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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09D
管理番号 1377791
異議申立番号 異議2020-700909  
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-26 
確定日 2021-07-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6701617号発明「インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6701617号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6701617号の請求項1-8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6701617号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成27年2月20日(優先権主張 平成26年10月24日 日本国)に出願され、令和2年5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1?8に係る特許に対し、同年11月26日に特許異議申立人渡辺陽子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年2月17日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年4月23日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。特許権者から訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)があったこと及び意見書が提出されたことを、同年4月28日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、その指定期間内である同年6月10日に意見書を提出した。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1からなる。
訂正事項1(当審が訂正箇所に下線を付した。)
特許請求の範囲の請求項1において、「前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以80質量%以下であ」ること、及び、「前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であ」ることを特定するとともに、「前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、」という特定事項を追加する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2?8も同様に訂正する)。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項1?8について、請求項2?8はそれぞれ請求項1を引用しているものであるので、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?8に対応する 訂正後の請求項1?8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明は、一般式(1)で表される引火点が140℃以下の化合物の具体的な成分については特定していない。
これに対して、訂正後の請求項1は、「前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であ」るとの記載により、訂正後の請求項1に係る発明におけるインクジェットインク組成物の組成をより具体的に特定し、更に限定するものである。
また、訂正後の請求項1は、「前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であ」るとの記載により、訂正後の請求項1に係る発明におけるインクジェットインク組成物の組成をより具体的に特定し、更に限定するものである。
さらに、訂正後の請求項1は、「前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であ」るとの記載により、訂正後の請求項1に係る発明におけるインクジェットインク組成物の組成をより具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
同様に、訂正後の請求項2?8は、訂正後の請求項1の上記の記載を引用することにより、訂正後の請求項2?8に係る発明におけるインクジェットインク組成物の組成や成分をより具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項1が、明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて導き出される構成であるか否かを検討する。
(イ)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、一般式(1)で表される引火点が140℃以下の化合物として、「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上」を使用した実施例が記載されている(0092段落表2、0093段落表3)。
(ウ)本件特許明細書の0032段落には、一般式(1)で表される化合物のうち、引火点が140℃以下の化合物のインクジェットインク組成物の全量に対する含有量を上限値の「80質量%以下」とする点が記載されており、下限値の「60質量%」は実施例21(ジエチレングリコールメチルエチルエーテルの含有量)の数値として記載されている(0093段落表3)。
(エ)本件特許明細書の0037段落には、環状エステルのインクジェットインク組成物の全量に対する含有量が記載されており、上限値の「30質量%」についても当該段落に記載されている。
(オ)特許異議申立人は、令和3年6月10日提出の意見書において、前記(ウ)について、下限値の「60質量%」が本件明細書に記載がなく、また、実施例21(ジエチレングリコールメチルエチルエーテルの含有量)は、本件発明1に用いられる引火点が140℃以下の化合物の一例しか示していないことから、訂正事項1が新規事項を追加するものであると主張するが、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルが140℃以下の化合物であることから、実施例21には、含有量がインク組成物の全量に対して「60質量%」であることが読み取れることになる。そうすると、その含有量を訂正前の「20質量%以上80質量%以下」から「60質量%以上80質量%以下」と訂正することが、新規事項の追加になるということはできない。
(カ)したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであるといえる。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、訂正後の請求項1に係る発明におけるインクジェットインク組成物の組成や成分をより具体的に特定し、更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2?8の記載についても実質的に訂正するものであるが、上記アの理由から明らかなように、訂正後の請求項1の記載は、訂正前の請求項1との関係で特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2?8の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項2?8に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであるといえる。

(2)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第6701617号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?8に係る発明は、令和3年4月23日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」?「本件特許発明8」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。

「【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
環状エステルと、
体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるピグメントオレンジ-43(PO-43)を含む顔料と、
を含み、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、
水の含有量が5質量%以下である、インクジェットインク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)m-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]
【請求項2】
請求項1において、
前記インクジェットインク組成物の全量に対して、1質量%以上6質量%以下の前記顔料を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記一般式(1)で表される化合物の合計の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、10質量%以上90質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃超の化合物を含有し、前記引火点が140℃超の化合物の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、60質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記環状エステルの含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、10質量%以上30質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
さらに、塩化ビニル系樹脂を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項7】
塩化ビニル系記録媒体への記録に用いられる、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物を用いて、塩化ビニル系記録媒体に対してインクジェット法により記録する、インクジェット記録方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正前の請求項1?8に係る特許に対して、当審が令和3年2月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(進歩性)本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証、甲第3号証から甲第5号証、甲第13号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2012-162002号公報
甲第3号証:特開2009-227812号公報
甲第4号証:特許2014-237803号公報
甲第5号証:橋本勲、Organic Pigments Handbook 有機顔料ハンドブック、2006年5月発行、p.44、45、248、499-500
甲第13号証:特許2011-126954号公報

理由2(サポート要件)本件特許の請求項1?8に係る発明は、特許請求の範囲の記載が後記第6の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、請求項1?8に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第5 前記第4における理由1(進歩性)についての判断
1 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
1a「【請求項1】
特定インクを吐出して印刷領域に位置する被印刷媒体に画像を形成する工程と、被印刷媒体を搬送する搬送工程と、を交互に行うことにより印刷を行うインクジェット記録方法であって、
前記画像を形成する工程は、
前記印刷領域に静止させた被印刷媒体に対してプリントヘッドを相対的に移動させながら、前記プリントヘッドから前記インクを前記被印刷媒体に吐出する走査を複数回行い、かつ、
前記被印刷媒体に吐出された前記特定インクにエネルギーを与えて前記被印刷媒体に定着させるものであり、
前記被印刷媒体が、インク非吸収性又は低吸収性の被印刷媒体であり、
前記特定インクは、沸点が120℃以上240℃以下の、グリコールエーテル系溶剤及び非プロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる1種以上の有機溶剤をインクの組成中に60質量%以上含有する、インクジェット記録方法。
・・・
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法に用いられる、インク。」
1b「【0091】
有機溶剤の含有率は、特定インクの総量(100質量%)に対し60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上である。上記範囲内であると、被印刷媒体に対して優れたレベリング性を示し、被印刷媒体の種類によらず凝集ムラのない高画質印字を可能とする。また、フィルム系メディアへの高い定着性の付加が可能となる。
・・・
【0103】
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 7,10、及びC.I.Pigment Brawn 3,5,25,26、及びC.I.Pigment Orange 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63等が挙げられる。
【0104】
本インクに顔料を用いる場合は、その平均粒径が10?200nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50?150nm程度のものである。
本インクに色材を用いる場合、色材の添加量は、0.1?25質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5?15質量%程度の範囲である。
本インクに顔料を用いる場合は、分散剤または界面活性剤で媒体中に分散させて得られた顔料分散液を用いることができる。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、たとえば高分子分散剤を使用することができる。
本インクが色材を含有する場合、色材を複数含有するものであっても良い。たとえば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの基本4色に加えて、グリーン、オレンジ、ブルー、ホワイトなどの特色や、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えることができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のレッド、濃色のブルー、ブラックに加えて淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラックを含有させることが例示できる。」
1c「【0123】
[材料]
実施例及び比較例において使用した材料は、下記に示すとおりである。
〔顔料〕
・C.I Pigment Violet 19(表中「PV19」と省略)
・C.I Pigment Yellow 213(表中「PY213」と省略)
・C.I Pigment Blue 15:3(表中「PB15:3」と省略)
・カーボンブラック(CB) MA77(商品名、三菱化学社製)(表中「CB MA77」と省略)
〔分散剤〕
・ポリエステル系高分子 Solsperse32000(商品名、アビシア(Avecia)社製)(表中「Sol32000」と省略)
〔定着樹脂〕
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 UCAR Solution Vinyl VROH (商品名、日本ユニオンカーバイド社(Union Carbide Corporation)製、分子量15000,Tg=65℃)(表中「P(VC-VAc)」と省略)
・ポリアクリルポリオール樹脂エマルジョン N-2043-60MEX(商品名、ハリマ化成社(Harima Chemicals, Inc.)製)(表中「AP-e」と省略)
〔界面活性剤〕
・BYK-UV3500(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ビックケミー・ジャパン社製)(表中「BYK3500」と省略)
【0124】
〔各種溶剤〕
(1.グリコールエーテル系溶剤)
・プロピレングリコールジメチルエーテル(表中「PGDME」と省略)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(表中「PGME」と省略)
・プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(表中「PGMEA」と省略)
・ジプロピレングリコールジメチルエーテル(表中「DPGDME」と省略)
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(表中「DEGDEE」と省略)
・トリエチレングリコールジメチルエーテル(表中「GL-3」と省略)
・エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(表中「EGBEA」と省略)
・ジプロピレングリコールプロピルエーテル(表中「DPGPE」と省略)
・テトラエチレングリコールジメチルエーテル(Tetraglyme、表中「GL-4」と省略)
・ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(表中「PEGME」と省略)
(2.非プロトン極性溶剤)
・N-エチル-2-ピロリドン(表中「NEP」と省略)
・ジメチルスルホキシド(表中「DMSO」と省略)
・N-メチル-2-ピロリドン(表中「NMP」と省略)
・γ-ブチロラクトン(表中「GBL」と省略)
・1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(表中「DMI」と省略)
・2-ピロリドン(表中「ピロリドン」と省略)
・γ-ウンデカラクトン(表中「GUL」と省略)
(3.その他の有機溶剤)
・メチルエチルケトン(表中「MEK」と省略)
・2-プロパノール(表中「プロパノール」と省略)
・シクロヘキサノン
・1,2-ヘキサンジオール(表中「ヘキサンジオール」と省略)
・ジプロピレングリコール(表中「DPG」と省略)
・トリエチレングリコール(表中「TEG」と省略)
【0125】
[実施例1?6、比較例1?5、参考例1?2]
〔特定インクの調製〕
まず、下記表1及び表2に示す組成で材料を混合して、インクA?Kを調製した。
なお、表1及び表2中、空欄部は無添加を意味し、数値の単位は質量%である。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
〔印刷〕
次に、下記の印刷装置を用いて、上記表1及び表2のインクA?Kを下記の被印刷媒体にそれぞれ印刷した。
(被印刷媒体)
・塩ビフィルム(ローランド社(Roland DG Corporation)製、商品名「LLEX」)
・PPフィルム(エイブリィ・デニソン社(Avery Dennison Corporation)製、商品名「BA2076」)
・PETフィルム(リンテック社(Lintec Corporation)製、商品名「K2411」)
・PEフィルム(エイブリィ・デニソン社製、商品名「BA1201」)
・印刷本紙(王子製紙社(Oji Paper Company, Limited)製、商品名「OKトップコート+」)」

