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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B22F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B22F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B22F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B22F
管理番号 1377776
異議申立番号 異議2019-700979  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-04 
確定日 2021-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6523682号発明「焼結軸受」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6523682号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6523682号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6523682号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、平成26年12月26日を出願日とする特願2014-265247号であって、令和 1年 5月10日にその特許権の設定登録がなされ、同年 6月 5日にその特許掲載公報(以下、「本件特許公報」という。)が発行された。
その後、令和 1年12月 4日付けで、特許異議申立人松尾三佐子(以下、「申立人」という。)により、請求項1?6(全請求項)に係る本件特許に対して特許異議の申立て(以下、「本件異議申立」という。)がなされ、令和 2年 2月25日付けで取消理由が通知され、これに対して、特許権者(以下、「請求人」ともいう。)により同年 4月30日付けで意見書が提出されるとともに、同日に訂正請求がされ、同年 7月 6日付けで訂正拒絶理由が通知されたが、これに対する意見書は提出されなかった。
さらに、同年 9月30日付けで2回目の取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、特許権者により同年11月30日付けで意見書が提出されるとともに、同日に訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、申立人により令和 3年 3月11日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨、及び、訂正の内容
(1)訂正請求の趣旨
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6523682号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3?6について訂正を求めるものであり、その訂正の内容は下記(2)のとおりである。
なお、令和 2年 4月30日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。
(2)本件訂正の内容
ア 訂正事項1
請求項3について、本件訂正前の
「原料粉末が純銅粉末を含まない」を
「前記焼結金属が純銅組織を含まない」と訂正する。
請求項3を引用する請求項4?6も同様に訂正する。

2 本件訂正についての当審の判断
(1) 訂正の目的について
本件訂正前の請求項3は、「焼結軸受」という物の発明であるにもかかわらず、「原料粉末が純銅粉末を含まない」と記載され、原料粉末について特定されていたために、「焼結軸受」の製造工程で使用される「原料粉末」について「純銅粉末を含まない」と特定することが、当該製造の結果得られる「焼結軸受」においてどのような特徴を備えることを特定していたか不明であった。
しかしながら、訂正事項1によって、「純銅粉末を含まない」「原料粉末」を用いて製造した結果得られる「焼結軸受」の特徴が、「焼結金属が純銅組織を含まない」ことであることが明らかにされた。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(2) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かについて
訂正事項1が、本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるかを検討する。
請求人が訂正事項1についての訂正の根拠として挙げている、本件明細書の段落【0014】には次の記載がある。
「【0014】
ところで、純銅は硫化物が付着しやすいため、焼結軸受に純銅組織(Cu相)が存在すると、Cu相に硫化物が付着するため硫化腐食が生じやすい。このため、焼結軸受の原料に純銅粉末が含まれる場合は、Cu相にAlを拡散させて合金化する必要があり、焼結工程のコストが高くなる。従って、上記の焼結軸受の原料粉末は、純銅粉末を含まないことが好ましい。」
上記記載によれば、原料に純銅粉末が含まれる場合は焼結軸受に純銅組織が存在するが、純銅粉末を含まない場合には焼結軸受に純銅組織が存在しないものとなることが示されている。
したがって、訂正事項1は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項の規定に適合している。

(3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるかについて
上記(1)のとおり、訂正事項1による訂正は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項3?6について、請求項4?6は請求項3を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項3?6は一群の請求項であるところ、本件訂正請求は、上記一群の請求項についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(5)独立して特許を受けることができるかについて
本件異議申立は本件特許の全請求項に対して申し立てられているので、本件訂正に、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されず、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの要件は課されない。
3 小括
以上のとおりであるから、令和 2年11月30日に特許権者が行った本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔3?6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次のとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を表す。
「【請求項1】
Al、Cu、及びNiを含み、Al-Cu-Ni合金組織同士が焼結されたアルミ青銅系の焼結金属からなる焼結軸受であって、
前記Al-Cu-Ni合金組織には、Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し、Al-Cu化合物相は析出していない焼結軸受。
【請求項2】
Alを7?11質量%、Niを1?6質量%含み、残部の主成分をCuとした請求項1記載の焼結軸受。
【請求項3】
前記焼結金属が純銅組織を含まない請求項1又は2に記載の焼結軸受。
【請求項4】
軸受面に遊離黒鉛を露出させた請求項1?3の何れかに記載の焼結軸受。
【請求項5】
請求項1?4の何れかに記載の焼結軸受と、前記焼結軸受の内周に挿入され、回転自在に支持される軸と、前記軸に固定されたポンプインペラとを備えた燃料ポンプ。
【請求項6】
請求項1?4の何れかに記載の焼結軸受と、前記焼結軸受の内周に挿入され、軸方向移動自在に支持される軸を有するバルブとを備えたEGRバルブ。」
第4 特許異議申立について
1 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、いずれも本願の出願前に、日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記甲第1?14号証を提出して、以下の申立理由1?6により、請求項1?6に係る本件特許を取り消すべきである旨主張している。
(1)申立理由1(新規性進歩性)
本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、もしくは、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証に記載された発明に基いてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と、甲第1、3、4号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(進歩性)
本件訂正前の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3、4号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(進歩性)
本件訂正前の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3?7号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(進歩性)
本件訂正前の請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3、4、8?10号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。
(6)申立理由6(明確性要件、サポート要件、実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載には不備があるから、本件訂正前の請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、同法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:米国特許第6132486号明細書
甲第2号証:米国特許出願公開第2006/0219328号明細書
甲第3号証:特開2013-216972号公報
甲第4号証:特開2009-7650号公報
甲第5号証:特開2007-309158号公報
甲第6号証:特開2010-110152号公報
甲第7号証:国際公開第2004/073145号
甲第8号証:特開2012-237240号公報
甲第9号証:特開平10-54474号公報
甲第10号証:特開2014-190333号公報
甲第11号証:福田金属箔粉工業株式会社カタログ、1999年5月、第3頁
甲第12号証:粉体工学会(社)日本粉体工業技術協会(外1名)編、「改訂増補粉体物性図説」、第1版、日経技術図書株式会社、昭和60年12月21日、159頁
甲第13号証:日本粉末冶金工業会編著、「焼結機械部品-その設計と製造-」、第1版、株式会社技術書院、昭和62年10月20日、資料23
甲第14号証:ヘガネス製品カタログ、ヘガネスAB発行、2011年2月
なお、甲第1号証?甲第14号証を、それぞれ、甲1?甲14ということがある。
第5 取消理由
1 令和 2年 2月25日付けで通知した取消理由の概要
当審は、上記申立理由6に基いて、明確性に関する、次の(1)、(2)の取消理由を通知した。
(1)本件訂正前の請求項1に係る発明は、どのような観察・測定手段によって、「Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出」したと確認されたのか、また、「Al-Cu化合物相は析出していない」と確認されたのか不明であるため、特許を受けようとする発明が明確ではない。また、請求項1を引用する請求項2?6に係る発明も、同様に明確でない。
(2)本件訂正前の請求項3に係る発明は、「焼結軸受」という物の発明であるにもかかわらず、「原料粉末が純銅粉末を含まない」と原料が特定されており、製造工程で使用される原料粉末を特定することが、最終生成物である「焼結軸受」においてどのような特徴を備えることを特定しているのか不明であるため、特許を受けようとする発明が明確ではない。また、請求項3を引用する請求項4?6に係る発明も、同様に明確でない。
2 令和 2年 9月30日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
令和 2年 2月25日付けで通知された、上記1の取消理由に対して、令和 2年 4月30日付けで特許権者から意見書と訂正請求書が提出されたが、当審は、当該訂正請求書に係る訂正は適法なものとはいえないため認められず、上記意見書の主張によっても上記取消理由が解消したとはいえないと判断し、令和 2年 9月30日付けの取消理由通知(決定の予告)によって、本件訂正前の請求項1?6に係る発明に対して、上記1の(1)、(2)と同内容の取消理由を再度通知した。
第6 当審の判断
1 取消理由通知によって通知した理由について
(1) 明確性について(上記第5の1の理由(1)について)
ア 令和 2年 2月25日付け及び令和 2年 9月30日付けで通知した取消理由(1)とは、本件特許の請求項1には、「Al-Cu-Ni合金組織には、Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し、Al-Cu化合物相は析出していない」と記載されているが、本件明細書には、Al-Cu-Ni合金組織に析出した化合物相についての、観察・測定手段が記載されておらず、どのような観察・測定手段によって、「Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し」たと確認され、また、「Al-Cu化合物相は析出していない」と確認されるのか不明である。そのため、請求項1?6に係る発明は明確であるとはいえない、というものである。
イ 上記アの取消理由に対して、特許権者は、令和 2年11月30日付けの意見書において以下(ア)?(エ)の主張をしている。
(ア)合金組織の観察は顕微鏡による撮影画像を用いた画像解析で行うことが一般的であり、一般的な金属顕微鏡である株式会社ニコン製ECLIPSE LV150Nにより倍率1000倍で撮影することにより化合物相の析出の有無を判断することができる。
(イ)次に示す乙第2号証の写真には、
・Al-Cu-Ni合金粉で形成した、組成が、Al:10質量%、Ni:5質量%、残部Cu及びCである、焼結体(以下、「焼結体1」という。写真の左側の3つが該当し、上から順に写真1a、1b、1cという。)と、
・Al-Cu合金粉で形成した、組成が、Al:10質量%、残部Cu及びCである、焼結体(以下、「焼結体2」という。写真の右側の3つが該当し、上から順に写真2a、2b、2cという。)
を上記金属顕微鏡を用いて1000倍で撮影した画像が示されている。
「乙第2号証


