されていない。 そこで,本件発明1と甲2発明を比較すると,甲2発明は「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって」「前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%と」することが特定されていない点で主に相違する。 同様に,本件発明2と甲2発明を比較すると,甲2発明は「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって」「前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液を前記保管容器内に封入して,前記処理液を前記保管容器内に保管」することが特定されていない点で主に相違する。 したがって,本件発明1及び本件発明2は,甲2発明と同一ではない。また,本件発明3?9,12は,いずれも本件発明1又は2を減縮した発明であるから,同様にして,甲2発明と同一ではない。よって,申立理由1-2A(新規性)によっては,本件請求項1?9,12に係る特許を取り消すことはできない。 (4.7)申立理由2-2A(進歩性)について 上記(4.6)に示すとおり,甲2発明は「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって」「前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%と」することが特定されていない点で本件発明1と主に相違する。そして,当該相違点に係る構成は,甲3,4,6号証には記載されておらす,当該相違点に係る構成による効果も引用発明1及び甲3,4,6号証の記載からは予測し得ないものである。 また,甲2発明は「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する,半導体デバイス用処理液の保管方法であって」「前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液を前記保管容器内に封入して,前記処理液を前記保管容器内に保管」することが特定されていない点で,本件発明2と主に相違する。そして,当該相違点に係る構成は,甲3,4,6号証には記載されておらす,当該相違点に係る構成による効果も甲2発明及び甲3,4,6号証の記載からは予測し得ないものである。 したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明1及び2は甲2号証に記載された発明及び甲3,4,6号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。さらに,本件発明3?10,12は,本件発明1又は2を減縮した発明であり,上記相違点に係る構成を含むものであるから,本件発明1及び2と同様に,甲2号証に記載された発明及び甲3,4,6号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。よって,申立理由2-2A(進歩性)によっては,本件請求項1?10,12に係る特許を取り消すことはできない。 (4.8)申立理由3(サポート要件)について ア 申立人は,本件訂正前の請求項1,14では,空隙に存在する物質が規定されておらず,本件発明の効果を奏しない態様も包含されていると主張している。 しかしながら,本件訂正後の請求項1,14では,「前記処理液で満たされていない空間が,酸素を含む」と特定されている。よって,上記申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は,本件訂正前の請求項1,14は,10ppt?10ppmという極めて広い範囲のFeイオン濃度が規定されているにもかかわらず,実施例では,Feイオン濃度が5?30ppbという極めて限られた範囲の組成物しか実施されていない。当業者は,Feイオン濃度が10ppt?10ppmという広い範囲の全てにおいて,本件発明の効果を奏すると理解することはできないと主張している。 しかしながら,本件訂正後の請求項1,14では「Feイオンの含有量が1質量ppb?50質量ppb」と特定されている。よって,上記申立人の主張は採用できない。 ウ 申立人は,「処理液A?Mはヒドロキシアミンの含有量や任意成分の配合が多様であり,これらに全く依存することなくエッチングレート維持率が同一となる可能性は極めて低い」から「本件明細書の核となる実施例に信憑性に疑義があるため,本件訂正前の請求項1,14に記載された発明は明細書に開示された発明とはいえない。」と主張している。 しかしながら,本件明細書において「評価」に対応するエッチングレート維持率には幅があり,「エッチングレート維持率が同一である」とまではいえない。また,本件訂正後の請求項1及び14の記載は,実施例をはじめ,発明の詳細な説明との実質的な対応関係を有するものであるから,特許法36条6項1号に適合するものであるといえる。よって,上記申立人の主張は採用できない。 エ 申立人は,本件訂正前の請求項2,15には,空間が含む空気(または酸素)の含有量が規定されておらず,あらゆる空気(酸素)濃度の態様を包含する請求項2,15の範囲までその効果を認めることはできない,と主張している。 しかしながら,本件特許発明は特定の酸素濃度に限定することにより課題を解決するものではないから,本件訂正後の請求項2及び15の記載は,課題解決手段を特定するために必要な事項が記載されたものであり,特許法36条6項1号に適合するものであるといえる。よって,上記申立人の主張は採用できない。 オ 令和2年7月20日付け意見書において申立人は,本件発明1?13には,「保管管理中は常に」という要件が規定されていないから,サポート要件を充足しない旨主張している。 しかしながら,本件発明1は,「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液」の「保管方法」として「前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%」とすることを特定するものであるから,「前記処理液」の「温度環境変化」は,本件発明1に係る「保管方法」の前提であり,当該「温度環境変化」の間,「空隙率を0.01?30体積%」にて保管することが特定されていると理解するのが自然である。すなわち,本件発明1には「保管管理中は常に」という要件と同等の事項が特定されているものと認められる。 同様に,本件発明2は,「冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液」の「保管方法」として,「空隙率が0.01?30体積%となるように,前記処理液を前記保管容器内に封入して,前記処理液を前記処理容器内に保管する」ものであるから,当該「温度環境変化」の間,「空隙率が0.01?30体積%となるように」「前記処理液を保管容器内に保管する」ものであると理解するのが自然である。すなわち,本件発明2には「保管管理中は常に」という要件と同等の事項が特定されているものと認められる。 したがって,本件発明1?13はサポート要件を充足するから,上記申立人の主張は採用できない。 (4.9)申立理由4(明確性)について 申立人は,訂正前の請求項2,15には,空間に含まれる空気の量が規定されていないので,発明の範囲が不明であると主張している。 しかしながら,本件訂正後の請求項2,15において,それぞれの発明特定事項及びそれらの関係は明確に特定されており,請求項2,15に係る発明の範囲は明確である。よって,上記申立人の主張は採用できない。 第6 結言 したがって,本件請求項14,18?21に係る特許は,いずれも,特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから,特許法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。 また,本件請求項1?13,15に係る特許は,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,取り消すことはできない。さらに,他に本件請求項1?13,15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして,本件請求項16,17は訂正により削除されたため,同請求項に係る特許に対する特許異議の申し立てについては,対象となる請求項が存在しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と、水と、を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液であって、 冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する、半導体デバイス用処理液の保管方法であって、 前記処理液中、前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が、処理液全質量に対して4?25質量%であり、Feイオンの含有量が、1質量ppb?50質量ppbであり、 前記保管容器内の空隙率を0.01?30体積%とし、 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が、酸素を含む、半導体デバイス用処理液の保管方法。 