(2)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【請求項1】
少なくとも第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクがそれぞれ色材を含有すると共に組み合わされる油性インクセットであり、かつ、該第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクがいずれも波長領域400?700nmの範囲において記録媒体上での反射率が80%から5%に変わる波長領域を有する油性インクセットであって、上記第1の油性インクにおける反射率80%から5%に変わる波長領域において、上記第2の油性インクにおける反射率が第1の油性インクの反射率よりも連続して高く、且つ、第2の油性インクにおける反射率80%から5%に変わる波長領域において、第3の油性インクにおける反射率が前記第2の油性インクの反射率よりも連続して高く、さらに、前記第1の油性インク、第2の油性インクおよび第3の油性インクにおける色材がすべて異なることを特徴とする油性インクセット。
・・・
【請求項5】
前記第2の油性インクがオレンジインクまたはレッドインクであることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の油性インクセット。」
3b「【0041】
本発明の第1の油性インクセットとしては、波長領域400?700nmにおける反射率の関係を満たすものであればよく、格別、限定されるものではないが、インク種としては第1の油性インクはマゼンタインク、第3の油性インクとしてイエローインク、第2の油性インクとしてオレンジインクが例示される。マゼンタインクにおける顔料としてはピグメントレッド122が例示される。イエローインクとしては、ピグメントイエロー150、180、また、第2の油性インクであるオレンジインクとしては、ピグメントオレンジ64、71、ピグメントレッド254等が例示される。」
3c「【0064】
また、(メタ)アクリル系樹脂と共に、必要に応じて他の樹脂を含有させてもよい。他の樹脂としては、例えばスチレンアクリル系樹脂、ロジン変成樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維素系樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体樹脂等が挙げられる。塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂としては、ダウケミカル社の「UCARTH VAGC Solution Vinyl Resin(略称 VAGC)」(ヒドロキシアルキルアクリレート変性塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、Tg65℃、重量平均分子量24,000)等が例示される。」
3d「【0075】
なお、分析には、樹脂溶液から樹脂のみをヘキサンにて精製したサンプルを使用した。重量平均分子量は、東ソー(株)製の「HLC-8220GPC」にて、ポリスチレンを標準としたゲル浸透クロマトグラフ(GPC)により測定を行った。また、ガラス転移温度(Tg)は、島津製作所(株)製の示差走査熱量計「DSC-50」にて測定した。平均粒径(D50)は、日機装(株)製の粒度分析計マイクロトラックUPA150を使用して測定した。
【0076】
(重合体1の合成)
100℃に保たれたジエチレングリコールジエチルエーテル300g中に、メタクリル酸メチル200gとt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.6gを1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃で2時間反応させた後に冷却し、無色透明のポリメタクリル酸メチルの重合体1溶液を得た。Tgは105℃であった。重合体1の重量平均分子量は30,000であった。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計を使用して分析したところ、ジエチレングリコールジエチルエーテルとメタクリル酸メチルが結合した分子が検出された。
・・・
【0078】
(インク1の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 60.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 15.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 15.0質量部。
・・・
【0084】
(インク3の調製)
溶媒として下記の組成とした。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 51.0質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 25.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 15.0質量部。
【0085】
次に、上記組成の溶媒の一部にピグメントオレンジ64(チバスペシャリティーケミカルズ社製、CROMOPHTAL(R) ORANGE GP)を3.0質量部と分散剤として味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」を1.0質量部とを添加し、ディゾルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られる顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散で得られる顔料粒子の平均粒径は250nmであった。
【0086】
得られた顔料分散液を1,500rpmで攪拌しながら、バインダー樹脂として上記で合成した重合体1を5.0質量部と、上記で得た混合溶媒の残部とを添加して、油性インク3(20℃での粘度4.3mPa・s)を調製した。」
3e「【0133】
【表1】

【0134】
セイコーエプソン社製「4色インクジェットプリンター MJ8000C」に上記で得た各油性インクを充填し、軟質ポリ塩化ビニルシート(リンテック社製、LAGマウントP-223RW)上に印字し、印字された各インクにおける反射率スペクトル、L* 値、a* 値、b* 値、色相角H°を、グレタグ社製「GRETAG Spedtrolino」(D65光源、視野角2°)で測定した。」

(3)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「【請求項1】
色材と、環状エステルと、引火点が70℃以下であって下記一般式(I)で表される第1有機溶剤と、引火点が90℃以上の第2有機溶剤と、を含有し、
前記環状エステルの含有量a(質量%)が、6質量%以上30質量%以下であり、
前記環状エステルの含有量a(質量%)と、前記第1有機溶剤の含有量b(質量%)と、前記第2有機溶剤の含有量c(質量%)とが、下記式(1)および(2)の関係を満たす、インクジェット記録用インク組成物。
R^(1)-O-(R^(2)-O)_(2)-R^(3) ・・・(I)
(上記一般式(I)において、R^(1)は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)はエチレン基またはプロピレン基を表し、R^(3)は水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。)
a<b ・・・(1)
c<(a+b)/2 ・・・(2)
・・・
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1有機溶剤の含有量bが、20質量%以上85質量%以下である、インクジェット記録用インク組成物。