(ウ)左側の写真1a?1cには、直線的なストライプ模様を呈した濃灰色(略黒色)のAl-Ni化合物相(κ相)が析出しており、右側の写真2a?2cには、まだらな網目模様を呈した薄灰色のAl-Cu化合物相(γ相)が析出しており、Al-Ni化合物相(κ相)とAl-Cu化合物相(γ相)は、その模様や色の違いから、顕微鏡による撮影画像で明確に区別することができる。
(エ)したがって、当業者であれば、Al-Cu-Ni合金組織を顕微鏡で観察するにあたり、析出している化合物相の模様や色を判別できるように観察条件(倍率等)を適宜設定することで、当該Al-Cu-Ni合金組織に、Al-Ni化合物相が析出していること、Al-Cu化合物相が析出していないことを確認することができる。
ウ 乙第2号証の上記写真1a?1cを見ると、いずれの写真においても、「κ相(Al-Ni化合物相)」と表示された、直線的なストライプ模様を呈した濃灰色(略黒色)の領域が存在していることが確認でき、上記写真2a?2cを見ると、いずれの写真においても、「γ相(Al-Cu化合物相)」と表示された、まだらな網目模様を呈した薄灰色の領域が存在していることが確認できる。
したがって、当業者であれば、一般的な金属顕微鏡を用いて倍率1000倍程度で「Al-Cu-Ni合金組織」の表面を観察すれば、撮影した画像において、各相の模様や色を判別することによって、「Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し」ていることや、「Al-Cu化合物相は析出していない」ことを確認することが可能であるといえる。
なお、金属の組織観察において倍率1000倍程度で観察することは、通常使用される範囲のものと認められる(この点については、例えば、東北大学金属材料研究所 正橋直哉 ものづくり基礎講座(第49回技術セミナー)『金属の弥勒をみなおそう 第三弾観察・分析編 第一回』の第12頁に、組織観察に使用する光学顕微鏡の倍率が、数十倍?数百倍、最高で2千倍程度であると記載されている。http://www.trc-center.imr.tohoku.ac.jp/_userdata/mono49_2a.pdf)。
エ よって、「Al-Cu-Ni合金組織」において「Al-Cu化合物相は析出していない」点については、顕微鏡で金属組織表面を観察することで特に問題なく判別できるといえるから、本件発明は上記アの点について不明確であるとはいえない。
したがって、上記第5の1の理由(1)は解消された。
オ なお、申立人は、令和 3年 3月11日付けで提出された意見書において、上記イの主張にかかわらず、本件発明は「Al-Cu化合物相は析出していない」という発明特定事項について、次の(ア)?(ウ)の点で、依然として不明であると主張している。
(ア)Al-Cu焼結体においては、写真2a?2cのように、Al-Cu化合物相がまだらな網目模様を呈するとしても、Al-Cu-Ni焼結体においても、同様なまだらな網目模様を呈するかは不明である。
(イ)写真1a?1cにおいて、直線的なストライプ模様を呈した濃灰色(略黒色)の組織が「Al-Ni化合物相(κ相)」であり、写真2a?2cにおいて、まだらな網目模様を呈した薄灰色の組織が、「Al-Cu化合物相(γ相)」であることの技術的根拠が不明である。
(ウ)金属組織を顕微鏡で観察する際の倍率が特定されていないため、「Al-Cu化合物相(γ相)」が実際に存在していたとしても、1000倍の倍率では識別し得ない可能性があり、観察条件(倍率)の設定によっては、「Al-Cu化合物相(γ相)」の析出ありと析出なしの判断が分かれる場合があり得る。
カ そこで、上記オの申立人の主張について以下検討する。
(ア)について
申立人が主張するように、Al-Cu-Ni焼結体において析出したAl-Cu化合物が、写真2a?2cと全く同じ「まだらな網目模様」を呈するかは不明である。
しかしながら、仮に、「Al-Cu-Ni焼結体」に析出する「Al-Cu化合物相(γ相)」が、写真2a?2cとは異なる様相を呈しているとしても、少なくとも、「Al-Cu化合物相(γ相)」は、「Al-Cu-Niマトリクス相」や「Al-Ni化合物相」とは異なる様相を呈する領域として顕微鏡観察によって判別し得るものであり、また、下記(イ)でも言及している「SEM-EDX」によって上記異なる様相を呈する相の組成分析や元素マッピングを行うことにより、「Al-Cu化合物相(γ相)」を同定するとともに、当該相の特徴的な模様と色を確認することができると推定されるので、当業者であれば、1000倍程度の倍率による金属組織の顕微鏡観察の結果と、必要に応じてSEM-EDX等による元素分析を行うことによって、「Al-Cu化合物相(γ相)」の析出の有無を判断することは可能と考えられる。
なお、本件発明1の焼結軸受の「Al-Cu-Ni合金組織」には、そもそも「Al-Cu化合物相」は析出していないのであるから、同一の「Al-Cu-Ni合金組織」中に「Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相」以外に「Al-Cu化合物相」が析出している試料の写真を提示する必要があるとまではいえず、実際に「Al-Cu化合物相」が撮影された写真2a?2cを提示すれば「Al-Cu化合物相」を示す参照資料としては十分と考えられる。
(イ)について
撮影で得られた画像の特定領域の組織を同定する方法については、本件明細書や意見書において、特に説明されていないが、例えば、申立人が意見書の第6頁において、一般に採用されている技術であると認めている「SEM-EDX」によって、観察している領域における組成分析や元素マッピングができることは当業者には周知の技術であるから、そのような観察のための常套手段を利用することにより、「Al-Ni化合物相(κ相)」と「Al-Cu化合物相(γ相)」の同定を行うことは当業者にとって格別困難なことであるとはいえない。
(ウ)について
特許権者の上記イの主張によって、「Al-Cu-Ni合金組織」に「Al-Cu化合物相は析出していない」ことを確認するための方法が、一般的な金属顕微鏡を用いて倍率1000倍程度で表面観察をすることであることが明らかになった。そして、乙第2号証の写真によれば、1000倍程度の倍率で観察すれば、「Al-Cu化合物相」の特徴的な模様や色によって「Al-Cu化合物相」の析出が判別できることが確認された。
したがって、特許権者によって、一般的な金属顕微鏡を用いて1000倍程度の倍率で観察し、模様と色から「Al-Cu化合物相」の析出の有無を判断するとの基準が示された以上、仮に、申立人が主張するような、1000倍程度の倍率では「Al-Cu化合物相」に特徴的な模様及び色が看取できないが、より高い倍率で観察すれば(例えば電子顕微鏡を用いれば)析出が確認できるような金属組織については、本件発明の「Al-Cu化合物相は析出していない」ものに該当すると判断するのが相当である。
キ 以上の検討から、本願発明は、「Al-Cu化合物相は析出していない」という発明特定事項について、上記(ア)?(ウ)点で依然として不明である、との主張は採用できない。