なお、空隙率は、以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 【請求項2】 ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と、水と、を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液であって、 冷蔵保管及び室温静置という温度環境変化を繰り返される前記処理液を保管容器内に保管する、半導体デバイス用処理液の保管方法であって、 前記保管容器内の空隙率が0.01?30体積%となるように、前記処理液を前記保管容器内に封入して、前記処理液を前記保管容器内に保管し、 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が、空気を含む、半導体デバイス用処理液の保管方法。 なお、空隙率は、以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 【請求項3】 前記処理液中、前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が、処理液全質量に対して1?30質量%である、請求項2に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項4】 前記処理液中、Feイオンの含有量が、1質量ppb?50質量ppbである、請求項2又は3に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項5】 前記保管容器内の空隙率が1?25体積%である、請求項1?4のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項6】 前記保管容器内の空隙率が12?20体積%である、請求項1?5のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項7】 前記半導体デバイス用処理液が、さらに、腐食防止剤を含む請求項1?6のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項8】 前記半導体デバイス用処理液が、さらに、水溶性有機溶剤及びアルカノールアミン類の少なくとも一方を含む請求項1?7のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項9】 前記半導体デバイス用処理液が、さらに、4級水酸化アンモニウム類を含む請求項1?8のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項10】 前記半導体デバイス用処理液が、さらに、フッ化物を含む請求項1?9のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項11】 前記半導体デバイス用処理液が、さらに、キレート剤を含む請求項1?10のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項12】 前記腐食防止剤が、下記式(A)?式(C)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7?11のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【化1】 前記式(A)において、R^(1A)?R^(5A)は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、又は、アミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基、及び、アミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。 前記式(B)において、R^(1B)?R^(4B)は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素基を表す。 前記式(C)において、R^(1C)、R^(2C)及びR^(N)は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭化水素基を表す。また、R^(1C)とR^(2C)とが結合して環を形成してもよい。 【請求項13】 前記半導体デバイス用処理液のpHが6?11である請求項1?12のいずれか1項に記載の半導体デバイス用処理液の保管方法。 【請求項14】 保管容器と、前記保管容器内に収容された、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と、水と、4級水酸化アンモニウム類と、を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体であって、 前記処理液中、前記ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種の総含有量が、処理液全質量に対して4?25質量%であり、Feイオンの含有量が、1質量ppb?50質量ppbであり、 前記処理液中、前記水の含有量は、処理液全質量に対して60?98質量%であり、 前記保管容器内の空隙率が12?20体積%であり、 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が、酸素を含む、処理液収容体。 なお、空隙率は、以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 【請求項15】 保管容器と、前記保管容器内に収容された、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくともいずれか1種と、水と、4級水酸化アンモニウム類と、を少なくとも含有する半導体デバイス用処理液とを有する処理液収容体であって、 前記処理液中、前記水の含有量は、処理液全質量に対して60?98質量%であり、 前記保管容器内の空隙率が12?20体積%となるように、前記処理液が前記保管容器内に封入されて、前記処理液が前記保管容器内に保管されており、 前記保管容器中の前記処理液で満たされていない空間が、空気を含む、処理液収容体。 なお、空隙率は、以下の式(1)によって求められる。 式(1):空隙率={1-(前記保管容器内の前記半導体デバイス用処理液の体積/前記保管容器の容器体積)}×100 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 (削除) 【請求項18】 前記保管容器の内壁の材質が樹脂である、請求項14又は15に記載の処理液収容体。 【請求項19】 前記保管容器の内壁の材質が、高密度ポリエチレン、高密度ポリプロピレン、6,6-ナイロン、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとパーフロロアルキルビニルエーテルの共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、及び、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体から選ばれる1以上の樹脂である、請求項14、15、及び、18のいずれか1項に記載の処理液収容体。 【請求項20】 前記保管容器の内壁の材質が、分子内にフッ素原子を含むフッ素系樹脂である、請求項14、15、18、及び、19のいずれか1項に記載の処理液収容体。 【請求項21】 前記保管容器が、開口部を複数有する、請求項14、15、18、19、及び、20のいずれか1項に記載の処理液収容体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-03-24 |
出願番号 | 特願2017-555097(P2017-555097) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZDA
(H01L)
P 1 651・ 113- ZDA (H01L) P 1 651・ 537- ZDA (H01L) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 土谷 慎吾 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
小川 将之 小田 浩 |
登録日 | 2019-04-26 |
登録番号 | 特許第6518788号(P6518788) |
権利者 | 富士フイルム株式会社 |
発明の名称 | 半導体デバイス用処理液の保管方法、処理液収容体 |
代理人 | 三橋 史生 |
代理人 | 伊東 秀明 |
代理人 | 伊東 秀明 |
代理人 | 三橋 史生 |