4b「【0031】
本実施形態のインク組成物を、オレンジまたはイエローのインクとする場合には、配合される色材、特に顔料として、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155およびC.I.ピグメントイエロー180等を例示することができ、これらは単独または組み合わせて用いることができる。」
4c「【0074】
<定着用樹脂>
本実施形態のインク組成物は、定着用樹脂を含有してもよい。インク組成物に含有させうる定着用樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、エチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン-(メタ)アクリル共重合樹脂、ビニルトルエン-α-メチルスチレン共重合体樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン系樹脂、石油樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン、ポリオレフィン、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、テルペン系樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、NBR・SBR・MBR等の各種合成ゴム、およびそれらの変性体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。これらの定着用樹脂は、例えば、インク組成物の記録媒体上における定着性を付与するために配合することができる。」
4d「【0106】
3.実施例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
【0107】
3.1.インク組成物の調製
各実施例および各比較例のインク組成物を、表1に示す配合で調製した。
【0108】
表1に記載された成分において、顔料は、ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料:クラリアント社製)を用いた。
【0109】
表1に記載の化合物のうち、環状エステルとしては、γ-ブチロラクトン(関東化学株式会社製)を用いた。
【0110】
表1に記載の化合物のうち、第1有機溶剤としては、DEGMEE(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、商品名「ハイソルブEDM」、東邦化学工業株式会社製)、DEGdME(ジエチレングリコールジメチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジメチルエーテル」、東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0111】
表1に記載の化合物のうち、第2有機溶剤としては、DEGBME(ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、商品名「ハイソルブBDM」、東邦化学工業株式会社製)、TetraEGmBE(テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ブチセノール40」、KHネオケム株式会社製)を用いた。
【0112】
表1に記載の化合物のうち、その他の溶剤としては、DEGDEE(ジエチレングリコールジエチルエーテル、商品名「ジエチレングリコールジエチルエーテル」、東京化成工業株式会社製、引火点71℃)を用いた。
【0113】
表1中、ソルスパース37500(商品名、LUBRIZOL社製)は、分散剤である。パラペットG-1000P(株式会社クラレ製)は、アクリル樹脂(定着樹脂)である。表1中、BYK340(ビックケミー・ジャパン株式会社製)は、フッ素系界面活性剤(滑剤)である。
【0114】
表1に記載した配合で、各溶剤を各例のインク組成物毎に攪拌して混合溶剤を得た。次に、混合溶剤の一部を取り分け、ソルスパース37500を混合し、その後ピグメントブルー15:3を加えて、ホモジナイザーを用いて予備分散した後に、ビーズミルにて分散をし、顔料の平均粒径130nmの分散体を得た。別途、混合溶剤の一部を取り分け、パラペットG-1000Pを加えて撹拌し、完全に溶解させて樹脂溶液を得た。そして上記分散体に、残っていた混合溶剤と、BYK340と、上記樹脂溶液とを混ぜいれ各実施例および各比較例のインク組成物とした。
【0115】
3.2.評価試験
評価試験は、空調設備と加湿器を利用して、環境試験室の温度および湿度がそれぞれ、30℃,55%RHとなるように調整し、当該環境試験室内に設置したセイコーエプソン株式会社製プリンター「SC-S30650」を用いて行った。なお、温度および湿度は、ヒーター等のインクジェットプリンター自身の発熱の影響を受けない筐体の上に設置した温湿度センサーによって測定した。
【0116】
また、各評価試験では、プラテン及びプラテンより下流の記録媒体排出部にて、記録中及び記録後1分間、記録媒体を45℃で加熱した。
【0117】
3.2.1.印刷ムラ
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を塩ビバナーシート(3M社製、型番IJ51(ポリ塩化ビニル))上に100%濃度で記録解像度720×720dpiのベタ印刷をした後、60分間、25℃65%RH(相対湿度)にて乾燥させた。その後、目視および光学顕微鏡を用いて印刷面を観察し、印刷ムラの少ないものを6点として、1点まで6水準で評価し、その結果を表1に記載した。
【0118】
3.2.2.光沢
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV-G-1270G)上に記録解像度720×720dpiの100%濃度でベタ印刷をした後、25℃65%RH(相対湿度)にて1日間、乾燥させて各例の記録物を作成した。各例のベタ印刷部の20°光沢をMULTI GLOSS 268(コニカミノルタ株式会社製)にて測定し、光沢度が26未満を1点、26以上、28未満を2点とし、光沢度を2毎に刻んで光沢を点数で評価し、その結果を表1に記載した。光沢が優れる場合、特にフィルムなどの光沢性を有する記録媒体において、記録物に記録媒体自身と同様の光沢感を得ることができる利点がある。
【0119】
3.2.3.ドットサイズ
上記プリンターを用いて実施例および比較例の各インク組成物を、塩ビバナーシート(3M社製、型番IJ51(ポリ塩化ビニル))上に記録解像度720×720dpiの30%濃度で1辺3cmの正方形を印刷した後、25℃65%RH(相対湿度)にて60分間乾燥させた。その後、光学顕微鏡を用いて印刷部分のドットサイズを観察してドットの直径を10μm毎に分類した。なお、にじみが大きい場合には、ドット形状が円状になっておらず、測定できなかった。また、にじみが小さくなることで真円に近くなっていたが、ドットサイズ(直径)は小さくなっていた。ドットサイズが20μm以下のものを1点として、20μmを超え30μm以下のものを2点、というように10μm毎にランク分けして、各例の点数を算出し、その結果を表1に記載した。ドットサイズが良好であるということは、インクの記録媒体上での濡れ拡がり性が良いということであり、記録媒体をインクで覆うことができることにより記録物の発色性が良くなるなどの利点がある。
【0120】
3.2.4.耐擦性
上記プリンターを用いて、実施例および比較例の各インク組成物を、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV-G-1270G)上に記録解像度720×720dpiの100%濃度で印刷した後、25℃65%RH(相対湿度)にて1日間、乾燥させて各例の記録物を作成した。次に、JIS L 0849に基づいて、I型試験機にて乾式試験を行った。その後、試験綿布のODをスペクトロリーノ(グレタグマクベス社製)にて測定し、0.4以上を1点、0.4より小さく0.35以上のものを2点と、0.05毎に色移りに関して点数を付け、その結果を表1に記載した。
【0121】
3.2.5.表面乾燥性
セイコーエプソン株式会社製プリンター「SC-S30650」を用いて、実施例および比較例の各インク組成物を、光沢ポリ塩化ビニルシート(ローランドDG社、型番SV-G-1270G)上に記録解像度720×720dpiの100%濃度で印刷し、25℃65%RH(相対湿度)にて5分間乾燥させた。次に、巻き取り装置を用いて巻き取った後の印刷面のスリ痕を観察した。観察はレーザー顕微鏡(キーエンス株式会社製、形式VK-8700 Generation2)にて表面粗さを測定することで、スリ痕のある面積の割合を算出した。スリ痕面積が印刷領域の10%以下のものを5点として、20%以下10%より多いものを4点、というように10%毎にランク分けした。6点はスリ痕面積がないものとした。その結果を表1に記載した。
【0122】
3.3.評価結果
以上の評価試験の結果を表1に示す。
【0123】
【表1】



(4)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
5a「2.4.4 粒子径と色特性
・・・
それは、粒子径の増大に伴い着色力が極端に低下するという、顔料にとって致命的な欠陥が顕著になるからである。
・・・
2.4.5 粒子径と耐候(光)性(weather fastness、light fastness)
・・・粒子が小さいと破壊が容易に起こるが、大きな粒子では、表面は破壊されても内部の色は残っているため結果的に耐候(光)は向上するのである。
・・・」(第44ページ第1行?第45ページ第9行)
5b「

」(第248ページ)
5c「

」(第499?500ページ)

(5)甲第13号証(以下、「甲13」という。)
13a「【0116】
生成したポリエステル樹脂粒子を回収し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い分子量を測定し、更に示差熱天秤測定装置(DSC)を用い融点を測定した。又、体積平均粒径は「Microtrac UPA150」(日機装製)を用い測定した。」

2 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1には、インクFとして「顔料としてPY213を4質量%、分散剤としてSol 32000を2質量%、定着樹脂としてP(VC?VAc)を4質量%、界面活性剤としてBYK3500を0.5質量%グリコールエーテル系溶剤としてPGMEを10質量%、DEGDEEを50質量%、GL-3を9.5質量%、非プロトン極性溶剤としてGBLを20質量%含む、インク」の発明(以下、「甲1発明F」という。)が記載されているといえる(摘記1c参照)。
また、インクGとして「顔料としてPB 15:3を4質量%、分散剤としてSol 32000を2質量%、定着樹脂としてP(VC?VAc)を4質量%、界面活性剤としてBYK3500を0.5質量%、グリコールエーテル系溶剤としてPGMEを10質量%、DEGDEEを59.5質量%、非プロトン極性溶剤としてGBLを20質量%含む、インク」の発明(以下、「甲1発明G」という。)が記載されているといえる(摘記1c参照)。

(2)甲3に記載された発明
甲3には、インク3として「溶媒としてジエチレングリコールジエチルエーテルを51.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを25.0質量部、γ-ブチロラクトンを15.0質量部、顔料としてピグメントオレンジ64を3.0質量部、分散剤としてアジスパーPB821を1.0質量部、定着樹脂として重合体1を5質量部含む油性インク。」(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる(摘記3d参照)。