(2) 発明の明確性について(上記第5の1の理由(2)について)
上記第2において、本件訂正について検討したように、本件訂正前の請求項3の記載「原料粉末が純銅粉末を含まない」は、当該原料粉末を用いて製造した後の「焼結軸受」においてどのような特徴を備えることを特定しているのか不明であったが、本件訂正によって、当該記載は 「前記焼結金属が純銅組織を含まない」と訂正されたので、製造後の「焼結軸受」においてどのような特徴を備えることを特定しているのか明らかになった。
したがって、上記第5の1の理由(2)は解消された。
2 取消理由通知では採用しなかった理由について
(1)サポート要件について(申立理由6について)
ア 申立人は、請求項1について、「Al、Cu、及びNiを含み」とは、Al、Cu、及びNi以外の他の成分元素を含有することを排除するものではなく、例えば、Si、Zn、Fe、Snなどの成分元素を含むことを許容するものであるから、本件発明1は、Al、Cu、Niに加えて、Si、Zn、Fe、Sn等を含む4成分以上の多成分アルミ青銅系合金からなる焼結軸受を含むものであるが、本件明細書には、3成分アルミ青銅系合金である実施例1,2が記載されているのみで、4成分以上の多成分アルミ青銅系合金について具体的な開示はない。そうすると、わずか2例の3成分系アルミ青銅系合金に関する開示をもって、4成分以上の多成分アルミ青銅系合金からなる焼結軸受という本件発明1の範囲まで、これを拡張・一般化することは、出願時の技術常識に照らしても、到底許されるものではない、と主張している。
イ そこで、上記主張について検討する。
請求項1には、「Al-Cu-Ni合金組織同士が焼結されたアルミ青銅系の焼結金属からなる焼結軸受」と記載されており、当該焼結軸受の製造方法に関して、本件明細書には次の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
「【0051】
Al-Cu-Ni系アルミ青銅焼結体(実施例1、実施例2)
7?11質量%Alを含むAl-Cu-Ni合金粉を含む原料粉末を用いて作成した焼結体からなり、Alを8.5質量%、Niを3.0質量%(実施例1)あるいは5.0質量%(実施例2)含み、残部の主成分がCuである。この焼結体に生成されたAl-Cu-Ni合金組織には、Al-Cu-Niマトリクス相(α相)と、Al-Ni化合物相(κ相)の析出が確認された(図3参照)。また、Al-Cu化合物相(γ相)の析出は確認されなかった。」
上記製造方法の記載を参照すると、本件発明1の「Al-Cu-Ni合金組織同士が焼結されたアルミ青銅系の焼結金属」とは、Al-Cu-Ni合金粉を含む原料粉末を焼結することによって作成されたアルミ青銅系の焼結金属であって、当該Al-Cu-Ni合金粉とは、Alを8.5質量%、Niを3.0質量%(実施例1)あるいは5.0質量%(実施例2)含み、残部の主成分がCuという組成であるから、合金には必須元素以外に不可避不純物が含有されるとの技術常識も踏まえると、実施例1、2における含有金属元素は、Al、Ni、Cuと、明示されていない不可避不純物のみであることが理解される。
ウ ここで、本件発明1の「アルミ青銅系の焼結金属」が、仮に申立人が主張するように、Al、Cu、Ni以外の金属の第4成分を含有するとすれば、当該焼結金属のマトリクス相にはAl、Cu、Ni以外に当該第4成分が含まれることになると考えられるが、実際には、マトリクス相はAl-Cu-Niの三成分のみのマトリクス相であるから、当該焼結金属にはAl、Cu、Ni以外の金属の第4成分が含まれることはないと解される。
エ そして、請求項1に「Al、Cu、及びNiを含み」と記載され、Al、Cu、Niの3金属元素以外の元素の含有を許容していることについて、本件明細書には
「【0030】
P源としては、P合金粉末を使用できる。P合金粉末は、例えばP-Cu合金粉末を使用することができ、本実施形態では7?10質量%P-Cu合金粉末を用いた。Pは、焼結時の固液相間の濡れ性を高める効果がある。」
「【0031】
固体潤滑剤としては、例えば黒鉛粉末を使用できる。黒鉛粉末は、主として焼結軸受1の空孔内や表面に遊離黒鉛として存在する。特に、軸受面(内周面1a)に露出した黒鉛粉末は、焼結軸受1に優れた潤滑性を付与し、耐摩耗性の向上に寄与する。」
と記載されていることから、本件発明1の焼結金属には、Al、Cu、Niの金属元素以外に、「焼結時の固液相間の濡れ性を高める効果がある」「P」や、「主として焼結軸受1の空孔内や表面に遊離黒鉛として存在」し「固体潤滑剤」として機能する「黒鉛粉末」が含まれることを許容することを意味しているものと解される。
つまり、請求項1の「Al、Cu、及びNiを含み」との記載において、当該Al、Cu、及びNi以外に含有することが許容される他の成分元素とは、不可避不純物と、金属元素ではない「P」や「黒鉛粉末」であるものと解される。
オ なお、Si、Znについては、本件明細書に「本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、焼結軸受1の組成は上記に限らず、例えば、上記の実施形態のNiに代えて、Siを配合してもよい。具体的には、例えば焼結軸受の組成を、Alを7?11質量%、Siを1?6質量%含み、残部の主成分をCuとすることができる。」(【0042】)、「上記の実施形態のNiに代えて、Znを配合してもよい。具体的には、例えば焼結軸受1の組成を、Alを7?11質量%、Znを1?5質量%含み、残部の主成分をCuとすることができる。」(【0043】)と記載されていることから、SiやZnは、Niに代えて本件特許の焼結金属に配合すべきものであるから、Al、Cu、Niに追加される第4成分として配合されるものではない。このことは、実施例1?4では、Ni、Si、Znのうちいずれか1元素のみが含有されている(【表1】参照)ことからも明らかである。
カ したがって、本件発明1において、「アルミ青銅系の焼結金属」を構成する合金組織とは、Al、Cu、Niの3成分系の合金組織であって、不可避不純物としての金属元素以外の金属の第4成分を含有する合金組織は実質的に排除されていると解するのが相当である。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明には、上記段落【0051】の実施例1、2の焼結体のように、Al-Cu-Niマトリクス相(α相)と、Al-Ni化合物相(κ相)の析出が確認されたが、Al-Cu化合物相(γ相)の析出は確認されなかったAl-Cu-Ni合金組織が生成されていることが記載されているから、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載したものであることは明らかである。
よって、サポート要件についての申立人の上記アの主張は採用できない。
(2)新規性進歩性について(申立理由1?5について)
(2-1)甲第1号証の記載
ア 甲1には次の記載がある(下線は当審が付した。また、「…」は記載の省略を表す。以下同様。)。
1ア 「

」(第1欄5?12行)(当審訳:本発明の分野
本発明は、広くは粉末金属(P/M)混合物と、P/M混合物の形成の製造方法、プロセスに関するものである。特に、本発明は、軸受/ブッシュ、構造部品形成のためのP/M多相青銅材料と、軸受/ブッシュ、構造部品のためのPIM多相青銅材料の形成方法に関係している。)
1イ「

」(第2欄27?47行)(当審訳:発明の概要
それゆえ、本発明は、軸受/ブッシュおよび構造部品のためのP/M材料、及び軸受、ブッシュおよび構造部品のためのP/M材料の形成方法に関する。
本発明は、粉末金属の焼結製品を形成するプロセスを提供するものであり、以下のステップを含む。そのステップとは、銅粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末及びニッケル粉末のような粉末金属を潤滑剤とともに混合するステップ、型内に混合粉末を充填するステップ、製品に形成するために型内の混合粉末を圧縮するステップ、100%乖離アンモニア(DA)からなる還元雰囲気中で製品を高温焼結するステップである。上記混合粉末は、体積%(±0.5%)で、80%の銅粉末、11%のアルミニウム粉末、5%の鉄粉末及び4%のニッケルを潤滑剤とともに含有してもよい。混合粉末中の金属は自由状態であり、1000°-1835°F(538°-1002°C)の温度範囲で焼結される。上記潤滑剤は好ましくはステアリン酸である。」
1ウ 「