(3)甲4に記載された発明
甲4には、実施例1として「顔料としてPB 15:3を4.0質量%、分散剤としてソルスパース37500を4.0質量%、環状エステルとしてGBLを10.0質量%、第1有機溶剤としてDEGMEEを59.0質量%、第2有機溶剤としてTetraEGmBEを20.0質量%、界面活性剤としてBYK340を1.5質量%、定着樹脂としてパラペットG-1000Pを1.5質量%含むインク」(以下、「甲4発明1」という。)が記載されているといえる(摘記4d参照)。
また、実施例6として「顔料としてPB 15:3を4.0質量%、分散剤としてソルスパース37500を4.0質量%、環状エステルとしてGBLを30.0質量%、第1有機溶剤としてDEGMEEを35.0質量%、第2有機溶剤としてTetraEGmBEを24.0質量%、界面活性剤としてBYK340を1.5質量部、定着樹脂としてパラペットG-1000Pを1.5質量%含むインク」(以下、「甲4発明6」という。)が記載されているといえる(摘記4d参照)。

3 当審の判断
(1)甲1発明F、Gを主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア) 甲1発明F、Gとの対比
本件特許発明1と甲1発明F、Gを対比する。
甲1発明Fの「グリコールエーテル系溶剤としてPGMEを10質量%、DEGDEEを50質量%、GL-3を9.5質量%」及び甲1発明Gの「グリコールエーテル系溶剤としてPGMEを10質量%、DEGDEEを59.5質量%」における「DEGDEE」、「GL-3」は、それぞれジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルであり(摘記1c参照)、本件特許発明1の一般式(1)で表される化合物であって、本件特許明細書【0027】からみて、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルの引火点は、それぞれ71℃、113℃であるから、甲1発明F及びGのグリコールエーテル系溶媒は、本件特許発明1の「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
・・・
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物
・・・
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり
・・・
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」に相当する。
甲1発明F及びGの「非プロトン極性溶剤としてGBLを20質量部」は、「GBL」はγ-ブチロラクトンであるから(摘記1c参照)、本件特許発明1の「環状エステル
・・・
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、」に相当する。
甲1発明F及びGのインクは、インクジェットインク組成物であり(摘記1a参照)、水を含まないものである(摘記1c参照)。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明F及びGは、「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
環状エステルと、
顔料と、
を含み、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物を含み、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、
水の含有量が5質量%以下である、インクジェットインク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]
」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
顔料が、本件特許発明1では体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるピグメントオレンジ-43(PO-43)であるのに対し、甲1発明Fでは体積平均粒子径の特定がないPY213、甲1発明Gでは体積平均粒子径の特定がないPB15:3である点。

<相違点2>
引火点が140℃以下の化合物の含有量が、本件特許発明1ではインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であるのに対し、甲1発明F及びGではインクジェットインク組成物の全量に対して59.5質量%である点。

(イ) 相違点についての検討
<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
甲1には、当該インクに用いる顔料としてC.I.Pigment Orange 43(PO43)が挙げられ、その平均粒径が10?200nmの範囲にあることが好ましいことが記載されている(摘記1b参照)。
また、甲5には、彩度の高いオレンジ顔料としてPO-43が用いられることが記載され(摘記5b、5c参照)、甲1には、有機溶剤の含有率は、特定インクの総量(100質量%)に対し60質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であることが、記載されている(摘記1b参照)。
しかしながら、甲1発明F及びGにおいて、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることについては、甲1及び甲5のいずれにも記載も示唆も無いから、これを当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

(ウ) 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、<相違点1>及び<相違点2>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることによって、耐候性、吐出安定性、光沢性、凝集ムラ、耐擦性及び発色性のいずれもが良好となっており(本件特許明細書の段落【0091】)、甲1発明G及びF及び甲1、甲5の記載からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものであり、そのような作用効果は、本件明細書に記載された実施例において確認されていると認められる。

(エ) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、実施例として具体的に開示されている甲1発明F及びGの顔料は、それぞれPY213(イエロー)、PB15:3(シアン)であったとしても、これらの顔料自体に特徴があるものではないので、甲1の【0103】の記載に基づいてPY213又はPB15:3の代わりにPO43を用いることに何ら困難性はなく、「ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上」の含有量が60質量以上の優位性は立証されていないと主張する。
しかしながら、この主張は、要するに、<相違点1>及び<相違点2>に係る構成を備えることについて個別に動機付けができると主張するにとどまるものである。そして、上記(イ)のとおり、両者を同時に備えるものとすることは、容易になし得るとはいえず、かつ、上記(ウ)のとおり、本件特許発明1は、<相違点1>及び<相違点2>に係る構成を備えることによって所定の効果を奏するものである。したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(オ) まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲1発明F及びG、及び、甲1、甲5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件特許発明2?8について
本件特許発明2?8は、「体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるピグメントオレンジ-43(PO-43)」を含み、「一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲1発明F及びGとの相違点1及び相違点2と実質的に同等の相違点を有するものであるから、本件特許発明2?8についても、甲1発明F及びG、及び、甲1、甲5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2)甲3発明を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア) 甲3発明との対比
甲3発明の「溶媒としてジエチレングリコールジエチルエーテルを51.0質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテルを25.0質量部」は、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルは本件特許発明1の一般式(1)で表される化合物であり、本件特許明細書【0027】からみて、ジエチレングリコールジエチルエーテルの引火点は71℃であるから、本件特許発明1の「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
・・・
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物
・・・
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」に相当する。
甲3発明の「γ-ブチロラクトン15.0質量部」は、本件特許発明1の「 環状エステル
・・・
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、」に相当する。
甲3発明のインクは、インクジェットインク組成物であり(摘記3e参照)、水を含まないものである(摘記3d参照)。
甲3発明の顔料の平均粒径は250nmであり(摘記3d参照)、「平均粒径(D50)は、日機装(株)製の粒度分析計マイクロトラックUPA150を使用して測定した」(摘記3d参照)との記載からみて、マイクロトラックUPA150を使用して測定されるものであって、粒径分布の基準を体積平均粒径(摘記13a参照)とすることも普通に行われるから、体積平均粒子径であると認められる。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明は、「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
環状エステルと、
体積平均粒子径が100nm以上400nm以下である顔料と、
を含み、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物を含み、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、
水の含有量が5質量%以下である、インクジェットインク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>
顔料が、本件特許発明1ではピグメントオレンジ-43(PO-43)であるのに対し、甲3発明ではピグメントオレンジ64である点。

<相違点4>
引火点が140℃以下の化合物の含有量が、本件特許発明1ではインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であるのに対し、甲3発明ではインクジェットインク組成物の全量に対して59.5質量%である点。

(イ) 相違点についての検討
<相違点3>及び<相違点4>について検討する。
甲3には、C.I.ピグメントオレンジ-43(PO-43)を用いることについては記載も示唆もない。
また、甲5には、彩度の高いオレンジ顔料としてPO-43が用いられることが記載され(摘記5b、5c参照)、甲3には、ジエチレングリコールジエチルエーテルを60.0質量部含むインク1が記載されている(摘記3d参照)。
しかしながら、甲3発明において上記<相違点3>及び<相違点4>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることについては、甲3及び甲5のいずれにも記載も示唆も無いから、これを、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

(ウ) 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、<相違点3>及び<相違点4>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることによって、耐候性、吐出安定性、光沢性、凝集ムラ、耐擦性及び発色性のいずれもが良好となっており(本件特許明細書の段落【0091】)、甲3発明及び甲3、甲5の記載からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものであり、そのような作用効果は、本件明細書に記載された実施例において確認されていると認められる。