」(第10欄42?54行)(当審訳:
請求項16 焼結された粉末金属部品は、以下を含む。
前記部品形状に形成された複数の金属粉末を含み、前記部品は、1100°Fの焼結温度でDA雰囲気中において焼結され、そして、前記部品は、多相ミクロ組織を有する。
請求項17 焼結された粉末金属部品は、以下を含む。
前記部品形状に形成された複数の金属粉末を含み、前記部品は、DA雰囲気中で焼結され、そして、前記部品は、多相ミクロ組織を有し、前記複数の金属粉末は、実質的に、混合体積%で、80%銅、11%アルミニウム、5%鉄、そして4%ニッケルからなる。)
イ 上記1ア?1ウの記載によれば、甲1には、
「体積%で、80%の銅粉末、11%のアルミニウム粉末、5%の鉄粉末及び4%のニッケル粉末を潤滑剤(ステアリン酸)とともに混合した混合粉末を圧縮し、焼結することによって形成した多相ミクロ組織の焼結金属からなる焼結軸受。」
が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
(2-2)甲第2号証の記載
ア 甲2には次の記載がある。
2ア 「[0001] The invention relates to a process for producing a sliding bearing with a sliding surface, consisting of a copper multicomponent alloy having at least two phase constituents, and to a sliding bearing made from the copper multicomponent alloy.」
(当審訳:[0001]本発明は、少なくとも2つの相成分を有する銅多成分合金からなる滑り面を有する滑り軸受を製造する方法、および銅多成分合金から製造された滑り軸受に関する。
2イ「[0016]Another aspect of the invention relates to a sliding bearing which has been produced by the process described above and consists of a copper/aluminum multicomponent bronze.
[0017]Alloys of copper and aluminum, referred to in language of general usage as “aluminum bronzes”, in the binary system with an element content of up to 9% by weight aluminum, have a homogenous alpha microstructure. In addition, there are aluminum multicomponent alloys with an aluminum content of up to 10% by weight, which also contain further alloying constituents, such as for example iron, nickel, manganese, zinc and silicon. The microstructure of the multicomponent alloy is then heterogeneous, with further phase constituents being formed. Additions of iron or nickel lead to the formation of an intermetallic phase, which effects a considerable increase in strength. In this case, iron has a grain-refining effect on the crystal microstructure even at a relatively low concentration.」
(当審訳:[0016]本発明の別の態様は、上述の方法によって製造され、銅/アルミニウム多成分青銅からなる滑り軸受に関する。
[0017]一般には“アルミニウム青銅”と呼ばれる、銅とアルミニウム合金は、元素含有量が9重量%までのアルミニウムである二元系において、均質なα微細組織を有する。さらに、10重量%までのアルミニウム含有量を有するアルミニウム多成分合金があり、これはまた、例えば鉄、ニッケル、マンガン、亜鉛、およびケイ素などのさらなる合金化成分を含有する。この多成分合金の微細構造は不均質であり、さらなる相成分が形成される。鉄またはニッケルの添加は、金属間化合物相の形成をもたらし、これは強度のかなりの増加をもたらす。この場合、鉄は、比較的低濃度であっても、結晶微細構造に結晶粒精錬効果を有する。)
2ウ「[0018]This group of materials also includes the multicomponent alloys produced by means of spray-compacting, which have a low-segregation, fine-grained microstructure. Examples of these materials include the alloys CuAl13Fe4.5CoMn and CuAl15Fe4.5CoMn.
[0019]Multicomponent aluminum bronzes of this type, in addition to a very high strength, also have a high wear resistance and a good corrosion resistance. They have a high load-bearing capacity and are thermally stable up to approx. 350°C. On account of their beneficial properties, these materials, when used as liners, satisfy the high demands imposed on the piston bearing arrangement in the automotive industry. This is true in particular for bearing bushes in highly loaded steel pistons and for connecting rods in diesel engines.」
(当審訳:[0018]この材料グループは、スプレー形成によって形成された多成分合金も含み、この材料は、低偏析、微細粒構造を有する。例には、CuAl13Fe4.5CoMn合金およびCuAl15Fe4.5CoMn合金が含まれる。
[0019]このタイプの多成分アルミニウム青銅は、非常に高い強度に加えて、高い耐摩耗性および良好な耐食性も有する。それらは、高い耐荷力を有し、約350℃まで熱的に安定である。これらの材料は、それらの有益な特性のために、ライナーとして使用される場合、自動車産業におけるピストン軸受装置に課せられる高い要求を満たす。これは、特に、高負荷鋼ピストンの軸受ブッシュ及びディーゼルエンジンのコネクティングロッドに当てはまる。)
2エ「[0021]In a preferred configuration of the invention, the sliding bearing can consist of a two-phase CuAl10Ni5Fe4 alloy. The sliding bearing may advantageously have the following alloy composition [in % by weight]:
Cu remainder
Al 9.0 to 10.5%
Ni 4.0 to 6.0%
Fe 3.5 to 5.0%
and optionally up to 1.0% Zn, 0.1% Pb, 1.5% Mn and 0.1% Si.
In the sliding bearing, the content of the element iron in the alloy may preferably be lower than that of nickel.
[0022]Materials of this type are multiphase and may advantageously have a hard kappa phase in addition to the Cu-rich alpha phase. The precipitation phases differ considerably from the base material in terms of their electrochemical potential. With this specific alloy, the “base” elements aluminum, iron and nickel are present to a greater extent in the hard kappa phase.」
(当審訳:[0021]本発明の好ましい構成では、滑り軸受は、2相のCuAl10Ni5Fe4合金から形成することができる。この滑り軸受は、有利には、以下の合金組成(重量%)を有してもよい。
Cu 残部
Al 9.0?10.5%
Ni 4.0?6.0%
Fe 3.5?5.0%
そして、必要に応じて、最大で1.0%のZn、0.1%のPb、1.5%のMn、0.1%のSiを含有してもよい。
滑り軸受において、合金中の鉄元素の含有量は、ニッケルよりも低いことが好ましい。
[0022]このタイプの材料は多相であり、有利には、Cuリッチα相に加えて硬質κ相を有しても良い。 析出相は、その電気化学ポテンシャルの点で基材とはかなり異なる。この特定の合金では、「ベース」元素であるアルミニウム、鉄およびニッケルは、硬質κ相により多く存在する。」
イ 上記2エによれば、甲2には、
「多相のCuAl10Ni5Fe4合金から形成された滑り軸受であって、上記多相は、Cuリッチα相と硬質κ相を有しており、上記硬質κ相はアルミニウム、鉄、及びニッケルを含んでいる、滑り軸受。」
が記載されていると認められる(以下「甲2発明」という。)
(2-3)甲第3号証の記載
甲3には次の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の目的を達成するために種々検討した結果、アルミニウム青銅系焼結軸受の製造方法として、生産性がよく、低コストで、多量生産に好適な製造方法を実現するために、焼結による膨張を有効利用するという新規な着想に至った。
【0011】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、3?12質量%のアルミニウムおよび0.05?0.5質量%の燐を含有し、残部の主成分を銅とし、不可避不純物を含んだ焼結軸受の製造方法であって、この製造方法が、少なくとも、原料粉末に焼結助剤が添加された圧粉体を成形する圧粉工程と、前記圧粉体からアルミニウム-銅合金が焼結された組織を有する焼結体を得る焼結工程と、前記焼結体を寸法整形するサイジング工程とを含んでいることを特徴とする。これにより、生産性がよく、低コストで、多量生産に好適なアルミニウム青銅系焼結軸受の製造方法を実現することができる。これにより製造された焼結軸受は、耐食性および強度、耐摩耗性などの機械的特性や油膜形成性、保油性を向上させると共に、コンパクト化を図ることができる。」
「【0021】
上記の原料粉末および不可避不純物の合計100質量%に対して、1?5質量%の黒鉛を添加することができる。これにより、分散分布する気孔内に遊離黒鉛として存在し、焼結軸受に優れた潤滑性を付与し、耐摩耗性の一段の向上を図ることができる。黒鉛の配合上は1?5質量%が好ましい。1質量%未満では黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5質量%を越えると、強度が低下し好ましくない。」
「【0039】
[黒鉛粉末]
黒鉛は、主として素地に分散分布する気孔内に遊離黒鉛として存在し、焼結軸受に優れた潤滑性を付与し、耐摩耗性の向上に寄与する。黒鉛の配合量は、アルミニウム、珪素、錫、燐、銅および不可避不純物の合計100質量%に対して、1?5質量%が好ましい。1質量%未満では黒鉛添加による潤滑性、耐摩耗性の向上効果が得られない。一方、5質量%を越えると、強度が低下し好ましくない。」
(2-4)甲第4号証の記載
甲4には次の記載がある。
「【発明の効果】
【0010】
本発明の効果としては、成形性に優れ、低焼結温度でも緻密で優れた機械的強度を有する焼結Al含有Cu合金を経済的に容易に得ることが可能となり、従来焼結Cu系合金にて対応できなかった機械的強度、耐食性および耐熱性を求められる焼結部品への用途展開ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、1?12質量%Alと残部をCuとする合計100質量%に対して、Pが0.05?1質量%、Siが0.5?4質量%、Snが0.1?1質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする。」
「【0020】
本発明による焼結Al含有Cu合金用混合粉末は、200?500MPaで金型成型した後に、非酸化性或いは還元性雰囲気中880?920℃での焼結により、優れた機械的特性および耐食性を有する焼結体となる。…」
(2-5)甲第5号証の記載
甲5には次の記載がある。
「【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図2に示す燃料ポンプ10は、例えば図示しない二輪または四輪車両等の燃料タンク内に収容されており、燃料タンクから吸入した燃料をエンジン側に供給するものである。

【0014】
インペラ23は、外周縁に全周にわたり羽根と、羽根の間に形成された羽根溝とを有している。ケーシング21およびカバー22は金属製であり、本実施形態ではアルミニウムのダイカスト成形により形成されている。ケーシング21の中心には軸受部材30が嵌着されており、この軸受部材30により、電機子52の回転軸55の一方の端部は回転可能に支持されている。回転軸55の他方の端部は、軸受部材40により回転可能に支持されている。なお、軸受部材40は、ハウジング11の一端部に固定されたベアリングホルダ42の中央部に保持されている。」
「【図2】


(2-6)甲第6号証の記載
甲6には次の記載がある。
「【0013】
<モータ部20について>
モータ部20は、燃料ポンプ10のポンプ部12の駆動源であり、そのモータ部20の回転軸21の下端部21dにインペラ14が回り止めされた状態で同軸に連結されている。即ち、前記モータ部20が本発明の燃料ポンプ用モータに相当する。
モータ部20(以下、燃料ポンプ用モータ20という)は、2極8スロットの直流モータであり、永久磁石を備える円筒状の固定子24と、その固定子24内に均等な隙間を介した状態で同軸に収納される電機子22とから構成されている。前記電機子22の軸方向両端(上下端)には回転軸21が同軸に突出形成されており、下側の回転軸21がポンプ部12のケース12hに設けられた軸受12jによって支持されている。また、電機子22の上側の回転軸21が燃料ポンプ用モータ20の蓋部18に設けられた軸受18jによって支持されている。」
「【図3】


(2-7)甲第7号証の記載
甲7には次の記載がある。
「 アウトレットハウジング23は、樹脂により形成され、流路27で昇圧された燃料を電機子6側に吐出する吐出口24が設けられるとともに、シャフト7を軸支する軸受25を収納する。
樹脂により成形され、外周に複数の羽根溝が形成されたインペラ (羽根車)26の中心部のD字形状の孔には、断面がD字形状に形成されたシャフト7の端部であるDカット部7aが嵌合している。
インレットハウジング21およびアウトレットハウジング22の凹溝21 a、23aと、インペラ26の複数の羽根溝により流路27が形成される。
次に、燃料ポンプの動作について説明する。
図示しないバッテリーから給電端子(図示せず)、リード線11、ブラシ9、整流子6aを介して、電機子6に電流が供給されると、周知の直流電動機の原理により、電機子6はシャフト7を回転軸としてインペラ26とともに回転する。」(第5頁第17行?第6頁第4行)
「第1図


(2-8)甲第8号証の記載
甲8には次の記載がある。
「【0024】
図1に、この実施形態におけるモータ式EGRバルブ(以下、単に「EGRバルブ」と言う。)1を正断面図により示す。このEGRバルブ1は、エンジンから排出される排気ガスの一部(EGRガス)を吸気系へ戻すEGR通路に設けられ、EGRガス流量を調節するために使用される。EGRバルブ1は、ハウジング2と、ハウジング2に形成された流路3と、流路3の途中に設けられた弁座4と、弁座4に当接可能に設けられた弁体5と、弁体5と一体的に設けられ、弁体5から延びる弁軸6と、弁体5と共に弁軸6をその軸方向へ移動(ストローク運動)させるためのステップモータ7とを備える。

【0026】
弁軸6は、ステップモータ7と弁体5との間に設けられ、ハウジング2を図面上下方向(垂直方向)方向に貫通して配置される。弁体5は、弁軸6の下端に固定され、円錐形状をなし、その円錐面が弁座4に対して当接又は離間するようになっている。弁軸6の上端には、スプリング受9が一体に設けられる。…」
「【0048】
この実施形態で、弁軸6は、ハウジング2に対しスラスト軸受11を介して図面上下方向へ移動可能に設けられる。弁軸6の上端は、ステップモータ7の出力軸24の下端に連結される。同様に、支軸35及びスプリング受9は、ケーシング25にスラスト軸受10を介して図面上下方向へ移動可能に設けられる。この実施形態のEGRバルブ15は、弁軸6が上方へ移動するに連れて弁体5の弁座4に対する開度が全開へ向けて大きくなり、弁軸6が下方へ移動するに連れて弁体5の弁座4に対する開度が全閉へ向けて小さくなる内開式に構成される。」
「【図1】


(2-9)甲第9号証の記載
甲9には次の記載がある。
「【0015】またバルブシャフト5を摺動案内する軸受26の下端に設けられる第1パイプ27はバルブシャフト5の周りに十分な隙間(1mm以上)を形成し、この第1パイプ27のさらに外周に十分な隙間(1mm以上)をもって第2のパイプ28が弁体4の付け根部に固定されている。つまり、第1パイプ27と第2パイプ28は二重構造管状になっている。この構造とすることで、排ガスが軸受26とバルブシャフト5の隙間から上側の駆動部12には抜け難い構成になっている。これにより、排ガスに含まれるデポジット成分が駆動部12の上層部に行き難い構成になっていることから、バルブシャフト5の長期使用を確保している。」
「【図1】


(2-10)甲第10号証の記載
甲10には次の記載がある。
「【0014】
EGRバルブ収納部7のケース9内には、軸受け10を介して支持軸11が軸方向に摺動可能に取り付けられており、この支持軸11の一端に設けられた円盤状のバルブ本体12が配置されている。支持軸11のバルブ本体12が取り付けられている一端とは逆の一端には、開口部8からEGRガスが漏れるのを防ぐためのスプリングホルダー13を介してモータ14のモータシャフト15に取り付けられている。モータシャフト15は支持軸11を軸方向に摺動させるためのものであって、アクチュエータとしてのモータ14によって駆動される。このモータ14は、図示しない制御装置からの制御信号により動作し、モータシャフト15の動きに応じて支持軸11を軸線方向に駆動させ、バルブ本体12の移動量を調整する。」
「【図2】