(エ) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲5に接した当業者であれば、画像の耐候性をより向上させるために、甲3に記載のインク3(オレンジインク)に含まれるPO64に代えて、濃度に関わらず耐候性が良好なPO43を用いることは容易であり、甲3においてもジエチレングリコールジエチルエーテルの含有量が60質量%の油性インク1が記載されていることから、甲3の油性インク3においてジエチレングリコールジエチルエーテルの含有量を60質量以上に調製することは容易であり何ら困難性は無いと主張する。
しかしながら、この主張は、要するに、<相違点3>及び<相違点4>に係る構成を備えることについて個別に動機付けができると主張するにとどまるものである。そして、上記(イ)のとおり、両者を同時に備えるものとすることは、容易になし得るとはいえず、かつ、上記(ウ)のとおり、本件特許発明1は、<相違点3>及び<相違点4>に係る構成を備えることによって所定の効果を奏するものである。したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(オ) まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲3発明及び甲3、甲5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件特許発明2?8について
本件特許発明2?8は、「ピグメントオレンジ-43(PO-43)」を含み、「一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲3発明との相違点3及び相違点4と実質的に同等の相違点を有するものであるから、本件特許発明2?8についても、甲3発明、及び、甲3、甲5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(3)甲4発明1、6を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲4発明1、6との対比
甲4発明1の「第1有機溶剤としてDEGMEEを59.0質量%、第2有機溶剤としてTetraEGmBEを20.0質量%」及び甲4発明6の「第1有機溶剤としてDEGMEEを35.0質量%、第2有機溶剤としてTetraEGmBEを24.0質量%」におけるDEGMEE、TetraEGmBEは、それぞれ、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルであり(摘記4d参照)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル及びテトラエチレングリコールモノブチルエーテルは本件特許発明1の一般式(1)で表される化合物であり、本件特許明細書【0027】からみて、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルの引火点は64℃であるから、甲4発明1及び6の有機溶剤は、本件特許発明1の「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
・・・
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物
・・・
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」に相当する。
甲4発明1及び6の「GBLを10.0質量%」及び「GBLを30.0質量」は、GBLはγ-ブチロラクトンであるから(摘記4d参照)、本件特許発明1の「環状エステル
・・・
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、」に相当する。
甲4発明1及び6のインクは、インクジェットインク組成物であり(摘記4a参照)、水を含まないものである(摘記4d参照)。
甲4発明1及び6の顔料の平均粒径は、130nmであり(摘記4d参照)、上記(1)ア(イ)と同様に、体積平均粒径であると認められる。
そうすると、本件特許発明1と甲4発明1及び6は、「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
環状エステルと、
体積平均粒子径が100nm以上400nm以下である顔料と、
を含み、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物を含み、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、
水の含有量が5質量%以下である、インクジェットインク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点5>
顔料が、本件特許発明1ではピグメントオレンジ-43(PO-43)であるのに対し、甲4発明1及び6ではPB-15:3である点。

<相違点6>
引火点が140℃以下の化合物の含有量が、本件特許発明1ではインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であるのに対し、甲4発明1及び6ではインクジェットインク組成物の全量に対して、それぞれ、59.0質量%及び35.0質量%である点。

(イ) 相違点についての検討
<相違点5>及び<相違点6>について検討する。
甲4には、インク組成物をオレンジのインクとする場合には、配合される顔料として、ピグメントオレンジ43が例示されている(摘記4b参照)。
また、甲5には、彩度の高いオレンジ顔料としてPO-43が用いられることが記載され(摘記5b、5c参照)、甲4には、DEGMEEのような第1有機溶剤の含有量が20質量%以上85質量%以下であることが、記載されている。
しかしながら、甲4発明1、6において、上記<相違点5>及び<相違点6>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることについては、甲4及び甲5のいずれにも記載も示唆も無いから、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。

(ウ) 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、<相違点5>及び<相違点6>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることによって、耐候性、吐出安定性、光沢性、凝集ムラ、耐擦性及び発色性のいずれもが良好となっており(本件特許明細書の段落【0091】)、甲4発明1、6、及び、甲4、甲5の記載からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものであり、そのような作用効果は、本件明細書に記載された実施例において確認されていると認められる。

(エ) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲4では従来公知の染料や顔料を用いることが可能であり、色材(顔料)については何ら制限がないというのが甲4の技術的思想であることは明らかであり、すると、実施例として具体的に開示されている甲4の実施例1、6の顔料がPB15:3(シアン)であったとしても、甲4の【0031】の記載に基づいてPB15:3の代わりにPO43を用いることに何ら困難性はなく、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルの含有量が59.0質量%である実施例1や35.0質量%である実施例6においてその含有量を60質量%以上とすることに何ら困難性は無いと主張する。
しかしながら、この主張は、要するに、<相違点5>及び<相違点6>に係る構成を備えることについて個別に動機付けができると主張するにとどまるものである。そして、上記(イ)のとおり、両者を同時に備えるものとすることは、容易になし得るとはいえず、かつ、上記(ウ)のとおり、本件特許発明1は、<相違点5>及び<相違点6>に係る構成を備えることによって所定の効果を奏するものである。したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(オ) まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲4発明1及び6、及び、甲4、甲5、甲13の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件特許発明2?8について
本件特許発明2?8は、「ピグメントオレンジ-43(PO-43)」を含み、「一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲3発明との相違点5及び相違点6と実質的に同等の相違点を有するものであるから、本件特許発明2?8についても、甲4発明、及び、甲4、甲5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第6 前記第4における理由2(サポート要件)についての判断
理由2は、要するに、本件特許発明のうち、本願実施例で効果が確認されている溶剤以外の引火点が140℃以下の一般式(1)で表される溶剤を含んでいる場合や本願実施例で効果が確認されている引火点が140℃以下の一般式(1)で表される溶剤とともに他の溶剤をも一定量含む場合には、本願実施例と同様に耐候性の良好な画像を形成でき、かつ、インクジェット記録における安定性、画質及び画像の耐擦性が良好である根拠を、本願発明の詳細な説明の記載から見いだすことができないというものであるが、本件特許発明1では「引火点が140℃以下の一般式(1)で表される溶剤」について、「引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり」と規定していることから、本件特許の実施例で効果が確認されている溶剤に特定された。
そうすると、本件出願時の当業者の技術常識に照らして、本件の課題を解決できると判断できる根拠のない溶剤を含まなくなったことから、本件請求項1?8に係る発明の範囲は、発明の詳細な説明に開示された内容を超えて拡張ないし一般化されたものであるとはいえない。

第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由
特許異議申立人の主張は以下のとおりである。
(1)特許法第29条第1項第3号
本件特許発明1?8は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲1又は甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明である。

(2)特許法第29条第2項
本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件特許優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証、甲第5号証から甲第11号証、甲第14号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

甲第2号証:特開2009-1691号公報
甲第5号証:橋本勲、Organic Pigments Handbook 有機顔料ハンドブック、2006年5月発行、p.44、45、248、499-500
甲第6号証:原田大輔等、日本画像学会誌 第52巻 第2号 2013 p.147?154
甲第7号証:特開2010-43149号公報
甲第8号証:特開2009-215461号公報
甲第9号証:特開2009-215460号公報
甲第10号証:特開2009-270043号公報
甲第11号証:特開2011-6541号公報
甲第14号証:特開2012-233086号公報

(3)特許法第36条第6項第1号
ア 溶剤の含有量について本件の【請求項1】では、引火点が140℃以下の一般式(1)で表される化合物の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、20質量%以上80質量%以下であることが規定されている(構成要件D)。
ここで、本件特許公報の【0092】【0093】の【表1】【表2】には、引火点140℃以下の一般式(1)で表される化合物として、DEGMEE(ジエチレングリコールメチルエチルエーテル)、DEGdME(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、DEGDEE(ジエチレングリコールジエチルエーテル)、DEGBME(ジエチレングリコールプチルメチルエーテル)、TriEGdME(トリエチレングリコールジメチルエーテル)が記載されている。
しかしながら、表1の実施例のNo.1?13での引火点が140℃以下の一般式(1)で表される化合物の合計含有量はいずれも39.0?69.0質量%の範囲となっている。
例えば、引火点が140℃以下の一般式(1)で表される化合物の合計含有量が20質量%以上39 質量%未満のものや69質量%超80質量%未満等について本願実施例と同様に耐候性の良好な画像を形成でき、かつ、インクジェット記録における安定性、画質及び画像の耐擦性が良好であるという効果が立証されておらず、140℃以下の一般式(1)で表される化合物の合計含有量が20質量%以上80質量%以下の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ 本件特許発明1では、塩化ビニル系樹脂を含むことは特定していないものの、本件特許公報の【0092】【0093】の【表1】【表2】に記載の実施例1-21のインク組成物には全て、塩化ビニル系樹脂(ソルバインCL)が含まれている。インク組成物に樹脂が含まれれば、得られる画像の耐侯性やインクジェット記録における安定性、画質及び画像の耐擦性は変化することが推定されるものの、樹脂を含まないインク組成物や、塩化ビニル系樹脂とは異なる樹脂を含有するインク組成物についても本願実施例と同様に耐候性の良好な画像を形成でき、かつ、インクジェット記録における安定性、画質及び画像の耐擦性が良好であるという効果が立証されておらず本件特許発明1の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

(4) 特許法第36条第4項第1号
本件特許公報に記載されている実施例では、本件の【請求項1】で特定されている発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2?8についても同様である。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
(1) 特許法第29条第1項第3号
上記第5、3(1)ア(ア)で対比検討したとおり、本件特許発明1?8と甲1発明F及びGには相違点1及び相違点2があり、相違点1及び相違点2は実質的な相違点であるから、本件特許発明1?8は甲1に記載された発明とすることはできない。
上記第5、3(3)ア(ア)で対比検討したとおり、本件特許発明1?8と甲4発明1及び6には相違点5及び相違点6があり、相違点5及び相違点6は実質的な相違点であるから、本件特許発明1?8は甲4に記載された発明とすることはできない。