(2-11)甲第11号証の記載
甲11には次の記載がある。



甲11によれば、電解銅粉(CE-15)の見掛密度が1.35?1.6g/cm^(3)であることが見て取れる。
(2-12)甲第12号証の記載
甲12には次の記載がある。



甲12によれば、アトマイズ法によって製造されたアルミニウム粉の見掛のかさ密度が1.1?1.2g/cm^(3)であることが見て取れる。
(2-13)甲第13号証の記載
甲13には次の記載がある。



甲13によれば、ニッケル粉末(T-123)の見掛密度が、1.8?2.7g/ccであることが見て取れる。
(2-14)甲第14号証の記載



甲14によれば、鉄粉(NC100.24)の見掛密度が2.43g/cm^(3)であることが見て取れる。
(2-15)甲1を主引例とする新規性進歩性について
ア 本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の焼結金属は、4つの金属元素の粉末、すなわち、銅粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末及びニッケル粉末が焼結したものであり、多相ミクロ組織からなるものである。
一方、本件発明1の焼結金属は「Al-Cu-Ni合金組織同士が焼結され」たものであって、当該「Al-Cu-Ni合金組織」とは、本件明細書の段落【0052】に記載した製造方法から明らかなように、Al-Cu-Ni合金粉を圧縮し、焼結することによって製造したものであり、また、上記(1)で検討したように、基本的には、Al、Cu、Niの3成分のみを含有する合金組織であって、当該3成分及び不可避不純物としての金属元素以外の金属の第4成分を含有するものではない。
そして、「アルミ青銅」とは、AlとCuを含有する合金を表すことは技術常識であるから、甲1発明の合金もアルミ青銅合金である。
したがって、本件発明1と甲1発明の一致点と相違点は次のとおりとなる。
<一致点>
「Al、Cu、及びNiを含」む「アルミ青銅系の焼結金属からなる焼結軸受」の点。
<相違点1>
「焼結金属」について、不可避不純物を除けば、本件発明1では、Al、Cu、Niの3成分のみを含有するのに対して、甲1発明では、Al、Cu、Ni、Feの4成分を含有する点。
<相違点2>
「焼結金属」の金属組織について、本件発明1では、「Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し、Al-Cu化合物相は析出していない」金属組織であるのに対して、甲1発明では、「多相ミクロ組織」が具体的にどのような相を含む合金組織であるか不明である点。
イ 相違点についての検討
事案に鑑みて、相違点1について検討する。
甲1発明において、焼結の原料粉末として、「銅粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末及びニッケル粉末」に代えて、これら金属粉末から鉄粉を除去したものとする動機付けについては、甲1には記載も示唆もされておらず、甲2?甲14の記載を参照しても、そのような動機付けを見出すことができない。
したがって、甲1発明において、焼結金属の原料粉末から、鉄粉末を除去する動機付けがあるとはいえず、本件発明1のアルミ、銅、ニッケルの3金属元素のみからなる「Al、Cu、及びNiを含み、Al-Cu-Ni合金組織」とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえない。
ウ よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、少なくとも相違点1の点で甲1発明と相違するので、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、本件発明1を引用する本件発明2?6についても、同様の理由で、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2-16)甲2を主たる引用文献とする進歩性について
ア 本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「CuAl10Ni5Fe4合金」は、アルミニウムとCuを含む合金であり、上記段落[0017]によれば、「アルミニウム青銅」と呼ばれるものであるから、本件発明1の「Al、Cu、及びNiを含み、Al-Cu-Ni合金組織同士が焼結されたアルミ青銅系の焼結金属」とは、「Al、Cu、及びNiを含」む「アルミ青銅系」の「金属」の点で共通する。
また、甲2発明の「滑り軸受」は本件発明1の「軸受」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明の一致点と相違点は次のとおりとなる。
<一致点>
「Al、Cu、及びNiを含」む「アルミ青銅系」の「金属からなる」「軸受」の点。
<相違点3>
「金属」が、本件発明1では「焼結金属」であるのに対して、甲2発明では「金属」の製造方法が記載されておらず「焼結金属」であるか不明である点。
<相違点4>
「金属」が、不可避不純物を除けば、本件発明1では、Al、Cu、Niの3成分のみを含有するのに対して、甲2発明では、Al、Cu、Ni、Feの4成分を含有する点。
<相違点5>
「金属」の組織について、本件発明1では、「Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し、Al-Cu化合物相は析出していない」のに対して、甲2発明では、「Cuリッチα相と硬質κ相を有」する「多相」であり、「硬質κ相はアルミニウム、鉄、及びニッケルを含んでいる」ものである点。
イ 事案に鑑みて、最初に、相違点4について検討する。
甲2の[0017]の記載によれば、甲2発明において、Feの添加は、金属間化合物相の形成をもたらして、強度の増加をもたらすものであり、同じく[0020]の記載によれば、甲2発明において、Feの含有量は、3.5?5.0重量%の範囲であってよいとされている。
これらの記載より、甲2発明において、Feは、軸受として使用される金属の強度の増加をもたらすために添加される必須の元素であり、少なくとも3.5重量%含有させることが必要なものであるといえるから、甲2発明において、金属元素のうちFeを除去することには阻害要因があると認められるので、Feを除去して、Al、Cu、Niの3成分からなる金属とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。
ウ 次に相違点5について検討する。
甲2発明の「金属」は多相であって「Cuリッチα相と硬質κ相を有」するものであるところ、上記「硬質κ相」は「アルミニウム、鉄、及びニッケルを含」む相であるから、同じ「κ相」と呼ばれているとしても、本件発明1のFeを含まない「Al-Ni化合物相(κ相)」に該当するものであるとはいえないし、上記イで検討した理由と同じ理由により、「硬質κ相」から鉄を除去して「Al-Ni化合物相(κ相)」とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるともいえない。
また、甲2発明の「CuAl10Ni5Fe4合金」において、Cuの含有量は、10重量%のAlと、5重量%のNiと、4重量%のFeの残部である、81重量%という高い(リッチな)含有量であることも勘案すると、「Cuリッチα相」とは、Cuの含有量が多いマトリクス相を意味するものと解されるところ、当該「Cuリッチα相」にはFeが含有されている蓋然性が高く、やはり、上記イで検討した理由と同じ理由により、「Cuリッチα相」から鉄を除去して「Al-Cu-Niマトリクス相(α相)」とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるともいえない。
また、甲2発明の「金属」は多相であるが、「Cuリッチα相と硬質κ相」以外の相構成が不明であるから、「Al-Cu化合物相は析出していない」か不明であるし、甲1?甲14の記載を参照しても、甲2発明において、「Al-Cu化合物相は析出していない」ものとするような動機付けを見出すことができない。
エ 以上の検討から、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明と甲1?14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明1を引用する本件発明2?6についても、同様の理由で、甲2に記載された発明と甲1?甲14の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)実施可能要件について(申立理由6について)
ア 申立人は、本件発明1の焼結軸受の焼結工程に関して、「本件特許明細書の段落【0037】を参照しても、Al-Cu-Niの3成分系のアルミ青銅系の焼結金属の焼結工程について開示するのみであって、4成分系以上のアルミ青銅系の焼結金属の焼結工程について、「Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し、Al-Cu化合物相は析出していない」金属組織を実現するための成分及びその配合比の設定の仕方について何ら開示されていない。この点について、上記段落【0037】には、Al-Cu-Niの三元状態図を取得して、この三元状態図から上記の金属組織が得られる成分及びその配合比を設定することが記載されているが、4成分以上の多成分の場合は、その状態図の作成が困難であって、当業者に対して通常期待し得る程度をはるかに越える過度の試行錯誤や複雑な実験を強いることになる。したがって、本件特許明細書には、本件発明1を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。」旨主張している。
イ そこで、上記主張について検討する。
上記「(1) サポート要件について(申立理由6について)」で検討したように、本件発明1において、「アルミ青銅系の焼結金属」を構成する合金組織とは、基本的には、Al-Cu-Niの3成分系の合金組織であって、当該3成分及び不可避不純物としての金属元素以外の第4成分を含有する合金組織は実質的に排除されているものと認められる。したがって、本件発明1を実施するにあたり、3成分系の三元状態図を参照すれば、「Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し、Al-Cu化合物相は析出していない」金属組織を実現することができる成分の配合比を設定することが可能であり、申立人の主張するような4成分以上の多成分系の状態図を作成する必要はない。そして、Al-Cu-Niの3成分系の状態図を取得することが、当業者に対して通常期待し得る程度をはるかに越える過度の試行錯誤や複雑な実験を強いることになるともいえない。
ウ よって、本件明細書には、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえるから、申立人の上記アの主張は採用できない。
(4)明確性について(申立理由6について)
ア 申立人は、本件特許の請求項2の「残部の主成分をCuとした」なる記載について、「主成分」という表現では、焼結軸受を構成するアルミ青銅系の焼結金属に含有される成分元素の種類や成分元素の数を特定することができず曖昧であるため、焼結軸受の構成が明確でない、と主張している。
イ そこで、上記主張について検討する。
本件明細書には次のように記載されている。
「【0020】焼結軸受1は、焼結金属、特にアルミ青銅系の焼結金属で形成され、本実施形態では、Al,Cu,及びNiを含む焼結金属で形成される。具体的に、焼結軸受1は、例えば、Alを7?11質量%、Niを1?6質量%含み、残部の主成分がCuとされる。本実施形態では、上記の他、Al、Cu、Niの合計100質量%に対し、3?6質量%の黒鉛(遊離黒鉛)と、0.1?0.4質量%のPを含む。本実施形態では、焼結軸受1が、Alを8.5質量%、Niを5質量%含み、残部の主成分がCuとされる。」
「【0050】
次に、組成の異なる焼結金属からなる複数の試験片(実施例1?4、比較例1?4)を作製し、これらに対して腐食試験を施した。各試験片は、下記の表1に示す組成を有し、上記に示した製法で作製されたものである。以下、各試験片について詳しく説明する。
【表1】【表1】