(2) 特許法第29条第2項
ア 甲号証の記載について
(ア)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「【請求項1】
下記一般式(1)で示されるポリアルキレングリコールジアルキルエーテルおよび/または下記一般式(2)で示される環状エステル類からなる有機溶媒中に、バインダー樹脂、分散剤と共に有機顔料として少なくともC.I.ピグメント イエロー 213を含有することを特徴とするインクジェット記録用油性インク組成物。
一般式(1)
R^(1) -(OC_(2) H_(4) )n -OR^(2)
(式中、R^(1) 、R^(2) は炭素数1?3のアルキル基であり、同一でも、異なっていてもよく、nは2?4の整数である。)
【化1】

(式中、X^(1) およびX^(2) は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1?5のアルキル基、またはアルケニル基を示し、mは1?3の整数を示す。)
2b「【0041】
以下、実施例によって本発明を説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例においては、粘度はアントンパール社製「AMVn」粘度計を使用して測定し、また、顔料粒子の粒径は、日機装(株)製「マイクロトラックUPA150」を使用して測定したものである。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
下記組成の樹脂溶液を調製した。
・ ジエチレングリコールジエチルエーテル ・・・ 45.6質量部
・ テトラエチレングリコールジメチルエーテル ・・・ 20.0質量部
・ γ-ブチロラクトン ・・・ 25.0質量部
・ バインダー樹脂(アクリル系樹脂、ローム&ハース社製「パラロイドB60」)
・・・ 4.0質量部
得られた樹脂溶液の一部に、C.I.ピグメント イエロー 213(クラリアント社製「Hostaperm Yellow H5G」)を3.6質量部と分散剤(ルブリソール社製「ソルスパース32000」)を1.8質量部とを添加し、ディソルバーで3,000rpmにて1時間攪拌した後、ジルコニアビーズ(2mm)を充填したビーズミルで予備分散した。得られた顔料粒子の平均粒径は5μm以下であった。更に、ジルコニアビーズ(0.3mm)を充填したナノミルで本分散を行い、顔料分散液を得た。この本分散により得られる顔料粒子の平均粒径は150nmであった。」

(イ)甲5
前記第5 1(4)のとおり。

(ウ)甲第6号証(以下、「甲6」という。)
6a「5.1 これまで使用されてきたトナー顔料
・・・
その他
一部特殊な要求,例えばアジア市場特有の判子色の再現性や赤・オレンジ色の再現域を拡げる目的に応じて,PR208,PR214,PR242,PR188,Pigment Orange(以後,POと略)43などが使用される.」(第150ページ左欄下から第5行?第151ページ左欄第9行)

(エ)甲第7号証(以下、「甲7」という。)
7a「【請求項1】
カーボンブラックを分散剤なしに水に分散可能とした平均粒径が50nm以上300nm以下の分散体と、ガラス転位温度が-10℃以下で、且つ酸価が100mgKOH/g以下である高分子微粒子とを含んでなるブラックインク組成物、および顔料をポリマーを用いて水に分散可能とした平均粒径が50nm以上300nm以下の分散体であって、当該ポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるスチレン換算重量平均分子量が10000以上200000以下である分散体と、ガラス転位温度が-10℃以下で、且つ酸価が100mgKOH/g以下である高分子微粒子とを含んでなる少なくとも1種以上のカラーインク組成物を有することを特徴とするインクセット。
【請求項2】
前記カラーインク組成物が、少なくともイエローインク組成物、マゼンタインク組成物およびシアンインク組成物を有することを特徴とする請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記イエローインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントイエロー180および/またはC.I.ピグメントイエロー185であり、前記マゼンタインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントレッド122であり、前記シアンインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントブルー15:3であることを特徴とする請求項2に記載のインクセット。
【請求項4】
さらに、レッドインク組成物、ブルーインク組成物、オレンジインク組成物およびグリーンインク組成物からなる群から選ばれる一種または二種以上を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のインクセット。
【請求項5】
前記レッドインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントレッド170および/またはC.I.ピグメントレッド254であり、前記ブルーインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントブルー60であり、前記オレンジインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントオレンジ43であり、前記グリーンインク組成物の顔料が、C.I.ピグメントグリーン36であることを特徴とする請求項4に記載のインクセット。」

(エ)甲第8号証(以下、「甲8」という。)
8a「請求項1】
オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種、
下記式(1)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位を含む重合体、及び、
活性放射線硬化性化合物を含有することを特徴とする
インクジェット用インク組成物。
【化1】

前記式(1)において、R^(1)は、水素原子又はアルキル基を表す。R^(2)及びR^(3)は、一価の置換基を表す。また、R^(2)とR^(3)とが連結して環状構造を形成してもよい。Wは、-CO-、-C(=O)O-、-CONR-、-OC(=O)-、及びフェニレン基のいずれかを表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。Xは、単結合又は2価の連結基を表す。
・・・
【請求項4】
前記有機顔料が以下に示す群から選ばれた少なくとも1種である請求項1?3のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71、
C.I.ピグメントバイオレット23,32,37,39、及び
C.I.ピグメントグリーン7,36,37」

(オ)甲第9号証(以下、「甲9」という。)
9a「【請求項1】
オレンジ、バイオレット、又はグリーン色を呈する有機顔料の少なくとも1種、
下記式(1)で表される重合体、及び、
活性放射線硬化性化合物を含有することを特徴とする
インクジェット用インク組成物。
【化1】

前記式(1)において、R^(1)は、(m+n)価の有機連結基を表し、R^(2)は、単結合又は2価の有機連結基を表す。A1は、有機色素構造、複素環構造、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、及び水酸基からなる群より選択される少なくとも1種よりなる顔料吸着構造を含む1価の有機基を表す。n個のA^(1)、R^(2)は、それぞれ独立に、同一であっても、異なっていてもよい。mは、1?8、nは、2?9を表し、m+nは、3?10である。P^(1)は、ポリマー骨格を表す。m個のP^(1)は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
・・・
【請求項7】
前記有機顔料が以下に示す群から選ばれた少なくとも1種である請求項1?6のいずれか1つに記載のインクジェット用インク組成物。
C.I.ピグメントオレンジ36,38,43,71、
C.I.ピグメントバイオレット23,32,37,39、及び
C.I.ピグメントグリーン7,36,37」

(カ)甲第10号証(以下、「甲10」という。)
10a「【請求項1】
少なくとも顔料、定着樹脂と、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物群から選ばれる1種類以上の化合物からなる化合物(A)と、下記一般式(3)で表される化合物群から選ばれる1種類以上の化合物からなる溶媒(B)とを含有し、該化合物(A)の含有量が1.5質量%以上、30質量%以下であり、含水率が0.5%以上、4%以下であることを特徴とする非水系インクジェットインク。
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)はそれぞれ炭素数が1?6の置換基を表し、R1とR2が結合して環を形成していてもよい。)
【化2】

(式中、R^(3)、R^(4)はそれぞれ炭素数が1?6の置換基を表し、R^(3)とR^(4)が結合して環を形成していてもよい。)
【化3】

(式中、R^(7)、R^(8)はそれぞれメチル基またはエチル基を表し、OX2はオキシエチレン基またはオキシプロピレン基を表す。)」
10b「【0063】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214等が挙げられる。」

(キ)甲第11号証(以下、「甲11」という。)
11a「【請求項1】
顔料、顔料誘導体、顔料分散剤、及び有機溶剤を含有し、インク最終組成を有する混合液を調製し、
前記混合液を、70℃以下で加温して、水分量が0.3質量%以下となるように脱水処理する、油性顔料インクの製造方法。」

(ク)甲第14号証(以下、「甲14」という。)
14a「【請求項7】
顔料、有機溶剤、及び懸濁重合よって製造された塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を含むインクジェット記録用インクであって、
前記有機溶剤がジエチレングリコールモノメチルエーテルまたはジエチレングリコールモノエチルエーテルの少なくともどちらか一方と、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルとを含有する溶剤が主溶剤であり、前記ジエチレングリコールエチルメチルメチル
エーテルに対する前記ジエチレングリコールモノメチルエーテル、前記ジエチレングリコールモノエチルエーテルまたは前記ジエチレングリコールモノエチルエーテルと前記ジエチレングリコールモノメチルエーテルの混合溶液の重量比率R1が、1.2≦R1≦4.0、の式で表す範囲内であることを特徴とするインクジェット記録用インク。」
14b「【0008】
又、例えば、特許文献2にはバインダ樹脂として塩酢ビ樹脂を用い、有機溶剤としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル(以下、MEDGと記載する)とジエチレングリコールジエチルエーテル(以下、DEDGと記載する)とテトラエチレングリコールジメチルエーテル(以下、DMTeGと記載する)を併用したインクジェット記録用インクが開示されている。」
14c「【0040】
上記の方法により選定を行った結果、懸濁重合により製造された塩酢ビ樹脂の溶解性、溶剤の揮発性、溶剤の臭気性に優れるグリコールエーテル類のMEDGと、同じくグリコールエーテル類であり、溶剤の揮発性、溶剤の臭気性、溶剤の安全性に優れるMDG、又は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(以下、DGと記載する)の少なくとも1種を併用することが好ましく、これらを主溶剤として用いることがよいことを見出した。主溶剤とは、少なくともインク中に50重量%以上含有量があり、それが主となっている溶剤である。また、この組み合わせの主溶剤がインク中に65重量%以上含有することがより好ましいことを見出した。すなわちMEDGとMDGの組み合わせ、MEDGとDGの組み合わせまたはMEDGとMDGとDGの組み合わせ、を主溶剤とし、50重量%以上さらに好ましくは65重量%以上することが好ましいことを見出した。インクジェット記録用インク中のMEDGに対するMDG、DG、またはMDGとDGの混合溶液の重量比率R1は、1.2≦R1≦4.0、の比率の範囲が好ましい。上記比率が1.2未満だと安全性を損なってしまう。4.0を超えてしまうと、後述する懸濁重合により製造された塩酢ビ樹脂の完全溶解工程で樹脂を十分に溶解することができず好ましくない。但しMEDGが40重量%を超えると印字面の光沢性が低下するので好ましくない。」
14d「【0043】
例えば、粘度調整、表面張力調整、ノズルの乾燥性を調整する目的としてエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、BGAcと記載する)、γ-ブチロラクトン(以下、GBLと記載する)、MOZ、DMTeGを併用することができる。
・・・
【0045】
GBLは有機溶剤総量中の15重量%以下で併用することが好ましく、10重量%以下が特に好ましい。GBLは、揮発性に乏しく、PVC表面、及び、内部に残留しやすい。よって、15重量%以上を越えて併用すると印字物の表面を荒らし、光沢性を損なうため好ましくない。」
14e「【0048】
例えば、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、149、168、177、178、179、206、207、209、242、254、255、ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、30、64、80、ピグメントグリーン7(塩素化フタロシアニングリーン)、36(臭素化フタロシアニングリーン)、ピグメントブラウン23、25、26、ピグメントブラック7(カーボンブラック)、26、27、28等、があげられる。顔料の具体例としては、LIONOL BLUE FG-7400G(東洋インキ製造社製 フタロシアニン顔料)、YELLOW PIGMENT E4GN(バイエル社製 ニッケル錯体アゾ顔料)、Cromophtal Pink PT(BASF社製 キナクリドン顔料)、ELFTEX 415(キャボット社製 カーボンブラック)、Fastogen Super Magenta RG(DIC社製 キナクリドン顔料)、YELLOW PIGMENT E4GN(ランクセス社製 ニッケル錯体アゾ顔料)、モナーク1000(キャボット社製 カーボンブラック)、イルガライトブルー8700(BASF社製 フタロシアニン顔料)、E4GN-GT(ランクセス社製 ニッケル錯体アゾ顔料)などが挙げられる。
【0049】
顔料の配合量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できるが、通常はインク中における含有量は0.1?15重量%であり、好ましくは0.5?10重量%である。顔料の平均粒子径は、50?400nmが好ましく、より好ましくは80?300nmである。平均粒子径はレーザー回折式粒度分布測定器を用いて平均粒子経(d50)を測定したものである。」
14f「【実施例】
【0067】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」を表す。
インクジェット記録用インクは顔料、顔料分散剤、溶剤によって予め顔料分散体を作成し、インク用溶媒、有機溶剤及びその他添加剤を添加して作成する。
インクジェット記録用インクは、合計が100部になるように顔料、顔料分散剤、溶剤、バインダ樹脂等を調製する。
・・・
【0072】
【表1】

・・・
【0082】
(実施例5)
有機溶剤はMEDGを29.7部、MDGを38.7部、DEDGを14.0部、GBLを6.6部、顔料はフタロシアニン顔料を4.0部、顔料分散剤はアポリアルキレン系顔料分散剤を2.0部、バインダ樹脂は懸濁重合によって製造された塩酢ビ樹脂(日信化学工業社製ソルバインCL 分子量25000)を5.0部使用したインクを作成した。
【0083】
有機溶剤中のMDG/MEDGの比率は1.3、有機溶剤中のGBLの含有量は7.4重量%である。
懸濁重合で製造された塩酢ビ樹脂(日信化学工業社製ソルバインCL 分子量25000)5.0部を、MEDG29.7部、MDG38.7部、GBL6.6部の混合溶剤にプレ溶解するプレ溶解工程を行った。
【0084】
その後、連続式超音波分散機ULTRASONIC GENERATOR GSD1200AT(株式会社ギンセン社製)を用い、先端径が50mmの超音波照射部の先端に照射部ホルダーを取り付け、完全溶解工程を行った。プレ溶解工程で得た樹脂溶液2L(リットル)を貯蔵タンクに入れ、流量1L/minにて超音波発生部と貯蔵タンクを20分間循環させながら、超音波照射部にて周波数19.5kHz、振幅30μmの超音波を照射させインク用溶媒を作成した。インク用溶媒のゲル状の残渣物は5個未満であった。
インクジェット記録用インクの製造工程は顔料分散溶剤をDEDGに変更し、それ以外は実施例1と同様に作成した。インクジェット記録用インクの組成は表1にまとめる。」

イ 甲号証に記載された発明
(ア)甲2に記載された発明
甲2には、実施例1として「ジエチレングリコールジエチルエーテル45.6質量部、テトラエチレングリコールジメチルエーテル20.0質量部、γ-ブチロラクトン25.0質量部、バインダー樹脂(アクリル系樹脂、ローム&ハース社製「パラロイドB60」)4.0質量部、C.I.ピグメント イエロー 213(クラリアント社製「Hostaperm Yellow H5G」)3.6質量部、分散剤(ルブリソール社製「ソルスパース32000」)1.8質量部を含み、顔料粒子の平均粒径は150nmである、インクジェット記録用油性インク組成物」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている(摘記2b参照)。

(イ)甲14に記載された発明
甲14には、実施例5として「MEDG29.7部、MDG38.7部、DEDG14.0部、GBL6.6部、フタロシアニン顔料4.0部、顔料分散剤としてアポリアルキレン系顔料分散剤2.0部、バインダ樹脂として懸濁重合によって製造された塩酢ビ樹脂(日信化学工業社製ソルバインCL 分子量25000)5.0部を含む、インクジェット記録用インク」の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されている(摘記14f参照)。

ウ 甲2発明を主たる引用発明とする場合
(ア) 本件特許発明1
a 甲2発明との対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「ジエチレングリコール」は、本件特許発明1の一般式(1)で表される化合物であって、本件特許明細書【0027】からみて、ジエチレングリコールジエチルエーテルの引火点は71℃であるから、本件特許発明1の「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
・・・
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物
・・・
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり
・・・
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」に相当する。
甲2発明の「γ-ブチロラクトン25.0質量部」は、本件特許発明1の「環状エステル
・・・
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、」に相当する。
甲2発明の「C.I.ピグメント イエロー 213(クラリアント社製「Hostaperm Yellow H5G」)」は、本件特許発明1の「顔料」に相当する。
甲2発明のインクジェット記録用油性インク組成物は、水を含まないものであるから、水の含有量が5質量%以下であることは明らかである。
甲2発明の顔料粒子の平均粒径は150nmであって、平均粒径はマイクロトラックUPA150を使用して測定されるものであり(摘記2b参照)、粒径分布の基準を体積平均粒径(摘記13a参照)とすることも普通に行われるから、甲2発明の顔料粒子の平均粒径は体積平均粒径である。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
環状エステルと、
体積平均粒子径が100nm以上400nm以下である顔料と、
を含み、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物を含み、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、
水の含有量が5質量%以下である、インクジェットインク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点7>
顔料が、本件特許発明1ではピグメントオレンジ-43(PO-43)であるのに対し、甲2発明ではC.I.ピグメント イエロー 213(クラリアント社製「Hostaperm Yellow H5G」)である点。