【0051】
Al-Cu-Ni系アルミ青銅焼結体(実施例1、実施例2)
7?11質量%Alを含むAl-Cu-Ni合金粉を含む原料粉末を用いて作成した焼結体からなり、Alを8.5質量%、Niを3.0質量%(実施例1)あるいは5.0質量%(実施例2)含み、残部の主成分がCuである。この焼結体に生成されたAl-Cu-Ni合金組織には、Al-Cu-Niマトリクス相(α相)と、Al-Ni化合物相(κ相)の析出が確認された(図3参照)。また、Al-Cu化合物相(γ相)の析出は確認されなかった。」
ウ 上記イの記載を参照すれば、本件発明2の焼結軸受のアルミ青銅系の焼結金属において、「Alを7?11質量%、Niを1?6質量%含み、残部の主成分をCuとした」とは、当該焼結金属を構成する金属組織が「Alを7?11質量%、Niを1?6質量%含み、残部(Bal.)がCu」なる組成を有するものであるとともに、当該焼結金属が、Al、Cu、Ni以外に、不可避不純物としての金属元素と、微量の黒鉛(遊離黒鉛)及びPを含むことを許容するものであることを意味すると理解される。
エ したがって、本件特許の請求項2の記載は明確であるといえるから、上記アの主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書の申立理由及び当審から通知した取消理由によっては、本件請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Cu、及びNiを含み、Al-Cu-Ni合金組織同士が焼結されたアルミ青銅系の焼結金属からなる焼結軸受であって、
前記Al-Cu-Ni合金組織には、Al-Cu-Niマトリクス相及びAl-Ni化合物相が析出し、Al-Cu化合物相は析出していない焼結軸受。
【請求項2】
Alを7?11質量%、Niを1?6質量%含み、残部の主成分をCuとした請求項1記載の焼結軸受。
【請求項3】
前記焼結金属が純銅組織を含まない請求項1又は2に記載の焼結軸受。
【請求項4】
軸受面に遊離黒鉛を露出させた請求項1?3の何れかに記載の焼結軸受。
【請求項5】
請求項1?4の何れかに記載の焼結軸受と、前記焼結軸受の内周に挿入され、回転自在に支持される軸と、前記軸に固定されたポンプインペラとを備えた燃料ポンプ。
【請求項6】
請求項1?4の何れかに記載の焼結軸受と、前記焼結軸受の内周に挿入され、軸方向移動自在に支持される軸を有するバルブとを備えたEGRバルブ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-06-30 
出願番号 特願2014-265247(P2014-265247)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B22F)
P 1 651・ 113- YAA (B22F)
P 1 651・ 121- YAA (B22F)
P 1 651・ 536- YAA (B22F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池ノ谷 秀行  
特許庁審判長 平塚 政宏
特許庁審判官 粟野 正明
池渕 立
登録日 2019-05-10 
登録番号 特許第6523682号(P6523682)
権利者 NTN株式会社
発明の名称 焼結軸受  
代理人 野口 祐輔  
代理人 熊野 剛  
代理人 熊野 剛  
代理人 野口 祐輔  
代理人 城村 邦彦  
代理人 城村 邦彦  
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