<相違点8>
引火点が140℃以下の化合物の含有量が、本件特許発明1ではインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であるのに対し、甲2発明ではインクジェットインク組成物の全量に対して45.6質量%である点。

b. 相違点についての検討
<相違点7>及び<相違点8>について検討する。
甲5?甲10にはPO-43が記載されている(摘記5c、6a、7a、8a、9a、10b参照)。
しかし、上記<相違点7>及び<相違点8>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることについては、甲2及び甲5?甲11のいずれにも記載も示唆もないから、これを当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。
また、本件特許発明1は、<相違点7>及び<相違点8>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることによって、耐候性、吐出安定性、光沢性、凝集ムラ、耐擦性及び発色性のいずれもが良好となっており、甲2発明及び甲2、甲5?甲11の記載からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものであり(本件特許明細書の段落【0091】)、そのような作用効果は、本件明細書に記載された実施例において確認されていると認められる。

c. まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲2発明及び甲2、甲5?11の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件特許発明2?8について
本件特許発明2?8は、「PO-43」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲2発明との相違点7と実質的に同等の相違点を有するものであるから、本件特許発明2?8についても、甲2発明及び甲2、甲5?11の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

エ 甲14発明を主たる引用発明とする場合
(ア) 本件特許発明1
a 甲14発明との対比
本件特許発明1と甲14発明を対比する。
甲14発明の「MEDG・・・DEDG」は、MEDGはジエチレングリコールエチルメチルエーテルであり(摘記14b参照)、DEDGはジエチレングリコールヂエチルエーテルであり(摘記14b参照)、本件特許発明1の一般式(1)で表される化合物であって、本件特許明細書【0027】からみて、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルの引火点は、それぞれ、64℃、71℃であるから、本件特許発明1の「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
・・・
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物
・・・
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり
・・・
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」に相当する。
甲14発明の「GBL」は、GBLはγ-ブチロラクトンであるから(摘記14d参照)、本件特許発明1の「環状エステル
・・・
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり」に相当する。
甲14発明の「フタロシアニン顔料」は、本件特許発明1の「顔料」に相当する。
甲14発明のインクジェット記録用インクは、水を含まないものであるから、水の含有量が5質量%以下であることは明らかである。
そうすると、本件特許発明1と甲14発明は「下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
環状エステルと、
顔料と、
を含み、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物を含み、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
水の含有量が5質量%以下である、インクジェットインク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)_(m)-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点9>
顔料が、本件特許発明1では体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるピグメントオレンジ-43(PO-43)であるのに対し、甲14発明では体積平均粒子径の特定がないフタロシアニン顔料である点。

<相違点10>
引火点が140℃以下の化合物の含有量が、本件特許発明1ではインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であるのに対し、甲14発明ではインクジェットインク組成物の全量に対して43.7質量%である点。

<相違点11>
環状エステルの含有量が、本件特許発明1ではインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であるのに対し、甲14発明ではインクジェットインク組成物の全量に対して6.6質量%である点。

b. 相違点についての検討
<相違点9>、<相違点10>及び<相違点11>について検討する。
甲14には、インク組成物をオレンジのインクとする場合には、配合される顔料として、ピグメントオレンジ43が例示されている(摘記14e参照)。
また、甲5には、彩度の高いオレンジ顔料としてPO-43が用いられることが記載されてろおり(摘記5b、5c参照)、甲14には、MEDGとDGの組み合わせまたはMEDGとMDGとDGの組み合わせ、を主溶剤とし、50重量%以上さらに好ましくは65重量%以上することが好ましいことが、記載されている(摘記14c参照)。
しかしながら、上記<相違点9>、<相違点10>及び<相違点11>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることについては、甲14及び甲5?甲11のいずれにも記載も示唆も無いから、これを当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。
また、本件特許発明1は、<相違点9>、<相違点10>及び<相違点11>に係る本件特許発明1の発明特定事項を同時に備えるものとすることによって、耐候性、吐出安定性、光沢性、凝集ムラ、耐擦性及び発色性のいずれもが良好となっており、甲14発明及び甲14、甲5?甲11の記載からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものであり(本件特許明細書の段落【0091】)、そのような作用効果は、本件明細書に記載された実施例において確認されていると認められる。

c. まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲14発明及び甲14、甲5?11の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件特許発明2?8について
本件特許発明2?8は、「体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるピグメントオレンジ-43(PO-43)」を含み、「一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり」という点を発明特定事項に備えているところ、上記本件特許発明1と甲14発明との相違点10及び相違点11と実質的に同等の相違点を有するものであるから、本件特許発明2?8についても、甲14発明、及び、甲14、甲5?甲11の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(3)特許法第36条第6項第1号
異議申立人の主張は、要するに以下の主張ア、イであると解される。
主張ア 溶剤の含有量について本件特許発明1では、引火点が140℃以下の一般式(1)で表される化合物の合計含有量が、インクジェットインク組成物の全量に対して、60質量%以上80質量%以下であることが規定されているが、実施例はいずれも60.0?69.0質量%の範囲となっているから、引火点が140℃以下の一般式(1)で表される化合物の合計含有量が69質量%超80質量%未満等について本願実施例と同様に耐候性の良好な画像を形成でき、かつ、インクジェット記録における安定性、画質及び画像の耐擦性が良好であるという効果を奏する(課題を解決することができる)か不明である。
主張イ 本件特許発明1の実施例は、いずれも、塩化ビニル系樹脂を含むものに限られているので、樹脂を含まない場合などに課題を解決することができるか不明である。
しかしながら、特許異議申立人の主張は、いずれも、課題を解決することができるか不明であると述べるにとどまるものであり、なんら具体的な立証や証拠を示していない。
また、69質量%の実施例があれば、80質量%において突如課題を解決することができなくなるということは想定しがたいし、インクジェットインク組成物の技術分野において樹脂を含まないといった極端な場合を想定すれば、課題を解決することができないなどという主張は採用できるものではない。
さらに、特許異議申立人は塩化ビニル系樹脂の存在が特定されなければ課題が解決できないと主張するが、どのような定着樹脂が適切できるかは、印刷媒体との関係で定まるものであるから、必ずしも塩化ビニル系樹脂が適切であるとはいえないため、特許異議申立人の主張は採用できない。

(4) 特許法第36条第4項第1号
【表2】及び【表3】の実施例1?8、12?15、18、21の記載からみて、明らかに、本件の【請求項1】で特定されている発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2?8についても同様である。

第8 むすび
以上のとおりであるから、令和3年2月17日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種と、
環状エステルと、
体積平均粒子径が100nm以上400nm以下であるピグメントオレンジ-43(PO-43)を含む顔料と、
を含み、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃以下の化合物の含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して60質量%以上80質量%以下であり、
前記引火点が140℃以下の化合物が、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルから選ばれる1種以上であり、
前記環状エステルがγ-ブチロラクトンであり、
前記環状エステルの含有量がインクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上30質量%以下であり、
水の含有量が5質量%以下である、インクジェットインク組成物。
R^(1)O-(R^(2)O)m-R^(3) ・・・(1)
[一般式(1)中、R^(1)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R^(2)は、炭素数2又は3のアルキレン基を表し、mは、2又は3の整数を表す。]
【請求項2】
請求項1において、
前記インクジェットインク組成物の全量に対して、1質量%以上6質量%以下の前記顔料を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記一般式(1)で表される化合物の合計の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、10質量%以上90質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記一般式(1)で表される化合物として、引火点が140℃超の化合物を含有し、前記引火点が140℃超の化合物の含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、60質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記環状エステルの含有量が、前記インクジェットインク組成物の全量に対して、10質量%以上30質量%以下である、インクジェットインク組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
さらに、塩化ビニル系樹脂を含む、インクジェットインク組成物。
【請求項7】
塩化ビニル系記録媒体への記録に用いられる、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物を用いて、塩化ビニル系記録媒体に対してインクジェット法により記録する、インクジェット記録方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-14 
出願番号 特願2015-31892(P2015-31892)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C09D)
P 1 651・ 121- YAA (C09D)
P 1 651・ 536- YAA (C09D)
P 1 651・ 537- YAA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 上條 のぶよ  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 蔵野 雅昭
瀬下 浩一
登録日 2020-05-11 
登録番号 特許第6701617号(P6701617)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 インクジェットインク組成物及びインクジェット記録方法  
代理人 川▲崎▼ 通  
代理人 布施 行夫  
代理人 松本 充史  
代理人 布施 行夫  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 松本 充史  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 川▲崎▼ 通  
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